JP2015161006A - ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ニッケル以外の金属元素とその金属元素を還元する還元剤と保護コロイド剤となるゼラチンによるコロイド粒子が分散したコロイド溶液と、ニッケルを還元する還元剤と、アルカリ性物質を混合して作製したアルカリ性コロイド溶液に、ニッケル塩溶液を添加して前記ニッケル塩溶液を構成するニッケル元素の金属粒子を生成するニッケル粉末の製造方法であって、前記コロイド剤のゼラチンが、JISK65032001で規定する60〜130gのゼリー強度を有し、且つゼラチンに含まれるケイ素含有率量が100質量ppm未満であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明に係るニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサ(multilayer ceramic capacitors;MLCC)の内部電極として好適に用いることができる。
例えば、ニッケル粉末は、厚膜導電体を作製するための導電ペーストの材料として使用されている。
この厚膜導電体は、電気回路の形成、積層セラミックコンデンサ及び多層セラミック基板等の積層セラミック部品の電極等に用いられている。特に、積層セラミックコンデンサでは、小型・高容量化の要求から高積層化が進み、そのために用いる導電ペーストの使用量も大幅に増加している。このため、導電ペーストに使用する金属粉末としては、高価な貴金属の使用を避け、安価なニッケルなどの卑金属が主流となっている。
先ず、ニッケル粉末と、エチルセルロース等の樹脂と、ターピネオール等の有機溶剤等とを混練して得られた導電ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷して内部電極を作製する。次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着する。その後、積層体を所定の大きさにカットし、有機バインダとして使用したエチルセルロース等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成してセラミック体を得る。そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
仮に内部電極に粗大粒子が含まれていると、積層した際に誘電体層を突き破り内部電極同士が接触し短絡してしまう。
特許文献1では、天然物由来のゼラチンが使用されており、このゼラチンの品種や製造ロット間の違いにより粒径が異なってしまい、同一粒径品のグレードを安定的に量産できず、品種や製造ロット間によって、添加量の調整が必要であることが問題となっていた。
(1)ニッケル粉末(金属粉末)の生成
本発明は、ニッケル以外の金属元素のコロイド粒子が分散したコロイド水溶液と還元剤とアルカリ物質を混合して形成したアルカリ性コロイド水溶液に、コロイド水溶液ニッケル塩水溶液を添加して、ニッケル粒子を生成させる方法における各種使用原材料の不純物管理において、保護コロイド剤に用いたゼラチンのゼリー強度、ゼラチンに含まれるケイ素含有量が粒径に及ぼす影響が最も大きいことを見出し、ゼラチンのゼリー強度、ゼラチンに含まれるケイ素含有量を、厳しく管理すると共に、適正化することによって、精度よく且つ正確に粒径を再現できることを見出し、本発明に至ったものである。
このアルカリ性コロイド水溶液は、アルカリ性還元溶液中にパラジウムと銀の複合コロイド粒子を分散させる方法であれば、その製法は特に限定されるものではない。
例えば、(1)パラジウムと銀のコロイド粒子が分散したコロイド水溶液と還元剤とアルカリ性物質を混合する、(2)そのコロイド水溶液に、還元剤とアルカリ性物質を添加する、(3)そのコロイド水溶液と、還元剤を含有するアルカリ性溶液とを混合する、という工程を挙げることができる。
第一に、パラジウムと銀は、ニッケルよりも酸化還元電位が高く、ニッケル粒子析出の際に核となり、この核にニッケルが析出、成長して、ニッケル粒子になると考えられ、すなわち、ニッケルの核生成は起こらずに、ニッケル粒子への成長が生じていると推測される。
以上のように、生成したニッケル粒子が均一な粒径で、単分散状態になり、粗大粒子や連結粒子が形成されにくくなると考えられ、さらに、このコロイド粒子の数を変化させることによって、ニッケル析出の際の核の数を変化させることができ、ニッケル粒子の粒径を制御することができると推測される。
そのパラジウム源となるパラジウム塩水溶液は、特に限定されるものではない。例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶液をパラジウム塩水溶液として用いることができる。これらの中では、液調製が容易な塩化パラジウムが最も好ましい。
銀源となる銀塩水溶液としては、例えば、硝酸銀水溶液を用いることができる。
パラジウムと銀を複合させてコロイド粒子とした場合、銀は少量で、前述のようにニッケル粒子の粗大粒子および連結粒子の生成を抑制する効果を発揮する。これは、銀が入ることによってパラジウムの凝集が抑制され、核として作用するコロイド粒子の数が増加するためであると考えられる。
そこで、銀の量が0.1質量ppm未満では、上記の効果がほとんど得られない場合があり、5質量ppmより多くしても、得られるニッケル粒子の微細化に対する、さらなる効果がほとんど見られない。
使用する還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素ナトリウム等から選ばれる少なくとも1種類を含む水溶性ヒドラジン化合物を用いて作製したヒドラジン水溶液等を用いることが好ましい。これらの水溶性ヒドラジン化合物の中では、特に不純物が少ない点で、ヒドラジン(N2H4)が最も好ましい。
本発明においては、これらの水溶性のアルカリ性物質と、ヒドラジン、ヒドラジン水和物等の水溶性ヒドラジン化合物を純水中で混合して、アルカリ性のヒドラジン水溶液を作製することができる。
