JP2015151403A - 高分子ゲル - Google Patents

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正樹 木本
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正幸 来島
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Abstract

【課題】香料成分を高含量で容易に含浸させることができ、さらに、様々な樹脂に対する混和性に優れた高分子ゲルを提供する。
【解決手段】
複数のコア−シェル型高分子微粒子が連結されてなる高分子ゲルであって、
前記コア−シェル型高分子微粒子のシェルは、ポリエチレングリコール単位を有するポリマーにより形成されており、コアは、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されており、
前記複数のコア−シェル型高分子微粒子は、ポリエチレングリコール鎖を介して連結されている、高分子ゲル。
【選択図】なし

Description

本発明は、香料成分を高含量で容易に含浸させることができ、さらに、種々の樹脂に対する混和性に優れた高分子ゲルに関する。
従来、精油などの香料成分を揮発させて芳香を楽しんだり、芳香により自然治癒力を向上させるアロマテラピーなどが広く行われている。香料成分を揮発させる方法としては、香料成分を溶媒などに分散させて雰囲気中に噴霧する方法や、香料成分を布、紙、樹脂など種々の媒体に含ませて揮発速度を調整し、長期間に亘って香料成分を揮発させる方法などが知られている。
例えば特許文献1には、織物または編物からなる基材の裏面にシクロデキストリンに包接された精油と0.01〜0.5μmのセルロース微小繊維とを固着させた精油芳香シールが開示されている。当該精油芳香シールによれば、天然精油の香気を持続して発散させることができ、貼付けることで所望する時に、かつ場所で香気を楽しむことができると記載されている。
また、例えば特許文献2には、芳香油成分に洗浄用クレンジングオイルなどの水分散性付与成分を加えた混合物を、ヒドロキシプロピル化デンプンなどの粉末状態の包接成分に添加した粉末化アロマ製品が開示されている。特許文献2に開示された粉末化アロマ製品によれば、アロマオイル等を粉末化し、適宜に水溶化又は油脂類に可溶化させることができるため、極めて多種多様の商品に適用することができると記載されている。
一方、特許文献3には、粒子内部に複数の空孔を有する多孔質中空ポリマー粒子に香料を担持させてなる香料担持ポリマー粒子であって、前記多孔質中空ポリマー粒子は、粒子外表面及び粒子内表面がポリビニルアルコールで被覆されていることを特徴とする香料担持ポリマー粒子が開示されている。特許文献3に開示された香料担持ポリマー粒子は、香料を安定して担持させることができ、かつ、香料の徐放性に優れることが記載されている。特許文献3に開示された香料担持ポリマー粒子の用途としては、例えば粒子自体をそのまま芳香剤とすること、香料担持ポリマー粒子を懸濁分散液として用いること、練り込んでクリーム状又はペースト状として用いること、繊維に紡糸させて用いることなどが提案されている。
特開2005−307131号公報 特開2012−229300号公報 特開2009−120806号公報
近年、例えば特許文献3に開示されているような、樹脂などに対して香料成分を含ませた多種多様な商品において、これまで以上に長期間に亘って香料成分を揮発させることが求められている。また、香料成分を含む樹脂を他の樹脂に均一に分散させる高い混和性も求められる。しかしながら、例えば特許文献3に開示されたような方法では、ポリマー粒子などに保持される香料成分の量が少ないため、香料成分をより長期間に亘って揮発させる方法としては不十分である。さらに、従来の方法では、長期間に亘る香料成分の揮発と、様々な樹脂に対する高い混和性との両立は困難である。
このような状況下、本発明は、香料成分を高含量で容易に含浸させることができ、かつ、様々な樹脂に対する混和性に優れた高分子ゲルを提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、複数のコア−シェル型高分子微粒子が連結されてなる高分子ゲルであって、コア−シェル型高分子微粒子のシェルが、ポリエチレングリコール単位を有するポリマーにより形成されており、コアが、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されており、複数のコア−シェル型高分子微粒子が、ポリエチレングリコール鎖を介して連結されている高分子ゲルは、香料成分を高含量で容易に含浸させることができ、かつ、様々な樹脂に対する混和性に優れることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 複数のコア−シェル型高分子微粒子が連結されてなる高分子ゲルであって、
前記コア−シェル型高分子微粒子のシェルは、ポリエチレングリコール単位を有するポリマーにより形成されており、コアは、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されており、前記複数のコア−シェル型高分子微粒子は、ポリエチレングリコール鎖を介して連結されている、高分子ゲル。
項2. 前記コア−シェル型高分子微粒子のコアが、(メタ)アクリル系ポリマーにより形成されている、項1に記載の高分子ゲル。
項3. 前記コア−シェル型高分子微粒子が、ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤と多官能モノマーとを重合させることにより得られたものである、項1または2に記載の高分子ゲル。
