本明細書で提供されるものは、外耳炎、中耳炎、ラムゼイハント症候群、耳梅毒、AIED、メニエール病および前庭ニューロン炎を含む、耳の不調の治療用の制御放出を行なう抗菌剤の組成物および製剤である。幾つかの実施形態では、抗菌剤は抗菌物質、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗原虫剤、及び/又は、駆虫剤である。特定の実施形態では、抗菌剤は、蛋白質、抗体、DNA、炭水化物、無機化合物、有機化合物、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、抗菌剤は小さな有機分子である。他の治療薬を備えた抗菌剤の組み合わせと同様に、異なる抗菌剤の組み合わせを含む、耳の不調の治療に役立つ治療薬の組み合わせを備える組成物はまた、本明細書に記載の特定の実施形態に包含される。
水泳選手の耳とも指称される、外耳炎(OE)は、外耳及び/又は外耳道の炎症である。OEは、外耳におけるバクテリア(例えば緑膿菌と黄色ブドウ球菌)または菌類(例えば鵞口瘡カンジダとコウジカビ)によって主として引き起こされ、外耳道の皮膚の損害の後に感染を確立する。OEの症状は耳痛、腫れ、および耳漏を含んでいる。疾病がかなり進行すると、OEは、腫れと漏出との結果として、一時的な伝音性難聴を起こし得る。OEの治療は、外耳道からいっそう悪化する病原体を除去し、炎症を少なくする工程を含み、該工程は、抗炎症剤(例えばステロイド)と共に、抗菌剤(例えば抗菌物質および抗真菌剤)と組み合わせて投与することにより通常遂行される。
中耳炎(OM)は中耳の炎症である。細菌感染は、肺炎連鎖球菌感染に起因する事例の40%以上と共に、OMの事例の大きな割合を占める。しかし、ウィルスが、他の微生物と同様、OM疾病を占めることもある。OMがウィルス、バクテリア、またはその両方によって引き起こされ得るので、様々な抗菌剤が内在する病原体を除去するために使用される。
梅毒は性病であり、その結果膜質の迷路炎および二番目に髄膜炎により、スピロヘータ梅毒トレポネーマ(耳の不調、特に蝸牛前庭の不調をもたらし得る)によって引き起こされる。獲得性及び先天性梅毒の両方は、耳の不調を引き起こし得る。梅毒から結果として生じる蝸牛前庭の不調の症状は、AIEDとメニエール病のような他の耳の不調の症状にしばしば類似し、耳鳴、聴覚喪失、回転性めまい、倦怠感、咽頭炎、頭痛および発疹を含んでいる。
耳梅毒(耳の症状を示す梅毒)の治療は、典型的にはステロイドと抗菌物質の組み合わせを含んでいる。前記治療は炎症を少なくする間にスピロヘータ有機体を根絶するのに効果的であり得る。しかしながら、トレポネーマは、身体中の他の部位からの根絶の後にさえ、蝸牛及び前庭の内リンパに残り得る。従って、ペニシリンでの長期治療は、内リンパ流体からスピロヘータ有機体の完全な根絶を達成するように要求され得る。
耳の不調(例えばOE、OM、耳梅毒)の治療用の全身性の抗菌剤投与は、血清中のより高い循環レベルでの薬物濃度で潜在的な不均衡を生成し、標的内耳器官構造においてより低いレベルを生成し得る。結果として、十分に治療に有効な量を内耳に送達するために、かなり大量の薬物がこの不均衡を克服することを要求される。さらに、バイオアベイラビリティは、しばしば肝臓による薬物の代謝のため減少する。それに加え、薬物の全身投与は、標的部位に十分な局所送達を生じさせるのに必要な血清量が高い結果として、全身毒性および有害な副作用の可能性を増すこともある。また、全身毒性は、肝臓の破壊、治療薬の処理の結果として生じ、投与された治療薬によって付与される任意の利益を効果的に打ち消してしまう毒性の代謝物を形成する。
抗菌剤(細胞に対し有毒であると一般的に理解される)の全身送達の毒性及び付随する望まれない副作用を克服するために、本明細書に記載されるものは、中耳及び/又は内耳構造への抗菌剤の局所送達のための方法および組成物である。例えば、前庭及び蝸牛器へのアクセスは、正円窓膜、卵円窓/あぶみ骨底板、輪状靭帯を含む、中耳または内耳によって生じ、耳嚢/側頭骨を通じる。更なる又は代替の実施形態では、中耳内の注入を介して、正円窓膜の上で、またはその近くで、耳の制御放出性製剤を投与することができる。他の実施形態では、耳の制御放出性製剤は、正円窓または蝸牛窓稜領域の中への、またはその近くの後の耳の切開および外科の処置を介する侵入を通じて、正円窓または蝸牛窓稜上で、またはその近くで投与される。または、耳の制御放出性製剤は、注射器および針を介して適用され、該針は鼓膜に挿入され、正円窓または蝸牛窓稜の区域に導かれる。
それに加え、内耳の局所的な治療はまた、乏しいpK特性、乏しい吸収率、低い全身放出、および/または毒性の問題を備えた、以前は望まれなかった治療薬の使用を利用可能にする。
内耳の中にある生物学的な血液関門と同様、抗菌剤製剤および組成物の局在性のターゲッティングのため、副作用の危険性は、以前に特徴づけられた有毒又は無効性の抗菌剤での治療の結果として減少される。抗菌剤組成物の局所的な投与は、抗生物質が全身で投与される場合、抗生物質耐性の進行に関する危険性と比較した抗生物質に対する耐性の進行の危険性を減らす。本明細書に記載の組成物は、例えば、治療レジメン(例えば抗生物質耐性の進行に応じた)を変更する必要なしに、例えば、小児において再発する耳部感染を含む、再発する耳の疾患または症状に効果的である。従って、本明細書の実施形態の範囲内で考慮されるものはまた、外耳炎、中耳炎、ラムゼイハント症候群、耳梅毒、AIED、メニエール病および前庭ニューロン炎を含む、耳の疾患または症状の治療における抗菌剤の使用であり、該抗菌剤は、抗菌剤の副作用または無効性のため、開業医によって以前に拒絶された治療薬を含む。
また、本明細書に開示の実施形態の範囲に含まれるものは、本明細書に開示の抗菌剤製剤及び組成物と併用して、追加で中耳及び/又は内耳に許容可能な薬剤を使用することである。使用する場合、前記薬剤は、回転性めまい、耳鳴り、難聴、平衡障害、感染、炎症反応またはそれらの組み合わせを含む、自己免疫障害から生じる難聴または平衡感覚の欠落、または聴覚または平衡感覚の機能不全の治療を補助する。従って、回転性めまい、耳鳴、難聴、平衡障害、感染、炎症反応またはそれらの組み合わせの効果を改善するか弱める薬剤も、本明細書に記載の抗菌剤と組み合わせて使用されるよう熟慮される。
幾つかの実施形態では、組成物はさらに即時放免薬剤として抗菌剤を含み、ここで即時放免抗菌剤は、制御放出性薬剤と同じ薬剤、異なる抗菌剤、追加の治療薬、またはその組み合わせである。幾つかの実施形態では、組成物は、追加の抗菌剤、抗炎症剤、コルチコステロイド、細胞毒性薬剤、抗TNF剤、コラーゲン、γグロブリン、インターフェロン、血小板活性化因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む、追加の治療薬をさらに含む。別の態様では、追加の治療薬は即時放免または制御放出性薬剤である。
幾つかの実施形態では、追加の治療薬は即時放免剤である。幾つかの実施形態では、追加の治療薬は制御放出性薬剤である。
したがって、本明細書に提供されるものは、中耳及び/又は内耳の構造を局所的に処置し、それにより、抗菌剤の全身投与の結果生じる副作用を避けるための、制御放出性抗菌剤の製剤および組成物である。局所的に適用される抗菌剤製剤および組成物は、中耳及び/又は内耳の構造に適合するものであり、所望の中耳及び/又は内耳の構造、例えば、蝸牛領域、または鼓室腔のいずれかに直接投与されるか、または、内耳の領域(正円窓膜、蝸牛窓稜または卵円窓膜を含むが、これらに限定されない)に直接つながっている構造に投与される。中耳及び/又は内耳の構造を特異的に標的とすることによって、全身的な治療の結果生じる有害な副作用が避けられる。さらに、制御放出性抗菌剤の製剤または組成物を与えて耳の疾患を処置することによって、耳の疾患を患う個人または患者に、抗菌剤の一定のおよび/または広範囲の供給源が与えられ、治療の変動性が減るか、またはなくなる。
治療薬の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬を注射し、中耳及び/又は内耳へと到達させる技術である。この技術(Schuknecht, Laryngoscope (1956) 66, 859-870)を用いた初期の成功にもかかわらず、いくつか難問は残る。例えば、正円窓膜(すなわち内耳の中への薬物吸収の部位)へのアクセスは、難しい(challenging)。
しかし、鼓室内への注射は、現在利用可能な処置レジメンでは対処できない、様々な認識されていない問題、即ち、外リンパと内リンパのモル浸透圧濃度とpHの変化、内耳構造に直接又は間接的に損傷を与える病原体及び内毒素の導入、等の問題を生み出す。当業者がこれらの問題を認識していない理由の一つは、認可された鼓室内組成物が存在していない、ということである。内耳は特殊な製剤の挑戦(challenges)を提供する。故に、体の他の部分のために開発された組成物は、鼓室内組成物に対する関わりがあまりないものである。
ヒトへの投与に適切な、耳の製剤に対する要求(例えば、無菌性レベル、pH、モル浸透圧濃度)を考慮している、従来技術のガイダンスは無い。複数の種にわたる動物の耳の間に、広範な解剖学的な差異が存在する。聴覚構造における種間の違いの結果、動物モデルの内耳疾患は、臨床認証用に開発されている治療法をテストするためのツールとして、しばしば信頼できない。
本明細書に提供されるものは、pH、モル浸透圧濃度、イオンバランス、無菌性、内毒素、及び/又は、発熱因子レベルの厳しい基準を満たす耳の製剤である。本明細書に記載の耳の組成物は、内耳の微環境(例えば、外リンパ)に適合するものであり、ヒトへの投与に適切なものである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、染料を備え、鼓室内治療の前臨床、及び/又は、臨床開発中に、侵襲的手法(例えば、外リンパの除去)の必要性を未然に防ぐ投与組成物の可視化を助ける。
本明細書に提供されるものは、標的とする耳の構造を局所的に治療し、それにより、抗菌剤製剤および組成物の全身投与の結果生じる副作用を避けるための、制御放出性抗菌剤の製剤および組成物である。局所的に適用される抗菌剤製剤および組成物並びにデバイスは、標的とする耳の構造に適合するものであり、所望の標的とする耳の構造、例えば、蝸牛領域、鼓室または外耳のいずれかに直接投与されるか、または、内耳領域(正円窓膜、蝸牛窓稜または卵円窓膜を含むが、これらに限定されない)に直接つながっている構造に投与される。耳の構造を特異的に標的とすることによって、全身的な処置の結果生じる有害な副作用が避けられる。さらに、臨床研究から、蝸牛の外リンパに薬物を長時間曝露する工程の利益は、例えば、治療薬を何度も与える場合に、突発性難聴の臨床上の有効性を高めることが示された。ゆえに、制御放出性抗菌剤の製剤または組成物を与えて耳の疾患を処置することによって、耳の疾患を患う個人または患者に、抗菌剤の一定のおよび/または広範囲の供給源が与えられ、治療の変動性が減るか、またはなくなる。したがって、本明細書に開示の1つの実施形態は、少なくとも1つの薬剤を確実に連続的に放出するように、様々な速度または一定速度で、少なくとも1つの抗菌剤を治療に有効な用量で放出させることが可能な組成物を提供することである。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の抗菌剤を、即時放免の製剤または組成物として投与する。他の実施形態では、抗菌剤を、徐放製剤として投与し、連続的または変化する様式、またはパルス様式、またはそれらの変形で放出する。さらに他の実施形態では、抗菌剤製剤を、即時放免製剤および徐放製剤として投与し、連続的または変化する様式、またはパルス様式、またはそれらの変形で放出する。この放出は、場合により、例えば、外側のイオン環境である、環境的な条件または生理学的な条件に随意に依存する(例えば、「Oros(登録商標)release system、Johnson & Johnson」を参照)。
加えて、本明細書に記載の耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤および治療を、治療が必要な個人の標的の耳領域(内耳を含む)に提供し、治療の必要な個人に経口用量の抗菌剤が投与される。幾つかの実施形態では、経口用量の抗菌剤を、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤を投与する前に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤が提供される時間中、用量を徐々に減らしていく。または、経口用量の抗菌剤を、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤を投与する間に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤が提供される時間中、経口用量を徐々に減らしていく。または、経口用量の抗菌剤を、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤を投与する間に投与し、次いで、耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の製剤が提供される時間中、経口用量を徐々に減らしていく。
加えて、本明細書に含まれる抗菌剤医薬組成物または製剤、あるいはデバイスは、担体、アジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤など)、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤も含む。このような担体、アジュバント、および他の賦形剤は、標的とする耳の構造体(複数)中の環境に適合するであろう。したがって、本明細書に記載の組成物およびデバイスに関して特に考慮されるものは、本明細書で考慮される耳の疾患を効果的に処置し、標的とする領域または区域での副作用を最小限にすることを可能にするために、耳毒性をなくすか、または耳毒性が最小限である担体、アジュバントおよび賦形剤である。
組成物またはデバイスの鼓室内の注入は、組成物またはデバイスを投与することができる前に扱われなければならない、様々な追加の問題を引き起こす。例えば、耳毒性である多くの賦形剤がある。別の方法(例えば、局所的)による送達用の活性剤を調剤する場合、これらの賦形剤が使用され得るが、その耳毒性の効果のため耳に投与される送達装置を調剤する場合、それらの使用は限定的か、少なくされるか、除去されるべきである。
制限しない例ではあるが、耳への投与のための薬剤を調剤する場合、以下の一般に用いられている溶媒の使用は、限定的か、少なくされるか、除去されるべきである:すなわち、アルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサン。故に、幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、アルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンがない、または実質的にない。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約50ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約25ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約20ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約10ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約5ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約1ppm未満の各々のアルコール、プロピレングリコールおよびシクロヘキサンを含む。
さらに、制限しない例ではあるが、耳への投与のための薬剤を調剤する場合、以下の一般に用いられている保存剤の使用は、限定的か、少なくされるか、除去されるべきである:すなわち、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサル。故に、幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルがない、または実質的にない。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約50ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約25ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約20ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約10ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約5ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約1ppm未満の各々の塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびチオマーサルを含む。
かつては治療上の調合剤(あるいは調合剤を投与するために利用されたデバイス)の成分を消毒した、特定の防腐剤は、耳の調合剤において限定的か、少なくされるか、除去されるべきである。例えば、酢酸、ヨウ素およびメルブロミンはすべて耳毒性であると知られている。さらに、クロルヘキシデン、一般に使用される防腐剤は、それが微量濃度(例えば0.05%)において高度に耳毒性であるよう、耳の調合剤(調合剤を投与するために使用されるデバイスを含む)の任意の成分を消毒するために、限定的か、少なくされるか、除去されるべきである。故に、幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンがないか、または実質的にない。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約50ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約25ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約20ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約10ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約5ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約1ppm未満の各々の酢酸、ヨウ素、メルブロミンおよびクロルヘキシデンを含む。
さらに、耳の調合剤は、耳毒性であると知られている様々な潜在的に一般の汚染物質の、特に低い濃度を必要とする。他の剤形は、これらの化合物に起因する汚染を制限しようとする間に、耳の調合剤が必要とする厳格な使用上の注意を必要としない。例えば、以下の汚染物質には、耳の調合剤がない、またはほとんどない:すなわち、ヒ素、鉛、水銀および錫。故に、幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスはヒ素、鉛、水銀および錫がないか、または実質的にない。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約50ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約25ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約20ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約10ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約5ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、約1ppm未満の各々のヒ素、鉛、水銀および錫を含む。
耳毒性を防ぐために、本明細書に開示の抗菌剤医薬組成物または製剤、或いはデバイスは、標的とする耳の構造の別個の領域を随意に標的とする。この別個の領域は、鼓室、前庭骨および前庭膜の迷路、蝸牛骨および蝸牛膜の迷路、内耳の中に位置する他の解剖学的構造または生理学的構造を含むが、これらに限定されない。
[特定の定義]
用語「耳に許容可能な」は、製剤、組成物、又は成分に関し、本明細書で使用されるように、治療される被検体の内耳(auris internaまたはinner ear)に対する有害な影響が持続しないことを含む。「耳に医薬的に許容可能な」とは、本明細書で使用されるように、内耳(auris interna又はinner ear)に関連した化合物の生物活性または性質を無効化せず、および内耳(auris interna又はinner ear)に対する毒性を相対的に減らす、または減らす担体または希釈剤のような物質を指す。すなわち、望ましくない生物学的効果を生じない、またはこの物質が含まれる組成物のいずれかの成分と、有害な様式で相互作用しないように、この物質を個人に投与する。
本明細書で使用されるように、特定の化合物または医薬組成物を投与することによって、特定の耳の疾患、不調または疾病の症状を改善すること、または減らすことは、永続的であれ一時的であれ、上述の化合物または組成物の投与が原因の、またはそれらに関連する、重篤度を下げること、発症を遅らせること、進行を遅らせること、持続時間を短くすること、を指す。
「酸化防止剤」は、耳に医薬的に許容可能な酸化防止剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、トコフェロールを含む。特定の実施形態では、酸化防止剤は、必要な場合、化学安定性を高める。また、本明細書に開示の抗菌剤と組み合わせて使用する薬剤を含む、特定の治療薬の耳毒性の効果を中和するために、酸化防止剤を使用する。
「内耳(auris interna)」は、蝸牛および前庭の迷路、蝸牛と中耳とを接続する正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
「内耳のバイオアベイラビリティ」は、本明細書に開示する化合物の投与された用量が、試験される動物又はヒトの内耳で利用可能になるものの、割合を指す。
「中耳(auris media)」は、鼓室、耳小骨、中耳と内耳を接続する卵円窓を含む、中耳(middle ear)を指す。
「平衡障害」は、ふらつきを感じたり、動いているような感覚を有するような状態を被検体に引き起こす、不調、病気、又は、疾病を指す。この定義には、めまい、回転性めまい、不均衡、失神性めまいが含まれている。疾患は、ラムゼイハント症候群、メニエール病、デバルクマン(mal de debarquement)、良性発作性頭位めまい症、迷路炎を含む平衡疾患を含むが、これらに限定されない。
「血漿濃度」は、被検体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
「担体物質」は、抗菌剤、内耳、及び耳に許容可能な医薬製剤の放出特性とに、適合する賦形剤である。前記担体物質は、例えば、結合剤、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「耳に医薬的に適合する担体物質」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、二リン酸カリウム、セルロースおよびセルロース接合体、糖類、ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどを含むが、これらに限定されない。
用語「希釈剤」は、送達前に抗菌剤を希釈するために使用され、内耳に適合させる化学化合物を指す。
「分散剤」および/または「粘度調節剤」は、液体媒体を通る抗菌剤の拡散性および均質性を制御する物質である。拡散促進剤/分散剤の例は、以下のものを含むがこれらに限定されない。すなわち、親水性重合体、電解液、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業上、Plasdone(登録商標)として知られている)、炭水化物に基づいた分散剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばHPC、HPC-SLおよびHPC-L)など)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばHPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15MおよびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸塩ステアリン酸塩(HPMCAS)、非晶質のセルロース、 ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、 エチレンオキシドおよびホルムアルデヒド(チロキサポールとしても知られている)を備えた4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー、ポロクサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである);及びポロキサミン(例えば、ポロキサミン908(登録商標)としても知られている、テトロン酸908(登録商標)であり、プロピレンオキシドの連続する追加と、エチレンジアミンに対するエチレンオキシドに由来した、四官能性のブロックコポリマーである(BASF Corporation, Parsippany, N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300から6000、又は約350から4000、或いは約7000から約5400までの分子量を有している)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ゴム(例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン)、ショ糖、セルロース化合物(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム)、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、およびそれらの組み合わせを含む。セルロースまたはトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示の抗菌剤の、リポソーム分散物と自己乳化性分散物とに有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、ミリスチン酸イソプロピルである。
「薬物吸収」又は「吸収」は、投与の局所的な部位(ほんの一例として、内耳の正円窓膜)から、障壁(以下に示すような正円窓膜)を通り、内耳(auris interna又はinner ear)構造へと抗菌剤を移動するプロセスを指す。用語「同時投与」等は、本明細書で使用されるように、抗菌剤の単一の患者への投与を包含することを意味しており、抗菌剤が同じ投与経路又は異なる投与経路で投与されるか、又は同時又は異なる時間に投与される、処置レジメンを含むことが意図されている。
用語「有効な量」又は「治療に有効な量」は、本明細書で使用されるように、処置されるべき疾患又は疾病の1以上の症状を、ある程度まで緩和すると予想されるように投与される、活性薬剤又は耳薬剤(例えば、抗菌剤、抗炎症剤)の十分な量を指す。例えば、本明細書に開示した抗菌剤を投与した結果、耳鳴又は平衡障害の徴候、症状または原因が減り、および/または軽減される。例えば、治療用途で「有効な量」は、過度の有害な副作用を生じずに、疾患症状を減らすか、または改善するのに必要な抗菌剤(本明細書に開示した製剤を含む)の量である。用語「治療に有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示した抗菌剤の「有効な量」は、過度の有害な副作用を生じずに、望ましい薬理学的効果または治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」または「治療に有効な量」は、幾つかの実施形態では、投与される化合物の代謝、被検体の年齢、体重、全体的な状態、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、主治医の判断により、被検体ごとに異なることが理解される。また、薬物動態学および薬理学に基づいて、拡張放出型の投薬形式における「有効な量」が、即時放免投薬形式における「有効な量」とは異なることがあり得ることが理解される。
用語「増強する(enhance)」または「増強すること(enhancing)」は、抗菌剤の所望の効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くすること、または任意の有害な症状(例えば、治療薬を投与した結果生じる)を減らすことを指す。したがって、本明細書に開示する抗菌剤の効果を高めることに関し、用語「増強すること」は、本明細書に開示する抗菌剤と組み合わせて使用する他の治療薬の効果の有効性または持続時間のいずれかを増やすか、または長くする能力を指す。「増強するのに有効な量」は、本明細書で使用されるように、所望の系で別の治療薬又は標的耳構造の抗菌剤の効果を高めるのに十分な、抗菌剤又は他の治療薬の量を指す。患者に用いる場合、この用途で有効な量は、疾患、不調または疾病の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、治療する医師の判断によって左右されるであろう。
用語「阻害すること」は、疾病の進行、例えば、または治療を必要とする患者の疾病の進行を予防するか、遅らせるか、または逆行させることを指す。
用語「キット」及び「製造品」は、同義語として用いられる。
「薬理学」は、中耳及び/又は内耳内の所望部位での薬物の濃度に関して、観察される生体応答を決定する因子を指す。
「薬物動態学」は、中耳及び/又は内耳内の所望部位での適切な薬物濃度の獲得および維持を決定する因子を指す。
本明細書で使用されるように、用語「抗菌剤」は、微生物の成長、急増、又は、増殖を阻害し、又は微生物を殺す化合物を指す。適切な「抗菌剤」は、抗菌物質(細菌に対し効果を有する)、抗ウィルス剤(ウィルスに対し効果を有する)、抗真菌剤(真菌に対し効果を有する)、抗原虫剤(原虫に対し効果を有する)、及び/又は、微生物寄生体のいずれかの分類に対する抗寄生虫剤である。「抗菌剤」は、有毒又は細胞増殖抑制性であることによるものを含む、微生物に対する任意の適切な機構によって作用することができる。
成句「抗菌性小分子」は、比較的少ない分子量、例えば、1000分子量以下の、抗菌化合物を指す。前記化合物は、耳の不調、特に、病原性微生物によって引き起こされた耳の不調の処置に有効なものであり、本明細書に記載の製剤に使用するのに適切なものである。適切な「抗菌性小分子」は、抗バクテリア、抗ウィルス、抗真菌、抗原虫、抗寄生虫小分子、を含んでいる。
用語「耳の介入治療」は、1つ以上の耳構造への外部損傷または外傷を意味し、移植、耳の外科手術、注射、カニューレ挿入などを含んでいる。移植は、内耳または中耳用の医療用具を含み、その例は、移植蝸牛刺激装置、聴力を与えるデバイス、聴力改善デバイス、鼓膜切開チューブ、短い電極、ミクロの人工装具、またはピストン式のような人工装具;針;幹細胞移植;薬物送達デバイス;任意の細胞に基づいた治療;などを含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術、蝸牛形成術、迷路切開術、乳突起削開術、あぶみ骨切除手術、あぶみ骨筋腱切開術、内リンパの強膜切開、等を含んでいる。注射は、鼓室内の注射、蝸牛内の注射、正円窓膜をわたる注射、等を含んでいる。カニューレ挿入は、鼓室内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、又は前庭のカニューレ挿入等を含んでいる。
予防上の適用において、本明細書中に記載の抗菌剤を含む組成物は、特定の疾患、不調、又は疾病の影響を受け易く、またそれ以外にその危険に曝されている患者に投与される。例えば、前記疾病は、外耳炎、中耳炎、ラムゼイハント症候群、耳梅毒、AIED、メニエール病、及び前庭ニューロン炎を含むが、これらに限定されない。このような量は、「予防に有効な量または用量」と定義される。この使用において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに左右される。
本明細書で使用されるように、「医薬デバイス」は、耳に投与する際に、本明細書に記載の活性薬剤を持続放出するための容器を提供する、本明細書に記載の任意の組成物を含む。
用語「実質的に少量の分解生成物」は、活性薬剤の分解生成物が、活性薬剤の5重量%未満であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の分解生成物が、活性薬剤の3重量%未満であることを意味する。また更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の分解生成物が、活性薬剤の2重量%未満であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の分解生成物が、活性薬剤の1重量%未満であることを意味する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤の中にある、任意の個々の不純物(例えば金属不純物、活性薬剤及び/又は賦形剤などの分解生成物)は、活性薬剤の5重量%未満、2重量%未満、または1重量%未満である。幾つかの実施形態では、前記製剤は、製造と貯蔵の後の色の貯蔵または変化中に沈殿物を包含する。
本明細書に使用されるように、「本質的に微粉化された粉末の形態で」は、ほんの一例ではあるが、活性薬剤の70重量%より多くが、活性薬剤の微粉化された粒子状物質の形態であることを含む。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の80重量%より多くが、活性薬剤の微粉化された粒子状物質の形態であることを意味する。更なる実施形態において、前記用語は、活性薬剤の90重量%より多くが、活性薬剤の微粉化された粒子状物質の形態であることを意味する。
平均滞留時間(MRT)は、活性薬剤(例えば微生物の薬剤)の分子が投薬の後に耳の構造に存在する平均時間である。
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと変換される抗菌剤を表す。特定の実施形態では、プロドラッグは、1つ以上の工程またはプロセスによって、上述の化合物の生物学的、薬学的または治療的に活性な形態へと、酵素的に代謝される。プロドラッグを製造するために、薬学的に活性な化合物を修飾すると、その結果インビボでの投与時に活性化合物が再生される。1つの実施形態では、プロドラッグは、薬物の代謝安定性または移動特性を変え、副作用または毒性を消すか、または薬物の他の特性または性質を変えるように設計される。本明細書で提供される化合物は、幾つかの実施形態では、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
「可溶化剤」は、耳に許容可能な化合物を指す。前記化合物は、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド等の、本明細書に記載の抗菌剤の溶解度を補助又は増加するものである。
「安定化剤」は、任意の酸化防止剤、緩衝剤、酸、防腐剤などのような、内耳の環境と適合する化合物を指す。安定化剤は、(1)賦形剤と、容器または送達系(注射器またはガラス瓶を含む)との適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、または(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかの薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「定常状態」は、本明細書で使用されるように、内耳に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔の間に排泄される薬物の量と等しい場合、標的とする構造内での薬物曝露のレベルが水平状態になるか、又は一定になることである。
本明細書で使用されるように、用語「被検体」は、動物、好ましくは、ヒトまたは非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。
患者、被検者という用語は、互換的に使用されることがある。
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクセートナトリウム、Tween60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロクサマー(polaxomer)、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)(BASF))などのような、耳に許容可能な化合物を指す。幾つかの他の界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、及び植物油(例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルキルフェニルエーテル(例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40)を含む。幾つかの実施形態では、界面活性剤は、他の目的のため、物理的安定性を高めるように含まれる。
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」又は「処置(treatment)」は、本明細書で使用されるように、疾患または疾病(例えば耳鳴)、症状を軽減し、弱めるか、または改善すること、さらなる症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善するか、または予防すること、疾患または疾病を阻害すること(例えば、疾患または疾病の進行を止めること)、疾患または疾病を緩和すること、疾患または疾病を後退させること、疾患または疾病によって生じる状態を緩和すること、または、疾患または疾病の症状を予防的及び/又は治療的のいずれかで止めること、を含む。
本明細書に記載の方法及び組成物との、他の目的、特徴、利点は、後述する詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、発明の詳細な説明と特定の実例とは、特定の実施形態を示すものであるが、説明のためだけに与えられたものであることを理解されるべきである。
[耳の解剖]
図4に示すように、外耳は、この器官の外側部分であり、耳介(pinna(auricle))と、耳道(外耳道)と、鼓膜(tympanic menbrane(ear drumとしても知られている))の外側に面する部分とで構成されている。頭部の側面上で目に見える外耳の肉質部分である耳介は、音波を集め、音波を耳道に向かわせる。したがって、外耳の機能は、部分的に、音波を集め、鼓膜および中耳に向かわせることである。
中耳は、空気で満たされた空洞であり、鼓室と呼ばれ、鼓膜の背後にある。鼓膜(tympanic membrane(ear drumとしても知られている))は、外耳と中耳とを分ける薄い膜である。中耳は、側頭骨の中にあり、この空間の中に、槌骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳骨(耳小骨)が含まれている。耳小骨は、小さな靱帯を介して結合しており、鼓室の空間をわたり架橋を形成している。槌骨は、一端で鼓膜に付いており、前端でキヌタ骨に結合しており、次いで、アブミ骨に結合している。アブミ骨は、卵円窓に付いており、2つの卵円窓の1つは、鼓室内に位置している。輪状靱帯として知られる線維組織層は、アブミ骨を卵円窓に接続している。外耳からの音波は、まず、鼓膜を振動させる。この振動が、耳小骨および卵円窓を通って蝸牛に伝わり、内耳の流体にこの動きが伝わる。したがって、耳小骨は、鼓膜と、流体に満たされた内耳の卵円窓とを機械的に結合するように配置されており、ここでは、さらなる処理のために、音が内耳に伝わり、変換される。耳小骨、鼓膜または卵円窓が硬化し、硬直するか、または移動できなくなると、難聴、例えば、耳硬化症、またはアブミ骨の硬直を引き起こす。
また、鼓室は、耳管を経て、咽喉にも接続している。耳管は、外気と中耳の空洞との圧力を等しくする能力を付与する。正円窓は、内耳の構成要素であるが、鼓室内にもつながっており、内耳の蝸牛へと開口している。正円窓は、外側層または粘液層、中間層または線維層、内側膜の3つの層からなる正円窓膜によって覆われており、蝸牛の流体に直接つながっている。それゆえ、正円窓は、内側の膜を介して、内耳と直接つながっている。
卵円窓および正円窓での動きは、相互接続されており、すなわち、アブミ骨の骨が、鼓膜から卵円窓への動きを伝えることで、内耳の流体に対して内側に動くにつれて、正円窓(正円窓膜)が、対応するように押し出され、蝸牛の流体と離れる。正円窓のこの動きによって、蝸牛内の流体が動くことが可能となり、次いで、蝸牛の内側の有毛細胞が移動し、聴覚シグナルが変換されることが可能となる。正円窓膜が硬化し、硬直すると、蝸牛の流体が移動できなくなるため、難聴が生じる。近年の研究は、卵円窓を通る正常な伝導経路を迂回させ、増幅させたインプットを蝸牛空間に与える、正円窓に医療用変換器を移植することに注目が集まっている。
聴覚シグナルの変換は、内耳で起こる。流体で満たされた内耳(auris internaまたはinner ear)は、蝸牛の器官および前庭の器官の2つの主要な要素からなる。内耳は、頭蓋骨の側頭骨にある入り組んだ一連の経路である骨迷路(osseous labyrinthまたはbony labyrinth)内にある部分に位置している。前庭の器官は、平衡感覚の器官であり、3つの半円状の管と、前庭とからなっている。この3つの半円状の管は、空間の3つの直交面に沿った頭部の動きを、流体の動きと、その後の膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚器官によるシグナル処理とによって検出することができるように、互いに対して配列されている。膨大部稜は、有毛細胞と支持細胞とを備えており、クプラと呼ばれる半円型のゼラチン状の塊によって覆われている。有毛細胞の毛は、クプラに包まれている。半円状の管は、動的平衡、回転または角運動の平衡状態を検出する。
頭部を迅速に回転させると、半円状の管は、頭部とともに動くが、膜状の半円状の管の中にある内リンパ液は、動かずに留まる傾向がある。内リンパ液は、クプラを押し、片側に傾く。クプラが傾くにつれて、クプラが、膨大部稜の有毛細胞の幾つかの毛を曲げ、これが、感覚上の刺激の引き金となる。各々の半円状の管は、異なる面に位置しているため、各々の半円状の管の対応する膨大部稜は、頭部の同じ動きに対して異なって応答する。これにより、刺激の寄せ集めが作られ、この寄せ集めが、内耳神経の前庭枝にある中枢神経系に伝わる。中枢神経系は、この情報を解釈し、平衡を維持するのに適切な反応を開始する。中枢神経系の中で、重要なのは小脳であり、平衡および均衡の感覚に介在する。
前庭は、内耳の中心部分であり、静的平衡または重力に対する頭部の位置を確認する、有毛細胞を有する機械的受容器を備えている。静的平衡は、頭部が動いていないか、または直線状に動いているときに役割を果たす。前庭の膜状迷路は、卵形嚢および球形嚢の2つの嚢状の構造に分かれる。各々の構造は、同様に、嚢斑と呼ばれる小さな構造を含有しており、これは、静的平衡の維持に関与している。嚢斑は、感覚有毛細胞からなり、感覚有毛細胞は、嚢斑を覆うゼラチン状の塊(クプラと似たもの)に包まれている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層の表面に埋め込まれている。
頭部が直立位置にある場合、毛は、斑に沿って真っ直ぐになっている。頭部が傾くと、ゼラチン状の塊および耳石が、これに対応して傾き、斑の有毛細胞の幾つかの毛を曲げる。この曲げ動作によって、中枢神経系に対してシグナル刺激が開始され、これが、内耳神経の前庭枝を経て伝わり、次いで、平衡を維持するために、適切な筋肉に対し運動インパルスが中継される。
蝸牛は、聴覚に関連する、内耳の部分である。蝸牛は、先が細くなった管状の構造であり、カタツムリに似た形状に巻かれている。蝸牛の内側は、3つの領域に分かれており、前庭膜および基底膜の位置によってさらに明確にされている。前庭膜の上の位置は、前庭階であり、卵円窓から蝸牛頂部まで伸びており、カリウム体積が低く、ナトリウム体積が高い水溶液である外リンパ液を含有する。基底膜は、鼓室階の領域を明確にしており、蝸牛頂部から正円窓まで伸び、また外リンパを含有している。基底膜は、数千の硬い繊維を含有しており、正円窓から蝸牛頂部まで、徐々に長くなっている。音によって活性化されると、基底膜の線維が振動する。前庭階と鼓室階との間に蝸牛管があり、蝸牛頂部で嚢が閉じて途切れる。蝸牛管は、内リンパ液を含有しており、この内リンパ液は、脳脊髄液と似ており、カリウムが多い。
聴覚の感覚器官であるコルチ器官は、基底膜上にあり、蝸牛管の方へ上方に向かって伸びている。コルチ器官は、有毛細胞を含有しており、遊離面から伸びる毛状突起を有しており、蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞には軸索が存在しないが、内耳神経の蝸牛枝を形成する感覚神経線維に囲まれている(脳神経VIII)。
上記のように、楕円形の窓としても知られる卵円窓は、アブミ骨とつながっており、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパおよび前庭階/鼓室階を経て、流体で満たされた蝸牛の内圧を高め、次いで、正円窓膜が応答して膨らむ。卵円窓の内側が加圧されること/正円窓が外側に膨らむことが協働することによって、蝸牛の内圧が変わることなく、蝸牛内の流体を動かすことができる。しかし、振動が、外リンパを介して前庭階へと伝わるにつれて、前庭階壁内で対応する振幅が作られる。これらの対応する振幅は、蝸牛管の内リンパを通じて伝わり、基底膜へと伝わる。基底膜が振動するか、または上下に移動すると、コルチ器官が、それに伴って動く。次いで、コルチ器官の有毛細胞受容体が、蓋膜に対して動き、蓋膜を機械的に変形させる。この機械的な変形によって、神経刺激が開始し、内耳神経を経て中枢神経系に伝わり、受け取られた音波は、後で中枢神経系によって処理されるシグナルへと機械的に変換される。
[疾患]
内耳、中耳、外耳の不調を含む耳の不調は、難聴、眼振、回転性めまい、耳鳴り、炎症、腫れ、感染、うっ血を含むが、これらに限定されない症状を作り出す。これらの不調は、感染、損傷、炎症、腫瘍、薬物または他の化学薬剤に対する有害な反応のような、多くの原因を有し得る。
[耳の炎症性疾患]
水泳選手の耳とも指称される、外耳炎(OE)は、外耳の炎症及び/又は感染である。OEは、外耳中のバクテリアによってしばしば引き起こされる。それは、外耳道の皮膚に損傷を与えた後に、感染を確立する。OEを起こす主な病原性微生物は、緑膿菌と黄色ブドウ球菌であるが、この疾病は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の、多くの他の株の存在に関連している。OEはまた、鵞口瘡カンジダとコウジカビを含む、外耳中の真菌感染症によって時々引き起こされる。OEの症状は耳痛、腫れ、および耳漏を含んでいる。この疾病がかなり進行すると、OEは、腫れと漏出との結果として一時的な伝音性難聴を起こし得る。
OEの処置は、外耳道からいっそう悪化する病原体を除去し、炎症を少なくする工程を含み、該工程は、抗炎症剤(例えばステロイド)と共に、抗菌剤(例えば抗菌物質および抗真菌剤)を組み合わせて投与することにより通常遂行される。OEの処置用の典型的な抗菌物質は、アミノグリコシド(例えばネオマイシン、ゲンタマイシンおよびトブラマイシン)、ポリミキシン(例えばポリミキシンB)、フルオロキノロン(例えばオフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン)、セファロスポリン(例えばセフロキシム、セファクロル(ceflacor)、セフプロジル、ロラカルベフ、セフィンディール(cefindir)、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン(cefibuten)およびセフトリアキソン)、ペニシリン(例えばアモキシシリン、アモキシシリンクラブラン、および耐ペニシリナーゼ性のペニシリン)、およびそれらの組み合わせを含んでいる。OEの処置のための典型的な抗真菌剤は、クロトリマゾール、チメロサール(thimerasol)、酢酸m-トリル、トルナフタート、イトラコナゾール、およびそれらの組み合わせを含む。酢酸はまた、単体で、そして、他の薬剤と組み合わせて、細菌性と真菌性の感染を処置するために、耳に投与される。点耳法が、活性薬剤の投与用のビヒクルとしてしばしば用いられる。耳の腫れが、実質進行し、点耳法が、外耳道へと実質浸透しない場合、ウィックが、処置溶液の浸透を促進するため外耳道へと差し込まれる。経口抗生物質はまた、顔と首とに広がる、広範な軟組織の腫れがある場合に、投与される。OEの痛みが極端にひどく、その結果、正常な活動(例えば、睡眠)に支障をきたす場合、局所鎮痛剤又は経口麻薬等の鎮痛剤が、根底にある炎症と感染とが軽減されるまで、投与される。
とりわけ、点耳法(ネオマイシンを含有している点耳法等)の幾つかの種類は、外耳道に安全かつ有効に使用されるが、刺激を起こし、中耳に対し有害なものでもあり、前記局所用製剤は、鼓膜に損傷がないことが分かっていない場合に限り使用されない、ことに注意を要する。OEの処置のための、本明細書に開示の製剤の利用は、鼓膜が損傷を受けていないときであっても、中耳に損傷を与える危険性のある活性薬剤の使用を可能にするものである。特に、本明細書に開示された制御放出性製剤は、改良された保持時間で外耳に局所的に適用され得るものであり、故に、活性薬剤が外耳から中耳へ漏れ出る心配をなくすものである。更に、ネオマイシンなどの聴覚毒性のある薬剤の使用時に、耳の保護が追加され得る。
