JP6007393B2 - セルロース可溶化液の糖化方法及び糖化装置 - Google Patents
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また、セルロース系バイオマス原料を水熱処理(例えば特許文献1)して可溶化した後、固体酸触媒で糖化処理を行うことも行われている。
一方、固体酸触媒を用いた場合には、使用後に固体酸触媒を回収して再利用することが可能となる。しかしながら、触媒を回収して再利用するためには固液分離工程が必要となり、製造工程数が増え、ひいては製造コストが高騰化する。
前記糖化工程は、前記固液分離によって得られた水溶液を陽イオン交換物質が充填された第1の阻害物除去ユニットに流入させる第1工程と、
該第1の阻害物除去ユニットからの流出液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットに流入させて糖化液とする第2工程と、
該糖化ユニットから流出した糖化液を、陽イオン交換物質が充填された第2の阻害物除去ユニットに流入させて糖化液を得る第3工程と、を有し、
該第1〜3工程終了後、前記固液分離によって得られた水溶液を該第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより糖化液を得ることとすることができる。
すなわち、本発明の糖化装置は、
固液分離によって得られた水溶液を加熱処理して糖化液とする糖化ユニットと、陽イオン交換物質が充填された第1及び第2の阻害物除去ユニットとを備え、
該水溶液を該第1の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第2の阻害物除去ユニットへ流入する第1の流路と、
該水溶液を該第2の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第1の阻害物除去ユニットへ流入する第2の流路と、
該第1の流路と該第2の流路とを切替可能とする切替手段と、が設けられている。
本発明の第4の局面は、セルロースを含有するバイオマス原料を変換して得られたセルロース可溶化液を、陽イオン交換物質が充填された第1の阻害物除去ユニットに流入させる第1工程と、
該第1の阻害物除去ユニットからの流出液を糖化ユニットに流入させて糖化液とする第2工程と、
該糖化ユニットから流出した糖化液を、陽イオン交換物質が充填された第2の阻害物除去ユニットに流入させて糖化液を得る第3工程と、を有し、
該第1〜3工程終了後、セルロース可溶化液を該第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより糖化液を得ることを特徴とするセルロース可溶化液の糖化方法である。
本発明の第5の局面は、セルロースを含有するバイオマス原料を変換して得られた可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化装置であって、
糖化ユニットと、陽イオン交換物質が充填された第1及び第2の阻害物除去ユニットとを備え、
前記可溶化液を該第1の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第2の阻害物除去ユニットへ流入する第1の流路と、
前記可溶化液を該第2の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第1の阻害物除去ユニットへ流入する第2の流路と、
該第1の流路と該第2の流路とを切替可能とする切替手段と、が設けられているセルロース可溶化液の糖化装置である。
第5の局面に規定のセルロース可溶化液の糖化装置では、前記第1の流路の途中であって、前記第1の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、
前記第2の流路の途中であって、前記第2の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、
各該pHセンサ及び/又は各該電気伝導度センサの出力に応じて前記切替手段を制御する制御部が設けられている。
本発明の実施形態1のセルロース系バイオマス原料の糖化方法を図1に示す。以下詳細に説明する。