項4. 前記ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤が、下記一般式(I):
[式中、mは、20〜250の整数である。]
で表される繰り返し単位を有する、項1〜3のいずれかに記載の高分子ゲル。
項5. 前記コア−シェル型高分子微粒子の粒子径が、20〜3000nmの範囲にある、項1〜4のいずれかに記載の高分子ゲル。
項6. 平均粒子径が0.5〜100μmの範囲にある、項1〜5のいずれかに記載の高分子ゲル。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の高分子ゲルに香料成分が含浸されてなる、芳香性高分子ゲル。
項8. 項7に記載の芳香性高分子ゲルが樹脂中に分散されてなる、芳香性樹脂。
項9. 前記樹脂が粘着性樹脂である、項8に記載の芳香性樹脂。
項10. 項8または9に記載の芳香性樹脂がシート状に成形されてなる芳香性樹脂シート。
項11. 項8または9に記載の芳香性樹脂が基材上に固定されてなる芳香性樹脂シート。
項12. ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤と多官能モノマーとを重合させる工程を備える、項1〜6のいずれかに記載の高分子ゲルの製造方法。
本発明によれば、香料成分を高含量で容易に含浸させることができ、さらに、様々な樹脂に対する混和性に優れた高分子ゲルを提供することができる。また、本発明によれば、当該高分子ゲルに香料成分が含浸された芳香性高分子ゲル、当該芳香性高分子ゲルが樹脂中に分散されてなる芳香性樹脂(粘着性樹脂を含む)がシート状に成形された芳香性樹脂シート、芳香性樹脂(粘着性樹脂を含む)が基材上に固定されてなる芳香性樹脂シートを提供することができる。
実施例1における高分子ゲルE1の濾過後の外観写真である。 実施例1で得られた高分子ゲルE1のSEM像(倍率5万倍)である。 比較例1における高分子ゲルE2の濾過後の外観写真である。 比較例1で得られた高分子ゲルE2のSEM像(倍率5万倍)である。
本発明の高分子ゲルは、複数のコア−シェル型高分子微粒子が連結されてなる高分子ゲルであって、コア−シェル型高分子微粒子のシェルが、ポリエチレングリコール単位を有するポリマーにより形成されており、コアが、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されており、複数のコア−シェル型高分子微粒子が、ポリエチレングリコール鎖を介して連結されていることを特徴とする。以下、本発明の高分子ゲル、当該高分子ゲルに香料成分が含浸された芳香性高分子ゲル、当該芳香性高分子ゲルが樹脂中に分散されてなる芳香性樹脂(粘着性樹脂を含む)がシート状に成形された芳香性樹脂シート、芳香性樹脂(粘着性樹脂を含む)が基材上に固定されてなる芳香性樹脂シートについて詳述する。
1.高分子ゲル
本発明の高分子ゲルは、複数のコア−シェル型高分子微粒子(以下、「コア−シェル型高分子微粒子」を単に「微粒子」と表記することがある)がポリエチレングリコール(以下、「PEG」と表記することがある)鎖により連結されてなる。本発明において、「コア−シェル型高分子微粒子」とは、表面部分(シェル)と内部(コア)とが、それぞれ異なる高分子化合物で形成されている微粒子を意味する。
本発明の高分子ゲルにおいて、コアを形成するポリマーは、三次元網目構造を有している。このため、本発明の高分子ゲルのコアに液状の香料成分が浸透するとコアが膨潤して、香料成分を高含量で含浸させることができる。さらに、本発明の高分子ゲルにおいては、各コア−シェル型高分子微粒子を連結するPEG鎖と、各コア−シェル型高分子微粒子との間に形成された多数の空隙に香料成分を含浸させることができる。すなわち、本発明の高分子ゲルは、各微粒子のコアだけでなく、高分子ゲル表面に形成されている多数の上記空隙にも香料成分を含浸させることができるため、高含量で香料成分を含浸させることができる。また、本発明の高分子ゲルは、液状の香料成分と混合すると、香料成分が上記コアと上記空隙に急速に浸透して大きく膨潤するため、香料成分を容易に含浸させることができる。
さらに、本発明の高分子ゲルにおいては、複数のコア−シェル型高分子微粒子がPEG鎖によって連結されており、かつ、各微粒子のシェルがPEG単位を有するポリマーにより形成されている。このように、親水性樹脂だけでなく疎水性樹脂との親和性も比較的高いPEG鎖が高分子ゲルの表面部分に位置しているため、本発明の高分子ゲルは、親水性樹脂及び疎水性樹脂の両者との混和性に優れている。したがって、後述の通り、香料成分を含浸させた本発明の高分子ゲルを種々の樹脂に均一性高く分散させた芳香性樹脂とすることができる。
本発明の高分子ゲルを構成する各コア−シェル型高分子微粒子は、シェルがPEG単位を有するポリマーにより形成されており、コアが、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されている。
コアを形成するポリマーとしては、特に制限されないが、コアにおける香料成分の含浸特性を向上させる観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。同様の観点から、好ましい(メタ)アクリル系ポリマーの具体例としては、後述の多官能モノマーの少なくとも1種を重合させたポリマーが挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の総称である。