本明細書に開示の抗菌性組成物を用いる、深刻なOEの処置、特に、高い粘性及び/又は粘膜付着性の製剤は、耳ウィック(ear wick)の広範な使用の必要を無くすものでもある。特に、本明細書に開示の組成物は、製剤技術の結果として、外耳道での保持時間が増加されており、故に、外耳内でそれらの存在を維持するデバイスの必要性を無くす。製剤は、針又は点耳装置によって外耳に適用され、活性薬剤は、耳ウィックの補助を受けずに炎症部位にて維持され得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の抗菌剤組成物は、抗炎症剤をさらに含み、外耳炎の治療に役立つ。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示された抗菌製剤を用いるOEの処置は、肉芽状鼓膜(鼓膜緊張部の慢性炎症によって特徴付けられた、OEの特定の形態)の処置を含んでいる。鼓膜の外側上皮と、根底にある繊維層とは、肉芽組織を増殖することによって置き換えられる。主症状は、悪臭耳漏である。種々の細菌と菌類(プロテウス種、シュードモナス種を含む)とが疾病を引き起こす。従って、抗菌剤と抗真菌剤を含んでいる、本明細書に開示される抗菌剤製剤は、肉芽状鼓膜の処置に役立つ。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される抗菌製剤を用いるOEの治療は、慢性的な狭窄性外耳炎の治療を含む。慢性的な狭窄性外耳炎は、典型的には、細菌又は菌類によって起こされる、繰り返される感染により徴付けられるものである。初期症状は、外耳道のかゆみ、耳漏、慢性の腫れ、である。抗菌剤と抗真菌剤とを含んでいる、本明細書に開示される抗菌剤の製剤は、慢性的な狭窄性外耳炎の処置に役立つ。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される抗菌製剤を用いるOEの処置は、悪性、又は、壊死性の外耳炎(側頭骨、その周りの骨に関する感染)を含んでいる。悪性外耳道炎は、典型的には外耳炎の合併症である。悪性外耳道炎は、免疫不全を患う人、特に糖尿病を患う年配の人に、主として生じる。悪性の外耳炎は、緑膿菌によってしばしば起こされる。治療は、可能な場合には、抗菌治療と鎮痛剤と共に、免疫抑制作用の矯正を典型的に伴う。故に、本明細書に開示されている抗菌剤の製剤は、悪性、又は、壊死性の外耳炎の処置に役立つ。
中耳炎(OM)(急性中耳炎(AOM)、慢性中耳炎、滲出性中耳炎(OME)、再発性急性中耳炎(RAOM)、滲出性慢性中耳炎(COME)を含む)は、大人と子供の双方に影響を及ぼす疾病である。OMの感受性は多因子性であり複雑なものであり、環境因子、微生物因子、宿主因子を含む。細菌感染は、肺炎連鎖球菌感染に起因する事例の40%より多い、OMの事例の大きな割合を占める。しかし、ウィルスは、他の微生物因子と同様、OM疾病の割合を占めるものでもある。幾つかの例では、中耳炎は、例えば炎症に対する、次にアレルギー、上気道感染症(URTI)、外傷またはその他同種のものに対する、解剖の閉塞によりもたらされる、耳管機能障害に関係している。
滲出性中耳炎(OME)は、粘液状又は漿液状のいずれかであり得る、中耳の非化膿性の滲出液により特徴付けられる。症状は、難聴または耳閉塞感に通常関わる。小児では、難聴は一般に穏やかで、オーディオグラムによってのみしばしば検知される。漿液性中耳炎は、大気圧に関連する中耳圧力の迅速な減少の結果として、浸出液形成によって引き起こされた、特定の種類のOMEである。
OMは、ウィルス、細菌、又はその双方によって生じるものであるので、その正確な原因を同定することがしばしば困難であり、それ故、もっとも適切な処置を同定することが困難となる。OMの処置オプションは、以下の抗生物質を含んでいる。即ち、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アモキシシリン‐クラブラン酸)、クラブラン酸(clavulanate acid)、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、フルオロキノロン(例えば、オフロキサシン、 シプロフロキサシン、 レボフロキサシン、トロバフロキサシン)、セファロスポリン(例えば、セフロキシム、セフラクロル(ceflacor)、セフプロジル、ロラカルベフ、セフィンディール(Cefindir)、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフトリアキソン)、マクロライド、アザライド(azalides)(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、スルフォンアミド、およびそれらの組み合わせ、を含んでいる。外科的介入治療(鼓膜切開法、鼓膜を介して患者の中耳へと鼓膜切開管を挿入し、液体を排出し、外耳と内耳との圧力平衡をとる手術、を含む)もまた、利用可能である。解熱剤、鎮痛剤(ベンゾカイン、イブプロフェン、アセトアミノフェンを含む)もまた、付随的な熱又は痛みの影響を処置するために処方される。抗菌剤又は抗真菌剤を含む、本明細書に開示された抗菌剤組成物は、中耳炎(OM)の処置に役立ち、中耳炎は、急性中耳炎(AOM)、慢性中耳炎、滲出性中耳炎(OME)、再発性急性中耳炎(RAOM)、滲出性慢性中耳炎(COME)、分泌性中耳炎、および慢性分泌性中耳炎などを含んでいる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の抗菌剤組成物は、抗炎症剤をさらに含み、中耳炎(OM)の処置に役立つ。中耳炎は、急性中耳炎(AOM)、慢性中耳炎、滲出性中耳炎(OME)、再発性急性中耳炎(RAOM)、滲出性慢性中耳炎(COME)、分泌性中耳炎、および慢性分泌性中耳炎などを含んでいる。
原因物質(インターロイキンとTNFとを含む)に関わらず、サイトカイン産生の増加は、OMに苦しむ個人の排水物(effluent media)で観察された。IL-1β、IL-6、TNF-αは、ウィルスと細菌との感染後の、急性炎症反応を促進させる急性期サイトカイン(acute-phase cytokines)である。さらに、より高いTNF-αレベルは、慢性OMの場合のTNF-αに対する役割を示し、複数の鼓膜切開管設置の経緯に関係する。最終的に、TNF-αとインターロイキンの直接注入が、モルモットモデルに中耳炎を導くことを示した。これらの研究は、サイトカインが中耳内のOMの原因と、維持を行う、という役割を支持するものである。故に、OMの処置は、病原体を削除し、炎症の症状を処置する、抗炎症剤と共に、抗菌剤を使用することを含む。前記処置は、本明細書に開示される抗菌製剤と共に、ステロイド、TNF-α阻害剤、血小板活性化因子アンタゴニスト、一酸化窒素合成酵素阻害剤、ヒスタミンアンタゴニスト、それらの組み合わせを使用することを含む。
乳様突起炎は、耳の後ろの側頭骨の部分にある、乳様突起の感染症である。乳様突起炎は、未処置の急性中耳炎により典型的に引き起こされる。乳様突起炎は、急性または慢性であり得る。症状は、耳痛、紅斑、耳漏と同様に、乳様突起における痛み、腫れ、圧痛を含む。乳様突起炎は、中耳から乳様突起空気胞へと広がる細菌が原因で典型的に起こる。そこでは、炎症は、骨構造に損傷を与えてしまう。最も一般的な病原性微生物は、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌である。従って、細菌に効果的である抗菌剤を含んでいる、本明細書に開示されている抗菌剤製剤は、急性乳様突起炎と慢性乳様突起炎とを含む、乳様突起炎の処置に役立つ。
水疱性鼓膜炎は、マイコプラズマ菌を含む、種々の細菌やウィルスによって生じる鼓膜の感染症である。該感染症は、鼓膜とその近くの管の炎症を誘因し、鼓膜の上に水膨れが形成される。水疱性鼓膜炎の初期症状は、痛みであり、この痛みは、鎮痛剤投与によって和らげられる。抗菌剤と抗ウィルス剤とを含んでいる、本明細書に開示されている抗菌剤製剤は、水疱性鼓膜炎の処置に役立つ。
耳管カタル、又は耳管炎は、結果としてカタルの増強を起こす、耳管の炎症と腫れから引き起こされる。従って、本明細書に開示されている抗菌製剤は、耳管炎の処置に役立つ。
例えば、漿液性内耳炎といった、迷路炎は、前庭器官を収納する1以上の迷路に関する、内耳の炎症である。初期症状は、回転性めまいであるが、この疾病はまた、難聴、耳鳴り、眼振によって特徴付けられる。迷路炎は、おそらく、急性のものでは、1乃至6週間続き、ひどいめまいと嘔吐とを伴い、又は慢性のものでは、数ヶ月又は数年続く。迷路炎は、ウィルス又は細菌感染によって、典型的に引き起こされる。従って、抗菌剤と抗ウィルス剤とを含んでいる、本明細書に開示される抗菌製剤は、迷路炎の処置に役立つ。
顔面神経炎は、神経炎の1つの形態、抹消神経系の炎症であり、顔面神経を苦しめる。疾病の初期症状は、刺痛と灼熱感と、罹患神経の刺すような痛みと、である。ひどい場合には、知覚麻痺、感覚消失、付近の筋肉の麻痺が、ある。疾病は、帯状疱疹又は単純ヘルペスウィルス感染症によって典型的に起こされるが、例えばハンセン病といった、細菌感染にも関連している。従って、抗菌剤と抗ウィルス剤とを含んでいる、本明細書に開示される抗菌製剤は、顔面神経炎の処置に役立つ。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されている抗菌製剤は、側頭骨放射線骨壊死の処置に役立つ。
[ラムゼイハント症候群(耳帯状ヘルペス)]
ラムゼイハント症候群は、聴神経の帯状ヘルペス感染によって引き起こされる。この感染は、激しい耳痛、難聴、回転性めまい、神経によって供給された顔または首の皮膚と同様に、外耳道中、外耳上の水膨れを引き起こしうる。顔面筋はまた、顔面神経が腫れによって圧迫される場合に麻痺することがある。難聴は、数日から数週まで通常続く、回転性めまい症状を伴い、一時的または永続的なものであり得る。
ラムゼイハント症候群の治療は、ガンシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル、およびバラシクロビルのような抗ウィルス剤の投与を含んでいる。抗ウィルス剤は、疼痛を和らげるコルチコイド、鎮痛剤および麻薬、並びに回転性めまいを抑止するスコポラミン、ジアゼパム(diazempam)、または他の中枢神経系薬剤のような、感染症状を処置する薬剤と組み合わせて与えられ得る。カプサイチン、リドカインパッチおよび神経ブロックも使用されてもよい。手術は顔面神経麻痺を和らげるために圧縮した顔面神経上で行われうる。
[耳梅毒]
梅毒は性病であり、スピロヘータ梅毒トレポネーマ(膜質の迷路炎および二番目に髄膜炎による耳の不調、特に蝸牛前庭の不調をもたらし得る)によって引き起こされる。獲得性と先天性梅毒の両方は耳の不調を引き起こしうる。梅毒から結果として生じる蝸牛前庭の不調の症状は、AIEDとメニエール病のような他の耳の不調の症状にしばしば類似し、耳鳴、聴覚喪失、回転性めまい、倦怠感、咽頭炎、頭痛および発疹を含んでいる。梅毒感染は、先天性の出生前の難聴を生じさせ、成人における突発難聴と同様に、アメリカ合衆国の100,000人の出生数につきおよそ11.2人がその影響を受ける。
耳梅毒(耳の症状を示す梅毒)の処置は、典型的にはステロイド(例えばプレドニゾロン)および抗菌物質(例えばペニシリンGベンザチン(BICILLIN LA(登録商標))、ペニシリンGプロカイン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、セフトリアキソン、アジスロマイシン)、との組み合わせを含んでいる。前記処置は、スピロヘータ有機体を根絶するのに効果的であり得る。しかしながら、トレポネーマは、身体中の他の部位からの根絶の後でさえ、蝸牛及び前庭の内リンパに残り得る。従って、ペニシリンでの長期処置は、内リンパ流体からスピロヘータ有機体の完全な根絶を達成するように要求され得る。また、梅毒の激しい又は進んだ症例の場合には、プロベネシドのような尿酸排泄促進剤はその効能を高めるために抗菌物質と共に投与され得る。
[蝸牛前庭の不調を引き起す他の微生物感染]
他の微生物感染は、難聴を含む、蝸牛前庭の不調を引き起こすと知られている。前記感染は、風疹、サイトメガロウィルス、単核症、水痘帯状ヘルペス(水疱瘡)、肺炎、バクテリアのボレリア菌種(ライム病)、および特定の真菌感染を含んでいる。従って、本明細書に記載の制御放出性抗菌剤の製剤はまた、耳の中におけるこれらの感染の、局所的な処置に使用される。
[自己免疫性内耳疾患]
自己免疫性内耳疾患(AIED)は、感音難聴の数少ない改善可能な原因の1つである。AIEDは、内耳の音声受信機能および前庭機能の両側性障害をしばしば含む、成人および子供の両方に起こる不調である。多くの場合、AIEDは、全身自己免疫症状を伴うことなく生じるが、最大1/3の患者が、全身自己免疫疾患も患っている。前記全身自己免疫疾患には、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、全身紅斑性狼瘡(SLE)、シェーグレン症候群、コーガン病、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー肉芽腫症、強皮症等が挙げられる。ベーチェット病、多系統疾患も、一般的に、音声を受信する前庭に問題をかかえている。AIEDの分類体系が開発されている(Harris及びKeithleyの文献「、Otorhinolaryngology Head and Neck Surgery.(2002)91、18-32」)。
免疫系は、細菌やウィルス等の侵襲性病原体から内耳を保護する重要な役割を通常果たす。しかし、AIEDにおいて、免疫系自体が、繊細な内耳組織を傷つけ始める。内耳は、外来抗原への局在化された免疫応答を増大させる能力を十分に有している。外来抗原が内耳に入ると、内リンパ嚢内、及びその周りにある、免疫担当細胞によって、最初に処理される。一度外来抗原がこれらの免疫担当細胞によって処理されると、これらの細胞は、内耳の免疫応答を調節する種々のサイトカインを分泌する。このサイトカイン放出の一つの結果は、体循環から要求される、炎症細胞の流入を促すことである。これらの全身炎症細胞は、体の他の部分で生じると同時に、らせん状蝸牛静脈とその支流とを通る漏出を介して蝸牛に入り、抗原の取り込みと調節解除とに関与し始める。インターロイキン1(IL-1)は、先天的(非特異性)免疫応答の調節において重要な役割を果たすものであり、かつ、ヘルパーT細胞とB-細胞とを静止させる周知の活性因子である。一度IL-1によって活性化された、ヘルパーT細胞は、IL-2を生成する。IL-2分泌は、ヘルパー、細胞傷害性、及びサプレッサーT細胞亜型への、多能性T細胞の分化を結果として生じる。IL-2はまた、Bリンパ球の活性化において、ヘルパーT細胞を補助し、かつ、前庭及び蝸牛領域の免疫応答の免疫調節で中心的な役割を、おそらく果たしている。IL-2は、18時間後の抗原チャレンジでのピークレベルを用いた抗原チャレンジ後6時間で早くも、内耳の外リンパ内に存在する。その後、IL-2の外リンパのレベルは消え、IL-2は、120時間後の抗原チャレンジでの外リンパ内にもはや存在しない。
IL-1βと腫瘍壊死因子-α(TNF-α)との双方は、免疫応答の開始と増幅とにおいて主な役割を果たし得る。IL-1βは、外科的外傷、又は、非特異性応答における音響外傷等の外傷が存在する、らせん靭帯の線維細胞によって発現される。THF-αは、抗原の存在している内リンパ嚢内に含有される、全身細胞の湿潤によって、又は常在細胞によって、発現される。TNF-αは、動物モデル中の適応性のある(特定の)免疫反応の一部として放たれる。抗原がマウスの内耳に注入される場合、IL-1βおよびTNF-αの両方が発現され、活発な免疫反応が生じる。しかしながら、抗原が、外傷のない脳脊髄液を介して内耳に導入される場合、TNF-αのみが発現され、免疫反応は最小となる。重要なことに、隔離状態の蝸牛外傷はまた、最小の免疫応答を結果として生じる。これらの結果は、免疫応答の非特異的、特異的成分の双方が、最大の応答を得るように内耳内で協力して作用することを示唆している。
故に、蝸牛が傷つけられ、抗原が注入されると(又は自己免疫疾患の場合、患者は内耳抗原に向けられた免疫細胞を有している)、非特異的、特異的免疫応答の双方が、同時に活性化され得る。このことは、内耳へと実質的な損傷を与える、炎症の大きく増幅されたレベルを生じるTHF-αと同様に、IL-1βの同時生産という結果をもたらす。
特定の証拠は、ウィルス感染がAIEDをもたらす炎症反応の開始の要因である、ということを示している。種々の自己免疫疾病が、種々のDNA、RNAウィルス感染によって誘発され、増強される。急性又は持続性ウィルス感染は、同様に、動物モデル内に自己免疫疾患を誘発し、増強する。同様に、抗原決定基はまた、ウィルスと宿主成分上で観察された。「Oldstone, M.B.A. J. Autoimmun. (1989) 2(suppl): 187-194」参照。さらに、血清検査は、AIED(コーガン症候群)にしばしば関係している全身性の自己免疫障害と診断された、少なくとも1人の患者内でのウィルス感染を同定した。「Garcia-Berrocal, et al. O.R.L. (2008) 70: 16-20」参照。
故に、幾つかの実施形態では、本明細書に開示されている制御放出性抗菌剤の組成物と製剤とは、AIEDの処置のために投与される。特に、特定の実施形態では、抗ウィルス剤を備えている、本明細書に開示された製剤は、AIEDの処置のために投与される。他の実施形態では、本明細書に開示されている抗菌剤製剤は、他の医薬品と併用して、AIEDの処置のために投与される。前記他の医薬品は、同じ疾病の同じ状態又は症状を処置するのに有用なものであり、ステロイド、細胞傷害性薬剤、コラーゲン、ガンマグロブリン注入、又は、他の免疫調節剤を含む。ステロイドは、例えばプレドニゾン、又はデカドロンを含む。AIEDの処置用の細胞毒性薬剤は、例えばメトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドを含む。血漿交換手順は、随意に使用される。経口コラーゲン、ガンマグロブリン注入、又は他の免疫調節薬物(例えばβ-インターフェロン、α-インターフェロン、又は、コパクソン(copaxone))による処置はまた、本明細書に開示の抗菌剤製剤と組み合わせて随意に使用される。追加の医薬品は、本明細書に開示の制御放出性製剤と一緒に、又は、他の投与形態(例えば、経口、注射によって、局所的に、経鼻的に、又は、他の適切な手段を通じて)によって、随意に投与される。追加の医薬品は、随意に、同時に投与、又は異なる時間間隔で投与される。
[メニエール病]
メニエール病は、3〜24時間続く回転性めまい、吐き気、嘔吐に突然襲われることにより特徴付けられ、これらの症状は、徐々におさまっていく。時間がたつにつれて、上述の疾患に、進行性の難聴、耳鳴り、および耳の圧迫感が伴う。メニエール病による症状の原因は、おそらく、内耳流体の生産量の増加、又は再吸収量の減少を含む、内耳液の恒常性のバランスが崩れることである。
メニエール病の原因は未知であるが、特定の証拠は、疾患のためのウィルス性病因を示唆する。具体的には、メニエール病を患う患者の側頭骨の、病理組織学的分析はウィルスの神経節炎を明らかにした。また、ウィルスDNAは、健常者よりも高い率でメニエール病患者の神経節に観察された。「Oliveira et al. ORL (2008) 70: 42-51」参照。これらの研究に基づいて、メニエール病に冒された患者の回復を結果として生じる、ガンシクロビル抗ウィルス剤の鼓室内注入の試験研究が行なわれた。「Guyot et al. ORL (2008) 70: 21-27」参照。従って、例えばガンシクロビル、アシクロビル、ファーモビル(famovir)、バルガンシクロビル等の抗ウィルス剤を備えている、本明細書に記載の制御放出性製剤は、メニエール病の局所的な処置のため、耳に投与され得る。
メニエール病の他の治療は、再発の即時の症状および予防の対処を目的としている。低ナトリウム食、カフェイン、アルコール、及びタバコの回避が支持されている。一時的に回転性めまい発作を和らげる薬物療法は、抗ヒスタミン剤(例えばメクリジン)、バルビツール酸及び/又はベンゾジアゼピンを含む中枢神経系薬剤(例えばロラゼパムまたはジアゼパム)を含んでいる。症状を和らげるのに役立つ薬物の他の例は、スコポラミンを含んでいる、ムスカリン性アンタゴニストを含む。吐き気と嘔吐は、統合失調症治療薬を含有している座薬(フェノチアジン剤プロクロルぺラジン(Compazine(登録商標)、Buccastem、Stemetil、Phenotil)を含む)によって和やらげられる。故に、メニエール病の他の処置は、メニエール病の処置のため、本明細書に記載の制御放出性製剤と組み合わせて随意に使用される。
外科手術はまた、メニエール病の症状(回転性めまいの症状を緩和する機能を持つ前庭の破壊を含む)を和らげるために使用されている。これらの手術は、内耳の液圧を下げること、および/または内耳の平衡機能を破壊することのいずれかを目的とする。液圧を和らげる内リンパシャント術は、前庭機能不全の症状を緩和するために、内耳で配置されてもよい。前庭神経の切除も利用され、回転性めまいを制御する一方で聴覚を維持する。
激しいメニエール病の処置のために前庭機能を破壊する別の手法は、前庭器官の知覚有毛細胞の機能を破壊する薬剤を鼓室内へ適用することであり、これによって、内耳平衡機能を絶つ。種々の抗菌剤がこの手法に用いられ、前記種々の抗菌剤は、ゲンタマイシンとストレプトマイシン等のアミノグリコシドを含んでいる。薬剤は、小さな針、ウィックを備える又は備えていない鼓膜切開チューブ、又は手術カテーテルを用いて、鼓膜を通って注入される。種々の投与レジメンが、抗菌剤を投与するのに用いられている。前記投与は、少量の薬剤を長期にわたって投与する低用量法と、より多くの薬剤を短い時間内(例えば、毎週)にわたって投与する高用量法と、を含む。高用量法は、典型的にはより有効ではあるが、結果として難聴もたらすといった、危険性も高い。
従って、メニエール病を処置するため前庭器を無効にする、本明細書に記載の製剤は、また、抗菌剤(例えば、ゲンタマイシンとストレプトマイシン)の投与のために利用することができる。本明細書に記載の製剤は、鼓膜内の活性薬剤の安定した放出を維持するために用いられ、これによって、複数回の注入、又は、鼓膜切開チューブの挿入の必要性を避ける。更に、前庭器官内に局在化された活性剤を保つことによって、本明細書に開示されている製剤はまた、難聴の減少した危険性のある抗菌剤の、より高度な用量での投与に用いることができる。
[メニエール症候群]
メニエール病と似た症状を示すメニエール症候群は、別の疾患プロセスの二次的な苦痛(例えば、梅毒感染による甲状腺疾患または内耳炎症)に起因する。メニエール症候群は、このように内リンパの正常な産生又は吸収に干渉する様々なプロセスへの副次的効果の集まりであり、微生物感染を含む。メニエール症候群を患う患者の処置は、メニエール病と同様である。
[前庭神経炎]
前庭神経炎は、突然の回転性めまい発作に特徴付けられ、それは、回転性めまいの単一の発作、一連の発作、または数週間で減少する持続的な疾病として示すことがある。聴覚症状は一般的にないが、症状は、典型的には吐き気、嘔吐症状、および前述の上気道感染を含んでいる。前庭神経炎はまた、眼振盪(患側の方へ目を不本意に点滅させることによって特徴付けられた疾病)に関係し得る。前庭神経炎は、前庭神経(脳に内耳を接続する神経)の炎症によって引き起こされ、恐らくウィルス感染によって引き起こされる。前庭ニューロン炎の診断は、電気眼振検査(眼運動を電子工学的に記録する方法)を使用する眼振のための検査を通常含んでいる。磁気共鳴映像法も、他の原因が回転性めまい症状において役割を果たすかどうか判断するために行われ得る。
前庭ニューロン炎の処置は、疾病が独力で消えるまで、疾病(主として回転性めまい)の症状を緩和することを、典型的に含んでいる。回転性めまいの処置は、メニエール病としばしば同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジンまたはスコポラミンを含み得る。嘔吐症状が激しい場合、流体と電解液も静脈内に投与され得る。疾病が十分に初期に検知される場合、プレドニゾロンのようなコルチコイドも与えられる。
抗ウィルス剤を含む、本明細書に開示された組成物は、前庭ニューロン炎の処置のために投与することができる。さらに、前記組成物は、抗コリン薬、抗ヒスタミン剤、ベンゾジアゼピン、またはステロイドを含む、疾病の症状を処置するために典型的に使用される他の薬剤と共に投与され得る。
[体位性めまい]
体位性めまい(Postural vertigo又はpositional vertigo)は、一定の頭の位置により誘発される、突然の激しい回転性めまいにより特徴付けられる。この疾病は、内耳、中耳への物理的傷害、耳の手術、または内耳に通じる動脈の遮断によりもたらされた、損傷を受けた三半規管によって引き起こされ得る。
人が1つの耳の上に横たわるか、見上げるために頭を傾ける場合、体位性めまいを患う患者における回転性めまい発病は、大抵進行する。回転性めまいは、眼振が付随することがある。体位性めまいの処置は、メニエール病のものと同じ処置をしばしば含んでいる。体位性めまいの激しい場合では、前庭神経は、影響を受けた三半規管から切断される。回転性めまいの処置は、メニエール病としばしば同一であり、メクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジンまたはスコポラミンを含み得る。嘔吐症状が激しい場合、流体と電解液も静脈内に投与され得る。
[感音難聴]
感音難聴は、内耳の要素、または付随する神経要素が影響を受けると生じるものであり、神経要素(すなわち、聴神経または脳での聴神経経路が影響を受ける)、又は感覚要素を含有し得る。感音難聴は、遺伝性である場合もあり、または、音響外傷(すなわち、非常に大きな騒音)、ウィルス感染、薬物誘発型疾患、またはメニエール病によって引き起こされる場合もある。幾つかの例では、騒音により引き起こされた難聴は、大きな騒音(例えば銃火、騒がしい音楽、他の人間による騒音)によって引き起こされる。神経性難聴は、脳腫瘍、感染、または種々の脳障害または神経障害(例えば、卒中)の結果として生じる場合もある。幾つかの遺伝性疾患(例えば、レフサム病(分枝脂肪酸の蓄積障害))も、難聴を引き起こす神経障害を生じる場合がある。聴神経経路は、脱髄性疾患(例えば、特発性炎症性脱髄性疾患(多発性硬化症を含む)、横断性脊髄炎、デビック病、進行性多巣性白質脳症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、抗MAG末梢神経障害)、によって損傷を受ける場合がある。
突発性難聴、または感音難聴の発生は、5000の個体に約1の個体で生じ、ウィルス感染又は細菌感染(例えば、ムンプス、嚢虫、インフルエンザ、水痘、サイトメガロウィルス、梅毒、または感染性単核球によるもの)、または内耳器官に対する物理的傷害によって引き起こされる場合がある。幾つかの場合では、原因が全く特定できない。突発性難聴には、耳鳴りおよびめまいが伴い、徐々に弱まっていく。感音難聴を処置するために、経口コルチコステロイドが頻繁に処方される。幾つかの場合には、外科的介入治療が必要な場合もある。
[遺伝性疾患]
遺伝性疾患(シャイベ、モンディーニ-ミシェル、ワールデンブルグ、ミシェル、アレキサンダー型耳変形、両眼隔離症、イェルヴェル-ラングニールソン、レフサム、アッシャー症候群を含む)は、感音難聴のおよそ20%の患者に見られる。先天性耳奇形は、膜質の迷路、骨性の迷路、またはその両方の進行の欠損から生じうる。深遠な難聴および前庭機能異常と共に、遺伝的変形もまた、他の機能障害(再発する髄膜炎、脳脊髄液(CSF)漏出、同様に外リンパの瘻管を含む)に関連し得る。慢性感染の処置は、遺伝性疾患患者に必要なものである。
[医薬品]
本明細書で提供されるものは、耳の不調及び/又はそれらの付随する症状(感染、難聴、眼振、回転性めまい、耳鳴、炎症、腫れ、およびうっ血を含むが、これらに限定されない)を処置する抗菌剤組成物および製剤である。AIED、中耳炎、外耳炎、メニエール病、ラムゼイハント症候群、耳梅毒、遺伝性疾患、前庭神経炎を含む耳の不調は、本明細書に開示する医薬品、または他の医薬品に反応する原因および症状を有する。本明細書に開示されてはいないが、耳の不調の改善、または根絶に有用な抗菌剤は、示された実施形態の範囲内に明らかに含まれ、その範囲内にあることが意図されている。幾つかの実施形態では、親抗菌剤が耳の不調を治療する能力を保有する、本明細書に開示された抗菌剤の、薬学的に活性な代謝物、塩、多形、プロドラッグ、アナログおよび誘導体は、製剤において役立つ。
さらに、他の器官での全身適用または局所適用中に、過度に毒性があり、有害であり、または効果的ではないことが、以前に示されている医薬品(例えば、肝臓で処理した後に形成される毒性代謝物によるもの、特定の器官、組織または系における薬物の毒性、効力を得るのに必要な高濃度によるもの、全身経路を介して放出されることが不可能なことによるもの、またはpK特性が悪いことによるもの)は、本明細書の幾つかの実施形態において有用である。従って、全身への放出が制限されている又は放出が行われず、全身毒性、乏しいpK特性、またはそれらの組み合わせを有する医薬品は、本明細書に開示する実施形態の範囲内で熟慮される。
本明細書に開示の抗菌剤製剤は、処置が必要な耳の構造体を直接、随意に標的にする。例えば、熟慮される1つの実施形態は、内耳の正円窓膜または蝸牛窓上の、本明細書で開示される抗菌剤製剤であり、内耳(auris internaまたはinner ear)の要素に直接到達させ、処置することを可能にする。他の実施形態では、本明細書で開示する抗菌剤製剤は、卵円窓に直接適用される。さらに他の実施形態では、直接的な到達は、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小潅流)により、得られる。また、前記実施形態は、薬物送達デバイスの使用を随意に含み、この薬物送達デバイスは、針および注射器、ポンプ、微量注入デバイス、またはそれらの任意の組み合わせによって、標的に対し抗菌剤製剤を送達する。さらに他の実施形態では、抗菌剤製剤の適用は、鼓室内膜に穿孔することによって中耳を標的とし、鼓室または耳小骨の壁を含む、影響を受ける中耳構造に、直接抗菌剤製剤を適用する。こうすることによって、本明細書で開示する抗菌剤製剤が、標的とする中耳構造に閉じ込められ、例えば、耳管または穿孔した鼓膜から拡散したり漏れたりすることにより、失われることはない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された抗菌剤製剤は、綿棒、注射または点耳液によるものを含む、任意の適切な様式で、外耳に送達される。また、他の実施形態では、抗菌剤製剤は、針及び注射器、ポンプ、微量注入デバイス、インサイツ形成海綿状物質、またはそれらの任意の組み合わせでの適用によって、外耳の特定領域へ標的とされる。例えば、外耳炎の処置の場合には、本明細書に開示された抗菌剤製剤は、外耳道に直接送達され、そこではそれらが保持され、それによって、排液または漏出による標的耳構造からの活性薬剤の損失を少なくする。
幾つかの医薬品は、単独で、または組み合わせて使用され、耳毒性である。例えば、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、ネオマイシン、カナマイシン、エキノマイシン(etiomycin)、バンコマイシン、メトロニダゾール(metronidizole)、カプレオマイシンを含む、幾つかの抗生物質は、ひどい耳毒性には弱く、そして前庭と蝸牛の構造体に差次的に(differentially)影響する。しかしながら、幾つかの例では、耳毒性薬物と、耳(otoprotectant)との組み合わせは、薬物の耳毒性の効果を減らす。さらに、潜在的に耳毒性の薬物の局在化された適用は、維持された効き目を備えたより低量の使用、および/またはより短い期間の標的量の使用による全身投与中に生じる、毒性の効果を和らげる。
制御放出性抗菌剤の製剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤又は担体を避ける又は組み合わせること、製剤から潜在的な耳毒性の化合物を減少させる又は除去すること、又は前記賦形剤、希釈剤、又は担体の量を減少させることが推奨される。医薬品、賦形剤、希釈剤、担体、または本明細書に記載の製剤及び組成物は、容認された動物モデルを使用して解明することができる。例えば、文献「Maritini, A., et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. (1999) 884:85-98」を参照。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の制御放出性抗菌剤の製剤は、特定の治療薬剤又は賦形剤、希釈剤又は担体を使用することで生じる、潜在的な耳毒性の影響を弱めるための、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳毒性防護剤を含む。
[抗菌物質]
耳の不調(例えば炎症性疾患又は耳の感染)の治療に役立つ任意の抗菌剤は、本明細書に開示された製剤および方法での使用に適している。幾つかの実施形態では、抗菌剤は抗菌物質、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗原虫剤、及び/又は、駆虫剤である。抗菌剤は、細菌、真菌類、ウィルス、原虫、及び/又は寄生生物を含む微生物を阻害または根絶するために作用する薬剤を含む。特定の抗菌剤は、特定の微生物と闘うために使用され得る。従って、熟練した開業医は、抗菌剤が、同定された微生物、または発現した症状に依存して、関連し、または役立つと知るだろう。
幾つかの実施形態では、抗菌剤は、蛋白質、抗体、DNA、炭水化物、無機化合物、分子、または有機分子である。特定の実施形態では、抗菌剤は抗菌性小分子である。典型的には、抗菌性小分子は、比較的低い分子量(例えば1,000未満、または600-700未満、あるいは300-700の間の分子量)である。
幾つかの実施形態では、抗菌剤は、抗菌物質である。幾つかの実施形態では、抗菌物質は、グラム陽性菌バクテリアによって引き起こされた感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質は、グラム陰性菌バクテリアによって引き起こされた感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質は、ミコバクテリアによって引き起こされた感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質は、ジアルジアによって引き起こされた感染を処置する。
幾つかの実施形態では、抗菌物質は細菌蛋白合成の阻害により感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質は細菌細胞壁の合成を分裂させることにより感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質は細菌細胞膜の透過性の変更により感染を処置する。幾つかの実施形態では、抗菌物質はバクテリア内でのDNA複製を分裂させることにより感染を処置する。
幾つかの実施形態では、抗菌物質は、抗生物質である。幾つかの実施形態では、抗生物質は、アミノグリコシドである。アミノグリコシドの例は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロマイシンまたはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、アンサマイシンである。アンサマイシンの例は、ゲルダナマイシン、ハービマイシンまたはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、カルバセフェムである。カルバセフェムの例は、ロラカルベフ、またはその他同種のものを含むが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、カルバペネムである。カルバペネムの例は、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム(cilostatin)、メロペネムまたはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、セファロスポリン(例えば、第1、第2、第3、第4、又は第5生成セファロスポリン)である。セファロスポリンの例は、セファクロール、セファマンドール、セフォトキシン(cefotoxin)、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビルプロール(ceftobirprole)、またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、グリコペプチドである。グリコペプチドの例は、バンコマイシン、またはその他同種のものを含むが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、マクロライド抗生物質である。マクロライド系抗生物質の例は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、モノバクタムである。モノバクタムの例は、アズトレオナム、またはその他同種のものを含むが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、ペニシリンである。ペニシリンの例は、アモキシシリン、アンピシリン、アゾシリン(azociling)、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン(peperacillin)、チカルシリン、またはその他同種のものを含むが、これらに限定的されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、ポリペプチドである。ポリペプチド系抗生物質の例は、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、またはその他同種のものを含むが、これらに限定的されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、キノロンである。キノロンの例は、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン(nonfloxacin)、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、AL-15469A、AL-38905、またはその他同種のものを含むが、これらに限定的されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、スルホンアミドである。スルホンアミドの例は、アフェニド(afenide)、プロントジル、ジリスロマイシン、スルファメチアゾール(sulfamethiazole)、スルファニルイミド(sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、コトリモキサゾール、またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、テトラサイクリン抗生物質である。テトラサイクリンの例は、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン(tetraycline)、またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、抗生物質は、オキサゾリジノン抗生物質である。オキサゾリジノン抗生物質の例は、リネゾリド、またはその他同種のものを含むが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、抗生物質は、アルソゲバヌーベン(arsogebanubem)クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リファンピシン、チアンフェニコール(thamphenicol)、チニダゾール、またはその他同種のものである。
抗菌物質は、以下のものを含む。すなわち、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン(geldanmycin)、ハービマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル(defprozil)、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン(ticarcillan)、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン(trovfloxacin)、マフェナイド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニミリミド(sulfanimilimde)、スルファサラジン(sulfsalazine)、スルフイソキサゾール(sulfsioxazole)、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン(oxtetracycline)、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン(quinuspristin)/ダルホプリスチン、リファンピン、チニダゾール、およびそれらの組み合わせを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物と適合する抗生物質は、広域抗生物質である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物と適合する抗生物質は、他の類の抗生物質に抵抗力のある感染を処置するのに効果的である。例えば、幾つかの例では、バンコマイシンは、耐メチシリン性の黄色ブドウ球菌細菌によって引き起こされた感染を処置するのに効果的である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の抗生物質の組成物の中耳内投与は、全身療法で見られる抗生物質耐性の進行の危険を減らす。
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスで使用される抗生物質は、シプロフロキサシン(Cipro)である。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスで使用される抗生物質は、ゲンタマイシンである。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスで使用される抗生物質は、ペニシリンである。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスで使用される抗生物質は、ストレプトマイシンである。
幾つかの実施形態では、抗菌剤は以下のものである。すなわち、ペプチド、又はランチビオティクス(一例として、マクシミンH5)、ダームシジン、セクロピン、アンドロピン、モリシン(moricin)、セラトトキシンおよびメリチン、マゲイニン、デルマセプチン、ボンビニン、ブレビニン(brevinin)-1、エスクレチン(esculentins)およびブフォリン(buforin) II、CAP18、LL37、アバエシン、アピダエシン、プロフェニン、インドリシジン、ブレビニン(brevinins)、プロテグリン、タキプレシン、デフェンシン、ドロソマイシン、アラメチシン、ペキシガナンまたはMSI-78、およびMSI-843およびMSI-594のような他のMSIペプチド、以下のようなI類、II類、III類バクテリオシン:コリシン、ピオシン、クレビシン、サブチリン、エピデルミン、ハービコラシン(herbicolacin)、ブレビシン、ハロシン、アグロシン、アルベイシン(alveicin)、カルノシン、クルバチシン、ジベルシン、エンテロシン、エンテロリシン(enterolysin)、エルウィニオシン(erwiniocin)、グリシネシン(glycinecin)、ラクトコシン(lactococin)、ラクチシン(lacticin)、レウコシン(leucoccin)、メセンテリシン(mesentericin)、ペディオシン、プランタリシン、サカシン(sakacin)、スルホロビシン(sulfolobicin)、ビブリオシン、ワーネリナンド(warnerinand)、ナイシン、またはその他同種のものである。
抗ウィルス剤は、アシクロビル、ファムシクロビル、およびバラシクロビルを含む。他の抗ウィルス剤は、以下のものを含む。すなわち、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル(adfovir)、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ(artipla)、ブリブジン、シドホビル、コンビビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ホミビルセン(fomvirsen)、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、ガーダシル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロン(III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロンを含む)、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、MK-0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir)、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害薬、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、及びそれらの組み合わを含む。
抗真菌剤は、アモロルフィン(amrolfine)、ブテナフィン(utenafine)、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコーマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アンフォテリシンB、リポソームニスタチン(nystastin)、ピマリシン、グリセオフルビン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸塩、クリオキノール、及びそれらの組み合わせを含む。
駆虫剤は、アミトラズ、アモスカネート、アベルメクチン、カルバドックス、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamizine)、ジメトリダゾール、ジミナゼン、イベルメクチン、マクロフィラリサイド、マラチオン、ミタバン(mitaban)、オキサムニキン、ペルメトリン、プラジカンテル、パモ酸ピランテル(prantel pamoate)、セラメクチン、スチボグルコン酸ナトリウム、チアベンダゾール、またはそれらの組み合わせを含む。
本明細書に開示されてはいないが、耳の不調の改善、または根絶に有用な抗菌剤は、示された実施形態の範囲内に明らかに含まれ、その範囲内にあることが意図されている。
[抗炎症剤]
グルココルチコイドまたは他の抗炎症のステロイドは、本明細書に開示の製剤と共に使用できる。自己免疫性難聴に使用する現時点での治療法は、グルココルチコイドの全身投与である。典型的には、処置期間は、数ヶ月続き、全身療法による副作用は相当なものである場合がある。AIEDに関する初期の研究のうちのいくつかでは、シクロホスファミドと組み合わせたプレドニゾンは効果的な療法だった。しかしながら、シクロホスファミドに関連した危険性は、それに特に出産適齢期の若い個人において最後の手段としての薬物を与えた。本明細書に記載した製剤を使用する1つの利点は、抗炎症性のグルココルチコイドステロイドによる全身曝露がかなり減ることである。
1つの実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、プレドニゾロンである。別の実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、デキサメタゾンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載する製剤の活性医薬成分は、ベクロメタゾンである。さらなる実施形態では、本明細書に記載の製剤の活性医薬成分は、以下のものから選択される。即ち、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタソン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フラザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニソロン、フルドロキシコルチド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロ酸エステル、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-酢酸塩、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、又はそれらの組み合わせから選択される。
コルチコステロイドは、ホスホリパーゼA2抑制性の蛋白質、即ち総体としてリポコルチンと呼ばれるものの導入によって作用すると考えられる。それらの共通の前駆体アラキドン酸の放出の阻害により、これらの蛋白質がプロスタグランジンとロイコトリエンのような炎症の強力な媒介物質の生合成を制御することが提唱される。アラキドン酸は、ホスホリパーゼA2によって膜リン脂質から放出される。
[プレドニゾロン]
プレドニゾロンは、主にグルココルチコイド活性を有し、鉱質コルチコイド活性が低いコルチコステロイド薬物である。プレドニゾロンは、内因性コルチゾールの約4〜5倍の効能を有する。プレドニゾロンは、喘息、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような広範囲の炎症性・自己免疫の疾病、多発性硬化症、群発頭痛、および全身性エリテマトーデスの処置に役立つ。また、プレドニゾロンは、免疫抑制剤として臓器移植に、および副腎機能不全(Addison's)の症例に使用することができる。
