JP2006502158A - グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターの内耳への送達 - Google Patents

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Abstract

本発明は、グルタメートにより誘発される聴力損失および/または耳鳴に起因する内耳障害を治療すべくグルタメート媒介神経伝達を改変する作用物質を内耳に局所送達するための方法およびデバイスを特徴とする。

Description

発明の分野
本発明は、耳鳴のような内耳障害を治療すべく内耳に薬剤を送達するためのデバイスおよび方法に関する。とくに、本発明は、L-グルタメート媒介神経伝達(MGMN)のモジュレーターの使用に関する。具体的には、本発明は、アルファ-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオネート(AMPA)レセプター媒介シグナルの抑制に関連付けられる聴覚損失を引き起こすことなく過剰のNMDAレセプター媒介シグナルを抑制するように内耳の正円窓ニッシェにN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターアンタゴニストを送達することに関する。とくに、本発明は、耳鳴を治療すべく内耳の正円窓ニッシェにD-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート(D-AP5)、ジゾシルピン(MK 801)、7-クロロキヌレネート(7-CK)、およびガシクリジン(GK-11)(ただし、これらに限定されるものではない)のようなNMDAレセプターアンタゴニストを送達することを包含する。
発明の背景
いくつかの傷害、たとえば、感染症、血管障害、または十分な強度および持続時間の音は、耳に損傷を与えて、一時的または永久的な聴力損失を引き起こすであろう。聴力損失は、軽度のものから重度のものまでありうる。また、外音が存在しないときに頭の中で生じる鳴響音、轟音、有声摩擦音、または叩音などが認知される耳鳴のような症状に関連することもある。反復される音の過剰刺激または他の傷害は、生涯にわたり累積されて、現時点では治療できない永久的な損傷を引き起こす可能性がある。聴覚障害は、個人のコミュニケーション能力に大きな影響を及ぼし、軽度の障害でさえも、一般大衆の生活の質に悪影響を及ぼしかねない。残念ながら、そのような聴力損失は予防可能ではあっても、我々の環境は騒音が多くなってきているので、ますます多くの人々が危険に晒されるようになっている。
L-グルタメート(グルタメート)は、聴覚系で最も重要な求心性神経伝達物質であり、基底膜の機械的変位を一次聴覚求心性神経繊維の活性に変換するために蝸牛の感覚内有毛細胞(IHC)により使用される(総説に関しては、たとえば、Puel (1995) Neurobiol 47:449-476を参照されたい)。グルタメートが迅速興奮性シナプス伝達時に相互作用する向イオン性レセプターには、アゴニスト、すなわち、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオネート(AMPA)、およびカイネート(カイニン酸)に対する感受性にちなんで命名された3つのタイプのレセプターが包含される。グルタメートはまた、向代謝性レセプター(すなわち、細胞内生化学的カスケードに連動された活性化を受けるレセプター)を介して作用することもできる。遺伝子発現、免疫細胞化学、およびin situハイブリダイゼーションによるグルタメートレセプターの分析から、一次聴覚神経細胞がNMDA (NR1およびNR2A-D)、AMPA (GluR2-4)、およびカイネート (GluR5-7) レセプターサブユニット、ならびに高親和性カイネート結合タンパク質(KA1およびKA2)を発現することが示された(Puel (1995) supra)。このことから、これらのレセプターはすべて一次聴覚神経細胞上に共存することが示唆される。
迅速興奮性に加えて、グルタメートはまた、蝸牛におけるニューロン変性の一形態である興奮毒性に関与する。この興奮毒性は、たとえば、蝸牛においてグルタメートが大量に放出されたときにまたはリサイクルが不完全であるときに起こりうる。蝸牛興奮毒性は、虚血または騒音により誘発される突発性難聴さらには耳鳴に関与する(Pujol et al. (1999) Ann N Y Acad Sci. 884:249-54; Pujol et al. (1992) NeuroReport 3:299-302; Puel et al. (1994) J. Comp. Neurol. 341:241-256; Puel (1995), supra)。
興奮毒性は、一般的には、二段階機序により特性付けることができる。第一段階では、グルタメートは、カチオン透過性である向イオン性グルタメートレセプターの過剰活性化を引き起こす。これは、過剰イオン透過、浸透圧性腫脹、フリーラジカル生成、およびニューロン死の原因となる。グルタメート興奮毒性の第二段階(強力かつ/または反復的な傷害の後で起こる可能性がある)は、Ca2+の進入が引き金となって起こる代謝事象のカスケードよりなる。これは、螺旋神経節におけるニューロン死の原因となる。新シナプス形成および機能回復は、NMDAおよび向代謝性グルタメートレセプターのアップレギュレーションを伴う。
興奮毒性の予防については、向イオン性グルタメートレセプターの種々のアンタゴニストを用いて研究されてきた。グルタメートのアンタゴニストであるキヌレネートを蝸牛内灌流させると、モルモットにおいて音により誘発されるシナプス損傷が防止される(Puel et al. (1998) NeuroReport 9:2109-2114)。AMPAレセプターの拮抗作用により、たとえば、選択的AMPAレセプターアンタゴニストの蝸牛内注入により、蝸牛におけるグルタメート(グルタミン酸)の興奮毒性作用を阻止することができる。AMPA灌流の前にまたはそれと同時に6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン (DNQX)の蝸牛内灌流を10分間行うことにより、放射状樹状突起腫脹の発生のほとんどが防止された(Puel et al., (1991), supra)。DNQXとD-AP5(NMDAレセプターアンタゴニストであるD-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)の両方を蝸牛内灌流させると、放射状樹状突起はすべて、AMPA灌流からほぼ完全に保護される(Puel et al. (1994) J. Comp Neurol 341:241-256)。しかしながら、診療室で蝸牛内灌流法を用いることは、蝸牛に永久的な損傷を与えるおそれがあるので、非現実的であり、総合的に考えるとヒトでは受け入れがたい。グルタメート活性をモジュレートする化合物を全身送達すると、とくに、内耳の治療を行うのに十分な投与量で全身送達すると、記憶喪失や昏迷のような重篤な副作用を生じる。
以上から明らかなように、聴力損失や関連症状(たとえば耳鳴)のような内耳障害の効果的かつ実用的な臨床治療を行うためのデバイスおよび方法が、非常に必要とされている。本発明は、この問題に対処する。
発明の概要
本発明は、耳鳴のような内耳障害を治療すべくグルタメート媒介神経伝達を改変する作用物質を中耳を介して内耳に局所送達するためのおよび内耳に送達するための方法およびデバイスを特徴とする。
一実施形態では、本発明は、直接的に、作用物質を感覚有毛細胞と相互作用させてグルタメート放出を低減させるかもしくはニューロンと相互作用させてシナプス伝達を減少させることにより、または間接的に、結果としてシナプス伝達を低減させる内生要因をモジュレートすることにより(たとえば、ドーパミンアゴニストを投与することにより)、シナプス伝達をモジュレートする作用物質を、内耳に送達することを包含する。
他の関連実施形態では、本発明は、直接的に、グルタメートレセプターと相互作用させてグルタメート結合を低減させることにより(たとえば、1種以上の向イオン性レセプターへのグルタメート結合を低減させるかもしくはNMDAレセプターのようなグルタメートレセプターに対するアンタゴニストとして作用させることにより)、または間接的に、結果としてグルタメートレセプターへのグルタメート結合を低減させる内生要因をモジュレートすることにより(たとえば、PCP部位のグリシン部位をモジュレートすることにより)、シナプス後部グルタメート媒介神経伝達を改変する作用物質を、送達することを包含する。
サリチレートの投与により耳鳴を引き起こす動物モデルを作製した。このモデルでは、過剰シグナリングは、AMPAレセプターではなくNMDAレセプターにより媒介される。本発明では、特異的NMDAレセプターアンタゴニストを用いて過剰シグナルを阻止することにより耳鳴を治療する。
とくに、本発明は、耳鳴を治療すべく内耳の正円窓ニッシェにまたはその近傍にD-AP5(特異的NMDAアンタゴニストであるD-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)(Clin Med J (Engl) 2002 Jan;115(1):89-93)、ジゾシルピン(MK 801)(J Neurotrauma 2000 Nov;17(11):1079-93)、7-クロロキヌレネートまたはガシクリジン(GK-11)(Curr Opin Investig Drugs 2001 Jun, 2(6):814-9)(ただし、これらに限定されるものではない)のようなNMDAレセプターアンタゴニストを送達することを包含する。本方法によれば、耳鳴を引き起こす過剰NMDAレセプター媒介シグナルは、AMPAレセプター媒介シグナルの抑制に関連付けられる望ましからぬ聴力損失を引き起こすことなく抑制される。
本発明の利点の1つは、内耳に薬剤を直接送達することにより、グルタメート媒介神経伝達物質のモジュレーターの全身送達に関連付けられうる毒性および副作用(たとえば、記憶喪失または昏迷)の可能性が回避されることである。
一態様において、本発明は、正円窓膜を横切って作用物質を灌流させて内耳におけるグルタメート媒介神経伝達をモジュレートする作用物質を送達することにより内耳障害を治療することを特徴とする。
本発明の他の利点は、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターがNMDA特異的レセプターである場合、これらの薬剤は、グルタメート活性の他の非NMDA特異的レセプターモジュレーターよりも聴力損失の形態の毒性が少ないことである。
他の利点は、本発明を用いることによりグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを比較的少量で正確かつ精密に所定の期間にわたり送達できることである。長期薬剤送達デバイスを用いれば、患者による定期的投与の必要がなくなるので、指定の治療的レジメンでの患者のコンプライアンスが向上し、とくに、症状の発生前における指定の予防的レジメンでのコンプライアンスが向上する。これは、そのような投薬でのコンプライアンスがより困難である集団、たとえば、幼児および高齢者では、とくに有用である。
本発明の他の利点は、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを、内耳障害の治療のためにそのような化合物の長期使用が可能になるような確度および精度でかつ少量で内耳に送達できることである。