本発明の高分子ゲルにおいて、複数のコア−シェル型高分子微粒子は、PEG鎖を介して連結されている。なお、高分子ゲルには、PEG鎖を介して連結されていないコア−シェル型高分子微粒子が含まれていてもよい。高分子ゲルにおけるPEG鎖を介した連結は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察などによって確認することができる。
本発明において、コア−シェル型高分子微粒子は、PEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤(以下、単に「高分子アゾ重合開始剤」ということがある)と多官能モノマーとを重合させることにより得られたものであることが好ましい。後述の通り、本発明においては、親水性であるPEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤と、当該高分子アゾ重合開始剤よりも疎水性である多官能モノマーとを極性溶媒中で重合させることにより、シェルがPEG単位を有するポリマーにより形成されており、コアが、前記多官能モノマーが重合したポリマーにより形成されたコア−シェル型高分子微粒子が得られる。
上記の高分子アゾ重合開始剤とは、分子内にPEG鎖及びアゾ基(−N=N−)を含有する繰り返し単位を有する高分子化合物である。当該高分子アゾ重合開始剤としては、特に制限されないが、具体例としては、下記一般式(I):
[式中、mは、20〜250の整数である。]
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
一般式(I)において、mは、30〜200の整数であることが好ましく、40〜150の整数であることがより好ましい。また、高分子アゾ重合開始剤における一般式(I)で表される繰り返し単位の数nとしては、4〜50の整数であることが好ましく、5〜20の整数であることがより好ましい。
高分子アゾ重合開始剤のより具体的な例としては、下記一般式(II):
[式中、R1は、Hまたはアルキル基であり、R2は、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、mは、20〜250の整数であり、nは、4〜50の整数である。]
で表される高分子化合物が挙げられる。
一般式(II)において、mは、30〜200の整数であることが好ましく、40〜150の整数であることがより好ましい。また、nは、4〜50の整数であることが好ましく、5〜20の整数であることがより好ましい。
一般式(II)において、R1のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基などが挙げられ、さらに好ましくはメチル基が挙げられる。
一般式(II)において、R2のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基などが挙げられ、さらに好ましくはメトキシ基が挙げられる。
高分子アゾ重合開始剤の分子量としては、特に制限されないが、好ましくは5000〜10万程度、より好ましくは1万〜5万程度が挙げられる。また、当該アゾ重合開始剤のPEG鎖部分の分子量としては、好ましくは800〜1万程度、より好ましくは1000〜8000程度が挙げられる。
この高分子アゾ重合開始剤は、PEG鎖を有しているため、重合反応の溶媒として使用される水、アルコールなどの極性溶媒中に良好に溶解させることができる。また、当該高分子アゾ重合開始剤は、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカルを発生するアゾ基:―N=N−)を有しているため、多官能性モノマーとの重合の際に別途水溶性重合開始剤を使用する必要がない。さらに、極性溶媒に溶解し難い多官能性モノマーを添加した場合に、ミセルを形成する組成範囲(例えば、溶媒中の水/アルコールの比の範囲、または、溶媒中の多官能性モノマー/PEG鎖を有する高分子アゾ重合開始剤の比の範囲)が広い。しかも、分子骨格中にラジカル発生部分であるアゾ基を有しているため、末端反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性及び安定性が高い。
高分子アゾ重合開始剤の市販品としては、特に制限されないが、例えば、和光純薬社製の高分子アゾ重合開始剤VPE0201(PEG鎖部分の分子量2000)、VPE0401(PEG鎖部分の分子量4000)、VPE0601(PEG鎖部分の分子量6000)などが挙げられる。高分子アゾ重合開始剤の合成方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、J.J.LavertyandZ.G.Gardlund,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,15,2001(1977)、A.Ueda,S.Nagai,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,24,405(1986)などの文献に記載された方法が挙げられる。
多官能性モノマーは、重合性の不飽和結合を有する基を分子内に2個以上、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個有しているモノマーである。このような多官能性モノマーは、モノマー間での重合及び上記の高分子アゾ重合開始剤との反応により、コア−シェル型高分子微粒子のコアを形成する。当該多官能性モノマーが重合して形成されたコアは、三次元網目構造を有することとなる。
