JP2015147335A - 液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型化を図りつつ、共通液室を介した個別液室間の相互干渉を抑制するとともに、十分な透湿性抑制効果が得られる液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】複数のノズル11が設けられたノズル基板10と、個別液室12が設けられた個別液室基板20と、共通液室15が設けられた共通液室基板60と、ノズル11から液滴を吐出するよう個別液室12に圧力変動を発生させる圧電素子50と、共通液室15の少なくとも一壁面を形成する可撓性のダンパ膜72と、ダンパ膜72を介して共通液室15と対向した領域に設けられた大気開放室73とを備えた液滴吐出ヘッド1であって、ノズル基板10は、大気開放室73に連通する貫通孔16を有し、大気開放室73が設けられたフレーム部材70とノズル基板10との間の個別液室基板20に、大気開放室73と貫通孔16とを連通し屈曲部を有する連通経路Lを形成した。
【選択図】図20

Description

本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、及び、この液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置に関するものである。
従来、この種の液滴吐出ヘッドとして、複数のノズル(吐出孔)それぞれが連通する複数の個別液室と、各個別液室に圧力変動を発生させる圧力発生手段と、各個別液室に連通する共通液室を有するものが知られている。この液滴吐出ヘッドでは、液容器から共通液室を介して各個別液室に液体が供給され、圧力発生手段を駆動して個別液室内の液体に圧力変動を発生させることにより、ノズルから液滴を吐出させることができる。
上記液滴吐出ヘッドでは、複数の個別液室のうち一の個別液室内で生じた圧力変動が個別液室に連通する共通液室に伝播して、隣接する他の個別液室内の液体の圧力に影響が及ぶ相互干渉(クロストーク)が発生するおそれがある。このような個別液室間の相互干渉が発生すると、個別液室内の液体が液滴として吐出されるときの吐出状態が不安定になる。この個別液室間の相互干渉を抑制するために、共通液室の壁面の一部を可撓性を有する可撓性部材で構成した液滴吐出ヘッドが知られている。
例えば特許文献1には、共通液室の少なくとも一壁面が可撓性を有する可撓性部材(可撓壁)としてのダンパフィルムで構成された液滴吐出ヘッドが開示されている。ダンパフィルムを介して共通液室と対向した領域には、大気に開放される大気開放室としてのバッファ室を有し、バッファ室は共通液室と対向していない領域で外部空間(大気)と連通している。この特許文献1の液滴吐出ヘッドでは、ダンパフィルムが変形することで共通液室に伝播した圧力変動が緩和されることにより、上記個別液室間の相互干渉を抑制することができる。
近年、液滴吐出ヘッドの高密度化の要望により、液滴吐出ヘッドのサイズは小型化の一途を辿っており、上記共通液室の壁面の一部を構成する可撓性部材は薄く形成される傾向にある。しかしながら、上記可撓性部材を薄く形成すると、その可撓性部材における透湿性が大きくなるため、共通液室中の液体の一部が蒸発し、その蒸気が可撓性部材を介して外部空間(大気)に逃げて共通液室中の液体が蒸発しやすくなる。共通液室中の液体の蒸発が進むと、液体の濃度が高まり増粘しやすくなる。
上記共通液室中の液体の蒸発を抑えるために、上記共通液室に対向する大気開放室と外部空間とを連通するように蛇行させて長く形成した連通経路を設けた液滴吐出ヘッドが知られている。この連通経路は、ノズルとは反対側に位置するフレーム部材、流路変換部材、ハウジング部材など(以下、「フレーム部材等」という。)に設けられている。例えば、上記特許文献1には、上記共通液室に対向する大気開放室(バッファ室)と外部空間とを連通する長い連通経路(スネークライン)をハウジングに設けた液滴吐出ヘッド(第3の実施形態)が開示されている。上記可撓性部材における透湿性を抑制して共通液室中の液体の蒸発を抑える効果(以下「透湿性抑制効果」という。)は、可撓性部材を透過した共通液室の蒸気が外部空間(大気)に移動しにくいほど高まる。そのため、上記透湿性抑制効果は、上記連通経路が長いほど高まり、また、連通経路が細いほど高まる。
しかしながら、上記外部連通経路をフレーム部材等に設けた場合、そのフレーム部材等の体積を大きくなるため、結果として液滴吐出ヘッド全体のサイズが大きくなってしまい、小型化が難しい。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、小型化を図りつつ、共通液室を介した個別液室間の相互干渉を抑制するとともに、十分な透湿性抑制効果が得られる液滴吐出ヘッドを提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液滴を吐出する複数のノズルが設けられたノズル基板と、該複数のノズルに連通する個別液室が設けられた個別液室基板と、該複数の個別液室に連通する共通液室が設けられた共通液室基板と、該ノズルから液滴を吐出するよう該個別液室に圧力変動を発生させる圧力発生手段と、該共通液室の少なくとも一壁面を形成する可撓性を有する可撓性部材と、該可撓性部材を介して該共通液室と対向した領域に設けられた大気開放室と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、前記ノズル基板は、前記大気開放室を外部空間に連通するための少なくとも一つの貫通孔を有し、前記大気開放室が設けられた部材と前記ノズル基板との間に、前記大気開放室と前記貫通孔とを連通し少なくとも1つの屈曲部を有する連通経路が形成された基板を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、小型化を図りつつ、共通液室を介した個別液室間の相互干渉を抑制するとともに、十分な透湿性抑制効果を得ることができる。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の一構成例を示す斜視図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部の側面図。 液滴吐出ヘッドの一部分の内部構成を示す幅方向の断面説明図。 液滴吐出ヘッドの一部分の内部構成を示すノズル列方向の断面説明図。 本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す工程断面図(その1)。 本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程を示す工程断面図(その2)。 液滴吐出ヘッドの外観を示す斜視図。 図7の液滴吐出ヘッドでフレーム部材を除いた部分の斜視図。 図7の液滴吐出ヘッドでフレーム部材を除いた部分の分解斜視図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部の一例を示すブロック図。 同制御部の印刷制御部とヘッドドライバ(駆動IC)および圧電素子との関係を示すブロック図。 ヘッドドライバ(駆動IC)及び圧電素子について詳細に示すブロック図。 圧電素子に印加される駆動信号の波形の一例を示す説明図。 実施例1の液滴吐出ヘッドの全体構成を示す斜視図。 実施例1の液滴吐出ヘッドの流路変換部品を除いた部分の斜視図。 図15に示す液滴吐出ヘッドからさらにフレーム部材を除いた部分の斜視図。 (a)、(b)は実施例1の液滴吐出ヘッドの吸引時の幅方向の断面説明図。 実施例1の液滴吐出ヘッドの吸引時のノズル列方向の断面説明図。 実施例1の液滴吐出ヘッドの連通孔をノズル列とノズル列との間のノズル列間領域に形成したノズル基板の平面図。 実施例1の液滴吐出ヘッドの個別液室基板に蛇行経路を形成した構成における、保持基板と個別液室基板とノズル基板との分解斜視図。 実施例2の液滴吐出ヘッドの保持基板に蛇行経路を形成した構成における、保持基板と個別液室基板とノズル基板との分解斜視図。 実施例3の液滴吐出ヘッドの保持基板と個別液室基板とに蛇行経路を形成した構成における、保持基板と個別液室基板とノズル基板との分解斜視図。 実施例4の液滴吐出ヘッドのノズル基板に連通孔を複数設けた構成における、保持基板と個別液室基板とノズル基板との分解斜視図。 従来の液滴吐出ヘッドの全体構成を示す斜視図。 (a)〜(c)は、従来の液滴吐出ヘッドの吸引時の幅方向の断面説明図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明を適用可能な画像形成装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置(以下「インクジェット記録装置」という。)の一構成例を示す斜視図である。図2は、本実施形態のインクジェット記録装置の機構部の側面図である。
