JP5776715B2 - 半導体素子、光学センサ装置および半導体素子の製造方法 - Google Patents
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Description
またInP基板上に、InGaAs−GaAsSbのタイプ2MQWを活性層として形成し、発光波長2.14μmとなるLEDおよびレーザーダイオードの開示がなされている(非特許文献2)。このタイプ2MQWのGaAsSbは、Sb組成が34atm.%〜40atm.%と、InPとの格子整合組成より低い側での歪補償構造を用いている。なお、以後の説明では、「atm.%」を、単に「%」と記す。
また、タイプ2MQWを形成することなく、Sb組成を変えたGaAsSb単相をInP基板上に成長してPLの波長を測定している。そして、InP/GaAsSbのタイプ2MQWによる発光素子について考察をしている。
さらに、GaInNAsSb量子井戸構造を有する半導体レーザー素子の開示がなされている(特許文献1)。このGaInNAsSb量子井戸構造は、単一量子井戸構造(すなわち、ペア数=1)である。
100〜300の繰り返し数のMQWを形成するとき、MBE(分子線エピタキシー)法では、分子線をシャッターで瞬時に切り替えることができる。このため、マイコン制御の弁の自動切り替えが可能であり、急峻な界面と高品質な多重量子井戸構造の成長についてはMBE法による成膜がほとんど必然であると考えられてきた。特に、上述の相分離しやすいGaAsSb層の結晶成長の問題に限定して考えた場合、相分離を防止しながらエピタキシャル成長するには非平衡性の強い結晶成長法が必要である。このため、非平衡性の強い結晶成長法であるMBE法が適している。現に、GaAsSb層の形成にMBE法が用いられている(非特許文献1)。
上記の半導体素子は、いずれも近赤外の長波長域の光を対象にするが、この場合、タイプ2MQWの表面側に位置するキャップ層またはコンタクト層は、上記対象の波長域の光を吸収しない材料で構成されることが好ましい。このために、コンタクト層にはInPが用いられることが多い。InPをMBE法で成長すると、原料に固体の燐を用いるので、成長槽の内壁に燐(P)が付着してゆく。この付着した燐は、メンテナンス時に成長槽を開いて空気と触れると、発火するおそれがある。このため、MQWはMBE法によって成長し、InPコンタクト層はMBE法以外の成長法で成長する製造方法が用いられる。MBE法による製造方法から、たとえばOMVPE法に切り替える際、一度、中間製品のInPウエハを空気にさらすことになる。このような空気への暴露は不純物の汚染を受けやすい。また、上記のような成長方法の切り替えは、製造能率を阻害する。
(イ)膜厚zが10nm未満(44atm.%<組成x<54atm.%)、
(ロ)組成xが44atm.%以上(7nm≦膜厚z<10nm)、
(ハ)組成xが54atm.%未満(3nm<膜厚z<10nm)、
(ニ)膜厚zが、点(組成x=44,膜厚z=7)と点(組成x=54,膜厚z=3)とを結ぶ線分z=−0.4x+24.6(B線)より大きい範囲、
かつ歪補償構造を形成しており、さらに受光層が受光感度を有する最長波長が2.4μm以上であることを特徴とする。
ここで、MQWにおけるGaAsSb層と、InGaAs層とは、±1.0nmのばらつきの範囲内で、実質的に同じ膜厚とする。このため、以後の説明において、一方の層(例えばGaAsSb層)の膜厚zというとき、当該一方の層または他方の層(例えばInGaAs層)の膜厚zと解するのが妥当である。
上記の発明は、受光域の長波長側への拡大のために、量子井戸の膜厚増大(要因(F1))に加えて、歪補償構造(要因(F2))を適用する。上記の構成によれば、歪補償構造(要因(F2))を形成する、GaAsSb層のSb組成xを高めにしてInGaAs層のIn組成yを低めにすると、InPとの格子整合(以下、「InP格子整合性」と呼ぶ。)を保ちながらGaAsSb層の価電子帯とInGaAs層の伝導帯とのエネルギ差を小さくできる。この結果、格子欠陥密度を増大させず低い暗電流を維持しながら、受光可能な範囲を長波側に拡大することができる。
上記のように、MQWにおけるGaAsSb層と、InGaAs層とは、±1.0nmのばらつきがある。このようなばらつきがあっても、確実に量子井戸の膜厚増大(要因(F1))を得るために、全体の範囲を狭くしながら膜厚の下限を1.0nmだけ大きくする。
GaAsSb層のSb組成xとInGaAs層のIn組成yとの、100≦x+y≦104、の関係は、Sb組成xを44%から増大させながら、InP格子整合性を保持して格子欠陥密度を低くするために必要である。
上述のように、(F1)MQWの各層の膜厚増大、および(F2)GaAsSb層におけるSb組成の増大とInGaAs層におけるIn組成の減少(歪補償構造)は、受光波長域の拡大に有効である。とくに、(F1)のMQWの各層の膜厚増大について、GaAsSb層の膜厚zを増大するとき、暗電流または受光感度との関係で、次のようにするのがよい。
