本明細書に記載されるのは、内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴又は聴力低下を処置又は改善するための制御放出組成物である。1つの実施形態において、制御放出組成物は、耳感覚細胞、(例えば、耳のニューロン及び/又は有毛細胞)の成長及び/又は再生の少なくとも1のモジュレータ、制御放出型の耳に許容可能な賦形剤、耳に許容可能なビヒクルの治療上有効な量を備える。1つの実施形態において、制御放出組成物は、耳感覚細胞の障害の少なくとも1のモジュレータ、制御放出型の耳に許容可能な賦形剤、耳に許容可能なビヒクルの治療上有効な量を備える。1つの実施形態において、制御放出組成物は、耳のニューロン及び/又は有毛細胞を損傷又は減少から保護する、又は耳感覚細胞への損傷の反転又は遅延から保護する少なくとも1の剤、制御放出型の耳に許容可能な賦形剤、耳に許容可能なビヒクルの治療上有効な量を備える。
さらに本明細書に開示されるのは、耳及び/又は前庭障害は、耳毒性、興奮毒性、感音性聴力損失、騒音誘導性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼーハント症候群、前庭ニューロン炎、耳鳴または微小血管の圧迫症候群を処置するための、制御放出型の耳感覚細胞調節剤の組成物及び製剤である。
わずかな治療生成物は、耳毒性、興奮毒性、感音性聴力損失、騒音誘導性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼーハント症候群、前庭ニューロン炎、耳鳴または微小血管の圧迫症候群の処置に利用可能である。しかしながら、経口経路、静脈内の経路または筋肉内の経路経由の全身性の経路が、これらの治療薬を送達するために現在使用される。
薬物の全身投与は、血清中の循環濃度は高くなるが、標的である内耳における臓器構造では濃度が低くなり、薬物濃度が潜在的に不十分であるという問題を生じることがある。結果として、十分に治療上有効な量を内耳に送達するために、かなり大量の薬物が、この不均等さを克服するに必要となる。さらに、生物学的利用能は、しばしば肝臓による薬物の代謝により減少する。加えて、薬物の全身投与は、標的部位に十分に局所送達させるのに必要な血清濃度が高い結果、全身毒性および有害な副作用の可能性が増す場合もある。全身毒性は、また、肝臓の破壊および治療薬剤の処理の結果生じ、投与された治療薬によって得られる任意の利益を事実上打ち消してしまう毒性代謝物を形成する場合もある(例えば、カルバマゼピンの代謝は、いくつかの患者において、肝損傷及び死をもたらし得る)。
耳感覚細胞調節剤(これらは細胞に対しては有毒であると理解されている)の全身送達の有毒且つ付随の望ましくない副作用を克服するために、本明細書に記載されるのは、耳感覚細胞調節剤の中耳及び/又は内耳構造に対する局所送達のための方法及び組成物である。例えば、前庭と蝸牛の器官へのアクセスは、正円窓膜、卵円窓/あぶみ骨底板と、輪状靱帯を含んでいる中耳又は内耳を通じて、及び、耳のカプセル/側頭骨を通じて、生じる。さらなる実施形態または代替的な実施形態では、耳用制御放出製剤は、鼓室内注射を介して、正円窓膜または正円窓膜周囲に投与可能である。他の実施形態では、耳用制御放出製剤は、耳介後部の切開部を介して入れることで、正円窓または蝸牛窓稜に、またはこれらの周囲に投与され、正円窓または蝸牛窓稜の区域、またはこれらの周囲に外科的処置を施すことによって投与される。または、耳用制御放出製剤は、シリンジおよび注射針によって適用し、注射針を鼓膜に挿入し、正円窓または蝸牛窓稜の区域に導く。
加えて、内耳の局所的な処置は、pK特性が不十分であり、吸収率が悪く、全身放出性が低く、および/または毒性の問題がある薬剤を含む、以前の望ましくない治療薬剤の使用も可能にする。
耳感覚細胞調節剤製剤および組成物の局所標的化のため、また、内耳において生体の血液関門の存在のため、以前には、毒性があるか、または有効ではないという特徴のある耳感覚細胞調節剤で処置した結果生じる副作用の危険性が減るであろう。したがって、また、本明細書の実施形態の範囲内で考慮することは、耳毒性、興奮毒性、感音性聴力損失、騒音誘導性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼーハント症候群、前庭ニューロン炎、耳鳴および微小血管の圧迫症候群の処置における耳感覚細胞調節剤の使用であり、該耳感覚細胞調節剤は、耳感覚細胞調節剤の副作用又は無効性のために開業医により以前拒絶された治療薬剤を含む。
また、本明細書に開示された実施形態に含まれるのは、本明細書に開示された耳感覚細胞調節剤製剤および組成物およびと組み合わされた、さらなる中耳及び/又は内耳の許容可能な薬剤の使用である。このような薬剤を使用する場合、このような薬剤は、めまい、耳鳴り、難聴、平衡障害、感染、炎症反応またはこれらの組み合わせを含む自己免疫障害を原因とする難聴または平衡感覚の欠落、または聴覚または平衡感覚の機能不全の処置に役立つ。したがって、回転性目まい、耳鳴、難聴、平衡障害、感染、炎症反応またはその組み合わせの影響を改善させる又は減少させる薬剤も、本明細書に記載されている耳感覚細胞調節剤と組合わせて使用されることが考慮される。
いくつかの実施形態において、組成物は、さらに、即時放出剤として耳感覚細胞調節剤を備え、即時放出の耳感覚細胞調節剤は、制御放出剤と同一の薬剤、異なる耳感覚細胞調節剤、追加的治療薬剤又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、組成物は追加的治療薬剤を備える。いくつかの実施形態において、追加的治療薬剤は、麻酔剤、局所作用麻酔剤、鎮痛剤、抗生物質、制吐剤、抗真菌剤、抗微生物剤、防腐剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、利尿剤、角質溶解剤、耳保護剤、限定することではないがカルシニューリンインヒビタ(シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス)といった薬剤を含む免疫抑制剤、ラパマイシンなどのマクロライド、コルチコステロイド又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、さらなる治療薬剤は、即時放出薬剤である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬剤は、制御放出剤である。
したがって、本明細書に提供されるのは、中耳及び/又は内耳の構造を局所的に処置するための制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤及び組成物であり、これにより、耳感覚細胞調節剤の全身投与の結果生じる副作用を避ける。局所的に適用される耳感覚細胞調節剤製剤および組成物は、中耳及び/又は内耳の構造に適合するものであり、所望の中耳及び/又は内耳の構造、例えば、蝸牛領域、または鼓室腔のいずれかに直接投与するか、または、内耳領域(限定されないが、正円窓膜、蝸牛窓稜または正円窓膜が挙げられる)に直接つながっている構造に投与する。中耳又は内耳の構造を特異的に標的とすることによって、内耳構造、全身的な処置の結果の副作用が避けられる。さらに、制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤または組成物を提供することで、耳の疾患を処置することにより、耳感覚細胞調節剤の一定の、および/または広範囲の供給源が、耳の障害を患う個体または患者に対して提供され、処置の変動が減少するか、またはなくなる。
治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。この技術(Schuknecht、Laryngroscope(1956)66、859-870)を備えた初期の成功にかかわらず、いくつかの課題が残る。例えば、正円窓膜、すなわち内耳への薬物吸収の部位へのアクセスは問題が多い。
しかし、鼓室内への注射は、現在利用可能な処置レジメンでは対処できない、幾つかの認識されていない問題、外リンパ、内リンパのモル浸透圧濃度とpHとの変更、内耳構造に直接又は間接的に損傷を与える病原体、内毒素の導入、等の問題を生成する。当該技術分野ではこれらの問題を認識していない1つの理由は、認められた鼓室内の組成物が1つも存在していない、ということである。内耳は、独特な製剤の問題を呈する。故に、体の他の部分のために開発された組成物は、鼓室内の組成物にほとんど全く適切でない。
ヒトへの投与に適切な、耳用製剤に対する要求(例えば、無菌性レベル、pH、容量オスモル濃度)を考慮している、従来技術のガイダンスは無い。複数の種にわたる、動物の耳の間の、広範な解剖学的な差異が存在する。聴覚の構造体における内部空間の違いの結果、内耳疾患を伴う動物モデルは、臨床承認用に開発された、治療法をテストするためのツールとして、しばしば信頼できない。
本明細書に与えられているものは、pH、容量オスモル濃度、イオンバランス、無菌性、組成物、内毒素、及び/又は、発熱性の厳しい基準を満たす耳製剤である。本明細書に記載の耳の組成物は、内耳の微小環境(例えば、外リンパ)に適合し、ヒトへの投与に適切である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の製剤は、染まり、鼓室内処置の前臨床、及び/又は、臨床開発中に、侵襲的手法(例えば、外リンパの除去)の必要を未然に防ぐ投与組成物の可視化を助ける。
本明細書に提供されるのは、標的の耳構造を局所的に処置するために制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤及び組成物であり、これにより、耳感覚細胞調節剤製剤及び組成物の全身投与の結果生じる副作用を避ける。局所的に適用される耳感覚細胞調節剤製剤および組成物およびデバイスは、標的とする耳の構造と適合するものであり、所望の標的とする耳の構造、例えば、蝸牛領域、鼓室または外耳のいずれかに直接投与するか、または、内耳領域(限定されないが、正円窓膜、蝸牛窓稜または正円窓膜が挙げられる)に直接つながっている構造に投与される。耳の構造体を特異的に標的とすることによって、全身的な処置の結果生じる有害な副作用が避けられる。さらに、臨床研究から、蝸牛の外リンパに薬物を長時間曝露することの利益、例えば、治療薬剤を何度も与える場合に、突発性難聴の臨床上の有効性を高めることが示された。したがって、制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤または組成物を提供することで、耳の疾患を処置することにより、耳感覚細胞調節剤の一定の、および/または広範囲の供給源が、耳の障害を患う個体または患者に対して提供され、処置の変動が減少するか、またはなくなる。したがって、本明細書に開示する1つの実施形態は、少なくとも1つの薬剤を連続的に放出するように、様々な速度または一定速度で、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤を治療に有効な用量で放出させることが可能な組成物を与えることである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示する耳感覚細胞調節剤は、即効型の製剤または組成物として投与される。他の実施形態において、耳感覚細胞調節剤は、連続的に、または可変的にまたはパルス様式で、またはこれらの変形で放出され、徐放性製剤として投与される。さらに他の実施形態において、耳感覚細胞調節剤製剤は、連続的に、または可変的にまたはパルス様式、またはこれらの変形で放出され、即効型製剤および徐放性製剤として投与される。この放出は、任意に、環境的な条件または生理学的な条件、例えば、外部のイオン環境に依存する(例えば、Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnsonを参照)。
それに加え、本明細書に記載された耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤および処置は、処置の必要な個体の標的の耳領域(内耳を含む)に提供され、処置の必要な個体はさらに経口用量の耳感覚細胞調節剤が投与される。いくつかの実施形態において、経口用量の耳感覚細胞調節剤は、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤の投与前に投与され、次いで、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤が提供される時間中、経口用量は徐々に減らされる。代替的に、経口用量の耳感覚細胞調節剤は、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤の投与の間に投与され、次いで、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤が提供される時間中、経口用量は徐々に減らされる。または、経口用量の耳感覚細胞調節剤は、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤の投与が開始された後に投与され、次いで、耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤製剤が提供される時間中、経口用量は徐々に減らされる。
それに加え、本明細書に含まれる耳感覚細胞調節剤医薬組成物または製剤またはデバイスは、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤も含む。このような担体、アジュバント、および他の賦形剤は、標的とする耳の構造体(複数)中の環境に適合するであろう。したがって、本明細書で想定される耳の疾患を効果的に処置し、標的とする領域または区域での副作用を最小限にすることを可能にするために、耳毒性をなくすか、または耳毒性が最小限の担体、アジュバントおよび賦形剤が特に想定される。耳毒性を防ぐために、本明細書に開示される耳感覚細胞調節剤医薬組成物または製剤またはデバイスは、場合により、標的とする耳の構造の別個の領域を標的とする。この別個の領域は、限定されないが、鼓室、前庭骨および前庭膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、内耳の中に位置する他の解剖学的構造または生理学的構造を含む。
特定の定義
用語「耳に許容可能な」は、製剤、組成物成分に関し、本明細書で使用される場合、処置される被検体の内耳(またはinner ear)に対する有害な影響が持続しないことを含む。「医薬的に耳に許容可能な」とは、本明細書で使用される場合、内耳(又はinner ear)に関連して、化合物の生体活性または性質を無効化せず、内耳(又はinner ear)に対する毒性を相対的に減少させる又は減少させる担体または希釈剤のような物質を指す。すなわち、望ましくない生物学的効果を生じないか、またはこの物質が含まれる組成物のいずれかの成分と有害に相互作用しないように、この物質を個体に投与する。
本明細書で使用される場合、特定の化合物または医薬組成物を投与することによって、特定の耳の疾患、障害または疾病の症状を改善すること、または減らすことは、永久的であれ一時的であれ、上記の化合物または組成物の投与に起因して、または上記の化合物または組成物の投与に関連して、重篤度を下げること、発症を遅らせること、進行を遅らせること、または持続時間を短くすること、を表す。
「酸化防止剤」は、医薬的に耳に許容可能な酸化防止剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、トコフェロールを含む。特定の実施形態において、酸化防止剤は、必要な場合、化学安定性を高める。また、酸化防止剤は、本明細書に開示される耳感覚細胞調節剤と組み合わせて使用する薬剤を含む特定の治療薬の耳毒性の影響を中和するために、使用される。
「内耳(auris interna)」は、蝸牛および前庭の迷路、および蝸牛を中耳と接続する正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
「内耳のバイオアベイラビリティ」は、本明細書に開示する化合物の投与された用量が、試験される動物又はヒトの内耳で利用可能になるものの、割合を指す。
「中耳(auris media)」は、鼓室、耳小骨、および中耳を内耳と接続する卵円窓を含む、中耳(middle ear)を指す。
「平衡障害」は、めまいを感じたり、動いているような感覚を有するような状態を引き起こす疾患、病気、又は、疾病を指す。この定義には、めまい、回転性めまい、不均衡、失神性めまいが、含まれているが、これに限定されない。疾患は、ラムゼイ・ハント症候群メニエール症候群、mal de debarquement、良性発作性頭位めまい症、迷路炎を含む平衡疾患に、分類されるが、これに限定されない。
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
「担体物質」は、耳感覚細胞調節剤製剤と、内耳と、耳に許容可能な医薬製剤の放出特性に、適合する賦形剤である。このような担体物質は、例えば、バインダー、懸濁液、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。
「薬学的に耳に適合する担体物質」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロース接合体、ショ糖ナトリウムステアロイル乳酸、カラゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化でんぷんなどを含むが、これらに限定されない。
用語「希釈剤」は、送達前に耳感覚細胞調節剤を希釈するのに用いられる化学化合物を指し、該化合物は、内耳に適合させるために使用する化学化合物を指す。
「分散剤」および/または「粘度調節剤」は、液体媒体を通る耳感覚細胞調節剤の拡散性および均質性を制御する物質である。拡散ファシリテーター/分散剤の例は限定されないが、親水性ポリマー、電解液、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP、商用では、Plasdone(登録商標)として知られている)、及び炭水化物ベースの分散剤を含み、該炭水化物ベースの分散剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばHPC、HPC-SLおよびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばHPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15MおよびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸塩ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸塩ステアリン酸塩(HPMCAS)、非晶質のセルロース、 ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒド(チロキサポールとしても知られている)、ポロクサマー(例えばPluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)であり、これらはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー)、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても知られていて、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのエチレンジアミンに対する連続追加に由来する四官能性ブロックコポリマーである(BASF Corporation, Parsippany, N.J.))、ポリビニルピロリドン K12、ポリビニルピロリドン K17、ポリビニルピロリドン K25又はポリビニルピロリドン K30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300まで約6000まで、約3350から約4000まで、約7000から約5400の分子量を有している)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ゴム(例えば、トラガカントゴム及びアラビアゴム)、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、砂糖、セルロース化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウラートポリエトキシレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサンおよびその組み合わせである。セルロースまたはトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示される耳感覚調節剤のリポソーム分散物と自己乳化性分散に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、ミリスチン酸イソプロピルである。
「薬物吸収」または「吸収」は、耳感覚細胞調節剤が、投与した局所的な部位、例えばほんの一例として、内耳の正円窓膜から、障壁(以下に示すような正円窓膜)を通り、内耳(auris internaまたはinner ear)構造へと移動するプロセスを指す。
用語「同時投与」などは、本明細書に使用されているように、一人の患者に対してされた耳感覚細胞調節剤の投与を包含することを意味し、同じ又は異なる投与経路、もしくは同じ又は異なる時間により耳感覚細胞調節剤が投与される処置レジメンを含むことが意図されている。
「有効な量」又は「治療に有効な量」の用語は、本明細書で使用される場合、処置されるべき対象の1以上の疾患又は疾病を、ある程度まで緩和すると予想されるのに十分な、投与される耳感覚細胞調節剤の量を指す。例えば、本明細書に開示された耳感覚細胞調節剤の投与の結果、耳鳴り又は平衡障害の徴候、症状または原因を減少する、及び/又は軽減する。例えば、治療に用いられる「有効な量」は、耳感覚細胞調節剤の量であり、該調節剤は、過度の副作用を伴わずに、疾患症状の減少又は改善を提供するのに要求される、本明細書開示の製剤を含む。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示の耳用組成物のニューロン及び/又は有毛細胞のモジュレータの「有効な量」は、過度の副作用を伴うことなく、所望の薬理学的効果又は治療の向上を達成するための有効な量である。「有効な量」または「治療上有効な量」は、いくつかの実施形態において、投与される化合物の代謝、被験体の年齢、体重、全体的な状態、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、主治医の判断がばらつくことによって、被験体ごとに変わることが理解される。また、薬物動態および薬理学を考慮して、持続放出の投薬形式における「有効な量」が、即時放出の投薬形式における「有効な量」とは異なり得ることも理解される。
用語「高める」または「高めること」は、耳感覚細胞調節剤の望ましい効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くすること、または治療薬剤の投与の結果の任意の有害な症状を減らすことを指す。したがって、本明細書に開示する耳感覚細胞調節剤の効果を高めることに関し、用語「高めること」は、本明細書に開示される耳感覚細胞調節剤と組み合わせて使用する他の治療薬剤の効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くする能力を指す。「高めるのに有効な量」は、本明細書で使用される場合、所望の系で標的の耳構造の、別の治療薬剤又は耳感覚細胞調節剤の効果を高めるのに十分な、耳感覚細胞調節剤又は他の治療薬剤の量を指す。患者に用いる場合、この用途にとって有効な量は、疾患、障害または疾病の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、処置する医師の判断によって変わるであろう。
用語「阻害すること(inhibiting)」は、症状、例えば、処置を必要とする患者の症状が進むのを予防するか、遅らせるか、または逆行させることを指す。
用語「キット」及び「製品」は、同義語として用いられる。
「薬理学」は、中耳及び/又は内耳内の所望部位で薬物の濃度に関して、観察される生体応答を決定する因子を指す。
「薬物動態」は、中耳及び/又は内耳内の所望部位で、適切な薬物濃度の獲得および維持を決定する因子を指す。
「耳の神経細胞及び/又は有毛細胞のモジュレータ」と「耳の感覚細胞調節剤」とは、同義語である。
それらは、耳の神経細胞及び/又は有毛細胞の成長及び又は再生を促進する薬剤と、耳の神経細胞及び/又は有毛細胞を破壊する薬剤と、を含んでいる。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤は、耳の耳感覚細胞(例えば、ニューロン及び/又は、有毛細胞)の成長及び/又は再生の促進により、治療効果(例えば難聴の緩和)を提供する。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤(例えば毒性物質)は、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞)の破壊または損傷により、治療効果(例えば回転性目まいの緩和)を提供する。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤は、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞の機能障害)への損傷を処置する及び/又は反転することで、あるいは、耳感覚細胞(例えば耳保護剤の影響または栄養作用を及ぼすことによる)へのさらなる損傷(例えば細胞死)を減少するか、遅らせることで、治療効果(例えば音響外傷による耳鳴の緩和)を提供する。
用語「栄養剤」は、耳感覚細胞(例えば、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞)の生存、成長及び/又は再生を促進する剤を意味する。いくつかの実施形態において、栄養剤は、耳感覚細胞の酸化的障害及び/又は骨壊死及び/又は悪化を少なくするか抑制する。いくつかの実施形態において、栄養剤は正常耳感覚細胞(例えば医療デバイスの外科的埋込の後)を維持する。いくつかの実施形態において、栄養剤は、抗酸化酵素(例えば耳毒性剤の投与中)の活性を上方制御する。いくつかの実施形態において、栄養剤は免疫抑制剤(例えば耳の手術中に使用される免疫抑制剤)である。いくつかの実施形態において、栄養剤は、成長因子(例えば耳細胞の成長を促進するために移植方法の後に使用される成長因子)である。
用語「グルタミン酸受容体アンタゴニスト」は、グルタミン酸受容体の活性を干渉するか抑制する化合物を意味する。いくつかの実施形態において、受容体は、AMPA受容体、またはNMDA受容体である。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストはグルタミン酸受容体に結合する。しかし、前記結束は生理反応を生産しない。
グルタミン酸受容体アンタゴニストは部分的アゴニスト、逆アゴニスト、中性または競合的アンタゴニスト、非競合的アンタゴニスト、アロステリックアンタゴニスト、及び/又はオルソステリックアンタゴニストを含む。
用語「グルタミン酸受容体アゴニスト」は、グルタミン酸受容体に結合し、受容体を活性化する化合物を意味する。用語は、ネイティブリガンドの結合を促進する化合物をさらに含んでいる。いくつかの実施形態において、受容体は、mGlu受容体である。
グルタミン酸受容体アゴニストは部分的アンタゴニスト、アロステリックアゴニスト、及び/又はオルソステリックアゴニストを含む。
予防上の適用において、本明細書中に記載されている耳感覚細胞調節剤を含む組成物は、特定の疾患、障害、もしくは疾病の影響を受け易く、またはその危険に曝されている患者に投与される。例えば、このような疾病は、限定することではないが、耳毒性、興奮毒性、感音性聴力損失、騒音誘導性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼーハント症候群、前庭ニューロン炎、耳鳴または微小血管の圧迫症候群を含む。このような量は、「予防に有効な量または用量」と定義される。このような使用において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などにも左右される。
本明細書で使用される場合、「医薬デバイス」は、耳に投与する際に、本明細書に記載した活性薬剤を持続放出するための容器を提供する、本明細書に記載した任意の組成物を含む。
本明細書で使用される場合、用語「実質的に低分解生成物」は、活性5重量%未満の薬剤が、活性薬剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性薬剤の分解生成物であることを意味する。また更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の2重量%未満が、活性薬剤の分解生成物であることを意味する。さらなる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の1重量%未満が、活性薬剤の分解生成物であることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤の中にある任意の個々の不純物(例えば金属不純物、活性薬剤及び/又は賦形剤などの分解生成物)は、活性薬剤の5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満である。さらに、製剤は、生産と貯蔵の後に、沈殿したり、または変色したりしてはならない。
本明細書で用いられる場合、「基本的に微粉にされたパウダーの形態で」は、ほんの一例として、活性薬剤の70重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを含む。さらなる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の80重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを意味する。また更なる実施形態において、活性薬剤の90重量%より多くが、活性薬剤の微粉にされた粒子状物質の形態であることを意味する。
用語「耳介入処置」は、1以上の耳構造に対する外部損傷か外傷を意味し、移植、耳の手術、注射、カニューレ挿入などを意味する。移植は、内耳又は中耳医療デバイスを含み、これらの例は、蝸牛移植、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短電極、ミクロの人工補綴またはピストン様人工補綴、針、幹細胞移植、薬物送達デバイス、任意の細胞ベースの治療を含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術(鼓室穿孔術)、鼓室階切開(cochleostomy)、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術(mastoidectomy)、アブミ骨切除手術、アブミ骨摘除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)などを含む。注射は、中耳内の注射、蝸牛内の注射、正円窓膜を隔てた注射などを含む。カニューレ挿入は、中耳内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、前庭のカニューレ挿入などを含む。
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと変換される耳感覚細胞調節剤を表す。特定の実施形態において、プロドラッグは、1以上の工程またはプロセスによって、化合物の、生物学的、薬学的または治療的に活性な形態へと酵素によって代謝される。薬学的に活性な化合物は、プロドラッグを製造するために、インビボ投与すると活性化合物が再生されるように、修飾される。1つの実施形態において、プロドラッグは、薬物の代謝安定性または移動特性を変え、副作用または毒性を消し、または薬物の他の特性または性質を変えるように設計される。本明細書に提供される化合物は、いくつかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
「可溶化剤」は、耳に許容可能な化合物を指す。前記化合物は、本明細書に開示される耳感覚細胞調節剤の溶解性を補助又は増加させる、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200乃至600、グリコフロール、トランスキトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド等である。
「安定化剤」は、内耳の環境と適合する、任意の酸化防止剤、緩衝液、酸、防腐剤などのような内耳の環境と適合する化合物を指す。安定化剤としては、限定されないが、(1)賦形剤と、容器または送達系(シリンジまたはガラス瓶を含む)との適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかの薬剤が挙げられる。
本明細書で使用される「定常状態」は、内耳に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔の間に排除される薬物の量と等しい場合、または、標的とする構造内での薬物曝露濃度が一定レベルになる場合である。
本明細書で使用されるように、用語「被検体」は、動物、好ましくは、ヒトまたは非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。患者、被検者という用語は交換できて使用されてもよい。
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクセート、Tween(登録商標)60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロクサマー(polaxomer)、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、例えば、プルロニック登録商標)(BASFなどのような、耳に許容可能な化合物を指す。
いくつかの他の界面活性剤は、例えばポリオキシエチレン(60)、水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油、及び、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40のポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテルである。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために含まれる。
本明細書に使用される用語「処置する」、「処置すること」又は「処置」は、疾患または疾病、例えば耳鳴症状を軽減し、弱めるか、または改善すること、さらなる症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善するか、または予防すること、疾患または疾病を阻害すること、例えば、疾患または疾病の進行を止めること、疾患または疾病を緩和すること、疾患または疾病を後退させること、疾患または疾病によって生じる状態を緩和すること、または、疾患または疾病の症状を予防的及び/又は治療的のいずれかで止めることを含む。
本明細書に記載の方法と組成物の、他の目的、特徴、利点は、後述する詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、発明の詳細な説明と特定の実例とは、特定の実施形態を示すものであるが、説明のためだけに与えられたものである。
耳の解剖学
図4に示すように、外耳は、この器官の外側部分であり、耳介(pinna、auricle)と、耳道(外耳道)と、鼓膜(tympanic menbrane、ear drumとしても知られている)の外側に面する部分から成る。頭部の側面に見える外耳の肉質部分である耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。従って、外耳の機能は、一部には、音波を集め、鼓膜および中耳に向かわせることである。
中耳は、空気で満たされた空洞であり、鼓室と呼ばれ、鼓膜の背後にある。鼓膜(tympanic membrane、ear drumとしても知られている)は、外耳を中耳から分ける薄い膜である。中耳は、側頭骨の中に位置しており、この空間の中に、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳骨(耳小骨)を含む。耳小骨は、小さな靱帯によってともに結合しており、鼓室の空間を横切って架橋を形成している。ツチ骨は、一端で鼓膜に結合しており、他端でキヌタ骨に結合しており、次いで、アブミ骨に結合している。アブミ骨は、卵円窓に結合しており、2つの卵円窓の1つは、鼓室内に位置している。輪状靱帯として知られる線維組織層は、アブミ骨を卵円窓に接続している。外耳からの音波は、まず、鼓膜を振動させる。この振動が、耳小骨および卵円窓を通って蝸牛に伝わり、内耳における液体にこの動きが伝わる。従って、耳小骨は、鼓膜と、流体に満たされた内耳の卵円窓の間を機械的に結合するように配置されており、さらなる処理のために、音が内耳に伝えられ、変換される。耳小骨、鼓膜または卵円窓が硬化、硬直、または動きができなくなると、難聴、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直を引き起こす。
また、鼓室は、耳管を経て、咽喉にも繋がっている。耳管は、外気と中耳の空洞の間の圧力を等しくする能力を付与している。正円窓は、内耳の要素であるが、鼓室内にもつながっており、内耳の蝸牛に向かって開口している。正円窓は正円窓膜によってカバーされ、該膜は、外部または粘液層、中間層または線維層、および内膜(それは蝸牛の流体と直接繋がっている)3層から成る。従って、正円窓は、内側の膜を介して、内耳と直接繋がっている。
卵円窓および正円窓での動きは、相互連絡されており、すなわち、アブミ骨の骨が、鼓膜から正円窓へとこの動きを伝えることで、内耳の流体に対して内側に動くにつれて、正円窓(または、正円窓膜)が、対応するように押し出され、蝸牛の流体から離れる。正円窓のこの動きによって、蝸牛内の流体が動き、次いで、蝸牛の内側の有毛細胞が動き、聴覚信号が伝達される。正円窓膜における硬化、硬直は、蝸牛の流体が移動できなくなるため、難聴を引き起こす。近年の研究は、卵円窓を通る正常な伝導経路を迂回させ、増幅された入力を蝸牛室に提供する、正円窓に医療用変換器を移植することに注目が集まっている。
聴覚信号の変換は、内耳で起こる。流体で満たされた内耳(auris internaまたはinner ear)は、蝸牛器および前庭器の2つの主要な要素からなる。内耳は、部分的に、頭蓋骨の側頭骨にある入り組んだ一連の経路である骨迷路(osseous labyrinthまたはbony labyrinth)内に位置している。前庭器官は、平衡感覚の器官であり、3つの半円状の管と、前庭とからなっている。この3つの半円状の管は、空間の3つの直交面に沿った頭部の動きを、流体の動きと、次いで、膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚器官による信号処理とによって検出することができるように、互いに相関的に配列されている。膨大部稜は、有毛細胞と支持細胞とを備えており、クプラと呼ばれる半円型のゼラチン状の塊によって覆われている。有毛細胞の毛は、クプラに包埋されている。半円状の管は、動的平衡、回転または角運動の平衡状態を検出する。
頭部を迅速に回転させると、半円状の管は、頭部とともに動くが、膜状の半円状の管の中にある内リンパ液は、動かないままである傾向がある。内リンパ液は、クプラに逆らって押し出され、片側に傾く。クプラが傾くと、クプラが、膨大部稜の有毛細胞のいくつかの毛を曲げ、これが、知覚インパルスの引き金となる。それぞれの半円状の管は、異なる面に位置しているため、それぞれの半円状の管に対応する膨大部稜は、頭部の同じ動きに対して異なる応答をする。これにより、インパルスの寄せ集めが作られ、これが、内耳神経の前庭枝にある中枢神経系に伝わる。中枢神経系は、この情報を解釈し、平衡を維持するのに適切な反応を開始する。中枢神経系の中で重要なのは、小脳であり、平衡および均衡の感覚を媒介する。
前庭は、内耳の中心部分であり、静的平衡または重力に対する頭部の位置を確認する、有毛細胞を有する機械受容器を備えている。静的平衡は、頭部が動いていないか、または直線状に動いているときに役割をはたす。前庭内の膜状迷路は、卵形嚢および球形嚢の2つの嚢状の構造体に分かれる。それぞれの構造体は、同様に、嚢斑と呼ばれる小さな構造体を含み、これは、静的平衡の維持に関与している。嚢斑は、感覚有毛細胞からなり、感覚有毛細胞は、嚢斑を覆うゼラチン状の塊(クプラと似たもの)に包埋されている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層表面に埋め込まれている。
頭部が直立位置にある場合、毛は、斑に沿ってまっすぐになっている。頭部が傾くと、ゼラチン状の塊および耳石が、これに対応して傾き、斑の有毛細胞のいくつかの毛が曲がる。この曲げ動作によって、中枢神経系に対して信号インパルスが開始され、これが、内耳神経の前庭枝を介して伝わり、平衡を維持するために、適切な筋肉に対し運動インパルスを順に中継する。
蝸牛は、聴覚に関連する、内耳の部分である。蝸牛は、先が細くなった管状の構造であり、カタツムリに似た形状に巻かれている。蝸牛の内側は、3つの領域に分かれており、卵円膜および基底膜の位置によってさらに規定されている。卵円膜の上の位置は、前庭階であり、卵円窓から蝸牛頂部に延びており、カリウム濃度が低く、ナトリウム濃度が高い水溶液である外リンパ液を含有する。基底膜は、鼓室階の領域を規定しており、蝸牛頂部から正円窓に延びており、これも外リンパを含有している。基底膜は、数千の硬い繊維を含有しており、この繊維は、正円窓から蝸牛頂部に向かって、徐々に長くなっている。基底膜の線維は、音によって活性化されると、振動する。前庭階と鼓室階との間に蝸牛管があり、この蝸牛管は、蝸牛頂部で、閉じた嚢として終わる。蝸牛管は、内リンパ液を含有しており、この内リンパ液は、脳脊髄液と似ており、カリウムが多い。
聴覚器官であるコルチ器官は、基底膜上にあり、蝸牛管の方へ上方に向かって延びている。コルチ器官は、有毛細胞を含有しており、この有毛細胞は、自由表面から延びる毛状突起を有しており、蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞には軸索が存在しないが、内耳神経の蝸牛枝を形成する感覚神経線維に囲まれている(脳神経VIII)。
上記のように、楕円形の窓としても知られる卵円窓は、アブミ骨と連絡しており、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパおよび前庭階/鼓室階を経て、流体で満たされた蝸牛の内圧を高め、次いで、正円窓膜が応答して膨らむ。
卵円窓の内側が加圧されること/正円窓が外側に膨らむことが協働することによって、蝸牛の内圧が変わることなく、蝸牛内の流体を動かすことができる。しかし、振動が、外リンパを介して前庭階内に伝わると、卵円膜内で対応する振幅が作られる。これらの対応する振幅は、蝸牛管の内リンパを介して伝わり、基底膜へと伝わる。基底膜が振幅するか、または上下に動くと、コルチ器官が、それに伴って動く。次いで、コルチ器官の有毛細胞受容体が、蓋膜に逆らって動き、蓋膜で機械的な変形が起こる。この機械的な変形によって、神経インパルスが開始し、内耳神経を経て中枢神経系に伝わり、受け取った音波は、後で中枢神経系によって処理されるシグナルへと機械的に変換される。
耳の障害は、限定されないが、難聴、眼振、回転性目まい、耳鳴、炎症、感染およびうっ血を含む症状をもたらす。本明細書に開示される組成物で処置される耳の障害は、多数であり、耳毒性、興奮毒性、感音性聴力損失、騒音誘導性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼーハント症候群、前庭ニューロン炎、耳鳴及び微小血管の圧迫症候群を含む。
興奮毒性
興奮毒性は、グルタミン酸及び/又は同様の物質による、神経及び/又は有毛細胞の死、又は、損傷を指す。
グルタミン酸は、中枢神経系で最も大量にある興奮性の神経伝達物質である。シナプス前細胞は、刺激に対してグルタミン酸を放出する。グルタミン酸は、シナプスを横切ってめぐり、シナプス後細胞に位置する受容体に結合し、これらの神経細胞を活性化させる。グルタミン酸受容体は、NMDA、AMPAおよびカイニン酸受容体を含んでいる。グルタミン酸輸送体は、シナプスから細胞外のグルタミン酸を除去する役目を課されている。特定の出来事(例えば、乏血または脳卒中)は、グルタミン酸輸送体を損傷させ得る。これはシナプス内に蓄積する過剰なグルタミン酸を生じさせる。シナプス内の過剰なグルタミン酸は、グルタミン酸受容体の過剰な活性化を結果として生じる。
AMPA受容体は、グルタミン酸とAMPAの双方の結合によって活性化される。AMPA受容体の特定のイソフォームの活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放という結果を生じる。チャンネルが開くと、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
NMDA受容体は、グルタミン酸とNMDAとの双方が結合することによって活性化される。NMDA受容体の活性化は、ニューロンの原形質膜に位置しているイオンチャンネルの開放を結果として生じる。しかし、これらのチャンネルはMg2+イオンによってブロックされる。AMPA受容体の活性化は、イオンチャンネルからシナプスへのMg2+イオンの排出という結果を生じる。イオンチャンネルが開き、イオンチャンネルがMg2+イオンを排出すると、Na+とCa2+イオンがニューロンへと流れ、K+イオンがニューロンの外へと流れる。
興奮毒性は、NMDA受容体とAMPA受容体とが、過剰な量のリガンド、例えば、異常な量のグルタミン酸によって、過剰に活性化されたときに生じる。これらの受容体の過剰な活性化は、それらの制御下でイオンチャンネルの過剰な開放を起こす。このことは、異常に高いレベルのCa2+とNa+とがニューロンに入ることを可能にする。これらのレベルのCa2+とNa+とが神経細胞へと流れ込むことは、より頻繁に神経細胞を興奮させ、細胞内に急激に発達した遊離基と炎症性の化合物とを結果として生じる。遊離基は、結局、細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを損傷する。更に、過剰レベルのCa2+とNa+イオンは、過剰レベルの酵素(ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含むが、これに限定されない)を活性化する。これらの酵素の過剰な活性は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、感覚神経のDNAに損傷を与えるという結果を生じる。
耳鳴
本明細書で使用されているように、「耳鳴」は、任意の外部刺激の不存在下で音の知覚によって特徴付けられた障害を指す。特定の例において、耳鳴は、継続的に、又は、散発的に、一方又は両方の耳で、ほとんどの場合、響き渡る音として記載される。ほとんどの場合、他の疾患の診断症状として用いられる。他覚的耳鳴と自覚的耳鳴といった、2つのタイプの耳鳴がある。前者は誰にでも聞こえる身体において作成された音である。
後者は病気に冒された個人にのみ聞こえる。研究は、5000万以上の米国人がある種の耳鳴を経験していると、見積もっている。これらの5000万の内、約1200万のヒトが、激しい耳鳴を経験している。
耳鳴のいくつかの処置がある。点滴によって投与されるリドカインは、患者の60%乃至80%の耳鳴に関する騒音を減少させる又は削除する。ノルトリプチリン、セルトラリン、パロキセチン等の、選択的な神経伝達物質インヒビタの再取り込みは、また、耳鳴に対する確認された効き目を有している。ベンゾジアゼピンは、また、耳鳴を処置するのに処方される。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤は、耳感覚細胞損傷及び/又は耳鳴に関連付けられた細胞死を減少させる又は抑制させる。
感音難聴は、内耳の内耳神経(第VIII脳神経としても知られている)、又は、感覚細胞内の(先天性、後天性)異常から生じるタイプの難聴である。内耳の主な異常は、耳有毛細胞の異常である。
感音性聴力損失
感音難聴は、内耳の内耳神経(第VIII脳神経としても知られている)、又は、感覚細胞内の(先天性、後天性)異常から生じるタイプの難聴である。内耳の主な異常は、耳有毛細胞の異常である。
蝸牛の形成不全、染色体異常、先天性真珠腫は、感音難聴を結果として生じ得る、先天性異常の例である。ほんの一例として、炎症性疾患(例えば、化膿性内耳炎、鼓膜炎、流行性耳下腺炎、麻疹、ウィルス性梅毒、自己免疫障害)、メニエール病、耳毒性薬物(例えば、アミノグリコシド、ループ利尿薬、抗代謝物、サリチル塩、シスプラチン)に曝すこと、身体外傷、老人性難聴、音響性外傷(90dBを超える音に長時間曝されることによる)は、後天性感音難聴を結果として生じ得るものである。
感音難聴を結果として生じる異常が聴覚路内の異常である場合、該感音難聴は、中枢性難聴と呼ばれる。感音難聴を結果として生じる異常が、聴覚路内の異常である場合、感音軟調は、皮膚性難聴と呼ばれる。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤は、耳感覚細胞の成長を促進する又は感音性聴力損失を減少又は反転させる栄養剤(例えば、BDNF、GDNF)である。
騒音誘導性難聴
騒音誘導性難聴(NIHL)は、長時間のあまりにも大きな声又は大きな音に曝されることによって引き起こされる。85デシベル以上の音に、長時間、又は、繰り返し、又は、突発的に、曝されることは、難聴を引き起こす。難聴は、大きな騒音、例えば、大きな音楽、重機または機械類、飛行機、銃声または他のヒトによる騒音に長時間さらされることによっても生じる場合がある。NIHLは有毛細胞及び/又は聴神経に対する損傷を引き起こす。有毛細胞は、音響エネルギーを電気的信号に変換する小感覚細胞である。突発性の音は、永続の即時難聴を結果としてもたらす。この種の難聴は、時間の経過によって鎮静する、耳又は頭でのリンギング、うなり、または、ごうごうという音といった、耳鳴を伴う。難聴と耳鳴は、一方または両方の耳で経験される。耳鳴は、生涯を通して、継続的に、又は、時々、続く。また、プロセスは突発性の騒音に比べてより穏やかにおきるが、大きな音に継続して曝されることは、有毛細胞の構造に損傷を与え、永続的な難聴と耳鳴を結果としてもたらす。
いくつかの実施形態において、耳保護剤がNIHLを反転する、少なくする又は、改善することができる。NIHLを処置する又は予防する耳保護剤の例は、限定されないが、本明細書に記載されている耳保護剤を含んでいる。
中毒性難聴は、毒素によって引き起こされた難聴を指す。難聴は、耳の有毛細胞、蝸牛への外傷及び/又は、脳神経VIIによるものであってもよい。多剤は耳毒性であると知られている。多くの場合、耳毒性は用量依存性である。それは薬の中止で治らないかもしれないしまたは良くなるかもしれない。
既知の耳毒性薬物は、限定されないが、アミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、またはアミカシン)、マクロライドクラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、エリスロマイシン)、糖タンパク質クラスの抗生物質のいくつかのメンバー(例えば、バンコマイシン)、サリチル酸、ニコチン、いくつかの化学療法剤(例えばアクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチンおよびビンクリスチン)、及びループ利尿薬ファミリー薬物のいくつかのメンバー(例えばフロセミド)、6-ヒドロキシドーパミン(6-OH DPAT)、6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオンなど(DNQX)を含む。
シスプラチンおよびアミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質は、活性酸素種(ROS)の生産を誘導する。ROSは、DNA、ポリペプチド、及び/又は脂質を損傷することにより、細胞を直接損傷する。酸化防止剤が細胞を損傷し得る前に、酸化防止剤が遊離基の形成又は除去を妨げることによって、酸化防止剤は、ROSによる損傷を防ぐ。シスプラチンおよびアミノグリコシド抗生物質クラスの抗生物質の両方も、内耳の血管線条でメラニンを結合することによって耳を損傷すると考えられる。
サリチル酸は、ポリペプチドプレスチン(prestin)の機能を阻害するので、耳毒性と分類される。プレスチン(prestin)は、外部の耳の有毛細胞の原形質膜を横切って塩化物と炭酸塩の交換を制御することによって、外部の耳の有毛細胞運動性を調節する。それは、外部の耳の有毛細胞でのみ見られ、内部の耳の有毛細胞では見られない。したがって、本明細書に開示されるのは、耳保護剤(例えば酸化防止剤)を含む制御放出型の耳用組成物の使用であり、これにより、限定することではないが、シスプラチン処置、アミノグリコシド抗生物質またはサリチル酸又は他の耳毒性薬剤の投与を含む化学療法の耳毒性の影響を防ぐ、改善する、あるいは和らげる。
内リンパ水腫
内リンパ腫とは、内耳の内リンパ系内の水圧が増加するものを指す。内リンパと外リンパとは、複数の神経を含む薄膜によって分離されている。圧力変化は、それらを収容している膜と神経にストレスを与える。圧力が十分に大きい場合、破壊がこれらの膜に生じてもよい。これは、陰極性抑圧を導く液体の混合および機能の一時的損失を結果としてもたらす。前庭神経発火の比率の変化は、しばしば回転性目まいにつながる。さらに、コルチ器官も影響される。基底膜と内外有毛細胞との歪は、難聴及び/又は耳鳴の誘因となる。
原因は、代謝性障害と、ホルモンのアンバランスと、自己免疫疾患と、ウイルス性、細菌性又は菌類による感染症を含む。症状は、難聴、めまい、耳鳴、耳閉塞感を含む。眼振も、現れる。処置は、ベンゾジアゼピン、利尿剤(水圧を下げるもの)、コルチコステロイド、及び/又は、抗菌性、抗ウイルス性、又は、抗菌類性薬剤を含む。
内耳炎
内耳炎は、耳の迷路の炎症であり、該耳の迷路は、内耳の前庭系を含む。原因は、細菌性感染、ウイルス性感染および真菌感染を含む。また、それは頭部外傷またはアレルギーによって引き起こされる。迷路炎の症状は、バランス維持、めまい、回転性目まい、耳鳴および難聴の障害を含む。回復は1〜6週間かかることもある。しかしながら、慢性症状は長年存在することもある。
迷路炎にはいくつかの処置がある。プロクラルペラジンは、制吐剤としてしばしば処方される。セロトニン再摂取インヒビタは内耳内の新しい神経発達を刺激することが示された。さらに、原因が細菌感染である場合、抗生物質を用いた処置は処方される。また、疾病がウイルス感染によって引き起こされる場合、コルチコイドと抗ウイルス剤を用いた処置が推奨される。
メニエール病
メニエール病は、3〜24時間続くめまい、吐き気、嘔吐に突然襲われ、徐々におさまっていくことを特徴とする、特発性の疾病である。時間を経るにつれて、上述の疾患に、進行性の難聴、耳鳴、および耳の圧迫感を伴う。メニエール病の原因は、内耳液の生成量の増加または再吸収量の減少を含む、内耳液のホメオスタシスのバランスが崩れることと関係があるようである。
内耳内の、バソプレシン(VP)媒介アクアポリン2(AQP2)システムの研究は、内リンパ生成物を誘導する際のVPの役割を示唆しており、これにより、前庭と蝸牛構造内の圧力を増加する。VPのレベルは内リンパ水腫(メニエール病)場合にアップレギュレートされることが見出された。また、モルモットへのVPの長期投与は内リンパ水腫を誘導することが見出された。鼓室階へのOPC-31260(V2-Rの競合アンタゴニスト)のインフュージョンを含んでいる、VPアンタゴニストによる処置は、メニエール病の症状の顕著な軽減を結果として生じた。他のVPのアンタゴニストはWAY-140288、CL-385004、トルバプタン、コニバプタン、SR 121463AおよびVPA 985を含む。(Sanghi等、Eur.Heart J.(2005年)、26:538-543、Palm等 Nephrol. Dial Transplant、(1999年)、14:2559-2562)。
他の研究は、内リンパ生成物を制御する際のエストロゲン関連受容体β/NR3B2Nr3b2(ERR/Nr3b2)の役割を示唆していて、それ故、前庭/蝸牛器官内を加圧する。マウスへのノックアウト研究は、内リンパ流体の生成物を制御する際にNr3b2遺伝子のポリペプチド生成物の役割を示す。Nr3b2発現は、内リンパ分泌線状辺緑細胞(strial marginal cell)と、蝸牛前庭器官の前庭暗細胞と、それぞれに局在化されている。更に、Nr3b2遺伝子のコンディショナルノックアウトは、聴覚消失と、内リンパ液体量の減少を結果として生じる。ERR/Nr3b2へのアンタゴニストによる処置は、内リンパ量の減少を助け、故に、内耳構造内の圧力を変える。
他の処置は、即時に生じる症状及び再発の予防の処理を目標とする。低ナトリウム食、カフェイン、アルコールおよびタバコの回避が推奨された。一時的に回転性目まいの発作を取り除く薬物療法は、抗ヒスタミン剤(メクリジンおよび他の抗ヒスタミン剤を含む)、および、ロラゼパムまたはジアゼパムを含むバルビツール酸及び/又はベンゾジアゼピンを含む中枢神経系剤を含む。症状を和らげるのに有用な薬物の他の例は、スコポラミンを含む、ムスカリン性アンタゴニストを含む。吐き気と嘔吐は、フェノチアジン剤プロクロルベラジンを含む、統合失調症治療薬を含有する座薬によって和らげられる。
症状を緩和するために使用されている外科的手技としては、めまい症状を緩和するための、前庭機能および/または蝸牛機能の破壊が挙げられる。これらの手技は、内耳の液圧を下げることおよび/または内耳の平衡機能を破壊することのいずれかを目的とする。液圧を減らす内リンパシャント術は、前庭機能不全の症状を緩和するために、内耳に配置されてもよい。他の処置としては、有毛細胞の感覚機能を破壊するように鼓膜に注射し、それにより、内耳の平衡機能を完全になくすゲンタマイシン適用が挙げられる。前庭神経の切断を利用してもよく、聴覚を保持しつつ、めまいを制御することができる。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞モジュレータが有毛細胞の成長を促進し、被検者が内耳平衡機能を回復することを可能にする。
メニエール症候群
メニエール病と似た症状を示すメニエール症候群は、別の疾患プロセスの二次的な苦痛(例えば、梅毒感染による甲状腺疾患または内耳炎症)であると考えられる。したがって、メニエール症候群は、内分泌異常、電解質不均衡、自己免疫機能不全、機能障害、医薬、感染(例えば、寄生虫感染)または脂質異状症を含む、内リンパの正常な生産または再吸収を妨害する種々のプロセスに対する二次的な影響である。メニエール症候群を患う患者の処置は、メニエール病と同様である。
ラムゼーハント症候群(帯状疱疹の感染)
ラムゼーハント症候群は、聴神経の帯状疱疹の感染によって引き起こされる。感染は激しい耳痛、難聴、回転性目まいの他に、外耳、外耳道及び顔または首の皮膚における神経によって供給された水膨れを引き起こす。顔面神経が腫れによって圧迫される場合、顔面筋は麻痺することもある。難聴は数日から数週まで通常続く回転性目まい症状と共に、一時的である、又は治らない場合もある。
ラムゼーハント症候群の処置は、アシクロビルを含む抗ウイルス剤の投与を含む。他の抗ウイルス剤は、ファムシクロビルとバラシクロビルを含む。抗ウイルス剤およびコルチコステロイドの治療の組み合わせが、帯状疱疹の感染を改善するために使用されることもある。鎮痛剤または麻薬が、疼痛を和らげるために投与されることもあり、ジアゼパムまたは他の中枢神経系剤が回転性目まいを抑止するために投与されることもある。カプサイチン、リドカイン貼付剤および神経ブロックは任意に使用される。顔面神経麻痺を和らげるために圧迫された顔面神経で、手術が行なわれることもある。
微小血管圧迫症候群
「血管圧迫」または「神経血管圧迫」とも呼ばれる微小血管圧迫症候群(MCS)は、回転性目まいと耳鳴によって特徴付けられた障害である。微小血管圧迫症候群は、血管による脳神経VIIの刺激作用によって引き起こされる。MCSを有する被検者において見出される他の症状は、限定されないが、激しい動作の不耐性および「クイックスピン」のような神経痛を含む。MCSは、カルバマゼピン、TRILEPTAL(トリレプタル:登録商標)およびバクロフェンを用いて処置される。また、それは外科的に処置されることもある。
前庭神経炎
前庭神経炎(あるいは前庭神経病)は、末梢性前庭系の急性機能障害、除放性機能障害である。前庭ニューロン炎は、1又は両方の前庭器官からの求心性神経入力の破壊によって引き起こされることが理論付けられる。この破壊のソースは、前庭神経及び/又は迷路のウイルス感染および急性の局所てき乏血を含む。
前庭ニューロン炎を診断する場合の最も重要な所見は、自発性、一方向性の、水平性眼振である。それには、しばしば吐き気、嘔吐症状および回転性目まいが付随する。
しかしながら、難聴または他の聴覚症状は一般的に付随しない。
迷路炎にはいくつかの処置がある。ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、メクリジンおよびプロメタジンのようなH1-受容体アンタゴニストは、抗コリン作用によって前庭刺激を減少し、迷路機能を低下させる。ジアゼパム及びロラゼパムのようなベンゾジアゼピンは、GABAA受容体に対するベンゾジアゼピンの効果により、前庭反応を阻害するためにも使用される。抗コリン薬、例えばスコポラミンも処方される。これらは前庭と小脳の経路における伝導を抑止することにより機能する。最後に、コルチコイド(すなわちプレドニゾン)は、前庭神経および関連する器官の炎症を改善するために処方される。
本明細書で提供されるのは、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞)の悪化を調節する耳感覚細胞調節剤組成物または製剤である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている耳感覚細胞調節剤組成物または製剤は、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞)の悪化を減少する、遅延させる、または反転させる。また本明細書に記載されるのは、内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴又は聴力低下を処置又は改善するための制御放出組成物である。さらに本明細書に提供されるのは、耳感覚細胞(例えば、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞)の、成長及び/又は再生を促進する、耳感覚細胞調節剤組成物または製剤である。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤組成物または製剤は、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞)を破壊する。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤は耳保護剤であり、耳感覚細胞(例えば耳のニューロン及び/又は有毛細胞)への損傷を減少する、反転させる、又は遅延させる。
耳及び前庭の障害は、本明細書に開示の医薬薬剤、または他の医薬薬剤に反応する原因および兆候を有する。本明細書に開示されてはいないが、耳の疾患を改善または根絶する耳感覚細胞調節剤は、提示される実施形態の範囲内に明らかに含まれる、及び範囲内にあることが意図されている。
さらに、全身適用または局所適用中に、他の臓器系において毒性があり、有害であるか、または有効ではないことが以前に示されている医薬品、例えば、肝臓で処理した後に生成する毒性代謝物によるもの、特定の臓器、組織または系における薬物の毒性、効力を得るのに必要な高濃度によるもの、全身経路を介して放出されることが不可能なことによるもの、またはpK特性が悪いことによるものも、本明細書のいくつかの実施形態において有用である。従って、全身への放出が制限されているか、または全身への放出は行われず、全身に投与されると毒性があり、pK特性が悪いか、またはこれらを組み合わせた性質を有する医薬薬剤は、本明細書に開示する実施形態の範囲内であることが想定されている。
本明細書に開示の耳感覚細胞調節剤製剤は、任意に、処置が必要な耳の構造体を直接標的にする。例えば、想定される1つの実施形態は、本明細書で開示される耳感覚細胞調節剤製剤を、内耳の正円窓膜または蝸牛窓に直接適用し、内耳(auris internaまたはinner ear)の要素に直接到達させ、処置することである。他の実施形態において、本明細書で開示される耳感覚細胞調節剤製剤は、卵円窓に直接適用される。さらに他の実施形態において、直接的な到達は、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小潅流)により、得られる。また、このような実施形態は、任意で、薬物送達デバイスを含み、この薬物送達デバイスは、針およびシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、耳に許容可能なインサイツで形成するスポンジ状物質、またはこれらの組み合わせを用いることによって耳感覚細胞調節剤製剤を送達する。
いくつかの医薬薬剤は、単独で、または組み合わせで、耳毒性を有する。例えば、いくつかの化学療法剤は、アクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチンおよびビンクリスチンを含み、抗生物質は、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、ネオマイシン、カナマイシン、エキノマイシン(etiomycin)、バンコマイシン、メトロニダゾール(metronidizole)、カプレオマイシンを含み、これらは、わずかに非常に有毒であり、そして前庭と蝸牛の構造体に差次的に(differentially)影響する。しかしながら、いくつかの例において、耳毒性薬物との組み合わせ、例えば、耳保護剤(otoprotectant)と組み合わせたシスプラチン、ゲンタマイシンは、薬物の耳毒性の影響を和らげる。さらに、潜在的な耳毒性薬物の局在化された適用により、毒性の影響を和らげるが、そうでなければ、維持された効き目を備えたより低量の使用またはより短い期間の間の目標量の使用を通じて、全身投与によって生じる。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された耳感覚細胞調節剤製剤は、さらに、本明細書に記載されている化学療法剤及び/又は抗生物質のような薬剤の耳毒性を少なくするか、阻害するか、改善する耳保護剤を含む、又は、過度の雑音およびこれらと同類のものを含む他の環境要因の影響を弱めるか、阻害するか、改善する耳保護剤を含む。耳保護剤の例は、限定することではないが、本明細書に記載されている耳保護剤、チオール類及び/又はメルカプト基及び/又は薬学的に許容可能な塩、又はこれらの誘導体(例えばプロドラッグ)を含む。
耳保護剤は、最大の中毒量より高い服用量での耳毒性剤及び/又は抗生物質の投与を可能にする。このような投与でない場合、耳毒性剤及び/又は抗生物質は、耳毒性のために、より少ない服用量で投与される。耳保護剤は、任意に単独で投与される場合、環境要因の影響の改善、減少または除去を可能とし、該環境要因の影響は、限定することではないが、騒音誘導性難聴と耳鳴を含む聴力損失とそれに伴う影響の一因となる。
耳毒性の化学療法剤(例えばシスプラチン)及び/又は耳毒性の抗生物質(例えばゲンタマイシン)に対する、本明細書に記載されている任意の製剤におけるモル:モル基準での耳保護剤の量は、約5:1から約200:1に及び、約5:1から約100:1、又は約5:1から約20:1に及ぶ。
耳毒性の化学療法剤(例えばシスプラチン)及び/又は耳毒性の抗生物質(例えばゲンタマイシン)に対する、本明細書に記載される任意の製剤におけるモル基準での耳保護剤の量は、約50:1、約20:1、または約10:1である。本明細書に記載される任意の耳感覚細胞調節剤製剤は、約10mg/mlから約50mg/mlまで、約20mg/mlから約30mg/ml、または約10mg/mlから耳保護剤の25mg/mlまで含む。
さらに、いくつかの医薬的な賦形剤、希釈剤、又は担体は、潜在的に耳毒性である。例えば、一般の防腐剤である塩化ベンザルコニウムは、耳毒性であり、それゆえ前庭及び蝸牛の構造体に導入されると、潜在的に有害である。制御放出型の耳感覚細胞調節剤製剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避ける又は組み合わせること、製剤から潜在的な耳毒性の化合物を減少させる又は除去すること、又は賦形剤、希釈剤又は担体などの量を減少させることが推奨される。任意に、制御放出型の耳感覚細胞調節剤製剤は、賦形剤、希釈剤又は担体の特定の治療薬剤を使用することで生じ得る潜在的な耳毒性の影響を弱めるために、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。
アミホスチン
本明細書に開示された製剤を用いた使用で考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。従って、いくつかの実施形態は、シスプラチン誘導の耳毒性からニューロンおよび耳の有毛細胞を救出する薬剤の使用を組み入れる。
アミホスチン(WR-2721、またはETHYOL(登録商標)としても知られる)は、耳保護剤である。特定の例では、アミホスチンは、ニューロン及び耳有毛細胞に対する、シスプラチンによって引き起こされた損傷を防ぐ又は改善する。特定の例において、40mg/kg以上の服用量が、シスプラチンの耳毒性の影響を防ぐまたは改善するために必要である。
サリチル酸
本明細書に開示された製剤を用いた使用で考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。従って、いくつかの実施形態は、サリチル酸の使用を組み込む。特定の例においては、サリチル酸は酸化防止剤であり、アミノグリコシドを有する処置の前に投与された時、サリチル酸はアミノグリコシドの耳毒性から耳の有毛細胞および螺旋神経節ニューロンを保護する。
Atoh/Math1の調節
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞の成長及び/又は新生を促進する剤である。Atoh1はE−ボックスにに結合する転写因子である。特定の例では、Atoh1は、前庭および聴覚系の有毛細胞の進行の間に発現される。特定の例において、Atoh1ノックアウトされたマウスは、耳の有毛細胞を進展しなかった。特定の例において、Atoh1を発現するアデノウイルスは、耳毒性の抗生物質で処置されたモルモットにおける耳の有毛細胞の成長及び/又は再生を刺激する。したがって、いくつかの実施形態は、Atoh1遺伝子の調節を組み入れる。
いくつかの実施形態において、被検者は、ヒトAtoh1遺伝子(「Atoh1ベクター」)を運搬するために操作されたベクターが投与される。Atoh1ベクタ―を作成するための技術の開示については、米国公報第2004/02475750号を参照されたい。該文献は、開示のため参照することにより本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターは、レトロウイルスである。いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターはレトロウイルスではない(例えば、Atoh1ベクターはアデノウイルスである、 レンチウイルスである、 あるいはMETAFECTEN(メタフェクテン)、SUPERFECT(スーパーフェクト:登録商標)、EFFECTENE(イフェクテン:登録商標)またはMIRUS TRANSIT(ミルストランジット)のようなポリマー送達システムである)。
いくつかの実施形態において、Atoh1ベクターは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
特定の例において、Atoh1ベクターの投与の後、Atoh1ベクターは、投与位置で細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、及び/又は前庭迷路の細胞)を感染させる。ある例において、Atoh1配列は、被検者のゲノム(例えばAtoh1ベクターがレトロウイルスである場合)へ組み入れられる。ある例において、治療は周期的に再投与される必要がある(例えばAtoh1ベクターがレトロウイルスでない場合)。いくつかの実施形態において、治療は、毎年再投与される。
いくつかの実施形態において、治療は半年ごとに投与される。いくつかの実施形態において、被検者の難聴が中程度(すなわち、被検者は、一貫して41dBから55dB未満の周波数を聞くことができない)から重大な場合(すなわち、被検者は、一貫して90dB未満の周波数を聞くことができない)、治療は再投与される。
いくつかの実施形態において、被検者はAtoh1ポリペプチドが投与される。いくつかの実施形態において、Atoh1ポリペプチドは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質(in situ forming spongy material)、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質(in situ forming spongy material)、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、正円窓膜に接触するように設置される。
いくつかの実施形態において、被検者は、Atoh1遺伝子またはAtoh1ポリペプチドの活性の発現を調節する、薬学的に許容可能な剤に投与される。いくつかの実施形態において、Atoh1遺伝子またはAtoh1ポリペプチドの活性の発現がアップレギュレートされる。いくつかの実施形態において、Atoh1遺伝子またはAtoh1ポリペプチドの活性の発現がダウンレギュレートされる。
特定の例では、Atoh1を拮抗する化合物が同定される(例えば高スループットスクリーンの使用により)。いくつかの実施形態において、構成物がレポーター遺伝子がE−ボックス配列の下流に置かれるように設計される。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-lactamaseまたはβである-ガラクトシダーゼである。特定の例において、Atoh1ポリペプチドはE−ボックス配列に結合し、レポーター遺伝子の転写および発現を開始する。特定の例において、Atoh1のアゴニストは、Atoh1のE−ボックス配列への結合を支援する又は促進し、これにより、前もって定義したベースライン発現レベルに対して、レポーター遺伝子の転写および発現を増加させる。特定の例において、Atoh1のアンタゴニストは、Atoh1のE−ボックスへの結合を妨げ、これにより、前もって定義したベースライン発現レベルに対して、レポーター遺伝子の転写および発現を減少させる。
BRN-3モジュレータ
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮するのは、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞の成長及び/又は再生を促進する薬剤である。BRN-3は、限定されないが、BRN-3a、BRN-3bおよびBRN-3cを含む一群の転写因子である。特定の例において、これらは有糸核分裂後の有毛細胞において発現される。特定の例において、BRN-3cを有するマウスの有毛細胞は、不動毛を成長しなかった、及び/又は細胞死を経験した。特定の例においては、BRN3遺伝子は、内耳感覚細胞の中への内耳支持細胞の分化を調節する。したがって、いくつかの実施形態は、BRN3遺伝子及び/又はポリペプチドの調節を組み入れる。
いくつかの実施形態において、被検者は、ヒトBRN-3遺伝子(「BRNベクター」)を運搬するために操作されたベクターが投与される。いくつかの実施形態において、BRN3ベクターは、レトロウイルスである。いくつかの実施形態において、BRN3ベクターはレトロウイルスではない(例えば、BRN3ベクターはアデノウイルスである、 レンチウイルスである、 あるいはMETAFECTEN(メタフェクテン)、SUPERFECT(スーパーフェクト:登録商標)、EFFECTENE(イフェクテン:登録商標)またはMIRUS TRANSIT(ミルストランジット)のようなポリマー送達システムである)。
いくつかの実施形態において、被検者は、耳毒性剤(例えば、アミノグリコシドまたはシスプラチン)に曝露する前、間または後に、BRN3ベクター、または音響外傷を誘導する十分な音量が投与される。
いくつかの実施形態において、BRN3ベクターは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
特定の例において、BRN3ベクターの投与の後、BRN3ベクターは、投与位置で細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、及び/又は前庭迷路の細胞)を感染させる。ある例において、BRN3配列は、被検者のゲノム(例えばBRN3ベクターがレトロウイルスである場合)へ組み入れられる。
ある例において、治療は周期的に再投与される必要がある(例えばBRN3ベクターがレトロウイルスでない場合)。
いくつかの実施形態において、被検者はBRN3ポリペプチドが投与される。いくつかの実施形態において、BRN3ポリペプチドは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質(in situ forming spongy material)、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質(in situ forming spongy material)、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、正円窓膜に接触するように設置される。
いくつかの実施形態において、被検者は、BRN3遺伝子またはBRN3ポリペプチドの活性の発現を調節する、薬学的に許容可能な剤に投与される。いくつかの実施形態において、BRN3遺伝子またはBRN3ポリペプチドの活性の発現がアップレギュレートされる。いくつかの実施形態において、BRN3遺伝子またはBRN3ポリペプチドの活性の発現がダウンレギュレートされる。
いくつかの実施形態において、BRN3を拮抗する化合物が同定される(例えば高スループットスクリーンの使用により)。いくつかの実施形態において、構成物がレポーター遺伝子がBRN3結合部位の下流に置かれるように設計される。いくつかの実施形態において、BRN3結合部位はATGAATTAAT(SBNR3)配列を有する。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-lactamaseまたはβである-ガラクトシダーゼである。特定の例において、BRN3ポリペプチドはSBNR3-配列に結合し、レポーター遺伝子の転写および発現を開始する。特定の例において、BRN3のアゴニストは、BRN3のSBNR3-配列への結合を支援する又は促進し、これにより、前もって定義したベースライン発現レベルに対して、レポーター遺伝子の転写および発現を増加させる。特定の例において、BRN3のアンタゴニストは、BRN3のSBNR3-への結合を妨げ、これにより、前もって定義したベースライン発現レベルに対して、レポーター遺伝子の転写および発現を減少させる。
カルバマート
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。特定の例において、カルバメート化合物はグルタミン酸に誘導された興奮毒性からニューロンおよび耳の有毛細胞を保護する。従って、いくつかの実施形態は、カルバメート化合物の使用を組み込む。いくつかの実施形態において、カルバメート化合物は2-フェニル-1,2-エタンジオールモノカルバミン酸塩(monocarbomates)およびジカルバミン酸、その誘導体、及び/又はその組み合わせである。
ガンマ−セクレターゼインヒビタ
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。したがって、いくつかの実施形態は、Notch1シグナル伝達を抑制する薬剤の使用を組み入れる。Notch1は、細胞発生に関与する膜内外のポリペプチドである。いくつかの実施形態において、Notch1シグナル伝達を阻害する剤はガンマ-セクレターゼインヒビタである。特定の例において、ガンマ セクレターゼインヒビタによるNotch1の抑制 は、耳毒性剤を用いた処置の後、耳の有毛細胞の生成/成長の結果として生じる。いくつかの実施形態において、ガンマ-セクレターゼインヒビタは、LY450139(ヒドロキシルバレリルモノベンゾカプロラクタム)、L685458(1S-ベンジル-4R[1-[1-S-カルバミル-2-フェネチルカルバモイル)-1S-3-メチルブチルカルバモイル]-2R-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル}カルバミン酸第三ブチルエステル)、LY411575(N2-[(2S)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシエタノイル]-N1[(7S)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロー-5H-ジベンゾ[bid]アゼピン-7yl]-L-アラニンアミド、MK-0752(メルク)、タレンフルルビル、及び/又はBMS-299897(2-[(1R)-1-[[(4-クロロフェニル)スルホニル](2,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル]-5-フルオロベンゼンプロパン酸)である。
グルタミン酸受容体モジュレータ
本明細書で提供されるのは、グルタミン酸受容体の調節異常(例えば過剰活性または過剰刺激)によって特徴付けられた耳の不調を治療する方法である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、グルタミン酸受容体アンタゴニストを含む組成物を必要としている個人に投与する工程を備える。本明細書に開示されてはいないが、耳の疾患の改善または根絶に有用なグルタミン酸受容体アンタゴニストは、示されている実施形態の範囲内に明らかに含まれ、範囲内にあることが意図されている。
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。従って、いくつかの実施形態は、グルタミン酸受容体を調節する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体は、AMPA受容体である、及び/又は、IIグループまたはIIIグループのmGlu受容体である。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体は、NMDA受容体である。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体モジュレータは、グルタミン酸受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、非競合的アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、小分子である。
いくつかの実施形態において、AMPA受容体を調節する薬剤は、AMPA受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、AMPA受容体を拮抗する薬剤はCNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリンジオン-2,3-ジオン、NBQX(2,3-ジヒドロオキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン、DNQX(6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン、キヌレン酸、2,3-ジヒドロオキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ-[f]キノキサリン、またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、NMDA受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体を調節する薬剤は、NMDA受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、1-アミノアダマンタン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、イフェンプロジル、(S)-ケタミン、(R)-ケタミン、メマンチン、ジゾシルピン(MK-801)、ガシクリジン、AM-101、トラキソプロジル、D-2-アミノ-5-ホスホノペンタン酸(D-AP5)、3-((±)2-カルボキシピペラジン-4-イル)-プロピル-1-ホスホン酸(CPP)、コナントキン、7-クロロキヌレネート(7-CK)、リコスチネル、亜酸化窒素、フェンシクリジン、リルゾール、チレタミン、アプチガネル、レマシミド(remacimide)、DCKA(5、 7-ジクロロキヌレン酸)、キヌレン酸、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACPC)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、APV(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノアート、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロプ-2-エニル-1-ホスホン酸、(+)-(1S、 2S)-1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジノ)-1-プロ-パノール)、(1S,2S)-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリ-ジノ)-1-プロパノール)、(3R,4S)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル-)-クロマン-4,7-ジオール)、(1R*;2R*)-1-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-(4-(4-フルオロ-フェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-プロパノ-1-オール-メシル酸、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体アンタゴニストは、アリールシクロアルキルアミンである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体アンタゴニストは(S)-ケタミンまたはその塩である。いくつかの実施形態においてNMDA受容体アンタゴニストは、キナゾリンである。いくつかの実施形態において、NMDA受容体アンタゴニストは7-CKまたはその塩である。いくつかの実施形態において、NMDA受容体アンタゴニストはAM-101またはその塩である。
いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)輸送体ペプチド及び(b)NMDA受容体とNMDA受容体結合タンパク質との相互作用を抑制するペプチドを備える。本明細書で使用されているように、「輸送体ペプチド」は、細胞及び組織へのペプチド浸透を促進するペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、輸送体ペプチドは、生分解性である。
いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)TATペプチド及び(b)NMDA受容体とNMDA受容体結合タンパク質との相互作用を抑制するペプチドを備える。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a) (D)-TATペプチド及び(b)NMDA受容体とNMDA受容体結合タンパク質との相互作用を抑制するペプチドを備える。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)輸送体ペプチド及び(b)NR2B9cペプチドを備える。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)輸送体ペプチド及び(b)(D)-NR2B9cペプチドを備える。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)(D)-TATペプチド及び(b)(D)-NR2B9cペプチドを備える。いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは溶解ペプチドであり、該融合ペプチドは、(a)輸送体ペプチド及び(b)(L)-NR2B9cペプチドを備える。
特定の例において、過度の量のグルタミン酸の結合によるAMPAとNMDAのグルタミン酸受容体の過剰活性化は、管理の下においてイオンチャンネルの過度の開口をもたらす。特定の例において、このことは、異常に高いレベルのCa2+とNa+がニューロンに入ることをもたらす。特定の例において、Ca2+とNa+のニューロンへの流入は、限定することではないが、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ及びプロテアーゼを含む多様な酵素を活性化する。特定の例において、これらの酵素の過剰な活性は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、ニューロンのDNAに損傷を与えるという結果をもたらす。さらに、特定の例において、アポトーシス促進遺伝子および抗アポトーシス遺伝子の転写は、Ca2+レベルによって制御される。
いくつかの実施形態において、mGlu受容体は、グループIIIのmGlu受容体である。いくつかの実施形態において、グループIIIのmGlu受容体は、mGlu7である。いくつかの実施形態において、グループIIIのmGlu受容体を調節する薬剤はグループIIIのmGlu受容体アゴニストである。いくつかの実施形態において、グループIIIのmGlu受容体アゴニストはACPT-I((1S,3R,4S)-1-アミノシクロペンタン-1,3,4-トリカルボン酸、L-AP4(L-(+)- 2-アミノ-4-ホスホノブタン酸)、(S) -3, 4-DCPG((S)-3,4-ジカルボキシフェニルグリシン、(RS)-3, 4 DCPG((RS)-3,4-ジカルボキシフェニルグリシン、(RS)-4-ホスホノフェニルグリシン(RS)(PPG)、AMN082(N'-ビス(ジフェニルメチル)-1,2-エタンジアミン(ジヒドログロリド)、DCG-IV((2S,2'R,3'R)-2-(2',3'-ジカルボキシシクロプロピル)グリシン、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においてmGlu受容体は、mGlu7である。いくつかの実施形態において、mGlu7のアゴニストは、AMN082である。いくつかの実施形態において、mGlu受容体モジュレータは、3,5-ジメチルピロール-2,4-ジカルボン酸 2-プロピルエステル4-(1,2,2-トリメチル-プロピル)(エステル、(3,5-ジメチルPPP))、3,3'-ジフルオロベンズアルダジン(DFB),3,3'-ジメトキシベンザルダジン(DMeOB)、3,3'-ジフルオロベンザルダジン(DCB)及びmol.薬理学2003、64および731-740で開示されたmGluR5の他のアロステリックモジュレーター、(E)-6-メチル-2-(フェニルジアゼニル)ピリジン-3-オール(SIB 1757)、(E)-2-メチル-6-スチリルピリジン(SIB 1893)、2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン(MPEP)、(2-メチル-4-((6-メチルピリジン-2-イル)エチニル)チアゾール(MTEP))、7-(ヒドロキシイミノ)シクロプロパ[b]クローメン-1αカルボン酸エチルエステル(CPCCOEt)、 N-シクロヘキシル-3-メチルベンゾ[d]チアゾロ[3,2-a]イミダゾール-2-カルボキサミド(YM-298198)、トリシクロ[3.3.3.1]ノナニル キノキサリン-2-カルボキサミド(NPS 2390)、6-メトキシ-N-(4-メトキシフェニル)キナゾリン-4-アミン(LY456239)、WO2004/058754とWO2005/009987において開示されたmGluR1アンタゴニスト、2-(4-(2,3-ジヒドロー-1H-インデン-2-イルアミノ)-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イルチオ)エタノール、3-(5-(ピリジン-2-イル)-2H-テトラゾール-2-イル)ベンゾニトリル、2-(2-メトキシ-4-(4-(ピリジン-2-イル)オキサゾール-2-イル)フェニル)アセトニトリル、2-(4-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-メトキシフェニル)アセトニトリル、6-(3-メトキシ-4-(ピリジン-2-イル)フェニル)イミダゾ[2,1-b]チアゾール、(S)-(4-フルオロフェニル)(3-(3-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾル-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノン(ADX47273)及び/又はこれらの組み合わせである。
mGlu受容体は、AMPA及びNMDA受容体とは異なり、直接イオンチャンネルをコントロールしない。しかしながら、ある例において、これらの受容体は、間接的に生化学的カスケードの活性化によってイオンチャンネルの開口をコントロールする。mGlu受容体は3つのグループに分けられる。グループIIおよびグループIIIのメンバーは、cAMPの組成を防ぐ又は減少させることで、シナプス後電位を減少させる又は阻害する。特定の例において、このことは、神経伝達物質、特にグルタミン酸の解放の減少をもたらす。GRM7は、グループIII受容体であるmGlu7受容体をコードする遺伝子である。mGlu7のアゴニズムが、グルタミン酸のシナプス濃度の減少をもたらす。これはグルタミン酸の興奮毒性を改善する。
いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体は、グループIIのmGlu受容体である。いくつかの実施形態において、グループIIのmGlu受容体を調節する薬剤は、グループIIのmGlu受容体アゴニストである。いくつかの実施形態において、グループIIのmGlu受容体アゴニストは、LY389795((-)-2-チア-4-アミノビシクロ-ヘキサン-4,6-ジカルボン酸、LY379268((-)-2-オキサ-4-アミノビシクロ-ヘキサン-4,6-ジカルボン酸、LY354740(+)-2-アミノビシクロ-ヘキサン-2,6ジカルボン酸、DCG-IV((2S,2'R,3'R)-2-(2',3'-ジカルボキシシクロプロピル)グリシン、2R, 4R-APDC(2R,4R-4-アミノピロリジン-2,4-ジカルボン酸(S)(-3C4HPG((S)-3-カルボキシ-4-ヒドロキシフェニルグリシン)、(S)-4C3HPG((S)-4-カルボキシ-3-ヒドロキシフェニルグリシン、L-CCG-I((2S,1'S,2'S)-2-(カルボキシシクロプロピル)グリシン、及び/又はこれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、グルタミン酸受容体モジュレータは、向知性薬剤である。本明細書に開示される製剤の用途のために考慮されるのは、グルタミン酸受容体を活性化させることにより、ニューロンシグナリングを調節する向知性薬剤である。いくつかの例において、向知性薬剤は、難聴(例えば、NIHL)または耳鳴を処置する又は改善する。従って、いくつかの実施形態は、向知性薬剤の使用を組み入れ、該向知性薬剤は、限定することではないが、NIHLまたは耳鳴の処置のための、ピラセタム、オキラセタム、アニラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム(カルフェドン)、エチラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ニコラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファソラセタム、コルラセタム、ジミラセタム、ブリバラセタム、セレトラセタム、及び/又はロリプラムを含む。
栄養剤
本明細書に開示される製剤の使用のために考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を減少させる又は遅らせる薬剤である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤の使用のために考慮されるのは、例えば、耳の組織及び/又はニューロン及び/又は有毛細胞の成長を促進する薬剤といった、栄養剤である。また本明細書に記載される組成物の使用のために考慮されるのは、内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴又は聴力低下を処置又は改善するための薬剤である。従って、いくつかの実施形態は、ニューロンおよび耳の有毛細胞の残存、及び/又は、ニューロンおよび耳の有毛細胞の成長を促進する栄養剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、耳の有毛細胞の生存を促進する栄養剤は成長因子である。いくつかの実施形態において、成長因子は、神経栄養性である。特定の例においては、神経栄養性は成長因子であり、該成長因子は、細胞死を抑制し、細胞障害を防ぐ、被害を受けたニューロンおよび耳の有毛細胞を修理する、及び/又は、前駆細胞への分化を誘導する。いくつかの実施形態において、神経栄養性は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、及び/又はこれらの組合せである。いくつかの実施形態において、成長因子は繊維芽細胞成長因子(FGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、表皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PGF)及び/又はこれらのアゴニストである。いくつかの実施形態において、成長因子は、繊維芽細胞成長因子(FGF)受容体、インスリン様成長因子(IGF)受容体、表皮成長因子(EGF)受容体及び/又は、血小板由来成長因子のアゴニストである。いくつかの実施形態において、成長因子は、肝細胞成長因子である。
いくつかの実施形態において、栄養剤及び/又は神経栄養剤はBDNFである。いくつかの実施形態において、栄養剤及び/又は神経栄養剤はGDNFである。特定の例においては、BDNFおよびGDNFは、損傷を受けた細胞の修復、ROSの生成の抑制及び/又は細胞死の抑制することにより、存在するニューロン(例えば螺旋神経節ニューロン)及び耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養剤である。特定の例において、BDNFおよびGDNFは、神経・耳の有毛細胞前駆体の分化をも促進する。さらに、ある例において、BDNFおよびGDNFは、脳神経VIIが悪化するのを保護する。いくつかの実施形態において、BDNFが繊維芽細胞成長因子と共に投与される。
いくつかの実施形態において、神経栄養剤は、神経栄養因子-3である。特定の例において、神経栄養因子-3は、既存のニューロンおよび耳の有毛細胞の生存を促進し、神経の分化及び耳の有毛細胞の分化を促進する。さらに、特定の例において、神経栄養因子-3は、神経VIが悪化するのを保護する。
いくつかの実施形態において、神経栄養剤は、CNTFである。特定の例においては、CNTFは、神経伝達物質の合成および神経炎の成長を促進する。いくつかの実施形態において、CNTFがBDNFと共に投与される。
いくつかの実施形態において、栄養剤及び/又は神経栄養剤はGDNFである。特定の例において、GDNFの発現は、耳毒性剤で処置をすることで増加される。さらに、特定の例において、外因性のGDNFで処置された細胞は、処置していない細胞よりも、外傷後に高い生存率を有する。
いくつかの実施形態において、栄養剤及び/又は成長因子が表皮成長因子(EGF)である。いくつかの実施形態において、EGFがヘレグリン(HRG)である。特定の例においては、HRGは、小嚢のある感覚上皮の増殖を刺激する。特定の例においては、HRG結合受容体は、前庭及び聴覚の感覚上皮において見出される。
いくつかの実施形態において、栄養剤及び/又は成長因子が、インシュリン様成長因子(IGF)である。いくつかの実施形態において、IGFは、IGF-1である。いくつかの実施形態においてIGF-1は、メカセルミンである。特定の例においては、IGF-1は、アミノグリコシドに晒すことによって誘導された損傷を減少させる。特定の例においては、IGF-1は、蝸牛神経節細胞の分化及び/又は成熟を刺激する。
いくつかの実施形態において、FGF受容体アゴニストは、FGF-2である。いくつかの実施形態において、FGF受容体アゴニストは、IGF-1である。FGF受容体とIGF受容体の両方は小嚢上皮を含む細胞において見出される。
いくつかの実施形態において、成長因子は、肝細胞成長因子(HGF)である。いくつかの例においては、HGFは、騒音誘導性損傷から蝸牛有毛細胞を保護し、騒音に晒されることで引き起こされるABRの閾値変動を減少させる。
また、本明細書に記載されている耳の製剤を使用するために考慮されるのは、成長因子であって、該成長因子は、エリトロポイエチン(EPO)および果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、成長分化因子-9(GDF9)、インシュリン様成長因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換成長因子アルファ(TGF -α)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)および血管内皮細胞成長因子(VEGF)またはこれらの組み合わせを含む。また、本明細書に記載されている耳組成物を使用するために考慮されるのは、栄養因子であり、該栄養因子は、本明細書に記載されている酸化防止剤及び/又はビタミンを含む。
抗−細胞間接着分子-1の抗体
本明細書に記載されている耳の製剤を使用するために考慮されるのは、抗−細胞間接着分子(ICAM)に対する抗体である。いくつかの例において、ICAMは、騒音曝露に関連した活性酸素種のカスケードを阻害する。いくつかの例において、騒音曝露に関連した活性酸素種のカスケードの調節は、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を改善する又は減少させる。したがって、いくつかの実施形態は、ICAM(例えば抗-ICAM-1 Ab、抗-ICAM-2 Abなど)に対する抗体である、薬剤の使用を組み入れる。
耳保護剤
