JP2015155730A - 自動変速機の係合開始圧学習方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動変速機の油圧式摩擦係合装置の係合開始圧を学習する場合に、所定の学習精度を確保しつつ学習に必要な処理時間を短縮する。
【解決手段】係合開始判定が行われた際に油圧指令値と実油圧とが乖離していると判断できる場合(ステップS5の判断がYES)には、ステップS6で係合判定時間に応じて油圧指令値を補正して係合開始圧の学習値を算出する。このため、ステップ圧の大きさを変更して係合開始圧を求める学習処理(ステップS2〜S8)を繰り返す場合に比較して、係合判定時間に基づく補正により所定の学習精度を確保しつつ処理時間が短縮され、工場等で出荷前に学習させる場合でもタクトタイムが低減されて生産効率が向上する。
【選択図】図2
【解決手段】係合開始判定が行われた際に油圧指令値と実油圧とが乖離していると判断できる場合(ステップS5の判断がYES)には、ステップS6で係合判定時間に応じて油圧指令値を補正して係合開始圧の学習値を算出する。このため、ステップ圧の大きさを変更して係合開始圧を求める学習処理(ステップS2〜S8)を繰り返す場合に比較して、係合判定時間に基づく補正により所定の学習精度を確保しつつ処理時間が短縮され、工場等で出荷前に学習させる場合でもタクトタイムが低減されて生産効率が向上する。
【選択図】図2
Description
本発明は油圧式摩擦係合装置によってギヤ段が切り換えられる自動変速機に関し、特に、その油圧式摩擦係合装置の係合開始圧の学習方法に関するものである。
(a) 入力軸が駆動源に動力伝達可能に接続されるとともに、油圧式摩擦係合装置によってギヤ段が切り換えられる自動変速機に関し、(b) 前記油圧式摩擦係合装置が解放された状態で前記駆動源により前記入力軸を回転駆動しつつ、その油圧式摩擦係合装置の油圧指令値をステップ的に上昇させて、入力軸回転速度または駆動源トルクの変化から係合開始判定を行い、その係合開始判定が行われた時の前記油圧指令値に基づいて係合開始圧を学習する学習方法が知られている。特許文献1に記載の技術はその一例で、最初に大きなステップ幅で係合開始圧を求めた後、ステップ幅を小さくして再び係合開始圧を求めることにより、高い精度で係合開始圧を学習するようになっている。
しかしながら、このようにステップ幅を変更して係合開始圧を求める学習処理を繰り返す場合、処理時間が長くなるため、工場等で出荷前に学習させる場合、タクトタイムが長くなって生産効率が悪くなる。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、自動変速機の油圧式摩擦係合装置の係合開始圧を学習する場合に、所定の学習精度を確保しつつ学習に必要な処理時間を短縮することにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、(a) 入力軸が駆動源に動力伝達可能に接続されるとともに、油圧式摩擦係合装置によってギヤ段が切り換えられる自動変速機に関し、(b) 前記油圧式摩擦係合装置が解放された状態で前記駆動源により前記入力軸を回転駆動しつつ、その油圧式摩擦係合装置の油圧指令値をステップ的に上昇させて、入力軸回転速度または駆動源トルクの変化から係合開始判定を行い、その係合開始判定が行われた時の前記油圧指令値に基づいて係合開始圧を学習する学習方法において、(c) 前記係合開始判定が行われた時の前記油圧指令値と実際の油圧値との偏差に対応する物理量に基づいてその油圧指令値を補正することを特徴とする。
このような自動変速機の係合開始圧学習方法によれば、係合開始判定が行われた時の油圧指令値と実際の油圧値との偏差に対応する物理量に基づいて油圧指令値を補正するため、ステップ幅を変更して係合開始圧を求める学習処理を繰り返す場合に比較して、偏差に対応する物理量に基づく補正により所定の学習精度を確保しつつ処理時間が短縮され、工場等で出荷前に学習させる場合でもタクトタイムが低減されて生産効率が向上する。偏差に対応する物理量に基づいて油圧指令値を補正することから、その油圧指令値のステップ幅が比較的大きい場合でも所定の学習精度が得られ、処理時間を一層短縮することができる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用のハイブリッド駆動装置10を説明する概略構成図である。