しかしながら、特許文献1に記載の方法には、未だ改善の余地がある。例えば、この方法では、電子回路部品の装着時には1枚の回路基板である多面取り基板の子基板についての装着能率の向上は図られるが、複数枚の多面取り基板については図られないというように改善の余地があるのである。
本発明は、以上の事情の下に為されたものであり、複数の吸着ノズルを保持した装着ヘッドによる複数枚の回路基材への電子回路部品の装着の改善を課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の電子回路部品装着方法は、
複数の吸着ノズルを保持した1つ以上の装着ヘッドにより、部品供給装置から複数の電子回路部品を受け取らせ、それら複数の電子回路部品を、1レーン以上のコンベヤから成る基材コンベヤ装置により別々に搬送され、1つ以上の基材保持装置に別々に保持される複数枚の回路基材に装着する方法であって、
前記複数枚の回路基材の1つに装着すべき電子回路部品を全て装着させてその回路基材に対する装着作業を終了させた後に、前記複数枚の回路基材の別の1つに対する電子回路部品の装着作業を開始させることを前提とし、
装着作業が前記複数枚の回路基材の1つから別の1つに切り換る際に、前記複数枚の回路基材の1つに装着する電子回路部品と、前記複数枚の回路基材の別の1つに装着する電子回路部品とを、前記1つ以上の装着ヘッドのうちの1つに受け取らせ、その装着ヘッドによって、前記複数枚の回路基材の1つおよび前記複数枚の回路基材の別の1つに、その装着ヘッドが受け取っている複数の電子回路部品を装着することを特徴とする
回路基材には、例えば、(i)未だ電子回路部品が装着されていないプリント配線板、(ii
一方の面に電子回路部品が搭載されるとともに電気的に接合され、他方の面には電子回路部品が未装着であるプリント回路板、(iii)ベアチップが搭載され、チップ付基板を構成
する基材、(iv)ボールグリッドアレイを備えた電子回路部品が搭載される基材等が含まれる。「回路基板」はプリント配線板およびプリント回路板の総称とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の電子回路部品装着システムは、
複数の電子回路部品を供給する部品供給装置と、
1レーン以上のコンベヤにより複数枚の回路基材を別々に搬送する基材コンベヤ装置と、
複数の吸着ノズルを保持した1つ以上の装着ヘッドにより、前記部品供給装置から複数の電子回路部品を受け取り、前記基材コンベヤ装置により搬送される複数枚の回路基材の各々に装着する装着装置と、
前記部品供給装置,前記基材コンベヤ装置および前記装着装置を制御する制御装置と
を含み、前記制御装置が、
前記複数枚の回路基材の1つに装着すべき電子回路部品を全て装着させてその回路基材に対する装着作業を終了させた後に、前記複数枚の回路基材の別の1つに対する電子回路部品の装着作業を開始させるような制御を行うとともに、
装着作業が前記複数枚の回路基材の1つから別の1つに切り換る際に、前記複数の回路基材の1つに装着する電子回路部品と、前記複数枚の回路基材の別の1つに装着する電子回路部品とを、前記1つ以上の装着ヘッドのうちの1つに受け取らせ、その装着ヘッドによって、前記複数枚の回路基材の1つおよび前記複数枚の回路基材の別の1つに、その装着ヘッドが受け取っている複数の電子回路部品を装着するように制御することを特徴とする。
本発明に係る方法によれば、別々に搬送され、保持される2枚以上の回路基材に装着すべき電子回路部品が一緒に取り出され、搬送されるため、電子回路部品が回路基材1枚単位で取り出され、搬送される場合に比較して、装着ヘッドによる電子回路部品の部品供給装置から基材保持装置への搬送回数が低減され得る。それにより、搬送に要する消費エネルギが低減され、省エネルギが図られ得る。また、装着能率の向上も図られ得る。
さらに、負圧源と、複数の吸着ノズルの各々について設けられたバルブあるいは複数の吸着ノズルの各々との間に設けられて負圧の供給,遮断を切り換える切換装置(例えば、電磁制御弁の一種である電磁開閉弁により構成される)の切換回数を低減することができ、それに要する電力エネルギが低減されて省エネルギが図られる。正圧源から吸着ノズルに正圧が供給されて電子回路部品が積極的に解放される場合にも同様である。
本発明に係る電子回路部品装着システムにおいては本発明に係る電子回路部品装着方法が実施され、エネルギ消費低減効果等を得つつ、回路基材への電子回路部品の装着を能率良く行うことができる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、特許請求の範囲に記載された発明である本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むことがある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施形態の記載,従来技術,技術常識等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、上述の請求可能発明の各種態様が、請求項に相当する。
(1)複数の吸着ノズルを保持した1つ以上の装着ヘッドにより、部品供給装置から複数の電子回路部品を受け取らせ、それら複数の電子回路部品を、1レーン以上のコンベヤから成る基材コンベヤ装置により別々に搬送され、1つ以上の基材保持装置に別々に保持される複数枚の回路基材に装着する方法であって、
前記部品供給装置から、前記装着ヘッドの1つの前記複数の吸着ノズルに、前記複数枚の回路基材のうちの2枚以上に装着すべき複数の電子回路部品を保持させ、それら保持させた複数の電子回路部品を一緒に搬送させ、それら複数の電子回路部品の一部を前記2枚以上の回路基材の1枚に装着させ、別の一部を別の1枚の回路基材に装着させることを特徴とする電子回路部品装着方法。
(2)前記1枚の回路基材に、前記複数の電子回路部品として、前記1つの装着ヘッドの前記複数の吸着ノズルの数より多い数の同種の電子回路部品を装着する(1)項に記載の電子回路部品装着方法。
本発明は互いに種類が異なる電子回路部品を装着する場合にも適用は可能である。しかし、同種の電子回路部品を繰り返し装着する場合に適用し易い。例えば、後述するように、装着ミスのリカバリを行う場合には、装着すべき電子回路部品が同種のものであることが特に望ましい。
1枚の回路基材に設定数の電子回路部品を装着するためには、装着ヘッドによる電子回路部品の2回以上の搬送が必要であり、電子回路部品の取出,搬送,装着が回路基材1枚を単位として行われるのであれば、装着ヘッドが電子回路部品を保持しない吸着ノズルのある状態で作動させられ、無駄が生じ易い。それに対し、本項に記載の方法によれば、空いている吸着ノズルに別の回路基材に装着すべき電子回路部品を保持させることができ、搬送回数が低減され得る。
(3)前記複数の電子回路部品が1種類の電子回路部品である(1)項に記載の電子回路部品装着方法。
1枚の回路基材に装着される電子回路部品の数は、複数の吸着ノズルの数より多くても少なくても、同じでもよい。1枚の回路基材への電子回路部品の装着数が吸着ノズルの数より少ない場合、および、複数の吸着ノズルの数より多くても、1枚の回路基材に対する最後の装着回のように、1回の電子回路部品の搬送数が吸着ノズルの数より少ない場合には、複数枚分の電子回路部品を一緒に搬送することができる。電子回路部品の数と吸着ノズルの数とが同じであっても、例えば、装着ミスのリカバリが必要となって1枚の回路基材について2回以上の電子回路部品の搬送が必要となる場合、複数枚分の電子回路部品を一緒に搬送することが有効となる。
(4)前記基材コンベヤ装置として互いに平行に延びる複数レーンのコンベヤを使用し、前記1つ以上の装着ヘッドをそれら複数レーンのコンベヤにより搬送される回路基材への電子回路部品の装着に共用し、その1つ以上の装着ヘッドの少なくとも1つに、前記複数レーンのうちの1レーンにより搬送される回路基材に装着すべき電子回路部品と別の1レーンにより搬送される回路基材に装着すべき電子回路部品とを一緒に保持させる(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