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する剤である、及び内耳における毛が破壊される、発育不良である、機能不全である、損傷している、脆弱である又は欠損していることを原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための剤である。従って、いくつかの実施形態は、耳保護剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているように、耳保護剤はグルタミン酸受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、耳保護剤は、本明細書に記載されているように、コルチコステロイドである。いくつかの実施形態において、耳保護剤はグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)を調節する薬剤である。酵素GPxは、蝸牛において活性酸素種(ROS)を減少させ、内耳中でニューロン及び/又は有毛細胞の健康状態を維持する。GPxのモジュレータは、限定することではないが、グルタチオンペルオキシダーゼを含み、該グルタチオンペルオキシダーゼは、2-フェニル-1,2-ベンゾイソセレナゾール-3(2H)-オン(エブセレン、SPI-1005)、6A-6Bジセレニン酸-6A,6B'-セレニウム架橋されたβ-シクロデキストリン(6-diSeCD)、及び2,2'-ジセレノ-ビス-β-シクロデキストリン(2-diSeCD)を含む。
いくつかの実施形態において、耳保護剤の使用は、内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴又は聴力低下を減少又は改善する。
耳保護剤は、限定することではないが、D-メチオニン、L-メチオニン、エチオニン、ヒドロキシルメチオニン、メチオニノール、アミホスチン、メスナ(2-スルファニルエタンスルフォネートナトリウム)、DおよびLメチオニンの混合物、N-アセチルメチオニン(NAM)、ノルメチオニン、ホモメチオニン、S-アデノシル-L-メチオニン、ジエチルジチオカルバメート、エブセレン(2-フェニル-1,2-ベンジソセレナゾール-3(2H)-オン)、チオ硫酸ナトリウム、AM-111(細胞透過性のJNKインヒビタ(Laboratoires Auris SAS))、N-アセチル-DL-メチオニン、S‐アデノシルメチオニン、システイン、ホモシステイン、システアミン、N-アセチルシステイン(NAC)、グルタチオン、グルタチオン・エチルエステル、グルタチオンジエチルエステル、グルタチオントリエチルエステル、システアミン、シスタチオン、N,N'-ジアセチル-L-シスチン(DiNAC)、(2(R,S)-D-リボ-(1',2',3',4'-テトラヒドロキシブチル)-チアゾリジン-4(R)-カルボン酸(RibCys)、2-アルキルチアゾリジン2(R,S)-D-リボ-(1',2',3',4'-テトラヒドロキシブチル)チアゾリジン(RibCyst)及び2-オキソ-L-チアゾリジン-4-カルボン酸(OTCA)、サリチル酸、ロイコボリン、ロイコボリンカルシウム、デクスラゾキサン、ピラセタム、オキシラセタム、アニラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム(Carphedon)、エピラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ニコラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファソラセタム、コルラセタム、ジミラセタム、ブリバラセタム、セレトラセタム、ロリプラム及び/又はこれらの組み合わせを含む。
いくつかの実施形態において、耳保護剤はキサンチン酸化酵素インヒビタを含んでいる。限定することではないが、キサンチンオキシダーゼインヒビタの例はアロプリノール、1‐メチルアルプリノール、2‐メチルアルプリノール、5‐メチルアルプリノール、7‐メチルアルプリノール、1,5-ジメチルアルプリノール、2,5-ジメチルアルプリノール、1,7-ジメチルアルプリノール、2,7-ジメチルアルプリノール、5,7‐ジメチルアルプリノール、2,5,7-トリメチルアルプリノール、1‐エトキシカルボニルアルプリノール、及び1-エトキシカルボニル-5-メチルアルプリノールを含む。
いくつかの実施形態において、耳保護剤は、毒性物質と結合して使用される。
有毛細胞再生モジュレータ
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の再生を調節する薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞モジュレータにより、細胞は耳有毛細胞及び/又は支持細胞の増殖及び/又は再生を可能にする。したがって、いくつかの実施形態は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)モジュレータの使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、CDKモジュレータがp27Kip1モジュレータである。p27Kip1は、コルチ器官への感覚毛細胞再生を媒介する。いくつかの例において、内耳の感覚毛細胞(例えば短い有毛細胞)は、支持細胞(例えばハンゼン病細胞、ダイテルス細胞及び/又は柱状細胞など)の増殖の刺激により再生成される。いくつかの例において、サイクリン依存性キナーゼp27Kip1のモジュレータは、p27Kip1の活性を調節するアンチセンス分子(例えばsiRNA分子)またはペプチド分子(例えばp27Kip1のための内因的リガンド)である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、内耳の感覚毛細胞または内耳の支持細胞の形成を刺激することができる核酸及び/又は転写因子(例えばPOU4F1、POU4F2、POU4F3、Brn3a、Brn3b及び/又はBrn3cなど)を含む。このような核酸分子及び/又は転写因子の制限しない例は、限定することではないが、米国特許公報第20070041957号、第20030203482号に記載される分子を含み、該文献き記載される開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
免疫細胞
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を減少、反転又は遅延させる薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、耳の有毛細胞およびニューロンの回復に関与する細胞の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、耳の有毛細胞およびニューロンの回復に関与する細胞は、マクロファージ、ミクログリア、及び/又はミクログリア様細胞である。特定の例において、マクロファージ及びミクログリアの濃度は、耳毒性剤を用いる処置によって損傷した耳において増加する。特定の例において、ミクログリア様細胞は、耳毒性のネオマイシン抗生物質から廃棄物を除去する。
耳毒性剤と毒性物質
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮するのは、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞のを破壊する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、致命的損傷及び/又は耳のニューロン及び/又は有毛細胞における死を誘導する、薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞(例えば有毛細胞)の死は、本明細書に記載されている任意の耳の疾患または疾病に関連づけられた症状(例えば回転性目まい)を処置する。いくつかの実施形態において、毒性物質は、一例として、回転性目まいなどの症状を緩和する耳内での化学的病変を誘導する。いくつかの実施形態において、耳のニューロン及び/又は有毛細胞において、致命的損傷を及ぼす及び/又は死を誘導する薬剤は、アミノグリコシド抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、またアミカシン)、マクロライド系抗生物質(例えば、エリスロマイシン)、グリコペプチド系抗生物質(例えばバンコマイシン)、ループ利尿薬(例えばフロセミド)、ニコチン、6-ヒドロキシドーパミン(6-OH DPAT)、6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン(DNQX)などである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、耳内での有毛細胞を選択的に破壊することにより、回転性目まいを処置するために使用される毒性物質を含む。このようないくつかの実施形態において、毒性物質を含む耳の組成物は以下の点において有利である。このような組成物は耳に非全身的に投与され、毒性物質の全身性の投与に関連した副作用を引き起こさないため、このような組成物は回転性目まいの処置に治療効果を提供する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、臨床前の動物研究(例えば動物モルモットモデルの研究)に役立つ。いくつかの例において、、毒性物質を含む本明細書に記載される組成物は、動物の耳において化学的病変の誘導に使用される。いくつかの例において、このような動物は、動物モデルにおいて本明細書に記載される組成物の治療的効果のテストのために使用される。
レチノ芽細胞腫蛋白質の調節
本明細書に開示される製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。さらに、本明細書で考慮されるのは、ニューロン及び/又は耳の有毛細胞を破壊する薬剤である。したがって、いくつかの実施形態は、網膜芽細胞腫タンパク質(pRB)を調節する薬剤の使用を組み入れる。pRBはポケットタンパク質ファミリーのメンバーである。pRBはRB1遺伝子によってコード化される。特定の例において、pRBは、転写因子のE2fファミリーに結合し不活性化させることにより、G1からS相までの推移を抑制する。特定の例において、pRBは、また分化および有毛細胞の残存を調節する。特定の例において、pRBノックアウトマウスは、有毛細胞の増加した増殖を示す。
いくつかの実施形態において、pRBの1以上を調節する薬剤は、pRBのアゴニストである。いくつかの実施形態において、pRBの1以上を調節する薬剤は、pRBのアンタゴニストである。特定の例において、pRBを刺激する又は拮抗する化合物が同定される(例えば高スループットスクリーンの使用により)。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子がE2F結合配列の下流に置かれるように構成物が設計される。いくつかの実施形態において、結合配列は、TTTCGCGCである。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β-ラクタマーゼまたはβ-ガラクトシダーゼである。特定の例において、E2fはレポーター遺伝子の転写及び発現を引き起こす結合配列に結合する。特定の例において、pRBのアゴニストは、pRBのE2fへの結合の増大をもたらす。特定の例において、pRBとE2fの結合の増大は、レポーター遺伝子の転写および発現の減少をもたらす。特定の例において、pRBのアンタゴニストがpRBのE2fへの結合の減少をもたらす。特定の例において、pRBとE2fの結合の減少は、レポーター遺伝子の転写および発現における増大をもたらす。
いくつかの実施形態において、pRBを調節する薬剤は、siRNA分子である。特定の例において、siRNA分子は、RNA干渉(RNAi)によるRB1遺伝子の転写を阻害する。いくつかの実施形態において、RB1 mRNA配列に補足的な配列を備えた二重鎖RNA(dsRNA)分子が、(例えばPCRによって)生成される。いくつかの実施形態において、RB1mRNAに補足的な配列を備えた20〜25bpのsiRNA分子が生成される。いくつかの実施形態において、20〜25bpのsiRNA分子は、各鎖の3'末端および5'リン酸塩末端のおよび3'ヒドロキシル末端上に2〜5bpのオーバーハング(overhang)を有する。いくつかの実施形態において、20〜25bpのsiRNA分子は、ブラントエンドを有する。RNAを生成するための技術については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrook et al.、1989)およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual、third edition(Sambrook and Russel、2001)、本明細書に「Sambrook」として共同で引用されている);Current Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al.、eds.、1987、2001を通じて補足を含む);Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc.、New York、2000)を参照。これらは、そのような開示のために参照として本明細書に組み入れられる。
いくつかの実施形態において、dsRNAまたはsiRNA分子は、制御放出性の耳に許容可能な微粒子もしくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルへと組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
特定の例において、dsRNAまたはsiRNA分子の投与の後、投与位置の細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、及び/又は前庭迷路の細胞)は、dsRNAまたはsiRNA分子で形質転換される。形質転換に続く特定の実例において、dsRNA分子は、約20〜25bpの多数のフラグメントへと切断され、siRNA分子を与える。特定の例において、フラグメントは、各鎖の3'末端の上に約2bpのオーバーハングを有する。
いくつかの例において、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって2つの鎖(ガイド鎖および非ガイド鎖)に分割される。特定の例において、ガイド鎖は、RISCの触媒作用成分(つまり、アルゴノート)に組み入れられる。ガイド鎖は、補足的なRB1 mRNA配列に結合する。いくつかの例において、RISCは、RB1 mRNAを切断する。いくつかの例において、RB1遺伝子の発現は下流調節される。
いくつかの実施形態において、RB1 mRNAに補足的な配列は、ベクターに組みいれられる。いくつかの実施形態において、配列は2つのプロモータ間に配置される。いくつかの実施形態において、プロモータは反対方向で位置づけられる。いくつかの実施形態において、ベクターは、細胞と連絡する。いくつかの例において、細胞は、ベクターで形質転換される。形質転換に続くいくつかの例において、配列のセンス鎖および非センス鎖が生成される。特定の例において、センス鎖および非センス鎖は、siRNA分子へと切断されるdsRNA分子を形成するためにハイブリッド形成される。特定の例において、鎖は、siRNA分子を形成するためにハイブリッド形成される。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド(例えば、pSUPER;pSUPER.neo;pSUPER.neo+gfp)である。
いくつかの実施形態において、ベクターは、制御放出性の耳に許容可能な微粒子若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソームか微小粒子、あるいは熱可逆性ゲル。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な微粒子、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、あるいはそれらの組み合わせの中に注入される。
甲状腺ホルモン受容体調節
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を減少、又は遅延させる薬剤である、及び/又は耳のニューロン及び/又は有毛細胞を促進する、及び毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。従って、いくつかの実施形態は、甲状腺ホルモン(TH)受容体を調節する薬剤の使用を組み入れる。TH受容体は、核ホルモン受容体のファミリーである。ファミリーは、限定することではないが、TRα1及びTRβを含む。特定の例において、TRβノックアウトマウスは、聴覚刺激に対する減少した反応性、および有毛細胞におけるK+電流の減少を示す。
ナトリウムチャネル遮断薬
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、ニューロンと有毛細胞の悪化を調節する薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。特定の例において、興奮毒性は、Na+チャネルの過度の開口部を引き起こす。特定の例において、このことは、過剰なCa2とNa+イオンがニューロンに入ることをもたらす。特定の例において、ニューロンへのNa+イオンの過剰な流入により、ニューロンはよりしばしば興奮を引き起こす。特定の例において、この増加した興奮によって、遊離基および炎症を引き起こす化合物の迅速な蓄積が起こる。特定の例において、遊離基は、細胞内の貯蔵エネルギーを使い果たし、ミトコンドリアを損傷する。さらに、特定の例において、過剰レベルのNa+イオンは、過剰レベルの酵素を活性し、該酵素は、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含むが、これらに限定されない。特定の例において、これらの酵素の過剰な活性は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、ニューロンのDNAに損傷を与えるという結果をもたらす。したがって、いくつかの実施形態は、Na+チャネルの開口を拮抗し、耳有毛細胞死及び/又は耳有毛細胞損傷を減少させる、あるいは反転させる薬剤の使用を組み入れる。
いくつかの実施形態において、1以上のTH受容体を調節する薬剤は、1以上のTH受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態において、1以上のTH受容体のアゴニストは、T3(3,5,3'-トリヨード-L-サイロニン、KB-141(3,5-ジクロロ-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェノキシ)フェニル酢酸、GC-1 (3,5-ジメチル-4-(4'-ヒドロキシ-3'-イソプロピルベンジル)-フェノキシ(酢酸)、GC-24 (3,5-ジメチル-4-(4'-ヒドロキシ-3'-ベンジル)ベンジルフェノキシ酢酸、ソベチローメ(QRX-431)、4-OH-PCB106(4-OH-2',3,3',4',5'-ペンタクロロビフェニル、MB07811((2R,4S)-4-(3-クロロフェニル)-2-[(3,5-ジメチル-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルベンジル)フェノキシ)メチル]-2-オキシド-[1,3,2]-ジオキサホスホナン)、MB07344(3,5-ジメチル-4-(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルベンジル)フェノキシ)メチルホスホン酸及びこれらの組み合わせである。特定の例において、KB-141、GC‐1、ソベチローメ、及びGC-24は、TRβには選択的である。
TRPV調節
本明細書に開示された製剤とともに使用するのに考慮されるのは、ニューロン及び有毛細胞の悪化を調節する薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。従って、いくつかの実施形態は、TRPV受容体を調節する薬剤の使用を組み入れる。TRPV(一時的な受容器電位のバニロイドチャネル)受容体は、他のイオン中で、カルシウムに透過性を有する、非選択的イオンチャンネルのファミリーである。ファミリーの6のメンバーが存在する。すなわちTPPV1-6である。特定の例において、カナマイシンでの処置後に、TPPV1はアップレギュレートされる。さらに、特定の例において、TRPV 4受容体の拮抗は、マウスを音響外傷に対して弱くなる。さらに、ある例において、カプサイシン、TRPV 1のアゴニストは、虚血後に自発的運動量亢進(hyoerlocomotion)を防ぐ。
いくつかの実施形態において、TRPV受容体の1以上を調節する剤は、1以上のTRPV受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態において、TRPV受容体の1以上のアゴニストは、カプサイシン、レシニフェラトキシンまたはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、TRPVアゴニストを備える組成物を調節する耳感覚細胞の投与は、ニューロンと有毛細胞の悪化を減少させる又は反転させる。
いくつかの実施形態において、Na+チャンネル遮断薬はビンポセチン((3a,16a)-エブルナメニン-14-カルボン酸(エチルエステル)、シパトリギン(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-5-(2,3,5-トリクロロフェニル)-ピリミジン-4-アミン、アミロライド(3,5-ジアミノ-N-(アミノイミノメチル)-6-クロロピラジンカルボキシアミド塩酸塩、カルバマゼピン(5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-カルボキサミド、TTX(オクタヒドロ-12-(ヒドロキシメチル)-2-イミノ-5,9:7,10a-ジメタン o-10aH-[1,3]ジオキソシノ[6,5-d]ピリミジン-4,7,10,11,12-ペン トル)、RS100642(1-(2,6-ジメチル-フェノキシ)-2-エチルアミノプロパン塩酸塩、メキシレチン(1-(2,6-ジメチルフェノキシ)-2-アミノプロパン塩酸塩)、QX-314(N-(2,6-ジメチルフェニルカルバモイルメチル)トリエチルアンモニウムブロマイド、フェニトイン(5,5-ジフェニルイミダゾリジン-2,4-ジオン)、ラモトリジン(6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3,5-ジアミン、4030W92(2,4-ジアミノ-5-(2,3-ジクロロフェニル)-6-フルオロメチルピリミジン、BW1003C87(5-(2,3,5-トリクロロフェニル)ピリミジン-2,4-(1.1 エタンスルホネート)、QX-222(2-[(2,6-ジメチルフェニル)アミノ]-N,N,N-トリメチル-2-オキソエタ(ニミニウムクロリド)、アンブロキソール(トランス-4-[[(2-アミノ-3,5-ジブロモフェニル)メチル]アミノ]シクロ(ヘキサノール塩酸塩)、R56865(N-[1-(4-(4-フルオロフェノキシ)ブチル]-4-ピペラジニル-N-メチル-2-ベンゾ-チアゾルアミン)、ルベルゾール、アジュマリン((17R,21)-アジマリン-17,21-ジオール、プロカインアミド(4-アムノ-N-(2-ジエチルアミノエチル)ベンズアミド塩酸塩、フレカイニド、リルゾール、またはこれらの組み合わせである。
コルチコステロイド
本明細書に開示された組成物及び製剤とともに使用するのに考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を減少、反転又は遅延させる薬剤である、及び内耳における毛の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱又は欠損を原因とする、難聴または聴力低下を処置する又は改善するための薬剤である。従って、いくつかの実施形態は、オトトキシン(ototoxins)から耳の有毛細胞を保護する薬剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、オトトキシンから耳の有毛細胞を保護する薬剤がステロイドである。いくつかの実施形態において、オトトキシンから耳の有毛細胞を保護するステロイドがコルチコステロイドである。いくつかの実施形態において、コルチコステロイドはトリアムシノロンアクテノイド及び/又はデキサメタゾンである。特定の例において、トリアムシノロンアクテノイドおよびデキサメタゾンは、自然発生のトキシン、4-ヒドロキシ-2,3-ノネナール(HNE)により引き起こされた損傷から耳の有毛細胞を保護し、該トキシンは酸化ストレスに応じて内耳中で生産される。他のコルチコイドは、限定することではないが、21-アセトキシプレグネノローン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、フルプレドナート酢酸塩、フルプレドニソロン、フルドロキシコルチド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオン酸塩、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ハイドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニソロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルバート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-酢酸塩、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、あるいはトリアムシノロンヘキサセトニド、またはリン酸塩プロドラッグまたは、これらのエステルプロドラッグを含む。
幹細胞および分化された耳感覚細胞
本明細書に開示される製剤の使用のために考慮されるのは、耳のニューロン及び/又は有毛細胞を補う又は置換する、細胞の移植片である。いくつかの実施形態において、薬剤は、幹細胞である。いくつかの実施形態において、薬剤は部分的にまたは完全に分化された耳感覚細胞である。いくつかの実施形態において、分化された耳感覚細胞は、ヒトドナーに由来する。いくつかの実施形態において、分化された耳感覚細胞は、幹細胞に由来する。その分化は人工の(例えば研究所)状態の下で誘導された。
幹細胞は多数の細胞タイプに分化する能力を所有する細胞である。全能性幹細胞は胚細胞または胚体外細胞に分化することができる。多能性細胞は、内胚葉、中胚葉または外胚葉のいずれか由来の細胞に分化することができる。分化多能性の細胞は、密接に関連する細胞(例えば、造血幹細胞)に分化することができる。分化単能の細胞は、1つのタイプのみの細胞に分化することができるが、他の幹細胞は自己再生の特徴を有している。いくつかの実施形態において、幹細胞は、全能性、多能性、多分化能、又は分化多能性である。さらに、幹細胞は、自身の分化(すなわち自己再生)を行わずに、有糸分裂を受ける場合がある。
胚幹(ES)細胞は、胚盤胞または初期段階の胎児の内部細胞塊の外胚葉組織に由来する幹細胞である。ES細胞は多能性である。いくつかの実施形態において、幹細胞は、ES細胞である。成体幹細胞(体細胞または生殖系列細胞としても知られている)は、成熟した有機体から分離された細胞であり、細胞は、自己再生の特徴および多数の細胞型に分化する能力を有する。成体幹細胞は、多能性(例えば、臍帯血において見出される幹細胞)、分化能性、又は分化単能性である。いくつかの実施形態において、幹細胞は、成体幹細胞である。
いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、分化刺激剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、分化刺激剤は成長因子である。いくつかの実施形態において、成長因子は、ニューロトロフィン(例えば、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、または新しいニューロトロフィン-1(NNT1))である。いくつかの実施形態において、成長因子はFGF、EGF、IGF、PGFまたはこれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、制御放出剤としてこれらを必要とする被検体に対して投与される。いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、即時放出剤(例えば細胞懸濁液)としてこれらを必要とする被検体に対して、制御放出型耳感覚細胞調節剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、制御放出型耳感覚細胞調節剤がAtoh1またはBRN3の遺伝子、RB1を標的とするsiRNA配列、成長因子またはこれらの組み合わせを含むベクターである。
いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、蝸牛又前庭迷路で投与される。いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、鼓室内注射及び/又は耳介後部の切開により、投与される。いくつかの実施形態において、幹細胞及び/又は分化された耳感覚細胞は、コルチ器官、内耳神経、及び/又は膨大部綾と接触させる。
即時放出薬剤
いくつかの実施形態において、組成物は、耳のニューロン及び/又は有毛細胞のモジュレータを、即時放出薬剤としてさらに含み、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の即時放出モジュレータは、制御放出薬剤と同一の薬剤、耳のニューロン及び/又は有毛細胞と異なるモジュレータ、追加の治療薬、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、即時放出薬剤が幹細胞、分化された耳感覚細胞、免疫系細胞、Atoh1遺伝子の複製を伴うベクター、BRN3遺伝子の複製を伴うベクター、siRNA配列、miRNA配列またはこれらの組み合わせである
直接注入
いくつかの実施形態において、薬剤のうちの1つが内耳に直接注入され、該注入には、正円窓膜を介した注入を含み、一方、第2の薬剤が制御放出型製剤の形態になるように、第2薬剤は、正円窓膜上で、またはその膜に接して投与される。1つの実施形態において、直接投与された薬剤は、幹細胞、分化された耳感覚細胞、免疫系細胞、Atoh1遺伝子の複製を伴うベクター、BRN3遺伝子の複製を伴うベクター、siRNA配列、miRNA配列またはこれらの組み合わせである。
活性薬剤の濃度
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した組成物は、組成物の約0.01重量%と約90重量%の間、約0.01重量%と約50%重量%の間、約0.1重量%と約40重量%の間、約0.1重量%と30重量%の間、約0.1重量%と20重量%の間、約0.1重量%と約10重量%の間、または約0.1重量%と約5重量%の間の活性医薬成分、活性成分、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の濃度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載した組成物は、組成物の約1重量%と約50重量%の間、約5重量%と約50重量%の間、約10重量%と約40重量%の間、または約10重量%と約30重量%の間の活性医薬薬剤、活性成分、またはその薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の濃度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約70重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約60重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約50重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約40重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約30重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約20重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なこれらのプロドラッグもしくは塩、製剤の約15重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、耳感覚細胞調節剤、製剤の約10重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約5重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約2.5重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約1重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約0.5重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約0.1重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤、または薬学的に許容可能なそれらのプロドラッグ若しくは塩、製剤の、約0.01重量%を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤は、約0.1mg/mLと約70mg/mLの間、約0.5mg/mLと約70mg/mLの間、約0.5mg/mLと約50mg/mLの間、約0.5mg/mLと約20mg/mLの間、約1mg/mLと約70mg/mLの間、約1mgと約50mg/mLの間、約1mg/mLと約20mg/mLの間、約1mg/mLと約10mg/mLの間、あるいは約1mg/mLと約5mg/mLの間の活性薬剤の、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグまたは塩の濃度を有し、活性薬剤の、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグまたは、塩の容積を有する。
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている任意の組成物またはデバイスは、1以上の活性薬剤及び/又は、限定することではないが、抗嘔吐性薬剤、抗菌剤、酸化防止剤、抗敗血性の薬剤またはその他同類のものを含む第2治療薬剤を備える。
制吐剤
制吐剤は、本明細書に開示された製剤と組合わせて任意で使用される。制吐剤は、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミドおよびトリエチルペラジン(triethylperazine)を含む。他の制吐剤は、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロンおよびパロノセトロンのような5HT3アンタゴニスト、およびドロペリドールのような神経弛緩薬を含む。さらに、制吐剤は、メクリジンのような抗ヒスタミン剤、パーフェナジンのようなフェノチアジンおよびチエチルペラジン、ドンペリドン、プロペリドール(properidol)、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、メトクロプラミド及びこれらの組み合わせを含むドーパミン拮抗薬、ドロナビノール、ナビロン、サティベックス及びこれらの組み合わせを含むカンナビノイド、スコポラミンを含む抗コリン薬、およびデクサメタゾーンを含むステロイド、トリメトベンズアミン(trimethobenzamine)、エメトロール(emetrol)、プロポフォール、ムシモール及びそれらの組み合わせを含む。
抗菌物質
抗菌物質もまた、本明細書に開示された製剤を備えた有用なものとして考慮される。抗菌物質は、バクテリア、菌類または寄生生物を含む微生物を阻害または根絶するために働く薬剤を含む。特定の抗菌物質は、特定の微生物と闘うために使用され得る。したがって、熟練した開業医は、どの抗菌物質薬剤が、同定された微生物または発現した兆候に関連し、または依存することを知るだろう。抗菌物質は、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤および駆虫薬を含む。
抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン(trovfloxacin)、マフェナイド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド(sulfanimilimde)、スルファサラジン(sulfsalazine)、スルフイソキサゾール(sulfsioxazole)、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、oxtetracycline、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン(quinuspristin)/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾールおよびその組み合わせを含む。
抗ウイルス剤はアシクロビル、ファムシクロビルおよびバラシクロビルを含む。他の抗ウイルス剤は、アバカビル(abacavir)、アシクロビル、アデフォビル(adfovir)、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール(arbidol)、アタザナビル、アトリプラ、ブリブジン、シドフォビル、コンビビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフュヴァタイド、エンテカビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イムノヴィル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼインヒビタ、インターフェロンタイプIIIを含む相互担体、インターフェロンタイプII、インターフェロンタイプ、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、MK-0518、マラビロック、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir) I、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノフォビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン及びこれらの組み合わせを含む。
抗真菌剤は、アモロルフィン(amrolfine)、ブテナフィン(utenafine)、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコーマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、リポソームニスタチン(nystastin)、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸塩、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。駆虫薬は、アミトラズ、アモスカネート、アベルメクチン、カルバドックス、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamizine)、ジメトリダゾール、ジミナゼン、イベルメクチン、マクロフィラリサイド、マラチオン、ミタバン(mitaban)、オキサムニキン、ペルメトリン、プラジカンテル、パモ酸ピランテル(prantel pamoate)、セラメクチン、スチボグルコン酸ナトリウム、チアベンダゾール及びそれらの組み合わせを含み得る。
抗酸化物
酸性化剤は、本明細書に記載される組成物と組合わせて任意に使用される。酸性化剤は、また本明細書に開示される製剤とともに用いられると、有益であると考慮され、該製剤は、耳のニューロン及び/又は有毛細胞の悪化を調節する薬剤である。従って、いくつかの実施形態は、酸化防止剤の使用を組み入れる。いくつかの実施形態において、酸化防止剤はビタミンCである、N-アセチルシステイン、ビタミンE、エブセレン(2-フェニル-1、2-ベンジソセレナゾール-3(2H)-オン(PZ 51またはDR3305とも呼ばれる)、L-メチオニン、イデベノン(2-(10-ヒドロキシデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオン)である。いくつかの実施形態において、酸化防止剤は、栄養剤であり、正常細胞の成長を促進する。
抗敗血症剤
制吐剤は、本明細書に開示の組成物と組合わせて任意に使用される。本明細書に開示の製剤を備えた有用なものとして、抗敗血症剤も予期される。抗敗血症剤は、酢酸、ホウ酸、ゲンチアナバイオレット、過酸化水素、過酸化カルバミド、クロルヘキシジン、食塩水、マーキュロクロム、ポビドンヨード、ポリヒドロキシンヨウ素(polyhyroxine iodine)、クレシル酸塩および酢酸アルミニウム、またその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
他の薬剤は、本明細書に記載されている任意の組成物またはデバイスにおいて任意に使用される。いくつかの実施形態において、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(例えば、ラサギリン、R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン)は本明細書に記載されている任意の組成物またはデバイスにおいて使用される。いくつかの実施形態において、アデノシンアンタゴニスト(例えばR-N6-フェニルイソプロピルアデノシン、1-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸(プロシステイン))が、本明細書に記述された任意の組成物またはデバイスにおいて使用される。活性薬剤及び/又は第2治療薬剤の任意の組み合わせは、本明細書に記載される組成物に適合性を有する。
耳の外科的手術および移植
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬製剤、組成物およびデバイスは、移植(例えば蝸牛移植)と組み合わせて(例えば、移植、短期の使用、長期使用、あるいは除去)使用される。本明細書に使用されるように、移植は、内耳又は中耳医療デバイス、例えば、蝸牛移植、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短電極、ミクロの人工補綴またはピストン様人工補綴、針、幹細胞移植、薬物送達デバイス、任意の細胞ベースの治療剤又はこれらと同類のものを含む。いくつかの例において、移植は、難聴を経験する患者と連携して使用される。いくつかの例において、難聴は誕生の時存在する。いくつかの例において、難聴は、AIED、細菌性髄膜炎などのような疾病に関連付けられ、蝸牛構造及び重大な難聴の迅速な閉塞を伴う骨壊死及び/又は神経の損傷をもたらす。
いくつかの例において、移植組織は、耳内での免疫細胞または幹細胞移植である。いくつかの例において、移植は、耳の後ろに置かれた外側部分を有する小さい電子デバイス、及びほとんど耳が聞こえないか、ひどく聴力が低下した人に音の感覚を供給する、皮膚の下に外科的に置かれる第2の部分を有する。ほんの一例として、そのような蝸牛医療機器は、耳の破損部分を迂回し、直接聴神経を刺激する。いくつかの例において、人工内耳は、片側の聴覚喪失において使用される。いくつかの例において、人工内耳は、両耳における聴覚喪失のために使用される。
いくつかの実施形態において、耳介入処置(例えば中耳内注射、あぶみ骨切除手術、医療機器埋込みまたは細胞ベースの移植)と組合わせて本明細書に記載される耳感覚細胞モジュレータ組成物またはデバイスの投与により、耳構造、例えば刺激作用、細胞障害、細胞死、骨壊死に対する付随的損傷、及び/又は、骨壊死及び/又は、外部耳介入処置(例えば、外部デバイス及び/又は耳内での細胞の)によって引き起こされる神経細胞悪化を遅延させる又は妨ぐ。いくつかの実施形態において、移植と組み合わせた本明細書に記載の耳感覚細胞モジュレータ組成物またはデバイスの投与は、移植のみと比較して、難聴のより有効な回復を可能とする。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳感覚細胞モジュレータ組成物またはデバイスの投与は、基礎となる疾病(例えば細菌性髄膜炎、自己免疫耳疾患(AIED))によって引き起こされた蝸牛の構造に対する損傷を減少させ、蝸牛のデバイス移植を達成することが可能である。いくつかの実施形態において、耳の外科的手術、医療デバイス埋込み及び/又は細胞移植に関連して、本明細書に記載されている組成物またはデバイスの投与することで、耳の手術、医療デバイス埋込み及び/又は細胞移植に関連した細胞障害及び/又は細胞死(例えば耳感覚毛細胞死及び/又は損傷)を減少する又は防ぐ。
いくつかの実施形態において、蝸牛移植又は幹細胞移植に関連して、本明細書に記載される耳感覚細胞モジュレータ組成物又はデバイス(例えば、成長因子を含む組成物又はデバイス)は、栄養作用(例えば、細胞の健全な成長、及び/又は埋込み又は移植を促進する)を有する。いくつかの実施形態において、栄養作用は、耳の手術の間、または中耳内の注入手続中が望ましい。いくつかの実施形態において、栄養作用は、医療機器の取り付け、または細胞移植の後であることが望ましい。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の耳感覚細胞モジュレータ組成物またはデバイスは、直接的な蝸牛への注射により、鼓室階切開によって、または正円窓膜上への付着によって投与される。
いくつかの実施形態において、抗炎症組成物または、免疫抑制剤組成物(例えばコルチコステロイドのような免疫抑制剤を含む組成物)の投与が、耳の外科的手術、医療機器の埋込みまたは細胞移植に関連した炎症及び/又は感染を少なくする。いくつかの例において、本明細書に記載の耳感覚細胞モジュレータ製剤を備えた外科的手術領域の灌流は、手術後の及び/又は移植後の合併症(例えば、炎症、有毛細胞の損傷、神経退化、骨新生など)を減らし、または除く。いくつかの例においては、本明細書に記載の製剤を備えた手術の領域の灌流は、手術後のまたは移植後の回復時間を短くする。いくつかの実施形態において、耳内での移植前に本明細書に記載される組成物で医療機器が覆われる。
1つの態様において、本明細書に記載される製剤及びその投与方法は、内耳部分の直接的な灌流の方法に適用可能である。したがって、本明細書に記載されている製剤は、耳の介在と組み合わされることで有用である。いくつかの実施形態において、耳介入処置は、移植方法(例えば、蝸牛におけるデバイスの移植)である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳介入処置は、非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨切除術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む手術を含む。いくつかの実施形態において、内耳部分は、耳介入処置の前に、耳介入処置の間、耳介入処置の後、またはこれらの組み合わせで、本明細書に記載の製剤で灌流される。
いくつかの実施形態において、潅流が耳介入処置と組合わせて実行される場合、耳感覚細胞組成物は即時放出組成物である。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、本明細書に記載の即時放出製剤は、非肥厚性組成物であり、持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を実質的に含まない。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物は、製剤の重量で5%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物は、製剤の重量で2%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物は、製剤の重量で1%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を含む。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、手術領域の灌流のために使用される、本明細書に記載の組成物は、基本的にゲル化成分を含まず、該組成物は、即時放出組成物である。
他の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、耳介入処置(例えば、医療機器又は細胞ベースの治療剤の埋込みの後に)の後に投与される。
前記実施形態のうちのいくらかにおいて、耳介入処置後に投与される本明細書に記載される組成物は、中間放出組成物または持続放出組成物であり、本明細書に記載されるものとしてゲル化成分を包含する。
以下に示す(表1)のは、本明細書に開示される製剤及びデバイスと共に使用するのために考慮される活性薬剤の例が提示される。
1以上の活性薬剤が、本明細書に記載される製剤またはデバイスのういずれかにおいて使用される。
本明細書に開示された製剤とともに使用される活性薬剤(これらの活性薬剤の薬学的に許容可能な塩類を含む)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物である。さらに、本明細書に提供されるのは、前記耳用組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、滅菌されている。本明細書に開示する実施形態には、ヒトにおいて使用するための、本明細書に開示した医薬組成物またはデバイスを滅菌するための手段およびプロセスが、含まれる。目標は、感染を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬品を得ることである。U.S.食品医薬品局は、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで利用可能である、規定出版物「Guidance for Industry: Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」を提供し、該出版物は、全体を参照することにより、本明細書に組み込まれるものとする。
本明細書で使用される場合、滅菌は、生成物または包装に存在する微生物を破壊するか、または除去するプロセスを意味する。目的物および組成物を滅菌するために、利用可能な任意の適切な方法を使用する。微生物を不活性化するのに利用可能な方法としては、限定されないが、激しく熱を加えること、致死性の化学物質、またはγ線を適用することが挙げられる。ある実施形態では、耳用治療製剤を調製するプロセスは、熱による滅菌、化学物質による滅菌、放射線による滅菌、または濾過滅菌から選択される滅菌方法に製剤を曝露する工程を含む。使用する方法は、滅菌対象のデバイスまたは組成物の性質に大きく依存する。殺菌の多くの方法の詳細な記載は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy published by Lippincott, Williams & Wilkins」の40章において与えられ、この主題に関して参照することにより組み込まれる。
加熱滅菌
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は、飽和蒸気によるオートクレーブを用いることによる方法である。この方法では、少なくとも121℃の温度での飽和蒸気を目的物と接触させて、滅菌することができる。目的物を滅菌する場合には、熱を微生物に直接的に移動させるか、または滅菌する水溶液の塊を加熱することによって、微生物に間接的に移動させる。この方法は、滅菌プロセスに柔軟性、安全性、経済性を与えるので、広範囲に実施される。
