JP2015151777A - 骨組構造、及び骨組構造の補強方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本願発明の骨組構造は、少なくとも柱材と梁材と補強材を含む構造である。柱材又は梁材には接合部が設けられており、補強材はこの接合部に連結される。接合部が設けられる柱材等は、平坦面を有する構成部材を含む構成であって、2つの構成部材の平坦面が段差を生じて略平行となるよう組み合わされたものである。接合部は、不陸調整板、ガセットプレート、剥離防止手段を備えており、不陸調整板は、構成部材のうち一方の構成部材の平坦面に取り付けられ、不陸調整板と他方の構成部材の平坦面によって略同一平面からなる接着面を形成する。
【選択図】図4
Description
(1)補強材を設置するので、柱材と梁材のみの骨組構造に比して、高い強度の構造が得られる。その結果、地震等の外力に対する抵抗力が向上し、より安心して鉄骨造建物等を利用することができる。
(2)溶接作業を必要としないので火災の心配がなく、あらゆる鉄骨造建物等に採用することができる。例えば、引火しやすい物を保管している倉庫や、薬品を取り扱う施設などにも採用することができる。
(3)また、溶接作業を必要としないので室内へ与える影響が小さく、対象が生産施設などの場合、継続して生産活動を行うことができる。
(4)剥離防止手段を備えているので、面外方向の外力によってガセットプレートが剥離するのを防止することができる。
(5)柱材や梁材の表面に段差がある場合でも、接着剤を厚く(例えば段差を埋める厚さ)塗布する必要がない。したがって、塗布する際に接着剤がダレにくいことから接着作業が容易となり、また適切な厚さ(例えば3mm以内)で接着剤を塗布できるので所定の強度を十分発揮することができる。
図1は、本願発明の骨組構造の一例を示す側面図であり、(a)は斜材31を設置した場合、(b)は方杖材32を設置した場合の側面図である。この骨組構造は、オフィスビルや工場施設といった建造物を構成する主要構造の一部であり、柱材10、梁材20、そして斜材31や方杖材32といった補強材30によって形成される。図1に示すように、2本の柱材10は床面FLから略鉛直に立ち上げられ、梁材20は床面から離れた位置で略水平に配置され、補強材30は柱材10と梁材20からなるフレーム内(面内)に対角状あるいは斜方向に設置される。
柱材10は、鉛直及び水平荷重による曲げモーメント、せん断力や軸力に対して抵抗する部材であり、梁材20を支持する支点としての働きもある。既述のとおり、少なくともガセットプレート41が接着される柱材10は、構成部材11を組み合わせたものであり、図2の斜視図に示す構成となる。つまり、H形鋼の腹板(ウェブ)に相当する中央プレート12を鉛直方向に配置し、その両端をそれぞれ2本1組の山形鋼11a(構成部材11)で挟み込み(あるいは、一つの山形鋼11aに中央プレート12を重ね合わせて)、さらに2本の山形鋼11aと中央プレート12にボルト13を挿通して締め付けて柱材10は形成され、床面に敷かれた台座プレート上に設置される。なお、2組の山形鋼11aの間に、中央プレート12に沿うように補強用の山形鋼14が一般的に設置されている。
梁材20は、おもに鉛直荷重による曲げモーメントやせん断力に対して抵抗する部材である。柱材10と同様、少なくともガセットプレート41が接着される梁材20は、構成部材11を組み合わせたものであり、2本を1組とする山形鋼11a(あるいは溝形鋼11c)の平坦面からなる合成面には、やはり段差が生じている。
補強材30は、柱材10と梁材20で構成される骨組架構を補強するもので、具体的には斜材31や方杖材32といった部材である。図1(a)に示す補強材30は、主軸(柱材10の軸と梁材20の軸からなる)に対して角度をもって配置されることから斜材あるいはブレース材とも呼ばれる。一方、図1(b)に示す補強材30は、梁材20を下方から支持して補強するもので、方杖材と呼ばれる。補強材30は、おもに軸引張力や軸圧縮力が作用することから、部材軸方向に相当の強度を有する部材が用いられ、例えば、溝形鋼や山形鋼あるいは鋼棒などが例示できるが、そのほかH形鋼や鋼管など種々の部材を使用することができる。なお、補強材30として鋼棒を使用する場合、部材途中にターンバックルを設け、長さ調整を可能にすることもできる。