重合性の不飽和結合を有する基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を有する基などが挙げられる。重合性の不飽和結合を有する基の好ましい具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基などの不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基などの不飽和エステル基;不飽和アミド基;フルオロエチレン基、フッ化ビニリデン基、トリフルオロエチレン基などのフッ素系不飽和炭化水素基などが挙げられる。多官能性モノマーにおいて、重合性の不飽和結合を有する基は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
多官能性モノマーの好ましい具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルサイトレート、エチレングリコールジアクリレート、フェニレンジグリコールジアクリレートなどが挙げられる。多官能性モノマーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、高分子アゾ重合開始剤と多官能モノマーとの重合反応は、極性溶媒中で重合させることが好ましい。極性溶媒としては、特に制限されないが、上記のコア−シェル型高分子微粒子を好適に得る観点からは、好ましくは水及びアルコールが挙げられ、水とアルコールとを併用することがより好ましい。極性溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。水としては、特に制限されないが,好ましくは、塩を含まないイオン交換水を用いることが好ましい。また、アルコールとしては、特に制限されないが、好ましくはエタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール等の炭素数1〜4のアルコールを用いることが好ましく、エタノールまたはイソプロパノールを用いることが特に好ましい。
さらに、複数のコア−シェル型高分子微粒子を、PEG鎖を介して連結させ、上記の空隙を好適に形成する観点からは、水とアルコールの体積比(水/アルコール)が好ましくは65/35〜90/10の範囲、より好ましくは70/30〜85/15の範囲が挙げられる。水とアルコールとを併用する場合において、水の割合が増えると溶媒の極性が高められる。溶媒の極性が高められる程、コアを形成する多官能モノマーは溶媒中に溶解し難くなるため、PEG鎖近傍の溶解性が高い部分で重合が進むソープフリー重合に近い状況となって、各微粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。一方、極性が高められると、シェルを形成する高分子アゾ重合開始剤のPEG鎖部分が溶媒中に広がりやすくなると考えられる。このため、水とアルコールとの体積比を上記のような範囲に設定することにより、PEG鎖によって連結された複数のコア−シェル型高分子微粒子を好適に形成することができる。
なお、水及びアルコールに加えて、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の他の溶媒を用いてもよい。これらの他の溶媒を用いる場合には、溶媒全体の体積の60体積%以下とすることが好ましい。
重合反応溶液中における溶媒の割合としては、特に制限されず、例えば85〜99,9質量%程度が挙げられる。
多官能性モノマー及びPEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤は、多官能性モノマーのモル数とPEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤におけるPEG換算のモル数との比が、0.5:1〜150:1程度、好ましくは0.5:1〜100:1程度になるようにすればよい。
ここで、「PEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤におけるPEG換算のモル数」とは、PEG換算分子量を「PEG単位の分子量+226」として、(PEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤の使用量(g))/(PEG換算分子量「PEG単位の分子量+226」)で算出される値を意味する。
また、重合反応溶液中の多官能性モノマーと上記高分子アゾ重合開始剤の濃度の合計としては、特に制限されないが、好ましくは0.1〜15質量%程度、より好ましくは0.2〜10質量%程度、さらに好ましくは0.5〜6質量%程度が挙げられる。
さらに、多官能性モノマーに加えて、一官能性モノマーを高分子アゾ重合開始剤と重合反応させてもよい。
ここで、一官能性モノマーとは、重合性の不飽和結合を有する基を分子内に1個有するモノマーである。重合性の不飽和結合を有する基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を有する基などが挙げられる。
一官能性モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;ヘキサン酸ビニル、ラウリル酸ビニルなどのビニルエステル類;オクテン、スチレンなどの不飽和炭化水素;エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸等が挙げられる。
一官能性モノマーを用いる場合、多官能性モノマーと一官能性モノマーとの使用割合は、前者1モルに対して、後者が通常約2モル以下、好ましくは約1モル以下である。