乾熱滅菌は、高温で微生物を死滅させ、発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、HEPAで濾過した微生物を含まない空気を、滅菌プロセスのために少なくとも130〜180℃の温度まで加熱し、発熱物質除去プロセスのために少なくとも230〜250℃の温度まで加熱するのに適したデバイスで行う。濃縮した製剤または粉末状製剤を再構築するための水も、オートクレーブで滅菌する。ある実施形態では、本明細書に記載した製剤は、乾熱によって滅菌される微粉化した耳感覚細胞調節剤(例えば、ケタミン微粉末粉剤)を含み、該乾熱は、例えば、粉末内部温度が130〜140℃で約7〜11時間、または、内温150〜180℃で1〜2時間の加熱である。
化学的滅菌法
化学物質による滅菌方法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物に対する代替法である。この方法では、殺菌性を有する種々の気体および蒸気、例えば、エチレンオキシド、二酸化塩素、ホルムアルデヒドまたはオゾンを抗アポトーシス薬として使用する。例えば、エチレンオキシドの殺菌活性は、エチレンオキシドが反応性アルキル化剤として作用する能力によるものである。したがって、滅菌プロセスは、エチレンオキシド蒸気を、滅菌対象の製品と直接接触させることが必要となる。
放射線殺菌
放射線による滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般的に使用される放射線は、γ線か、60Co源由来のβ線である。γ線の透過能は、溶液、組成物、不均質な混合物を含む多くの種類の製品を滅菌するのに使用することができる。この照射による殺菌効果は、γ線と生体高分子との相互作用によるものである。この相互作用によって、帯電している種と、遊離ラジカルとが生成する。転位および架橋プロセスのようなその後の化学反応によって、上記の生体高分子の通常の機能が失われる。また、本明細書に記載した製剤が、場合によりβ線を用いて滅菌されることもある。
濾過
濾過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルターを用い、熱に感受性の溶液を濾過する。このようなフィルターは、混合セルロース誘導体エステル(MCE)、フッ化ポリビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強く、均質なポリマーで0.1〜0.22μmの孔径を有する。種々の特性を有する溶液は、任意に、異なるフィルター膜を用いて濾過される。例えば、PVF膜およびPTFE膜は、有機溶媒を濾過するのに十分適しており、一方、水溶液は、PVF膜またはMCE膜を介して濾過する。フィルター装置は、シリンジに取り付ける利用時点の(a point-of-use)の使い捨てフィルターから、製造プラントで使用する商業規模のフィルターまで、多くの規模で使用するものが利用可能である。膜フィルターは、オートクレーブまたは化学滅菌で滅菌する。膜濾過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルにしたがって行い(文献「Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids、Vol4、No.3.Washington、D.C:Health Industry Manufacturers Association、1981」)、Brevundimonas diminuta(ATCC19146)のような一般的ではないほど小さい微生物について、既知の量(約107cm2)を用いた膜フィルターのチャレンジ試験を含む。
医薬組成物は、任意に、膜フィルターを通すことによって滅菌される。ナノ粒子(米国特許第6,139,870)または多重ラメラ層状の小胞(Richard et al. Intrernational Jounal of Pharmaceutics (2006), 312 (1-2:144-50)を備える製剤は、組織化された構造を破壊することなく、0.22μmの濾過を介して滅菌を受け入れられる。
ある実施形態では、本明細書に開示する方法は、濾過滅菌を用いることによって、製剤(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、粒子製剤が、濾過滅菌に適するような粒子を含む。さらなる実施形態では、前記粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満の粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌濾過することによって確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態において、低温滅菌濾過は、0〜30℃の間、0〜20℃の間、0〜10℃の間、10〜20℃の間、または20〜30℃の間の温度で行われる。
別の実施形態では、耳に許容可能な粒子製剤を調製するプロセスは、以下のものを含む。即ち、粒子製剤を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程と、この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と、および、投与前に、この粒子製剤を滅菌水で再構築する工程である。ある実施形態では、本明細書に記載した製剤は、1個のバイアル製剤中、微粉化した活性医薬成分を含有する懸濁物として製造される。1個のバイアル製剤は、滅菌ポロクサマー溶液と、微粉化した滅菌活性成分(例えば、ケタミン)と無菌状態で混合し、製剤を滅菌医薬容器に移すことによって調製される。ある実施形態では、本明細書に記載した製剤を懸濁物として含有する1個のバイアルを、分注および/または投与前に再び懸濁させる。
特定の実施形態では、濾過手順および/または充填手順は、本明細書に記載した製剤のゲル温度(Tgel)よりも約5℃低い温度で、理論値が100cPの粘度で行われ、蠕動ポンプを用い、妥当な時間で濾過することができる。
別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、濾過滅菌に適したナノ粒子製剤を含む。さらなる実施形態では、ナノ粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満のナノ粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、ミクロスフェア製剤を含み、ミクロスフェアの前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌濾過することによって滅菌性が確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、熱可逆性ゲル製剤を含み、このゲル製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。さらなる実施形態において、低温滅菌濾過は、0〜30℃の間、又は0〜20℃の間、または0〜10℃の間、又は10〜20℃の間、または20〜30℃の間の温度で行われる。別の実施形態では、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤を調製するプロセスは、以下のものを含む。即ち、熱可逆性ゲル要素を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温で濾過する工程と、この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と、および、投与前に、この熱可逆性ゲル製剤を再構築する工程である。
特定の実施形態において、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝液)に溶解され、別々に滅菌される(例えば、熱処理、濾過、γ線によって)。いくつかの例において、活性成分は、乾燥状態で別々に滅菌される。いくつかの例において、活性成分は、懸濁物として、またはコロイド状懸濁物として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳用製剤に存在する流体ゲル成分)は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷たい混合物を濾過および/または照射)によって別個の工程で滅菌され、その後、別々に滅菌される2の溶液は、最終耳製剤を提供するために無菌で混合される。ある場合には、本明細書に記載した製剤を投与する直前に最終的な無菌状態の混合を行う。
ある場合には、従来から使用されている滅菌方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブ中)、γ線、濾過)によって、ポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化性または粘膜接着性のポリマー成分)および/または製剤中の活性薬剤が不可逆的に分解する。ある場合には、耳用製剤を膜(例えば、0.2μM膜)によって滅菌することは、この製剤が、濾過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
したがって、本明細書には、ポリマー成分(例えば、熱硬化性および/またはゲル化性および/または粘膜接着性のポリマー成分)および/または活性薬剤が、滅菌プロセス中に分解するのを防ぐような、耳用製剤を滅菌する方法が提供される。ある実施形態では、緩衝剤成分を特定のpH範囲で用いること、および特定の比率のゲル化剤を製剤に用いることによって、活性薬剤(例えば、本明細書に記載した任意の耳用治療薬剤)の分解が減るか、またはなくなる。ある実施形態では、適切なゲル化剤および/または熱硬化性ポリマーを選択することによって、本明細書に記載した製剤を濾過によって滅菌することができる。ある実施形態では、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)を、特定のpH範囲と組み合わせて用いることによって、治療薬剤またはポリマー賦形剤が実質的に分解することなく、記載の製剤を高温で滅菌することができる。本明細書に提供した滅菌方法の利点は、特定の場合には、製剤がオートクレーブによって最終滅菌され、滅菌工程中に活性薬剤および/または賦形剤および/またはポリマー要素が失われることなく、実質的に微生物および/または発熱物質を実質的に含まない状態にすることである。
微生物
本明細書には、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす、耳に許容可能な組成物またはデバイスが提供される。さらに、本明細書に提供されるのは、前記耳用組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、実質的に微生物を含まない。許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療に許容可能な耳用組成物を規定する適用可能な標準に基づく。例えば、許容可能な滅菌レベル(例えば、生物汚染度)は、製剤1gあたり約10コロニー形成単位(cfu)、製剤1gあたり約50cfu、製剤1gあたり約100cfu、製剤1gあたり約500cfu、または製剤1gあたり約1000cfuが挙げられる。ある実施形態では、製剤の許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、微生物剤の10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、または1000cfu/mL未満が挙げられる。それに加え、許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、特定の好ましくない微生物剤が除外されていることが挙げられる。例として、特定の好ましくない微生物剤としては、限定されないが、Escherichia coli(E.coli)、Salmonella sp.(種)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)および/または他の特定の微生物剤が挙げられる。
耳に許容可能な耳用治療剤製剤の滅菌度は、米国薬局方61章、62章および71章にしたがい、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証による品質コントロール、品質保証および検証プロセスの鍵となる要素は、滅菌試験方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、試験対象の組成物サンプルを成長培地に加え、21日間までの期間インキュベートする、直接接種である。成長培地の濁りは、コンタミネーションを示す。この方法の欠点は、材料の塊からのサンプリング量が少量だと感度が下がること、微生物の検出が視覚的な観察に基づくことが挙げられる。代替法は、膜濾過による滅菌試験である。この方法では、ある容積の生成物を小さな膜濾紙に通す。次いで、濾紙を培地に入れ、微生物の成長を促進させる。この方法は、生成物の塊全体をサンプリングするので、感度が高くなるという利点を有する。任意に、膜濾過による滅菌試験によって決定するために、市販のMillipore Steritest滅菌試験システムを用いる。クリームまたは軟膏の濾過試験のために、ステリテスト(Steritest)フィルターシステムNo. TLHVSL210が使用される。エマルジョンまたは粘性生成物の濾過試験のために、ステリテスト(Steritest)フィルターシステムNo. TLAREM210又はTDAREM210が使用される。あらかじめ充填されたシリンジの濾過試験のために、ステリテスト(Steritest)フィルターシステムNo. TTHASY210が使用される。エアロゾルまたはフォームとして分散した物質の濾過試験のために、ステリテスト(Steritest)フィルターシステムNo. TTHVA210が使用される。アンプルまたはバイアル中の可溶性粉末の濾過試験のために、ステリテスト(Steritest)フィルターシステムNo. TTHADA210又はTTHADV210が使用される。
E.coliおよびSalmonellaのための試験は、ラクトース培養液を用い、30〜35℃で24〜72時間インキュベートし、MacConkey寒天および/またはEMB寒天中で、18〜24時間インキュベートすること、および/またはRappaport培地を用いることを含む。P.aeruginosaを検出するための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方の62章は、特定の好ましくない微生物のための試験手順をさらに列挙している。
特定の実施形態では、任意の本明細書に記載した制御放出型製剤は、製剤1gあたり、微生物剤のコロニー形成単位(CFU)が約60未満であり、コロニー形成単位が約50未満であり、コロニー形成単位が約40未満であるか、またはコロニー形成単位が約30未満である。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用製剤は、内リンパおよび/または外リンパとモル浸透圧濃度が等しくなるように処方される。
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の耳の疾患を改善するか、または減らす耳用組成物である。さらに、本明細書に提供されるのは、前記耳用組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態において、組成物またはデバイスは、実質的にエンドトキシンを含まない。滅菌プロセスのさらなる態様は、微生物を殺して生じる副生成物(以下、「生成物」)を除去することである。発熱物質除去プロセスによって、サンプルから発熱物質を除去することである。発熱物質は、免疫応答を誘発するエンドトキシンまたはエクソトクシンである。エンドトキシンの例は、グラム陰性菌の細胞壁に見出されるリポ多糖体(LPS)分子である。オートクレーブまたはエチレンオキシドを用いる処理のような滅菌手順によって、細菌は死滅するが、LPS残基は、敗血性ショックのような炎症性免疫反応を誘発する。エンドトキシンの分子の大きさが広範囲にわたってさまざまなため、エンドトキシンの存在は、「エンドトキシン単位」(EU)で表わされる。1EUは、E.coliのLPS100ピコグラムに相当する。ヒトは、わずか5EU/kg体重の反応を生じる場合がある。生物汚染度(例えば微生物の限界)及び/又は滅菌(例えばエンドトキシンレベル)は、当該技術分野で認識されるような任意の単位で発現される。特定の実施形態において、本明細書に記載の耳用組成物は、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、被験体の体重について、5EU/kg)と比較して、低いエンドトキシンレベルを有する(例えば、被験体の体重について、4EU/kg未満)。ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約3EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約2EU/kg未満のEUを有する。
ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤のEUが、約5EU/kg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤のEUが、約4EU/kg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤のEUが、約3EU/kg未満である。ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約5EU/kg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約1EU/kg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」のEUが、約0.2EU/kg未満である。ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約5EU/g未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約4EU/g未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約3EU/g未満である。ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約5EU/mg未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約4EU/mg未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、単位または「生成物」のEUが、約3EU/mg未満である。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、約1〜約5EU/mLの製剤を含有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、約2〜約5EU/mLの製剤、約3〜約5EU/mLの製剤、または約4〜約5EU/mLの製剤を含有する。
特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物またはデバイスは、従来の許容可能なエンドトキシン濃度(例えば、製剤について、0.5EU/mL)と比較して、低いエンドトキシン濃度を有する(例えば、製剤について、0.5EU/mL未満)。ある実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤について、約0.5EU/mL未満である。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤について、約0.4EU/mL未満である。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤について、約0.2EU/mL未満である。
発熱物質の検出は、ほんの一例として、いくつかの方法で行われる。滅菌レベルに適した試験としては、米国薬局方(USP)71章の滅菌レベル試験(SterilityTests)(第23版、1995)に記載されている試験が挙げられる。ウサギの発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験は、両方とも、米国薬局方の85章および151章(USP23/NF18、Biological Tests、The United States PHarmacopeial Convention、Rockville、MD、1995)に特定されている。代替的な発熱物質アッセイは、単球活性化-サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質制御用途に適した均一な細胞株が開発されており、ウサギ発熱物質試験およびLimulus amebocyte溶解物試験を合格したサンプルでの発熱を検出する能力を示す(Taktakらによる文献「J.PHarm.PHarmacol.(1990)、43:578-82」)。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤について、発熱物質除去を行う。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤を製造するプロセスは、発熱性について製剤を試験する工程を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、実質的に発熱物質を含まない。
pHおよび実際のモル浸透圧濃度
本明細書で使用される場合、「実際の容量オスモル濃度」は、活性薬剤と、ゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)を除くすべての賦形剤とを含むものによって測定される、製剤の容量オスモル濃度を意味する。本明細書に記載される製剤の実際の容量オスモル濃度は、任意の適切な方法、例えば、Viegas et. al., Int. J. Pharm., 1998, 160, 157-162に記載される凝固点降下法によって測定される。ある場合には、本明細書に記載した組成物の実際の容量オスモル濃度は、これよりも高い温度で組成物の容量オスモル濃度を決定する、蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。いくつかの例において、ゲル化剤がゲルの形態であるより高い温度において、蒸気圧降下法により、ゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む製剤の容量オスモル濃度を、決定することができる。本明細書に記載した耳用製剤の実際の容量オスモル濃度は、約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約320mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgである。ある実施形態では、本明細書に記載した製剤は、実際の容量オスモル濃度が、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約250mOsm/L〜約320mOsm/L、または約280mOsm/L〜約320mOsm/Lである。
ある実施形態では、標的作用部位(例えば、外リンパ)での容量オスモル濃度は、本明細書に記載する任意の製剤の送達される容量オスモル濃度(すなわち、正円窓膜を通るか、浸透する物質の容量オスモル濃度)とほぼ同じである。ある実施形態では、本明細書に記載した製剤は、約150mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約370mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの送達可能な容量オスモル濃度を有する。
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。加えて、内リンパは、高濃度の正に帯電したアミノ酸を有する。外リンパに存在する主なカチオンは、ナトリウムである。特定の例において、内リンパおよび外リンパのイオン性組成物は、有毛細胞の電気化学インパルスを制御する。特定の例において、内リンパまたは外リンパのイオン平衡におけるいかなる変化も、耳の有毛細胞に沿った電気化学インパルスの伝導が変化することに起因して、難聴を生じさせる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、外リンパのイオン平衡を崩さない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、外リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、内リンパのイオン平衡を崩さない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の組成物は、内リンパと同じか、または実質的に同じイオン平衡を有する。ある実施形態では、本明細書に記載した耳用製剤は、内耳液(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)に適合するイオン平衡を与えるように処方される。
内リンパおよび外リンパは、血液の生理学的pHに近いpHを有する。内リンパは、約7.2〜7.9のpH範囲を有し、外リンパは、約7.2〜7.4のpH範囲を有する。体幹に近い(proximal)内リンパのインサイツpHは、約7.4であり、末梢に近い内リンパのpHは、約7.9である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、(例えば、緩衝液を用いることによって)内リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜約8.0、約6〜約8.0又は約6.6〜約8.0の範囲のpHに調節される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約7.0〜7.6の範囲のpHに調節される。
ある実施形態では、有用な製剤は、1つ以上のpH調製剤または緩衝剤も含む。適切なpH調整剤または緩衝剤としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。
1つの実施形態では、1つ以上の緩衝剤を本開示の製剤で利用する場合、1つ以上の緩衝剤を、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと合わせ、最終製剤中に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝剤の量は、ゲル製剤のpHが、体内の天然の緩衝系を妨害しないような量である。
1つの実施形態において、希釈剤はまた、より安定な環境を得ることができるため、化合物を安定化させるために用いられる。緩衝液(pH制御、または維持もできるもの)で溶解された塩は、希釈剤として当技術分野で利用され、希釈剤はリン酸緩衝生理食塩溶液を含むが、これに限定されない。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲル製剤のpHは、減菌(例えば、濾過もしくは無菌状態での混合もしくは熱処理)及び/又は医薬品(例えば、耳感覚細胞調節剤)や、ゲルを構成するポリマーを分解させることなく、ゲル製剤のオートクレーブ処理(例えば、最終減菌)ができるpHを有している。滅菌中の耳用薬剤及び/又はゲルポリマーの加水分解及び/又は分解を減らすために、緩衝液のpHは、滅菌プロセス(例えば、高温でのオートクレーブ処理)の間、製剤のpHを7〜8の範囲に維持するように設計されている。
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意のゲル製剤は、医薬品(例えば、耳感覚細胞調節剤)またはゲルを構成するポリマーを分解させることなく、ゲル製剤の最終滅菌(例えば、熱処理及び/又はオートクレーブ処理による)ができるpHを有する。例えば、オートクレーブ処理中の耳用薬剤及び/又はゲルポリマーの加水分解及び/又は分解を減らすために、緩衝液のpHは、上昇した温度での製剤のpHを7〜8の範囲に維持するように設計されている。製剤中で使用する耳用薬剤に応じて、任意の適切な緩衝液が使用される。いくつかの例では、TRISpKaは温度が上昇すると約−0.03/℃で減少し、PBSのpKaは温度が上昇すると約0.003/℃で増大するので、250°F(121℃)でのオートクレーブ処理は、TRIS緩衝液中でpHを顕著に下方にシフトさせ(すなわち、より酸性に)、一方、PBS緩衝液中ではpHを相対的にわずかに上方にシフトさせ、したがって、PBS中よりもTRIS中で、耳用薬剤の加水分解及び/又は分解が大きく増える。本明細書に記載されているような緩衝液およびポリマー添加剤(例えば、CMC)を適切に組み合わせることによって、耳用薬剤の分解が低減される。
いくつかの実施形態では、pHが約5.0〜約9.0、約5.5〜約8.5、約6.0〜約7.6、約7〜約7.8、約7.0〜約7.6、約7.2〜約7.6、または約7.2〜約7.4である製剤が、本明細書に記載される耳用製剤の滅菌(例えば、濾過もしくは無菌状態での混合もしくは熱処理)及び/又はオートクレーブ処理(例えば、最終減菌)に適している。特定の実施形態では、pHが約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6である製剤が、本明細書に記載される任意の組成物の滅菌(例えば、濾過または無菌混合または熱処理及び/又はオートクレーブ処理(例えば、最終減菌))に適している。
いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載されるようなpHを有し、例えば、非限定的な例として、本明細書に記載されるセルロース系増粘剤のような濃化剤(例えば、粘性を高める薬剤)を含んでいる。ある場合には、二次的ポリマー(例えば、濃化剤)を加え、製剤のpHを上述のようにすると、耳用製剤中の耳用薬剤及び/又はポリマー成分がなんら実質的に分解することなく、本明細書に記載される製剤を滅菌することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるpHを有する製剤中における熱可逆性ポロクサマーと濃化剤との比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放性製剤及び/又は持続放出製剤は、ポロクサマー407(プルロニックF127)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率で含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、または約25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約7.5%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約10%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約11%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約12%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約13%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約14%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約16%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約17%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約18%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約19%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約20%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約21%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約23%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約25%である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の濃化剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約1%、約5%、約10%、または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の濃化剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間のうち任意の期間にわたって、pHに関して安定である。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも約1週間にわたって、pHに関して安定である。また、本明細書には、少なくとも約1ヶ月間にわたって、pHに関して安定な製剤が記載されている。
等張化剤
概して、内リンパは、外リンパよりも重量オスモル濃度(浸透圧)が高い。例えば、内リンパは、約304mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度を有し、一方、外リンパは、約294mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度を有する。特定の実施形態では、等張化剤が、本明細書に記載される製剤に、耳用製剤の実際の重量オスモル濃度(浸透圧)が約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgになるような量で、添加される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約320mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの実際的な容量オスモル濃度を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤の送達可能な容量オスモル濃度は、標的とする耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)と等張である(浸透圧が等しい)ように設計されている。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用組成物は、標的作用部位で、約250〜約320mOsm/Lの(;より好ましくは約270〜約320mOsm/Lの)送達後の外リンパ適合容量オスモル濃度を与えるように処方されている。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳用組成物は、標的作用部位で、約250〜約320mOsm/kg H2Oの;(より好ましくは)約270〜約320 mOsm/kg H2Oの送達後の外リンパ適合重量オスモル濃度を与えるように処方されている。特定の実施形態では、送達可能な容量オスモル濃度/製剤の重量オスモル濃度(すなわち、その容量オスモル濃度/ゲル化剤や濃化剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマー)が存在しない製剤の重量オスモル濃度)は、適切な塩濃度(例えば、カリウムやナトリウムの塩の濃度)を用いることにより、あるいは、標的部位に送達されたとき製剤を内リンパ適合性及び/又は外リンパ適合性に(例えば、内リンパ及び/又は外リンパと浸透圧を等しく)させる等張化剤を用いることによって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤の容量オスモル濃度は、さまざまな量の水が、ポリマーのモノマー単位と会合するため、信頼できる値ではない。製剤の実際の容量オスモル濃度(すなわち、ゲル化剤または濃化剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマー)が存在しない製剤の容量オスモル濃度)は、信頼できる値であり、適切な方法(例えば、凝固点降下法、蒸気圧降下法)によって測定される。いくつかの場合には、本明細書に記載される製剤は、例えば、標的部位(例えば、外リンパ)で、投与した際に、内耳環境へのかく乱を最小限にして、哺乳動物への不快感(例えば、めまい及び/又は吐き気)を最小限にするように、送達可能な容量オスモル濃度を与える。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤は、外リンパ及び/又は内リンパで等張である(浸透圧が等しい)。等張性製剤は、等張化剤を加えることによって与えられる。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、これらの塩または任意の組み合わせ又は混合物があり、例えば、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、他の電解質などがある。
有用な耳用組成物は、組成物の重量オスモル濃度を許容範囲にするために必要とされる量の1又はそれより多い塩を含んでいる。このような塩としては、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸塩アニオン、アスコルビン酸塩アニオン、ホウ酸塩アニオン、リン酸塩アニオン、重炭酸塩アニオン、硫酸塩アニオン、チオ硫酸塩アニオン又は亜硫酸水素塩アニオンを有するものを含み;適切な塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムがある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実際の容量オスモル濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、約1μm〜約10μm、約1mM〜約100mM、約0.1mM〜約100mM、約0.1nM〜約100nMである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実際の容量オスモル濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、製剤の活性成分の重量の約0.01%〜約20%、約0.01%〜約10%、約0.01%〜約7.5%、約0.01%〜6%、約0.01〜5%、約0.1%〜約10%、約0.1%〜約6%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実際の容量オスモル濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、製剤の活性成分の容積の約0.1mg/mL〜約70mg/mL、約1mg/mL〜約70mg/mL、約1mg/mL〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、約1mg/mL〜約5mg/mL、または約0.5mg/mL〜約5mg/mLである。いくつかの実施形態では、、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実際の容量オスモル濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、製剤の活性成分の容積の約1μg/mL〜約500μg/mL、約1μg/mL〜約250μg/mL、約1μg/mL〜約100μg/mL、約1μg/mL〜約50μg/mL、または約1μg/mL〜約20μg/mLである。
粒子サイズ
表面積を増大させ、及び/又は製剤の分散性を調節するために、サイズの低減が利用される。また、本明細書に記載される任意の製剤に対し、一定の平均粒径分布(PSD)(例えば、ミクロンサイズの粒子、ナノメートルサイズの粒子など)を維持するためにも、サイズの低減が利用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤は、多粒子、すなわち、複数の粒径(例えば、微粉化された粒子、ナノサイズの粒子、大きさが一定でない粒子、コロイド状粒子)を含んでいる;すなわち、この製剤は、多粒子の製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤は、1又はそれより多い多粒子の(例えば、微粉化された)治療薬剤を含んでいる。微粉化は、固体材料の粒子の平均直径を低減するプロセスである。微粉化された粒子は、直径がほぼミクロンサイズ化されたものから直径がほぼナノメートルサイズ化されたものである。いくつかの実施形態では、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約0.5μm〜約500μmである。いくつかの実施形態では、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約1μm〜約200μmである。いくつかの実施形態では、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約2μm〜約100μmである。いくつかの実施形態では、微粉化された固体中の粒子の平均直径は、約3μm〜約50μmである。いくつかの実施形態では、微粉化された粒子状固体は、粒径が、約5μm未満、約20μm未満、及び/又は約100μm未満である。いくつかの実施形態では、耳感覚細胞調節剤の粒子状物質(例えば、微粉化された粒子)を用いると、多粒子ではない(例えば、微粉化されていない)耳感覚細胞調節剤を含む製剤と比較して、本明細書に記載される任意の製剤からの耳感覚細胞調節剤の持続放出及び/又は徐放性放出が可能となる。いくつかの例では、多粒子の(例えば、微粉化された)耳感覚細胞調節剤を含有する製剤は、27G針に適合された1mLシリンジから、塞がったり、目詰まりしたりすることなく排出される。
いくつかの例では、本明細書に記載される任意の製剤中の任意の粒子は、コーティングされた粒子(例えば、コーティングされた微粉化粒子、ナノ粒子)及び/又はミクロスフェア及び/又はリポソーム粒子である。粒径を小さくする技術としては、例として、荒粉砕、製粉(例えば、空気摩擦製粉(ジェットミル製粉)、ボールミル製粉)、コアセルベーション、複合コアセルベーション、高圧ホモジナイズ法、スプレー乾燥及び/又は超臨界流体による結晶化が挙げられる。いくつかの例では、粒子は、機械的衝撃(例えば、ハンマーミル、ボールミル及び/又はピンミルによる)によって大きさが調節される。いくつかの例では、粒子は、流体エネルギー(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、及び/又は流動床型ジェットミルによる)によって大きさが調節される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、結晶性粒子及び/又は等方性粒子を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、アモルファス粒子及び/又は異方性粒子を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、治療薬剤が、遊離塩基、または塩、または治療薬剤のプロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせである治療薬剤粒子を含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、ナノ粒子状物質を含む1又はそれより多い耳感覚細胞調節剤を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、耳感覚細胞調節剤ビーズ(例えば、デキストロメトルファンビーズ)を含み、このビーズは、場合により、制御放出型賦形剤でコーティングされている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、顆粒化され及び/又はサイズを低減された、制御放出型賦形剤でコーティングされた耳感覚細胞調節剤を含み、顆粒化され、コーティングされた耳感覚細胞調節剤粒子は、随意に、微粉化され、及び/又は、本明細書に記載されるいずれかの組成物に処方される。
いくつかの例では、本明細書に記載される手順を用いてパルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製するために、中性分子、遊離酸または遊離塩基の状態の耳感覚細胞調節剤と、耳感覚細胞調節剤塩との組み合わせを用いる。いくつかの製剤では、本明細書に記載される手順を用いてパルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製するために、微粉化された耳感覚細胞調節剤(及び/又はその塩またはプロドラッグ)と、コーティングされた粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム、ミクロスフェア)との組み合わせが用いられる。代替的には、耳感覚細胞調節剤(例えば、微粉化された耳感覚細胞調節剤、遊離塩基、遊離酸または塩またはそのプロドラッグ;多粒子の耳感覚細胞調節剤、遊離塩基、遊離酸または塩またはそのプロドラッグ)を、シクロデキストリン、界面活性剤{例えば、ポロクサマー(407,398,188)、Tween(80,60,20,81)、PEG-水素化ヒマシ油、N-メチル-2-ピロリドンのような共溶媒などの補助によって送達された投薬の20%まで溶解させ、本明細書に記載される任意の手順を用いてパルス放出型製剤を調製することによって、パルス型の放出プロフィールが達成される。
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の耳適合製剤は、1又はそれより多い微粉化された医薬品(例えば、耳感覚細胞調節剤)を含んでいる。いくつかの実施形態では、微粉化された医薬品は、微粉化された粒子、コーティングされ(例えば、持続放出性コーティングで)微粉化された粒子、またはこれらの組み合わせを含んでいる。いくつかの実施形態では、微粉化された粒子、コーティングされて微粉化された粒子、またはこれらの組み合わせを含む微粉化された医薬品は、耳感覚細胞調節剤を、中性分子、遊離酸、遊離塩基、塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせとして含んでいる。特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、耳感覚細胞調節剤を、微粉化された粉末として含んでいる。特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、耳感覚細胞調節剤を、微粒子−耳感覚細胞調節剤の粉末の形態で含んでいる。
本明細書に記載される多粒子及び/又は微粉化された耳感覚細胞調節剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用いて、耳の構造(例えば、内耳)に送達される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多粒子及び/又は微粉化された耳感覚細胞調節剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、鼓室内注射によって耳の構造(例えば、内耳)に送達される。
調整可能な放出特性
本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出は、所望の放出特性に随意に整調可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、実質的にゲル化成分がない溶液である。そのような例では、組成物は、活性薬剤の本質的に即時の放出を提供する。そのような実施形態のうちのいくつかにおいては、組成物は、例えば手術中に、耳の構造体の灌流に役立つ。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、実質的にゲル化成分を含まず、微粉化された耳用薬剤(例えば、コルチコステロイド)を含む溶液である。そのような実施形態のうちのいくつかにおいて、組成物は、約2日から約4日までの活性薬剤の放出を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約3日までの期間にわたる活性薬剤の放出を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約5日までの期間にわたる活性薬剤の放出を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約2日から約7日までの期間にわたる活性薬剤の放出を与える。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、微粉化された耳用薬剤との組み合わせでゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、より長い期間にわたる持続される徐放を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、約14〜17%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および微粉化された耳用薬剤を含み、約1週間〜約3週間の期間にわたる持続される徐放を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、約18〜21%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)および微粉化された耳用薬剤を含み、約3週間から約6週間までの期間にわたる持続される徐放を与える。
したがって、組成物中のゲル化剤の量および耳用薬剤の粒径は、組成物からの活性薬剤の所望の放出プロフィールに向けて調整可能である。
本明細書に記載されるように、微粉化された耳用薬剤を含む組成物は、微粉化されていない耳用薬剤を含む組成物と比較して、より長い時間にわたる持続放出を与える。
いくつかの例では、微粉化された耳用薬剤は、遅い分解によって活性薬剤の安定した供給(例えば、+/-20%)を与え、また、活性薬剤のための貯蔵所として役立ち;このような貯蔵効果は、耳内での耳用薬剤の滞留時間を増大させる。
特定の実施形態では、組成物中のゲル化剤の量との組み合わせての活性薬剤(例えば微粉化された活性薬剤)の適切な粒径の選択は、ある期間の時間、日、週または月にわたる活性薬剤の放出を可能にする調整可能な伸張された放出特性を与える。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤の粘性は、耳適合性ゲルからの適切な放出速度を与えるように設計されている。いくつかの実施形態では、濃化剤(thickening agent)(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)を可能にする。MDTは、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出される耳用薬剤は、下記Korsmeyer-Peppas式に随意に当てはまる。
ここで、Qは時間tの間に放出される耳用薬剤の量、Qαは耳用薬剤の全放出量、kはn次の放出定数、nは溶解機構に関する無次元数、bは初期バースト放出機構を特徴づける軸切片であり、n=1がエロージョン制御機構を特徴づけている。平均溶解時間(MDT)は、医薬分子が放出前にマトリクス内に滞在している種々の時間間隔の和を分子の総数で除したもので、次の式によって随意に算出される。
