JP2015151926A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】流体を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機の昇圧性能の低下を抑制する。
【解決手段】適用されるガスインジェクションサイクルのCOPを極大値に近づけるために、可動スクロール11の可動側基板部11aから軸方向一端側に突出する渦巻き状の高段側可動歯部11bの軸方向突出量HHを、軸方向一端側に突出する渦巻き状の低段側可動歯部11bの軸方向突出量HLよりも小さく設定する。さらに、低段側可動歯部11bの径方向厚み寸法TLを、高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THよりも小さく設定することによって、可動スクロール11の低段側重量WLと高段側重量WHとを同等の値とする。これにより、可動スクロール11全体としての重心を可動側基板部11aの略中央部に位置付けて、可動スクロール11の傾斜を抑制する。
【選択図】図5

Description

本発明は、流体を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機に関する。
従来、特許文献1に、いわゆるガスインジェクションサイクル(エコノマイザ式冷凍サイクル)に適用される圧縮機として、低段側のスクロール圧縮機構(以下、低段側圧縮機構と記載する。)、および高段側のスクロール圧縮機構(以下、高段側圧縮機構と記載する。)を備え、これらの複数の圧縮機構にて冷媒(流体)を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機が開示されている。
この特許文献1のスクロール型圧縮機のように、複数の圧縮機構を備える圧縮機では、圧縮機全体としての体格が大型化してしまいやすい。そこで、特許文献1のスクロール型圧縮機では、平板状の基板部の軸方向両側に渦巻き状の歯部を設けた可動スクロールを採用し、この可動スクロールの軸方向両側に低段側圧縮機構および高段側圧縮機構を近接配置することによって、圧縮機全体としての体格の小型化を図っている。
特許第3708573号公報
ところで、特許文献1のように、ガスインジェクションサイクルに適用されて冷媒を二段階に昇圧させるスクロール型圧縮機では、ガスインジェクションサイクルの成績係数(COP)を極大値に近づけるために、高段側圧縮機構の吸入容積を低段側圧縮機構の吸入容積よりも小さく設定しておく必要がある。
そこで、特許文献1のスクロール型圧縮機では、可動スクロールのうち高段側圧縮機構を構成する高段側可動歯部の軸方向突出量を、可動スクロールのうち低段側圧縮機構を構成する低段側可動歯部の軸方向突出量よりも小さくすることによって、高段側圧縮機構の吸入容積を低段側圧縮機構の吸入容積よりも小さくしている。なお、吸入容積とは、圧縮機構が流体の圧縮を開始する際の圧縮室の最大容積である。
ところが、高段側可動歯部の軸方向突出量を低段側可動歯部の軸方向突出量よりも小さくすると、可動スクロールに回転駆動力を伝達する回転軸に垂直な径方向から見たときに、可動スクロール全体としての重心が、基板部の中央部よりも低段側圧縮機構側にずれてしまいやすい。また、一般的に、スクロール型圧縮機の回転軸には偏心部が設けられ、この偏心部は、基板部の中心側に設けられた穴部に回転可能に嵌め込まれている。
このため、可動スクロールの重心点が基板部の中央部からずれていると、可動スクロールを固定スクロールに対して公転運動させた際に、遠心力の作用によって可動スクロールが回転軸に対して傾斜してしまいやすい。
さらに、可動スクロールが回転軸に対して傾斜した状態で回転すると、各圧縮機構における圧縮室の気密性が悪化して、圧縮機の昇圧性能を低下させてしまう原因となる。これに加えて、可動スクロールが固定スクロール等に片当たりすることによって、各圧縮機構の摩耗や焼き付きを生じさせてしまうおそれもある。
本発明では、上記点に鑑み、流体を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機の昇圧性能の低下を抑制することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明では、回転駆動源(20)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状に形成された可動側基板部(11a)、可動側基板部(11a)から回転軸(25)の軸方向一端側へ突出する渦巻き状の低段側可動歯部(11b)、および可動側基板部(11a)から回転軸(25)の軸方向他端側へ突出する渦巻き状の高段側可動歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、平板状の低段側基板部(12a)、および低段側基板部(12a)から回転軸(25)の軸方向へ突出して低段側可動歯部(11b)と噛み合う渦巻き状の低段側固定歯部(12b)を有する低段側固定スクロール(12)と、平板状の高段側基板部(13a)、および高段側基板部(13a)から回転軸(25)の軸方向へ突出して高段側可動歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の高段側固定歯部(13b)を有する高段側固定スクロール(13)とを備え、
低段側可動歯部(11b)と低段側固定歯部(12b)との間に形成される空間は、可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して外部から吸入した流体を昇圧させる低段側圧縮室(VL)を形成しており、高段側可動歯部(11c)と高段側固定歯部(13b)との間に形成される空間は、可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して低段側圧縮室(VL)にて昇圧された流体を昇圧させる高段側圧縮室(VH)を形成しており、高段側可動歯部(11c)の軸方向突出量(HH)は、低段側可動歯部(11b)の軸方向突出量(HL)よりも小さくなっており、