また、一官能性モノマーを用いる場合、多官能性モノマー及び一官能性モノマーのモル数の合計と、高分子アゾ重合開始剤におけるPEG換算のモル数との比が、0.5:1〜150:1程度、好ましくは0.5:1〜100:1程度になるように重合させることが好ましい。重合反応溶液中の多官能性モノマー、高分子アゾ重合開始剤、及び一官能性モノマーの濃度の総和が、0.1〜15質量%程度、好ましくは0.2〜10質量%程度、より好ましくは0.5〜6質量%程度となるように調整することが好ましい。
多官能性モノマー、PEG単位を有する高分子アゾ重合開始剤、及び必要に応じて用いられる一官能性モノマーを上記のような条件で重合させることによって、本発明の高分子ゲルが溶媒中に分散した溶液分散体が好適に得られる。後述の通り、当該溶液分散体を乾燥させることにより、乾燥した高分子ゲルが得られる。
次に、本発明の高分子ゲルの製造方法における具体的な製造工程の一例を以下に示すが、本発明の高分子ゲルの製造方法は以下の工程には限定されない。なお、各成分の種類や配合量などについては、上記のとおりである。
まず、高分子アゾ重合開始剤を水に溶解(分散)させた後、溶媒及び多官能性モノマーを加えて溶解(分散)させ、60〜100℃(好ましくは65〜85℃)に加熱して攪拌する。加熱攪拌は、窒素ガスを連続的にバブリングさせて行うことが好ましい。通常、窒素ガス導入後約10〜60分程度で反応溶液は乳白色に濁りはじめ、その後窒素気流下5〜24時間加熱攪拌を続ける。これにより、高分子アゾ重合開始剤及び多官能性モノマーは、分散重合、ソープフリー乳化重合等のような形態の重合反応をする。ここで、ソープフリー乳化重合とは、高分子アゾ重合開始剤以外の界面活性剤を含まない系における乳化重合を意味する。
次に、得られた混合溶液を、遠心分離と水/エタノール混合溶媒による洗浄を1〜3回実施または繰り返し行うことで複数のコア−シェル型高分子微粒子がPEG鎖によって連結された高分子ゲルが得られる。洗浄の代わりに透析(分子量1000以下を通す透析膜を用いて水に対して透析)を行うことでも高分子ゲルの水分散液が得られる。水に対する透析において、透析膜に上記の混合溶液を入れ、透析膜ごと水中に放置しておく(ビーカー等に入れて)と、浸透圧で水と低分子量成分が入れ替わり、高分子ゲルの水分散液が得られる。
高分子アゾ重合開始剤は、活性点(ラジカル開始点)を主鎖骨格中に有しているため活性点が安定であり、また1分子中に数個の活性点を有しているためモノマーと反応しやすい。したがって、高分子アゾ重合開始剤を用いることにより、高い収率で本発明の高分子ゲルが得られる。また、高分子アゾ重合開始剤を用いることにより、溶媒組成、及びモノマー/高分子アゾ重合開始剤比の広い範囲において、高分子ゲルが得られる。
本発明の高分子ゲルの平均粒子径としては、好ましくは0.5〜100μm程度、より好ましくは0.5〜80μm程度である。なお、当該平均粒子径は、高分子ゲルを水に分散させ、動的光散乱法による粒度分布測定を行って得られた個数平均の値である。また、本発明の高分子ゲルを構成する各微粒子の粒子径としては、好ましくは20〜1000nm程度、より好ましくは20〜500nm程度である。なお、当該粒子径は、高分子ゲルのSEM像を観察することにより測定することができる。
また、本発明において、原料である高分子アゾ重合開始剤におけるPEG換算のモル数に対する多官能性モノマーのモル数の比を、前者1に対して後者が0.5〜150程度の範囲で調節することにより、高分子ゲルを構成する各コア−シェル型高分子微粒子の粒子径を20〜1000nm程度の範囲に制御できるという利点がある。通常、多官能性モノマーのモル数に対し、PEG換算のモル数が大きくなると、コア−シェル型高分子微粒子の粒子径が小さくなる傾向にある。
なお、原料として用いる高分子アゾ重合開始剤のPEG換算のモル数に対する多官能性モノマーのモル数の比を変えることによって、各コア−シェル型高分子微粒子の膨潤度を変化させることもできる。具体的には、PEG換算のモル数に対する多官能性モノマーのモル数の比が小さくなるほど、膨潤度は大きくなる傾向がある。これは、多官能性モノマーに対して高分子アゾ重合開始剤の濃度が高くなるほど、コアにおける三次元架橋の架橋密度が小さくなることに加えて分岐が起きやすくなるためと考えられる。
本発明の高分子ゲルにおいては、複数のコア−シェル型高分子微粒子がPEG鎖を介して連結されている。さらに、各コア−シェル型高分子微粒子は、複数の高分子が共有結合により架橋されて一体となった構造を有する。従って、本発明の高分子ゲルは、高温及び溶媒中において安定に存在する。すなわち、加熱しても溶融、熱分解しにくく、また溶媒中に分散させた際に良溶媒であっても溶解しないという特徴を有する。
上記のようにして得られた本発明の高分子ゲルは、乾燥させた後、香料成分を含浸させることにより、芳香性高分子ゲルとすることができる。
2.芳香性高分子ゲル
本発明の芳香性高分子ゲルは、上記の本発明の高分子ゲルに香料成分が含浸されてなる。本発明の芳香性高分子ゲルは、上記のとおり、香料成分が高含量で含浸され、かつ、種々の樹脂に対する混和性に優れるという特徴を有する。
香料成分としては、特に制限されず、精油、合成香料などが挙げられる。精油としては、特に制限されず、天然精油や、天然精油に可溶化剤などを添加して水溶性にされた精油、その他天然化粧水などが使用できる。天然精油としては、特に制限されず、例えば、檜油(ヒノキ油)、ローズ油、ローズウッド油、ラベンダー油、オレンジ油、フィトンチッド)などが挙げられる。また、合成香料としては、特に制限されず、例えば、テルペン系化合物、脂肪族化合物、芳香族化合物、または複素環式化合物を基本骨格とした酸化物、窒化物、または硫化物などが挙げられる。香料成分は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の高分子ゲルは、複数種類の香料成分を個別に含浸させて混合することができるため、香料成分を調合して所望の芳香性を有する芳香性高分子ゲル混合物とすることができる。
