JP2015163079A - セルロース可溶化液の糖化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルロース系バイオマス原料から糖化液を得る場合において、有機酸の酸触媒としての効果が妨げられないようなセルロース可溶化液の糖化方法を提供する。
【解決手段】セルロースを含有するバイオマス原料を、反応温度が100℃以上300℃未満であり、全圧が飽和水蒸気よりも小さくなるように圧力制御して、変換して得られたセルロース可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化方法において、前記セルロース可溶化液中の金属イオンを除去する。
【選択図】図1
【解決手段】セルロースを含有するバイオマス原料を、反応温度が100℃以上300℃未満であり、全圧が飽和水蒸気よりも小さくなるように圧力制御して、変換して得られたセルロース可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化方法において、前記セルロース可溶化液中の金属イオンを除去する。
【選択図】図1
Description
本発明は、セルロースを含有するバイオマス原料を触媒の存在しない条件下で糖化液に変換するセルロース系バイオマス原料の糖化方法に関する。
近年、石油代替燃料としてバイオ燃料が注目され、サトウキビやとうもろこしなどのバイオマスを原料としたバイオエタノールの生産が実用化されている。しかし、食料品をバイオエタノールの原料とした場合、食料品との競合によって価格が大きく変動するなどの問題が生ずる。このため、木材、草、稲わらなど非食料品であるセルロース系バイオマスを原料としたバイオ燃料の生産が望まれている。
ところが、セルロース系バイオマス原料を糖化液に加水分解するのは容易ではない。このため、硫酸などの液体の強酸や固体酸触媒(例えば非特許文献1)を用いてセルロースを糖化する手法が古くから知られている。
また、セルロース系バイオマス原料を水熱処理(例えば特許文献1)して可溶化した後、固体酸触媒で糖化処理を行うことも行われている。
また、セルロース系バイオマス原料を水熱処理(例えば特許文献1)して可溶化した後、固体酸触媒で糖化処理を行うことも行われている。
特開2010−166831号公報
M.Hara,et.al Nature,438,(2005)
しかし、硫酸などの液体の強酸を用いた場合には、後処理として強酸の中和処理のためにアルカリを大量に使用しなければならないとともに、石膏などが廃棄物として大量に発生したりするという問題がある。
一方、固体酸触媒を用いた場合には、使用後に固体酸触媒を回収して再利用することが可能となる。しかしながら、触媒を回収して再利用するためには固液分離工程が必要となり、製造工程数が増え、ひいては製造コストが高騰化する。
一方、固体酸触媒を用いた場合には、使用後に固体酸触媒を回収して再利用することが可能となる。しかしながら、触媒を回収して再利用するためには固液分離工程が必要となり、製造工程数が増え、ひいては製造コストが高騰化する。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、セルロース系バイオマス原料から糖化液を得る場合において、液体や固体の酸触媒を用いることなく糖化液を製造することが可能であって、工程数が少なく、製造コストの低廉化が可能なセルロース系バイオマス原料の糖化方法を提供することを課題とする。
本発明の第1の局面は、セルロースを含有するバイオマス原料を、温度と圧力と水分割合を制御して、有機酸の発生量を制御しながら可溶化混合物に変換する可溶化工程と、該可溶化混合物を加水分解させて糖化液を得る糖化工程と、を含むセルロース系バイオマス原料の糖化方法において、温度と圧力と水分割合を制御して前記可溶化混合物のpHを制御するか、または前記可溶化混合物に加える水の量でpHを制御した後、加水分解させることを特徴とするセルロース系バイオマス原料の糖化方法である。
可溶化工程では、温度と圧力と水分割合とを制御することによって、セルロースを含有するバイオマス原料が水に可溶な混合物となり、乳酸や酢酸などの有機酸が副生する。そして、この可溶化工程で発生した有機酸が、糖化工程においてセルロースの加水分解による糖化反応の酸触媒として働き、セルロースが加水分解して糖化液となる。ここで温度と圧力と水分割合を制御して前記可溶化混合物のpHを制御するか、または前記可溶化混合物に加える水の量でpHを制御することにより、可溶化混合物のpHを糖化反応に適したpHとすることができる。このため、本発明のセルロース系バイオマス原料の糖化方法では、外部から液体や固体の酸触媒を添加しなくても、バイオマス原料から調達した有機酸を酸触媒として利用するだけで糖化工程を行うことが可能となり、製造コストの低廉化が可能となる。また、固体酸触媒を添加する方法のように、固体酸触媒を回収する必要がなく、工程数が少なくてすむ。
本発明における糖化工程では、pHが高すぎるとセルロースの加水分解の進行が遅くなり、可溶化糖溶液への反応時間が長くなる。また、pHが低すぎると、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)等の過分解物が多く発生し、単糖の収率が悪くなるおそれがある。このため、糖化工程におけるpHが最適な範囲となるように制御することが好ましい。このため、本発明の第2の局面では、糖化液は、pHが1以上3.5未満であるとした。さらに好ましくは1.5以上3未満である。