回転軸(25)に垂直な径方向から見たときに、可動スクロール(11)のうち可動側基板部(11a)の中央部から低段側可動歯部(11b)側の低段側重量(WL)と可動側基板部(11a)の中央部から高段側可動歯部(11c)側の高段側重量(WH)が同等となっているスクロール型圧縮機を特徴とする。
これによれば、低段側重量(WL)と高段側重量(WH)が同等となっているので、回転軸(25)に垂直な径方向から見たときに、可動スクロール(11)全体としての重心が、可動側基板部(11a)の略中心側の略中央部に位置付けられる。従って、可動スクロール(11)を公転運動させた際に、可動スクロール(11)が回転軸(25)に対して傾斜しにくい構成とすることができる。
その結果、可動スクロール(11)が回転軸(25)に対して傾斜してしまうことによる低段側圧縮室(VL)および高段側圧縮室(VH)の気密性の悪化を抑制することができる。さらに、可動スクロール(11)が低段側固定スクロール(12)および高段側固定スクロール(13)等に片当たりすることによる摩耗や焼き付きを抑制することができる。
すなわち、本請求項に記載の発明によれば、流体を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機の昇圧性能の低下を抑制することができる。
なお、本請求項における、低段側重量(WL)と高段側重量(WH)が同等となっているとは、低段側重量(WL)と高段側重量(WH)が完全に一致していることのみを意味するものではなく、製造上の誤差等により僅かに異なっていることを含む意味である。つまり、可動スクロール(11)が回転軸(25)に対して傾斜してしまうことによるスクロール型圧縮機の昇圧性能の低下を抑制可能な程度に、低段側重量(WL)および高段側重量(WH)が一致していることを意味している。
具体的には、低段側可動歯部(11b)の径方向厚み寸法(TL)が、高段側可動歯部(11c)の径方向厚み寸法(TH)よりも小さくなっていることによって、低段側重量(WL)と高段側重量(WH)が同等となっていてもよい。
さらに、上記特徴のスクロール型圧縮機において、回転軸(25)が、可動側基板部(11a)を貫通していてもよい。回転軸(25)が可動側基板部(11a)を貫通している構成では、可動スクロール(11)が回転軸(25)に対して傾斜しやすいので、低段側重量(WL)と高段側重量(WH)が同等となっていることによる昇圧性能抑制効果を、効果的に得ることができる。
なお、この欄および特許請求の範囲に記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
第1実施形態の冷凍サイクルの全体構成図である。 第1実施形態の圧縮機の軸方向断面図である。 図2のIII−III断面図である。 図2のIV−IV断面図である。 第1実施形態の可動スクロールの軸方向断面図である。 第2実施形態の可動スクロールおよびオルダムリングの外観斜視図である。
(第1実施形態)
図1〜図5を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の多段昇圧式のスクロール型圧縮機1(以下、単に圧縮機1と記載する。)は、図1の全体構成図に示す冷凍サイクル100に適用されている。この冷凍サイクル100は、空調装置において、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する機能を果たす。
具体的には、本実施形態の冷凍サイクル100は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機1と、圧縮機1から吐出された高圧冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する放熱器2と、放熱器2から流出した冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側膨張弁3と、高段側膨張弁3にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離器4と、気液分離器4にて分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側膨張弁5と、低段側膨張弁5にて減圧された低圧冷媒と外気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させる蒸発器6とを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。
さらに、本実施形態の冷凍サイクル100では、気液分離器4にて分離された気相冷媒を圧縮機1の中間圧吸入ポート32aへ吸入させ、蒸発器6から流出した低圧冷媒を圧縮機1の低圧吸入ポート12cへ吸入させている。つまり、本実施形態の冷凍サイクル100は、サイクル内で生成された(具体的には、高段側膨張弁3にて減圧された)中間圧冷媒を圧縮機1にて圧縮過程の中間圧冷媒に合流させるガスインジェクションサイクルとして構成されている。
また、この冷凍サイクル100では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機1内の摺動部位を潤滑するための冷凍機油(オイル)が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
次に、図2〜図5を用いて、本実施形態の圧縮機1の詳細構成について説明する。なお、図2〜図4の軸方向断面図に示す、上下の各矢印は、圧縮機1を冷凍サイクル100に搭載した状態における上下の各方向を示している。
圧縮機1は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮機構部10、回転駆動力を出力する回転駆動源である電動機部20、電動機部20から出力された回転駆動力を圧縮機構部10へ伝達する回転軸であるシャフト25等を有し、これらを圧縮機1の外殻を形成するハウジング30を介して一体化することによって構成された電動圧縮機である。また、この圧縮機1は、図2に示すように、冷凍サイクル100に搭載した状態で、シャフト25が略水平方向に延びる、いわゆる横置きタイプとして構成されている。