セルロースを含有する原料となるのは、セルロースを含む植物系の原料であり、セルロースの他に、でん粉、ヘミセルロース、ペクチンなど、セルロース以外の多糖を含むものであっても用いることができる。具体的には、稲わら、麦わら、バガス等の草類、竹、笹などの間伐材、おがくず、チップ、端材などの木材加工木屑、街路樹剪定材、木質建築廃材、樹皮、流木等の木質系バイオマス、古紙等のセルロース製品からのバイオマス等が挙げられる。また、セルロースを原料として使用可能な程度含むものであれば、汚泥、畜糞、農業廃棄物、都市ゴミ等も用いることができる。
これらの原料は、セルロースの可溶化を促進させるために、前処理として粗粉砕を行い、セルロースの結晶化度を下げておくことが好ましい。粉砕方法としては特に限定されず、原料の形態に応じて適当な方法を適宜選択すればよいが、まず数〜数十mm程度に粗粉砕してハンドリングし易い状態にしてから、さらに細かく粉砕すると、微粉砕を効率的に行なうことができる。粗粉砕にはハンマーミルやカッターミルなどの汎用粉砕機が使用できる。また、微粉砕には、振動ミル、ボールミル、ロッドミル、ローラーミル、コロイドミル、ディスクミル、ジェットミルなどの汎用粉砕機が使用でき、原料を数〜数十ミクロンに微細化するとともに、セルロース結晶性を低下させることができる。微粉砕処理は、乾式、湿式いずれの方式も適用できるが、セルロースの結晶性を低下させる面で、乾式粉砕が望ましい。原料の含水量が多い場合には、あらかじめ遠心脱水や熱風乾燥などで含水率を30%以下にしてから乾式粉砕を行うことで、セルロースの結晶性を効率的に低下させることができる。
粗粉砕の終わった原料に対して、その水分含有率を測定してから、水分割合の調整を行う。水分割合の多すぎる場合は乾燥させ、水分割合が少ない場合は水を添加する。適切な水分割合の計算方法については、次の可溶化工程において説明する。
そして、水分割合を調整した粗粉砕原料を温度と圧力を制御することによって、有機酸を含有する可溶化混合物とする。温度及び圧力の制御としては、1)水熱処理を行うための制御法や、2)低温低圧での制御法が挙げられる。
水熱処理とは飽和水蒸気圧以上に加圧された加圧熱水(液体状態で存在する高温高圧の水)によってセルロース含有バイオマス原料を水可溶性にする処理であり、図2に示した亜臨界領域や超臨界領域で処理を行う。亜臨界領域では飽和水蒸気圧よりも全圧が高い領域であり、換言すれば水が水蒸気以外に液体の水として安定に共存する領域である。このため、亜臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、イオン積が大きくなっている液体の水によって進行するものと推定される。また、超臨界領域でのセルロースの加水分解反応は、気−液の区別ができなくなった超臨界状態という特殊な状態の水による加水分解反応である。加圧熱水はイオン積が増加するため、セルロースの加水分解反応を促進すると考えられている(特許文献1 段落番号[0024]参照)。このため、水熱処理法は、特別な薬品を使うことなく、短時間でセルロース原料を可溶化することができるという長所を有しており、環境に対する負荷も小さいセルロース原料の可溶化法であるということができる。また、可溶化に伴い、可溶化糖以外に乳酸や酢酸等の有機酸も生成し、後述する糖化工程(S5)においてこれらの有機酸を触媒として利用することができる。生成する有機酸の量は、温度や圧力や反応時間を制御することによってコントロールが可能である。
そして、これらの容器内に水分割合を調整した粗粉砕原料と水とを所定量投入し、蓋を閉めて温度を設定する。これにより原料にもともと含まれていた水分及び添加した水は、水蒸気となり体積を増す。このとき、最終的に到達する圧力は、実ガスに対する補正がなされた状態方程式に、温度、水の量及び容器体積を代入することにより、容易に求めることができる。このため、可溶化工程に先立って行われる、粉砕されたセルロース原料の水分調整は、計算で求められた量となるように行う。加熱方法は特に制限されず、電気ヒータ、高周波、マイクロ波、スチーム等を用いることができる。こうして可溶化工程(S3)が終了した粗粉砕原料は、乳酸や酢酸などの有機酸を含有する可溶化混合物となる。
こうして得られた可溶化混合物に対して0.1〜500倍量となるように水を加えて溶解し可溶化液を得る。この可溶化液には乳酸や酢酸等の有機酸が含まれているため酸性となる。
さらに可溶化液を混合撹拌し、有機酸触媒による加水分解を行い、グルコース等の単糖を主成分として含有する糖化液を得る。このとき、加温して反応を促進させることもできる。
・実施形態1の糖化装置