本発明の糖化方法においては、セルロースを含有するバイオマス原料に炭酸カルシウム等のアルカリ成分が含まれていた場合があり(例えば古紙中に填料として炭酸カルシウムが含まれている場合等)、糖化工程において発生した有機酸がこれらのアルカリ成分によって中和され、有機酸が酸触媒としての効果を発揮できない場合がある。このような場合には、陽イオン交換物質によってアルカリ成分中の金属イオンを水素イオンに変換し、pHを低下させれば有機酸が再生し、酸触媒として利用できるようになる。このため、本発明の第3の局面では、糖化工程は、有機酸を含有する可溶化混合物を固液分離する固液分離工程と、該固液分離によって得られた水溶液中の金属イオンを除去する金属イオン除去工程と、金属イオンが除去された前記水溶液を加熱処理して糖化液を得る加熱工程と、を有することとした。
また、このための方法として、
前記糖化工程は、前記固液分離によって得られた水溶液を陽イオン交換物質が充填された第1の阻害物除去ユニットに流入させる第1工程と、
該第1の阻害物除去ユニットからの流出液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットに流入させて糖化液とする第2工程と、
該糖化ユニットから流出した糖化液を、陽イオン交換物質が充填された第2の阻害物除去ユニットに流入させて糖化液を得る第3工程と、を有し、
該第1〜3工程終了後、前記固液分離によって得られた水溶液を該第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより糖化液を得ることとすることができる。
前記糖化工程は、前記固液分離によって得られた水溶液を陽イオン交換物質が充填された第1の阻害物除去ユニットに流入させる第1工程と、
該第1の阻害物除去ユニットからの流出液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットに流入させて糖化液とする第2工程と、
該糖化ユニットから流出した糖化液を、陽イオン交換物質が充填された第2の阻害物除去ユニットに流入させて糖化液を得る第3工程と、を有し、
該第1〜3工程終了後、前記固液分離によって得られた水溶液を該第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより糖化液を得ることとすることができる。
この糖化方法では、第1工程において、固液分離によって得られた水溶液に含まれる金属イオンが第1の阻害物除去ユニットに充填された陽イオン交換物質によって水素イオンと置換された後、第2工程において、糖化ユニット中で糖化反応が行われる。このため、糖化ユニットには金属イオンの替りに水素イオンが流入し、pHの上昇による触媒活性の低下を防ぐことができる。このため、第2工程での糖化反応が迅速に行われる。さらに、第3工程においては、第2の阻害物除去ユニットに流入した後、糖化液として回収される。
こうして、第1〜3工程終了後、固液分離によって得られた水溶液を第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより、第2の阻害物除去ユニットで固液分離によって得られた水溶液に含まれる金属イオンが水素イオンと置換することによって捕捉された後、金属イオンが除去された水溶液が糖化ユニットに流入し、迅速に糖化反応が進行して糖化液となる。そして、糖化ユニットから流出した糖化液が第1の阻害物除去ユニットに流入し、陽イオン交換物質に捕捉されていた金属イオンが、糖化液中の水素イオンと置換され、陽イオン交換物質がふたたび陽イオンを捕捉できる状態に再生される。そして第1の阻害物除去ユニットから流出した糖化液を回収する。
以上の工程を繰り返すことにより、阻害物除去ユニット内の陽イオン交換物質による金属イオンの捕捉と再生とを繰り返しながら、糖化反応を迅速かつ連続で行うことができる。したがって、この糖化方法によれば、有機酸を含む水溶液中の金属イオンを含んだアルカリ成分による触媒活性の低下を防ぐことができ、稼働コストも低廉となる。
陽イオン交換物質は陽イオン交換樹脂とすることができる。このような陽イオン交換物質として、例えば、ナフィオン(登録商標)等の陽イオン交換樹脂が挙げられる。
以上の糖化方法は次の糖化装置によって実施することができる。
すなわち、本発明の糖化装置は、
固液分離によって得られた水溶液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットと、陽イオン交換物質が充填された第1及び第2の阻害物除去ユニットとを備え、
該水溶液を該第1の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第2の阻害物除去ユニットへ流入する第1の流路と、
該水溶液を該第2の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第1の阻害物除去ユニットへ流入する第2の流路と、
該第1の流路と該第2の流路とを切替可能とする切替手段と、が設けられている。
すなわち、本発明の糖化装置は、
固液分離によって得られた水溶液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットと、陽イオン交換物質が充填された第1及び第2の阻害物除去ユニットとを備え、
