以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2は同右側面図、図3は同平面図である。図1〜図3を参照して、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。図1〜図3に示す如く、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載される。
図1〜図3に示す如く、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。また、運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー13などを配置している。加えて、運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン14が配置されている。
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
図1、図2に示す如く、刈取装置3には、圃場に植立した4条分の未刈り穀稈(穀稈)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置51と、刈刃装置51によって刈取られた4条分の刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置52を備えると共に、エンジン14の回転駆動力を伝達させるミッションケース15を備え、エンジン14の回転駆動力がミッションケース15にて変速された後、左右の走行クローラ2に伝達されるものであり、ディーゼルエンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取るように構成している。
次に、図1〜図3に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴55と、扱胴55の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤56及び唐箕ファン57などを備えている。刈取装置3から穀稈搬送装置52によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴55にて脱穀される。
図1に示す如く、揺動選別盤56の下方側には、揺動選別盤56にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ58と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ59とが設けられている。扱胴55から下方の揺動選別盤56上面側に落下した脱穀物が、揺動選別(比重選別)される。揺動選別盤56から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン57からの選別風によって除去され、一番コンベヤ58に落下する。一番コンベヤ58から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ60を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。
なお、図1に示す如く、揺動選別盤56から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ59に落下させ、還元コンベヤなどを介して、二番物を揺動選別盤56の上面側に戻して再選別する。また、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁カッタなどが配置され、フィードチェン6の後端側に搬出された排藁(穀粒が脱粒された稈)が、短く切断されて機外に排出されるように構成している。
また、図2に示す如く、ディーゼルエンジン14の排気マニホールドに、排気ガス中の粒子状物質を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)としての排気ガス浄化ケース71を介してテールパイプ72を接続させている。排気ガス浄化ケース71に酸化触媒及びスートフィルタを内設させ、ディーゼルエンジン14の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や、炭化水素(HC)や、粒子状物質(PM)などを低減するように構成している。
次に、図4〜図10を参照しながら、走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図4〜図10に示す如く、走行機体1の下面側に設けるローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。ローリング支点フレーム26は、左右方向に長尺な丸パイプ状の前部支点フレーム26aと、左右方向に長尺な丸パイプ状の後部支点フレーム26bを有する。前部支点フレーム26aに、左右一対の前側軸受体27を配置している。後部支点フレーム26bに左右一対の後側軸受体28を配置している。左右の前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29をそれぞれ貫通させ、左右の後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30をそれぞれ貫通させている。なお、走行機体1の前端側に車軸ケース1aを介して駆動スプロケット22(ミッションケース15)を配置する。走行機体1の前部にミッションケース15の背面側を締結すると共に、前部支点フレーム26aに車軸ケース1aを締結する。
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側(機内側端部)には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側(機外側端部)には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。
左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側(機内側端部)には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を回動可能に被嵌させている。また、左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1の上面と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の中間部に、軸体37を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させるローリングアクチュエータとしての左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。走行機体1に左右一対のシリンダ支持ブラケット39を設ける。左右一対のシリンダ支持ブラケット39に基部軸体48を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の上側後部ローリングアーム32の上端側に、先端側軸体42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。