まず、ハウジング30は、水平方向に延びる筒状部材31、および筒状部材31の軸方向一端側(図2では、圧縮機構部10の反対側)の開口部を閉塞するモータ側蓋部材32を有している。さらに、筒状部材31の軸方向他端側(図2では、圧縮機構部10側)の開口部は、後述する圧縮機構部10の低段側固定スクロール12によって閉塞されている。
この筒状部材31とモータ側蓋部材32との当接部、筒状部材31と低段側固定スクロール12との当接部等には、Oリングあるいはガスケットからなるシール部材が配置されており、これらの当接部から冷媒が漏れることはない。これにより、筒状部材31の内周側には、電動機部20を収容する収容室VAが形成される。さらに、モータ側蓋部材32には、気液分離器4にて分離された気相冷媒を、この収容室VAの内部へ流入させる中間圧吸入ポート32aが形成されている。
電動機部20は、固定子をなすステータ21および回転子をなすロータ22を有している。ステータ21は、磁性材からなるステータコア21aおよびステータコア21aに巻き付けられたステータコイル21bによって構成されている。そして、ステータコイル21bに電力を供給することによって、ロータ22を回転させる回転磁界を発生させる。
ロータ22は、永久磁石を有して構成されており、ステータ21の内周側に配置されている。このロータ22は回転軸方向に延びる円筒状に形成され、さらに、ロータ22の軸中心穴には、回転軸方向に延びるシャフト25が固定されている。従って、ステータコイル21bに電力が供給されて回転磁界が発生すると、ロータ22およびシャフト25が一体となって回転する。
なお、本実施形態では、シャフト25およびロータ22に形成されたキー溝にキー24を嵌め込むことによって、シャフト25とロータ22とを固定しているが、もちろん圧入等の手段によってシャフト25とロータ22とを固定してもよい。
シャフト25は、ロータ22よりも軸方向長さが長く形成されており、シャフト25の軸方向一端側の端部は、モータ側蓋部材32の中心部に配置された電動機部側軸受部25aによって回転可能に支持されている。一方、シャフト25の軸方向他端側は、後述する圧縮機構部10の可動スクロール11を貫通するように延びて、後述する圧縮機構部10の高段側固定スクロール13の中心部に配置された圧縮機構部側軸受部25bによって回転可能に支持されている。
また、シャフト25の内部には、冷凍機油を摺動部位へ導くための給油通路25cが形成されている。そして、この給油通路25cを介して、シャフト25と電動機部側軸受部25aとの摺動部位、およびシャフト25と圧縮機構部側軸受部25bとの摺動部位に冷凍機油が供給される。なお、電動機部側軸受部25aおよび圧縮機構部側軸受部25bとしては、転がり軸受け、すべり軸受けのいずれを採用してもよい。
次に、圧縮機構部10は、シャフト25から伝達される回転駆動力によって公転運動する可動スクロール11、可動スクロール11の低段側可動歯部11bと噛み合う低段側固定歯部12bが形成された低段側固定スクロール12、および可動スクロール11の高段側可動歯部11cと噛み合う高段側固定歯部13bが形成された高段側固定スクロール13を有して構成されている。
より具体的には、可動スクロール11は、シャフト25の軸方向に垂直に広がる略円形平板状の可動側基板部11aを有し、この可動側基板部11aには、軸方向一端側(図2では、電動機部20側)へ向かって突出する渦巻き状の低段側可動歯部11b、および可動側基板部11aから軸方向他端側(図2では、電動機部20の反対側)へ向かって突出する渦巻き状の高段側可動歯部11cが形成されている。
また、可動スクロール11の中心部には、可動側基板部11aの表裏を貫通する貫通穴が形成されており、この貫通穴には、シャフト25に形成されて中心軸に対して偏心した偏心部25dが摺動可能に挿入されている。
低段側固定スクロール12は、可動スクロール11よりも軸方向一端側に配置され、シャフト25の軸方向に垂直に広がる略円形平板状の低段側基板部12aを有し、この低段側基板部12aには、軸方向他端側へ突出して低段側可動歯部11bに噛み合う渦巻き状の低段側固定歯部12bが形成されている。より詳細には、低段側固定歯部12bは、低段側可動歯部11bが嵌め込まれる渦巻き状の溝部の側面によって形成されている。
また、低段側固定スクロール12の中心部には、低段側基板部12aの表裏を貫通する貫通穴が形成されており、この貫通穴には、シャフト25のうち偏心部25dよりも軸方向一端側の部位が挿入されている。
高段側固定スクロール13は、可動スクロール11よりも軸方向他端側に配置され、シャフト25の軸方向に垂直に広がる平板状の高段側基板部13aを有し、この高段側基板部13aには、軸方向一端側へ突出して高段側可動歯部11cに噛み合う渦巻き状の高段側固定歯部13bが形成されている。より詳細には、高段側固定歯部13bは、高段側可動歯部11cが嵌め込まれる渦巻き状の溝部の側面によって形成されている。
また、高段側固定スクロール13の中心部には、前述した圧縮機構部側軸受部25bが配置されており、シャフト25のうち偏心部25dよりも軸方向他端側の端部が回転可能に支持されている。
つまり、本実施形態の圧縮機構部10では、シャフト25の一端側から他端側へ向かって(図2では、電動機部20側から圧縮機構部10側へ向かって)、低段側固定スクロール12、可動スクロール11および高段側固定スクロール13が、この順で配置されている。さらに、シャフト25は、低段側固定スクロール12および可動スクロール11の中心部の表裏を貫通して配置されている。
また、本実施形態では、可動スクロール11と高段側固定スクロール13との間に、可動スクロール11がシャフト25の偏心部25d周りに自転することを防止する自転防止機構26が設けられている。なお、図2では、図示の明確化のため、自転防止機構26を1つのみ図示しているが、自転防止機構26は、複数設けられていてもよい。
