JP2015146288A - 質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】質量精度を向上させることができる質量分析装置を提供する。
【解決手段】質量分析装置100は、試料Sを測定領域ごとにイオン化して、当該測定領域ごとに質量分析を行う測定部10と、測定部10の測定結果に基づいて、測定領域ごとにマススペクトルを生成するスペクトル生成部220と、少なくとも2つの測定領域を1つのブロックとし、当該ブロックごとに測定領域のマススペクトルを積算し、積算されたマススペクトルに基づいて、前記ブロックごとに前記測定領域のマススペクトルの質量電荷比を補正する質量補正部222と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、質量分析装置に関する。
飛行時間質量分析計(Time−of−Flight mass spectrometer,TOFMS)は、一定量のエネルギーを与えてイオンを加速・飛行させ、検出器に到達するまでに要する時間からイオンの質量電荷比(m/z)を求める質量分析装置である。
TOFMSでは、イオンを一定の加速電圧Vで加速する。このとき、イオンの速度vは、エネルギー保存則から以下のように表される。
Figure 2015146288
Figure 2015146288
ただし、mはイオンの質量、zはイオンの価数、eは素電荷である。
そのため、一定の距離Lの後に置いた検出器に到達するまでの飛行時間Tは次式(3)で表される。
Figure 2015146288
式(3)からわかるように、飛行時間Tがイオンの質量mによって異なることを利用して、イオンをm/z値で分離することができる。
TOFMSの質量分解能は、総飛行時間をT、ピーク幅をΔTとすると、次式(4)で定義される。
Figure 2015146288
式(4)からわかるように、ピーク幅ΔTを一定にして、総飛行時間Tを延ばすことができれば、質量分解能を向上できる。
質量分離を行うイオン光学系で最もシンプルなものは、イオン源で加速したイオン群を
直線的に飛行させる直線型TOFMSである。また、イオン源と検出器の間に反射場を置くことにより、飛行距離を延長することができる反射型TOFMSも広く利用されている。
直線型、反射型の飛行時間質量分析計では、総飛行時間Tを長くすること、すなわち、総飛行距離を延ばすことは、装置の大型化に直結する。装置の大型化を避け、かつ高質量分解能を実現するために開発された装置が、多重周回型TOFMS(非特許文献1)である。多重周回型TOFMSでは、円筒電場にマツダプレートを組み合わせたトロイダル電場を4個用い、8の字型の周回軌道を多重周回させることにより、総飛行時間Tを延ばしている。また、多重周回型TOFMSでは、初期位置、初期角度、初期運動エネルギーによる検出面での空間的な広がりと時間的な広がりを1次の項まで収束させることに成功している。
飛行時間質量分析計では、測定した飛行時間Tを、m/zに変換する必要がある。上記(3)式は、もっとも簡単な飛行時間Tとm/zの関係を表しているが、実際には多項式で変換することが多い。次式(5)は、飛行時間Tとm/zの関係を2次式で表した場合である。
Figure 2015146288
a,b,cは定数であり、例えば、m/zが既知の化合物を3点以上測定し、決定することができる。
TOFMSのイオン源の1つに、プレートに塗布した試料あるいは固体状の試料そのものにレーザー照射して測定対象化合物をイオン化するレーザー脱離イオン化法(Laser Desorption/Ionization,LDI)がある。レーザー脱離イオン化法は、測定対象によってはイオン化効率が悪い場合がある。そのため、使用するレーザー光の波長に吸収帯を持ちイオン化を促進させるマトリックス(液体や結晶性の化合物、金属粉など)に試料を混合溶解させて固化し、これにレーザー照射して試料を気化あるいはイオン化させるマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization,MALDI)が広く使用されている。また、近年、イオン化の促進のために、プレート上にナノ構造を施した表面支援レーザー脱離イオン化法(Surface Assisted Laser
Desorption/Ionization,SALDI)も研究が進んでいる。
このような質量分析計を用いて、2次元の位置情報と各位置に含まれる化合物の質量と存在量の情報を得る手法は、マスイメージング(MSI)と呼ばれている(非特許文献2参照)。マスイメージングにおいて、イオン化法としては、例えば、上述したMALDIを中心としたレーザー脱離イオン化を使用するもの、高速粒子を利用した二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry,SIMS)を使用するものがある。マスイメージングでは、例えば、試料が配置されたステージをX,Y軸方向に二次元に走査し、マススペクトルを測定していく。データの情報としては、(X,Y,m/z,イオン強度)となる。データ取得中あるいは取得後に、特定のm/z(すなわち特定の化合物)についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報を得ることができる。
マスイメージングでは、測定時間が比較的長いことによる系統誤差、試料表面の傾き、試料表面(特にマトリックス結晶)の凹凸等により、質量軸がドリフトする場合がある。
質量軸のドリフトとは、飛行時間Tからm/z値を算出する際に誤差が生じることである。
質量軸を較正する方法として、例えば特許文献1には、質量電荷比が既知である化合物(内部標準物質)を目的試料とともに質量分析してその実測の質量電荷比を求め、実測値と理論値とを比較して較正情報を作成し、当該較正情報に基づいて質量較正を行う方法が開示されている。
特開2010−205460号公報
M.Toyoda,D.Okumura,M.Ishihara and I.Katakuse,J.Mass Spectrom,2003,38,1125−1142 R.M.Caprioli,T.B.Farmer,and J.Gile,Anal.Chem.,69,4751(1997)