左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側(機外側端部)には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の後部ローリング支点軸30と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体43を介して従動リンク体44の一端側を連結する。従動リンク体44の他端側に連結軸体45を介してトラックフレーム21の後部を連結する。トラックフレーム21後部の連結軸受部46に片持ち状の連結軸体45の一端側を回動可能に軸支している。
走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させるピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ77を備える。左右一対の後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対のピッチングアーム76の基端側が固着されている。左右一対のピッチングアーム76と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、左右一対の上側後部ローリングアーム32の上端側に連結軸体80を介して左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ77をそれぞれ連結している。前後傾斜用油圧シリンダ77のピストンロッド78に、連結軸体81を介してピッチングアーム76の先端側を連結している。
左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ77は、側面視又は平面視で、前後に一列状に配置されている。左右一対の車高調節油圧シリンダ38の作動によって走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更する左右一対のローリングリンク機構は、上側前部ローリングアーム(左右傾動アーム)31、上側後部ローリングアーム(左右傾動アーム)32、下側前部ローリングアーム(前側アーム)33、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、前後連結ローリングフレーム36、従動リンク体(ピッチングリンク)44を有する。車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、上側前部ローリングアーム31と下側前部ローリングアーム33が前部ローリング支点軸29回りに一体的に回動すると同時に、上側後部ローリングアーム32、下側後部ローリングアーム34、ピッチングアーム76、前後傾斜用油圧シリンダ77が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動する。
即ち、車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を維持しながら、走行機体1とトラックフレーム21の相対間隔を変化させる。左右の走行クローラ2の沈下量が変化して走行機体1が左右に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を左右に傾動させたい場合、車高調節油圧シリンダ38の自動制御又は手動制御によって走行機体1の左右方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ77の作動によって走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更する左右一対のピッチングリンク機構は、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、従動リンク体(ピッチングリンク)44、ピッチングアーム(前後傾動アーム)76を有する。前後傾斜用油圧シリンダ77が作動したときに、下側後部ローリングアーム34及びピッチングアーム76が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動して、従動リンク体44を介して前部ローリング支点軸29回りにトラックフレーム21を回動させる。
即ち、前後傾斜用油圧シリンダ77が作動したときに、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を維持しながら、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させる。左右の走行クローラ2を移動させる走行路面が登り傾斜又は下り傾斜の斜面の場合、又は左右の走行クローラ2の前部(又は後部)の沈下量が変化して走行機体1が前後に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を前後に傾動させたい場合、前後傾斜用油圧シリンダ77の自動制御又は手動制御によって走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の前後方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、後部支点フレーム26b(走行機体1)に軸ブラケット87を介して横向きに設けたローラ軸88に回転自在に軸支している。即ち、駆動スプロケット22と中間ローラ25間の走行クローラ2の非接地側は、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ77によって走行機体1の左右方向又は前後方向の傾斜角度が変更されたとしても、走行機体1の下面との間隔が常に略一定に維持される。
上記の構成により、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
また、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21のいずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平(左右傾斜角0度)に支持されるように構成している。
車高が高いピストンロッド41進出状態(又は車高が低いピストンロッド41退入状態)で、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ77を作動させて、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ77のピストンロッド78をそれぞれ退入させた場合、左右一対のピッチングアーム76がそれぞれ作動して、左右一対の従動リンク体44が下方にそれぞれ押下げられ、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ下動する。
その結果、下側前部ローリングアーム33に対して下側後部ローリングアーム34の平行姿勢が変更され、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側が押下げられ、走行機体1の後端側の車高が高くなり、走行機体1が前下がりに傾斜するように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢(前下がり傾斜姿勢)に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