44atm.%≦x<54atm.%の範囲では、GaAsSb層と、InGaAs層とはInP格子整合性を保つことはそれほど困難ではない。このため、膜厚を増大させて厳密な格子整合性からのずれが拡大されても、結晶性の劣化は小さい。このため、膜厚を厚くすることで、低い暗電流を維持しながら長波長化を推進することができる。しかし、膜厚を増大させると、GaAsSb層に閉じこめられた正孔と、InGaAs層の伝導帯に閉じこめられた電子との波動関数の重なりが小さくなる。それによって量子効率が低下して受光感度が劣化するおそれがある。GaAsSb層の膜厚zが10nm以上になると受光感度が大きく低下する。受光感度を確保するため、上記の膜厚zは10nm未満とする。
参考としてのみあげるが、56.8atm.%≦x≦68atm.%の範囲では、Sb組成xが、GaAsSb層単独でのInP格子整合性を得る範囲から高いほうに逸脱している。InGaAs層のIn組成yの低下を得て、MQWにおいてInP格子整合性を得ることができる。このため、大雑把には、結晶膜の特性としてはベストではなく、かろうじてInP格子整合性を保っている。このようなGaAsSb層の膜厚zを増大させると、MQW内のGaAsSb層のInP格子整合性からの逸脱が明確になり(比例的に膜厚を増すInGaAs層についても同様)、格子欠陥密度は膜厚zの増大につれて増大(劣化)してゆく。その結果、膜厚zの増大につれて暗電流は増大する。したがって、このような高いSb組成xの範囲では、暗電流は、GaAsSb層のSb組成xにも依存しながら、かつ膜厚zにも依存する。暗電流を実用上許容されるレベル内にする、Sb組成xおよび膜厚zの範囲は、z<−0.625x+45.5、である。
ここで、「基板の格子定数をa、InGaAs層の格子定数をa1とすると、GaAsSb層の格子不整合度Δω1は、Δω1={(a−a1)/a}×100%」と定義される。Δω2についても、同様である。以後の説明でも格子不整合度は同じである。
上記の構成によって、GaAsSb層単独では、またInGaAs層単独ではInP格子整合性を満たすことはできないが、両方が反対方向に格子定数を逸脱させることで、統合してはInP格子整合性を得ることができる。これによって、長波長側への拡大に有利なようにバンド構造を変えながら、格子欠陥密度を低くして、低い暗電流を維持することができる。
ここで、再成長界面とは、所定の成長法で第1結晶層を成長させたあと、一度、大気中に出して、別の成長法で、第1結晶層上に接して第2結晶層を成長させたときの第1結晶層と第2結晶層との界面をいう。通常、酸素、炭素が不純物として高濃度に混入する。本発明の半導体素子は、再成長界面を持たないようにするのがよく、InPコンタクト層表面まで良好な結晶性を保持することができる。これによって、暗電流の低減に資することができる。
また、半導体素子を能率よく製造することができる。すなわち、このあと説明するように、(バッファ層〜MQW)からPを含むInPコンタクト層まで、一貫して全有機MOVPE法によって成長するので、同じ成長槽内で、連続して製造を遂行することができる。また、たとえば燐を含むInPコンタクト層を形成しても、原料に固体の燐を用いないので、成長槽の内壁に燐が固着しない。このためメンテナンス時に発火などのおそれがなく、安全上も優れている。
(イ)膜厚zが10nm未満(44atm.%<組成x<54atm.%)、
(ロ)組成xが44atm.%以上(7nm≦膜厚z<10nm)、
(ハ)組成xが54atm.%未満(3nm<膜厚z<10nm)、
(ニ)膜厚zが、点(組成x=44,膜厚z=7)と点(組成x=54,膜厚z=3)とを結ぶ線分z=−0.4x+24.6(B線)より大きい範囲、
かつ歪補償構造を形成しており、さらに受光層が受光感度を有する最長波長を2.4μm以上としたことを特徴とする。
さらにGaAsSb層のSb組成x、およびInGaAs層のIn組成yについて、Sb組成xの1atm.%の増大分につきIn組成yを0.9倍〜1.2倍の割合で低下させるように成長させることができる。
また、MQWの上にInPコンタクト層を形成する工程を備えてもよい。
上記の方法で製造された半導体素子の暗電流が低く、近赤外の長波長域に受光感度を拡大する点については、上述のとおりである。
上記のように、MQWにおけるGaAsSb層と、InGaAs層とは、±1.0nmのばらつきがある。このようなばらつきがあっても、確実に量子井戸の膜厚増大(要因(F1))を得るために、全体の範囲を狭くしながら膜厚の下限を1.0nmだけ大きくする。これによって、良好な結晶性を確保しながら、近赤外域の長波長側の感度向上を追求することができる。
上記の方法によれば、上述の半導体素子を能率よく製造することができる。すなわち、Pを含むInPコンタクト層まで、一貫して全有機MOVPE法によって成長するので、同じ成長槽内で、連続して製造を遂行することができる。また、たとえば燐を含むInPコンタクト層を形成しても、原料に固体の燐を用いないので、成長槽の内壁に燐が固着しない。このためメンテナンス時に発火などのおそれがなく、安全上も優れている。
全有機MOVPE法におけるその他の利点は、各層間で急峻なヘテロ界面をもつMQWを得ることができる。急峻なヘテロ界面をもつMQWによって、高精度のスペクトル分光等を行うことができる。