ここで、マスイメージングでは、1つの測定領域(測定点)で発生するイオン量をそれほど多くできないため、マスイメージを構成する1つ1つのマススペクトルのSN比を高めることは難しい。そのため、マスイメージングを構成する各マススペクトルの質量軸のドリフトを補正しようとしても、補正ができない、あるいは補正後の質量精度を向上できない場合がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、質量精度を向上させることができる質量分析装置を提供することにある。
(1)本発明に係る質量分析装置は、
試料を測定領域ごとにイオン化して、当該測定領域ごとに質量分析を行う測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて、前記測定領域ごとにマススペクトルを生成するスペクトル生成部と、
少なくとも2つの前記測定領域を1つのブロックとし、当該ブロックごとに前記測定領域のマススペクトルを積算し、積算されたマススペクトルに基づいて、前記ブロックごとに前記測定領域のマススペクトルの質量電荷比を補正する質量補正部と、
を含む。
このような質量分析装置では、例えば、1つの測定領域のマススペクトルに基づいて質量電荷比の補正を行った場合と比べて、スペクトルのSN比を向上させることができる。そのため、このような質量分析装置では、マススペクトルの質量軸のドリフトを精度よく補正することができ、質量精度を向上させることができる。
(2)本発明に係る質量分析装置において、
前記測定部は、1つの前記ブロックに含まれる前記測定領域をすべて測定した後に、次の前記ブロックに含まれる前記測定領域を測定してもよい。
このような質量分析装置では、例えば時間の経過による系統誤差の影響を低減させることができ、質量精度を向上させることができる。
(3)本発明に係る質量分析装置において、
前記質量補正部は、前記ブロックごとに積算されたマススペクトルにおいて、質量電荷比の第1範囲にピークが存在している場合には、前記第1範囲に存在するピークを用いて質量電荷比を補正し、前記第1範囲にピークが存在しない場合には、前記第1範囲とは異なる質量電荷比の第2範囲に存在するピークを用いて質量電荷比を補正してもよい。
このような質量分析装置では、質量電荷比を補正できない補正ブロックを減らすことができる。
(4)本発明に係る質量分析装置において、
前記質量補正部は、飛行時間を質量電荷比に変換するためキャリブレーション条件を求めて質量電荷比を補正してもよい。
このような質量分析装置では、質量精度を向上させることができる。
(5)本発明に係る質量分析装置において、
異なる前記キャリブレーション条件で補正されたマススペクトルについて、各マススペクトルのデータ間隔を揃えるデータ処理部を含み、
前記データ処理部は、各マススペクトルのデータ間隔を、補正されたマススペクトルのうちのいずれか1つのマススペクトルのデータ間隔に揃えてもよい。
このような質量分析装置では、データ間隔を揃えたマススペクトルについても、測定したマススペクトルと同様に扱うことができる。すなわち、例えば、データ間隔を揃えたマススペクトルについても、質量電荷比の軸を飛行時間の軸に変換することができる。
(6)本発明に係る質量分析装置において、
前記測定部は、
前記測定領域にレーザー光を照射してイオン化するイオン源と、
前記イオン源で生成されたイオンを質量分離して検出する質量分析部と、
を含んでいてもよい。
(7)本発明に係る質量分析装置において、
前記質量分析部は、前記イオン源で生成されたイオンを飛行時間に基づいて分離してもよい。
(8)本発明に係る質量分析装置において、
前記質量補正部で補正された前記測定領域ごとのマススペクトルから、前記測定領域の位置情報と、各前記測定領域に含まれる化合物の質量の情報を取得するマスイメージング部を含んでいてもよい。
このような質量分析装置では、例えば、特定の化合物についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報を得ることができる。
第1実施形態に係る質量分析装置の構成を示す図。 試料の測定の対称となる領域を測定領域ごとに分割した状態を模式的に示す図。 第1実施形態に係る質量分析装置のイオン源を模式的に示す図。 第1実施形態に係る質量分析装置の質量分析部の構成の一例を示す図。 補正ブロックを説明するための図。 マススペクトルのデータ間隔を揃える処理の一例を説明するための図。 マススペクトルのデータ間隔を揃える処理の一例を説明するための図。 第3実施形態に係る質量分析装置の測定部の測定順を説明するための図。 第5実施形態に係る質量分析装置の測定部の構成の一例を示す図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 第1実施形態
まず、第1実施形態に係る質量分析装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る質量分析装置(MALDI−TOFMS)100の構成を示す図である。
質量分析装置100は、図1に示すように、測定部10と、処理部20と、操作部30と、表示部32と、記憶部34と、情報記憶媒体36と、を含む。
測定部10は、試料Sを測定領域ごとにイオン化して、当該測定領域ごとに質量分析を行う。図2は、試料Sの測定の対称となる領域を、測定領域Aごとに分割した状態を模式的に示す図である。測定部10は、図2に示すように、測定の対象となる領域を、複数の測定領域Aに分割して、質量分析を行う。測定領域Aの数は特に限定されず、任意に設定することができる。測定領域Aの位置は、図示の例では、二次元の直交座標系(測定領域A(X,Y))として表わされる。測定部10が測定領域Aごとに測定を行うことにより、後述するように1つの測定領域Aに対して1つのマススペクトルMが得られる。
測定部10は、例えば、測定領域A(0,0)から測定を開始し、測定領域A(1,0)、(2,0)、・・・、(n,0)の順で1行目の測定を行うと、次に測定領域A(0,1)、(1,1)、・・・、(n,1)の順で2行目の測定を行う。測定部10は、2行目以降についても同様の測定を行い、測定領域A(n,n)まで測定を行う。なお、n,nは、正の整数である。