本方法によれば、別の1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材が、別の1枚の回路基材であり、複数レーンのうちの1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材への1つまたは複数の装着ヘッドによる電子回路部品の装着と並列に、あるいはその回路基材への電子回路部品の装着完了に続いて電子回路部品の装着が行われ得る。
設備コストの上昇を抑えつつ装着作業の能率を向上させるという観点からは、例えば2レーンのコンベヤに1つの装着ヘッドを共用することが有効であり、その場合に(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の発明を適用するのが本項の発明の一態様であるが、省エネルギ上は、例えば2レーンのコンベヤに2つの装着ヘッドを共用する場合に(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の発明を適用しても効果が得られる。2つの装着ヘッドの少なくとも一方が別の回路基材に装着される電子回路部品を一緒に保持し、搬送することとなるのである。
(5)前記1つの装着ヘッドに、前記1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材に装着すべき電子回路部品と前記別の1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材に装着すべき電子回路部品とを一緒に保持させるのが、それら電子回路部品の装着作業が前記1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材と前記別の1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材とに跨る時期である(4)項に記載の電子回路部品装着方法。
部品供給の都合や、装着箇所の数や分布等、状況に応じて、1レーンのコンベヤと別の1レーンのコンベヤとにより搬送される2つの回路基材への装着作業の途中において、それら2つの回路基材に装着すべき電子回路部品を1つの装着ヘッドに一緒に保持させることが有効になる場合がある。しかし、本項に記載の場合には普遍的に有効である。
(6)前記基材コンベヤ装置として1レーンのコンベヤを使用し、前記装着ヘッドとして2つの装着ヘッドをその1レーンのコンベヤにより搬送される回路基材への電子回路部品の装着に使用し、それら2つの装着ヘッドの少なくとも1つに、前記1レーンのコンベヤにより搬送される1枚の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品と同じ1レーンのコンベヤにより搬送される別の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品とを一緒に保持させる(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
本項に記載の方法においては、同じ1レーンのコンベヤにより搬送される別の回路基材が、別の1枚の回路基材である。
2つの装着ヘッドに交互に電子回路部品の装着を行わせることにより、一方による電子回路部品の装着時に他方に部品供給装置からの電子回路部品の取出しを行わせることができ、能率良く電子回路部品の装着作業を行うことができる。しかも、2枚の回路基材に装着される電子回路部品が少なくとも1つの装着ヘッドによって一緒に搬送されることにより、省エネルギも図ることができる。
(7)前記基材コンベヤ装置として1レーンのコンベヤを使用し、前記装着ヘッドとして1つの装着ヘッドを使用し、その1つの装着ヘッドに、前記1レーンのコンベヤにより搬送される1枚の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品と同じ1レーンのコンベヤにより搬送される別の1枚の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品とを一緒に保持させる(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
(8)前記1つの装着ヘッドに、前記1枚の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品と前記別の1枚の回路基材に装着すべき1つ以上の電子回路部品とを一緒に保持させるのが、それら電子回路部品の装着作業が前記1枚の回路基材と前記別の1枚の回路基材とに跨る時期である(6)項または(7)項に記載の電子回路部品装着方法。
別の1枚の回路基材への電子回路部品の装着が行われる直前に、1枚の回路基材に装着すべき電子回路部品の数が吸着ノズルの数より少なければ、その電子回路部品の数より多い分の吸着ノズルに電子回路部品を保持させ、別の1枚に装着させることにより、装着ヘッドの部品搬送回数を低減させ得る。
(9)前記1枚の回路基材に装着すべき電子回路部品の少なくとも1つについて装着ミスが発生した場合に、その少なくとも1つの電子回路部品に代わる別の電子回路部品を、前記別の1枚の回路基材に装着すべき電子回路部品と一緒に前記1つの装着ヘッドに保持させ、前記1枚の回路基材に装着させるリカバリを行わせる(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
本項に記載の態様が、前記(5)項や(8)項に記載の態様と共に本請求可能発明の代表的な適用例の1つである。
(10)前記1枚の回路基材に対する装着作業の終了後に装着作業を停止させる必要がある場合には、前記1つの装着ヘッドの前記複数の吸着ノズルに、その1枚の回路基材に装着すべき電子回路部品以外の電子回路部品は保持させない(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
前記1枚の回路基材に対する装着作業の終了後に装着作業を停止させる必要がある場合とは、例えば、設定枚数の回路基材の最後の回路基材であって、それに対する装着作業の終了後は段取替え等が必要であって続いて別の種類の回路基材に対する装着作業が行われない場合や、作業者によって回路部品装着機の停止指令が為された場合等である。
装着作業の停止時にも全部の吸着ノズルに電子回路部品を保持させれば、1枚の回路基材に装着される電子回路部品以外の電子回路部品は装着されず、装着ヘッドに保持されたままとされ、その電子回路部品が、次に電子回路部品が装着される回路基材に装着されないのであれば、放棄することとなり、特に、再使用されないのであれば、無駄になる。そのため、作業停止時には電子回路部品を保持させないことにより、無駄の発生が回避される。
(11)前記複数の回路基材の各々が、複数の子基材が一体化された多面取り基材である(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
複数の子基材は、回路パターン(電子回路部品装着パターン)が同じものでもよく、異なるものでもよい。
複数枚の多面取り基板について電子回路部品の装着が行われるとき、本発明の効果を得ることができる。
(12)前記複数の子基材の一部の子基材が装着作業が禁止された装着禁止子基材である場合に、前記1つの装着ヘッドの前記複数の吸着ノズルに一緒に保持された複数の電子回路部品の一部のものを前記装着禁止子基材の前の子基材に装着し、別の一部の電子回路部品を、前記装着禁止子基材の後の子基材に装着する(11)項に記載の電子回路部品装着方法。
装着作業は、例えば、電極へのクリーム状はんだの塗布が正常に行われなかったり、電極形成や回路形成に欠落や異常がある等、電子回路部品が装着されても正常な電子回路が形成されない場合に禁止される。本項に係る発明によれば、装着禁止子基材に電子回路部品が装着されて無駄になることが回避される。
(13)前記2枚以上の回路基材が2枚の回路基材であり、2枚目の回路基材が既に待機している場合に限り、前記1つの装着ヘッドの前記複数の吸着ノズルに前記2枚の回路基材に装着すべき電子回路部品を一緒に保持させる(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
回路基材が待機していない場合、次に電子回路部品が装着される回路基材の種類が変わったり、装着作業が停止させられたりする等、2枚目の回路基材用に電子回路部品を保持させても無駄になる可能性がある。次に電子回路部品が装着されれば、省エネルギを図ることができるが、無駄になる可能性の排除が優先される。
