JP2015148674A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】放電に伴う画像不良を低減すること。【解決手段】可視像を保持する像保持体(B)と、像保持体(B)との対向領域(16)を通過する被転写体(S)に可視像を転写する転写部材(T2b)と、を備え、像保持体(B)と転写部材(T2b)のいずれかに対し、外表面(B1,9a)に第1の測定部材(61)を接触させ且つ第2の測定部材(62)を第1の測定部材(61)に対し周方向に離間させて接触させ且つ第1の測定部材(61)の電圧を変化させ、第2の測定部材(62)に生じる電位(V)に基づき測定される時定数をτs[s]とし、外表面(B1,9a)の周速v[mm/s]とし、対向領域(16)の下流端(Q21)から、外表面(B1,9a)から被転写体(S)が離れる位置(Q22,Q22′)までの長さLh[mm]とする場合に、Lh>v?τsに設定された画像形成装置(U)。【選択図】図25

Description

本発明は、画像形成装置に関する。
従来から、転写部材に電圧を印加して媒体に可視像を転写することが行われている。転写に関する技術として、以下の特許文献1〜4に記載の技術が知られている。
特許文献1としての特開平3−100579号公報には、感光体(2)の表面に接触して転写材にトナー像を転写させる転写ローラ(1)が記載されている。特許文献1の転写ローラ(1)は、軸状の芯金(11)と、前記芯金(11)に支持された円柱状の弾性層(12)と、前記弾性層(12)の周りに支持された表面抵抗層(13)とを有している。ここで、特許文献1には、表面抵抗層(13)の固有体積抵抗を設定することが記載されている。また、特許文献1では、表面抵抗層(13)を、いわゆる、二重リング電極法によって測定している。すなわち、特許文献1には、表面抵抗層(13)の表面抵抗率[Ω/□]と体積抵抗率[Ω・cm]とにおいて、表面抵抗率[Ω/□]の値を、体積抵抗率[Ω・cm]の値に比べて小さくすることが記載されている。
また、特許文献1には、前記表面抵抗層(13)に替えて、高抵抗層(13)と、高抵抗層(13)よりも体積抵抗率[Ω・cm]の小さい表面抵抗層(14)とからなる二層構造を設ける構成も記載されている。
なお、特許文献1では、転写ロールの場合にはプロセススピードを40[mm/sec]にし、転写ベルトの場合にはプロセススピードを80[mm/sec]にして評価実験を行っている。
特許文献2としての特開2007−328317号公報には、中間転写ベルト(11)を支持してトナー像と同極性の電圧が印加される斥力ローラ(16)と、中間転写ベルト(11)を挟んで前記斥力ローラ(16)に対向して配置された二次転写ローラ(22)と、前記二次転写ローラ(22)の近傍で且つ二次転写ローラ(22)に対して記録紙の搬送方向の下流側に配置された分離除電針(23)とが記載されている。特許文献2には、分離除電針(23)と2次転写ローラ(22)との間で生じる異常放電を防止する技術が記載されている。具体的には、特許文献2では、2次転写ローラ(22)の体積抵抗値[Ω]を、斥力ローラ(16)の体積抵抗値[Ω]に比べて小さくしている。また、特許文献2では、二次転写ローラ(22)において、体積抵抗値[Ω]よりも表面抵抗値[Ω]を大きくしたり、多層構造にして、内層よりも表層の体積抵抗値[Ω]を大きくする構成が記載されている。
特許文献3としての特開平9−44002号公報には、中間転写ベルト(19)と紙転写ローラ(23−1)とで構成される2次転写領域において、転写紙(24)が通過する通紙部と、前記通紙部よりも軸方向外側の非通紙部とでは、転写紙自体の抵抗の有無により、流れる転写電流が異なることが記載されている。そして、特許文献3には、非通紙部では、転写電流が流れ易いために、中間転写ベルト(19)自体の抵抗値が小さい値に変化し易いことが記載されており、その後に大きいサイズの転写紙に画像を記録する場合には、中間転写ベルト(19)の抵抗値のバラツキにより異常画像が生じることが記載されている。
なお、特許文献3では、前記異常画像を低減するために、小サイズの転写紙を使用する場合に、非通紙部に対応させてベタ画像を形成し、2次転写領域において、中間転写ベルト(19)の非通紙部に転写電流を流れ難くしている。
特許文献4としての特開平9−304997号公報にも、特許文献3に記載された非通紙部と通紙部の抵抗変化が記載されている。
なお、特許文献4では、中間転写ベルト(19)の表面の画像の濃度を検出する画像濃度検出センサ(51)を配置して、中間転写ベルト(19)の軸方向の画像の濃度ムラを検出し、中間転写ベルト(19)に生じている軸方向の抵抗変化の有無を検出している。
特開平3−100579号公報(第3頁右上欄第8行目〜第3頁右下欄第4行目、第4頁右下欄第13行目〜第6頁左上欄第3行目、第6頁右下欄第6行目〜第7頁左下欄第5行目) 特開2007−328317号公報(「0029」〜「0037」) 特開平9−44002号公報(「0003」〜「0004」、「0022」〜「0024」、図3) 特開平9−304997号公報(「0002」〜「0007」、「0047」〜「0059」)
本発明は、放電に伴う画像不良を低減することを技術的課題とする。
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の画像形成装置は、
表面に可視像を保持する像保持体と、
前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体との対向領域を通過する被転写体に前記像保持体の表面の可視像を転写する転写部材と、
を備え、
前記像保持体と前記転写部材とのいずれか一方の部材に対して、外表面に第1の測定部材を接触させ且つ第2の測定部材を前記第1の測定部材に対して前記一方の部材の外表面の周方向に沿って予め設定された距離だけ離間させて前記一方の部材の外表面に接触させ且つ電気的に接地して前記第1の測定部材に印加する電圧を変化させた場合に、前記第2の測定部材の表面に生じる電位の変化に基づいて測定される時定数をτs[s]とし、前記一方の部材の外表面の周速をv[mm/s]とし、前記被転写体が、他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から前記被転写体が離れる位置までの長さをLh[mm]とした場合に、前記時定数τs[s]と、前記一方の部材の外表面の周速v[mm/s]と、前記離れる位置までの長さLh[mm]とが、Lh>v×τsに設定された
ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写部材により構成された前記一方の部材と、
前記一方の部材を前記像保持体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記一方の部材に荷重を付与して前記一方の部材を前記像保持体に押し当て可能な前記移動機構と、
前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記一方の部材に付与する荷重が大きくなるように前記移動機構を制御し、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写部材により構成された前記一方の部材と、
前記一方の部材を前記像保持体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記一方の部材に荷重を付与して前記一方の部材を前記像保持体に押し当て可能な前記移動機構と、
前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記一方の部材を前記像保持体に押しつける方向に移動させ、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像保持体により構成された前記一方の部材と、
前記転写部材を前記一方の部材に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記転写部材に荷重を付与して前記転写部材を前記一方の部材に押し当て可能な前記移動機構と、
前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記転写部材に付与する荷重が小さくなるように前記移動機構を制御し、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像保持体により構成された前記一方の部材と、
前記転写部材を前記一方の部材に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記転写部材に荷重を付与して前記転写部材を前記一方の部材に押し当て可能な前記移動機構と、
前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記転写部材を前記一方の部材から離間する方向に移動させ、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、放電に伴う画像不良を低減することができる。
請求項2,3,4,5に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、被転写体の体積抵抗値が大きくなっても被転写体が詰まることを低減することができる。
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。 図2は本発明の実施例1の画像形成装置の要部の説明図である。 図3は本発明の実施例1の転写装置の要部説明図である。 図4は本発明の実施例1の転写部材の説明図であり、図4Aは転写部材の長さの説明図、図4Bは本体部の要部拡大図である。 図5は本発明の実施例1の移動機構の説明図であり、図5Aは転写部材が中間転写体に接触した状態の説明図、図5Bは転写部材が中間転写体から離間した状態の説明図である。 図6は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、図6Aは第1の層の混合物の製造順序の説明図、図6Bは第1の層の形成順序の説明図である。 図7は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、図7Aは第2の層の樹脂液の製造順序の説明図、図7Bは第2の層の形成順序の説明図、図7Cは第2の層の形成時に使用する装置の説明図である。 図8は本発明の実施例1の第2の時定数の測定方法の説明図であり、図8Aは測定方法の構成の説明図、図8Bは時間に対する電位の変化の説明図である。 図9は本発明の実施例1の第1の時定数の測定方法の説明図であり、図9Aは測定方法の構成の説明図、図9Bは時間に対する電位の変化の測定図である。 図10は本発明の実施例1の画像形成装置の制御部分が備えている各機能をブロック図で示した図である。 図11は本発明の実施例1のトレイの選択画像の説明図である。 図12は本発明の実施例1の媒体の種類の入力画像の説明図である。 図13は本発明の実施例1の媒体の抵抗値の入力画像の説明図である。 図14は本発明の実施例1の移動機構の制御情報の説明図である。 図15は本発明の実施例1の移動機構の制御の説明図であり、図15Aは図5Aに対応する図でありカムがアームプレートから離間して第3の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Bは図15Aに比べてカムがアームプレートを押して第2の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Cは図15Bに比べてカムがアームプレートを押して第1の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Dは図5Bに対応する図であり図15Cに比べてカムがアームプレートを押した場合の図である。 図16は本発明の実施例1の媒体の設定処理のフローチャートの説明図である。 図17は本発明の実施例1の抵抗値の更新処理のフローチャートの説明図である。 図18は本発明の実施例1の剥離距離の設定処理のフローチャートの説明図である。 図19は本発明の実施例1のジョブの制御処理のフローチャートの説明図である。 図20は画像形成装置の対向領域の説明図であり、図20Aは図3に対応する説明図、図20Bは図20AにおけるXXB−XXB線断面図である。 図21は導電性付与剤の分布の説明図であり、図21Aは図4Bに対応する図、図21Bは比較の図、図21Cは図21Bとは異なる比較の図である。 図22は導電性付与剤の分散の均一性に関する説明図であり、図22Aは測定方法の概略図、図22Bは測定結果の判定方法の説明図である。 図23は導電性付与剤同士の体積方向の距離と周方向の距離に関する説明図であり、図23Aは測定方法の概略図、図23Bは図21Aに対応する測定結果の説明図、図23Cは図21Bに対応する測定結果の説明図、図23Cは図21Cに対応する測定結果の説明図である。 図24は本発明の実施例1の対向領域の説明図である。 図25は本発明の実施例1の作用説明図であり、図25Aは第1の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Bは第2の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Cは第3の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Dは図25Aの要部拡大図、図25Eは図25Bの要部拡大図、図25Fは図25Cの要部拡大図である。 図26は本発明の実施例2の転写部材の要部拡大図であり、実施例1の図4Bに対応する説明図である。 図27は実施例2の導電性付与剤の分布の説明図であり、図27Aは図26に対応する図、図27Bは導電性付与剤が均一に分散している場合の比較の説明図である。 図28は2次転写ロールのニップ幅と2次転写ロールの硬度の関係を表わした図である。 図29は係数Aの評価結果の説明図である。 図30は速度と硬度ごとの式(26)を満たす最大の係数Aの説明図である。 図31は実験例1−1と実験例1−2と実験例1−3と比較例1−1と比較例1−2の条件と実験結果の説明図である。 図32は実験例2−1と実験例2−2と実験例2−3と実験例2−4と実験例2−5の条件と実験結果の説明図である。 図33は実験例3−1と実験例3−2と実験例3−3の条件と実験結果の説明図である。 図34は実験例4−1ないし実験例4−7と比較例4−1ないし比較例4−9の条件の説明図である。 図35は実験例4−1ないし実験例4−7と比較例4−1ないし比較例4−9の実験結果の説明図である。 図36は実験例5−1ないし実験例5−3と比較例5−1と比較例5−2の条件と実験結果の説明図である。 図37は本発明の実施例4の転写装置の要部説明図である。 図38は本発明の実施例4の移動機構の説明図であり、図38Aは転写部材が中間転写体に接触した状態の説明図、図38Bは転写部材が中間転写体から離間した状態の説明図である。 図39は本発明の実施例4の中間転写体の時定数の測定方法の説明図であり、図39Aは測定方法の構成の説明図、図39Bは時間に対する電位の変化の説明図である。 図40は本発明の実施例4の画像形成装置の制御部分が備えている各機能をブロック図で示した図である。 図41は本発明の実施例4の移動機構の制御情報の説明図である。 図42は本発明の実施例4の移動機構の制御の説明図であり、図42Aは図38Aに対応する図でありカムがアームプレートから離間して第3の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Bは図42Aに比べてカムがアームプレートを押して第2の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Cは図42Bに比べてカムがアームプレートを押して第1の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Dは図38Bに対応する図であり図42Cに比べてカムがアームプレートを押した場合の図である。 図43は本発明の実施例4の対向領域の説明図である。 図44は本発明の実施例4の作用説明図であり、図44Aは第3の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Bは第2の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Cは第1の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Dは図44Aの要部拡大図、図44Eは図44Bの要部拡大図、図44Fは図44Cの要部拡大図である。 図45は円形電極の一例の説明図であり、図45Aは概略平面図、図45Bは概略断面図である。 図46は実験例6−1ないし実験例6−7と比較例6−1ないし比較例6−9の条件の説明図である。 図47は実験例6−1ないし実験例6−7と比較例6−1ないし比較例6−9の実験結果の説明図である。 図48は実験例7−1ないし実験例7−3と比較例7−1と比較例7−2の条件と実験結果の説明図である。
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左
右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す
方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後
側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意
味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するも
のとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外
の図示は適宜省略されている。
(実施例1のプリンタUの全体構成の説明)
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図2は本発明の実施例1の画像形成装置の要部の説明図である。
図1、図2において、実施例1の画像形成装置の一例としてのプリンタUは、プリンタ
の本体U1と、プリンタの本体U1に媒体を供給する供給装置の一例としてのフィーダー
ユニットU2と、画像が記録された媒体に対する処理を行う後処理装置の一例としての処
理ユニットU3、画像が記録された媒体が排出される排出装置の一例としての排出ユニッ
トU4と、利用者が操作を行う操作部UIと、を有する。
(実施例1のマーキングの構成の説明)
図1、図2において、前記プリンタの本体U1は、プリンタUの制御を行う制御部Cや
、プリンタUの外部に図示しない専用のケーブルを介して接続された情報の送信装置の一
例としてのプリント画像サーバCOMから送信された画像情報を受信する図示しない通信
部、媒体に画像を記録する画像記録部の一例としてのマーキング部U1a等を有する。前
記プリント画像サーバCOMには、ケーブルまたはLAN:Local Area Network等の回線を通じて接続され、プリンタUで印刷される画像の情報が送信される画像の送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータPCが接続されている。
前記マーキング部U1aは、像保持体の一例としてY:イエロー、M:マゼンタ、C:
シアン、K:黒の各色用の感光体Py,Pm,Pc,Pkを有する。感光体Py〜Pkは
、表面が感光性の誘電体で構成されている。
図1、図2において、黒色の感光体Pkの周囲には、感光体Pkの回転方向に沿って、
帯電器CCk、潜像の形成装置の一例としての露光機ROSk、現像器Gk、一次転写器
の一例としての一次転写ロールT1k、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリー
ナCLkが配置されている。
他の感光体Py,Pm,Pcの周囲にも同様に、帯電器CCy,CCm,CCc、露光
機ROSy,ROSm,ROSc、現像器Gy,Gm,Gc、一次転写ロールT1y,T
1m,T1c、感光体クリーナCLy,CLm,CLcが配置されている。
マーキング部U1aの上部には、収容容器の一例として、現像器Gy〜Gkに補給され
る現像剤が収容されたトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に支持され
ている。
各感光体Py〜Pkの下方には、中間転写体の一例であって、像保持体の一例としての
中間転写ベルトBが配置されており、中間転写ベルトBは、感光体Py〜Pkと一次転写
ロールT1y〜T1kとの間に挟まれる。中間転写ベルトBの裏面は、駆動部材の一例と
してのドライブロールRdと、張力付与部材の一例としてのテンションロールRtと、蛇
行防止部材の一例としてのウォーキングロールRwと、従動部材の一例としての複数のア
イドラロールRfと、二次転写用の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと
、可動部材の一例としての複数のリトラクトロールR1と、前記一次転写ロールT1y〜
T1kにより支持されている。
中間転写ベルトBの表面には、ドライブロールRdの近傍に、中間転写体の清掃器の一
例としてのベルトクリーナCLBが配置されている。
バックアップロールT2aには、中間転写ベルトBを挟んで、二次転写部材の一例とし
ての2次転写ロールT2bが対向して配置されている。また、バックアップロールT2a
には、バックアップロールT2aに現像剤の帯電極性とは逆極性の電圧を印加するために
、接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。
前記バックアップロールT2a、2次転写ロールT2b、コンタクトロールT2cによ
り、実施例1の2次転写器T2が構成されており、一次転写ロールT1y〜T1k、中間
転写ベルトB、2次転写器T2等により、実施例1の転写装置T1,B,T2が構成され
ている。
2次転写器T2の下方には、媒体の一例としての記録シートSが収容される収容部の一
例として給紙トレイTR1〜TR3が設けられている。各給紙トレイTR1〜TR3の左
斜め上方には、取出部材の一例としてのピックアップロールRpと、捌き部材の一例とし
ての捌きロールRsとが配置されている。捌きロールRsから、記録シートSが搬送され
る搬送路SHが延びており、搬送路SHに沿って、記録シートSを下流側に搬送する搬送
部材の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。
搬送ロールRaの下流側には、2次転写器T2への記録シートSの搬送時期を調整する
調整部材の一例としてのレジストレーションロールRrが配置されている。
なお、フィーダーユニットU2にも、給紙トレイTR1〜TR3やピックアップロール
Rp、捌きロールRs、搬送ロールRaと同様に構成された給紙トレイTR4,TR5等
が設けられており、給紙トレイTR4,TR5からの搬送路SHは、プリンタUの本体U
1の搬送路SHに、レジストレーションロールRrの上流側で合流する。
2次転写ロールT2bに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、媒体の搬送装
置の一例としての搬送ベルトHBが複数配置されている。
搬送ベルトHBに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、定着装置Fが配置さ
れている。定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧部材の一例と