図4〜図7は補強材30を柱材10等に取り付けるための接合部40を示す詳細図である。この接合部40は、図4に示すように、少なくとも不陸調整板42と、ガセットプレート41、剥離防止手段で構成される。なお、図4〜図7は接合部40が柱材10に設けられた場合を示しているが、これに限らず接合部40を梁材20に設けることもできる。例えば、水平方向に配置した斜材31(いわゆる水平ブレース)を梁材20間に取り付けることができ、具体的には、斜材31の一端を梁材20に設けられた斜材用の接合部40に取り付け、斜材31の他端を他の梁材20の斜材用の接合部40に取り付ける。以下、接合部40を構成する部材ごとに詳しく説明する。
図5は、不陸調整板42を取り付けた状態を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はその断面図である。この図に示すように不陸調整板42は、構成部材11を組み合わせた柱材10等のうち合成面に生じた段差を埋めるもので、他方よりも奥まった構成部材11の平坦面に設置される。この不陸調整板42を設置することで、他方の構成部材11の平坦面、及びこの不陸調整板42によって、略一様な平坦面である「接着面」が形成される。
ガセットプレート41は、図6に示すように、不陸調整板42、及び構成部材11の平坦面(不陸調整板42を設置しない方)からなる接着面に塗布された接着剤によって接着固定されるもので、接着部と連結部を備えている。接着部は接着面に接触する部分であり、連結部は補強材30の端部を実際に取り付ける部分である。なお、ガセットプレート41の接着に関しては、不陸調整板42と柱材10等の接着で説明した接着方法や、接着剤、設計手法と同様である。
設計上求められた接着面積を確保して接着固定すれば、接着面がずれようとするせん断方向の荷重に対してガセットプレート41が柱材10等から剥離することはない。例えば、斜材31の場合は主に水平方向をせん断方向とするずれ、方杖材32の場合は主に鉛直方向をせん断方向とするずれに対しては、それぞれ防止することができる。しかしながら、接着面を引き剥がそうとする方向、つまりガセットプレート41に垂直な方向(以下、「接着面外方向」という。)に作用する外力に対して剥離しないだけの接着量(接着面積)を算定することは難しく、換言すれば、接着固定だけで接着面外方向の外力に抵抗することは極めて困難である。図1のような骨組構造は、様々な方向からの荷重を受け、当然ながら接着面外方向の外力が作用することも想定される。そうすると柱材10等は接着面外方向に曲げ変形を生じ、平面状のガセットプレート41とは接触できない部分が現れ、その結果、ガセットプレート41の剥離が始まる。そこで、接着面外方向から力を受けた場合でも、柱材10等からガセットプレート41が剥がれないよう剥離防止手段を設置するわけである。
斜材用ガセットプレート41のうちの連結部には、斜材31の端部が連結される。この連結部にはボルト孔が設けられ、同じく斜材31端部にもボルト孔が設けられており、双方のボルト孔を合わせて高力ボルト50によって締め付けられる。一方、方杖材用のガセットプレート41は、既述のとおり接着プレート41aと連結プレート41bで構成されており、このうち連結プレート41bに方杖材32の端部が連結される。連結プレート41bにはボルト孔が設けられ、同じく方杖材32端部にもボルト孔が設けられており、双方のボルト孔を合わせて高力ボルト50によって締め付けられる。ここで使用されるボルトは、状況によって普通ボルトを使用することもできるが、原則は高力ボルトによる摩擦接合とされる。なお高力ボルトであれば、摩擦接合用高力六角ボルト、構造用トルシア形高力ボルト、溶融亜鉛メッキ高力ボルト、など従来のものの中から適宜選択できる。
山形鋼11aを組み合わせた支柱10に斜材31を取り付けることで、柱材10と梁材20からなる骨組構造を補強する場合を例に、本願発明の骨組構造の補強方法を説明する。
はじめに、補強対象となる既設の支柱10について説明する。この支柱10は、鉛直方向に配置された中央プレート12の両端を、それぞれ2本1組の山形鋼11a(構成部材11)で挟み込み、これら2本の山形鋼11aと中央プレート12にボルト13を挿通して締め付けられた構造であり、床面FL上に敷設した台座プレートの上に設置されている。なお支柱10は、山形鋼等によるラチス材でフランジを形成し、両フランジに山形鋼11aを取り付けた構造としてもよい。
以下、各工程について説明する。
次に、2本の山形鋼11aの平坦面で構成される合成面に生じた段差を埋めるため、他方よりも奥まった山形鋼11aの平坦面に不陸調整板42を接着する。このとき、不陸調整板42の板厚と接着剤の塗布厚との総厚が、当該段差と略等しくなるよう接着剤を塗布すると良い。この結果、山形鋼11aの平坦面、及び不陸調整板42によって、略一様な平坦面である「接着面」が形成される。(不陸調整板取付工程)