さらなる利点は、治療上有効な用量のグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを、中耳および/または内耳の易損傷構造部の障害または傷害が最小限に抑えられるように比較的低い体積速度で、たとえば、約0.01μl/日〜2ml/日で送達できることである。
本発明のこれらのおよび他の目的、利点、および特徴は、以下により完全に記載されている手順および組成物の詳細を読めば、当業者には自明なものとなるであろう。
好ましい実施形態の説明
内耳障害を治療するための本発明のデバイスおよび方法について説明する前に、本発明が、記載されている特定の手順、デバイス、治療用製剤、および症候群に限定されるものではないことを理解しなければならない。なぜなら、当然ながら、それらはさまざまな形をとりうるからである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態について説明することを目的としたものにすぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことも理解しなければならない。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明らかに異なる場合を除いて、単数形の「a」、「and」、および「the」は、複数形の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって、たとえば、「薬剤送達デバイス」への言及は、複数のそのようなデバイスを包含し、「送達方法」への言及は、当業者に公知の等価な複数のステップおよび方法への言及を包含し、他の場合も同様である。
別段の定義がないかぎり、本明細書で使用されている科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同一の意味を有する。本発明を実施または試験するにあたり本明細書に記載のものと類似したまたは等価な任意の方法、デバイス、および材料を使用することができるが、好ましい方法、デバイス、および材料を次に記載する。
本明細書中に挙げられた刊行物はすべて、本明細書に記載の発明に関連して使用しうる刊行物中に記載の組成物および手順を説明および開示する目的で参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書中で論じられている刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示が提供されているにすぎない。先行発明に基づいてそのような開示に先行する権利が本発明に与えられないことを容認するものと解釈すべきではない。
定義
本明細書中で使用される「異常なグルタメート媒介神経伝達により引き起こされる内耳障害」という用語は、グルタメートレセプターの過剰刺激または過少刺激に起因する症状、たとえば、耳鳴、虚血により誘発される突発性難聴、騒音により誘発される突発性難聴などに関連付けられる。
「被験者」という用語は、内耳障害の治療が望まれる任意の被験者、一般的には哺乳動物(たとえば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、有蹄動物、ブタなど)を意味する。
CAPという頭字語は、マイクロボルト単位の複合活動電位を意味する。
「埋植部位」という用語は、薬剤送達デバイスが導入配置される被験者の体内部位に関連付けるべく使用される。
「グルタメート媒介神経伝達をモジュレートする作用物質」、「グルタメート媒介神経伝達のモジュレーター」、「グルタメート神経調節剤」という用語は、グルタメート放出(グルタメート媒介神経伝達のシナプス前部モジュレーター)またはグルタメートレセプターへのグルタメートの結合活性(グルタメート媒介神経伝達のシナプス後部モジュレーター)を増大または減少させるように直接的または間接的のいずれかで作用する作用物質を包含するものとする。
ある化合物を他の化合物の「誘導体」と呼ぶことは、もとになる化合物から誘導体が調製されたかまたは調製された可能性がありかつコア構造成分を共有することを意味する。
「類似体」とは、構造的かつ機能的に他の化合物に関連する化合物であり;化合物および類似体は、高い構造類似性を共有しかつ類似の生物学的機能を有し、そして異性体を包含する。
「医薬組成物」とは、薬剤(以下に定義する)を含有する混合物である。
「製剤」(または「薬剤製剤」)という用語は、製薬上許容される賦形剤または担体(たとえば、溶剤、具体的には、水、リン酸緩衝食塩水、または他の許容しうる物質)と併用された任意の薬剤を意味する。製剤は、グルタメート媒介神経伝達をモジュレートする1種以上の作用物質(薬剤)、たとえば、NMDAレセプターアンタゴニスト、AMPAレセプターアンタゴニスト、およびカイネート(カイニン酸)レセプターアンタゴニスト、または該タイプの2つ以上のレセプターに作用する成分を含みうる。
「治療上有効な量」という用語は、所望の治療効果を促進するのに有効である治療剤の量または治療剤の送達速度を意味する。一般的には、本発明は、内耳における異常なグルタメート媒介神経伝達により引き起こされる症状を患っているかまたはそのような症状に関連付けられる健康状態の危険性のある被験者(たとえば、許容できないほど高いグルタメート媒介神経伝達活性により被験者の一時的または永久的聴力損失を誘発するのに十分なレベルであると思われる騒音性外傷性傷害に晒される被験者)においてそのような症状を軽減することを包含する。
「持続放出」という用語は、「ボーラス」放出とは対照的に、長期間にわたる(薬剤の)放出を意味する。持続放出は、たとえば、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、またはそれよりも長い期間にわたりうる。
「薬剤送達デバイス」という用語は、薬剤を収容かつ放出するための任意の手段に関連付けられる。ここで、薬剤は、被験者に放出される。薬剤送達デバイスは、カテーテルを包含しうる。この場合、薬剤は、カテーテルを通って送達される。収容手段は、壁付き容器内への収容に限定されるものではく、非注射用デバイス(ポンプなど)および注射用デバイス、たとえば、ゲル、粘性材料もしくは半固体材料、またはさらには液体をはじめとする任意のタイプの収容デバイスであってよい。薬剤送達デバイスは、5つの主要なグループ、すなわち、吸入デバイス、経口デバイス、経皮デバイス、非経口デバイス、および坐剤デバイスに分けられる。吸入デバイスとしては、ガス化、ミスト化、乳化、および微細スプレー化気管支吸入器(経鼻吸入器を含む)が挙げられ;経口デバイスとしては、ほとんどの場合、丸剤が挙げられ;一方、経皮デバイスとしては、ほとんどの場合、貼付剤が挙げられる。非経口デバイスには、2つのサブグループ、すなわち、注射用デバイスおよび非注射用デバイスが包含される。非注射用デバイスは、一般的には、「インプラント」または「非注射用インプラント」と呼ばれ、たとえば、固体生分解性ポリマーおよびポンプ(たとえば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気拡散システム、電気浸透圧システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、気泡ポンプ、圧電ポンプ)が挙げられる。注射用デバイスは、注射されて散逸し薬剤をすべて一度に放出するボーラス注射剤および注射部位に別個に残存し時間をかけて薬剤を放出するデポ剤に分けられる。デポ剤としては、たとえば、油剤、ゲル剤、液体ポリマー剤および非ポリマー剤、ならびにマイクロスフェア剤が挙げられる。本発明の薬剤送達デバイスは、デバイスから標的部位に薬剤を送達するためのカテーテルに装着することが可能である。また、薬剤送達デバイスとしてカテーテルを利用することも可能である。すなわち、本質的には薬剤送達端の少なくとも一方に開口を有するチューブ(ただし、ほとんどの場合、薬剤を送り込むときに圧力を平衡化させるべく他端にも開口を有する)である密閉カテーテルに薬剤を充填し、薬剤がカテーテルから正円窓ニッシェに流入するように薬剤送達端を正円窓ニッシェ中に着座させた状態で、たとえば鼓膜を貫通して、耳に挿入することが可能である。薬剤が正円窓を介して吸収され、より多くの薬剤が薬剤送達端を通ってカテーテル本体から抜き出される際、この流れは、毛管作用により達成されうる。多くの薬剤送達デバイスが、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery (1999), Edith Mathiowitz (Ed.), John Wiley & Sons, Inc.に記載されている。
本明細書中で使用される「薬剤」という用語は、動物の生理を変化させることが意図される任意の物質に関連付けられる。
「剤形」という用語は、薬剤プラス薬剤送達デバイスに関連付けられる。
薬剤の「パターン化」または「一時的」送達とは、たとえば、増加する、減少する、実質的に一定している、または脈打つ速度もしくは速度範囲(たとえば、単位時間あたりの薬剤の量もしくは単位時間に対する薬剤製剤の体積)で予想どおりに変化するように薬剤を送達することを意味する。
「実質的に連続」という表現は、一般的には、あらかじめ選択された薬剤送達時間(たとえば、ボーラス注射に関連付けられる時間と対比して)にわたり中断されないことを意味する。
本明細書中で使用される「治療する」、「治療」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることに関連付けられる。効果は、健康状態もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという意味で予防的であってもよく、かつ/または疾患および/もしくは疾患に帰属しうる有害作用を部分的にもしくは完全に治癒または抑制するという意味で治療的であってもよい。本明細書中で使用される「治療」は、動物、とくにヒトにおける内耳障害(たとえば、聴力損失、耳鳴などが挙げられるが、これらに限定されるものではない)の治療をすべて包含し、たとえば、(a)罹患する可能性があるがその時点では症候が表れていない被験者において内耳障害の発生を防止すること;(b)内耳障害を阻害すること、たとえば、聴力損失もしくは耳鳴または他のそのような疾患もしくは障害の進行を停止させること;あるいは(c)疾患を軽減させること、すなわち、疾患の退行および/または改善を引き起こすことが挙げられる。
概観
本発明は、中耳〜内耳の膜(たとえば、正円窓膜または鐙骨底の輪状靭帯)を貫通する拡散によりグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを内耳に送達できること、さらには、そのような送達がグルタメート媒介神経伝達を弱めるのに有効であることを発見したことに基づく。とくに、本発明者らは、AMPAレセプター媒介シグナルの抑制に関連付けられる望ましからぬ聴力損失を引き起こすことなく過剰のNMDAレセプター媒介シグナル(ある特定の場合には耳鳴を引き起こす)を抑制するように、NMDAレセプターアンタゴニスト(たとえば、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、またはガシクリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)を内耳の正円窓ニッシェに送達しうることを見いだした。