インクジェット記録装置100は、キャリッジ101と、キャリッジ101に搭載した液滴吐出ヘッド1と、液滴吐出ヘッド1に対してインクを供給するインクカートリッジ102等で構成される印字機構部103を本体内部に有している。キャリッジ101は、インクジェット記録装置100本体内部において、用紙Sの搬送方向に対して直交方向である主走査方向に移動可能な部材である。
図2に示すように、装置本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)104を抜き差し自在に装着されている。更に、記録紙を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ105を有し、給紙カセット104あるいは手差しトレイ105から給送される記録紙を取り込む。そして、印字機構部103によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ106に排紙する。
印字機構部103は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド107と従ガイドロッド108とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持する。そして、このキャリッジ101には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(後述する「ノズル11」)を、主走査方向に対して直交する方向に配列している。さらには、キャリッジ101には、液滴吐出ヘッド1をインク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ101には液滴吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ102を交換可能に装着している。
インクカートリッジ102は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド1としては各色毎に液滴吐出ヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液滴吐出ヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ101は後方側(用紙搬送方向の下流側)を主ガイドロッド107に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向の上流側)を従ガイドロッド108に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ109aで回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間にタイミングベルト112を張装している。そして、このタイミングベルト112をキャリッジ101に固定し、主走査モータ109aの正逆回転によりキャリッジ101が往復に走査される。
一方、給紙カセット104にセットした記録紙を液滴吐出ヘッド1の下方側に搬送する。このために、給紙カセット104から記録紙を分離給装する給紙ローラ113及びフリクションパッド114と、記録紙を案内するガイド部材115とを有している。更には、給紙された記録紙を反転させて搬送する搬送ローラ116と、この搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116からの記録紙の送り出し角度を規定する先端コロ118を有している。搬送ローラ116は副走査モータ109bによってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ116から送り出された記録紙を液滴吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、記録紙を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ120と拍車121を設けている。さらには、記録紙を排紙トレイ106に送り出す排紙ローラ123と拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125、126とを配設している。
このインクジェット記録装置100で記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している記録紙にインクを吐出して1行分を記録し、その後、記録紙を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または記録紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙を排紙する。
また、キャリッジ101の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はそれぞれ図示していないキャッピング手段と吸引手段とワイピング手段とを有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
更に、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。続いて、吐出口面に付着したインクやゴミ等はワイピング手段により吐出口面を払拭することで除去され、吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
次に、本実施形態のインクジェット記録装置に用いることができる液滴吐出ヘッド1について説明する。
まず、液滴吐出ヘッド1の内部構造を、一例として薄膜ピエゾヘッド(「薄膜ヘッド」とも呼ばれる。)方式の構成を用いて説明する。
図3は、液滴吐出ヘッドの一部分の内部構造を示す幅方向の部分断面図である。図4は、液滴吐出ヘッドの一部分の内部構造を示すノズル列方向の部分断面図である。この液滴吐出ヘッドは、インク滴を基板の面部に設けたノズルから吐出させるサイドシューター方式の一例である。
この液滴吐出ヘッド1は、ノズル基板10と、アクチュエータ基板35と、保持基板40の3枚の基板を重ねた積層構造を有している。
アクチュエータ基板35は、ノズル11に連通する個別液室12と、流体抵抗部13と、インク供給部14とから成る溝部を形成する液室基板20上に、個別液室12の一壁面となる振動板30を形成し、振動板30上に圧電素子50などアクチュエータを形成した基板である。圧電素子50は、個別液室12内のインクに圧力を発生させる圧力発生手段として機能するアクチュエータとなる。
液室基板20としては、シリコン基板上にシリコン酸化膜を介してシリコンが張り合わされたSOI基板を用いている。振動板は、SOI(silicon on insulator)基板のSi層表面にパイロ酸化法を適用し、シリコン酸化膜を形成したものである。振動板30上には、下電極51となる白金膜、圧電体52、上電極53となる白金膜の多層構成からなる圧電素子50がシリコン基板をエッチングすることで形成した個別液室12に対向する領域に形成されている。さらに、上電極53、下電極51と配線材料との層間に配置する層間絶縁膜55、及び引き出し配線の材料を保護する為のパッシベーション膜56が圧電素子50の上面及び側面を覆う様に配置されている。上電極53は、引き出し配線54を介して端子電極としての個別電極パッド58に接続されている。また、下電極51は、引き出し配線54及びバイパス配線57を介して端子電極としての接続パッド(不図示)に接続されている。
ノズル基板10は、例えば、厚さ30[μm]〜50[μm]以下のSUS基板が用いられ、プレス加工と研磨加工とによりノズル11が形成される。このノズル11は、液室基板20の個別液室12と連通している。
保持基板40は、サブフレームとしての機能を有する基板であり、アクチュエータ基板35上に形成された圧電素子50の保護空間41と、後述する共通液室15から個別液室12へのインク流路44を形成する溝とを備えている。更に、保持基板40は、液室基板20の流路隔壁21の剛性を高めて個別液室12全体を支えるための柱43と、バイパス配線57が配置される配線用空間42とが形成されている。
次に、本実施形態の液滴吐出ヘッドの製造方法について、製造工程を示す工程断面図である図5及び図6に従って説明する。