なお、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ77のピストンロッド78をそれぞれ退入させることによって、前記とは逆に、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ上動し、走行機体1の後端側の車高が低くなり、走行機体1が後下がりに傾斜することは云うまでもない。
加えて、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ77を、平面視で一列状に配置しているから、前後傾斜用油圧シリンダ77の設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前後傾斜用油圧シリンダ77に作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、左右走行クローラ2間の走行機体1の下面側空間を広く形成でき、走行機体1の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、走行機体1の上面側構造又は前後傾斜用油圧シリンダ77の支持位置が互いに制限されるのを防止でき、走行機体1等を簡単に構成できる。
また、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ77を、側面視で一列状に配置したものであるから、前後傾斜用油圧シリンダ77の設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前後傾斜用油圧シリンダ77に作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、左右走行クローラ2間の走行機体1の下面側空間を広く形成でき、走行機体1の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、走行機体1の上面側構造又は前後傾斜用油圧シリンダ77の支持位置が互いに制限されるのを防止でき、走行機体1等を簡単に構成できる。
さらに、車高調節油圧シリンダ38に連結する左右傾動アームとしての上側前部ローリングアーム31及び上側後部ローリングアーム32と、前後傾斜用油圧シリンダ77に連結する前後傾動アームとしてのピッチングアーム76を、同一支点軸29,30上に配置しているから、前後傾斜用油圧シリンダ77等の前後傾斜機構の有無に関係なく、同一仕様の走行機体1を使用できる。走行機体1等を低コストに構成できる。
なお、車高調節油圧シリンダ38によって作動させる平行リンク状の前側アームとしての下側前部ローリングアーム33及び後側アームとしての下側後部ローリングアーム34を設けた構造であって、下側前部ローリングアーム33又は下側後部ローリングアーム34のいずれか一方にピッチングアーム76を連結しているから、左右傾斜姿勢の走行機体1の車高を維持しながら、走行機体1を前後傾動できる。走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正する車高調節油圧シリンダ38の制御性能を維持でき、且つ走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正する前後傾斜用油圧シリンダ77の制御性能を向上できる。
一方、図4、図5などに示す如く、トラックフレーム21上面側にテンション支持体94を溶接固定にて配置し、テンション支持体94の機外側面にガイド筒体95を介してテンションロッド96の前端側をスライド可能に配置し、テンションロッド96の後端側にテンションローラ23を取付け、トラックフレーム21にテンションローラ23を介して走行クローラ2を装設させる。なお、テンションボルト97の回転操作にてテンションロッド96を前後方向にスライドさせて、走行クローラ2のテンションを調節する一方、テンション支持体94が配置された前記トラックフレーム21後部に連結軸受部46を設け、前記トラックフレーム21の機内側面に連結軸受部46を介して後側連結軸体45を軸支し、後側連結軸体45に前記従動リンク体44を連結し、トラックフレーム21後部の両側にテンションロッド96と前記従動リンク体44を振り分けて配置している。
さらに、図6などに示す如く、トラックフレーム21の前部上面に軸受け台91を溶接固定し、軸受け台91の上面側に上方側から軸受体92をボルト93締結させ、軸受体92に前記前側連結軸体40の一端側を回動可能に片持ち軸支させ、トラックフレーム21と下側前部ローリングアーム33を連結している。また、図6などに示す如く、ローリング支点フレーム26に前側最下げストッパ85を固着する。下側前部ローリングアーム33の上面のうち、前側連結軸体40との連結部の上面に前側最下げストッパ85を対向配置させる。走行機体1の前側車高が最も低い状態、即ち、走行機体1の前側とトラックフレーム21が最も接近したときに、下側前部ローリングアーム33の上面に前側最下げストッパ85の下面が当接して、走行機体1の前側が最下げ位置に支持される。下側前部ローリングアーム33と前側最下げストッパ85の当接によって、走行機体1の前側下面に走行クローラ2の前側上面が干渉するのを防止している。
一方、トラックフレーム21の上面に受止め体84を介して後側最下げストッパ86を固着する。走行機体1の後側車高が最も低い状態、即ち、走行機体1の後側とトラックフレーム21が最も接近したときに、下側後部ローリングアーム34の下面のうち、後部ローリング支点軸30との連結部の下面が後側最下げストッパ186の上面に当接して、走行機体1の後側が最下げ位置に支持される。下側後部ローリングアーム34と後側最下げストッパ86の当接によって、走行機体1の後側下面に走行クローラ2の後側上面が干渉するのを防止している。
次に、図11〜図13を参照しながら、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御と、前後方向の傾斜制御と、刈取装置3の昇降制御について説明する。図11は、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御手段、及び前後方向の傾斜制御手段、及び刈取装置3の昇降制御手段の機能ブロック図であり、図11〜図13に示す如く、マイクロコンピュータ等によって形成した作業コントローラ371を備えている。オペレータが図示しない姿勢操作レバーにて手動操作する左傾スイッチ61、右傾スイッチ62、前傾スイッチ63、後傾スイッチ64を作業コントローラ371に接続させる。前記姿勢操作レバーの上下前後方向の傾倒操作によって、左傾スイッチ61、または右傾スイッチ62、または前傾スイッチ63、または後傾スイッチ64を選択的にオン作動させ、走行機体1が左側又は右側又は前側又は後側に傾動して、オペレータの手動操作にて走行機体1の傾斜姿勢が変更されるように構成している。