理論に固守するものではないが、正円窓膜を横切ってグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを送達することは、グルタメート媒介神経伝達に関連付けられる活動電位およびカルシウム流入を弱めるのに有効である。グルタメート媒介神経伝達を弱める結果として、グルタメートレセプターの過剰刺激が回避または軽減され、グルタメート活性の増大に通常関連付けられる症状が低減される(たとえば、聴覚の保持が可能であったり、耳鳴症状が低減されたりするなど)。神経伝達を弱めるために使用される薬剤がNMDAレセプター媒介シグナルを特異的に阻害する薬剤であるならば、AMPAレセプター媒介シグナルまたは他のレセプターにより媒介されるシグナルの阻害に関連付けられる望ましくない作用、たとえば聴力損失を回避することができる。
したがって、以上を考慮して、本発明に係るグルタメート媒介神経伝達のモジュレーションをさまざまな方法で達成することができる。たとえば、グルタメート放出を減少させるようにシナプス前部でグルタメート媒介神経伝達をモジュレートすることにより、グルタメートレセプターの刺激を減少させることができる。グルタメート放出を減少させるように作用する作用物質を投与することにより、シナプス前部のグルタメート神経モジュレーションを直接達成することができる。1種以上のグルタメートレセプターと相互作用する作用物質(たとえば、レセプターへの結合に関してグルタメートと競合するか、グルタメートに対するレセプターの親和性もしくはアビジチーに影響を及ぼすようにレセプターに結合するか、またはグルタメート結合および刺激に利用可能なグルタメートレセプターを他の方法で減少させる作用物質)を投与することにより、シナプス後部のグルタメート神経モジュレーションを直接達成することができる。結果としてグルタメートレセプターへのグルタメートの結合に影響を及ぼす内生要因のレベルを増大させる作用物質を投与することにより(たとえば、ドーパミンアゴニストを投与することにより)、シナプス後部のグルタメート神経モジュレーションを間接的に達成することができる。
他の選択肢として、グルタメートレセプターの刺激を増大させることにより、たとえば、グルタメートの放出の増大を直接的もしくは間接的に引き起こすか(シナプス前部のモジュレーション)またはグルタメートレセプターの刺激の増大を直接的もしくは間接的に引き起こすことにより、グルタメート媒介神経伝達をモジュレートすることができる。
グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターの所望の効果の有効性が完全でなくてもよいことに留意されたい。たとえば、グルタメートレセプター刺激の減少が望まれる場合、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、グルタメート活性を完全に阻止するものでなくてもよく、全体的にグルタメートの神経伝達刺激活性を減少させるものであってもよい。グルタメート媒介神経伝達を完全にブロッキングすると、少なくとも一時的な聴力損失を生じる可能性がある(すなわち、グルタメート媒介神経伝達が存在しなければ、聴覚神経が刺激されないので聴覚の感じは失われる)。グルタメート媒介神経伝達のブロッキングの結果としての一時的聴力損失が、永久的聴力損失を生じるおそれのある刺激への暴露に対する保護作用を提供しうる場合を除いて、グルタメート媒介神経伝達を完全にブロッキングすることは一般的には望ましくない。
グルタメート神経調節剤および製剤
本発明の製剤は、グルタメート放出の前または後の活性によりグルタメート媒介神経伝達の直接的または間接的モジュレーターとして作用する作用物質を含むであろう。そのような作用物質としては、向イオン性グルタメートレセプター(たとえば、NMDAレセプター、AMPAレセプター、もしくはカイネートレセプター)または向代謝性レセプター(たとえば、mGluR1、3〜5、7、8)へのグルタメートの結合を直接的もしくは間接的に減少させる作用物質を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらなる作用物質としては、シナプス前部へのグルタメート放出を直接的もしくは間接的に減少させる作用物質が挙げられる。内耳の治療において本発明で使用するのに好適なグルタメートアンタゴニスト、ステロイド、および抗酸化剤の総説については、Simpson and Davies, (Trends Pharmacol Sci 20, 12 (1999)を参照されたい。
代表的な作用物質としては、NMDA特異的グルタメートアンタゴニスト、たとえば、D-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート(D-AP5)、ジゾシルピン(MK 801)、7-クロロキヌレネート(7-CK)、およびガシクリジン(GK-11)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。NMDAアンタゴニストのうち、ガシクリジンは好ましい化合物の1つであると考えられる。本発明に使用しうる作用物質としては、アセチルコリン、GABA、ドーパミン、エンケファリン、ダイノルフィン、およびカルシトニン遺伝子関連ペプチドのような神経伝達物質または神経モジュレーターに影響を及ぼす薬剤を含めて、外側遠心性神経の作用を模擬またはブロッキングする薬剤を挙げることもできる。このほか、リルゾール、デキストロメトルファンのようなナトリウムチャネル活性に作用する薬剤はすべて、耳鳴のような内耳障害を本発明に従って治療すべく使用可能である。
本発明に使用しうる化合物の代表的な構造および誘導体または類似体を以下に記す。本発明に有用な誘導体または類似体は、種々の位置で追加のまたは代りの置換基(-R)を含有しうる。この場合、そのような置換基は、任意の適切な基から選択可能である。当業者であれば、立体障害効果を最小限に抑えて官能性を保持するように置換基の電荷およびサイズおよび位置を考慮して置換基を選択することができる。たとえば、置換基は、水素またはハロゲンならびに6個までの炭素原子の無置換型もしくは置換型のアルキル、アルケニル、およびアルキニルよりなる群から個別に選択可能である。
D-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート(D-AP5)は、以下の化学構造を有する。
Figure 2006502158
本発明に有用なD-AP5の誘導体または類似体は、以下に示されるように種々の位置で追加のまたは代りの置換基(-R)を含有しうる。
Figure 2006502158
7-クロロキヌレネート(7-CK)は、以下の化学構造を有する。
Figure 2006502158
本発明に有用な7-CKの誘導体または類似体は、以下に示されるように種々の位置で追加のまたは代りの置換基(-R)基を含有しうる。
Figure 2006502158
ジゾシルピン(MK 801)は、以下の化学構造を有する。
Figure 2006502158
本発明に有用なMK 801の誘導体または類似体は、以下に示されるように種々の位置で追加のまたは代りの置換基(-R)基を含有しうる。
Figure 2006502158
ガシクリジン(GK-11)は、以下の化学構造(2つのラセミ体構造が示されている)を有する。
Figure 2006502158
本発明に有用なガシクリジンの誘導体または類似体は、以下に示されるように種々の位置で追加のまたは代りの置換基(-R)基を含有しうる。
Figure 2006502158
上記の作用物質は本発明に係る送達に利用可能であるが、本明細書に提供される開示を読めば、本発明の範囲に包含される変更形態が当業者に自明なものとなろう。
送達されるグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、併用療法(たとえば、薬剤相互作用の電位)、被験者の年齢、障害の重症度、被験者の症状の再発など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな因子により異なる可能性がある。
グルタメート媒介神経伝達をモジュレートする作用物質は、中耳〜内耳の膜を横切って送達するのに適合したさまざまな製剤のうちのいずれの製剤としても提供することができるが、ただし、そのような製剤は安定でなければならない(すなわち、体温において許容できない量まで分解されるものであってはならない)。製剤中の作用物質の濃度は、約0.1重量%〜約50または75重量%の範囲で変化させうる。作用物質は、中耳〜内耳の膜構造体を横切って作用物質を送達および拡散させるのに好適な任意の形態、たとえば、固体剤、半固体剤、ゲル剤、液体剤、サスペンジョン剤、エマルジョン剤、浸透圧投与製剤、拡散投与製剤、被侵食性製剤などで提供することができる。一実施形態では、製剤は、内耳の正円窓ニッシェの近傍に挿入されたカテーテルに連結された埋植可能なポンプ、たとえば、浸透圧ポンプを用いて送達するのに好適である。
医薬等級の有機もしくは無機担体、賦形剤、および/または希釈剤を製剤に組み込むことができる。好適な組成物を提供するために、製剤は、場合により、緩衝液、たとえば、生理学的pH値のリン酸ナトリウム緩衝液、生理食塩水、またはその両方(すなわち、リン酸緩衝食塩水)を含みうる。好適な賦形剤は、デキストロース、グリセロール、アルコール(たとえば、エタノール)など、ならびにそれらの1種以上と、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、有機物などと、の組合せを含みうる。さらに、所望により、組成物は、疎水性もしくは水性の界面活性剤、分散剤、湿潤剤もしくは乳化剤、等張化剤、pH緩衝剤、溶解促進剤、安定化剤、防腐剤、および医薬調製物の配合に利用される他の典型的な補助添加剤を含みうる。本発明に有用な製剤中に存在しうる代表的なさらなる活性成分としては、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、またはガシクリジンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、製剤中に溶液、サスペンジョン、および/または沈殿物として提供することができる。
本発明に係る治療になじみやすい健康状態
一般的には、本発明に係る製剤を投与すれば、グルタメートレセプターの過剰刺激により引き起こされる内耳障害、たとえば、グルタメートの異常に増大された放出に起因する内耳障害および/または異常に増大されたグルタメートレセプター活性を誘発するグルタメートレセプターシグナリングの欠陥に起因する内耳障害を治療することができる(たとえば、予防的にまたは発生後に)。とくに興味深いのは、長期療法が必要となる可能性のある内耳障害、たとえば、療法が、数日間(たとえば、約3日間〜10日間)から、数週間(たとえば、約2週間もしくは4週間〜6週間)まで、数ヶ月間または数年間まで、被験者の残存寿命を含む期間までにわたる治療を必要とする慢性および/または持続性内耳障害(たとえば、耳鳴)の管理である。現在のところ疾患または症状を患っていないがそのような疾患または症状に罹患しやすい被験者は、本発明のデバイスおよび方法を用いる予防的管理の恩恵をとくに受ける可能性がある。本発明に係る療法になじみやすい内耳障害には、比較的症状のない期間が交互に現れる長期エピソードまたは重症度がさまざまである実質的に絶え間ない症状が包含されうる。