該水溶液を該第1の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第2の阻害物除去ユニットへ流入する第1の流路と、
該水溶液を該第2の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第1の阻害物除去ユニットへ流入する第2の流路と、
該第1の流路と該第2の流路とを切替可能とする切替手段と、が設けられている。
この糖化装置では、第1の流路の途中であって、第1の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、第2の流路の途中であって、第2の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、各pHセンサ及び/又は各電気伝導度センサの出力に応じて切替手段を制御する制御部が設けられている装置とすることができる。
こうであれば、pHセンサ及び/又は電気伝導度センサの出力値によって、阻害物除去ユニットの金属イオン吸着量を把握することができる。すなわち、金属イオンの吸着は陽イオン交換物質に存在する水素イオンとの置換によって行われ、陽イオン交換能を有する間は水素イオンの放出によってpHや電気伝導度が変化するため、阻害物除去ユニットの流入液から流出液へのpHや電気伝導度を測定すれば、陽イオン交換の飽和度を測定できることとなる。したがって、pHセンサ及び/又は電気伝導度センサの出力値に基づいて制御部によって切替手段を制御することによって、切替手段の適切な制御が可能となる。
本発明の第4の局面は、セルロースを含有するバイオマス原料を、反応温度が100℃以上300℃未満であり、全圧が飽和水蒸気よりも小さくなるように圧力制御して、変換して得られたセルロース可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化方法であって、
前記セルロース可溶化液中の金属イオンを除去することを特徴とするセルロース可溶化液の糖化方法である。
第4の局面に規定のセルロース可溶化液の糖化方法では、前記セルロース可溶化液において、前記金属イオンは陽イオン交換物質によって捕捉される。
本発明の第4の局面は、セルロースを含有するバイオマス原料を、反応温度が100℃以上300℃未満であり、全圧が飽和水蒸気よりも小さくなるように圧力制御して、変換して得られたセルロース可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化方法であって、
前記セルロース可溶化液中の金属イオンを除去することを特徴とするセルロース可溶化液の糖化方法である。
第4の局面に規定のセルロース可溶化液の糖化方法では、前記セルロース可溶化液において、前記金属イオンは陽イオン交換物質によって捕捉される。
<実施形態1>
本発明の実施形態1のセルロース系バイオマス原料の糖化方法を図1に示す。以下詳細に説明する。
本発明の実施形態1のセルロース系バイオマス原料の糖化方法を図1に示す。以下詳細に説明する。
(原 料)
セルロースを含有する原料となるのは、セルロースを含む植物系の原料であり、セルロースの他に、でん粉、ヘミセルロース、ペクチンなど、セルロース以外の多糖を含むものであっても用いることができる。具体的には、稲わら、麦わら、バガス等の草類、竹、笹などの間伐材、おがくず、チップ、端材などの木材加工木屑、街路樹剪定材、木質建築廃材、樹皮、流木等の木質系バイオマス、古紙等のセルロース製品からのバイオマス等が挙げられる。また、セルロースを原料として使用可能な程度含むものであれば、汚泥、畜糞、農業廃棄物、都市ゴミ等も用いることができる。
セルロースを含有する原料となるのは、セルロースを含む植物系の原料であり、セルロースの他に、でん粉、ヘミセルロース、ペクチンなど、セルロース以外の多糖を含むものであっても用いることができる。具体的には、稲わら、麦わら、バガス等の草類、竹、笹などの間伐材、おがくず、チップ、端材などの木材加工木屑、街路樹剪定材、木質建築廃材、樹皮、流木等の木質系バイオマス、古紙等のセルロース製品からのバイオマス等が挙げられる。また、セルロースを原料として使用可能な程度含むものであれば、汚泥、畜糞、農業廃棄物、都市ゴミ等も用いることができる。
・粗粉砕工程(S1)
これらの原料は、セルロースの可溶化を促進させるために、前処理として粗粉砕を行い、セルロースの結晶化度を下げておくことが好ましい。粉砕方法としては特に限定されず、原料の形態に応じて適当な方法を適宜選択すればよいが、まず数〜数十mm程度に粗粉砕してハンドリングし易い状態にしてから、さらに細かく粉砕すると、微粉砕を効率的に行なうことができる。粗粉砕にはハンマーミルやカッターミルなどの汎用粉砕機が使用できる。また、微粉砕には、振動ミル、ボールミル、ロッドミル、ローラーミル、コロイドミル、ディスクミル、ジェットミルなどの汎用粉砕機が使用でき、原料を数〜数十ミクロンに微細化するとともに、セルロース結晶性を低下させることができる。微粉砕処理は、乾式、湿式いずれの方式も適用できるが、セルロースの結晶性を低下させる面で、乾式粉砕が望ましい。原料の含水量が多い場合には、あらかじめ遠心脱水や熱風乾燥などで含水率を30%以下にしてから乾式粉砕を行うことで、セルロースの結晶性を効率的に低下させることができる。