また、図11に示す如く、オペレータが回転操作する車高調節ポテンショメータ66を作業コントローラ371に接続させる。オペレータが車高調節ポテンショメータ66を回動操作し、左傾電磁弁261または右傾電磁弁262をオン作動させ、走行機体1の車高を変化させるように構成している。また、排気ガス浄化ケース71内部に粒子状物質が溜まったとき、粒子状物質を除去するディーゼルエンジン14の再生運転制御が実行されるものであり、ディーゼルエンジン14の再生運転制御を実行する再生承認スイッチ67を備え、作業コントローラ371に再生承認スイッチ67を接続させる。オペレータによって再生承認スイッチ67を手動操作して、再生運転制御モードにてディーゼルエンジン14を作動させ、前記排気ガス浄化ケース71内の粒子状物質を除去するように構成している。
図11に示す如く、作業コントローラ371には、刈取装置3によって刈取った刈取穀稈を検出する作物センサ372と、刈取装置3の作動を検出する作業スイッチ373と、走行機体1の左右方向の傾斜角度を検出する振子式の左右傾斜センサ374と、走行機体1と左側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の左車高センサ375と、走行機体1と右側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の右車高センサ376と、走行機体1の左右方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の左右傾斜設定器377が接続されている。
また、作業コントローラ371には、左傾電磁弁261と、右傾電磁弁262が接続されている。この構成により、左右傾斜センサ374の検出値と、左車高センサ375の検出値と、右車高センサ376の検出値とに基づき、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262を切換えて、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させ、走行機体1の左右方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
さらに、図11に示す如く、作業コントローラ371には、走行機体1の前後方向の傾斜角度を検出する振子式の前後傾斜センサ381と、走行機体1の後部とトラックフレーム21の後端側との相対間隔(トラックフレーム21の前後方向の対本機傾斜角度)を検出するポテンショメータ形の本機傾斜センサ382と、走行機体1の前後方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の前後傾斜設定器383が接続されている。
また、作業コントローラ371には、前後傾動電磁弁266が接続されている。この構成により、前後傾斜センサ381の検出値と、本機傾斜センサ382の検出値と、前後傾斜設定器383の設定値とに基づき、前後傾動電磁弁266を切換えて、前後傾斜用油圧シリンダ77を作動させ、走行機体1の前後方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
一方、図11に示す如く、作業コントローラ371には、走行クローラ2の回転速度(車速)を検出する車速センサ385と、刈取装置3の対地高さを検出するポテンショメータ形の刈取高さセンサ386と、刈取装置3の対地高さの基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の刈取高さ設定器387が接続されている。
また、作業コントローラ371には、刈取昇降電磁弁260が接続されている。この構成により、車速センサ385の検出値と、刈取高さセンサ386の検出値と、刈取高さ設定器387の設定値とに基づき、刈取昇降電磁弁260を切換えて、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させ、刈取装置3の対地高さを修正して、刈取装置3の穀稈刈取高さが略一定になるように自動制御する。
次に、図12、図13に示す姿勢制御フローチャートを参照しながら、刈取装置3の穀稈刈取高さ制御態様、及びコンバイン(走行機体1)の左右方向及び前後方向の傾斜制御態様を説明する。図12、図13のフローチャートに示す如く、エンジン20が始動された場合、作物センサ372値、左右傾斜センサ374値、左車高センサ375値、右車高センサ376値、左右傾斜設定器377値、前後傾斜センサ381値、本機傾斜センサ382値、前後傾斜設定器383値、車速センサ385値、刈取高さセンサ386値、刈取高さ設定器387値が読込まれる。
そして、オペレータによって再生承認スイッチ67が手動操作されて、再生運転制御モードにてディーゼルエンジン14が作動するとき、前記各センサ値などが入力されても、図12のフローチャートに示す刈取高さ制御、または図13のフローチャートに示す傾斜制御のいずれも実行されず、刈取高さ制御または傾斜制御のいずれも待機状態に維持される。また、作業スイッチ373がオン又はオフのいずれであっても、図13のフローチャートに示す傾斜制御が実行される。さらに、作業スイッチ373がオンの刈取作業中、刈取高さ制御が実行される。図12の刈取高さ制御に優先して、図13のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行される。
図13のフローチャートに示す如く、左右傾斜センサ374値と、左車高センサ375値と、右車高センサ376値と、左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1が左側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の左側を上昇させるか、又は走行機体1の右側を下降させる。一方、走行機体1が右側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側を上昇させるか、又は走行機体1の左側を下降させる。コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御によって、走行機体1の左右方向の傾斜角度が自動的に修正される。左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を維持できる。なお、左右傾斜設定器377がオペレータによって操作された場合、左右傾斜設定器377によって設定された左右傾斜角度姿勢(対地水平姿勢)に走行機体1が手動操作にて支持される。
また、図13のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ381値と、本機傾斜センサ382値と、前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1が前側方に下り傾斜している前傾姿勢と判断された場合は、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内のときには、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。一方、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内ではないとき、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を昇降させて、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内に走行機体1の車高を変更した後、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。その結果、コンバイン(走行機体1)の後傾斜制御によって、走行機体1の後傾角度が自動的に修正される。前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1の後傾姿勢(対地水平姿勢)を維持できる。