しての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhの内部には、熱源の一例としてのヒー
タが収容されている。
定着装置Fの下流側の処理ユニットU3内には、冷却装置Coが配置されている。
冷却装置Coの下流側には、記録シートSに記録された画像を読み取る画像読取装置S
cが配置されている。
画像読取装置Scの下流側には、排出ユニットU4に向けて延びる搬送路SHが形成さ
れている。前記処理ユニットU3の内部には、搬送路の一例としての反転路SH2が形成
されており、反転路SH2は搬送路SHから下方に分岐する。搬送路SHと反転路SH2
との分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第1のゲートGT1が配置されてい
る。
反転路SH2には、正逆回転可能な搬送部材の一例としてのスイッチバックロールRb
が複数配置されている。スイッチバックロールRbの上流側には、反転路SH2の上流部
から分岐して、搬送路SHの反転路SH2との分岐部よりも下流側に合流する搬送路の一
例としての接続路SH3が形成されている。反転路SH2と接続路SH3との分岐部には
、搬送方向の切替部材の一例としての第2のゲートGT2が配置されている。
前記反転路SH2の下部には、搬送路の一例としての循環路SH4が配置されている。
循環路SH4は、反転路SH2から分岐して左方に延び、レジストレーションロールRr
の上流側でプリンタUの本体U1の搬送路SHに合流する。循環路SH4には、搬送部材
の一例としての搬送ロールRaが配置されている。また、循環路SH4の反転路SH2か
らの分岐部には、搬送方向の切替部材の一例としての第3のゲートGT3が配置されてい
る。
排出ユニットU4には、排出される記録シートSが積載される積載容器の一例としての
スタッカトレイTRhが配置されており、搬送路SHから分岐してスタッカトレイTRh
に延びる排出路SH5が設けられている。なお、実施例1の搬送路SHは、排出ユニット
U4の右方に、図示しない追加の排出ユニットや後処理装置が追加して装着された場合に
、追加された装置に対して記録シートSが搬送可能に構成されている。
(マーキングの動作)
前記プリンタUでは、パーソナルコンピュータPCから送信された画像情報を、プリン
ト画像サーバCOMを介して受信すると、画像形成動作であるジョブが開始される。ジョ
ブが開始されると、感光体Py〜Pkや中間転写ベルトB等が回転する。
感光体Py〜Pkは、図示しない駆動源により回転駆動される。
帯電器CCy〜CCkは、予め設定された電圧が印加されて、感光体Py〜Pkの表面
を帯電させる。
露光機ROSy〜ROSkは、制御部Cからの制御信号に応じて、潜像を書き込む光の
一例としてのレーザー光Ly,Lm,Lc,Lkを出力して、感光体Py〜Pkの帯電さ
れた表面に静電潜像を書き込む。
現像器Gy〜Gkは、感光体Py〜Pkの表面の静電潜像を可視像に現像する。
トナーカートリッジKy〜Kkは、現像器Gy〜Gkにおける現像に伴って消費された
現像剤の補給を行う。
一次転写ロールT1y〜T1kは、現像剤の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧が印加
され、感光体Py〜Pkの表面の可視像を中間転写ベルトBの表面に転写する。
感光体クリーナCLy〜CLkは、一次転写後に感光体Py〜Pkの表面に残留した現
像剤を除去して清掃する。
中間転写ベルトBは、感光体Py〜Pkに対向する一次転写領域を通過する際に、Y,
M,C,Kの順に、画像が転写されて積層され、2次転写器T2に対向する2次転写領域
Q4を通過する。なお、単色画像の場合は、1色のみの画像が転写されて2次転写領域Q
4に送られる。
ピックアップロールRpは、受信した画像情報の大きさや記録シートSの指定と、収容
された記録シートSの大きさや種類等に応じて、記録シートSの供給が行われる給紙トレ
イTR1〜TR5から記録シートSを送り出す。
捌きロールRsは、ピックアップロールRpから送り出された記録シートSを1枚ずつ
分離して捌く。
レジストレーションロールRrは、中間転写ベルトBの表面の画像が2次転写領域Q4
に送られる時期に合わせて、記録シートSを送り出す。
2次転写器T2は、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに予め
設定された現像剤の帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加され、記録シートSに中間転
写ベルトBの画像を記録シートSに転写する。
ベルトクリーナCLBは、2次転写領域Q4で画像が転写された後の中間転写ベルトB
の表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
搬送ベルトHBは、2次転写器T2で画像が転写された記録シートSを表面に保持して
下流側に搬送する。
定着装置Fは、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する定着領域を通過する記録
シートSを加圧しながら加熱して、記録シートSの表面の未定着画像を定着する。
冷却装置Coは、定着装置Fで加熱された記録シートSを冷却する。
画像読取装置Scは、冷却装置Coを通過した記録シートSの表面の画像を読み取る。
なお、読み取られた画像は、原稿の画像と対比して、印刷不良の判定に使用したり、画像
の位置ズレの判定等に使用可能である。
画像読取装置Scを通過した記録シートSは、両面印刷が行われる場合には、第1のゲ
ートGT1が作動して、反転路SH2に搬送され、スイッチバックされて、循環路SH4
を通じて、レジストレーションロールRrに再送され、2面目の印刷が行われる。
排出トレイTRhに排出される記録シートSは、搬送路SHを搬送され、スタッカトレ
イTRhに排出される。このとき、記録シートSの表裏が反転された状態でスタッカトレ
イTRhに排出される場合、搬送路SHから反転路SH2に一旦搬入され、記録シートS
の搬送方向の後端が第2のゲートGT2を通過後、第2のゲートGT2が切り替わってス
イッチバックロールRbが逆回転をして、接続路SH3を搬送されてスタッカトレイTR
hに搬送される。
スタッカトレイTRhは、記録シートSが積載され、記録シートSの積載量に応じて、
最上面が予め設定された高さとなるように、積載板TRh1が自動的に昇降する。
(実施例1の中間転写体と2次転写器の説明)
図3は本発明の実施例1の転写装置の要部説明図である。
図1〜図3において、2次転写領域Q4には、支持部材の一例であり、対向部材の一例としてのバックアップロールT2aが配置されている。前記バックアップロールT2aは、回転軸の一例としての金属性のシャフト1を有する。前記シャフト1は、前後方向に延びている。前記シャフト1には、対向部材の本体部の一例してのロール層2が支持されている。前記ロール層2は、基層3と、前記基層3の外側に支持された表層4とを有する。基層3は、弾性部材の一例としてのゴムにより構成されている。前記基層3のゴムには、導電性付与剤が配合されている。表層4は、樹脂により構成されている。前記表層4には、導電性付与剤が配合されている。前記ロール層2は予め設定された硬度H1に設定されている。
前記バックアップロールT2aには、実施例1の中間転写体の一例としての無端帯状の中間転写ベルトBが張架されている。前記中間転写ベルトBは、導電性付与剤が配合された樹脂により構成されている。
図4は本発明の実施例1の転写部材の説明図であり、図4Aは転写部材の長さの説明図、図4Bは本体部の要部拡大図である。
図3、図4において、前記中間転写ベルトBを挟んで、バックアップロールT2aに対向する位置には、実施例1の転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが配置されている。前記2次転写ロールT2bは、軸の一例としての金属性のシャフト6を有する。前記シャフト6は前後方向に延びている。前記シャフト6には、本体部の一例としてのロール層7が支持されている。前記ロール層7は、シャフト6の長さλ1に比べて前後方向の長さが短い長さλ2が設定されている。前記ロール層7は、第1の層の一例としての基層8を有する。また、前記ロール層7は、第2の層の一例として、前記基層8に比べて径方向外側に支持された表層9を有する。よって、前記各層8,9は、径方向内側の内表面8a,9aと、径方向外側の外表面8b,9bとを有している。
図4Bにおいて、前記基層8は、ゴム11により構成されている。前記ゴム11には、導電性付与剤12が配合されている。また、前記表層9は、樹脂13により構成されている。前記表層9の樹脂13には、導電性付与剤14が配合されている。ここで、実施例1の表層9では、基層8に比べて、導電性付与剤の割合が多くなるように配合されている。実施例1の各層8,9では、導電性付与剤12,14が各層8,9の中で偏りが少ない状態で分散されている。よって、従来の転写ロールでは、外側の層になるほど、導電性付与剤は少ない構成が一般的であるのに対して、実施例1では、表層9の方が基層8よりも導電性付与剤が高濃度に配合されている。
図3、図4において、前記ロール層7は、前記バックアップロールT2aの硬度H1に応じた硬度H2に設定されている。実施例1では、硬度H1と硬度H2との差が小さく設定されている。よって、実施例1の2次転写領域Q4では、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとで挟まれて形成される領域、いわゆる、ニップ領域16は平面状に形成される。すなわち、前記中間転写ベルトBと前記2次転写ロールT2bとが対向するニップ領域16は平面状に形成される。前記2次転写ロールT2bには、ニップ領域16の記録シートSの搬送方向の長さ、いわゆる、ニップ幅が、予め設定された長さLになるように荷重が付与される。
図5は本発明の実施例1の移動機構の説明図であり、図5Aは転写部材が中間転写体に接触した状態の説明図、図5Bは転写部材が中間転写体から離間した状態の説明図である。
図2〜図5において、実施例1の2次転写器T2は、移動機構Utを有する。移動機構Utは、転写部材の移動部材の一例としてのアームプレートUt1を有する。アームプレートUt1は、2次転写ロールT2bのシャフト6の両端が回転可能に支持されている。アームプレートUt1は、回転中心Ut1aを中心として回転可能に支持されている。アームプレートUt1の下端には、弾性部材の一例としてのバネUt2が支持されている。実施例1のバネUt2は、2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBに接触する方向の力を作用させる。
バネUt2の上方には、転写部材の移動部材の一例としての偏心カムUt3が配置されている。偏心カムUt3は、回転中心Ut3aを中心として回転可能に支持されている。回転軸Ut3aには、駆動源の一例としてのモータUt4から駆動が伝達可能に構成されている。したがって、偏心カムUt3の回転に伴って、2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBに接触して押し当てられ、ニップ領域16の圧力が増加する図5Aに示す接触位置と、中間転写ベルトBから離間する図5Bに示す離間位置と、の間で移動可能に構成されている。よって、前記偏心カムUt3の回転に伴って、2次転写ロールT2bに対する転写荷重が変更可能に構成されている。よって、実施例1の被転写体の一例であり、媒体の一例としての記録シートSは、転写荷重が変更されるニップ領域16を通過する。
(転写部材の製造方法について)
(シャフト6について)
シャフト6は、2次転写ロールT2bの電極及び支持部材として機能する導電性部材である。
シャフト6としては、例えば、鉄(快削鋼等)、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属の部材が挙げられる。
シャフト6としては、例えば、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂やセラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂やセラミック部材)等も挙げられる。
シャフト6は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
(基層8について)
基層8は、導電性の層であり、ゴム材料(弾性材料)21と、導電性付与剤22とを含む。また、基層8は、その他の添加剤を含んでもよい。さらに、基層8は、導電性の発泡弾性層でもよく、導電性の非発泡弾性層でもよい。ただし、表層9の形成時における発泡体への液の侵入防止の観点から非発泡弾性層が好ましい。
ゴム材料(弾性材料)21としては、例えば、少なくとも化学構造中に二重結合を有する弾性材料が挙げられる。
ゴム材料21として具体的には、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
これらのゴム材料21の中でも、ポリウレタン、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらを混合したゴムが好適である。
導電性付与剤22は、ゴム材料21の導電性が低い場合やゴム材料が導電性を有しない場合などに用いる。導電性付与剤22としては、電子導電剤と、イオン導電剤とが挙げられる。
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
ここで、カーボンブラックとして具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下で使用されることが多い。
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲で使用されることが多い。
その他の添加剤としては、例えば、発泡剤、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤23、加硫促進剤24、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)など、通常、ゴム層に添加され得る材料が挙げられる。
(表層9について)
表層9は、樹脂材料31と、導電性付与剤32とを含む。また、表層9は、その他の添加剤を含んでもよい。
樹脂材料31としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等が挙げられる。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。
また、樹脂材料31は、硬化性樹脂33を硬化剤34により硬化したものであってもよい。
導電性付与剤32としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。これらの導電性付与剤32としては、基層8で説明した導電性付与剤22と同様なものが挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、硬化剤、軟化剤、酸化防止剤、界面活性剤などの通常樹脂の層に添加され得る材料が挙げられる。
ここで、表層9としては、ロール表面の微小硬度及びヤング率を調整して、割れ及び傷の発生を共に抑制する点から、硬化性樹脂33と、硬化剤34と、カーボンブラックと、を含む組成物で構成された樹脂層がよく、特に、イソシアネート基と反応し得る官能基を持つ樹脂(硬化性樹脂)と、イソシアネート硬化剤と、カーボンブラックと、を含む組成物の硬化膜で構成された樹脂層であることがよい。
この硬化膜で構成する樹脂層は、例えば、硬化剤の種類及び量、焼成温度(硬化温度)等によりロール表面の低ヤング率化を実現し、割れの発生を抑制し易くなる一方で、カーボンブラックの量により、ロール表面の微小硬度を高め、傷の発生を抑制し易くなるため好適である。
ここで、硬化性樹脂33としては、4フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が好適に使用可能である。
特に、イソシアネート基と反応し得る官能基を持つ樹脂としては、分子内に水酸基を有するアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオールなどである。また、機能向上等の目的で、例えば、フルオロオレフィン共重合体(例えば、四フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体等)、フッ化ビニル共重合体等が挙げられる。
また、硬化剤34としては、分子末端にイソシアネート基を有する低分子量のポリイソシアネート系化合物が好適に用いられる。具体的には、コロネートL,2030,HX,HL(日本ポリウレタン社製)、デスモジュールL,N 3300,HT(バイエル社製)、タケネートD 102,D 160N,D 170N(武田薬品社製)スミジュール N3300(住化バイエルウレタン社製)、T1890(デグッサ社製)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
ポリオール中の水酸基(OH基)に対するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO/OH、R値)が0.2〜1.5の範囲、好適には0.3〜1.3の範囲、より好適には、0.9〜1.1の範囲となるような配合比で混合することができる。また、反応抑制剤、金属触媒の他、界面活性剤、整泡剤、脱泡剤、難燃剤、可塑剤、顔料、染料、安定剤、制菌剤、充填剤など、物性制御のための添加剤を含むこともできる。
表層9は、各成分を溶剤36に分散させて塗布液を調製し、基層8上に、この塗布液を付与し、乾燥、必要に応じて焼成(硬化)することにより形成される。
ここで、塗布液の調製には、導電性付与剤(カーボンブラック)の分散性を高める点から、ジェットミル又はホモジナイザー等の衝突型分散機を利用することがよい。導電性付与剤(カーボンブラック)の分散性を高めることで、表層9の抵抗率の過剰な上昇を抑えつつ、表層9中の導電性付与剤の含有量を高め、微小硬度が高められる。
なお、溶剤36としては、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、n プロパノール、n ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸n ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
(基層8の形成について)
図6は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、図6Aは第1の層の混合物の製造順序の説明図、図6Bは第1の層の形成順序の説明図である。
図6Aにおいて、実施例1の基層8の材料の一例としての混合物29は、以下の工程を経て製造される。まず、弾性材料21と、導電性付与剤22とを混合して、混合物27を得る。そして、前記混合物27に対して、加硫剤23と、加硫促進剤24と、を添加して、混合物28を得る。そして、前記混合物28を、混練装置の一例としてのオープンロールで、混練りして、混合物29を得る。
図6Bにおいて、次に、この混合物29をシャフト6に巻き付ける。続いて、シャフト6を昇温する。そして、巻き付けた混合物29を予め設定された時間、加硫発泡させる。これにより、シャフト6上に弾性を有する基層8を形成する。そして、前記基層8の外表面8aを研磨して、予め設定された外径に加工して、基層8付きロールを得る。
(表層9の形成について)
図7は本発明の実施例1の転写部材の製造方法の説明図であり、図7Aは第2の層の樹脂液の製造順序の説明図、図7Bは第2の層の形成順序の説明図、図7Cは第2の層の形成時に使用する装置の説明図である。
図7Aにおいて、第2の層の樹脂液の一例としての樹脂液43は以下の工程を経て製造される。まず、溶剤36に対して、硬化性の樹脂33と、導電性付与剤32とを投入して樹脂液37が作成される。前記樹脂液37は、分散装置の一例としてのジェットミル分散機38にかけて分散処理が行われる。分散処理をした樹脂液36は、除去部材の一例としてのステンレス製のメッシュ39を通過させる。よって、樹脂液36中の異物や、導電性付与剤32の凝集物等が取り除かれる。異物等が取り除かれた樹脂液36は真空脱泡される。よって、樹脂液36中の空気が取り除かれる。これにより、脱泡された樹脂液41が製造される。脱泡された樹脂液41に対して、硬化剤34を混合して、樹脂液42を製造する。そして、前記樹脂液42には、導電性付与剤32を、さらに配合する。これにより、実施例1の表層の樹脂液43が製造される。
図7Bにおいて、前記シャフト6上の基層8の外表面8aは、表層の樹脂液43を使用して、被覆される。実施例1では、被覆方法の一例としてのスプレーコートを行う。すなわち、シャフト6の軸方向が水平方向に沿った状態で支持される。そして、シャフト6が予め設定された回転速度u1で回転される。よって、基層8が、シャフト6と共に回転する。そして、回転する基層8の外表面8aに対して、供給部の一例としてのスプレーノズル51から、表層の樹脂液43をスプレーする。なお、この際に、ノズル51は、シャフト6の軸方向に、予め設定された相対速度で移動させる。よって、基層8の外表面8aは、スプレーされた樹脂液43で覆われ、層が形成される。樹脂液43の層が形成されると、予め設定された時間加熱して焼成する。なお、実施例1では、加熱中にもシャフト6が回転している。これにより、ロール層7の表層9が形成されて、転写ロールT2bが作成される。
(転写部材の測定方法について)
図8は本発明の実施例1の第2の時定数の測定方法の説明図であり、図8Aは測定方法の構成の説明図、図8Bは時間に対する電位の変化の説明図である。
2次転写ロールT2bでは、第2の時定数の一例としての表面方向の時定数τsが設定される。表面方向の時定数τsは以下に示す構成で測定される。
図8Aにおいて、転写ロールT2bの外表面、すなわち、ロール層7の外表面9aには、測定部材の一例として、導電性を有する第1の金属板61と第2の金属板62とが配置される。第1の金属板61と第2の金属板62とは同形状の板状に形成されている。前記金属板61,62の前後方向の長さλ3は、転写ロールT2bのロール層7の長さλ2に比べて長く形成されている。また、前記金属板61,62は、左右方向、すなわち、厚み方向は、長さλ4に形成されている。各金属板61,62は、長さλ3,λ4の辺を有する面61a,62aが、ロール層7の外表面9aに押し当てられて保持される。
ここで、第2の金属板62は、第1の金属板61に対し、ロール層7の外表面9aに沿って周方向に離間して配置される。すなわち、図8Aにおいて、第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間の周長が、予め設定された長さλ5になるように配置される。前記第1の金属板61と、第2の金属板62との間には、絶縁部材63が配置されている。よって、前記第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間は絶縁されている。
転写ロールT2bのシャフト6は電気的に接地される。一方、第1の金属板61には、電源の一例としての直流電圧源64が接続される。前記直流電圧源64は、前記第1の金属板61に電圧を印加する。前記直流電圧源64は、予め設定された電圧V0を印加する印加状態と、電圧の印加を停止する停止状態とを切替可能に構成されている。実施例1では、図8Aにおいて、第2の金属板62には、右面62cに対応して表面電位計66が配置される。前記表面電位計66は、前記第2の金属板62の右面62cの電位Vを測定する。