このハイブリッド駆動装置10は、主駆動源である第1駆動源12のトルクが出力部材として機能する出力軸14に伝達され、その出力軸14から差動歯車装置16を介して左右一対の駆動輪18にトルクが伝達されるようになっている。また、このハイブリッド駆動装置10には、走行のための駆動力を出力する力行制御およびエネルギーを回収するための回生制御を選択的に実行可能な第2モータジェネレータMG2が第2駆動源として設けられており、この第2モータジェネレータMG2は自動変速機22を介して上記出力軸14に連結されている。したがって、第2モータジェネレータMG2から出力軸14へ伝達されるトルクが、その自動変速機22で設定される変速比γs (=MG2の回転速度NMG2/出力軸14の回転速度Nout )に応じて増減されるようになっている。
第1駆動源12は、エンジン24と、第1モータジェネレータMG1と、これらエンジン24と第1モータジェネレータMG1との間でトルクを合成もしくは分配するための遊星歯車装置26とを主体として構成されている。上記エンジン24は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関であって、マイクロコンピュータを主体とするエンジン制御用の電子制御装置(E−ECU)28によって、スロットル弁開度や吸入空気量、燃料供給量、点火時期などの運転状態が電気的に制御されるように構成されている。上記電子制御装置28には、アクセルペダル27の操作量θacc を検出するアクセル操作量センサAS、ブレーキペダル29の操作の有無を検出するためのブレーキセンサBS等からの検出信号が供給されている。
上記第1モータジェネレータMG1は、たとえば同期電動機であって、駆動トルクを発生させる電動機としての機能と発電機としての機能とが選択的に得られるように構成され、インバータ30を介してバッテリー、コンデンサなどの蓄電装置32に接続されている。そして、マイクロコンピュータを主体とするモータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によってそのインバータ30が制御されることにより、第1モータジェネレータMG1の出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定されるようになっている。上記電子制御装置34には、シフトレバー35の操作位置を検出する操作位置センサSS等からの検出信号が供給されている。
前記遊星歯車装置26は、サンギヤS0と、そのサンギヤS0に対して同心円上に配置されたリングギヤR0と、これらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合うピニオンギヤP0を自転かつ公転自在に支持するキャリアC0とを三つの回転要素として備えて、公知の差動作用を生じるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。遊星歯車装置26は、エンジン24および自動変速機22と同心に設けられている。本実施例では、エンジン24のクランク軸36はダンパー38を介して遊星歯車装置26のキャリアC0に連結されている。クランク軸36には、前記自動変速機22の変速等に用いられる油圧を発生するメカニカル式油圧ポンプ46が連結されている。また、サンギヤS0には第1モータジェネレータMG1が連結され、リングギヤR0には出力軸14が連結されている。キャリアC0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能している。遊星歯車装置26および自動変速機22は中心線に対して略対称的に構成されているため、図1ではそれらの下半分が省略されている。
前記自動変速機22は、一組のラビニヨ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち、第1サンギヤS1および第2サンギヤS2を備えており、その第1サンギヤS1にショートピニオンP1が噛合するとともに、そのショートピニオンP1がこれより軸長の長いロングピニオンP2に噛合し、そのロングピニオンP2が前記各サンギヤS1、S2と同心円上に配置されたリングギヤR1に噛合している。上記各ピニオンP1、P2は、共通のキャリアC1によって自転かつ公転自在にそれぞれ保持されている。また、第2サンギヤS2がロングピニオンP2に噛合している。