測定部10は、図1に示すように、イオン源10aと、質量分析部10bと、を含んで構成されている。
イオン源10aは、所定の方法で試料をイオン化し、生成されたイオンを一定のパルス電圧で加速する。本実施形態では、イオン源10aは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法を用いて試料Sをイオン化する。
図3は、質量分析装置100のイオン源10aを模式的に示す図である。イオン源10aは、図3に示すように、試料ステージ12と、イオン生成部14と、加速部16と、を含んで構成されている。
試料ステージ12には、試料Sが配置されたサンプルプレート(ターゲットプレート)2が載置される。試料Sには、必要に応じてイオン化を促進するためのマトリックス(金属微粒子や有機化合物等)が噴霧される。試料ステージ12は、図示はしないがモーター等を含むステージ駆動部によりX−Y(試料ステージ12の面内方向)の2軸方向に移動
する。
イオン生成部14は、レーザー光Lを照射することで試料Sをイオン化する。イオン生成部14は、レーザー光Lを発生させるレーザー光源141と、レーザー光Lを集束するレンズ142と、レーザー光Lを反射させるミラー143と、試料Sからの像を反射させるミラー144と、ミラー144で反射された像を集束するレンズ145と、レンズ145を介して入射する像を取得するCCDカメラ146と、を含んで構成されている。
イオン生成部14では、レーザー光源141から射出されたレーザー光Lを、レンズ142、ミラー143により、試料Sの所定の測定領域Aに照射し、試料Sを気化あるいはイオン化する。レーザー光Lの照射位置は固定されているため、ステージ駆動部により試料ステージ12が移動すると、それに伴い試料S上におけるレーザー光Lの照射領域が移動する。ミラー144、レンズ145、CCDカメラ146によって、試料Sの測定領域Aの状態を観察することができる。
加速部16は、第1加速電極162と、第2加速電極164と、を含んで構成されている。加速電極162,164に所定の電圧(パルス電圧)を印加することにより、イオン生成部14で生成されたイオンIは加速し、質量分析部10bに導入される。質量分析装置100において、レーザー光Lの照射から所定時間遅れて加速電極162,164にパルス電圧を印加する遅延引き出し法を用いてもよい。遅延引き出し法を用いることにより、イオン生成時の初期エネルギーを時間収束させることができ、質量分解能を向上させることができる。
質量分析部10bは、イオン源10aで生成されたイオンIを質量分離して検出する。質量分析部10bは、イオン源10aで生成されたイオンIを飛行時間Tに基づいて分離する。すなわち、質量分析部10bでは、飛行時間型質量分析法により、質量分析を行う。
図4は、質量分析装置100の質量分析部10bの構成の一例を示す図である。
質量分析部10bは、図4に示すように、リフレクトロン17と、検出器18と、を含んで構成された反射型TOFMSである。
リフレクトロン17は、イオン源10aと検出器18との間のイオンIの経路に配置されている。リフレクトロン17には、イオン源10aで生成されたイオンIが入射する。リフレクトロン17は、静電場(反射場)を用いて、イオンIの飛行する向きを反転させることができる。イオン源10aと検出器18の間にリフレクトロン17を置くことにより、エネルギー収束性の向上と飛行距離の延長を可能にする。
質量分析部10bでは、上記式(3)により、飛行時間Tがm/z値によって異なることを利用して質量分離する。イオン源10aで生成されたイオンIは、リフレクトロン17を通って、検出器18に到達するまでの間に、m/z値に応じて質量分離される。
検出器18は、イオンIを検出し、入射したイオンIの量(強度)に応じた検出信号を出力する。この検出器18の検出信号は、処理部20に出力される。
処理部20は、記憶部34に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理を行う。処理部20は、記憶部34に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、スペクトル生成部220、質量補正部222、データ処理部224、マスイメージング部226として機能する。処理部20の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP
等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。なお、処理部20の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
スペクトル生成部220は、測定部10の測定結果に基づいて、測定領域AごとにマススペクトルMを生成する。以下、スペクトル生成部220の処理について詳細に説明する。
まず、スペクトル生成部220は、検出器18の検出信号に基づいて、飛行時間Tを計測する処理を行う。具体的には、スペクトル生成部220は、加速電極162,164に所定の電圧が印加されてからイオンIが検出器18に到達するまでの時間差を検出することにより飛行時間Tを計測する。スペクトル生成部220は、所定の時間間隔(時間等間隔)で検出器18の検出信号、すなわち、イオン強度をサンプリングする。そして、スペクトル生成部220は、検出器18の検出信号を時間に等間隔な形で記録し、指定回数分積算して、飛行時間スペクトルとして記録する。
飛行時間スペクトルは、横軸に飛行時間T、縦軸に検出強度をとったスペクトルである。各測定領域Aの飛行時間スペクトルは、測定領域Aの位置情報(X、Y)とともに、記憶部34に記録される。
次に、スペクトル生成部220は、各測定領域Aの飛行時間スペクトルから各測定領域AのマススペクトルMを生成する。スペクトル生成部220は、飛行時間スペクトルの飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換して、マススペクトルMを生成する。飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換するためのキャリブレーション条件は、例えば、下記式(6)で表わされる。