本発明の芳香性高分子ゲルにおける香料成分の割合としては、特に制限されないが、香料成分を高含量で含みつつ、種々の樹脂に対する混和性を向上させる観点からは、乾燥した高分子ゲル1質量部に対して、好ましくは0.5〜50質量部程度、より好ましくは1〜25質量部程度が挙げられる。
香料成分を含浸させる方法としては、特に制限されず、上記の高分子ゲルの乾燥物と液状の香料成分とを混合すればよい。上記のとおり、本発明の高分子ゲルは、香料成分を高含量で容易に含浸させることができる。例えば、高分子ゲルに香料成分を滴下することにより、これらを攪拌しなくても香料成分が高分子ゲルに急速に含浸され、高分子ゲルは膨潤する。
本発明の芳香性高分子ゲルは、芳香剤などとしてそのまま用いてもよいし、後述の通り、樹脂に分散させて芳香性樹脂として用いてもよい。
3.芳香性樹脂
本発明の芳香性樹脂は、上記の本発明の芳香性高分子ゲルが樹脂中に分散されてなる。芳香性高分子ゲルを分散させる樹脂としては、芳香性を発揮させる所望の用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば、粘着性樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。すなわち、本発明の芳香性樹脂は、例えば、上記の芳香性高分子ゲルを、粘着性樹脂、ウレタン樹脂などに分散させることにより得られる。なお、後述の通り、ウレタン樹脂などに芳香性高分子ゲルを分散させる場合には、ウレタン樹脂の水性ディスパージョンに芳香性高分子ゲルを分散させて芳香性樹脂を形成することが好ましい。
例えば、本発明の芳香性高分子ゲルを粘着性樹脂に分散させ、これをシート状に成形することにより、芳香性粘着シートとすることができる。芳香性粘着シートは、粘着シートに芳香性が付与されたものである。芳香性粘着シート中における本発明の芳香性高分子ゲルの含有量としては、適宜選択すればよいが、香料成分を高含量で含浸させた高分子ゲルを混和性高く樹脂中に分散させ、さらに芳香性粘着シートの粘着性を良好なものとする観点からは、好ましくは0.01〜50質量%程度、より好ましくは1〜25質量%程度が挙げられる。
粘着性樹脂としては、特に制限されないが、好ましくは粘着性または非粘着性のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。粘着性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、芳香性高分子ゲルは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、芳香性樹脂シートは単層であってもよいし、複層であってもよい。複層である場合、異なる芳香性を備える層を積層してもよい。
また、例えば、本発明の芳香性高分子ゲルをウレタン樹脂などの水性ディスパージョンに分散させ、これをシート状に成形することにより、芳香性樹脂シートとすることができる。上記のとおり、高分子ゲルに香料成分が含浸された芳香性高分子ゲルは、水性媒体および各種樹脂との親和性に優れている。よって、芳香性高分子ゲルは、例えばウレタン樹脂などの水性ディスパージョンに対して均一に分散させることができる。得られた分散体をシート状に成形し、芳香性が付与された樹脂シート(芳香性樹脂シート)が得られる。水性ディスパージョン中における本発明の芳香性高分子ゲルの含有量としては、適宜選択すればよいが、芳香性高分子ゲルを混和性が高く水性ディスパージョン中に分散させる観点からは、好ましくは0.01〜50質量%程度、より好ましくは1〜25質量%程度が挙げられる。
基材を構成する素材としては、特に制限されず、例えば、樹脂(フィルム、ゴム、スポンジ、不織布)、紙(離型紙など)、金属、木材、などが挙げられる。樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、芳香性高分子ゲルは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明において、基材上に形成された水性ディスパージョンに由来する層は、単層であってもよいし、複層であってもよい。複層である場合、異なる芳香性を備える層を積層してもよい。
本発明の芳香性樹脂シートは、粘着層を積層して芳香性粘着シートとして使用することができる。また、本発明の芳香性粘着シートは、基材を積層して芳香性樹脂シートとして使用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
実施例1
200mlの四つ口フラスコに高分子アゾ開始剤VPE0201(和光純薬製、PEG鎖の分子量2000)1.131g(PEG換算のモル数5.0×10-4モル)を入れ、イオン交換水75mlに完全に溶かした後、この溶液にエタノール25ml、エチレングリコールジメタクリレート(以下、EGDMAという)1.982g(1×10-2モル)を加えて攪拌した(水/エタノールの体積比=3:1)。EGDMAのモル数/上記開始剤のPEG換算のモル数=20であった。次に、得られた反応溶液を吸引濾過した。濾過後の外観写真を図1に示す。次に、これを乾燥させて、コアがEGDMA、シェルがPEG単位を含む、コア−シェル型高分子ゲル微粒子が連結した粉末状の高分子ゲルE1を2.3g得た。得られた高分子ゲルE1のSEM像(倍率5万倍)を図2に示す。図2から、高分子ゲルE1では、複数のコア−シェル型高分子ゲル微粒子が連結されており、微粒子と連結鎖とによって多数の空隙が形成されていることが分かる。また、高分子ゲルE1の平均粒子径は、17.05μmであった。なお、平均粒子径は、高分子ゲルE1を水に分散させ、動的光散乱法による粒度分布測定を行って得られた個数平均の値である。測定装置としては、大塚電子社製の動的光散乱装置(ELS−8000)を用いた。