[デキサメタゾン]
デキサメタゾンは、グルココルチコイド活性を有するコルチコステロイド薬物である。デキサメタゾンは、内因性コルチゾールの約25〜30倍の効能を有する。デキサメタゾンは、関節リウマチのような多くの炎症性・自己免疫の疾病を処置するために使用される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、デキサメタゾンを備える。幾つかの実施形態では、デキサメタゾンを備える本明細書に記載の組成物またはデバイスが使用される。
[ベクロメタゾン]
ベクロメタゾンジプロピオネートは、ベクロメタゾンとも称され、きわめて強力なグルココルチコイドステロイド剤である。ベクロメタゾンは、吸入器の形で、喘息の予防処置に使用される。スプレー式点鼻薬として、ベクロメタゾンは鼻炎(例えば花粉症)および静脈洞炎の処置に使用される。幾つかの例では、ベクロメタゾンは異常に激しい鵞瘡の処置において、口腔病理学者によって使用される。ベクロメタゾンは、クリームまたは軟膏として、それほど有力でないステロイドに無反応の激しい炎症性の皮膚障害(例えば湿疹)を処置するが、一般に退薬中の反動の危険性のために、乾癬の処置において避けられる。
ブデソニド
ブデソニドは、コルチゾールより60倍強力な、グルココルチコイドステロイドである。ブデソニドは、花粉症及び他のアレルギー(鼻吸入器を介する)を含む、喘息(経口の吸入器を介する)、無感染の鼻炎の処置のために示される。さらに、ブデソニドは炎症性大腸疾患に使用される。
[クロベタゾール]
クロベタゾールは、局所用製剤で使用する、きわめて強力なコルチコステロイドである。クロベタゾールは、抗炎症性、かゆみ止め性、血管収縮性、免疫調整性の特性を有する。クロベタゾールは、乾癬とアトピー性皮膚炎を含む、様々な過剰増殖性及び/又は炎症性皮膚病の処置において現在使用される。
デキサメサゾン、ベクロメタゾン、およびプレドニゾロンには、36-72時間の生物学的な半減期を備えた長期有効性がある。
幾つかの実施形態では、抗炎症剤は、抗TNF剤、TNF-α変換酵素阻害剤、IKK阻害剤、カルシニューリン阻害剤、トール様受容体阻害剤、インターロイキン阻害剤などである。本明細書に開示されてはいないが、耳の疾患の改善または根絶に有用な抗炎症剤は、示されている実施形態の範囲内に明らかに含まれ、範囲内にあることが意図されている。
[RNAi]
幾つかの実施形態では、標的の阻害または下流調節がRNA干渉を所望する場所が、利用され得る。幾つかの実施形態では、標的を阻害または下流調節する薬剤は、siRNA分子である。特定の実施形態では、siRNA分子は、炎症(例えばサイトカイン、IKK、TACE、カルシニューリン、TLRなど)の1つ以上の媒介物質をコード化する遺伝子を阻害するか、下流調節する。特定の例では、siRNA分子は、RNA干渉(RNAi)による標的の転写を阻害する。幾つかの実施形態では、標的に補足的なシーケンスを備えた二重鎖RNA(dsRNA)分子が、(例えばPCRによって)生成される。幾つかの実施形態では、標的に補足的なシーケンスを備えた20〜25bpのsiRNA分子が生成される。幾つかの実施形態では、20〜25bpのsiRNA分子は、各鎖の3'末端、および5'リン酸塩終端および3'ヒドロキシル終端上に、2〜5bpのオーバーハング(overhang)を有する。幾つかの実施形態では、20〜25bpのsiRNA分子は、平滑断端を有する。RNAシーケンスを生成するための技術については、文献「Molecular Cloning:A Laboratory Manual、second edition(Sambrook et al.、1989)」および文献「Molecular Cloning:A Laboratory Manual、third edition(Sambrook and Russel、2001)(本明細書に「Sambrook」として共同で引用されている)」;文献「Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987, including supplements through 2001)」;文献「Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry John Wiley & Sons, Inc.、New York、2000)」を参照する。これらは、そのような開示のために参照として本明細書に組み入れられる。
幾つかの実施形態では、dsRNAまたはsiRNA分子は、制御放出性の耳に許容可能なミクロスフェアまたは微小粒子、ヒドロゲル、リポソーム、化学反応を起こす電磁放射治療可能なゲル、溶解力のある放出ゲル、キセロゲル、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、または熱可逆性のゲルに組み込まれる。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェア、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェアまたは微小粒子、化学反応を起こす電磁放射治療可能なゲル、溶解力のある放出ゲル、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルは、正円窓膜を通って注入される。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェア、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、化学反応を起こす電磁放射治療可能なゲル、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、またはそれらの組み合わせへと注入される。
特定の例では、dsRNAまたはsiRNA分子の投与の後、投与部位の細胞(例えば、蝸牛、コルチ器官、及び/又は前庭迷路の細胞)は、dsRNAまたはsiRNA分子で形質転換される。形質転換の後の特定の例では、dsRNA分子は、約20〜25bpの多数のフラグメントへと切断され、siRNA分子を産出する。特定の例では、フラグメントは、各鎖の3'末端の上に約2bpのオーバーハングを有する。
特定の例では、siRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって、2つの鎖(ガイド鎖および非ガイド鎖)に分割される。特定の例では、ガイド鎖は、RISCの触媒作用成分(つまり、アルゴノート)に組み入れられる。特定の例では、ガイド鎖は、補足的な標的mRNAシーケンスに結合する。特定の例では、RISCは、標的mRNAを切断する。特定の例では、標的遺伝子の発現は、下流調節される。
幾つかの実施形態では、標的に補足的なシーケンスは、ベクターに結合される。幾つかの実施形態では、シーケンスは2つのプロモータ間に配置される。幾つかの実施形態では、プロモータは反対方向で位置づけられる。幾つかの実施形態では、ベクターは、細胞と連絡する。幾つかの例では、細胞は、ベクターで形質転換される。形質転換の後の幾つかの例では、シーケンスのセンス鎖および非センス鎖が生成される。特定の例では、センス鎖および非センス鎖は、siRNA分子へと切断されるdsRNA分子を形成するために、ハイブリッド形成する。特定の例では、鎖は、siRNA分子を形成するためにハイブリッド形成する。幾つかの実施形態では、ベクターは、プラスミド(例えば、pSUPER;pSUPER.neo;pSUPER.neo+gfp)である。
幾つかの実施形態では、ベクターは、制御放出性の耳に許容可能なミクロスフェア若しくは微小粒子、ヒドロゲル、リポソームまたは熱可逆性ゲルに組み込まれる。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェア、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、内耳へ注入される。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェア又は微小粒子、ヒドロゲル、リポソーム、又は熱可逆性ゲル。幾つかの実施形態では、耳に許容可能なミクロスフェア、ヒドロゲル、リポソーム、ペイント、フォーム、インサイツ形成海綿状物質、ナノカプセルまたはナノスフィア、または熱可逆性ゲルは、蝸牛、コルチ器官、前庭迷路、又はそれらの組み合わせの中に注入される。
[抗菌剤と抗炎症剤]
抗炎症剤と組み合わせた抗菌剤を含む組成物およびデバイスが、本明細書に示された実施形態の範囲内で熟慮される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、抗炎症剤(例えば本明細書に記載の任意の抗炎症剤)と組み合わせた抗生物質(例えば本明細書に記載の任意の抗生物質)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、コルチコステロイドと組み合わせた抗生物質(例えば本明細書に記載の任意の抗生物質)を含む。
幾つかの実施形態では、抗菌剤と抗炎症剤を含む組成物には、活性剤の各々のための異なる放出特性がある。例えば、幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質の持効性、およびコルチコステロイドの中間の放出(intermediate release)を提供する。幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質の徐放性およびコルチコステロイドの即時放出を提供する。幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質の即時放出およびコルチコステロイドの徐放性を提供する。幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質の即時放出およびコルチコステロイドの中間の放出を提供する。
他の実施形態では、抗菌剤と抗炎症剤を含む組成物には、活性剤の各々のための、同様の放出特性がある。例えば、幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質とコルチコステロイドの即時放出を提供する。幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質とコルチコステロイドの中間の放出を提供する。幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、抗生物質とコルチコステロイドの徐放性を提供する。
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、デキサメタゾンと組み合わせた抗生物質を備える。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンと組み合わせた抗生物質を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、デキサメタゾンと組み合わせたシプロフロキサシンを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンと組み合わせたシプロフロキサシンを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、デキサメタゾンと組み合わせたゲンタマイシンを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンと組み合わせたゲンタマイシンを含む。
幾つかの実施形態では、抗生物質とコルチコステロイドを含む組成物は、微粉化された活性剤として、1つまたは両方の活性剤を包含している。一例として、幾つかの実施形態では、微粉化されたデキサメタゾンおよび微粉化されたシプロフロキサシンを含む組成物は、デキサメタゾンの拡張放出を3日以上供給し、10日間シプロフロキサシンの拡張放出を供給する。一例として、幾つかの実施形態では、微粉化されたシプロフロキサシンおよび微粉化されたシプロフロキサシンを含む組成物は、シプロフロキサシンの拡張放出を3日以上供給し、10日間デキサメサゾンの拡張放出を供給する。
幾つかの実施形態では、親薬剤が耳の不調を治療する能力を保有する、本明細書に開示された抗菌剤の、薬学的に活性な代謝物、塩、多形、プロドラッグ、アナログ、および誘導体は、本明細書に開示の製剤において役立ち、適合する。
[併用療法]
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の組成物またはデバイスは、1つ以上の活性剤及び/又は別の治療薬を含む。別の治療薬は、抗嘔吐性の薬剤、細胞毒性薬剤、抗TNF剤、耳保護剤(otoprotectants)、またはその他同種のものを含むが、これらに限定されない。
[細胞毒性薬剤]
耳の不調の治療に役立つ、任意の細胞毒性薬剤は、本明細書に記載の製剤および方法で使用するのに適している。特定の実施形態では、細胞毒性薬剤は、代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬、アルキル化剤、及び/又はDNA 挿入剤である。特定の実施形態では、細胞毒性薬剤は、蛋白質、ペプチド、抗体、DNA、炭水化物、無機分子、または有機分子である。特定の実施形態では、細胞毒性薬剤は、小さな有機分子である。典型的には、抗菌性小分子は、比較的低い分子量(例えば1,000未満、または600-700未満、あるいは300-700の間の分子量)である。幾つかの実施形態では、細胞毒性の小分子はまた、抗炎症性の特性を有する。
特定の実施形態では、細胞毒性薬剤は、メトトレキサート(RHEUMATREX(登録商標)、アメトプテリン)、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))またはサリドマイド(THALIDOMID(登録商標))である。全ての化合物は、抗炎症性の特性を有しており、AIEDを含む、耳の炎症性疾患を処置するため、本明細書に開示されている製剤と組成物に用いられ得る。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されている、組成物、製剤、方法で使用される細胞傷害性薬物は、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドを含む、細胞傷害性薬物の代謝物、塩、多形、プロドラッグ、アナログ、及び誘導体である。特に好ましいものは、例えば、メトトレキサート、シクロホスファミド、サリドマイドといった細胞傷害性薬物の代謝物、塩、多形、プロドラッグ、アナログ、誘導体であり、親化合物の細胞障害性、抗炎症性の特性を少なくとも部分的に保っている。特定の実施形態では、本明細書に開示されている製剤と組成物で用いられたサリドマイドのアナログは、レナリドマイド(REVIMID(登録商標))とCC-4047(ACTIMID(登録商標))である。
シクロホスファミドは、全身投与されたときにインビボで代謝を受けるプロドラッグである。酸化代謝物4-ヒドロキシシクロホスファミドは、アルドホスファミドと平衡して存在しており、2つの化合物は、活性剤ホスファミドマスタードと分解副産物アクロレインの送達形態としての機能を果たす。故に、幾つかの実施形態では、本明細書に開示された製剤と組成物へと組み込むための、好ましいシクロホスファミド代謝物は、4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファミドマスタード、及びそれらの組み合わせである。
[抗TNF剤]
AIEDまたはOMを含む自己免疫疾患及び/又は炎症性障害から結果として生じる症状または効果を少なくするか改善する薬剤が、本明細書に記載の抗菌剤製剤と組み合わせた使用のために熟慮される。従って、幾つかの実施形態は、抗TNF剤を含む、TNF-αの効果を調節する薬剤の使用を組み入れる。ほんの一例として、抗TNF剤は、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、およびゴリムマブ(CNTO 148)、またはそれらの組み合わせを含む。
インフリキシマブとアダリムマブは、抗TNFモノクローナル抗体である。また、エタネルセプトは、特異的にTNF蛋白質に結合するために設計された、融合タンパク質である。すべては、関節リウマチの処置において使用するために、現在承認される。ゴリムマブ(現在関節リウマチ、乾癬性関節炎および強直性脊椎炎のための第三相臨床試験にある)は、TNF-αの可溶性および膜結合型の形態の両方を標的とし中和する、十分に教化された抗TNF-αIgG1モノクローナル抗体である。
TNFの他のアンタゴニストは、ほんの一例として以下のものを含む。すなわち、TNF受容体(ペグ化された可溶性の1型TNF受容体;Amgen); TNF結合因子(Onercept; Serono); TNF抗体(米国特許出願第2005/0123541号; 米国特許出願第2004/0185047号); p55 TNF受容体に対する単一ドメイン抗体(米国特許出願第2008/00088713号);可溶性のTNF受容体(米国特許出願第2007/0249538号); TNFに結合する融合ポリペプチド(米国特許出願第2007/0128177号); TNF-α変換酵素阻害剤(Skotnicki et al., Annual Reports in Medicinal Chemistry (2003), 38, 153-162);IKK阻害剤(Karin et al.,Nature Reviews Drug Discovery (2004), 3, 17-26)、およびフラボン誘導体(米国特許出願第2006/0105967号)を含み、それらのすべてはこのような開示のための参照によって組み入れられる。
Onercept(可溶性のTNF p55受容体)の使用は2005年に中止された。3つの第III相臨床試験は、不治の敗血症と診断された患者を報告した。便益解析に対する危険性は続いて行われ、結果として臨床試験の中止をもたらした。上述されるように、本明細書の実施形態は、制限された全身性の放出を有する、又は全身性の放出が無く、全身毒性、乏しいPK特性、及びそれらの組み合わせを有すると以前に示された抗TNF剤の使用を特に包含する。
[抗嘔吐薬剤/中枢神経系薬剤]
抗嘔吐薬剤は、本明細書に開示の抗菌剤製剤と組み合わせて随意に使用される。抗嘔吐薬剤は、抗ヒスタミン剤、および中枢神経性薬剤(抗精神病の薬剤、バルビツール酸、ベンゾジアゼピン、およびフェノチアジンを含む)、を含む。他の抗嘔吐薬剤は、以下のものを含む。即ち、セロトニン受容体アンタゴニスト(ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、及びそれらの組み合わせを含む);ドーパミンアンタゴニスト(ドンペリドン、プロペリドール(properidol)、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、及びそれらの組み合わせを含む);カンナビノイド(ドロナビノール、ナビロン、サティベックス、及びそれらの組み合わせを含む);スコポラミンを含む抗コリン薬;およびデキサメタゾンを含むステロイド;トリメトベンズアミン(trimethobenzamine)、エメトロール(emetrol)、プロポフォール、ムシモール、及びそれらの組み合わせを含む。
随意に、中枢神経系薬剤およびバルビツール酸は悪心嘔吐(耳の不調にしばしば伴う症状)の処置に役立つ。使用された場合、適切なバルビツール酸及び/又は中枢神経系薬剤は、耳毒性を含む、可能な副作用のない特有の症状を和らげるか改善するために選択される。さらに、上述されるように、内耳の正円窓膜に対する医薬品のターゲッティングは、これら薬物の全身投与によって引き起こされた、可能な副作用および毒性を低減する。中枢神経抑制薬として作用するバルビツール酸は、以下のものを含む。即ち、アロバルビタール、アルフェナール、アモバルビタール、アプロバルビタール、バルベキサクロン(barnexaclone)、バルビタール、ブラロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、ブタリロナール、ブトバルビタール、コルバロール(corvalol)、クロチルバルビタール、シクロバルビタール、シクロパール、エタロバルビタール(ethallobarbital)、フェバルバメート、ヘプタバルビタール、ヘキセタール、ヘキソバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、メチルフェノバルビタール、ナルコバルビタール、ネアルバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、プロバルビタール、プロパリロナール、プロキシバルビタール、レポサール、セコバルビタール、シグモダール(sigmodal)、チオペンタールナトリウム、タルブタール、チアルバルビタール、チアミラール、チオバルビタール、チオブタバルビタール、ツイナール、バロファン、ビンバルビタール、ビニルビタール、およびそれらの組み合わせを含む。
本明細書に記載の抗菌剤製剤と共に随意に使用される、他の中枢神経系薬剤は、ベンゾジアゼピンまたはフェノチアジンを含む。有用なベンゾジアゼピンは以下のものを含んでいる。即ち、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ブロチゾラム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム(ternazepam)、トリアゾラム、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。フェノチアジンの例は、プロクロルペラジン、クロルプロマジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボプロマジン、メトトリメプロマジン(methotrimepramazine)、メソリダジン、チオリダジン(thiroridazine)、フルフェナジン、パーフェナジン、フルペンチキソール、トリフルオペラジン、およびそれらの組み合わせを含んでいる。
抗ヒスタミン剤、又はヒスタミンアンタゴニストは、ヒスタミンの放出または作用を阻害するために作用する。H1受容体を標的とする抗ヒスタミン剤は、AIEDに関係している吐き気と嘔吐症状、他の自己免疫障害、同様に抗炎症性疾患の軽減または減少に役立つ。前記抗ヒスタミン剤は、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、クエチアピンを含むが、これらに限定されない。他の抗ヒスタミン剤は、ピリラミン、ピペロキサン、アンタゾリン、カルビノキサミン、ドキシルアミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、フェニラミン、クロルフェナミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニルアミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジン、シクリジン、クロルサイクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、アリメマジン、トリメプラジン、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン、オキサトミド、およびそれらの組み合わせを含んでいる。
[血小板活性化因子アンタゴニスト]
血小板活性化因子アンタゴニストもまた、本明細書に開示の抗菌剤製剤と組み合せた使用のために熟慮される。血小板活性化因子アンタゴニストは、ほんの一例として以下のものを含む。即ち、カズレノン(kadsurenone)、フォマクチン G、ジンセノサイド、アパファント(4-(2-クロロフェニル)-9-メチル-2[3(4-モルホリニル)-3-プロパノール-1-イル[6H チエノ[3.2-f[[1.2.4]トリアゾロ]4,3-1]]1.4]ジアゼピン)、A-85783、BN-52063、BN-52021、BN-50730(四面体-4,7,8,10メチル-1(クロロ-1フェニル)-6(メトキシ-4 フェニル-カルバモイル)-9ピリド[4′,3′-4,5]チエノ[3,2f]トリアゾロ-1,2,4[4,3-a]ジアゼピン-1,4)、BN50739、SM-12502、RP-55778、Ro 24-4736、SR27417A、CV-6209、WEB2086、WEB2170、14-デオキシアンドログラホリド、CL184005、CV-3988、TCV-309、PMS-601、TCV-309、及びそれらの組み合わせを含む。
[一酸化窒素合成酵素阻害剤]
一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤もまた、本明細書に開示の抗菌剤製剤と組み合せた使用のために熟慮される。NOS阻害剤は、ほんの一例として以下のものを含んでいる。即ち、アミノグアニジン、1-アミノ-2-ヒドロキシグアニン p-トルエンスルホン酸、グアニジノエチルジスルフィド(GED)、メシル酸ブロモクリプチン、デキサメタゾン、NG,NG-ジメチル-L-アルギニン、二塩化水素化物、ジフェニレンヨードニウム塩化物、2-エチル-2-チオプソイド尿素(thiopseudourea)、ハロペリドール、L-N5-(1-イミノエチル)オルニチン、MEG、S-メチルイソチオ尿素硫酸(SMT)、S-メチル-L-チオシトルリン、NG-モノエチル-L-アルギニン、NG-モノメチル-D-アルギニン、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル、L-NIL、NG-ニトロ-L-アルギニン(L-NNA)、7-ニトロイミダゾール(Nitroindazole)、nNOS阻害剤I、1,3-PBITU、L-チオシトルリン(Thiocitrulline)、NG-プロピル-L-(NG-プロピル-L)アルギニン、SKF-525A、TRIM、N-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)、MTR-105、L-NMMA、BBS-2、ONO-1714、およびそれらの組み合わせを含む。
[他の追加活性剤]
耳の不調の治療のため本明細書に記載の抗菌剤製剤と組み合わせて随意に使用される他の医薬品は、同じ疾病を治療するために使用された他の薬剤(コルチコイドを含む);細胞毒性薬剤、コラーゲンでの処置、γグロブリン、インターフェロン、及び/又はコパクソン(copaxone);及びそれらの組み合わせを含む。さらに、他の医薬品は、本明細書に開示の耳の不調の付随する症状を治療するために随意に使用され、前記症状は、嘔吐症状、めまいおよび全身倦怠のような、AIED、中耳炎、外耳炎、メニエール病、ラムゼイハント症候群、耳梅毒、および前庭ニューロン炎を含んでいる。追加の活性剤は、本明細書に開示の組成物と製剤中の抗菌剤と調剤することができ、または、代替の送達形態を通して別々に投与することができる。
[活性剤の濃度]
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、該組成物の活性成分、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩が、組成物の約0.01重量%〜約90重量%、約0.01重量%〜約50%重量%、約0.1重量%〜約70重量%、約0.1重量%〜約50重量%、約0.1重量%〜約40重量%、約0.1%〜30重量%、約0.1%〜20重量%、約0.1%〜約10重量%、または約0.1%〜約5重量%の、活性医薬成分濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、組成物の活性成分、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩が、組成物の約1重量%〜50重量%、約5重量%〜50重量%、約10重量%〜40重量%、または約10重量%〜30重量%の、組成物の活性医薬成分、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約70重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約60重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約50重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約40重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約30重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約20重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約15重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤の約10重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約5重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約2.5重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約1重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約0.5重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約0.1重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の抗菌剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の約0.01重量%を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の活性剤、または薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の濃度が、製剤の量あたり約0.1〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約70mg/mL、約0.5mg/mL〜約50mg/mL、約0.5mg/mL〜約20mg/mL、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、あるいは約1mg/mL〜約5mg/mLである、製剤の活性医薬成分、又は薬学的に許容可能なプロドラッグもしくは塩の濃度を有する。
[耳の外科手術および移植]
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤、組成物、又はデバイスは、移植(例えば移植蝸牛刺激装置)と組み合わせて使用される(例えば、移植、短期の使用、長期使用、あるいは除去)。本明細書で使用されるように、移植は、蝸牛移植、聴力付与装置、聴力改善装置、短い電極、鼓膜切開管、ミクロの人工補綴またはピストン様人工補綴;針;幹細胞移植;薬物送達デバイス;任意の細胞に基づいた治療;又は同種のものを含む。幾つかの例では、移植は、難聴を経験する患者と連携して使用される。幾つかの例では、難聴は誕生時に存在する。幾つかの例では、難聴は、AIED、細菌性髄膜炎などのような疾病に関連し、該疾病は、蝸牛の構造および深遠な難聴の急速な閉塞により骨形成(osteoneogenesis)及び/又は神経損傷をもたらす。
幾つかの例では、移植は、耳における免疫細胞または幹細胞移植である。幾つかの例では、移植は、耳の後ろに置かれる外側部分、および、ほとんど耳が聞こえない、又はひどく聴力が低下した人に音の感覚を供給する、皮膚の下に外科的に置かれる第2の部分を有する。一例として、前記蝸牛医療機器移植は、耳の破損部分を迂回し、聴神経を直接刺激する。幾つかの例では、蝸牛移植は、片側の聴覚喪失において使用される。幾つかの例では、蝸牛移植は、両耳における聴覚喪失のために使用される。
幾つかの実施形態では、耳の介入治療(例えば鼓室内の注入、あぶみ骨切除手術、鼓膜切開、医療機器移植または細胞ベースの移植)と組み合わせた、本明細書に記載の抗菌性組成物またはデバイスの投与は、耳構造(例えば刺激作用、刺激、炎症及び/又は感染)に対する付随的損害を遅らせる又は防ぎ、外部の耳の介入治療(例えば、耳における外部デバイス及び/又は細胞の取り付け)によって引き起こされる。幾つかの実施形態では、移植と組み合わせた、本明細書に記載の抗菌性組成物またはデバイスの投与は、移植のみと比較した場合、難聴のより有効な回復を可能とする。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の抗菌性組成物またはデバイスの投与は、成功した蝸牛のデバイス移植を可能にする、基礎となる疾病(例えば細菌性髄膜炎、自己免疫の耳疾患(AIED))によって引き起こされた、蝸牛の構造への損傷を減らす。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスの投与は、耳の手術(医療機器埋込み及び/又は細胞移植)と共に、耳の手術(医療機器埋込み及び/又は細胞移植)に関連した細胞損傷及び/又は炎症を、少なくする又は防ぐ。
幾つかの実施形態では、蝸牛移植又は幹細胞移植と連携しての、本明細書に記載の抗菌性組成物又はデバイスの投与は、栄養作用(例えば、細胞の健全な成長、および/又は植込みまたは移植の領域の組織の治癒を促進する)を有する。幾つかの実施形態では、栄養作用は、耳の手術の間、または中耳内の注入手術中で望ましい。幾つかの実施形態では、栄養作用は、医療機器の設置、または細胞移植の後に望ましい。前記実施形態のうちの幾つかでは、本明細書に記載の抗菌性組成物またはデバイスは、直接の蝸牛の注入によって、鼓室階切開によって、または正円窓上への付着によって投与される。幾つかの実施形態では、医療機器は、耳内での移植前に、本明細書に記載の組成物でコーティングされる。
幾つかの実施形態では、抗炎症の組成物または、免疫抑制薬組成物(例えばコルチコステロイドのような免疫抑制薬を含む組成物)の投与は、耳の外科手術、医療機器の移植または細胞移植に関連した、炎症及び/又は感染を減らす。幾つかの例では、本明細書に記載の製剤での手術領域の灌流は、手術後の及び/又は移植後の合併症(例えば、炎症、細胞傷害、感染、骨形成など)を減らし、または除く。幾つかの例では、本明細書に記載の製剤での手術領域の灌流は、手術後の、または移植後の回復時間を短くする。
1つの態様では、本明細書に記載の製剤及びその投与形態は、内耳部分の直接的な灌流の方法に適用可能である。したがって、本明細書に記載の製剤は、耳の介入治療と組み合わせて役立つ。幾つかの実施形態では、耳の介入治療は、移植手術(例えば蝸牛内における聴力デバイスの移植)である。幾つかの実施形態では、耳の介入治療は、外科手術(非限定的な例として、蝸牛形成術(cochleostomy)、内耳手術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、前庭窓開窓術、鼓膜切開術、内リンパ球形嚢手術(endolymphatic sacculotomy)などを含む)である。幾つかの実施形態では、内耳部分は、耳の介入治療の前に、耳の介入治療の間、耳の介入治療の後、またはそれらの組み合わせで、本明細書に記載の製剤で灌流される。
幾つかの実施形態では、灌流が耳の介入治療と組み合わせて実行される場合、抗菌性組成物は、即時放免組成物(例えばシプロフロキサシンを含む組成物)である。前記実施形態のうちの幾つかでは、本明細書に記載の即時放免製剤は、拡張放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を実質的に含まない。前記実施形態のうちの幾つかでは、本明細書に記載の組成物は、製剤の5重量%未満の拡張放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を包含する。前記実施形態のうちの幾つかでは、本明細書に記載の組成物は、製剤の2重量%未満の拡張放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を包含する。前記実施形態のうちの幾つかでは、本明細書に記載の組成物は、製剤の1重量%未満の拡張放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーのようなゲル化成分)を包含する。前記実施形態のうちの幾つかでは、手術領域の灌流のために使用される、本明細書に記載の組成物は、実質的にゲル化成分を含有せず、即時放免組成物である。
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、耳の介入治療の前に(例えば、医療機器の移植、又は細胞に基づいた治療の前に)投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、耳の介入治療の間に(例えば、医療機器の移植、又は細胞に基づいた治療の間に)投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、耳の介入治療の後に(例えば、医療機器の移植、又は細胞に基づいた治療の後に)投与される。前記実施形態のうちの幾つかでは、耳の介入治療後に投与される、本明細書に記載の組成物は、中間の放出または拡張放出組成物(例えば、抗生物質を含む組成物、抗炎症剤を含む組成物、抗生物質および抗炎症剤を含む組成物など)であり、本明細書に記載されているように、ゲル化成分を包含している。幾つかの実施形態では、移植(例えば鼓膜切開チューブ)は、耳への挿入前に、本明細書に記載の組成物またはデバイスでコーティングされる。
以下(表1)に、本明細書に開示の製剤およびデバイスと共に使用するために熟慮される、活性剤の例が提示される。1つ以上の活性剤は、本明細書に記載の製剤またはデバイスの何れかにおいて使用される。
本明細書に開示の製剤と共に使用するための活性剤(これら活性剤の薬学的に許容可能な塩、プロドラッグを含む)
[滅菌の一般法]
本明細書に提供されるものは、本明細書に記載の耳の不調を改善するか、または減らす耳用組成物である。さらに、本明細書に提供されるものは、前記耳用組成物の投与を含む方法である。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは、滅菌されている。本明細書に開示する実施形態に含まれるものは、ヒトにおいて使用するための、本明細書に開示した医薬組成物またはデバイスを滅菌するための、手段およびプロセスである。目標は、感染を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬品を提供することである。米国食品医薬品局は、「http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htm」で利用可能な、出版「Guidance for Industry: Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」にて規制手引きを与えた。前記出版は、その全体内での参照によって本明細書に組み入れられる。
本明細書で使用されるように、滅菌は、生成物または包装に存在する微生物を破壊するか、または除去するプロセスを意味する。対象および組成物を滅菌するために利用可能な、任意の適切な方法を使用する。微生物を不活性化するのに利用可能な方法としては、激しく熱を加えること、致死性の化学物質、またはγ線を適用することを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、耳用治療製剤を調製するプロセスは、熱による滅菌、化学物質による滅菌、放射線による滅菌、またはろ過滅菌から選択される滅菌方法に製剤をさらす工程を含む。使用する方法は、滅菌されるデバイスまたは組成物の性質に大きく依存する。滅菌の多くの方法の詳細な記述は、Remington(The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott, WilliamsおよびWilkins著))の第40章に提供され、これは本主題に関する参照により組み入れられる。
[加熱滅菌]
激しく熱を加えることによって滅菌するために、多くの方法が利用可能である。1つの方法は、飽和蒸気によるオートクレーブを用いることによる方法である。この方法では、少なくとも121℃の温度での飽和蒸気を対象と接触させて、滅菌することができる。対象を滅菌する場合には、熱を微生物に直接的に移動させるか、または滅菌する水溶液の塊を加熱することによって、微生物に間接的に移動させる。この方法は、滅菌プロセスに柔軟性、安全性、経済性を与えるので、広範囲に実施される。
乾熱滅菌は、高温で微生物を死滅させ、発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、HEPAでろ過した微生物を含まない空気を、滅菌プロセスのために少なくとも130〜180℃の温度まで加熱し、発熱物質除去プロセスのために少なくとも230〜250℃の温度まで加熱するのに適したデバイスで行う。濃縮した製剤または粉末状製剤を再構築するための水も、オートクレーブで滅菌する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、乾熱によって(例えば、粉末内部温度が130〜140℃で約7〜11時間、または、内温150〜180℃で1〜2時間加熱することによって)、滅菌される、微粉化した抗菌剤(例えば、微粉化されたシプロフロキシン粉末)を含む。
[化学的滅菌法]
化学物質による滅菌方法は、激しい熱による滅菌に耐えられない生成物のための代替法である。この方法では、殺菌性を有する種々の気体および蒸気(例えば、エチレンオキシド、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、またはオゾン)を抗アポトーシス剤として使用する。例えば、エチレンオキシドの殺菌活性は、エチレンオキシドが反応性アルキル化剤として作用する能力によるものである。したがって、滅菌プロセスは、エチレンオキシド蒸気を、滅菌される生成物と直接接触させることを必要とする。
[放射線殺菌]
放射線による滅菌の1つの利点は、熱による分解または他の損傷を受けずに、多くの種類の生成物を滅菌できることである。一般的に使用される放射線は、60Co源由来のβ線、又はその代わりに、60Co源由来のγ線である。γ線の透過能は、溶液、組成物、不均質な混合物を含む、多くの種類の生成物を滅菌するのに使用することができる。この照射による殺菌効果は、γ線と生体高分子との相互作用によるものである。この相互作用によって、帯電している種と、遊離ラジカルとが生成される。転位および架橋プロセスのような、その後の化学反応によって、上記の生体高分子の通常の機能が失われる。また、本明細書に記載した製剤が、β線を用いて随意に滅菌されることもある。
[ろ過]
ろ過滅菌は、微生物を破壊するのではなく、溶液から除去するために用いられる方法である。膜フィルターを用いて、熱に感受性のある溶液をろ過する。前記フィルターは、混合セルロース誘導体エステル(MCE)、フッ化ポリビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の、薄く、強い、均質なポリマーであり、0.1〜0.22μmの孔径を有する。種々の特性を有する溶液は、異なるフィルター膜を用いて随意にろ過される。例えば、PVF膜およびPTFE膜は、有機溶媒をろ過するのに十分適しており、一方、水溶液は、PVF膜またはMCE膜を介してろ過される。フィルター装置は、注射器に取り付けられる利用単点の(the single point-of-use)使い捨てフィルターから、製造工場で使用する商業規模のフィルターまで、多くの規模での使用のために利用可能である。膜フィルターは、オートクレーブまたは化学滅菌で滅菌される。膜ろ過システムの検証は、標準化されたプロトコルに従って行い(文献「Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids、Vol4、No.3.Washington、D.C:Health Industry Manufacturers Association、1981」)、ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)(ATCC19146)のような珍しく小さい微生物の既知の量(約107/cm2)を用いた膜フィルターのチャレンジ試験(challenging)を含む。
医薬組成物は、膜フィルターを通すことによって随意に滅菌される。ナノ粒子を含む製剤(米国特許第6,139,870号)または多重膜小胞(Richard et al., International Journal of Pharmaceutics (2006), 312(1-2):144-50)は、それらの整った構造を破壊することなく、0.22μmフィルターを通してろ過することによって、滅菌することができる。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、ろ過滅菌の手段によって、製剤(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、粒子製剤がろ過滅菌に適するような粒子を含む。さらなる実施形態では、上述の粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満の粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌ろ過することによって確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子製剤の滅菌性は、低温滅菌ろ過によって確保される。さらなる実施形態では、低温滅菌ろ過は、0〜30℃の間、0〜20℃の間、0〜10℃の間、10〜20℃の間、または20〜30℃の間の温度で行われる。
別の実施形態では、耳に許容可能な粒子製剤を調製するプロセスは、以下のものを含む。即ち、粒子製剤を含有する水溶液を、滅菌フィルターを介して低温でろ過する工程と;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と;および、投与前に、この粒子製剤を滅菌水で再構築する工程と、を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、微粉化した活性医薬成分を含有する、単一のバイアル製剤における懸濁物として製造される。単一のバイアル製剤は、滅菌ポロクサマー溶液と、微粉化した滅菌活性成分(例えば、シプロフロキサシン)とを無菌状態で混合し、製剤を滅菌医薬容器に移すことによって調製される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤を懸濁物として含有する単一のバイアルを、分注および/または投与前に再び懸濁させる。
特異的な実施形態では、ろ過手順および/または充填手順は、本明細書に記載した製剤のゲル温度(Tgel)よりも約5℃低い温度で、及び理論値が100cP以下の粘度で行われ、蠕動ポンプを用いて、妥当な時間でろ過することが可能となる。
別の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ろ過滅菌に適したナノ粒子製剤を含む。さらなる実施形態では、ナノ粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、または大きさが100nm未満のナノ粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、ミクロスフェア製剤を含み、ここで、ミクロスフェアの滅菌性は、前駆体の有機溶液および水溶液を滅菌ろ過することによって確保される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、熱可逆性ゲル製剤を含み、ここで、ゲル製剤の滅菌性は、低温滅菌ろ過によって確保される。さらなる実施形態では、低温滅菌ろ過は、0〜30℃の間、又は0〜20℃の間、又は0〜10℃の間、又は10〜20℃の間、又は20〜30℃の間の温度で生じる。別の実施形態では、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤を調製するプロセスは、以下のものを含む。即ち、熱可逆性ゲル成分を含有する水溶液を、滅菌フィルターを通して低温でろ過する工程と;この滅菌溶液を凍結乾燥する工程と;および、投与前に滅菌水で、この熱可逆性ゲル製剤を再構築する工程とを含む。
特定の実施形態では、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝液)において溶解され、別々に滅菌される(例えば、熱処理、ろ過、γ線によって)。幾つかの例では、活性成分は、乾燥状態で別々に滅菌される。幾つかの例では、活性成分は、懸濁物として、またはコロイド状懸濁物として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳用製剤中に存在する流体ゲル成分)は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷たい混合物のろ過および/または照射)によって、別個の工程で滅菌され、次いで、別個に滅菌した2種類の溶液を無菌状態で混合し、最終的な耳用製剤を得る。幾つかの例では、本明細書に記載した製剤を投与する直前に、最終的な無菌状態の混合を行う。
幾つかの例では、従来から使用されている滅菌方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブでの)、γ線、ろ過)によって、製剤中のポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化性、または粘膜接着性のポリマー成分)、および/または活性薬剤が不可逆的に分解する。幾つかの例では、耳用製剤を、膜(例えば、0.2μMの膜)を通すろ過によって滅菌することは、この製剤が、ろ過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