Figure 2015146288
式(6)における3つの係数a,b,cは、キャリブレーション係数(初期値)であり、予め記憶部34に記憶されている。キャリブレーション係数a,b,cは、例えば、m/zが既知の化合物を3点以上測定することで決定することができる。
上記式(6)を用いて飛行時間スペクトルの飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換することにより、飛行時間スペクトルからマススペクトルを生成することができる。各測定領域AのマススペクトルMは、測定領域Aの位置情報(X、Y)とともに、記憶部34に記録される。
なお、ここでは、上記式(6)で表されるキャリブレーション条件を用いて、飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換する場合について説明したが、キャリブレーション条件は式(6)に限定されない。例えば、3次以上の高次の関数をキャリブレーション条件としてもよい。
質量補正部222は、少なくとも2つの測定領域Aを1つのブロック(「補正ブロック」ともいう)とし、当該ブロックごとに測定領域AのマススペクトルMを積算し、積算されたマススペクトルに基づいて、当該ブロックごとに測定領域AのマススペクトルMの質量電荷比m/zを補正する。
図5は、補正ブロックBを説明するための図である。図5に示す例では、1つの補正ブロックBは、3行3列に並んだ9つの測定領域Aからなる。なお、1つの補正ブロックB
を構成する測定領域Aの数は2つ以上であれば特に限定されず、所望の行数および所望の列数をとることができる。また、各補正ブロックBを構成する測定領域Aの数は異なっていてもよい。また、1つの補正ブロックBを構成する測定領域Aは、互いに近接していてもよいし、離間していてもよい。測定部10で測定された全測定領域Aが複数の補正ブロックB(1)、B(2)、B(3)・・・に分けられる。
質量補正部222は、補正ブロックBごとに、マススペクトルMの質量電荷比m/zの補正を行う。具体的には、質量補正部222は、補正ブロックBごとにキャリブレーション条件を求めて、測定領域AのマススペクトルMの質量電荷比m/zを補正する。以下、質量補正部222の処理について詳細に説明する。
まず、質量補正部222は、補正ブロックBごとに測定領域AのマススペクトルMを積算する。すなわち、質量補正部222は、1つの補正ブロックBに含まれる複数(図示の例では9つ)の測定領域AのマススペクトルMを積算する。これにより、補正ブロックマススペクトルMが得られる。補正ブロックマススペクトルMは、1つの補正ブロックBに含まれる複数の測定領域AのマススペクトルMを積算したものである。
図5の例では、各補正ブロックB(1)、B(2)、・・・ごとに測定領域AのマススペクトルMが積算されて、各補正ブロックB(1)、B(2)、・・・ごとに補正ブロックマススペクトルMが得られる。
次に、質量補正部222は、補正ブロックマススペクトルMに基づいて、各補正ブロックB(1)、B(2)、・・・ごとにキャリブレーション条件を求める。
質量補正部222は、まず、補正ブロックB(1)のキャリブレーション条件を求める。
補正ブロックB(1)の補正ブロックマススペクトルMにおいて、所定のピークのm/z値をリファレンス値(理論値)に合わせる。所定のピークとしては、各補正ブロックマススペクトルMに共通に観測されるピーク(以下「共通ピーク」ともいう)を用いる。
補正ブロックマススペクトルMの共通ピークの質量電荷比を(m/z)oとし、飛行時間をToとすると、上記式(6)は次式(7)で表わされる。
Figure 2015146288
ただし、|(m/z)o−(m/z)r|<Δm/zである。ここで、(m/z)rは、共通ピークのリファレンス値(理論値)であり、Δm/zは共通ピークとみなす閾値(質量電荷比の範囲)である。
次に、上記式(7)の「b」を補正して、(m/z)oと(m/z)rを一致させる。「b」の補正後の値を「b´」とすると、上記(6)式は、次式(8)で表わされる。
Figure 2015146288
(7)式および(8)式から「b´」は、次式(9)で表される。
Figure 2015146288
したがって、飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換するためのキャリブレーション条件は、次式(10)で表される。
Figure 2015146288
但し、
Figure 2015146288
上記式(10)のキャリブレーション条件を用いて、補正ブロックB(1)に含まれる測定領域A(0,0)、(1,0)、(2,0)、(0,1)、(1,1)、(2,1)、(0,2)、(1,2)、(2,2)の飛行時間スペクトルの飛行時間Tを質量電荷比m/zに変換する。これにより、補正ブロックB(1)に含まれる各測定領域Aについて、質量電荷比m/zの軸が補正されたマススペクトルMが得られる。
質量補正部222が、上記処理を、他の補正ブロックB(2)、B(3)、・・・に対しても同様に行うことで、全測定領域Aについて、質量電荷比m/zの軸が補正されたマススペクトルMが得られる。補正された各測定領域AのマススペクトルMは、測定領域Aの位置情報(X、Y)とともに、記憶部34に記録される。
ここで、質量補正部222は、補正ブロックB(1)、B(2)、・・・ごとにキャリブレーション条件を求めるため、各補正ブロックB(1)、B(2)、・・・ごとに異なるキャリブレーション条件が用いられる。ここで、同じキャリブレーション条件の場合、同じ飛行時間Tのm/z値は同じだが、キャリブレーション条件が異なる場合は、同じ飛行時間であってもm/z値が異なることとなる。そのため、例えば、図5に示すように、複数の測定領域Aにまたがる領域Cを選択して、領域Cに含まれる測定領域AのマススペクトルMを積算して領域Cのマススペクトルを得る場合、領域Cに含まれる測定領域AのマススペクトルMのデータ間隔を揃える必要がある。