これらの原料は、セルロースの可溶化を促進させるために、前処理として粗粉砕を行い、セルロースの結晶化度を下げておくことが好ましい。粉砕方法としては特に限定されず、原料の形態に応じて適当な方法を適宜選択すればよいが、まず数〜数十mm程度に粗粉砕してハンドリングし易い状態にしてから、さらに細かく粉砕すると、微粉砕を効率的に行なうことができる。粗粉砕にはハンマーミルやカッターミルなどの汎用粉砕機が使用できる。また、微粉砕には、振動ミル、ボールミル、ロッドミル、ローラーミル、コロイドミル、ディスクミル、ジェットミルなどの汎用粉砕機が使用でき、原料を数〜数十ミクロンに微細化するとともに、セルロース結晶性を低下させることができる。微粉砕処理は、乾式、湿式いずれの方式も適用できるが、セルロースの結晶性を低下させる面で、乾式粉砕が望ましい。原料の含水量が多い場合には、あらかじめ遠心脱水や熱風乾燥などで含水率を30%以下にしてから乾式粉砕を行うことで、セルロースの結晶性を効率的に低下させることができる。
・水分調整工程(S2)
粗粉砕の終わった原料に対して、その水分含有率を測定してから、水分割合の調整を行う。水分割合の多すぎる場合は乾燥させ、水分割合が少ない場合は水を添加する。適切な水分割合の計算方法については、次の可溶化工程において説明する。
粗粉砕の終わった原料に対して、その水分含有率を測定してから、水分割合の調整を行う。水分割合の多すぎる場合は乾燥させ、水分割合が少ない場合は水を添加する。適切な水分割合の計算方法については、次の可溶化工程において説明する。
・可溶化工程(S3)
そして、水分割合を調整した粗粉砕原料を温度と圧力を制御することによって、有機酸を含有する可溶化混合物とする。温度及び圧力の制御としては、1)水熱処理を行うための制御法や、2)低温低圧での制御法が挙げられる。
水熱処理とは飽和水蒸気圧以上に加圧された加圧熱水(液体状態で存在する高温高圧の水)によってセルロース含有バイオマス原料を水可溶性にする処理であり、図2に示した亜臨界領域や超臨界領域で処理を行う。亜臨界領域では飽和水蒸気圧よりも全圧が高い領域であり、換言すれば水が水蒸気以外に液体の水として安定に共存する領域である。このため、亜臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、イオン積が大きくなっている液体の水によって進行するものと推定される。また、超臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、気−液の区別ができなくなった超臨界状態という特殊な状態の水による加水分解反応である。加圧熱水はイオン積が増加するため、セルロースの加水分解反応を促進すると考えられている(特許文献1 段落番号[0024]参照)。このため、水熱処理法は、特別な薬品を使うことなく、短時間でセルロース原料を可溶化することができるという長所を有しており、環境に対する負荷も小さいセルロース原料の可溶化法であるということができる。また、可溶化に伴い、可溶化糖以外に乳酸や酢酸等の有機酸も生成し、後述する糖化工程(S5)においてこれらの有機酸を触媒として利用することができる。生成する有機酸の量は、温度や圧力や反応時間を制御することによってコントロールが可能である。
そして、水分割合を調整した粗粉砕原料を温度と圧力を制御することによって、有機酸を含有する可溶化混合物とする。温度及び圧力の制御としては、1)水熱処理を行うための制御法や、2)低温低圧での制御法が挙げられる。
水熱処理とは飽和水蒸気圧以上に加圧された加圧熱水(液体状態で存在する高温高圧の水)によってセルロース含有バイオマス原料を水可溶性にする処理であり、図2に示した亜臨界領域や超臨界領域で処理を行う。亜臨界領域では飽和水蒸気圧よりも全圧が高い領域であり、換言すれば水が水蒸気以外に液体の水として安定に共存する領域である。このため、亜臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、イオン積が大きくなっている液体の水によって進行するものと推定される。また、超臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、気−液の区別ができなくなった超臨界状態という特殊な状態の水による加水分解反応である。加圧熱水はイオン積が増加するため、セルロースの加水分解反応を促進すると考えられている(特許文献1 段落番号[0024]参照)。このため、水熱処理法は、特別な薬品を使うことなく、短時間でセルロース原料を可溶化することができるという長所を有しており、環境に対する負荷も小さいセルロース原料の可溶化法であるということができる。また、可溶化に伴い、可溶化糖以外に乳酸や酢酸等の有機酸も生成し、後述する糖化工程(S5)においてこれらの有機酸を触媒として利用することができる。生成する有機酸の量は、温度や圧力や反応時間を制御することによってコントロールが可能である。
一方、低温低圧での制御法では、水熱処理とは全く異なった温度−圧力の領域を用いる。すなわち、100℃以上300℃未満であって、且つ、全圧が0.05MPa以上10MPa未満という高温−低圧の領域で加水分解反応を行うことが特徴である。このような領域は、図2における斜線内の部分で示され、全圧が飽和水蒸気圧よりも小さい領域(すなわち、水が安定に存在せず、水蒸気のみが存在する領域)か、液体の水と水蒸気とが共存はするが全圧は10MPa未満と小さい領域であり、亜臨界領域や超臨界領域とは全く異なる状況である。この方法においても、可溶化糖以外に乳酸や酢酸等の有機酸も生成し、後述する糖化工程(S5)においてこれらの有機酸を触媒として利用することができる。生成する有機酸の量は、添加する水の量、温度、圧力、反応時間等を制御することによってコントロールが可能である。この低温低圧での制御法は、加圧熱水を用いた方法よりもヒドロキシメチルフルフラール(HMF)等の過分解物の生成が少なく、最終的な糖化の収率を高くすることができる。
