JP2015149911A - 酵素を利用したフェニルプロパン系化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、従前の方法と比較して、酵素を作用させることにより、リグニンを含む天然バイオマスからフェニルプロパン構造を有する化合物を生産するに際して利用される、グルタチオン付加カルボニル系化合物からフェニルプロパン系化合物を特異的かつ効率的に生産する方法を提供することにある。【解決手段】上記目的は、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に、還元型グルタチオンの存在下で、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来するglutathione S−transferaseを作用させることにより、フェニルプロパン系化合物を得る工程を含む、フェニルプロパン系化合物の製造方法及び該酵素により解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、酵素を利用してグルタチオン付加フェニルプロパン系化合物からフェニルプロパン構造を有する化合物を特異的に生産する方法及びそのための酵素に関する。
リグニンは植物の維管束細胞壁成分として存在する無定形高分子物質であって、フェニルプロパン系の構成単位が複雑に縮合したものであり、メトキシ基を含有することが化学構造上の大きな特徴になっている。リグニンは木質化した植物細胞を相互に膠着し、組織を強化する働きをしており、木材中に18〜36%、草本中には15〜25%存在する。そこで、木材を有効利用するために、リグニンを分解し、有用化合物を得ようとする試みが種々なされている。
一方、フェニルプロパン系化合物としては、例えば、クマル酸、ケイ皮酸、コーヒー酸(3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)、オイゲノール、アネトール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコール、フェルラ酸などが知られている。フェニルプロパン系化合物は、工業分野においては、香水、香料、精油、殺菌剤、麻酔薬、抗酸化剤などの医薬品や機能性食品及びそれらの合成中間体となる有用な化合物群である。
例えば、木材、イナワラなどのリグノセルロース物質に含まれるリグニンを、高温高圧処理によりガス化する方法(特許文献1及び2を参照)、加圧熱水法(特許文献3を参照)などの物理化学的な方法によって、非特異的に低分子化する方法が知られている。しかしながら、これらの手法では、リグニンから特定の化合物を製造することは非常に困難である。これらの方法を採用すると、リグニンの持つ単位構造であり、ベンゼン環骨格に直接結合する炭素側鎖の炭素数が3個であるフェニルプロパン系化合物はさらに低分子化される。すなわち、グアイヤコール、シリンゴールなどのベンゼン環骨格に直接結合する炭素側鎖の炭素数が0個のフェノール類や、バニリン、シリンガアルデヒドなどのベンゼン環骨格に直接結合する炭素側鎖の炭素数が1個のフェニルメタン化合物などに非特異的に変換される。また、分解生成物は多種多様な成分が混在しており、フェニルプロパン系化合物のみを取得することは非常に困難であり、特異的に製造することができない。また、これらの物理化学的な方法を採用する場合、これらの方法を実施するためには多くのエネルギーや特別な装置が必要である。
そこで、リグニンを生物学的に処理してリグニン分解物を得ようとする試みがなされている。例えば、リグノセルロース物質に白色腐朽菌を接種及び培養することによってリグニンを分解する方法が知られている(特許文献4を参照)。
ところで、天然リグニン中にはβ−アリールエーテル型結合が約50%存在していることから、β−アリールエーテル型結合を分解し得るか否かは、天然リグニンの分解において重要な意義をもつ。このβ−アリールエーテル型結合の特異的な分解酵素を生産する微生物としては、スフィンゴビウム(Sphingobium)属細菌(特許文献5及び非特許文献1を参照;ただし、非特許文献1には「シュードモナス(Pseudomonas)属細菌」として記載されている)、ブレバンディモナス(Brevundimonas)属細菌(特許文献6を参照)及びシュードモナス属細菌(非特許文献2を参照)が知られている。
特許文献4〜6及び非特許文献1〜2には、スフィンゴビウム属細菌、ブレバンディモナス属細菌及びシュードモナス属細菌並びにこれらの微生物によって生産されるβ−アリールエーテル切断酵素によって、リグニンのモデル化合物であるグアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテル又は3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)−1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノンのβ−アリールエーテル切断によってフェニルプロパン系化合物を生産する方法が記載されている。
また、非特許文献3には、スフィンゴビウム属細菌由来のβ−アリールエーテル型結合分解酵素を用いて、グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルからフェニルプロパン系化合物を生産しようとする場合、グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのCα位の炭素原子及び該炭素原子に結合するアルコール性ヒドロキシ基に作用してカルボニル基を形成する第1の反応;生じたカルボニル化合物内に存在するβ−O−4位のエーテル結合を開裂させる第2の反応;並びに、第2の反応で生じたグルタチオン含有中間体からグルタチオンを除去する第3の反応の3段階の酵素逐次反応を経ることによって、フェニルプロパン系化合物を製造することができることが記載されている。
特開2012−140346号公報 特開2012−50924号公報 特開2010−239913号公報 特開昭50−46903号公報 特開平5−336976号公報 特開2002−34557号公報
FEBS Lett.249(2),1989,pp.348−352 Mokuzai Gakkaishi,Vol.31(11),1985,pp.956−958 Biosci Biotechnol Biochem.2011;75(12):2404−7
特許文献4に記載の方法によれば、微生物の作用によってリグニンを分解し得る可能性がある。しかし、特許文献4に記載の白色腐朽菌や白色腐朽菌が産生するリグニン分解酵素をリグノセルロース物質に作用させた場合、これらのリグニン分解反応の特異性が非常に低いことから、構造に統一性がない生成物ができるばかりか、主として生成物による重合反応が進行する。したがって、特許文献4に記載の方法は、反応生成物が工業原料としての利用性に欠けるという問題を有する。
特許文献5〜6及び非特許文献1〜3に記載の方法は、リグニンのモデル化合物から、微生物やその生産酵素を利用して、フェニルプロパン系化合物を製造する方法である。しかし、これらの文献には、天然のバイオマスから、微生物や酵素を作用させることによって、フェニルプロパン系化合物を得たとする記載はない。
非特許文献3に記載の酵素は、4種類の光学異性体(αS,βR;αR,βS;αR,βR;αS,βS)が存在するグアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのうち、αR,βS体及びαS,βS体のグアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのみを出発原料とすることができるが、αS,βR体及びαR,βR体を出発原料とすることはできない。その結果として、得られるフェニルプロパン系化合物の収量が低くなるという問題がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、特許文献5〜6及び非特許文献1〜3に記載の方法と比較して、酵素を作用させることにより、リグニンを含む天然バイオマスからフェニルプロパン構造を有する化合物を生産するに際して利用される、グルタチオン付加カルボニル系化合物からフェニルプロパン系化合物を特異的かつ効率的に生産する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ね、深海沈木から単離したリグニン分解微生物であるノボスフィンゴビウム・エスピー MBES04株のゲノム配列情報を解読し、その情報からリグニンを含む天然バイオマスからフェニルプロパン構造を有する化合物を特異的に生産することに関与する一連の酵素の遺伝子群を取得することに成功した。さらに取得した遺伝子群から組換え酵素群を作製し、リグニン含有バイオマスを基質としてこれらの酵素群の分解様式を解析した結果、フェニルプロパン系化合物を特異的かつ高収率で生産することができる酵素6種を見出した。そのうち、グルタチオン・S−転移酵素であるC10G0078及びC10G0075は、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンのグルタチオン付加体に作用するところ、C10G0075については1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンの光学異性体βS体及びβR体の両方から転換された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンのグルタチオン付加体に作用することができるという驚くべき知見を得た。特に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβR体から転換された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンのグルタチオン付加体に作用し、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを生成する酵素はこれまでに知られていない。本発明はこのような成功例や知見に基づいて完成するに至った発明である。
したがって、本発明によれば、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に、還元型グルタチオンの存在下で、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する下記(3)及び/又は(4)の酵素を作用させることにより、フェニルプロパン系化合物を得る工程を含む、フェニルプロパン系化合物の製造方法が提供される。
(3)Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
(4)Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
好ましくは、本発明の製造方法において、前記(3)の酵素が配列表の配列番号5に記載のC10G0078であり、かつ、前記(4)の酵素が配列表の配列番号6に記載のC10G0075である。
本発明の別の側面によれば、本発明の第1の酵素として、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseが提供される。
好ましくは、本発明の第1の酵素において、前記ノボスフィンゴビウム属微生物が、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(受領番号:NITE AP−01797)である。
好ましくは、本発明の第1の酵素において、前記glutathione S−transferaseは、SDS−PAGEで確認できる分子量が33kDaである。
好ましくは、本発明の第1の酵素において、前記glutathione S−transferaseは、配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するglutathione S−transferaseである。
本発明の別の側面によれば、本発明の第2の酵素として、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseが提供される。
好ましくは、本発明の第2の酵素において、前記ノボスフィンゴビウム属微生物が、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(受領番号:NITE AP−01797)である。
好ましくは、本発明の第2の酵素において、前記glutathione S−transferaseは、SDS−PAGEで確認できる分子量が27kDaである。
好ましくは、本発明の第2の酵素において、前記glutathione S−transferaseが、配列表の配列番号6に記載のC10G0075である。
本発明の製造方法や酵素によれば、農業廃棄物や木材などの天然物に由来するリグニンやリグニン関連物質を含むバイオマスからフェニルプロパン構造を有する有用化合物を製造するに際して利用される、フェニルプロパン系化合物の中間体であるグルタチオン付加フェニルプロパン系化合物からグルタチオンを脱離させて、フェニルプロパン系化合物を特異的かつ効率的に製造することができる。
図1は、フェニルプロパン系化合物で用いられる酵素群の一態様と、作用する基質の光学異性体との関係を模式化した図である。 図2は、c10g0069遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図3は、c10g0093遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図4は、c10g0076遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図5は、c10g0077遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図6は、c10g0078遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図7は、c10g0075遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行った結果を示した図である。 図8は、C10G0069の最適温度を評価した結果を示した図である。 図9は、C10G0069の最適pHを評価した結果を示した図である。 図10は、C10G0093の最適温度を評価した結果を示した図である。 図11は、C10G0093の最適pHを評価した結果を示した図である。 図12は、C10G0076の最適温度を評価した結果を示した図である。 図13は、C10G0076の最適pHを評価した結果を示した図である。 図14は、C10G0077の最適温度を評価した結果を示した図である。 図15は、C10G0077の最適pHを評価した結果を示した図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の製造方法は、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に、還元型グルタチオンの存在下で、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する下記(3)及び/又は(4)の酵素を作用させることにより、フェニルプロパン系化合物を得る工程を含む、フェニルプロパン系化合物の製造方法である。
(3)Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
(4)Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
本発明の製造方法では、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物が、ノボスフィンゴビウム属微生物に由来する上記(3)、(4)、又は(3)及び(4)の酵素の作用を受けることにより、グルタチオンが脱離した3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3、5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノンなどのフェニルプロパン系化合物が生成される。