したがって、質量分析装置100では、データ処理部224は、異なるキャリブレーション条件で補正されたマススペクトルMについて、補正された各マススペクトルMのデータ間隔を揃える処理を行う。
図6は、補正されたマススペクトルMのデータ間隔を揃える処理の一例を説明するための図である。マススペクトルM1およびマススペクトルM2は、互いに異なるキャリブレーション条件で補正されているものとする。そのため、マススペクトルM1では、m/z=a1,a2,a3,・・・に対応する強度のデータを有している。また、マススペクトルM2では、m/z=b1,b2,b3,・・・に対応する強度のデータを有している。
ここで、m/z=a1,a2,a3,・・、およびm/z=a1,a2,a3,・・は、所定の時間間隔(時間等間隔)で検出器18の検出信号をサンプリングしたときのサンプリング時間(飛行時間T)を、上記式(10)を用いてm/z値に変換したものである。マススペクトルM1とマススペクトルM2とでは、キャリブレーション条件が異なるため、m/z=a1,a2,a3,・・の間隔とm/z=b1,b2,b3,・・の間隔とは、異なっている。このように、マススペクトルM1とマススペクトルM2とでは、データ間隔が異なっているため、単純にマススペクトルM1とマススペクトルM2とを積算することはできない。
そのため、マススペクトルM1のデータ間隔と、マススペクトルM2のデータ間隔とが等しくなるように、マススペクトルM1,M2のデータを補完して、新たなマススペクトルM1a,M2aを生成する。具体的には、マススペクトルM1から、m/z=c1,c2,c3,・・・のときの強度を補完し、データ間隔を任意のデータ間隔m/z=c1,c2,c3,・・・としたマススペクトルM1aを求める。同様に、マススペクトルM2から、m/z=c1,c2,c3,・・・のときの強度を補完し、データ間隔を任意のデータ間隔m/z=c1,c2,c3,・・・としたマススペクトルM2aを求める。これにより、マススペクトルM1,M2のデータ間隔を揃えることができる。したがって、例えば、マススペクトルM1とマススペクトルM2とを積算することができる。
データ処理部224は、上述した処理を各測定領域Aの補正されたマススペクトルMに対して行い、補正された各マススペクトルMのデータ間隔を揃える。データ間隔が揃えられたマススペクトルMの情報は、測定領域Aの位置情報(X、Y)とともに、記憶部34に記録される。
マスイメージング部226は、質量補正部222で補正されたマススペクトルMまたはデータ処理部224でデータ間隔が揃えられたマススペクトルMから、イメージング情報を取得する。ここで、イメージング情報とは、測定領域Aの位置情報と、各測定領域Aに含まれる化合物の質量の情報である。すなわち、イメージング情報は、例えば、(X,Y,m/z,イオン強度)という形式で記憶部34に記録される。処理部20は、例えば、イメージング情報に基づいて、特定のm/z(すなわち特定の化合物)についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報等を、表示部32に表示させる処理を行う。
操作部30は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部20に送る処理を行う。操作部30は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
表示部32は、処理部20によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部32は、例えば、処理部20で生成された特定のm/z(すなわち特定の化合物)についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報を表示する。
記憶部34は、処理部20のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。記憶部34は、処理部20が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部34は、処理部20の作業領域として用いられ、処理部20が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
情報記憶媒体36(コンピューターにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデー
タなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部20は、情報記憶媒体36に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体36には、処理部20の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。
次に、第1実施形態に係る質量分析装置100の動作について説明する。
ユーザーは、試料Sを、サンプルプレート2(図3参照)に配置し、必要に応じてイオン化を促進するためのマトリックスを試料Sに噴霧する。そして、サンプルプレート2を試料ステージ12上に載置する。
次に、ユーザーは、サンプルプレート2の中で試料Sの測定の対象となる領域、測定領域Aの数(測定対象となる領域の分割数)、各測定領域Aでのレーザー照射回数(例えば数十回から数百回)等の測定条件を指定する。測定条件の指定は、操作部30を介して行うことができる。測定条件が指定されると質量分析装置100は、測定を開始する。
ステージ駆動部(図示せず)は、指定された測定条件に従って試料ステージ12を移動させることでレーザー照射位置(測定領域A)を変更させ、イオン生成部14は、測定領域Aに指定された回数だけレーザー光Lを照射する。レーザー光Lの照射ごとに、イオンIは、リフレクトロン17を通って、検出器18に到達するまでの間に質量電荷比(m/z値)に応じて質量分離され、検出器18で検出される。
スペクトル生成部220は、検出器18の検出信号を飛行時間Tに等間隔な形で記録し、指定回数分積算して飛行時間スペクトルとして記録する。飛行時間スペクトルは、測定領域Aの位置情報(X,Y)とともに記録される。また、スペクトル生成部220は、飛行時間スペクトルの飛行時間軸を、初期(補正前)のキャリブレーション条件(上記式(6))を用いてm/z軸に変換して、マススペクトルMを得る。マススペクトルMは、測定領域Aの位置情報(X,Y)とともに記録される。質量分析装置100は、上述の処理を、すべての測定領域Aに対して行う。