可溶化工程(S3)では、温度や圧力を制御するために反応容器は蓋付きの密閉容器を用いることができる。このような容器としては、耐食性金属からなるオートクレーブ装置や、PTFE等のフッ素樹脂からなる蓋付き容器を内側に収容する金属性耐圧容器といった、二重構造の容器を用いることもできる。
そして、これらの容器内に水分割合を調整した粗粉砕原料と水とを所定量投入し、蓋を閉めて温度を設定する。これにより原料にもともと含まれていた水分及び添加した水は、水蒸気となり体積を増す。このとき、最終的に到達する圧力は、実ガスに対する補正がなされた状態方程式に、温度、水の量及び容器体積を代入することにより、容易に求めることができる。このため、可溶化工程に先立って行われる、粉砕されたセルロース原料の水分調整は、計算で求められた量となるように行う。加熱方法は特に制限されず、電気ヒータ、高周波、マイクロ波、スチーム等を用いることができる。こうして可溶化工程(S3)が終了した粗粉砕原料は、乳酸や酢酸などの有機酸を含有する可溶化混合物となる。
そして、これらの容器内に水分割合を調整した粗粉砕原料と水とを所定量投入し、蓋を閉めて温度を設定する。これにより原料にもともと含まれていた水分及び添加した水は、水蒸気となり体積を増す。このとき、最終的に到達する圧力は、実ガスに対する補正がなされた状態方程式に、温度、水の量及び容器体積を代入することにより、容易に求めることができる。このため、可溶化工程に先立って行われる、粉砕されたセルロース原料の水分調整は、計算で求められた量となるように行う。加熱方法は特に制限されず、電気ヒータ、高周波、マイクロ波、スチーム等を用いることができる。こうして可溶化工程(S3)が終了した粗粉砕原料は、乳酸や酢酸などの有機酸を含有する可溶化混合物となる。
・抽出工程(S4)
こうして得られた可溶化混合物に対して0.1〜500倍量となるように水を加えて溶解し可溶化液を得る。この可溶化液には乳酸や酢酸等の有機酸が含まれているため酸性となる。
こうして得られた可溶化混合物に対して0.1〜500倍量となるように水を加えて溶解し可溶化液を得る。この可溶化液には乳酸や酢酸等の有機酸が含まれているため酸性となる。
・糖化工程(S5)
さらに可溶化液を混合撹拌し、有機酸触媒による加水分解を行い、グルコース等の単糖を主成分として含有する糖化液を得る。このとき、加温して反応を促進させることもできる。
さらに可溶化液を混合撹拌し、有機酸触媒による加水分解を行い、グルコース等の単糖を主成分として含有する糖化液を得る。このとき、加温して反応を促進させることもできる。
以上のように、実施形態1のセルロース系バイオマス原料の糖化方法では、可溶化工程(S3)において生成した有機酸を酸触媒として利用して、糖化工程(S5)において糖化液を得る。このため、固体酸触媒や液体の酸を外部から添加する必要がなく、製造コストを低廉化することができる。また、抽出工程(S4)後に固液分離をすることなく糖化工程(S5)を行うことができるため、製造工程数を少なくすることができる。
<糖化装置>
・実施形態1の糖化装置
本発明における糖化方法を具体化できる実施形態1の糖化装置10を図3に示す。この糖化装置10は、第1阻害物除去ユニット11、第2阻害物除去ユニット12及び糖化ユニット13を備えている。両阻害物除去ユニット11、12の内部には、酸処理された陽イオン交換樹脂が充填されている。
・実施形態1の糖化装置
本発明における糖化方法を具体化できる実施形態1の糖化装置10を図3に示す。この糖化装置10は、第1阻害物除去ユニット11、第2阻害物除去ユニット12及び糖化ユニット13を備えている。両阻害物除去ユニット11、12の内部には、酸処理された陽イオン交換樹脂が充填されている。
第1阻害物除去ユニット11の両端には三方バルブV1、V2が取り付けられており、第2阻害物除去ユニット12の両端には三方バルブV3、V4が取り付けられている。
また、図示しない固液分離装置から送られた有機酸を含む水溶液を流入させるための流入管14が、途中で枝分かれして三方バルブV1及びV3に接続されている。また、三方バルブV2と三方バルブV4とを接続する2つの配管15、16が配設されている。さらには、配管15の途中から配管17aが枝分かれして糖化ユニット13の一端に接続されており、糖化ユニット13の他端には配管17bの一端が接続されており他端が配管16の途中に接続されている。
また、図示しない固液分離装置から送られた有機酸を含む水溶液を流入させるための流入管14が、途中で枝分かれして三方バルブV1及びV3に接続されている。また、三方バルブV2と三方バルブV4とを接続する2つの配管15、16が配設されている。さらには、配管15の途中から配管17aが枝分かれして糖化ユニット13の一端に接続されており、糖化ユニット13の他端には配管17bの一端が接続されており他端が配管16の途中に接続されている。
次に、上記糖化装置10の使用方法について説明する。
図示しない固液分離装置から送られる有機酸を含む水溶液は、流入管14から流入し、以下の流路(図3中の太線で示す流路)を経由するように三方バルブV1〜V4が操作される。