前記第2モータジェネレータMG2は、前記モータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によりインバータ40を介して制御されることにより、電動機または発電機として機能させられ、アシスト用出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定される。自動変速機22の第2サンギヤS2には、入力軸として機能する連結シャフト41を介して第2モータジェネレータMG2が連結され、上記キャリアC1が出力軸14に連結されている。第1サンギヤS1とリングギヤR1とは、各ピニオンP1、P2と共にダブルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成しており、第2サンギヤS2とリングギヤR1とは、ロングピニオンP2と共にシングルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成している。
そして、自動変速機22には、第1サンギヤS1を選択的に固定するためにその第1サンギヤS1と変速機ハウジング42との間に設けられた第1ブレーキB1と、リングギヤR1を選択的に固定するためにそのリングギヤR1と変速機ハウジング42との間に設けられた第2ブレーキB2とが設けられている。これらのブレーキB1、B2は摩擦力によって係合力を生じるいわゆる摩擦係合装置であり、多板形式の係合装置あるいはバンド形式の係合装置を採用することができる。そして、これらのブレーキB1、B2は、油圧アクチュエータにより発生させられる係合油圧に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されているとともに、油圧アクチュエータの油圧低下に伴ってリターンスプリングにより解放(係合解除)されるようになっている。
上記自動変速機22は、第2サンギヤS2が入力要素として機能し、またキャリアC1が出力要素として機能し、第1ブレーキB1が係合させられると「1」より大きい変速比γshの高速ギヤ段Hが達成され、第1ブレーキB1に替えて第2ブレーキB2が係合させられると、その高速ギヤ段Hの変速比γshより大きい変速比γslの低速ギヤ段Lが設定されるように構成されている。これらのギヤ段HおよびLの間での変速は、車速Vや要求駆動力(もしくはアクセル操作量θacc )などの走行状態に基づいて実行される。より具体的には、各ギヤ段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された運転状態に応じていずれかのギヤ段を設定するように制御される。その制御を行うために、マイクロコンピュータを主体とした変速制御用の電子制御装置(T−ECU)44が設けられているとともに、その電子制御装置44によって制御される電磁式の油圧制御弁や切換弁等を有する油圧制御回路50を備えている。電子制御装置44には、作動油の温度Toil を検出するための油温センサTSから検出信号が供給されている。また、第2モータジェネレータMG2の回転速度NMG2を検出するMG2回転速度センサ43、車速Vに対応する出力軸14の回転速度Nout を検出する出力軸回転速度センサ45からも、それ等の回転速度を表す信号が供給される。第2モータジェネレータMG2の回転速度(MG2回転速度)NMG2は、自動変速機22の入力軸回転速度に相当し、第2モータジェネレータMG2のトルク(MG2トルク)TMG2は駆動源トルクに相当する。