図1は、本発明の実施の形態1における半導体素子50を示す図である。受光素子50のは、InP基板1の上に次の構成のInP系半導体積層構造(エピタキシャルウエハ)を有する。図1では、光はInP基板側から入射されるが、エピタキシャル側から入射してもよい。
(InP基板1/InPバッファ層2/タイプ2(InGaAs/GaAsSb)MQWの受光層3/InGaAs拡散濃度分布調整層4/InPコンタクト層5)
InPコンタクト層5からMQWの受光層3にまで届くように位置するp型領域6は、SiN膜の選択拡散マスクパターン36の開口部から、p型不純物のZnが選択拡散されることで形成される。受光素子10の周縁部の内側に、平面的に周囲限定されて拡散導入されるということは、上記SiN膜の選択拡散マスクパターン36を用いて拡散することによって達せられる。p型領域6にはAuZnによるp側電極11が、またInP基板1の裏面にはAuGeNiのn側電極12が、それぞれオーミック接触するように設けられている。この場合、InP基板1にはn型不純物がドープされ、所定レベルの導電性を確保されている。InP基板1の裏面には、またSiONの反射防止膜35を設け、InP基板の裏面側から光を入射するようにして使用することもできるようになっている。タイプ2MQWの受光層3には、上記のp型領域6の境界フロントに対応する位置にpn接合15が形成され、上記のp側電極11およびn側電極12間に逆バイアス電圧を印加することにより、n型不純物濃度が低い側(n型不純物バックグラウンド)により広く空乏層を生じる。MQWの受光層3におけるバックグラウンドは、n型不純物濃度(キャリア濃度)で5E15cm−3程度またはそれ以下である。そして、pn接合の位置15は、多重量子井戸の受光層3のバックグラウンド(n型キャリア濃度)と、p型不純物のZnの濃度プロファイルとの交点で決まる。拡散濃度分布調整層4は、受光層3を構成するMQW内でのp型不純物の濃度分布を調整するために配置されるが、拡散濃度分布調整層4はなくてもよい。受光層3内では、Zn濃度は5E16cm−3以下にするのがよい。
(P1)受光層3を、タイプ2(InGaAs/GaAsSb)のMQWで構成し、GaAsSbのSb組成xを44%以上とし、GaAsSbのSb組成xを増大し、その増大分を吸収して全体としてInP格子整合性を保つように、InGaAsのIn組成yを低めにする。すなわちGaAsSbおよびInGaAsが歪補償構造を形成している。このポイント(P1)は、このあと説明する受光域を近赤外の長波長側に拡大する要因(F2)と同じである。
(P2)単位量子井戸(GaAsSb)の膜厚zを3nm以上として、かつz>−0.4x(%)+24.6、を満たすようにする。この特徴は、上述の要因(F1)膜厚増大を主体的に含み、上記の要因(F2)も副次的に含んでいる。
上記の(P1)によれば、Sb組成xの増大およびIn組成yの減少によってGaAsSbの価電子帯とInGaAsの伝導帯とのエネルギ差を小さくできる。かつ、上記InP格子整合性の維持によって、格子欠陥密度の小さいMQW、コンタクト層などを成長することができる。この結果、暗電流を低く保ちながら、受光域を長波長域に拡大することができる。
また、(P2)によれば、受光可能な長波長域を2.4μm以上にすることができる。
さらに、再成長界面を持たないので、高濃度の酸素、炭素が不純物として混入していない。この結果、InPコンタクト層表面まで良好な結晶性を保持することができ、暗電流の低減を得ることができる。
上記タイプ2(GaAsSb/InGaAs)のMQWの受光域を、近赤外の長波長域に拡大する要因に、つぎの2つがある。
(F1)MQWの各層の膜厚増大。本実施の形態では、図2に示すように、GaAsSbの膜厚zを指標にする。InGaAsの膜厚は、GaAsSbの膜厚zの±1.0nmの範囲であり、実質的に同じと考えてよい。
(F2)GaAsSb/InGaAsにおけるSb組成xの44%以上への増大とIn組成の減少。要因(F2)は、InP格子整合性の観点からは歪補償構造の形成ということができる。しかし、バンド構造的にはGaAsSbの価電子帯とInGaAsの伝導帯とのエネルギ差の減少である。この要因(F2)の泣き所は、InP格子整合性の確保、または格子欠陥密度の低減である。
上記の長波長側の光の波長λが受光される場合、生じた正孔と電子とのエネルギ差は、h・(c/λ)である。ここに、hはプランク定数(6.626E−34J・s)であり、cは光の媒体内での速度である。受光域を長波長側に拡大するには、図3におけるh・(c/λ)の矢印の両端を近づける必要がある。要因(F2)は、図3に示すように、バンド構造における、GaAsSbの価電子帯とInGaAsの伝導帯とのエネルギ差ΔEvcを減少させる。すなわち、電子準位が形成されるバンド構造を変えて、上記のエネルギ差ΔEvcを小さくする。また、要因(F1)は、つぎのように影響すると考えられる。MQW内の単一層は、一つの井戸ポテンシャルを形成する。井戸ポテンシャル内に形成される電子のエネルギ準位は、井戸ポテンシャルの幅(膜厚)が小さくなるほど、上昇する傾向がある。これは、電子のような波動的性質をもつ粒子(波)を小さい空間に閉じこめようとすると、広い空間に広がっていた場合に比べて、そのエネルギ状態が高くなることに対応しており、普遍的な性質といってよい。膜厚zを大きくすると、図3に示した電子(正孔)のエネルギ準位は、価電子帯および伝導帯に近づく。この結果、波長λがより大きくなり、h・(c/λ)がより小さくなっても、受光が可能になる。