先ず、図5の(a)に示すように、厚み400[μm]のシリコン基板201の表面にシリコン酸化膜202を0.2[μm]及びシリコンを2.0[μm]を張り合わせたSOI基板を用いる。このSOI基板表面にパイロ(Wet)酸化法によりシリコン酸化膜を0.3[μm]形成し、これを振動板層とする。その後、図5の(b)に示すように、圧電素子の下部電極となる白金(Pt)層203をスパッタ法により振動板層の上に0.2[μm]成膜し、パターニングする。更に、図5の(c)に示すように、ゾルゲル法により圧電体層204を下部電極となる白金層203の上に2[μm]成膜し、さらに上部電極となる白金(Pt)層205を0.1[μm]成膜する。その後、リソエッチ法により上部電極及び圧電体層をパターニングする。後述するが温度検出手段としての測温抵抗体を上部電極となる白金層のパターニング工程で同時に作成している。この測温抵抗体は下部電極の白金層を用いることもできる。
次に、図5の(d)に示すように、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により層間絶縁膜206を0.3[μm]成膜し、リソエッチ法により配線コンタクトを取るためのビアホール207を形成する。層間絶縁膜206は、次に形成する配線部材と上部電極との導通部208と、バイパス配線部材への導通部209、およびインク供給孔となる貫通部210をパターニングしている。更に、図5の(e)に示すように、アルミ材料により、引き出し電極211を形成する。この引き出し電極211は、圧電体の駆動による振動板の振動による応力を受けるので、振動により断線しないように、やわらかいアルミ材料を使い、1[μm]程度の厚い膜厚で形成されている。そして、図5の(f)に示すように、アルミ配線保護のためのパッシベーション膜としてプラズマCVD法によるシリコン窒化膜212を2[μm]成膜し、パターニングする。
次に、図6の(a)に示すように、振動板のインク供給孔となる部分213を事前にエッチングする。単にインク供給孔を開口するのではなく、ノズル孔の内径より小さい複数の供給孔を振動板の部材に形成する。供給孔を形成するマスクを変えるだけで、作製プロセスは大きな開口を作るのと同じであるため、コストアップすることなく異物侵入防止の振動板フィルタを作製することができる。本実施形態の開口を形成するには、加工に方向性のない誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasmas;ICP)ドライエッチングを使うのが使い勝手が良い。
その後、図6の(b)に示すように、金をメッキ法により積層して、上部電極パッド部214と下部電極パッド部215とを同時に形成する。上部電極パッド部214及び下部電極パッド部215を金で形成することで、図示しないドライバICとの電気的接続を低温のワイヤボンディングで接続している。また、金は抵抗値が低く、上部電極及び下部電極の抵抗値を下げる効果が大きい。図示しないドライバICの実装は、ワイヤボンディングではなく、プリップチップ実装を用い、パッド部には図示しないドライバICのチップがフリップチップ実装している。更に、下部電極パッド部215は、上部電極パッド部214と形成工程を分けて形成してもよく、パッド部の材料として銅、アルミなどを使用することもできる。その場合は、外部と保護されていない上部電極パッド部214には腐食から保護する保護層が必要となる場合もある。
その後、図6の(c)に示すように、別途ガラス基板にブラスト加工で柱を形成した保護基板216を液室基板側に接合し、図6の(d)に示すように、液室基板の保護基板接合面とは反対面を、所望の厚さまで研磨する。保護基板216はシリコン基板にリソエッチ法で凹部を加工したものでも良く、シリコン基板をTMAH、KOHなどのアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングにより加工したものでも構わない。また、樹脂モールドやメタルインジェクションモールドなどの成型部品でも構わない。また、ドライバ回路をアクチュエータ基板上に一体形成する際に、パイロ酸化法で形成した酸化膜をLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化法で形成し、酸化膜の形成領域を選択することで、駆動回路を同一基板上に形成することもできる。その後、シリコン基板である液室基板217の反対面にICPドライエッチングにより加圧液室218、流体抵抗部219及びインク供給部220となる凹部を形成する。
最後に、図6の(e)に示すように、ノズル孔221を形成したノズル基板222を液室基板217の流路隔壁形成面に接着、圧電素子の上部電極及び下部電極と接続されたアルミ配線部を駆動回路に接続することで液滴吐出ヘッドが完成する。ノズル基板222は別途厚さ30〜50[μm]のSUS基板にプレス加工と研磨加工を行い作製する。
図7は、液滴吐出ヘッド1の外観を示す斜視図である。また、図8は、図7の液滴吐出ヘッド1からフレーム部材70を除いた部分の斜視図であり、図9は、分解斜視図である。
本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、図9に示すように、ノズル基板10と、アクチュエータ基板35と、保持基板40との積層構造(図3,4参照)の上に、共通液室基板60と、フレーム部材70とをさらに積層した構成である。なお、本実施形態では、上記薄膜ピエゾヘッド方式の構成を用いて、液滴吐出ヘッドを説明するが、本発明は、薄膜ピエゾヘッド方式に限って実施可能な発明ではなく、他の方式の液滴吐出ヘッドであっても実施可能である。
以下、液滴吐出ヘッド1の各部材について詳細に説明する。
(ノズル基板)
ノズル基板10はインク吐出用のノズル11が配列されている基板であり、材料は必要な剛性や加工性から任意のものを用いることができる。例としては、SUS、Ni等の金属または合金やシリコン、セラミックス等の無機材料、ポリイミド等の樹脂材料を挙げることができる。ノズル11の加工方法は材料の特性と要求される精度・加工性から任意のものを選ぶことができ、電鋳めっき法、エッチング法、プレス加工法、レーザー加工法等、フォトリソグラフィ法等を例示できる。ノズルの開口径、配列数、配列密度は、インクヘッドに要求される仕様に合わせて最適な組み合わせを設定することができる。
(アクチュエータ基板)
アクチュエータ基板35は、個別液室12、流体抵抗部13、インク供給部14等が形成される液室基板20を有している。液室基板20の材料は加工性・物性から任意のものを用いることができるが、300dpi(約85[μm]ピッチ)以上ではフォトリソグラフィ法を用いることができるシリコン基板を用いることが好ましい。個別液室12の加工は任意のものを用いることができるが、前述のフォトリソグラフィ法を用いる場合は、ウェットエッチング法、ドライエッチング法のいずれかを用いることができる。いずれの手法でも、振動板30の個別液室側を二酸化シリコン膜等とすることで、エッチストップ層とできるため、液室高さを高精度に制御することができる。
個別液室12はインクに圧力を加え、ノズル11からインク滴を吐出させる機能を有する。個別液室12の上部を振動板30で形成し、振動板30上には下電極51、圧電体52、上電極53が積層された圧電素子50を形成する。振動板30は任意のものを用いることができるが、シリコンや窒化物、酸化物、炭化物等の剛性の高い材料とすることが好ましい。また、これらの材料の積層構造としてもよい。積層膜とする場合は、引張応力となるSiと圧縮応力となるSiOを交互に積層し、応力緩和する構成が例として挙げられる。
振動板30の厚さは、所望の特性に応じて選択できるが、概ね0.5[μm]〜10[μm]の範囲が好ましく、さらに好ましくは、1.0[μm]〜5.0[μm]の範囲である。振動板30が薄すぎる場合はクラック等により振動板30が破損しやすくなり、厚すぎる場合は変位量が小さくなり吐出効率が低下してしまう。また、薄すぎる場合は、振動板30の固有振動数が低下し、駆動周波数が高められない課題がある。
下電極51、上電極53は、導電性のある任意の材料を用いることができる。例としては金属、合金、導電性化合物が挙げられる。これらの材料の単層膜でも積層膜でもよい。また、圧電体と反応したり、拡散したりしない材料を選定する必要があるため、安定性の高い材料を選定する必要がある。また、必要に応じて圧電体、振動板、密着性を考慮し、密着層を形成してもよい。電極材料の例としては、Pt、Ir、Ir酸化物、Pd、Pd酸化物等が安定性の高い材料として挙げられる。また、振動板30との密着層としては、Ti、Ta、W、Cr等が例示できる。
圧電体52の材料は圧電性を示す強誘電体材料を用いることができる。例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やチタン酸バリウムが一般的に用いられる。圧電体52の成膜方法は任意の手法を用いることができ、例としてはスパッタリング法、ゾルゲル法が挙げられ、成膜温度の低さからゾルゲル法が好ましい。上電極53、圧電体52は個別液室ごとにパターニングする必要がある。パターニングは通常のフォトリソグラフィ法を用いることができる。