変速制御用の電子制御装置44は、予め記憶された変速線図(変速マップ)から、車速Vおよび要求駆動力に基づいて自動変速機22のギヤ段を決定し、決定されたギヤ段に切り換えるように第1ブレーキB1および第2ブレーキB2を制御する他、機能的に学習モード切換部52および待機圧学習部54を備えている。待機圧学習部54は、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2を係合させる際に、作動油を速やかに供給するファーストフィルに続いてそれ等のブレーキB1、B2の油圧を係合開始圧よりも僅かに低い定圧待機圧に保持する待機圧指令値を学習するためのもので、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2についてそれぞれ学習処理を行う。学習モード切換部52は、工場などで上記待機圧学習部54が学習処理を実行する学習モードへ切り換えるためのもので、例えば車両停止時に作業者による特定のスイッチ操作などを検出して学習モードへ切り換える。
図2は、上記待機圧学習部54によって実行される信号処理の内容を具体的に説明するフローチャートで、学習モード切換部52によって学習モードへ切り換えられた場合に実行を開始する。図2のステップS2はステップ増圧工程で、ステップS3は係合開始判定工程で、ステップS4は物理量計測工程で、ステップS5は乖離判定工程で、ステップS6は補正工程であり、電子制御装置44は機能的にそれ等の工程を実行する機能部(手段)を備えている。図3は、図2のフローチャートに従って待機圧指令値の学習処理が行われた場合のMG2回転速度NMG2および油圧指令値Pk、実油圧Prの変化を示すタイムチャートの一例である。実油圧Prは、学習処理が行われるブレーキB1またはB2に供給される実際の係合油圧(推定値)である。
図2のステップS1では、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2が何れも解放された状態で、第2モータジェネレータMG2を予め定められた一定のモータトルクで力行制御する。負荷が一定であるため、第2モータジェネレータMG2は略一定の回転速度NMG2で回転させられる。ステップS2では、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の中、学習処理を行う側のブレーキ(以下、ブレーキBkという)の油圧指令値Pkを、予め定められた一定のステップ圧ΔPkだけ増大させる。図3の時間t1は、ステップS2で油圧指令値PkがΔPkだけステップ的に増大させられた時間で、実油圧Prは所定の応答遅れを持ってなました状態で上昇する。
次のステップS3では、実油圧Prによりリターンスプリング等に抗してブレーキBkが係合トルクを持ち始める係合開始圧に達したか否かを、その係合トルクによってMG2回転速度NMG2が変化(低下)し始めたか否かによって判断する。第2モータジェネレータMG2は一定トルクで回転しているため、ブレーキBkの係合に伴って負荷が発生すると、MG2回転速度NMG2は低下する。そして、MG2回転速度NMG2が変化し始めたらステップS4以下を実行するが、予め定められた応答遅れ時間Tdを経過しても変化しない場合は、ステップS2を繰り返し、油圧指令値Pkをステップ圧ΔPkずつ増大させる。応答遅れ時間Tdは、実油圧Prが油圧指令値Pkに達するまでの遅れ時間で、予め実験等によりステップ圧ΔPkに応じて各部の個体差等を考慮して余裕を持って定められる。図3は、ステップS2およびS3を何回か繰り返した後に、時間t2で係合開始判定が為されてステップS3の判断がYES(肯定)になり、ステップS4以下の実行が開始された場合である。
ステップS4では、ステップS2の油圧ステップ指令からステップS3で係合開始判定が為されるまでの係合判定時間Teを計測する。係合判定時間Teは、その係合開始判定時における油圧指令値Pkと実油圧Prとの偏差ΔPに対応する物理量で、偏差ΔPに対応して変化し、偏差ΔPが小さい程係合判定時間Teは長くなる。ステップS5では、その係合判定時間Teが目標時間帯Ttの下限値Ttmin よりも短いか否かを判断する。目標時間帯Ttは、実油圧Prが油圧指令値Pkと略一致する時間帯で、予め実験等によりステップ圧ΔPkに応じて各部の個体差等を考慮して定められる。例えば先ず細かいステップ幅で係合開始圧を確認しておき、大きなステップ幅でその係合開始圧を出力した場合に、ステップ圧出力から係合開始までの時間に対して所定の幅を持たせて設定される。前記応答遅れ時間Tdは、この目標時間帯Ttの最大値Ttmax である。そして、係合判定時間Teが目標時間帯Ttの下限値Ttmin よりも短い場合、すなわち油圧指令値Pkと実油圧Prとが乖離していると判断できる場合には、ステップS6で係合開始圧の学習値を算出し、係合判定時間Teが下限値Ttmin 以上の場合、すなわち油圧指令値Pkと実油圧Prとの乖離が略0と判断できる場合には、ステップS7で係合開始圧の学習値を算出する。