本発明に係る管理になじみやすい症状、疾患、障害、および生理反応の特定例としては、耳鳴、蝸牛虚血、騒音暴露、老人性難聴による聴力損失が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
本発明に係るグルタメート神経調節剤の送達
一般的には、グルタメート媒介神経伝達モジュレーター製剤は、中耳を介する内耳への送達に適合しうる体積速度で、かつ異常なグルタメート媒介神経伝達(たとえば、グルタメートレセプターの過剰刺激)により引き起こされる障害の管理に治療上有効な用量で、送達される。
一般的には、本発明に係るグルタメート媒介神経伝達のモジュレーターの投与は、数時間(たとえば、2時間、12時間、もしくは24時間〜48時間、またはそれ以上)から、数日間(たとえば、2〜5日間またはそれ以上)まで、数ヶ月間または数年間までにわたり、持続させうる。典型的には、送達は、数日間(1、2、7、14日間)から約1ヶ月間〜約3ヶ月間もしくは6ヶ月間もしくは9ヶ月間もしくは約12ヶ月間またはそれ以上までの期間にわたり継続させうる。グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、たとえば、約2時間〜約72時間、約4時間〜約36時間、約12時間〜約24時間、約2日間〜約30日間、約5日間〜約20日間、約7日間以上、約10日間以上、約100日間以上、約1週間〜約4週間、約1ヶ月間〜約24ヶ月間、約2ヶ月間〜約12ヶ月間、約3ヶ月間〜約9ヶ月間、約1ヶ月間以上、約2ヶ月間以上、もしくは約6ヶ月間以上の期間;または必要に応じてこれらの範囲内で増加分を含む他の期間にわたり個体に投与しうる。特定の実施形態では、製剤は、デバイスへの再アクセスを必要とすることなくかつ/またはデバイスの再充填を必要とすることなくあらかじめ選択された時間にわたり被験者に送達される。これらの実施形態では、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターを高濃度で有する製剤は、とくに興味深い。
好ましくは、本発明の製剤の送達は、パターン化方式で、実質的に連続方式で、または実質的に一定したあらかじめ選択された速度もしくは速度範囲(たとえば、単位時間あたりの作用物質の量もしくは単位時間に対する製剤の体積)で行われる。好ましくは、作用物質は、約0.01μl/日〜約2ml/日、好ましくは約0.04μl/日〜約1ml/日、一般的には約0.2μl/日〜約0.5ml/日、典型的には約2.0μl/日〜約0.25ml/日の低体積速度で送達される。
長期投薬は被験者に好都合であり、しかも長期用量の投与は簡単でありかつ患者の健康上許容されるのであれば外来患者を対象に行うことができる(送達を達成する方法については、以下でより詳細に述べる)。長期送達はまた、患者のコンプライアンスを向上させるとともに、より正確な投与を提供しうる(たとえば、制御放出薬剤送達デバイスを使用した場合)。埋植された薬剤送達デバイス(たとえば、浸透圧ポンプ)は、皮膚の反復破壊および/または投与口の維持を必要とする外部ポンプまたは他の方法に関連付けられる感染症のリスクを低減させるという点で、さらなる利点を有する。
一実施形態では、薬剤送達デバイスは、中耳〜内耳の膜への(たとえば、正円窓膜または鐙骨底の輪状靭帯への)あらかじめ選択された速度における実質的に連続した作用物質の送達を提供する。この実施形態では、作用物質は、約0.1μg/時〜約200μg/時、通常は約0.25μg/時または3μg/時〜約85μg/時、典型的には約5μg/時〜約100μg/時の速度で送達可能である。特定の代表的実施形態では、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、約0.1μg/時、0.25μg/時、1μg/時から、一般的には約200μg/時までの速度で送達される。
当業者であれば、グルタメート媒介神経伝達の特定のモジュレーターの適正量を、たとえば、これらの薬剤の相対効力および動物モデルにおける有効性に基づいて、容易に決定することができる。送達される薬剤の実際の用量は、選択される使用薬剤の効力および他の性質(たとえば、親水性、正円窓膜を横切る拡散速度など)のようなさまざまな因子によって異なるであろう。
本発明に係る内耳へのグルタメート神経調節剤の送達は、さまざまな方法で達成することができる。これらには、作用物質を含む溶液または他の担体を中耳に充填することが包含される。たとえば、Shea (1997) Otolaryngol Clin North Am. 30(6):1051-9を参照されたい。また、作用物質を含むゼラチンまたはGelfoamTMを挿入することにより作用物質の送達を達成することも可能である。たとえば、Silverstein (1984) Ann Otol Rhinol Laryngol Suppl. 112:44 8; Lundman et al. (1992) Otolaryngol 112:524; Nedzelski et al. (1993) Am. J. Otol. 14:278-82; Silverstein et al. (1996) Ear Nose Throat J 75:468-88; Ramsay et al. (1996) Otolaryngol. 116:39; Ruan et al. (1997) Hear Res 114:169; Wanamaker et al. (1998) Am. J. Otology 19:170; Arriaga et al. (1998) Laryngoscope 108:1682-5; およびHusmann et al. (1998) Hear Res 125:109を参照されたい。また、作用物質と混合されたヒアルロナンまたはヒアルロン酸を挿入することにより作用物質の送達を達成することも可能である。たとえば、WO 97/38698; Silverstein et al. (1998) Am J Otol. 19(2):196 201を参照されたい; 内耳への作用物質の送達におけるフィブリングルーまたは他のフィブリン系媒体の使用については、たとえば、Balough et al. (1998) Otolaryngol. Head Neck Surg. 119:427-31; Park et al. (1997) Laryngoscope 107:1378-81を参照されたい。
本発明に係る内耳へのグルタメート神経調節剤の送達は、IntraEAR(登録商標) Round Window μ-CathTM製品およびRound Window E-CathTM製品を用いて達成することができる。これらの製品は、両方とも、FDAおよびEuropean CE Markの承認に基づいて販売許可を得ている。Round Window μ-CathTM製品およびRound Window E-CathTM製品は、さまざまな耳障害を治療すべく医師が使用してきた中耳の正円窓膜への制御流体送達を可能にする独自設計のデュアルおよびトリプルルーメンマイクロカテーテルである。これらのカテーテルは、外科医が中耳の正円窓ニッシェへの固定を行えるように設計された独自のチップを特徴とする。これらのカテーテルは、何週間にもわたり所定の位置に放置することができ、内耳に治療流体を連続送達すべくシリンジまたはポンプ(たとえば、Disetronic Medical Systems製のもの)に連結することができる。デュアルルーメン設計を用いれば、治療医師は、空気または流体の圧力を増大させることなく流体の添加および除去を行ったりまたはデバイスのフラッシングを行ったりすることができる。医師が耳の活動に関連する電気シグナルを記録できるように、E-Cath設計には、さらなる電極が組み込まれている。そのようなInnerEarカテーテルは、米国特許第6,045,528号; 同第5,421,818号; 同第5,476,446号; および同第5,474,529号に記載されている。これらはすべて、参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする。そのようなカテーテルは、以下に記載の薬剤送達デバイスに連結して使用することができる。
制御放出デバイスを用いる薬剤の送達
一般的には、本発明で使用するのに好適な薬剤放出方法またはデバイスは、薬剤製剤を保持するための薬剤リザーバーまたは薬剤を保持することのできる他のなんらかの基材もしくはマトリックス(たとえば、ポリマー、結合固体など)を含む。薬剤放出デバイスは、正円窓または他の中耳〜内耳の膜を横切る内耳中への薬剤の灌流を容易にするように、当技術分野で公知のかつ正円窓への薬剤の送達に好適なさまざまな埋植可能な薬剤送達システムのいずれからも選択することができる。
特定の実施形態では、送達デバイスは、長期間にわたる製剤の送達に適合したデバイスである。そのような送達デバイスは、数時間〜数週間またはそれ以上にわたる製剤の投与に適合したものでありうる。薬剤送達は、聴力損失、耳鳴、または他の内耳障害に対する治療または予防を提供する。一般的には、グルタメート媒介神経伝達のモジュレーターは、少なくとも1週間、もしくは少なくとも数週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、またはそれ以上にわたり個体に投与される。
本発明の薬剤放出デバイスは、拡散システム、対流システム、または侵食システム(たとえば、侵食に基づいたシステム)に依拠しうる。たとえば、薬剤放出デバイスは、浸透圧ポンプ、電気浸透圧ポンプ、蒸気圧ポンプ、または浸透圧破裂マトリックスでありうる。この場合、たとえば、薬剤はポリマー中に組み込まれ、ポリマーは、薬剤含浸高分子材料(たとえば、生分解性の薬剤含浸高分子材料)の分解と同時に薬剤製剤の放出を提供する。他の実施形態では、薬剤放出デバイスは、電気拡散システム、電解ポンプ、気泡ポンプ、圧電ポンプ、加水分解システムなどに依拠する。
薬剤送達カテーテルまたは他の送達デバイスを制御放出デバイスに連結して使用した場合、毛管作用の結果として、薬剤放出デバイスから生成される圧力の結果として、拡散により、電気拡散により、またはデバイスおよび/もしくはカテーテル(たとえば、先に述べたIntraEAR(登録商標)カテーテル)を介する電気浸透圧により、制御放出デバイスのリザーバーから正円窓膜まで薬剤送達カテーテルを介して薬剤を送達することができる。
薬剤送達デバイスは、一般的には、治療上必要とされるような量および濃度で薬剤製剤を移送することが可能であり、埋植および送達の持続期間にわたり生体過程による攻撃から製剤を十分に保護しなければならない。したがって、外面は、好ましくは、使用時に受けるおそれのある応力下で無制御にその内容物が排出されないように、漏洩、亀裂、破損、または歪みのリスクを減少させる性質を有する材料で作製される。薬剤リザーバーは、生体適合性(たとえば、被験者の生体または体液に対して実質的に非反応性)でなければならない。