より具体的には、本実施形態では、自転防止機構26として、軸方向に延びるピン部材26a、および軸方向から見た断面が円形状に形成されてピン部材26aの変位を規制するリング穴26bによって形成されたピン−ホール式のものを採用している。さらに、ピン部材26aは、可動スクロール11の可動側基板部11aのうち高段側可動歯部11cが配置された面に圧入等の手段によって固定されており、リング穴26bは、高段側固定スクロール13側に形成されている。
そして、この自転防止機構26が設けられていることによって、シャフト25が回転した際に、可動スクロール11は偏心部25d周りに自転することなく、シャフト25の回転中心を公転中心として低段側固定スクロール12および高段側固定スクロール13に対して公転運動する。
これにより、本実施形態の圧縮機構部10には、2つのスクロール圧縮機構が構成される。すなわち、可動スクロール11および低段側固定スクロール12によって、低段側のスクロール圧縮機構(低段側圧縮機構)が構成され、可動スクロール11と高段側固定スクロール13によって、高段側のスクロール圧縮機構(高段側圧縮機構)が構成される。
より詳細には、低段側圧縮機構では、可動スクロール11の低段側可動歯部11bと低段側固定スクロール12の低段側固定歯部12bが噛み合って、複数箇所で接触することにより、図3に示すように、回転軸方向から見たときに三日月形状の低段側圧縮空間が形成される。この低段側圧縮空間は、可動スクロール11が公転運動することによって容積変化して、低圧冷媒を中間圧冷媒となるまで圧縮する低段側圧縮室VLを形成している。
また、本実施形態では、図3に示すように、低段側可動歯部11bの巻き数を1としている。ここで、「巻き数」とは、回転軸方向から見たときに、歯部のうち圧縮空間(圧縮室)を形成して昇圧に寄与する部分の範囲を示しており、一周(360°)で巻き数1となる。
つまり、図3では、一周(360°)よりも僅かに大きな範囲を占めるように巻かれた低段側可動歯部11bが図示されているものの、この低段側可動歯部11bでは、実際に圧縮空間(圧縮室)を形成して昇圧に寄与する部分が形成される範囲の巻き数が1になっている。さらに、「巻き数」は、「ラップ数」と呼ばれることもある。
低段側固定スクロール12の外周部には、図2に示すように、蒸発器6から流出した低圧冷媒を吸入する低圧吸入ポート12cが形成されている。この低圧吸入ポート12cは、最大容積となった低段側圧縮空間と連通するように配置されている。
さらに、低段側固定スクロール12を軸方向から見たときに、低段側固定スクロール12のうち、シャフト25よりも外周側であって、低段側可動歯部11bの最内周部(巻き始め部)よりも内周側の部位には、低段側圧縮室VLにて圧縮された中間圧冷媒をハウジング30の筒状部材31の内周側に形成された収容室VAへ吐出させる中間圧吐出穴12dが形成されている。
従って、収容室VAは、前述した電動機部20を収容する空間としての機能を果たすとともに、中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒の圧力脈動を吸収するバッファ空間としての機能を果たす。さらに、この中間圧吐出穴12dの出口部には、収容室VA側から低段側圧縮室VL側への冷媒の逆流を防止する逆止弁(吐出弁)としてのリード弁が配置されている。
一方、高段側圧縮機構では、可動スクロール11の高段側可動歯部11cと高段側固定スクロール13の高段側固定歯部13bが噛み合って、複数箇所で接触することにより、図4に示すように、回転軸方向から見たときに三日月形状の高段側圧縮空間が形成される。この高段側圧縮空間は、可動スクロール11が公転運動することによって容積変化して、中間圧冷媒を高圧冷媒となるまで圧縮する高段側圧縮室VHを形成している。
また、本実施形態では、図4に示すように、高段側可動歯部11cの巻き数を、低段側可動歯部11b同様に1としている。
さらに、本実施形態の低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cは、シャフト25の軸方向から見たときに、互いに同位相となるように配置された場合よりも(すなわち、軸方向から見たときに、それぞれの歯部11b、11cの内周側の巻き始め部と外周側の巻き終わり部が互いに重合するように配置された場合よりも)、低段側圧縮室VL内の冷媒の圧力変動によってシャフト25に生じるトルク変動と高段側圧縮室VH内の冷媒の圧力変動によってシャフト25に生じるトルク変動とを合算した合計トルク変動の変動幅が縮小するように配置されている。
換言すると、低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cは、合計トルク変動の変動幅が最小値に近づくように、回転軸の軸方向から見たときに、中心軸に対して周方向にずれて、異なる位相で配置されている。より具体的には、図3、図4の断面図から明らかなように、低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cは、中心軸に対して周方向に180°ずれて配置されている。
また、本実施形態では、図5に示すように、高段側可動歯部11cおよび高段側固定歯部13bの軸方向突出量HH(各基板部からの突出量)が、低段側可動歯部11bおよび低段側固定歯部12bの軸方向突出量HL(各基板部からの突出量)よりも小さく形成されている。これにより、冷凍サイクル100の成績係数(COP)が極大値に近づくように、高段側圧縮室VHの吸入容積と低段側圧縮室VLの吸入容積との容積比が調整されている。
さらに、本実施形態では、図5に示すように、低段側可動歯部11bの径方向厚み寸法TLが、高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THよりも小さくなっている。これにより、可動スクロール11のうち可動側基板部11aの中央部から低段側可動歯部11b側の低段側重量WLと可動側基板部11aの中央部から高段側可動歯部11c側の高段側重量WHが略同等となっている。