ステップS6では、係合判定時間Teをパラメータとして予め定められた補正係数マップから補正係数を求め、その補正係数をステップ圧ΔPkに掛け算してステップ開始圧Pk(i-1) に加算することにより、係合開始圧の学習値を算出する。図4は、補正係数マップの一例で、係合判定時間Teが長くなる程、すなわち油圧の偏差ΔPが小さくなる程1.0に近くなるように、補正係数が0〜1.0の範囲で設定されている。図4では、補正係数が係合判定時間Teに対してリニアに変化するように定められているが、実油圧Prの変化特性に基づいて非線形のマップを設定することもできる。また、実油圧Prの変化特性は作動油温度Toil によって異なるため、補正係数マップも作動油温度Toil をパラメータとして複数定められている。そして、次のステップS8では、このようにして算出された係合開始圧の学習値に基づいて、ブレーキBkを係合する際の待機圧指令値を設定する。図3のタイムチャートは、係合判定時間Teが目標時間帯Ttの下限値Ttmin よりも短く、上記ステップS6、S8に従って待機圧指令値が設定される場合である。
一方、係合判定時間Teが目標時間帯Ttの下限値Ttmin 以上の場合に実行するステップS7では、油圧の偏差ΔPが略0すなわち油圧指令値Pkと実油圧Prとの乖離が略0であるため、ステップ開始圧Pk(i-1) にステップ圧ΔPkをそのまま加算することにより、係合開始圧の学習値を算出する。そして、次のステップS8では、その係合開始圧の学習値に基づいて、ブレーキBkを係合する際の待機圧指令値を設定する。前記図4の補正係数マップは、係合判定時間Teが目標時間帯Ttの下限値Ttmin 以上の場合も含めて図示したもので、目標時間帯Ttよりも短い範囲では、その補正係数を用いてステップS6で学習値が算出されるが、補正係数が1.0である目標時間帯Ttの範囲では、ステップS7でステップ圧ΔPkを補正することなく学習値が算出される。
このように、本実施例の自動変速機22の係合開始圧学習方法によれば、ステップS3で係合開始判定が行われた際に油圧指令値Pkと実油圧Prとが乖離していると判断できる場合、すなわちステップS5の判断が肯定された場合には、ステップS6以下を実行し、油圧指令値Pkと実油圧Prとの偏差ΔPに対応する物理量、具体的には係合判定時間Teに応じて、その油圧指令値Pkを補正して係合開始圧の学習値を算出する。このため、ステップ圧ΔPkの大きさを変更して係合開始圧を求める学習処理(ステップS2〜S8)を繰り返す場合に比較して、油圧の偏差ΔPに対応する係合判定時間Teに基づく補正により所定の学習精度を確保しつつ処理時間が短縮され、工場等で出荷前に学習させる場合でもタクトタイムが低減されて生産効率が向上する。また、偏差ΔPに対応する係合判定時間Teに基づいて油圧指令値Pkを補正することから、その油圧指令値Pkのステップ圧ΔPkが比較的大きい場合でも所定の学習精度が得られ、処理時間を一層短縮することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図5は、前記待機圧学習部54によって実行される信号処理の別の例を説明するフローチャートで、前記図2のフローチャートに比較して、ステップS1の代わりにステップS1−1を実行し、ステップS3の代わりにステップS3−1を実行する点が相違する。ステップS3−1は係合開始判定工程である。また、図6は、図5のフローチャートに従って待機圧指令値の学習処理が行われた場合のMG2トルクTMG2および油圧指令値Pk、実油圧Prの変化を示すタイムチャートの一例で、時間t1〜t4はそれぞれ前記図3の時間t1〜t4に対応する。