好適な材料は、当技術分野で周知である。たとえば、リザーバー材料は、非反応性ポリマーまたは生体適合性の金属もしくは合金を含みうる。好適なポリマーとしては、アクリロニトリルポリマー類、たとえば、アクリロニトリルブタジエンポリマーなど; ハロゲン化ポリマー類、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー; ポリエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリイミド; ポリスルホン; ポリカーボネート; ポリエチレン; ポリプロピレン; ポリビニルクロリドアクリルコポリマー; ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン; ポリスチレン; セルロース系ポリマー類; などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらなる代表的ポリマーについては、Handbook of Common Polymers, Scott and Roff, CRC Press, Cleveland Rubber Co., Cleveland, Ohioに記載されている。
薬剤放出デバイスのリザーバーで使用するのに好適な金属材料としては、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金; 金メッキされた合金鉄; 白金メッキされたチタン、ステンレス鋼、タンタル、金、およびそれらの合金ならびに他の合金鉄; コバルトクロム合金; ならびに窒化チタンでコーティングされたステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金が挙げられる。
高分子マトリックスに使用される代表的な材料としては、生体安定性ポリマーおよび生分解性ポリマーを含めて、生体適合性ポリマーが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。代表的な生体安定性ポリマーとしては、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルウレタンウレア、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン-クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたは「TeflonTM」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド-ポリスチレン、ポリ-a-クロロ-p-キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホンおよび他の関連する生体安定性ポリマーが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。代表的な生分解性ポリマーとしては、ポリアンヒドリド類、シクロデキストラン類、ポリ乳酸-グリコール酸、ポリオルトエステル類、n-ビニルアルコール、ポリエチレンオキシド/ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、および他の関連する生体吸収性ポリマー類が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
他の周知の薬剤送達デバイスは、注射可能な生分解性持続放出デバイスの「デポ剤」である。これは、一般的には、コンテナー化されておらず、薬剤のリザーバーとして作用することが可能であり、そしてそれから薬剤が放出される。デポ剤は、高分子材料および非高分子材料を含み、固体、液体、または半固体の形態をとりうる。たとえば、本発明で使用されるデポ剤は、高粘度液体、たとえば、非高分子非水溶性液体担体材料、具体的には、スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)または米国特許第5,747,058号および同第5,968,542号(これらは両方とも参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする)に記載されている他の化合物でありうる。参考文献については、一般に"Encyclopedia of Controlled Drug Delivery" 1999, John Wiley & Sons Inc刊, Edith Mathiowitz編を参照されたい。SAIBは、たとえば、1種以上の溶剤、具体的には、限定されるものではないが、ベンジルベンゾエート、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの混合物のような非ヒドロキシル溶剤を用いて製剤化しうる。特定の実施形態では、エタノール、メタノール、またはグリセロールのような溶剤を使用することが望ましいであろう。製剤をスプレー剤として投与する場合、噴射剤を添加することが可能である。溶剤は、約5%〜約50%の溶剤比率でSAIBに添加することができる。
本発明に従って内耳に薬剤を制御送達するための代表的なデバイスについては、PCT公開WO 00/33775号に記載されている。このデバイスは、一般的には、1種以上の治療剤を含む担体媒質材料を含んでなる薬剤送達ユニットを備える。担体媒質材料は、制御された形で時間をかけて作用物質を放出するように設計され、正円窓ニッシェ中にデバイスの少なくとも一部分を配置するように形状およびサイズが設定される。
機械的または電気機械的インフュージョンポンプに基づく薬剤放出デバイスもまた、一般的には正円窓膜に薬剤を送達するように埋植され、機能しうる形で連結されたカテーテルと併用して、本発明で使用するのに好適でありうる。そのようなデバイスの例としては、たとえば米国特許第4,692,147号; 同第4,360,019号; 同第4,487,603号; 同第4,360,019号; 同第4,725,852号などに記載されているものが挙げられる。一般的には、本発明の薬剤送達方法は、さまざまな再充填可能かつ交換不能なポンプシステムのいずれを用いても達成することができる。一般的には、ポンプおよび他の対流システムが好ましい。なぜなら、それらは、一般に、経時的により一貫性のある制御放出を行うからである。浸透圧ポンプは、より一貫性のある制御放出および比較的小さいサイズの利点を兼ね備えているので、とくに好ましい。浸透圧ポンプのうち、DUROSTM浸透圧ポンプがとくに好ましい(たとえば、WO 97/27840ならびに米国特許第5,985,305号および同第5,728,396号を参照されたい)。
一実施形態では、薬剤放出デバイスは、浸透圧駆動デバイスの形態の連続薬剤放出デバイスである。好ましい浸透圧駆動薬剤放出システムは、約0.1μg/時〜約200μg/時の範囲の速度で薬剤の放出を提供することができるとともに、約0.25μl/日〜約100μl/日(すなわち、約0.0004μl/時〜約4μl/時)、好ましくは約0.04μl/日〜約10μl/日間、一般的には約0.2μl/日〜約5μl/日、典型的には約0.5μl/日〜約1μl/日の体積速度で送達することができるシステムである。一実施形態では、体積/時間供給速度は、実質的に一定である(たとえば、送達は、一般的には、前述の時間にわたり前述の体積の±約5%〜10%の速度、たとえば、約〜の体積速度で行われる。)
一般的には、本発明で使用するのに好適な薬剤送達デバイスは、たとえば約0.1μg/時〜約200μg/時の低用量で、好ましくはたとえば1日あたりナノリットル〜マイクロリットル程度の低体積速度で、薬剤を送達できるものである。一実施形態では、24時間にわたり約80μl/時の送達を行うことにより約0.01μl/日〜約2ml/日の体積速度が達成される。その24時間にわたる送達速度は、その間にわたり±約5%〜10%変動する。本発明で使用するのに好適な代表的な浸透圧駆動デバイスとしては、米国特許第3,760,984号; 同第3,845,770号; 同第3,916,899号; 同第3,923,426号; 同第3,987,790号; 同第3,995,631号; 同第3,916,899号; 同第4,016,880号; 同第4,036,228号; 同第4,111,202号; 同第4,111,203号; 同第4,203,440号; 同第4,203,442号; 同第4,210,139号; 同第4,327,725号; 同第4,627,850号; 同第4,865,845号; 同第5,057,318号; 同第5,059,423号; 同第5,112,614号; 同第5,137,727号; 同第5,234,692号; 同第5,234,693号; 同第5,728,396号; などに記載されているものが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
薬剤送達カテーテルを用いる送達
いくつかの実施形態では、たとえば、埋植部位と所望の送達部位が同一でない状態で、薬剤送達デバイスを備えた薬剤送達カテーテルを提供することが望ましいであろう。薬剤送達カテーテルは、一般的には、薬剤送達デバイスの薬剤放出デバイスに関連付けられる第1の端(すなわち「近位」端)と、所望の送達部位に薬剤含有製剤を送達するための第2の端(すなわち「遠位」端)と、を有する実質的に中空の細長い部材である。薬剤送達カテーテルを使用する場合、薬剤送達カテーテルのルーメンを薬剤送達デバイス中の薬剤リザーバーに連通した状態にすることにより、薬剤リザーバー中に含まれる製剤が薬剤送達カテーテル中を移動して、正円窓膜に作用物質を送達するように配置されたカテーテルの送達出口から送出されるように、薬剤送達カテーテルの第1の端を機能しうる形で薬剤送達デバイスに連結することができる。一実施形態では、正円窓膜に作用物質が送達されるように、カテーテルを少なくとも部分的に正円窓ニッシェ内に配置する。
カテーテルの本体は、薬剤製剤の漏れのない送達の提供に適合した直径を有するようにルーメンを規定する。薬剤送達デバイスが対流により薬剤を送出する場合(たとえば、浸透圧薬剤送達システムの場合)、薬剤放出システムのリザーバーから延びるカテーテルルーメンのサイズは、Theeuwes (1975) J. Pharm. Sci. 64:1987-91に記載されているように設計することができる。
カテーテルの本体は、任意の形状(たとえば、湾曲形状、実質的に直線形状、テーパー形状など)をとりうる。
薬剤送達カテーテルの遠位端は、1つもしくは複数の開口を有しうる。
薬剤送達カテーテルは、さまざまな好適な材料のいずれからも作製可能である。上述したような制御薬剤放出デバイスの作製に使用するのに好適な不浸透性材料は、一般的には、薬剤送達カテーテルの作製に使用するのに好適な材料である。代表的な材料としては、ポリマー類; 金属類; ガラス類; ポリオレフィン類(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)など); ナイロン類; ポリエチレンテレフタレート; シリコーン類; ウレタン類; 液晶ポリマー類; PEBAX(登録商標); HYTREL(登録商標); TEFLON(登録商標); ペルフルオロエチレン (PFE)ペルフルオロアルコキシ樹脂類(PFA); ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA); ポリマー、金属、および/またはガラスのマルチラミネート; ニチノール; などが挙げられる。
薬剤送達カテーテルの配置を容易にするためにかつ/またはカテーテルに他の望ましい特性を付与するために、薬剤送達カテーテルは、さらなる材料または作用物質(たとえば、外部または内部のカテーテル本体表面(複数も可)上のコーティング)を含みうる。たとえば、薬剤送達カテーテルの内壁および/または外壁に銀のコーティングを施すか、さもなければ抗微生物剤のコーティングを施すか、または抗微生物剤で処理することにより、埋植および薬剤送達の部位における感染症のリスクをさらに低減させることができる。