フェニルプロパン系化合物は、フェニルプロパン構造を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、下記一般式(A)
(A)
(式中、Rは1個又は2個以上の炭素数が1〜5であるアルキル基、アルコキシ基又は水素原子を示す。)
で表わされる、1位の位置にカルボニル基を有し、かつ、3位及びフェニル基の4位にヒドロキシ基を有する化合物であり、より具体的には3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3、5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン又は3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノンであり、好ましくは3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンである。
これらのうち、例えば、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、下記式(I)の構造からなる。
(I)
3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、例えば、逆相HPLCにより、定性及び定量的に分析できる。逆相HPLCの条件は、例えば、オクタデシルシリル基修飾シリカゲルカラム(ODSカラム)を用いて、溶離液A(2mM 酢酸アンモニウム、0.05%V/V ギ酸)及び溶離液B(100%V/V メタノール)を用いて、カラム温度を40℃、流速を1.2ml/minと設定して、溶離液A 90%V/V及び溶離液B 10%V/Vの混合液を1分間送液した後、溶離液Bを10%V/V〜95%V/Vのグラジェントで7分間送液する。この条件により、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、UV検出器(270nm)を用いることにより、保持時間4.5分付近のピークとして検出できる。3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの標準品を用いれば、検量線法や内標準法などにより、定量することが可能である。
本発明の製造方法では、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物を出発原料として使用する。グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物は、上記したフェニルプロパン系化合物のβ位の炭素原子にグルタチオンが付加した化合物であれば特に限定されず、例えば、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβ位の炭素原子におけるアリールグリセロール−β−アリールエーテル型結合を還元的に切断して、β位の炭素原子にグルタチオンが付加された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを生成する酵素、好ましくは後述する実施例に記載の非特許文献9に記載のあるスフィンゴビウム・スピーシーズ(Sphingobium sp.)SYK−6株由来のligG遺伝子(YP_004833999)がコードするLigG、並びにノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04株由来の配列表の配列番号3及び4に記載のC10G0076及びC10G0077などの酵素を、リグニン、リグニン関連物質又はこの両方を含むバイオマスを処理して得られる1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンなどのカルボニルフェニルプロパン系化合物に作用させて得られる化合物が挙げられる。グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物の具体例として、下記式(H)の化合物が挙げられるが、これに限定されない。
(H)
リグニンは、当業界において通常知られるものであれば特に限定されないが、例えば、植物の維管束に存在し、主として下記式(B)〜(D)として示す3種のフェニルプロパノイドを構成単位として複雑に重合した樹枝状構造を有するものとして知られているものである。
(B)
(C)
(D)
リグニン関連物質は、リグニンから誘導される物質であれば特に限定されず、例えば、リグニンの分解物やリグニンを処理して得られる物質に加えて、リグニンのモデル化合物とされている物質、例えば、グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルなどを含む。バイオマスは、リグニン、リグニン関連物質又はこの両方を含むものであれば特に限定されず、例えば、草や木などの天然物、これら天然物に処理を加えて得られるもの、農業廃棄物などが挙げられる。
リグニン及び/又はリグニン関連物質を含むバイオマス(以下、リグニン含有バイオマスともよぶ。)は、前処理の有無などによって、例えば、固体状、懸濁状、液体状などであり得る。例えば、リグニン含有バイオマスを粉砕したものを液体に加えて得られる懸濁液とすることもできる。
また、リグニン含有バイオマスは、リグニン抽出物であってもよい。リグニン抽出物としては、例えば、リグニン含有バイオマスの粉末化したものを、0.1%W/V〜50%W/V、好ましくは1%W/V〜20%W/Vとなるように、リグニンの抽出に適した溶媒中に懸濁して懸濁液とし、この懸濁液を10℃〜150℃、好ましくは20℃〜130℃、より好ましくは20℃〜80℃で、数時間〜数日間、好ましくは1時間〜6日間の抽出処理に供し、次いで抽出処理液から固形分を除いた液体状のリグニン抽出物、又は液体状のリグニン抽出物から溶媒を留去し、乾固することにより得られる固体状のリグニン抽出物などが挙げられる。
リグニンの抽出に適した溶媒は特に限定されず、例えば、水、ジオキサン、メタノール、イソプロパノールなどの低分子アルコール類、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、好ましくは水及びジオキサンである。
本発明の製造方法では、グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物からフェニルプロパン系化合物を得るために、ノボスフィンゴビウム属微生物に由来する酵素を用いる。ノボスフィンゴビウム属微生物は、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属、別名としてスフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する、0.3〜0.8×2〜3μmのグラム陰性桿菌であれば特に限定されないが、例えば、各種芳香族化合物を分解することが知られているノボスフィンゴビウム属微生物である。本発明の製造方法において用いられるノボスフィンゴビウム属微生物の好ましい具体例は、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(以下、MBES04株ともよぶ。)である。
MBES04株は、微生物の識別の表示を「Novosphingobium sp.MBES04」とし、かつ、受領番号を「NITE AP−01797」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に2014年1月30日付けの受領日により寄託されている。
酵素(3)Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase及び酵素(4)Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseは、β位の炭素原子にグルタチオンが付加された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該グルタチオンを脱離して、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを生成する活性を有する。PRK10387は、PSSM−Idが236679である、glutaredoxin2;Provisional中によく見出されるアミノ酸配列である。PRK11752は、PSSM−Idが183298である、putative S−transferase;Provisional中によく見出されるアミノ酸配列である。GstのE−valueは、C10G0078に対して2.26e−14であり、C10G0075に対して5.08e−44である。maiAのE−valueは、C10G0078に対して9.25e−03であり、C10G0075に対して4.73e−09である。PRK10387のE−valueは、C10G0078に対して0.02である。PRK11752のE−valueは、C10G0075に対して5.41e−52である。PRK15113のE−valueは、C10G0075に対して1.11e−12である。本明細書で「マルチドメインを有する」とは、マルチドメインそのもののアミノ酸配列を有することに加えて、マルチドメインの一部のアミノ酸配列をN末端側又はC末端側などに有すること、マルチドメインと近似するアミノ酸配列を有することなどを意味する。
酵素(3)及び(4)は、還元型グルタチオンの存在下で、β位の炭素原子にグルタチオンが付加された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンのβ位の炭素原子及び/又は付加グルタチオンに作用して、結果的に付加したグルタチオンが還元型グルタチオンと二量体を形成して酸化型グルタチオンとなり脱離することにより、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを生成させることができる酵素であると推測し得るが、この推測によって本発明の技術的範囲が変動するものではない。
酵素(3)及び(4)の具体的な例は、それぞれ配列表の配列番号5に記載のC10G0078及び配列表の配列番号6に記載のC10G0075である。
C10G0078及びC10G0075の理化学的性質は以下のとおりである。すなわち、C10G0078及びC10G0075は還元型グルタチオンの存在下で、グルタチオンの脱離を触媒する。一方、これらの酵素は、還元型グルタチオンの非存在下では、このような触媒活性を示さない。そこで、本発明の製造方法では、還元型グルタチオンの存在下で酵素反応が実施される。C10G0078の分子量はSDS−PAGEで33kDaである。C10G0075の分子量はSDS−PAGEで27kDaである。なお、本明細書では、分子量は大腸菌組換えタンパク質についての分子量を表わす。
1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンにおいて、β位の炭素原子が不斉炭素であることから、βS(S);βR(R)という2種類の光学異性体が存在する。したがって、C10G0078及びC10G0075が作用するグルタチオン添加3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンには、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβS体から得られたもの(以下、βS体由来基質ともよぶ。)及び1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβR体から得られたもの(以下、βR体由来基質ともよぶ。)の2種類が存在する。これらのうち、C10G0078はβS体由来基質に特異的に反応するが、C10G0075はβS体由来基質及びβR体由来基質の両方に特異的に反応するという性質を有する。
このようにC10G0075は非常にユニークな活性を有する。C10G0075に類似するタンパク質としては、UniProtKB/Swiss―Protデータベース(Nucl.Acids Res.(1996)24(1):21−25.doi:10.1093/nar/24.1.21を参照)に登録されているもののうち、スフィンゴビウム・ゼノファガム(Sphingobium xenophagum)由来のglutathione S―transferase(WP_019052362)に70%のIdentity(E−value 5e−82)を示し、その他にも多くの生物門を超えてglutathione S―transferaseと推定されるタンパク質に一致性を示した。
例えば、42%のIdentity(E−value 5e−43)があるものとして大腸菌(Escherichia coli)−K12株由来のYfcG(J Biochem.2006;140(5):703−11及びBiochemistry.2009;48(28):6559−61を参照)がある。このタンパク質は、1−chloro−2,4−dinitorobenzeneに対するグルタチオン転移活性や、cumene hydroperoxideに対するperoxidase活性が認められている。別の一例では、42%のIdentity(E−value 5e−43)を有するアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のGlutathione S―transferase F10(略記号:AtGSTF10;アクセッション番号 p42761)がある(Biochem Biophys Res Commun.2009;379(2):417−22を参照)。このタンパク質はglutathione S―transferase Phi family に属し、塩や酸化還元状態の異常に適応するための生物学的機能を有する可能性が指摘されている。別の一例としては、メチロバクテリウム(Methylobacterium)由来のDichloromethane dehalogenase(E−value 2E−09;30%のIdentity)(J Bacteriol.1990;172(1):164−71を参照)があり、このタンパク質は公害物質の一つであるジクロロメタンの脱塩素反応に関与していることが報告されている。
本発明の製造方法で用いられる酵素(3)は、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseであれば特に限定されないが、例えば、上記したC10G0078の理化学的性質を有するものであれば好ましい。本発明の製造方法で用いられる酵素(4)は、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseであれば特に限定されないが、例えば、上記したC10G0075の理化学的性質を有するものであれば好ましい。酵素(3)及び(4)の好ましい態様は、例えば、配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列を有する、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase及び配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列を有する、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseが挙げられる。
このような酵素としては、例えば、配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列を含む、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseや、配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列を含む、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase;配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseや配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseなどが挙げられる。