コンベヤが1レーンの場合、2枚目の回路基材は、そのコンベヤの上流側で待機させられ、コンベヤが複数レーンの場合、2枚目の回路基材は、現に電子回路部品の装着が行われている回路基材を搬送するコンベヤとは別のコンベヤにおいて、あるいはその別のコンベヤの上流側において待機させられる。
(14)前記電子回路部品の少なくとも1つに仮止め剤を塗布し、その仮止め剤により電子回路部品を装着する場合には、次の回路基材が既に待機している場合に限り、前記1つの装着ヘッドの前記複数の吸着ノズルに前記2枚以上の回路基材に装着すべき電子回路部品を保持させることを行う(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の電子回路部品装着方法。
(13)項に記載の特徴は、2枚目の回路基材が部品装着位置に到着しない場合に、装着ヘッドに保持された2枚目用の電子回路部品が無駄になることを回避する上で一般的に有効であるが、本項に記載の態様においては、仮止め剤の塗布からの経過時間が長くなり、塗布された仮止め剤が乾燥して電子回路部品が使用不能になり、無駄になる可能性が高いため、その事態を回避する上で特に有効である。
仮止め剤あるいは接着剤が回路基材の電子回路部品の装着部位の少なくとも1つに塗布される場合にも、本項に記載の特徴が適用可能である。仮止め剤等が塗布された回路基材が待機している場合に限り、複数の吸着ノズルに2枚以上の回路基材に装着すべき電子回路部品を保持させるのである。
(15)複数の電子回路部品を供給する部品供給装置と、
1レーン以上のコンベヤにより複数枚の回路基材を別々に搬送する基材コンベヤ装置と、
複数の吸着ノズルを保持した1つ以上の装着ヘッドにより、前記部品供給装置から複数の電子回路部品を受け取り、前記基材コンベヤ装置により搬送される複数枚の回路基材の各々に装着する装着装置と、
前記部品供給装置,前記基材コンベヤ装置および前記装着装置を制御する制御装置と
を含み、前記制御装置が、
前記部品供給装置から、前記装着ヘッドの1つの前記複数の吸着ノズルに、前記複数枚の回路基材のうちの2枚以上に装着すべき複数の電子回路部品を保持させ、それら保持させた複数の電子回路部品を一緒に搬送させ、それら複数の電子回路部品の一部を前記2枚以上の回路基材の1枚に装着させ、別の一部を別の1枚の回路基材に装着させる装着制御部を含む電子回路部品装着システム。
部品供給装置は、部品供給具の一種である部品フィーダあるいはトレイによって電子回路部品を供給する装置や、ウエハによりチップを供給する装置としてもよい。部品フィーダには、例えば、テープフィーダ,バルクフィーダ,スティックフィーダ等がある。
以下、請求可能発明のいくつかの実施形態を、上記各図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施形態の他、上記〔発明の態様〕の項に記載した態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に、電子回路部品装着ライン(以後、装着ラインと略称する)の外観を示す。本装着ラインは、複数の装着モジュール10が、共通で一体のベース12上に、互いに隣接して1列に配列されて固定されることにより構成されている。複数の装着モジュール10はそれぞれ、対回路基板作業システムの一種である電子回路部品装着システムであり、回路基板への電子回路部品の装着を分担し、並行して行う。
装着モジュール10については、例えば、特開2004−104075号公報に詳細に記載されており、本請求可能発明に関する部分以外の部分については簡単に説明する。
各装着モジュール10はそれぞれ、図2に示すように、モジュール本体18,基材コンベヤ装置たる基板コンベヤ装置20,基材保持装置たる基板保持装置22,部品供給装置24,装着装置26,基準マーク撮像装置28(図4参照),部品撮像装置30,フラックス塗布装置32および制御装置34を備えている。
モジュール本体18は、前後方向に長いベッド36を備えている。基板コンベヤ装置20は2つのコンベヤ40,42を備え、ベッド36の、装着モジュール14の前後方向の中央部に設けられ、回路基板44を複数の装着モジュール14が並ぶ方向と平行な方向であって、水平な方向に搬送する。本実施形態においては、回路基板44の搬送方向をX軸方向、水平な一平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。装着モジュール14の前後方向はY軸方向に平行である。
コンベヤ40,42は、図3に一方のコンベヤ40を示すように、本実施形態においてはベルトコンベヤとされており、互いに平行に設けられている。コンベヤ40,42はそれぞれ、一対の無端のコンベヤベルト50および各コンベヤベルト50を周回させるベルト周回装置52を含む。コンベヤベルト40,42の各2つのベルト周回装置52は駆動源たる電動モータ54を共用し、一対のコンベヤベルト50が同時に周回させられ、それらコンベヤベルト50により、互いに平行な両側端部を下方から支持された回路基板44が、その被作業面たる部品被装着面が水平な姿勢で搬送される。本基板コンベヤ装置20は2レーンのコンベヤを備えているのであり、回路基板44の搬送には、コンベヤ40,42の少なくとも一方が使用される。
コンベヤ40,42にはそれぞれ、図3にコンベヤ40について示すように、その基板搬送方向において上流端より上流の位置に基板搬入センサ56が設けられている。基板搬入センサ56は、例えば、非接触センサの一種である光電センサたる透過型の光電センサによって構成され、コンベヤ40の幅方向に隔たって設けられた発光部57および受光部58を含み、受光部58の受光によりON信号を発し、受光が妨げられることによりOFF信号を発するものとされている。コンベヤ40の幅方向は、コンベヤ40により搬送される回路基板44の被装着面に平行な平面である水平面内において基板搬送方向と直交する方向であり、Y軸方向に平行である。また、搬送すべき回路基板の幅に合わせて搬送幅(一対のコンベヤベルト50の間隔)が幅変え装置(図示省略)により変更される。
基板保持装置22は2つのコンベヤ40,42の各々について設けられ、本実施形態においては、図3に示すように基板支持装置60および一対のクランプ部材62(図3には一方のクランプ部材62が図示されている)を含み、回路基板44を被装着面が水平となる姿勢で保持する。基板支持装置60は、支持部材たる複数の支持ピン64と、それら支持ピン64を支持する支持部材たる支持台66とを含み、基板支持装置昇降装置68(図7参照)により昇降させられ、回路基板44を下方から支持する。一対のクランプ部材62はそれぞれ、回路基板44の搬送方向に平行な両側縁部をクランプする。
部品供給装置24は、図2に示すように、ベッド36の基板コンベヤ装置20に対してY軸方向の一方の側であって、装着モジュール10の正面側に設けられている。部品供給装置24は、例えば、部品フィーダの一種であるテープフィーダ(以後、フィーダと略称する)70により電子回路部品を供給するものとされ、複数のフィーダ70と、それらフィーダ70が取り付けられるフィーダ支持台(図示省略)とを含む。複数のフィーダ70はそれぞれ、同種の多数の電子回路部品をテープにより保持した状態で供給し、各々の部品供給部がX軸方向に沿って並ぶ状態でフィーダ支持台に取り付けられる。
装着装置26は、図2および図4に示すように、作業ヘッドたる装着ヘッド80と、その装着ヘッド80を移動させるヘッド移動装置82とを備えている。ヘッド移動装置82は、図4に示すように、X軸方向移動装置84およびY軸方向移動装置86を備えている。Y軸方向移動装置86は、モジュール本体18を構成するクラウン88に、部品供給装置24の部品供給部と2つの基板保持装置22とに跨って設けられたリニアモータ90を備え、可動部材としてのY軸スライド92をY軸方向の任意の位置へ移動させる。X軸方向移動装置84はY軸スライド92に設けられ、Y軸スライド92に対してX軸方向に移動させられるとともに、互いにX軸方向に相対移動させられる第1,第2X軸スライド94,96と、それらスライド94,96をそれぞれ、X軸方向に移動させるX軸スライド移動装置98(図4には第2X軸スライド96を移動させる移動装置98のみが図示されている)とを備えている。2つのX軸スライド移動装置はそれぞれ、例えば、駆動源たる電動モータ99(図7参照)と、送りねじおよびナットを含む送りねじ機構とを含むものとされ、X軸スライド94,96をX軸方向の任意の位置へ移動させる。送りねじとしてはボールねじが好適であり、電動モータ99としてはサーボモータ等回転角度の制御が可能な電動モータが好適である。