直流電圧源64を停止状態から印加状態に切り替えると、2次転写ロールT2bのロール層7には、第1の金属板61を介して、電圧が印加される。したがって、ロール層7の表面方向や体積方向には、電圧の印加の開始に応じて電気的な変化が生じる。すなわち、ロール層7の表面方向に電気的な変化が生じると、第2の金属板62の電位Vが変化する。このとき、図8Bに示すように、表面電位計64には、0から、ある電位V1に向かって変化する電位Vが測定される。なお、図8Bでは、横軸が電圧V0の印加を開始してから経過した時間tを表し、縦軸は測定される電位Vを表している。
ここで、電位Vが0からV1に変化する現象は、いわゆる、過渡現象として知られており、ネイピア数をe、印加を開始してから経過した時間をt、転写ロールT2bの表面方向の時定数をτsと表す場合に、以下の式(1)に基づいて、電位Vが変化することが知られている。
V=V1×(1−e(−t/τs)) …式(1)
したがって、式(1)により、時間tが十分に大きい場合には、e(−t/τs)の値が小さくなり、Vはほとんど変化しないことが分かる。よって、時間tが十分に大きい場合には、電位Vは安定しており、V≒V1となる。
また、前記式(1)において、時間tに、表面方向の時定数τsを代入すると、以下の式(2)が得られる。
V=V1×(1−e(−τs/τs)
=V1×(1−e−1
=V1×(1−1/e)
=V1×{(e−1)/e}
≒V1×(1.718/2.718)
≒V1×0.6321 …式(2)
したがって、式(2)により、電圧V0の印加を開始してから、時間τsが経過した場合には、前記電位Vは、電位V1の約63[%]の値になることが分かる。
そこで、実施例1では、図8Aに示すように、電圧V0の印加を開始してからの第2の金属板の電位Vの変化を測定する。そして、十分に大きい予め設定された時間T1に測定された電位Vを、電位V1とする。また、第2の金属板62の電位Vが、前記電位V1の63[%]の値になった場合の時間tを特定する。そして、特定された時間tを、表面方向の時定数τsとする。
図9は本発明の実施例1の第1の時定数の測定方法の説明図であり、図9Aは測定方法の構成の説明図、図9Bは時間に対する電位の変化の測定図である。
2次転写ロールT2bでは、第1の時定数の一例としての体積方向の時定数τvが設定される。体積方向の時定数τvは以下に示す構成で測定される。
図9Aにおいて、体積方向の時定数τvの測定では、第2の金属板62と、絶縁部材63とが省略されてい点以外は、表面方向の時定数τsの測定と同様の構成61,64,66が使用される。すなわち、体積方向の時定数τvを測定する場合には、第2の金属板62に替えて、転写ロールT2bの外表面9aに押し当てられて保持された第1の金属板61の電位Vを測定する。実施例1では、図9Aにおいて、前記第1の金属板61の右面61bに対応して表面電位計66が配置されている。前記表面電位計66は、第1の金属板61の右面61bの電位Vを測定する。
直流電圧源64を印加状態から停止状態に切り替えると、2次転写ロールT2bのロール層7に対して、電圧の印加が停止される。したがって、ロール層7の表面方向や体積方向には、電圧の印加停止に応じて電気的な変化が生じる。このとき、ロール層7の体積方向の電気的な変化に応じて、第1の金属板61の電位Vが変化する。よって、図9Bに示すように、表面電位計66には、初期の電位V2から、0に向かって変化する電位Vが測定される。なお、図9Bでは、横軸が電圧の印加を停止してから経過した時間tを表し、縦軸は測定される電位Vを表している。
ここで、電位VがV2から0に変化する現象も、過渡現象として知られており、転写ロールT2bの体積方向の時定数をτvと表す場合に、以下の式(3)に基づいて、電位Vが変化することが知られている。
V=V2×e(−t/τv) …式(3)
前記式(3)において、時間tに、体積方向の時定数τvを代入すると、以下の式(4)が得られる。
V=V2×e(−τv/τv)
=V2×(e−1
=V2×(1/e)
≒V2×(1/2.718)
≒V2×0.3679 …式(4)
したがって、式(4)により、電圧の印加を停止してから、時間τvが経過すると、前記電位Vは、初期の電位V2の約37[%]の値になることが分かる。
そこで、実施例1では、図9Bに示すように、電圧の印加を停止してからの第1の金属板61の電位Vの変化を測定する。そして、印加状態に対応する時間t=0の電位Vを、初期の電位V2とする。また、第1の金属板61の電位Vが、前記電位V2の37[%]の値になった場合の時間tを特定する。そして、特定された時間tを、体積方向の時定数τvとする。
(転写部材の値の設定について)
2次転写ロールT2bでは、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]とが、以下の式(11)の関係を満たすように設定されている。
τs<τv …式(11)
特に、実施例1では、図4において、2次転写領域Q4におけるシートの搬送方向のニップ領域16の長さをL[mm]、2次転写ロールT2bの外表面の周速の一例としての回転速度をv[mm/s]と表わす場合に、2次転写ロールT2bは、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]と、ロール層7の体積抵抗値Rv[Ω]と、ロール層7の表面抵抗値Rs[Ω]とが、以下の式(12)の関係を満たすように設定されている。
(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(12)
(実施例1の制御部の説明)
図10は本発明の実施例1の画像形成装置の制御部分が備えている各機能をブロック図で示した図である。
図10において、プリンタの本体U1の制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Cは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Cは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
(プリンタの本体U1の制御部Cに接続された信号出力要素)
前記プリンタ本体U1の制御部Cは、操作部UI等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
操作部UIは、電源の投入部の一例としての電源ボタンUI1や、表示部の一例として
の表示パネルUI2、数字入力部UI3、矢印入力部UI4、媒体の設定部の一例としての用紙の設定ボタンUI5、媒体の体積抵抗値の入力部の一例としての抵抗値の更新ボタンUI6等を備えている。
(プリンタ本体U1の制御部Cに接続された被制御要素)
プリンタ本体U1の制御部Cは、主駆動源の駆動回路D1や、移動機構の駆動回路D2、電源回路E、その他の図示しない制御要素に接続されている。制御部Cは、各回路D1,D2,E等へ、それらの制御信号を出力している。
D1:主駆動源の駆動回路
主駆動源の駆動回路D1は、主駆動源の一例としてのメインモータM1を介して感光体
Py〜Pkや中間転写ベルトB等を回転駆動する。
D2:移動機構の駆動回路
移動機構の駆動回路D2は、モータUt4を介して偏心カムUt3を回転させて移動機構Utを作動させる。すなわち、2次転写ロールT2bを移動させる。
E:電源回路
前記電源回路Eは、現像用の電源回路Ea、帯電用の電源回路Eb、転写用の電源回路Ec、定着用の電源回路Ed等を有している。
Ea:現像用の電源回路
現像用の電源回路Eaは、現像器Gy〜Gkの現像ロールに現像電圧を印加する。
Eb:帯電用の電源回路
帯電用の電源回路Ebは、帯電器CCy〜CCkそれぞれに感光体Py〜Pk表面を帯
電させるための帯電電圧を印加する。
Ec:転写用の電源回路
転写用の電源回路Ecは、一次転写ロールT1y〜T1kや2次転写ロールT2bに転写電圧を印加する。
Ed:定着用の電源回路
定着用の電源回路Edは、定着装置Fの加熱ロールFhにヒータ加熱用の電力を供給する。
(プリンタ本体U1の制御部Cの機能)
プリンタ本体U1の制御部Cは、前記信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行
して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部Cは次の機能を有している。
C1:画像形成の制御手段
画像形成の制御手段C1は、パーソナルコンピュータPCから入力された画像情報に応
じて、プリンタUの各部材の駆動や各電圧の印加時期等を制御して、画像形成動作である
ジョブを実行する。
C2:駆動源の制御手段
駆動源の制御手段C2は、主駆動源の駆動回路D1を介してメインモータM1の駆動を制御し、感光体Py〜Pk等の駆動を制御する。
C3:電源回路の制御手段
電源回路の制御手段C3は、各電源回路Ea〜Edを制御して、各部材へ印加される電圧や、各部材へ供給される電力を制御する。
図11は本発明の実施例1のトレイの選択画像の説明図である。
C4:トレイの表示手段
収容部の選択画像の表示手段の一例としてのトレイの表示手段C4は、用紙の設定ボタンUI5が入力された場合に、収容部の選択画像の一例として、図11に示すトレイの選択画像101を表示パネルUI2に表示する。実施例1のトレイの選択画像101は、本体用の選択部の一例としてのトレイの選択ボタン101a〜101cを有する。各選択ボタン101a〜101cは、本体の各給紙トレイTR1〜TR3に対応している。また、トレイの選択画像101は、フィーダユニットU2用の選択部の一例としてのトレイの選択ボタン101d,101eを有する。前記選択ボタン101d,101eは、フィーダユニットU2の各給紙トレイTR4,TR5に対応している。
C5:トレイの記憶手段
選択された収容部の記憶手段の一例としてのトレイの記憶手段C5は、前記トレイの選択画像101で選択されたトレイTR1〜TR5を記憶する。
図12は本発明の実施例1の媒体の種類の入力画像の説明図である。
C6:媒体の種類の入力画像の表示手段
媒体の種類の入力画像の表示手段C6は、用紙の設定ボタンUI5が入力された場合に、図12に示す記録シートSの種類の入力画像102を表示パネルUI2に表示する。実施例1の種類の入力画像102は、記録シートSの種類の一例としての「普通紙」を入力するための第1の種類の入力部102aを有する。同様に、実施例1の種類の入力画像102は、記録シートSの種類の一例としての「薄紙」、「厚紙」、「塗工紙」に対応して、種類の入力部102b〜102dを有する。さらに、実施例1の種類の入力画像102は、封筒等のその他の種類を示す「その他」を入力するための第5の種類の入力部102eを有する。
また、前記種類の入力画像102は、記録シートSの寸法、すなわち、サイズとして、「A3SEF」を入力する第1の寸法の入力部102gを有する。同様に、実施例1の種類の入力画像102は、「B4SEF」、「A4SEF」、「B5SEF」に対応して、寸法の入力部102h〜102jを有する。また、種類の入力画像102は、「A3SEF」〜「B5SEF」以外の「その他」を入力する第5の寸法の入力部102kを有する。ここで、前記種類の入力画像102は、第5の寸法の入力部102kが入力された場合に記録シートSの「長さ」および「幅」を入力するための長さの入力部102mと幅の入力部102nとを有する。また、前記種類の入力画像102は、入力部102a〜102nに入力された入力値によって、用紙の種類情報を記憶させるための完了の入力部の一例としての完了ボタン102qを有する。
C7:媒体の種類の記憶手段
媒体の種類の記憶手段C7は、完了ボタン102qが選択された場合に、各入力部102a〜102pに入力された入力値に応じた媒体の種類の情報を各トレイTR1〜TR5ごとに記憶する。
C8:抵抗値の記憶手段
抵抗値の記憶手段C8は、給紙トレイTR1〜TR5毎に、給紙トレイTR1〜TR5に収容された記録シートSの体積抵抗値Rを記憶する。実施例1の抵抗値の記憶手段C8では、完了ボタン102qが選択された場合に、選択された記録シートSの種類に応じた体積抵抗値Rを記憶する。なお、完了ボタン102qが選択された場合に記憶される体積抵抗値Rは、記録シートSの種類に応じて予め設定されている。
図13は本発明の実施例1の媒体の抵抗値の入力画像の説明図である。
C9:抵抗値の入力画像の表示手段
抵抗値の入力画像の表示手段C9は、抵抗値の更新ボタンUI6が入力された場合に、図13に示す抵抗値の入力画像103を表示パネルUI2に表示する。実施例1の抵抗値の入力画像103は、記録シートSの体積抵抗値Rを入力する抵抗値の入力部103aを有する。また、実施例1の抵抗値の入力画像103は、体積抵抗値Rを更新して記憶させるための完了ボタン103bを有する。
C10:抵抗値の更新手段
抵抗値の更新手段C10は、完了ボタン103bが入力された場合に、抵抗値の入力部103aに入力された入力値を、給紙トレイTR1〜TR5に収容された記録シートSの体積抵抗値Rとして、各給紙トレイTR1〜TR5毎に記憶する。
図14は本発明の実施例1の移動機構の制御情報の説明図である。
C11:荷重情報の記憶手段
姿勢の制御情報の記憶手段の一例としての荷重情報の記憶手段C11は、姿勢の制御情報の一例として、移動機構Utの制御情報を記憶する。実施例1では、移動機構Utの制御情報として、記録シートSの体積抵抗値Rに対応する転写荷重N1〜N3を記憶する。実施例1では、体積抵抗値Rと転写荷重N1〜N3の関係を、参照情報の一例としての図14に示すルックアップテーブル104として記憶する。図14において、実施例1のルックアップテーブル104では、予め設定された体積抵抗値の閾値R1,R2に対して、体積抵抗値RがR1未満(R<R1)の低抵抗媒体の場合には、第1の転写荷重N1が設定されている。また、体積抵抗値RがR1以上且つR2未満(R1≦R<R2)の中抵抗媒体の場合には、第2の転写荷重N2が設定されている。さらに、体積抵抗値RがR2以上(R2≦R)の高抵抗媒体の場合には、第3の転写荷重N3が設定されている。ここで、実施例1では、転写荷重N1,N2,N3の順に大きく設定されている。すなわち、N1<N2<N3に設定されている。前記閾値R1,R2および転写荷重N1〜N3は実験に基づいて予め設定されている。
図15は本発明の実施例1の移動機構の制御の説明図であり、図15Aは図5Aに対応する図でありカムがアームプレートから離間して第3の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Bは図15Aに比べてカムがアームプレートを押して第2の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Cは図15Bに比べてカムがアームプレートを押して第1の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図15Dは図5Bに対応する図であり図15Cに比べてカムがアームプレートを押した場合の図である。
C12:移動機構の制御手段
姿勢の制御手段の一例としての移動機構の制御手段C12は、移動機構の駆動回路D2を介して、2次転写ロールT2bを図15Aに示す接触位置と図15Dに示す離間位置との間で移動させる。実施例1の移動機構の制御手段C12は、給紙トレイTR1〜TR5が選択されると、選択された給紙トレイTR1〜TR5に収容された記録シートSの体積抵抗値Rの情報を取得する。そして、移動機構の制御手段C12は、前記ルックアップテーブル104に基づいて体積抵抗値Rに応じた転写荷重N1〜N3の設定情報を取得する。そして、移動機構の制御手段C12は、前記転写荷重N1〜N3に応じてモータUt4を駆動して、カムUt3を移動させる。
実施例1の移動機構の制御手段C12は、第1の転写荷重N1の場合には、図15Cに示す第1の回転位置にカムUt3を移動させる。また、実施例1の移動機構の制御手段C12は、第2の転写荷重N2の場合には、第1の回転位置よりもバネUt2の力が2次転写ロールT2bに作用する図15Bに示す第2の回転位置にカムUt3を移動させる。さらに、実施例1の移動機構の制御手段C12は、第3の転写荷重N3の場合には、第2の回転位置よりもバネUt2の力が作用する図15Aに示す第3の回転位置にカムUt3を移動させる。なお、実施例1の第3の回転位置では、カムUt3がアームプレートUt1からを離間している。これにより、ニップ領域16には2次転写ロールT2bを介して転写荷重N1〜N3が付与される。
FL1:初期処理のフラグ
姿勢の制御の完了の判別値の一例としての初期処理のフラグFL1は、初期値が「0」である。前記初期処理のフラグFL1は、転写荷重N1〜N3に基づいた移動機構Utの動作が終了すると、「1」になる。また、ジョブが開始されると、「0」になる。
(実施例1の流れ図の説明)
次に、実施例1のプリンタUにおける制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
(媒体の設定処理のフローチャートの説明)
図16は本発明の実施例1の媒体の設定処理のフローチャートの説明図である。
図16のフローチャートの各ステップSTの処理は、プリンタUの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理はプリンタUの他の各種処理と並行して実行される。
図16に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
図16のST1において、操作部UIの用紙の設定ボタンUI5の入力があったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に移り、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、図11に示すトレイの選択画像101を表示パネルUI2に表示する。そして、ST3に進む。
ST3において、トレイの選択ボタン101a〜101eが選択されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に移り、ノー(N)の場合はST3を繰り返す。
ST4において、以下の(1),(2)の処理を実行し、ST5に進む。
(1)トレイの選択ボタン101a〜101eにより選択された給紙トレイTR1〜TR5を記憶する。
(2)トレイの選択画像101を非表示にする。
ST5において、図12に示す種類の入力画像102を表示パネルUI2に表示する。
そして、ST6に進む。
ST6において、完了ボタン102qが選択されたか否かを判別する。ノー(N)の場合はST7に移り、イエス(Y)の場合はST9に進む。
ST7において、各入力部102a〜102nに対してサイズおよび種類の入力があったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST8に移り、ノー(N)の場合はST6に戻る。
ST8において、入力された入力値で入力部102a〜102nの表示を更新する。そして、ST6に戻る。
ST9において、各入力部102a〜102nに対してサイズおよび種類が入力されているか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST10に進み、ノー(N)の場合はST6に戻る。
ST10において、以下の(1),(2)の処理を実行し、ST1に戻る。
(1)入力されたサイズおよび種類を媒体の種類の情報として記憶する。
(2)種類の入力画像102を非表示にする。
(抵抗値の更新処理のフローチャートの説明)
図17は本発明の実施例1の抵抗値の更新処理のフローチャートの説明図である。
図17のフローチャートの各ステップSTの処理は、プリンタUの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理はプリンタUの他の各種処理と並行して実行される。
図17に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
図17のST31において、操作部UIの抵抗値の更新ボタンUI6の入力があったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST32に進み、ノー(N)の場合はST31を繰り返す。
ST32において、図11に示すトレイの選択画像101を表示パネルUI2に表示する。そして、ST33に進む。
ST33において、トレイの選択ボタン101a〜101eが選択されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST34に進み、ノー(N)の場合はST33を繰り返す。
ST34において、以下の(1),(2)の処理を実行し、ST35に進む。
(1)トレイの選択ボタン101a〜101eにより選択された給紙トレイTR1〜TR5を記憶する。
(2)トレイの選択画像101を非表示にする。
ST35において、図13に示す抵抗値の入力画像103を表示パネルUI2に表示する。そして、ST36に進む。
ST36において、完了ボタン103bが選択されたか否かを判別する。ノー(N)の場合はST37に進み、イエス(Y)の場合はST39に進む。
ST37において、抵抗値の入力部103aに対して抵抗値の入力があったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST38に進み、ノー(N)の場合はST36に戻る。
ST38において、入力された入力値で、抵抗値の入力部103aの表示を更新する。そして、ST36に戻る。
ST39において、抵抗値の入力部103aに対して抵抗値が入力されているか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST40に進み、ノー(N)の場合はST36に戻る。
ST40において、以下の(1),(2)の処理を実行し、ST31に戻る。
(1)入力された抵抗値を給紙トレイの記録シートSの体積抵抗値Rとして記憶する。
(2)抵抗値の更新画像103を非表示にする。
(剥離距離の設定処理のフローチャートの説明)
図18は本発明の実施例1の剥離距離の設定処理のフローチャートの説明図である。
図18のフローチャートの各ステップSTの処理は、前記プリンタUの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理はプリンタUの他の各種処理と並行して実行される。
図18に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
図18のST51において、プリント画像サーバCOMから画像情報を受信したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST52に進み、ノー(N)の場合はST51を繰り返す。
ST52において、受信情報に基づいて使用する給紙トレイTR1〜TR5を選択する。そして、ST53に進む。
ST53において、次の(1),(2)の処理を実行する。そして、ST54に進む。
(1)使用する給紙トレイTR1〜TR5に基づいて、記録シートSの種類情報を取得する。
(2)使用する給紙トレイTR1〜TR5に基づいて、記録シートSの体積抵抗値Rを取得する。
ST54において、ルックアップテーブル104に基づいて、体積抵抗値Rに対応する転写荷重N1〜N3を選択する。そして、ST55に進む。
ST55において、転写荷重N1〜N3に基づいて移動機構Utを駆動する。すなわち、記録シートSの剥離距離Lhが設定される。そして、ST56に進む。
ST56において、初期処理のフラグFL1を「1」にする。そして、ST57に進む。
ST57において、ジョブが開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST58に進み、ノー(N)の場合はST57を繰り返す。
ST58において、初期処理のフラグFL1を「0」にする。そして、ST51に戻る。
(ジョブの制御処理のフローチャートの説明)