したがって、本明細書に提供されるものは、ポリマー成分(例えば、熱硬化性、および/またはゲル化性、および/または粘膜接着性のポリマー成分)、および/または活性薬剤が、滅菌プロセス中に分解するのを防ぐような、耳用製剤の滅菌方法である。幾つかの実施形態では、緩衝剤成分を特定のpH範囲で用いること、および特定の比率のゲル化剤を製剤に用いることによって、活性剤(例えば、本明細書に記載した任意の耳用治療薬剤)の分解は減る、又はなくなる。幾つかの実施形態では、適切なゲル化剤および/または熱硬化性ポリマーを選択することによって、本明細書に記載した製剤をろ過によって滅菌することが可能となる。幾つかの実施形態では、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)を、特定のpH範囲と組み合わせて用いることによって、治療薬剤またはポリマー賦形剤が実質的に分解することなく、記載の製剤を高温で滅菌することが可能となる。本明細書に提供した滅菌方法の利点は、特定の例では、滅菌工程中に活性薬剤、および/または賦形剤、および/またはポリマー成分が失われることなく、製剤がオートクレーブによって最終滅菌され、微生物および/または発熱物質を実質的に含まない状態にすることである。
[微生物]
本明細書に提供されるものは、本明細書に記載の耳の不調を改善するか、または減らすといった、耳に許容可能な組成物またはデバイスである。さらに、本明細書に提供されるものは、前記耳用組成物の投与を含む方法である。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは、実質的に微生物を含まない。許容可能な汚染微生物数又は滅菌レベルは、治療に許容可能な組成物を定義する適用可能な標準(米国薬局方1111章(以下参照)を含むが、これに限定されない)に基づく。例えば、許容可能な滅菌(例えば、汚染微生物数)レベルは、製剤1gあたり約10コロニー形成単位(cfu)、製剤1gあたり約50cfu、製剤1gあたり約100cfu、製剤1gあたり約500cfu、または製剤1gあたり約1000cfuを含む。幾つかの実施形態では、製剤のための許容可能な汚染微生物数レベル又は無菌性は、10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、または1000cfu/mL未満の微生物剤を含む。加えて、許容可能な汚染微生物数レベルは、特定の好ましくない微生物剤の除外を含む。例として、特定の好ましくない微生物剤は、大腸菌(E.coli)、サルモネラ種、緑膿菌(P.aeruginosa)、および/または他の特定の微生物剤を含むが、これらに限定されない。
耳に許容可能な耳用治療剤製剤の無菌性は、米国薬局方61章、62章および71章に従い、滅菌保証プログラムで確認する。滅菌保証による品質コントロール、品質保証、および検証プロセスの鍵となる要素は、滅菌試験方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、試験対象の組成物サンプルを成長培地に加え、21日までの期間インキュベートする、直接接種である。成長培地の濁りは、汚濁を示す。この方法の欠点は、バルク物質からのサンプリング量が少量だと感度が下がること、微生物成長の検出が視覚的な観察に基づくことが挙げられる。代替法は、膜ろ過による滅菌試験である。この方法では、ある量の生成物を小さな膜濾紙に通す。次いで、濾紙を培地に入れ、微生物の成長を促進させる。この方法は、生成物の塊全体をサンプリングするので、感度がより高くなるという利点を有する。膜ろ過による滅菌試験によって測定するために、市販のMillipore Steritest滅菌試験システムを随意に用いる。クリームまたは軟膏のろ過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TLHVSL210が使用される。エマルジョンまたは粘性生成物のろ過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TLAREM210またはTDAREM210が使用される。あらかじめ充填した注射器のろ過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHASY210が使用される。エアロゾルまたはフォームとして分散した物質のろ過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHVA210が使用される。アンプルまたはバイアル中の可溶性粉末のろ過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHADA210またはTTHADV210が使用される。
大腸菌およびサルモネラ菌のための試験は、30〜35℃で24〜72時間インキュベートされたラクトース培養液の使用、MacConkey寒天および/またはEMB寒天中で、18〜24時間インキュベートすること、および/またはRappaport培地の使用を含む。緑膿菌を検出するための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方の62章は、特定の好ましくない微生物のための試験手順をさらに列挙している。
特定の実施形態では、本明細書に記載の任意の制御放出性製剤は、製剤1gあたり、微生物剤のコロニー形成単位(CFU)が約60未満、コロニー形成単位が約50未満、コロニー形成単位が約40未満、またはコロニー形成単位が約30未満である。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用製剤は、内リンパおよび/または外リンパと、等浸透圧になるように処方される。
[エンドトキシン]
本明細書に提供されるものは、本明細書に記載の耳の不調を改善するか、または減らす耳用組成物である。さらに、本明細書に提供されるものは、上述の耳用組成物を投与することを含む方法である。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは、実質的にエンドトキシンを含まない。滅菌プロセスのさらなる態様は、微生物を殺して生じる副生成物(以下、「生成物」)を除去することである。デパイロジェネーション(depyrogenation)プロセスは、サンプルから発熱物質を除去する。発熱物質は、免疫応答を誘発するエンドトキシンまたはエクソトキシンである。エンドトキシンの例は、グラム陰性菌の細胞壁に見出されるリポ多糖体(LPS)分子である。オートクレーブまたはエチレンオキシドを用いる処置のような滅菌手順によって、細菌は死滅するが、LPS残基は、敗血性ショックのような炎症性免疫反応を誘発する。エンドトキシンの分子の大きさが広範囲にわたって様々であり得るので、エンドトキシンの存在は、「エンドトキシン単位」(EU)で表わされる。1EUは、大腸菌LPSの100ピコグラムに相当する。ヒトは、体重のわずか5EU/kgに対する反応を生じる場合がある。汚染微生物数(例えば微生物の限界)及び/又は無菌(例えば内毒素レベル)は、当業者に認識されるような、任意の単位で表現される。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、被検体の体重の5EU/kg)と比較した場合、低いエンドトキシンレベルを含有する(例えば、被検体の体重の4EU/kg未満)。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約3EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、被検体の体重の約2EU/kg未満のEUを有する。
幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤の約4EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤の約3EU/kg未満のEUを有する。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」の約5EU/kg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」の約1EU/kg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、「生成物」の約0.2EU/kg未満のEUを有する。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約5EU/g未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約4EU/g未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約3EU/g未満のEUを有する。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約5EU/mg未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約4EU/mg未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、ユニットまたは「生成物」の約3EU/mg未満のEUを有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、製剤の約1〜約5EU/mLのEUを含有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物は、製剤の約2〜約5EU/mLのEU、製剤の約3〜約5EU/mLのEU、または製剤の約4〜約5EU/mLのEUを含有する。
特定の実施形態では、本明細書に記載の耳用組成物またはデバイスは、従来の許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、製剤の0.5EU/mL)と比較した場合、低いエンドトキシンレベルを有する(例えば、製剤の0.5EU/mL未満)。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤またはデバイスは、製剤の約0.5EU/mL未満のEUを有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤の約0.4EU/mL未満のEUを有する。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、製剤の約0.2EU/mL未満のEUを有する。
発熱物質の検出は、ほんの一例として、様々な方法で行われる。滅菌のための試験としては、米国薬局方(USP)71章の滅菌試験(SterilityTests)(第23版、1995)に記載されている試験が挙げられる。ウサギの発熱物質試験およびリムルス試験(Limulus amebocyte lysate test)は、両方とも、米国薬局方の85章および151章(USP23/NF18、Biological Tests、The United States PHarmacopeial Convention、Rockville、MD、1995)に特定されている。代替的な発熱物質アッセイは、単球活性化-サイトカインアッセイに基づいて開発されている。品質制御用途に適した均一な細胞株が開発されており、ウサギ発熱物質試験およびリムルス試験(Limulus amebocyte lysate test)を通過したサンプルでの発熱を検出する能力を示した(Taktakらによる文献「J.PHarm.PHarmacol.(1990)、43:578-82」)。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤は、デパイロジェネーション(depyrogenation)される場合がある。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳用治療剤製剤を製造するプロセスは、発熱性に関する製剤を試験する工程を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、実質的に発熱物質を含まない。
[pHおよび実際のモル浸透圧濃度]
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の耳用組成物またはデバイスは、内耳液(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)に適合する、イオン平衡を与えるように処方される。
特定の例では、内リンパおよび外リンパのイオン性組成物は、有毛細胞の電気化学インパルスを制御し、故に聴力を制御する。特定の例では、耳の有毛細胞に沿った電気化学インパルスの伝導における変化は、難聴をもたらす。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオン平衡における変化は、完全な難聴をもたらす。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオン平衡における変化は、部分的な難聴をもたらす。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオン平衡における変化は、永続的な難聴をもたらす。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオン平衡における変化は、一時的な難聴をもたらす。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物又はデバイスは、内リンパのイオン平衡を崩さないために処方される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物又はデバイスは、内リンパと同じ、または実質的に同じであるイオン平衡を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、部分的又は完全な難聴をもたらすように、内リンパのイオン平衡を分裂させない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、永続的又は一時的な難聴をもたらすように、内リンパのイオン平衡を分裂させない。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物又はデバイスは、外リンパのイオン平衡を実質的に崩さない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物又はデバイスは、外リンパと同じ、または実質的に同じであるイオン平衡を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、組成物またはデバイスが外リンパのイオン平衡を分裂させないとともに、部分的又は完全な難聴をもたらさない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物またはデバイスは、組成物またはデバイスが外リンパのイオン平衡を分裂させないとともに、一時的又は永続的な難聴をもたらさない。
本明細書で使用されるように、「実際のモル浸透圧濃度/オスモル濃度」又は「到達可能な実際のモル浸透圧濃度/オスモル濃度」は、活性薬剤と、ゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)を除く全ての賦形剤の、モル浸透圧濃度/オスモル濃度を計ることによって決定されるように、組成物又はデバイスのモル浸透圧濃度/オスモル濃度を意味する。本明細書に記載の組成物又はデバイスの実際のモル浸透圧濃度は、適切な方法、例えば、Viegasらの文献「Int.J.Pharm、1998、160、157‐162」の中に記載されているような凝固点降下方法によって測定される。幾つかの例では、本明細書に記載の組成物又はデバイスの実際のモル浸透圧濃度は、より高い温度で組成物又はデバイスのモル浸透圧濃度を決定することが可能な、蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。幾つかの例では、蒸気圧降下法によって、ゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む組成物又はデバイスのモル浸透圧濃度を、より高い温度で決定することができ、ここで、ゲル化剤はゲルの形態である。
幾つかの実施形態では、標的作用部位(例えば、外リンパ)でのモル浸透圧濃度は、本明細書に記載の組成物又はデバイスの送達されるモル浸透圧濃度(すなわち、正円窓膜を透過または浸透する物質のモル浸透圧濃度)とほぼ同じである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物又はデバイスは、約150mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約370mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの送達可能なモル浸透圧濃度を有する。
本明細書に開示の耳用組成物又はデバイスの実際のモル浸透圧濃度は、約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約320mOsm/kg、又は約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物又はデバイスは、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約250mOsm/L〜約320mOsm/L、または約280mOsm/L〜約320mOsm/Lの実際のモル浸透圧濃度を有する。
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。加えて、内リンパは、高濃度の正に帯電したアミノ酸を有する。外リンパに存在する主なカチオンは、ナトリウムである。特定の例では、内リンパおよび外リンパのイオン性組成物は、有毛細胞の電気化学インパルスを調節する。特定の例では、内リンパまたは外リンパのイオン平衡におけるいかなる変化も、耳の有毛細胞に沿った電気化学インパルスの伝導が変化するため、難聴を生じさせる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、外リンパのイオン平衡を崩さない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、外リンパと同じ、または実質的に同じであるイオン平衡を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、内リンパのイオン平衡を崩さない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、内リンパと同じ、または実質的に同じであるイオン平衡を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した耳用製剤は、内耳液(例えば、内リンパおよび/または外リンパ)に適合するイオン平衡を与えるように処方される。
内リンパおよび外リンパは、血液の生理学的pHに近いpHを有する。内リンパは、約7.2〜7.9のpH範囲を有し、外リンパは、約7.2〜7.4のpH範囲を有する。体幹に近い(proximal)内リンパのインサイツpHは、約7.4であり、末梢に近い内リンパのpHは、約7.9である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは、(例えば、緩衝液を用いることによって)内リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜9.0の範囲のpHに調節される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約5.5〜約8.0、約6〜約8.0、又は約6.6〜約8.0の範囲のpHに調節される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のpHは、外リンパに適合する約7.0〜7.6の範囲のpHに調節される。
幾つかの実施形態では、有用な製剤は、1つ以上のpH調製剤または緩衝剤も含む。
適切なpH調整剤または緩衝剤は、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせまたは混合物を含むが、これらに限定されない。
1つの実施形態では、1つ以上の緩衝剤を本開示の製剤で利用する場合、1つ以上の緩衝剤は、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと合わせられ、最終製剤中に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝剤の量は、ゲル製剤のpHが、体内の天然の緩衝系を妨害しないような量である。
1つの実施形態では、希釈剤はまた、より安定な環境を提供できるため、化合物を安定化させるために用いられる。緩衝液(pH制御、または維持もできるもの)で溶解された塩は、希釈剤として当技術分野で利用され、希釈剤はリン酸緩衝生理食塩溶液を含むが、これに限定されない。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載した任意のゲル製剤は、医薬品(例えば、抗菌剤)またはゲルを含むポリマーが分解することなく、ゲル製剤の滅菌(例えば、ろ過、または無菌状態で混合、または熱処理により)、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌によって)を可能にするpHを有する。滅菌中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤のpHを、滅菌プロセス(例えば、高温でのオートクレーブ処理)中、製剤のpHを7〜8に維持するように設計する。
特定の実施形態では、本明細書に記載した任意のゲル製剤は、医薬品(例えば、抗菌剤)またはゲルを含むポリマーが分解することなく、ゲル製剤の最終滅菌(例えば、熱処理および/またはオートクレーブ処理による)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ処理中の耳用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝剤のpHは、高温での製剤のpHを7〜8に維持するように設計される。製剤中で使用する耳用薬剤に依存して、任意の適切な緩衝剤を使用する。幾つかの例では、温度がおよそ‐0.03/℃で上がるにつれて、TRISのpKaが小さくなり、温度が約0.003/℃で上がるにつれて、PBSのpKaが大きくなるため、250°F(121℃)でのオートクレーブ処理によって、TRIS緩衝液中でpHシフトが顕著に下がり(すなわち、より酸性になり)、一方、PBS緩衝液中で、pHシフトは相対的にほとんど上がらず、したがって、PBS中よりもTRIS中で、耳用薬剤の加水分解および/または分解がはるかに増える。本明細書に記載のような緩衝液およびポリマー添加剤(例えば、CMC)を適切に組み合わせて使用することによって、耳用薬剤の分解が減る。
幾つかの実施形態では、pHが約5.0〜約9.0、約5.5〜約8.5、約6.0〜約7.6、約7〜約7.8、約7.0〜約7.6、約7.2〜約7.6、または約7.2〜約7.4である製剤は、本明細書に記載の耳用製剤の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)。特定の実施形態では、pHが約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6である製剤は、本明細書に記載する任意の組成物の滅菌に適している(例えば、ろ過、または無菌状態で混合、または熱処理、および/またはオートクレーブ処理(例えば、最終滅菌)によって)。
幾つかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載したようなpHを有し、非限定的な例として、本明細書に記載したセルロース系増粘剤のような増粘剤(例えば、粘度を高める薬剤)を含む。幾つかの例では、第2のポリマー(例えば、増粘剤)及び本明細書に記載のような製剤のpHの追加は、耳用製剤中の耳用薬剤および/またはポリマー成分が、なんら実質的に分解することなく、本明細書に記載した製剤を滅菌することを可能とする。幾つかの実施形態では、本明細書に記載したpHを有する製剤中、増粘剤に対する熱可逆性ポロクサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載した徐放性製剤および/または拡張放出型製剤は、ポロクサマー407(プルロニックF127)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率で含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の合計重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の合計重量の約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、又は約25%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約7.5%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約10%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約11%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約12%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約13%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約14%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約15%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約16%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約17%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約18%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約19%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約20%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約21%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約23%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えば、プルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約25%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の合計重量の約1%、約5%、約10%、または約15%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤中の増粘剤(例えば、ゲル化剤)の量は、製剤の合計重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間のうち任意の期間にわたって、pHに対して安定である。他の実施形態では、本明細書に記載した製剤は、少なくとも約1週間にわたって、pHに対して安定である。また、本明細書に記載されるものは、少なくとも約1ヶ月間にわたって、pHに対して安定な製剤である。
[等張化剤]
一般的に、内リンパは、外リンパよりもオスモル濃度が高い。例えば、内リンパは、約304mOsm/kg H2Oのオスモル濃度を有し、一方、外リンパは、約294mOsm/kg H2Oのオスモル濃度を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載した製剤に、耳用製剤の実際のオスモル濃度が約100mOsm/kg〜約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg〜約800mOsm/kg、約250mOsm/kg〜約500mOsm/kg、または約250mOsm/kg〜約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg〜約320mOsm/kgになるような量で、等張化剤を加える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、約100mOsm/L〜約1000mOsm/L、約200mOsm/L〜約800mOsm/L、約250mOsm/L〜約500mOsm/L、約250mOsm/L〜約350mOsm/L、約280mOsm/L〜約320mOsm/L、または約250mOsm/L〜約320mOsm/Lの実際のオスモル濃度を有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤の送達可能なモル浸透圧濃度は、標的とする耳の構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)とモル浸透圧濃度が等しくなるように設計される。特定の実施形態では、本明細書に記載した耳用組成物は、約250〜約320mOsm/L、そして好ましくは約270〜約320 mOsm/Lの標的作用部位で、送達された外リンパに適切なモル浸透圧濃度を与えるように製剤されている。特定の実施形態では、本明細書に記載した耳用組成物は、約250〜約320mOsm/kg H2Oの標的作用部位で、送達された外リンパに適切なオスモル濃度、あるいは約270〜約320のmOsm/kg H2Oのオスモル濃度を与えるように製剤されている。特定の実施形態では、本明細書に記載した耳用組成物は、約250〜約320mOsm/kg H2Oの標的作用部位で、送達された外リンパに適切なオスモル濃度、あるいは、約270〜約320mOsm/kg H2Oのオスモル濃度を与えるように製剤されている。特定の実施形態では、製剤の送達可能な浸透圧/浸透圧(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、浸透圧/熱可逆性ゲルポリマーが存在しない製剤の浸透圧/浸透圧)は、例えば、適切な濃度の塩(例えば、カリウム塩またはナトリウム塩の濃度を用いることによって調節されるか、または標的部位に送達する際に、製剤を内リンパに適合性および/または外リンパに適合性にする(すなわち、内リンパおよび/または外リンパと等しい浸透圧を有する)ようにする等張化剤を用いることによって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤のモル浸透圧濃度は、さまざまな量の水が、ポリマーのモノマー単位と対合するため、信頼できる値ではない。製剤の実際のモル浸透圧濃度(すなわち、ゲル化剤または増粘剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマー)は、信頼できる値であり、任意の適切な方法(例えば、凝固点降下法、蒸気圧降下法)によって測定される。幾つかの場合では、本明細書に記載した製剤は、投与した際に、内耳環境へのかく乱を最小限にして、投与による哺乳動物への不快感(例えば、めまいおよび/または吐き気)を最小限にするように、(例えば、標的部位(例えば、外リンパ))で送達可能なモル浸透圧濃度を与える。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、外リンパおよび/または内リンパと等張である。等張性製剤は、等張化剤を加えることによって与えられる。適切な等張化剤としては、任意の薬学的に許容可能な糖、塩または、これらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、他の電解質が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、緊張力剤は、非耳毒性である。
有用な耳用組成物は、組成物のオスモル濃度を許容範囲にするのに必要な量の1つ以上の塩を含む。このような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸塩アニオン、アスコルビン酸塩アニオン、ほう酸塩アニオン、リン酸塩アニオン、重炭酸塩アニオン、硫酸塩アニオン、チオ硫酸塩アニオン又は亜硫酸水素塩アニオンを有するものを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度が、約1μM〜約10μM、約1mM〜約100mM、約0.1mM〜約100mM、約0.1mM〜約100nMである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度は、製剤の重量に対する活性成分が、約0.01%〜約20%、約0.01%〜約10%、約0.01〜約7.5%、約0.01%〜6%、約0.01〜5%、約0.1〜約10%、又は、約0.1%〜約6%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載するようなpHおよび/または実際のモル浸透圧濃度を有し、活性医薬成分の濃度は、製剤の容量に対する活性成分が、約0.1〜約70mg、約1mg〜約70mg/mL、約1mg〜約50mg/mL、約1mg/mL〜約20mg/mL、約1mg/mL〜約10mg/mL、約1mg/mL〜約5mg/mL、または約0.5mg/mL〜約5mg/mLである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、本明細書に記載されているようなpH及び/又は実際のモル浸透圧濃度を有しており、活性医薬成分の濃度は、製剤の容量に対する活性成分が、1μg/mL〜約500μg/mL、約1μg/mL〜約250μg/mL、約1μg〜約100μg/mL、約1μg/mL〜約50μg/mL、または約1μg/mL〜約20μg/mLである。
[粒度]
大きさを小さくすることは、表面積を大きくし、および/または、製剤の分散性を調節するのに用いられる。また、本明細書に記載する任意の製剤について、一貫性のある平均粒径分布(PSD)(例えば、マイクロメートルの大きさの粒子、ナノメートルの大きさの粒子など)を維持するために、大きさを小さくするために用いられる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、多粒子を含み、すなわち、複数の粒径(例えば、微粉化した粒子、ナノの大きさの粒子、大きさが一定ではない粒子、コロイド状粒子)を有し、すなわち、この製剤は、多粒子製剤である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤は、1つ以上の多粒子の(例えば、微粉化した)治療薬剤を含む。微粉化は、固体物質粒子の平均直径を小さくするプロセスである。微粉化した粒子は、直径がほぼマイクロメートルの大きさからほぼナノメートルの大きさである。幾つかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約0.5μm〜約500μmである。幾つかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約1μm〜約200μmである。幾つかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約2μm〜約100μmである。幾つかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は、約3μm〜約50μmである。幾つかの実施形態では、微粉化した粒子状固体は、粒径が、約5μm未満、約20μm未満、および/または約100μm未満である。幾つかの実施形態では、抗菌剤の粒子状物質(例えば、微粉化した粒子)を用いると、多粒子ではない(例えば、微粉化していない)抗菌剤を含む製剤と比較して、本明細書に記載する任意の製剤から抗菌剤を拡張放出および/または徐放することが可能となる。幾つかの例では、多粒子(例えば、微粉化した)抗菌剤を含有する製剤は、塞がったり、目詰まりしたりすることなく、27G針を取り付けた1mL注射器から放出される。
幾つかの例では、本明細書に記載する任意の製剤中の任意の粒子は、被覆粒子(例えば、被覆微粉化粒子、ナノ粒子)および/またはミクロスフェアおよび/またはリポソーム粒子である。粒径を小さくする技術としては、一例として、粉砕、製粉(例えば、空気摩擦による製粉(ジェットミルによる製粉)、ボールミルによる製粉)、コアセルベーション、複合コアセルベーション、高圧均質化法、スプレー乾燥および/または超臨界流体による結晶化が挙げられる。幾つかの例では、粒子は、機械的衝撃(例えば、ハンマーミル、ボールミルおよび/またはピンミルによる)によって大きさが調節される。幾つかの例では、粒子は、流体エネルギー(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床型ジェットミルによる)によって大きさが調節される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、結晶性粒子および/または等方性粒子を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、アモルファス粒子および/または異方性粒子を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、治療薬剤が、治療薬剤の遊離塩基、または塩、またはプロドラッグ、またはこれらの任意の組み合わせである治療薬剤粒子を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、ナノ粒子状物質を含む1つ以上の抗菌剤を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、抗菌剤ビーズ(例えば、バンコマイシンビーズ)を含み、このビーズは、随意に、制御放出性賦形剤でコーティングされている。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した製剤は、顆粒化された抗菌剤、および/または径を小さくし、制御放出性賦形剤でコーティングされた抗菌剤を含む。顆粒化され、コーティングされた抗菌剤粒子状物質は、次に、随意に、微粉化され、および/または、本明細書に記載のいずれかの組成物に処方される。
幾つかの例では、中性分子、遊離酸状態または遊離塩基状態の抗菌物質、および/または抗菌物質塩との組み合わせを用い、本明細書に記載した手順を用い、パルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製する。幾つかの製剤では、微粉化した抗菌剤(および/またはその塩またはプロドラッグ)と、コーティングされた粒子(例えば、ナノ粒子、リポソーム、ミクロスフェア)の組み合わせを用い、本明細書に記載した手順を用い、パルス放出方式の耳用薬剤製剤を調製する。または、抗菌剤(例えば、微粉化した抗菌剤、遊離基部、これらの遊離酸または塩またはプロドラッグ;多粒子抗菌剤、これらの遊離基部、遊離酸または塩またはプロドラッグ)を、シクロデキストリン、界面活性剤(例えば、ポロクサマー(407、338、188)、ツイーン(80、60、20、81)、PEG-水素化ヒマシ油、N-メチル-2-ピロリドンのような共溶媒の補助によって、送達される投薬の20%まで溶解し、本明細書に記載した任意の手順を用いて、パルス放出型製剤を調製することによって、パルス型の放出プロフィールが達成される。
特定の実施形態では、任意の耳に適合する本明細書に記載した製剤は、1つ以上の微粉化した医薬品(例えば、抗菌剤)を含む。このような実施形態のうち幾つかでは、微粉化した医薬品は、微粉化した粒子、コーティングされた(例えば、拡張放出コーティングで)微粉化した粒子、またはこれらの組み合わせを含む。このような実施形態のうち幾つかでは、微粉化した粒子、コーティングされた微粉化した粒子、またはこれらの組み合わせを含む微粉化した医薬品は、抗菌剤を、中性分子、遊離酸、遊離塩基、塩、プロドラッグ、またはこれらの組み合わせとして含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、抗菌剤、を微粉化した粉末として含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、抗菌剤を、微粉化した抗菌剤の粉末の形態で含む。
本明細書に記載した多粒子および/または微粉化した抗菌剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、耳の構造(例えば、内耳)に送達される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載した多粒子および/または微粉化した抗菌剤は、固体マトリックス、液体マトリックスまたはゲルマトリックスを含む任意の種類のマトリックスを用い、鼓室内注射によって耳の構造(例えば、内耳)に送達される。
[調整可能な放出特性]
本明細書に記載されている任意の製剤、成分またはデバイスからの活性剤の放出は、所望放出特性に随意に調整可能である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化成分が実質的に遊離した溶解である。そのような例では、組成物は、本質的に活性剤の即時放出を提供する。そのような実施形態のうちの幾つかでは、組成物は、耳の構造の潅流(例えば手術中)に役立つ。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化成分が実質的に遊離しており、微粉化にされた耳の剤(例えばコルチコステロイド、抗菌剤またはそのようなもの)を含む溶液である。そのような実施形態のうちの幾つかでは、組成物は、約2日から約4日にかけて活性剤の放出を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約3日までの期間にわたる活性剤の放出を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約5日までの期間にわたる活性剤の放出を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約2日から約7日までの期間にわたる活性剤の放出を与える。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、微粉化された耳の剤と組み合わせたゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、より長い期間にわたる拡張徐放を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、約14-17%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)と、耳の剤を微粉化したものとを含み、約1週から約3週までの期間にわたる拡張徐放を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、約18-21%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)と、耳の剤を微粉化したものとを含み、約3週から約6週までの期間にわたる拡張徐放を与える。
従って、組成物内のゲル化剤の量および耳の剤の粒径は、組成物からの耳の剤の所望放出特性に調整可能である。
本明細書に記載されているように、微粉化された耳の剤を含む組成物は、微粉化されていない耳の剤を含む組成物と比べて、より長い期間にわたる拡張放出を与える。幾つかの例では、微粉化された耳の剤は、遅い分解によって活性剤の安定した供給(例えば+/ - 20%)を与え、活性剤のためのデポー剤として役立ち;そのようなデポー効果は、耳内での耳の剤の滞留時間を増加させる。特定の実施形態では、組成物内でのゲル化剤の量と組み合わせる活性剤(例えば微粉化された活性剤)の適切な粒径の選択は、時間、日、週または数か月の期間の活性剤の放出を可能にする調整可能な拡張放出特性を与える。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている任意の製剤の粘性は、耳適合性のゲルからの適切な速度の放出を与えるように設計されている。幾つかの実施形態では、増粘剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)をもたらす。MDTは、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出された耳の剤は、Korsmeyer-Peppas方程式に随意に適合される。
ここで、Qは、時間tで放出された耳の剤の量であり、Qαは、耳の剤の総放出量であり、kは、n位の放出定数であり、nは、溶解機構に関する無次元数であり、bは、n=1が侵食制御機構を特徴付ける、初期バースト放出機構を特徴付けている、軸切片(axis intercept)である。平均溶解時間(MDT)は、薬物分子が放出される前にマトリックス内にある、異なる期間の合計を、総分子量で割ったものであり、随意に次式で算出される。
例えば、組成物またはデバイスの平均の溶解時間(MDT)とゲル化剤(例えばポロクサマー)の濃度との直線関係は、拡散によってではなくポリマーゲル(例えばポロクサマー)のエロージョンにより耳の剤が解放されることを示す。別の実施例では、非線形の関係は、拡散及び/又はポリマーゲルの変質の組み合わせを介する耳用薬剤の放出を示す。別の実施例では、組成物またはデバイス(活性剤のより速い放出)のより速いゲル排出タイムコースは、より低い平均溶解時間(MDT)を示す。組成物内でのゲル化成分及び/又は活性剤の濃度は、MDTに対する適切なパラメーターを測定するために試験される。幾つかの実施形態では、注射容量は、症状発現前および臨床研究にふさわしい要因を測定するために試験される。活性剤のゲル強度および濃度は、組成物からの耳の剤の放出動力学に影響する。低いポロクサマー濃度では、排出速度は、加速される(MDTはより低速である)。組成物またはデバイス内での耳の剤の濃度増加は、耳内での耳の剤の滞留時間及び/又はMDTを延長する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも6時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも10時間である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤に対するMDTは、約30時間から約48時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤に対するMDTは、約30時間から約96時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤に対するMDTは、約30時間から約1週である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスに対するMDTは、約1週から約6週である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイス内での活性剤に対する平均滞留時間(MRT)は、約20時間から約48時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤に対するMRTは、約20時間から約96時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスからの活性剤に対するMRTは、約20時間から約1週である。
幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約20時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約30時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約40時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約50時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約60時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約70時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約80時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約90時間である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約1週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約90時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスに対するMRTは、約1週から約6週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約1週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約2週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約3週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約4週である。幾つかの実施形態では、活性剤に対するMRTは、約5週である。耳の剤の半減期および耳の剤の平均滞留時間は、本明細書に記載されている方法を使用する外リンパ内での耳の剤の濃度の測定によって、各製剤に対して測定される。