(配線)
図示しないが、配列したPZT等の圧電体52に駆動信号を入力するために、上電極から個別配線を引き出し、下電極からバイパス配線57を引き出す構成をとる。上電極からは、配列する上電極から配線層の一部である個別配線を介して、個別電極パッド58まで引き出され、ヘッドドライバ(駆動IC)509と接続され、ヘッドドライバ509からさらに配線を介して接続パッド59まで引き出される。一方、下電極は、バイパス配線57を介して接続パッド59まで引き出される。配線は同一材料、同一工程で形成することが望ましい。配線材料としては、抵抗値の低い金属、合金、導電性材料を用いることができる。また、上部電極、下部電極とコンタクト抵抗の低い材料を用いることが必要である。例としてはAl、Au、Ag、Pd、Ir、W,Ti、Ta、Cu、Crなどが例示でき、コンタクト抵抗を低減するために、これらの材料の積層構造としてもよい。コンタクト抵抗を下げる材料としては、任意の導電性化合物を用いてもよい。例としては、Ta、TiO、TiN、ZnO、In、SnO等の酸化物,窒化物およびその複合化合物が挙げられる。膜厚は任意に設定できるが、3[μm]以下とすることが好ましい。また、成膜には真空成膜法等の膜厚均一性が高い成膜方法を採用することが好ましい。これらの配線は、保持基板40との接合面にもなるため、高さ均一性を確保できる膜厚・成膜方法を取る必要がある。
(保持基板)
アクチュエータ基板35は20[μm]〜100[μm]と薄いため、アクチュエータ基板35の剛性を確保することが必要である。このため、アクチュエータ基板35のノズル基板10と対向する側に保持基板40を接合する。保持基板40の材料としては、任意の材料を用いることができるが、アクチュエータ基板35の反りを防止するために熱膨張係数の近い材料を選定する必要があり、ガラス、シリコン、SiO、ZrO、Al等のセラミクス材料とすることが好ましい。また、保持基板40は、圧電素子50の保護空間41と、共通液室15から個別液室12へのインク流路44を形成する溝等を備えている。上述の薄膜ピエゾヘッド方式の構成のように、圧電素子50を保護空間41は個別液室12ごとに区画し、流路隔壁21上で接合されることが好ましい。これにより、板厚の薄いアクチュエータ基板35の剛性を高めることができ、圧電素子50を駆動した際の隣接液室間の相互干渉を低減することが可能となる。保持基板40は、樹脂などの低剛性材料ではなく、シリコンなどの高剛性材料が好ましい。また、保持基板40の保護空間41は個別液室12ごとに区画されるため、高密度化のためには高度な加工精度が要求され、例えば、300[dpi]の液滴吐出ヘッドにおいては保持基板40の隔壁幅を5[μm]〜20[μm]とすることが望ましい。
(共通液室基板)
共通液室基板60は、個別液室12へインクを供給するための共通液室15のインク流路となる空間としてスリット状開口部61を形成する部品である。材料は必要な剛性や加工性から任意のものを用いることができる。例としては、S45Cなどの鉄、SUS等の合金やシリコン、セラミックス等の無機材料、エポキシやPPSなどの樹脂材料を挙げることができる。加工方法としては、材料に応じてエッチング、プレス加工、レーザー加工、フォトリソグラフィ法、射出成形などがある。共通液室基板60は、各色に対応する複数のスリット状開口部61を有している。アクチュエータ基板35の小型化に伴い、共通液室基板60のスリット状開口部61の間の幅は0.1[mm]〜0.8[mm]にすることが望ましい。
(フレーム部材)
フレーム部材70は、液滴吐出ヘッド1のフレームを形成する部材である。フレーム部材70は、共通液室基板60のスリット状開口部61と共に共通液室15となる空間を有し、この空間には共通液室15の一壁面となる可撓性を有するダンパ膜72が形成されている。フレーム部材70としては、コスト面から樹脂を用いて成形を行うことが好ましい。樹脂としては、エポキシ、ポリフェニルサルファイドなどが挙げられる。これらの樹脂を射出成形で、弁形成部が開口(不図示)したフレーム部材70の枠体を成形した後、シリコン等からなるエラストマーなどの射出成形によってダンパ膜72を形成する。共通液室15のコンプライアンスを高くするため、ダンパ膜72はできるだけ薄く、ヤング率が低い材料が好ましい。ダンパ膜72の厚みは、50[μm]〜500[μm]とすることが望ましく、ヤング率としては10[MPa]以下が好ましい。
なお、図7に示すフレーム部材70の上面は、インクタンク(不図示)と共通液室15とを連通する流路が形成される流路変換部品(不図示)が接合されて閉鎖されており、後述するようにダンパ膜72を介して共通液室15と対向する大気開放室73が形成されている。
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御について説明する。
図10は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部の一例を示すブロック図である。
図10において、制御部500は、CPU501とROM502とRAM503と不揮発性メモリ504とASIC505とを備えている。CPU501は、装置全体の制御を司る。ROM502は、CPU501が実行するデータ生成に関わるプログラム、その他のプログラムなどの固定データを格納する。RAM503は、画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ504は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能なメモリである。ASIC505は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
また、制御部500は、印刷制御部508、ヘッドドライバ(駆動IC)509、モータ駆動部510、ACバイアス供給部511などを備えている。印刷制御部508は、記録ヘッドとしての液滴吐出ヘッド1を駆動制御するためのデータ転送手段や駆動信号発生手段として機能する。ヘッドドライバ509は、キャリッジ101側に設けた液滴吐出ヘッド1の圧電素子50を駆動する。モータ駆動部510は、キャリッジ101を移動走査する主走査モータ109aと、搬送ローラ116を周回移動させる副走査モータ109bと、回復装置127のキャップ部材やワイパ部材の移動などを行なう維持回復モータ556とを駆動する。ACバイアス供給部511は、帯電ローラ(不図示)にACバイアスを供給する。
また、制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
また、制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F(インターフェース)506を有している。制御部500は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の画像データ(印刷データ)を読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行う。そして、CPU501は、ASIC505で処理した画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。更に、印刷制御部508は、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器と、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部とを含む。そして、印刷制御部508は、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される液滴吐出ヘッド1の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成するパルスを選択して、吐出パルスを有する駆動信号を生成する。そして、ヘッドドライバ509は、液滴吐出ヘッド1の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電素子50に対して、生成した駆動信号を印加することで液滴吐出ヘッド1を駆動する。このとき、駆動信号の波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
