JP2015162599A - コア部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者は、コア部材の部分的な錆びの発生箇所を考察したところ、付属部の除去跡であることが分かった。付属部はコア部材の製造過程で発生する。一般に、コア部材の製造は、軟磁性粉末と樹脂とを含む混合物を成形型のゲートからキャビティに充填した後、樹脂を硬化することで行われる。樹脂を硬化した時点では、キャビティに対応する形状の本体部と、ゲートに対応する部分を有する付属部とが一体化した成形体が作製される。この成形体のうち、本体部がコア部材となるため、不要な付属部は除去され、コア部材には付属部の除去跡が形成される。コア部材の表面のうち、除去跡とそれ以外の箇所とを比較観察したところ、次の知見を得た。
(a)除去跡以外の表面では樹脂から磁性体粉末が実質的に露出しないが、除去跡では樹脂から軟磁性粉末が露出している。
(b)樹脂から露出した軟磁性粉末に錆が生じる。
この知見に基づき、本発明者は、軟磁性粉末の露出を解消できる製造方法を鋭意検討した。特に、コア部材の製造過程で軟磁性粉末の露出に伴う錆の発生を解消しつつ生産性に優れる方法を検討して、本発明を完成するに至った。最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔コア部材の製造方法〕
実施形態に係るコア部材の製造方法は、軟磁性粉末と樹脂とを含む混合物を成形型のゲートからキャビティに充填して樹脂を硬化させて製造する方法である。このコア部材は、リアクトルに備わる磁性コアの少なくとも一部を構成する部材である。リアクトル1Aは、詳しくは後述するが、例えば、図4に示すコイル2と磁性コア3とを備える。コイル2は、巻線2wを螺旋状に巻回した一対のコイル素子2a、2bを互いに並列状態で接続してなる。磁性コア3は、同一の形状を有する二つのコア部材30を組み合わせて環状に構成される。ここでは、両コア部材30とも複合材料で構成される。各コア部材30の平面形状は、各コア部材30を環状の磁性コア3の軸方向から平面視した場合、略U字状である。各コア部材30は、コイル2に組み付けた際、コイル2から突出されている基部30aと、基部30aに一体に形成されてコイル素子2a,2bの内側に配置される一対の張出部30bとを備える。このコア部材30の具体的な製造方法は、準備工程と、成形工程と、脱型工程と、除去工程と、熱処理工程とを備える。コア部材の製造方法の主たる特徴とするところは、製造過程で樹脂から露出した軟磁性粉末を樹脂に埋め込ませる熱処理を施す点にある。以下、主として図1〜図3を参照(適宜図4を参照)して、各工程を順に説明する。ここでは、コア部材をコイルに組み付けてリアクトルを構築した際のリアクトルの設置側を下、その反対側を上として説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
準備工程では、コア部材30の構成材料として、軟磁性粉末と樹脂との混合物を準備する。
軟磁性粉末は、例えば、鉄や鉄合金といった鉄基材料が挙げられる。鉄合金としては、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、Fe−N系合金、Fe−Ni系合金、Fe−C系合金、Fe−B系合金、Fe−Co系合金、Fe−P系合金、Fe−Ni−Co系合金、及びFe−Al−Si系合金などが挙げられる。特に、透磁率及び磁束密度の点からみれば、99質量%以上がFeである純鉄が好ましい。
樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、後述の熱処理工程で樹脂を流動させ易いためである。
混合物には、軟磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカなどのセラミックスといった非磁性材料からなる粉末(フィラー)が含有されていても良い。フィラーは、放熱性の向上、軟磁性粉末の偏在の抑制(均一的な分散)に寄与する。また、フィラーが微粒であり、軟磁性粒子間に介在することで、フィラーの含有による軟磁性粉末の割合の低下を抑制できる。フィラーの含有量は、混合物を100質量%とするとき、0.2質量%以上20質量%以下が好ましく、更に0.3質量%以上15質量%以下が好ましく、特に0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
成形工程では、成形型(図示略)のキャビティ内にゲートから上記混合物を充填し、樹脂を硬化して成形体C(図1)を作製する。成形型には、所望の形状のコア部材30が得られるキャビティを有するものを用いる。
脱型工程では、成形体Cを成形型から抜き出す。成形体Cは、成形型から抜き出された時点では、図1に示すように、本体部Mと付属部Bとが一体化されたままである。
除去工程では、成形体Cから付属部Bを除去する。付属部Bは通常コア部材30に不要なため、除去して本体部Mを残す。付属部Bの除去は、本体部Mと付属部Bとの境界部分を機械切断することや、上記境界部分に機械的応力をかけて付属部Bを折り取ることで行える。機械切断としては、例えば、回転砥石による切断やレーザー切断などが挙げられる。
熱処理工程では、本体部Mの除去跡Tbに熱処理を施す。この熱処理により、除去跡Tbの表面近傍の樹脂R(図2の拡大図)を流動させる。露出した軟磁性粒子Pは、樹脂Rの流動に伴って樹脂Rの表面から内部に移動して樹脂Rに埋め込まれた状態となる(図3の拡大図)。除去跡Tbは、樹脂Rから軟磁性粒子Pが露出されていない平滑な圧接面Taとなる。図3拡大図では、説明の便宜上、圧接面Ta及びその周辺を含む領域の断面を概略的に示している。
除去工程後、熱処理工程前に、除去跡Tbを研磨する研磨工程を備えることが好ましい。そうすれば、除去跡Tbを平らにし易い。付属部Bの除去後では、除去跡Tbの表面の凹凸が大きい場合があり、除去跡Tbへの上記加熱媒体の接触が不均一になることがある。除去跡Tbを均しておくと、除去跡Tbへの上記加熱媒体の接触にばらつきが生じ難く、露出した軟磁性粒子Pを除去跡Tbの広範囲に亘って埋め込ませ易い。