装着ヘッド80は、第2X軸スライド96に着脱自在に搭載され、ヘッド移動装置82により、部品供給装置24の部品供給部と2つの基板保持装置22とに跨る移動領域である装着作業領域内の任意の位置へ移動させられる。装着ヘッド80は、部品保持具の一種である吸着ノズル100によって電子回路部品を保持するものとされており、吸着ノズル100を保持し、部品保持具保持部を構成するノズルホルダの数を異にする複数種類の装着ヘッド80が用意され、電子回路部品が装着される回路基板44の種類に応じて選択的に第2X軸スライド96に取り付けられる。
例えば、図5に示す装着ヘッド80はノズルホルダ102を複数、例えば3個以上、図示の例では12個備え、吸着ノズル100が最大12個保持され得る。装着ヘッド80は、図6に示すように、ヘッド本体110に鉛直な回転軸線のまわりに回転可能に設けられた回転体112と、サーボモータ等の電動モータを駆動源とし、回転体112を正逆両方向に任意の角度回転させる回転体回転装置114とを備えた回転型ヘッドである。回転体112には、その回転軸線を中心とする一円周上に適宜の間隔、図示の装着ヘッド80では等角度を隔てた12の位置にそれぞれ、ノズルホルダ102が回転体112の回転軸線に平行な方向に相対移動可能かつ自身の軸線まわりに回転可能に設けられ、それぞれ回転体112からの突出端部において吸着ノズル100を着脱可能に保持する。
12個のノズルホルダ102は、回転体112の回転により、回転体112の回転軸線のまわりに旋回させられ、12個の停止位置の1つである部品吸着装着位置へ順次移動させられ、ヘッド本体110の部品吸着装着位置に対応する位置に設けられた昇降装置116によって昇降させられる。ノズルホルダ102はさらに、ヘッド本体110に設けられたホルダ回転装置118により、自身の軸線まわりに回転させられる。昇降装置116およびホルダ回転装置118はサーボモータ等の電動モータを駆動源とし、ノズルホルダ102が任意の位置へ下降させられ、正逆両方向に任意の角度自転させられる。
ヘッド本体110にはさらに、図示は省略するが、12個のノズルホルダ102の各々について設けられたバルブを切り換えるバルブ切換装置が設けられ、吸着ノズル100への負圧および正圧の供給がそれぞれ許容,遮断されるようにされている。装着ヘッド80には、第2X軸スライド96を介して負圧源および正圧源(図示省略)から負圧および正圧が供給され、ヘッド本体110に設けられた電磁制御弁(図示省略)の制御により、上記バルブへの供給が許容,遮断される。
前記基準マーク撮像装置28は、図4に示すように、第2X軸スライド96に搭載され、ヘッド移動装置82により装着ヘッド80と共に移動させられ、回路基板44の被装着面に設けられた基準マーク(図示省略)を撮像する。基準マークは複数、例えば、2個、対角線方向に隔たって設けられている。基準マーク撮像装置28は、例えば、CCDカメラあるいはCMOSカメラにより構成されている。ヘッド移動装置82は、基準マーク撮像装置移動装置を兼ねている。
部品撮像装置30およびフラックス塗布装置32は、図2に示すように、ベッド36の部品供給装置24と基板コンベヤ装置20との間の部分に位置を固定して設けられている。部品撮像装置30は、本実施形態においては、装着ヘッド80の全部のノズルホルダ102に吸着ノズル100が保持され、それら吸着ノズル100の全部に保持された電子回路部品を同時に撮像し得るものとされている。
フラックス塗布装置32は、フラックス収容器124を備えている。フラックス収容器124には、仮止め剤の一種であるフラックスが収容されている。フラックスは、例えば、BGA(Ball Grid Alley1)の電極であるボールあるいはフリップチップの電極に塗布されて、それらを回路基板に仮止めする。フラックス収容器124は上方に開口させられた収容凹部126を備え、電極が収容凹部126の底面に当接させられた状態において、それらに適切な厚さでフラックスが塗布される深さでフラックスが収容されている。
前記制御装置34は、図7に示すように、制御コンピュータ130を主体として構成されており、駆動回路132を介して電動モータ54等、装着モジュール10を構成する種々の装置の駆動源等を制御する。また、制御コンピュータ130の入出力インタフェースには、基準マーク撮像装置28および部品撮像装置30の撮像により得られたデータを処理する画像処理コンピュータ134および基板搬入センサ56が接続されるとともに、他の装着モジュール10の制御装置34および装着ライン全体を統括制御するライン制御装置136が通信ケーブル138を介して接続されている。制御コンピュータ130のRAMには、図8に示すシーケンスリスト,図11にフローチャートで示す部品装着ルーチン等、電子回路部品の回路基板への装着に必要な種々のデータおよびプログラム等が記憶させられている。
シーケンスリストは、回路基板44の部品装着部位の位置,装着される電子回路部品の種類,装着姿勢,電子回路部品を供給するフィーダ70のフィーダ支持台における搭載位置,使用される吸着ノズル100の種類等を対応付けて装着順に並べたデータである。部品装着部位の位置は、回路基板44の被装着面上に設定されたxy座標面であって、2個の基準マークの一方を原点とする座標面上の座標値により設定されている。このxy座標面は、回路基板44が基板保持装置22に保持された状態においてx軸およびy軸がそれぞれ、装着モジュール10に設定されたXY座標面のX軸およびY軸と平行になることを予定して設定されている。図8には、シーケンスリストのうち、装着順序,電子回路部品の種類および吸着ノズル100の種類を対応付けた部分が示されている。吸着ノズル100の種類は吸着管の直径により表されている。
なお、図示は省略するが、最上流の装着モジュール10の上流側に隣接してシャトルコンベヤが設けられ、その可動コンベヤにより、回路基板44がコンベヤ40,42に選択的に搬入される。
以上のように構成された装着ラインの装着モジュール10によれば、種々の態様で回路基板への電子回路部品の装着を行うことができるが、1枚の回路基板44に装着される電子回路部品の種類が少なく、1つの装着モジュール10において装着される複数の電子回路部品の種類が1種類になる場合がある。例えば、部品や、通信およびメモリ用のモジュール基板を生産する場合、装着される部品の種類が少なく、また、1枚の回路基板に多数の発光ダイオードを装着して、テレビ,コンピュータ等のディスプレイや車両のインパネ表示器のバックライトや、車両のバックライト,フロントライト,一般照明器具等の光源を製造する場合、1枚の回路基板に多数の同種の電子回路部品が装着される。この場合は全部の装着モジュール10において同種の電子回路部品が回路基板44に装着される。以下、1つの装着モジュール10における回路基板44への1種類の電子回路部品の装着を説明する。なお、簡単のために、回路基板44には、1つの装着モジュール10毎に電子回路部品が5個ずつ装着され、装着ヘッド80は吸着管の直径が同じである同種の吸着ノズル100を4個保持するものとする。また、回路基板44に装着される電子回路部品の種類が同じであるため、4個の吸着ノズル100は同じフィーダ70から電子回路部品を受け取る。
さらに、回路基板44の搬送にはコンベヤ40,42が使用される場合を例に取って説明する。コンベヤ40,42には回路基板44が交互に搬入されて、予め設定された部品装着位置において停止させられる。そして、一方において保持された回路基板44について電子回路部品の装着が行われている間に他方へ回路基板44が搬入されて停止させられ、基板保持装置22により保持されて基準マークの撮像および電子回路部品の装着に備えて待機させられる。コンベヤに搬入され、基板保持装置22により保持されて現に電子回路部品の装着が行われている回路基板44を現部品装着基板44、別のコンベヤに搬入され、次に電子回路部品の装着が行われる回路基板44を次部品装着基板44と称し、以後、それぞれ現基板44、次基板44と略称する。