例えば、組成物またはデバイスの平均溶解時間(MDT)と、ゲル化剤(例えばポロクサマー)の濃度と間の線形の関係は、拡散によってではなく、ポリマーゲル(例えばポロクサマー)のエロージョンにより耳用薬剤が放出されることを示している。別の例では、非線形の関係は、拡散及び/又はポリマーゲル分解の組み合わせによる耳用薬剤の放出を示している。別の例では、組成物またはデバイスのより速いゲル排出時間過程(活性薬剤のより速い放出)は、より低い平均溶解時間(MDT)を示している。組成物中のゲル化剤及び/又は活性薬剤の濃度は、MDTのための適切なパラメーターを決定するために試験される。いくつかの実施形態では、注入量もまた、前臨床および臨床研究のための適切なパラメーターを決定するために試験される。活性薬剤のゲル強度および濃度は、組成物からの耳用薬剤の放出動力学に影響する。低いポロクサマー濃度では、排出速度は加速される(MDTはより低い)。組成物またはデバイス中の耳用薬剤濃度の増大は、耳の中の耳用薬剤の滞留時間及び/又はMDTを伸張させる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも6時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも10時間である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約48時間までである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約96時間までである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約30時間から約1週間までである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤に対するMDTは、約1週間から約6週間までである。
特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出耳用製剤は、耳用薬剤の曝露を増やし、耳の流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)における曲線下面積(AUC)を、制御放出耳用製剤ではない製剤と比較して、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%増加させる。特定の実施形態では、本明細書中に記載される制御放出耳用製剤は、耳用薬剤の曝露を増やし、耳の流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)におけるCmaxを、制御放出耳用製剤ではない製剤と比較して、約40%、約30%、約20%又は約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出耳用製剤は、制御放出耳用製剤ではない製剤と比較して、Cmax対Cminの割合を変化(例えば減少)させる。特定の実施形態では、本明細書中に記載される制御放出耳用製剤は、耳用薬剤の曝露を増やし、耳用薬剤の濃度がCmin以上である時間の長さを、制御放出耳用製剤ではない製剤と比較して、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%だけ増加させる。特定の例では、本明細書中に記載される制御放出耳用製剤は、Cmaxへの時間を遅延させる。特定の例では、薬物の制御安定性放出は、薬物の濃度がCmin以上を維持する時間を伸張させる。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される耳用組成物は、内耳において薬物の滞留時間を伸張させ、安定した薬物暴露特性を与える。いくつかの例では、その組成物内の活性薬剤の濃度の増加は、クリアランス過程を飽和させ、より速く、かつ安定した一定状態に到達することを可能とする。
特定の例では、薬の薬物曝露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が、いったん定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中の薬物濃度は、伸張された期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、あるいは1週間、3週間、6週間、2箇月)の間、その治療量またはほぼその治療量でとどまる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出製剤から放出される活性薬剤の定常状態の濃度は、制御放出製剤でない製剤から放出される活性薬剤の定常状態の濃度の約20倍から約50倍である。図5は、予想される、4つの組成物からの活性薬剤の調整可能な放出を示している。
医薬製剤
本明細書には、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物またはデバイスが包含されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の治療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は緩衝液を含んでいる。他の実施形態では、医薬組成物は、他の治療基質も含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスは、適用するときにゲルの可視化を高めるのに役立つ染料を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な組成物またはデバイスと適合する染料としては、エバンスブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用製剤の総重量の0.15%)、及び/又はインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)が挙げられる。他の一般的な染料、例えば、FD&Cレッド40、FD&Cレッド3、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、及び/又はMRI、CATスキャン、PETスキャンなどのような非侵襲性造影技術と組み合わせて視覚化可能な染料や、ガドリニウム系MRI染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載される任意の耳用製剤とともに使用することが想定されている。本明細書に記載される任意の製剤または組成物と適合する他の染料は、Sigma-Aldrichの染料に関するカタログに列挙されている(そのような開示のために、本明細書に参考として組み込まれている)。
いくつかの実施形態では、聴覚障害、平衡障害、または他の耳の疾患を監視するか、または観察するために、機械デバイスまたは造影デバイスが使用される。例えば、磁気共鳴映像(MRI)デバイスは、特に、実施形態の範囲内であると想定され、MRIデバイス(例えば、3 Tesla MRIデバイス)によって、メニエール病の進行を評価し、次いで、本明細書に開示する医薬製剤で処置することができる。また、ガドリニウム系染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載される任意の耳に適合する組成物またはデバイスと共に、及び/又は本明細書に記載される任意の機械デバイスまたは造影デバイスと共に使用することが想定されている。特定の実施形態では、疾患の重篤度(例えば、内リンパ水腫の大きさ)、内耳への製剤の浸透、及び/又は本明細書に記載される耳の疾患(例えば、メニエール病)における医薬製剤/デバイスの治療効果を評価するために、ガドリニウム水和物が、MRI及び/又は任意の本明細書に記載される医薬組成物またはデバイスと組み合わせて使用される。
本明細書に記載される任意の医薬組成物またはデバイスは、医薬組成物またはデバイスを蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳または外耳と接触させた状態に配置することによって投与される。
本明細書に記載される耳に許容可能な制御放出型耳感覚細胞調節剤医薬製剤の1つの特定の実施形態では、耳感覚細胞調節剤は、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「内耳に許容可能なゲル製剤」、「中耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」、またはこれらの変形名で呼ばれるゲルマトリックスの状態で提供される。ゲル製剤のすべての組成要素は、標的とする耳の構造と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とする耳の構造内にある所望の部位に耳感覚細胞調節剤の制御された放出を与え;いくつかの実施形態では、ゲル製剤は、耳感覚細胞調節剤を所望の標的部位に送達するための、短時間型または即時型の放出要素を有している。他の実施形態では、ゲル製剤は、耳感覚細胞調節剤を送達するための徐放性要素を有する。
いくつかの実施形態では、ゲル製剤は、多粒子の(例えば、微粉化された)耳感覚細胞調節剤を含んでいる。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、生分解可能である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、正円窓膜の外側粘液層への付着を許容する粘膜付着性の賦形剤を含んでいる。また、別の実施形態では、耳用ゲル製剤は、浸透を促進する賦形剤を含み;さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、約500〜1,000,000センチポアズの間;約750〜1,000,000センチポアズの間;約1000〜1,000,000センチポアズの間;約1000〜400,000センチポアズの間;約2000〜100,000センチポアズの間;約3000〜50,000センチポアズの間;約4000〜25,000センチポアズの間;約5000〜200,000センチポアズの間;あるいは、約6000〜15,000センチポアズの間の粘性を与えるのに十分な粘性増強剤を含有する。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、約50,0000〜1,000,000センチポアズの粘性を与えるのに十分な粘性増強剤を含有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスは、体温で低粘度の組成物またはデバイスである。いくつかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約1%から約10%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約2%から約10%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約5%から約10%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を実質的に含んでいない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約100 cPから約10,000 cPまでの見掛粘度を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約500 cPから約10,000 cPまでの見掛粘度を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約1000 cPから約10,000 cPまでの見掛粘度を与える。このような実施形態のうちのいくつかでは、低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開、蝸牛形成術、迷路切開術、乳突削開術、あぶみ骨切除手術(stapedectomy)、あぶみ骨切除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切除術(endolymphatic sacculotomy)またはその他同種のものを含む外部耳介入処置との組み合わせで投与される。このような実施形態のうちのいくつかでは、低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、耳介入処置中に投与される。他のこのような実施形態では、低粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、耳介入処置の前に投与される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスは体温で高粘度の組成物またはデバイスである。いくつかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約10%から約25%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約14%から約22%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約15%から約21%までの粘性増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化させる成分)を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約100,000cPから約1,000,000cPまでの見掛粘度を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約150,000cPから約500,000cPまでの見掛粘度を与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、約250,000cPから約500,000cPまでの見掛粘度を与える。特定の実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、室温で液体で、室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃まで発熱している個体を含む)との間でゲルである。いくつかの実施形態では、耳感覚細胞モジュレータの高粘度の組成物またはデバイスは、本明細書に記載される耳の疾患または症状の処置のための単独療法として投与される。いくつかの実施形態では、耳感覚細胞モジュレータの高粘度の組成物またはデバイスは、例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開、蝸牛形成術、迷路切開術、乳突削開術、あぶみ骨切除手術(stapedectomy)、あぶみ骨切除術(stapedotomy)、内リンパ球嚢切除術(endolymphatic sacculotomy)またはその他同種のものを含む外部耳介入処置との組み合わせで投与される。このような実施形態のうちのいくつかでは、高粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは、耳介入処置の後に投与される。他のこのような実施形態では、高粘度耳感覚細胞モジュレータの組成物またはデバイスは耳介入処置の前に投与される。
他の実施形態では、本明細書に記載される内耳用医薬製剤は、耳に許容可能なヒドロゲルをさらに備え;また別の実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能なマイクロスフェアまたは微粒子を備え;さらに別の実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能なリポソームを備えている。いくつかの実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能なフォームを備え;また別の実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能なペイントを備え;さらに別の実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能なインサイツ形成の海綿状物質を備えている。いくつかの実施形態では、耳用医薬製剤は、耳に許容可能な溶媒放出ゲルを備えている。いくつかの実施形態では、耳用医薬製剤は、化学放射線治療ゲル(actinic radiation curable gel)を備えている。さらなる実施形態は、耳用医薬の中に熱可逆性ゲルを含んでおり、室温またはそれ以下でゲルを調整する時は製剤は流体だが、鼓室腔、正円窓膜または蝸牛窓稜を含む内耳及び/又は中耳の標的部位の中またはその付近にゲルを適用する時は、耳用医薬製剤は、ゲル様の物質に強化され(stiffen)、または硬化される。
さらなる実施形態または代替的な実施形態では、耳用ゲル製剤は、鼓室内注射を介して、正円窓膜またはその付近に投与されうる。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、耳介後部の切開部を介した投入と、正円窓または蝸牛窓稜領域またはこれらの付近への外科的処置とを通じて、正円窓または蝸牛窓稜またはこれらの付近に投与される。あるいは、耳用ゲル製剤は、シリンジおよび注射針によって適用され、注射針は鼓膜に挿入され、正円窓または蝸牛窓稜の領域に導入される。次いで、耳の自己免疫疾患の局所的処置のために、正円窓または蝸牛窓稜またはこれらの付近に耳用ゲル製剤が堆積される。他の実施形態では、患者に移植されたマイクロカテーテルを介して耳用ゲル製剤が適用され、さらなる実施形態では、ポンプデバイスによって正円窓膜またはその付近に製剤が投与される。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、マイクロインジェクションデバイスを介して正円窓膜またはその付近に投与される。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は鼓膜内に適用される。いくつかの実施形態では、耳用ゲル製剤は鼓膜上に適用される。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、耳道の表面または内部に適用される。
さらに特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の医薬組成物またはデバイスは、液体マトリックス(例えば、鼓室内注射用の液体組成物、または耳用点滴薬)中に多粒子の耳感覚細胞調節剤を含んでいる。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の医薬組成物は、固体マトリックス中に多粒子耳感覚細胞調節剤を含んでいる。
制御放出製剤
概して、制御放出型薬物製剤は、放出部位および体内の放出時間に関し、薬物の放出制御を与える。本明細書で説明されるように、制御放出には、即時放出、時限放出、徐放性放出、持続放出、可変型放出、パルス状放出、二峰性放出がある。多くの利点が、制御放出によって得られる。第1に、医薬品の制御放出により、投薬回数が減り、これにより、繰り返し処置が最小限になる。第2に、制御放出型処置により、薬物の利用がより効果的になり、残渣として残る化合物が減る。第3に、制御放出により、送達するデバイスまたは製剤を疾患部位に配置することによって、局所的な薬物送達の可能性が与えられる。さらに、制御放出により、1個の投薬単位を用いることによって、それぞれ固有の放出プロフィールを有する2つ以上の異なる薬物を投与し、放出する機会が与えられるか、または同じ薬物を異なる速度または異なる持続時間で放出させる機会が与えられる。
したがって、本明細書に開示された実施形態の1つの態様は、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患を処置するために、耳に許容可能な制御放出型の耳感覚細胞調節剤またはデバイスを提供することである。本明細書に開示された組成物、及び/又は製剤、及び/又はデバイスを制御放出する態様は、限定されないが、内耳または他の耳の構造で使用するのに許容可能な賦形剤、薬剤または物質を含む種々の薬剤によって付与される。単なる例として、このような賦形剤、薬剤または材料は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な増粘剤、耳に許容可能なゲル、耳に許容可能なペイント、耳に許容可能なフォーム、耳に許容可能なキセロゲル、耳に許容可能な微粒子またはマイクロスフェア、耳に許容可能なヒドロゲル、耳に許容可能なインサイツ形成の海綿状物質、耳に許容可能な化学放射線治療ゲル、耳に許容可能な溶媒放出ゲル、耳に許容可能なリポソーム、耳に許容可能なナノカプセルまたはナノスフェア、耳に許容可能な熱可逆性ゲル、またはこれらの組み合わせを含んでいる。
耳に許容可能なゲル剤
ゲルは、ときにはゼリーとも呼ばれ、種々の様式で規定される。例えば、米国薬局方は、ゲルを、小さな無機粒子の懸濁物、または内部に液体がしみこんだ大きな有機分子のいずれかからなる半固体組織であると定義している。ゲルは、単相組織または二相組織を含んでいる。単相ゲルは、分散された高分子と液体との間に明らかな境界が存在しない様式で、液体全体に均一に分布した有機高分子からなる。いくつかの単相ゲルは、合成高分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガカント)から調製される。いくつかの実施形態では、単相ゲルは、一般的に水組織であるが、アルコールおよび油を用いても作成されるであろう。二相ゲルは、小さな別個の粒子の網目構造体からなる。
ゲルは、また、疎水性または親水性に分類することができる。特定の実施形態では、疎水性ゲルの基材は、ポリエチレンを用いた液体パラフィン、またはコロイド状シリカでゲル化された脂肪油、またはアルミニウム石鹸または亜鉛石鹸からなる。対照的に、疎水性ゲルの基材は、通常は、適切なゲル化剤(例えば、トラガカント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、およびケイ酸アルミニウムマグネシウム)でゲル化された水、グリセロール、またはプロピレングリコールから成る。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物またはデバイスのレオロジーは、擬塑性、塑性、チキソトロピー性、またはダイラタント性である。
1つの実施形態では、本明細書に記載される、耳に許容可能な粘度が高められた製剤は、室温で液体ではない。特定の実施形態では、粘度が高められた製剤は、室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃までの発熱している個体を含む)との間で相転移することを特徴とする。いくつかの実施形態では、相転移は、体温より1℃低い温度で、体温より2℃低い温度で、体温より3℃低い温度で、体温より4℃低い温度で、体温より6℃低い温度で、体温より8℃低い温度で、または体温より10℃低い温度で起こる。いくつかの実施形態では、相転移は、体温より約15℃低い温度で、体温より約20℃低い温度で、または体温より約25℃低い温度で起こる。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、または約30℃である。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35℃、または約40℃である。1つの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤をほぼ体温で投与すると、耳用製剤の鼓室内投与に関連するめまいが低減または解消される。体温の定義に含まれるのは、健康な個体、または、発熱(42℃まで)をしている個体を含む、不健康な個体の体温である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物またはデバイスは、ほぼ室温で液体であり、室温またはほぼ室温で投与され、例えば、眩暈のような副作用を低減し、または改善する。
ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンで構成されるポリマーは、水溶液に組み込まれると、熱可逆性ゲルを形成する。これらのポリマーは、体温に近い温度で液体状態からゲル状態へと変化する能力を有し、したがって、標的とされる耳の構造に有用な製剤を適用することを可能にする。液体状態からゲル状態への相転移は、ポリマー濃度、溶液中の成分に依存して変わる。
ポロクサマー407(PF-127)は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーからなる非イオン性界面活性剤である。他のポロクサマーとしては、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、338(F-108グレード)が挙げられる。ポロクサマー水溶液は、酸、アルカリ、金属イオン存在下で安定である。PF-127は、一般式E106P70E106、平均分子量が13,000の、市販されているポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。このポリマーは、ポリマーのゲル化性を高めるような適切な方法によってさらに精製されることができる。このポリマーは、親水性をもたらす約70%のエチレンオキシドを含有している。このポリマーは、一連のポロクサマーABAブロックコポリマーの1つであり、このメンバーは、下記化学式1に示す共通の化学式を有している。
体温まで加熱すると、このコポリマーの濃縮溶液(>20%w/w)が、低粘度の透明溶液から固体ゲルに変換するため、PF-127は特に興味深い。したがって、この現象は、身体に接触して配置されたときに、ゲル調製剤が、半固体構造体および徐放出デポー剤を形成することを示唆している。さらに、PF-127は、良好な可溶性を有し、毒性が低く、したがって、薬物送達システムのための良好な媒体であると考えられる。
代替的な実施形態では、熱ゲルは、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー(Jeong etal,Nature(1997), 388:860-2;Jeong etal, J.Control.Release(2000),63:155-63;Jeong etal, Adv.Drug Delivery Rev.(2002)、54:37-51))である。このポリマーは、約5%w/wから約40%w/wまでの濃度にわたってゾル−ゲル挙動を示す。この望ましい性質に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドのモル比は、約1:1〜約20:1の範囲にわたっている。得られるコポリマーは、水に可溶性であり、室温では自由に流動する液体であるが、体温ではハイドロゲルを形成する。市販されているPEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheim製のRESOMER RGP t50106である。この物質は、50:50ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)のPGLAコポリマーで構成されており、PEGの10%w/wであり、約6000の分子量を有している。
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117,949号、第6,201,072号、第6,287,588号に記載されているような可逆的な熱ゲル化性を有する、低分子量タイプの生分解性ブロックコポリマーに対するMacroMed Incorporated社の商標である。また、それは出願中の米国特許出願シリーズNo.09/906,041、09/559,799および10/919,603に開示された生物分解性の高分子医薬担体を含んでいる。生分解性薬物担体は、ABA型またはBAB型のトリブロックコポリマーまたはこれらの混合物を含み、Aブロックは、相対的に疎水性で、生分解性のポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、相対的に親水性で、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでいて、このコポリマーは、疎水性含量が50.1〜83重量%であり、親水性含量が17〜49.9重量%であり、最終的なブロックコポリマーの分子量は、2000〜8000ダルトンである。この薬物担体は、通常の哺乳動物の体温未満の温度では水溶性を示し、可逆的な熱ゲル化を受けると、哺乳動物の生理学的体温と等しい温度でゲルとして存在する。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、ここでのポリエステルは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε-カプロラクトン、ε-ヒドロキシヘキサン酸、γ-ブチロラクトン、γ-ヒドロキシ酪酸、δ-バレロラクトン、δ-ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびこれらのコポリマーからなる群より選択されるモノマーから合成され、平均分子量が約600〜3000ダルトンである。親水性Bブロックセグメントは、好ましくは、平均分子量が約500〜2200ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)である。
さらなる生分解性熱可塑性ポリエステルとしては、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories, Inc.から得られる)及び/又は、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;第5,990,194号;に開示されるものが挙げられ、それらにおいて、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリマーとして開示されている。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、それらのコポリマー、それらのターポリマー、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかのこのような実施形態では、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの組み合わせである。1つの実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する50/50のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約30重量%から約40重量%まで存在し;そして、約23,000から約45,000までの平均分子量を有している。交替的に、別の実施形態では、生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基がない75/25ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約40重量%から約50重量%まで存在し;そして、約15,000から約24,000までの平均分子量を有している。さらなる実施形態または代替の実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)の末端基は、重合法に依存しており、ヒドロキシル、カルボキシルまたはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合によって、末端がヒドロキシル基およびカルボキシル基のポリマーが得られる。環状ラクチドモノマーまたはグリコリドモノマーを、水、乳酸またはグリコール酸で開環重合すると、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかし、環状モノマーを、一置換アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または1-ドデカノール)で開環重合すると、1つのヒドロキシル末端基と、1つのエステル末端基とを有するポリマーが得られる。環状モノマーを、例えば、1,6‐ヘキサンジオールやポリエチレングリコールジオールのようなジオールで開環重合すると、末端基がヒドロキシルのみのポリマーが得られる。
熱可逆性ゲルのポリマー系が、低温でより完全に溶解するため、溶解方法は、所望の量のポリマーを低温で使用される量の水に加えることを含んでいる。一般に、振り混ぜることによってポリマーを湿らせた後、ポリマーを溶解させるために、混合物が、蓋をかぶせられて、コールドチャンバーまたは約0〜10℃の恒温容器に入れられる。より迅速に熱可逆性ゲルポリマーを溶解させるために、この混合物は撹拌されるか、振り混ぜられる。
続いて、耳感覚細胞調節剤、および、緩衝液、塩および防腐剤などの種々の添加剤が加えられて、溶解される。いくつかの例では、水に不溶性のときには、耳感覚細胞調節剤及び/又は他の医薬活性薬剤は、懸濁される。pHは、適切な緩衝剤を加えることによって調節される。任意の方法で、例えばカルボポール(登録商標)934Pなどの正円窓膜の粘膜接着性カルボマーを組成物に組み込むによって、正円窓膜の粘膜接着特性が熱可逆性ゲルに付与される(Majithiya et.al, AAPS Pharm Sci Tech (2006), 7(3), p.E1;EP0551626, いずれも、そのような開示のために、本明細書に参照として組み込まれている)。
1つの実施形態には、加えられる増粘剤の使用を必要としない、耳に許容可能な医薬ゲル製剤がある。このようなゲル製剤には、少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液が組み込まれている。1つの態様には、耳感覚細胞調節剤と、薬学的に許容可能な緩衝液とを含むゲル製剤がある。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体は、ゲル化剤である。
他の実施形態では、内リンパまたは外リンパに適切なpHを与えるため、有用な耳に許容可能な耳感覚細胞調節剤の医薬製剤は、1又はそれより多いpH調整剤または緩衝剤も含んでいる。適切なpH調整剤または緩衝液としては、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。このようなpH調整剤および緩衝液が、組成物のpHを約5〜約9の間のpHに、いくつかの実施形態では約6.5〜約7.5の間のpHに、さらに別の実施形態では約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5のpHに、維持するために必要な量で含まれている。1つの実施形態では、1又はそれより多い緩衝液が本開示の製剤で利用されるときに、1つ以上の緩衝液が、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと結合され、最終製剤中に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHが、内耳または中耳の天然の緩衝系を妨害せず、あるいは、内リンパまたは外リンパの天然のpHを妨害しないような量であり;この量は、耳感覚細胞調節剤製剤が蝸牛内のどの箇所を標的にするかに依存している。いくつかの実施形態では、約10μmから約200mMまでの濃度の緩衝液がゲル製剤に存在する。特定の実施形態では、約5mMから約200mMまでの濃度の緩衝液が存在する。特定の実施形態では、約20mMから約100mMまでの濃度の緩衝液が存在する。1つの実施形態では、緩衝液は、わずかに酸性pHである酢酸塩またはクエン酸塩のような緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝液は、約4.5から約6.5までのpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝液は、約5.0から約8.0まで、又は約5.5から約7.0までのpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
代替的な実施形態では、使用される緩衝液は、わずかに塩基性のpHにおけるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸水素塩、炭酸塩またはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝液は、約6.5〜約8.5、または約7.0〜約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約6.0〜約9.0のpHを有する二塩基性リン酸ナトリウム緩衝液である。
また、本明細書では、耳感覚細胞調節剤および増粘剤を含む制御放出の製剤またはデバイスが記載されている。適切な増粘剤としては、単なる一例として、ゲル化剤および懸濁液が挙げられる。1つの実施形態では、粘度が高められた製剤は、緩衝液を含んでいない。
他の実施形態では、粘度が高められた製剤は、薬学的に許容可能な緩衝液を含んでいる。
必要ならば、等張性を調節するために、任意の方法で塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が使用される。
単なる一例として、耳に許容可能な粘性剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ナトリウムコンドロイチンサルフェート、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。対象とされる耳構造と適合性をもつ他の粘性増強剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)および寒天、アルミニウムケイ酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラゲーニン、カーボポール、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチレート(carboxymethylated)キトサン、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガハッチゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトーゼ、蔗糖、バクガデキストリン、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、小麦澱粉、米澱粉、じゃが芋澱粉、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシ-エチルメタクリル酸塩、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリル酸塩、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリル酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP: ポビドン)、Splenda(登録商標)、(デキストロース、バクガデキストリンおよびスクラロース)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、粘度を高める賦形剤は、MCCとCMCを組み合わせたものである。別の実施形態では、増粘剤は、カルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩を組み合わせたものである。キチンおよびアルギン酸塩と、本明細書に開示する耳感覚細胞調節剤との組み合わせは、制御放出型製剤として作用し、製剤からの耳感覚細胞調節剤の拡散を抑制する。さらに、任意の方法で、正円窓膜を通る耳感覚細胞調節剤の透過性を増大させる補助のために、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩との組み合わせが用いられる。
いくつかの実施形態としては、約0.1mM〜約100mMの耳感覚細胞調節剤、薬学的に許容可能な粘性剤、および注射用の水を含む粘度が高められた製剤があり、その水の中の粘性剤の濃度は、粘性が高められた製剤に約100〜約100,000cPの最終粘度を与えるのに十分である。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100〜約50,000cP、約100cP〜約1,000cP、約500cP〜約1500cP、約1000cP〜約3000cP、約2000cP〜約8,000cP、約4,000cP〜約50,000cP、約10,000cP〜約500,000cP、約15,000cP〜約1,000,000cPの範囲にある。他の実施形態では、さらに粘度が高い媒体が望ましい場合、生体適合性ゲルは、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%などの耳感覚細胞調節剤を含んでいる。非常に濃縮されたサンプルでは、生体適合性の粘度が高められた製剤は、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%、またはそれより多い耳感覚細胞調節剤を含んでいる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるゲル製剤の粘度は、任意の記載された手段で測定される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を算出するために、LVDV-II+CP Cone PlateViscometerおよびCone Spindle CPE-40が用いられる。他の実施形態では、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を算出するために、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計が用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は、室温で測定されている。他の実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定されている。
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な粘度が高められた耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤と、少なくとも1つのゲル化剤とを含んでいる。ゲル製剤の調製に使用するのに適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーゴム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸)、シリケート、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタム、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。いくつかの他の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))は、ゲル化剤として使用される。また、特定の実施形態では、本明細書に記載される増粘剤は、本明細書に開示されたゲル製剤のためのゲル化剤として利用される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳の治療薬剤は、耳に許容可能なペイントとして調合される。本明細書で使用される場合、ペイント(塗膜形成要素としても知られている)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤、およびオプションとして1又はそれより多い薬学的に許容可能な賦形剤、などから成る溶液である。組織への適用の後、溶媒は蒸発して、後に、モノマーまたはポリマー、および活性薬剤から成る薄いコーティングを残す。コーティングは、活性薬剤を保護し、それを適用部位で固定化された状態に維持する。このことで、失われる活性薬剤の量が低減され、それに対応して、被験体に送達される量は増加する。限定しない例として、ペイントは、コロジオン(例えば弾性コロジオン、USP)、および糖類シロキサンコポリマーおよび架橋剤を含む溶液を含んでいる。
コロジオンは、ピロキシリン(ニトロセルロース)を含むエチルエーテル/エタノール溶液である。適用の後、エチルエーテル/エタノール溶液は、ピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサンコポリマーを含む溶液において、糖類シロキサンコポリマーは、溶媒の蒸発により糖類シロキサンコポリマーの架橋を開始した後、コーティングを形成する。
ペイントに関するさらなる開示のためには、Remigton(本明細書にこの内容に介して組み入れられた「The Science and Practice of Pharmacy」)を参照されたい。本開示の明細書で使用のために想定されるペイントは、耳を介する圧縮波の伝播と干渉しないように柔軟性がある。さらに、ペイントは、液体(つまり溶液、懸濁液またはエマルジョン)、半固体(つまり、ゲル、フォーム、ペーストまたはゼリー)、またはエアロゾルとして適用され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳の治療薬剤は、制御放出フォームとして調合される。本明細書に記載される組成物で使用される適切なフォーム状担体の例は、制限されないが、アルギン酸塩およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、多糖類であり、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、付加的なカルボキシル基及び/又はカルボキサミド基を有し、及び/又は親水性の側鎖を有するデンプンのような加工デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体、寒天およびポリアクリルアミドで安定させた寒天のようなその誘導体、ポリエチレンオキシド、グリコールメタクリル酸塩、ゼラチン、ゴム(キサンタン、グアー、カラヤ、ゲラン、アラビア、トラガカント、およびローカストビーンガムのような)、あるいはそれらの組み合わせがある。前述の担体の塩(例えばアルギン酸ナトリウム)もまた適切である。製剤は、オプションとして、フォームの形成を促進する起泡剤をさらに含んでおり、それには界面活性剤または外部促進薬が含まれる。適切な起泡剤の例としては、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどが挙げられる。また、Tween(登録商標)のような市販の界面活性剤もまた適切である。
いくつかの実施形態では、他のゲル製剤は、使用する特定の耳感覚細胞調節剤、他の医薬品または賦形剤/添加剤によっては有用であり、そのため、本開示の範囲に入ると考えられる。例えば、他の市販のグリセリン系ゲル、グリセリンから誘導される化合物、接合または架橋されたゲル、マトリックス、ハイドロゲル、およびポリマーは、ゼラチンおよびその誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩系ゲル、さらに、種々の天然および合成のハイドロゲルおよびハイドロゲルから誘導される化合物と同様に、すべて、本明細書に記載される耳感覚細胞調節剤製剤で有用であることが期待される。いくつかの実施形態では、耳に許容可能なゲル剤としては、限定されないが、アルギン酸塩ヒドロゲルSAF(登録商標)-ゲル(ConvaTec, Princeton, N.J.)、 Duoderm(登録商標)Hydroactive Gel(ConvaTec)、Nu-gel(登録商標)(Johnson & Johnson Medical, Arlington, Tex.);Carrasyn(登録商標)(V)Acemannan Hydrogel(Carrington laboratories, Inc.,Irving, Tex.);グリセリンゲル剤Elta(登録商標)Hydrogel (Swiss−American Products, Inc., Dallas, Tex.) 、およびK-Y(登録商標)Sterile(Johnson & Johnson) が挙げられる。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性ゲルには、本明細書に開示および記載される耳に許容可能な製剤中に存在する化合物も相当している。
哺乳動物に投与するために開発されたいくつかの製剤において、および、ヒトに投与するために処方された組成物のために、耳に許容可能なゲルは、実質的に組成物の全重量を占めている。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは、組成物の重量の約98%、または約99%をも占めている。これは、実質的に液体を含まないか、実質的に粘性のある製剤が必要な場合に望ましい。さらなる実施形態では、わずかに粘度が低いか、または、わずかにより流動性がある耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性ゲル部分は、化合物の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または90重量%を占めている。これらの範囲内にある中間的な数値は、すべて、本開示の範囲内にあることが想定され、いくつかの代替的な実施形態では、さらに流動性の(従って、粘性が低い)、耳に許容可能なゲル組成物が処方され、例えば、混合物のゲル要素またはマトリックス要素が、組成物の約50重量%以下の量、約40重量%以下の量、約30重量%以下の量を占め、または、組成物の約15重量%または約20重量%以下の量を占めている。
1つの実施形態では、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤は、薬学的に許容可能な高粘度製剤に含まれており、そこでは、製剤が少なくとも1つの懸濁液をさらに含み、懸濁液は、製剤に制御放出特性を与えるのを助ける。いくつかの実施形態では、懸濁液は、また、耳に許容可能な耳感覚細胞調節剤の製剤と組成物の粘性を高める役目をする。
懸濁液としては、ポリビニルピロリドン(例えばポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/ビニル酢酸塩コポリマー(S630))、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース酢酸塩ステアリン酸塩、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム)、ゴム(例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン)、砂糖、セルロース化合物(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウリン酸、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウリン酸、ポビドンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用な水溶性懸濁液は、懸濁液として1又はそれより多いポリマーを含んでいる。有用なポリマーは、水溶性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースポリマー)、および、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含んでいる。
1つの実施形態では、本開示は、ヒドロキシエチルセルロースゲル中に治療上有効な量の耳感覚細胞調節剤を有する、耳に許容可能なゲル状組成物を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、所望の粘性(一般に、約0.2〜約10%のHECに対応して、約200cps〜約30,000cps)を与えるように、水または水性の緩衝液の中で再構成される乾燥粉末として得られる。1つの実施形態では、HECの濃度は、約1%〜約15%、約1%〜約2%、または約1.5%〜約2%の間である。