より詳細には、低段側重量WLとは、図5の一点鎖線で示す中央部よりも低段側可動歯部11b側(紙面左側)の部位の重量であり、高段側重量WHとは、図5の一点鎖線で示す中央部よりも高段側可動歯部11c側(紙面右側)の部位の重量である。
また、図2、図3に示すように、高段側固定スクロール13の外周部には、低段側固定スクロール12の低段側基板部12aの表裏を貫通するように形成された中間圧冷媒通路12fを介して、収容室VA内の中間圧冷媒を吸入する中間圧吸入ポート13cが形成されている。この中間圧吸入ポート13cは、最大容積となった高段側圧縮空間と連通するように配置されている。
さらに、高段側固定スクロール13を軸方向から見たときに、高段側固定スクロール13のうち、シャフト25よりも外周側であって、高段側固定歯部13bの最内周部(巻き始め部)よりも内周側の部位には、高段側圧縮室VHにて圧縮された高圧冷媒を吐出室VBへ吐出させる高圧吐出穴13dが形成されている。この高圧吐出穴13dの出口部には、高段側圧縮室VHへの冷媒の逆流を防止する逆止弁(吐出弁)としてのリード弁が配置されている。
吐出室VBは、高段側固定スクロール13の軸方向他端側(図2では、可動スクロール11の反対側)と、高段側固定スクロール13の軸方向他端側に配置された圧縮機構側蓋部材33との隙間に形成されている。圧縮機構側蓋部材33は、ハウジング30を構成する構成部材の1つである。さらに、圧縮機構側蓋部材33には、圧縮された高圧冷媒から冷凍機油を分離するオイルセパレータ40が設けられている。
オイルセパレータ40は、圧縮機構側蓋部材33内に形成された鉛直方向(上下方向)に延びる円柱状空間VCの内部に、円柱状空間よりも小径のパイプ部材40aを配置することによって構成されている。そして、このオイルセパレータ40では、吐出室VBから円柱状空間VC内へ流入した冷凍機油を含む高圧冷媒を、パイプ部材40aの周囲で旋回させ、遠心力の作用によって冷媒と冷凍機油とを分離している。
オイルセパレータ40にて分離された冷凍機油は、圧縮機構側蓋部材33、固定スクロール22等に形成されたオイル通路40bを介して、圧縮機構20および電動モータ30の摺動部へ導かれる。一方、オイルセパレータ40にて分離された高圧冷媒は、圧縮機構側蓋部材33に形成されて高圧冷媒をハウジング30の放熱器2の冷媒入口側へ吐出する高圧吐出ポート33aへ導かれる。
次に、上記構成における本実施形態の圧縮機1および冷凍サイクル100の作動を説明する。圧縮機1の電動機部20に電力が供給されてロータ22およびシャフト25が回転すると、可動スクロール11が低段側固定スクロール12および高段側固定スクロール13に対して公転運動(旋回)する。
これにより、低段側圧縮機構の低段側圧縮室VLおよび高段側圧縮機構の高段側圧縮室VHが、外周側から中心側へ容積を縮小させながら回転移動する。まず、低段側圧縮機構では、低段側固定スクロール12に形成された低圧吸入ポート12cを介して蒸発器6の冷媒出口側から低段側圧縮室VLへ吸入された低圧冷媒が、中間圧冷媒となるまで圧縮されて、中間圧吐出穴12dから収容室VA内へ吐出される。
中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒は、モータ側蓋部材32に形成された中間圧吸入ポート32aを介して収容室VA内へ流入した中間圧冷媒(気液分離器4から流出した気相冷媒)と合流する。この際、中間圧冷媒が、ステータ21とロータ22との隙間(すなわち電動機部20の内部)を貫流することによって、電動機部20が冷却される。
中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒と中間圧吸入ポート32aから吸入された中間圧冷媒との合流冷媒は、中間圧冷媒通路12fを介して、高段側固定スクロール13に形成された中間圧吸入ポート13cから高段側圧縮室VHへ吸入される。高段側圧縮室VHへ吸入された中間圧冷媒は高圧冷媒となるまで圧縮されて、高圧吐出穴13dから吐出室VB内へ吐出される。
高圧吐出穴13dから吐出室VBへ吐出された高圧冷媒は、オイルセパレータ40へ流入して冷凍機油が分離される。高圧冷媒から分離された冷凍機油は、円柱状空間VCの下方側に貯留されて、オイル通路40bおよびシャフト25の給油通路25cを介して、各摺動部へ供給される。一方、冷凍機油が分離された高圧冷媒は、圧縮機構側蓋部材33に形成された高圧吐出ポート33aから放熱器2の冷媒入口側へ吐出される。
冷凍サイクル100では、圧縮機1の高圧吐出ポート33aから吐出された高圧冷媒が、放熱器2へ流入し、空調対象空間へ送風される送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。放熱器2から流出した冷媒は、高段側膨張弁3にて中間圧冷媒となるまで減圧されて、気液分離器4へ流入する。
気液分離器4にて分離された液相冷媒は、低段側膨張弁5にて低圧冷媒となるまで減圧されて、蒸発器6へ流入する。蒸発器6へ流入した冷媒は、外気から吸熱して蒸発する。蒸発器6から流出した冷媒は、圧縮機1の低圧冷媒吸入口11dから吸入されて再び圧縮される。一方、気液分離器4にて分離された気相冷媒は、圧縮機1の中間圧吸入ポート32aから吸入されて再び圧縮される。
本実施形態の冷凍サイクル100は、以上の如く作動して、空調装置において、室内送風空気を加熱することができる。さらに、本実施形態の圧縮機1によれば、可動スクロール11の可動側基板部11aの表裏に低段側圧縮機構および高段側圧縮機構を近接配置しているので、圧縮機全体としての体格の小型化を図ることができる。
これに加えて、本実施形態の圧縮機1では、シャフト25が低段側固定スクロール12の中心部および可動スクロール11の中心部を貫通して配置されて、シャフト25の両端部を電動機部側軸受部25aおよび圧縮機構部側軸受部25bによって回転可能に支持している。
このようにシャフト25の両端部を回転可能に支持する構成(両持ち支持)では、シャフト25の一端側のみを回転可能に支持する構成(片持ち支持)よりも、シャフト25を安定して回転させることが可能な最高回転数を増加させることができる。従って、本実施形態の圧縮機1では、所望の流量の流体を吐出させるために必要な各圧縮機構の圧縮室VL、VHの最大容積を縮小させて、より一層の体格の小型化を図ることができる。