特定の実施形態では、本明細書に記載されている任意の制御放出性耳製剤は、耳用薬剤の曝露を増加し、制御放出性耳製剤でない製剤と比較して、耳の流体(例えば内リンパ及び/又は外リンパ)の曲線下面積(AUC)を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載されている任意の制御放出性耳製剤は、耳用薬剤の露光時間を増加し、制御放出性耳製剤でない製剤と比較して、耳の流体(例えば内リンパ及び/又は外リンパ)のCmaxを、約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載されている任意制御放出性耳製剤は、制御放出性耳製剤でない製剤と比較して、Cmax対Cminの比率を変更する(例えば、縮小する)。特定の実施形態では、本明細書に記載されている任意の制御放出性耳製剤は、耳用薬剤の曝露を増加し、制御放出性耳製剤でない製剤と比較して、耳の剤の濃度がCmin上にある時間の長さを、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%増加させる。特定の例では、本明細書に記載されている制御放出性製剤は、Cmax到達時間を遅延する。特定の例では、薬物の抑制された安定した放出は、薬物の濃度がCmin上にある時間を延長する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている耳組成物は、内耳内での薬物の滞留時間を延長し、安定した薬物曝露特性を与える。幾つかの例では、組成物内での活性剤の濃度の増大は、クリアランスプロセスを飽和し、到達されるべき、より迅速で安定した定常状態を可能にする。
特定の例では、一旦薬物の薬物曝露(例えば内リンパまたは外リンパ内での濃度)が、定常状態に達すれば、内リンパまたは外リンパ内での薬物の濃度は、延長された長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、3週、6週、2か月)、治療量に、またはその治療量のまわりにとどまる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている制御放出性製剤から放出された活性剤の定常状態濃度は、制御放出性製剤でない製剤から放出された活性剤の定常状態濃度の約5倍から約20倍である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている制御放出性製剤から放出された活性剤の定常状態濃度は、制御放出性製剤でない製剤から放出された活性剤の定常状態濃度の約20倍から約50倍である。図5は、4つの組成物から活性剤の予測された調整可能な放出を示す。
[医薬製剤]
本明細書で提供されているものは、少なくとも1つの抗菌剤と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤または担体とを含む医薬組成物またはデバイスである。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、他の医療薬剤または医薬品、担体、アジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、他の治療基質も含有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物またはデバイスは、適用するときにゲルの視覚化を増強するのに役立つ染料を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の耳に許容可能な組成物またはデバイスと適合する染料としては、エバンスブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳用製剤の合計重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)が挙げられる。他の一般的な染料、例えば、FD&Cレッド40、FD&Cレッド3、FD&Cイエロー5、FD&Cイエロー6、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cグリーン3、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)、および/または染料は、MRI、CATスキャン、PETスキャン等のような非侵襲性造影技術と組み合わせて視覚化可能である。ガドリニウム系MRI染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載した任意の耳用製剤とともに使用することが想定されている。本明細書に記載の任意の製剤または組成物と適合する他の染料は、Sigma-Aldrichの染料に関するカタログに列挙されている(この開示については、本明細書に参考として組み込まれる)。
幾つかの実施形態では、聴覚障害、平衡障害、または他の耳の疾患を監視するか、または観察するために、機械デバイスまたは造影デバイスが使用される。例えば、磁気共鳴映像(MRI)デバイスは、特に、実施形態の範囲内であると想定されており、ここで、MRIデバイス(例えば、3 テスラMRIデバイス)は、メニエール病の進行と、その後の、本明細書に開示する医薬製剤による処置とを評価することがでる。また、ガドリニウム系染料、ヨウ素系染料、バリウム系染料なども、本明細書に記載する任意の耳に適合する組成物またはデバイスおよび/または本明細書に記載した任意の機械デバイスまたは造影デバイスを用いて使用することが想定されている。特定の実施形態では、ガドリニウム水和物を、MRIおよび/または任意の本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスと組み合わせて使用され、疾患の重篤度(例えば、内リンパ水腫の大きさ)、内耳への製剤の浸透、および/または本明細書に記載した耳の疾患(例えば、メニエール病)における医薬製剤/デバイスの治療効果を評価する。
本明細書に記載の任意の医薬組成物またはデバイスは、組成物またはデバイスを、蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳または外字と接触させた状態で配置することによって投与する。
本明細書に記載の耳に許容可能な制御放出性抗菌剤の医薬製剤の特定の実施形態では、抗菌剤は、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「内耳に許容可能なゲル製剤」、「中耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」、またはこの変形で呼ばれるゲルマトリックスの状態で提供される。ゲル製剤のすべての要素は、標的とする耳の構造と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とする耳の構造内にある所望の部位に抗菌剤の制御放出を与える。幾つかの実施形態では、ゲル製剤は、抗菌剤を所望の標的部位に送達するための、即時型または即効型の放出要素を有している。他の実施形態では、ゲル製剤は、抗菌剤を送達するための徐放性要素を有している。幾つかの実施形態では、ゲル製剤は、多粒子(例えば、微粉化した)抗菌剤を含む。幾つかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、生分解性である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、正円窓膜の外側粘液層に付着可能な粘膜付着性の賦形剤を含む。また、他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、浸透を促進する賦形剤を含んでいる。
さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、約500〜1,000,000センチポアズ、約750〜1,000,000センチポアズ、約1000〜1,000,000のセンチポアズ、約1000〜400,000のセンチポアズ、約2000〜100,000のセンチポアズ、約3000〜50,000のセンチポアズ、約4000〜25,000のセンチポアズ、約5000〜20,000のセンチポアズ、あるいは約6000〜15,000のセンチポアズ、の粘度を与えるのに十分な粘度を増強する薬剤を含有する。幾つかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、約50,0000〜1,000,000センチポアズの粘度を与えるのに十分な粘度を増強する薬剤を含有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスは、体温で低粘度の組成物またはデバイスである。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約1%から約10%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約2%から約10%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約5%から約10%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)から実質的に遊離している。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている低粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、約100 cPから約10,000 cPまでの見かけ粘度を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている低粘度抗菌性組成物またはデバイスは、約500 cPから約10,000 cPまで見かけ粘度を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている低粘度抗菌性組成物またはデバイスは、約1000 cPから約10,000 cPまでの見かけ粘度を与える。そのような実施形態のうちの幾つかでは、低粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、耳の外部の介入治療(例えば中耳手術、内耳手術、鼓室穿孔術、蝸牛形成術、迷路切開、乳突起削開術、あぶみ骨切除手術、stapedotomy、内リンパのsacculotomyまたはその他同種のものを含むが、これらに限定されない外科手術手技)との組み合わせによって投与される。そのような実施形態のうちの幾つかでは、低粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、耳の介入治療中に投与される。他のそのような実施形態では、低粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、耳の介入治療前に投与される。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物またはデバイスは、体温で高粘度の組成物またはデバイスである。幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約10%から約25%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している。幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約14%から約22%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約15%から約21%までの粘度増強剤(例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーのようなゲル化成分)を包含している。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、約100000 cPから約1,000,000 cPまでの見かけ粘度を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、約150000 cPから約500,000 cPまでの見かけ粘度を与える。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されている高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、約250000 cPから約500,000 cPまでの見かけ粘度を与える。そのような実施形態の幾つかでは、高粘度の組成物又はデバイスは、室温で液体で、およそ室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃までの発熱している個体を含む)との間でゲルである、ことを特徴とする。幾つかの実施形態では、高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、本明細書に記載されている耳の疾患または疾病の処置用の単剤療法として投与される。幾つかの実施形態では、抗菌性高粘度の組成物またはデバイスは、耳の外部の介入治療(例えば中耳手術、内耳手術、鼓膜手術(typanostomy)、蝸牛形成術、迷路切開、乳突起削開術、あぶみ骨切除手術、stapedotomy、内リンパのsacculotomyまたはその他同種のものを含むが、これらに限定されない外科手術手技)との組み合わせによって投与される。そのような実施形態のうちの幾つかでは、高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、耳の介入治療後に投与される。他のそのような実施形態では、高粘度の抗菌性組成物またはデバイスは、耳の介入治療前に投与される。
他の実施形態では、本明細書に記載されている内耳医薬製剤は、耳許容可能なヒドロゲルをさらに与え;また、他の実施形態では、耳医薬製剤は、耳許容可能なミクロスフェアまたは微小粒子を与え;また、幾つかの実施形態では、耳医薬組成物は、耳に許容可能なリポソームを与える。幾つかの実施形態では、耳医薬製剤は、耳に許容可能なフォームを与え;また他の実施形態では、耳医薬製剤は、耳許容可能なペイントを与え;またさらなる実施形態では、耳医薬製剤は、耳許容可能なインサイツ形成海綿状の物質を与える。幾つかの実施形態では、耳医薬製剤は、耳に許容可能な溶媒放出ゲルを与える。幾つかの実施形態では、耳医薬製剤は、化学反応を起こす電磁放射による硬化性ゲルを与える。さらなる実施形態は、耳医薬製剤に熱可逆性ゲルを含んおり、その結果、室温又はそれ以下の温度でのゲルの調合によって、製剤は、流体であるが、しかし、鼓室腔、正円窓膜または蝸牛窓稜を含む内耳及び/又は中耳標的部位の中への、またはその標的部位の近くへのゲルの適用によって、耳医薬製剤は、ゲル様物を堅くし、又は硬化する。
さらなる実施形態または代替的な実施形態では、耳用ゲル製剤は、鼓室内注射を介して、正円窓膜上または正円窓膜近くに投与可能である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、耳介後部の切開部を介して入れることで、正円窓または蝸牛窓稜に、またはこれらの近くに投与され、正円窓または蝸牛窓稜の区域へ、またはこれらの近くに外科的処置を施すことによって投与される。または、耳用ゲル製剤は、注射器および注射針によって適用し、注射針を鼓膜に挿入し、正円窓または蝸牛窓稜の区域へと導く。次いで、耳の自己免疫疾患を局所的に処置するために、正円窓または蝸牛窓稜に、またはこれらの近くに耳用ゲル製剤を配置する。他の実施形態では、患者に移植したマイクロカテーテルによって耳用ゲル製剤を適用し、また、さらなる実施形態では、ポンプデバイスによって正円窓膜または正円窓膜の近くに製剤を投与する。また、さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、マイクロインジェクションデバイスよって正円窓膜または正円窓膜の近くに投与される。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤を鼓膜腔内に適用する。幾つかの実施形態では、耳用ゲル製剤を鼓膜上に適用する。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤を耳道上に、または耳道中に適用する。
さらなる特定の実施形態では、任意の本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスは、液体マトリックス(例えば、鼓室内注射用または点耳薬用の液体組成物)中に多粒子抗菌剤を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載した任意の医薬組成物は、固体マトリックス中に多粒子抗菌剤を含む。
[制御放出性製剤]
一般に、制御放出性薬物製剤は、放出部位および体内の放出時間に関し、薬物の放出制御を付与する。本明細書に言及されているように、制御放出は、即時放出、遅延放出、徐放、拡張放出、可変放出、パルス状放出、二峰性放出を含む。多くの利点が、制御放出によって得られる。第1に、医薬品の制御放出により、投薬回数が減り、これにより、繰り返し処置が最小限になる。第2に、制御放出型処置によって、薬物の利用がより効果的になり、残基として残る化合物が減る。第3に、制御放出は、疾患部位に送達デバイスまたは製剤を配置することによって、局所的な薬物送達の可能性を与える。さらに、制御放出は、1個の投薬単位を用いることによって、それぞれ固有の放出プロフィールを有する2つ以上の異なる薬物を投与し、放出する機会を与え、または同じ薬物を異なる速度または異なる持続時間で放出させる機会を与える。
したがって、本明細書に開示した実施形態の1つの態様は、自己免疫疾患、感染および/または炎症性疾患を処置するための、制御放出性の抗菌剤の耳に許容可能な組成物またはデバイス与えることである。本明細書に開示した組成物および/または製剤および/またはデバイスの制御放出の態様は、内耳または他の耳の構造で使用するのに許容可能な賦形剤、薬剤または物質を含むが、これらに限定されない種々の薬剤によって付与される。ほんの一例として、そのような賦形剤、薬剤または物質は、耳許容可能なポリマー、耳許容可能な粘度増強剤、耳許容可能なゲル、耳許容可能なペイント、耳許容可能なフォーム、耳許容可能なキセロゲル、耳許容可能なミクロスフェアまたは微小粒子、耳許容可能なヒドロゲル、耳許容可能なインサイツ形成海綿状物質、耳許容可能な化学反応を起こす電磁放射によって硬化可能なゲル、耳許容可能な溶解性放出ゲル、耳許容可能なリポソーム、耳許容可能なナノカプセルまたは、ナノスフェアー、耳許容可能な熱可逆ゲル、またはそれらの組み合わせ、を含んでいる。
[耳許容可能なゲル剤]
ゲル(ときに、ゼリーとも呼ばれる)は、種々の様式で規定される。例えば、米国薬局方は、ゲルを、液体がしみこんだ小さな無機粒子または大きな有機分子で構成されているいずれかの懸濁物から成る半固体系として定義している。ゲルは、単相系または二相系を含む。単相ゲルは、分散した高分子と液体との間に明らかな境界が存在しない様式で、液体全体に均一に分布する有機高分子からなる。幾つかの単相ゲルは、合成高分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガカント)から調製される。幾つかの実施形態では、単相ゲルは、一般的に水性であるが、アルコールおよび油を用いても作成されるであろう。二相ゲルは、小さな別個の粒子の網目構造からなる。
また、ゲルは、疎水性または親水性に分類することができる。特定の実施形態では、疎水性ゲルの基材は、ポリエチレンを含む液体パラフィン、またはコロイド状シリカでゲル化した脂肪油、またはアルミニウム石鹸または亜鉛石鹸からなる。対称的に、疎水性ゲルの基材は、通常は、水、グリセロール、または適切なゲル化剤(例えば、トラガカント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、マグネシウム-アルミニウムシリケート)でゲル化したプロピレングリコールからなる。特定の実施形態では、本明細書に開示する組成物またはデバイスのレオロジーは、プラスチックに似ているか、プラスチックであるか、チキソトロピーであるか、またはダイラタントである。
1つの実施形態では、本明細書に記載した、粘度増強された耳に許容可能な製剤は、室温で液体ではない。特定の実施形態では、粘度が増強された製剤は、室温と体温(重篤な発熱、例えば、約42℃までの発熱している個人を含む)との間で相転移することを特徴とする。幾つかの実施形態では、相転移は、体温より1℃低い温度で、体温より2℃低い温度で、体温より3℃低い温度で、体温より4℃低い温度で、体温より6℃低い温度で、体温より8℃低い温度で、または体温より10℃低い温度で起こる。幾つかの実施形態では、相転移は、体温より約15℃低い温度で、体温より約20℃低い温度で、または体温より約25℃低い温度で起こる。特定の実施形態では、本明細書に記載する製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、または約30℃である。特定の実施形態では、本明細書に記載する製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35℃、または約40℃である。1つの実施形態では、本明細書に記載する任意の製剤をほぼ体温で投与すると、耳用製剤を鼓室内投与することに関連する回転性めまいが減るか、またはそれを阻害する。体温の定義に含まれるのは、健康な個体、不健康な個体の体温である(約42℃までの発熱している個体を含む)。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物またはデバイスは、ほぼ室温で液体であり、室温またはほぼ室温で投与され、例えば、回転性めまいのような副作用を減らすか、または改善する。
ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンで構成されるポリマーは、水溶液に組み込まれると、熱可逆性ゲルを形成する。これらのポリマーは、体温に近い温度で液体状態からゲル状態へと変化する能力を有し、それ故、標的とする耳の構造に有用な製剤を適用することを可能にする。液体状態とゲル状態の相転移は、ポリマー濃度、溶液中の成分に依存する。
ポロクサマー407(PF-127)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーで構成される非イオン性界面活性剤である。他のポロクサマーとしては、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、338(F-108グレード)が挙げられる。ポロクサマー水溶液は、酸、アルカリ、金属イオン存在下で安定である。PF-127は、一般式E106P70E106を有し、平均分子量が13,000の、市販されているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。このポリマーは、ポリマーのゲル化性を増強する適切な方法によってさらに精製することができる。このポリマーは、約70%のエチレンオキシドを含有し、この部分が、親水性に相当する。このポリマーは、ポロクサマーABAブロックコポリマーの一種であり、このポリマー群は、以下に示す化学式を共有している。
PF-127は、このコポリマーの濃縮溶液(>20% w/w)が、体温まで加熱すると、低粘度の透明溶液から固体ゲルに変換するため、特に興味深い。したがって、この現象は、身体と接触させて配置する場合、ゲル調製剤が、半固体構造を形成し、徐放性の放出デポ剤を形成することを示唆している。さらに、PF-127は、良好な可溶化容量を有し、毒性が低く、したがって、薬物送達系のための良好な媒体であると考えられる。
代替的な実施形態では、熱ゲルは、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマーである(Jeongら、Nature(1997)、388:860-2;Jeongら、J.Control.Release(2000)、63:155-63;Jeongら、Adv.Drug Delivery Rev.(2002)、54:37-51)。このポリマーは、約5%w/w〜約40%w/wの濃度でゾル-ゲル挙動を示す。望ましい性質に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドモル比は、約1:1〜約20:1の範囲内である。得られるコポリマーは、水に可溶性であり、室温では自由に流動する液体であるが、体温ではハイドロゲルを形成する。市販されているPEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheim製のRESOMER RGP t50106である。この物質は、50:50ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)のPGLAコポリマーで構成されており、PEGは、10%w/wであり、分子量は約6000である。
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117949号、第6,201,072号、第6,287,588号に記載されているような可逆的な熱ゲル化性を有する、一連の低分子量の生分解性ブロックコポリマーに対するMacroMed Incorporatedの商標である。ReGel(登録商標)は、係属中の米国特許出願番号第09/906,041号、第09/559,799号、第10/919,603号に開示されている生分解性ポリマー薬物担体も含む。生分解性薬物担体は、ABA型またはBAB型のトリブロックコポリマーまたはこれらの混合物を含み、Aブロックは、相対的に疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、相対的に親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記コポリマーは、疎水性含量が50.1〜83重量%であり、親水性含量が17〜49.9重量%であり、最終的なブロックコポリマーの分子量は、2000〜8000ダルトンである。この薬物担体は、通常の哺乳動物の体温未満の温度では水溶性を示し、可逆的な熱ゲル化を受け、哺乳動物の生理学的体温と等しい温度では、ゲルとして存在する。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、ここで、ポリエステルは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε-カプロラクトン、ε-ヒドロキシヘキサン酸、γ-ブチロラクトン、γ-ヒドロキシ酪酸、δ-バレロラクトン、δ-ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびこれらのコポリマーからなる群より選択されるモノマーから合成され、平均分子量が、約600〜3000ダルトンである。親水性Bブロックセグメントは、好ましくは、平均分子量が約500〜2200ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)である。
さらなる生分解性熱可塑性ポリエステルとしては、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories、Inc.から得られる)および/または、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;第5,990,194号に開示されるものが挙げられ、ここで、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリマーとして開示されている。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、これらのターポリマー、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。幾つかのこのような実施形態では、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、これらのコポリマー、これらのターポリマー、またはこれらの組み合わせである。1つの実施形態では、生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有している50/50のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約30重量%〜約40重量%の中にあり;そして、約23,000〜約45,000の平均分子量を有している。あるいは、別の実施形態では、生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を伴わない、75/25のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約40重量%〜約50重量%の中にあり;そして、約15,000〜約24,000の平均分子量を有している。さらなる実施形態または代替の実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)の末端基は、重合法に依存し、ヒドロキシル、カルボキシルまたはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合によって、末端がヒドロキシル基およびカルボキシル基のポリマーが得られる。環状ラクチドモノマーまたはグリコリドモノマーを、水、乳酸またはグリコール酸で開環重合させると、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかし、環状モノマーを、一置換アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または1-ドデカノール)で開環重合させると、末端基の1つがヒドロキシル基であり、1つがエステル基であるポリマーが得られる。環状モノマーを、ジオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールまたはポリエチレングリコール)で開環重合させると、末端基がヒドロキシルのみのポリマーが得られる。
熱可逆性ゲルのポリマー系が、低温ではもっと完全に溶解するため、溶解方法は、低温で、使用する量の水に必要な量のポリマーを加えることを含む。一般的に、振り混ぜることによってポリマーを湿らせた後、混合物に蓋をし、ポリマーを溶解させるために、約0〜10℃で冷たいチャンバーに入れるか、または恒温容器に入れる。この混合物を撹拌するか、または振り混ぜ、もっと迅速に熱可逆性ゲルポリマーを溶解させる。抗菌剤および種々の添加剤(例えば、緩衝剤、塩および防腐剤)を次に加え、溶解する。幾つかの例では、抗菌剤および/または他の医薬活性薬剤を、それが水に不溶性の場合には懸濁させる。pHは、適切な緩衝剤を加えることによって調節される。正円窓膜の粘膜付着特性は、随意に、正円窓膜の粘膜付着性カルボマー(例えば、カルボポール(登録商標)934P)を組成物に組み込むことによって、熱可逆性ゲルに付与される(Majithiyaらによる文献「AAPS PharmSciTech (2006)、7(3)、p.E1;EP0551626」)。何れのものも、そのような記載のために引用することによって、本明細書に取り込まれる。
1つの実施形態では、加えられる増粘剤の使用を必要としない、耳に許容可能な医薬ゲル製剤がある。このようなゲル製剤には、少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝剤が組み込まれている。1つの態様では、抗菌剤と、薬学的に許容可能な緩衝剤とを含むゲル製剤がある。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体は、ゲル化剤である。
他の実施形態では、内リンパまたは外リンパに適切なpHを与えるため、有用な耳に許容可能な抗菌剤は、1つ以上のpH調整剤または緩衝剤も含んでいる。適切なpH調整剤または緩衝剤としては、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられるが、これらに限定されない。このようなpH調整剤および緩衝液は、組成物のpHを、約5〜約9の間のpH、幾つかの実施形態では、約6.5〜約7.5の間のpH、さらに別の実施形態では、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5のpHに維持するのに所望される量が含まれる。1つの実施形態では、1つ以上の緩衝剤を本開示の製剤で利用する場合、1つ以上の緩衝剤を、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと合わせ、最終製剤中に、例えば、約0.1%〜約20%、約0.5%〜約10%の範囲の量で存在させる。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝剤の量は、ゲル製剤のpHが、中耳(auris media)または内耳(inner ear)の天然の緩衝系を妨害せず、内リンパまたは外リンパの天然のpHを妨害しないような量であり、この量は、蝸牛中、抗菌剤がどの箇所を標的にするかに依存する。幾つかの実施形態では、約10μM〜約200mMの濃度の緩衝剤がゲル製剤に存在する。特定の実施形態では、約5mM〜約200mMの濃度の緩衝剤が存在する。特定の実施形態では、約20mM〜約100mMの濃度の緩衝剤が存在する。1つの実施形態では、酢酸塩またはクエン酸塩が、わずかに酸性pHである緩衝剤がある。1つの実施形態では、緩衝剤は、約4.5〜約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝剤である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約5.0〜約8.0、または約5.5〜約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝剤である。
代替的な実施形態では、使用する緩衝剤は、わずかに塩基性のpHで、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸水素塩、炭酸塩またはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約6.5〜約8.5、または約7.0〜約8.0のpHを有する炭酸水素ナトリウム緩衝剤である。別の実施形態では、緩衝剤は、約6.0〜約9.0のpHを有する二塩基性リン酸ナトリウム緩衝剤である。
また、本明細書では、抗菌剤および粘度増強剤を含む制御放出性製剤またはデバイスが記載されている。適切な粘度増強剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁剤が挙げられる。1つの実施形態では、粘度が増強された製剤は、緩衝剤を含んでいない。他の実施形態では、粘度が増強された製剤は、薬学的に許容可能な緩衝剤を含む。必要な場合、等張性を調節するために、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤を、随意に使用する。
ほんの一例として、耳に許容可能な粘度剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ナトリウムコンドロイチンサルフェート、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。標的耳構造に適合する他の粘度増強剤は、以下のものを含むがこれらに限定されない。すなわち、アカシア(アラビアゴム)、寒天、アルミニウム・ケイ酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラゲーニン、カルボボール、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガハッチゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、小麦澱粉、米澱粉、じゃが芋澱粉、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタン(xanthum)ゴム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチル・セルロース、エチルメチル・セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチル・セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチル)・メタクリル酸塩、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチル)・メタクリル酸塩、ポリ(メトキシエトキシエチル)・メタクリル酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP: ポビドン)、スプレンダ(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリンおよびスクラロース)、またはそれらの組み合わせ、を含むがこれらに限定されない。特定の実施形態では、粘度を増強する賦形剤は、MCCとCMCとを組み合わせたものである。別の実施形態では、粘度を増強する薬剤は、カルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩とを組み合わせたものである。キチンおよびアルギン酸塩と、本明細書に開示する抗菌剤との組み合わせは、制御放出性製剤として作用し、抗菌剤が製剤から拡散するのを制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩との組み合わせは、随意に、正円窓膜を通る抗菌剤の透過性を増やすのに役立つ。
幾つかの実施形態では、約0.1mM〜約100mMの抗菌剤、薬学的に許容可能な粘度剤、注射用の水を含む、粘度が増強された製剤があり、水中の粘度剤の濃度は、粘度が増強された製剤に、約100〜約100,000cPの最終粘度を与えるのに十分である。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100〜約50,000cP、約100cP〜約1,000cP、約500cP〜約1500cP、約1000cP〜約3000cP、約2000cP〜約8,000cP、約4,000cP〜約50,000cP、約10,000cP〜約500,000cP、約15,000cP〜約1,000,000cPの範囲である。他の実施形態では、さらに粘度が高い媒体が望ましい場合、生体適合性ゲルは、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%などの抗菌剤を含む。非常に濃縮されたサンプルでは、生体適合性の粘度が増強された製剤は、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%、またはそれ以上の抗菌剤を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に提示されるゲル製剤の粘度は、任意の記載した手段で測定される。例えば、幾つかの実施形態では、LVDV-II+CP Cone PlateViscometerおよびCone Spindle CPE-40を用い、本明細書に記載したゲル製剤の粘度を算出する。他の実施形態では、Brookfield(スピンドルおよびカップ)粘度計を用い、本明細書に記載したゲル製剤の粘度を算出する。幾つかの実施形態では、本明細書で参照する粘度範囲は、室温で測定したものである。他の実施形態では、本明細書で参照する粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定したものである。
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な粘度が増強された耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つの抗菌剤と、少なくとも1つのゲル化剤とを含む。ゲル製剤の調製に使用するのに適切なゲル化剤としては、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーガム、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸)、シリケート、デンプン、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ペトロラタム、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの他の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))をゲル化剤として使用する。また、特定の実施形態では、本明細書に示したゲル製剤のためのゲル化剤として、本明細書に記載した粘度を増強する薬剤を利用する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の耳の治療薬剤は、耳に許容可能なペイントとして調合される。本明細書で使用される場合、ペイント(塗膜形成要素としても知られている)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤および任意に1以上の薬学的に許容可能な賦形剤から成る溶液である。組織への適用の後、溶媒は蒸発して、後に、モノマーまたはポリマー、および活性薬剤から成る薄いコーティングを残す。コーティングは、活性薬剤を保護し、それを適用部位で固定化された状態に維持する。このことで、失われる活性薬剤の量は減り、対照的に、被験体に送達される量は増加する。限定しない例として、ペイントは、コロジオン(例えば弾性コロジオン、USP)、および糖類シロキサンコポリマーおよび架橋剤を含む溶液を含む。コロジオンは、ピロキシリン(ニトロセルロース)を含有するエチルエーテル/エタノール溶液である。適用の後、エチルエーテル/エタノール溶液は、ピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサンコポリマーを含有する溶液において、糖類シロキサンコポリマーは、溶媒の蒸発が糖類シロキサンコポリマーの架橋を始めた後、コーティングを形成する。ペイントに関する追加の開示については、レミングトン:「The Science and Practice of Pharmacy」を参照する。この内容に関しては、引用することによって本明細書に組み入れられる。本明細書で使用のために熟慮されるペイントは、耳を介する圧縮波の伝播と干渉しないように柔軟である。さらに、ペイントは、液体(即ち、溶液、懸濁液またはエマルジョン)、半固体(即ち、ゲル、フォーム、ペーストまたはゼリー)またはエアロゾルとして適用され得る。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の耳の治療薬剤は、制御放出フォームとして調合される。本明細書に開示の組成物で使用される適切なフォーム状担体の例は、制限されないが、以下を含む。すなわち、アルギン酸塩およびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、コラーゲン、以下の多糖、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、さらなるカルボキシル基および/またはカルボキサミド基を有している、及び/又は、親水性の側鎖を有しているデンプンのような加工デンプン、セルロースおよびそれらの誘導体、寒天およびポリアクリルアミドで安定させた寒天のようなその誘導体を含む多糖と、ポリエチレンオキシド、グリコールメタクリル酸塩、ゼラチン、キサンタン(xanthum)ゴム、グアーゴム、カラヤゴム、ゲランゴム、アラビアゴム、トラガカントゴムおよびローカストビーンゴム、あるいはそれらの組み合わせ。また、適切なものは、前述の担体(例えばアルギン酸ナトリウム)の塩類である。製剤は、随意にさらに起泡剤を含み、それは、界面活性剤または外部推進薬を含むフォームの形成を促進する。適切な起泡剤の例は、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどを含む。また、Tween(登録商標)のような市販の界面活性剤もまた適切である。
幾つかの実施形態では、他のゲル製剤は、使用する特定の抗菌剤、他の医薬品または賦形剤/添加剤によっては有用であり、そのため、本開示の範囲に入ると考えられる。例えば、他の市販のグリセリン系ゲル、グリセリンから誘導される化合物、接合したゲルまたは架橋したゲル、マトリックス、ハイドロゲル、ポリマー、および、ゼラチンおよびゼラチン誘導体、アルギン酸塩、アルギン酸塩系ゲル、さらに、種々の天然および合成のハイドロゲルおよびハイドロゲルから誘導される化合物は、すべて、本明細書に記載の抗菌剤の製剤で有用であると予想される。幾つかの実施形態では、耳許容可能なゲル剤は、限定されないが、アルギン酸塩ヒドロゲルSAF(登録商標)-ゲル(コンバテック、プリンストン(N.J.))、デュオダーム(登録商標)のハイドロアクティブゲル(コンバテック)、ニュー・ゲル(登録商標)(ジョンソン・アンド・ジョンソンメディカル、アーリントン(テキサス));Carrasyn(登録商標)(V)アセマンナンヒドロゲル(カーリントン・ラボラトリーズ(アーヴィング(テキサス)));グリセリン・ゲル剤Elta(登録商標)ヒドロゲル(スイス・アメリカプロダクツ社、ダラス(テキサス))およびK-Y(登録商標)不妊剤(ジョンソン・アンド・ジョンソン)を含む。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性ゲルは、本明細書に開示し、記載する、耳に許容可能な製剤中に存在する化合物も表している。
哺乳動物に投与するために、およびヒトに投与するために処方された組成物のために、開発された幾つかの製剤では、耳に許容可能なゲルは、実質的に重量全体の組成物を含む。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは、組成物の重量の約98%、または約99%を含む。耳に許容可能なゲルは、実質的に液体を含まないか、実質的に粘性の製剤が必要な場合に望ましい。さらなる実施形態では、粘性が低いか、またはわずかに流動性の高い耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性ゲル部分は、化合物を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または90重量%含む。これらの範囲内にある中間的な整数はすべて、本開示の範囲内にあることが想定され、幾つかの代替的な実施形態では、さらに流動性の(その結果、粘性が低い)耳に許容可能なゲル組成物が処方され、例えば、混合物のゲル要素またはマトリックス要素が、組成物の約50重量%を超えない量で、約40重量%を超えない量で、約30重量%を超えない量で、または約15重量%を超えない量で、または約20重量%を超えない量で含まれる。
[耳に許容可能な懸濁剤]
1つの実施形態では、少なくとも1つの抗菌剤は、少なくとも1つの懸濁剤をさらに含む、薬学的に許容可能な増強された粘性製剤に含まれ、そこでは、懸濁剤は、製剤に制御放出特性を与えることを助ける。幾つかの実施形態では、懸濁剤は、また耳許容可能な抗菌剤製剤および組成物の粘度を増加させる役目をする。
懸濁剤は、ほんの一例として、以下を含む:ポリビニルピロリドン(例えばポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30)、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー(S630)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゴム(例えば、トラガカントゴム、アカシアゴム、グアーゴム、キサンタンゴムを含むキサンタンなど)、砂糖、セルロース化合物(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなど)、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシレートソルビタンモノラウリン酸、ポリエトキシレートソルビタンモノラウリン酸、ポビドンなど。幾つかの実施形態では、有用な水溶性懸濁液は、懸濁剤として1以上のポリマーも含む。有用なポリマーは、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマー、および、架橋カルボキシル含有ポリマーなどの非水溶性ポリマーを含む。
1つの実施形態では、現在の開示は、ヒドロキシエチルセルロース・ゲル中に治療上有効な量の抗菌剤を含む耳に許容可能なゲル状組成物を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水または水性の緩衝液の中で、所望の粘性(一般に、約0.2〜約10%のHECに対応して、約200cps〜約30,000cps)を与えるように再構成される乾燥粉末として得られる。1つの実施形態では、HECの濃度は、約1%〜約15%、約1%〜約2%、または約1.5%〜約2%の間である。
他の実施形態では、ゲル製剤及び粘度を増強した製剤を含む耳に許容可能な製剤は、さらに賦形剤、他の医薬品薬剤または医薬薬剤、担体、アジュバント(防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤など)、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせをさらに含む。
[耳に許容可能な化学放射線根治ゲル]
他の実施形態では、ゲルは、化学放射線根治ゲルであり、標的とする耳構造体への、またはその近くへの投与、化学放射線(または、紫外線、可視光線または赤外線を含む光)の使用の後、所望のゲル特性が形成される。ほんの一例として、ファイバーオプティクスは、所望のゲル特性を形成するように化学放射線を提供するために使用される。幾つかの実施形態では、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは、単一のユニットを形成する。他の実施形態では、ファイバーオプティクスとゲル投与デバイスは別々に提供される。
[耳に許容可能な溶媒放出ゲル]