1.B線:z=−0.4x+24.6
このB線は、受光可能な最長波長が2.43μmとなる、組成xおよび膜厚zを定める。このB線以上にzがある範囲、すなわちB線以内にあるx−z範囲では、受光可能な最長波長が2.4μm以上となる。本発明では、最長波長2.4μm以上とするために、膜厚zをB線より大きくする。
2.x=44
Sb組成x=44(%)は、膜厚zによらず、最長波長が2.3μmを確保できる線である。Sb組成xが44%以上において、膜厚zが7nm以上であれば、最長波長2.3μm以上を得ることができる。本実施の形態では、Sb組成xは、44(%)以上とする。
3.z=3
本発明では、受光感度を確保するため、膜厚zは3nm以上とする。
4.A線:z=−0.625x+45.5
このA線によって、暗電流が大きくなる限界を定めることができる。A線を含む外側(zがこのA線以上となる範囲)では、暗電流が大きくなり、S/N比が低下してしまう。このA線よりも内側(zがこのA線よりも下に位置する範囲)では、A線に近づくほど、膜厚zは増大し、Sb組成xは増大して、受光域は長波長側に拡大される。本実施の形態では、低い暗電流が重視される場合には、x−z範囲をA線より内側にすることができる。上記のように、膜厚zとSb組成xとの両方をA線に近づけないと、実用上、大きな用途が見込まれる近赤外域の長波長側に拡大した半導体素子を得ることができない。
5.A2線:z=−0.27x+21.7
しかしながら、暗電流の低減を重視する場合には、良好な結晶性を実現するために、Sb組成xの範囲に応じて、(b1)44atm.%≦x<54atm.%の範囲で、z<10nm、とし、参考としてあげる(b2)54atm.%≦x≦68atm.%の範囲で、A2線:z≦−0.27x+21.7、とするのがよい。このA2線については、実施例において詳しく説明する。
6.z=10
z=10nmは、感度限界を定める。すなわち膜厚zが10nmでは、電子と正孔との波動関数の重なりが小さくなって、感度が小さくなる。すなわちGaAsSbの価電子帯からInGaAsの伝導帯へ、電子が遷移する確率が小さくなって、そのような電子の遷移(受光)が生じにくくなる。これは量子力学の要請からくるものである。膜厚zがこれより薄ければ、すなわちz<10の範囲であれば、受光感度を確保することができる。
7.z=7
しかしながら、感度を重視する場合には、z≦7(nm)とするのがよい。
次に製造方法について説明する。InP基板1を準備して、その上に、InPバッファ層2/タイプ2(InGaAs/GaAsSb)MQWの受光層3/InGaAs拡散濃度分布調整層4/InPコンタクト層5、を全有機MOVPE法で成長する。ここでは、とくにタイプ2(InGaAs/GaAsSb)MQWの受光層3の成長方法を詳しく説明する。
図5に全有機MOVPE法の成膜装置60の配管系統等を示す。反応室(チャンバ)63内に石英管65が配置され、その石英管65に、原料ガスが導入される。石英管65中には、基板テーブル66が、回転自在に、かつ気密性を保つように配置される。基板テーブル66には、基板加熱用のヒータ66hが設けられる。成膜途中のウエハ50aの表面の温度は、反応室63の天井部に設けられたウィンドウ69を通して、赤外線温度モニタ装置61によりモニタされる。このモニタされる温度が、成長するときの温度、または成膜温度もしくは基板温度等と呼ばれる温度である。本発明における製造方法における、温度400℃以上かつ560℃以下でMQWを形成する、というときの400℃以上および560℃以下は、この温度モニタで計測される温度である。石英管65からの強制排気は真空ポンプによって行われる。
原料ガスは、流量の制御は、図5に示す流量制御器(MFC)によって制御された上で、石英管65への流入を電磁バルブの開閉によってオンオフされる。そして、石英管65からは、真空ポンプによって強制的に排気される。原料ガスの流れに停滞が生じる部分はなく、円滑に自動的に行われる。よって、量子井戸のペアを形成するときの組成の切り替えは、迅速に行われる。
図5に示すように、基板テーブル66は回転するので、原料ガスの温度分布は、原料ガスの流入側または出口側のような方向性をもたない。また、ウエハ50aは、基板テーブル66上を公転するので、ウエハ50aの表面近傍の原料ガスの流れは、乱流状態にあり、ウエハ50aの表面近傍の原料ガスであっても、ウエハ50aに接する原料ガスを除いて導入側から排気側への大きな流れ方向の速度成分を有する。したがって、基板テーブル66からウエハ50aを経て、原料ガスへと流れる熱は、大部分、常時、排気ガスと共に排熱される。このため、ウエハ50aから表面を経て原料ガス空間へと、垂直方向に大きな温度勾配または温度段差が発生する。