図19は本発明の実施例1のジョブの制御処理のフローチャートの説明図である。
図19のフローチャートの各ステップSTの処理は、前記プリンタUの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理はプリンタUの他の各種処理と並行して実行される。
図19に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
図19のST71において、プリント画像サーバCOMから画像情報を受信したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST72に進み、ノー(N)の場合はST71を繰り返す。
ST72において、初期処理のフラグFL1が「1」になったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST73に進み、ノー(N)の場合はST72を繰り返す。
ST73において、ジョブを開始する。そして、ST74に進む。
ST74において、ジョブが終了したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST71に戻り、ノー(N)の場合はST74を繰り返す。
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のプリンタUでは、プリント画像サーバCOMから画像情報を受信すると、使用する給紙トレイTR1〜TR5が選択される。そして、給紙トレイTR1〜TR5に収容された記録シートSの種類や体積抵抗値Rに応じて、2次転写ロールT2bの転写荷重N1〜N3が設定される。これに基づいて、移動機構Utが移動して、2次転写ロールT2bが移動する。転写荷重が設定されて初期処理が終了すると、画像形成動作の一例としてのジョブが開始されて、記録シートSに画像が記録される。
記録シートSに画像を記録する際に、2次転写器T2には2次転写電圧Vaが印加される。すなわち、実施例1では、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに2次転写電圧Vaが印加される。これにより、バックアップロールT2aに支持された中間転写ベルトBと、2次転写ロールT2bとの間には、2次転写電圧Vaに応じた転写電界が形成される。したがって、中間転写ベルトB上の可視像が、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間のニップ領域16を通過すると、可視像には転写電界が作用する。よって、可視像は、中間転写ベルトBから記録シートSに転写される。ここで、実施例1では、2次転写ロールT2bの時定数τs,τvなどが、式(11)、式(12)の関係を満たすように設定されている。
図20は画像形成装置の対向領域の説明図であり、図20Aは図3に対応する説明図、図20Bは図20AにおけるXXB−XXB線断面図である。
図20において、一般に、画像形成装置では、2次転写領域Q4におけるニップ領域01の前後方向の長さは、記録シートSの大きさ、すなわち、記録する最大の記録シートSのサイズに基いて構成される。したがって、記録シートSのサイズが最大でない場合には、記録シートSがニップ領域01を通過する場合に、記録シートSの通過する通紙部02と、記録シートSの通過しない非通紙部03とが、ニップ領域01に生じる。そして、このような通紙部02と非通紙部03とが何度も生じた後に、画像を記録しようとすると、大サイズの記録シートSでは画像不良が生じる恐れがある。すなわち、非通紙部03であった部分では、中間転写ベルトBの抵抗値が低下することが従来から知られており、大サイズの画像を記録する場合に、軸方向において転写電界のバラツキが生じ、濃度の低下や、トナーの飛び散り等の画像不良が生じることが知られている。
これに応じて、特許文献3では、非通紙部03にトナーを供給して、通紙部02と非通紙部03とで転写時に抵抗値が異なる状況が発生することを抑制している。また、特許文献4では、濃度センサにより中間転写ベルトBの抵抗値の変化を検出して、中間転写ベルトBの劣化を検出している。したがって、従来は、中間転写ベルトBの抵抗低下が発生する原因について、必ずしも詳細には認識されていなかった。
これに対して、本願発明者は、中間転写ベルトBの抵抗値の低下は、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間の放電により生じることを特定した。すなわち、放電が生じることで、樹脂の絶縁性が失われて電気が通り易い導通路が形成されてしまい、抵抗が低下するものと推察される。したがって、2次転写電圧Vaが大きい場合に、抵抗が低下し易くなるのは、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間の電位差が増大して放電が増大するためであると推察される。
よって、中間転写ベルトBの抵抗の低下を抑制するためには、放電を制御、抑制する必要があると考えた。
放電の制御、抑制について更に研究を進めたところ、この放電は、2次転写ロールT2bの表面の導電性付与剤12,14の微視的な空間におけるバラツキに起因していると考えるに至った。すなわち、2次転写ロールT2bのロール層7では、樹脂9に対して導電性付与剤14が配合される。よって、2次転写ロールT2bの表面を、微視的に見た場合には、抵抗値の大きい樹脂13に、抵抗値の小さい導電性付与剤14が点在していると考えることができる。よって、2次転写ロールT2bの表面を微視的に見た場合には、抵抗値が大きい部分と、抵抗値が小さい部分とが空間的に繰り返される。そして、この繰り返される程度、すなわち、導電性付与剤14どうしの距離に応じた抵抗値の微視的な空間距離に起因して、電荷の溜まり易さや移動し易さが異なり、放電に影響を与えるものと考えられる。なお、導電性付与剤14が疎に分散しているのであれば、その領域では、抵抗の大きい樹脂13が多く、前記空間距離が長くなる。逆に、導電性付与剤14が密に分散しているのであれば、導電性付与剤14どうしの距離が近く、前記空間距離は短くなる。
つまり、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間に電圧が印加された場合に、2次転写ロールT2bの表面では、抵抗値の大きい樹脂13ではなく、抵抗値の小さい導電性付与剤14に電流が流れ易い。すなわち、導電性付与剤14には、電荷が移動し易くて電荷が集まり易い。よって、転写電界が大きくなって放電が生じる場合には、導電性付与剤14と中間転写ベルトBとの間で放電が生じ易い。このとき、中間転写ベルトBでは、前記導電性付与剤14の近傍で放電が生じるものと推察される。したがって、前記空間距離が長い場合には、放電が生じる導電性付与剤14の数が少ないために、中間転写ベルトBでも放電の発生する部分が集中的に生じ易いと考えられる。よって、中間転写ベルトBの抵抗の低下を緩和するには、放電が生じる微視的な点を増やし、放電を分散させれば良いと考えられる。
そこで、導電性付与剤12,14の配合量を調節するなどして、2次転写ロールT2bの表面近傍の前記空間距離を短くして放電の分散を試みると、2次転写ベルトBの一部に放電が集中することを大幅に低減できる場合があった。すなわち、導電性付与剤12,14の配合量を調節することで、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制可能であることを見出した。
このとき、点としての導電性付与剤12,14から生じる放電自体は、導電性付与剤12,14の大きさや、抵抗値、形状等によって、生じ易さが異なるもの考えられる。すなわち、導電性付与剤12,14の種類などによって、放電の集中を抑制する場合に必要な最低限の前記空間距離は異なるものと考えられる。これに対して、本願発明者は、導電性付与剤12,14の種類によらずに、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとを式(11)の関係にすることで、2次転写ロールT2bにおける放電の集中が抑制されることを見出した。
すなわち、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsが、体積方向の時定数τvに比べて小さくなっている実施例1では、放電が集中し難くなっている。したがって、実施例1では、中間転写ベルトBにおける抵抗の低下も抑制されている。よって、サイズが異なる記録シートSに画像を記録する場合であっても、サイズの大きな記録シートSに画像不良が発生し難くなっている。
なお、式(11)の関係を満たさない場合、すなわち、表面方向の時定数τsが、体積方向の時定数τvよりも大きい場合は、2次転写ロールT2bの外表面9aとシャフト6との間に電流が流れる場合に、外表面9aに沿って電流が流れ難いことに対応する。すなわち、τs>τvの場合には、電荷は外表面9aの一部での移動に制限され易くて、転写電界が一部分でしか生じ難くなって、放電が分散され難いものと考えられる。
図21は導電性付与剤の分布の説明図であり、図21Aは図4Bに対応する図、図21Bは比較の図、図21Cは図21Bとは異なる比較の図である。
式(11)について補足する。転写ロールの表面近傍に導電性付与剤を多く含有させることは、例えば、2層構成の転写ロールT2bであれば、表層9の導電性付与剤14の含有量を多くすることに相当する。その場合、表層9の体積抵抗値や、転写ロールT2bとしての表面抵抗値は下がる。しかしながら、例えば、導電性付与剤14にカーボンブラック14′を使用した場合、配合されるカーボンブラック14′の部数が同じでも、図21に示すように、その空間距離は幾通りにもなる。
例えば、図21Aに示す表層9では、カーボンブラック14′が樹脂13中に偏りが少ない状態で、いわゆる、均一に分散している。すなわち、カーボンブラック14′同士の距離について、シャフト6から外表面9aに向かう方向に沿った体積方向の距離d1についてはバラツキが少なくなっている。また、外表面9aに沿った周方向の距離d2についても、バラツキが少なくなっている。なお、図21Aでは、層8,9のカーボンブラック14′同士の距離について、平均的には、体積方向の距離d1よりも周方向の距離d2の方が短い距離となっている。
一方、図21Bに示す表層9では、カーボンブラック14′が体積方向に沿って分布する密な部分13aと、カーボンブラック14′が存在しない疎な部分13bとが、周方向に沿って繰り返し存在している。すなわち、図21Bに示す表層9では、体積方向の距離d1についてはバラツキが少ない。しかし、周方向の距離d2については、密な部分では距離d2が小さいが、疎な部分では、距離d2が大きい。よって、周方向の距離d2については、バラツキが大きく不均一である。また、図21Cに示す表層9では、カーボンブラック14′が全体的に内表面9bに偏っている。そして、一部のカーボンブラック14′が外表面9a近傍に密集している。このとき、外表面9a近傍の密集した部分同士は周方向に離間している。よって、図21Cの表層9では、カーボンブラック14′同士の距離d1,d2に大きいバラツキが存在しており、不均一である。よって、図21B、図21Cに示す表層9では、外表面9a近傍の周方向に関して、カーボンブラック14′同士の距離d2のバラツキが大きく不均一である。
ここで、放電が生じる場合を考える。図21Aの転写ロールT2bでは、カーボンブラック14′の空間距離が小さく、放電が、一部分に集中し難くて分散し易くなっている。よって、導電点当たりの放電エネルギーが分散し易い。これに対して、図21Bや図21Cの転写ロールT2bでは、放電は、外表面9a近傍のカーボンブラック14′の密な部分に集中し易く、導電点当たりの放電エネルギーが大きくなり易い。なお、カーボンブラック14′の分布が周方向に均一な場合、距離d2が小さくなればなるほど放電は分散し易い。
したがって、導電性付与剤の配合量を多くして、表面抵抗値を体積抵抗値に比べて小さくしたり(表面抵抗値<体積抵抗値としたり)、表面抵抗率を体積抵抗率に比べて小さくしたり(表面抵抗率<体積抵抗率としたり)するだけでは、図21Bや図21Cのように空間距離の大きい部分を有する転写ロールになり、中間転写ベルトBと転写ロールT2b間の放電が緩和されない恐れが生じ易い。よって、中間転写ベルトBの抵抗低下が生じる恐れが高い。
これに対して、式(11)を満たす実施例1では、τs<τvである。よって、転写ロールT2bの外表面9a近傍において、導電性付与剤14間の空間距離がある値以下に保たれる。したがって、空間距離の小さい転写ロールに構成が限定され、放電の集中は緩和される。したがって、実施例1の転写ロールT2bでは、従来の構成に比べて、放電の集中を緩和し易く、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制し易くなっている。
また、従来の構成では、空間距離が放電の緩和に必要な小ささか否かを、転写ロールT2bを分解してロール層7の断面を観察しなければならなかった。つまり、従来は、導電性付与剤14の位置関係を観察しなければならなかった。これに対して、実施例1では、τs<τvの関係性を満たさせることで、ロール層7の断面を実際に観察することなく、導電性付与剤14の空間距離が小さいことが認識される。つまり、τs<τvの関係により、体積方向と表面方向において導電性付与剤14の配置が制御され、導電性付与剤の空間距離が放電の緩和に必要な小ささにされる。
図22は導電性付与剤の分散の均一性に関する説明図であり、図22Aは測定方法の概略図、図22Bは測定結果の判定方法の説明図である。
導電性付与剤14,14′の分散のバラツキが少ない場合に関し、特に、図21Aに示すような周方向に均一に分散することの意味について説明する。本明細書では、導電性付与剤14,14′が周方向に均一に分散することを、転写ロールのτsに関する標準偏差σを用いて定義する。すなわち、図22Aにおいて、転写ロールT2bに対して、周方向に45°ずつ異なる位置P1〜P8でτsを測定する。そして、測定された8つのτsに対する標準偏差σが1.0よりも小さい場合を、本明細書では、導電性付与剤14,14′が周方向に均一に分散しているとする。よって、例えば、サンプル1〜サンプル10の転写ロールT2bについて、図22Bに示すように、各位置P1〜P8でτsが測定されたとすると、標準偏差σが、σ<1.0を満たすサンプル4,7,9,10は、導電性付与剤14が周方向に均一に分散しているとみなす。
図23は導電性付与剤同士の体積方向の距離と周方向の距離に関する説明図であり、図23Aは測定方法の概略図、図23Bは図21Aに対応する測定結果の説明図、図23Cは図21Bに対応する測定結果の説明図、図23Cは図21Cに対応する測定結果の説明図である。
上述の説明で使用した導電性付与剤同士の距離に関し、体積方向の距離d1と周方向の距離d2との大小関係について説明する。本明細書では、前記距離d1,d2を、転写ロールT2bの一周分について測定された抵抗値Rv,Rsを用いて定義する。すなわち、図23において、体積方向の距離d1は、転写ロールT2bの一周分についてRvを測定する。そして、測定されたRvの最大値Rv1と最小値Rv2との差分ΔRv(=Rv1−Rv2)が、前記距離d1を表すものとする。また、周方向の距離d2については、転写ロールT2bの一周分について表面抵抗値Rsを測定する。そして、測定されたRsの最大値Rs1と最小値Rs2との差分ΔRs(=Rs1−Rs2)が、前記距離d2を表わすものとする。よって、ΔRs<ΔRvが満たされる転写ロールT2bでは、体積方向の導電性付与剤同士の距離d1よりも外表面9aの周方向の導電性付与剤同士の距離d2の方が短い距離で導電性付与剤12,14がロール層7に分散しているとみなす。
式(11)について、さらに補足すると、特許文献1には、表面抵抗率ρsが、体積抵抗率ρvに比べて小さく設定された転写ロールが記載されている。すなわち、特許文献1には、ρs<ρvの転写ロールが記載されている。
一般的に、転写ロールの抵抗値は電圧に依存する。この電圧への依存特性は、印加電圧に対する抵抗値の傾きから、電子導電タイプと、イオン導電タイプの2タイプに分類できる。電子導電タイプは、主にカーボンブラックに代表される電子導電剤が電流を運ぶタイプであり、電圧依存が大きいという特性を有する。一方、イオン導電タイプは、イオンが電流を運ぶタイプであり、電圧依存が小さいという特性を有する。
従来の転写ロールでは、イオン導電が支配的であり、体積抵抗値は、印加電圧の上昇とともになだらかに減少することが多い。このとき、表面抵抗値を低くしようとして、表面近傍のカーボンブラックの配合量を多くすると、表面近傍では電子導電がイオン導電に比べて支配的となる。よって、その表面抵抗値は、電圧依存が大きくなり、電圧の上昇と共に急峻に減少する。逆に言えば、その表面抵抗値は電圧の下降と共に急峻に増大する。
ここで、一般には、転写ロールT2bの抵抗値は転写中にかかる電圧、例えば、1000[V]で測定される。したがって、従来の構成では、1000[V]で測定される体積抵抗値と表面抵抗値に対して、表面抵抗値の方が体積抵抗値よりも小さくなるように設定された。しかし、カーボンブラックの配合量を多くして表面抵抗値の方を小さく設定した場合、上述のように、表面抵抗値は、電圧の下降と共に急峻に増大する。よって、低い電圧側では、逆に、表面抵抗値の方が体積抵抗値よりも大きくなる。放電は、転写ロールに係る電位差が300[V]程度で生じる。よって、表面抵抗値の方が体積抵抗値に比べて小さく設定された従来の転写ロールの場合、300[V]程度の低い電圧の領域では、表面抵抗値は体積抵抗値よりも大きくなり、放電の集中を緩和することが困難である。すなわち、従来の構成では、式(11)を満たさず、τs>τvとなってしまう。上記抵抗値を抵抗率と読みかえることができるので、一般的には、特許文献1に記載のρs<ρvの規定だけでは、τs>τvとなってしまう。
整理すると、従来のように単に表面抵抗値や表面抵抗率を下げるという発想だけでは、導電性付与剤の配合を多くすることにしかならない。そして、それは導電機構を電子導電にすることと等価である。よって、低い電圧側で発生する放電の問題を解決することは困難である。また、イオン導電タイプの転写ロールの表面抵抗値を下げようとして、カーボンブラックを増大させていくと、電子導電の挙動が強くなる。よって、イオン導電を保ったまま、抵抗を下げることは非常に困難である。したがって、いずれにしても、表面抵抗値が電圧の下降と共に急峻に増大することを阻止するのは困難である。
なお、基層と表層の2層構造において、表層の抵抗値を大幅に低下させることでτs<τvを実現することも考えられる。つまり、表面抵抗値が、電圧の下降と共に急峻に増大しても、表面抵抗値の方が体積抵抗値に比べて小さくなるように、予め大幅に低下させておくことも考えられる。しかしながら、そもそも、そのような状態では転写電流がシャフト6には流れず転写ロールT2bの表面を流れてしまう。よって、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下の問題以前に、転写ロールとしての機能そのものが失われてしまう問題が生ずる。
これらに対して、実施例1では、τs<τvを満たす転写ロールT2bである。よって、実施例1では、特許文献1等の従来の構成とは異なり、転写中にかかる電圧程度での抵抗値の関係を調整して転写ロールの機能を確保しつつ、中間転写ベルトBと転写ロールT2b間の実際の放電時に転写ロールT2bにかかる電圧程度での抵抗値の関係が規定される。
ところで、式(11)の関係においては、表面方向の時定数τsが小さければ小さいほど、放電が分散し易くなると考えられる。よって、放電の集中を抑制する観点からは、表面方向の時定数τsが小さいほど、望ましいようにも思われる。しかしながら、表面方向の時定数τsが小さ過ぎる場合には、厚紙などに画像を記録する場合に、画像の濃度低下が生じる場合があることが分かった。
これに対して、本願発明者は、表面方向の時定数τsが式(12)の関係を満たす場合には、厚紙などに画像を記録する場合であっても、転写電界が確実に確保され易いことを見出した。よって、式(12)の関係を満たす実施例1のプリンタUでは、転写電界の低下に伴う画像の濃度低下を抑制しつつ、中間転写ベルトBの抵抗低下に伴う画像不良が抑制されている。
なお、式(12)について、補足する。
(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(12)
式(12)において、(L/v)は単位が[s]であり、図3に示すように2次転写ロールT2bの外表面9aが、ニップ領域16に進入してから、ニップ領域16を通過するまでの時間を表わしている。
また、(Rv/Rs)は、抵抗値[Ω]と抵抗値[Ω]の比であり、無次元の値、いわゆる、係数を表している。
式(12)における(L/v)は、2次転写ロールT2b上のある位置がニップ領域16を通過する時間と等価である。つまり、ニップ領域16内での電位の立ち上がり時間、すなわち、ニップ領域16内での転写電界の立ち上がり時間を意味する。よって、前記通過時間(L/v)内に、2次転写に必要な転写電界が形成される必要があるが、転写電界の立ち上がり方は、2次転写ロールT2bの抵抗値に依存する。よって、やみくもに、回転速度vと、ニップ幅Lとを設定することは出来ない。すなわち、回転速度vと、ニップ幅Lとは、2次転写ロールT2bの抵抗値に応じて印加する転写電圧についても加味して、決定されることが一般的である。
また、式(12)におけるRvは、体積抵抗値である。よって、転写電圧に影響を与える。
ここで、通過時間(L/v)が短い場合には、転写電界は急激に立ち上げる必要がある。よって、Rvは、比較的小さな値を設定する。逆に、(L/v)が長い場合には、転写電界は緩やかに立ち上げることが可能となる。よって、Rvは、比較的大きな値を設定することが可能となる。
また、Rvを比較的小さな値をとることで、2次転写用の電源の電源容量を小さくとることが可能となる。したがって、低電圧電源を使用することが可能となる。よって、費用を下げられる利点がある。しかし、この場合には、ニップ領域16内の放電が多いため画質劣化を伴ってしまう。逆に、Rvを比較的大きな値をとることで、ニップ領域16内の放電の抑制が可能となり、高画質化の利点がある。しかし、この場合には、高圧電源が必要となる。
したがって、目的に応じて体積抵抗値Rvの設定をすることになる。
そして、体積抵抗値Rvを表面抵抗値Rsで割ったRv/Rsは、Rsが小さいほど大きな値となる。これは、Rsが小さいほど、2次転写ロールT2bの表面方向に電流が流れ易くなることを意味する。よって、2次転写ロールT2bの表面方向へ迂回する電流、すなわち、転写電界に寄与し難い電流としての損失電流が大きくなることを意味する。したがって、(L/v)×(Rv/Rs)全体としては、転写電界の立ち上がり時間(L/v)における2次転写ロールT2b表面方向への損失電流の程度を意味している。
なお、式(12)の表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとの大小関係は、式(11)と同様である。すなわち、これにより、2次転写ベルトBと、2次転写ロールT2b間の放電の集中を緩和することを意味している。つまり、τs>τvの場合は、2次転写ロールT2bの表面近傍の導電性付与剤の前記空間距離について、放電の集中を緩和するのに不十分であることを意味している。