まず、流入管14から流入した有機酸を含む水溶液は、三方バルブV1から第1阻害物除去ユニット11に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれるCaイオンなどの金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンとイオン交換される。こうして金属イオンが水素イオンと置換された有機酸含有水溶液は、三方バルブV2を経由して糖化ユニット13に入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液は第1阻害物除去ユニットで金属イオンが水素イオンに置換されているので、pHが中和によって高くなっていることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV4を経由して、第2阻害物除去ユニット12に入り、さらに三方バルブV3を経て糖化液を回収する。
図示しない固液分離装置から送られる有機酸を含む水溶液は、流入管14から流入し、以下の流路(図3中の太線で示す流路)を経由するように三方バルブV1〜V4が操作される。
まず、流入管14から流入した有機酸を含む水溶液は、三方バルブV1から第1阻害物除去ユニット11に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれるCaイオンなどの金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンとイオン交換される。こうして金属イオンが水素イオンと置換された有機酸含有水溶液は、三方バルブV2を経由して糖化ユニット13に入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液は第1阻害物除去ユニットで金属イオンが水素イオンに置換されているので、pHが中和によって高くなっていることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV4を経由して、第2阻害物除去ユニット12に入り、さらに三方バルブV3を経て糖化液を回収する。
所定時間経過後、図4に示すように、有機酸を含む水溶液を上記流れとは逆向きに、第2の阻害物除去ユニット12から糖化ユニット13を経て第1の阻害物除去ユニット11に流れるように、三方バルブV1〜V4を操作する。
すなわち、まず有機酸を含む水溶液が三方バルブV3から第2阻害物除去ユニット12に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれる金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンと交換されて吸着される。こうして金属イオンが除去された有機酸含有水溶液は、三方バルブV4を経由して糖化ユニット13入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液には金属イオンが含まれていないので、金属イオンが有機酸の酸触媒としての活性を低下させることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV2を経由して、第1阻害物除去ユニット11に入り、陽イオン交換物質に捕捉されていた金属イオンが、糖化液中の水素イオンと置換され、陽イオン交換物質がふたたび陽イオンを捕捉できる状態に再生される。そして第1の阻害物除去ユニット11から流出した糖化液を三方バルブV1から回収する。
すなわち、まず有機酸を含む水溶液が三方バルブV3から第2阻害物除去ユニット12に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれる金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンと交換されて吸着される。こうして金属イオンが除去された有機酸含有水溶液は、三方バルブV4を経由して糖化ユニット13入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液には金属イオンが含まれていないので、金属イオンが有機酸の酸触媒としての活性を低下させることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV2を経由して、第1阻害物除去ユニット11に入り、陽イオン交換物質に捕捉されていた金属イオンが、糖化液中の水素イオンと置換され、陽イオン交換物質がふたたび陽イオンを捕捉できる状態に再生される。そして第1の阻害物除去ユニット11から流出した糖化液を三方バルブV1から回収する。
以上の工程を繰り返すことにより、何らの薬剤も消費することなく、阻害物除去ユニット11、12内の陽イオン交換物質による金属イオンの捕捉と再生とを繰り返しながら、糖化反応を迅速かつ連続で行うことができる。したがって、実施形態1の有機酸を含む水溶液の糖化装置によれば、有機酸を含む水溶液中の金属イオンによる触媒活性の低下を防ぎつつ、稼働コストも低廉な有機酸を含む水溶液の糖化を行うことができる。
・実施形態2の糖化装置