また、制御部500は、I/O部513を備えている。I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508、モータ駆動部510及びACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するための温度検出手段としてのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがある。I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
図11は、印刷制御部508とヘッドドライバ509および圧電素子50との関係を示すブロック図である。また、図12は、ヘッドドライバ509及び圧電素子50について詳細に示したブロック図である。
印刷制御部508は、駆動波形生成部701とデータ転送部702とを備えている。
駆動波形生成部701は、画像形成動作時や空吐出動作時に、各動作の1単位である1駆動周期内に複数のパルスで構成される所定の駆動波形(共通駆動波形)の駆動信号を生成して出力する。駆動周期としては、画像形成動作時の印字周期と、空吐出動作時の空吐出周期とがある。印字周期は、所定の液滴付着対象物である用紙などの記録媒体に向けて画像形成用の液滴を吐出する駆動波形の駆動信号が出力される周期である。空吐出周期は、個別液室12内の所定特性から変化した液体(例えば、所定の粘度から増粘した液体)を排出するための空吐出波形の駆動信号が出力される周期である。
駆動波形生成部701は、画像形成動作時及び空吐出動作時に所定の波形を生成する。すなわち、駆動波形生成部701は、画像形成動作時には1印字周期内に複数のパルスで構成される所定の駆動波形の駆動信号を生成して出力する。また、空吐出動作時には、1空吐出周期内に複数のパルスで構成される空吐出用の駆動波形である空吐出波形の駆動信号を生成して出力する。空吐出動作時の液滴の吐出は画像形成を目的としていないため、1印字周期と1空吐出周期とでは、駆動波形生成部701から出力される駆動波形が互いに異なる。なお、1印字周期及び1空吐出周期はそれぞれ、画像形成動作中及び空吐出動作中に圧電素子50に印加される駆動波形の1周期である。
データ転送部702は、画像形成対象の画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号と、ラッチ信号(LAT)と、滴制御信号M0〜M3とを出力する。
滴制御信号M0〜M3は、ヘッドドライバ509の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を液滴毎に指示する2ビットの信号である。滴制御信号は、共通駆動波形の周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ509は、液滴吐出ヘッド1の圧電素子50を駆動する駆動部であり、シフトレジスタ711とラッチ回路712とセレクタ713とレベルシフタ714とアナログスイッチ715とを備えている。シフトレジスタ711は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル))を入力する。ラッチ回路712は、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチする。セレクタ713は、階調データと滴制御信号M0〜M3をセレクトして結果を出力する。レベルシフタ714は、セレクタ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換する。アナログスイッチ715は、レベルシフタ714を介して与えられるセレクタ713の出力でオン/オフ(開閉)される。
アナログスイッチ715は、各圧電素子50の選択電極(個別電極)に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と滴制御信号MN0〜MN3をセレクタ713でセレクトした結果に応じて、アナログスイッチ715がオンにする。これにより、共通駆動波形を構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)圧電素子50に印加される。
図13は、圧電素子50に印加される駆動信号の波形の一例を示す説明図である。
なお、以下の説明において、「駆動パルス」とは駆動信号の波形(以下、適宜「駆動波形」と略す。)を構成する要素としてのパルスを示す用語として用いる。この駆動パルスには、次の吐出パルスと非吐出パルスとがある。
「吐出パルス」とは圧電素子50に印加されて液滴を吐出させるパルスを示す用語として用いる。また、「非吐出パルス」とは、圧電素子50に印加されるが液滴を吐出させないパルスを示す用語として用いる。非吐出パルスが圧電素子50に印加されているときは、ノズル11内の液体を流動させており、ノズル11における液面が微振動している。
なお、非吐出パルスを圧電素子50に印加しているときの駆動を「微駆動」といい、非吐出パルスを含む駆動信号の1周期の波形を「微駆動波形」という。非吐出パルスは、上記微駆動を行うためのパルスであるので、「微駆動パルス」と呼ぶ場合もある。
図13の例は、3種類のサイズの液滴(大滴、中滴、小滴)を吐出させる吐出パルスそれぞれを含む駆動信号と、ノズルの液面を微振動させる非吐出パルスを含む駆動波形の例である。駆動波形生成部701からは図中の(a)に示すような駆動波形(共通駆動波形)Pvが出力される。この駆動波形Pvは、画像形成の1周期(1駆動周期)内で、基準信号に同期して、駆動パルスP1〜P4を時系列で生成した波形である。なお、基準信号は、形成する画像の密度に応じてキャリッジ101の主走査方向位置に対応して出力される信号である。また、駆動パルスP1は非吐出パルスであり、駆動パルスP2〜P4は吐出パルスである。
そして、データ転送部702からは、図中の(b)に示す滴制御信号M0〜M3が出力される。
滴制御信号M0は、駆動波形の駆動パルスP1〜P4を選択して図中の(c)に示す大滴用の吐出パルスを生成させる。
滴制御信号M1は、駆動波形の駆動パルスP2、P4を選択して図中の(d)に示す中滴用の吐出パルスを生成させる。
滴制御信号M2は、駆動波形の駆動パルスP3を選択して図中の(e)に示す小滴用の吐出パルスを生成させる。
滴制御信号M3は、駆動波形の駆動パルスP1を選択して図中の(f)に示す微駆動用の非吐出パルスを生成させる。
前述の図1及び図2で説明した液滴吐出ヘッド1では、図13に示したように小滴、中滴、大滴などサイズの違う液滴を打ち分けたり空吐出動作を行わせたりといった制御を行っている。
なお、図13では、画像形成動作時の駆動波形を生成する制御例に挙げたが、空吐出波形を生成する場合も同様の制御を行う。
次に、本実施形態の液滴吐出ヘッド1の特徴部のより具体的な構成例(実施例1〜4)について説明する。
〔実施例1〕
図14は、本実施例1の液滴吐出ヘッド1の全体構成を示す斜視図である。また、図15は、図14の斜視図から流路変換部品80を除いた部分の斜視図であり、図16は、図15に示す液滴吐出ヘッドからさらにフレーム部材70を除いた部分の斜視図である。さらに、図17(a)、(b)は、液滴吐出ヘッド1の断面図である。なお、図17(b)では、便宜上、ノズル列方向の半分に対応する部分のみを図示しており、さらに、個別液室12、圧電素子50の図示を省略している。
図14に示すように、本実施例1では、インク供給口81を有する流路変換部品80には、大気と連通する連通孔は形成されていない。従来技術においては、例えば図24に示すように、大気開放室と大気と連通する連通孔82と、蛇行した連通経路である蛇行経路(「スネークライン」とも称される。)83とが、流路変換部品80に形成されていた。これに対し、本実施例1では、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16とを連通する連通経路Lの一部を構成する蛇行経路22を、流路変換部品80ではなく個別液室基板20に形成している(図20参照)。また、本実施例1では、フレーム部材70に連通孔75が形成され(図15参照)、共通液室基板60に連通孔66が形成され(図16参照)、ノズル基板10に貫通孔16が形成されている(図17(b)参照)。また、共通液室基板60には位置合わせ用のアライメント穴65が形成されている。大気開放室73は、フレーム部材70の連通孔75と、共通液室基板60の連通孔66と、保持基板40の連通孔40hと、個別液室基板20の蛇行経路22と、ノズル基板10の貫通孔16とを介して外気と連通する(図20参照)。このような構成とすることで、蛇行経路22を流路変換部品80に形成する必要がなく、流路変換部品80の小型化を図り、結果として液滴吐出ヘッド1全体の小型化を図ることができる。