ところで、式(11)の関係を満たす場合などには、表面方向の時定数τsが小さくなり易い。表面方向の時定数τsが小さくなることは、2次転写ロールT2bの外表面9aとシャフト6との間に電流が流れる場合に、外表面9aに沿って電流が流れ易くなることに対応する。ここで、特許文献2のように、転写ロールの表面抵抗値を体積抵抗値に比べて大きくする場合には、転写ロールの外表面では、周長λ5離れた2点間に電流は流れ難くなる。よって、特許文献2のような従来の構成では、ニップ領域16の外側では電位が高まり難かった。これに対して、表面方向の時定数τsが小さくなると、ニップ領域16だけではなく、ニップ領域16の外側にも電流が流れ易くなり、ニップ領域16の外側でも電位が高まり易い。よって、記録シートSが2次転写ロールT2bから剥離される場合に、剥離される位置の電位は高くなり易くなる。したがって、記録シートSと2次転写ロールT2bとの隙間の電位差が大きくなり易く放電が生じ易くなる。よって、表面方向の時定数τsを小さくする場合には、記録シートS上に転写された画像について、放電に伴う画像不良が生じる恐れがあった。
図24は本発明の実施例1の対向領域の説明図である。
ここで、図24において、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとがニップ領域16を形成している場合に、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとが互いの圧力を受け難い位置を、対向領域の下流端の一例としてのニップ出口Q21とする。具体的には、記録シートSの搬送方向に沿ってニップ領域16を移動する場合に、2次転写ロールT2bの外表面9aと、バックアップロールT2aの外表面との間に隙間111が生じる位置をニップ出口Q21とする。また、記録シートSが2次転写ロールT2bから剥離される位置を剥離位置Q22とする。このとき、前記ニップ出口Q21から前記剥離位置Q22までの、2次転写ロールT2bの外表面9aに沿った長さを剥離距離Lhとする。
図25は本発明の実施例1の作用説明図であり、図25Aは第1の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Bは第2の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Cは第3の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図25Dは図25Aの要部拡大図、図25Eは図25Bの要部拡大図、図25Fは図25Cの要部拡大図である。
図25において、前記剥離距離Lhは、2次転写ロールT2bに付与される転写荷重N1〜N3に応じて変化することが知られている。すなわち、実施例1では、転写荷重N1,N2,N3が大きいほど、対向領域16は上側に凸の湾曲が大きくなる。よって、記録シートSは先端が下向きに湾曲する。よって、転写荷重N1,N2,N3が大きいほど、記録シートSは搬送方向に対して下向きの角度θ1,θ2,θ3でニップ出口Q21から排出される。したがって、記録シートSは、転写荷重N1,N2,N3が大きいほど、下方の2次転写ロールT2bに接触した状態で搬送され易く、剥離距離Lh1,Lh2,Lh3は長くなる。すなわち、転写荷重N1〜N3に応じて、剥離距離Lh1〜Lh3の長さは調節される。
ここで、本願発明者は、転写荷重N1〜N3を調節すること、すなわち、剥離距離Lh1〜Lh3を変化させることで、放電に伴う画像不良が生じ難くなることを見出した。すなわち、前記剥離距離Lh[mm]と、2次転写ロールT2bの回転速度v[mm/s]と、表面方向の時定数τs[s]とが、以下の式(13)を満たす場合に、放電に伴う画像欠陥が生じ難くなることを見出した。
Lh>v×τs …式(13)
そして、実施例1では、式(13)を満たす剥離距離Lhになるように、ルックアップテーブル104の転写荷重N1〜N3が実験に基づいて設定されている。よって、前記転写荷重N1〜N3がニップ領域16に付与される実施例1では、放電に伴う画像不良が生じ難くなっている。
また、実施例1のルックアップテーブル104では、記録シートSの体積抵抗値Rが大きいほど、転写荷重N1〜N3が大きくなるように設定されている。よって、実施例1のプリンタUでは、体積抵抗値Rが大きい記録シートSほど、大きな転写荷重N1〜N3が付与されて、2次転写領域Q4のニップ領域16を通過して、剥離距離Lhが長くなっている。
ここで、一般的に、ニップ領域16の下流側の領域、いわゆる、ポストニップ領域での記録シートSの表面および裏面の帯電電荷量は、記録シートの抵抗値、特に体積抵抗値Rに依存する。
記録シートSの体積抵抗値Rが比較的大きい場合には、ニップ領域16の電位の高い部分の広がりに対して、剥離距離Lhの方が長くなり易く、記録シートSの2次転写ロールT2b側の面近傍の電位が低下し易い。よって、記録シートSが2次転写ロールT2bから剥離される際の放電の大きさが小さくなり易い。しかし、前記体積抵抗値Rが比較的大きい場合には記録シートSの比誘電率が小さくなり易い。この場合、放電により生成された電荷の残留に伴って、記録シートSの表面電位が上昇し易くなる。よって、記録シートSと中間転写ベルトBとの間で発生する放電が発生し易い。よって、記録シートS上に転写されたトナー画像が乱され易くなる。従って、放電の影響を小さくするには、極力中間転写ベルトBと記録シートSとの距離が遠く保持された状態で記録シートSを2次転写ロールT2bから剥離すること、すなわち、剥離距離Lhが長いことが有効となる。
一方、体積抵抗値Rが比較的小さい場合には、2次転写ロールT2b側の記録シートSの面近傍の電位が上昇し易い。よって、2次転写ロールT2bから剥離される際の放電は大きくなり易い。しかし、この場合、記録シートSの比誘電率が大きく、放電により生成された電荷の残留に伴う記録シートの表面電位はほとんど上昇しない。よって、記録シートSの体積抵抗値Rが小さい場合には、放電の影響は小さく、剥離距離Lを大きくする必要は少ない。むしろ、体積抵抗値Rが比較的小さい場合に剥離距離Lhを大きくした場合、記録シートSの比誘電率が大きいために分極電荷が大きくなり易く、2次転写ロールT2bに巻き付き、紙詰まり、いわゆる、ジャムが発生し易い。
したがって、体積抵抗値Rが大きい記録シートSほど、剥離距離Lh1〜Lh3が長くなる実施例1では、剥離距離Lhが一定の場合に比べて、放電に伴う画像不良が生じ難くなっている。また、記録シートSの体積抵抗値Rが小さい場合に、長い剥離距離Lh3にする場合に比べて、2次転写ロールT2bに巻きつくジャムの発生も低減されている。
また、本願発明者は、記録シートSの体積抵抗値Rが大きいほど、剥離距離Lhを長くすることで、記録シートSが中間転写ベルトBに吸着される紙詰まりが生じ難くなることを見出した。
ここで、実施例1のルックアップテーブル104では、転写荷重N1〜N3が、体積抵抗値Rが大きいほど、長い剥離距離Lh1〜L3となるように実験に基づいて設定されている。すなわち、実施例1では、記録シートSの体積抵抗値Rに応じて、中間転写ベルトBに吸着され難い剥離距離Lh1〜L3となるように、転写荷重N1〜N3が設定されている。したがって、実施例1では、体積抵抗値Rに関わらずに、小さな剥離距離Lhで搬送される場合に比べて、紙詰まりも生じ難くなっている。
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
図26は本発明の実施例2の転写部材の要部拡大図であり、実施例1の図4Bに対応する説明図である。
図26において、実施例2の2次転写ロールT2bのロール層7′では、前記シャフト6から外表面9aに向かうほど導電性付与剤12,14が密に分散している。すなわち、実施例2のロール層7′は、実施例1と同様の基層8を有する。また、実施例2の基層8の外表面8aには、実施例1の表層9に替えて、実施例2の表層9′が支持されている。実施例2の表層9′では、導電性付与剤14が外表面9a側に偏って分散している。そして、外表面9a側に偏った導電性付与剤14は、外表面9aに沿った周方向に対しては、導電性付与剤14同士の距離d2のバラツキが少なくなっている。すなわち、導電性付与剤14は、周方向に関しては偏りが少ない状態で均一に分散している。
(実施例2の転写部材の製造方法について)
実施例2では、基層8の外表面8aに対向して電極板を配置する。
そして、実施例2では、シャフト6と電極板との間に、電圧を掛けながら、基層8の外表面8aに樹脂液43をスプレーする。つまり、実施例2では、樹脂液43中の導電性付与剤33を外表面9a側に移動させる電界を形成する。なお、電界は樹脂液43の粘性など、導電性付与剤33の移動し易さを考慮して設定される。そして、導電性付与剤33を外表面9a側に移動させて偏らせ、表層9′を形成する。なお、導電性付与剤33を予め帯電させたり、供給時の摩擦帯電等を利用することも可能である。また、スプレー後の乾燥、焼成時間に電界を作用させて導電性付与剤33を偏らせることも可能である。
(実施例2の作用)
実施例2の2次転写ロールT2bでも、式(11)や式(12)が満たされている。よって、実施例2でも、実施例1と同様に、放電の集中が緩和されると共に、厚紙に対する転写性が確保される。
特に、実施例2の2次転写ロールT2bの表層9′では、導電性付与剤14が外表面9a側に偏っている。ここで、導電性付与剤14を偏りなく均一に分散させる構成では、式(11)を満足させようとして表層の導電性付与剤の部数を増加させると、転写ロールの体積抵抗値は低下し易い。よって、式(11)を満たして非通紙部における放電の集中が緩和されても、今度は、転写ニップ16内での通紙部でのトナーへの放電が増加する恐れがある。すなわち、画質が劣化する恐れが生じる。これに対して、実施例2では、体積抵抗値を大きく低下させずに、式(11)を満足させ易い。よって、実施例2では、表層で導電性付与剤を均一に分散させる場合に比べて、画質の劣化を損なわずに放電の集中を緩和し易く、中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制し易くなっている。
図27は実施例2の導電性付与剤の分布の説明図であり、図27Aは図26に対応する図、図27Bは導電性付与剤が均一に分散している場合の比較の説明図である。
また、例えば、図27Bにおいて、表層の導電性付与剤の部数が少ない場合、導電性付与剤14を偏りなく均一に分散させると、式(11)を満足しない場合がある。すなわち、導電性付与剤の部数が少なくて均一に分散させる構成では、τs>τvとなり、前記空間距離が大きくなる場合がある。このとき、導電性付与剤14が外表面9a側に偏っている実施例2では、導電性付与剤14が図27Bと同じ部数であり、図27Bと表面抵抗値や体積抵抗値に差がなくても、τs<τvとなる場合がある。よって、実施例2のように偏らせる構成では、層全体で均一に分散させる構成に比べて、少ない導電性付与剤の部数で、放電の集中を緩和して中間転写ベルトBの抵抗低下を抑制させ易くなっている。
また、実施例2でも、実施例1と同様に、転写荷重N1〜N3が調節されている。すなわち、実施例2でも、前記剥離距離Lh[mm]と、2次転写ロールT2bの回転速度v[mm/s]と、表面方向の時定数τs[s]とが、式(13)を満たしている。そして、さらに、実施例2でも、体積抵抗値Rが大きい記録シートSほど、大きな転写荷重N1〜N3が付与されて、2次転写領域Q4のニップ領域16を通過する。よって、剥離距離Lhが長くなっている。
したがって、実施例2でも、実施例1と同様に、放電に伴う画像不良や、紙詰まりも生じ難くなっている。
次に本発明の実施例3の説明をするが、この実施例3の説明において、前記実施例1,2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1,2と相違しているが、他の点では前記実施例1,2と同様に構成される。
(実施例3の転写部材の値の設定について)
実施例3の2次転写ロールT2bでは、式(12)に替えて、以下の式(21)の関係を満たす2次転写ロールT2bを使用する。すなわち、実施例2では、2次転写ロールT2bのロール層7の外表面9aのアスカーC型硬度をHとするとき、表面方向の時定数τs[s]と、体積方向の時定数τv[s]とが、以下の式(21)の関係を満たすように作成される。
(1/H)×0.5<τs<τv …式(21)
図28は2次転写ロールのニップ幅と2次転写ロールの硬度の関係を表わした図である。
一般的に、2次転写領域Q4の転写圧力は予め設定されている。そして、前記転写圧力となるように、2次転写ロールT2bの硬度H2に応じて、2次転写ロールT2bを荷重する。このとき、2次転写ロールT2bの硬度H(=H2)と、2次転写領域Q4のニップ領域16の幅Lとの間には、実験に基づいて定められた係数Zに対して、以下の式(22)が成立する。
L=Z/H …式(22)
なお、図28において、例えば、2次転写ロールT2bの軸方向のロール長さλ3が320[mm]、転写圧力が約4.3[N/cm]の場合には、Hと、Lとの間に、実験に基づいた以下の式(22′)が成立している。
L=125/H …式(22′)
なお、上述の転写ロールT2bでは、硬度Hが25度、40度の場合は基層8は発泡ゴムを用いた。また、硬度Hが75度の場合は基層8にソリッドゴムを用いた。また、2次転写ロールT2bでは、転写圧力を4.3[N/cm]に保持するために、転写ロール硬度25度では68[N]、転写ロール硬度40度では47[N]、転写ロール硬度75度では25[N]と設定した。
ここで、実施例1の式(12)に、式(22)を代入して、式(12)の一番左側の辺を整理すると、以下の式(23)が得られる。
(L/v)×(Rv/Rs)
={(Z/H)/v}×(Rv/Rs)
=(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs) …式(23)
したがって、式(12)は、式(23)を用いると、式(24)と変形できる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<τs<τv …式(24)
次に、式(24)において、(1/H)の係数部分である(Z/v)×(Rv/Rs)に関して説明する。
(Z/v)×(Rv/Rs)をAと置いて、(1/H)の係数Aを見積もる。
まず、係数Aを見積もる前に、上式の物理的な意味を確認しておく。回転速度vが小さいとき、Rv/Rsも小さくなるように設定される。これは、回転速度vが低速度であるほど、2次転写ロールT2b表面方向への損失電流のしきい値の程度が小さくなるように設定されることを意味する。逆に言うと、回転速度vが高速度であるほど、小さなRsの設定が可能となり、Rv/Rsは大きく設定される。つまり、低速度であるほど転写ロール表面方向への損失電流が発生し易いことを意味する。
次に、式(24)を変形する。ここで、誘電体の時定数は、一般的に、誘電体の抵抗値と静電容量により定まる。すなわち、表面方向の時定数τsは、表面抵抗値Rsと、表面方向の静電容量Csの積と考えることができる。なお、表面方向の静電容量Csとは、2次転写ロールT2bの表面部分の静電容量である。したがって、式(24)におけるτsを、τs=Rs×Csで置換すると、式(24)の左辺と、表面方向の時定数τsとの関係について、以下の式(25)が得られる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<Cs×Rs …式(25)
よって、式(25)と、Aの関係から、以下の式(26)が得られる。
(Z/v)×(Rv/Rs)<H×Cs×Rs
A=A(v,Rv,Rs)<H×Cs×Rs …式(26)
よって、Aを式(26)を満たすような値として定める。ここで、A(v,Rv,Rs)とは、係数Aがv,Rv,Rsの関数であることを意味する。そして、v,Rv,Rs,H,Csを設定した際に上式を満たす(やみくもな組み合わせでは式を満たさない)Aの最大値、すなわち、しきい値を定める。
ただし、係数Aを解析的に定めることは極めて困難である。よって、Aは、幾つかの条件から成る実験から見積もった。実験の条件は、2次転写ロールとして、好適に使用可能な数値を使用している。実施例3の実験では、2次転写ロールT2bの表面抵抗値Rsと体積抵抗値Rvを(Rs[logΩ],Rv[logΩ])と表すと、一例として、抵抗値が、(7.8,8.3),(8.1,8.0),(8.1,8.3),(8.3,8.0),(8.3,8.3),(8.3,8.7)の6通り、アスカーC型硬度が25度、75度の2通りについて、総当たりの計12本の2次転写ロールT2bに対して行った。なお、2次転写ロールT2bの硬度Hについては、アスカーC型硬度で、25度〜75度が好適に使用可能である。よって、その境界値を実験の条件として使用した。
また、表面方向の静電容量Csはインピーダンス測定により見積もった。具体的には、ソーラトロン社製1296型誘電率測定インターフェースと1260型インピダンスアナライザーを使用して、インピーダンス測定を行った。このとき、印加電圧はACで1[V]、3[V]を使用した。また、測定周波数を10[mHz]から1[MHz]の条件で実部と虚部を測定した。そして、実部と虚部の各測定値から解析ソフトを用いてCR回路で、近似式の導出法の一例としてのフィッティングした値を用い静電容量Csを見積もった。また、回転速度vは、440[mm/s]、600[mm/s]にて評価を実施した。
なお、バックアップロールT2aの体積抵抗値は107.0[Ω]を用いている。しかし、2次転写ベルトBと2次転写ロールT2b間の放電に関しては、2次転写ベルトBと2次転写ロールT2b間の隙間、いわゆる、ギャップにかかる電圧で決まる。したがって、その放電時のエネルギーは、2次転写ロールT2bの導電点、すなわち、導電性付与剤の前記空間距離に依存する。よって、バックアップロールT2aの体積抵抗値は概ね影響しない。
図29は係数Aの評価結果の説明図である。
図30は速度と硬度ごとの式(26)を満たす最大の係数Aの説明図である。
図29において、Aが式(26)を満たす場合、厚紙小サイズの転写性が良好となる。よって、図29に示すように、Aが式(26)を満たす場合には、厚紙小サイズの転写性の欄に○を付した。また、硬度Hと速度v毎に式(26)を満たす最大のAを図30に示した。つまり、図30には、係数Aがこの値以下であれば、厚紙小サイズ紙の転写性が良好であるという、係数Aのしきい値が描かれている。
図29、図30において、結果は、係数Aが0.9以下であれば、厚紙の小サイズ紙への転写不良が抑制される場合があることを確認した。すなわち、硬度が75度で、v=440[mm/s]の場合、Aが0.9でも転写不良が抑制されること確認した。しかし、高速度回転、すなわち、v=400[mm/s]以上の場合には、一般に、高い転写電圧が必要となるが、硬度や速度が変ると、係数Aを0.9よりも更に小さくする必要があることを確認した。そして、係数Aが十分小さい0.5以下の場合には、図29、図30に示す通り、硬度や速度が変わっても、厚紙小サイズの転写不良が抑制されることを確認した。
したがって、上の評価結果から、以下の式(27)であれば良いと見積もることが可能となる。
A<0.5 …式(27)
よって、式(27)の両辺をHで割って、Aを元に戻すと、以下の式(28)が得られる。
(1/H)×(Z/v)×(Rv/Rs)<(1/H)×0.5 …式(28)
ここで、式(24)、式(28)、および、図29の評価結果のτs,τv,Aの大小関係を考慮すると、式(21)が得られる。
(1/H)×0.5<τs<τv …式(21)
(実施例3の作用)
前記構成を備えた実施例3の2次転写ロールT2bでは、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとが式(11)の関係を満たしている。よって、実施例1と同様に、放電の集中が緩和されている。特に、実施例3では、表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvと、2次転写ロールT2bのアスカーC型硬度Hとが、式(21)の関係を満たしている。よって、式(21)の関係を満たす実施例2のプリンタUでは、厚紙などに画像を記録する場合であっても、表面方向の時定数τsの下限が設定されていない場合に比べて、転写電界が確保され易くなっている。よって、実施例3のプリンタUでは、転写電界の低下に伴う画像の濃度低下を抑制しつつ、中間転写ベルトBの抵抗低下に伴う画像不良が抑制され易くなっている。
また、実施例3でも、実施例1と同様に、転写荷重N1〜N3が調節されている。すなわち、実施例3でも、前記剥離距離Lh[mm]と、2次転写ロールT2bの回転速度v[mm/s]と、表面方向の時定数τs[s]とが、式(13)を満たしている。そして、さらに、実施例3でも、体積抵抗値Rが大きい記録シートSほど、大きな転写荷重N1〜N3が付与されて、2次転写領域Q4のニップ領域13を通過する。よって、剥離距離Lhが長くなっている。
したがって、実施例3でも、実施例1と同様に、放電に伴う画像不良や、紙詰まりも生じ難くなっている。
(実験例)
次に、実施例1〜3の効果を確かめる実験を行った。
(実験例の中間転写体と2次転写器の説明)
図1〜図3に関し、実験例では以下の構成を用いた。
バックアップロールT2aは、シャフト1の径が14[mm]、ロール層2の肉厚が5[mm]、硬度H1がアスカーC型硬度で60度、体積抵抗値が1[kV]の印加電圧で107.0[Ω]のものを使用した。
中間転写ベルトBは、ポリイミドにカーボンブラックを配合したものを使用した。実験例の中間転写ベルトBは、厚さが80[μm]、体積抵抗率が100[V]の印加電圧で1010[Ω・cm]、表面抵抗率が100[V]の印加電圧で1010[Ω/□]のものを使用した。
2次転写ロールT2bは、シャフト6の径が14[mm]、基層8が5[mm]、表層9が20[μm]の2層のロール層7を有する構成を用いた。実験例のロール層7の前後方向の長さλ2は320[mm]に設定されている。実験例の2次転写ロールT2bの体積抵抗値Rvと表面抵抗値Rsは基層8と表層9の抵抗を独立に制御することで調整した。なお、実験例の2次転写ロールT2bに関する具体的な構成は後述する。
実験例では評価で使用する記録シートSとして、普通紙として82[gsm]の富士ゼロックス社製のJ紙を使用した。また、厚紙の小サイズの記録シートSとして、ハガキを使用した。
温度10[℃]、相対湿度[15%]の下で、評価実験を行った。
二次転写電源は定電流源を使用し、定電流制御を行った。搬送速度vが528[mm/s]の場合には、110[μA]の電流を印加した。また、搬送速度vが264[mm/s]の場合には、55[μA]の電流を印加した。
2次転写ロールT2bには、転写圧力を4.3[N/cm]とする転写荷重を設定した。具体的には、転写ロールの硬度が25度の場合には、転写荷重を68[N]と設定した。また、転写ロールの硬度が40度の場合には転写荷重を47[N]と設定した。さらに、転写ロールの硬度が75度の場合には転写荷重を25[N]と設定した。
(実験例の2次転写ロールの製造方法について)
図6に関し、実験例では、混合物29の具体的な構成は以下の通りである。
弾性材料21として、エチレンオキサイド基を含有することでイオン伝導性に優れる、エピクロルヒドリンゴムと、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、とを用いた。具体的には、エピクロルヒドリンゴムとして、ダイソー社製エピクロマーCG−102を用いた。また、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとして、日本ゼオン社製ニポールDN−219を用いた。
また、導電性付与剤22は、カーボンブラックを用いた。具体的には、Degussa社製のスペシャルブラック4Aを用いた。なお、カーボンブラックの配合量は作成する2次転写ロールの条件に応じて調節した。配合量については後述する。
さらに、加硫剤23として、硫黄を用いた。具体的には、鶴見化学工業社製の200メッシュを用いた。
また、加硫促進剤24として、大内新興化学工業社製ノクセラ−Mを用いた。
これらが混合されて混合物29が巻きつけられる。
また、前記混合物29が巻き付けられたシャフト6は、160℃に昇温して、2時間加硫発泡させた。基層付きのロールを得た。