ここで、本実施形態の圧縮機1では、冷凍サイクル100のCOPを極大値に近づけるために、高段側可動歯部11cの軸方向突出量HHを低段側可動歯部11bの軸方向突出力HLよりも小さくしている。このような構成では、シャフト25の径方向から見たときに、可動スクロール11全体としての重心が、図5の一点鎖線で示す可動側基板部11aの中央部から低段側可動歯部11bへずれてしまいやすい。
さらに、本実施形態の圧縮機1では、シャフト25が可動側基板部11aの中心部の表裏を貫通して配置されているので、可動スクロール11全体としての重心が可動側基板部11aの中央部からずれていると、可動スクロール11を公転運動させた際に、遠心力の作用によって可動スクロール11がシャフト25に対して傾斜してしまいやすい。
そして、可動スクロール11がシャフト25に対して傾斜した状態で回転すると、各圧縮機構における圧縮室VL、VHの気密性が悪化して、圧縮機1の昇圧性能を低下させてしまう原因となる。さらに、可動スクロール11が、低段側固定スクロール12、高段側固定スクロール13、シャフト25等に片当たりすることによって、各圧縮機構の摩耗や焼き付きを生じさせてしまうおそれもある。
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、低段側可動歯部11bの径方向厚み寸法TLを高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THよりも小さくすることによって、低段側重量WLと高段側重量WHとを略同等としている。これにより、図5に示すように、シャフト25の径方向から見たときに、可動スクロール11全体としての重心を、可動側基板部11aの略中央部に位置付けている。
従って、可動スクロール11を公転運動させた際に、可動スクロール11がシャフト25に対して傾斜しにくい構成とすることができる。その結果、可動スクロール11がシャフト25に対して傾斜してしまうことによる各圧縮機構における圧縮室VL、VHの気密性の悪化を抑制することができる。さらに、可動スクロール11が、低段側固定スクロール12等に片当たりすることによる摩耗や焼き付きを抑制することができる。
つまり、本実施形態の圧縮機1によれば、流体を多段階に昇圧させるスクロール型圧縮機の昇圧性能の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の圧縮機1では、低段側可動歯部11bの径方向厚み寸法TLを高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THよりも小さくすることによって、低段側重量WLと高段側重量WHとを略同等としているので、極めて容易に、可動スクロール11全体としての重心を、可動側基板部11aの略中央部に近づけることができる。
ところで、本実施形態の圧縮機1のように、低段側可動歯部11bの径方向厚み寸法TLよりも高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THでは、高段側圧縮室VHの容積が小さくなってしまいやすい。
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、自転防止機構26として、ピン−ホール式のものを採用し、可動側基板部11aのうち高段側可動歯部11cが配置された面にピン部材26aを固定している。従って、ピン部材26aの重量を高段側重量WHに追加することができ、高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THが不必要に大きくなってしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態の圧縮機1のように、シャフト25が可動側基板部11aの中心部の表裏を貫通して配置される構成では、中間圧吐出穴12dおよび高圧吐出穴13dをシャフト25の中心部に配置することができず、シャフト25の外周側に配置しなければならない。従って、各スクロール圧縮機構に複数の圧縮室VL、VHが形成されると、各スクロール圧縮機構における冷媒吐出側の通路構成が複雑化しやすい。
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cの双方の巻き数を1としているので、中間圧吐出穴12dに連通する低段側圧縮室VLを単一の空間で形成することができる。同様に、高圧吐出穴13dに連通する高段側圧縮室VHを単一の空間で形成することができる。従って、各スクロール圧縮機構における冷媒吐出側の通路構成の複雑化を招くことがない。
また、本実施形態の圧縮機1では、低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cが、中心軸に対して周方向に180°ずれて配置されているので、合計トルク変動の変動幅を縮小させることができる。その結果、圧縮機1を作動させた際の騒音および振動を抑制することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、自転防止機構としてピン−ホール式のものを採用した例を説明したが、本実施形態では、図6に示すオルダムリング式の自転防止機構27を採用した例を説明する。
より具体的には、本実施形態の自転防止機構27は、軸方向から見たときに円環状(円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)に形成された板状部材からなるオルダムプレート27aを有して構成されている。このオルダムプレート27aは、可動スクロール11と低段側固定スクロール12との間に配置されている。
さらに、オルダムプレート27aの可動スクロール11側の面には、可動スクロール11側に突出して予め定めた方向(本実施形態では、略水平方向)に延びる第1キー部27bが形成されている。一方、可動スクロール11のオルダムプレート27a側の面(可動側基板部11aのうち低段側可動歯部11bが配置された面)には、第1キー部27bと同方向に延びて、第1キー部27bが摺動可能に嵌め込まれるキー溝部11eが形成されている。