また、個別液室基板20の加工時に、マスクパターンを変えるだけで個別液室と同時に蛇行経路22を加工できるため、個別液室基板20のコストアップを抑えることができる。また、保持基板(サブフレーム基板)40も同様に、マスクパターンを変えるだけでインク経路を形成すると同時に、連通孔や蛇行経路を形成できるため、保持基板40のコストアップを抑えることができる。さらに、ノズル基板10に外部空間(大気)と連通するための貫通孔16が形成されるため、各インク吐出用のノズルの形成と同時に貫通孔16の形成が可能であるため、ノズル基板10のコストアップも生じない。このように、上述した流路変換部品80の小型化の効果に加えて、加工コストを増加させることなく、大気開放室73と外部空間(大気)との間の連通経路を形成することができる。
図18は、実施例1において、回復装置127のキャップ90でノズル基板10のインク吐出側を覆い、液滴吐出ヘッド1の吸引時のノズル列方向の断面説明図である。なお、図18では、便宜上、ノズル列方向の半分に対応する部分のみを図示しており、さらに、個別液室12、圧電素子50の図示を省略している。
近年では、コンプライアンスを確保するためにヤング率が低い材料をダンパ膜72に用いることで、液滴吐出ヘッド1のクリーニング時に、ダンパ膜72が共通液室流路を塞いでしまうという問題が新たに発生している(図25参照)。すると、吸引によるインクの排出が十分に行われず、共通液室15内の気泡排出が不十分になってしまう。この問題を防止するために、本実施例1では、吸引手段のキャップ90でノズル基板10のノズル11だけでなく、貫通孔16も覆うように構成している。これにより、図18に示すように、キャップ90でノズル11から個別液室12内のインクを吸引すると同時に、貫通孔16から大気開放室73内の気体を吸引することができ、大気開放室73内も負圧になり、ダンパ膜72が共通液室流路を塞いでしまうことがない。
なお、大気開放室73に連通する貫通孔16を形成する位置は、ノズル基板10のノズル列とノズル列との間の領域に設定することが好ましい。
図19は、貫通孔16をノズル列11Lとノズル列11Lとの間のノズル列間の領域10aに形成したノズル基板10の平面図である。図19に示すように、貫通孔16を、互いに対向するノズル列11Lとノズル列11との間のノズル列間の領域10aに形成する。これにより、キャップ90の吸引面積を大きくしたり、吸引位置を変更したりすることなく、ノズル11からインクを吸引する際に、同時に貫通孔16を介して大気開放室73内の気体を吸引して負圧にすることができる。
本実施例1の構成では、大気開放室73を外気に連通するために、個別液室基板(アクチュエータ基板)20と保持基板40とを貫通するように、個別液室基板20に蛇行した細くて長い蛇行経路が形成されている。
図20は、本実施例1において、個別液室基板20に蛇行経路を形成した構成における、保持基板40と個別液室基板20とノズル基板10との分解斜視図である。
図20に示すように、個別液室基板20には、積層されたときに保持基板40の連通孔40hと連通する位置に、個別液室基板20を貫通する連通孔20hが形成されている。この連通孔20hに接続するように、個別液室基板20のノズル基板10側の面部分に、4箇所の屈曲部を有する溝状の蛇行経路22が形成されている。また、蛇行経路22の連通孔20hと反対側の端部は、積層されたときにノズル基板10の貫通孔16と連通する位置に形成されている。
そして、各基板を積層すると、個別液室基板20のノズル基板10側の面部分に形成された蛇行経路22は、ノズル基板10のインク吐出側と反対側の面で塞がれる。また、各基板の積層により、フレーム部材70の連通孔75と、共通液室基板60の連通孔66と、保持基板40の連通孔40hと、個別液室基板20の連通孔20hと、個別液室基板20の蛇行経路22とが連通する。これらの連通孔75,66,40h,20h及び蛇行経路22は、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16とを連通する連通経路Lを構成する。この連通経路Lとノズル基板10の貫通孔16とにより、大気開放室73と外部空間(大気)とを連通する大気連通経路L’が構成される。
図20の構成例において、個別液室基板20の蛇行経路22は4箇所の屈曲部が形成されているが、屈曲部の個数はこれに限られるものではなく、1箇所以上あればよい。ここで、屈曲部の個数は、90度曲がる部分を1箇所として数えている。また、屈曲部の角度は90度に限られるものではなく、任意の角度に設定することができる。さらに、屈曲部を曲率を有する円弧状に形成してもよい。また、蛇行経路22の幅、深さ、長さなどについては、最適な透湿性抑制効果が得られるように適宜設定することができる。
本実施例1によれば、個別液室基板20に蛇行経路22を形成して連通経路Lを長くすることにより、外気に比べて大気開放室53内の湿度や温度が略一定に保たれ、膜厚が薄いダンパ膜72を用いた場合であっても、透湿性抑制効果が得られインクの増粘が防止される。
また、本実施例1によれば、個別液室基板20に蛇行経路22を形成しているので、蛇行経路を形成するための部材を別途設ける場合に比べて、液滴吐出ヘッド1の小型化を図ることができる。
また、本実施例1によれば、基板の積層により蛇行経路22が塞がれるので、従来技術のようにシールなどの別部材で塞ぐ必要がなく、コストダウンを図ることができる。
さらに、本実施例1によれば、個別液室基板20の材料としてシリコン基板を用いることにより、例えば樹脂材料を用いる場合に比べて、より高密度、高精細な蛇行経路22の形成が可能となる。これにより、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16との間の経路をより長く形成することが可能となり、透湿性抑制効果を更に高めることができる。また、マスクパターンやエッチング処理を変更することにより、蛇行経路22の幅、深さ、長さなどを容易に変更することができる。
〔実施例2〕
上記実施例1では、個別液室基板20に蛇行経路を形成したが、保持基板(サブフレーム基板)40に蛇行経路を形成してもよい。
図21は、保持基板40に蛇行経路を形成した構成における、保持基板40と個別液室基板20とノズル基板10との分解斜視図である。
図21に示すように、保持基板40には、積層されたときに大気開放室73に連通する位置に、保持基板40を貫通する連通孔40hが形成されている。この連通孔40hに接続するように、保持基板40の個別液室基板20側の面部分に、4箇所の屈曲部を有する溝状の蛇行経路45が形成されている。また、蛇行経路45の連通孔40hと反対側の端部は、積層されたときに個別液室基板20の連通孔20hと連通する位置に形成されている。
そして、各基板を積層すると、保持基板40の個別液室基板20側の面部分に形成された蛇行経路45は、個別液室基板20のノズル基板10側と反対側の面で塞がれる。各基板の積層により、フレーム部材70の連通孔75と、共通液室基板60の連通孔66と、保持基板40の連通孔40hと、保持基板40の蛇行経路45と、個別液室基板20の連通孔20hとが連通する。これらの連通孔75,66,40h,20h及び蛇行経路45は、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16とを連通する連通経路Lを構成する。この連通経路Lとノズル基板10の貫通孔16とにより、大気開放室73と外部空間(大気)とを連通する大気連通経路L’が構成される。
図21において、保持基板40の蛇行経路45は、4箇所の屈曲部が形成されているが、屈曲部の形成個数はこれに限られるものではなく、1箇所以上あればよい。また、蛇行経路45の幅、深さ、長さなどについては、最適な透湿性抑制効果が得られるように適宜設定することができる。
本実施例2によれば、個別液室基板20に蛇行経路22を形成した上記実施例1と同様の効果が得られる。さらに本実施例2によれば、保持基板40は個別液室基板20よりも剛性が大きいため、保持基板40に蛇行経路45を形成しても基板の剛性低下は生じにくく、剛性低下による基板の変形を防ぐことができるという効果が得られる。
〔実施例3〕
上記実施例1、2ではそれぞれ、個別液室基板(アクチュエータ基板)20、保持基板(サブフレーム基板)40に蛇行経路を形成したが、両方の基板に蛇行経路を形成してもよい。
図22は、実施例3において、個別液室基板20と保持基板40との両方の基板に蛇行経路を形成した構成における、保持基板40と個別液室基板20とノズル基板10との分解斜視図である。
図22に示すように、保持基板40には、積層されたときに大気開放室73に連通する位置に、保持基板40を貫通する連通孔40hが形成されている。この連通孔40hに接続するように、保持基板40の個別液室基板20側の面部分に、4箇所の屈曲部を有する溝状の蛇行経路45が形成されている。また、蛇行経路45の連通孔40hと反対側の端部は、積層されたときに個別液室基板20の連通孔20hと連通する位置に形成されている。また、個別液室基板20の連通孔20hに接続するように、個別液室基板20のノズル基板10側の面部分に、5箇所の屈曲部を有する溝状の蛇行経路22が形成されている。さらに、蛇行経路22の連通孔20hと反対側の端部は、積層されたときにノズル基板10の貫通孔16と連通する位置に形成されている。