図7に関し、実験例では、樹脂液43の具体的な構成は以下の通りである。
溶剤36は酢酸ブチルを用いた。
硬化性の樹脂33は、四フッ化エチレン−ビニルモノマー共重合体を用いた。具体的には、ダイキン工業社製のゼッフルGK510を100[部]用いた。
導電性付与剤32は、カーボンブラックを用いた。具体的には、Degussa社製のスペシャルブラック4Aを用いた。なお、カーボンブラックの配合量は作成する2次転写ロールの条件に応じて調節した。配合量については後述する。
ジェットミル分散機38は、ジーナス社製のGeanus PYを使用した。
ジェットミル分散機による分散処理は、圧力が200[N/mm]の下で、衝突工程を5[回]行った。
メッシュ39は、20[μm]のメッシュを使用した。
硬化剤34は、三井化学社製のタケネートD−140Nを使用した。前記タケネートD−140Nは、基層の樹脂液21におけるゼッフルGK510が100[部]に対して、20[部]用いた。
図6に関し、シャフト6上の基層8の外表面8aは、樹脂液43の層で覆った後、140[℃]で20[分]加熱して焼成して、2次転写ロールT2bを作成した。
(実験例の転写部材の測定方法について)
図8Aに関し、金属板61,62の前後方向の長さλ3は、330[mm]に設定した。また、金属板61,62は厚み方向の長さλ4は、2[mm]に設定した。各金属板61,62は、ロール層7の外表面9aに0.2[mm]食い込ませるように押し当てた。
また、第1の金属板61の右面61bと、第2の金属板62の左面62bとの間の周長λ5が2[mm]になるように配置した。
図8Bに関し、直流電圧源64が印加する電圧V0は1000[V]にした。
また、時間T1として、10[s]を用いた。
これらの構成に基づいて、表面方向の時定数τsを測定した。
図9Aに関し、体積方向の時定数τvの測定では、直流電圧源64が1000[V]印加した状態から、電圧の印加を停止した。
これらの構成に基づいて、体積方向の時定数τvを測定した。
実験例では、2次転写ロールT2bの体積抵抗値Rv[Ω]は、以下の測定方法を用いた。
すなわち、接地された板金に対して、6[kg・f]の荷重でシャフト6を押圧して、2次転写ロールT2bの外表面9aを押し当てた。また、金属柱を2次転写ロールT2bの外表面9aに、0.2[mm]食い込ませた状態で接触させた。そして、金属柱に1000[V]を印加し、シャフト6を接地して、シャフト6に流れた電流I[A]を測定した。そして、Rv[Ω]=1000[V]/I[A]に基づいて、Rvを計算して測定した。
実験例では、2次転写ロールT2bの表面抵抗値Rs[Ω]は、以下の測定方法を用いた。
すなわち、2次転写ロールT2bのシャフト6を接地状態にし、2次転写ロールT2bの表面に対して、2本の金属柱を配置した。2本の金属柱は直径が12[mm]、長さが330[mm]である。2本の金属柱は、2次転写ロールT2bの周方向に10[mm]離した状態で、かつ、0.2[mm]食い込ませた状態で接触させた。そして、一方に1000[V]を印加し、他方を接地して、他方に流れた電流I[A]を測定した。そして、Rs[Ω]=1000[V]/I[A]に基づいて、Rsを計算して測定した。
(実験例の剥離距離の測定方法について)
剥離距離Lは、観察部材の一例としてのマイクロファイバースコープをプリンタの本体U1の二次転写領域Q4に挿入する。前記マイクロファイバースコープには、撮像装置の一例としての高速度カメラが接続されている。そして、記録シートSをプリンタUで搬送する。このとき、2次転写ロールT2bの断面方向から記録シートが搬送される様子を高速度カメラにて撮影する。撮影された映像は情報の処理装置の一例としてのコンピュータにより画像処理を行う。そして、2次転写ロールT2bがバックアップロールT2bから離間する位置Q21と、記録シートSが2次転写ロールT2bから剥離する位置Q22を特定して、その2点間の2次転写ロールT2bの外表面9aに沿った距離を画像処理にて計測する。
(実験例の媒体の体積抵抗値の測定方法について)
記録シートSの体積抵抗値R[Ω]は、Advantest社の微小電流計にてURプローブを用いて測定した。すなわち、記録シートSに300[V]の電圧を印加した時に流れる電流Iを測定した。そして、測定された電流Iから、オームの法則R=V/Iにより体積抵抗値Rを算出した。
(実験例1−1)
実験例1−1では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で25度に設定した。また、2次転写ロールのτs、τv、Rs、Rvを調整して、「(1/H)×0.5<τs」の関係と、「τs<τv」の関係を満たすようにした。
そして、実験例1−1では、前記2次転写ロールT2bを用いて評価実験を行った。実験例1−1の評価方法では、A3サイズの評価紙であるJ紙を、プロセススピード528[mm/s]で連続通紙50,000枚走行させた後に各種測定、評価を行った。よって、2次転写ロールT2bの回転速度vは528[mm/s]に対応する。このとき、中間転写ベルトBの非通紙領域について、2次転写ロールT2bと対向する側の面の表面抵抗率を測定した。そして、表面抵抗率が、画質に問題のない初期からの変化分が0.20[logΩ/□]以下にあるかどうかを確認した。また、τsの下限に関する損失電流による転写不良確認として、検出感度の高いハガキに対して、青色の全面ベタ画像を印刷し、その転写性を確認した。なお、実験例1−1では、カーボンブラックを、基層8では3[部]、表層9では3[部]、配合した。
(実験例1−2)
実験例1−2では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、「τs<τv」の関係を満たすようにした。しかし、実験例1−2では、「(1/H)×0.5<τs」の関係は満たしていない。なお、実験例1−2では、カーボンブラックを、基層8では6[部]、表層9では8[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例1−3)
実験例1−3では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、「(1/H)×0.5<τs」の関係と、「τs<τv」の関係を満たすようにした。なお、実験例1−3では、カーボンブラックを、基層8では4[部]、表層9では5[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(比較例1−1)
比較例1−1では、従来から一般に用いられている構成の2次転写ロールを使用した。比較例1−1の2次転写ロールT2bでは、硬度Hが、アスカーC型硬度で25度である。また、比較例1−1の2次転写ロールでは、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たしている。しかし、「τs<τv」の関係は満たしていない。なお、比較例1−1では、カーボンブラックが、基層8では5[部]、表層9では3[部]、配合されている。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(比較例1−2)
比較例1−2では、2次転写ロールT2bの硬度Hを、アスカーC型硬度で75度に設定した。また、比較例1−2では、2次転写ロールT2bのRs,Rvは、実験例1−1と同じRs,Rvを用いた。ただし、比較例1−2の2次転写ロールT2bのτs,τvは、「τs<τv」の関係を満たしていない。また、比較例1−2のτs,τvは、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たしている。なお、比較例1−2の2次転写ロールT2bでは、カーボンブラックを、基層8では4[部]、表層9では4[部]、配合した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例1−1〜1−3と比較例1−1,1−2の実験結果)
図31は実験例1−1と実験例1−2と実験例1−3と比較例1−1と比較例1−2の条件と実験結果の説明図である。
図31において、「τs<τv」の関係を満たす実験例1−1〜1−3では、中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下していないことを確認した。一方で、「τs<τv」の関係を満たさない比較例1−1,1−2では、中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下したことを確認した。よって、転写ロールが「τs<τv」の関係、すなわち、式(11)を満たせば、転写ロールの硬度Hとは関係なく、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制することが可能であり、非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。すなわち、式(11)を満たすことで、放電の集中が抑制されていることを確認した。
なお、実験例1−1と、比較例1−2とでは、抵抗値Rv,Rsは同じ値である。しかしながら、実験例1−1では中間転写ベルトBの抵抗低下を確認できなかった。これに対して、比較例1−2では中間転写ベルトBの抵抗低下が生じている。よって、2次転写ロールT2bの抵抗値Rv,Rsのみで、放電の集中を緩和するか否かを判断することは困難と考えられることも確認した。すなわち、従来のように抵抗率など抵抗値に関する値を利用する場合と異なり、時定数τs,τvの関係で規定する実施例1〜3では、放電の集中を緩和可能か否かについて精度良く評価可能である。
また、τs<τvの場合に、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たす実験例1−1,1−3では、ハガキの転写不良が生じないことも確認した。一方で、τs<τvの場合に、「(1/H)×0.5<τs」の関係を満たさない実験例1−2や、τs>τvの比較例1−1では、ハガキの転写不良を確認した。よって、「(1/H)×0.5<τs<τv」の関係、すなわち、式(21)の関係を満たせば、厚紙小サイズ紙への良好な転写性を確保しつつ、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制して非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。
(実験例2−1)
実験例2−1では、実験例1−1の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−1では、硬度Hが25度であり、式(22′)より、ニップ幅が5.0[mm]となっている。
実験例2−1では、前記構成の2次転写ロールT2bを用いて評価実験を行った。実験例2−1の評価方法では、プロセススピードの影響、すなわち、転写電界の立ち上がり時間の影響を考慮して、厚紙の小サイズの転写性について評価する点以外は、実験例1−1と同様に評価実験を行った。なお、実験例2−1では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしている。
(実験例2−2)
実験例2−2では、実験例1−2の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−2では、硬度Hが75度であり、ニップ幅が1.7[mm]となっている。その他の条件、評価方法は実験例2−1と同様に行った。なお、実験例2−2では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしていない。
(実験例2−3)
実験例2−3では、実験例1−3の2次転写ロールT2bと同じ値のH,τs,τv,Rs,Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。なお、実験例2−3では、硬度Hが75度であり、ニップ幅が1.7[mm]となっている。その他の条件、評価方法は実験例2−1と同様に行った。なお、実験例2−3では、プロセススピードvが528[mm/s]であり、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たしている。
(実験例2−4)
実験例2−4では、2次転写ロールT2bのτs,τv,Rs,Rvを調整して、プロセススピードvが264[mm/s]の下で、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係を満たすようにした。その他の条件、評価方法は実験例2−3と同様に行った。
(実験例2−5)
実験例2−5では、実験例2−3の2次転写ロールT2bと同じ値のH、τs、τv、Rs、Rvを用いた。よって、式(11)の関係を満たしている。ただし、実験例2−5では、転写荷重を弱めて、ニップ領域の幅Lを1.3[mm]にした。また、実験例2−5では、プロセススピードvが264[mm/s]である。すなわち、実験例2−5では、(L/v)×(Rv/Rs)とτsに関する実験例2−3のL,v,Rv,Rs,τsのうち、Lとvを変更して、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たすようにした。その他の条件、評価方法は実験例2−3と同様に行った。
(実験例2−1〜2−5の実験結果)
図32は実験例2−1と実験例2−2と実験例2−3と実験例2−4と実験例2−5の条件と実験結果の説明図である。
図32において、実験例2−1〜2−5では、式(11)の関係が満たされている。ここで、実験例2−1〜2−5では中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下し難いことが確認された。よって、式(11)の関係が満たされれば、放電の集中が緩和されることが再度確認された。
また、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係を満たす実験例2−1、2−3、2−4、2−5では、ハガキの転写不良が生じないことを確認した。一方で、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs」の関係を満たさない実験例2−2では、ハガキの転写不良を確認した。よって、「(L/v)×(Rv/Rs)<τs<τv」の関係、すなわち、式(12)の関係を満たせば、厚紙小サイズ紙への良好な転写性を確保しつつ、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制して非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。
(実験例3−1)
実験例3−1では、2次転写ロールT2bについて、体積抵抗値Rvが1000[V]の印加電圧で108.0[Ω]であり、表面方向の時定数τsが2.8[msec]、体積方向の時定数τvが7.5[msec]のものを使用した。また、実験例3−1の評価方法では、記録シートSの一例としての塗工紙を使用した。実験例3−1の塗工紙は、体積抵抗値Rが300[V]の印加電圧で10.3[logΩ]、坪量が127[gsm]のものを使用した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例3−2)
実験例3−2では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを4.6[msec]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例3−3)
実験例3−3では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを6.7[msec]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例3−1〜3−3の実験結果)
図33は実験例3−1と実験例3−2と実験例3−3の条件と実験結果の説明図である。
図33において、塗工紙を使用した実験例3−1〜3−3の評価実験でも、中間転写ベルトBの表面抵抗率の変化が0.08[logΩ/□]であり、中間転写ベルトBの表面抵抗率が低下しにくいことを確認した。よって、実験例3−1〜3−3でも、式(11)を満たせば、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下を抑制することが可能であり、非通紙部における濃度変化を抑制できることを確認した。すなわち、式(11)を満たすことで、放電の集中が抑制されていることを確認した。
(実験例4−1)
図34は実験例4−1ないし実験例4−7と比較例4−1ないし比較例4−9の条件の説明図である。
図34において、実験例4−1では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを2.8[msec]、硬度HをアスカーC型硬度で75度、表面粗さRzを2[μm]に設定した。また、二次転写の荷重を調整して排出角度を制御し、剥離距離Lhを2.2[mm]に設定した。ここで、2次転写ロールの回転速度vは528[mm/s]であるため、v×τsは1.5[mm]となる。よって、実験例4−1では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。
実験例4−1では、前記2次転写ロールT2bを備えた前記プリンタを使用して、評価紙に対して、ポストニップ領域における放電に起因する画質欠陥が生じるか否かの評価を行った。実験例4−1では、評価紙の一例として、体積抵抗値Rが300[V]の印加電圧で10.3[Ω]、坪量Stが127[gsm]の塗工紙を使用した。
(実験例4−2)
実験例4−2では、剥離距離Lhを3.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。よって、実験例4−2では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。
(実験例4−3)
実験例4−3では、剥離距離Lhを3.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。よって、実験例4−3では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。
(実験例4−4)
実験例4−4では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを4.6[msec]に設定した。また、剥離距離Lhを2.8[mm]に設定した。ここで、2次転写ロールの回転速度vは528[mm/s]であるため、τs×vは2.4[mm]となる。よって、実験例4−4では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
(実験例4−5)
実験例4−5では、剥離距離Lhを3.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例4−4と同様に行った。よって、実験例4−5では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。
(実験例4−6)
実験例4−6では、剥離距離Lhを3.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例4−4と同様に行った。よって、実験例4−6では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。
(実験例4−7)
実験例4−7では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを6.7[msec]に設定した。また、剥離距離Lhを4.0[mm]に設定した。ここで、2次転写ロールの回転速度vは528[mm/s]であるため、τs×vは3.5[mm]となる。よって、実験例4−7では、「Lh>τs×v」の関係を満たしている。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
(比較例4−1)
比較例4−1では、剥離距離Lhを0.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。よって、比較例4−1では、τs×vは1.5[mm]である。したがって、比較例4−1では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−2)
比較例4−2では、剥離距離Lhを0.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−1と同様に行った。よって、比較例4−2では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−3)
比較例4−3では、剥離距離Lhを1.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−1と同様に行った。よって、比較例4−3では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−4)
比較例4−4では、剥離距離Lhを0.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例1−4と同様に行った。よって、比較例4−4では、τs×vは2.4[mm]である。したがって、比較例4−2では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−5)
比較例4−5では、剥離距離Lhを1.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−4と同様に行った。よって、比較例4−5では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−6)
比較例4−6では、剥離距離Lhを2.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−4と同様に行った。よって、比較例4−6では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−7)
比較例4−7では、剥離距離Lhを1.6[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例1−7と同様に行った。よって、比較例4−7では、τs×vは3.5[mm]である。したがって、比較例4−7では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−8)
比較例4−8では、剥離距離Lhを2.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−7と同様に行った。よって、比較例4−8では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(比較例4−9)
比較例4−9では、剥離距離Lhを3.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例4−7と同様に行った。よって、比較例4−9では、「Lh>τs×v」の関係を満たしていない。
(実験例4−1〜4−7と比較例4−1〜4−9の実験結果)
図35は実験例4−1ないし実験例4−7と比較例4−1ないし比較例4−9の実験結果の説明図である。
図35において、横軸にv×τsの値、縦軸に剥離距離Lhをとって、実験例4−1〜3−7と、比較例4−1〜4−9との実験結果を表した。図34において、「L>v×τs」の関係を満たす実験例4−1〜4−7では、画質に問題がないことを確認した。一方で、「L>v×τs」の関係を満たさない比較例4−1〜4−9では、画質に欠陥が生じていることを確認した。