次に、高分子ゲルE1(1g)の上から透明な檜油(山桂産業株式会社製の檜油)20gを滴下した。その結果、檜油が高分子ゲルE1に急速に含浸されて高分子ゲルは大きく膨潤し、流動性が大きく低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG1が得られた。このとき、檜油を高分子ゲルE1に含浸させる際には、攪拌は必要なく、高分子ゲルE1に檜油が高含量で容易に含浸された。
次に、得られた芳香性高分子ゲルEG1(0.2g)を金属布(株式会社網専製のステンレスメッシュ#160)の(15mm×20mm)の範囲に均一に塗布した。塗布直後における人が感じる芳香の強さは、檜油の量が同量となるようにして金属布に直接塗布した場合と同程度であった。また、檜油を金属布に直接塗布したものは、室温で放置すると3日目にほとんど臭いがしなくなったが、芳香性高分子ゲルEG1を塗布したものは、10日目にほとんど臭いがしなくなった。この結果から、芳香性高分子ゲルEG1を用いることにより、長期間に亘って芳香性が持続することが明らかとなった。
比較例1
イオン交換水の量を60mlとしたこと、及びエタノールの量を40mlとしたこと以外は、実施例1と同様にして粉末状の高分子ゲルE2を2.2g得た(水/エタノールの体積比=3:2)。高分子ゲルE2を合成した後に得られた反応溶液を吸引濾過し、濾過後の外観写真を図3に、E2のSEM像(倍率5万倍)を図4に示す。図1と図3の比較から図1の方が嵩高いことがわかる。また、高分子ゲルE2の平均粒子径は、実施例1と同様にして測定したところ、472.6nmであった。
次に、高分子ゲルE2(1g)の上から透明な檜油(山桂産業株式会社製の檜油)10gを滴下した。その結果、檜油が高分子ゲルE2に急速に含浸されて高分子ゲルは大きく膨潤し、流動性が大きく低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG2が得られた。このとき、檜油を高分子ゲルE2に含浸させる際には、攪拌は必要なく、高分子ゲルE2に檜油が高含量で容易に含浸された。一方、該高分子ゲルE2(1g)に檜油20gを滴下すると、滴下量が10gまでは、檜油が高分子ゲルE2に徐々に浸透して膨潤したが、それ以上滴下すると、檜油が高分子ゲルE2の外部に留まり、流動性のある精油粘稠液が得られた。
比較例1においては、高分子ゲルE2の合成時において、分散媒(水/アルコール)における水の割合を60質量部と少なくしたため、溶媒中においてPEG鎖は広がりにくくなってPEG鎖を介したコア-シェル微粒子の連結が少なくなり、高分子ゲルE2のコア領域の外側にあるPEG鎖が大半を占める領域の空隙が少なくなって、結果として、高分子ゲルE2に浸透できる水、極性溶媒、精油の最大量が小さくなったと考えられる。なお、本発明において、高分子ゲルに浸透できる精油の最大量付近に達したとき、高分子ゲルの流動性が大きく低下する。例えば、実施例1の1gの高分子ゲルE1では、20gの檜油を含浸させた場合に流動性が大きく低下したため、1gの高分子ゲルE1に含浸できる檜油の最大量は20g程度である。一方、比較例1の1gの高分子ゲルE2では、10gの檜油を含浸させた場合に流動性が大きく低下したため、1gの高分子ゲルE2に含浸できる檜油の最大量は10g程度であり、檜油を20g加えた場合には、含浸されなかった檜油が高分子ゲルE2の外部に留まる。
<各種香料成分の含浸特性の評価>
実施例1で得られた高分子ゲルEG1(1g)に対して、上記の檜油以外の各種の香料成分20g(高分子ゲルEG1の20倍の質量)を上記と同様に滴下し、下記の基準に従い香料成分の含浸特性を評価した。結果を表1に示す。
(含浸特性の評価基準)
◎:攪拌しなくても香料成分が高分子ゲルE1に急速に含浸されて高分子ゲルE1は大きく膨潤し、流動性が大きく低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG1が得られる。
○:攪拌しなくても香料成分が高分子ゲルE1に徐々に含浸されて高分子ゲルE1は膨潤し、流動性が低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG1が得られる。
△:攪拌しなくても香料成分が高分子ゲルE1にゆっくりと含浸されて高分子ゲルE1は膨潤し、流動性が低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG1が得られる。
×:香料成分が高分子ゲルE1に含浸され難いため、攪拌が必要であるが、高分子ゲルE1は膨潤し、流動性が低下した半透明のペースト状の芳香性高分子ゲルEG1が得られる。
なお、表1に示す香料成分の詳細は以下の通りである。なお、水溶性精油は、可溶化剤などによって水溶性に調整されている。
(精油)
ローズ:山桂産業株式会社製油のローズ・アター
ローズウッド:株式会社美健製のローズウッド
ラベンダー:株式会社生活の木製のラベンダー(フランス産)
オレンジ:株式会社良品計画製のスウィートオレンジ(ブラジル産)
(ブレンド精油)
フィトンチッド:株式会社タジマヤオービス製のフィトンαナチュラルオイル森の香り(水溶性精油)
ティートゥリー:株式会社美健製の水溶性ティートゥリー(可溶化剤を含む)
イランイラン:株式会社美健製の消臭・除菌水溶性イランイラン(可溶化剤、シクロデキストリン、カチオン抗菌剤を含む)
(フレグランスオイル)
ラベンダー様成分:株式会社グローバルプロダクトランニング製のPower Essence No.11ラベンダーパープル(アルコールを含む)