幾つかの実施形態では、ゲルは、溶媒放出ゲルであり、その結果、標的とされた耳構造体へまたは近くへ投与した後、所望のゲル特性が形成される。すなわち、注入されたゲル製剤内の溶媒がゲルを外へ拡散させるため、所望のゲル特性を有するゲルが形成される。例えば、スクロース酢酸塩イソブチラートを含む製剤は、薬学的に許容可能な溶媒、1つ以上の添加剤および抗菌剤が、正円窓膜で、またはその近くで投与され:注入された製剤からの溶媒の拡散は、所望ゲル特性を有しているデポー剤を与える。例えば、溶媒が注入された製剤から急速に拡散する場合、水溶性溶媒の使用は高粘度のデポー剤を提供する。他方では、疎水性の溶媒(例えば、安息香酸ベンジル)の使用は、それほど粘度のないデポー剤を提供する。耳に許容可能な溶媒放出ゲル剤製剤の1つの例は、DURECT Corporationによって市販されているSABER(登録商標)Delivery Systemである。
[耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質]
内耳または中耳においてインサイツで形成された海綿状物質の使用もまた、本実施形態の範囲内で熟慮される。幾つかの実施形態では、海綿状物質は、ヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状の物質は、所望の抗菌剤を浸透され、中耳内で抗菌剤の制御放出を与えるように中耳内に置かれ、または内耳への抗菌剤の制御放出を与えるように正円窓膜に接して置かれる。幾つかの実施形態では、海綿状物質は、生分解性である。
[正円窓膜粘膜接着性物質]
また、正円窓膜の粘膜接着剤を、本明細書に開示する製剤および組成物およびデバイスとともに加えることも、実施形態の範囲内であることが熟慮されている。「粘膜接着」という用語は、生体膜のムチン層(例えば、3層の正円窓膜の外側の膜)に結合する物質に使用される。正円窓膜の粘膜接着性ポリマーとしての機能をはたすために、ポリマーは幾つかの一般的な物理化学的特徴を有しており、このような特徴は、例えば、多くの水素結合形成基との顕著なアニオン親水性、濡れた粘液/粘膜組織表面に適した表面特性、または粘液の網目を透過するのに十分な可撓性などである。
耳に許容可能な製剤とともに使用される正円窓膜の粘膜接着剤としては、限定されないが、以下のものを含む。即ち、少なくとも1つの可溶性ポリビニルピロリドンポリマー(PVP);水膨潤性であるが、水に不溶な繊維状の架橋したカルボキシ官能化ポリマー;架橋したポリ(アクリル酸)(例えば、カルボポール(登録商標)947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖ゴム、マルトデキストリン、架橋したアルギネートゴムのゲル(alignate gum gel)、水分散性のポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、クレイからなる群より選択される少なくとも2つの粒子状物質要素、またはこれらの混合物が挙げられる。正円窓膜の粘膜接着剤は、随意に、耳に許容可能な粘度を高める賦形剤と組み合わせて用いるか、または単独で用い、組成物と、標的とする耳要素の粘膜層との相互作用を高める。1つの非限定的な実施例において、粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。幾つかの実施形態では、粘膜接着剤は、アルギン酸ゴムである。使用時、組成物に付与された正円窓膜の粘膜接着剤の性質は、有効な量の抗菌剤の組成物を、例えば、正円窓膜または蝸牛窓稜に、粘膜をコーティングする量で送達するのに十分なレベルであり、その後、組成物を、ほんの一例として、内耳の前庭構造および/または蝸牛構造を含む患部に送達するものである。使用時、本明細書に提示の組成物の粘膜接着特性が決定され、この情報(本明細書に提供の他の技術と共に)を使用して、適切な量が決定される。十分な粘膜接着性を決定するための1つの方法は、限定されないが、粘膜接着性の賦形剤の不存在下、および存在下で、組成物の存在場所または保持時間の変化を測定することを含む、組成物と粘膜層との相互作用の変化をモニターすることを含む。
粘膜接着剤は、例えば、米国特許第6,638,521号、第6,562,363号、第6,509,028号、第6,348,502号、第6,319,513号、第6,306,789号、第5,814,330号および第4,900,552号に記載されており、各々は、本明細書で、そのような開示のために参照として組み込まれる。
別の制限しない例において、粘膜接着剤は、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素および粘土から選択された少なくとも2つの微粒子の成分であり、組成物は、投与前に任意の液体でさらに希釈されず、および二酸化ケイ素のレベルは、存在するならば、組成物の重量の約3%から約15%まである。二酸化ケイ素は、存在するならば、噴霧化された二酸化ケイ素、沈殿された二酸化ケイ素、コアセルベートされた二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素およびそれらの混合物を含む。粘土は、存在する場合、カオリン鉱物、セルペンチン無機質、スメクタイト、イライトまたはそれらの混合物を含む。例えば、粘土は、ラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトまたはそれらの混合物を含む。
1つの非限定的な実施例において、正円窓膜の粘膜接着剤は、マルトデキストリンである。マルトデキストリンは、随意に、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦または他の植物産物由来のデンプンの加水分解によって得られる炭水化物である。マルトデキストリンは、随意に、単独で使用されるか、または他の正円窓膜の粘膜接着剤と組み合わせて使用され、本明細書に開示の組成物に粘膜接着性を付与する。1つの実施形態では、マルトデキストリンとカルボポールポリマーとの組み合わせは、本明細書に開示の組成物またはデバイスの正円窓膜の粘膜接着特性を高めるために使用される。
別の実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドおよび/または単糖アルキルエステルである。本明細書で使用される場合、「アルキル-グリコシド」は、任意の親水性単糖(例えば、スクロース、マルトースまたはグルコース)が、疎水性アルキルに結合したものを含む化合物を意味する。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、疎水性アルキル(例えば、炭素原子約6〜25個を含むアルキル)にアミド結合、アミン結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/またはウレイド結合によって結合した糖を含むアルキル-グリコシドである。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルのα-D-マルトシドまたはβ-D-マルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、オクタデシルのα-D-グルコシドまたはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルのα-D-スクロシドまたはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシルのβ-D-チオマルトシド;ドデシルマルトシド;ヘプチル-またはオクチル-1-チオのα-D-グリコピラノシドまたはβ-D-グリコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって結合した、パラチノースまたはイソマルトアミンの誘導体、アルキル鎖に尿素によって結合したイソマルトアミン誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド、およびスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドである。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、炭素原子が9〜16個のアルキル鎖にグリコシド結合によって結合するマルトース、スクロース、グルコース、またはこれらの組み合わせである、アルキル-グリコシドである(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのスクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのグルコシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルのマルトシド)である。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、およびテトラデシルマルトシドである、アルキル-グリコシドである。
幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、少なくとも1つのグルコースを有する二糖類であるアルキル-グリコシドである。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、界面活性剤が、α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グリコピラノシド、n‐ドデシル‐4‐O‐α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グリコピラノシド、および/またはn‐テトラデシル‐4‐O‐α‐D‐グルコピラノシル‐β‐グリコピラノシドを含む界面活性剤である。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシドが、純水中または水溶液中で、約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、アルキル-グリコシドである。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキル-グリコシド内の酸素原子が、硫黄原子で置換されているアルキル-グリコシドである。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドがβアノマーであるアルキル-グリコシドである。幾つかの実施形態では、正円窓膜の粘膜接着剤は、アルキルグリコシドが、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、または99.9%のβアノマーを含む、アルキル-グリコシドである。
[耳に許容可能な制御放出性粒子]
本明細書に開示の抗菌剤及び/又は医薬品は、制御放出性粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、微小粒子、ミクロスフェア、コアセルベート、ナノカプセル剤、または抗菌剤の局在的な送達を促進または容易にする他の薬剤内に、随意に組み入れられる。幾つかの実施形態では、単一の増強された粘性製剤が使用され、そこにおいては、少なくとも1つの抗菌剤が存在し、一方、他の実施形態では、2以上の別個の増強された粘性製剤の混合物を含む医薬製剤が使用され、そこにおいては、少なくとも1つの抗菌剤が存在する。幾つかの実施形態では、ゾル、ゲル及び/又は生体適合性マトリックスの組み合わせもまた、制御放出を行なう抗菌剤の組成物又は製剤を提供するために使用される。特定の実施形態では、制御放出性の抗菌剤は、1つ以上の薬剤によって架橋結合され、組成物の性質を改変または向上させる。
本明細書に開示された医薬製剤に関連するミクロスフェアの例は、次のものを含んでいる: Luzzi、L.A.、J.Pharm. Psy. 59:1367(1970)、米国特許第4,530,840号、Lewis, D. H.、薬物送達システムとしての生分解性高分子内での「Controlled Release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers」、Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990);米国特許第4,675,189号; Beck等による論文、長時間作用型"Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid-co-glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems"、Mishell, D. R., ed., Raven Press (1983);米国特許第4,758,435号;米国特許第3,773,919号;米国特許第4,474,572号。ミクロスフェアとして調剤された蛋白治療製剤は、次のものを含んでいる:米国特許第6,458,387号;米国特許第6,268,053号;米国特許第6,090,925号;米国特許第5,981,719号;そして米国特許第5,578,709号。そして、そのような開示は、引用することによって本明細書に組み入れられる。
ミクロスフェアは、微小粒子を不規則に形作ることも可能であるが、通常、球形である。ミクロスフェアは、直径がサブミクロンから1000ミクロンまでの範囲でサイズ変化しうる。本明細書に開示の耳に許容可能な製剤の用途に適しているミクロスフェアは、直径がサブミクロンから250ミクロンであり、標準ゲージ針による投与が可能である。耳に許容可能なミクロスフェアは、注射可能な組成物で使用するのに許容可能な寸法範囲でミクロスフェアを生産する任意の方法によって調製されている。注入は、液状組成物の投与のために使用される標準ゲージ針で随意に行なわれる。
本明細書の耳に許容可能な制御放出性粒子において使用される高分子マトリックス材料の好適例は、ポリ(グリコール酸)およびポリ‐d,l‐乳酸、ポリ‐l‐乳酸、先述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルロカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン(polydioxonene)、ポリ無水物、ポリホスファゼン(polyphosphazines)、および、アルブミン、カゼインおよびグリセロールモノステアラートおよびジステアラートなどの幾つかのロウを含む、天然ポリマーが挙げられる。様々な市販のポリ(ラクチド‐co‐グリコリド材料(PLGA))は、本明細書に開示の方法の中で随意に使用される。例えば、ポリ(d,l‐ラクチド‐co‐グリコール酸)は、Boehringer-Ingelheimから、RESOMER RG 503 Hとして市販で入手可能である。この生成物は、50%のラクチドと50%のグリコリドのモル百分率の組成物である。これらのコポリマーは、幅広い範囲の分子量およびグリコール酸に対する乳酸の比率において入手可能である。1つの実施形態は、ポリマー・ポリ(d,‐ラクチド‐co‐グリコリド)の使用を含む。そのようなコポリマーにおいてグリコリドに対するラクチドの分子比は、約95:5から約50:50の範囲を含む。
高分子マトリックス材料の分子量は、ある程度重要である。分子量は、それが良好なポリマー・コーティングを形成するように、つまり、ポリマーは、よい塗膜形成要素となるように、十分に高くあるべきである。通常、十分な分子量は、5,000〜500,000ダルトンの範囲の中である。ポリマーの分子量は、また、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散機構のために、薬の全部が微小粒子から放出されるまで、ポリマーは完全なままであるべきであり、その後、分解されるべきである。薬物はまた、重合体の賦形剤のバイオエロード(bioerodes)として微小粒子から放出される。重合体材の適切な選択によって、結果できるミクロスフェアが、拡散放出と生分解放出との両方の性質を示すように、ミクロスフェア製剤が生成される。これは、多相放出パターンを与えるのに役立つ。
化合物をミクロスフェアにカプセル化する様々な方法が知られている。これらの方法では、抗菌剤は、通常、壁形成材料を含有する溶媒中で、攪拌器(stirrer)、攪拌器(agitator)、他の動力学的な混合技術を用いて、分散または乳化される。それから、溶媒はミクロスフェアから除去され、その後、ミクロスフェア生成物が得られる。
1つの実施形態では、制御放出性抗菌剤の製剤は、抗菌剤および/または他の医薬品のエチレン酢酸ビニルコポリマーマトリクスへの取り込みを介して作られる(米国特許第6,083,534号を参照。この文献は開示目的のために本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、抗菌剤は、ポリ(乳酸‐グリコール酸)またはポリ-L-乳酸ミクロスフェアに取り込まれる。Id.また、別の実施形態では、抗菌剤は、アルギン酸塩ミクロスフェアへカプセル化される。 (米国特許第6,036,978号を参照。この文献は開示目的のために本明細書に組み込まれる。)抗菌剤化合物または組成物をカプセル化するのに生体適合性のメタクリル酸ベースのポリマーは、本明細書で開示される製剤および方法で随意に用いられる。幅広いメタクリル酸ベースのポリマー系は、Evonikから市販されているEUDRAGITポリマーなどのように市販されている。メタクリル酸ポリマーの1つの有用な態様は、製剤の特性が、様々なコポリマーを取り込むことによって変化するということである。例えば、ポリ(アクリル酸-co-メチルメタクリル酸)微小粒子は、ポリ(アクリル酸)系上の水素中のカルボン酸基がムチンと水素結合を形成すると、増強された粘膜付着特性を示す(Park 等, Pharm. Res.(1987)4(6):457-464)。アクリル酸とメチルメタクリル酸モノマーの間の割合の変動は、コポリマーの特性を調節するのに役立つ。メタクリル酸ベースの微小粒子は、タンパク質の治療製剤にも用いられてきた(Naha et al,Journal of Microencapsulation 04 February, 2008 (オンライン公開))。1つの実施形態では、本明細書に記載される高粘度の耳に許容可能な製剤は、抗菌剤ミクロスフェアを含み、ミクロスフェアはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。さらなる実施形態では、本明細書に記載される増強粘度製剤は、抗菌剤を含み、ここで、ミクロスフェアは、粘膜付着性である。他の制御放出系は、ポリマーの材料またはマトリクスの、抗菌剤を含有する固形若しくは中空のスフィアへの取り込み沈着を含み、本明細書で開示される実施形態内でも明示的に熟慮されている。抗菌剤の活性を著しく失うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書で開示される教示、例、および原理を用いて決定される。
薬剤調製に関する従来のマイクロカプセル化工程の例は、米国特許第3,737,337号に示され、この文献は開示目的のために参照することにより、本明細書に組み込まれる。カプセル化される若しくは埋め込まれる抗菌剤の物質は、(分散の準備段階で)振動器および高速攪拌器などを含む従来の混合器を用いて、ポリマーの有機溶媒(相A)中に溶解または分散される。溶媒または懸濁液中にコア材料を含有する相(A)の分散は、従来の混合器(高速混合器、振動混合器、または、スプレーノズル等)を再度用いて、水相(B)中で実行され、この場合、ミクロスフェアの粒子の大きさは、相(A)の濃度だけではなく、エマルカート(emulsate)またはミクロスフェアの大きさによって決定される。抗菌剤のマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、活性薬およびポリマーを含有する溶媒が、往々にして比較的長時間、攪拌、かき混ぜ、振動、他の動力学的な混合技術によって、不混和溶液中で乳化または分散すると、ミクロスフェアが生じる。
ミクロスフェアを構築するための方法は、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号に記載され、これらの文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。所望の抗菌剤は、適切な溶媒に溶かされるか分散する。培地を含有する薬剤に、所望の活性薬剤が充填された生成物を与える活性成分に相対する量でポリマーマトリクス材料を加える。随意に、抗菌剤ミクロスフェア生成物のすべての成分は、溶媒培地中で一緒に混ぜ合わせることが可能である。薬剤およびポリマーマトリクス材料に適切な溶媒は、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒を含む。
溶媒内中の成分の混合物は、連続相処理媒体内で乳化され;示された成分を包含している微小滴の分散が連続相媒体内に形成されるように、連続相媒体はある。当然、連続相処理培地および有機溶媒は不混和でなければならず、水を含むが、キシレンおよびトルエン、ならびに、合成油および天然油などの非水系の培地が随意に使用される。随意に、界面活性剤は、微小粒子が凝集するのを防止し、且つ、エマルジョンの中の溶媒微小滴のサイズを制御するために、連続相処理培地に加えられる。好ましい界面活性剤の分散培地の組み合わせは、水混合物中に1から10重量%のポリ(ビニルアルコール)である。分散は、その混合された物質の機械的攪拌によって形成される。エマルジョンは、連続相処理培地に、材料溶媒を形成する活性薬剤の壁を少滴加えることによって随意に形成される。エマルジョン形成中の温度は、特に重要ではないが、微粒子のサイズと性質および連続相中の薬剤の可溶性に影響を与える。連続相にできるだけ薬剤がないことが望ましい。さらに、使用される溶媒と連続相処理培地に依存して、温度は低すぎてはならず、さもなければ、溶媒と処理培地が凝固したり、若しくは処理培地が実用の目的にとって粘りがありすぎたりし、又、処理培地が蒸発したり、若しくは、液体処理培地が維持されなくなる、高すぎるものではならない。さらに、培地の温度は、ミクロスフェアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が不利に影響を受けるくらい高くていけない。従って、分散工程は、安定な処理状態を保つ任意の温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬剤と賦形剤に依存して、約5℃から60℃である。
形成された分散は、安定なエマルジョンであり、この分散から、有機溶媒の不混和流体が、溶媒除去プロセスの第1工程で、随意に部分的に除去される。溶媒は、加熱、減圧の適用、又は両方の組み合わせのような技術によって除去される。微少滴から溶媒を蒸発させるために利用される温度は、重要ではないが、与えられた微小粒子の調製に使用される抗菌剤を分解するので、それほど高すぎてはならなず、また、材料を形成する壁に欠陥を引起こすような急な速度で溶媒を蒸発させるほど高くてはならない。通常、溶媒の5〜75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
第1工程の後、溶媒不混和流体培地中の分散した微小粒子は、任意の従来の分離方法によって流体培地から分離される。従って、例えば、液体は、ミクロスフェアからデカントされ、又は、微粒子の懸濁液をろ過させる。分離技術のさらに他の様々な組み合わせが、所望ならば、使用される。
連続相処理培地からのミクロスフェアの分離の後、ミクロスフェア中の溶媒の残りは、抽出によって除去される。この工程で、ミクロスフェアは、界面活性剤と共に又はなしで、第1工程において使用された同じ連続相処理培地の中に、又は別の液体の中に、懸濁される。抽出培地は、ミクロスフェアから溶媒を除去し、そしてまた、ミクロスフェアを溶解しない。抽出の間、溶解された溶媒を含む抽出培地は、随意に除去され、新しい抽出培地と入れ替えられる。これは、継続的に最も良く行われる。与えられたプロセスの抽出培地の補充速度は、変わり易く、プロセスが行われている時に決定され、従って、速度に対する正確な限定は、前もって決定すべきではない。溶媒の大部分がミクロスフェアから除去されてしまった後に、ミクロスフェアは、空気にさらすことによって、又は真空乾燥や乾燥剤を通しての乾燥などのような、他の従来の乾燥技術によって乾燥される。このプロセスは、80重量%以下の、好ましくは60重量%までのコア充填(core loadings)が得られるので、抗菌剤をカプセル化する際に効果的である。
代替的に、抗菌剤を含む制御放出性ミクロスフェアは、スタティックミキサーの使用によって調製される。静的な又は静止型のミキサーは、たくさんの静的に混和された薬剤を受け入れる導管又はチューブから成る。スタティックミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、かつ、比較的短時間で、均質な混合を提供する。スタティックミキサーを用いると、ブレードのようなミキサーのある部分が流体を通って動くのではなく、流体がミキサーを通って動く。
スタティックミキサーは、エマルジョンを作るために使用される。エマルジョンを形成するためにスタティックミキサーを使用する場合、混合される様々な溶液や相の密度や粘度、相の容積比、相間の界面張力、スタティックミキサーのパラメーター(導管の直径;ミキシング要素の長さ;ミキシング要素の数)、およびスタティックミキサーを介しての線速度を含む幾つかの因子がエマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度や、粘度、および界面張力に影響するので、変化可能である。制御する変数は、スタティックミキサーのユニット当たりの、線速度や、ずり速度(sheer rate)、および圧力降下である。
スタティックミキサープロセスを使用して、抗菌剤を含むミクロスフェアを形成するために、有機相と水相が組み合わされる。有機相と水相は、ほとんど又は実質的に、不混和であり、水相は、エマルジョンの連続相を形成している。有機相は、壁を形成するポリマー又はポリマーマトリクス材料のみでなく、抗菌剤を含む。有機相は、有機溶媒又は他の適切な溶媒内で抗菌剤を溶かすことによって、または抗菌剤を包含している分散またはエマルジョンの形成によって、調合される。有機相と水相は、2つの相がスタティックミキサーを介して同時に流れるように、ポンプで送り込まれ、それによって、ポリマーマトリクス材料内にカプセル化された抗菌剤を含むミクロスフェアを含むエマルジョンが形成される。有機相と水相は、有機溶媒を抽出又は除去するために、大量のクエンチ液(quenchliquid)の中にスタティックミキサーを通してポンプで送り込まれる。有機溶媒は、クエンチ液の中で洗浄又は攪拌されている間に、ミクロスフェアから随意に除去される。ミクロスフェアは、クエンチ液の中で洗浄された後、ふるいによって分離され、乾燥される。
1つの実施形態では、ミクロスフェアは、スタティックミキサーを用いて調製される。そのプロセスは、上論の溶媒抽出技術に限定されないが、他のカプセル化技術と共に使用される。例えば、そのプロセスは、相分離カプセル化技術と共に使用される。そのようにするために、ポリマー溶液の中に懸濁又は分散する抗菌剤を含む有機相が、調製される。非溶媒型の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤に対する溶媒を含まない。好ましい非溶媒型の第2相は、シリコンオイルである。有機相と非溶媒型の相は、ヘプタンのような非溶媒型のクエンチ液の中に、スタティックミキサーを通じてポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、クエンチされ、完全に固化され、そして洗浄される。マイクロカプセル化の工程はまた、スプレー乾燥、溶媒蒸留、蒸留と抽出の組み合わせ、および溶解押出を含む。
別の実施形態では、マイクロカプセル化プロセスは、単一の溶媒とのスタティックミキサーの使用を含む。このプロセスは、米国特許出願第08/338,805号に詳細に記載されており、本明細書に、開示目的のために参照として取り込まれている。代替的なプロセスは、共溶媒とのスタティックミキサーの使用を含む。このプロセスでは、生分解性ポリマー結合剤と抗菌剤とを含む生分解性ミクロスフェアが調製され、これは、ハロゲン化炭化水素を含まない、少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物を含み、薬剤とポリマーの両方を溶解させる。溶解された薬剤とポリマーを含む溶媒の混合物は、少滴を形成するために水溶性の溶液中に分散される。それから、結果としてできるエマルジョンは、好ましくは、混合物に少なくとも1つの溶媒を含む水性抽出培地に加えられ、それによって、各溶媒の抽出速度は制御され、その上、薬学的に活性な薬剤を含む生分解性のミクロスフェアが形成される。そのプロセスは、水中の1つの溶媒の溶解性は、他と実質的に独立しており、溶媒選択が増えるために、より少ない抽出培地が必要とされるという、特に抽出が困難な溶媒を備えるものに、有利な点を有する。
本明細書に開示の抗菌剤と共に使用するために、ナノ粒子も熟慮される。ナノ粒子は、約100nmまたはそれ以下のサイズの材料構造である。溶媒との粒子表面の相互作用が密度の違いを克服するほど十分強いことから、医薬製剤内のナノ粒子の使用の1つは、懸濁液の形成である。ナノ粒子分散液は、ナノ粒子がろ過滅菌を受けるのに十分小さいので、無菌化される(例えば、米国特許第 6,139,870号参照、これは、開示目的のために参照として本明細書に組み込まれる)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、若しくは脂肪酸の水溶液又は水溶性分散液に乳化した、少なくとも1つの疎水性で、水に溶けない、そして水に分散しない(water-indispersible)ポリマー又はコポリマーを含む。抗菌剤は、ナノ粒子の中に、ポリマー又はコポリマーと共に随意に導入される。
脂質ナノ粒子は、制御放出性構造物として、その上、正円窓膜を貫通し、そして内耳および/又は中耳の標的に到達するために、本明細書でまた熟考されている。脂質ナノ粒子は、カプリン酸およびカプリル酸の中性脂肪(Labrafac WL1349;平均分子量(avg.mw)512)、大豆レシチン(LIPOID(登録商標)S75-3; 69%の ホスファチジルコリンと他のリン脂質)、界面活性剤(例えば、SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレートと遊離ポリエチレングリコール660の混合物、NaCl、および水、を乳化させることによって形成される。その混合物は、室温で攪拌され、水中にオイルエマルジョンを与える。磁気攪拌のもと、4℃/分の速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、そして、85℃で逆相(オイルの中に水の小滴)が得られる。それから、3サイクルの冷却と加熱が、85℃と60℃の間で、4 ℃/分の速度で適用され、そして0℃近くの温度で冷たい水の中で急速に希釈され、ナノカプセルの懸濁液が生成される。抗菌剤をカプセル化するために、冷たい水で希釈する直前に、随意に薬剤が加えられる。
抗菌剤は、また、耳の活性薬の水溶性ミセル溶液と共に、90分間インキュベートすることによって脂質ナノ粒子に挿入される。懸濁液は、その後、15分毎にボルテックスされ(vortexed)、それから、1分間氷冷槽(ice bath)でクエンチされる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、ほんの一例として、コール酸又はタウロコール酸の塩である。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成される複合体であり、十分代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸のアナログであるタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然に生じる胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の複合体である。他の自然に生じる陰イオン性の界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)又は双性イオン性の界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)は、ナノ粒子を調製するために随意に使用される。
耳に許容可能なリン脂質は、例として、天然の、合成の、又は半合成のリン脂質;例えば、精製した卵又は大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン 90)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリンおよびホスファチジン酸から選択され、又はそれらの混合物は特によく使用される。
耳に許容可能な製剤と共に使用するための脂肪酸は、例として、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸などから選択される。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤は、様々なポリマー、低分子量のオリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む。好ましい界面改質剤は、非イオン性、およびイオン性の界面活性剤を含む。2つ又はそれ以上の表面改質剤は、組み合わされて使用される。
耳許容可能な界面活性剤の代表的な例は、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(燐脂質)、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセロール・モノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、 ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ドデシルトリメチル・臭化アンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、硫酸ドデシルナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SLおよびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタル酸塩、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒド(またチロキサポール、アウペリオン(superione)およびトリトンとして知られている)を備えた4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル(tetaamethylbutyl))-フェノールポリマー、ポロクサマー、ポロキサミン(poloxamnines)、ジミリストイル フォスファチジルグリセロール、ドクセート(DOSS)のような帯電りん脂質;テトロン(登録商標)1508、スルホサクシニック酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、トリトンX-200、Crodestas F-110、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール、Crodestas SL-40(Croda社);そして、SA9OHCO(それはC18 H37 CH2(CON(CH3)- CH2(CHOH)4(CH2 OH)2(イーストマン・コダック);デカノイル-N-メチルグルカミド; n-デシルβ - Dグルコピラノシド; n-デシルβ-D-マルトピラノシド; n-ドデシルβ - Dグルコピラノシド; n-ドデシルβ - Dマルトース配糖体;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド; n-ヘプチル-β-D-グリコピラノシド; n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド; n-ヘキシルβ - D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド; n-noylβ - Dグルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカラミド(methylglucarmide); n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;また同種のもの。これらの界面活性剤のほとんどは、医薬的な賦形剤として知られており、アメリカ薬剤師会(American Pharmaceutical Association)とイギリス薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同で出版された(The Pharmaceutical Press、1986)、医薬的な賦形剤のハンドブック(the Handbook of Pharmaceutical Excipeints)に詳細に記載されており、開示目的のために参照として特別に取り込まれている。
疎水性、水に不溶性、および水に非分散性のポリマー又はコポリマーは、例えば乳酸ポリマー若しくはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、又はポリ乳酸/ポリエチレン(若しくはポリプロピレン)オキシドコポリマー、好ましくは、1000と200,000の間の分子量であるもの、ポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸であるポリラクトン、又はポリ酸無水物のような生体適合性で、かつ生分解性のポリマーから選らばれる。
ナノ粒子は、中に活性な有効成分と疎水性、不水溶性、かつ水中に分散しない(water-indispersible)ポリマーまたはコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる、リン脂質の水性の分散液または溶液、およびオレイン酸塩の水性の分散液または溶液から、コアセルベーションまたは溶剤の蒸発の技術によって得られ得る。その混合物は、先に乳化され、その後、均質化され、有機溶媒が蒸発され、超極小のナノ粒子の水性懸濁液が得られる。
様々な方法が実施形態の範囲内にある抗菌剤のナノ粒子を作り出すために随意に利用される。これらの方法は、自由ジェット膨張(free jet expansion)、レーザー蒸散、スパークエロージョン(spark erosion)、電気爆発(electro explosion)および化学蒸着のような気化方法;機械的摩擦(mechanical attrition)(例えば、「パールミリング」テクノロジー("pearlmilling" technology)Elan Nanosystems)、超臨界CO2および溶媒置換後の界面沈着を含む物理的方法を含む。1つの実施形態では、溶媒置換方法が使用される。この方法によって作成されるナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度;混合速度;およびそのプロセスで使用される界面活性剤に敏感である。連続管路攪拌装置は、小さな粒径を確保するために必要な乱流を提供する。ナノ粒子を調製するために随意に使用される連続管路攪拌装置の1つのタイプが記載されている(Hansen 等による論文、J Phys Chem 92、2189-96、1988)。他の実施形態では、超音波装置、流水式(flow through)ホモジナイザー又は超臨界CO2装置が、ナノ粒子を調製するために使用される。
適切なナノ粒子の均質性が、直接合成によって得られれば、分子ふるいクロマトグラフィーが、それらの生成に関する他の成分を含まない、高度に均一な、粒子含有薬物を作成するために使用される。ゲルろ過クロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)技術が、粒子に結合した抗菌剤又は医薬化合物を、遊離(free)抗菌剤または他の医薬化合物から分離させるため、またはナノ粒子含有抗菌剤の適切なサイズの範囲を選択するために、使用される。Superdex 200、Superose 6、Sephacryl 1000のような様々なSEC媒体が、市販されており、このような混合物のサイズを基礎とする生成のために、利用される。さらに、ナノ粒子は、遠心分離、膜ろ過によって、および、他の分子ふるい装置、架橋結合したゲル/材料、および膜の使用によって精製される。耳に許容可能なシクロデキストリンおよび他の安定化製剤
特定の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、6、7、または8のグルコピラノース単位を含む環状オリゴ糖であり、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンと呼ばれている。シクロデキストリンは、水溶性を増強する親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部とを備える。水性の環境では、他の分子の疎水性部分は、しばしばシクロデキストリンの疎水性空洞に入り込み、包接化合物を形成する。加えて、シクロデキストリンはまた、疎水性空洞内部にない分子との非結合性の相互作用の他のタイプも可能である。シクロデキストリンは、それぞれのグルコピラノシル単位に3つの遊離水酸基、又はαシクロデキストリン上に18水酸基、β-シクロデキストリン上に21水酸基、及びγシクロデキストリン上に24水酸基を備える。1又はそれより多いこれら水酸基は、任意の幾つかの試薬と反応し、ヒドロキシプロピルエーテル、スルホン酸塩、及びスルホアルキルエーテルを含む多種多様のシクロデキストリン誘導体を形成する。β‐シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル-β‐シクロデキストリン(HPβCD)の構造体を以下に示す。
幾つかの実施形態では、本明細書中に記載される医薬組成物におけるシクロデキストリンの使用は、薬物の溶解性を改善する。改良された溶解性の多くの場合、包接化合物が含まれ、しかし、シクロデキストリンと、不溶性化合物の間の他の相互作用もまた溶解性を改良する。ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD)は、発熱物質を含まない製品(pyrogen free product)として市販されている。それは、水に容易に溶ける、非吸湿性の白い粉である。HPβCDは、熱的に安定しており、そして中性のPHで分解しない。従って、シクロデキストリンは、組成物又は製剤において治療薬剤の溶解性を改善する。それ故、幾つかの実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書中に記載される製剤内の耳に許容可能な抗菌剤の溶解性を増加させることが挙げられる。他の実施形態では、シクロデキストリンは、そのうえ、本明細書中に記載される製剤内の制御放出性賦形剤として機能する。
ほんの一例として、使用のためのシクロデキストリン誘導体は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、硫酸α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。
本明細書中に開示される組成物及び方法で使用されるシクロデキストリンの濃度は、治療に有用な薬剤、もしくはその塩又はそのプロドラッグ、あるいはその組成物中の他の賦形剤の特性に関連する生理化学的特性、薬物動態特性、副作用又は有害事象、製剤考察(Formulation Consideration)、又は他の因子によって変化する。従って、特定の状況では、本明細書に開示される組成物と方法に従って使用されるシクロデキストリンの濃度又は量は、必要に応じて変化する。使用時、本明細書中に記載される任意の製剤において、抗菌剤の溶解性を増加させるため及び/又は、制御放出性賦形剤として機能するために必要とされるシクロデキストリンの量は、本明細書中に記載される原理、実施例、及び教示を使用して選択される。
本明細書中に開示される耳に許容可能な製剤に有用である他の安定剤は、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、及びそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、安定剤のアミドアナログもまた使用される。さらなる実施形態では、選択された安定剤は、製剤(例えば、オレイン酸、ワックス)の疎水性を変え、または製剤(例えば、エタノール)中の様々な成分の混合を改善し、製剤(formula)中の水分レベルを制御し(例えば、PVP又はポリビニルピロリドン)、相の移動を制御し(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミド等、又はそれらの混合物の室温よりも高い融点を備える物質、ワックス)、及び/又は封入材料(例えば、オレイン酸、又はワックス)を有する製剤(formula)の相溶性を改善する。別の実施形態では、これらの安定剤のいくつかは、溶媒/共溶媒(例えばエタノール)として使用される。他の実施形態では、安定剤は、抗菌剤の分解を抑制するために十分な量が存在する。このような安定剤の例としては、(a)約0.5%から約2% w/vのグリセロール、(b)約0.1%から約1% w/vのメチオニン、(c)約0.1%から約2% w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMのEDTA、(e)約0.01%から約2% w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02% w/vのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05% w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェート及び他のヘパリノイド、(m)マグネシウム及び亜鉛などの二価カチオン、又は(n)それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる有益な、抗菌剤の耳に許容可能な製剤は、1又はそれより多い抗凝集添加剤を含み、タンパク質凝集率を減少させることにより抗菌剤の安定性を増強する。選択される抗凝集添加剤は、抗菌剤、例えば、抗菌剤抗体が曝露される疾病の特性に依存する。例えば、攪拌及び熱応力を受ける特定の製剤は、凍結乾燥及び再構成を受ける製剤とは異なる抗凝集添加剤を要求する。有用な抗凝集性の添加剤としては、ほんの一例ではあるが、尿素、塩化グアニジン、グリシン又はアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコール及びデキストランなどのポリマー、アルキルグリコシドなどのアルキルサッカライド、及び界面活性剤が挙げられる。
他の有益な製剤としては、1又はそれより多い耳に許容可能な抗酸化剤を随意に含み、要求される場所での化学安定性を増強する。適切な抗酸化剤としては、ほんの一例として、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、及びメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。1つの実施形態では、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、及び他の一般的な安定剤から選択される。
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を増強するため又は他の目的のために、1以上の耳に許容可能な界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油(例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);及びポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルキルフェニルエーテル(例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40)を含むが、これらに限定されない。
幾つかの実施形態では、本明細書中に記載される耳に許容可能な医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、又は少なくとも約6カ月の期間にわたって化合物分解に対して安定的である。他の実施形態では、本明細書中に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって化合物分解に対して安定的である。少なくとも約1か月の期間にわたって化合物分解に対して安定な製剤もまた、本明細書中に記載される。
他の実施形態では、さらなる界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))及び/又は緩衝剤は、本明細書に前述される1以上の薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされることで、界面活性剤及び/又は緩衝液は、安定するのに最適なpHに生成物を維持する。最適な共界面活性剤は、限定されるものではないが、以下のものを含む。即ち、
a)天然および合成の親油性剤 (例えばリン脂質、コレステロール、コレステロール脂肪酸エステル、その誘導体);