上述のコア部材の製造方法によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)除去工程で成形体Cから付属部Bを除去した際、除去跡Tbが樹脂Rから軟磁性粒子Pが露出した状態となっても、除去跡Tbに熱処理を施すことで、樹脂Rを流動させて軟磁性粒子Pを樹脂Rに埋め込ませることができる。このように、軟磁性粒子Pが露出し易い除去跡Tbを樹脂Rから軟磁性粒子Pが露出していない状態とできることで、本体部Mの表面の略全域に亘って樹脂Rから軟磁性粒子Pが露出していない状態にできる。従って、錆び難いコア部材30を製造できる。
(2)露出した軟磁性粒子Pを本体部Mの樹脂Rに埋め込ませることができるので、露出した軟磁性粒子Pを被覆するために別途部材を準備したり被覆したりする工程が不要である。そのため、別途部材を準備して被覆する場合に比べて、コア部材30を製造するのに必要な部品点数が少ない上に、錆び難いコア部材30の生産性に優れる。
〔リアクトル〕
参考例1では、図4を参照して上述の製造方法により製造されるコア部材30を備えるリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、実施形態1の冒頭で説明したように、一対のコイル素子2a、2bを備えるコイル2と、同一の形状を有する二つのコア部材30で構成される磁性コア3とを備える。このコア部材30が、実施形態1で説明した製造方法により製造されたコア部材である。以下、各構成を詳細に説明する。
一対のコイル素子2a、2bは、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなり、連結部2rを介して連結されている。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線を好適に利用できる。本例では、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用している。各コイル素子2a,2bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルで構成している。コイル素子2a、2bの配置は、各軸方向が平行するように並列(横並び)した状態としている。コイル素子2a、2bの形状は、互いに同一の巻数の中空の筒状体(四角筒)である。コイル素子2a、2bの端面形状は、矩形枠の角部を丸めた形状である。連結部2rは、コイル2の一端側(図4紙面右側)において巻線の一部をU字状に屈曲して構成している。連結部2rの上面は、コイル2のターン形成部分の上面と略面一である。コイル素子2a、2bの巻線2wの両端部2eは、ターン形成部から引き延ばされている。両端部2eは、図示しない端子部材に接続され、この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示せず)が接続される。
各コア部材30は、コイル2に組み付けた際、コイル2から突出されている基部30aと、基部30aに一体に形成されてコイル素子2a,2bの内側に配置される一対の張出部30bとを備える。一方と他方のコア部材30の張出部30bの端面30e同士をコイル素子2a,2b内で連結することで環状の磁性コア3が形成される。このコア部材30同士の連結により、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。張出部30bの端面30e同士の連結には、接着剤や粘着テープなどを利用できる。
上述のリアクトル1Aによれば、以下の効果を奏することができる。
(1)リアクトル1Aに備わる磁性コア3を錆び難いコア部材30で構成することで、錆によるコア部材30の部分的な脱落や、錆によるリアクトル1Aの磁気特性の低下を抑制できる。
(2)リアクトル1Aの部品点数を削減でき、リアクトル1Aの小型化・軽量化を達成できる。コア部材30の最表面が樹脂で構成されているため、コア部材30の外周にコイル2との間を絶縁するインシュレータを別途設けたり、樹脂を被覆したりしなくてもよいからである。特に、リアクトル1Aを液体冷媒に浸される箇所に配置する場合でも、コア部材30の外周に別途樹脂を被覆したりしなくてもよい。
参考例1のリアクトルは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
2 コイル
2a、2b コイル素子 2r 連結部 2w 巻線 2e 端部
3 磁性コア
30 コア部材
30a 基部 30b 張出部 30e 端面
C 成形体
M 本体部 Tb 除去跡 Ta 圧接面
B 付属部
Br ランナー部 Bs スプルー部 Bt 溝
P 軟磁性粒子 R 樹脂
1100 電力変換装置 1110 コンバータ
1111 スイッチング素子 1112 駆動回路
L リアクトル 1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両 1210 メインバッテリ 1220 モータ
1230 サブバッテリ 1240 補機類 1250 車輪
Claims (5)
- 鉄基材料の軟磁性粉末と樹脂とを含む混合物を成形型のゲートからキャビティ内に充填して前記樹脂を硬化させて、前記キャビティに対応した形状の本体部と、前記本体部に一体化され、前記ゲートに対応する部分を有する付属部とを備える成形体を成形する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から抜き出す脱型工程と、
前記成形体から前記付属部を除去する除去工程と、
前記本体部の前記付属部が除去された除去跡に熱処理を施して、前記除去跡の前記樹脂を流動させることで、前記除去跡の表面で前記樹脂から露出した前記軟磁性粉末を前記樹脂に埋め込ませる熱処理工程とを備えるコア部材の製造方法。 - 前記本体部の前記除去跡が、前記除去跡の周辺よりも突出している請求項1に記載のコア部材の製造方法。
- 前記成形体は、前記付属部の前記本体部との境界近傍に前記成形型により成形される溝を有する請求項1又は請求項2に記載のコア部材の製造方法。
- 前記除去工程後、前記熱処理工程前に前記除去跡を研磨する研磨工程を備える請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコア部材の製造方法。
- 前記鉄基材料が、純鉄である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコア部材の製造方法。
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