オレンジ様成分:株式会社パルス製のルームスプレー ORANGE SUNSET(アルコールと水を含む)
(化粧水)
ローズ:株式会社生活の木製のフローラルウォーター<ローズセンティフォリア>(水を含む)
表1に示される結果から、高分子ゲルE1は、香料成分の含浸特性に優れ、香料成分を高含量で容易に含浸できることが分かる。
<水系樹脂エマルジョンとの混和性評価>
上記の各種香料成分の含浸特性の評価で作製した芳香性高分子ゲルEG1のうち、精油として檜油、水溶性精油としてティートゥリー、フラグランスオイル、及び化粧水について、それぞれ表2の記載の水系樹脂エマルジョンとの混和性を以下の基準に従い評価した。結果を表2に示す。なお、混合できる水系樹脂エマルジョンは以下に限るものではない。
(混和特性の評価基準)
◎:混合時に均一に分散して、徐々にマヨネーズ状に増粘する。
○:混合時に均一に分散して、粘度変化しない。
△:混合時は分散する。但し、徐々に一部が沈降するが、振とうすると再度均一に分散する
×:混合時に相分離する。または、混合時に凝集物ができる。
なお、表2に示す水系樹脂エマルジョンの詳細は以下の通りである。
パーマリンUA−200:三洋化成工業株式会社製のポリウレタン樹脂エマルション
スーパーフレックスE-4800;第一工業製薬株式会社製のポリウレタン水分散体
アロンタックHVC−9500:東亜合成株式会社製のエマルジョン型アクリル系粘着剤
表2に示される結果から、芳香性高分子ゲルEG1は、概ね水系樹脂エマルジョンとの混和性に優れていることが分かる。また、芳香性高分子EG1を構成する香料成分に応じて、特に混和性が優れている水系樹脂エマルジョンを適宜選択することができる。
<各種溶媒の含浸特性の参考評価>
参考のため、実施例1で得られた高分子ゲルEG1(1g)に対して、表1に記載の各種溶媒20gを上記の各種香料成分の含浸特性の評価と同様に滴下し、上記と同じ基準に従い各種溶媒の含浸特性を評価した。結果を表3に示す。
表3に示される結果から、高分子ゲルE1は、各種の溶媒を含浸できることが分かる。
実施例2
パーマリンUA−200(10質量部)に対し、実施例1により得られた芳香性高分子ゲルEG1(2質量部)を混合して芳香性樹脂EGR1を得た。当該芳香性樹脂EGR1をスクリーン印刷によりオレフィン系樹脂層を表面にもつ離型性PETフィルム(厚み0.15mm)上に塗布して乾燥させることにより、シート厚0.20mm、50mm×70mmの芳香性樹脂シートER1を得た。次に、粘着剤HV C−9500(100質量部)に対して、実施例1により得られた高分子ゲルE1(0.3質量部)を配合した芳香性をもたない弱粘着剤En1を厚み(0.015)mmとなるようにして剥離紙(厚み0.075mm)に塗工して乾燥させた。次に、上記で得た芳香性樹脂シートER1に当該弱粘着剤En1を貼り合わせて転写塗工し、周囲をカットしてシート厚0.25mm、40mm×60mmの芳香性粘着シートERn1を得た。なお、芳香性粘着シートERn1の使用時は、先に剥離紙を剥がして被着体に貼り付けたのちに、離型性PETフィルムを剥離して、芳香成分の放出を開始することができる。

Claims (12)

  1. 複数のコア−シェル型高分子微粒子が連結されてなる高分子ゲルであって、
    前記コア−シェル型高分子微粒子のシェルは、ポリエチレングリコール単位を有するポリマーにより形成されており、コアは、前記シェルを形成するポリマーとは異なるポリマーにより形成されており、前記複数のコア−シェル型高分子微粒子は、ポリエチレングリコール鎖を介して連結されている、高分子ゲル。
  2. 前記コア−シェル型高分子微粒子のコアが、(メタ)アクリル系ポリマーにより形成されている、請求項1に記載の高分子ゲル。
  3. 前記コア−シェル型高分子微粒子が、ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤と多官能モノマーとを重合させることにより得られたものである、請求項1または2に記載の高分子ゲル。
  4. 前記ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤が、下記一般式(I):
    [式中、mは、20〜250の整数である。]
    で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子ゲル。
  5. 前記コア−シェル型高分子微粒子の粒子径が、20〜3000nmの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子ゲル。
  6. 平均粒子径が0.5〜100μmの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子ゲル。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子ゲルに香料成分が含浸されてなる、芳香性高分子ゲル。
  8. 請求項7に記載の芳香性高分子ゲルが樹脂中に分散されてなる、芳香性樹脂。
  9. 前記樹脂が粘着性樹脂である、請求項8に記載の芳香性樹脂。
  10. 請求項8または9に記載の芳香性樹脂がシート状に成形されてなる芳香性樹脂シート。
  11. 請求項8または9に記載の芳香性樹脂が基材上に固定されてなる、芳香性樹脂シート。
  12. ポリエチレングリコール単位を有する高分子アゾ重合開始剤と多官能モノマーとを重合させる工程を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子ゲルの製造方法。
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