実施形態2の糖化装置は、図5に示すように、阻害物除去ユニット11が阻害物除去ユニット11a、11bの2つの部分に分かれており、阻害物除去ユニット12が阻害物除去ユニット12a、12bの2つの部分に分かれている。そして流入管14の途中に第1pHセンサーP1が設けられており、阻害物除去ユニット11a、11b間に第2pHセンサーP2が設けられており、阻害物除去ユニット12a、12b間に第3pHセンサーP3が設けられており、配管17aに第4pHセンサーP4が設けられている。第1〜第4pHセンサーP1〜P4はセンサーの出力に応じて三方バルブV1〜V4の制御を行う制御部20に接続されている。その他の構成については実施形態2と同様であり、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態2の糖化装置は、図5に示すように、阻害物除去ユニット11が阻害物除去ユニット11a、11bの2つの部分に分かれており、阻害物除去ユニット12が阻害物除去ユニット12a、12bの2つの部分に分かれている。そして流入管14の途中に第1pHセンサーP1が設けられており、阻害物除去ユニット11a、11b間に第2pHセンサーP2が設けられており、阻害物除去ユニット12a、12b間に第3pHセンサーP3が設けられており、配管17aに第4pHセンサーP4が設けられている。第1〜第4pHセンサーP1〜P4はセンサーの出力に応じて三方バルブV1〜V4の制御を行う制御部20に接続されている。その他の構成については実施形態2と同様であり、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態2の糖化装置では、第1〜第4pHセンサーの出力値によって、阻害物除去ユニット11a、11b、12a、12bの金属イオン吸着量を把握することができる。すなわち、金属イオンの吸着は陽イオン交換物質に存在する水素イオンとの置換によって行われ、陽イオン交換能を有する間は水素イオンの放出によってpHが低下するため、阻害物除去ユニットの流入液から流出液へのpHの低下度合いを測定すれば、陽イオン交換の飽和度を測定できることとなる。このため、阻害物除去ユニットの流入液と流出液へpHの差をもとに、阻害物除去ユニット11a、11b、12a、12b内の陽イオン交換物質の金属吸着割合をリアルタイムで把握することが可能となる。そして、このpHの差が小さくなった時点で、流す方向が逆向きになるように、三方バルブV1〜V4を制御部20によって制御すればよい。なお、図5の太線で示す流路を流れている場合には、阻害物除去ユニット11の途中に設置されたpHセンサーP2は、pHセンサーP4よりも早くpHの変化を把握でき、逆向きで流れている場合は、阻害物除去ユニット12の途中に設置されたpHセンサーP3は、pHセンサーP4よりも早くpHの変化を把握できるため、阻害物除去ユニットの飽和度の迅速な把握をするためには、阻害物除去ユニットの途中に設置することが好ましい。
なお、上記実施形態2の変形例として、上記pHセンサーの替りに、あるいは上記pHセンサーに加えて、電気伝導度センサーを用いてもよい。陽イオン交換物質による金属イオンと水素イオンとの置換により、電気伝導度が変化するため、pHの変化の替りに電気伝導度の変化を把握することにより、陽イオン交換物質の飽和状態を把握することができ、これによっても制御部20により三方バルブV1〜V4を制御することができる。
(実施例1)
・可溶化工程
粉砕したセルロース試薬0.3g(含水率7%)を秤り取り、2重構造の蓋付きの耐圧PTFE容器(内側容器は容積20cm3のPTFE容器、外側容器はステンレス製容器)に入れ、水を入れることなく蓋をした。そして、耐圧PTFE容器を電気加熱炉に入れ、200℃で3時間の加熱を行った。このとき、耐圧PTFE容器内部の全圧は、状態方程式から計算して、(空気の分圧+水蒸気の分圧)=0.32MPaとなる。一方、200℃での飽和水蒸気圧は1.56MPaである。
・糖化工程
可溶化工程終了後、内容物を所定量の水で溶解し、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
・可溶化工程
粉砕したセルロース試薬0.3g(含水率7%)を秤り取り、2重構造の蓋付きの耐圧PTFE容器(内側容器は容積20cm3のPTFE容器、外側容器はステンレス製容器)に入れ、水を入れることなく蓋をした。そして、耐圧PTFE容器を電気加熱炉に入れ、200℃で3時間の加熱を行った。このとき、耐圧PTFE容器内部の全圧は、状態方程式から計算して、(空気の分圧+水蒸気の分圧)=0.32MPaとなる。一方、200℃での飽和水蒸気圧は1.56MPaである。
・糖化工程
可溶化工程終了後、内容物を所定量の水で溶解し、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
比較例1では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
<評 価>
実施例1及び比較例1の可溶化工程で得られた内容物を所定量の水で溶解した溶液を高速液体クロマトグラフィー及び全有機炭素計(TOC計)によって分析し、可溶化率を求めた。また、pH計によってpHを測定した。さらには、糖化液についても同様にして可溶化率を求めた。可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表1に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図6に示す。表1から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表1及び図6から、可溶化工程終了時のpHが4.1である実施例1-1及び比較例1-1の比較では、固体酸触媒がある方が糖化工程後の単糖収率が高くなるが、工程終了時のpHが2.3である実施例1-3及び比較例1-3の比較、及び工程終了時のpHが2.8である実施例1-2及び比較例1-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