さらに、本発明の実施の形態では、基板温度を400℃以上かつ560℃以下という低温域に加熱される。このような低温域の基板表面温度でTBAsなどを原料とした全有機MOVPE法を用いる場合、その原料の分解効率が良いので、ウエハ50aにごく近い範囲を流れる原料ガスで多重量子井戸構造の成長に寄与する原料ガスは、成長に必要な形に効率よく分解したものに限られる。
ウエハ50aの表面はモニタされる温度とされているが、ウエハ表面から少し原料ガス空間に入ると、上述のように、急激に温度低下または大きな温度段差が生じる。このため分解温度がT1℃の原料ガスの場合、基板表面温度は、(T1+α)に設定し、このαは、温度分布のばらつき等を考慮して決める。ウエハ50a表面から原料ガス空間にかけて急激で大きな温度降下または温度段差がある状況において、図6(b)に示すような、大サイズの有機金属分子がウエハ表面をかすめて流れるとき、分解して結晶成長に寄与する化合物分子は表面に接触する範囲、および表面から数個分の有機金属分子の膜厚範囲、のものに限られると考えられる。したがって、図6(b)に示すように、ウエハ表面に接する範囲の有機金属分子、および、ウエハ表面から数個分の有機金属分子の膜厚範囲以内に位置する分子、が、主として、結晶成長に寄与して、それより外側の有機金属分子は、ほとんど分解せずに石英管65の外に排出される、と考えられる。ウエハ50aの表面付近の有機金属分子が分解して結晶成長したとき、外側に位置する有機金属分子が補充に入る。
逆に考えると、ウエハ表面温度を有機金属分子が分解する温度よりほんのわずかに高くすることで、結晶成長に参加できる有機金属分子の範囲をウエハ50a表面上の薄い原料ガス層に限定することができる。
この多重量子井戸構造を形成する場合、600℃程度の温度範囲で成長すると多重量子井戸構造のGaAsSb層に相分離が起こり、清浄で平坦性に優れた多重量子井戸構造の結晶成長表面、および、優れた周期性と結晶性を有する多重量子井戸構造を得ることができない。このことから、成長温度を400℃以上かつ560℃以下という温度範囲にする(成膜要因2)が、この成膜法を全有機MOVPE法にして、原料ガスすべてを分解効率の良い有機金属気体にすること(成膜要因3)に、成膜要因1が強く依拠している。
図1に示した半導体素子50では、タイプ2MQWの受光層3の上には、InGaAs拡散濃度分布調整層4が位置し、そのInGaAs拡散濃度分布調整層4の上にInPコンタクト層5が位置している。InPコンタクト層5の表面に設けた選択拡散マスクパターン36の開口部からp型不純物のZnが選択拡散されてp型領域6が設けられる。そのp型領域6の先端部にpn接合15またはpi接合15が形成される。このpn接合15またはpi接合15に、逆バイアス電圧を印加して空乏層を形成して、光電子変換による電荷を捕捉して、電荷量に画素の明るさを対応させる。p型領域6またはpn接合15もしくはpi接合15は、画素を構成する主要部である。p型領域6にオーミック接触するp側電極11は画素電極であり、接地電位にされるn側電極12との間で、上記の電荷を画素ごとに読み出す。p型領域6の周囲の、InPコンタクト層表面には、上記の選択拡散マスクパターン36がそのまま残される。さらに図示しないSiON等の保護膜が被覆される。選択拡散マスクパターン36をそのまま残すのは、p型領域6を形成したあと、これを除いて大気中に暴露すると、コンタクト層表面のp型領域との境界に表面準位が形成され、暗電流が増大するからである。
上述のようにMQWを形成したあと、InPコンタクト層5の形成まで、全有機MOVPE法によって同じ成膜室または石英管65の中で成長を続けることが、一つのポイントになる。すなわち、InPコンタクト層5の形成の前に、成膜室からウエハ50aを取り出して、別の成膜法によってInPコンタクト層5を形成することがないために、再成長界面を持たない点が一つのポイントである。すなわち、InGaAs拡散濃度分布調整層4とInPコンタクト層5とは、石英管65内において連続して形成されるので、界面16,17は再成長界面ではない。このため、酸素、炭素および珪素の濃度がいずれも所定レベル以下であり、とくにp型領域6と界面17との交差線において電荷リークが生じることはない。
上記の選択拡散によってp型領域6が形成され、その先端部にpn接合15またはpi接合15が形成される。InGaAs拡散濃度分布調整層4を挿入した場合であっても、InGaAsはバンドギャップが小さいのでノンドープであっても受光素子の電気抵抗を低くすることができる。電気抵抗を低くすることで、応答性を高めて良好な画質の動画を得ることができる。
InGaAs拡散濃度分布調整層4の上に、同じ石英管65内にウエハ50aを配置したまま連続して、アンドープのInPコンタクト層5を、全有機MOVPE法によってたとえば膜厚0.8μmにエピタキシャル成長するのがよい。原料ガスには、上述のように、トリメチルインジウム(TMIn)およびターシャリーブチルホスフィン(TBP)を用いる。この原料ガスの使用によって、InPコンタクト層5の成長温度を400℃以上かつ560℃以下に、さらには535℃以下にすることができる。この結果、InPコンタクト層5の下に位置するMQWのGaAsSbが熱のダメージを受けることがなく、MQWの結晶性が害されることがない。InPコンタクト層5を形成するときには、下層にGaAsSbを含むMQWが形成されているので、基板温度は、たとえば温度400℃以上かつ560℃以下の範囲に厳格に維持する必要がある。その理由として、600℃程度に加熱すると、GaAsSbが熱のダメージを受けて結晶性が大幅に劣化する点、および、400℃未満の温度としてInPコンタクト層を形成すると、原料ガスの分解効率が大幅に低下するため、InPコンタクト層5内の不純物濃度が増大し高品質なInPコンタクト層5を得られない点があげられる。