一実施形態では、薬剤送達カテーテルを薬剤含有製剤でプライミングする。たとえば、埋植前に薬剤を実質的に前充填する。薬剤送達カテーテルのプライミングを行うと、送達スタートアップ時間、すなわち、薬剤送達デバイスから薬剤送達カテーテルの遠位端への薬剤の移動に関連する時間が低減される。
本発明に使用されるデバイス
中耳〜内耳の膜(たとえば、正円窓膜または鐙骨底の輪状靭帯を横切って灌流させるための正円窓ニッシェ)へのグルタメート神経調節剤の送達は、米国特許第5,421,818号に記載されているような送達デバイスを用いて達成することができる。この特許には、治療剤用のリザーバーと、種々の実施形態において、たとえば正円窓膜に流体材料を送達してから内耳中に拡散させる流体移送手段(たとえば、細孔、半透膜など)と、を含む種々の治療システムが記載されている。他の実施形態では、デバイスは、複数のリザーバー部分と、たとえば、標準的な顕微外科技術を用いて内リンパ嚢および内リンパ管に埋植するように設計されたマルチプルステム部分と、を含む。さらに他の実施形態では、装置は、液体医薬物質を内部に保持するためのリザーバー部分と、第1および第2のステムと、を含む。第2のステムは、リザーバー部分から内耳に医薬物質を送達することができるように、第1のステムを、たとえば、鐙骨底/輪状靭帯に形成された開口内に存在させて、患者の鼓膜の外側の外耳道内に存在させることができる。
本発明で使用するのに好適な他のデバイスについては、米国特許第6,045,528号に記載されている。この特許に記載されているデバイスは、カバー部材に連結された1つ以上の流体移送管を含み、カバー部材は、正円窓ニッシェの上にまたは少なくとも部分的にその内部に配置することができ、いくつかの実施形態では正円窓ニッシェ内に耐液性流体受容ゾーンを形成する。カバー部材は、プレート状構造であってもよいし、圧縮性材料を含むものであってもよい。
PCT公開WO 00/04854号には、本発明で使用するのに好適な他のデバイスが記載されている。そのデバイスは、貫通する1つ以上の通路を含む流体移送管を備える。膨張性ブラダーを管に装着し、少なくとも部分的に耳の内部腔(たとえば、正円窓ニッシェ)内に挿入すべくサイズを設定する。膨張時、ブラダーが内部腔の内部側壁に係合してブラダーおよび管の一部分が内部腔内に固定されるので、内部腔へのおよび内部腔からの流体の移送が可能になる。
埋植部位および送達部位
特定の実施形態では、当技術分野で周知の方法およびデバイスを用いて、任意の好適な埋植部位に薬剤送達デバイスを埋植することができる。埋植部位としては、真皮下、皮下、筋肉内、または被験者の生体内の他の好適な部位、たとえば、耳の近傍(たとえば、耳の外耳道の後ろ)の皮下部位が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。皮下埋植部位は、薬剤送達デバイスの埋植および除去が便利に行えるので好ましい。送達部位から離れた埋植部位の薬剤送達デバイスからの薬剤の送達は、カテーテルを備えた薬剤送達デバイスを提供することにより達成することができる。
薬剤送達デバイスは、完全にまたは少なくとも部分的に耳の内部腔内に存在しうるが、好ましい実施形態では、少なくとも部分的に正円窓ニッシェ内に存在する。たとえば、正円窓膜から離間して配置されるか、または膜に当接させてかつ/もしくは隣接させて配置される。
中耳〜内耳の膜に作用物質を送達すべく、多種多様な方法を用いて、作用物質または作用物質を含むデバイスを耳に挿入することができる。たとえば、鼓膜を介して中耳に作用物質製剤を注射することができるとともに、作用物質製剤と中耳〜内耳の膜との接触を容易にするために、たとえば、特別に正円窓ニッシェ内に配置することが可能である。代わりに、作用物質を中耳に送達すべく中耳に、またはより直接的に正円窓膜構造体に、薬剤送達デバイスを挿入することができる。他の実施形態では、薬剤送達デバイスを中耳の外部に配置し、薬剤送達デバイスに機能しうる形で装着されたカテーテルまたは他の薬剤送達管により、デバイスのリザーバーから中耳に、たとえば、正円窓膜に、薬剤を送達する。
薬剤送達デバイスの挿入は、鼓膜を貫通してまたは鼓膜下にデバイスまたはデバイスの一部分を通すことにより(従来設計の適切な顕微外科器具を用いて)、達成することができる。鼓膜は、好ましくは、薬剤送達デバイスまたはそれの一部分を貫通させうる切開を有する。あるいは、デバイスまたはその一部分を外耳道鼓膜弁の下で中耳に挿入することができる。薬剤送達デバイスの適切な方向付けおよび/または挿入は、たとえば、Arenbergらに付与された米国特許第5,419,312号に開示されているタイプの従来の手術用顕微鏡または耳科内視鏡装置を用いて、達成することができる。
薬剤送達デバイスの配置は、デバイスからの薬剤が中耳〜内耳の膜の少なくとも一部分に接触するように行われる。医学用途に通常使用されるタイプの充填材料を耳内で利用することにより、耳の内部腔内のその所望の位置に薬剤送達デバイスを固定することができる。作用物質は、正円窓膜に達したときに薬剤送達デバイスから放出され、中耳と内耳の境界を提供する膜または他の構造体を通って内耳中に移動する。
一般に、薬剤送達システムおよび方法は、次のような多くの利点および能力を提供する: (1)正円窓膜を介して内耳中に治療剤が反復的かつ持続的に送達される; (2)安全にかつ直接に内耳に多種多様な治療剤(たとえば、医薬調剤)が送達される; (3)過度に侵襲的な外科的手順を用いることなく効果的な薬剤送達が達成される; および(4)複雑な医学的手順、モニタリングを用いることなく、かつ患者の不快感を伴うことなく、患者の内耳中に治療剤を送達する単純化された方法が用いられる。
実施例
方法および材料
ヒト内耳の動物モデル
体重約250g〜300gの成体モルモットを用いて実験を行った。動物をウレタン(1.4g/kg、腹腔内)で麻酔し、人工呼吸を行った。2時間ごとに、または肢に加えられた圧力に応答して動物がその肢を引っ込めた場合にはより頻繁に、追加用量のウレタン(0.35g/kg、腹腔内)を投与した。直腸温を約38.5±1℃に保持し、EKG電極を用いて心拍数(正常範囲260〜330回/分)をモニタリングした。鼓室輪の近傍で外耳道を切開して鼓膜を露出させ、障害物のまったくない状態で音が鼓膜に達するようにした。実験の終了時、過量のペントバルビトンナトリウムを心臓内注射することにより、動物を安楽死させた。
蝸牛内灌流
Puel 1995 Neurobiology 47:449-476に記載されているように一般的に蝸牛内灌流法を行った。簡潔に述べると、蝸牛を下方表面に露出させて中耳筋を切断した後、鼓室階中に設けた穴を介して2.5マイクロリットル/分の速度で選択された薬剤の10分間灌流を行い、前庭階中に設けた穴を介して蝸牛から薬剤を流出させた。測定は、プラセボの灌流の前後および段階的に増加させた濃度の作用物質の灌流の後で行った。それぞれの実験の終了時、人工の外リンパでカニューレをフラッシングし、作用物質の作用の可逆性を評価した。人工の外リンパ溶液は、以下の組成を有していた: 1.37 mM NaCl; 5 mM KCl; 2 mM CaCl2; 1 mM MgCl2; 1 mM NaHCO3; 11mMグルコース、pH7.4、容量オスモル濃度(302±4.2 mosmol/kg H2O)。それぞれの実験グループで5〜10匹のモルモットを使用した。
1〜1000マイクロモルの範囲の最終濃度になるように水中に溶解させることによりD-AP5およびMK 801を製剤化し、1〜100マイクロモルの最終濃度になるように100% DMSO中に7-クロロキヌレネート(chlorokinurenate)およびガシクリジンを溶解させた。
正円窓膜を横切る灌流
AlzetTM Osmotic Pumpに装着された動物用RWE-CathTMを用いて毎時1μlの薬剤溶液速度で14日間まで正円窓膜に薬剤を送達することにより、内耳への長時間送達モデルを提供した。蝸牛内灌流実験で、CAP振幅の変化、CAP潜伏時間の増大、CM振幅の減少のいずれをも引き起こさなかった最高濃度で、AlzetTM Osmotic Pumpをプライミングした。
意味のある有益な効果を提供するが、CAP振幅、CAP潜伏時間の変化を引き起こさず、CM振幅を減少させることもない作用物質の最高濃度を決定するように、実験を行った。薬剤の濃度がCAP振幅の変化、CAP潜伏時間の増大、またはCM振幅の減少を引き起こした場合、より低い濃度(より低い流量ではない)を試験した。薬剤の濃度がCAP振幅の変化、CAP潜伏時間の増大、CM振幅の減少のいずれをも引き起こさなかった場合、より高い濃度(より高い流量ではない)を試験した。それぞれの実験グループで5匹のモルモットを使用した。
刺激および記録方法
任意関数ジェネレーター(LeCroy Instrument type 9100R)により毎秒10回のレートでトーンバースト(1ミリ秒の上昇/下降時間、9ミリ秒の持続時間)を発生させた。Bruel and Kjaerマイクロホン(4134型)を介して閉鎖系で聴覚刺激の増幅および送達を行った。トーンバースト強度を変化させることにより(5dBステップで0〜100 dB SPL(音圧レベル))、強度振幅関数を得た。蝸牛の基底回転の前庭階中に設けられた第3の穴の中に配置されたテフロン(登録商標)のコーティング(先端を除く)の施された銀電極から、聴覚神経の複合活動電位(CAP:N1-P1)、N1潜伏時間、蝸牛マイクロホン電位(CM)、および加重電位(SP)を記録した。電位を増幅し(Tektronic TM 503、利得1000)、平均し(256個のサンプル)、Pentium(登録商標) PCコンピューターに保存した。A/Dコンバーターのサンプリング速度は50kHzであり、ダイナミックレンジは12ビット、1レコードあたりのサンプル数は1024個であった。CAPの閾値は、測定可能な応答(1 microVolt)を引き起こすのに必要とされるdB SPLとして定義した。
統計解析
分散分析(ANOVA)およびNewmann-Keuls多重範囲検定を用いて、作用物質効果の有意性(p<0,05)を決定した。データは平均±標準誤差として表現される。
サリチレート耳鳴モデル
サリチレート(アスピリンの活性成分)は、ヒトにおいて耳鳴を誘発するので、聴覚科学において特別な関心が払われている。サリチレートの存在下で聴覚神経繊維の発射レートを測定することにより、耳鳴を治療する作用物質の効力を試験した。
蝸牛中への薬剤の直接適用時に聴覚神経から単一ユニット応答を記録する方法については、すでに他で報告されている(J. Ruel, C. Chen, R. Pujol, R. P. Bobbin, J. L. Puel, J Physiol. 518, 667, 1999)。簡潔に述べると、基底回転鼓室階中に設けられた穴に配置されたマルチバレル灌流ピペット(ASI Instruments)を用いて蝸牛中に試験溶液を適用し、頂端に設けられた穴(直径0.2mm)を介して蝸牛から流出させた。後窩到達法を用いて蝸牛神経を露出させた。ガラスマイクロ電極を用いて、単一の聴覚神経繊維から細胞外活動電位を記録した。単一ユニットを分離した後、10秒間かけて自発活性を平均した。次に、3回/秒で提示される200ミリ秒のトーンバーストを用いてコンピューター制御閾値トラッキングプログラムにより、ユニットの同調曲線を決定した。閾値基準は、10スパイク/秒の差、すなわち、トーン(200ミリ秒)計数間隔と非トーン(200ミリ秒)計数間隔との間で2スパイクの差であった。プログラムにより特徴振動数(CF)を決定し、CF閾値よりも10dB高い位置のバンド幅でCFを割った値として定義されるQ10dBを測定することにより繊維の振動数同調を決定した。