ここで、アミノ酸配列の「1から数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加」における「1から数個」の範囲は、酵素(3)又は(4)と同一のマルチドメインを有する範囲であれば特に限定されないが、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個、好ましくは1、2、3、4又は5程度を意味する。また、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落若しくは消失を意味し、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていること、及び「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が付け加えられていることをそれぞれ意味する。
「1から数個のアミノ酸の欠失、置換又は付加」の具体的な態様としては、1から数個のアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えらた態様がある。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などを挙げることができる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
また、アミノ酸配列における「同一性」(Identity)は、酵素(3)又は(4)と同一のマルチドメインを有する範囲であれば特に限定されないが、例えば、配列表の配列番号5又は6に記載のアミノ酸配列とアライメントした場合の配列間の同一性が90%以上であり、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、なおさらに好ましくは99%以上である。アミノ酸配列の同一性を求める方法は特に限定されないが、例えば、通常知られる方法を利用して、配列表の配列番号5又は6に記載のアミノ酸配列と対象となるアミノ酸配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を計算することにより求められる。
C10G0078の分子量は、SDS−PAGEで33kDaである。そこで、配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列を有する、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseの分子量は、C10G0078の分子量と近似する分子量であり、例えば、SDS−PAGEで、30〜36kDaであることが好ましく、31〜35kDaであることがより好ましく、32〜34kDaであることがさらに好ましく、33kDa付近であることがなおさらに好ましい。また、C10G0075の分子量は、SDS−PAGEで27kDaである。そこで、配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列と類似するアミノ酸配列を有する、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseの分子量は、C10G0075の分子量と近似する分子量であり、例えば、SDS−PAGEで、24〜30kDaであることが好ましく、25〜29kDaであることがより好ましく、26〜28kDaであることがさらに好ましく、27kDa付近であることがなおさらに好ましい。
酵素(3)及び(4)を取得する方法は特に限定されないが、例えば、ノボスフィンゴビウム属微生物から得た酵素抽出液やその分画液を用いて、基質としてβ位の炭素原子にグルタチオンを付加させた3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンに作用させることにより、基質量の減少や生成物である3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの存在を確認することで、酵素(3)及び(4)を得ることができる。具体的には、C10G0078又はC10G0075の酵素作用、基質(由来化合物の光学異性)特異性、理化学的性質、分子量などを指標として、ノボスフィンゴビウム属微生物、例えば、深海(水面下200m以下の海)において、腐食が進んだ針葉樹沈木に生息するノボスフィンゴビウム属微生物を培養した培養上清中の酵素活性を調べるといったスクリーニング法を挙げることができる。また、例えば、配列表の配列番号5又は6の記載を参照して、物理化学的に合成してもよいし、遺伝子工学的に配列表の配列番号5又は6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子から作成してもよい。なお、配列表の配列番号5及び6に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる遺伝子は、それぞれ配列表の配列番号11及び12に記載したものである。
グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に酵素(3)、(4)又は(3)及び(4)を作用させることにより、フェニルプロパン系化合物が得られる。ここで、「酵素(3)〜を作用させる」とは、例えば、酵素(3)及び(4)が有する、β位の炭素原子にグルタチオンが付加した3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該グルタチオンを脱離する作用を発揮させることを意味する。
酵素(3)及び(4)の具体例であるC10G0078及びC10G0075は、上記したとおり、基質となる化合物の由来となる化合物の光学異性体によって使い分けられる。これらの酵素と作用する化合物との関係を模式化したものを図1とする。例えば、これらの酵素の組み合わせとしては、以下の(1)〜(3)の組み合わせが考えられる。
(1)C10G0078
(2)C10G0075
(3)C10G0078及びC10G0075
酵素(3)及び(4)をグルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に作用させるに際しては、例えば、C10G0078及びC10G0075を活性化するための還元型グルタチオンの存在下で、C10G0078及びC10G0075が活性を示すpH及び温度に設定することが好ましい。また、これらの酵素は同時又は別々に用いてもよい。例えば、還元型グルタチオンの存在下でC10G0078を作用させた後にC10G0075を作用させてもよく、C10G0075を作用させた後にC10G0078を作用させてもよい。酵素(3)及び(4)の作用時にpHの変動を抑えるために、作用系内に緩衝剤を添加することが好ましく、酵素(3)及び(4)のグルタチオン脱離を促進するために、弱アルカリ性又はアルカリ性の緩衝剤を添加することがより好ましい。
後述する実施例に記載があるとおり、酵素(3)及び(4)は他の酵素とともに組み合わせて用いることができる。そのような酵素の例として、グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのCα位の炭素原子を酸化する酵素としてスフィンゴビウム・スピーシーズ(Sphingobium sp.)SYK−6株に由来するligD遺伝子(YP_004833998)、ligL遺伝子(AB491221)、ligN遺伝子(AB491222)及びligO遺伝子(YP_004836720)がコードするアミノ酸配列を有する酵素、並びにノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04株由来の配列表の配列番号1及び2に記載のC10G0069及びC10G0093など;1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβ位の炭素原子におけるアリールグリセロール−β−アリールエーテル型結合を還元的に切断する酵素としてligF遺伝子(YP_004833997)及びligE遺伝子(YP_004833998)がコードするアミノ酸配列を有する酵素、並びにノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04株由来の配列表の配列番号3及び4に記載のC10G0076及びC10G0077など;β位の炭素原子に還元部位を有する3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該還元部位を脱離する酵素としてligG遺伝子(YP_004833999)がコードするアミノ酸配列を有する酵素などが挙げられるが、これらに限定されない。
酵素を作用させる際の出発物質、緩衝剤、酵素、還元型グルタチオンなどの各成分の濃度や存在量は特に限定されず、適宜設定できる。また、出発物質と酵素との接触頻度を高めるために、これらの混合物を撹拌や振とうなどしてもよい。作用時間は目的物質の生成が認められる時間であれば特に限定されず、例えば、数時間〜数日間であり、酵素の力価などによって適宜設定することができる。具体的には、12時間〜36時間程度又はそれ以上の時間である。
グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物の確認方法は、例えば、β位の炭素原子にグルタチオンが付加された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンのHPLC分析条件を採用できる。例えば、β位の炭素原子にグルタチオンが付加された3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、下記の1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのHPLC分析条件によって、保持時間3.4〜3.5分付近のピークとして検出できる。1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンは、例えば、逆相HPLCにより、定性及び定量的に分析できる。逆相HPLCの条件は、例えば、オクタデシルシリル基修飾シリカゲルカラム(ODSカラム)を用いて、溶離液A(2mM 酢酸アンモニウム、0.05%V/V ギ酸)及び溶離液B(100%V/V メタノール)を用いて、カラム温度を40℃、流速を1.2ml/minと設定して、溶離液A 90%V/V及び溶離液B 10%V/Vの混合液を1分間送液した後、溶離液Bを10%V/V〜95%V/Vのグラジェントで7分間送液する。この条件により、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、UV検出器(270nm)を用いることにより、保持時間6.5分付近のピークとして検出できる。
作用系において生成された目的物質は、特別な処理を加えることなくそのままの状態で使用することができるが、例えば、作用後に固相抽出法やクロマトグラム法などの通常知られる芳香族化合物を精製する手段を採用して精製したものとすることができ、さらに溶媒を留去し乾燥させれば固体状のものとして得られる。
本発明の製造方法では、本発明の目的を達成し得る限り、上記した酵素作用工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
本発明の製造方法の第1の具体的態様は、例えば、以下のとおりである。
リグニン含有バイオマスをジオキサンや水などのリグニンを溶解するのに適した溶媒中に懸濁し、20℃〜80℃にて数時間〜数日間保温する。保温後の懸濁液から固形分を除去して、リグニン抽出液を得る。リグニン抽出液を乾固し、得られた乾固物を酢酸エチルやDMFなどの有機溶媒や含水有機溶媒に溶解してリグニン抽出物とする。リグニン抽出物;グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのCα位の炭素原子を酸化する酵素;1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβ位の炭素原子におけるアリールグリセロール−β−アリールエーテル型結合を還元的に切断する酵素;β位の炭素原子にグルタチオンが付加した3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該グルタチオンを脱離する酵素(酵素(3)及び/又は(4));緩衝剤;NAD塩;及び還元型グルタチオンを含む反応液を調製し、pH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させる。反応後の反応液から固相抽出法により精製し、不活性ガス下で乾固して、固体状のフェニルプロパン系化合物を得る。
本発明の製造方法の第2の具体的態様は、例えば、以下のとおりである。
上記リグニン抽出物;グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのCα位の炭素原子を酸化する酵素;緩衝剤;及びNAD塩を含む反応液を調製し、pH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させて得た反応液に、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβ位の炭素原子におけるアリールグリセロール−β−アリールエーテル型結合を還元的に切断する酵素;β位の炭素原子にグルタチオンを付加した3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該グルタチオンを脱離する酵素(酵素(3)及び/又は(4));及び還元型グルタチオンを添加して、さらにpH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させる。反応後の反応液から固相抽出法により精製し、不活性ガス下で乾固して、固体状のフェニルプロパン系化合物を得る。
本発明の製造方法の第3の具体的態様は、例えば、以下のとおりである。
上記リグニン抽出物;グアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテルのCα位の炭素原子を酸化する酵素;緩衝剤;及びNAD塩を含む反応液を調製し、pH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させ、次いで1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オンのβ位の炭素原子におけるアリールグリセロール−β−アリールエーテル型結合を還元的に切断する酵素;及び還元型グルタチオンを添加して、さらにpH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させ、次いでβ位の炭素原子にグルタチオンを付加した3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの該グルタチオンを脱離する酵素(酵素(3)及び/又は(4))を添加して、さらにpH7〜10、20〜40℃で、数時間〜数十時間反応させる。反応後の反応液から固相抽出法により精製し、不活性ガス下で乾固して、固体状のフェニルプロパン系化合物を得る。
本発明の製造方法によって得られたフェニルプロパン系化合物は、例えば、樹脂、接着剤、レジスト材料、医薬品などの原料又はその中間体として利用することができる。具体的には、最終的に3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンが得られる場合、該化合物は、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールを経由して、医薬品、香料、食品材料などの原料として産業上有用なコニフェリルアルコールなどへと転換することができる。