次に、質量補正部222が質量軸のドリフトの補正を行う。具体的には、質量補正部222は、まず、各補正ブロックB(図5参照)に含まれるマススペクトルM(または飛行時間スペクトル)を積算して、補正ブロックマススペクトルMを得る。次に、各補正ブロックマススペクトルMで共通に観測されるピーク(共通ピーク)のm/z値を、リファレンス値に合わせて、キャリブレーション係数を補正する。これにより、新たなキャリブレーション条件(上記式(10))が得られる。次に、新たなキャリブレーション条件(上記式(10))を用いて、補正ブロックBに含まれる測定領域Aの飛行時間スペクトルの飛行時間軸をm/z軸に変換して、補正されたマススペクトルMを得る。補正されたマススペクトルMは、測定領域Aの位置情報(X,Y)とともに記録される。質量補正部222は、上述の処理を、すべての補正ブロックBに対して行う。
次に、データ処理部224は、図6に示すように、各補正ブロックBの飛行時間で等間隔のマススペクトルMから、データ補完を行い、m/z値を等間隔にしたマススペクトルMとする処理を行う。
次に、マスイメージング部226は、質量補正部222で補正されたマススペクトルM、またはデータ処理部224でm/z値を等間隔にしたマススペクトルMから、測定領域Aごとにイメージング情報(X,Y,m/z,イオン強度)を取得する。イメージング情報は、例えば、記憶部34に記録される。処理部20は、例えば、イメージング情報
に基づいて、特定のm/z(すなわち特定の化合物)についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報を、表示部32に表示させる制御を行う。
質量分析装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
質量分析装置100では、質量補正部222は、少なくとも2つの測定領域Aを1つのブロックBとし、当該ブロックBごとに測定領域AのマススペクトルMを積算し、積算されたマススペクトルMに基づいて、ブロックBごとに測定領域AのマススペクトルMの質量電荷比を補正する。そのため、質量分析装置100では、例えば、1つの測定領域AのマススペクトルMに基づいて質量電荷比の補正を行った場合と比べて、スペクトルのSN比を向上させることができる。これにより、マススペクトルMの質量軸のドリフト(飛行時間から質量電荷比を算出する際の誤差)を精度よく補正することができ、質量精度を向上させることができる。
質量分析装置100では、マスイメージング部226は、質量補正部222で補正された測定領域AごとのマススペクトルMから、測定領域Aの位置情報と、各測定領域Aに含まれる化合物の質量の情報を取得する。そのため、質量分析装置100では、特定の化合物についての強度分布の情報や、特定の領域に局在する化合物の情報を得ることができる。
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る質量分析装置について説明する。第2実施形態に係る質量分析装置の構成は、上述した図1に示す第1実施形態に係る質量分析装置100と同様であり、以下では、第1実施形態に係る質量分析装置100との相違点について説明する。
質量分析装置100の例では、データ処理部224は、図6に示すように、異なるキャリブレーション条件で補正されたマススペクトルMについて、各マススペクトルMのデータ間隔を任意のデータ間隔m/z=c1,c2,c3,・・・として、データ間隔を揃えていた。
これに対して、第2実施形態に係る質量分析装置では、データ処理部224は、異なるキャリブレーション条件で補正されたマススペクトルMについて、各マススペクトルMのデータ間隔を、補正されたマススペクトルMのうちのいずれか1つのマススペクトルMのデータ間隔に揃える。
図7は、マススペクトルMのデータ間隔を揃える処理の一例を説明するための図である。マススペクトルM1およびマススペクトルM2は、互いに異なるキャリブレーション条件で補正されている。第2実施形態では、図7に示すように、マススペクトルM2のデータ間隔を、マススペクトルM1のデータ間隔に揃うように、マススペクトルM2のデータを補完して、新たなマススペクトルM2aを得る。具体的には、マススペクトルM2から、m/z=a1,a2,a3,・・・のときの強度を補完し、データ間隔をm/z=a1,a2,a3,・・・としたマススペクトルM2aを得る。これにより、マススペクトルM2の質量電荷比の軸を、マススペクトルM1の質量電荷比の軸に揃えることができる。
データ処理部224は、上述した処理を各測定領域AのマススペクトルMに対して行い、各マススペクトルMのデータ間隔を揃える。基準となるマススペクトルM(マススペクトルM1)は、全測定領域Aから任意に選択することができる。例えば、図5に示す例では、最初に測定された測定領域A(0,0)のマススペクトルMのデータ間隔を基準とする。
第2実施形態に係る質量分析装置では、データ処理部224は、各マススペクトルMのデータ間隔を、補正されたマススペクトルMのうちのいずれか1つのマススペクトルMのデータ間隔に揃える。これにより、データを補完してデータ間隔を揃えたマススペクトルMであっても、測定したマススペクトルMと同様に扱うことができる。すなわち、例えば、データを補完してデータ間隔を揃えたマススペクトルMであっても、質量電荷比の軸を飛行時間Tの軸に変換することができる。これにより、例えば、データを補完してデータ間隔を揃えたマススペクトルMを飛行時間スペクトルに変換することができる。
また、第2実施形態に係る質量分析装置では、上述した第1実施形態に係る質量分析装置100と同様の作用効果を奏することができる。
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る質量分析装置について説明する。第3実施形態に係る質量分析装置の構成は、上述した図1に示す第1実施形態に係る質量分析装置100と同様であり、以下では、第1実施形態に係る質量分析装置100との相違点について説明する。