また、オルダムプレート27aの低段側固定スクロール12側の面には、軸方向から見たときに、第1キー部27bに対して90°回転させた方向(本実施形態では、略鉛直方向)に延びる第2キー部27cが形成されている。一方、低段側固定スクロール12のオルダムプレート27aの面には、第2キー部27cと同方向に延びて、第2キー部27cが摺動可能に嵌め込まれる図示しないキー溝が形成されている。
そして、オルダムプレート27aの第1キー部27bが可動スクロール11のキー溝部11eに摺動可能に嵌め込まれ、オルダムプレート27aの第2キー部27cが低段側固定スクロール12のキー溝に摺動可能に嵌め込まれていることによって、自転防止機構27が構成される。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の圧縮機1においても、第1実施形態と同様に、圧縮機1全体としての小型化効果等を得ることができる。
さらに、本実施形態の圧縮機1では、自転防止機構26として、オルダムリング式のものを採用し、可動スクロール11のオルダムプレート27a側の面にキー溝部11eを形成している。従って、キー溝部11eの容積に相当する分の重量を低段側重量WLから減算することができ、第1実施形態と同様に、高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THが不必要に大きくなってしまうことを抑制することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、本発明に係る多段昇圧式のスクロール型圧縮機1を空調装置用の冷凍サイクル100に適用した例を説明したが、本発明のスクロール型圧縮機1の適用はこれに限定されない。つまり、本発明に係るスクロール型圧縮機1は、種々の流体を圧縮する圧縮機として幅広い用途に適用可能である。
さらに、本発明に係るスクロール型圧縮機1を、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機から吐出された高圧冷媒と送風空気(あるいは外気)とを熱交換させる放熱器と、放熱器から流出した高圧冷媒の流れを分岐する分岐部と、分岐部にて分岐された一方の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側膨張弁と、分岐部にて分岐された他方の高圧冷媒と高段側膨張弁にて減圧された中間圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器と、内部熱交換器から流出した高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側膨張弁と、低段側膨張弁から流出した低圧冷媒と外気(あるいは送風空気)とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、
内部熱交換器から流出した中間圧冷媒を圧縮機1の中間圧吸入ポート32aへ吸入させ、蒸発器から流出した低圧冷媒を圧縮機1の低圧吸入ポート12cへ吸入させることによって構成されるガスインジェクションサイクルに適用してもよい。
また、上述の実施形態の冷凍サイクル100では、圧縮機1吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成した例を説明したが、例えば、冷媒として二酸化炭素等を採用して、圧縮機1吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
(2)上述の実施形態では、冷凍サイクル100を空調装置に適用し、送風空気を加熱するために用いた例を説明したが、もちろん、送風空気を冷却するために用いてもよい。この場合は、放熱器2を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器6を送風空気を冷却する利用側熱交換器とすればよい。
さらに、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段を設けて、放熱器2および蒸発器6のうち、利用側熱交換器あるいは室外側熱交換器として用いる熱交換器を切り替えるようにしてもよい。
また、ガスインジェクションサイクルは、通常の冷凍サイクルよりもCOPを向上させることができるので、本発明に係るスクロール型圧縮機1が適用された冷凍サイクルを、エンジン(内燃機関)の廃熱を車室内の暖房に利用できない電気自動車や、エンジンの廃熱を車室内の暖房に利用しにくいハイブリッド車両の空調装置に適用して有効である。
(3)上述の第2実施形態で説明した自転防止機構27では、可動側基板部11aのうち低段側可動歯部11bが配置された面にキー溝部11eを形成することによって、低段側重量WLを軽量化させ、低段側重量WLと高段側重量WHとを同等にしやすくした例を説明したが、オルダムリング式の自転防止機構27として以下のものを採用してもよい。
例えば、第2実施形態と同様のオルダムリング27aを可動スクロール11と高段側固定スクロール13との間に配置し、可動側基板部11aのうち高段側可動歯部11cが配置された面にキー部を形成し、このキー部が摺動可能に嵌め込まれるキー溝をオルダムリング27a側に形成してもよい。
これによれば、キー部の重量を高段側重量WHに加算することができ、第1実施形態と同様に、高段側可動歯部11cの径方向厚み寸法THが不必要に大きくなってしまうことを抑制することができる。
さらに、高段側重量WHと低段側重量WLとを同等にする手段は、上記の実施形態に開示された手段に限定されない。例えば、高段側可動歯部11cの巻き数と低段側可動歯部11bの巻き数を異なる値にする(具体的には、高段側可動歯部11cの巻き数を低段側可動歯部11bの巻き数よりも多くする)ことによって、高段側重量WHと低段側重量WLとを同等にしてもよい。