活動電位の開始における重要なステップは、感覚内有毛細胞により放出される内因性神経伝達物質グルタメート(Glu)によるシナプス後部レセプターの活性化である(他の文献(J. Ruel, C. Chen, R. Pujol, R. P. Bobbin, J. L. Puel, J Physiol. 518, 667, 1999))。アルファ-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾール-プロピオネート(AMPA)レセプターに作用することにより、ナトリウムサリチレートが迅速な蝸牛シナプス神経伝達をモジュレートするという仮説が提案された。図1bに示されるように、50μMのAMPAアンタゴニスト(agonist)GYKI 53784(Neuropharm. 30 1959-1973, 2000)によりAMPAレセプターをブロッキングすることにより、自発活性およびナトリウムサリチレートまたは音によって誘発される誘発活性の両方がブロッキングされた。他の可能性は、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターに及ぼすサリチレートの作用であった。10μM MK 801、50μMガシクリジン、50μM 7-クロロキヌレン酸(7-CK)の蝸牛内灌流はいずれも、聴覚繊維の自発活性に影響を及ぼさなかったが、NMDAアンタゴニストはナトリウムサリチレートにより誘発された神経興奮を抑制した(図1 c)。したがって、聴覚神経活性に及ぼすナトリウムサリチレートの興奮作用は、蝸牛NMDAの活性化を必要とする。
実施例1: リルゾールの短時間蝸牛内灌流および長時間正円窓灌流の作用の比較
短時間蝸牛内灌流(AICP)はヒトにおいては実用的でないので、本発明者らは、正円窓蝸牛灌流(RWCP)を介して安全かつ治療的な効果を達成しうるかを調べた。
短時間蝸牛内灌流および長時間正円窓灌流の作用の比較を行った。結果を図2に示す。これらのグラフは、8kHzのトーンバースト刺激の強度の関数としてCAPの平均振幅を表している。5匹の別個の動物から平均閾値を算出した。リルゾールの短時間蝸牛内適用および長時間正円窓適用がいずれも用量依存的にCAPの振幅を減少させることに注目されたい。しかしながら、薬剤を正円窓に適用した場合、作用は1/10の効力であった。試験の目標は、蝸牛の通常機能に及ぼす短時間蝸牛内灌流(AICP)の作用と長時間正円窓灌流(CRWP)の作用とを比較することであった。これらのグラフ(図2)は、8kHzのトーンバースト刺激の強度の関数としてCAPの平均振幅を表している。5匹の別個の動物から平均閾値を算出した。グラフAは、リルゾールの短時間蝸牛内窓適用がCAPの振幅を減少させたことを示している。グラフBは、リルゾールの長時間正円窓適用もまた用量依存性的にCAPの振幅を減少させたことを示している。CAPに対して同一の効果を得るには、濃度を10倍に増大させる必要があることに注目されたい。この実験から、リルゾールが正円窓膜を横切る長時間灌流の後で内耳中においてその活性を保持すると結論付けることができる。
実施例2: 大きい騒音により誘発される聴覚障害に及ぼすリルゾールの保護作用
すでに示されたように、リルゾールの短時間蝸牛灌流は、騒音により誘発される聴力損失の後で聴覚を回復する(Wang et al., Neuroscience 2002, 111,635-648)。大きい騒音により誘発される聴覚障害に及ぼすリルゾールの保護作用を調べるために、実験を行った。結果を図3に示す。この図は、連続音に30分間暴露した2日後に測定されたCAPオーディオグラム(音の振動数の関数としての閾値変動)を示している。6kHzの連続トーンに暴露する前および暴露した2日後の記録値の差として、閾値変動を算出した。人工の外リンパの存在下で120dBのSPLに30分間暴露した後で記録した閾値変動を示す(赤色の曲線、対照)。蝸牛中に直接適用した場合(青色曲線、intra)または正円窓に適用した場合(緑色の曲線、RW)のいずれにおいても、100μMリルゾールが明瞭な保護作用を示すことに注目されたい。文字「n」は、試験動物の数を表す。
実験の目標は、リルゾールが正円窓膜上に適用されたときに騒音性傷害から内耳を保護するのに有効であることを実証することであった。人工の外リンパのみを含有する浸透圧ミニポンプを対照動物に埋植した。120dB SPLの純音(6kHz、30分間)への短時間(20分間以内)暴露により、音暴露の2日後に50〜60 dBの永久閾値変動を生じた(Wang et al., Neuroscience, in press参照)。100μMリルゾールを蝸牛中に適用したとき、閾値の明瞭な回復が観測された。リルゾールを正円窓に適用したときにも、同一の効果が得られた。この実験から、正円窓膜へのリルゾールの灌流が、騒音性傷害から内耳を保護するのに有効であると結論付けることができる。
実施例3: サリチレートにより誘発される興奮に及ぼすグルタメートアンタゴニストの灌流の効果
灌流グルタメートアンタゴニストがサリチレートにより誘発される興奮を抑制する能力を調べるために、実験を行った。結果を図4に示す。
図4Aは、8kHzにおける8スパイク/秒の自発レートの聴覚神経繊維コーディングにより最初の記録を行って得られた結果を示している。100μMのインドメタシンを含有する対照の人工の外リンパ (AP)の蝸牛内灌流(白抜きのバー)は、聴覚神経繊維の自発活性を変化させなかった。これに対して、5mMのナトリウムサリチレートの適用(NaSal; 黒色のバー)は、聴覚神経繊維の自発発射を可逆的に増大させた。
図4Bは、9kHzにおける7スパイク/秒の自発レート活性の神経繊維コーディングにより得られた結果を示している。50μMのAMPAアゴニストGYKI 53784(Neuropharm. 30 1959-1973, 2000)によるAMPAレセプターのブロッキング(白抜きのバー)では、自発活性および5mM NaSalにより誘発された活性(黒色のバー)の両方が阻止された。
図4Cは、7,5kHzにおける5スパイク/秒の自発レートの神経繊維コーディングにより得られた結果を示している。ナトリウムサリチレートは、連続的に適用した。NMDAアンタゴニスト7 CK(50μM、n=5)の反復適用(白抜きのバー)では、NaSalにより誘発された聴覚神経の神経興奮は抑制されたが、繊維の自発活性は抑制されなかった。
10μM MK 801およびGK-11でも、類似の結果が得られた。したがって、聴覚神経活性に及ぼすナトリウムサリチレートの興奮作用は、AMPAレセプターではなく蝸牛NMDAの活性化を必要とする。この実験から、グルタメートアンタゴニストの灌流がサリチレートにより誘発される聴覚神経の興奮を抑制したと結論付けることができる。
実施例4: サリチレートにより誘発される耳鳴に及ぼすNMDAアンタゴニストの効果
聴覚神経繊維に及ぼすナトリウムサリチレートの興奮作用が耳鳴の知覚を引き起こすことを確認するために、能動的回避動作に基づいて、ラットにおいて行動モデルを設計した。3秒間の持続時間の10kHzのトーンバーストよりなる条件刺激に応答するように、動物を訓練した。実験を行って得られた結果を図5に示す。
図5Aは、2日目〜5日目にサリチレートを送達したときの音に対する陽性応答の数を音に暴露された全体を基準にしたパーセント(スコア%)vs日数単位の期間として表した結果を示している。
図5Bは、2日目〜5日目にサリチレートを送達したときの音なしにおける応答(偽陽性)の数を表した結果を示している。この行動パラダイムを用いた場合、生理食塩溶液による処理(4日間毎日腹腔内注射)では、スコアも偽陽性の数も変化しなかった。これとは対照的に、ナトリウムサリチレート処理(300mg/kg/日で4日間毎日腹腔内注射)では、スコアの可逆的な減少および偽陽性の数の劇的な増加を生じた。
図5Cは、サリチレート処理前(0日目)、処理中(3日目および4日目)、処理後(6日目)に記録された行動訓練済み動物における複合活動電位(CAP)オーディオグラムの結果を示している。正円窓に長期埋植された電極を用いて、毎秒10回のレートで提示される上昇/下降時間1ミリ秒および持続時間9ミリ秒のトーンバーストに対して、CAP閾値を測定した。サリチレート処理(300mg/kg/日で4日間毎日腹腔内注射)により、2〜26kHzの振動数範囲にわたり30dBの聴力損失を生じた。
図5Dは、サリチレート処理前、処理中、および処理後の10kHzにおけるCAP閾値変動を示している。0日目の聴覚閾値とそれぞれの日の聴覚閾値と間のdB差としてCAP閾値変動を算出した。聴力損失による変化を回避するために、行動応答を引き起こす音の強度をCAP閾値変動の関数として調整した。
図5Eは、2日目〜5日目にサリチレートを送達した場合にスコアの有意な減少が観測されなかったことを示している。
図5Fは、サリチレート処理後に偽陽性応答が依然として残存していたことを示している。これは、ナトリウムサリチレート処理中の偽陽性応答の数の増加が聴力損失に起因するものではなく耳鳴の発生に起因するものであったことを示している。正円窓に配置されたゲルフォームを用いて蝸牛の流体中に薬剤を適用した。(G)スコアが変化しなかったことに留意されたい。これとは対照的に、50μMの7-CKの正円窓適用では、偽陽性応答の発生が阻止された。これらの知見は、ナトリウムサリチレートにより耳鳴を誘発するのに蝸牛NMDAレセプターの活性化が必要であることを示唆する。この実験から、NMDAアンタゴニストの正円窓灌流がサリチレートにより誘発される耳鳴を抑制すると結論付けることができる。
実施例4: サリチレートにより誘発される耳鳴に及ぼすNMDAアンタゴニストの効果の比較
サリチレートが蝸牛NMDAレセプターを介して偽陽性を誘発するという仮説を立証するために、我々は、両耳の正円窓に配置されたゲルフォームを用いて外リンパ流体中に他のNMDAアンタゴニストを適用した。対照の人工の外リンパの局所適用は、スコアの減少にも(図6)、サリチレートにより誘発される偽陽性応答の数の増大にも(図6)、影響を及ぼさなかった。これとは対照的に、10μMのMK 801; 50μMの7-CKまたは50μMのガシクリジンの局所適用は、サリチレートにより誘発される偽陽性応答の発生を大幅に減少させ、スコアの減少は、依然として不変のままであった(図6)。4日目における対照の人工の外リンパ動物(偽陽性数6.2±0.86)と比較したとき、偽陽性応答の数は、MK 801、7-CK、およびガシクリジンについて、それぞれ、0.7±0.21; 0.7±0.26、および1±0.21に減少した(図5C)。全体的にみて、これらの結果は、サリチレートがNMDAレセプターの活性化を介して蝸牛の迅速なシナプス伝達に作用し、耳鳴の発生の原因になっているという証拠を提供する。
結論
以上の実験から、NMDAレセプターにより媒介される異常なグルタメート媒介神経伝達によってヒトの耳鳴が生成され、そのような耳鳴を治療するためにNMDAレセプターアンタゴニストを使用しうると結論付けることができる。本開示は、特異的NMDAレセプターアンタゴニストが、AMPAレセプター媒介シグナルの抑制に関連付けられる望ましからぬ聴力損失を引き起こすことなく、サリチレートにより誘発される耳鳴を阻止することを示唆する。そのようなNMDAアンタゴニストとしては、(限定されるものではないが)D-AP5(D-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、ジゾシルピン(MK 801)、7-クロロキヌレネート、またはガシクリジン(GK-11)が挙げられる。そのような治療は、内耳の正円窓ニッシェへのまたはその近傍への送達、たとえば、中耳〜内耳の膜へのまたは鐙骨底の輪状靭帯への送達を含む。そのような薬剤の類似体および誘導体も同様に使用可能である。