本発明前は、InGaAs拡散濃度分布調整層とInPコンタクト層との界面は、いったん大気に露出された再成長界面であった。再成長界面は、二次イオン質量分析によって、酸素濃度が1E17cm−3以上、炭素濃度が1E17cm−3以上、および、珪素濃度が1E17cm−3以上のうち、少なくとも一つを満たすことによって特定することができる。再成長界面は、p型領域と交差線を形成し、交差線で電荷リークを生じて、画質を著しく劣化させる。
また、たとえばInPコンタクト層を単なるMOVPE法によって成長すると、燐の原料にホスフィン(PH3)を用いるため、分解温度が高く、下層に位置するGaAsSbの熱によるダメージの発生を誘起してMQWの結晶性を害することとなる。
図8は本発明の実施の形態2における、受光素子アレイ(半導体素子)50を含む光学センサ装置10である。レンズなどの光学部品は省略してある。SiON膜からなる保護膜43が、図8では示されているが、実際には図1にも配置されている。受光素子アレイ50は、図1に示す受光素子と積層構造は同じであり、異なる点は、複数の受光素子または画素Pが配列されていることである。膜厚z、Sb組成sなどについては、図1の半導体素子と共通するので、説明は繰り返さない。また、界面16,17が、再成長界面ではなく、酸素、炭素、珪素等の不純物濃度がいずれも低いことなども図1の受光素子(半導体素子)と同じである。
図8では、この受光素子アレイ50と、読み出し回路(Read-Out IC)を構成するCMOS70とが、接続されている。CMOS70の読み出し電極(図示せず)と、受光素子アレイ50の画素電極(p側電極)11とは、接合バンプ39を介在させて接合されている。また、受光素子アレイ50の各画素に共通のグランド電極(n側電極)12と、CMOS70の図示しない接地電極とが、バンプ12bを介在させて接合されている。CMOS70と受光素子アレイ50とを組み合わせて、画素ごとに受光情報を集積して、撮像装置等を得ることができる。
上述のように、本発明の受光素子アレイ(半導体素子)50は、長波長域にまで感度を有しており、暗電流(リーク電流)が小さいので、動植物等の生体の検査、環境モニタ等に用いることで、高精度の検査を遂行することができる。
図1に示す半導体素子50と同じ構造の受光素子50におけるMQWのGaAsSbの膜厚z(nm)およびSb組成x(%)を変化させて、室温におけるPL(Photo-luminescent)波長、および暗電流を測定した。各試験体のGaAsSbのSb組成x、およびInGaAsのIn組成y、ならびにGaAsSb、InGaAsの膜厚z(nm)は、表1に示すとおりである。GaAsSbおよびInGaAsの膜厚は同じにした。また、組成xおよび組成yは、InGaAsの格子不整合度をΔω1とし、GaAsSbの格子不整合度をΔω2とするとき、多重量子井戸構造全体の格子不整合度Δω={Σ(Δω1×InGaAs層の厚み+Δω2×GaAsSb層の厚み)}/{Σ(InGaAs層の厚み+GaAsSb層の厚み)}で定義されるΔωが−0.2%以上かつ0.2%以下を満たすようにした。
受光素子50は、上記のように、全有機MOVPE法で製造した。受光層以外の部分は、上記の方法で製造した。主なエピタキシャル層の製造方法は次のように行った。成長温度は510℃である。GaAsSbは、原料に、TEGa、TBAsおよびTESbを用い、Sb組成xは、V/III比(V属原料の供給量/III属原料の供給量)を一定にしてTBAsとTESbの供給量比を変化させることで変えた。また、InGaAsは、原料に、TEGa、TMIn、TBAsを用い、In組成yは、V/III比を一定にしてTEGaとTMnInの供給量比を変化させて成長した。また、InPコンタクト層5は、原料にTMInおよびTBPを原料に用いた。
評価は、下記のように、室温でのPL波長、および暗電流の測定を行った。暗電流は、100μm径で、逆バイアス電圧(Vr)=1Vで行った。
1.室温におけるPL波長
室温におけるPLの波長は、バンドギャップ波長に対応し、ほぼ受光できる最長波長に対応する。図9、図4を参照して、比較例2,3,8,10では、膜厚zはB線:−0.4x+24.6、の下側に位置しており、表1によれば、PL波長は、それぞれ、2210nm、2290nm,2210nm,2300nmであり、2400nm未満である。これは、膜厚zおよびGaAsSbのSb組成xが、十分、高くないためである。