本発明における糖化方法を具体化できる実施形態1の糖化装置10を図3に示す。この糖化装置10は、第1阻害物除去ユニット11、第2阻害物除去ユニット12及び糖化ユニット13を備えている。両阻害物除去ユニット11、12の内部には、酸処理された陽イオン交換樹脂が充填されている。
また、図示しない固液分離装置から送られた有機酸を含む水溶液を流入させるための流入管14が、途中で枝分かれして三方バルブV1及びV3に接続されている。また、三方バルブV2と三方バルブV4とを接続する2つの配管15、16が配設されている。さらには、配管15の途中から配管17aが枝分かれして糖化ユニット13の一端に接続されており、糖化ユニット13の他端には配管17bの一端が接続されており他端が配管16の途中に接続されている。
図示しない固液分離装置から送られる有機酸を含む水溶液は、流入管14から流入し、以下の流路(図3中の太線で示す流路)を経由するように三方バルブV1〜V4が操作される。
まず、流入管14から流入した有機酸を含む水溶液は、三方バルブV1から第1阻害物除去ユニット11に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれるCaイオンなどの金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンとイオン交換される。こうして金属イオンが水素イオンと置換された有機酸含有水溶液は、三方バルブV2を経由して糖化ユニット13に入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液は第1阻害物除去ユニットで金属イオンが水素イオンに置換されているので、pHが中和によって高くなっていることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV4を経由して、第2阻害物除去ユニット12に入り、さらに三方バルブV3を経て糖化液を回収する。
すなわち、まず有機酸を含む水溶液が三方バルブV3から第2阻害物除去ユニット12に入る。ここで、有機酸含有水溶液に含まれる金属イオンが陽イオン交換樹脂の水素イオンと交換されて吸着される。こうして金属イオンが除去された有機酸含有水溶液は、三方バルブV4を経由して糖化ユニット13入り、糖化反応が行われる。ここで糖化ユニット13に流入した有機酸含有水溶液には金属イオンが含まれていないので、金属イオンが有機酸の酸触媒としての活性を低下させることはなく、糖化反応は迅速に進行する。そして、糖化ユニット13から流出した糖化液が三方バルブV2を経由して、第1阻害物除去ユニット11に入り、陽イオン交換物質に捕捉されていた金属イオンが、糖化液中の水素イオンと置換され、陽イオン交換物質がふたたび陽イオンを捕捉できる状態に再生される。そして第1の阻害物除去ユニット11から流出した糖化液を三方バルブV1から回収する。
実施形態2の糖化装置は、図5に示すように、阻害物除去ユニット11が阻害物除去ユニット11a、11bの2つの部分に分かれており、阻害物除去ユニット12が阻害物除去ユニット12a、12bの2つの部分に分かれている。そして流入管14の途中に第1pHセンサーP1が設けられており、阻害物除去ユニット11a、11b間に第2pHセンサーP2が設けられており、阻害物除去ユニット12a、12b間に第3pHセンサーP3が設けられており、配管17aに第4pHセンサーP4が設けられている。第1〜第4pHセンサーP1〜P4はセンサーの出力に応じて三方バルブV1〜V4の制御を行う制御部20に接続されている。その他の構成については実施形態2と同様であり、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
・可溶化工程
粉砕したセルロース試薬0.3g(含水率7%)を秤り取り、2重構造の蓋付きの耐圧PTFE容器(内側容器は容積20cm3のPTFE容器、外側容器はステンレス製容器)に入れ、水を入れることなく蓋をした。そして、耐圧PTFE容器を電気加熱炉に入れ、200℃で3時間の加熱を行った。このとき、耐圧PTFE容器内部の全圧は、状態方程式から計算して、(空気の分圧+水蒸気の分圧)=0.32MPaとなる。一方、200℃での飽和水蒸気圧は1.56MPaである。
・糖化工程
可溶化工程終了後、内容物を所定量の水で溶解し、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