質量分析装置100の例では、測定部10は、図2に示す測定領域A(0,0)から測定を開始し、測定領域A(1,0)、(2,0)、・・・、(n,0)の順で1行目の測定を行い、次に2行目の測定、次に3行目の測定、・・・を行って、測定領域A(n,n)まで測定を行った。
これに対して、第3実施形態に係る質量分析装置では、測定部10は、1つの補正ブロックBに含まれる測定領域Aをすべて測定した後に、次の補正ブロックBに含まれる測定領域Aを測定する。
図8は、第3実施形態に係る質量分析装置の測定部10の測定順を説明するための図である。測定部10は、図8に示すように、まず、補正ブロックB(1)に含まれる測定領域Aをすべて測定し、次に補正ブロックB(2)に含まれる測定領域Aのすべてを測定する。その後、補正ブロックB(3)、補正ブロックB(4)、・・・についても同様に測定を行い、全測定領域Aを測定する。
1つの補正ブロックBに含まれる測定領域Aを測定する順番は特に限定されず、例えば、図示の例では、補正ブロックB(1)において、測定領域A(0,0)、(1,0)、(2,0)、(0,1)、(1,1)、(2,1)、(0,2)、(1,2)、(2,2)の順に測定を行っている。
第3実施形態に係る質量分析装置では、1つの補正ブロックBに含まれる測定領域Aをすべて測定した後に、次の補正ブロックBに含まれる測定領域Aを測定する。これにより、時間の経過による系統誤差の影響を低減させることができ、質量精度を向上させることができる。
例えば、仮に測定部10が、図8において、測定領域A(0,0)から測定を開始し、測定領域A(1,0)、(2,0)、・・・、(n,0)の順で1行目の測定を行い、次に2行目の測定領域A(0,1)、(1,1)、(2,1)・・・、(n,1)の測定を行い、次に、3行目の測定領域A(0,2)、(1,2)、(3,1)・・・、(n,2)の測定を行うものとする。この場合、補正ブロックB(1)の測定領域A(0,0)が測定されてから、補正ブロックB(1)の測定領域A(2,2)が測定されるまでの時間が長い。すなわち、補正ブロックB(1)に含まれる測定領域Aがすべて測定され
るまでの時間が長い。これにより、時間の経過による系統誤差の影響が大きくなる。
これに対して、第3実施形態に係る質量分析装置では、1つの補正ブロックBに含まれる測定領域Aをすべて測定した後に、次の補正ブロックBに含まれる測定領域Aを測定するため、補正ブロックB(1)の測定領域A(0,0)が測定されてから、補正ブロックB(1)の測定領域A(2,2)が測定されるまでの時間を短くすることができる。したがって、第3実施形態に係る質量分析装置では、時間の経過による系統誤差の影響を低減させることができる。
また、第3実施形態に係る質量分析装置では、上述した第1実施形態に係る質量分析装置100と同様の作用効果を奏することができる。
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る質量分析装置について説明する。第4実施形態に係る質量分析装置の構成は、上述した図1に示す第1実施形態に係る質量分析装置100と同様であり、以下では、第1実施形態に係る質量分析装置100との相違点について説明する。
第4実施形態に係る質量分析装置の質量補正部222では、補正ブロックBごとに積算されたマススペクトルM(補正ブロックマススペクトルM)において、質量電荷比の第1範囲に共通ピークが存在している場合には、当該第1範囲に存在する共通ピーク(第1ピーク)を用いて、質量電荷比を補正し、前記第1範囲に共通ピークが存在しない場合には、前記第1範囲とは異なる質量電荷比の第2範囲に存在する共通ピーク(第2ピーク)を用いて、質量電荷比を補正する。
このように、質量補正部222では、最初に指定した共通ピークが見つからなかった補正ブロックBについて、他のピークを指定して補正を行う。質量電荷比の第1範囲は、当該第1範囲に存在するピークは第1ピークとみなせる範囲である。また、質量電荷比の第2範囲は、当該第2範囲に存在するピークは第2ピークとみなせる範囲である。第1範囲および第2範囲は任意に設定することができる。
第4実施形態に係る質量分析装置では、補正ブロックマススペクトルMにおいて、質量電荷比の第1範囲に共通ピークが存在している場合には、当該第1範囲に存在する共通ピークを用いて、質量電荷比を補正し、前記第1範囲に共通ピークが存在しない場合には、前記第1範囲とは異なる質量電荷比の第2範囲に存在する共通ピークを用いて、質量電荷比を補正する。これにより、共通ピークが存在しないために補正できない補正ブロックBを減らすことができる。
なお、補正できない補正ブロックBが存在する場合には、例えば、処理部20は、図5に示す補正ブロックBを示す図を表示部32に表示させ、補正できなかった補正ブロックBについては、補正できた補正ブロックBとは異なる色で表示させる処理を行う。
また、第4実施形態に係る質量分析装置では、上述した第1実施形態に係る質量分析装置100と同様の作用効果を奏することができる。
5. 第5実施形態
次に、第5実施形態に係る質量分析装置について説明する。第5実施形態に係る質量分析装置の構成は、上述した図1に示す第1実施形態に係る質量分析装置100と同様であり、以下では、第1実施形態に係る質量分析装置100との相違点について説明する。
質量分析装置100の例では、質量分析部10bは、図4に示すように、リフレクトロ
ン17と、検出器18と、を含んで構成された反射型TOFMSであった。
これに対して、第5実施形態に係る質量分析装置では、質量分析部10bは、多重周回型TOFMSである。
図9は、第5実施形態に係る質量分析装置の測定部10の構成の一例を示す図である。質量分析部10bは、図9に示すように、セクター電極50a,50b,50c,50dと、検出器18と、を含んで構成されている。
質量分析部10bでは、複数のセクター電極50a,50b,50c,50dがつくる電場によって、8の字形状の周回軌道52が形成される。なお、図示はしないが、周回軌道52は、円形状、楕円形状等であってもよい。また、周回軌道52は、直線状や曲線状の軌道をイオンが往復する往復軌道であってもよい。