他の実施形態では、ゲル製剤及び粘度を強化した製剤を含む耳に許容可能な製剤は、さらに、賦形剤、他の薬剤または医薬薬剤、担体、アジュバントを含んでおり、例えば、防腐剤、安定剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせなどがある。
耳に許容可能な化学放射線治療ゲル
他の実施形態では、ゲルは、化学放射線治療ゲルであり、標的とする耳構造体またはその付近への投与、化学放射線(または、紫外線、可視光線または赤外線を含む光)の使用の後、所望のゲル特性が形成される。単なる一例として、ファイバーオプティクスは、所望のゲル特性を形成するように化学放射線を供給するために使用される。
いくつかの実施形態では、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは、一体のユニットを形成する。他の実施形態では、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは、別々に設けられる。
耳に許容可能な溶媒放出ゲル
いくつかの実施形態では、ゲルは、標的とされた耳構造体へまたはその付近に投与された後、所望のゲル特性が形成されるような溶媒放出ゲルであり、すなわち、注入された製剤中の溶媒がゲルの外部に拡散して、所望のゲル特性を有するゲルが形成される。例えば、蔗糖酢酸塩イソブチラートを含む製剤、薬学的に許容可能な溶媒、1又はそれより多い添加剤および耳感覚細胞調節剤は、正円窓細胞膜またはその付近に投与され;注入された製剤の外部へ溶媒の拡散が、所望のゲル特性をもつデポー剤を提供する。例えば、溶剤が注入された製剤から急速に拡散する場合、水溶性溶媒の使用は高粘度のデポー剤を提供する。
他方、疎水性の溶剤(例えば、安息香酸ベンジル)の使用は、粘性の低いデポー剤を提供する。耳に許容可能な溶媒放出ゲル製剤の1つの例は、DURECT Corporationによって市販されるSABER(商標)Delivery Systemである。
耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物
内耳または中耳においてインサイツで形成された海綿状物質の使用もまた、本実施形態の範囲内にあると想定されている。いくつかの実施形態では、海綿状物質は、ヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状物質は、所望の耳感覚細胞調節剤をしみ込ませられ、耳感覚細胞調節剤の制御放出を提供するように中耳内に、あるいは、内耳への耳感覚細胞調節剤の制御放出を提供するように正円窓膜に接して、置かれる。いくつかの実施形態では、海綿状物質は、生分解性である。
正円窓膜の粘膜接着剤
また、正円窓膜の粘膜接着剤を、本明細書に開示される耳感覚細胞調節剤の製剤および組成物およびデバイスとともに加えることも、実施形態の範囲内であることが想定されている。「粘膜接着」という用語は、例えば、3層の正円窓膜の外側の膜のような生体膜のムチン層に結合する物質に使用される。正円窓膜の粘膜接着性ポリマーとしての機能をはたすために、このポリマーは、例えば、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、濡れ性のある粘液/粘膜組織表面に適した表面特性、または粘液の網目を透過するのに十分な柔軟性など、いくつかの一般的な物理化学的特徴を有している。
耳に許容可能な製剤とともに使用される正円窓膜の粘膜接着剤としては、限定されないが、少なくとも1つの溶解性ポリビニルピロリドン(PVP);水膨潤性だが水に不溶な繊維状の架橋したカルボキシ官能化ポリマー;架橋したポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール(登録商標)947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖ゴム、マルトデキストリン、架橋したアルギネートガムゲル(alignate gum gel)、水分散性のポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン・二酸化ケイ素・クレイからなる群か選ばれる少なくとも2つの粒子状物質要素、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
組成物と標的の耳要素の粘膜層との相互作用を高めるために、正円窓膜の粘膜接着剤は、選択的に、耳に許容可能な粘度を高める賦形剤と組み合わせて、あるいは、単独で用いられる。1つの非限定的な実施例では、粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤は、アルギン酸塩ゴムである。使用に際し、組成物に付与される正円窓膜の粘膜接着特性は、耳感覚細胞調節剤の有効量を、例えば、正円窓膜または蝸牛窓稜の粘膜層に、粘膜をコーティングする量で送達し、そしてその後、組成物が、内耳の前庭構造及び/又は蝸牛構造(単なる例)などの患部に届くために、十分なレベルである。使用に際しては、本明細書に提示の組成物の粘膜接着特性が決定され、この情報(本明細書に含まれる他の教示に沿って)を使用して、適切な量が決定される。十分な粘膜接着性を決定するための1つの方法としては、限定されないが、組成物の粘膜層との相互作用の変化をモニターすることが挙げられ、粘膜接着性の賦形剤があるときと、ないときとにおける、組成物の存在場所または保持時間の変化を測定することを含んでいる。
粘膜接着剤は、例えば、米国特許第6,638,521号、第6,562,363号、第6,509,028号、第6,348,502号、第6,319,513号、第6,306,789号、第5,814,330号および第4,900,552号に記載されており、それぞれ、そのような開示のための参照として、本明細書に組み込まれている。
別の制限されない例では、粘膜接着剤は、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素および粘土から選ばれた少なくとも2つの粒子の成分であり、組成物は、投与前に任意の液体でさらに希釈されることはなく、そして、二酸化ケイ素のレベル(量)は、存在する場合、組成物の重量の約3%から約15%まである。二酸化ケイ素としては、存在する場合、噴霧化された二酸化ケイ素、沈殿された二酸化ケイ素、コアセルベートされた二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素およびそれらの混合物がある。粘土としては、存在する場合、カオリン鉱物、セルペンチン無機質、スメクタイト、イライトまたはそれらの混合物がある。例えば、粘土としては、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトまたはそれらの混合物がある。
1つの制限されない例では、正円窓膜の粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。
マルトデキストリンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦または他の植物製品から選択して得られるデンプンの加水分解によって生産される炭水化物である。マルトデキストリンは、単独または他の正円窓膜の粘膜接着剤との組み合わせを選択して使用され、本明細書に記載される組成物に粘膜接着性を付与する。1つの実施形態では、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書に記載される組成物またはデバイスの正円窓膜の粘膜接着特性を高めるために使用される。
別の実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシド及び/又は単糖アルキルエステルである。本明細書で使用される場合、「アルキル-グリコシド」は、疎水性アルキルに結合された任意の親水性単糖(例えば、スクロース、マルトースまたはグルコース)を有する化合物を意味する。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、疎水性アルキル(例えば、炭素原子約6〜25個を含むアルキル)に、アミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、及び/又はウレイド結合によって、結合された糖を有するアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-マルトシドまたはβ-D-マルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-グルコシドまたはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-スクロシドまたはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシルのβ-D-チオマルトシド;ドデシル基マルトース配糖体;ヘプチル-またはオクチル-1-チオのα-D-グルコピラノシドまたはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって結合されたパラチノースまたはイソマルトアミンの誘導体、およびアルキル鎖に尿素によって結合されたイソマルトアミンの誘導体;ならびに、スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド、およびスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、炭素原子が9〜16個のアルキル鎖にグリコシド結合(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのスクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのグルコシド;および、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのマルトシド)によって結合されたマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである、アルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである、アルキル-グリコシドである。
いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、少なくとも1つのグルコースを有する二糖類である、アルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、n-ドデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシド、及び/又はn‐テトラデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グルコピラノシドを有する界面活性剤である。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、アルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシド内の酸素原子が硫黄原子で置換されたアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドがβアノマーであるアルキル-グリコシドである。いくつかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、βアノマーの90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%を占めているアルキル-グリコシドである。
耳に許容可能な制御放出粒子
本明細書に記載される耳感覚細胞調節剤は、耳感覚細胞調節剤の局在的な送達を促進または容易にする制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、微粒子、マイクロスフェア、コアセルベート、ナノカプセルまたは他の薬剤の中に、任意の方法で組み入れられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤が存在する単一の高粘度製剤が使用され、一方、他の実施形態では、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤が存在する2以上の別個の高粘度製剤の混合物を有する医薬製剤が使用される。いくつかの実施形態では、ゾル、ゲル及び/又は生体適合性マトリックスの組み合わせもまた、制御放出性の耳感覚細胞調節剤の組成物または製剤を提供するために使用される。特定の実施形態では、制御放出性の耳感覚細胞調節剤の製剤または組成物は、組成物の性質を改変または向上させるために、1つ以上の薬剤によって架橋結合される。
本明細書に記載される医薬製剤に関連するマイクロスフェアの(開示)例としては、;Luzzi, L. A., J. Pharm. Psy. 59:1367 (1970);米国特許第4,530,840号; Lewis, D. H., 「Controlled Release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers」 in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990); 米国特許第4,675,189号;Beck et al, 「Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid-co-glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems,」 in Long Acting Steroid Contraception, Mishell, D. R., ed., Raven Press (1983);米国特許第4,758,435号;米国特許第3,773,919号;米国特許第4,474,572号が挙げられる。マイクロスフェアとして調剤された蛋白質治療薬の(開示)例としては、;米国特許第 6,458,387号;米国特許第6,268,053号;米国特許第6,090,925号;米国特許第 5,981,719号:および米国特許第5,578,709が挙げられ、これらの開示のために本明細書に参照として組み入れられている。
不規則に形作られたマイクロスフェアも可能であるが、マイクロスフェアは、通常、球の形状を有している。マイクロスフェアは、直径サブミクロンから1000ミクロンまでの範囲でサイズが変化しうる。本明細書に記載される耳に許容可能な製剤についての使用に適したマイクロスフェアは、直径がサブミクロンから250ミクロンであり、標準ゲージ針を用いた注射による投与が可能である。耳に許容可能なマイクロスフェアは、注射可能な組成物に使用するために許容可能な寸法範囲でマイクロスフェアを生産する任意の方法によって調製されている。注入は、任意の方法で、液状組成物の投与のために使用される標準ゲージ針を用いて遂行される。
本開示で耳に許容可能な制御放出粒子状物質に用いられる高分子マトリックス材料の好適な例としては、ポリ(グリコール酸)およびポリ-d,l-乳酸、ポリ-1-乳酸、前述のコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルソカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルソエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン(polydioxonene)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、および、アルブミン、カゼイン、グリセリンモノ-やジステアラートなどのワックスを含む天然重合体、などが挙げられる。様々な市販のポリ(ラクチド-co-グリコリド)材料(PLGA)は、本明細書に記載される方法を選択して使用される。
例えば、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコール酸)は、Boehringer-Ingelheim社から、RESOMER RG 503として市販で入手可能である。この生成物は、モル百分率50%のラクチドと50%のグリコリドの組成物である。これらのコポリマーは、分子量およびグリコール酸に対する乳酸の幅広い範囲の比率で入手可能である。1つの実施形態は、ポリマーポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)の使用を含んでいる。そのようなコポリマーにおいてグリコリドに対するラクチドのモル比は、約95:5から約50:50の範囲を含んでいる。
高分子マトリックス材料の分子量は、ある程度重要である。分子量は、それが良好なポリマーコーティングを形成するように、つまり、ポリマーが良質の塗膜形成材料となるように、十分に高くあるべきである。通常、良好な分子量は、5,000〜500,000ダルトンの範囲内である。ポリマーの分子量は、また、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散機構のために、薬の全部がマイクロスフェアから放出され、分解されるまで、ポリマーは、未変化状態を維持すべきである。薬物は、また、重合体の賦形剤のバイオイロードゥ(bioerodes)としてマイクロスフェアから放出される。重合体材の適切な選択により、生成されるマイクロスフェアが、拡散放出と生分解放出との両方の性質を示すように、マイクロスフェア製剤が形成される。これは、多相放出パターンを与えるのに役立つ。
化合物をマイクロスフェアにカプセル化する様々な方法が知られている。これらの方法では、耳感覚細胞調節剤は、通常、壁形成材料を含有する溶媒中で、スタラー(攪拌器)、アジテーター(攪拌器)、あるいは他の動力学的な混合技術を用いて、分散または乳化される。それから、溶媒はマイクロスフェアから除去され、その後、マイクロスフェア生成物が得られる。
1つの実施形態では、制御放出性の耳感覚細胞調節剤製剤は、耳感覚細胞調節剤及び/又は他の医薬品のエチレン酢酸ビニルコポリマーマトリクスへの取り込みを介して作られる。(その開示のために本明細書に組み込まれている米国特許第6,083,534号を参照)。
別の実施形態では、耳感覚細胞調節剤は、ポリ(乳酸-グリコール酸)またはポリ-L-乳酸マイクロスフェアに取り込まれる(同上(Id.))。さらに別の実施形態では、耳感覚細胞調節剤は、アルギン酸マイクロスフェア中にカプセル化される。(その開示のために本明細書に組み込まれている米国特許第6,036,978号を参照)。耳感覚細胞調節剤の化合物または組成物をカプセル化するための、生体適合性のメタクリル酸ベースのポリマーは、本明細書で開示される製剤および方法において、任意に用いられる。幅広いメタクリル酸ベースのポリマー系は、Evonik社から市販されているEUDRAGITポリマーなどのように、市場で入手できる。メタクリル酸ポリマーの1つの有用な様態は、製剤の特性が、様々なコポリマーを取り込むことによって変化するということである。例えば、ポリ(アクリル酸-co-メチルメタクリル酸)微粒子は、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基がムチン(Park et al, Pharm. Res.(1987)4(6):457-464)と水素結合を形成すると、増強された粘膜付着特性を発揮する。アクリル酸とメチルメタクリル酸モノマーとの割合の変動は、コポリマーの特性を調節するのに役立つ。メタクリル酸ベースの微粒子は、タンパク質系治療製剤にも用いられてきた(Naha et al, Journal of Microencapsulation 04 February, 2008 (オンライン公開))。1つの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な高粘度製剤は、耳感覚細胞調節剤マイクロスフェアを含み、マイクロスフェアはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。さらなる実施形態では、本明細書に記載される高粘度製剤は、マイクロスフェアが粘膜付着性である、耳感覚細胞調節剤マイクロスフェアを含んでいる。耳感覚細胞調節剤を含有する中実または中空の球体へのポリマーの材料またはマトリクスの取り込みまたは堆積を含む他の制御放出系は、本明細書で開示される実施形態内にも明確に組み込まれている。耳感覚細胞調節剤の活性の顕著な喪失を伴うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書で開示される教示、例、および原理を用いて決定される。
薬剤調製に関する従来のマイクロカプセル化工程の例は、米国特許第3,737,337号に示され、この文献はその開示のために参照として、本明細書に組み込まれている。カプセル化される若しくは埋め込まれる耳感覚細胞調節剤物質は、(分散の準備段階で)振動器および高速攪拌器などを含む従来のミキサーを用いて、ポリマーの有機溶液(相A)中に溶解または分散される。溶液または懸濁液中にコア材料を含有する相(A)の分散は、高速ミキサー、振動ミキサー、またはスプレーノズルなどの従来のミキサーを再度用いて、水相(B)中で行われ、その場合、マイクロスフェアの粒子の大きさは、相(A)の濃度だけではなく、エマルジョン(emulsate)またはマイクロスフェアの大きさによって決定される。耳感覚細胞調節剤のマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、しばしば比較的長時間の間、攪拌、揺動、振動、または他の動力学的な混合技術によって、活性薬剤およびポリマーを含有する溶媒が不混和溶液中で乳化または分散されると、マイクロスフェアが形成される。
マイクロスフェアを作り上げるための従来の方法は、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号に記載されており、その開示のため参照として本明細書に組み込まれている。所望の耳感覚細胞調節剤は、適切な溶媒中に溶解または分散されている。活性薬剤が所望通りに充填された生成物を与える活性成分に相対する量で、ポリマーマトリクス材料が、薬剤を含有する培地に加えられる。オプションとして、耳感覚細胞調節剤マイクロスフェア生成物のすべての成分は、溶媒培地中で一緒に混ぜ合わせられることが可能である。薬剤およびポリマーマトリクス材料に適切な溶媒としては、アセトンのような有機溶媒、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、塩化メチレンのような同種のもの、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒が挙げられる。
溶媒への成分の混合物は、連続相培地内で乳化される(;連続相培地とは、示された成分を包含する微小液滴の分散が連続相培地内で形成されるようなもの)。当然ながら、連続相培地と有機溶媒とは不混和でなければならず、(連続相培地は)水を含んでいる(オプションとして、キシレン、トルエン、合成油、天然油などの非水系の培地も用いられるが)。マイクロスフェアが凝集するのを防止するためと、エマルジョン中の溶媒の微小液滴のサイズを制御するために、任意の方法で界面活性剤が連続相培地に添加される。好まれる界面活性剤−分散培地の組み合わせは、水混合物中における1〜10重量%のポリ(ビニルアルコール)である。分散は、その混合された物質の機械的な攪拌によって形成される。エマルジョンは、連続相培地に活性薬剤の壁を形成する材料溶液の小さな液滴を加えることによっても任意の方法で形成される。エマルジョン形成中の温度は、特に重要ではないが、マイクロスフェアのサイズおよび性質と、連続相中への薬剤の溶解性とに影響を与える。連続相には、できるだけ薬剤がないことが望ましい。さらに、使用される溶媒と連続相培地とに依存して、温度は低すぎてはならず、さもなければ、溶媒と培地が凝固したり、若しくは培地が実用の目的にとって粘りがありすぎたりする、反面、高すぎると、培地が蒸発したり、若しくは、流体培地が維持されなくなる。さらに、培地の温度は、マイクロスフェアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が悪影響を受けるほど高くてはいけない。
従って、分散工程は、安定な処理状態を保つ任意の温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬剤と賦形剤に依存し、約15℃から60℃である。
形成された分散液は、安定なエマルジョンであり、この分散液から有機溶媒の不混和流体が、溶媒除去工程の第1工程で、部分的に選択されて除去される。溶媒は、加熱、減圧の適用、又はその両方の組み合わせのような一般的な技術によって除去される。微小液滴から溶媒を蒸発させるために利用される温度は、重要ではないが、与えられた微小粒子の調製に用いられる耳感覚細胞調節剤を分解するほど高すぎてはならず、また、壁を形成する材料に欠陥を引起こすような急な速度で溶媒を蒸発させるほど高くてはならない。通常、溶媒の5〜75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
第1の工程の後、溶媒不混和流体培地中の分散した微粒子は、任意の適切な分離方法によって流体培地から分離される。従って、例えば、流体は、マイクロスフェアからデカントされ、又は、マイクロスフェアの懸濁液はろ過される。所望されるならば、分離技術のさらに別の様々な組み合わせが用いられる。
連続相培地からのマイクロスフェアの分離に続いて、マイクロスフェア中の溶媒の残りは、抽出によって除去される。この段階で、マイクロスフェアは、界面活性剤と共に又は無しで、第1工程において使用された同じ連続相培地の中に、又は別の液体の中に、懸濁される。抽出培地は、マイクロスフェアから溶媒を除去するが、マイクロスフェアを溶解しない。任意の方法で、抽出の間、溶解された溶媒を含む抽出培地は除去され、新しい抽出培地と入れ替えられる。これは、連続的な素地上で行われるのがベストである。与えられた工程の抽出培地の補充速度は、変わり易く、工程が行われている時に決定され、従って、速度の正確な限界は、前もって決定されるべきではない。溶媒の大部分がマイクロスフェアから除去されてしまった後に、マイクロスフェアは、空気にさらすことによって、又は真空乾燥や乾燥剤を通しての乾燥などのような他の従来の乾燥技術によって、乾燥される。この工程は、80重量%までの、好ましくは60重量%までのコア充填(core loadings)が得られるので、耳感覚細胞調節剤をカプセル化する際に効果的である。
代替的に、耳感覚細胞調節剤を含む制御放出マイクロスフェアは、スタティックミキサーの使用によって調製される。静的な又は静止型のミキサーは、多くの静的な混合薬剤を受ける導管又はチューブを備えている。スタティックミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、かつ、比較的短時間で、均質な混合を与える。スタティックミキサーを用いると、ブレードのようなミキサーのある部分が流体を通って動くというよりも、流体がミキサーを通って移動する。
スタティックミキサーは、エマルジョンを形成するために任意の方法で使用される。エマルジョンを形成するためにスタティックミキサーを使用する場合、混合される種々の溶液や相の密度や粘度、相の容積比、相間の界面張力、スタティックミキサーのパラメーター(導管の直径、ミキシング要素の長さ;ミキシング要素の数)、およびスタティックミキサーを通過する線速度を含むいくつかの要素がエマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度や、粘度、および界面張力に影響するので、可変である。制御する変数は、線速度、ずり速度、およびスタティックミキサーの単位長さ当たりの圧力降下である。
スタティックミキサー工程を用いて耳感覚細胞調節剤を含むマイクロスフェアを形成するために、有機相と水相が組み合わされる。有機相と水相は、ほとんど又は実質的に不混和であり、水相は、エマルジョンの連続相を形成している。機相は、壁を形成するポリマー又はポリマーマトリクス材料だけでなく、耳感覚細胞調節剤を含んでいる。有機相は、有機溶媒又は他の適切な溶媒に耳感覚細胞調節剤を溶解させることによって、あるいは、耳感覚細胞調節剤を含む分散液又はエマルジョンを形成するによって、調製される。有機相と水相は、2つの相が、スタティックミキサーを介して同時に流れるようにポンプで送り込まれ、それによって、ポリマーマトリクス材料内にカプセル化された耳感覚細胞調節剤を含有するマイクロスフェアを有するエマルジョンが形成される。有機相と水相は、有機溶媒を抽出又は除去するために、スタティックミキサーを通して大量のクエンチ液の中にポンプで送り込まれる。有機溶媒は、クエンチ液の中で洗浄又は攪拌されている間に、マイクロスフェアから任意の方法で除去される。マイクロスフェアは、クエンチ液の中で洗浄された後、ふるいによって分離され、乾燥される。
1つの実施形態では、マイクロスフェアは、スタティックミキサーを用いて調製される。その工程は、上述の溶媒抽出技術に限定されず、他のカプセル化技術も併せて使用される。例えば、オプションとして、その工程は、相分離カプセル化技術と共に使用される。そうするために、ポリマー溶液の中に懸濁又は分散している耳感覚細胞調節剤を有する有機相が、調製される。非溶剤型の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤のための溶媒を含んでいない。好ましい非溶剤型の第2相は、シリコンオイルである。有機相と非溶剤型の相は、ヘプタンのような非溶剤型のクエンチ液の中に、スタティックミキサーを通じてポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、完全な固化と洗浄のために、クエンチされる。マイクロカプセル化の工程としては、スプレー乾燥、溶媒蒸発、蒸発と抽出の組み合わせ、および溶融押出が挙げられる。
別の実施形態では、マイクロカプセル化工程は、単一の溶媒を用いたスタティックミキサーの使用を含んでいる。この工程は、米国特許出願第08/338,805号に詳細に記載されており、本明細書に、その開示のための参照として取り込まれている。代替的な工程は、共溶媒を用いたスタティックミキサーの使用を含んでいる。この工程では、生分解性ポリマー結合と活性な医薬品とを備えた生分解性マイクロスフェアが調製され、これは、薬剤とポリマーの両方を溶解させるためのハロゲン化炭化水素を含まず、少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物を含んでいる。溶解した薬剤とポリマーを含む溶媒の混合物は、液滴を形成するために、水溶性の溶液中に分散される。それから、生成されたエマルジョンは、好ましくは、混合物に少なくとも1つの溶媒を含む水性抽出培地に加えられ、それによって、各溶媒の抽出速度は制御され、その上で、薬学的に活性な薬剤を含む生分解性のマイクロスフェアが形成される。水中の1つの溶媒の溶解性は他と実質的に独立しており、溶媒の選択性が増えるために、このプロセスは、特に抽出が困難な溶媒にとっても、より少ない抽出培地で済むという利点がある。
ナノ粒子もまた、本明細書に記載される耳感覚細胞調節剤と共に使用するために考慮される。ナノ粒子は、約100nm以下のサイズの材料構造である。粒子表面の溶媒との相互作用は、密度の相違を克服するほど十分強いことから、医薬組成物におけるナノ粒子の1つの用途は、懸濁液の形成である。ナノ粒子懸濁液は、ナノ粒子が滅菌用ろ過を受けるために十分小さいので、無菌化される(例えば、米国特許第 6,139,870号参照、これは、その開示のための参照として本明細書に組み込まれている)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、若しくは脂肪酸の溶液又は水溶性分散液に乳化した、少なくとも1つの、疎水性で、水に溶けない、そして水に分散しないポリマー又はコポリマーを含んでいる。耳感覚細胞調節剤は、任意の方法で、ナノ粒子の中に、ポリマー又はコポリマーと共に導入される。
制御放出構造としての脂質ナノカプセルは、正円窓膜を貫通し、内耳及び/又は中耳の標的に到達するために、本開示でも考慮されている。脂質ナノカプセルは、カプリン酸およびカプリル酸の中性脂肪(Labrafac WL1349;avg.mw 512)、大豆レシチン(LIPOID(登録商標)S75-3; 69%のホズファチジルコリンと他のリン脂質)、界面活性剤(例えば、SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、および遊離ポリエチレングリコール660、;NaClおよび水など、を乳化させることによって形成される。水中でのオイルエマルジョンを得るために、その混合物が室温で攪拌される。磁気攪拌の下で4℃/minの速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、そして、85℃で逆相(オイル中における水の小滴)が得られる。それから、85℃と60℃の間で、冷却と加熱が4 ℃/minの速度で3サイクル行われ、そして0℃近くの温度で冷たい水の中で急速に希釈され、ナノカプセルの懸濁液が生成される。耳感覚細胞調節剤をカプセル化するために、冷たい水で希釈する直前に、任意の方法で薬剤が加えられる。
耳感覚細胞調節剤は、耳に活性な薬剤の水溶性ミセル溶液と共に90分間インキュベートすることにより、脂質ナノ粒子に導入される。懸濁液は、その後、15分毎にボルテックスミキサーにかけられ(vortexed)、それから、1分間の間、氷水浴でクエンチされる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤としては、単なる一例として、コール酸又はタウロコール酸の塩がある。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成される複合体であり、十分代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸の類似物(analog)であるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然に形成される胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の複合体である。オプションとして、他の自然に形成される陰イオン性の界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)又は双性イオン性の界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホズファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)が、ナノ粒子を調製するために使用される。
一例として、耳に許容可能なリン脂質は、例えば、天然、合成、または半合成のリン脂質から選ばれ、;例えば、精製した卵又は大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン90)などのレシチンや、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホズファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホズファチジルコリン、ジミリストイルホズファチジルコリン、ジステアロイルホズファチジルコリンおよびホスファチジン酸、又はそれらの混合物が特に用いられる。
耳に許容可能な製剤と共に使用するための脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸などから選ばれる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤としては、様々なポリマー、低分子量のオリゴマー、天然物、および界面活性剤がある。好ましい表面改質剤には、非イオン性、およびイオン性の界面活性剤がある。2つ又はそれ以上の表面改質剤が、組み合わされて使用されてもよい。
耳に許容可能な界面活性剤の代表的な例としては、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(燐脂質)、デキストラン、グリセリン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ドデシルトリメチル臭化アンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ナトリウム硫酸ドデシル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SLおよびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタル酸塩、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドと併せた4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)およびトリトンとしても既知)、ポロクサマー、ポロキサミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホコハク酸(DOSS);Tetronic(登録商標)1508、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、Tritons X-200、Crodestas F-110、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、Crodestas SL-40(Croda社)のジアルキルエステル;および、C18H37CH2(CON(CH3)-CH2(CHOH)4(CH2 OH)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトース配糖体;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノイルβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;などがある。これらの界面活性剤のほとんどは、医薬用賦形剤として知られており、アメリカ薬剤師会(American Pharmaceutical Association)とイギリス薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同で出版された(The Pharmaceutical Press、1986)、「医薬用賦形剤ハンドブック」(the Handbook of Pharmaceutical Excipeints)に詳細に記載されており、その開示のための参照として特別に取り込まれている。
疎水性で、水に不溶で、水に非分散性のポリマー又はコポリマーは、例えば乳酸ポリマー若しくはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、ポリ乳酸/ポリエチレン(若しくはポリプロピレン)オキシドコポリマーで、好ましくは、分子量が1000〜200,000のもの、ポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸であるポリラクトン、又はポリ酸無水物、のような生体適合性で、生分解性のポリマーから選択される。
ナノ粒子は、リン脂質およびオレイン酸塩の水性の分散液または溶液から、コアセルベーションまたは溶剤の蒸発の技術によって得ることができ、その中に、活性な有効成分と、疎水性、水に不溶性、および水に非分散性のポリマー又はコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる。その混合物は、予め乳化され、その後、超極小のナノ粒子の水性懸濁液を得るために、均質化、有機溶媒の蒸発が施される。
実施形態の範囲内にある耳感覚細胞調節剤ナノ粒子を作り出すために、種々の方法が、任意に用いられる。これらの方法としては、自由噴流膨張、レーザー蒸発、放電加工、電子爆発および化学蒸着法のような気化法;溶解力のある置換に続く機械的な研磨(例えばパールミリング(pearlmilling)技術、Elan Nanosystems社)、超臨界CO2で界面に堆積後の溶媒置換、などの物理的方法がある。1つの実施形態では、溶媒置換方法が使用される。
この方法によって生産されたナノ粒子のサイズは、有機溶媒へのポリマーの濃度;混合速度;およびプロセスで使用された界面活性剤に敏感である。連続流れミキサーは、小さな粒径を確保するために必要な乱流を与える。ナノ粒子を調製するために任意的に使用される連続流れ混合装置の1つのタイプが記載されている(Hansen et al J phys Chem 92、2189-96, 1988)。他の実施形態では、超音波装置、貫流式(flow through)ホモジナイザー又は超臨界CO2装置が、ナノ粒子を調製するために使用される。
直接合成によって適切なナノ粒子の均質性が得られなければ、それらの生成に伴う他の成分を含まない高度に均一な薬剤含有粒子を作成するために、分子ふるいクロマトグラフィーが使用される。粒子に結合した耳感覚細胞調節剤や他の医薬化合物を、フリーな耳感覚細胞調節剤や他の医薬化合物から分離させるため、あるいは、耳感覚細胞調節剤含有ナノ粒子の適切なサイズの幅を選択するために、ゲルろ過クロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)技術が、使用される。このような混合物のサイズに基づく分画のために、Superdex 200、Superose 6、Sephacryl 1000のような種々のSEC媒体が市販され、利用される。さらに、遠心分離、膜ろ過により、および、他の分子ふるい装置、架橋結合したゲル/物質、および膜の使用により、ナノ粒子は任意の方法で精製される。
耳に許容可能なシクロデキストリンおよび他の安定化製剤
特定の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、代替的にシクロデキストリンを含んでいる。シクロデキストリンは、6、7、または8のグルコピラノース単位を含む環状オリゴ糖であり、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンと呼ばれている。シクロデキストリンは、水溶性を高める親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部とを備える。水性の環境下で、他の分子の疎水性部分は、しばしばシクロデキストリンの疎水性空洞に入り込み、包接化合物を形成する。加えて、シクロデキストリンは、また、疎水性空洞内部にない分子との非結合性相互作用という別のタイプの作用も可能である。シクロデキストリンは、各グルコピラノシル単位に3つの遊離水酸基、又はα-シクロデキストリン上に18水酸基、β-シクロデキストリン上に21水酸基、及びγ-シクロデキストリン上に24水酸基を備えている。1又はそれより多いこれらの水酸基は、任意のいくつかの試薬と反応し、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホン酸塩、及びスルホアルキルエーテルを含む多種多様のシクロデキストリン誘導体を形成する。β‐シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル-β‐シクロデキストリン(HPβCD)の構造体を下記化学式2に示す。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される医薬組成物におけるシクロデキストリンの使用は、薬物の溶解性を改善する。包接化合物には、多くの場合、増強された溶解性が組み込まれているが、;シクロデキストリンと不溶性化合物の間の他の相互作用もまた溶解性を改善する。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、市販で、発熱物質を含まない製品(pyrogen free product)として入手可能である。それは、水に容易に溶ける、非吸湿性の白い粉である。HPβCDは、熱的に安定しており、そして中性のpHにおいては分解しない。従って、シクロデキストリンは、組成物又は製剤において治療薬剤の溶解性を改善する。それ故、いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書中に記載される製剤中で、耳に許容可能な耳感覚細胞調節剤の溶解性を増加させるために、含まれている。他の実施形態では、シクロデキストリンは、さらに、本明細書中に記載される製剤中で、制御放出型賦形剤として機能する。
単なる例として、使用されるシクロデキストリン誘導体としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、硫酸α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンが挙げられる。
本明細書中に開示される組成物及び方法で使用されるサイクロデキストリンの濃度は、治療に有用な薬剤、もしくはその塩又はそのプロドラッグ、あるいはその組成物中の他の賦形剤の特性に関連する生理化学的特性、薬物動態特性、副作用又は有事事象、製剤考察(formulation consideration)、又は他の因子によって変化する。従って、特定の環境内では、本明細書に開示される組成物と方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度又は量は、必要に応じて変化する。使用時には、本明細書中に記載される任意の製剤において、耳感覚細胞調節剤の溶解性及び/又は制御放出型賦形剤としての機能を高めるために必要とされるシクロデキストリンの量は、本明細書中に記載される原理、実施例、及び教示を用いて選択される。
本明細書中に開示される耳に許容可能な製剤に有用な他の安定剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、安定剤のアミド類似物もまた使用される。さらなる実施形態では、選択された安定剤は、製剤(例えば、オレイン酸、ワックス)の疎水性を変え、または、製剤(例えば、エタノール)中の種々の成分の混合を改善し、製剤(formula)(例えば、PVP又はポリビニルピロリドン)中の水分レベルを制御し、(例えば、長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、アミド等、又はそれらの混合物の室温よりも高い融点を備える物質や;ワックスの)相の移動を制御し、及び/又は、封入材料(例えば、オレイン酸、又はワックス)を有する製剤(formula)の親和性を改善する。別の実施形態では、これらの安定剤のいくつかは、溶媒/共溶媒(例えばエタノール)として使用される。他の実施形態では、安定剤は、耳感覚細胞調節剤の分解を抑制するために十分な量で存在する。これら安定剤の例としては、限定されるものではないが、;(a)約0.5%〜約2%w/vのグリセリン、(b)約0.1%〜約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%〜約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1 mM〜約10mMのEDTA、(e)約0.01%〜約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%〜約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%〜約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムと亜鉛のような2価カチオン;又は(n)それらの組み合わせが挙げられる。
さらに有益な耳感覚細胞調節剤の耳に許容可能な製剤は、1またはそれより多い抗凝集添加剤を含み、タンパク質凝集率を減少させることにより耳感覚細胞調節剤製剤の安定性を高める。選択される抗凝集添加剤は、耳感覚細胞調節剤や、例えば耳感覚細胞調節剤抗体がさらされる状態の特性に依存する。例えば、攪拌及び熱応力を受ける特定の製剤は、凍結乾燥及び再構成を受ける製剤とは異なる抗凝集添加剤を要求する。有用な抗凝集性の添加剤としては、単なる例ではあるが、尿素、塩化グアニジン、グリシン又はアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコール及びデキストランなどのポリマー、アルキルグリコシドなどのアルキルサッカライド、及び界面活性剤が挙げられる。
オプションとして、他の有益な製剤としては、要求される場所での化学安定性を高めるための1又はそれより多い耳に許容可能な抗酸化剤がある。適切な抗酸化剤としては、単なる例として、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。1つの実施形態では、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、及び他の一般的な安定剤から選択される。
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を高めるため又は他の目的のために、1又はそれより多い耳に許容可能な界面活性剤を含んでいる。適切な非イオン性界面活性剤としては、単なる例ではあるが、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、及び例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油等の植物油;及び、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、オクトキシノール10、オクトキシノール40等のアルキルフェニルエーテルがある。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される耳に許容可能な医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、又は少なくとも約6カ月の期間にわたって化合物分解に対して安定的である。他の実施形態では、本明細書中に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって、化合物分解に対して安定的である。少なくとも約1か月の期間にわたって化合物分解に対して安定な製剤もまた、本明細書中に記載されている。
他の実施形態では、さらなる界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))及び/又は緩衝剤は、界面活性剤及び/又は緩衝剤が、安定のために最適なpHに生成物を維持するように、本明細書に前述される1又はそれより多い薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされる。最適な共界面活性剤としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。a)天然および合成の脂肪親和性の強い薬剤、例えばリン脂質、コレステロール、コレステロール脂肪酸エステル、その誘導体;b)非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート( Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20)、および、他のTween、ソルビタンエステル、グリセリンエステル、例えばマイルジ(Myrj)、グリセリントリアセタート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えばCremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標)EL)および他のCremophors、スルホコハク酸、アルキル硫酸塩(SLS);PEG-8グリセリルカプリル酸塩/カプリン酸塩(Labrasol)、PEG-4グリセリルカプリル酸塩/カプリン酸塩(LabrafacヒドロWL 1219)、PEG-32グリセリルラウリン酸(Gelucire 444/14)、PEG-6グリセリルモノオレイン酸塩(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6グリセリルリノール酸塩(Labrafil M 2125 CS)のようなPEGグリセリル脂肪酸エステル;プロピレングリコールラウリン酸(プロピレングリコールカプリル酸塩/カプリン酸塩)のような、プロピレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル;Brij(登録商標)700、アスコルビル酸-6-パルミテート、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロールトリイリシンオレイン酸 (triiricinoleate)、およびそれの任意の組み合わせまたは混合物;c)陰イオン界面活性剤として、限定されないが、カルシウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル酸カリウム、胆汁塩、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物があり;そして、d)陽イオン性界面活性剤、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム等がある。