比較例1では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
実施例1及び比較例1の可溶化工程で得られた内容物を所定量の水で溶解した溶液を高速液体クロマトグラフィー及び全有機炭素計(TOC計)によって分析し、可溶化率を求めた。また、pH計によってpHを測定した。さらには、糖化液についても同様にして可溶化率を求めた。可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表1に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図6に示す。表1から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表1及び図6から、可溶化工程終了時のpHが4.1である実施例1-1及び比較例1-1の比較では、固体酸触媒がある方が糖化工程後の単糖収率が高くなるが、工程終了時のpHが2.3である実施例1-3及び比較例1-3の比較、及び工程終了時のpHが2.8である実施例1-2及び比較例1-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
セルロースを含有するバイオマス原料として、市販の綿100%Tシャツを挟みで5mm程度の幅に細かく裁断した後、ブレードミルで粉砕し、わた状の試料を得た。これを実施例1と同様の条件で可溶化工程及び糖化工程を行った。
比較例2では、実施例1と同様の可溶化工程を行った後、糖化工程として内容物を所定量の水で溶解し、さらに固体酸触媒としてスルホ化処理活性炭15mgを入れて蓋をし、再び蓋を締め、150℃で6時間の糖化工程を行った。
可溶化工程後及び糖化工程後についての分析結果を表2に示す。また、可溶化工程後のpHと糖化工程後の単糖の収率を図7に示す。
表2から、水の添加量を変えても可溶化率はそれほど変化しないが、可溶化工程終了時のpHは、水の添加量が少ないほど低くなることが分かった。また、表2及び図7から、工程終了時のpHが4.2である実施例2-1と比較例2-1との比較では、固体酸触媒がない方が糖化工程後の単糖収率が低くなるが、工程終了時のpHが3.1である実施例2-2及び比較例2-2の比較では、固体酸触媒の有無によらず糖化工程後の単糖収率は高い収率が得られることが分かった。
Claims (3)
- セルロースを含有するバイオマス原料を変換して得られたセルロース可溶化液を、陽イオン交換物質が充填された第1の阻害物除去ユニットに流入させる第1工程と、
該第1の阻害物除去ユニットからの流出液を糖化ユニットに流入させて糖化液とする第2工程と、
該糖化ユニットから流出した糖化液を、陽イオン交換物質が充填された第2の阻害物除去ユニットに流入させて糖化液を得る第3工程と、を有し、
該第1〜3工程終了後、セルロース可溶化液を該第1〜3工程とは逆向きに第2の阻害物除去ユニットから糖化ユニットを経て第1の阻害物除去ユニットに流すことにより糖化液を得ることを特徴とするセルロース可溶化液の糖化方法。 - セルロースを含有するバイオマス原料を変換して得られた可溶化液から糖化液を得るセルロース可溶化液の糖化装置であって、
糖化ユニットと、陽イオン交換物質が充填された第1及び第2の阻害物除去ユニットとを備え、
前記可溶化液を該第1の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第2の阻害物除去ユニットへ流入する第1の流路と、
前記可溶化液を該第2の阻害物除去ユニットから該糖化ユニットを経由して該第1の阻害物除去ユニットへ流入する第2の流路と、
該第1の流路と該第2の流路とを切替可能とする切替手段と、が設けられているセルロース可溶化液の糖化装置。 - 前記第1の流路の途中であって、前記第1の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、
前記第2の流路の途中であって、前記第2の阻害物除去ユニットの上流側並びに途中及び/又は下流側にはpHセンサ及び/又は電気伝導度センサが設けられており、
各該pHセンサ及び/又は各該電気伝導度センサの出力に応じて前記切替手段を制御する制御部が設けられている請求項2記載のセルロース可溶化液の糖化装置。
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