これに対して、膜厚z≧3nmであり、かつ膜厚z>−0.4x+24.6(B線より大きい)、を満たす範囲では、表1に示すように、いずれの本発明例も、PL波長2.4μm以上となっている。しかも、A線:z=−0.625x+45.5、に近づくほどPL波長は長波長となる。図9において、A線およびz=10に近づくほどPL波長が長くなることを矢印およびPL波長によって示す。
また、膜厚z=10の線に近づくとき、参考例7(2430nm)→本発明例6(2620nm)→本発明例5(2700nm)→参考例4(2870nm)、のように、PL波長はやはり長くなる。
2.暗電流
暗電流は、A線:z=−0.625x+45.5、が限界を定める。暗電流は、格子欠陥密度が高くなると増大するので、Sb組成xおよびIn組成yのみによると考えられがちである。しかし、上述のように膜厚にも依存しており、組成x,yだけでなく、膜厚zにも影響される。格子欠陥が累積されるからと考えられる。
参考例16および参考例19は、A線上に位置しており、暗電流は、それぞれ、700nAおよび800nAである。この程度の暗電流であれば、許容される用途は多くあるが、暗電流を重視する場合には、膜厚zが、A線よりも小さい範囲とするのがよい。さらに暗電流を確実に低くする場合には、A2線:z=−0.27x+21.7以下とするのがよい。この場合には、本発明例16および本発明例19は、本発明の範囲には入らず、比較例となる。
A線から少し離れた範囲、たとえば参考例11,14,17,18は、それぞれ、200nA,200nA,300nA,200nAであり、実用上、問題ないレベルである。
3.受光感度
このあと実施例2で説明するが、GaAsSbの膜厚zが10nmになると、受光感度が低下する。膜厚z=10nmでもある程度の受光感度があり用途によっては可能である。しかし、受光感度が非常に問題になる場合は、膜厚zは10nmより小さくするのがよい。より高い受光感度が求められる場合には、z≦7(nm)とするのがよい。この場合、参考例4は本発明の範囲外となる。
これは、量子力学的効果であり、実施例の条件によらず成り立つと考えられる。また、膜厚zが2nm程度に薄い場合も、受光感度は低い。このため、膜厚zは3nm以上とする。
<試験体の製造>
全有機MOVPE法によって、SドープしたInP基板上に、バッファ層(InP/InGaAs)/タイプ2(InGaAs/GaAsSb)MQWの受光層/InGaAs拡散濃度分布調整層/InPコンタクト層、のエピタキシャル層を、一貫して形成した。MQWの受光層3上に直接InPコンタクト層を成長した。Ga,In,As,P,Sbの原料として、それぞれ、TEGa,TMIn、TBAs,TBP,TMSbを用いた。n型不純物のドーピングにはTeESiを用いた。
具体的には、SドープInP基板上に、n型ドープInPバッファ層を150nm成長し、その上にn型ドープしたInGaAsバッファ層を0.15μm成長した。この2層のバッファ層の上に、InGaAs/GaAsSbのタイプ2MQW受光層を成長した。MQWの構成は、下側のアンドープInGaAs層と、アンドープGaAsSb層とを対にして、250ペア繰り返した。組成は、単独で格子整合する組成であり、GaAsSbのSb組成xは49%、InGaAsのIn組成yは53%とした。InGaAsの格子不整合度をΔω1とし、GaAsSbの格子不整合度をΔω2とするとき、多重量子井戸構造全体の格子不整合度Δω={Σ(Δω1×InGaAs層の厚み+Δω2×GaAsSb層の厚み)}/{Σ(InGaAs層の厚み+GaAsSb層の厚み)}で定義されるΔωが−0.2%以上かつ0.2%以下である。MQW受光層上にInGaAs拡散濃度分布調整層を1.0μm成長し、その上に、アンドープInPコンタクト層を0.8μm成長した。GaAsSbの成長にはTEGa、TBAs、およびTMSbを原料に用いた。またInGaAsの成長にはTEBa、TMIn、TBAsを用いた。さらにInPコンタクト層またはInPバッファ層の成長にはTMIn、TBPを用いた。
1.PL特性
結果を表2および図10に示す。GaAsSbの膜厚zおよびInGaAsの膜厚が5nmのとき、PLピーク波長は2.5μmとなった。両方の膜厚を減少させるにしたがってPL波長は短波長側にシフトした。GaAsSbおよびInGaAsの膜厚を2nmとした場合、PL波長は1.9μmとなった。
一方、InGaAsおよびGaAsSbの膜厚を厚くするにつれてPL波長は長くなり、両方の膜厚をともに10nmとするとPL波長は2.9μmとなった。
2.受光感度
受光感度測定は、逆バイアス電圧Vr=−5Vにて、波長2000nmの光に対して行った。GaAsSbおよびInGaAs両方の膜厚が2nmでは、受光感度は0.1A/Wと非常に低かった。両方の膜厚を3nm,5nm,7mと増大させるに従って、0.6A/W、0.6A/W、0.5A/W、のように向上した。そして、両方の膜厚が10nmのとき、0.2A/Wと劣化した。
試験体は、実施例2に示す構成にして、同じ手順に従った。ただし、本実施例では、膜厚はGaAsSbおよびInGaAsともに、5nm一定として、原料ガスの供給量を上述のように調整した。このとき、InGaAsの格子不整合度をΔω1とし、GaAsSbの格子不整合度をΔω2とするとき、多重量子井戸構造全体の格子不整合度Δω={Σ(Δω1×InGaAs層の厚み+Δω2×GaAsSb層の厚み)}/{Σ(InGaAs層の厚み+GaAsSb層の厚み)}で定義されるΔωが−0.2%以上かつ0.2%以下を満たすようにした。