さらなる実施形態では、1又はそれより多い共界面活性剤が本発明で開示される耳に許容可能な製剤に利用される場合、界面活性剤は、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされるとともに、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤中に存在する。
1つの実施形態では、界面活性剤は、0〜20のHLB値を有する。さらなる実施形態では、界面活性剤は、0〜3、4〜6、7〜9、8〜18、13〜15、10〜18のHLB値を有する。
1つの実施形態では、希釈剤はさらなる安定環境を提供するので、希釈剤は耳感覚細胞調節剤又は他の医薬化合物を安定化するためにも使用される。緩衝液(pHの制御又は維持を提供することもできる)中に溶解される塩は、希釈剤として利用され、その希釈剤としては、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。他の実施形態では、耳感覚細胞調節剤製剤が標的とされる蝸牛の部分にもよるが、ゲル製剤は内リンパまたは外リンパと等張である。等張性製剤は、等張化剤を加えることによって与えられる。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、又はそれらの任意の組合せ若しくは混合物があり、例えば、限定されないが、デキストロースおよび塩化ナトリウムが挙げられる。さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kg〜約500mOsm/kgの量で存在する。いくつかの実施形態では、等張化剤は、約200mOsm/kg 〜約400mOsm/kg、約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgの量で存在する。等張化剤の量は、本明細書中に記載されるように、医薬製剤の標的構造に依存する。
有用な等張化組成物は、また、1又はそれより多い塩を、組成物の浸透圧を外リンパまたは内リンパにとって許容可能な範囲にするために必要な量で、含んでいる。このような塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、および、塩素、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫酸、チオ硫酸又は亜硫酸のアニオンを有しており;、適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される耳に許容可能なゲル製剤は、微生物の成長を抑制するために、代替的に又は追加的に防腐剤を含んでいる。本明細書中に記載される粘性強化製剤で使用する、耳に許容可能な適切な防腐剤としては、安息香酸、ホウ酸、p-ヒドロキシ安息香酸、アルコール、4級化合物、安定化二酸化塩素、水銀含有物質(例えば、メルフェン(merfen)およびチメロサール)、前述のものの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態では、防腐剤は、単なる例として、本明細書中に記載される耳に許容可能な製剤中の抗菌剤である。1つの実施形態では、製剤は、単なる例として、メチルパラベン、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール及びそれ以外のものを含んでいる。別の実施形態では、メチルパラベンの濃度は、約0.05%〜約1.0%、約0.1%〜約0.2%である。さらなる実施形態では、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及びクエン酸ナトリウムを混合することによって調製される。
さらなる実施形態では、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及び酢酸ナトリウムを混合することによって調製される。さらなる実施形態では、混合物は、120℃で約20分間オートクレーブすることにより滅菌され、本明細書中に開示される耳感覚細胞調節剤の適切量を混合する前に、pH、メチルパラベン濃度、及び粘度が試験される。
薬物送達ビヒクルで用いられる、耳に許容可能な適切な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノール、及びそれ以外のものを含んでいる。これらの薬剤は、通常、重量比で約0.001%〜約5%の量、好ましくは、重量比で約0.01%〜約2%の量で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される耳に許容可能な製剤は、防腐剤を含んでいない。
正円窓膜浸透促進剤
もう1つ別の実施形態では、製剤は、1又はそれより多い正円窓膜浸透促進剤をさらに含んでいる。正円窓膜を通過する浸透は、正円窓膜浸透促進剤の存在により高められる。正円窓膜浸透促進剤は、正円窓膜を通過する同時投与物質の輸送を促進する化学物質である。正円窓膜浸透促進剤は、化学構造体に従って分類される。イオン性と非イオン性との両性の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテル、ラウレス-9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(PLE)、Tween(登録商標)80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP-POE)、ポリソルベートなどが、正円窓膜浸透促進剤として機能する。胆汁塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸及び誘導体(例えば、オレイン酸、カプリン酸、モノ-グリセリド及びジ-グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸塩キレートなど)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、及びアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロパンジオールなど)もまた、正円窓膜浸透促進剤として機能する。
いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドがテトラデシル-β-D-マルトシドである、アルキル-グリコシドを含有する界面活性剤である。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドがテトラデシル-マルトシドである、アルキル-グリコシドを含有する界面活性剤である。特定の例では、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。特定の例では、ヒアルロニダーゼは、ヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子で見つかったヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.))である。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ(例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、Hydase(登録商標)(PrimaPharm,Inc.))である。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標) (ISTA Pharmaceticals)である。特定の例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、組換型ヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、ヒト化組換ヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼはペグ化されたヒアルロニダーゼ(例えば、PEGPH20(Halozyme))である。加えて、その開示のための参照として本開示に組み入れられている、米国特許第7,151,191号、第6,221,367号および第5,714,167号に記載されているペプチド様浸透促進剤も、さらなる実施形態として想定される。
これらの浸透促進剤は、アミノ酸とペプチド誘導体(derviatives)で、膜または細胞間の堅い接合部の完全性に影響を与えずに、消極的な細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。
正円窓膜浸透リポソーム
リポソーム又は脂質粒子はまた、耳感覚細胞調節剤の製剤又は組成物をカプセル化するために、使用されることができる。水溶性培地中に穏やかに分散したリン脂質は、脂質の層を分離する封入された水溶性媒体の領域と共に、多層構造の小胞を形成する。これらの多層構造の小胞の超音波処理又は激しい攪拌は、通常リポソームとして知られる約10〜1000nmの大きさの単層の小胞の形成をもたらす。これらのリポソームは、耳感覚細胞調節剤又は他の医薬薬剤の担体として多くの利点を有する。それらは、生物学的に不活性であり、生分解性で、無毒で、そして非抗原性である。リポソームは、種々の組成および表面特性で、様々な大きさに形成される。さらに、それらは、幅広い種類の薬剤を封入し、そしてリポソーム崩壊の位置で薬剤を放出することができる。
本明細書中の耳に許容可能なリポソームに使用される適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸及びセレブロシドなどで、特に、非毒性で、本明細書中の耳感覚細胞調節剤とともに薬学的に許容可能な有機溶媒中に溶解可能なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホズファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホズファチジルコリン、ホズファチジルグリセロールなど、およびそれらの混合物、特にレシチン、例えば大豆レシチンである。本発明の製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%〜約30%、好ましくは約15%〜約25%、特に約20%である。
親油性の添加剤は、リポソームの性質を選択的に改変するために有効に利用され得る。そのような添加剤の例は、例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、 コレステロールヘミコハク酸(hemisuccinate)およびラノリン抽出物を含んでいる。使用される親油性の添加剤の量は、0.5〜8%、好ましくは、1.5〜4%の範囲で、特に約2%である。通常、親油性の添加剤の量とリン脂質の量との割合は、約1:8〜約1:12の範囲で、特に、約1:10である。リン脂質、脂溶性添加物及び耳感覚細胞調節剤及び他の医薬化合物は、前記の成分を溶解している非毒性の、薬学的に許容可能な有機溶媒系とともに用いられる。溶媒系は、完全に耳感覚細胞調節剤を溶解しなければならないだけでなく、安定した単一の2層リポソームをもつ製剤を可能にしなければならない。溶媒系は、約8〜約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロル、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)を含有している。溶媒系において、ジメチルイソソルビド量のテトラグリコール量との比は、約2:1〜約1:3、特に、約1:1〜約1:2.5の範囲であり、好ましくは約1:2である。最終組成物におけるテトラグリコールの量は、従って、5〜20%、特に5〜15%までの範囲で、好ましくは約10%である。最終組成物におけるジメチルイソソルビドの量は、従って、3〜10%の範囲、特に3〜7%の範囲であり、好ましくは約5%である。
本明細書において以下に使用される用語「有機成分」は、リン脂質、親油性の添加剤および有機溶媒を含む混合物に相当する。耳感覚細胞調節剤は、有機組成物又は薬剤の全活性を維持するための他の手段において溶解されている。最終製剤における耳感覚細胞調節剤の量は、01.〜5.0%の範囲である。加えて、抗酸化物のような他の成分が、有機成分に加えられる。(それらの)例としては、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、アスコルビルオリエート(ascorbyl oleate)などが挙げられる。
リポソーム製剤は、適度に耐熱がある耳感覚細胞調節剤または他の医薬品のために、交替的に、(a)容器中でリン脂質および有機溶剤系を約60-80℃に加熱し、活性成分を溶解し、その後、任意の製剤用薬剤を添加し、そして完全な溶解物が得られるまで混合物を撹拌する;(b)第2の容器中で水溶液を90-95℃に加熱して防腐剤をその中に溶解し、混合物を自然冷却してから、補助の製剤薬剤の残部および水の残部を加え、そして、完全な溶解物が得られるまで混合物を撹拌する;このように水性成分を準備する;(c)高機能混合装置(例えば高剪断力ミキサー)を用いて混合物を均質化する間、水性成分へ有機相を直接送り込み、そして、(d)さらなる均質化の間に、生成された混合物に粘度増強剤を添加することにより、準備される。オプションとして、水溶性成分は、ホモジナイザーが装備された適切な容器に入れられ、そして、有機成分を注入する間に大きな乱流を作ることで、均質化がなされる。混合物に高い剪断力を作用させるための任意の混合方法、またはホモジナイザーが使用され得る。通常、約1,500〜20,000rpmの、特に、約3,000〜約6,000rpmの速度が可能なミキサーが使用され得る。工程(d)の工程で使用するための適切な増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物である。増粘剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常、約0.5〜2.0%の範囲、又は約1.5%である。リポソーム製剤の調製中に使用される材料の分解を防止するためには、窒素又はアルゴンのような不活性ガスで全ての溶液を浄化すること、そして、不活性な環境下で全ての工程を行うことが有用である。上述の方法によって調製されたリポソームは、通常、脂質の二重層中で結合している活性成分のほとんどを含んでおり、カプセル化していない材料からリポソームを分離することは必要でない。
他の実施形態では、ゲル製剤及び粘度が増強された製剤を含む、耳に許容可能な製剤は、さらに賦形剤、他の治療用または医薬用の薬剤、(担体、防腐剤、安定剤、湿潤または乳化用の薬剤などの)アジュバント、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、及びこれらの組み合わせをさらに含んでいる。
本明細書に記載される耳に許容可能な製剤中での使用に適切な担体は、限定されないが、標的である耳構造の生理環境に適合する任意の薬学的に許容可能な溶媒を含んでいる。他の実施形態では、基剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤及び溶媒の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、他の賦形剤として、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチル硫酸、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、それらの薬学的に許容可能な塩、並びにそれらの組み合わせ又は混合物がある。
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートはソルビンタエステルの非イオン界面活性剤である。本開示において有益なポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween)並びにそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
一つの実施形態において、水溶性グリセリンをベースとした耳に許容可能な粘度を強化した製剤は、薬学的送達ビヒクルの調合に用いられ、この送達ビヒクルは、少なくとも0.1%又はそれより多い水溶性グリセリン化合物を含有する少なくとも1の耳感覚細胞調節剤を含む。いくつかの実施形態において、耳感覚細胞調節剤製剤の比率は、全体の医薬製剤の約1%から約95%の間、約5%から約80%の間、約10%から約60%の間、もしくはそれより多い比率の重量又は体積で変化する。いくつかの実施形態において、治療に有用な耳感覚細胞調節剤のそれぞれにおける化合物の量は、適切な投与量が化合物の任意の一定の投与量で獲得されるように、調合される。溶解度、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)、生物学的半減期、投与ルート、製品貯蔵期間の他に、薬理学的考察などの因子が本明細書において熟慮される。
望まれるなら、耳に許容可能な医薬品ゲルは、また緩衝液に加えて共溶媒(co−solvent)、防腐剤、共溶媒(cosolvent)、イオン強度および重量オスモル濃度アジャスター、および他の賦係形剤を包含している。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝液は、アルカリ性である、又はアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属クエン酸塩、アルカリ土類金属ホウ酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ土類金属コハク酸塩などであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及びトロメタミン(TRIS)ナトリウムである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、及び好ましくは7.4に維持するのに十分な量が存在する。このように、緩衝液は、全体の組成物の重量ベースで5%もの量である。
共溶媒は耳感覚細胞調節剤の溶解度を高めるのに用いられる、しかしながら、いくつかの耳感覚細胞調節剤又は他の医薬化合物は不溶性である。これらは、しばしば適切な懸濁化剤または粘度強化剤を用いて、ポリマービヒクルにおいて懸濁される。
さらに、いくつかの薬学的賦形剤、希釈剤又は担体は、潜在的に耳毒性がある。
例えば、塩化ベンザルコニウム、一般的な防腐剤は、耳毒性があり、従って、前庭又は蝸牛の構造に取り込まれると、潜在的に有害である。制御放出耳感覚細胞調節剤製剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避けるか又は組み合わせること、製剤から潜在的な耳毒性の化合物を減少させるか又は除去すること、若しくは賦形剤、希釈剤又は担体などの量を減少させることが推奨される。任意で、制御放出耳感覚細胞調節剤製剤は、特定の治療薬剤、賦形剤、希釈剤又は担体を使用することで生じる潜在的な耳毒性の影響に対向するために、酸化防止剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。
治療上許容可能な耳の製剤:
また本明細書に開示された製剤は、特定の治療薬または賦形剤の使用、賦形剤または担体から発生してもよい潜在的な耳毒性の結果に対向するために、限定することではないが、酸化防止剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤などの薬剤を含む、少なくとも1つの活性剤及び/又は賦形剤に加えて耳保護剤剤を包含する。
治療の方法
投薬方法及びスケジュール
内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路で投与されてきた。
しかしながら、内耳での局所的な病理に対する全身投与は、全身への毒性及び副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を形成する。この分布では、高水準の薬物が血清において見出され、それに対応して、低水準の薬物が内耳で見出される。
治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。1つの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、鼓室内注射を介して正円窓膜に直接投与される。他の実施形態において、本明細書に記載された耳に許容可能な耳感覚調節剤は、内耳への非鼓室内注射方法で正円窓膜に投与される。さらなる実施形態において、本明細書に記載される製剤は、蝸牛窓稜の変更を含む工程を備える正円窓膜への外科的方法を介して、正円窓膜に投与される。
1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通するとともに、直接的に正円窓膜又は内耳の蝸牛窓稜に到達可能なシリンジ及び注射針の装置である。いくつかの実施形態において、シリンジの注射針は、18ゲージ注射針より幅広い注射針である。もう1つ別の実施形態において、注射針ゲージは、18ゲージから31ゲージまでである。さらなる実施形態において、注射針ゲージは25ゲージから30ゲージまでである。耳感覚細胞調節剤化合物又は製剤の厚さ若しくは粘度に応じて、シリンジ又は皮下注射針のゲージの水準は、適宜変更され得る。他の実施形態では、針の内径は、適切な針ゲージを維持しながら、針の閉塞の可能性を低減するために、針(一般に薄壁または特別に薄壁な針という)の壁厚を低減することにより増加され得る。
他の実施形態において、注射針はゲル製剤の即時送達に用いられる皮下注射針である。皮下注射針は、1回使いきりの注射針または使い捨ての注射針である。いくつかの実施形態において、シリンジは、本明細書に記載された薬学的に許容可能なゲルをベースにした耳感覚細胞調節剤を含む化合物の送達に利用され得るのであり、シリンジは締り嵌め(ルアー)又は捩り嵌め(ルアーロック)付属品を有する。一実施形態において、シリンジは皮下注射シリンジである。他の実施形態において、シリンジはプラスチック又はガラスでできている。さらに他の実施形態において、皮下シリンジは、単一の使用のシリンジである。さらなる実施形態において、ガラスシリンジは、滅菌可能である。さらなる実施形態において、滅菌はオートクレーブによって生じる。他の実施形態において、シリンジは円筒形状のシリンジ本体を備え、ゲル製剤は使用前に保存される。他の実施形態において、シリンジは、円筒形状のシリンジ本体を含み、本明細書に開示されたとおりの耳感覚細胞調節剤の薬学的に許容可能なゲルをベースとした組成物は、使用前に保存され、該組成物は、適切な薬学的に許容可能な緩衝液と都合よく混合せしめる。他の実施形態において、シリンジは他の賦形剤、安定剤、懸濁化剤、希釈剤又はこれらの組み合わせを含有し、これらに含有される耳感覚細胞調節剤又は他の薬学的化合物を安定させる、又はそうでなければ安定的に保存する。
いくつかの実施形態において、シリンジは、円筒形状のシリンジ本体を備え、各仕切りが耳に許容可能な耳感覚細胞調節剤のゲル製剤の少なくとも1の化合物を保存することが可能なように、本体は区切られている。さらなる実施形態において、仕切られている本体を有するシリンジにより、中耳又は内耳に注射をする前に、化合物の混合を行なうことが可能である。他の実施形態において、送達システムは、多数のシリンジを備え、多数のシリンジの各々のシリンジは、ゲル製剤の少なくとも1の化合物を含有し、これにより、各化合物は注射前に事前に混合される、又は各化合物は注射の後に混合される前に、事前に混合される。さらなる実施形態において、本明細書に記載されるシリンジは、少なくとも1の容器を備え、少なくとも1の容器は、耳感覚細胞調節剤、又は薬学的に許容可能な緩衝液又はゲル化剤又はこれらの組み合わせなどの粘度増強剤を備える。商業的に利用可能な注射装置は、シリンジ筒、注射針を有する注射針アセンブリ、プランジャ棒を有するプランジャ、及び、保持フランジを有するすぐに利用できるプラスチックシリンジとして最もシンプルな形状を任意で採用し、鼓室内注射を実行する。
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、中耳及び/又は内耳に対する治療薬剤の投与に設計される器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical GmbHは、正円窓ニッチの視覚化及び正円窓ニッチへの薬物送達のために、マイクロオトスコープが提供される。エイレンバーグは、以下の特許において、内耳構造に対して、流体を送達するための処置装置を記載した。すなわち、米国特許第5,421,818号、第5,474,529号及び第5,476,446号であり、それぞれ、開示目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。開示目的のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第08/874,208号は、内耳に対して治療薬剤を送達するための流体移動導管を埋め込むための外科的方法について記載している。開示のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0167918号公報はさらに、中耳内の流体サンプリング及び薬物塗布のための耳吸引器及び医薬品取り出し容器の組み合わせを記載する。
本明細書に記載の耳感覚細胞調節剤化合物を含む耳に許容可能な組成物又は製剤は、予防的処置及び/又は処置として投与される。治療的用途において、耳感覚細胞調節剤組成物は、自己免疫疾患、症状又は疾病に既に苦しんでいる患者に対して、疾患、症状又は障害の兆候を治癒、又は少なくとも部分的に進行を止めるのに十分な量で投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、症状又は障害の重症度及び経過、薬歴、患者の健康状態及び薬物応答性及び処置する医師の判断による。
投与の頻度
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物は、その必要のある個体に一度投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物は、その必要のある個体に二度以上投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物の第1投与に続いて、本明細書に開示された組成物の第2投与がなされる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物の第1投与に続いて、本明細書に開示された組成物の第2及び第3投与がなされる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物の第1投与に続いて、本明細書に開示された組成物の第2、第3及び第4投与がなされる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物の第1投与に続いて、本明細書に開示された組成物の第2、第3、第4及び第5投与がなされる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物の第1投与に続いて、休薬期間がある。
組成物がその必要のある個体に投与される回数は、専門医判断、障害、障害の重症度および個体の製剤に対する反応に依存する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物は、その穏やかな急性の疾病を備えた必要への個人に一度投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、中程度又は厳しい急性疾患をもつ、必要のある個体に二度以上投与される。患者の症状が改善しない場合、患者の疾患又は症状の兆候を回復するか、又は、そうでなければ制御若しくは制限するために、医者の判断に基づき、耳感覚細胞調節細胞モジュレータは常習的に、即ち患者の寿命の間中などといった、長期間投与される。
患者の症状が改善しない場合、患者の疾患又は症状の兆候を回復するか、又は、そうでなければ、制御又は制限するために、医者の判断に基づき、耳感覚細胞調節剤化合物は常習的に、即ち患者の寿命の間中などといった、長期間投与される。
患者の状態が改善する場合は、医者の判断により、耳感覚細胞調節剤化合物の投与が連続的に与えられてもよく、代替的に、薬剤の投与が、一時的に減少するか、一定時間の間一時的に停止させられる(即ち休薬期間中)こともある。休薬期間は、2日から1年の間であり、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、3000日、320日、350日、及び365日を含む。休薬期間の投与量の減少は、10%から100%であり、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%及び100%を含む。
一旦患者の耳の状態が改善されると、必要ならば維持耳感覚細胞調節剤服用量が投与される。症状に応じて、改善された疾患、障害又は疾病が維持される水準になるまで、連続的に、投与量もしくは投与頻度又はこれら両方が任意で減少される。特定の実施形態において、患者は、兆候のあらゆる再発の際に、長期間で間欠的な処置を必要とする。
このような量に対応する耳感覚細胞調節剤の量は、例えば、投与された特定の耳感覚細胞調節剤、投与経路、処置すべき自己免疫疾病、処置すべき標的部位、及び処置すべき被検体又は宿主などを含む疾病を取り囲む特定の環境に応じて、特定の化合物、疾病病状及びその重症度などの要因により依存して異なる。しかしながら、一般的に成人の処置に用いられる投与量は、概して1回の投与につき、0.02-50mgの幅であり、好ましくは1回の投与につき、1-15mgである。所望の投与量は、1回の投与量又は分割された投与量であらわされ、同時に(又は短期間をおいて)又は適切な間隔をおいて投与される。
いくつかの実施形態において、最初の投与は、特定の耳感覚細胞調節剤であり、その次の投与は、異なる製剤又は耳感覚細胞調節剤である。
制御放出製剤の薬物動態学
1つの実施形態において本明細書に開示された製剤は、組成物から耳感覚細胞調節剤の即時放出を、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内又は30分以内又は60分以内又は90分以内の放出を追加的に付与する。他の実施形態において、治療に有用な少なくとも1の耳感覚細胞調節剤の量は、即時に、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内、又は30分以内、又は60分以内又は90分以内に組成物から放出される。特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1の耳感覚細胞調節剤の即時放出を付与する、耳に薬学的に許容可能なゲル製剤を含む。さらなる製剤の実施形態は、本明細書に記載された製剤の粘度を増大させる薬剤をも含み得る。
他の又はさらなる実施形態において、製剤は、少なくとも1の耳感覚細胞持続放出製剤の耳感覚細胞調節剤を提供する。特定の実施形態において、製剤からの少なくとも1の耳感覚細胞調節剤の拡散は、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は5ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって生じる。他の実施形態において、治療に有効な量の少なくとも1の耳感覚細胞調節剤が、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は122時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は55ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって製剤から放出される。
他の実施形態において、製剤は、持続放出性の耳感覚細胞調節剤の製剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、0.25:1の、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の比率、または即時放出および持続放出性製剤の1:20比率の即時放出性及び持続放出性製剤を含む。さらなる実施形態において、製剤は、第1の耳感覚細胞調節剤の即時放出、及び、持続放出性の第2の耳感覚細胞調節剤又は他の治療薬剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤の即時放出性製剤及び持続放出性製剤、及び少なくとも1つの治療薬剤を提供する。ある実施形態において、製剤は、0.25:1の割合、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3の割合、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の割合、または1:20の割合について、第1の耳感覚細胞調節剤及び第2の治療薬の、即時放出および持続放出製剤をそれぞれ提供する。
特定の実施形態において、製剤は、基本的に全身曝露を伴わない疾患の部位において、治療に有効な量の少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤を提供する。追加の実施形態において、製剤は、基本的に検出可能な全身曝露を伴わない疾患の部位において、治療に有効な量の少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤を提供する。他の実施形態において、製剤は、基本的に検出可能な全身曝露を僅かに伴うか又は伴わない疾患の部位において、治療に有効な量の少なくとも1つの耳感覚細胞調節剤を提供する。
即時放出性、遅延放出性、及び/又は持続放出性の耳感覚細胞調節剤組成物又は製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定剤、等張化剤、及び本明細書中に開示された他の組成物とだけでなく、他の医薬品とも組み合わせてもよい。
このように、使用される耳感覚細胞調節剤、所望の厚み又は粘度、あるいは選択される送達のモードに依存して、本明細書中に開示される実施形態の代替的な態様は、即時放出性、遅延放出性、及び/又は持続放出性の実施形態に適宜組み合わされる。
特定の実施形態において、本明細書中に記載される耳感覚細胞調節剤の薬物動態は、試験動物(あくまでも一例として、モルモット又はチンチラを含む)の正円窓膜又は正円窓膜の近辺に、製剤を注射することによって決定される。
決定される期間(1週間にわたって製剤の薬物動態を試験するためであり、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、及び7日)で、試験動物は安楽死させられ、5mLのサンプルの外リンパ流体が試験される。内耳は取り除かれ、耳感覚細胞調節剤が存在しているかどうか試験する。耳感覚細胞調節剤のレベルは、必要に応じて、他の器官で測定される。さらに、全身の耳感覚細胞調節剤のシステムレベルは、試験動物から血液サンプルを引き出すことによって測定される。製剤が聴覚を妨げるかどうかを決定するために、試験動物の聴覚は任意に試験される。
代替的に、内耳が提供され(試験動物から除去され)、耳感覚細胞調節剤のマイグレーションが測定される。さらにもう1つの実施形態において、正円窓膜のインビトロモデルが提供され、耳感覚細胞調節剤のマイグレーションが測定される。
キット/製品
この開示はまた、哺乳動物の疾患又は障害の症状を予防、処置、改善するためのキットを提供する。このようなキットは、一般的に1又は2以上の耳感覚細胞調節剤制御放出型組成物、又は本明細書中に開示されるデバイス、及びキットを使用するための指示書を備える。本開示はまた、内耳障害を有しているか、有していると疑われるか、又は発症する危険があるヒトなどの哺乳動物の疾患、機能障害、又は障害の症状を処置するか、若しくは和らげるか、弱めるか、又は改善するための薬物の製造中に1又は2以上の耳感覚細胞調節剤制御放出組成物を使用することを意図している。
いくつかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するため区分化された運搬装置、パッケージ、又は容器を備え、容器の夫々は、本明細書中に記載される方法で使用される別個の要素の一つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器及び試験管を含んでいる。他の実施形態において、容器は、例えば、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成される。
本明細書中で提供される製造品は、包装材料を含む。医薬品を包装するのに使用される包装材料が同様に本明細書中に提示される。例えば、米国特許第5,323,907号、米国特許第5,052,558号、及び米国特許第5,033,252号を参照のこと。医薬包装材料としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、及び選択された製剤及び意図された様式による投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に提供される多様な耳感覚細胞調節剤製剤組成物は、内耳への耳感覚細胞調節剤の制御放出型投与によって効果を得る任意の疾患、障害、又は疾病の多様な処置として意図されている。
いくつかの実施形態において、キットは1以上の追加の容器を含み、夫々の容器は、本明細書中に記載の製剤の使用に関して、商業上の観点及びユーザーの観点から望ましい1以上の様々な材料(任意で濃縮された形態の試薬、及び/又はデバイスなど)を備える。そのような材料の制限しない例は、バッファー、賦形剤、フィルタ、針、注射器、担体、包装、容器、バイアル及び/又は内容物及び/又は使用のための指示を目録に載せているチューブ及び使用のための指示付のパッケージ挿入物を含むが、限定されない。1セットの指示は、任意で含まれる。幾つかの実施形態では、ラベルは容器上にあるか、又は容器に付随する。さらなる実施形態において、ラベルを形成している文字、数字又は他の符号が添付されるか、容器自体に成型されるか、エッチングされる場合、ラベルは容器上にあり、例えばパッケージ挿入物として、容器をも保持するレセプタクル又は担体内にあるとき、ラベルは容器と関連付けられる。他の実施形態において、ラベルは、内容物が特定の治療への適用に使用されるべきであることを示すために使用され得る。さらに他の実施形態において、ラベルはまた、本明細書中に記載された方法などで、内容物の使用のための指示を示す。
特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に提供された化合物を含む1以上の単位服用量の形態を含むパック又はディスペンサ装置に存在する。他の実施形態では、ブリスターパックなどの、金属またはプラスチック箔を包含している。さらなる実施形態では、パック又はディスペンサ装置には投与のための指示が伴う。さらなる実施形態では、パック又はディスペンサに、製薬の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式で包装容器に関連付けられる通知も添えられる。その通知は、人間または獣医学上の投与のため薬の形式の機関による承認を反映したものである。他の実施形態では、前記通知は、例えば処方薬のためにアメリカ合衆国食品医薬品局で承認されたラベル、承認された製品挿入物である。さらに他の実施形態において、適合性のある製薬の担体において処方された、本明細書において提供された化合物を含んでいる組成物は、また調製され、適切な容器に入れられ、そして表示された状態の処置のためにラベル化される。
(実施例)
例1−熱可逆性ゲルAMN082製剤の調製
AMN082は固体として供給される。AMN082は水中で再水和され、最終的に10mMのモル濃度になる。
AMN082の1.0%を包含している10gバッチのゲル製剤は、トリスHCl緩衝液(0.1M)内で最初にポロクサマー407(バスフ社)を懸濁することにより調製される。トリス中のポロクサマー407の完全溶解を保証するために、ポロクサマー407およびトリスが4℃で夜通し攪拌下で混合される。ハイプロメロース、メチルパラベンおよび付加的なトリスHClバッファー(0.1M)が加えられる。分解が観察されるまで、組成物が撹拌される。AMN082の溶液が加えられ、均質のゲルが生産されるまで組成物が混合される。使用するまで室温以下で、混合物が維持される。
例2−粘膜付着性で熱可逆性のゲルAMN082製剤の調製
AMN082は固体として供給される。AMN082は水中で再水和され、最終的に10mMのモル濃度になる。
AMN082の1.0%を包含する粘膜付着性の10gバッチのゲル製剤が、トリスHClバッファー(0.1M)中でポロクサマー407(バスフ社)およびCarbopol 934Pを最初に懸濁することにより調製される。ポロクサマー407とのCarbopol 934Pの完全溶解を保証するために、ポロクサマー407、Carbopol 934Pおよびトリスは、4℃で夜通し攪拌下で混合される。ハイプロメローズ、メチルパラベンおよび追加的なトリスHCL緩衝液(0.1M)が加えられる。分解が観察されるまで、組成物が撹拌される。AMN082溶液が加えられ、そして均質のゲルが生産されるまで、組成物が混合される。混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
例3−ヒドロゲルに基づいたCNQX製剤の調整
クリーム・タイプ製剤は、CNQXが溶かされるまで、CNQXを水と優しく混合することにより最初に準備されている。
その後、油基部は、60℃への昇温でパラフィン油、トリヒドロステアリン酸およびセチルジメチコンコポリオールを混合することにより準備されている。油基部は室温に冷却される。また、CNQX溶液が加えられる。均質の単相のヒドロゲルが形成されるまで、ツーフェーズが混合される。
例4−ゲル・カルバマゼピン製剤の調整
酢酸の5mlの溶液は約4.0のpHに滴定される。キトサンは約5.5のpHを達成するために添加される。その後、カルバマゼピンはキトサン溶液中で溶解される。この溶液はろ過によって殺菌される。グリセロ燐酸塩二ナトリウムの5mlの水溶液も調製されており殺菌される。2つの溶液は、37℃で二時間以内混合され、所望のゲルが形成される。
例5−粘膜付着性をもつ熱可逆性のゲルDメチオニン製剤の調製
Dメチオニンはリン酸緩衝液中で溶解される。Dメチオニンを包含している10gバッチの粘膜付着性をもつゲル製剤は、まず、リン酸緩衝液にポロクサマー407(バスフ社)およびCarbopol 934Pを懸濁することにより調製される。緩衝液中でポロクサマー407及びCarbopol 934Pの完全な溶液を保証するために、ポロクサマー407、Carbopol 934Pおよびリン酸緩衝液は、4℃での攪拌下で夜通し混合される。ハイプロメローズ、ベンジルアルコールおよび追加のリン酸緩衝液は混合物に添加される。溶解が観察されるまで、組成物が撹拌される。均質のゲルが生成されるまで、Dメチオニン溶液が添加され、組成物が混合される。混合物は、使用するまで室温以下で維持される。
例6−リポソームのAMN082製剤の調製
AMN082は固体として供給される。水中で10mMの最終的なモル濃度まで再水和される。
大豆レシチンとテトラグリコールとジメチル・イソソルビドを約70〜75℃で加熱する。加熱された混合物中でコレステロールおよびブチルヒドロキシトルエンを溶解する。完全な溶解が得られるまでかき混ぜる。別々の容器内で80−95℃まで水の約三分の一を加熱し、かき混ぜつつ加熱した水に防腐剤メチルパラベンおよびプロピルパラベンを溶解する。当該溶液を約25℃に冷却して、ついでAMN082、エデト酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を加える。水の残部を加えてかき混ぜ、完全な溶液を得る。均質なプロダクトが得られるまで、高い剪断混合により組み合わせを均質化しながら、真空により、有機混合物を水和物混合物に移行する。ミキサーで均質化しつつ、真空による2相性の混合物へヒドロキシプロピルメチルセルロースを加える。単一の二層リポソームが形成される。
例7−(S)ケタミン15を含む熱可逆性ゲルの調製
1.0%を包含している10g一組のゲル製剤、の(S)-ケタミンは、トリスHCl緩衝液(0.1M)内での最初にポロクサマー407(バスフ社)を懸濁することにより調製される。トリス中のポロクサマー407の完全な溶解を保証するために、ポロクサマー407およびトリスは、4℃での攪拌下で夜通し混合される。ハイプロメローゼ、メチルパラベンおよび付加的なトリスHCl緩衝液(0.1M)が添加される。溶解が観察されるまで、組成物が撹拌される。(S)-ケタミンの溶液が添加され、均質のゲルが生成されるまで、組成物が混合される。混合物は、使用するまで室温以下で維持される。
例8−微粒子化した(S)-ケタミン粉体を含む熱可逆性のゲル(s)-ケタミン組成物の調製
10gバッチの2%の微粒子化された(S)-ケタミン、13.8mgのリン酸ナトリウム二塩基二水和物USP(Fisher Scientific.)、及び3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物(Fisher Scientific.)、及び74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)が、8.2gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解され、pHは1MのNaOHを用いて7.4に調整された。緩衝液溶液は冷却され、1.6gのポロクサマー407(BASF社、約100ppmのBHTを含む)は、混ぜながら、冷却されたPBS溶液中へ振り入れられ、溶液はすべてのポロクサマーが溶解するまで混ぜられる。33mmのPVDF 0.22マイクロメータの滅菌シリンジフィルター(ミリポア社)を用いてポロクサマーが滅菌ろ過され、無菌の環境に2mLの滅菌ガラスバイアル(ホイートン)に送達され、バイアルは滅菌ブチルゴム栓(キンブル)で閉鎖され、13mmのアルミニウム・シール(キンブル)で密閉され、クリンプ加工される。20mgの微粒子化された(S)-ケタミンは別々の清潔な発熱性物質が除かれたバイアルに置かれる、バイアルは滅菌ブチルゴム栓(キンブル)で閉鎖され、13mmのアルミニウム・シール(キンブル)で密閉され、クリンプ加工され、バイアルは、140℃で7時間乾燥加熱滅菌される(Fisher Scientific社のIsotempオーブン)。本明細書に記載される実験用投与の前に、1mLの冷却ポロクサマー溶液は、1mLの無菌シリンジ(ベクトン ディッキンソン社)に取り付けられた21G注射針(ベクトン ディッキンソン社)を使用して、20mgの滅菌微粒子化された(S)-ケタミンを含むバイアルに送達され、懸濁の均質性を保証するために振ってよく混ぜられ懸濁される。その後、懸濁液は、21Gシリンジを用いて回収され、注射針は、投与用の27G注射針と取り替えられた。
例9−経皮吸収促進剤を含む微粒子化されたAM−101組成物の熱可逆性ゲルの調製
10gバッチの2.0%の微粒子化されたプレドニゾンを含む製剤が、5.00gのトリスHCl緩衝液(0.1M)中の1.80gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調製され、完全な溶解を保証するために、成分は攪拌下において一晩中4℃で混ぜられる。(S)-ケタミン(200.0mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(100.0mg)、メチルパラベン(10mg)、ドデシルマルトシド(10mg)及び追加のトリスHCl緩衝液(0.1M)(2.89g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。
混合液は、使用するまで室温以下で維持される。
例10−PBS緩衝液中の、オートクレーブ滅菌された17%のポロクサマー407NF/2%耳用薬剤の分解プロダクトに対するpHの効果
17%ポロクサマー407/2%デキサメタゾン剤の保存溶液が、351.4mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、302.1mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)、及び適切な量の耳用薬剤を、79.3gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解させることにより調製された。溶液は、氷冷水槽中で冷却され、その後17.05gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)は、混合しながら、冷却された溶液中へ振り入れられた。混合物は、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混ぜられた。この溶液のpHが測定される。
pH5.3のPBS中の17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1M HCLの追加によりpHを5.3に調整する。
pH8.0のPBS中の17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤
上記保存溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1M HClの追加によりpHを8.0に調整する。
PBS緩衝液(pH7.3)が、805.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、606mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、247mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)を溶解させることで調製され、その後、無菌ろ過された蒸留水を用いて200gに定量化(QS)される。
pH7.3のPBS中の耳用薬剤の2%溶液が、PBS緩衝液中の耳用薬剤を適量溶解させることで調製され、PBS緩衝液を用いて10gに定量化される。
1mLのサンプルが、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配され、堅く閉められる。バイアルは、Market Forge‐sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)に配され、華氏250度で15分間、滅菌される。オートクレーブ後、サンプルは、室温まで冷却するために放置され、その後、冷蔵庫に置かれた。サンプルは、冷却している間、バイアルを混ぜることによって均質化された。
出現(例えば、変色及び/又は沈殿)が、観察され、記録された。HPLC解析は、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30乃至80のアセトニトリル勾配(1乃至10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100オングストローム、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて、実行された。サンプルは、サンプルの30μLを採ることによって希釈化され、1:1アセトニトリル水混合液の1.5mLで溶解された。オートクレーブ滅菌されたサンプル中の耳用薬剤の純度が記録される。