「接着面」に接着剤を塗布し、柱材10にガセットプレート41を接着固定する。また、他の柱材10の所定位置にある「接着面」にもガセットプレート41を接着固定する。このとき、柱材10のうち斜材31が設置される面内方向と略平行な面に、ガセットプレート41を接着する。(ガセットプレート接着工程)
それぞれ柱材10の内側に対向プレート43を配置し、さらにガセットプレート41と対向プレート43の間(フランジがない隙間)にスペーサ45を配置して、締付ボルト44で締め付ける。(剥離防止工程)
一方の柱材10に固定したガセットプレート41のうち連結部に、斜材31の一端を連結する。斜材31の他端は、他方の柱材10に固定したガセットプレート41に連結する。このとき双方に設けられたボルト孔を利用し、一次締め、マーキング、本締めの手順で高力ボルトによる締付けを行う。(補強材連結工程)
以上の工程を行うことで、骨組構造が補強される。
11 構成部材
11a (構成部材としての)山形鋼
11c (構成部材としての)溝形鋼
12 中央プレート
13 ボルト
14 補強用の山形鋼
20 梁材
30 補強材
31 斜材
32 方杖材
40 接合部
41 ガセットプレート
41a (方杖材用ガセットプレートの)接着プレート
41b (方杖材用ガセットプレートの)連結プレート
42 不陸調整板
43 (剥離防止手段の)対向プレート
44 (剥離防止手段の)締付ボルト
45 (剥離防止手段の)スペーサ
50 高力ボルト
B 梁材
C 斜材
FL 床面
Gp ガセットプレート
P 柱材
Claims (5)
- 柱材と梁材と補強材を有する骨組構造において、
前記補強材の一端又は両端は、前記柱材又は前記梁材に設けた接合部に連結され、
前記接合部が設けられた前記柱材又は前記梁材は、平坦面を有する複数の構成部材を含み、このうち少なくとも2つの構成部材の平坦面が段差を生じて平行又は略平行となるよう組み合わされたものであり、
前記接合部は、不陸調整板と、前記補強材を連結するガセットプレートと、剥離防止手段と、を備え、
前記不陸調整板は、前記組み合わされた2つの構成部材のうち一方の構成部材の前記平坦面に取り付けられ、該不陸調整板及び他方の構成部材の平坦面によって同一平面又は略同一平面からなる接着面を形成し、
前記ガセットプレートは、前記柱材又は前記梁材のうちの前記接着面に接着され、
前記剥離防止手段は、前記ガセットプレートと対向プレートによって前記構成部材の一部を挟持するとともに、該ガセットプレートと該対向プレートをボルトで締め付けた、ことを特徴とする骨組構造。 - 前記接合部が設けられた前記柱材又は前記梁材は、山形鋼又は溝形鋼からなる構成部材と、中央プレート又はラチス材と、を含み、
前記中央プレート又はラチス材の端部を、前記構成部材で固定した構成である、ことを特徴とする請求項1記載の骨組構造。 - 前記不陸調整板は、前記構成部材の前記平坦面に接着され、該不陸調整板の板厚と接着剤の塗布厚との総厚が、前記組み合わされた2つの構成部材の平坦面からなる前記段差と等しい又は略等しい、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の骨組構造。
- 柱材と梁材を有する骨組構造に補強材を設置する骨組構造の補強方法において、
平坦面を有する複数の構成部材を含むとともに、少なくとも2つの該構成部材の平坦面が段差を生じて平行又は略平行となるよう組み合わされた前記柱材又は前記梁材に、接合部を設置する接合部設置工程と、
前記補強材の一端又は両端を、前記接合部を構成するガセットプレートに連結する補強材連結工程と、を備え、
さらに前記接合部設置工程は、不陸調整板取付工程と、ガセットプレート接着工程と、剥離防止工程と、を有し、
前記不陸調整板取付工程では、前記組み合わされた2つの構成部材のうち一方の構成部材の前記平坦面に不陸調整板を取り付け、該不陸調整板及び他方の構成部材の平坦面によって同一平面又は略同一平面からなる接着面を形成し、
前記ガセットプレート接着工程では、前記ガセットプレートを前記柱材又は前記梁材のうちの前記接着面に接着し、
前記剥離防止工程では、前記ガセットプレートと対向プレートによって前記構成部材の一部を挟むように該対向プレートを配置するとともに、該ガセットプレートと該対向プレートをボルトで締め付ける、ことを特徴とする骨組構造の補強方法。 - 前記不陸調整板取付工程では、前記不陸調整板を前記構成部材の前記平坦面に接着し、該不陸調整板の板厚と接着剤の塗布厚との総厚が、前記組み合わされた2つの構成部材の平坦面からなる前記段差と等しく又は略等しくなるように、該接着剤を塗布する、ことを特徴とする請求項4記載の骨組構造の補強方法。
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