本発明の好ましい実施形態について本明細書中で説明してきたので、当業者であれば、それらに対する好適な変更を行いうると予想されるが、そうした変更は、本発明の範囲内に包含される。たとえば、本発明は、使用される代表的な組成物または利用される構築材料に関して、限定されるものではない。これに関連して、本発明は、以下の特許請求の範囲だけに従って解釈されるものとする。
図1は、外耳、中耳、および内耳を示すとともに正円窓を明瞭に示した耳の概略図である。 図2は、短時間蝸牛内灌流および長時間正円窓灌流の影響を比較する2つのグラフを示している。これらのグラフは、8kHzのトーンバースト刺激の強度の関数としてCAPの平均振幅を表している。5匹の別個の動物から平均閾値を算出した。リルゾールの短時間蝸牛内適用および長時間正円窓適用がいずれも用量依存的にCAPの振幅を減少させることに注目されたい。しかしながら、薬剤を正円窓に適用した場合、作用は1/10の効力であった。 図3は、大きい騒音により誘発される音響傷害に及ぼすリルゾールの保護作用を示している。連続音に30分間暴露した2日後、CAPオーディオグラム(音の振動数の関数としての閾値変動)を測定した。6kHzの連続トーンに暴露する前および暴露した2日後の記録値の差として、閾値変動を算出した。人工の外リンパの存在下で120dBのSPLに30分間暴露した後で記録した閾値変動を示す(赤色の曲線、対照)。蝸牛中に直接適用した場合(青色曲線、intra)または正円窓に適用した場合(緑色の曲線、RW)のいずれにおいても、100μMリルゾールが明瞭な保護作用を示すことに注目されたい。「n」は、試験動物の数である。 図4Aは、サリチレートにより誘発される興奮を抑制する灌流グルタメートアンタゴニストの能力を決定する実験の結果を示している。これは、8kHzにおける8スパイク/秒の自発レートの聴覚神経繊維コーディングにより最初の記録を行って得られた結果である。100μMのインドメタシンを含有する対照の人工の外リンパ (AP)の蝸牛内灌流(白抜きのバー)は、聴覚神経繊維の自発活性を変化させなかった。これに対して、5mMのナトリウムサリチレートの適用(NaSal; 黒色のバー)は、聴覚神経繊維の自発発射を可逆的に増大させた。 図4Bは、9kHzにおける7スパイク/秒の自発レート活性の神経繊維コーディングにより得られた結果を示している。50μMのAMPAアゴニストGYKI 53784(Neuropharm. 30 1959-1973, 2000)によるAMPAレセプターのブロッキング(白抜きのバー)では、自発活性および5mM NaSalにより誘発された活性(黒色のバー)の両方が阻止された。 図4Cは、7,5kHzにおける5スパイク/秒の自発レートの神経繊維コーディングにより得られた結果を示している。ナトリウムサリチレートは、連続的に適用した。
NMDAアンタゴニスト7 CK(50μM、n=5)の反復適用(白抜きのバー)では、Naサリチレートにより誘発された聴覚神経の神経興奮は抑制されたが、繊維の自発活性は抑制されなかった。
図4Dは、NMDAアンタゴニストガシクリジン(50μM、n=5)の反復適用では、Naサリチレートにより誘発された聴覚神経の神経興奮は抑制されたが、繊維の自発活性は抑制されなかったことを示している。 図5Aは、2日目〜5日目にサリチレートを送達したときの音に対する陽性応答の数を音に暴露された全体を基準にしたパーセント(スコア%)vs日数単位の期間として表した結果を示している。図5Bは、2日目〜5日目にサリチレートを送達したときの音なしにおける応答(偽陽性)の数を表した結果を示している。この行動パラダイムを用いた場合、生理食塩溶液による処理(4日間毎日腹腔内注射)では、スコアも偽陽性の数も変化しなかった。これとは対照的に、ナトリウムサリチレート処理(300mg/kg/日で4日間毎日腹腔内注射)では、スコアの可逆的な減少および偽陽性の数の劇的な増加を生じた。図5Cは、サリチレート処理前(0日目)、処理中(3日目および4日目)、処理後(6日目)に記録された行動訓練済み動物における複合活動電位(CAP)オーディオグラムの結果を示している。正円窓に長期埋植された電極を用いて、毎秒10回のレートで提示される上昇/下降時間1ミリ秒および持続時間9ミリ秒のトーンバーストに対して、CAP閾値を測定した。サリチレート処理(300mg/kg/日で4日間毎日腹腔内注射)により、2〜26kHzの振動数範囲にわたり30dBの聴力損失を生じた。図5Dは、サリチレート処理前、処理中、および処理後の10kHzにおけるCAP閾値変動を示している。0日目の聴覚閾値とそれぞれの日の聴覚閾値と間のdB差としてCAP閾値変動を算出した。聴力損失による変化を回避するために、行動応答を引き起こす音の強度をCAP閾値変動の関数として調整した。図5Eは、2日目〜5日目にサリチレートを送達した場合にスコアの有意な減少が観測されなかったことを示している。図5Fは、サリチレート処理後に偽陽性応答が依然として残存していたことを示している。これは、ナトリウムサリチレート処理中の偽陽性応答の数の増加が聴力損失に起因するものではなく耳鳴の発生に起因するものであったことを示している。正円窓に配置されたゲルフォームを用いて蝸牛の流体中に薬剤を適用した。(G)スコアが変化しなかったことに留意されたい。これとは対照的に、50μMの7-CKの正円窓適用では、偽陽性応答の発生が阻止された。これらの知見は、ナトリウムサリチレートにより耳鳴を誘発するのに蝸牛NMDAレセプターの活性化が必要であることを示唆する。この実験から、NMDAアンタゴニストの正円窓灌流がサリチレートにより誘発される耳鳴を抑制すると結論付けることができる。 図6は、サリチレートにより誘発される耳鳴に及ぼすNMDAアンタゴニストの作用の比較を示している。人工の外リンパ(AP、n=10)のみ、またはMK 801(10μM、n=10)、7-クロロキヌレネート(7-CK、50μM、n=10)、もしくはガシクリジン(50μM、n=10)に浸漬されたゲルフォームを有する動物において最後のサリチレート処理(4日目)で測定された偽陽性応答の数が示されている。APのみのときと比較して、MK 801、7-CK、またはガシクリジンの局所適用では、偽陽性応答の発生が大幅に減少した。

Claims (21)

  1. 異常なグルタメート媒介神経伝達により引き起こされる被験者の内耳障害を治療する方法であって、
    内耳障害を患う被験者に、グルタメート媒介神経伝達またはナトリウムチャネル機能をモジュレートする作用物質を含む製剤を投与することにより、該被験者の内耳障害を治療するステップ、
    を含む、上記方法。
  2. 前記製剤が前記被験者の正円窓膜に投与され、かつ該正円窓膜への前記作用物質の送達の結果として前記作用物質が該正円窓膜を介して前記被験者の内耳中に至り前記被験者においてグルタメート媒介神経伝達のモジュレーションおよび内耳障害の治療が提供される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記作用物質がグルタメートのシナプス前部への放出を阻害する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記作用物質がグルタメート媒介神経伝達をシナプス後部で阻害する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記作用物質がグルタメート向イオン性レセプターアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
  6. 前記グルタメート向イオン性レセプターアンタゴニストがNMDAレセプターアンタゴニストである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記NMDAレセプターアンタゴニストが、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、ガシクリジン、およびそれらの誘導体または類似体よりなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記製剤が、埋植された薬剤送達デバイスを用いて投与される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記製剤が前記正円窓膜に接触した状態になるように、前記製剤が注射により中耳内に投与される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記製剤が、少なくとも24時間にわたり連続的に毎時約0.1μg〜毎時200μgの速度で製剤から送達される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記作用物質が、少なくとも約3日間にわたり前記内耳障害の治療を提供するように前記製剤から送達される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記内耳障害が、耳鳴、騒音により誘発される傷害、加齢により誘発される退化、および虚血により誘発される傷害よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  13. グルタメート媒介神経伝達をモジュレートするNMDAレセプターアンタゴニストを含む、内耳障害を治療するための医薬組成物。
  14. 前記NMDAレセプターアンタゴニストが、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、ガシクリジン、およびそれらの誘導体または類似体よりなる群から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
  15. 内耳の正円窓膜に薬剤を送達するためのシステムであって、該システムが持続放出薬剤送達デバイスと薬剤とを含み、かつ該薬剤がグルタメート媒介神経伝達をモジュレートし、かつ該薬剤が少なくとも24時間にわたり該正円窓膜に配達される、上記システム。
  16. 前記薬剤がNMDAレセプターアンタゴニストである、請求項15に記載のシステム。
  17. 前記薬剤が、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、ガシクリジン、およびそれらの誘導体または類似体よりなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
  18. 前記薬剤送達デバイスがポンプを含む、請求項15に記載のシステム。
  19. 前記薬剤送達デバイスがカテーテルを含む、請求項15に記載のシステム。
  20. 前記薬剤が、グルタメート媒介神経伝達をモジュレートするNMDAレセプターアンタゴニストである、請求項19に記載のシステム。
  21. 前記薬剤が、D-AP5、MK 801、7-クロロキヌレネート、ガシクリジン、およびそれらの誘導体または類似体よりなる群から選択される、請求項20に記載のシステム。
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