コンベヤ40,42により搬送される回路基板44の種類は同じであるため、いずれにおいて電子回路部品が装着される回路基板44についても、部品装着部位のxy座標面上における座標値は同じである。しかし、各コンベヤ40,42における回路基板44は装着モジュール10のXY座標面上における位置を異にし、装着ヘッド80の移動位置が異なる。そのため、シーケンスリストはコンベヤ40,42の各々において電子回路部品が装着される回路基板44について作成され、各シーケンスリストの部品装着部位のxy座標値は、基準マーク撮像装置28の撮像により得られる基準マークのXY座標面上における位置に基づいてXY座標面上の位置に座標変換される。この際、2個の基準マークの位置誤差に基づいて算出される部品装着部位のX軸,Y軸方向の各位置誤差が合わせて修正される。基準マーク撮像装置28は、コンベヤ40,42の各々について設定された基準マーク目標位置(位置ずれのない基準マークの位置)へ移動させられ、基板保持装置22に保持された回路基板44の2個の基準マークをそれぞれ撮像する。装着モジュール10において部品供給装置24は1つであり、コンベヤ40,42のいずれにより搬送される回路基板44についても装着される電子回路部品は同じであり、1種類であるため、どちらの回路基板44に装着される電子回路部品も同じフィーダ70により供給されることとする。1つのフィーダ70において電子回路部品がなくなれば、フィーダ支持台に搭載された別のフィーダ70により電子回路部品が供給されるようにされる。
回路基板44への電子回路部品の装着の概要を図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、装着ヘッド80は部品供給装置24において4個の吸着ノズル100の全部に電子回路部品を受け取る。4個の吸着ノズル100が電子回路部品を吸着した後、装着ヘッド80はコンベヤ40,42のうち回路基板44が保持されているコンベヤへ移動させられ、4個の電子回路部品を一緒に搬送し、4個の吸着ノズル100にそれぞれ、シーケンスリストに設定された順に電子回路部品を回路基板44に装着させる。これが装着ヘッド80の1回目の部品吸着,搬送,装着(以後、吸着装着動作と称する)である。吸着ノズル100の数は4個、電子回路部品の設定装着数は5個であり、回路基板44には未だ電子回路部品が装着されていない装着部位が1箇所あるため、装着ヘッド80は部品供給装置24へ移動させられて吸着ノズル100に電子回路部品を吸着させる。この際、現基板44に装着する電子回路部品は1個であるが、4個の吸着ノズル100の全部が電子回路部品を保持させられ、次基板44に装着する3個の電子回路部品が一緒に保持させられる。
そして、装着ヘッド80は現基板44へ移動させられ、保持した4個の電子回路部品のうちの1個を現基板44に装着した後、別のコンベヤにおいて基板保持装置22により保持された次基板44へ移動させられ、保持している残り3個の電子回路部品を装着する。これが装着ヘッド80の2回目の吸着装着動作であり、2枚の回路基板44への電子回路部品の装着の終わりと始まりとに跨って電子回路部品の装着を行う。次基板44が現基板44となるが、この現基板44にはまだ2個の電子回路部品を装着することが必要であり、装着ヘッド80は部品供給装置24へ移動させられ、4個の吸着ノズル100の全部に電子回路部品を保持させられ、そのうちの2個を現基板44に装着させられる。これが装着ヘッド80の3回目の吸着装着動作であり、2枚の回路基板44にそれぞれ5個の電子回路部品を装着するために装着ヘッド80の3回の吸着装着動作が行われる。3回目の吸着装着動作において2個の電子回路部品が現基板44に装着された後、装着ヘッド80に残っている2個の電子回路部品は次の3枚目の回路基板44に装着される。3枚目以降の回路基板44についても、3回の吸着装着動作により2枚の回路基板44に設定数の電子回路部品が装着される。
それに対し、装着ヘッド80の吸着装着動作が回路基板1枚を1単位として行われる従来の場合には、図9(b)の表に示すように、2回目の吸着装着動作時に、現基板44につ
いて未だ装着されていない電子回路部品の数、ここでは1個の電子回路部品の吸着のみが行われ、装着ヘッド80が現基板44へ移動させられて、その1個の電子回路部品を装着する。次基板44についても同様であり、2枚の回路基板44についてそれぞれ5個の電子回路部品を装着するために合計4回の吸着装着動作が必要であり、本実施形態によれば吸着装着動作が1回、少なくて済む。
吸着装着動作回数の低減効果は、リカバリが行われる場合にも得られる。本実施形態においては、リカバリは、吸着ノズル100による電子回路部品の吸着にミスがあり、それによって回路基板44に電子回路部品が装着されない装着ミスが発生した場合に行われ、吸着ミスにより電子回路部品が装着されなかった回路基板44の部品装着部位について、電子回路部品の吸着,装着がやり直しされる。吸着ミスは、例えば、電子回路部品が吸着されないこと、あるいは吸着されたが電子回路部品が立っていたり、修正が不可能なほど吸着ノズル100に対してずれていたりして装着不可能であることである。
本実施形態においては、(I)装着ヘッド80により電子回路部品が現基板44用についてのみ保持されている場合には、装着ミスが発生した吸着装着動作の次に行われる吸着装着動作においてリカバリが行われる。現基板44用についてのみ電子回路部品が保持されるのは、未装着数、すなわち現基板44に未だ装着されていない電子回路部品の数が、装着ヘッド80が保持可能な全部の吸着ノズル100の数以上である場合、あるいは未装着数が全吸着ノズル数より少ないが、次基板44用には電子回路部品が保持されない場合である。未装着数には、装着ミスにより装着されていない電子回路部品の数も含まれる。装着ヘッド80が保持した電子回路部品の現基板44への装着が行われ、現基板44についての設定数の電子回路部品の装着が完了した状態で装着ヘッド80に電子回路部品の余りが生じ、その余りの電子回路部品が次基板44に装着される場合、現基板44となる次基板44についての未装着数は全吸着ノズル数より多く、装着ヘッド80は現基板44用についてのみ電子回路部品を保持していると考える。
また、(II)未装着数が装着ヘッド80が保持可能な全部の吸着ノズル100の数より少ないが、全部の吸着ノズル100により電子回路部品が保持される場合に、その未装着の電子回路部品の装着についてミスが発生した際には、その装着ミスが発生した吸着装着動作においてリカバリが行われる。未装着数には、装着ミスにより装着されていない電子回路部品の数が含まれる。この場合、全部の吸着ノズル100により吸着された電子回路部品のうち、未装着数分が現基板44に装着された状態では、装着ヘッド80に、回路基板44に装着されていない余りの電子回路部品がある。回路基板44に装着される全部の電子回路部品の種類は同じであり、全部の吸着ノズル100が同種の電子回路部品を保持し、余りの電子回路部品は現基板44にも次基板44にも装着することが可能であって、使用が決定していない未決定吸着部品であり、リカバリに使用することができるのである。
例えば、上記(I)の場合の一例であって、図10(a)の表に示すように、回路基板44について1回目の吸着装着動作が行われた状態でリカバリが必要になった場合、リカバリの必要な部品装着部位(以後、リカバリ部位と称する)が1箇所であるとすれば、2回目の吸着装着動作時に吸着された4個の電子回路部品のうちの1個が回路基板44のリカバリ部位に装着される。装着ミスが生じた吸着装着動作の次の吸着装着動作時にリカバリが行われる場合、本実施形態においては、次の吸着装着動作の最初にリカバリ装着が行われる。そのため、装着モジュール10において回路基板44に装着される5個の電子回路部品の種類は同じであり、装着ヘッド80の4個の吸着ノズル100は、リカバリ実行の有無に関係なく、予め設定された順序で同種の電子回路部品を吸着させられるが、装着時には、リカバリ装着が行われた電子回路部品の個数分(ここでは1個分)、シーケンスリストに設定された電子回路部品の装着順序がずらされ、2番目の吸着ノズル以降において、1回目の吸着装着動作の続きから電子回路部品の装着が行われる。なお、本実施形態とは逆に、次に行われる吸着装着動作のリカバリ部位以外の全部の部品装着部位への電子回路部品(本実施形態においては1個の電子回路部品)の装着後にリカバリ装着が行われてもよく、1枚の回路基板44について吸着装着動作が複数回行われ、それら複数回の吸着装着動作の間に1回あるいは複数回の装着ミスが発生した場合、リカバリが最後にまとめて行われてもよい。