そして、各基板を積層すると、個別液室基板20のノズル基板10側の面部分に形成された蛇行経路22は、ノズル基板10のインク吐出側と反対側の面で塞がれる。また、保持基板40の個別液室基板20側の面に形成された蛇行経路45は、個別液室基板20のノズル基板10側と反対側の面で塞がれる。各基板の積層により、フレーム部材70の連通孔75と、共通液室基板60の連通孔66と、保持基板40の連通孔40hと、保持基板40の蛇行経路45と、個別液室基板20の連通孔20hと、個別液室基板20の蛇行経路22とが連通する。これらの連通孔75,66,40h,20h及び蛇行経路45,22は、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16とを連通する連通経路Lを構成する。この連通経路Lとノズル基板10の貫通孔16とにより、大気開放室73と外部空間(大気)とを連通する大気連通経路L’が構成される。
本実施例3によれば、上記実施例1、2に比べて蛇行経路を長く形成することができる。これにより、個別液室基板20及び保持基板40のどちらか一方の基板に蛇行経路を形成する場合と比べて、ダンパ膜72からの透湿性抑制効果をより高めることができる。
また、各基板の積層方向に立体的に連通経路Lを形成できるため、一つの基板に形成する連通経路を短くして、蛇行経路を形成するスペースを小さくすることもできる。これにより、液滴吐出ヘッド1の更なる小型化を図ることが可能となる。
なお、保持基板40と個別液室基板20との基板サイズを同じにするため、各基板に形成される連通経路の経路長は略同じ長さが好ましい。
〔実施例4〕
上記実施例1〜3では、ノズル基板10に形成する貫通孔16が1個の場合について説明したが、複数設けてもよい。
図23は、実施例4において、ノズル基板10に貫通孔16を複数設けた構成における、保持基板40と個別液室基板20とノズル基板10との分解斜視図である。図23に示すように、ノズル基板10には複数の貫通孔16が形成されている。また、個別液室基板20の蛇行経路22は、ノズル基板10の全ての貫通孔16と連通できるように形成されている。本実施例4の構成によれば、貫通孔16のインク詰まりに対するロバスト性が向上する。
なお、一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴(以下、インク滴という)を吐出する液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、媒体を搬送しながら液滴吐出ヘッドによりインク滴を用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液滴となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
本発明は、上述した記録媒体の種類や液体の種類にかかわらず適用することができる。
また、液滴吐出ヘッドは各個別液室に圧力変動を発生させる圧力発生手段の種類により、幾つかの方式に大別される。例えば、個別液室の一壁面を振動板で構成して、振動板上に圧電素子を配置し、圧電素子に駆動電圧を印加して圧電素子を変形させることで振動板を変形させ、これにより個別液室内のインクを昇圧して液滴を吐出させるピエゾ方式が知られている。また、個別液室の一壁面を振動板で構成し、振動板に対向して個別液室外部に電極を配置し、電極との間に電界を形成して発生する静電力により振動板を変形させ、これにより個別液室内のインクを昇圧して液滴を吐出させる静電方式も知られている。さらに、個別液室の内部に発熱体を配置し、この発熱体に通電して発熱体を加熱することによって、個別液室内のインクに気泡を発生させ、気泡の圧力により個別液室内のインクを昇圧して液滴を吐出させるサーマル方式も知られている。
本発明は、上述したような圧力発生手段の方式にかかわらず適用することができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
インクなどの液滴を吐出する複数のノズル11が設けられたノズル基板10と、複数のノズル11に連通する個別液室12が設けられた個別液室基板20と、複数の個別液室12に連通する共通液室15が設けられた共通液室基板60と、ノズル11から液滴を吐出するよう個別液室12に圧力変動を発生させる圧電素子50などの圧力発生手段と、共通液室15の少なくとも一壁面を形成する可撓性を有するダンパ膜72などの可撓性部材と、可撓性部材を介して共通液室15と対向した領域に設けられた大気開放室73と、を備えた液滴吐出ヘッド1であって、ノズル基板10は、大気開放室73に連通する少なくとも一つの貫通孔16などの貫通孔を有し、大気開放室73が設けられたフレーム部材70などの部材とノズル基板10との間に、大気開放室73と貫通孔とを連通し蛇行経路22,45などの少なくとも1つの屈曲部を有する連通経路Lが形成されている基板を有する。
これによれば、上記実施例1について説明したように、共通液室15の少なくとも一壁面を形成する可撓性部材を介して共通液室15と対向した領域に設けられた大気開放室73は、連通経路Lとノズル基板10の貫通孔16とを外部空間(大気)に連通する。このように外部空間(大気)に連通した大気開放室73と共通液室15との間に可撓性部材が位置するため、個別液室12の圧力変動が共通液室15に伝播しても、可撓性部材が変形して共通液室15の圧力変動が吸収される。従って、共通液室15を介した複数の個別液室12間の相互干渉を抑制できる。
また、大気開放室73とノズル基板10の貫通孔16とを連通する連通経路Lは、大気開放室73が設けられた部材とノズル基板10との間に有する基板に形成されている。これにより、ノズル基板とは反対側に位置するフレーム部材などに連通経路Lを形成する必要がないので、上記フレーム部材などを小型化でき、液滴吐出ヘッド1の小型化を図ることができる。
しかも、上記連通経路Lは少なくとも1つの屈曲部を有するように形成されているため、連通経路Lが屈曲部を有しないストレート形状に形成されている場合に比して、可撓性部材を透過した共通液室の蒸気が外部空間(大気)に移動しにくくなる。従って、可撓性部材が薄くても十分な透湿性抑制効果を得ることができる。
以上により、小型化を図りつつ、共通液室15を介した個別液室12間の相互干渉を抑制するとともに、十分な透湿性抑制効果を得ることができる。
(態様B)
上記態様A又はBにおいて、前記連通経路Lが形成されている基板はシリコン基板である。これによれば、上記実施例1について説明したように、上記連通経路Lが形成される基板は、上記フレーム部材などに通常用いられる樹脂に比べて高密度、高精細な加工ができるシリコン基板であるので、フレーム部材などに連通経路Lを形成する場合に比してより細い連通経路Lを形成できる。このように細い連通経路Lを形成できるため、十分な透湿性抑制効果を得るために連通経路Lを長くする必要がなく、上記基板のサイズを大きくすることなく連通経路Lを形成するための領域を基板上に確保できる。従って、更に液滴吐出ヘッド1の小型化を図りつつ、可撓性部材が薄くても十分な透湿性抑制効果を得ることができる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、前記連通経路Lが形成されている基板は個別液室基板20であり、個別液室基板20の少なくともノズル基板10側に、連通経路Lが溝状に形成され、溝状の連通経路Lをノズル基板10の液滴吐出側とは反対側の面で塞ぐように構成した。
これによれば、上記実施例1について説明したように、個別液室基板20に連通経路Lが形成されているので、連通経路Lを形成するための部材を別途設ける場合に比べて、液滴吐出ヘッド1の小型化を図ることができる。また、基板の積層により個別液室基板20に形成された連通経路Lが塞がれるので、従来技術のようにシールなどの別部材で塞ぐ必要がなく、コストダウンを図ることができる。
(態様D)
上記態様A又はBにおいて、個別液室基板20と共通液室基板60との間に、個別液室基板20を保持する保持基板40を備え、前記連通経路Lが形成されている基板は保持基板40であり、保持基板40の少なくとも個別液室基板20側に、連通経路Lが溝状に形成され、溝状の連通経路Lを個別液室基板20のノズル基板10側とは反対側の面で塞ぐように構成した。