b)非イオン性界面活性剤であって、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシエチレン脂肪族アルコール・エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(スパン)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(トウィーン80))、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸塩(トゥイーン60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸(トゥイーン20)、他のトゥイーン)、ソルビタンエステル、グリセロールエステル(例えばMyrj、グリセロールトリアセテート(トリアセチン))、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えばクレモフォール(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、クレモフォール(登録商標)EL)および他のクレモフォール、スルホサクシネート、アルキル硫酸塩(SLS);)、PEG-8グリセリル・カプリル酸塩/カプリン酸塩(Labrasol)、PEG-4グリセリル・カプリル酸塩/カプリン酸塩(Labrafac Hydro WL 1219)、PEG-32グリセリル・ラウリン酸(Gelucire 444/14)、PEG-6グリセリル・モノ・オレアート(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6グリセリル・リノール酸塩(Labrafil M 2125 CS)のようなPEGグリセリル脂肪酸エステル;プロピレングリコール・ラウリン酸(プロピレングリコール・カプリル酸塩/カプリン酸塩)のような、プロピレングリコール・モノ-および2脂肪酸エステル(di-fatty acid esters);Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミタート、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロール、トリイリシンオレイン酸、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物、を含み;
c)陰イオン界面活性剤は、限定されないが、カルシウム・カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムスルホサクシネート、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、アルキル・ポリオキシエチレン硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、カリウム・ラウリン酸、胆汁酸塩、およびそれらの任意の組み合わせまたは混合物、を含み;
そして、d)例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム等の、陽イオン性界面活性剤、を含んでいる。
さらなる実施形態では、1又はそれより多い共界面活性剤が本発明で開示される耳に許容可能な製剤に利用される場合、界面活性剤は、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされるとともに、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤中に存在する。
1つの実施形態では、界面活性剤は、0から20のHLB値を有する。さらなる実施形態では、界面活性剤は、0から3、4から6、7から9、8から18、13から15、10から18のHLB値を有する。
1つの実施形態では、希釈剤はさらなる安定環境を提供するので、希釈剤は抗菌剤又は他の医薬化合物を安定化するためにも使用される。緩衝剤(pH制御又は維持を提供することもできる)中に溶解される塩は、希釈剤として利用され、その希釈剤としては、リン酸緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、ゲル製剤は、内リンパ液又は外リンパ液と等張であり、抗菌剤が標的とする蝸牛の部分に依存する。等張性製剤は、等張化剤を加えることによって与えられる。適切な等張化剤としては、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、又はそれらの任意の組合せ若しくは混合物(デキストロースおよび塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kgから約500mOsm/kgの量で存在する。幾つかの実施形態では、等張化剤は、約200mOsm/kg から約400mOsm/kg、約280mOsm/kgから約320mOsm/kgの量で存在する。等張化剤の量は、本明細書中に記載されるように、医薬製剤の標的構造に依存する。
有用な等張化組成物はまた、外リンパまたは内リンパにとって許容可能な範囲に組成物のオスモル濃度をもたらすのに必要な量の1以上の塩を含む。このような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ほう酸アニオン、リン酸アニオン、重炭酸アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオン又は亜硫酸水素アニオンを有するものを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書中に開示される耳に許容可能なゲル製剤は、代替的に又は追加的に防腐剤を含み、微生物の増殖を抑制する。本明細書中に記載の強化粘性製剤で使用する、耳に許容可能な適切な防腐剤は、安息香酸、ほう酸、p-ヒドロキシ安息香酸、アルコール、第4化合物、安定化二酸化塩素、水銀剤、例えばメルフィン(merfen)及びチオマーサル等、前述の混合物等を含むが、これらに限定されない。
さらなる実施形態では、防腐剤は、ほんの一例として、本明細書中に記載される耳に許容可能な製剤内の抗菌剤である。1つの実施形態では、製剤は、例えば、ほんの一例として、メチルパラベン、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール及びそれ以外のものが挙げられる。別の実施形態では、メチルパラベンは、約0.05%から約1.0%、約0.1%から約0.2%の濃度である。さらなる実施形態では、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及びクエン酸ナトリウムを混合することによって調製される。さらなる実施形態では、ゲルは、水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース及び酢酸ナトリウムを混合することによって調製される。さらなる実施形態では、混合物は、120℃で約20分間オートクレーブすることにより滅菌し、本明細書中に開示される抗菌剤の適切な量を混合する前にpH、メチルパラベン濃度、及び粘度が試験される。
薬物送達ビヒクルで用いられる、耳に許容可能な適切な水溶性防腐剤は、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノール及びそれ以外のものを含む。これらの薬剤は、通常、約0.001重量%から約5重量%の量で、または、約0.01重量%から約2重量%の量で存在する。幾つかの実施形態では、本明細書中に記載される耳に適合可能な製剤は、防腐剤が無い。
[正円窓膜浸透促進剤]
もう1つ別の実施形態において、製剤は、1又はそれより多い正円窓膜浸透促進剤をさらに含む。正円窓膜を越える浸透は、正円窓膜浸透促進剤の存在により高められる。正円窓膜浸透促進剤は、正円窓膜を越えて同時投与物質の輸送を促進する化学物質である。正円窓膜浸透促進剤は、化学構造体に従って分類される。イオン性と非イオン性の両方の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐20‐セチルエーテル、ラウレス‐9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐9‐ラウリルエーテル(PLE)、Tween(登録商標)80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP‐POE)、ポリソルベートなどが、正円窓膜浸透促進剤として機能する。胆汁塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸及び誘導体(例えば、オレイン酸、カプリン酸、モノ-グリセリド及びジ-グリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸塩など)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、及びアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロパンジオールなど)もまた正円窓膜浸透促進剤として機能する。
幾つかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドが、テトラデシル-β-D-マルトシドであるアルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な浸透促進剤は、アルキルグリコシドが、テトラデシル-マルトシドであるアルキル-グリコシドを含む界面活性剤である。幾つかの例では、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。幾つかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。幾つかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子で見つかったヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.)である。幾つかの例では、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ(例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、AmpHadase(登録商標))、(アムファスター・ファーマシューティカル社、Hydase(登録商標)(プリマファーム社)である。幾つかの例では、ヒアルロニターゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標)(ISTA Pharmaceuticals))である。特定の例では、本明細書に記載のヒアルロニダーゼは、組換型ヒアルロニダーゼである。幾つかの例では、本明細書に記載のヒアルロニダーゼは、ヒト化組換ヒアルロニダーゼである。幾つかの例では、本明細書に記載のヒアルロニダーゼはペグ化されたヒアルロニダーゼ(例えば、PEGPH20(Halozyme))である。さらに、米国特許第7,151,191号、第6,221,367号および第5,714,167号(これらは、そのような開示のために参照によって本明細書に組み入れられる)に記載のペプチド様浸透促進剤は、さらなる実施形態として熟慮される。これらの浸透促進剤は、アミノ酸とペプチド誘導体であり、膜または細胞間の密着結合の完全性に影響を与えずに、受動の細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。
[正円窓膜浸透リポソーム]
リポソーム又は脂質粒子は、また、抗菌剤製剤又は組成物をカプセル化するのに使用され得る。水溶性培地中に穏やかに分散したリン脂質は、脂質の層を分離する封入された水溶性媒体の領域と共に、多層の小胞(vesicles)を形成する。これらの多層構造の小胞の超音波処理又は激しい攪拌は、通常リポソームとして知られる約10-1000nmの大きさの単層の小胞の形成をもたらす。これらのリポソームは、抗菌剤又は他の医薬品の担体として多くの利点を有する。それらは、生物学的に不活性であり、生分解性で、無毒で、そして非抗原性である。リポソームは、様々な大きさで、かつ、組成物および表面特性を変えて形成される。さらに、それらは、幅広い種類の薬剤を封入し、そしてリポソーム崩壊の部位で薬剤を放出することができる。
本明細書中の耳に許容可能なリポソームに使用される適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、エタノールアミン及びセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸及びセレブロシド、特に、非毒性で、薬学的に許容可能な有機溶媒中に本明細書中の抗菌剤とともに可溶なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールなど、およびそれらの混合物、特にレシチン、例えば大豆レシチンの混合物である。本発明の製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%から約30%、好ましくは約15%から約25%、特に約20%である。
親油性の添加剤は、リポソームの性質を選択的に改変するために有効に利用され得る。そのような添加剤の例は、ほんの一例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、 コレステロールヘミコハク酸(hemisuccinate)およびラノリン抽出物を含む。使用される親油性の添加剤の量は、0.5から8%まで、好ましくは、1.5から4%までであり、特に約2%である。通常、親油性の添加剤の量とリン脂質の量との割合は約1:8から約1:12までであり、特に、約1:10である。前記リン脂質、脂溶性添加物及び抗菌剤及び他の医薬化合物は、前記成分(ingredients)を溶解している非毒性の、薬学的に許容可能な有機溶媒系とともに利用される。前記溶媒系は、完全に抗菌剤を溶解しなければならないだけでなく、安定した単一の二層のリポソームの製剤を可能としなければならない。溶媒系は、約8から約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロル(glycofurol)、テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl)アルコールポリエチレングリコールエーテル)を含む。前記溶媒系では、ジメチルイソソルビドの量のテトラグリコールの量に対する割合は、約2:1から約1:3まで、特に、約1:1から約1:2.5までであり、好ましくは約1:2である。最終組成物におけるテトラグリコールの量は、従って、5から20%まで変化する、特に5から15%まで変化し、好ましくはおよそ10%である。最終組成物におけるジメチルイソソルビドの量は、従って、3から10%の範囲であり、特に3から7%の範囲であり、好ましくはおよそ5%である。
本明細書において以下に使用される用語「有機成分」は、リン脂質、親油性の添加剤および有機溶媒を含む混合物を指す。抗菌剤は、有機成分又は薬剤の完全活性化を維持するための他の手段において溶解されている。最終製剤における抗菌剤の量は、01.から5.0%の範囲であり得る。さらに、抗酸化物のような他の成分は、有機成分に加えられる。例として、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、 アスコルビルオリエート(ascorbyl oleate)などが挙げられる。
リポソーム製剤は、中程度に耐熱性のある抗菌剤または他の医薬品のために、代替的に調合される。すなわち、
(a)リン脂質および有機溶媒系を容器内で約60-80°Cまで熱し、活性成分を溶かし、その後任意の追加の処方製剤を加え、そして完全な溶解が得られるまで混合物を攪拌し;
(b) 第二の容器に90〜95℃まで水溶液を加熱し、その中に防腐剤を溶解させ、混合物を冷却し、それから補助の処方薬剤の残りと水の残りを加え、完全な溶解が得られるまで攪拌し;
それから水溶性成分を調合し;
(c)高速の混合装置、例えば、高せん断ミキサーで混合物を均質化すると同時に、水溶性成分に直接有機相を移動させ;
そして(d)更なる均質化を行うと同時に、結果として生じる混合物に粘度増強剤を加える、ことによって調合される。水溶性成分は、随意に、ホモジナイザーが装備された適切な容器に入れられ、そして均質化は、有機成分の注入の間に大きな乱流を作ることによって作用される。混合物に高いずり応力を働かせる任意の混合方法またはホモジナイザーが使用され得る。通常、約1,500から20,000rpmまでの、特に、約3,000から約6,000rpmまでの、速度が可能なミキサーが使用され得る。プロセス工程(d)で使用するのに適切な粘度増強剤は、例えば、キサンタンゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物である。粘度増強剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常、約0.5〜2.0%までの範囲であり、ほぼ1.5%である。リポソーム組成物の調製中に使用される材料の分解を防止するために、窒素又はアルゴンのような不活性ガスで全ての溶液から不純物を取除き、そして不活性な雰囲気下で全ての工程を行うことが有用である。上述の方法によって調製されたリポソームは、通常、脂質の二重層において結合した活性成分のほとんどを含み、カプセル化していない材料からリポソームを分離することは必要とされない。
他の実施形態において、ゲル製剤及び粘度を強化した製剤を含む耳に許容可能な製剤は、さらに賦形剤、他の医薬品薬剤または医薬薬剤、担体、アジュバント(防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤等)、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤及びこれらの組み合わせをさらに含む。
本明細書に記載される耳に許容可能な製剤における使用に適切な担体は、限定するものではないが、標的である耳構造の生理環境に適合する任意の薬学的に許容可能な溶媒を含む。他の実施形態では、基剤は、薬学的に許容可能な界面活性剤及び溶媒の組み合わせである。
幾つかの実施形態において、他の賦形剤は、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチル硫酸、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、それらの薬学的に許容可能な塩、並びにそれらの組み合わせ又は混合物を含む。
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートは、ソルビタンエステルの非イオン性の界面活性剤である。本開示における有用なポリソルベートとしては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)及びそれらの任意の組合せ又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
1つの実施形態では、薬学的送達ビヒクルの調合に用いられる、水溶性グリセリンをベースとした耳に許容可能な粘度を増強した製剤は、少なくとも0.1%又はそれより多い水溶性グリセリン化合物を含有する少なくとも1の抗菌剤を備える。幾つかの実施形態では、抗菌剤の比率は、全体の医薬製剤の約1%から約95%の間、約5%から約80%の間、約10%から約60%の間、もしくはそれより多い比率の重量又は体積で変化する。幾つかの実施形態では、各々の治療に有用な抗菌剤の製剤における化合物の量は、適切な容量が化合物の任意の一定の投与量で獲得されるように、調合される。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間などの因子、および他の薬学的な検討事項が、本明細書中において熟慮される。
所望される場合、耳に許容可能な医薬ゲルは、また、緩衝剤に加えて、防腐剤、共溶媒、イオン強度及びオスモル濃度調整剤及び他の賦形剤(excipeints)を含み得る。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝剤は、アルカリ金属又はアルカリ性の土類金属の炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸などであり、これらは、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及びトロメタミン(TRIS)などである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝剤は組成物全体の重量基準で5%と同等となり得る。
共溶媒は、抗菌剤の溶解度を増強するのに用いられる、しかしながら、幾つかの抗菌剤又は他の医薬化合物は不溶性である。これらは、しばしば、適切な懸濁剤又は粘度増強剤の補助によりポリマービヒクル中で懸濁される。
治療上許容可能な耳の製剤の例:
本明細書に開示の製剤は、特定の治療薬または賦形剤、希釈剤または担体の使用により生じ得る潜在的な耳毒性の影響を中和するために、代替的に、少なくとも1つの活性薬剤および/または賦形剤に加えて耳保護性の薬剤を含み、これは、酸化防止剤、αリポ酸、カルシウム、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤のような薬剤を含むが、これらに限定されない。
[処置の形態]
[投薬方法及びスケジュール]
内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路で全身的に投与されてきた。しかしながら、内耳での局所的な病理に対する全身投与は、全身への毒性及び副作用の可能性を増大させ、薬物の非生産的な分布を形成する。この分布では、高水準の薬物が血清において見出され、それに対応して、低水準の薬物が内耳で見出される。
治療薬剤の鼓室内注射は、鼓膜の裏側に治療薬剤を、中耳及び/又は内耳へと注射する技術である。1つの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、鼓室内注射を介して正円窓膜に直接投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される抗菌剤の耳に許容可能な製剤は、内耳への非鼓室内注入アプローチで正円窓膜に投与される。さらなる実施形態では、本明細書に記載される製剤は、蝸牛窓稜の変更を含む正円窓膜への外科的アプローチを介して、正円窓膜に投与される。
1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通するとともに、直接的に正円窓膜又は内耳の蝸牛窓稜に到達可能な注射器及び注射針の装置である。幾つかの実施形態では、注射器の注射針は、18ゲージ注射針より幅広い注射針である。別の実施形態では、注射針ゲージは、18ゲージから31ゲージまでである。さらなる実施形態では、注射針ゲージは25ゲージから30ゲージまでである。抗菌剤組成物又は製剤の厚さ又は、粘度に応じて、注射器又は皮下注射針のゲージの水準は、適宜変更される。別の実施形態では、注射針の内径は、適切な針ゲージを維持する一方、針の目詰まりの可能性を減らすために、針の壁厚を減少させる(一般に、薄壁のまたは超薄肉の針と称される)ことにより増大させ得る。
別の実施形態において、注射針はゲル製剤の即時送達に用いられる皮下注射針である。
皮下針は、一回使用の(single)針又は使い捨ての針である。幾つかの実施形態では、注射器は、本明細書に開示される薬学的に許容可能なゲルベースの抗菌剤含有化合物の送達に利用され、注射器はプレスフィット(ルアー)又はツイストオン(ルアーロック)付属品を有する。1つの実施形態では、注射器は、皮下注射注射器である。別の実施形態では、注射器は、プラスチック又はガラスで作られている。さらに別の実施形態では、皮下注射注射器は、一回使用の注射器である。さらなる実施形態では、ガラス注射器は、滅菌される。また、さらに別の実施形態では、滅菌は、オートクレーブによって行う。別の実施形態では、注射器は円筒形状の注射器本体を備え、ゲル製剤は使用前に蓄えられる。他の実施形態では、注射器は、円筒形状の注射器本体を備え、本明細書に開示される抗菌剤の薬学的に許容可能なゲルをベースとした組成物は、使用前に保存され、該組成物は、適切な薬学的に許容可能な緩衝剤と都合よく混合することが可能である。他の実施形態では、注射器は他の賦形剤、安定剤、懸濁剤、希釈剤又はこれらの組み合わせを含有し、これらに含有される抗菌剤又は他の薬学的化合物を安定させる、又はそうでなければ安定的に保存する。
幾つかの実施形態では、注射器は、円筒形状の注射器本体を備え、各仕切りが耳に許容可能な抗菌剤のゲル製剤の少なくとも1の成分を保存することができるように、本体は区切られている。さらなる実施形態では、区画化された本体を有する注射器は、中耳又は内耳への注入の前に成分を混合させることができる。他の実施形態では、送達システムは、多数の注射器を備え、多数の注射器の各々の注射器は、ゲル製剤の少なくとも1の成分を含有し、これにより、各成分は注射前に事前に混合される、又は各成分は注射の後に混合される。さらなる実施形態では、本明細書に記載される注射器は、少なくとも1の容器を備え、少なくとも1の容器は、抗菌剤、又は薬学的に許容可能な緩衝剤又はゲル化剤又はこれらの組み合わせなどの粘度増強剤を備える。中耳内注射を行うために、注射器バレルを有する既製のプラスチック注射器、針を有する針アセンブリ、プランジャーロッドを有するプランジャー、および保持フランジのような最もシンプルな形態で、市販の注射器具が任意に使用される。
幾つかの実施形態において、送達デバイスは、中耳および/または内耳への治療薬の投与のために設計された器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical Gmbhは、正円窓ニッチの視覚化及び正円窓ニッチへの薬物送達のために、マイクロオトスコープを提供する。Arenbergは、米国特許第5,421,818号、第5,474,529号及び第5,476,446号において、内耳構造に対して、流体を送達するための医薬処置装置を記載した。それらの各々は、開示目的のために、引用することによって本明細書に組み込まれる。開示目的のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第08/874,208号は、内耳に対して治療薬剤を送達するための流体移動導管を埋め込むための外科的方法について記載している。米国特許出願公開2007/0167918は、これは、そのような開示のために本明細書に参照として取り込まれているが、さらに、内耳内の流体サンプリングおよび薬投与のための組み合わされた耳のアスピレーターと投薬ディスペンサーについて記載する。
本明細書記載の抗菌剤化合物を含む耳に許容可能な組成物又は製剤は、予防的処置及び/又は治療処置として投与される。治療的用途において、抗菌剤の組成物は、自己免疫疾患、疾病又は不調に既に苦しんでいる患者に対して、疾患、不調又は疾病の兆候を治癒、又は少なくとも部分的に進行を止めるのに十分な量で投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、不調又は疾病の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応及び処置する医師の判断による。
[周期的な投与]
幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、その必要のある個人に一回投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、その必要のある個人に二度以上投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物の最初の投与の次に、本明細書に開示の組成物の二次の投与が行なわれる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物の最初の投与の次に、本明細書に記載された組成物の第2および第3の投与が行なわれる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物の最初の投与の次に、本明細書に記載された組成物の第2、第3、第4の投与が行なわれる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示の組成物の最初の投与の次に、本明細書に記載された組成物の第2、第3、第4、第5の投与が行なわれる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載された組成物の最初の投与の次に、休薬日が来る。
組成物がその必要のある個人に投与される回数は、内科の専門家の判断、不調、不調の重症度、および製剤に対する個人応答に依存する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、軽度の急性疾病を備えた、それを必要とする個人に一回投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示された組成物は、中等度または重度の急性の疾病があり、その必要のある個人に二度以上投与される。患者の疾病が改善しない場合、患者の疾患又は疾病の兆候を寛解させる、またはそうでなくとも、制御又は制限するために、医者の判断に基づき、抗菌剤は常習的に、即ち患者の寿命の間中などといった、長期間投与される。
患者の症状が改善しない場合、患者の疾患又は症状の兆候を寛解させる、またはそうでなくとも、制御又は制限するために、医者の判断に基づき、抗菌剤化合物は常習的に、即ち患者の寿命の間中などといった、長期間投与される。
患者の状態が、改善する場合、医者の判断により、抗菌剤の化合物の投与を継続し;かわりに、投与される薬物の投与量を、一時的に減少し、または一定時間の間一時的に停止する(即ち休薬期間中)こともある。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変化され、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含む。休薬期間の間の用量の減少は、10%〜100%であり得、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む。
一旦患者の耳の疾病の改善が生じると、必要ならば維持量の抗菌剤が投与される。次に、症状に応じて、改善された疾患、不調又は疾病が維持される水準になるまで、連続的に、投与量もしくは投与頻度又はこれら両方が随意に減少される。特定の実施形態では、患者は、いかなる症状の再発時にも長期的に間欠的処置を必要とする。
このような量に対応する抗菌剤の量は、例えば、投与される特定の抗菌剤、投与経路、処置すべき自己免疫疾病、処置すべき標的領域、及び、処置すべき被検体又は宿主などを含む症例を囲む特定の状況に応じて、特定の化合物、疾患、疾病及びその重症度などの要因によって異なる。しかしながら、一般的に成人ヒトの処置に用いられる投与量は、概して1回の投与につき、0.02〜50mgの範囲であり、好ましくは1回の投与につき、1〜15mgである。所望の投与量は、1回の投与量又は分割された投与量であらわされ、同時に(又は短期間をおいて)又は適切な間隔をおいて投与される。
幾つかの実施形態において、最初の投与は、特定の抗菌剤であり、その次の投与は、異なる製剤又は抗菌剤である。
[制御放出性製剤の薬物動態]
1つの実施形態では、本明細書に開示される製剤は、組成物からの抗菌剤の即時放出、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内、又は30分以内、又は60分以内、又は90分以内の放出を追加的に付与する。他の実施形態では、治療に有用な少なくとも1の抗菌剤の量は、即時、又は1分以内、又は5分以内、又は10分以内、又は15分以内、又は30分以内、又は60分以内、又は90分以内に組成物から放出される。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1の抗菌剤の即時放出を付与する、耳に薬学的に許容可能なゲル製剤を備える。追加の製剤の実施形態は、本明細書に記載される製剤の粘度を増強させる薬剤を同様に備えることもある。
他の又はさらなる実施形態において、製剤は、少なくとも1の抗菌剤の拡張放出型製剤を提供する。特定の実施形態では、製剤からの少なくとも1の抗菌剤の拡散は、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は5ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって生じる。他の実施形態では、治療に有効な量の少なくとも1の抗菌剤が、5分、又は15分、又は30分、又は1時間、又は4時間、又は6時間、又は12時間、又は18時間、又は1日、又は2日、又は3日、又は4日、又は5日、又は6日、又は7日、又は10日、又は12日、又は14日、又は18日、又は21日、又は25日、又は30日、又は45日、又は2ヶ月、又は3ヶ月、又は4ヶ月、又は5ヶ月、又は6ヶ月、又は9ヶ月、又は1年にわたって製剤から放出される。
他の実施形態では、製剤は、抗菌剤の即時放出及び拡張放出を提供する。また、さらに他の実施形態において、製剤は、0.25:1の割合、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の割合、又は1:20の割合の即時放出性製剤及び拡張放出性製剤を含む。さらなる実施形態では、製剤は、即時放出性の第1の抗菌剤、及び、拡張放出性の第2の抗菌剤、又は他の治療薬剤を提供する。また、他の実施形態では、製剤は、少なくとも1つの抗菌剤の即時放出性製剤及び拡張放出性製剤、及び少なくとも1つの治療薬剤を提供する。幾つかの実施形態では、製剤は、第1抗菌剤、第2抗菌剤、それぞれについて、0.25:1の割合、又は0.5:1の割合、又は1:1の割合、又は1:2の割合、又は1:3、又は1:4の割合、又は1:5の割合、又は1:7の割合、又は1:10の割合、又は1:15の割合、又は1:20の割合の 即時放出製剤および拡張放出性製剤を与える。
特定の実施形態では、製剤は、基本的に全身曝露を伴わない疾患部位に、治療に有効な量の少なくとも1つの抗菌剤を提供する。追加の実施形態では、製剤は、基本的に検出可能な全身曝露を伴わない疾患部位において、治療に有効な量の少なくとも1つの抗菌剤を提供する。他の実施形態では、製剤は、検出可能な全身曝露を少ししか伴わない又は伴わない疾患部位において、治療に有効な量の少なくとも1つの抗菌剤を提供する。
即時放出性、遅延放出性、及び/又は拡張放出性の抗菌剤の組成物又は製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定剤、等張化剤、及び本明細書中に開示される他の化合物と同様に、他の医薬品と組み合わせてられ得る。このように、使用された抗菌剤、所望の濃厚さおよび粘度、又は選択される送達の形態によって、本明細書で開示される実施形態の代替的な形態は、即時放出、遅延放出および/または拡張放出の実施形態と結び付けられる。
特定の実施形態では、本明細書中に記載される抗菌剤製剤の薬物動態は、試験動物(例として、モルモット又はチンチラを含む)の正円窓膜又は正円窓膜の近辺に、製剤を注射することによって測定される。決定される期間(1週間にわたって製剤の薬物動態を試験するためであり、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、及び7日)で、試験動物は安楽死させられ、5mLのサンプルの外リンパ液が試験される。内耳が取り除かれ、抗菌剤の存在を検査する。必要な場合、抗菌剤のレベルは、他の器官においても測定される。さらに、抗菌剤の全身レベルは、試験動物から血液サンプルを回収することによって測定される。製剤が聴覚を妨げるかどうかを決定するために、試験動物の聴覚は任意に試験される。
代替的に、内耳は、(試験動物から取り除かれる時に)提供され、そして抗菌剤の移入が、測定される。また、別の代替として、インビトロの正円窓膜のモデルが提供され、抗菌剤の移入が測定される。
[キット/製品]
本開示はまた、哺乳動物における疾患若しくは不調の症状を防止、処置、又は改善するためのキットも提供する。このようなキットは、一般的に、本明細書中に開示される、1以上の抗菌剤制御放出性組成物、又は機器、及びキットを使用するための指示書を備える。本開示はまた、内耳障害を有しているか、有していると疑われる、又は発症する危険があるヒトなどの哺乳動物の疾患、機能障害、又は不調の症状を処置する、和らげる、弱める、又は改善するための薬の製造中に1以上の抗菌剤制御放出性組成物を使用することを熟慮している。
幾つかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブのような1以上の容器を収容するよう区分化されたキャリア、パッケージ、又は容器を備え、容器の各々は、本明細書中に記載される方法において使用される別々の要素の一つを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、及び試験管を含む。他の実施形態では、容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成される。
本明細書で提供される製造品は、パッケージ材料を含む。医薬品を包装する際に使用されるパッケージ材料はまた、本明細書で示される。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、及び第5,033,252号を参照。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、及び選択された製剤及び意図された様式による投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に提供される多様な抗菌製剤の組成物は、内耳への抗菌剤の制御放出性投与によって効果を得る任意の疾患、不調、又は疾病の多様な処置として熟慮されている。
幾つかの実施形態では、キットは1以上の追加の容器を含み、夫々の容器は、本明細書中に記載の製剤の使用に関して、商業上の観点及びユーザーの観点から望ましい1以上の様々な材料(随意に濃縮された形態の試薬、及び/又はデバイスなど)を含む。このような材料の非限定的な例としては、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、担体、パッケージ、容器、バイアル及び/又は内容を列挙するチューブラベル及び/又は使用説明書、及び使用説明書を備える添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。一組の指示書が任意に含まれる。更なる実施形態では、ラベルは、容器上に、または容器に付属されている。別のさらなる実施形態では、ラベルを形づくる文字、数字、又は他の表示が、容器自体のコンテナ中に貼り付けられるか、成形されるか、または刻まれている場合は、ラベルは容器上に取付けられる。ラベルが、また、コンテナを保持する貯蔵所(receptacle)又はキャリア(例えば、パッケージインサート)に存在する場合、ラベルはコンテナに付随する。他の実施形態では、ラベルは、内容物が特定の治療用途に用いられるべきものであるということを示すために用いられる。さらなる別の実施形態では、ラベルは、また、本明細書に記載の方法などのように、内容物の使用に関しての方向性を示すものでもある。
特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書で提供される化合物を含む1以上の単位剤形を含む、パックまたはディスペンサーデバイスで与えられる。別の実施形態では、パックは、例えば、ブリスター包装などの金属またはプラスチックホイルを含む。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーデバイスには、投与の説明書が添付してある。また、さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用、または、販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に付随する通知書が添付してあり、この通知書は、ヒトまたは動物の投与に関する薬物の形態についての、政府機関の承認を反映するものである。別の実施形態では、このような通知書は、例えば、処方薬または承認された生成物の挿入に関する、米国食品医薬品局により承認されたラベルである。また、別の実施形態では、適合する医薬担体に処方された、本明細書で提供される化合物を含む組成物は、また、示された疾病の処置のために、調製され、適切な容器に配され、ラベル付けされる。
[実施例]
[実施例1] - アモキシシリン熱可逆性ゲル製剤の調合
0.5%の抗菌剤アモキシシリンを含む1回分10gのゲル製剤が、5.00gのTRIS HCl緩衝剤(0.1M)中の1.75gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調合され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(150.0mg)、メチルパラベン(10mg)、及び追加のTRIS HCl緩衝剤(0.1M)(3.04g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。アモキシシリン(50mg)は、可溶性にするために加えられ混合される。混合物は、使用するまで室温以下で維持する。
[実施例2] - オトプロテクタントを含んでいる、ネオマイシン粘膜付着性で熱可逆性ゲル製剤の調合
0.6%の抗菌剤ネオマイシンを含む1回分10gのゲル製剤が、5.00gのTRIS HCl緩衝剤(0.1M)中の、20.0mgのカルボポール934P、及び1.80gのポロクサマー407(BASF社)を懸濁することによって調合され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(150.0mg)、メチルパラベン(10mg)、及び追加のTRIS HCl緩衝剤(0.1M)(2.91g)が加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。ネオマイシン(60mg)およびデフェロキサミン(50mg)は可溶性にするために加えられ混合される。混合物は、使用するまで室温以下で維持される。
[実施例3] - ペニシリンGベンザチンの粘膜付着性基づいた製剤の調合
クリーム・タイプの製剤を、先ず、ペニシリンGベンザチンを有機溶媒と共に、穏やかに混合することによって調合する。第2システムを、60℃まで昇温することによって、パラフィン油、トリヒドロキシステアラート(trihydroxystearate)およびセチルジメチコン(dimethicon)コポリオールを混合することにより調合する。室温までに冷やす際、脂質システムを、30分間水相で混合する。
[実施例4] - ガンシクロビル粘膜付着性で熱可逆性ゲル製剤の調合
カルボポール934P及びポロクサマー407(BASF社)は、まず、TRIS HCl緩衝剤(0.1M)中で懸濁され、成分は、攪拌下において一晩中4℃で混ぜられることで、確実に完全溶解する。メチルパラベンが加えられ、完全な溶解が観察されるまでさらに攪拌する。ガンシクロビル・ナトリウムは、2.0%のガンシクロビル粘膜付着性で熱可逆性ゲル製剤を生産するために撹拌維持している間に、混合される。混合物は、使用するまで室温以下で維持する。
[実施例5] - ゲンタマイシンゲル製剤の調合
5mlの酢酸溶液を、約4.0のpHまで滴定する。キトサンを加え、約5.5のpHを達成する。その後、ゲンタマイシンをキトサン溶液中に溶解させる。この溶液を、ろ過によって殺菌する。また、グリセロリン酸塩二ナトリウムの5mlの水溶液を調製し、殺菌する。2つの溶液を混合し、2時間以内に37℃で、所望のゲルが形成される。
本明細書に記載されている医薬品組成物の粘度測定法は、室温および37°Cで行なわれ、20毎分回転数でブルックフィールド(紡錘体とカップ)粘度計を使用して作られる。
[実施例6] -制御 /即時放出抗菌製剤
ペニシリンGベンザチンを含むPLA(ポリ(L-ラクチド))ミクロスフェアは、3%のwt/vol溶液を製作するために、100mLのジクロロメタンに十分なPLAを加えることにより調合される。1.29gのペニシリンGベンザチンは、混合しながら溶液に加えられる。その後、その溶液は、油/水エマルジョンを生産するために、撹拌しつつ、0.5%のwt/volポリ(ビニルアルコール)を包含している2Lの蒸留水に滴下によって加えられる。撹拌は、ジクロロメタンの蒸発および固体のミクロスフェアの組成を可能にするのに十分な期間、続けられる。ミクロスフェアを、ろ過し、蒸留水で洗い、質量ロスが観察されなくなるまで乾燥させる。
製剤の即時放出部分は、撹拌下の水/プロピレングリコール/グリセリン溶剤系中で、2%のメチルセルロース溶液の生成によって調合される。ペニシリンGベンザチンは、溶液に加えられる。その間に、撹拌は、1%のペニシリンGベンザチン低粘度ゲルを、継続的にもたらす。その後、ペニシリンGベンザチンを含むミクロスフェアの適正量は、低粘度ゲルと混合され、組み合わせ型制御/即時放出ペニシリンGベンザチン耳製剤をもたらす。
[実施例7] - 微粉化されたシプロフロキサシン・パウダーを含む熱可逆性ゲル・シプロフロキサシン組成物(Thermoreversible Gel Ciprofloxacin Composition)の調合
2.0%の微粉化されたシプロフロキサシンを包含している一回分10gのゲル製剤を、調合する。粉末化されたシプロフロキサシン、13.8mgのリン酸ナトリウム二塩基二水和物USP(Fisher Scientific.)、及び3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific.)、及び74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)が、8.2gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解され、pHは1M NaOHを用いて7.4に調整された。緩衝溶液は、冷却され、1.6gのポロクサマー407(BASF社、約100ppmのBHTを含む)は、混ぜる間、冷却されたPBS溶液中へ振り入れられ、溶液は全てのポロクサマーが溶解するまで混ぜられる。ポロクサマーは、無菌環境において、33mmのPVDF 0.22μmの無菌の注射器フィルタ(ミリポア社)を用いて無菌ろ過され、2 mLの無菌のグラス・バイアル(ホイートン)へと送達される。バイアルは、無菌ブチルゴムストッパー(Kimble)を用いて閉められ、13mmAlシール(Kimble)を用いて圧着密閉された。20mgの微粉化されたシプロフロキサシンは、別々の清潔な発熱性物質を除かれたバイアルに置かれる。バイアルは、無菌のブチルゴム栓(Kimble)で閉められており、13mmのアルミニウム・シール(Kimble)で密閉されて圧着される。バイアルは、140°Cで7時間(Fisher Scientific Isotemp ovenによって)乾熱滅菌された。本明細書中に記載される実験用投与の前に、1mLの冷却ポロクサマー溶液は、1mL無菌注射器(Becton Dickinson)に取り付けられた21G注射針(Becton Dickinson)を使用して、20mgの無菌微粉化シプロフロキサシンを含むバイアルに送られ、懸濁が確実に均質になるように振ってよく混ぜられた。その後、懸濁液は、21G注射器を用いて回収され、注射針は、投与用の27G注射針へ取り替えらる。
ゲンタマイシンを含む製剤、アジスロマイシンおよび微粉化デキサメタゾンを備える製剤は、上記の手続きを使用して調合される。
[実施例8] - 微粉化シプロフロキサシン・パウダーおよび微粉化デキサメタゾン・パウダーを含む熱可逆性ゲル状組成物(Thermoreversible Gel Composition)の調合
2.0%(微粉化シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾン)を包含している一回分10gのゲル製剤を、調合する。微粉化シプロフロキサシン、粉末化デキサメタゾン、13.8mgのリン酸ナトリウム二塩基二水和物USP(Fisher Scientific.)、及び3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific.)、及び74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)が、8.2gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解され、pHは、1M NaOHを用いて7.4に調整された。緩衝溶液は、冷却され、1.6gのポロクサマー407(BASF社、約100ppmのBHTを含む)は、混ぜる間、冷却されたPBS溶液中へ振り入れられ、溶液は、全てのポロクサマーが溶解するまで混ぜられた。ポロクサマーは、無菌の環境において、33mmのPVDF 0.22μmの無菌の注射器フィルタ(ミリポア社)を用いて無菌ろ過され、2 mLの無菌のガラス・バイアル(ホイートン)へと送達された。バイアルは、無菌のブチルゴム栓(Kimble)で閉められ、13mmのアルミニウム・シール(Kimble)で圧着密閉される。20mgの微粉化シプロフロキサシンおよび粉末化デキサメタゾン・パウダーは、別々の清潔な発熱性物質を除かれたバイアルに置かれる。バイアルは、無菌のブチルゴム栓(Kimble)で閉められており、13mmのアルミニウム・シール(Kimble)で密閉されて圧着される。バイアルは、140°Cで7時間(Fisher Scientific Isotemp ovenによって)乾熱滅菌される。本明細書中に記載される実験用投与の前に、1mLの冷却ポロクサマー溶液は、1mL無菌注射器(Becton Dickinson)に取り付けられた21G注射針(Becton Dickinson)を使用して、20mgの無菌微粉化シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含むバイアルに送られ、懸濁が確実に均質になるように振ってよく混ぜられた。その後、懸濁液は、21G注射器を用いて回収され、注射針は、投与用の27G注射針へ取り替えられた。I
[実施例9] - PBS緩衝液中でオートクレーブ滅菌された17%のポロクサマー407NF/2%の耳用薬剤のための分解生成物に対するpHの効果
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤の保存液を、351.4gの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、302.1mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific.)、及び適切な量の耳用薬剤を、79.3gの無菌ろ過された蒸留水を用いて溶解させることにより調製する。溶液を、氷冷槽中で冷却し、その後17.05gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)を、混ぜる間、冷却した溶液中へ振り入れる。ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合液をさらに混合する。この溶液のpHを測定する。