本発明の別の側面によれば、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(受領番号:NITE AP−01797)などのノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase又はGst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferaseが提供される。
本発明の酵素の好ましい態様は、SDS−PAGEで確認できる分子量が33kDa又は27kDaであるglutathione S−transferaseである。
本発明の具体的態様は、配列表の配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するglutathione S−transferase、及び配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するglutathione S−transferaseである。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[実施例1.MBES04株遺伝子の検出]
5mM 硫酸マグネシウムを添加したLB培地(ベクトンディッキンソン社製)に、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium) MBES04株を接種し、30℃、120rpmで24時間振とう培養を行った。得られた培養液から8000rpm、5分間の遠心操作によりMBES04株菌体を得た。
得られた菌体からNucleoSpin PlantII Midiキット(タカラバイオ社製)を用いて総DNAを抽出した。抽出したDNAを用いて、8kb長のメイトペアライブラリーを作成し、ゲノムシークエンサー GS FLXシステム(ロシュ・ダイアグノティクス社製)を用いて配列の解析を行った。配列解析の結果、リード数142,389、平均長441.66bp 総塩基数62,888,162の配列データに係る塩基配列を得た。
得られた塩基配列を解析ソフトウエアNewbler 2.6(ロシュ・ダイアグノティクス社製)を用いてアセンブルした結果、平均長6434.5bpを持つ783個のコンティグが形成された。続いて、8kbのメイトペアライブラリーの両端シーケンス情報から、各コンティグの配列を精査して得られたメイトペア情報に基づきScaffoldを生成させたところ、総塩基数5,596,306から成る37個のSuperContigが得られた。さらにサンガー法を用いてゲノム配列の一部を再解析し、SuperContigを39個とした。得られた39個のSuperContigに含まれる全塩基配列を、GeneMarkS法(非特許文献4を参照)を用いて、39個のSuperContigに含まれる全塩基配列中にコードされる遺伝子領域、すなわちタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに相当する領域を推定した。
[実施例2.リグニン分解酵素の探索]
SYK−6株がリグニン二量体モデル化合物であるグアイアシルグリセロール−β−グアイアシルエーテル(化合物I)を代謝する際の第一段階の反応、すなわち、化合物IのCα位の炭素原子に結合するヒドロキシ基の酸化を触媒する酵素として、LigD、LigL、LigN及びLigO(非特許文献5及び6を参照)並びにそれらをコードするligD遺伝子(YP_004833998)、ligL遺伝子(AB491221)、ligN遺伝子(AB491222)及びligO遺伝子(YP_004836720)が知られている。
そこで、実施例1により得られたMBES04株のゲノム配列情報から検出された全遺伝子をクエリーとして、SYK−6株由来のligD遺伝子、ligL遺伝子、ligN遺伝子及びligO遺伝子に相同性を示す遺伝子を、閾値:Coverage 50%<;Identity 25%<;Similarity 50%<;及びE value <e5に基づいてBLAST相同性検索(blast 2.2.26; National Center for Biotechnology Information)を行った。
その結果、MBES04株のゲノム配列情報から、Short−chain dehydrogenase/reductaseとアノテーションされる配列を有するc01g1162遺伝子、c01g1324遺伝子、c10g0069遺伝子、c10g0080遺伝子、c10g0093遺伝子及びc10g0094遺伝子の計6つの遺伝子が見出された。
MBES04株由来の上記6遺伝子とSYK−6株由来のligD、ligL、ligN及びligOとの相同性に関する情報を表1に示した。
MBES04株由来の6遺伝子:c01g1162遺伝子、c01g1324遺伝子、c10g0069遺伝子、c10g0080遺伝子、c10g0093遺伝子及びc10g0094遺伝子の塩基配列をクエリーとして相同性検索(BLASTn、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastn&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome、Coverage 50%<)を行ったところ、最も配列一致性の高い遺伝子配列としてヒットしたものは、c01g1162遺伝子に対しては71%の一致性でパエニバシラス・スピーシーズ(Paenibacillus sp.)JDR−2株のゲノム上(CP001656.1)の4935562〜4936300番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子;c01g1324遺伝子に対しては75%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1154509〜1155339番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子;c10g0069遺伝子に対しては78%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1241135〜1242028番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子;c10g0080遺伝子に対しては76%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1251645〜1252546番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子;c10g0093遺伝子に対しては80%の一致性でノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)DSM 12444株のゲノム上(CP000248.1)の843288〜844180番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子;c10g0094遺伝子に対しては77%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1266103〜1266974番の位置にあるshort−chain dehydrogenase/reductaseをコードすると推定される遺伝子であった。
上記6遺伝子のうち、c10g0069遺伝子及びc10g0093遺伝子がコードするアミノ酸配列を用いてDELTA−BLASTサーチ(National Center for Biotechnology Information、Domain Enhanced Lookup Time Accelerated BLAST)(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&PROGRAM=blastp&BLAST_PROGRAMS=deltaBlast)を行った。その結果、上記2遺伝子がコードするタンパク質は、いずれもRossmann−fold NAD(P)(+)結合タンパク質スーパーファミリーに属し、かつ、PRK06194のマルチドメインを有する、Short−chain dehydrogenase/reductaseであることがわかった(図2及び図3を参照)。
一方、SYK−6株が化合物Iを代謝する際の第2段階の反応、すなわち、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1−オン(化合物II)のβ−O−4位のエーテル結合を開裂させる反応を触媒する酵素として、ligF遺伝子(YP_004833997)(非特許文献7を参照)及びligE遺伝子(YP_004833998)(非特許文献8を参照)が知られている。また、上記第2段階の反応で生じたグルタチオン含有中間体からグルタチオンを除去する第3段階の反応を触媒する酵素として、ligG遺伝子(YP_004833999)(非特許文献9を参照)が知られている。
そこで、実施例1により検出されたMBES04株のゲノム配列情報をクエリーとして、SYK−6株由来のligE遺伝子、ligF遺伝子及びligG遺伝子に相同性を示す遺伝子を、Coverage 50%<、Identity 25%<、Similarity 50%<、 E value <e5を閾値としてBLAST相同性検索した。その結果、c10g0076遺伝子がligFに68%、c10g0077遺伝子がligEに80%、及びc10g0078遺伝子がligGに71%のIdentity(一致性)を示すことがわかった。
MBES04株由来の3遺伝子:c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子の塩基配列をクエリーとしてBLASTn相同性検索(Coverage 50%<)を行ったところ、最も一致性の高い遺伝子配列としてヒットしたものは、c10g0076遺伝子に対しては82%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1247655〜1248381番の位置にあるglutathione S−transferase様タンパク質をコードすると推定される遺伝子;c10g0078遺伝子に対しては80%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1248451〜1249198番の位置にあるglutathione S−transferase様タンパク質をコードすると推定される遺伝子;c10g0079遺伝子に対しては78%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1249325〜1250064番の位置にあるglutathione S−transferaseファミリータンパク質をコードすると推定される遺伝子であった。
また、c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子がコードするアミノ酸配列を用いてDELTA−BLASTサーチ(National Center for Biotechnology Information、Domain Enhanced Lookup Time Accelerated BLAST)(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&PROGRAM=blastp&BLAST_PROGRAMS=deltaBlast)を行った(図4〜6を参照)。その結果、上記3遺伝子がコードするアミノ酸配列は、いずれもGlutathione S−transferaseと推定されるタンパク質に保存されているマルチドメインであるGst(COG0625)配列を有することが示唆された。また、c10g0076遺伝子及びc10g0077遺伝子がコードするアミノ酸配列は、N末端側にPRK15113及びmaiAのマルチドメインを有することがわかった。さらに、c10g0078遺伝子がコードするアミノ酸配列は、N末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有することがわかった。
c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子は、互いに近接した遺伝子である。さらにc10g0076遺伝子に隣接したc10g0075遺伝子は、Glutathione S−transferaseと推定されるタンパク質を、c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子の3遺伝子がコードする向きとは反対向きにコードするものであった。c10g0075遺伝子の塩基配列をクエリーとしてBLASTn検索(Coverage50%<)を行ったところ、最も一致性の高い遺伝子配列としてヒットしたものは、79%の一致性でノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.)PP1Y株のゲノム上(FR856862.1)の1246742〜1247371番の位置にあるglutathione S−transferaseをコードすると推定される遺伝子であった。また、このc10g0075遺伝子がコードするアミノ酸配列をクエリーとしてDELTA−BLASTサーチを行ったところ、c10g0075遺伝子がコードするタンパク質は、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAといった、Glutathione S−transferaseと推定されるタンパク質に保存されたマルチドメイン配列を有していることが示唆された(図7を参照)。
[実施例3.形質転換体を利用した酵素生産]
Short−chain dehydrogenase/reductaseとアノテーションされるMBES04株由来のc01g1162遺伝子、c01g1324遺伝子、c10g0069遺伝子、c10g0080遺伝子、c10g0093遺伝子及びc10g0094遺伝子の6遺伝子にコードされる各タンパク質;並びに、c10g0075遺伝子、c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子の4遺伝子にコードされる各タンパク質が化合物Iの代謝に関与することを確認するために、大腸菌を宿主として、これらの遺伝子がコードするタンパク質を組換え生産する形質転換体を作製した。
ここで、c01g1162遺伝子、c01g1324遺伝子、c10g0069遺伝子、c10g0080遺伝子、c10g0093遺伝子及びc10g0094遺伝子の6遺伝子にコードされる各タンパク質をC01G1162、C01G1324、C10G0069、C10G0080、C10G0093及びC10G0094と表記し;並びに、c10g0075遺伝子、c10g0076遺伝子、c10g0077遺伝子及びc10g0078遺伝子の4遺伝子にコードされる各タンパク質をC10G0075、C10G0076、C10G0077及びC10G0078と表記することにした。
プラスミドpRSETA(インビトロジェン社製)を鋳型とし表2に示すプライマーAとBを用いてPCR反応を行った。一方、表2に示すプライマーセット(CとD、EとF、GとH、IとJ、KとL、MとN、OとP、QとR、SとT、及びUとV)を用いて、MBES04株のゲノムDNAを鋳型として下記に示す条件に従ってPCR反応を行い、上記各遺伝子断片を増幅したcDNAを得た。
PCR条件
1× PCR buffer (MgCl含有)200 μm dNTPs, 0.6 μm 27f, 0.6 μm 1525r, 1.4 U of LA Taq DNA (ポリメラーゼタカラバイオ社製)
サーマルサイクラー温度条件97℃ 2分、[97℃30秒、60℃1分、72℃90秒]×30サイクル、72℃ 5分
表2に示すプライマーセットを用いたPCR反応により増幅された、pRSETAを鋳型として得られたDNA断片とMBES04株のゲノムDNAを鋳型として得られたDNA断片の各1種とを混合し、次いでIn fusion HDクローニングキット(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより組換えプラスミドを得た。得られた組換えプラスミドを、遺伝子毎に、大腸菌(Stellar Competent cell)に導入することにより、形質転換した。