また、上記(II)の場合の一例であって、図10(b)の表に示すように、2回目の吸着装着動作において装着ミスが発生した場合、現基板44について予定された電子回路部品の装着終了後にリカバリ装着が行われ(図10(b)に示す例は、装着が予定された電子回路部品のうち、最後の電子回路部品に装着ミスが発生した例であるため、リカバリ装着が装着ミス発生の直後に行われることとなっている)、未決定吸着部品がリカバリ部位に装着される。いずれの場合にも現基板44についてリカバリのための部品装着が行われれば、その分、次基板44に装着される電子回路部品の数が減るが、それでも図10(a),(b)に示す例では、2枚の回路基板44についての吸着装着動作は3回で済む。
以上の動作を図11に示す部品装着ルーチンに基づいて説明する。
本部品装着ルーチンは、図9および図10に基づいて説明したように、装着ヘッド80により、リカバリを含む電子回路部品の吸着装着動作が行われるとともに、電子回路部品にフラックスが塗布される場合に次基板44が待機していない場合、および回路基板44が最後である場合には、現基板44における未装着分についてのみ吸着装着動作が行われるようにされている。最後とは、連続して電子回路部品の装着が行われる複数枚の回路基板44のうちの最後の1枚であることであり、待機とは、現基板44が基板保持装置22により保持されているコンベヤとは別のコンベヤに次基板44が搬入されていること、あるいは搬入はされていないが、そのコンベヤの上流側にあることである。
部品装着ルーチンのステップ1(以後、S1と略記する。他のステップについても同じ。)においては、初回装着が行われる。初回装着は、複数枚の回路基板44のうち、最初の回路基板44について行われる1回目の吸着装着動作による部品装着である。この吸着装着動作では、図12に示すように、回路基板44のコンベヤ、例えば、コンベヤ40への搬入検出に基づいて、4個の吸着ノズル100による電子回路部品の部品供給装置24からの取出しおよび部品撮像装置30による電子回路部品の撮像が行われ、撮像データが画像処理されて吸着ノズル100による電子回路部品の保持位置誤差および吸着ミスの検出が行われる(S52,S53)。保持位置誤差には、X軸方向およびY軸方向の位置誤差および回転位置誤差(電子回路部品の軸線まわりの位置誤差)が含まれる。本実施形態においては、基板搬入センサ56の信号がOFFからONに変わり、回路基板44の基板搬送方向において上流側の端部が検出されることにより、回路基板44のコンベヤ40への搬入が検出される。
その後、S54において電子回路部品へのフラックスの塗布が行われるか否かの判定が行われる。この判定は、電子回路部品の種類に基づいて行われる。電子回路部品がBGAあるいはフリップチップであって、電極にフラックスが塗布されるのであれば、装着ヘッド80はフラックス収容器124の上方へ移動させられ、フラックスの塗布が行われる(S55)。4個の吸着ノズル100は順次、部品吸着装着位置へ移動させられて下降させられ、電子回路部品の電極にフラックスが塗布される。
そして、コンベヤ40の基板保持装置22により保持された現基板44へ基準マーク撮像装置28が移動させられて基準マークの撮像を行い(S56,S57)、電子回路部品の現基板44への装着が行われる(S58)。基準マークの撮像は、基板保持装置22による回路基板44の保持が完了した状態で行われる。この保持の完了は、制御コンピュータ130による基板支持装置60等の制御状況によりわかる。また、撮像により得られる基準マークの位置に基づいて、シーケンスリストにおいて設定された部品装着部位の座標について座標変換が行われ、装着はシーケンスリストに設定された順に従って行われる。装着時には、吸着ノズル100による電子回路部品の保持位置誤差および2個の基準マークの撮像に基づいて得られる回路基板44の回転位置誤差が修正される。そして、フラグFのセットにより、1枚目の回路基板44について1回目の吸着装着動作が行われたことが表される(S59)。そのため、次にS51が実行されるとき、その判定結果がYESになってS52〜S59はスキップされる。
初回装着後、図11に示す部品装着ルーチンのS2が実行され、未装着数が装着ヘッド80が保持可能な全部の吸着ノズル100の数以上であるか否かの判定が行われる。未装着数には、装着ミスがあれば、それにより装着されていない電子回路部品の数も含まれる。ここでは装着ミスが発生せず、リカバリが不要であるとすれば、未装着数は1個であり、S2の判定結果がNOになってS3が実行され、現基板44が最後の回路基板44であるか否かの判定が行われる。後述するように、1枚の回路基板44ついて設定された全部の電子回路部品の装着が済めば、その装着が済んだ時点で装着が完了した回路基板44の枚数がカウンタによってカウントされるようにされており、このカウント値Cが設定数より1少ない数であれば、現基板44は最後の回路基板44であることとなる。
回路基板44が最後の1枚でなければS4が実行され、電子回路部品にフラックスの塗布が行われるのであれば、S5において次基板44がコンベヤ内で待機しているか否かの判定が行われる。ここでは未装着数がノズル数より少なく、また、現基板44が最後の回路基板ではなく、装着ヘッド80の全部の吸着ノズル100に電子回路部品を保持させ、現基板44への装着後、装着ヘッド80に残った電子回路部品を次基板44に装着させる。そのため、フラックスが塗布されたにもかかわらず、次基板44がなく、フラックスを塗布された電子回路部品が回路基板44に装着されずに放置される事態が発生しないようにされているのである。S5の判定は、本実施形態においては、次基板44の搬入が基板搬入センサ56によって検出されたか否かにより行われる。
次基板44がコンベヤ内で待機しているとすれば、S6〜S9が前記S53〜S55およびS58と同様に実行され、装着ヘッド80が2回目の吸着装着動作を行わされ、4個の吸着ノズル100の全部が電子回路部品を受け取らされ、そのうちの1個が現基板44に装着される。現基板44および次基板44には同種の電子回路部品が装着され、4個の吸着ノズル100は同じフィーダ70から電子回路部品を受け取るため、それら吸着ノズル100が保持した電子回路部品が現基板44および次基板44のいずれに装着されるかに関係なく、4個の吸着ノズル100は予め設定された順序で電子回路部品の取出しを行う。
そして、S10において現基板44について電子回路部品の装着が完了したか否かの判定が行われる。吸着ミスの有無は、部品撮像装置30による電子回路部品の撮像によってわかり、吸着ミスがあった吸着ノズル100は電子回路部品の装着動作を行わない。したがって、回路基板44に設定された部品装着部位の全部について吸着ノズル100による装着動作が行われたならば、設定数の電子回路部品が装着されたこととなる。装着はシーケンスリストに設定された順序に従って行われ、いずれの吸着ノズル100がいずれの装着部位に電子回路部品を装着するかは、吸着ノズル100の部品受取順および部品装着部位の装着順によって決まり、装着動作を行わない吸着ノズル100から、リカバリが必要な部品装着部位が特定され、RAMに設けられて記憶手段を構成するリカバリ部位メモリに記憶させられる。
現基板44について設定数の電子回路部品の装着が完了したとすれば、S11が実行され、カウンタのカウント値Cが1増加させられて部品装着が完了した回路基板44の枚数が数えられる。また、シーケンスの切換えが行われる。前述のように、2つのコンベヤ40,42においてそれぞれ電子回路部品が装着される回路基板44について作成されたシーケンスリストの内容は同じであり、ここでは基準マーク撮像装置28の基準マーク撮像のための基準マーク目標位置が、次基板44が搬送されるコンベヤ側について設定された位置とされる。
装着ヘッド80には電子回路部品が3個残っており、S12aの判定結果がYESになってS12bが実行され、次基板44の基板保持装置22による保持が完了したか否かの確認が行われる。保持が完了すればS13が実行され、基準マーク撮像装置28が次基板44へ移動させられ、その基準マークを撮像し、その撮像結果に基づいて部品装着部位の位置についての座標変換および装着ヘッド80に残っている3個の電子回路部品の次基板44への装着が行われる。この装着は、部品装着部位の位置について座標変換が行われたシーケンスリストに従って行われ、シーケンスリストにおいて設定された順序で行われる。S13の実行後、ルーチンの実行はS1に戻る。次基板44は現基板44となり、次にS51,S2〜S9が実行されることにより、装着ヘッド80が3回目の吸着装着動作を行わされ、装着ヘッド80が保持した4個の電子回路部品のうちの2個が2枚目の現基板44(先に次基板44であった回路基板44)の未装着部位に装着される。そして、S10〜S13が実行され、装着ヘッド80に残っている2個の電子回路部品が次基板44(3枚目の現基板44)に装着される。電子回路部品の装着が完了した回路基板44は装着モジュール10から搬出され、次に電子回路部品が装着される回路基板44が搬入される。