よって、剥離距離Lh[mm]と、2次転写ロールT2bの回転速度v[mm/s]と、表面方向の時定数τs[s]とが、式(13)の関係を満たす場合に、放電に伴う画像不良が生じ難くなることが確認された。
(実験例5−1)
実験例5−1では、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsを4.6[msec]に設定した。また、剥離距離Lhを4.0[mm]に設定した。ここで、2次転写ロールの回転速度vは528[mm/s]である。よって、v×τsは2.4[mm]となる。よって、実験例5−1では、「Lh>τs×v」の関係、すなわち、式(13)の関係を満たしている。
実験例5−1では、記録シートSに対して、画質欠陥の有無、および、中間転写ベルトBに張り付くジャムの有無を評価した。なお、近年、ラベル紙やシール紙、耐水紙や特殊加工紙など様々な用紙への適応要求が増している。特に面に異なる種類の塗工剤が塗布された薄塗工紙はジャムで通紙不能な種類が多い。よって、実験例5−1では、評価紙の一例として3種類の塗工紙を使用した。各塗工紙は、坪量は64[gsm]で同一である。しかし、体積抵抗値Rは、300[V]の印加電圧で、それぞれ、8.6[logΩ]、9.2[logΩ]、9.8[logΩ]のものを使用した。
(実験例5−2)
実験例5−2では、剥離距離Lhを3.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例5−1と同様に行った。よって、実験例5−2では、「Lh>τs×v」の関係、すなわち、式(13)の関係を満たしている。
(実験例5−3)
実験例5−3では、剥離距離Lhを2.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例5−1と同様に行った。よって、実験例5−3では、「Lh>τs×v」の関係、すなわち、式(13)の関係を満たしている。
(比較例5−1)
比較例5−1では、剥離距離Lhを2.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例5−1と同様に行った。よって、比較例5−1では、「Lh>τs×v」の関係、すなわち、式(13)の関係を満たしていない。
(比較例5−2)
比較例5−2では、剥離距離Lhを1.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例5−1と同様に行った。よって、比較例5−2では、「Lh>τs×v」の関係、すなわち、式(13)の関係を満たしていない。
(実験例5−1〜5−3比較例5−1〜5−2の実験結果)
図36は実験例5−1ないし実験例5−3と比較例5−1と比較例5−2の条件と実験結果の説明図である。
図36において、「Lh>v×τs」の関係を満たす実験例5−1〜5−3では、画質に問題がないことを確認した。一方で、「Lh>v×τs」の関係を満たさない比較例5−1,5−2では、画質に欠陥が生じていることを確認した。
よって、剥離距離Lh[mm]と、2次転写ロールT2bの回転速度v[mm/s]と、表面方向の時定数τs[s]とが、式(13)の関係を満たす場合に、放電に伴う画像不良が生じ難くなることが再度確認された。
また、実験例5−1〜5−3の式(13)の関係を満たす場合において、シートの体積抵抗値Rが大きい場合には、剥離距離Lhを短く設定した場合に、中間転写ベルトBに張り付く紙詰まりが生じることが確認された。すなわち、体積抵抗値Rが大きいほど、剥離距離Lhを長く設定すると、中間転写ベルトBに張り付く紙詰まりが生じないことが確認された。よって、実施例1〜3のように、体積抵抗値Rが大きくなるほど、剥離距離Lhが長くなるように転写荷重N1〜N3を設定すれば、紙詰まりが生じないことが確認された。
実験結果について補足する。
まず、従来の2次転写ロールT2bとして体積抵抗値Rvが7.8[logΩ]、表面抵抗値Rsが8.3[logΩ]、表面方向の時定数τsが35.6[msec]、体積方向の時定数τvが4.8[msec]、アスカーC型硬度が70度に設定された2次転写ロールT2bについて考える。
前記従来の2次転写ロールT2bを、回転速度vが528[mm/s]で使用する場合、v×τsが18.8[mm]となる。また、従来の2次転写ロールT2bを、回転速度vが440[mm/s]で使用する場合、v×τsが15.7[mm]となる。さらに、従来の2次転写ロールT2bを、回転速度vが308[mm/s]で使用する場合、v×τsが11.0[mm]となる。よって、従来の2次転写ロールT2bを使用する場合、式(13)を満たすには、少なくとも剥離距離Lhが、Lh>11.0である必要がある。
ここで、記録シートSは2次転写領域Q4から次の工程に搬送しなければならない。よって、剥離距離Lhにはおのずと上限値が存在する。その上限値は、記録シートSの剛性の強さと、記録シートSの帯電量とにより決まる。すなわち、最終的には、記録シートSを2次転写ロールT2bから剥離しなければならない。よって、記録シートSと転写ロール間の静電吸着力よりも、記録シートSの剛性の強さに依存した曲げ応力と、記録シートSに作用する中間転写ベルトBに向かう静電気力と、の総和の方が大きくなる位置に比べて搬送方向の上流側で、記録シートSが剥離されなければならない。つまり、前記大きくなる位置よりも搬送方向の上流側で剥離されなければ、転写ロールT2bへの巻き付きジャムになる。また、バックアップロールT2aや2次転写ロールT2bの配置位置の関係にも依存するが、剥離距離Lhは、ニップ出口Q21から、2次転写領域Q4の下流側の搬送路SHの案内壁までの距離よりも短い必要がある。
例えば、実験例5−1で使用した体積抵抗値が8.6[logΩ]の塗工紙の曲げ応力は、用紙先端位置から2次転写ロールT2bの周方向に、5[mm]の時点で6[gf]であり、7.5[mm]の時点で4[gf]であり、10[mm]の時点で2[gf]である。したがって、記録シートSの帯電量に基づく静電気力を加味すると、剥離距離Lhは、およそ8[mm]以下でなければならない。つまり、8[mm]以下でなければ、記録シートSが、搬送路SHの案内壁の下側に巻き込まれジャムになってしまう。ちなみに、実験例での2次転写領域Q4の下流側にある搬送路SHの案内壁の位置は、転写ロール表面に沿った距離で、ニップ出口Q21から12[mm]の位置にある。
また、前記従来の2次転写ロールT2bでは、転写ロールの表面への電位の広がりは少なく、ポストニップでの記録シートSと転写ロールT2b間の放電は少ない。よって、その放電による画質欠陥は比較的発生し難い。したがって、速度が遅く転写バイアスが低くなりがちな従来の構成では、剥離距離Lhが短くても画質も許容され易い。
したがって、従来の2次転写ロールT2bが、従来通りに使用される場合、剥離距離Lhが11[mm]よりも大きくなって、式(13)の関係を満たすということは考え難い。実際、従来の一般的な2次転写ロールT2bでは、ロール層7の直径が20[mm]から35[mm]であり、剥離距離Lhは4mm未満となることが多い。
なお、従来の2次転写ロールでは、表面近傍の抵抗が高い。よって、記録シートSの裏面と転写ロールT2bとの間の放電が少ない。したがって、バックアップロールがマイナス極性で、2次転写ロールT2bがプラス極性の場合に、記録シートSが大きなプラス極性に帯電することが少ない。よって、記録シートSが中間転写ベルトBへ張り付くジャムが原理的に発生し難い。従って、転写ロールに巻き付くジャムについてのみ対処すればよい。よって、例えば、転写ロールの小径化による曲率剥離や、除電器による用紙除電等により剥離性能が得られる。ただし、従来の構成では、τs<τvとはならず、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下が生じ易い。したがって、特に高転写バイアスを必要とする高速領域では致命的な画質欠陥を伴う。
次に、2次転写ロールT2bの表面抵抗値Rsが、体積抵抗値Rvに比べて小さい場合について考える。ただし、ここでは、式(11)を満たすように調整された転写ロールT2bについて検討する。一例として、ロール層7の直径が24[mm]、体積抵抗値Rvが8.0[logΩ]、表面抵抗値Rsが7.4[logΩ]、表面方向の時定数τsが6.7[msec]、体積方向の時定数τvが13[msec]、アスカーC型高度が40度に設定された2次転写ロールT2bについて検討する。
このとき、前記調整された2次転写ロールT2bを、従来の画像形成装置に適用して、回転速度vが528[mm/s]で使用する場合、v×τsが3.5[mm]となる。また、前記2次転写ロールT2bを、回転速度vが440[mm/s]で使用する場合、v×τsが2.9[mm]となる。さらに、前記2次転写ロールT2bを、回転速度vが308[mm/s]で使用する場合、v×τsが2.1[mm]となる。
τs<τvのような転写ロールT2bでは、記録シートSと転写ロールT2bとの間の放電が多くなり、記録シートSは大きくプラス極性に帯電して排出される。よって、従来の画像形成装置に、前記調整された2次転写ロールT2bを用いると、記録シートSは、中間転写ベルトBに張り付き易くてジャムが発生しやすくなる。実際、上記設定の2次転写ロールを使用して評価紙を排出してみると、剥離距離Lhは0.5[mm]と測定された。すなわち、記録シートSがニップ出口Q21から0.5[mm]の位置Q22で剥離され、中間転写ベルトBに直ぐに吸着された状態で排出されるのが確認された。そして、この剥離距離Lh=0.5[mm]は、上記v×τsのいずれの値に比べても小さく、式(13)の関係を満たしていない。
なお、剥離距離Lhは、バックアップロールT2aや2次転写ロールT2bの配置位置だけで決まる値ではない。ニップ領域16から排出される際の記録シートSの帯電状態や、転写荷重、記録シートSのカール状態などで決まる。よって、記録シートSが非常に大きなプラス極性に帯電するなどして、完全に中間転写ベルトBに密着し張り付いて排出される場合もある。この場合は、剥離距離Lh=0[mm]となる。
よって、τs<τvの転写ロールを使用する場合、記録シートSが中間転写ベルトBへ張り付くジャムに対処するには、2次転写ロールT2bに対する剥離距離Lhを従来よりも大きい値にすることが望ましい。
また、τs<τvの転写ロールでは、中間転写ベルトBの非通紙部の抵抗低下が抑制される。よって、大サイズの記録シートSに対する端部の濃度低下という画質欠陥は低減される。しかしながら、転写ロールT2b表面への電位の広がりが大きく、ポストニップ領域での記録シートSと転写ロール間の放電は大きくなる。つまり、τs<τvの転写ロールでは、剥離距離Lhが短くなり易い。よって、転写ニップ16からの距離が近く転写電位の大きい位置で剥離され、転写ロールT2b表面と記録シートSとの間の空隙にかかる電位差が大きくなり易い。よって、前記空隙に係る電位差が大きい状態で剥離して大きな放電が発生し、記録シートS上のトナー画像が乱されやすい。したがって、画質の点からも、2次転写ロールT2bに対する剥離距離Lhを従来よりも大きい値にすることが望ましい。
上述の通り、従来の画像形成装置では、記録シートSが転写ロールへ巻き付き難く、かつ、中間転写ベルトBへ張り付き難く設計されており、転写ロールの抵抗値などに関わらず、Lh<v×τsとなっていた。
これに対して、実施例1〜3では、転写荷重を変更して従来よりも剥離距離Lhを大きくしたり、ロールの表面方向の時定数τsを従来よりも小さくしたりして、Lh>v×τsという式(13)の関係を満足させている。よって、実施例1〜3では、従来の構成に比べて、放電に伴う画像不良や紙詰まりが低減される。
次に本発明の実施例4の説明をするが、この実施例4の説明において、前記実施例1〜3の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1〜3と同様に構成される。
(実施例4の中間転写体と2次転写器の説明)
図37は本発明の実施例4の転写装置の要部説明図である。
図37において、実施例4の2次転写ロールT2bは、実施例1に比べて、シートSの搬送方向の下流側にずれた位置に配置されている。すなわち、実施例4の2次転写ロールT2bは、バックアップロールT2aに対して、実施例1よりもシートSの搬送方向の下流側に配置されている。よって、実施例4では、対向領域の一例としてのニップ領域16′は、実施例1に比べると、シートSの搬送方向の下流側に進むに連れて上向きに形成されている。よって、実施例1では、記録シートSがニップ出口Q21から下向きの角度で排出されていたのに対して、実施例4では、実施例1に比べると上向きの角度で排出される。すなわち、実施例4では、記録シートSが、ニップ領域16′から排出される記録シートSは、下側の2次転写ロールT2bではなく、上側の中間転写ベルBに向かって排出されるように構成されている。
図38は本発明の実施例4の移動機構の説明図であり、図38Aは転写部材が中間転写体に接触した状態の説明図、図38Bは転写部材が中間転写体から離間した状態の説明図である。
図38において、実施例4の2次転写器T2′は、移動機構Ut′を有する。実施例4の移動機構Ut′は、実施例4の2次転写ロールT2bの配置位置に応じて、2次転写ロールT2bを、図38Aに示す接触位置と、図38Bに示す離間位置と、の間で移動可能に構成されている点以外は、実施例1と同様に構成されている。よって、実施例4の移動機構Ut′の詳細な説明は省略する。
(中間転写体の製造方法について)
実施例4の中間転写ベルトBは、従来公知の製造方法で製造可能である。したがって、例えば、特開2010―230807号公報や、特開2011―017871号公報などに記載の製造方法を用いて製造可能である。よって、実施例4の中間転写ベルトBについての製造方法の説明は省略する。
(中間転写体の測定方法について)
図39は本発明の実施例4の中間転写体の時定数の測定方法の説明図であり、図39Aは測定方法の構成の説明図、図39Bは時間に対する電位の変化の説明図である。
中間転写ベルトBでは、実施例4の像保持体の時定数の一例であり、実施例4の中間転写体の時定数の一例としての表面方向の時定数τs′が設定される。前記表面方向の時定数τs′は以下に示す構成で測定される。
図39Aにおいて、中間転写ベルトBは、第3の測定部材の一例として、導電性を有する板状の第3の金属板67に支持される。前記第3の金属板67は図示しない支持部に支持されている。また、前記第3の金属板67は電気的に接地されている。前記第3の金属板67は、前後方向の長さが中間転写ベルトBの前後方向の幅に比べて長く形成されている。実施例4では、前後方向の長さがλ3に設定されている。また、前記第3の金属板67の左右方向の長さλ6は、前記第1の金属板61の厚みλ4と、第2の金属板62の厚みλ4と、長さλ5との和に比べて長く設定されている。第3の金属板67は、中間転写ベルトBの内表面B2に接触して配置される。
ここで、実施例4の第1の金属板61と第2の金属板62とは、前記第3の金属板67の配置位置に対応して、中間転写ベルトBの外表面B1に周長λ5の間隔を空けて押し当てられている。また、第1の金属板61と第2の金属板62との間には、絶縁部材67が配置されている。金属板61,62が中間転写ベルトBに押し当てられている点以外は、実施例1の2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsと同様に測定される。すなわち、実施例4では、図39Bに示すように、電圧V0の印加を開始してからの第2の金属板の電位Vの変化を測定する。そして、十分に大きい予め設定された時間T1に測定された電位Vを、電位V1′とする。また、第2の金属板62の電位Vが、前記電位V1′の63[%]の値になった場合の時間tを特定する。そして、特定された時間tを、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′とする。
(実施例4の制御部の説明)
図40は本発明の実施例4の画像形成装置の制御部分が備えている各機能をブロック図で示した図である。
実施例4の制御部Cは、実施例1の荷重情報の記憶手段C11に替えて、実施例4の荷重情報の記憶手段C11′を有する。また、実施例4の制御部Cは、実施例1の移動機構の制御手段C12に替えて、実施例4の移動機構の制御手段C12′を有する。
図41は本発明の実施例4の移動機構の制御情報の説明図である。
C11′:荷重情報の記憶手段
実施例4の荷重情報の記憶手段C11′は、実施例4の移動機構Ut′の制御情報を記憶する。すなわち、実施例4では、体積抵抗値Rと転写荷重N1′,N2′,N3′の関係を、図41に示すルックアップテーブル104′として記憶する。実施例4では、実施例1と同様に、閾値R1′,R2′および転写荷重N1′〜N3′が実験に基づいて予め設定されている。なお、実施例4では、体積抵抗値Rの閾値R1′,R2′が大きくなるほど、小さな転写荷重N3′,N2′,N1′となるように設定されている。これら以外の点は実施例1と同様なので、実施例4の荷重情報の記憶手段C11′についての詳細な説明は省略する。
図42は本発明の実施例4の移動機構の制御の説明図であり、図42Aは図38Aに対応する図でありカムがアームプレートから離間して第3の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Bは図42Aに比べてカムがアームプレートを押して第2の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Cは図42Bに比べてカムがアームプレートを押して第1の転写荷重を付与する位置に移動した場合の図、図42Dは図38Bに対応する図であり図42Cに比べてカムがアームプレートを押した場合の図である。
C12′:移動機構の制御手段
実施例4の移動機構の制御手段C12′は、移動機構の駆動回路D2を介して、2次転写ロールT2bを図42Aに示す接触位置と図42Dに示す離間位置との間で移動させる。実施例4の移動機構の制御手段C12′では、実施例1のルックアップテーブル104に替えて、実施例4のルックアップテーブル104′に基づいて、転写荷重N1′〜N3′(N1′<N2′<N3′)の設定情報を取得する点以外は、実施例1と同様に構成されている。したがって、実施例4の移動機構の制御手段C12′の詳細な説明は省略する。
(実施例4の流れ図の説明)
実施例4の媒体の設定処理、抵抗値の更新処理、剥離距離の設定処理、ジョブの制御処理では、実施例1と同様の処理が実行される。よって、これらの処理に関するフローチャートの詳細な説明は省略する。
(実施例4の作用)
前記構成を備えた実施例4のプリンタUでは、プリント画像サーバCOMから画像情報を受信して、給紙トレイTR1〜TR5が選択されると、記録シートSの種類や体積抵抗値Rに応じて、2次転写ロールT2bの転写荷重N1′〜N3′が設定される。これに基づいて、移動機構Ut′が作動し、2次転写ロールT2bが移動する。転写荷重が設定されて初期処理が終了すると、ジョブが開始されて、記録シートSに画像が記録される。ここで、実施例4では、2次転写ロールT2bが、実施例1に比べて、シートの搬送方向に下流側に配置されている。よって、実施例4の2次転写器T2では、記録シートSが、2次転写ロールT2bではなく、中間転写ベルトBに沿って排出される。
図43は本発明の実施例4の対向領域の説明図である。
図44は本発明の実施例4の作用説明図であり、図44Aは第3の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Bは第2の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Cは第1の転写荷重が付与された状態で媒体が対向領域を通過する場合の説明図、図44Dは図44Aの要部拡大図、図44Eは図44Bの要部拡大図、図44Fは図44Cの要部拡大図である。
図43、図44において、バックアップロールT2aと2次転写ロールT2bとがニップ領域16′を形成している場合に、記録シートSが中間転写ベルトBから剥離される位置を剥離位置Q22′とする。このとき、前記ニップ出口Q21から前記剥離位置Q22′までの、中間転写ベルトBの外表面B1に沿った長さを剥離距離Lh′とする。
図44において、前記剥離距離Lh′は、2次転写ロールT2bに付与される転写荷重N1′〜N3′に応じて変化することが知られている。すなわち、実施例4でも、実施例1と同様に、転写荷重N1′,N2′,N3′が大きいほど、記録シートSは湾曲して排出される。ここで、実施例4の2次転写器T2′では、中間転写ベルトBに沿った状態で記録シートSがニップ領域16′から排出されるように構成されている。したがって、転写荷重N1′,N2′,N3′が大きいほど、上方の中間転写ベルトBから下方に離れる角度θ1′,θ2′,θ3′でニップ出口Q21から排出される。逆に言えば、実施例4では、転写荷重N3′,N2′,N1′が小さいほど、中間転写ベルトBに沿った状態で搬送され易く、剥離距離Lh1′,Lh2′,Lh3′は長くなる。したがって、転写荷重N3′〜N1′に応じて、剥離距離Lh1′〜Lh3′の長さは調節される。
ところで、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′が小さくなることは、中間転写ベルトBに電流が流れる場合に、中間転写ベルトBの外表面B1に沿って電流が流れ易くなることに対応する。よって、中間転写ベルトBでも、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsが小さくなった場合と同様の状況が発生する。すなわち、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′が小さくなると、ニップ領域16だけではなく、ニップ領域16の外側にも電流が流れ易くなる。したがって、ニップ領域16の外側でも、転写用の電位が生じ易くなる。よって、記録シートSが中間転写ベルトBから剥離される場合に、剥離される位置の電位も転写用の電位になって、記録シートSと中間転写ベルトBと間で放電が生じ易くなる。よって、表面方向の時定数τs′を小さくする場合には、記録シートS上に転写された画像について、放電に伴う画像不良が生じる恐れがあった。
ここで、本願発明者は、2次転写ロールT2bの式(13)の関係や、記録シートSの体積抵抗値Rが大きいほど剥離距離Lhを長くする方が望ましいことについて、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′や剥離距離Lh′にも適用可能であることを見出した。
すなわち、前記剥離距離Lh′[mm]と、中間転写ベルトBの外表面B1の周速の一例としての回転速度v′[mm/s]と、表面方向の時定数τs′[s]とが、以下の式(13′)を満たす場合に、放電に伴う画像不良が生じ難くなることを見出した。
Lh′>v′×τs′ …式(13′)
また、記録シートSの体積抵抗値Rが大きいほど、剥離距離Lh′を長くすることで、記録シートSが2次転写ロールT2bに吸着される紙詰まりが生じ難くなることを見出した。
実施例4では、式(13′)を満たす剥離距離Lh′になるように、ルックアップテーブル104′の転写荷重N1′〜N3′が実験に基づいて設定されている。特に、実施例4のルックアップテーブル104′では、記録シートSの体積抵抗値Rが大きいほど、転写荷重N3′〜N1′が小さくなって、長い剥離距離Lh1′〜Lh3′となるように実験に基づいて設定されている。
よって、実施例4でも、放電に放電に伴う画像不良や、紙詰まりが実施例1と同様に生じ難くなっている。
(実験例6)
次に、実施例4の効果を確かめる実験を行った。
なお、以下の説明において、実施例1〜3の効果を確かめる実験と同様の構成についての説明は省略する。