得られた形質転換体からプラスミドを調製し、プラスミド上の連結断片の塩基配列がMBES04株のゲノム上の遺伝子配列と完全に一致することを配列解析により確認した。塩基配列解析はBigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit、v3.1(Applied Biosystems社製)ABI 3730 XL DNA Analyzer(Applied Biosystems社製)を用いた。続いて調製した各プラスミドを用いて、BL21DE3pLysE(ライフテクノロジー社製)を形質転換した。各形質転換体を用いて組換え酵素を生産させ、得られた組換え酵素をNi−アガロース担体を用いて精製した。
[実施例4.化合物I分解酵素の同定]
化合物Iの合成は、非特許文献10に記載の方法に準じて行った。得られた合成物のNMRスペクトルは、USDA(US Forest Products Laboratory)が公開している、化合物Iのデータと一致した。また、化合物IのHPLC分析は、株式会社ダイセル製のキラルパックIE3を用いて、以下のとおりに、(1)αS、βR、(2)αR、βSのerithro体;(3)αR、βR、(4)αS、βSのthreo体の順で溶出する条件で行った。
キラルHPLC分析条件(化合物Iの光学異性体分析条件)
カラム;キラルパックIE−3(ダイセル社製)、4.6 mm I.d. x 250 mm L.溶離液;(A)水、(B)アセトニトリル、送液:20%V/V(B)、カラム温度;40℃、流速:1.0ml/min、検出 フォトダイオードアレイ検出器 UV200-500nm(PDA モデル2998、ウォーターズ製)及び旋光度検出器(キラライザー、システムエンジニアリング社製)
得られた化合物Iは、この条件で、erithro体:threo体≒3:1であった。なお、上記のRS表示は、非特許文献11に記載の旋光度データを参考に決定した。
化合物Iを終濃度5mM、NAD+(ナトリウム塩の形で添加)を終濃度10mMになるようにトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に添加した。次いで、この溶液に、実施例3で得られた精製済のC01G1162、C01G1324、C10G0069、C10G0080、C10G0093及びC10G0094を各一種ずつ添加し、室温で16時間インキュベートして、反応液を得た。その後、下記条件で反応液中の化合物Iの変化をHPLC分析した。
逆相HPLC条件
カラム;Xbridge OST C18(ウォーターズ製)、4.6mm−I.d.×100mm−L.溶離液;(A)[2mM 酢酸アンモニウム、0.05%V/V ギ酸]、(B)メタノール、送液;0−1min 10%V/V(B)、1−8min 10%V/V−90%V/V(B)、カラム温度;40℃、流速;1.2ml/min、検出;フォトダイオードアレイ検出器 UV200−500nm(PDA モデル2998、ウォーターズ製)
反応液のHPLC分析の結果、C10G0069又はC10G0093を作用させた場合にのみ、化合物Iが減少し、新たな化合物が生成されていることが分かった。
ここで生成した化合物を同定するために、反応液を固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、以下の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析(ACCUITY UPLC H―Class, XevoG2 QTOF,ウォーターズ社製)に供した。
逆相HPLC条件(逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析条件)
カラム;ACQUITY UPLC BEH C18 Column,130オングストローム, 1.7 μm、(ウォーターズ製)、2.1 mm I.d.×100 mm L.溶離液;(A)[2mM 酢酸アンモニウム、0.05%V/V ギ酸]、(B)95%V/V アセトニトリル、送液:0−5分 5%V/V−95%V/V(B)、5−7分 95%V/V(B)、カラム温度;40℃、流速;0.4ml/min
質量分析条件(逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析条件)
検出質量範囲100―1000 Da、データ取得スキャン間隔0.1秒、デソルベーションガス温度 500℃、イオンソース ESIネガティブモード イオンソース温度150℃、コーン電圧30V
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析の結果、生成化合物の分子量は318であり、推定組成式はC1718であることがわかった。化合物IのMSスペクトルと生成化合物のMSスペクトルとを比較した結果、生成化合物は化合物IのCα位で脱水素反応が起こり、アルコール残基(ヒドロキシ基)がカルボニル基へと変化した化合物IIであることが推定された。
[実施例5.化合物I分解酵素の特性]
化合物IIの合成は、非特許文献10に記載の方法に準じて行った。また、化合物IIのHPLC分析は、株式会社ダイセル製のキラルパックIE3を用いて、以下のとおりに、(1)βR体、(2)βS体の順で溶出する条件で行った。
キラルHPLC分析条件(化合物IIの光学異性体分析条件)
カラム;キラルパックIE−3(ダイセル社製)、4.6 mm I.d.×250 mm L.溶離液;(A)水、(B)アセトニトリル、送液:30%V/V(B)、カラム温度;40℃、流速:1.0ml/min、検出 フォトダイオードアレイ検出器 UV200−500nm(PDA モデル2998、ウォーターズ製)及びキラライザー(システムエンジニアリング社製)
合成した化合物IIは、この条件で、βR体:βS体≒1:1であった。なお、上記のRS表示は、非特許文献11に記載の旋光度データを参考に決定した。
合成した化合物IIを実施例4に記載の条件で、逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供したところ、化合物IにC10G0069及びC10G0093を作用させた場合に得られた化合物I分解物と良く一致するマスクロマト及びスペクトルを得た。このことより、C10G0069及びC10G0093は化合物IのCα位のヒドロキシ基を酸化し、カルボニル基へと変化させるデヒドロゲナーゼ活性を持つタンパク質であることが分かった。
化合物IにC10G0069が作用する場合の反応条件を調べた。C10G0069はNAD+が共存した場合に、Cα位のヒドロキシ基を酸化した。しかし、NAD+が存在しないときには活性を示さなかった。またNADH存在下では、化合物IのCα位のヒドロキシ基を酸化しなかったが、化合物IIのカルボニル残基を還元して、ヒドロキシ基を与えた。NADP+、NADPH存在下では活性を示さなかった。分子量はSDS−PAGEで34kDaであることが示された。また、10mg/l C10G0069、10mM 化合物I、20mM NADナトリウム及び50mM (pH9.2)N−Cyclohexyl−2−aminoethanesulfonic acid−NaOH(CHES)緩衝液(pH9.5)を含む反応液(100μl)を、5〜45℃の温度で30分間反応させることによってC10G0069の最適温度を評価した。その結果、図8に示すとおり、最適温度は10〜15℃付近であった。さらに、10mg/l C10G0069、10mM 化合物I、20mM NADナトリウム及びpH6.0〜10.4に調製した50mM 緩衝液(MES、MOPS、TAPS、CHES及びCAPS)を含む反応液(100μl)を、15℃で30分間反応させることによってC10G0069の最適pHを評価した。その結果、図9に示すとおり、最適pHは8.5〜9.5付近であった。なお、最適温度及び最適pHは、反応後の反応液中に生成した化合物IIの濃度を実施例4に記載の条件の逆相HPLCにより分析した値に基づく。
化合物IにC10G0093Cが作用する場合の反応条件を調べた。C10G0093はNAD+が共存した場合に、Cα位のヒドロキシ基を酸化したが、NAD+が存在しないときには活性を示さなかった。またNADH存在下では、化合物IのCα位のヒドロキシ基を酸化しなかったが、化合物IIのカルボニル残基を還元してヒドロキシ基を与えた。NADP+、NADPH存在下でも活性を示さなかった。分子量はSDS−PAGEで34kDaであることが示された。また、5mg/l C10G0093、10mM 化合物I、20mM NADナトリウム及び50mM (pH9.2)CHES緩衝液(pH9.5)を含む反応液(100μl)を、5〜45℃の温度で30分間反応させることによってC10G0069の最適温度を評価した。その結果、図10に示すとおり、最適温度は25〜30℃付近であった。さらに、5mg/l C10G0093、10mM 化合物I及び20mM NADナトリウム及びpH6.0〜10.4に調製した50mM 緩衝液(MES、MOPS、TAPS、CHES及びCAPS)を含む反応液(100μl)を、30℃で30分間反応させることによってC10G0093の最適pHを評価した。その結果、図11に示すとおり、最適pHは8.5〜10.5付近であった。なお、最適温度及び最適pHは、反応後の反応液中に生成した化合物IIの濃度を実施例4に記載の条件の逆相HPLCにより分析した値に基づく。
化合物Iには、αS,βR(SR);αR,βS(RS);αR,βR(RR);αS,βS(SS)という4種類の光学異性体が存在する。これらのうち、C10G0069及びC10G0093が基質として作用する化合物Iの光学異性体を調べるために、反応の前後に起こる化合物Iの光学異性体組成の変化及び産物である化合物IIの光学異性体組成を、以下に示す条件でキラルHPLC分析することとした。
キラルHPLC分析条件
カラム;キラルパックIE−3(ダイセル社製)、4.6 mm I.d.×250 mm L.溶離液;(A)水、(B)アセトニトリル、送液:0−10分 20%V/V(B)、10−15分 20−30%V/V(B)、15−30分 30%V/V(B)、カラム温度;40℃、流速:1.0ml/min、検出 フォトダイオードアレイ検出器 UV200−500nm(PDA モデル2998、ウォーターズ製)及びキラライザー(システムエンジニアリング社製)
キラルHPLC分析の結果、C10G0069は、化合物IのRS及びRRの2つの光学異性体に特異的に反応すること;C10G0093はSR及びSSの2つの光学異性体に特異的に反応することがわかった。
また、化合物IIをNADH存在下で還元する際に生じる化合物Iの光学異性体の大部分(感度補正無のHPLCクロマト面積値で、>90%の光学純度)は、C10G0069の場合にはαR体であり、SC10G0093の場合にはαS体であった。
[実施例6.化合物II分解酵素の同定]
化合物I又は化合物IIを終濃度5mM、還元型グルタチオンを終濃度10mMになるように、トリス塩酸緩衝液(pH7.5)に添加し、次いで実施例3で得られた精製済のC10G0075、C10G0076、C10G0077及びC10G0078をタンパク質毎に添加し、室温で16時間インキュベートして反応液を得た。その後、実施例4に記載の条件で反応液中の化合物I又は化合物IIの変化を逆相HPLCで分析した。
その結果、化合物Iは変化しなかったが、化合物IIはC10G0076又はC10G0077と反応させた場合にのみ、別の2つの化合物へ変化することがわかった。逆相HPLC分析では、化合物IIから生じた一方の物質はグアヤコールであることが、グアヤコール標準品とのリテンションタイム及びUV吸収スペクトルとの比較からわかった。反応後に生じた他方の化合物の構造を推定するために、反応液を、固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製した後に、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供した。
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析(ネガティブモード)の結果、C10G0076又はC10G0077と化合物IIとの反応によって生じた物質から、m/z500.2のシグナルが得られた。これは、化合物IにSYK−6株のLigE及びLigFを作用させたときに生じると報告されている3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン(化合物III)のグルタチオン付加体の分子量501.1からプロトンが1つ脱離した値にほぼ相当する。すなわち、C10G0076及びC10G0077は、SYK−6株のLigE及びLigFと同様に、化合物IIのβ−O−4結合を切断する活性を持つと判断された。
[実施例7.化合物II分解酵素の分解特性]
化合物IIにC10G0076が作用する場合の反応条件を調べた。C10G0076は、還元型グルタチオンが共存した場合にβ−O−4結合のグルタチオン添加開裂を触媒したが、還元型グルタチオンが存在しない場合には活性を示さなかった。分子量はSDS−PAGEで31kDaであることが示された。また、5mg/l C10G0076、5mM 化合物II、10mM 還元型グルタチオン及び100mM (pH8.9)CHES緩衝液(pH9.5)を含む反応液(100μl)を、15〜45℃の温度で30分間反応させることによってC10G0076の最適温度を評価した。その結果、図12に示すとおり、最適温度は30〜35℃付近であった。さらに、5mg/l C10G0076、5mM 化合物II及び10mM 還元型グルタチオン及びpH5.6〜10.4に調製した50mM 緩衝液(MES、MOPS、TAPS、CHES及びCAPS)を含む反応液(100μl)を、30℃で30分間反応させることによってC10G0076の最適pHを評価した。その結果、図13に示すとおり、最適pHは8.5〜9.5付近であった。なお、最適温度及び最適pHは、反応後の反応液中に生成したグアヤコールの濃度を実施例4に記載の条件(保持時間5.5分付近)の逆相HPLCにより分析した値に基づく。
化合物IIにC10G0077が作用する場合の反応条件を調べた。C10G0077は、還元型グルタチオンが共存した場合にβ−O−4結合のグルタチオン添加開裂を触媒したが、還元型グルタチオンが存在しない場合には活性を示さなかった。分子量はSDS−PAGEで31kDaであることが示された。また、5mg/l C10G0077、5mM 化合物II、10mM 還元型グルタチオン及び100mM (pH8.9)MOPS緩衝液(pH7.5)を含む反応液(100μl)を、5〜35℃の温度で30分間反応させることによってC10G0077の最適温度を評価した。その結果、図14に示すとおり、最適温度は25〜30℃付近であった。さらに、5mg/l C10G0077、5mM 化合物II及び10mM 還元型グルタチオン及びpH5.6〜10.4に調製した50mM 緩衝液(MES、MOPS、TAPS、CHES及びCAPS)を含む反応液(100μl)を、20℃で30分間反応させることによってC10G0077の最適pHを評価した。その結果、図15に示すとおり、最適pHは7〜8付近であった。なお、最適温度及び最適pHは、反応後の反応液中に生成したグアヤコールの濃度を実施例4に記載の条件の逆相HPLCにより分析した値に基づく。
化合物IIには、βR体、βS体という2種類の光学異性体が存在する。これらのうち、C10G0076及びC10G0077が基質として作用する光学異性体を調べるために、反応の前後に起こる化合物IIの光学異性体組成の変化を、キラルカラム キラルパックIE−3を用いてHPLC分析した。その結果、C10G0076はβS体に選択的に作用し、C10G0077はβR体に選択的に作用することがわかった。
また、C10G0076及びC10G0077が、化合物IIの非フェノール性リグニンモデル2量体化合物に対する反応性を持つことを、ベラトリルグリセロール−β−グアイアシルエーテル(1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−1,3−ジオール;化合物V)を用いて、以下のとおりに確認した。なお、通常のリグニンは非フェノール性の構成単位が多い。そこで、化合物Vを分解する活性を有するということは、その酵素は天然のリグニンを分解する活性を有する蓋然性がある。