DNQX、D−メチオニン、微粒子化されたAM-101、微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、上記手順に従って調製され、オートクレーブ滅菌工程中の分解に対するpHの効果を測定するために、上記手順を使用して検査される。
例11−PBS中の17%のポロクサマー407NF/2%耳用薬剤の解放特性および粘度に対するオートクレーブ滅菌の効果
(オートクレーブされたものと、されていないもの)からのサンプルの一定分量は、ゲルの性質による加熱滅菌法の影響を評価するため、放出特性と粘性との測定値が評価される。
溶解は、スナップウェル(0.4μmの孔サイズの、6.5mm直径のポリカーボネート膜)内で、37℃で実行された。0.2mLゲルが、スナップウェルへと置かれ、硬化させるために放置され、その次に、0.5mLが、リザーバに置かれ、70rpmでLabline orbit shakerを用いて振り混ぜられた。サンプルは、1時間毎に採取された(0.1mLが取り除かれ、暖かい緩衝液に交換された)。外部の校正曲線に対して、サンプルは、チオシアン酸コバルト法を用いて、624nmのUVによって、ポロクサマー濃度が解析された。手短に説明すると、20μLのサンプルは、1980μLの15mMチオシアン酸コバルト溶液に混合させたものであり、吸収率は、Evolutionの160UV/Vis分光光度計(Thermo Scientific)を用いて、625nmで測定された。
放出された耳用薬剤がKorsmeyer−Peppasの方程式に適用される。
Qは、時間tで放出された耳用薬剤の量であり、Qαは、耳用薬剤の総放出量であり、kは、n位の放出定数であり、nは、溶解機構に関する無次元数であり、bは、n=1が侵食制御機構を特徴付ける、初期バースト放出機構を特徴付けている、軸切片(axis intercept)である。平均溶解時間(MDT)は、薬物分子が放出される前にマトリックス内にある、異なる期間の合計を、総分子量で割ったものであり、次式で算出される。
粘性物の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃から温度勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s-1)0.08rpmで回転されるCPE-51スピンドルを備えているBrokfield viscometer RVDV-II+Pを用いて、実行された。TGELは、粘性の増加がソルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。
DNQX、Dメチオニン、微粒子化されたAM-101、微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、上述の手順によって調製され、上述の手順を使用して検査されてTgelを決定する。
例12−加熱滅菌(オートクレーブ)後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む製剤の分解プロダクトおよび粘度に対する二次ポリマー
溶液A
溶液A:PBS緩衝液内にカルボキシルメチルセルロース(CMC)ナトリウムを含んでいるpH7.0の溶液は、178.35mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、300.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、126.6mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を78.4の無菌ろ過蒸留水で溶解することによって調製された。その次に、1gのBlanose 7M65 CMC(Hercules、5450cP@2%の粘性)が緩衝液内へと振り入れられ、溶解を助けるため加熱され、そして、溶液は、その後、冷却された。
PBS緩衝液内に、17%ポロクサマー407NFと1%CMCと2%耳用薬剤とを含むpH7.0の溶液は、氷冷水浴槽内で8.1gの溶液Aを冷却し、ついで適量の耳用薬剤を加え、次に、混ぜる。1.74gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)は、混ぜられている間に、冷溶液内に振り入れられる。混合物は、更に、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混ぜられる。
前記サンプルの2mLは、3mLのねじ口ガラスバイアル(ゴム内張付き)内に置かれ、きつく閉められた。バイアルは、Market Forge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間華氏250度で滅菌された。オートクレーブ後、サンプルは、室温になるまで放置され、その後、冷蔵庫に置かれた。サンプルは、バイアルが冷却されている間、混ぜることによって均質化された。
オートクレーブ後、沈殿又は変色は認められなかった。HPLC解析は、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30乃至80のアセトニトリル勾配(1乃至10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100オングストローム、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて、実行された。サンプルは、[30μLのサンプルを採り、1:1のアセトニトリル水混合液の1.5mLで溶解して]希釈化された。オートクレーブ滅菌されたサンプル中の耳用薬剤の純度が記録される。
粘性物の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃から温度勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s-1)0.08rpmで回転されるCPE-51スピンドルを備えているBrokfield viscometer RVDV-II+Pを用いて、実行された。Tgelは、粘性の増加がソルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。
分解は、スナップウェル(0.4μmの細孔径を備えた6.5mmの直径のポリカーボネート膜)内でのオートクレーブ滅菌されていないサンプルに対して摂氏37度で行なわれ、0.2mLのゲルがスナップウェルに入れられ、その後硬化するために残され、0.5mLがリザーバに入れられ、70rmmでLabline振盪機を使用して振られる。サンプルは、1時間毎に採取された(0.1mLが取り除かれ、暖かい緩衝液に交換された)。サンプルは外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によるデキサメサゾン剤濃度について分析された。
DNQX、D−メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は上述の手順を使用して検査され、加熱後に2%の耳用薬剤と17%のポロクサマー407NFとを含む製剤の分解プロダクトおよび粘度への二次ポリマーの効果の付与を決定する。
例13−加熱滅菌(オートクレーブ)後のポロクサマー407NFを含む製剤の分解プロダクトに対するバッファー・タイプの効果。
TRIS緩衝液は、377.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)と、602.9mgのTromethamine(Sigma ChemicalCo.)とを溶解することによって作られ、その後、1Mの塩化水素によってpH7.4に調節され、無菌ろ過蒸留水(DI water)によって100gに定量化(QS)された。
トリス緩衝液内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存溶液
15gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を混ぜている間、重さ45gのTRIS緩衝液は、氷冷浴槽内で冷やされ、その後、緩衝液へと振り入れられた。混合液は、更に、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混ぜられる。
一連の製剤は、前記保存溶液によって調製された。耳用薬剤(又はその塩若しくはそのプロドラッグ)及び/又は微粒子化された/被覆された/リポソーム製剤(又はその塩若しくはそのプロドラッグ)の適量は、すべての実験に使用される。
PBS緩衝液内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存溶液(pH7.3)
上述のPBS緩衝液が使用される。704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)と、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)と、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)とを、140.4gの無菌ろ過蒸留水で溶解した。溶液は、氷冷水浴槽で冷却され、その後、50gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)が、混ぜている間に、冷溶液内に振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混ぜられた。
一連の製剤は、前記保存溶液によって調製された。
耳用薬剤(又はその塩若しくはそのプロドラッグ)及び/又は微粒子化された/被覆された/リポソーム粒子状物質(又はその塩若しくはそのプロドラッグ)の適量は、すべての実験に使用される。
表2及び3は上述の手順を使用して調製されたサンプルを挙げている。サンプル中の耳用薬剤に2%の最終濃度を与えるために、適量の耳用薬剤が加えられる。
表2 トリス緩衝液i-20を含むサンプルの調製
表3 PBS緩衝液(pH7.3)を含むサンプルの調製
1mLのサンプルが、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配され、堅く閉められる。バイアルは、Market Forge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間華氏250度で滅菌された。
オートクレーブした後、サンプルは、室温になるまで冷却するように放置された。バイアルは、冷蔵庫に置かれ、サンプルを均質化するために冷却されている間、混ぜられた。
HPLC解析は、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30乃至80のアセトニトリル勾配(1乃至10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100オングストローム、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて、実行された。サンプルは、[30μLのサンプルを採り、1:1アセトニトリル水混合液の1.5mL]で希釈化された。オートクレーブ滅菌されたサンプル中の耳用薬剤の純度が記録される。TRIS緩衝液とPBS緩衝液との製剤の安定性が、比較された。
粘性物の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃から温度勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s-1)0.08rpmで回転されるCPE-51スピンドルを備えているBrokfield viscometer RVDV-II+Pを用いて、実行された。Tgelは、粘性の増加がソルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。オートクレーブ滅菌後に変化を示さない製剤だけが分析される。
DNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101、又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、加熱滅菌(オートクレーブ処理)後、2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む製剤の分解プロダクトおよび粘度への二次ポリマーの効果付与を決定するために、上述の手順を用いて検査された。微粒子化された耳用薬剤を含む製剤の安定性は、微粒子化されていない耳用薬剤の安定性と比較される。
例14−耳用薬剤のパルス放出
D-メチオニンとD-メチオニン塩酸塩(1:1の比率)の組み合わせは、本明細書に記載した手順を用いてパルス放出した耳用薬剤を調節するために用いられた。D-メチオンの送達された投与量の20%が、ベータシクロデキストリンの助けによって、例10の17%ポロクサマー溶液内で可溶化された。耳用薬剤の残り80%は、その後、混合液に加えられ、最終製剤は、本明細書に記載された任意の手順を用いて調製された。
上述の手順及び例に従って調製されたDNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンは、パルス放出特性を決定するために、本明細書に記載された手順を使用して検査される。
例15−PBSにおいて、17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤/78ppmのEvans Blueの調製
PBS緩衝液中のEvans Blueの保存溶液(5.9mg/mL)は、[5.9mgのEvans Blue(Sigma Chemical Co)を、(例えば例10から)1mLのPBS緩衝液で溶解すること]によって調製された。
PBS緩衝液中に、25%ポロクサマー407溶液を含む保存溶液が、この研究に使用された。適切な量の耳用薬剤が、2%の耳用薬剤を含む製剤を調製するために加えられた(表4)。
表4 エバンスブルーを含むポロクサマー407サンプルの調製
DNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、上述の手順に従って調製され、0.22μm PVDF syringe filter (Millipore corporation)を介してろ過され、オートクレーブ滅菌された。
前記製剤は、本明細書に記載された手順によってモルモットの中耳に投与され、接触しているゲルへの製剤能力と、ゲルの位置とは、投与後、そして、投与後24時間で確認された。
例16−可視化色素を含むものと、含まないものによるポロクサマー407製剤の最終滅菌
17%のpoloxamer407/2%耳用薬剤/リン酸緩衝液、pH7.3
709mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、742mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)と、251.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、適切な量の耳用薬剤とを、158.1gの無菌ろ過蒸留水によって溶解する。溶液は、氷冷水浴槽内で冷却され、その後、34.13gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)は、混ぜられている間、冷溶液内に振り入れられた。混合液は、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混ぜられた。
リン酸緩衝液中の17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤/59ppmエバンスブルー
リン酸緩衝液中の17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤を2mL採り、PBS緩衝液溶液中の5.9mg/mLのEvans blue(Sigma-Aldrich chemical Co)溶液においてPBS緩衝液の溶液2mLを加えた。
リン酸緩衝液中の25%ポロクサマー407/2%耳用薬剤
330.5mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、334.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)と、125.9mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、適切な量の耳用薬剤とを、70.5gの滅菌ろ過蒸留水によって溶解する。
溶液は、氷冷水浴槽内で冷却され、その後、25.1gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)は、混ぜられている間、冷溶液内に振り入れられた。混合物は、ポロクサマーが完全に溶解するまでさらに混ぜられた。
リン酸緩衝液中の25%ポロクサマー407/2%耳用薬剤/59ppmのエバンスブルー
リン酸緩衝液中の25%ポロクサマー407/2%耳用薬剤の2mLを採り、PBS緩衝液の5.9mg/mLのエバンスブルー(Sigma-Aldrich chemical Co)の溶液を2mL加えた。
2mLの製剤を、2mLのガラスバイアル(Wheaton serum glass vial)に置き、13mmのブチルゴム栓(butyl str)(kimble stoppers)によって密閉し、アルミニウムシールによって圧着させた。バイアルは、MarketForge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間華氏250度で滅菌された。オートクレーブした後、サンプルは、室温になるまで冷却するように放置され、その後、冷蔵庫に置かれた。バイアルは、冷蔵庫に置かれ、サンプルを均質化するために冷却されている間、混ぜられた。オートクレーブ後のサンプル溶解又は沈殿が記録された。
HPLC解析は、トータルで22分間、30乃至95のメタノール4勾配(1乃至6分)、ついで均質溶媒を11分間を用いて、Luna C18(2)(3μm、100オングストローム、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて実行された。サンプルは、サンプルの30μLを採って希釈化され、0.97mLの水で溶解された。主なピークは、下記の表に記録されている。オートクレーブの前の純度は、この方法を使用して、常に99%以下である。
粘性物の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃から温度勾配が付けられている)を装備している(ずり速度0.31s-1)0.08rpmで回転されるCPE-51スピンドルを備えているBrokfield viscometer RVDV-II+Pを用いて、実行された。Tgelは、粘性の増加がゾルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。
DNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は(S)-ケタミンを含む製剤は、本明細書に記載された手順に従って調製され、製剤の安定性を決定するために上記の方法を使用して検査される。
例17−放出特性のインビトロの比較
溶解は、スナップウェル(0.4μmの細孔径を備えた6.5mmの直径のポリカーボネート膜)内で摂氏37度で行なわれる、本明細書に記載されているゲル製剤の0.2 mLがスナップウェルに入れられ、ついで硬化して残される、0.5mL緩衝液が貯蔵器に入れられ、70rmpでラブリン・オービット振盪機を使用して振られる。サンプルは、1時間毎に採取された(0.1mLが取り除かれ、暖かい緩衝液に交換された)。サンプルは、外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によって耳用薬剤濃度で分析される。プルロニック(商品名)濃度はチオシアン酸コバルト法を用いて624nmで分析される。%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーが決定される。製剤平均溶解時間(MDT)とP407濃度との間の線形的な関係は耳用薬剤が、ポリマーゲル(ポロクサマー)の侵食によって放出されるのであり、拡散を介さないことを示している。非線形の関係は拡散及び/又はポリマーゲルの変質の組み合わせを介した耳用薬剤の放出を示す。
代替的に、サンプルは、リー シン-ユーの論文:「アクタ・ファーマシューティカシニカ、2008年、43(2)、208-203」に記載された方法を用いて分析され、%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーが決定される。
本明細書に記載された手順に従って調製されたDNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、耳用薬剤の解放特性を決定するために上記の方法を使用して検査される。
例18−ゲル化温度のインビトロの比較
ポロクサマー407のゲル化温度及び粘度におけるポロクサマー188及び耳用薬剤の効果は、ゲル化温度を操作する目的で評価される。
PBS緩衝液における25%ポロクサマー407保存溶液と前述のPBS溶液が使用される。
バスフ社製のポロクサマー188NFが使用される。耳用薬剤の適正量は、耳用薬剤の2%の製剤を提供するために、表5に記載されたた溶液に加えられる。
表5 ポロクサマー407/ポロクサマー188、i-23を含むサンプルの調製
上述の製剤の平均溶解時間、粘度およびゲル化温度は、本明細書に記載されている手順を用いて測定される。
得られたデータに式が適合され、F127/F68混合物(17〜20%F127と0〜10%F68の間)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を見積もるために利用され得る。
Tgel=-1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
得られたデータに式が適合され、例12とで得られた結果を用いて、F127/F68混合物(17〜25%F127と0〜10%F68の間)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を見積もるために利用され得る。
MDT=-0.2(Tgel)+8
DNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、表5に記載された耳用薬剤を適量追加することによって調製される。
製剤のゲル化温度は上述の手順を使用して決定される。
例19−滅菌濾過のための温度範囲の決定
低温での粘度は目詰まりの可能性を少なくするために滅菌濾過が起こる必要のある温度範囲を案内することを支援するために測定される。
粘度測定は、1、5及び10rpm(剪断速度7.5.37.5及び75s-1)で、CPE-40のスピンドルを回転させるブルックフィールド粘度計RVDV-II+Pを用い、ジャケット水温度制御ユニット(温度勾配は1.6℃/分で10〜25℃)を取り付けて行う。
17%のプルロニックP407のTgelは、耳用薬剤の濃度を増加させる機能として決定される。17%のプルロニック製剤のためのTgelの増大は次により評価される。
ΔTgel=0.93[%耳用薬剤]
本明細書に記載された手順に従って調製された、DNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、滅菌ろ過用の温度範囲を決定するために上記手順を使用して検査される。Tgelについて耳用薬剤の増量と、製剤の見掛粘度の追加の効果が記録される。
例20−製造条件の決定
表6 製造時の潜在的な製剤の粘度/ろ過条件
17%P407プラセボの8リットルのバッチが製造/ろ過条件を評価するために製造される。プラセボは、3ガロンのSS圧力容器内に蒸留水6.4リットルを充填して製造され、一晩冷蔵庫内に放置して冷ます。翌朝、タンクが取り出され(水温5℃、RT18℃)、塩化ナトリウム48g、二塩基二水和物リン酸ナトリウム29.6g、一塩基一水和物リン酸ナトリウム10gが添加され、オーバーヘッドミキサ(IKARW20(商品名)1720rpmによって溶解された。半時間後、緩衝液が溶解すると(溶液温度8℃、RT18℃)、ポロクサマー407NF(スペクトル・ケミカル社)1.36kgが、15分間隔で緩衝液の溶液中にゆっくりと散水され(溶液温度12℃、RT18℃)、ついで速度が2430rpmに増速された。さらに1時間混合後、混合速度が1062rpmに減速された(完全溶解)。
室温は溶液の温度を19度未満で保持するために、25℃以下に維持される。溶液の温度は、容器の冷蔵/冷却を要することなく、製造開始の3時間まで19度未満に保持される。
表面面積17.3cm2の三つの異なるSartoscale(商品名)(Sartorius Stedim社)のフィルターが溶液の圧力20psi、温度14℃で評価された。
1)Sartopore(登録商標)2、0.2μm5445307HS−FF(PES)、流速16mL/min
2)Sartobran(登録商標)P、0.2μm5235307HS−FF(セルロースエステル)、流速12mL/min
3)Sartopore(登録商標)2XLI、0.2μm5445307IS−FF(PES)、流速15mL/min
Sartopore(登録商標)2のフィルター5441307H4-SSが用いられ、圧力16psiで0.015m2の表面積を有する0.45μm、0.2μmのSartopore(登録商標)2の150sterile capsule(商品名)Sartorius Stedim社)を用いてろ過を行った。流速を16psi、約100mL/minで測定したが流速には変化はなく、温度は6.5〜14℃の範囲に維持された。溶液の圧力降下と温度上昇が溶液の粘度上昇による流速の増加を引き起こした。工程中、溶液の変質が監視される。
表7 Sartopore 2(16psiの圧力の0.2μmフィルタ)を用いた6.5乃至14℃の溶解温度範囲での17%ポロクサマー407プラセボに対する予想濾過時間
粘度、Tgel及びUV/Vis吸収がろ過評価の前にチェックされた。Pluronic UV/Visスペクトルは、Evolution160 (商品名)(Thermo Scientific社)によって得られた。250乃至300nmの範囲におけるピークは、原材料(ポロクサマー)において存在するBHTスタビライザによる。表8はろ過前後に上記溶液の物理化学的特性を挙げている。
表8 ろ過i-26前後の17%ポロクサマー407プラセボ溶液の物理化学的特性
上記工程は、17%P407製剤の製造に適用され、部屋の状況の温度分析を含んでいる。
好ましくは、19℃の最高温度は製造中の容器の冷却のコストを低減する。
いくつかの場合において、ジャケット付きの容器が、さらなる溶液の温度制御のために用いられ、製造の諸問題を解決を容易にしている。
例21−オートクレーブされた微粒子化されたサンプルから耳用薬剤へのインビトロの放出
トリス緩衝液中の17%ポロクサマー407/1.5%耳用薬剤
250.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)及び302.4mgのTromethamine(Sigma ChemicalCo.)が39.3gの滅菌ろ過された蒸留水で溶解され、1MのHClによってpH7.4に調節された。上記溶液4.9が用いられ、微粒子化された耳用薬剤の適量が懸濁され、良好に分散された。製剤2mLが2mLのガラス製バイアル(Wheatonserum glass vial社)に移され、13mmのブチルスチレン(kimble stoppers)によって封止され、13mmのアルミニウム・シールで圧着された。バイアルは、Market Forge-sterilmaticautoclave(設定、スローリキッド)内に置かれ、25分間華氏250度で滅菌された。オートクレーブ後、サンプルを放置して室温まで冷ました。バイアルは冷蔵庫内に置かれ、混合し当該サンプルを均質化するために冷ました。オートクレーブ後のサンプル溶解又は沈殿が記録された。
スナップウェル(細孔径0.4μmをもつ直径6.5mmのポリカーボネート膜)において摂氏37度で溶解が行われ、0.2mLのゲルがスナップウェルに置かれて、放置して硬化し、次いで、0.5mLのPBS緩衝液がリザーバに置かれ、ラブリンオービットシェーカーを用いて70rpmで振動させる。サンプルは1時間毎に採取される[0.1ミリリットルが取り除かれ、耳用薬剤の溶解性を促進するために、2%PEG-40水素添加されたひまし油(BASF社)を含む暖かい緩衝液と置換される]。サンプルは、外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によって耳用薬剤濃度で分析される。放出比率は本明細書に記載された他の製剤と比較される。MDT時間は各サンプルのために計算される。
17%ポロクサマー系における耳用薬剤の可溶化は、エッペンドルフ遠心器5424(商品名)を用いて、10分間15000rpmでサンプルを遠心処理後、上澄み中の耳用薬剤の濃度を測定することによって評価した。上澄み中の耳用薬剤濃度は、外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によって測定された。
本明細書に記載された手順に従って調製されたDNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、各製剤から耳用薬剤の放出率を測定するために上記手順を使用して検査される。
例22−カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む製剤の放出比率またはMDT及び粘度
17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤/1% CMC(ハーキュールズ社のBlanose 7M)
PBS緩衝液のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)溶液(pH7.0)が、滅菌ろ過された蒸留水78.1gにおいて、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)205.6mg、一塩基リン酸塩二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)372.1mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)106.2mgを溶解させることによって調製された。溶解を容易にするために、1gのBlanose(登録商標)7MCMC(Hercules社、粘度533cP@2%)が、緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)が冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝液中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%耳用薬剤を含む製剤が、上記溶液の9.8gに適量添加し/溶解して作られ、すべての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合された。
17ポロクサマー407/2%耳用薬剤/0.5%CMC(Blanose 7M65)
PBS緩衝液のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.2)が、滅菌ろ過された蒸留水78.7g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)257mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)375mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)108mgを溶解させることによって調製された。溶解を容易にするために、0.502gのBlanose(登録商標)7M65CMC(Hercules社、粘度5600cP@2%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.06gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝液剤中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%耳用薬剤を、上記溶液9.8gに適量添加し/溶解して作られ、すべての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合された。
17%ポロクサマー407/2%耳用薬剤/0.5% CMC(Blanose 7H9)
PBS緩衝液のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.3)が、滅菌ろ過された蒸留水78.6g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)256.5mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(FisherScientific社)374mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(FisherScientific社)107mgを溶解させることによって調製され、次いで、溶解を容易にするために、0.502gのBlanose(登録商標)7H9CMC(Hercules社、粘度5600cP@1%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.03gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合した。PBS緩衝液中の17%ポロクサマー407NF/1%CMC/2%耳用薬剤溶液が、耳用薬剤溶液を9.8gの上記溶液に適量添加し/溶解して作られ、耳用薬剤が完全に溶解するまで混合された。
粘度の測定は、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で10乃至34℃から温度に勾配が付けられている)を備えている(ずり速度0.6s-1)0.08rpmで回転されるCPE-40スピンドルを備えたBrokfield viscometer RVDV-II+Pを用いて実行された。Tgelは、粘性の増加がソルゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定められている。
溶解は、スナップウェル(0.4μmの孔サイズの、6.5mm直径のポリカーボネート膜)内で、37℃で実行された。0.2mLのゲルがスナップウェルに置かれて、放置して硬化し、次いで、0.5mLのPBS緩衝液がリザーバに置かれ、ラブリンオービットシェーカーを用いて70rpmで振動させる。サンプルは1時間毎に採取され、0.1mLが取り除かれ、暖かいPBS緩衝液に置換される。サンプルは、外部較正標準曲線に対して245nmの紫外線によって耳用薬剤濃度が分析される。放出率は上述の例に開示された製剤と比較される。また、MDT時間は上記製剤の各々のために計算される。
上述の手順に従って調製されたDNQX、D-メチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む製剤は、上述の手順に従って検査され、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む製剤の放出率及び/又は平均溶解時と粘度との間の関係を決定する。平均溶解時間(MDT)と見掛粘度(ゲル化温度より2℃低い温度で測定された)の間の任意の相関が記録される。
例23−放出動態についてのポロクサマー濃度および耳用薬剤濃度の効果
ゲル化剤および微粒子化されたデキサメタゾンの濃度を変化させることを含む一連の組成物は上述手順を使用して準備された。表9における各組成物の平均溶解時間(MDT)は上述の手順を使用して決定された。
表9 ポロクサマー/耳用薬剤組成物の調製
組成物またはデバイスから耳用薬剤の放出動態についてのゲル強度および耳用薬剤濃度の効果は、ポロクサマーに対するMDTの測定と、耳用薬剤のためのMDTの測定によって決定された。耳用薬剤の半減期および耳用薬剤の平均滞留時間も、外リンパにおける耳用薬剤の濃度の測定によって各製剤のために決定された。
上述のとおりに、各組成物の見掛粘度が測定された。上述の組成物またはデバイスにおける約15.5%の熱可逆性のポリマーゲル濃度は、約270,000 cPの見掛粘度を提供した。上述の組成物または装置における約16%の熱可逆性のポリマーゲル濃度は、約360,000 cPの見掛粘度を提供した。上述の組成物またはデバイスにおける約17%の熱可逆性のポリマーゲル濃度は、約480,000 cPの見掛粘度を提供した。
上述の手順に従って調製された微粒子化されたDNQX、Dメチオニン、微粒子化されたAM-101又は微粒子化された(S)-ケタミンを含む組成物は、上述の手順を使用して検査され、各組成物から耳用薬剤の放出速度を決定する。
例24−正円窓膜上への増強された粘度耳感覚細胞調節剤製剤の適用
例8に従って調製されたAM-101を含む製剤は、調製されて、15ゲージのルアーロック式の使いすいての針が取り付けられた5mlのシリコン化されたガラス注射器に充填される。リドカインは鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みが入れられる。針先は正円窓膜上の場所へ導かれ、耳感覚細胞調節剤製剤が、直接正円窓膜上に適用された。
例25−モルモットへの耳感覚細胞調節剤製剤の中耳内の注入のインビボ検査
21匹のモルモット(チャールズリバー、体重200-300gの雌)のコホートは、本明細書に記載された、0〜50%の耳用薬剤を含む、異なるP407耳用薬剤製剤50マイクロリットルが中耳内に注入される。各製剤のゲル除去時間経過が決定される。製剤のより速いゲル除去時間経過は、より低い平均溶解時間(MDT)を示す。したがって、製剤における耳感覚細胞調節剤の注射量と濃度が試験されることで、前臨床及び臨床研究の最適パラメータを決定する。
例26−インビボの持続放出動態
21匹のモルモット(チャールズリバー、体重200-300gの雌)のコホートは、280mOsm/kgで緩衝化された17%プルオニックF127製剤50マイクロリットルが中耳内に注入される。該製剤は耳用薬剤調節剤を1.5〜35重量%含んでいる。動物は1日目で投薬される。製剤用の放出プロファイルは、外リンパの分析に基づいて決定される。
例27−耳鳴マウス・モデルにおける(S)-ケタミンの評価
20から24gの重さの12匹のハーランスプラギュ-ダウレイ(Harlan Sprague-Dawley)のマウスが用いられる。マウスはそれぞれ、無音の間に水ディスペンサーから水を飲まず、音の存在中に飲むことを控えるように訓練される。マウスはそれぞれ、体重(mg/kg)の1キログラム当たりの350mgのアスピリンを投与される。
対照群マウス(n=10)はアスピリン投与の後、生理食塩水が投与される。実験用のグループ(n=10)アスピリン投与の後、(S)-ケタミン(体重1kgにつき400mg)が投与される。投与は中耳内注入を介して生じる。
(S)-ケタミンの投与についで、マウスが、外界音の欠如で飲むことがモニターされる。
例28−シスプラチンに引き起こされた中毒性難聴マウス・モデルにおけるN-アセチルシステイン(NAC)の評価
方法と材料
耳毒性難聴の誘導
20から24gの重さの12匹のハーランスプラギュ-ダウレイ(Harlan Sprague-Dawley)のマウスが用いられる。
4-20mHzでの聴性脳幹反応の基準値が測定される。マウスはシスプラチン(6mg/kgの体重)によって治療される。シスプラチンはIVの注入によって大動脈に送達される。
処置
対照群マウス(n=10)はシスプラチン投与の後、生理食塩水が投与される。実験用のグループ(n=10)はシスプラチン投与の後、NAC(体重1kgにつき400mg)が投与される。
結果の分析
電気生理学テスト
各々の動物の、各々の耳へのクリック刺激に対する、聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値が最初に測定され、実験手順の1週間後にも測定される。動物は、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れられる。皮下電極(Astro-Med,Inc. Crass Instrument Division, West Waewick, RI, USA)が、頂点(探査電極)、乳様突起(照合)、及び後肢(基底)に挿入された。クリック刺激(0.1ミリ秒)はコンピュータで処理され、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達される。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅されるとともにデジタル化され、タッカーデービステクノロジーABR記録システムへ挿入される。この記録システムは、コンピュータに刺激、記録、及び、平均関数を提供する(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)。続いて、減少する振幅刺激が動物に対する5-dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus-locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。閾値は、明白に検出可能な反応がない記録と、明確に識別可能な反応を備える記録との間の刺激レベルとして定義される。
例29−耳鳴の治療法としての(S)-ケタミンの臨床試験
活性成分:(S)-ケタミン
服用量:熱可逆性のゲル10μLに10ナノグラムが送達された。(S)-ケタミンの放出は制御放出で、30(30)日間生じる。
投与経路
中耳内の注入
治療持続時間:12週
方法論
・一動原体
・予期された
・無作為化された
・二重盲検
・プラセボ対照
・並列の群
・適応性がある
包含基準
・18〜64歳の間の男女被検者。
・自覚的耳鳴を経験する被検者。
・耳鳴の持続時間は3か月以上である。
・4週以内の耳鳴の治療はない。
評価基準
・効能(一次的)
1.耳鳴アンケートの合計点数
・効能(二次的)
1.聴力測定(モード、周波数、耳鳴の大きさ、純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)
2.生活の質アンケート
・安全性
1.治療群は、早期終止、治療中の有害反応、研究所変調およびECG変調の発生率に関して比較された。
研究の設計
被検者は3つの治療群に分けられる。第1の群は安全性サンプルである。第2の群は治療に対する意図(ITT)サンプルである。第3の群は効能(VfE)群のために有効なものである。
各群に対して、(S)-ケタミンが与えられるべき被検者の半分、残り半分はプラセボ。
統計的方法
主要な効能分析は、ITTのサンプルにおける耳鳴アンケートの合計点数に基づく。共変のものとして、統計分析は基線で共分散分析(ANCOVA)に基づく。また、最後の観察は従属変数として値を前に運んだ。因子は「治療」である。回帰傾斜の均質性がテストされる。その分析はVfEサンプルのために繰り返される。
生活の質と同様に聴力測定(モード、周波数、耳鳴の大きさ、純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)も、前述のモデルによって分析される。モデルの適切さはテストされない。P値は探索的あり、多様性故に調節されない。
例30−シスプラチン誘導の耳毒性難聴に対するAMN082の評価
研究の目的
この研究の主な目的は、シスプラチン誘導の耳毒性難聴を防ぐ際に、プラセボと比較して、AMN082(100mg)の安全性および効能を評価することである。
方法
研究の設計
この研究フェーズ3、すなわちシスプラチン誘導耳毒の処置の際に、プラセボとAMN082(100mg)とを比較して、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、平行グループ研究である。約140の被験体が本研究に登録され、無作為化した順序に基づいた2つの処置グループの1つに対して無作為に選ばれる(1:1)。群はそれぞれAMN082 100mgまたはプラセボのいずれかを受け取るだろう。
研究を完結しない検体は置換されない。患者は、毎週、化学療法(7週の間の服量70mg/m2および毎日の照射のシスプラチン。以下の化学療法、患者は、8週間被検者の正円窓膜上にゲル製剤として直接投与された治験薬(AMN082 500mgまたは一致するプラセボ)を受け取るだろう)を受けるだろう。
患者はそれぞれシスプラチンを用いた処置の前に評価を受け取るだろう。シスプラチンの最終的な投与の2〜4週間後に、患者はそれぞれ評価を受け取るだろう。シスプラチンに引き起こされた中毒性難聴の程度を決定するために、治療前のオーディオグラムは治療後のオーディオグラムと比較される。患者は、その後AMN082治療に付随して4週間間隔で評価を受け取る。
インクリュージョンの主な基準
18〜75歳の男性または女性の外来患者は、シスプラチンを用いた化学療法を受けている。患者は、化学療法を最低3ラウンド受ける。研究の間に被験者が妊娠すれば直ちに研究が取り消され、投薬が投与されない。
除外基準
中耳手術を受けた患者。活性外部または中耳疾患を有している患者。>40dBのHLの前の純音平均を有している患者。
例31−騒音性難聴の治療法としてのAM-101の臨床試験
有効成分:AM−101
服用量:微粒子化されたAM-101の4重量%を含む組成物は、熱可逆性のゲルの10μLの投与で送達される。AM-101の放出は制御放出で、3週間生じる。
投与経路:中耳内の注入
処理持続時間:12週、3週ごとに1回の注射
方法論
・一動原体
・予期された
・無作為化された
・二重盲検
・プラセボ対照
・並列の群
・適応性がある
インクリュージョン基準
・18〜64歳の間の男性及び女性の被検者
・少なくとも15dBの内耳性難聴を備えたオーディオグラムおよび医療報告書によって文書化される難聴が後続する音響外傷
・少なくとも3か月の間続いた、急性の耳鳴。
・4週以内の耳鳴の先の治療はない。
評価基準
・効能(一次的)
1.耳鳴アンケートの合計点数
・効能(二次的)
1.聴力測定(方法、周波数、耳鳴、純音オージオグラム、スピーチオージオグラムの声高)
2.生活の質アンケート
・安全性
1.治療基は、早期終止、治療中の有害反応、研究所変調およびECG変調の発生率に関して比較された。
研究の設計
被検者は3つの処置群に分けられる。第1の群は安全性サンプルである。第2の群は処置に対する意図(ITT)サンプルである。第3の群は効能(VfE)群のための有効なものである。
各群について、AM-101が与えられるべき被検者の半分、および残りの被験者にプラセボが与えられ。
統計的方法
主要な効能分析は、ITTサンプルへの耳鳴アンケートの合計点数に基づく。共変のものとして、統計分析は基線で共分散分析(ANCOVA)に基づく。また、最後の観察は従属変数として値を前に運んだ。因子は「処置」である。回帰傾斜の均質性がテストされる。その分解はVfEサンプルのために繰り返される。
生活の質と同様に聴測定(方法、周波数、耳鳴の大きさ、純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)も、前述のモデルによって分析される。モデルの適切さはテストされない。P値は探索的で、多様性のために調節されない。
例32−蝸牛のヒアリング装置の移植と結合した処置としての(s)−ケタミンの臨床試
活性成分:デキサメタゾン投与と結合する(S)ケタミン
服用:手術前の洗浄溶液および手術後の洗浄溶液として使用される微粒子化された(S)−ケタミンおよび微粒子化されたデキサメタゾン。(S)-ケタミンとデキサメタゾンの放出は即時放出である。
研究の設計
20人の患者が研究で登録されるだろう。10人の患者が対照群にいるだろう。また、10人の患者が処置群にいるだろう。
適格基準
・両方の耳内での深刻な感音難聴を持っていること
・機能する聴神経を有していること
・聞くことなく、(平均約70+デシベル難聴)一定の短い(少なくとも)時間生きていたこと
・良好な会話力、言語および通信技能をしていること、あるいは治療を用いて、会話力および語学力への実践に自発的なファミリーがいる幼児と幼い子どもの場合
・他の種類の援助を聞くことから十分に利益を得ないこと
・外科を回避する内科の理由を有していないこと
患者はそれぞれ電極挿入および薬物治療にさらされるだろう。治療群は手術前に、および手術後に試験組成物を用いて外科的領域の潅流にさらされるだろう。患者は6週間モニターされるだろう。蝸牛内の外傷は生活の質と同様に聴力検査に基づいて、スピーチオーディオグラムも評価されるだろう。二次感染及び/又は炎症の発生がモニターされるだろう。
例33−手術と結合する耳感覚細胞モジュレータの臨床試験
スピーチオーディオグラム
この研究の意図は、鼓室穿孔術と結合して投与されたAM-101およびデキサメタゾンの組み合わせを含む組成物が、耳チューブを持った患者において中耳感染を予防及び/又は処置する際に安全で有効かどうかを決定することである。
研究タイプ:介入
研究の設計:
これは、鼓室穿孔術と組み合わせて中耳内の組成物の持続放出と現在のケアの基準とを比較するための非劣性の開放ラベルの研究になるだろう。現在のケアの基準は、術後5〜7日の耳の低下の使用を必要とする。研究は、手術の際の徐放性組成物の投与が、外来患者治療の必要を除去するかどうかテストするように設計されている。テストの仮説は、手術の時の持続放出組成物の単独注射の投与が、手術後に耳の低下の投与より劣っていないということである。
インクリュージョン基準:
一方又は両方の耳における難聴の6か月から12歳
患者が最後の年に、チューブ配置以外の耳の手術を受けていないこと
研究の処理に否定的に影響する、任意の疾患または症状がないこと
研究中に他の全身性の抗菌療法を必要としないこと
鎮痛性の使用(アセトアミノフェン以外)は認められないこと
除外基準:年齢
研究プロトコル:
20人の患者が2つの群に分けられるだろう。
患者の第1の群は、外科手術の間に、例22によって調製されて、微粒子化されたAM-101および微粒子化されたデキサメタゾンを含む持続放出組成物の注入を受け取るだろう。患者はそれぞれ、チューブの配置用の鼓室穿孔術を受けるだろう。外科手術手技中に、外科医は耳を清潔にするだろう、また、鼓膜切開がされている間、外科医は中耳空間に試験組成物を注入する。チューブは、中耳空間への持続放出組成物の注入の後に挿入される。試験組成物は、他の賦形剤を備えた、AM-101およびデキサメタゾンの乾燥した微粉にされた粉末の保留により、手術室で準備されている。あるいは、試験組成物は注入の準備ができている懸濁液である。
患者の第2の基は、手術後5-7日間投与される即時放出成分として、微粒子化されていないAM-101および微粒子化されなかったデキサメタゾンを含む点耳法を与えられるだろう。
患者は、毎週モニターされる、1か月の間フォローアップ訪院を続ける。2つの群の間の治療結果の任意の差が記録される。
主要な評価項目:患者によって親または保護者によって記録されるような耳漏の中止への時間
副次的評価項目は、臨床の治癒率;微生物学の結果、治療不成功、疾患の再発である。
患者の各群の処置結果は以下のことを決定するために比較される。すなわち、鼓室穿孔術と組み合わせてAM−101およびデキサメタゾンを含む持続放出組成物の投与が、鼓室穿孔術に関係する感染及び/又は炎症の減少のための耳漏の減少用手術後にAM-101およびデキサメタゾンを含む点耳法の投与より悪いか否かである。
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示されるとともに記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものである。本明細書中に記載の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に任意に採用される。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内の方法及び構造がそれによって包含されるものであるということが意図されている。