なお、アルカリ性のヒドラジン水溶液としては、特にpHが10以上に調製された水酸化ナトリウムとヒドラジン水和物の混合水溶液であることが好ましい。一方、pHが10未満では、反応速度が遅くなるため、ニッケルの還元析出が起こりにくくなるので好ましくない。
これらの水溶液の中では、特に廃液処理が簡易である塩化ニッケル水溶液が好ましい。
ニッケルよりも貴な金属によるコロイド粒子であればよく、例えば、銅などのコロイド粒子であってもよい。
保護コロイド剤の添加により、所望とするコロイド粒子を均一に分散させることが可能となる。
この保護コロイド剤のゼラチンの添加量は、アルカリ性コロイド水溶液に添加するニッケル塩溶液のニッケル量に対し0.02質量%から1質量%が望ましい。ゼラチンの添加量が0.02質量%未満では、コロイド粒子が凝集し、生成する金属粒子が粗大化したり、粒径のばらつきが大きくなる。ゼラチンの添加量が1質量%を超えるとゼラチンの量が過剰であり、生成する金属粉末にゼラチンが過剰に残留したり、残留ゼラチンによる保護作用により未還元のニッケルが発生したり する不具合につながる。
ゼラチンは、コラーゲンと水を煮沸して不可逆的に水溶性に変化させたタンパク質であり、コラーゲンを構成する分子量約100000のポリペプチド鎖(α鎖)とその二量体(β鎖)、三量体(γ鎖)及びそれらが加水分解したポリペプチド鎖で構成され、分子量30000から100000の分布を持っている。ゼラチンの原料となるコラーゲンは、硬タンパク質の一種で、生体の結合組織の主成分をなし、動物の骨、皮膚などに存在する。
ゼラチンの特性としては粘度、凝固点等が知られているが、本発明においてはゼリー強度とケイ素含有量を適切な範囲にすることが重要である。
ゼラチンのゼリー強度が60g未満では、金属粉末の粒径が大きくなり、かつ粒度分布が広くなる傾向にある。一方、ゼリー強度が130gを超えると金属粉末は細かくなるが、反応系中のニッケル粉末の成長が部分的にばらつき、したがって粒径のばらつきも大きくなる。
ゼラチンに含まれるケイ素含有量が100質量ppm以上だと、原因は不明であるが得られる金属粉末の平均粒径が大きくなる。
これまで、本発明に係るニッケル粉末の製造方法を説明してきたが、本発明はニッケル粉末以外にも他の金属元素の金属粉末の製造にも適用でき、パラジウム粉末、銀粉末、銀パラジウム合金粉末等にも応用可能である。パラジウム粉末、銀粉末、銀パラジウム合金粉末等の製造では保護コロイド剤に本発明で用いるゼラチンを用いればよい。例えば、パラジウム粉末であれば、アルカリ性の塩化パラジウム水溶液に保護コロイド剤のゼラチンと還元剤を加えればよい。また、銀粉末であれば、アンモニアなどの錯化剤と硝酸銀溶液と保護コロイド剤のゼラチンと還元剤を混合すればよい。
実施例に使用するゼラチンのゼリー強度[g]及びケイ素含有量(Si)[質量ppm]を表1に示す。
上記アルカリ性コロイド水溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、ニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:10質量ppm、銀:0.1質量ppm、ゼラチン:200質量ppmとした。
使用したゼラチンは、そのゼリー強度が78g、ケイ素含有量が34質量ppmのものを用いた。
また、ゼラチン中のケイ素含有量は、ICP発光分光法により分析した。
更に、ゼラチンのゼリー強度測定は、JIS K6503−2001に定められる方法による値とした。
そして、このアルカリ性コロイド水溶液に、ニッケル塩水溶液としてニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液0.5lを3分間かけて連続的に投入して、ニッケルの還元を行い、乾燥してニッケル粉末を得た。
その結果を表2に示す。
パラジウムと微量の銀からなる複合コロイド水溶液に、アルカリ性のヒドラジン溶液を混合し、ニッケルを還元するために、アルカリ性コロイド水溶液を作製した。
上記アルカリ性コロイド水溶液におけるパラジウム、銀、ゼラチンの含有量は、ニッケル塩水溶液中のニッケルの全質量に対して、パラジウム:10質量ppm、銀:0.1質量ppm、ゼラチン:200質量ppmとした。
使用するゼラチンを、ゼリー強度が48g、ケイ素含有量が41質量ppmのものを用いた。
まず、純水6Lに所定量のゼラチンを溶解させた後、ヒドラジンの濃度が0.02g/Lとなるようにヒドラジンを混合した。次に、純水と所定量のパラジウムと銀の0.2Lの混合溶液を作製し、ゼラチンとヒドラジンが含まれる前記溶液に滴下して、コロイド水溶液を得た。
その測定結果を纏めて表2に示す。
使用するゼラチンを、ゼリー強度が84g、ケイ素含有量が250質量ppmのものを使用した以外は、比較例1と同様にしてニッケル粉末を作製し、諸特性を測定した。
その結果を表2に示す。
使用するゼラチンを、ゼリー強度が150g、ケイ素含有量が52質量ppmのものを使用した以外は、比較例1と同様にしてニッケル粉末を作製し、諸特性を測定した。
その結果を表2に示す。
Claims (2)
- ニッケル以外の金属元素とその金属元素を還元する還元剤と保護コロイド剤となるゼラチンによるコロイド粒子が分散したコロイド水溶液と、ニッケルを還元する還元剤と、アルカリ性物質を混合して作製したアルカリ性コロイド水溶液に、ニッケル塩溶液を添加して前記ニッケル塩溶液を構成するニッケル元素の金属粒子を生成するニッケル粉末の製造方法であって、
前記コロイド剤のゼラチンが、JIS K 6503 2001で規定する60〜130gのゼリー強度を有し、且つゼラチンに含まれるケイ素含有量が、100質量ppm未満であることを特徴とするニッケル粉末の製造方法。 - 前記ニッケル以外の金属元素のコロイド粒子が、パラジウムと銀を金属元素とするコロイド粒子であること特徴とする請求項1に記載のニッケル粉末の製造方法。
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