質量分析部10bは、図9に示すように、イオン源10aから供給されたイオンIを、周回軌道52に沿って多重周回させることで質量電荷比m/zに応じて分離して、検出器18で検出する。これにより、飛行時間Tを長くすることができ、高い質量精度を得ることができる。
第5実施形態に係る質量分析装置では、質量分析部10bが多重周回型TOFMSであるため、高い質量精度を得ることができる。さらに、第5実施形態に係る質量分析装置では、上述した第1実施形態に係る質量分析装置100と同様に、マススペクトルMの質量軸のドリフトを精度よく補正することができ、質量精度を向上させることができる。したがって、第5実施形態に係る質量分析装置では、より高い質量精度を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した第1〜第5実施形態に係る質量分析装置では、イオン源10aがマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)により試料Sをイオン化する例について説明したが、本発明に係る質量分析装置のイオン源におけるイオン化法はこれに限定されない。例えば、本発明に係る質量分析装置のイオン源は、二次イオン質量分析法(SIMS)により試料をイオン化してもよい。二次イオン質量分析法は、試料Sの表面にイオンビーム(一次イオン)を照射し、そのイオンと固体表面の分子・原子レベルでの衝突によってイオン(二次イオン)を発生させる手法である。また、例えば、本発明に係る質量分析装置のイオン源は、サンプルプレート上にナノ構造を施した表面支援レーザー脱離イオン化法(SALDI)により試料をイオン化してもよい。
また、例えば、上述した第1〜第5実施形態に係る質量分析装置では、質量分析部10bが飛行時間型である例について説明したが、本発明に係る質量分析装置の質量分析部は飛行時間型に限定されない。例えば、本発明に係る質量分析装置の質量分析部は、四重極型、イオントラップ型、磁場偏向型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型等であってもよい。
また、例えば、上述した第1〜第4実施形態に係る質量分析装置では、質量分析部10bが、反射型TOFMSである例について説明し、第5実施形態に係る質量分析装置では、質量分析部10bが、多重周回型TOFMSである例について説明した。本発明に係る質量分析装置の質量分析部は、これらに限定されず、例えば、イオン源で発生させてイオン群を直線的に飛行させる直線型TOFMSであってもよい。
上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…サンプルプレート、10…測定部、10a…イオン源、10b…質量分析部、12…試料ステージ、14…イオン生成部、16…加速部、17…リフレクトロン、18…検出器、20…処理部、30…操作部、32…表示部、34…記憶部、36…情報記憶媒体、50a,50b,50c,50d…セクター電極、52…周回軌道、100…質量分析装置、141…レーザー光源、142…レンズ、143…ミラー、144…ミラー、145…レンズ、146…CCDカメラ、162…第1加速電極、164…第2加速電極、220…スペクトル生成部、222…質量補正部、224…データ処理部、226…マスイメージング部

Claims (8)

  1. 試料を測定領域ごとにイオン化して、当該測定領域ごとに質量分析を行う測定部と、
    前記測定部の測定結果に基づいて、前記測定領域ごとにマススペクトルを生成するスペクトル生成部と、
    少なくとも2つの前記測定領域を1つのブロックとし、当該ブロックごとに前記測定領域のマススペクトルを積算し、積算されたマススペクトルに基づいて、前記ブロックごとに前記測定領域のマススペクトルの質量電荷比を補正する質量補正部と、
    を含む、質量分析装置。
  2. 請求項1において、
    前記測定部は、1つの前記ブロックに含まれる前記測定領域をすべて測定した後に、次の前記ブロックに含まれる前記測定領域を測定する、質量分析装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記質量補正部は、前記ブロックごとに積算されたマススペクトルにおいて、質量電荷比の第1範囲にピークが存在している場合には、前記第1範囲に存在するピークを用いて質量電荷比を補正し、前記第1範囲にピークが存在しない場合には、前記第1範囲とは異なる質量電荷比の第2範囲に存在するピークを用いて質量電荷比を補正する、質量分析装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記質量補正部は、飛行時間を質量電荷比に変換するためキャリブレーション条件を求めて質量電荷比を補正する、質量分析装置。
  5. 請求項4において、
    異なる前記キャリブレーション条件で補正されたマススペクトルについて、各マススペクトルのデータ間隔を揃えるデータ処理部を含み、
    前記データ処理部は、各マススペクトルのデータ間隔を、補正されたマススペクトルのうちのいずれか1つのマススペクトルのデータ間隔に揃える、質量分析装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記測定部は、
    前記測定領域にレーザー光を照射してイオン化するイオン源と、
    前記イオン源で生成されたイオンを質量分離して検出する質量分析部と、
    を含む、質量分析装置。
  7. 請求項6において、
    前記質量分析部は、前記イオン源で生成されたイオンを飛行時間に基づいて分離する、質量分析装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、
    前記質量補正部で補正された前記測定領域ごとのマススペクトルから、前記測定領域の位置情報と、各前記測定領域に含まれる化合物の質量の情報を取得するマスイメージング部を含む、質量分析装置。
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