図5のステップS1−1では、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2が何れも解放された状態で、第2モータジェネレータMG2が予め定められた一定の回転速度で回転するように力行トルク(MG2トルク)TMG2をフィードバック制御する。したがって、MG2回転速度NMG2は負荷の変化に拘らず略一定の回転速度に維持され、負荷の変化に応じてMG2トルクTMG2が変化する。ステップS2では、前記実施例と同様に学習処理を行うブレーキBkの油圧指令値Pkを、予め定められた一定のステップ圧ΔPkだけ増大させる。ステップS3−1では、実油圧Prによりリターンスプリング等に抗してブレーキBkが係合トルクを持ち始める係合開始圧に達したか否かを、その係合トルクによってMG2トルクTMG2が変化(上昇)し始めたか否かによって判断する。すなわち、ブレーキBkが係合トルクを持ち始めると、回転抵抗によってMG2回転速度NMG2が低下しようとするため、その回転低下を抑制するようにMG2トルクTMG2が上昇するのであり、このMG2トルクTMG2の変化から係合開始判定を行うことができる。そして、係合開始判定が為されたら、前記実施例と同様にステップS4以下を実行する。すなわち、本実施例は係合開始判定の方法が違うだけで、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。
図7は、前記待機圧学習部54によって実行される信号処理の更に別の例を説明するフローチャートで、前記図2のフローチャートに比較して、ステップS4の代わりにステップS4−1を実行し、ステップS5の代わりにステップS5−1を実行し、ステップS6の代わりにステップS6−1を実行する点が相違する。ステップS4−1は、前記油圧の偏差ΔPに対応する物理量としてMG2回転変化量ΔNMG2を計測する物理量計測工程で、ステップS5−1は乖離判定工程で、ステップS6−1は補正工程である。
図7のステップS4−1では、ステップS2の油圧ステップ指令から前記応答遅れ時間Tdに達するまでの間のMG2回転速度NMG2の変化量(MG2回転変化量)ΔNMG2(図3参照)を計測する。このMG2回転変化量ΔNMG2は、係合開始判定時における油圧指令値Pkと実油圧Prとの偏差ΔPに対応する物理量で、偏差ΔPに対応して変化し、偏差ΔPが小さい程MG2回転変化量ΔNMG2も小さくなる。ステップS5−1では、そのMG2回転変化量ΔNMG2が予め定められた目標変化量ΔNtの最大値ΔNtmax よりも大きいか否かを判断する。目標変化量ΔNtは、実油圧Prが油圧指令値Pkと略一致する領域で係合開始判定が為された場合のMG2回転変化量ΔNMG2で、略0であり、計測誤差等を考慮して予め定められる。例えば先ず細かいステップ幅で係合開始圧を確認しておき、大きなステップ幅でその係合開始圧を出力した場合に、係合開始時のMG2回転速度NMG2の変化量ΔNMG2に対して所定の幅を持たせて設定される。そして、MG2回転変化量ΔNMG2が目標変化量ΔNtの最大値ΔNtmax よりも大きい場合、すなわち油圧指令値Pkと実油圧Prとが乖離していると判断できる場合には、ステップS6−1で係合開始圧の学習値を算出し、MG2回転変化量ΔNMG2が最大値ΔNtmax 以下の場合、すなわち油圧指令値Pkと実油圧Prとの乖離が略0と判断できる場合には、前記ステップS7で係合開始圧の学習値を算出する。
ステップS6−1では、MG2回転変化量ΔNMG2をパラメータとして予め定められた補正係数マップから補正係数を求め、その補正係数をステップ圧ΔPkに掛け算してステップ開始圧Pk(i-1) に加算することにより、係合開始圧の学習値を算出する。図8は、補正係数マップの一例で、MG2回転変化量ΔNMG2が小さくなる程、すなわち油圧の偏差ΔPが小さくなる程1.0に近くなるように、補正係数が0〜1.0の範囲で設定されている。図8では、補正係数がMG2回転変化量ΔNMG2に対してリニアに変化するように定められているが、実油圧Prの変化特性に基づいて非線形のマップを設定することもできる。また、実油圧Prの変化特性は作動油温度Toil によって異なるため、補正係数マップも作動油温度Toil をパラメータとして複数定められている。
本実施例では、係合開始判定時における油圧指令値Pkと実油圧Prとの偏差ΔPに対応する物理量として、MG2回転速度NMG2の変化量ΔNMG2を計測し、そのMG2回転変化量ΔNMG2に基づいて油圧指令値Pkを補正するようになっているが、図8の補正係数マップを適当に定めることにより、係合開始圧を適切に学習することが可能で、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