現基板44への電子回路部品の装着時に次基板44がコンベヤ内で待機させられていない場合にはS16が実行され、次基板44がコンベヤの上流側で待機しているか否かの判定が行われる。この判定は、最上流の装着モジュール10については、シャトルコンベヤの可動コンベヤが次基板44を搬送するコンベヤに対応する位置に位置するか否かにより行われる。これは、ライン制御装置136から制御コンピュータ130への情報供給によりわかる。最上流の装着モジュール10以外の装着モジュール10については、上流側に隣接する装着モジュール10の対応するコンベヤに回路基板44があるか否かにより行われる。この判定も、ライン制御装置136からの情報供給により行われる。次基板44がコンベヤの上流側で待機していれば、S17〜S24がS6,S8〜S13と同様に実行される。
次基板44がコンベヤの上流側にも待機していなければ、S27〜S31が実行される。この場合、装着ヘッド80は、現基板44についての未装着数に等しい数の電子回路部品のみを保持し、現基板44についての電子回路部品の装着のみを行わされる。そして、現基板44について電子回路部品の装着が完了すれば、部品装着済み基板の枚数のカウント、シーケンスの切換えが行われるとともに、フラグFがリセットされる。それにより、次に回路基板44がコンベヤ40,42のいずれかに搬入されて電子回路部品の装着が行われるとき、回路基板44の搬入検出に基づいて装着ヘッド80が吸着装着動作を開始させられる。
回路基板44への電子回路部品の装着が行われるにつれ、現基板44への電子回路部品の装着が完了し、次基板44へのシーケンスの切換えが行われたが、装着ヘッド80に電子回路部品が残っていない場合が生じる。この場合には、未装着数がノズル数より多いため、S2がYESになってS32以下のステップが実行される。S32〜S34はS53〜S55と同様に実行される。そして、S35において基準マークの撮像が済んでいるか否かの判定が行われる。ここでは未だ基準マークの撮像が済んでいないため、S35の判定結果がNOになってS37が実行され、基準マークの撮像,座標変換および電子回路部品の装着が行われる。この装着では現基板44に電子回路部品が4個装着され、電子回路部品の装着は完了しないため、S38の判定結果はNOになる。
S2の判定結果が、回路基板44について既に電子回路部品の装着が行われた状態でYESになった場合には、基準マークの撮像が既に行われており、S35の判定結果がYESになってS36が実行される。電子回路部品の装着により現基板44への電子回路部品の装着が完了すれば、S39において装着済みの回路基板44の枚数が数えられ、最後の回路基板44でなければ、シーケンスの切換えが行われる(S40,S41)。最後の回路基板44であれば、カウント値Cがクリアされ、フラグFがリセットされてルーチンの実行は終了する(S42)。
現基板44の電子回路部品の未装着数がノズル数より少ない状態で現基板44が最後の1枚になれば、S43〜S48が実行される。この場合、次基板44がないため、未装着数に等しい数の吸着ノズル100のみが電子回路部品を吸着させられ、現基板44に装着される。そして、現基板44についての電子回路部品の装着が完了すれば、カウント値CのクリアおよびフラグFのリセットが行われる。
装着ミスが生じ、リカバリが行われる場合を説明する。
例えば、1枚目の回路基板44への装着ヘッド80による1回目の吸着装着動作時に装着ミスがあった場合、リカバリの必要な電子回路部品の数を含めて未装着数がノズル数より少ないとすれば、S3以下のステップが実行され、現基板44について2回目の吸着装着動作が行われ、S9において現基板44への残りの電子回路部品の装着が行われるとき、まず、現基板44のリカバリ部位に電子回路部品が装着される。回路基板44が最後の1枚でない限り、4個の吸着ノズル100の全部が電子回路部品を保持させられ、リカバリ部位に装着される電子回路部品と、次基板44に装着される予定の電子回路部品とが一緒に保持,搬送され、リカバリが行われる。その後、シーケンスリストに従って残りの部品装着部位に電子回路部品が装着される。S19においても同様である。S9あるいはS19のリカバリを含む電子回路部品の装着により現基板44への電子回路部品の装着が完了すれば、S11〜S13あるいはS21〜S24が実行され、装着ヘッド80に残っている電子回路部品が次基板44に装着される。
リカバリが行われてもさらに装着ミスが発生し、現基板44についての電子回路部品の装着が完了しない場合がある。この場合、S10(S20)の判定結果がNOになる。S10(S20)が実行されるのはS2がNOの場合であり、リカバリ数を含む未装着数が全部の吸着ノズル110の数より少ない場合であるため、装着ヘッド80に電子回路部品が残っており、その電子回路部品がさらに発生した装着ミスによるリカバリ部位に装着される(S14,S15,S25,S26)。このリカバリ数が複数であり、装着ノズル80に残っている電子回路部品の数より多く、S15,S26においてリカバリ装着を行ってもなお、装着が完了せず、装着ヘッド80に電子回路部品が残っていない事態が生ずれば、S14(S25)の判定結果がNOになり、次のS2以下のステップの実行による吸着装着動作においてリカバリ装着が行われる。現基板44への前回の吸着装着動作時に装着ミスが生ぜず、未装着数が吸着ノズル数より少ない状態での吸着装着動作時に装着ミスが生じた場合にも同様である。
次基板44が待機しておらず、あるいは現基板44が最後の1枚であって、装着ヘッド80が未装着数のみ電子回路部品を保持する場合に、リカバリを含む電子回路部品の装着が行われても装着ミスが生じ、現基板44への電子回路部品の装着が完了しない場合にはS30あるいはS47がNOになり、再度、未装着数に等しい数の電子回路部品の吸着,装着が行われる(S27〜S29,S43〜S46)。
リカバリの必要な電子回路部品の数を含めて未装着数がノズル数以上である場合には、S36において現基板44への電子回路部品の装着が行われる際にリカバリが行われる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、制御コンピュータ130のS6,S9,S13,S17,S19,S24を実行する部分が装着制御部を構成し、S6,S9,S17,S19が、リカバリ部位に装着される電子回路部品を次基板44に装着される電子回路部品と一緒に装着ヘッド80に保持させ、リカバリ部位に装着させるリカバリ制御部を構成している。
なお、2つのコンベヤ40,42の一方のみが使用され、その一方において搬送され、基板保持装置22により保持される回路基板について電子回路部品の装着が行われる場合、現基板も次基板も同じレーンにおいて電子回路部品の装着が行われることとなる。そのため、現基板に設定された数の電子回路部品の装着が完了した後、現基板が搬出されるとともに次基板が搬入され、基板保持装置22により保持され、基準マークの撮像および電子回路部品の装着が行われる。この場合、シーケンスリストは1つ作成され、そのリストにおいて設定された部品装着部位のxy座標について座標変換が回路基板毎に行われ、電子回路部品の装着に使用される。回路基板44が最後の1枚でない限り、全部の吸着ノズル100が電子回路部品を保持させられ、同じコンベヤにより搬送される現基板44および次基板44について、電子回路部品の装着作業が現基板44と次基板44とに跨る時期に、それらに装着される電子回路部品が一緒に保持される。リカバリも、コンベヤ40,42が使用される場合と同様に行われる。
1つの電子回路部品装着機において回路基板に装着される複数の電子回路部品の種類が同じである場合を説明したが、複数種類の電子回路部品が装着される場合にも、装着ヘッドの吸着装着動作の回数低減効果が得られる。その実施形態を図13〜図15に基づいて説明する。なお、本実施形態においても回路基板の搬送には2つのコンベヤが使用されるものとする。本実施形態においては、図13に例示するようにシーケンスリストが作成される。電子回路部品の種類は2種類であり、回路基板には電子回路部品が9個装着され、1種類の吸着ノズルが2種類の電子回路部品を吸着し得、装着ヘッドは4個の吸着ノズルを保持するものとする。