(4)上述の実施形態では、低段側可動歯部11bおよび高段側可動歯部11cの双方の巻き数を1とした例を説明したが、双方の巻き数を1以下としてもよいし、いずれか一方の巻き数を1以下としてもよい。
(5)上述の実施形態では、圧縮機構部10のうち、電動機部20側に低段側圧縮機構を配置し、電動機部20の反対側に高段側圧縮機構を配置した例を説明したが、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構の配置はこれに限定されない。圧縮機構部10のうち、電動機部20側に高段側圧縮機構を配置し、電動機部20の反対側に低段側圧縮機構を配置してもよい。
11 可動スクロール
11a 可動側基板部
11b 低段側可動歯部
11c 高段側可動歯部
12 低段側固定スクロール
12b 低段側固定歯部
13 高段側固定スクロール
13b 高段側固定歯部
VL、VH 低段側圧縮室、高段側圧縮室
WL、WH 低段側重量、高段側重量

Claims (7)

  1. 回転駆動源(20)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、
    前記回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状に形成された可動側基板部(11a)、前記可動側基板部(11a)から前記回転軸(25)の軸方向一端側へ突出する渦巻き状の低段側可動歯部(11b)、および前記可動側基板部(11a)から前記回転軸(25)の軸方向他端側へ突出する渦巻き状の高段側可動歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、
    平板状の低段側基板部(12a)、および前記低段側基板部(12a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出して前記低段側可動歯部(11b)と噛み合う渦巻き状の低段側固定歯部(12b)を有する低段側固定スクロール(12)と、
    平板状の高段側基板部(13a)、および前記高段側基板部(13a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出して前記高段側可動歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の高段側固定歯部(13b)を有する高段側固定スクロール(13)とを備え、
    前記低段側可動歯部(11b)と前記低段側固定歯部(12b)との間に形成される空間は、前記可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して外部から吸入した流体を昇圧させる低段側圧縮室(VL)を形成しており、
    前記高段側可動歯部(11c)と前記高段側固定歯部(13b)との間に形成される空間は、前記可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して前記低段側圧縮室(VL)にて昇圧された流体を昇圧させる高段側圧縮室(VH)を形成しており、
    前記高段側可動歯部(11c)の軸方向突出量(HH)は、前記低段側可動歯部(11b)の軸方向突出量(HL)よりも小さくなっており、
    前記回転軸(25)に垂直な径方向から見たときに、前記可動スクロール(11)のうち前記可動側基板部(11a)の中央部から前記低段側可動歯部(11b)側の低段側重量(WL)と前記可動側基板部(11a)の中央部から前記高段側可動歯部(11c)側の高段側重量(WH)が同等となっていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  2. 前記低段側可動歯部(11b)の径方向厚み寸法(TL)は、前記高段側可動歯部(11c)の径方向厚み寸法(TH)よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
  3. さらに、前記可動スクロール(11)が前記回転軸(25)に対して自転することを防止する自転防止機構(26)を備え、
    前記自転防止機構(26)は、前記可動スクロール(11)に固定されたピン部材(26a)、および前記ピン部材(26a)の変位を規制する断面円形状のリング穴(26b)によって構成されており、
    前記ピン部材(26a)は、前記可動側基板部(11a)のうち前記高段側可動歯部(11c)が配置された面に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
  4. さらに、前記可動スクロール(11)が前記回転軸(25)に対して自転することを防止する自転防止機構(27)を備え、
    前記自転防止機構(27)は、前記可動スクロール(11)に形成されたキー溝部(11e)と、前記キー溝部(11e)に摺動可能に嵌め込まれたキー部(27b)が形成された円環状の板状部材(27a)によって構成されており、
    前記キー溝部(11e)は、前記可動側基板部(11a)のうち前記低段側可動歯部(11b)が配置された面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
  5. 前記回転軸(25)は、前記可動側基板部(11a)を貫通していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスクロール型圧縮機。
  6. 前記低段側可動歯部(11b)および前記高段側可動歯部(11c)の少なくとも一方の巻き数が1以下であることを特徴とする請求項5に記載のスクロール型圧縮機。
  7. 前記低段側可動歯部(11b)の巻き数および前記高段側可動歯部(11c)の巻き数は、等しい値になっており、
    前記低段側可動歯部(11b)および前記高段側可動歯部(11c)は、前記回転軸(25)の軸方向から見たときに軸中心に対して周方向に180°ずれて配置されていることを特徴とする請求項6に記載のスクロール型圧縮機。
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