なお、上記実施例では、MG2回転速度NMG2の変化に基づいて係合開始判定が行われる場合に、そのMG2回転速度NMG2の変化量ΔNMG2に基づいて油圧指令値Pkを補正しているが、図5および図6の実施例のようにMG2トルクTMG2の変化に基づいて係合開始判定が行われる場合には、油圧の偏差ΔPに対応する物理量として、ステップS2の油圧ステップ指令から応答遅れ時間Tdに達するまでの間のMG2トルクTMG2の変化量(MG2トルク変化量)ΔTMG2(図6参照)を計測し、そのMG2トルク変化量ΔTMG2に基づいて図8と同様の補正係数マップを用いて油圧指令値Pkを補正することもできる。
また、実油圧Prを高い精度で測定できる場合には、係合開始判定時における油圧指令値Pkと実油圧Prとの偏差ΔPを計測して、その偏差ΔPに基づいて図8と同様の補正係数マップを用いて油圧指令値Pkを補正することもできる。
また、前記実施例では第1ブレーキB1および第2ブレーキB2によって上下2速のギヤ段H、Lが成立させられる自動変速機22について説明したが、油圧式摩擦係合装置として複数のブレーキおよびクラッチを有する3速以上の変速が可能な自動変速機に適用することもできる。遊星歯車式の変速機だけでなく、一対の入力クラッチを切り換えて変速する2軸噛合式変速機等にも適用できる。
また、前記実施例では自動変速機22の駆動源として第2モータジェネレータMG2が用いられていたが、電動モータとしてのみ用いられる回転機であっても良いし、エンジン等の他の駆動源によって駆動される自動変速機に適用することもできる。自動変速機22と駆動源との間に減速ギヤ等が設けられても良い。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
22:自動変速機 41:連結シャフト(入力軸) 43:MG2回転速度センサ 44:変速制御用の電子制御装置 54:待機圧学習部 MG2:第2モータジェネレータ(駆動源) NMG2:MG2回転速度(入力軸回転速度) TMG2:MG2トルク(駆動源トルク) B1:第1ブレーキ(油圧式摩擦係合装置) B2:第2ブレーキ(油圧式摩擦係合装置) Pk:油圧指令値 ΔPk:ステップ圧 Pr:実油圧 ΔP:偏差 Te:係合判定時間(物理量) ΔNMG2:MG2回転変化量(物理量) ΔTMG2:MG2トルク変化量(物理量)
Claims (1)
- 入力軸が駆動源に動力伝達可能に接続されるとともに、油圧式摩擦係合装置によってギヤ段が切り換えられる自動変速機に関し、
前記油圧式摩擦係合装置が解放された状態で前記駆動源により前記入力軸を回転駆動しつつ、該油圧式摩擦係合装置の油圧指令値をステップ的に上昇させて、入力軸回転速度または駆動源トルクの変化から係合開始判定を行い、該係合開始判定が行われた時の前記油圧指令値に基づいて係合開始圧を学習する学習方法において、
前記係合開始判定が行われた時の前記油圧指令値と実際の油圧値との偏差に対応する物理量に基づいて該油圧指令値を補正する
ことを特徴とする自動変速機の係合開始圧学習方法。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014031157A Pending JP2015155730A (ja) | 2014-02-20 | 2014-02-20 | 自動変速機の係合開始圧学習方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015155730A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110740912A (zh) * | 2017-07-18 | 2020-01-31 | 爱信艾达株式会社 | 控制装置 |
-
2014
- 2014-02-20 JP JP2014031157A patent/JP2015155730A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110740912A (zh) * | 2017-07-18 | 2020-01-31 | 爱信艾达株式会社 | 控制装置 |
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