図14に示すように、4個の吸着ノズルは装着順に電子回路部品を保持し、現基板に電子回路部品を装着する。現基板について未装着部品数がノズル数より少なくなれば、次基板用のシーケンスリストに従って、次基板に装着する電子回路部品が現基板に装着する電子回路部品を保持している吸着ノズル以外の吸着ノズルにより装着順に保持される。図13に示すシーケンスリストにおいて設定された電子回路部品を回路基板に装着するためには、従来では1枚の回路基板について3回の吸着装着動作を必要とし、2枚の回路基板については6回の吸着装着動作が行われるのに対し、本実施形態では吸着装着動作が5回で済む。
装着ミスが発生すれば、その装着ミスが発生した回の吸着装着動作の次に行われる吸着装着動作時にリカバリが行われる。未装着数が装着ヘッドが保持可能な全部の吸着ノズルの数より少なくても、回路基板に装着される電子回路部品の種類が複数であり、電子回路部品毎に使用(現基板と次基板とのいずれに装着されるか)が決まっていて、未決定吸着部品がないからである。例えば、図15(a)に示すように、1回目の吸着装着動作時に3番目に現基板に装着される電子回路部品aについて装着ミスが発生したとすれば、2回目の吸着装着動作時の1番目に電子回路部品aが吸着ノズルにより保持される。それにより、シーケンスリストに設定された電子回路部品の装着順序が1個ずれ、2番目の吸着ノズル以降において、1回目の吸着装着動作の続きから電子回路部品が保持され、装着される。また、2回目の吸着装着動作時に4番目に現基板に装着される電子回路部品bについて装着ミスが発生したとすれば、その装着ミスは3回目の吸着装着動作時にリカバリされる。そして、5回目の吸着装着動作により、2枚目の回路基板について設定された全部の電子回路部品の装着が完了する。
また、図15(b)に示すように、3回目の吸着装着動作の1番目であって、現基板に装着する9番目(最後)の電子回路部品bについて装着ミスが発生した場合、残りの3つの吸着ノズルが保持している電子回路部品は次基板に装着する電子回路部品aであるため、装着ヘッドが現に保持している電子回路部品ではリカバリを行うことができない。そのため、電子回路部品aは、現基板を搬送するコンベヤとは別のコンベヤにより搬送され、基板保持装置により保持された次基板に装着される。電子回路部品の装着が完了していない現基板はまだ搬出されず、次(4回目)の吸着装着動作時に、次基板に装着される電子回路部品a,bと共に、リカバリ装着を行うための電子回路部品bが吸着され、現基板に装着される。それにより、現基板への電子回路部品の装着が完了し、搬出される。
複数種類の電子回路部品を回路基板に装着する場合、電子回路部品の種類に応じて異なる種類の吸着ノズルが使用されてもよく、その場合にも吸着装着動作回数の低減を図ることができる。
なお、回路基板の搬送にコンベヤが1つ使用される際に、図15(b)に示すように、装着ヘッドが次基板用の電子回路部品を保持している状態で現基板に装着される電子回路部品についてミスが生じた場合、例えば、装着ヘッドは、次基板用の電子回路部品を保持したまま部品供給装置へ移動させられ、電子回路部品の装着が済んで空の吸着ノズルについて再度、電子回路部品を吸着させ、リカバリ装着を行わせる。そして、電子回路部品の装着が完了した現基板の搬出後、次基板が搬入され、装着ヘッドが保持した次基板用の電子回路部品が装着される。
回路基材は多面取り基材でもよい。
図16(a)に例示する多面取り基材たる多面取り基板150は、複数、例えば、6個の子基板152を有する。これら子基板152にはそれぞれ、基準マーク154および配線パターンが同様に形成され、6個の子基板152について予め設定された順序で電子回路部品が装着される。最後に電子回路部品が装着される子基板152について、未装着数が、装着ヘッドに保持された最大数の吸着ノズルの数より少なくなれば、最後の子基板152に装着する電子回路部品を保持する吸着ノズル以外の吸着ノズルが、次の多面取り基板150の子基板152に装着される電子回路部品を保持し、装着するようにされる。
6個の子基板152の一部について装着作業が禁止される場合がある。装着作業の禁止は、例えば、図16(b)に示すように、多面取り基板150の縁に設けられたスキップ判
断マーク156により表される。スキップ判断マーク156は子基板152と同数設けられて装着禁止表示部を構成する。装着禁止子基板152に対応するスキップ判断マーク156には作業者によって着色が施され、他のスキップ判断マーク156と区別されるようにされる。着色は、着色されたスキップ判断マーク156と着色されていないスキップ判断マーク156とのコントラストが大きく、基準マーク撮像装置による撮像に基づいて区別される色で行われる。多面取り基板150が基板保持装置によって保持された後、基準マーク撮像装置が移動させられて全部のスキップ判断マーク156を撮像し、その撮像結果に基づいて装着禁止子基板152の有無が判定される。装着禁止子基板152があれば、装着ヘッドの複数の吸着ノズルが保持した電子回路部品の一部は、装着禁止子基板152の前の子基板152に装着され、装着禁止子基板152はスキップされ、残りの一部は装着禁止子基板152の後の子基板152に装着される。装着禁止子基板152が最後の子基板の場合、装着ヘッドは装着禁止子基板152の直前の子基板152を最後の子基板として電子回路部品の吸着装着動作を行う。
電子回路部品装着システムは、図17に概略的に示すように、基板コンベヤ装置170が1レーンのコンベヤ172を備え、装着装置174が装着ヘッド176を2つ備えたものでもよい。2つの装着ヘッド176はそれぞれ、ヘッド移動装置(図示省略)により独立してX軸方向およびY軸方向に移動させられる。部品供給装置178は、コンベヤ172の搬送方向と直交する方向の両側に1つずつ設けられてもよく、一方のみに設けられてもよい。
現に電子回路部品の装着が行われている回路基板180への電子回路部品の未装着数が吸着ノズル182の数より少なくなれば、その回に吸着装着動作を行う装着ヘッド176は、未装着数分の電子回路部品を保持させられるとともに、コンベヤ172により搬送される別の回路基板180であって、次に電子回路部品が装着される回路基板180に装着すべき電子回路部品を一緒に保持させられ、次の回路基材180に装着するようにされる。本装着システムにおいてはシーケンスリストは1つであり、装着ヘッド176により、2枚の回路基板180に跨って電子回路部品の装着が行われるとき、次の回路基板180への電子回路部品の装着時にはシーケンスリストの最初に戻ってデータが使用される。但し、基準マーク撮像装置が基準マークの撮像を行う目標位置は全部の回路基板に共通であるが、シーケンスリストの部品装着部位の座標値の基準マークの撮像に基づく座標変換は、回路基板毎に行われる。
また、電子回路部品装着システムは、図18に概略的に示すように、基板コンベヤ装置200が1レーンのコンベヤ202を備え、装着装置204が装着ヘッド206を1つ備えたものでもよい。部品供給装置208は、例えば、コンベヤ202の幅方向の一方の側に設けられるが、両側に設けられてもよい。装着ヘッド206は、例えば、1レーンのコンベヤ202により搬送される1枚の回路基板210について未装着数が吸着ノズル212の数より少なくなったとき、コンベヤ202により搬送され、次に電子回路部品が装着される回路基板210に装着すべき1つ以上の電子回路部品を一緒に保持させられる。
なお、装着ミスには、吸着ミスのみならず、部品撮像装置による電子回路部品の撮像後、電子回路部品の搬送中に発生するミスや、装着動作時に発生するミスを原因とするミスが含まれてもよい。この場合、例えば、吸着ノズルが部品装着部位について装着動作を行う前に撮像装置によって回路基材の部品装着部位を撮像し、装着動作後、再度、撮像を行う。2回の撮像により、例えば、いずれも電子回路部品が撮像されていなければ、部品撮像装置による撮像後、電子回路部品が落下した可能性があることがわかり、装着動作後の撮像により電子回路部品が撮像されていても、その姿勢,方位,電極に対するずれ等により装着ミスの発生がわかり、リカバリが行われるようにすることができる。