(実験例6の中間転写体の測定方法について)
図45は円形電極の一例の説明図であり、図45Aは概略平面図、図45Bは概略断面図である。
中間転写ベルトBの電気抵抗率はJIS規格に基づいて測定される。その測定方法は、例えば、特開2010−140002号公報に記載されている。
すなわち、図45において、中間転写ベルトBの表面抵抗率は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って行う。図45に示す円形電極は、第一電圧印加電極121と板状絶縁体122とを備える。第一電圧印加電極121は、円柱状電極部123と、前記円柱状電極部123の外径よりも大きい内径を有し、且つ、円柱状電極部123を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部124とを備える。
ここで、第一電圧印加電極121における円柱状電極部123及びリング状電極部124と板状絶縁体122との間に中間転写ベルトBを挟持し、第一電圧印加電極121における円柱状電極部123とリング状電極部124との間に電圧V[V]を印加したときに流れる電流I[A]を測定する。そして、下記式(101)により、中間転写ベルトBの転写面の表面抵抗率ρs′[Ω/□]が算出される。下記式(101)中、d[mm]は円柱状電極部123の外径を示し、D[mm]はリング状電極部124の内径を示す。
ρs′=π×(D+d)/(D−d)×(V/I) …式(101)
また、体積抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用い、JIS K6911に従って行う。すなわち、中間転写ベルトBの体積抵抗率は、表面抵抗率の測定と同様、図45に示すような構成の装置を用いて行われる。但し、体積抵抗知るの測定では、図45に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体122に代えて第二電圧印加電極122′を備える。ここで、第一電圧印加電極121における円柱状電極部123及びリング状電極部124と第二電圧印加電極122′との間に中間転写べルトBを挟持し、第一電圧印加電極121における円柱状電極部123と第二電圧印加電極122との間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I[A]を測定し、下記式(102)により、中間転写ベルトBの体積抵抗率ρv′[Ωcm]が算出される。下記式中、tは半導電性ベルトBの厚さを示す。
ρv′=19.6×(V/I)×t …式(102)
これに対して、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′の測定方法については、適切なJIS規格が存在しない。そこで、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′については、図39を用いて説明した構成に基づいて測定する。実験例6では、図39Aに関し、第3の金属板67の前後方向の長さλ3は、300[mm]に設定した。また、第3の金属板67の左右方向の長さλ6は、300[mm]に設定した。各金属板61,62は、中間転写ベルトBの外表面B1に2[kg]の荷重で押し当てた。
(実験例6の剥離距離の測定方法について)
中間転写ベルトの剥離距離Lh′については、記録シートSが中間転写ベルトBから剥離される位置Q22′を特定する。そして、ニップ出口Q21と剥離位置Q22′の2点間について中間転写ベルトBの外表面B1に沿った距離を画像処理にて計測する。この点が、2次転写ロールT2bの剥離距離Lhを測定する場合と異なる。これ以外の点については、2次転写ロールT2bの剥離距離Lhと同様に測定されるため、詳細な説明は省略する。
(実験例6−1)
図46は実験例6−1ないし実験例6−7と比較例6−1ないし比較例6−9の条件の説明図である。
図46において、実験例6−1では、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′を2.8[msec]に設定した。また、二次転写の荷重を調整して排出角度を制御し、剥離距離Lh′を2.0[mm]に設定した。ここで、中間転写ベルトBの回転速度v′は528[mm/s]であるため、v′×τs′は1.5[mm]となる。よって、実験例6−1では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。
実験例6−1では、前記中間転写ベルトBを備えた前記プリンタUを使用して、評価紙に対して、ポストニップ領域における放電に起因する画質欠陥が生じるか否かの評価を行った。その他の条件、評価方法は実験例4−1と同様に行った。
(実験例6−2)
実験例6−2では、剥離距離Lh′を2.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−1と同様に行った。よって、実験例6−2では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。
(実験例6−3)
実験例6−3では、剥離距離Lh′を3.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−1と同様に行った。よって、実験例6−3では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。
(実験例6−4)
実験例6−4では、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′を4.6[msec]に設定した。また、剥離距離Lh′を2.8[mm]に設定した。ここで、中間転写ベルトBの回転速度v′は528[mm/s]であるため、v′×τs′は2.4[mm]となる。よって、実験例6−4では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。その他の条件、評価方法は実験例6−1と同様に行った。
(実験例6−5)
実験例6−5では、剥離距離Lh′を3.6[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−4と同様に行った。よって、実験例6−5では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。
(実験例6−6)
実験例6−6では、剥離距離Lh′を3.8[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−4と同様に行った。よって、実験例6−6では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。
(実験例6−7)
実験例6−7では、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′を6.7[msec]に設定した。また、剥離距離Lh′を4.0[mm]に設定した。ここで、中間転写ベルトBの回転速度v′は528[mm/s]であるため、v′×τs′は3.5[mm]となる。よって、実験例6−7では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしている。その他の条件、評価方法は実験例6−1と同様に行った。
(比較例6−1)
比較例6−1では、剥離距離Lh′を0.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−1と同様に行った。よって、比較例6−1では、v′×τs′は1.5[mm]であるため、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−2)
比較例6−2では、剥離距離Lh′を1.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−1と同様に行った。よって、比較例6−2では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−3)
比較例6−3では、剥離距離Lh′を1.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−1と同様に行った。よって、比較例6−3では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−4)
比較例6−4では、剥離距離Lh′を1.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−4と同様に行った。よって、比較例6−4では、v′×τs′は2.4[mm]である。したがって、比較例6−4では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−5)
比較例6−5では、剥離距離Lh′を1.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−4と同様に行った。よって、比較例6−5では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−6)
比較例6−6では、剥離距離Lh′を2.0[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−4と同様に行った。よって、比較例6−6では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−7)
比較例6−7では、剥離距離Lh′を1.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例6−7と同様に行った。よって、比較例6−7では、v′×τs′は3.5[mm]である。したがって、比較例6−7では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−8)
比較例6−8では、剥離距離Lh′を2.6[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−7と同様に行った。よって、比較例6−8では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(比較例6−9)
比較例6−9では、剥離距離Lh′を3.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は比較例6−7と同様に行った。よって、比較例6−9では、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たしていない。
(実験例6−1〜6−7と比較例6−1〜6−9の実験結果)
図47は実験例6−1ないし実験例6−7と比較例6−1ないし比較例6−9の実験結果の説明図である。
図47において、横軸にv′×τs′の値、縦軸に剥離距離Lh′をとって、実験例6−1〜6−7と、比較例6−1〜6−9との実験結果を表した。図46において、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たす実験例6−1〜6−7では、画質に問題がないことを確認した。一方で、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たさない比較例6−1〜6−9では、画質に欠陥が生じていることを確認した。
よって、中間転写ベルトBの剥離距離Lh′[mm]と、中間転写ベルトBの回転速度v′[mm/s]と、表面方向の時定数τs′[s]とが、式(13′)の関係を満たす場合に、放電に伴う画像不良が生じ難くなることが確認された。
(実験例7−1)
実験例7−1では、中間転写ベルトBの表面方向の時定数τs′を4.6[msec]に設定した。また、剥離距離Lh′を4.2[mm]に設定した。ここで、中間転写ベルトBの回転速度v′は528[mm/s]である。よって、v′×τs′は2.4[mm]となる。よって、実験例7−1では、「Lh′>τs′×v′」の関係、すなわち、式(13′)の関係を満たしている。
実験例7−1では、記録シートSに対して、画質欠陥の有無、および、2次転写ロールT2bに張り付くジャムの有無を評価した。実験例7−1では、評価紙の一例として実験例5と同様の3種類の塗工紙を使用した。
(実験例7−2)
実験例7−2では、剥離距離Lh′を3.4[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例7−1と同様に行った。よって、実験例7−2では、「Lh′>τs′×v′」の関係、すなわち、式(13′)の関係を満たしている。
(実験例7−3)
実験例7−3では、剥離距離Lh′を2.7[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例7−1と同様に行った。よって、実験例7−3では、「Lh′>τs′×v′」の関係、すなわち、式(13′)の関係を満たしている。
(比較例7−1)
比較例7−1では、剥離距離Lh′を2.2[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例7−1と同様に行った。よって、比較例7−1では、「Lh′>τs′×v′」の関係、すなわち、式(13′)の関係を満たしていない。
(比較例7−2)
比較例7−2では、剥離距離Lh′を1.5[mm]に設定した。その他の条件、評価方法は実験例7−1と同様に行った。よって、比較例7−2では、「Lh′>τs′×v′」の関係、すなわち、式(13′)の関係を満たしていない。
(実験例7−1〜7−3比較例7−1〜7−2の実験結果)
図48は実験例7−1ないし実験例7−3と比較例7−1と比較例7−2の条件と実験結果の説明図である。
図48において、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たす実験例7−1〜7−3では、画質に問題がないことを確認した。一方で、「Lh′>v′×τs′」の関係を満たさない比較例7−1〜7−2では、画質に欠陥が生じていることを確認した。
よって、剥離距離Lh′[mm]と、中間転写ベルトBの回転速度v′[mm/s]と、表面方向の時定数τs′[s]とが、式(13′)の関係を満たす場合に、放電に伴う画像不良が生じ難くなることが再度確認された。
また、実験例7−1〜7−3の式(13′)の関係を満たす場合において、評価紙の体積抵抗値Rが大きい場合には、剥離距離Lh′を短く設定した場合に、2次転写ロールT2bに張り付く紙詰まりが生じることが確認された。すなわち、評価紙の体積抵抗値Rが大きいほど、剥離距離Lh′を長く設定すると、2次転写ロールT2bに張り付く紙詰まりが生じないことが確認された。よって、実施例4のように、体積抵抗値Rが大きくなるほど、剥離距離Lh′が長くなるように転写荷重N3′〜N1′を設定すれば、紙詰まりが生じないことが確認された。
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H09)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例としてプリンタUを例示したが、これに限定されず、複写機、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色現像の画像形成装置に限定されず、単色、いわゆるモノクロの画像形成装置により構成することも可能である。
(H02)前記実施例2において、電界を印加して導電性付与剤14を外表面9a側に偏らせて表層9′を形成する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、樹脂13と導電性付与剤14の比重の違いを利用して外表面9a側に導電性付与剤14を偏らせることが可能である。また、例えば、磁性を有する導電性付与剤14の場合には、磁力で外表面9a側に引き寄せて導電性付与剤14を外表面9a側に偏らせる構成も可能である。
(H03)前記各実施例において、2次転写ロールT2bのロール層7は、基層8と、表層9とによる2層構造を例示したが、これに限定されない。例えば、基層8と、表層9との間に、第3の層が挟まれるなどの3層以上の多層構造も可能である。なお、この場合には、外側の層ほど、導電性付与剤12,14の配合量が多くなることが望ましい。
(H04)前記各実施例において、2次転写ロールT2bのロール層7は、基層8と、表層9とによる2層構造を例示したが、これに限定されず、単層の構造も可能である。なお、この場合には、単層の外表面側に導電性付与剤14を偏らせて、τs<τvとすることが可能である。
(H05)前記各実施例において、2次転写ロールT2bの表面方向の時定数τsと、体積方向の時定数τvとが、τs<τvの関係を満たしていることが望ましいが、τs<τvを満たしていない構成にも適用可能である。すなわち、2次転写ロールT2bにおいて、外側ほど、導電付与剤を多くすることが望ましいが、これに限定されず、外側ほど、導電付与剤が少ない構成に適用することも可能である。
(H06)前記各実施例において、バックアップロールT2aの硬度H1と2次転写ロールT2bの硬度H2とが差異の少ない値に設定され、ニップ領域16が平面状に形成される構成を例示したが、これに限定されない。例えば、バックアップロールT2bの硬度を2次転写ロールT2bに比べて小さくして、バックアップロールT2aおよび中間転写ベルトBを、2次転写ロールT2bの外表面9aに沿って湾曲させ易くして、ニップ領域16の湾曲形状の大きさを調節し、記録シートSの湾曲量を変えて剥離距離Lh,Lh′を変更することも可能である。
(H07)前記実施例4において、記録シートSが中間転写ベルトBが剥離される構成は、シートの剛性や、シートの搬送方向と中間転写ベルトBの表面の移動方向の違い等を利用して剥離する、いわゆる、セルフストリップの構成を例示したが、これに限定されない。例えば、2次転写ロールT2bのシートの搬送方向の下流側に除電器を配置し、除電器が記録シートSを除電して中間転写ベルトBから記録シートSを離間させる構成も可能である。また、中間転写ベルトBの内表面に導電板を配置し、導電板に電圧を印加する。そして、導電板から記録シートに対して中間転写ベルトから離間する方向の静電気力を作用させて、中間転写ベルトBから記録シートを剥離させる構成なども可能である。
(H08)前記各実施例において、像保持体として中間転写ベルトBを例示し、被転写体として記録シートSを例示し、転写部材として2次転写ロールT2bを例示したが、これに限定されない。例えば、像保持体と被転写体と転写部材とが、感光体Py〜Pkと中間転写ベルトBと一時転写ロールT1y〜T1kとの構成にも適用可能である。また、2回転写する構成に限定されず、像保持体と被転写体と転写部材とが、感光体Py〜Pkと記録シートSと転写ロールとで構成され、感光体から記録シートSに可視像が転写される構成も可能である。
(H09)前記各実施例において、記録シートSの体積抵抗値Rに応じて、転写荷重N1〜N3,N1′〜N3′が3段階で変更される構成を例示したが、これに限定されず、2段階や4段階以上の複数段階で変更する構成も可能である。また、予め設定された計算式に応じて、記録シートSの体積抵抗値Rに基づいて、剥離距離Lh,Lh′が調節されるように転写加重を変更する構成も可能である。
16,16′…対向領域、
61…第1の測定部材、
62…第2の測定部材、
B…像保持体、被転写体、一方の部材、
τs,τs′…時定数、
Lh,Lh′…長さ、
Py,Pm,Pc,Pk…像保持体、一方の部材、
R…体積抵抗値、
S…被転写体、
T1y,T1m,T1c,T1k…転写部材、
T2b…転写部材、
U…画像形成装置、
Ut,Ut′…移動機構、
v,v′…周速。

Claims (5)

  1. 表面に可視像を保持する像保持体と、
    前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体との対向領域を通過する被転写体に前記像保持体の表面の可視像を転写する転写部材と、
    を備え、
    前記像保持体と前記転写部材とのいずれか一方の部材に対して、外表面に第1の測定部材を接触させ且つ第2の測定部材を前記第1の測定部材に対して前記一方の部材の外表面の周方向に沿って予め設定された距離だけ離間させて前記一方の部材の外表面に接触させ且つ電気的に接地して前記第1の測定部材に印加する電圧を変化させた場合に、前記第2の測定部材の表面に生じる電位の変化に基づいて測定される時定数をτs[s]とし、前記一方の部材の外表面の周速をv[mm/s]とし、前記被転写体が、他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から前記被転写体が離れる位置までの長さをLh[mm]とした場合に、前記時定数τs[s]と、前記一方の部材の外表面の周速v[mm/s]と、前記離れる位置までの長さLh[mm]とが、Lh>v×τsに設定された
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記転写部材により構成された前記一方の部材と、
    前記一方の部材を前記像保持体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記一方の部材に荷重を付与して前記一方の部材を前記像保持体に押し当て可能な前記移動機構と、
    前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記一方の部材に付与する荷重が大きくなるように前記移動機構を制御し、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記転写部材により構成された前記一方の部材と、
    前記一方の部材を前記像保持体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記一方の部材に荷重を付与して前記一方の部材を前記像保持体に押し当て可能な前記移動機構と、
    前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記一方の部材を前記像保持体に押しつける方向に移動させ、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  4. 前記像保持体により構成された前記一方の部材と、
    前記転写部材を前記一方の部材に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記転写部材に荷重を付与して前記転写部材を前記一方の部材に押し当て可能な前記移動機構と、
    前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記転写部材に付与する荷重が小さくなるように前記移動機構を制御し、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  5. 前記像保持体により構成された前記一方の部材と、
    前記転写部材を前記一方の部材に対して接近離間する方向に移動可能に支持する移動機構であって、前記転写部材に荷重を付与して前記転写部材を前記一方の部材に押し当て可能な前記移動機構と、
    前記被転写体の体積抵抗値が大きくなるほど、前記転写部材を前記一方の部材から離間する方向に移動させ、前記対向領域を通過する前記被転写体が、前記他方の部材の外表面から離れる位置から、前記一方の部材の外表面から離れる位置までの長さLhを長くする移動機構の制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
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