pH5.3のPBS中の17%ポロクサマー407/2%の耳用薬剤
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1MのHClの追加によりpHを5.3に調整する。
pH8.0のPBS中の17%ポロクサマー407/2%の耳用薬剤
上記溶液の一定分量(約30mL)を取り出し、1MのHaOHの追加によりpHを8.0に調整する。
PBS緩衝液(pH7.3)を、805.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific.)、606mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific.)、247mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(FisherScientific.)を溶解させることで調製し、その後、無菌ろ過した蒸留水を用いて200gに定量化(QS)する。
PBS pH7.3中に耳用薬剤2%の溶液を、PBS緩衝液中で適切な量の耳用薬剤を溶解させることで調製し、その後、PBS緩衝液を用いて10gに定量化(QS)する。
1mLのサンプルを、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配し、堅く閉める。バイアルを、Market Forge‐sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)に配し、250°Fで15分間、滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に置く。サンプルを、冷却している間、バイアルを混ぜることによって均質化する。
外観(例えば、変色及び/又は沈殿物)を観察し、記録する。HPLC分析を、全部で15分の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合物で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。
前記手続きによって調合された、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、オートクレーブ滅菌する工程の間に分解に対するpHの効果を測定するために前記手続きを使用して試験される。
[実施例10] - PBS中の17%のポロクサマー407NF/2%の耳用薬剤、の放出特性および粘度に対するオートクレーブ滅菌の効果
(オートクレーブされたものと、されていないもの)からのサンプルの一定分量を、放出特性および粘度の測定値のために評価し、ゲルの性質による加熱滅菌法の影響を評価する。
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行う。0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。ポロクサマー濃度のために、外部構成標準曲線と対照して、チオシアン酸コバルト法を用いて、624nmでUVによって、サンプルを分析する。手短に説明すると、20μLのサンプルを、1980μLの15mMのチオシアン酸コバルト溶液と混合し、吸収率を、Evolution 160UV/Vis分光光度計(Thermo Scientific)を用いて、625nmで測定する。
放出された耳用薬剤を、Korsmeyer-Peppasの式
に当てはめる。Qは時間tにおいて放出される耳用薬剤の量であり、Qαは耳用薬剤の全放出量であり、kはn次の放出定数であり、nは溶解機構に関する無次元数であり、bは軸切片であり、n=1はエロージョン制御機構を特徴付ける初期バースト放出機構を特徴づけている。平均溶解時間(MDT)は、薬物分子が放出前にマトリクス内にとどまっている異なる時間間隔の和を、分子の総数で除したもので、次の式によって算出される。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している0.08rpm(ずり速度0.31s-1)で回転するCPE-51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。Tgelを、粘度の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
前記手続きによって調合した、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、Tgelを測定するため前述の手続きを使用して試験される。
[実施例11] - 加熱滅菌(加圧減菌(autoclaving))後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む製剤の、分解生成物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響
[溶液A]
PBS緩衝液中にナトリウムカルボキシルメチルセルロース(CMC)を含むpH7.0の溶液を、78.4の無菌ろ過蒸留水で溶解させた、178.35mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、300.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)、126.6mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)を溶解させることによって調製し、その後、1gのBlanose 7M65CMC(Hercules、5450cP@2%の粘度)を緩衝液中に振り入れ、溶解を助けるために加熱し、その後、溶液を冷却する。
PBS緩衝液中に、17%ポロクサマー407NFと1%CMCと2%の耳用薬剤を含む、pH7.0の溶液を、氷冷水浴槽内で8.1gの溶液Aを冷却し、その次に、適切な量の耳用薬剤を加え、その後混合することによって作る。1.74gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)は、混ぜられている間に、冷溶液内に振り入れられる。混合物を、さらに、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混合する。
前記サンプルの2mLを、3mLのねじ口ガラスバイアル(ゴム内張付き)内に配し、堅く閉める。バイアルを、MarketForge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に配し、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に置く。サンプルを、バイアルを冷却している間、混ぜることによって均質化する。
オートクーブ後、沈殿又は変色を観察する。HPLC分析を、全部で15分間の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合物で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している0.08rpm(ずり速度0.31s-1)で回転するCPE-51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。Tgelを、粘度の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
溶解を、snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行い、0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度のために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。
ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、微粉化デキサメタゾンを含む製剤を、前記手順を用いて試験し、加熱滅菌(加圧減菌(autoclaving))後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む製剤の分解生成物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響を測定する。
[実施例12] - 加熱滅菌(加圧減菌(autoclaving))後のポロクサマー407NFを含む製剤の分解生成物に対する緩衝液のタイプの効果
TRIS緩衝液を、377.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)と、602.9mgのTromethamine(Sigma ChemicalCo.)を溶解することによってつくり、その後、無菌ろ過蒸留水(DI water)で100gに定量化(QS)し、pHを1MのHClで7.4に調節した。
[トリス緩衝液内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存液]
15gのポロクサマー407NF(Spectrum Chemicals)を混ぜている間、重さ45gのTRIS緩衝液は、氷冷浴槽内で冷やされ、その後、緩衝剤へと振り入れられた。混合物を、さらに、全てのポロクサマーが完全に溶解するまで、混合する。
一連の製剤を、前記保存液によって調製する。適切な量の耳用薬剤(またはその塩或いはそのプロドラッグ)及び/又は微粉化された/コーティングされた/リポソームの粒子状物質としての耳用薬剤(またはその塩もしくはそのプロドラッグ)を全ての実験に使用する。
PBS緩衝液内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存液(pH7.3)
上述されたPBSのバッファーを使用する。704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)と、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物(Fisher Scientific)と、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基無水物(Fisher Scientific)とを、140.4gの無菌ろ過蒸留水で溶解した。溶液を、氷冷水浴槽で冷却し、その後、50gのポロクサマー407NF(SPECTRUM CHEMICALS)を、混合している間に、冷溶液内に振り入れる。ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合物をさらに混合する。
一連の製剤を、上記保存液によって調製する。適切な量の耳用薬剤(またはその塩或いはそのプロドラッグ)及び/又は微粉化された/コーティングされた/リポソームの粒子状物質としての耳用薬剤(またはその塩もしくはそのプロドラッグ)を全ての実験に使用する。
表2と3は、上記述の手順を用いて調製したサンプルの一覧表である。適切な量の耳用薬剤を各サンプルに加え、サンプル中に2%の最終濃度の耳用薬剤を提供する。
[表2] トリス緩衝液を包含しているサンプルの調合。
[表3] PBSの緩衝液(7.3のpH)を包含しているサンプルの調合
1mLのサンプルを、個々に、3mLねじ式キャップガラスバイアル(ゴム内張付き)中に配し、堅く閉める。バイアルを、Market Forge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に置き、250°Fで25分間滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを放置し、室温になるまで冷却する。バイアルを、冷蔵庫に置き、サンプルを均質化するために冷却する間、混合する。
HPLC分析を、全部で15分の間、(0.05%のTFAを含んでいる、吸水性アセトニトリル混合液)の30〜80のアセトニトリル勾配(1〜10分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えているAgilent 1200を用いて行う。サンプルを、サンプルの30μLを採ることによって希釈化し、1.5mLの1:1アセトニトリル水混合物で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳用薬剤の純度を記録する。TRIS緩衝液とPBS緩衝液との内での製剤の安定性を、比較する。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している0.08rpm(ずり速度0.31s-1)で回転するCPE-51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。Tgelを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。加圧減菌の後に何の変化も示さない製剤だけを分析する。
ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、および微粉化デキサメタゾンを含む製剤を、前記手順を用いて試験し、加熱滅菌(加圧減菌(autoclaving))後の2%の耳用薬剤および17%のポロクサマー407NFを含む製剤の分解生成物および粘度に対する第2のポリマーの添加の影響を測定する。微粉化した耳用薬剤を含む製剤の安定性を、微粉化していない耳用薬剤の製剤対照物と比較する。
[実施例13] - 耳製剤のパルス状放出
シプロフロキサシンと塩酸シプロフロキサシンとの(1:1の比率)組み合わせは、本明細書に記載した手順を用いるパルス状の耳用薬剤製剤放出を準備するため用いられた。シプロフロキサシンの20%の送達された投与量は、βシクロデキストリンの助けによって、実施例9の17%ポロクサマー溶液内で可溶化された。その後、残り80%の耳用薬剤を、混合物に加え、最終製剤を、本明細書に記載の任意の手順を用いて調製する。
ゲンタマイシン、アジスロマイシン、微粉化デキサメタゾンを備えている製剤のパルス状放出は、本明細書に記載の手順とサンプルとによって調整され、パルス状の放出特性を定めるため、本明細書に記載された手順を用いて試験された。
[実施例14] - PBS中の17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/78ppmエバンスブルーの調製
PBS緩衝液内のEvans Blueの保存溶液(5.9mg/mL)は、5.9mgのEvans Blue(Sigma Chemical Co)を、(実施例9からの)1mLのPBS緩衝剤で溶解することによって調製した。
PBS緩衝液内に25%ポロクサマー407溶液を含んでいる保存溶液を、この研究で使用する。適切な量の耳用薬剤を、保存溶液に加え、2%の耳用薬剤を含む製剤を調製する(表4)。
[表4] エバンスブルーを包含しているポロクサマー407サンプルの調合
ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、前記手続きによって調合され、0.22μm PVDF注射器フィルタ(ミリポア社)を通って無菌ろ過され、オートクレーブ滅菌される。
前記製剤は、本明細書に記載された手順によってモルモットの中耳に投与され、接触しているゲルへの製剤能力と、ゲルの位置とは、投与後、そして、投与後24時間で確認された。
[実施例15] - 可視化染料を加える場合、および加えない場合の、ポロクサマー407製剤末端(terminal)滅菌
リン酸緩衝液、pH 7.3内での、17%のpoloxamer407/2%の耳薬剤: 709mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、742mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)と、251.1mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、適切な量の耳用薬剤と、が158.1gの無菌ろ過蒸留水によって溶解された。溶液を、氷冷水浴槽内で冷却し、その後、34.13gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)を、混合している間、冷溶液内に振り入れる。ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合物をさらに混合する。
リン酸緩衝液内での、17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/59ppmエバンスプルー:リン酸塩緩衝液の、17%ポロクサマー407と2%の耳用薬剤との2mLを採り、5.9mg/mLのエバンスプルー(Sigma-Aldrich chemical Co)溶液2mLをPBS緩衝液に加えた。
リン酸緩衝液内での、25%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤: 330.5mgの塩酸ナトリウム(Fisher Scientific)と、334.5mgのリン酸ナトリウム二塩基無水物USP(Fisher Scientific)と、125.9mgのリン酸ナトリウム一塩基一水和物USP(Fisher Scientific)と、適切な量の耳用薬剤と、が70.5gの無菌ろ過蒸留水によって溶解された。
溶液を、氷冷水浴槽内で冷却し、その後、25.1gのポロクサマー407NF(Spectrum chemicals)を、混合している間、冷溶液内に振り入る。
ポロクサマーが完全に溶解するまで、混合液をさらに混合する。
リン酸緩衝液内での、25%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/59ppmエバンスプルー:リン酸緩衝溶液内の、25%ポロクサマー407と2%の耳用薬剤と2mLを採り、5.9mg/mLのEvans blue(Sigma-Aldrich chemical Co)溶液2mLをPBS緩衝液に加えた。
2mLの製剤を、2mLのガラスバイアル(Wheaton serum glassvial)に置き、13mm butyl str(kimble stoppers)によって密閉し、アルミニウム・シールによって圧着させた。バイアルを、Market Forge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に配し、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブした後、サンプルを、放置し室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に入れる。バイアルを、冷蔵庫に置き、サンプルを均質化するために冷却する間、混合する。オートクレーブ後のサンプルの溶解又は沈殿を記録する。
HPLC分析を、30〜95のメタノール:アセテート緩衝液pH4勾配(1〜6分)を用いる、Luna C18(2)、3μm、100Å、250×4.6mmカラム)を備えたAgilent 1200を用いて行い、その後、全部で22分間の間、11分間均一溶媒を用いて行う。サンプルの30μLを採ることによってサンプルを希釈し、0.97mLの水で溶解する。主要なピーク値を、記録する。オートクレーブ前の純度は、この方法を使用して99%以上である。
粘性物の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している0.08rpm(ずり速度0.31s-1)で回転するCPE-51スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。Tgelを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
本明細書に記載の手続きによって調合した、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、製剤の安定性を測定するため前記手法を使用して試験される。
[実施例16] - インビトロでの放出特性の比較
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行い、本明細書に記載のゲル製剤0.2mLを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLの緩衝液を、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度のために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。プルロニック濃度を、チオシアン酸コバルト法を用いて624nmで分析する。%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)の相対ランクオーダーを決定する。製剤の平均溶解時間(MDT)とP407濃度との間の線形的な関係は、耳用薬剤は、ポリマーゲル(ポロクサマー)のエロージョンによって放出されるのであり、拡散を介さないことを示している。非線形の関係は、拡散及び/又はポリマーゲルの変質の組み合わせを介した耳用薬剤の放出を示す。
代替的に、サンプルを、Li Xin-Yuの文献(Acta Pharmaceutica Sinica 2008,43(2):208-203)に記載の方法を用いて分析し、そして、%P407の関数としての平均溶解時間(MDT)のランクオーダーを決定する。
本明細書に記載の手続きによって調合された、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、耳用薬剤の放出特性を測定するために前記手法を使用して試験される。
[実施例17] - インビトロでのゲル化温度の比較
ポロクサマー407製剤のゲル化温度及び粘度に対するポロクサマー188と耳用薬剤の影響を、ゲル化温度を操作する目的で評価する。
PBS緩衝液内の25%ポロクサマー407保存液と、上述されるPBS保存溶液と、を使用する。BASFからのポロクサマー188NFを使用する。適切な量の耳の薬剤を、表5に記載の溶液に加え、2%の耳用薬剤の製剤を与える。
[表5] ポロクサマー407/ポロクサマー188を包含しているサンプルの調合
前記製剤の平均溶解時間、粘度およびゲル温度を本明細書に記載の手順を用いて測定する。
得られたデータを式にあてはめ、式を利用して、F127/F68混合物(17〜20%のF127と0〜10%のF68)のゲル化温度を概算することができる。
Tgel=-1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
前記実施例で得られた結果を用いて、得られたデータを式にあてはめ、F127/F68混合物(17〜25%のF127と0〜10%のF68)のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(時間)を概算することができる。
MDT=-0.2(Tgel)+8
ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、表5に記載の溶液へ適切な量の耳用薬剤を追加することによって調合されている。
製剤のゲル化温度を、上記手順を用いて測定する。
[実施例18] - 無菌ろ過のための温度領域の測定
目詰まりの可能性を減らすために、無菌ろ過を生じる必要がある温度幅を導くために低温での粘度を測定する。
粘度の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で15乃至25℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している1.5rpmおよび10rpm(ずり速度7.5、37.5および75s-1)で回転するCPE-40スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。
17%のプルロニックP407のTgelを、耳用薬剤の増加する濃度の関数として決定する。
17%のプルロニック製剤に対するTgelの増加を以下によって概算する。
ΔTgel=0.93[%耳用薬剤]
本明細書に記載の手続きによって調合した、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、無菌ろ過用の温度領域を測定する前記手続きを使用して試験される。Tgelおよび製剤の見かけ粘度に対する耳用薬剤の増加量の添加の影響を記録する。
[実施例19] - 製造状況の測定
[表6] 製造/ろ過状態の潜在的な製剤の粘性
粘度は37.5 s-1のずり率で測定された。
8リットルのバッチの17%のP407プラセボを作り、製造/ろ過条件を評価する。プラセボを、3ガロンのSS圧力容器内に蒸留水6.4リットルを充填して製造し、一晩冷蔵庫内に放置して冷ます。翌朝、タンクを取り出し(水温5℃、室温18℃)、塩化ナトリウム48g、二塩基二水和物リン酸ナトリウム29.6g、一塩基一水和物リン酸ナトリウム10gを加え、オーバーヘッドミキサ(IKARW20@1720rpm)で溶解する。半時間後、緩衝液が溶解すると(溶液温度8℃、室温18℃)、ポロクサマー407NF(spectrum chemicals)1.36kgを、15分間隔で緩衝液の溶液中にゆっくりと散水し(溶液温度12℃、室温18℃)、その後、速度を2430rpmにまで増やす。さらに1時間混合した後、混合速度を1062rpmに減速する(完全溶解)。
溶液の温度を19度で保持するために、室温は25℃以下に維持する。溶液の温度は、容器の冷蔵/冷却を要することなく、製造開始の3時間まで19℃以下に維持する。
17.3cm2の表面積を持つ3つの異なるSartoscale(Sartorius Stedim)フィルターを、20psiおよび14℃の溶液で評価する。1)Sartopore2、0.2μm 5445307HS-FF(PES)、16mL/分の流速、2)SartobranP、0.2μm 5235307HS-FF(セルロースエステル)、12mL/分の流速、3)Sartopore2 XLI、0.2μm 5445307IS-FF(PES)、15mL/分の流速。
Sartopore2フィルター5441307H4-SSを使用し、16psiの圧力下で溶液の温度で、0.015m2の表面積を有する0.45μm、0.2μmのSartopore2 150滅菌カプセル(Sartorius Stedim)を用いてろ過を行う。流速を16psi、約100mL/分で測定し、一方、流速は変化させず温度を6.5〜14℃の範囲に維持する。溶液の圧力降下と温度上昇は、溶液の粘度増加に起因する流速の減少を引き起こす。プロセス中、溶液の変質を監視する。
[表7] Sartopore 2(16psi圧力で0.2μmのフィルタ)を使用する、6.5〜14°Cの溶液温度領域での、17%のポロクサマー407プラセボ用の予測されたろ過時間。
粘度、Tgel及びUV/Vis吸収を、ろ過評価の前にチェックした。Pluronic(登録商標)のUV/Visスペクトルを、Evolution 160UV/Vis(Thermo Scientific)によって得る。250乃至300nmの幅におけるピークは、原材料(ポロクサマー)に存在するBHT安定剤によるものである。表8に、ろ過前後の上記の溶液の物理化学的性質を示す。
[表8] ろ過前後の17%のポロクサマー407プラセボ溶液の物理化学的性質。
粘度は37.5 s-1のずり率で測定された。
上記プロセスは、17%P407製剤の製造に適用され、部屋の状況の温度分析を含んでいる。好ましくは、19℃の最高温度は製造中の容器の冷却のコストを低減する。幾つかの例において、ジャケット付きの容器が、さらなる溶液の温度制御のために用いられ、製造の諸問題を解決している。
[実施例20] - インビトロでの、オートクレーブ滅菌された微粉化サンプルからの耳用薬剤放出
トリス緩衝液内での、17%のポロクサマー407/1.5%の耳用薬剤: 250.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scintific)、および302.4mgのトロメタミン(Tromethamine)(Sigma Chemical Co.)を、39.3gの無菌ろ過蒸留水中に溶解し、1MのHClでpHを7.4に調節する。上記の溶液4.9gを用い、適切な量の微粉化した耳用薬剤を懸濁し、よく分散する。製剤2mLが2mLのガラス製バイアル(Wheatonserum glass vial社)に移され、13mmのブチルスチレン(kimble stoppers)によって封止され、13mmのアルミニウム・シールで圧着された。バイアルを、MarketForge-sterilmatic autoclave(設定、スローリキッド)内に配し、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブした後、サンプルを、放置し室温まで冷却する。バイアルを、冷蔵庫に入れ、冷却している間混合し、サンプルを均質化する。オートクレーブ後のサンプルの溶解又は沈殿を記録する。
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行い、0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLのPBSを、リザーバに置き、Labline orbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(耳用薬剤の溶解度を増強するために、0.1mLを取り除き、2%のPEG-40水素添加されたひまし油(BASF)を含む暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度のために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。放出割合を、本明細書に記載の他の製剤と比較する。MDT時間を、各サンプルに対して計算する。
17%ポロクサマー系における耳用薬剤の溶解度を、エッペンドルフ遠心器5424を用いて、10分間15000rpmでサンプルを遠心処理後、上澄み中の耳用薬剤の濃度を測定することによって評価する。上澄み中の耳用薬剤濃度は、外部較正標準曲線と対照して、245nmでUVによって測定する。
本明細書に記載の前記手法によって調合された、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、各製剤からの耳用薬剤の放出率を測定するために上記手法を使用して試験される。
[実施例21] - カルボキシルメチルセルロースナトリウムを包含している製剤のリリース割合またはMDT、粘度
17%のポロクサマー407/2%耳用薬剤/1% CMC(Hercules Blanose 7M): PBS緩衝液中のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)溶液(pH7.0)を、無菌ろ過した蒸留水78.1g中に、205.6mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、372.1mgの一塩基リン酸塩二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、106.2mgの一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)を溶解させることによって調製する。溶解を容易にするために、1gのBlanose7MCMC(Hercules社、粘度533cP@2%)が、緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.08gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合された。PBS緩衝液中に17%のポロクサマー407NF/1%のCMC/2%の耳用薬剤を含む製剤を、上記溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、全ての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合する。
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/0.5% CMC(Blanose 7M65): PBS緩衝液内のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.2)が、無菌ろ過された蒸留水78.7g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)257mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)375mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(Fisher Scientific社)108gを溶解させることによって調製される。溶解を容易にするために、0.502gのBlanose7M65CMC(Hercules社、粘度5450cP@2%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.06gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合された。PBS緩衝液中に17%のポロクサマー407NF/1%のCMC/2%の耳用薬剤の溶液を、上記溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、全ての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合して製造する。
17%のポロクサマー407/2%の耳用薬剤/0.5% CMC(Blanose 7H9): PBS緩衝液のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム溶液(pH7.3)が、無菌ろ過された蒸留水78.6g中に、塩化ナトリウム(Fisher Scientific社)256.5mg、二塩基二水和物リン酸ナトリウム(FisherScientific社)374mg、一塩基一水和物リン酸ナトリウム(FisherScientific社)107mgを溶解させることによって調製され、次いで、溶解を容易にするために、0.502gのBlanose7H9CMC(Hercules社、粘度5600cP@1%)が緩衝溶液中に散布され、加熱され、ついで溶液が冷却され、ポロクサマー407NF(Spectrum Scientific社)17.03gが冷却された溶液中に散布され、同時に混合される。PBS緩衝液中の17%のポロクサマー407NF/1%のCMC/2%の耳用薬剤の溶液を、上記の溶液9.8gに適切な量の耳用薬剤を添加/溶解して、すべての耳用薬剤が完全に溶解するまで混合して、製造する。
粘度の測定を、ウォータージャケット温度制御ユニット(1.6℃/分で10乃至34℃まで温度に勾配が付けられている)を装備している0.08rpm(ずり速度0.6s-1)で回転するCPE-40スピンドルを備えているBrookfield viscometer RVDV-II+Pを用いて行う。Tgelを、粘性の増加がゾル‐ゲルの遷移に起因して起こる、曲線の屈曲点として定める。
溶解を、Snapwell(0.4μmの孔径を有する、直径6.5mmのポリカーボネート膜)内で、37℃で行う。0.2mLのゲルを、snapwellへ置き、放置し硬化させ、それから、0.5mLのPBS緩衝液を、リザーバに入れ、Lablineorbit shakerを用いて70rpmで振り混ぜる。サンプルを、1時間毎に採取する(0.1mLを取り除き、暖かい緩衝液で交換する)。耳用薬剤の濃度のために、外部構成標準曲線と対照して、245nmでUVによって、サンプルを分析する。放出割合を、前記実施例に記載の製剤と比較する。また、MDT時間を、前記製剤の各々のために計算する。
上述された手法によって製剤されたゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む製剤は、放出割合及び/又は平均溶解時間と、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを包含している製剤の粘性との間の関係を測定でするために前記手法を使用して試験される。平均溶解時間(MDT)と見かけ粘度(ゲル化温度より2℃低い温度で測定)の間の任意の相関を記録する。
[実施例22] - 放出動力学に対するポロクサマー濃度および耳用薬剤濃度の効果
ゲル化剤および微粉化デキサメタゾンの濃度を種々変化させたものを含む一連の組成物は、上述の手法を使用して調合された。表9内での各組成物の平均溶解時間(MDT)は、上述の手法を使用して測定される。
[表9] ポロクサマー/耳用薬剤の組成物の調合
組成物またはデバイスからの耳用薬剤の放出動力学に対するゲル強度および耳用薬剤濃度の影響は、ポロクサマーのためのMDTの測定および耳用薬剤のためのMDTの測定によって測定される。耳用薬剤の半減期および耳用薬剤の平均滞留時間(MRT)は、本明細書に記載されている手法を使用して外リンパ内での耳用薬剤の濃度の測定によって、各製剤に対して測定される。
上述のように、各組成物の見かけ粘度を、測定した。上述の組成物またはデバイス内で、約15.5%の熱可逆性ポリマーゲル濃度は、約270,000 cPの見かけ粘度を与えた。上述の組成物またはデバイス内で、約16%の熱可逆性ポリマーゲル濃度は、約360,000 cPの見かけ粘度を与えた。上述の組成物またはデバイス内で、約17%の熱可逆性ポリマーゲル濃度は、約480,000 cPの見かけ粘度を与えた。
前記手法によって調合された、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンおよびアモキシシリンを含む組成物は、各組成物から耳用薬剤の放出割合を測定するために上述の手法を使用して試験される。
[実施例23] - 正円窓膜への増強された粘度の抗菌性剤の製剤の適用
実施例7に従って製剤を調製し、15ゲージのルアーロックの使い捨ての針に取り付けられたシリコンで処理された5mlのガラス製注射器へと充填する。リドカインは、鼓膜に対して局所的に適用され、中耳の空洞を可視化するために小さい切込みを作る。針先を、正円窓膜上へ導き、抗菌剤の製剤を、直接円形窓膜上に適用する。
[実施例24] - モルモットに、インビボで、抗菌剤の製剤の鼓膜内注射を試験する
21匹のモルモット(Charles River、体重200-300gの雌)の同齢集団は、0〜50%の耳用薬剤を含んでいる、50μLの、本明細書に記載した異なるP407耳用薬剤製剤を鼓膜注入される。各製剤に対するゲル排出の時間経過を、測定する。製剤のより早いゲル排出の時間経過は、より小さい平均溶解時間(MDT)を示す。したがって、製剤における抗菌剤の注射量と濃度を、試験し、前臨床及び臨床研究の最適パラメーターを決定する。
[実施例25] - インビボでの拡張放出の動力学
21匹のモルモット(Charles River、体重200-300gの雌)の群に、280mOsm/kgで緩衝された、製剤の重量で1.5〜35%の抗菌剤を含んでいる、50μLの17%プルロニックF-127製剤を中耳内に注入する。1日目に動物に投薬する。製剤に対する放出特性を、外リンパの分析に基づいて測定する。
[実施例26] - AIED動物モデル内での抗菌剤製剤の評価
[方法と物質]
[免疫応答の誘発]
20〜24gの重さの、雌の白色種の国立衛生試験所のスイスマウス(Harlan Sprague-Dawley, Inc., Indianapolis, Inc.)が用いられる。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;Pacific Biomarine Supply CO., Venice, CA)は、リン酸緩衝された生理食塩水(PBS)IpH6.4)中で懸濁され、PBSに対して無菌的に透析され、二度遠心分離が行われる。沈殿物(KLHに関連)はPBS中で溶解し、動物の背中の皮下に注射される(フロイント完全アジュバント中で乳化した0.2mg)。追加免疫(フロイント完全アジュバント中の0.2mgのKLH)を動物に与え、その後、蝸牛カプセル(cochlearcapsule)を通るよう空けられた微小孔を介して、10週後に5μlのPBS(pH6.4)中の0.1mgのKLHを注射する。蝸牛には手術用顕微鏡及び無菌技術を用いて近づけた。耳後部の切開を行い、蝸牛の基底回転の突起部、アブミ骨の動脈、及び、正円窓ニッチがよく見えるようにするため、水疱に穴が開けられる。アブミ骨の動脈は焼灼されて取り除かれ、蝸牛カプセルを通って外側基底回転の鼓室階に至る25μmの穴が開けられる。KLH又はPBS対照群は、プラスチック管と一体になったハミルトン注射器を用いて、抗原又は対照群で満たされたガラス製のマイクロピペットへゆっくりと注入される。穴は注入後に骨ろうで埋められ、余分な流体は除かれる。
動物の片方の蝸牛のみがKLHで処置される。
処置
KLH及び対照群マウスは、2つのグループへと分類される(それぞれのグループにおいてn=10)。実施例4の抗菌剤製剤は、動物の1つのグループの正円窓膜に適用される。ガンシクロビルを含まない対照群製剤は、第2のグループに適用される。抗菌剤及び対照群製剤は、最初の適用から3日後に再度適用される。動物は7日目の処置後に殺処分する。
[結果の分析]
[電気生理学的試験]
各々の動物の、各々の耳へのクリック刺激に対する、聴覚脳幹反応閾値(ABR)の聴覚閾値を最初に測定し、実験手順の1週間後にも測定する。動物を、加温パッド上の単層の聴覚ブース(acoustic booth)(Industrial Acoustic Co, Bronx, NY, USA)内に入れる。皮下電極(Astro-Med,Inc. Crass Instrument Division, WestWaewick, RI, USA)を、頭頂(探査電極)、乳様突起(基準)、及び後肢(接地)に挿入する。クリック刺激(0.1ミリ秒)をコンピュータで起こし、外側の聴覚道に配置するため、耳鏡に取り付けられたBeyer DT 48,200オームスピーカーへ送達する。記録されたABRは、電池式のプリアンプにより増幅されるとともにデジタル化され、刺激、記録、平均機能のコンピュータ制御を与える、タッカーデービステクノロジーABR記録システム(Tucker Davis Technology, Gainesville, FL, USA)へ入力される。続いて、減少する振幅刺激が動物に対する5-dB段階において表され、記録された刺激固定活性(stimulus-locked activity)は平均化され(n=512)、表示される。視覚的に検知可能な応答の無い記録と、明確に認識可能な応答と、の間の刺激レベルとして、閾値を定義する。
[組織化学の分析]
動物に麻酔をかけ、ヘパリン化された温生理食塩水の心臓内灌流、続いておよそ40mlの過ヨード酸リジン-パラホルムアルデヒド(4%のパラホルムアルデヒド終末濃度)固定剤で殺処分する。右側頭骨がすぐに取り除かれ、緩衝化した5%のエチレンジアミンテトラ酢酸(pH7.2)で14日間(4℃)石灰除去される。石灰除去の後、側頭骨は、濃度を増加させた(50%、75%、100%)最適な切削温度(OCT)化合物(Tissue-Tek, Miles Inc., Elkhart, IN)に連続して浸漬させ、瞬間凍結し(snap-frozen)(-70℃)、蝸牛輪に対してクリオスタット分割した(4μm)。切片は、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)汚染及び免疫組織化学分析用に集められる。
炎症の重症度は、鼓室階の細胞湿潤の量により評価され、無作為な点数が各々の蝸牛に与えられる。0点は炎症がないことを示し、5点は全ての蝸牛の回転が炎症細胞の著しい湿潤を備えたことを示す。
[実施例27] - 中耳炎動物モデル内での抗菌剤製剤の評価
[中耳炎の誘発]
体重が400〜600gで、正常な中耳を備え、耳鏡検査法及びティンパノメトリー検査により確認された健康な成体のチンチラが、このような研究に用いられる。接種材料が耳管から流れ出るのを防ぐため、耳管閉塞が予防接種の24時間前に行われる。4-h-対数期での1ミリメートルの3型S プネウモニア株(S.pneumoniae strain)(単位を形成するおよそ40の個体(CFU)を含む)は、チンチラの両中耳鼓室下の水疱中へ直接入れられる。対照マウスは、1ミリリットルの無菌のPBSを接種される。
処置
接種されるS プネウモニア及び対照群マウスは、2つのグループへと分類される(各々のグループにおいてn=10)。アモキシリンを含んでいる実施例1の抗菌剤の製剤は、動物の1つの群の鼓室腔の壁に適用される。アモキシリンを含まない対照群製剤は、第2の群に適用される。アモキシリン及び対照群製剤は、最初の適用から3日後に再度適用される。動物は7日目の処置後に殺処分する。
結果の分析
中耳流体(MEF)は、肺炎球菌予防接種の1時間後、2時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、及び、72時間後に試料採取される。定量的なMEF培養が、羊血液寒天上で、50CFU/mlに定められた計量閾値で行われる。炎症細胞は血球計で定量化され、差動的な細胞をライト染色(Wright's stainning)で列挙した。
[実施例28] - 外耳炎動物モデル内での抗菌剤製剤の評価
外耳炎は、外耳道組織を悪化させるためにプラスチック・ピペットを使用して、20匹のスプレーグ・ドーリーネズミに誘発される。全てのラットは、1日以内にOEを進行する。ネオマイシンを包含している実施例2の抗菌製剤は、注射針と注射器を使用して、ラットの半分の耳に投与される。一方、残りのラットは、ネオマイシンの無い同じ製剤を受ける。外耳道組織は、疾病を特徴づける赤みおよびはれに対し認められる。光学顕微鏡観察法は、ラットから生検サンプルを分析するために使用される。
[実施例29] - 耳梅毒の処置用の抗菌剤製剤の臨床試験
患者を、蝸牛前庭の機能障害および陽性の梅毒血清学の研究現症のために選択した。患者は、2つのグループ、240万ユニットのペニシリンGベンザチン(梅毒に推奨された処置)の筋肉内(IM)注射と併用して実施例6の製剤の中耳内の投与を受け取るテストグループ、および240万ユニットのペニシリンGベンザチンのIM注射と併用して実施例6の耳製剤の担体およびミクロスフェアのみを受け取る対照グループに分けられる。患者は、活性剤の投与に続く、聴力、耳鳴、回転性めまい、および眼振の改良のためにモニターされる。実験の第一の結果は、処理訪問後6か月での蝸牛前庭の機能の改善である。実施例6の製剤および推奨された治療を受ける患者の結果は、梅毒の耳の症状の処置のための抗菌剤製剤の局所的な分娩の効能を測定するために、耳の製剤および推奨された治療用の担体のみを受ける患者の結果と比較される。
[実施例30] - 滲出性中耳炎の処置用鼓室穿孔術と組み合わせた抗菌剤製剤(Antimicrobial Agent Formulations)の臨床試験
この研究の目的は、鼓室穿孔術と組み合わされて投与されたシプロフロキサシンとデキサメタゾンの組み合わせを含む組成物が、耳管を有する患者の中耳感染を処置及び/又は防ぐことにおいて安全かつ有効かどうかを判断することである。
研究タイプ:介入性
研究設計:これは、現在の標準治療に対して、鼓室穿孔術と組み合わせた中耳内の組成物の拡張放出の使用を比較する、非劣性のオープンラベル研究になる。現在の標準治療は、外科手術後5-7日間の耳の滴剤の使用を必要とする。研究は、手術の時に徐放性組成物の投与が、外来患者処置の必要を除去するかどうかを試験するように設計されている。試験前提は、手術の時の拡張放出組成物の単独注射の投与が、手術の後の耳の滴剤の投与より劣っていないということである。
包含基準:6か月〜12歳、片耳または両耳内での滲出液伴う急性中耳炎。患者は、昨年管配置以外に耳の手術を受けていないと思われるもの。患者は、否定的に研究の行為に影響する、任意の疾患または疾病を有してないと思われるもの。患者は、研究の間に他の全身性の抗菌療法を必要としないと思われるもの。鎮痛剤の使用(アセトアミノフェン以外の)は認められない。患者は、知覚神経の難聴という傾向をあらかじめ持っていないと思われるもの。
除外基準:年齢
研究プロトコル:20人の患者が2つのグループに分けられる。患者の最初のグループは、外科手術手技の間に微粉化されたシプロフロキサシンおよび微粉化デキサメタゾンを含む拡張放出組成物の注射を受け取る。各患者は、管の配置用の鼓室穿孔術を受ける。外科手術手技中に、外科医は、すべての耳の滲出液を洗浄し、また、“myngotomoy”切開が開いている間、外科医は、中耳空間に試験組成物を注入する。管は、中耳空間への拡張放出組成物の注射の後に挿入される。試験組成物は、他の賦形剤を備えた、シプロフロキサシンおよびデキサメタゾンの乾燥した微粉化されたパウダーを懸濁することによって、手術室内で調合されている。あるいは、試験組成物は、注射準備のできている調整された懸濁剤である。
患者の第2のグループは、手術の後に5-7日間投与される即時放出成分として、微粉化されていないシプロフロキサシンおよび微粉化されていないデキサメタゾンを含む点耳液が与えられる。
患者は、1か月の間、毎週のフォローアップ訪問においてモニターされる。2つの群の間の処置結果の任意の差を、記録する。
第一評価項目:患者を介して親または保護者によって記録される耳漏の停止時間。
第ニ評価項目:臨床治癒率;微生物学の結果;処置不成功;疾患の再発。
患者の各グループの処置結果は、鼓室穿孔術と組み合わせたシプロフロキサシンとデキサメタゾンを含む拡張放出組成物の投与は、耳漏、感染または鼓室穿孔術に関連した炎症の減少ための手術の後に、シプロフロキサシンとデキサメタゾンを含む点耳液を投与する場合ほど悪くないか否か、を判断するために、比較される。
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示されるとともに記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものである。本明細書中に記載の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実行する際に任意に採用される。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の方法及び構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。