実施例1及び比較例1の可溶化工程で得られた内容物を所定量の水で溶解した溶液を高速液体クロマトグラフィー及び全有機炭素計(TOC計)によって分析し、可溶化率を求めた。また、pH計によってpHを測定した。さらには、糖化液についても同様にして可溶化率を求めた。可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表1に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図6に示す。表1から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表1及び図6から、可溶化工程終了時のpHが4.1である実施例1-1及び比較例1-1の比較では、固体酸触媒がある方が糖化工程後の単糖収率が高くなるが、工程終了時のpHが2.3である実施例1-3及び比較例1-3の比較、及び工程終了時のpHが2.8である実施例1-2及び比較例1-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
(実施例2)
セルロースを含有するバイオマス原料として、市販の綿100%Tシャツを挟みで5mm程度の幅に細かく裁断した後、ブレードミルで粉砕し、わた状の試料を得た。これを実施例1と同様の条件で可溶化工程及び糖化工程を行った。
セルロースを含有するバイオマス原料として、市販の綿100%Tシャツを挟みで5mm程度の幅に細かく裁断した後、ブレードミルで粉砕し、わた状の試料を得た。これを実施例1と同様の条件で可溶化工程及び糖化工程を行った。
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
比較例2では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
<評 価>
可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表2に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図7に示す。
表2から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表2及び図7から、工程終了時のpHが4.2である実施例2-1と比較例2-1との比較では、固体酸触媒がない方が糖化工程後の単糖収率が低くなるが、工程終了時のpHが3.1である実施例2-2及び比較例2-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表2に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図7に示す。
表2から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表2及び図7から、工程終了時のpHが4.2である実施例2-1と比較例2-1との比較では、固体酸触媒がない方が糖化工程後の単糖収率が低くなるが、工程終了時のpHが3.1である実施例2-2及び比較例2-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
S1…粗粉砕工程、S2…水分調整工程、S3…可溶化工程、S4…抽出工程、S5…糖化工程、10…糖化装置、13…糖化ユニット、11…第1阻害物除去ユニット、12…第2阻害物除去ユニット、V1、V2、V3、V4…三方バルブ(切替手段)、P1、P2、P3、P4……pHセンサ、20…制御部
Claims (2)
- セルロースを含有するバイオマス原料を、反応温度が100℃以上300℃未満であり、全圧が飽和水蒸気よりも小さくなるように圧力制御して、変換して得られたセルロース可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化方法であって、
前記セルロース可溶化液中の金属イオンを除去することを特徴とするセルロース可溶化液の糖化方法。 - 前記セルロース可溶化液において、前記金属イオンは陽イオン交換物質によって捕捉される請求項1に記載のセルロース可溶化液の糖化方法。
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Citations (3)
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JP2010041923A (ja) * | 2008-08-08 | 2010-02-25 | Oji Paper Co Ltd | 酵素糖化方法ならびにエタノール製造方法 |
JP2011045277A (ja) * | 2009-08-26 | 2011-03-10 | Toshiba Corp | セルロース系エタノール生産システムおよび生産方法 |
JP2011057568A (ja) * | 2009-09-07 | 2011-03-24 | Hitachi Zosen Corp | セルロース系原料糖化液の濃縮方法 |
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