これによれば、上記実施例2について説明したように、保持基板40に連通経路Lが形成されているので、連通経路Lを形成するための部材を別途設ける場合に比べて、液滴吐出ヘッド1の小型化を図ることができる。また、基板の積層により保持基板40に形成された連通経路Lが塞がれるので、従来技術のようにシールなどの別部材で塞ぐ必要がなく、コストダウンを図ることができる。また、保持基板40は剛性の大きい部材で構成されるため、保持基板40に蛇行経路45などの連通経路Lを形成しても保持基板40の剛性低下は生じにくく、剛性低下による基板の変形を防ぐことができる。
(態様E)
上記態様Aにおいて、個別液室基板20と共通液室基板60との間に、個別液室基板20を保持する保持基板40を備え、前記連通経路Lが形成されている基板は個別液室基板20及び保持基板40であり、個別液室基板20及び保持基板40それぞれに連通経路Lが形成されている。
これによれば、上記実施例3について説明したように、個別液室基板20又は保持基板40のいずれか一方に連通経路Lを形成する場合に比べ、連通経路Lを長く形成することができ、透湿性抑制効果をより高めることができる。
(態様F)
上記態様Eにおいて、個別液室基板20における連通経路L及び保持基板40における連通経路Lはそれぞれ、基板積層方向における互いに異なる位置の仮想平面上に形成され、連通経路Lの一端で互いに連通している。
これによれば、上記実施例3について説明したように、基板積層方向に立体的に連通経路Lを形成できるため、一つの基板に形成する連通経路Lを短くして、連通経路Lを形成するスペースを小さくすることもでき、液滴吐出ヘッド1の更なる小型化を図ることが可能となる。
(態様G)
上記態様A乃至Fのいずれかにおいて、ノズル基板10は、複数のノズル11が配列されたノズル列11Lが少なくとも2列形成され、貫通孔は互いに隣接するノズル列間の領域10aに形成されている。
これによれば、上記実施例1について説明したように、吸引手段を用いて液滴吐出ヘッド1のクリーニングを行う際に、キャップ90などの吸引部材の吸引面積を大きくしたり、吸引位置を変更したりすることなく、ノズル11から個別液室12内を吸引する際に、同時にノズル基板10の貫通孔を介して大気開放室73内の気体を吸引して負圧にすることができる。
(態様H)
液滴を記録媒体に向けて吐出する液滴吐出手段を備えたインクジェット記録装置100などの画像形成装置であって、液滴吐出手段として、上記態様A乃至Gのいずれかの液滴吐出ヘッドを備えた。
これによれば、上記実施形態について説明したように、液滴吐出手段の小型化を図りつつ、共通液室15を介した個別液室12間の相互干渉を抑制するとともに、十分な透湿性抑制効果を得ることができる。よって、液滴の吐出が安定し高品質な画像を形成することができる。
(態様I)
上記態様Hにおいて、ノズル基板10のノズル11から個別液室12内の液体を吸引するとともにノズル基板11に形成された貫通孔から大気開放室73内の気体を吸引する回復装置127などの吸引手段を、更に備えた。
これによれば、上記実施形態について説明したように、大気開放室73内が負圧になって可撓性部材が液体流路を塞ぐことを防ぎ、ノズル11から個別液室12内の液体をスムーズに吸引して液滴吐出ヘッドの機能を回復することができる。
1 液滴吐出ヘッド
2 連通経路
10 ノズル基板
10a ノズル列間の領域
11 ノズル
11L ノズル列
12 個別液室
13 流体抵抗部
14 インク供給部
15 共通液室
16 ノズル基板の連通孔
20 個別液室基板
20h 個別液室基板の連通孔
21 流路隔壁
22 個別液室基板の蛇行経路
30 振動板
35 アクチュエータ基板
40 保持基板
40h 保持基板の連通孔
41 保護空間
42 配線用空間
44 インク流路
45 保持基板の蛇行経路
50 圧電素子
51 下電極
52 圧電体
53 上電極
54 配線
55 層間絶縁膜
56 パッシベーション膜
57 バイパス配線
58 個別電極パッド
59 接続パッド
60 共通液室基板
66 共通液室基板の連通孔
70 フレーム部材
72 ダンパ膜
73 大気開放室
74 インク供給口
75 フレーム部材の連通孔
80 流路変換部品
81 インク供給口
90 キャップ
100 インクジェット記録装置
101 キャリッジ
102 インクカートリッジ
103 印字機構部
104 給紙カセット
127 回復装置
500 制御部
508 印刷制御部
509 ヘッドドライバ(駆動IC)
L 連通経路
L’ 大気連通経路
特開2013−141762号公報

Claims (9)

  1. 液滴を吐出する複数のノズルが設けられたノズル基板と、
    該複数のノズルに連通する個別液室が設けられた個別液室基板と、
    該複数の個別液室に連通する共通液室が設けられた共通液室基板と、
    該ノズルから液滴を吐出するよう該個別液室に圧力変動を発生させる圧力発生手段と、
    該共通液室の少なくとも一壁面を形成する可撓性を有する可撓性部材と、
    該可撓性部材を介して該共通液室と対向した領域に設けられた大気開放室と、を備えた液滴吐出ヘッドであって、
    前記ノズル基板は、前記大気開放室を外部空間に連通するための少なくとも一つの貫通孔を有し、
    前記大気開放室が設けられた部材と前記ノズル基板との間に、前記大気開放室と前記貫通孔とを連通し少なくとも1つの屈曲部を有する連通経路が形成されている基板を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記連通経路が形成されている基板はシリコン基板であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記連通経路が形成されている基板は前記個別液室基板であり、
    該個別液室基板の少なくとも前記ノズル基板側に、前記連通経路が溝状に形成され、
    該溝状の連通経路を該ノズル基板の液滴吐出側とは反対側の面で塞ぐように構成したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項1又は2の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記個別液室基板と前記共通液室基板との間に、該個別液室基板を保持する保持基板を備え、
    前記連通経路が形成されている基板は該保持基板であり、
    該保持基板の少なくとも該個別液室基板側に、前記連通経路が溝状に形成され、
    該溝状の連通経路を該個別液室基板の前記ノズル基板側とは反対側の面で塞ぐように構成したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項1又は2の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記個別液室基板と前記共通液室基板との間に、該個別液室基板を保持する保持基板を備え、
    前記連通経路が形成されている基板は前記個別液室基板及び該保持基板であり、該個別液室基板及び該保持基板それぞれに前記連通経路が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項5の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記個別液室基板における連通経路及び前記保持基板における連通経路はそれぞれ、基板積層方向における互いに異なる位置の仮想平面上に形成され、該連通経路の一端で互いに連通していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項1乃至6のいずれかの液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズル基板は、前記複数のノズルが配列されたノズル列が少なくとも2列形成され、前記貫通孔は互いに隣接するノズル列間の領域に形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 液滴を記録媒体に向けて吐出する液滴吐出手段を備えた画像形成装置であって、
    前記液滴吐出手段として、請求項1乃至7のいずれかの液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
  9. 請求項8の画像形成装置において、
    前記ノズル基板のノズルから前記個別液室内の液体を吸引するとともに該ノズル基板に形成された前記貫通孔から前記大気開放室内の気体を吸引する吸引手段を、更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113022140A (zh) * 2019-12-25 2021-06-25 佳能株式会社 液体排出头、记录装置和恢复方法

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