化合物Vの合成は、非特許文献10及び非特許文献12を参考にして、相関移動触媒を用いる代わりにN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒とし、HCHOのアルドール反応条件をKCO−EtOH系で行うなどに改良した方法を用いた。生成物のNMRスペクトルは、USDAが公開している化合物Vのデータと一致した。H−NMRスペクトルで、β−プロトンの積分値を用いて計算したところ、erithro体:threo体の比率は約1.1:1であった。
C10G0076 0.1μg、1mM 化合物V及び2mM 還元型グルタチオンを含む、100mM(pH9.5)N−Cyclohexyl−2−aminoethanesulfonic acid−NaOH(CHES)緩衝液(pH9.5)及び10%V/V DMFの混合溶液を、30℃にて15分間反応させた。反応後の反応液を逆相HPLC分析に供したところ、化合物Vの減少とグアヤコールの生成が見られた。これにより、C10G0076が非フェノール性リグニンモデル2量体化合物に対する反応性を持つことが明らかとなった。非フェノール性リグニンモデル2量体化合物である化合物Vに対する反応の効率は、C10G0076を用いた場合、フェノール性のリグニンモデル2量体化合物である化合物IIに対する反応効率の16.2%に相当した。
一方、C10G0077 1.0μg、1mM 化合物V及び2mM 還元型グルタチオンを含む、100mM 3−Morpholinopropanesulfonic acid−NaOH(MOPS)緩衝液(pH8.0)及び10%V/V DMFの混合液を、20℃にて15分間反応させた。反応後の反応液を逆相HPLC分析に供したところ、C10G0077を用いた場合も、化合物Vの減少とグアヤコールの生成が見られた。これにより、C10G0077が非フェノール性リグニンモデル2量体化合物に対する反応性を持つことが明らかとなった。非フェノール性リグニンモデル2量体化合物である化合物Vに対する反応の効率は、C10G0077を用いた場合、フェノール性のリグニンモデル2量体化合物である化合物IIに対する反応効率の380%に相当した。
[実施例8.化合物III生成酵素の同定]
化合物IIを基質として、実施例3で得られたC10G0075、C10G0076及びC10G0077の精製タンパク質;又はC10G0076、C10G0077及びC10G0078の精製タンパク質の組み合わせで反応させた。その結果、両方の組み合せの反応物から、化合物IIIが生成されたことがわかった。化合物IIIは化合物IをMBES04株の培養液に添加した際に得られる代謝物(3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノン)と一致するリテンションタイムを示した。反応液を固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供したところ、化合物IIIの分析結果は、化合物Iを含む培地でMBES04株を培養した際に得られた主生成物である3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの分析結果とよく一致した。
C10G0075及びC10G0078が基質として反応する化合物に光学異性体特異性があることを、実施例3で得られた精製酵素を以下のように組み合わせて、化合物IIの変換反応を行うことによって確認した。酵素反応は、下記(1)〜(4)の組み合せ酵素(反応液100μLあたり、精製酵素C10G0075:0.5μg、精製酵素C10G0076:0.5μg、精製酵素C10G0077:0.5μg、精製酵素C10G0078:0.5μgを使用)、1mM 化合物II及び10mM 還元型グルタチオンを含む、100mM MOPS緩衝液(pH8.0)の混合溶液中で、室温にて16時間反応させた。
(1)C10G0076(βS体を特異的に認識)+C10G0075
(2)C10G0076(βS体を特異的に認識)+C10G0078
(3)C10G0077(βR体を特異的に認識)+C10G0075
(4)C10G0077(βR体を特異的に認識)+C10G0078
反応後の基質と生成物の変化をキラルHPLC分析にて検出した。その結果、(1)、(2)及び(3)の組み合わせでは反応が進行し、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの生成が見られた。しかし、(4)の組み合わせでは、3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンの生成が見られなかった。したがって、C10G0078はβS体のみを特異的に認識するが、C10G0075はβR体及びβS体の2種の光学異性体の両方から3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンを生成できることがわかった。
[実施例9.化合物III生成酵素の分子量]
C10G0078の分子量はSDS−PAGEで33kDaであることが示された。C10G0078の分子量はSDS−PAGEで27kDaであることが示された。
[実施例10.化合物I分解酵素、化合物II分解酵素及び化合物III生成酵素を用いたリグニン分解(1)]
カシオガクズ抽出液からフェニルプロパン構造を有する化合物を以下の手順で製造した。
乾燥カシオガクズ粉末50gをジオキサン300mLに懸濁し、室温で6日間浸漬した。得られた懸濁液からろ紙で固形分をろ過して除去し、ろ液を得た。ろ液をエバポレーターで減圧乾固し、カシジオキサン抽出物を得た。カシジオキサン抽出物が10%W/V終濃度となるようにDMFに溶解した。得られたカシオガクズ抽出液を用いて、以下の組成の反応液を作成し、室温で24時間反応させた。
反応液(0.1mL)組成(1):
カシオガクズ抽出液 1/20容量
(反応液に含まれる乾燥固形物の濃度は5.0mg/mL)
CHES緩衝液 pH9.2 50mM
精製酵素C10G0069(タンパク質濃度:0.41mg/mL) 1/20容量(5μl)
精製酵素C10G0093(タンパク質濃度:0.16mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0076(タンパク質濃度:0.29mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0078(タンパク質濃度:0.10mg/mL) 1/20容量
還元型グルタチオン 5mM
NADナトリウム塩 5mM
反応後、反応液50μLを固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、窒素ガス下にて乾固した。乾固後の残渣を、0.5mLの20%V/V アセトニトリルに溶解し、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供した。
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析の結果、添加酵素の作用により、リテンションタイム2.4分にm/z195.1のシグナルが得られた。本リテンションタイムとマスシグナルの値は、化合物IIIのそれらとよく一致した。その生成量は既知濃度の化合物IIIにおけるシグナル強度から1.1μg/mLと算出された。またリテンションタイム2.5分にm/z225.1のシグナルが得られた。その生成量は、既知濃度の化合物IIIにおけるシグナル強度で計算した場合、0.8μg/mLであった。リテンションタイム2.4分におけるマススペクトルと2.5分におけるマススペクトルとを比較したところ、2.5分に検出された化合物(化合物IV)は化合物III中の水素の1つがメトキシ基に置換された化合物であると予測された。
[実施例11.化合物I分解酵素、化合物II分解酵素及び化合物III生成酵素を用いたリグニン分解(2)]
実施例10で調製したカシオガクズ抽出液を用いて、以下の組成の反応液を作成し、室温で16時間反応させた。
反応液(0.1mL)組成(2):
カシオガクズ抽出液 1/20容量
(反応液に含まれる乾燥固形物の濃度は5.0mg/mL)
TAPS緩衝液 pH8.5 100mM
下記精製酵素のうち、いずれか表3に示す組み合わせ
精製酵素C10G0069(タンパク質濃度:0.41mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0093(タンパク質濃度:0.16mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0076(タンパク質濃度:0.29mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0077(タンパク質濃度:0.28mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0075(タンパク質濃度:0.62mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0078(タンパク質濃度:0.10mg/mL) 1/20容量
還元型グルタチオン 5mM
NADナトリウム塩 5mM
反応後、反応液50μLを固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、窒素ガス下にて乾固した。乾固後の残渣を、0.5mLの20%V/V アセトニトリルに溶解し、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供した。
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析の結果、添加酵素の作用により、生成された化合物IIIの生成量を表3に示した。表3に示されるように、6種の酵素を添加した場合に化合物IIIが最も高い濃度で生成された。
[実施例12.化合物I分解酵素、化合物II分解酵素及び化合物III生成酵素を用いたリグニン分解(3)]
乾燥イナワラ粉末50gを、ジオキサン300mL及び水15mLの混合液に懸濁し、室温で6日間浸漬した。浸漬後、懸濁液からろ紙で不溶物をろ別し、ろ液を得た。ろ液をエバポレーターで減圧乾固、その後デシケーターにて乾燥させ、2.65gの固形物を得た。固形物に酢酸エチル50ml及び純水70mLを添加し、固形物を溶解させた。さらに固形物が10%W/VとなるようにDMFに溶解した。得られたイナワラ抽出物DMF溶液を用いて、以下の組成の反応液を作成し、室温で24時間反応させた。
反応液(0.1mL)組成(3):
イナワラ抽出物DMF液 1/20容量
(反応液に含まれる乾燥固形物の濃度は5.0mg/mL)
CHES緩衝液 pH9.2 50mM
精製酵素C10G0069(タンパク質濃度:0.41mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0093(タンパク質濃度:0.16mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0075(タンパク質濃度:0.62mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0076(タンパク質濃度:0.29mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0077(タンパク質濃度:0.28mg/mL) 1/20容量
還元型グルタチオン 5mM
NADナトリウム塩 5mM
反応後、反応液50μLを固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、窒素ガス下にて乾固した。乾固後の残渣を、0.5mLの20%V/V アセトニトリルに溶解し、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供した。
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析の結果、添加酵素の作用により、化合物III及び化合物IVが生成されていることが確認された。その生成量はそれぞれ8.4μg/mL及び0.7μg/mLであった。
[実施例13.化合物I分解酵素、化合物II分解酵素及び化合物III生成酵素を用いたリグニン分解(3)]
シイタケ廃菌床からのフェニルプロパン構造を有する化合物を以下の手順で製造した。乾燥シイタケ廃菌床粉末10gをイオン交換水100mLに懸濁し、3時間室温で浸漬した。得られた懸濁液からろ紙で固形分をろ別し、ろ液(水洗液1)を得た。残渣をイソプロパノール100mLに懸濁し3時間室温で浸漬した。浸漬後、ろ紙で固形分をろ別し、ろ液(水洗後イソプロ液1)を得た。一方、乾燥シイタケ廃菌床粉末10gを90%V/V イソプロパノール水溶液100mLに懸濁し、3時間室温で浸漬した。ろ紙で固形分をろ過別し、ろ液(90%イソプロ液1)を得た。
水洗液1、水洗後イソプロ液1及び90%イソプロ液1を25mLずつ抜き取り、エバポレーターで45℃に加温しながら、減圧乾固した。水洗液1、水洗後イソプロ液1及び90%イソプロ液1から、それぞれ469、55及び247mgの固形物を得た。水洗液1から得られた固形物は水2mL(234.4mg/mL)に溶解し、水洗後イソプロ液1(27.4mg/mL)及び90%イソプロ液1(123.5mg/mL)から得られた固形物はそれぞれDMF2mLに溶解した。これらの3種の溶解抽出物を用いて、以下の組成の反応液を作成し、室温で24時間反応させた。
反応液組成(4):
シイタケ廃菌床抽出液(上記3種の抽出物の内のいずれか) 1/20容量
(反応液に含まれる乾燥固形物の濃度は水洗液1を用いた場合11.7mg/mL、水洗後イソプロ液1を用いた場合1.37mg/mL、90%イソプロ液1を用いた場合6.18mg/mL)
CHES緩衝液 pH9.2 50mM
精製酵素C10G0069(タンパク質濃度:0.41mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0093(タンパク質濃度:0.16mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0075(タンパク質濃度:0.62mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0076(タンパク質濃度:0.29mg/mL) 1/20容量
精製酵素C10G0077(タンパク質濃度:0.28mg/mL) 1/20容量
還元型グルタチオン 5mM
NADナトリウム塩 5mM
反応後、反応液50μLを固相抽出法(OASIS WAX ;ウォーターズ社製)にて精製し、窒素ガス下にて乾固した。乾固後の残渣を、0.5mLの20%V/V アセトニトリルに溶解し、実施例4に記載の条件で逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析に供した。
逆相UPLC−飛行時間型精密質量分析の結果、添加酵素の作用により、化合物IIIが生成されていることが確認された。その生成量は水洗液1を用いた場合は1.1μg/mL、水洗後イソプロ液1を用いた場合は0.68μg/mL、及び90%イソプロ液1を用いた場合は1.37μg/mLであった。化合物IVの生成量は水洗液1を用いた場合は0.6μg/mL、水洗後イソプロ液1を用いた場合は0.3μg/mL、及び90%イソプロ液1を用いた場合は0.7μg/mLであった。
[参考文献]
上記した非特許文献4〜12は以下のとおりである:
非特許文献4:Besemer Jら;Nucleic Acids Research、2001、vol 29、p2607
非特許文献5:Masai,E.,S.Kubota.Y.Katayama,S.Kawai,M.Yamasaki,and N.Morohoshi.1993.Biosci. Biotechnol.Biochem.57:1655−1659.