1.PL特性
結果を表3および図11に示す。GaAsSbのSb組成xが49%で、InGaAsのIn組成yが53%のとき、PL波長は2.4μmであった。GaAsSbのSb組成xを増大させ、InGaAs組成yを減少させると、PL波長は長波長側にシフトする。Sb組成x62%で、In組成y38%で、PL波長は3.0μmであった。
2.暗電流
逆バイアス電圧Vrが−1Vでも−5Vでも、Sb組成を44%以上に増加させると、暗電流は漸増したが、良好なレベルといってよい。In組成yが53%よりも低くSb組成を62%より増加させると、逆バイアス電圧Vr=−1Vと−5Vとの暗電流の相違は大きくなった。これより、より長波長側まで受光感度を有する受光素子において、S/N比を大きくするためには、より低い逆バイアス電圧(絶対値を小さくする)とするのがよい。
Claims (9)
- InP基板上に形成された半導体素子であって、
前記InP基板の上に位置するタイプ2の多重量子井戸構造の受光層を備え、
前記多重量子井戸は、GaAs1−xSbx(以下、GaAsSb)層と、InyGa1−yAs(以下、InGaAs)層と、の繰り返し構造により構成され、
前記GaAsSb層のSb組成x(atm.%)と該GaAsSb層の膜厚zとの範囲は、つぎの(イ)〜(ニ)のすべてを満たすものであり、
(イ)膜厚zが10nm未満(44atm.%<組成x<54atm.%)、
(ロ)組成xが44atm.%以上(7nm≦膜厚z<10nm)、
(ハ)組成xが54atm.%未満(3nm<膜厚z<10nm)、
(ニ)膜厚zが、(組成x=44,膜厚z=7)と(組成x=54,膜厚z=3)とを結ぶ線分z=−0.4x+24.6(B線)より大きい範囲、
かつ歪補償構造を形成しており、さらに
前記受光層が受光感度を有する最長波長が2.4μm以上であることを特徴とする、半導体素子。 - 前記GaAsSb層のSb組成xと、前記InGaAs層のIn組成y(atm.%)とが、100≦x+y≦104、を満たす配分となっていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体素子。
- 前記多重量子井戸構造の上にInPコンタクト層を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体素子。
- 前記多重量子井戸構造の前記InGaAs層の格子不整合度をΔω1とし、前記GaAsSb層の格子不整合度をΔω2とするとき、多重量子井戸構造全体の格子不整合度Δω={Σ(Δω1×InGaAs層の厚み+Δω2×GaAsSb層の厚み}/{Σ(GaAsSb層の厚み+GaAsSb層の厚み)}で定義されるΔωが−0.2%以上かつ0.2%以下を満たすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体素子。
- 前記受光層の底面と、該受光層および前記InPコンタクト層を含む半導体層の上面との間に、再成長界面を持たないことを特徴とする、請求項3または4に記載の半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子を受光素子に用いたことを特徴とする、光学センサ装置。
- InP基板上に形成された半導体素子の製造方法であって、
前記InP基板の上に、タイプ2の多重量子井戸構造の受光層を形成する工程を備え、
前記多重量子井戸はGaAs1−xSbx(以下、GaAsSb)層と、InyGa1−yAs(以下、InGaAs)層とにより構成されており、
前記多重量子井戸構造の形成工程では、前記GaAsSb層のSb組成x(atm.%)と該GaAsSb層の膜厚zとを、つぎの(イ)〜(ニ)のすべてを満たすものとし、
(イ)膜厚zが10nm未満(44atm.%<組成x<54atm.%)、
(ロ)組成xが44atm.%以上(7nm≦膜厚z<10nm)、
(ハ)組成xが54atm.%未満(3nm<膜厚z<10nm)、
(ニ)膜厚zが、(組成x=44,膜厚z=7)と(組成x=54,膜厚z=3)とを結ぶ線分z=−0.4x+24.6(B線)より大きい範囲、
かつ歪補償構造を形成しており、さらに
前記受光層が受光感度を有する最長波長を2.4μm以上とすることを特徴とする、半導体素子の製造方法。 - 前記GaAsSb層のSb組成x、および前記InGaAs層のIn組成y(atm.%)について、前記Sb組成xの1atm.%の増大分につき前記In組成yを0.9倍〜1.2倍の割合で低下させるように成長させることを特徴とする、請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
- 前記多重量子井戸構造の形成工程では、温度400℃以上かつ560℃以下で、前記多重量子井戸構造を形成することを特徴とする、請求項7または8に記載の半導体素子の製造方法。
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