非特許文献6:Sato Y,Moriuchi H,Hishiyama S,Otsuka Y,Oshima K,Kasai D,Nakamura M,Ohara S,Katayama Y,Fukuda M,Masai E.Appl Environ Microbiol.2009;75(16):5195−201.
非特許文献7:Masai,E.,Y.Katayama,S.Kubota,S.Kawai, M.Yamasaki,and N.Morohoshi.1993.FEBS Lett.323:135−140.
非特許文献8:Masai,E.,Y.Katayama,S.Kawai,S.Nishikawa,M.Yamasaki,and N.Morohoshi.1991.J.Bacteriol.173:7950−7955.
非特許文献9:Masai E,Ichimura A,Sato Y,Miyauchi K,Katayama Y,Fukuda M.J Bacteriol.2003 Mar;185(6):1768−75.
非特許文献10:細谷ら:木材学会誌26(2)118−21、1980
非特許文献11:Hishiyama et al:Tetrahedron Letters53,842−845、2012
非特許文献12:K.Itoh: Mokuzai Gakkaishi vol. 38,No.6, 579−584(1992)
配列表に記載の配列は以下のとおりである:
[配列番号1]C10G0069
MTQVKGRTAFITGGGSGVALGQAKVFARAGCKVAIADIRQDHLDEAMAWFEAENAKGANYEVMAVKLDITDREAYAKVADEVEAKLGPVELLFNTAGVSHFGAIQDATYDDWDWQIDVNLRGVINGVRTFVPRMIERGNGGHVVNTASMSAFVALKGTGIYCTTKMAVRGLTETLALDLEEHGIGVSLLCPGAVNTNIHEALLTRPKHLADTGYYQAGPEMFAHLKNVIECGMEPETLANHVLKAVEENQLYVLAYPEFRKPLEDIHARVMAALANPEDDPDYDRRVAHGVPGGEAKEEEKTA
[配列番号2]C10G0093
MQDLPGKTAFVTGGASGIGLGIAKALLGAGMNVAIADIRQDHLDDAAAELDGGDKVLALQLDVTDRAAFAAAADATEAKFGKIHILCNNAGVAVVGPTDMATFADWDWVMGVNVGGTINGIVTMLPRMLKHGEGGHIVNTASMSALVPAPGTTIYSSGKAAVTSMMECMRPELESRGIVCSAFCPGAVQSNIAEAGRTRPDALAETGYAEADKGRQAGGSFFHLYQTKEEVGERVLTGILNDELYILTHAEFLIGVQERGEATTAAVQVQLPENEEYKNTFGVLFRNSAITQEIDRQKALRAAQMSEAGVA
[配列番号3]C10G0076
MLTLYSFGPGANSLKPLLALYEKGLEFTPRFVDPTKFEHHEEWFKKINPRGQVPALDHDGNVITESTVICEYLEDAFPDAPRLRPTDPVQIAEMRVWTKWVDEYFCWCVSTIGWERGIGPMARALSDEEFEEKVKRIPIPEQQAKWRSARAGFPKEVLDEEMRKIRVSIDRLEKRLSESTWLAGEDYTLADICNFAIANGMEKGFDDIVNTAATPNLVAWIERINARPACIEMFAKSKSEFAARKPFAKSEEQAQA
[配列番号4]C10G0077
MAKDNRITLYDLQLASGCTISPFVWRTKYALAHKGFDMDIVPGGFTGIAERTGGRSERAPVIVDDGKWVLDSWKIAEYLDETYPDRPMLFEGPSMKVLTKFLDAWLWKTIIAPWFRCYILDYHDLSLPQDHAYVRESRETMFLGGQKLEDVQAGREDRLPHVPPLLEPLRQLLRDTPWLGGATPNYADYTALAIFLWTGSVCTTPPLTEDDPLRDWLDRGFDLYGGLGRHPGMHTLFGLKLREGDPEPFDRTGLGIEPAPVNQGSAEPATAS
[配列番号5]C10G0078
MYQIPGCPFSERVELLLDLKGLGDVLVDHEIDISKPRPDWLLKKTRGTTSLPALELENGETLKESMVIMRYIEDRFPEVPVARQDPYEHALEAMLCATDGAYTGAGYRMILNRDKARREELKAEVDAQYARLDDFLRHYSPDGVYLFDRFGWAEVAFAPMFKRLWFLEYYEDYEVPQNLTRVLLWREATLAEPVVQARHGHRELMTLYYDYTQGGGNGRLPEGRSVSSFTLDPPWRARPMPPRDKWGQGASDAELGLIPGITVRSDTVPA
[配列番号6]C10G0075
MLEELDANYTLRPISLTNREQKEDWYLARNPNGRIPTLIDHEVDAGNGGFAVFESGAILIYLAEKFGRFLPADTMGRSRAIQWVMWQMSGLGPMMGQATVFNRYFEPRLPEVIDRYTRESRRLFEVMDTHLADNEFLAGDYSIADIACFPWVRGHDWACIDMEGLPHLQRWFETIGERPAVQRGLLLPEPPKADEMAEKTTRQGKNILA
[配列番号7]c10g0069遺伝子
ATGACACAGGTAAAGGGACGCACCGCGTTCATCACTGGCGGCGGTTCGGGCGTGGCGCTCGGCCAGGCCAAGGTTTTCGCCAGGGCTGGCTGCAAGGTCGCCATTGCCGACATCCGCCAGGATCACCTCGACGAGGCCATGGCCTGGTTCGAGGCCGAGAACGCCAAGGGCGCGAACTACGAGGTGATGGCGGTCAAACTCGACATCACCGACCGCGAGGCTTACGCCAAGGTCGCCGACGAGGTGGAAGCGAAGCTGGGGCCCGTCGAACTGCTGTTCAACACCGCCGGGGTCTCGCACTTCGGCGCGATCCAGGATGCCACTTACGACGACTGGGACTGGCAGATCGACGTCAACCTGCGCGGTGTGATCAACGGCGTGCGCACCTTCGTGCCGCGCATGATCGAGCGCGGCAACGGCGGCCACGTGGTCAACACCGCCTCGATGTCGGCCTTCGTGGCGCTCAAGGGCACGGGCATCTACTGCACCACCAAGATGGCGGTGCGCGGGCTGACCGAGACTCTGGCCCTCGATCTGGAAGAGCATGGCATCGGCGTGTCGCTGCTGTGCCCGGGCGCGGTCAACACCAACATTCACGAAGCGCTGCTGACCCGCCCCAAGCATCTGGCGGACACCGGCTACTACCAGGCCGGGCCGGAGATGTTCGCGCATCTCAAGAACGTGATCGAATGCGGCATGGAGCCCGAGACGCTGGCGAACCACGTCCTGAAGGCCGTGGAGGAGAACCAGCTTTACGTTCTCGCCTATCCGGAATTCCGCAAGCCGCTGGAAGACATCCACGCGCGCGTCATGGCCGCCCTCGCCAATCCCGAGGACGATCCCGACTACGACCGGCGCGTGGCGCACGGCGTACCGGGCGGCGAGGCCAAGGAGGAGGAAAAGACGGCATGA
[配列番号8]c10g0093遺伝子
ATGCAGGATCTACCGGGGAAGACCGCCTTTGTGACCGGCGGCGCCAGCGGGATTGGCCTGGGGATAGCCAAGGCCCTGCTGGGGGCGGGCATGAACGTTGCTATCGCCGACATTCGCCAGGACCATCTCGATGACGCCGCAGCCGAACTGGACGGCGGCGACAAGGTGCTCGCGCTCCAGCTCGACGTCACCGATCGCGCTGCCTTTGCCGCCGCCGCCGATGCCACCGAGGCCAAGTTCGGCAAGATCCACATCCTGTGCAACAACGCAGGGGTTGCGGTTGTCGGCCCCACCGACATGGCGACTTTCGCCGACTGGGACTGGGTCATGGGCGTGAACGTGGGCGGCACGATCAACGGCATCGTCACCATGCTGCCGCGCATGTTGAAGCACGGCGAGGGCGGCCACATCGTCAACACCGCCTCGATGTCCGCGCTCGTGCCCGCGCCGGGCACCACGATCTATTCCTCGGGCAAAGCCGCCGTCACCTCGATGATGGAATGCATGCGCCCCGAACTGGAATCGCGCGGCATCGTGTGCTCGGCCTTCTGCCCAGGCGCGGTGCAGTCGAACATTGCCGAAGCCGGGCGCACCCGTCCCGACGCGCTGGCCGAGACCGGCTACGCCGAGGCCGACAAGGGGCGCCAGGCGGGGGGCAGTTTCTTCCACCTCTACCAGACCAAGGAAGAGGTCGGTGAGCGCGTGCTGACGGGCATCCTCAACGATGAACTCTACATCCTCACCCACGCCGAGTTCCTCATCGGCGTGCAGGAGCGCGGCGAGGCGACCACCGCGGCGGTGCAGGTCCAGTTGCCCGAGAACGAGGAGTACAAGAACACCTTCGGCGTGCTCTTCCGCAACTCGGCGATCACCCAGGAGATCGATCGGCAGAAGGCCCTGCGCGCCGCGCAGATGTCCGAAGCCGGCGTCGCGTAA
[配列番号9]c10g0076遺伝子
ATGTTGACGCTGTACAGCTTTGGCCCCGGAGCCAATTCGCTTAAGCCCCTGCTGGCCCTTTACGAGAAAGGCCTCGAATTTACGCCGCGCTTCGTCGATCCGACCAAGTTCGAGCATCACGAGGAATGGTTCAAGAAGATCAACCCGCGCGGCCAGGTTCCCGCGCTCGATCACGATGGCAACGTCATCACCGAATCGACGGTGATTTGCGAATACCTCGAAGACGCCTTCCCCGATGCGCCCCGGCTGCGTCCCACCGACCCTGTGCAGATCGCCGAGATGCGGGTCTGGACCAAGTGGGTGGACGAATACTTCTGCTGGTGCGTCTCCACCATCGGCTGGGAGCGCGGCATCGGTCCGATGGCCCGTGCCCTGTCGGACGAGGAGTTCGAGGAAAAGGTCAAACGCATCCCGATCCCTGAGCAGCAGGCCAAGTGGCGCAGCGCCCGCGCCGGCTTCCCCAAGGAGGTTCTGGACGAGGAAATGCGCAAGATCCGCGTCTCGATCGACCGTCTCGAAAAGCGCCTTTCCGAAAGCACCTGGCTGGCGGGCGAGGACTATACGCTTGCCGACATCTGCAACTTCGCCATCGCCAACGGCATGGAGAAGGGCTTTGATGACATCGTCAATACGGCCGCTACGCCCAACCTCGTCGCCTGGATCGAACGCATCAACGCGCGTCCCGCCTGCATCGAGATGTTCGCCAAGTCCAAGAGCGAGTTCGCCGCGCGCAAGCCCTTCGCCAAGAGCGAAGAGCAGGCACAGGCCTGA
[配列番号10]c10g0077遺伝子
ATGGCCAAGGACAACCGCATAACGCTTTACGATCTGCAGCTTGCCTCGGGCTGCACGATCAGCCCCTTCGTGTGGCGCACCAAGTACGCGCTGGCGCACAAGGGCTTCGACATGGATATCGTGCCGGGCGGCTTTACCGGCATTGCCGAGCGCACGGGCGGGCGTTCCGAACGTGCGCCAGTGATCGTCGACGATGGCAAGTGGGTGCTCGACAGCTGGAAGATCGCCGAATACCTCGATGAGACTTATCCCGATCGCCCGATGCTGTTCGAGGGCCCTTCCATGAAGGTGCTCACCAAGTTCCTCGACGCCTGGCTATGGAAGACGATCATCGCGCCGTGGTTCCGCTGCTACATCCTCGACTACCATGATCTGTCGTTGCCGCAGGACCATGCCTACGTGCGCGAATCGCGCGAGACGATGTTCCTGGGCGGGCAGAAGCTGGAGGATGTGCAGGCGGGCCGCGAGGATCGGCTTCCGCACGTGCCGCCGTTGCTGGAGCCGCTGCGCCAGCTGCTGCGCGATACGCCCTGGCTGGGCGGTGCGACACCCAACTACGCGGACTACACCGCGCTCGCCATCTTCCTGTGGACCGGCTCTGTGTGCACCACGCCGCCGCTCACCGAGGATGACCCGTTACGCGACTGGCTCGACCGCGGCTTCGACCTTTACGGCGGGCTGGGGCGTCATCCGGGCATGCACACGCTGTTCGGCCTGAAGCTGCGCGAGGGCGATCCAGAGCCTTTCGACCGCACCGGCCTTGGCATCGAGCCCGCGCCGGTCAACCAGGGCTCGGCCGAGCCGGCTACGGCGAGCTGA
[配列番号11]c10g0078遺伝子
ATGTACCAGATCCCGGGCTGCCCGTTCTCGGAGCGGGTGGAGTTGTTGCTCGATCTCAAGGGGCTGGGCGATGTCCTCGTCGACCACGAGATCGACATTTCCAAACCGCGCCCGGACTGGCTCCTGAAGAAGACGCGGGGGACGACTTCGCTTCCCGCGCTGGAGCTGGAGAACGGGGAGACCTTGAAGGAGAGCATGGTCATCATGCGCTACATCGAGGACCGCTTCCCCGAAGTTCCGGTCGCGCGCCAGGATCCCTACGAGCACGCCCTCGAGGCGATGCTGTGCGCGACCGATGGCGCCTACACCGGGGCGGGCTATCGCATGATCCTGAACCGGGACAAGGCCAGGCGCGAGGAATTGAAGGCCGAAGTCGATGCGCAGTACGCCCGGCTCGACGATTTCCTGCGGCACTACAGCCCGGATGGGGTCTACCTGTTCGACCGTTTCGGCTGGGCCGAAGTGGCCTTTGCGCCGATGTTCAAGCGGCTGTGGTTCCTCGAATACTACGAGGACTACGAGGTGCCGCAGAACCTGACGCGGGTGCTTCTGTGGCGCGAGGCGACACTGGCCGAACCTGTCGTGCAGGCGCGCCACGGCCACCGCGAGCTGATGACGCTCTACTACGACTACACCCAGGGCGGTGGAAACGGACGTCTGCCCGAAGGGCGCAGCGTCTCCAGCTTCACCCTCGATCCGCCGTGGCGCGCGCGGCCCATGCCGCCGCGTGACAAGTGGGGGCAGGGCGCCAGCGATGCCGAGCTCGGGCTGATCCCGGGCATTACCGTCCGTTCGGACACGGTGCCCGCCTGA
[配列番号12]c10g0075遺伝子
ATGCTCGAGGAGCTGGACGCGAACTACACGTTGCGTCCGATCTCGCTGACCAACCGCGAGCAGAAGGAAGACTGGTATCTCGCCCGCAATCCCAACGGGCGTATCCCCACACTGATCGACCATGAGGTCGATGCCGGGAACGGCGGTTTTGCGGTGTTCGAATCGGGTGCGATCCTGATCTACCTTGCCGAGAAGTTCGGCCGTTTCCTGCCAGCCGACACGATGGGCCGCAGCCGCGCGATCCAGTGGGTGATGTGGCAGATGTCGGGCCTCGGCCCCATGATGGGACAGGCGACCGTCTTCAACCGCTACTTCGAGCCCAGGCTGCCCGAGGTCATCGACCGCTACACGCGCGAGAGCCGCCGCCTCTTCGAAGTGATGGACACGCACCTCGCCGACAACGAATTCCTCGCGGGCGACTATTCGATCGCCGACATCGCCTGCTTCCCGTGGGTGCGCGGGCATGACTGGGCCTGCATCGACATGGAGGGGCTGCCCCACCTGCAACGCTGGTTCGAGACCATCGGTGAGCGCCCGGCCGTCCAGCGCGGCCTGCTCTTGCCCGAACCGCCCAAGGCGGACGAGATGGCCGAGAAGACGACCCGCCAGGGCAAGAACATCCTGGCCTGA
[配列番号13]プライマーA
TCTCGAGCTCGGATCC
[配列番号14]プライマーB
CTGGTACCATGGAATTCG
[配列番号15]プライマーC
GGATCCGAGCTCGAGATGATCAAGGGTATCGAAGG
[配列番号16]プライマーD
CGAATTCCATGGTACCAGTCAGAACTCCTGTGCGG
[配列番号17]プライマーE
GGATCCGAGCTCGAGATGACGAACTGGCTTATCAC
[配列番号18]プライマーF
CGAATTCCATGGTACCAGTCAGACCTCGGCGAAG
[配列番号19]プライマーG
GGATCCGAGCTCGAGATGACACAGGTAAAGGGACG
[配列番号20]プライマーH
CGAATTCCATGGTACCAGTCATGCCGTCTTTTCCTC
[配列番号21]プライマーI
GGATCCGAGCTCGAGATGGGAGAGACGACAAAAC
[配列番号22]プライマーJ
CGAATTCCATGGTACCAGTCAGGTGAGGTCGGC
[配列番号23]プライマーK
GGATCCGAGCTCGAGATGCAGGATCTACCGGG
[配列番号24]プライマーL
CGAATTCCATGGTACCGCAAGCTGTGTCATGC
[配列番号25]プライマーM
GGATCCGAGCTCGAGATGACGGGCGGGG
[配列番号26]プライマーN
CGAATTCCATGGTACCAGTCAGAGCGCGTTGGC
[配列番号27]プライマーO
GGATCCGAGCTCGAGATGCTGGAACTGTGGACTTC
[配列番号28]プライマーP
CGAATTCCATGGTACCAGGTAGGTGTGCTCATCGTTCA
[配列番号29]プライマーQ
GGATCCGAGCTCGAGATGTTGACGCTGTACAGCTTTG
[配列番号30]プライマーR
CGAATTCCATGGTACCAGCTCCTCAGGCCTGTGC
[配列番号31]プライマーS
GGATCCGAGCTCGAGATGGCCAAGGACAACC
[配列番号32]プライマーT
CGAATTCCATGGTACCAGTCAGCTCGCCGTAGC
[配列番号33]プライマーU
GGATCCGAGCTCGAGATGGCATGGGACGATG
[配列番号34]プライマーV
CGAATTCCATGGTACCAGGATGACGGTGTGCTTCAC
本発明の製造方法や酵素によって、天然のリグニンやリグニン関連物質を含むバイオマスや該バイオマスを処理して得られるグルタチオン付加フェニルプロパン系化合物から3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンが得られる。3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−プロパノンは、種々の産業上有用な化合物に変換することができ、例えば、樹脂、接着剤、レジスト材料、医薬品などの原料として利用することが期待できる1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオールなどの製造方法の原料として利用することができる。

Claims (10)

  1. グルタチオン付加フェニルプロパン系化合物に、還元型グルタチオンの存在下で、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する下記(3)及び/又は(4)の酵素を作用させることにより、フェニルプロパン系化合物を得る工程
    を含む、フェニルプロパン系化合物の製造方法。
    (3)Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
    (4)Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase
  2. 前記(3)の酵素が配列表の配列番号5に記載のC10G0078であり、かつ、前記(4)の酵素が配列表の配列番号6に記載のC10G0075である、請求項1に記載の製造方法。
  3. ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する、Gst及びN末端側にPRK10387及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase。
  4. 前記ノボスフィンゴビウム属微生物が、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(受領番号:NITE AP−01797)である、請求項3に記載のglutathione S−transferase。
  5. 前記glutathione S−transferaseは、SDS−PAGEで確認できる分子量が33kDaである、請求項3に記載のglutathione S−transferase。
  6. 前記glutathione S−transferaseが、配列表の配列番号5に記載のC10G0078である、請求項3に記載のglutathione S−transferase。
  7. ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属微生物に由来する、Gst、PRK11752、PRK15113及びmaiAのマルチドメインを有する、glutathione S−transferase。
  8. 前記ノボスフィンゴビウム属微生物が、ノボスフィンゴビウム・スピーシーズ(Novosphingobium sp.) MBES04(受領番号:NITE AP−01797)である、請求項7に記載のglutathione S−transferase。
  9. 前記glutathione S−transferaseは、SDS−PAGEで確認できる分子量が27kDaである、請求項7に記載のglutathione S−transferase。
  10. 前記glutathione S−transferaseが、配列表の配列番号6に記載のC10G0075である、請求項7に記載のglutathione S−transferase。

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