さらに、走行機体1が後側方に下り傾斜している後傾姿勢と判断された場合は、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内のときには、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。一方、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内ではないときには、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を上昇させて、前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲内に走行機体1の車高を変更した後、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。即ち、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御によって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が自動的に修正される。前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を維持できる。なお、前後傾斜設定器383がオペレータによって操作された場合、前後傾斜設定器383によって設定された前後傾斜角度姿勢に走行機体1が手動操作にて支持される。
コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御(図13)が実行された後に、刈取高さ制御(図12)が実行されることによって、刈り後の株の長さが不均一になるのを防止できる。コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、走行機体1の対地高さが高くなった場合でも、テンションローラ23と最後部のトラックローラ24によって支持された走行クローラ2の対地迎え角が適正大きさに維持され、走行クローラ2の走破性能が保持される。
また、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御に優先して、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御が実行されることによって、刈取装置3の左側又は右側の分草体の対地高さを所定以上に維持しながら、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御を実行できる。その結果、走行機体1の対地高さを高くした状態で、刈取装置3の分草体の対地高さを低く支持する湿田における刈取作業のときにも、前後方向の傾斜制御によって、刈取装置3の分草体又は刈刃装置22等が田面の泥土中に突込むのを防止できるものでありながら、未刈り穀稈の株元を低い位置で切断でき、刈り後の株の長さを短く形成できる。
図12のフローチャートに示す如く、作業スイッチ373がオンの刈取作業中に、作物センサ372がオンになっていると、車速センサ385値と、刈取高さセンサ3386値と、刈取高さ設定器87値に基づき、刈取装置3の穀稈刈取高さが低いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を上昇制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。一方、刈取装置3の穀稈刈取高さが高いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を下降制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。図12の刈取高さ制御によって、刈取高さ設定器387によって設定された刈取装置3の穀稈刈取高さを自動的に維持できる。なお、刈取高さ設定器87がオペレータによって操作された場合、刈取高さ設定器387によって設定された穀稈刈取高さに刈取装置3が手動操作にて支持される。
図1、図4〜図10に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を変更するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ77を備え、左右のトラックフレーム21に左右の姿勢制御機構を介して走行機体1を昇降可能に搭載し、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更可能に構成した走行車両において、左右のトラックフレーム21に平行リンク状の左右一対の前後アームとしての下側前部ローリングアーム33と下側後部ローリングアーム34を介して走行機体1を支持させると共に、下側後部ローリングアーム34に従動リンク体44を介してトラックフレーム21の後部を連結する構造であって、トラックフレーム21の機内側方に前記従動リンク体44を片持ち状に連結している。したがって、トラックフレーム21を前後に分割することなく形成でき、トラックフレーム21等にて形成する走行部2構造を簡単に構成できる。小さな設計変更で多機種に展開できる。即ち、トラックフレーム21の構成部品点数の削減または小型簡略化により、大型機種と同様の姿勢制御機構(車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ77等)を、小型機種にも、少ない構造変更にて、コンパクトに組込むことができる。
図4〜図10に示す如く、左右のトラックフレーム21上面側にテンション支持体94を配置させ、テンション支持体94の機外側方にテンションロッド96を配置し、テンションロッド96にテンションローラ23を取付け、テンションローラ23を介して左右一対の走行クローラ2を装設する構造であって、テンション支持体94の機内側方に後側連結軸体45を介して従動リンク体44を連結している。したがって、トラックフレーム21後部の両側にテンションロッド96と従動リンク体44を振り分けて配置でき、テンションロッド96と従動リンク体44を近接配置して支持剛性を向上できるものでありながら、トラックフレーム21後部の構成部品点数を削減でき、走行クローラ2構造の簡略化及びコスト低減を容易に達成できる。
図4〜図10に示す如く、トラックフレーム21に下側前部ローリングアーム33を前側連結軸体にて連結する構造で、トラックフレーム21の上面に前アーム連結具92を締結し、前アーム連結具92に前側連結軸体40を介して下側前部ローリングアーム33を軸支している。したがって、ボルトの着脱などにてトラックフレーム21に前側連結軸体40を簡単に着脱できる。走行機体1とトラックフレーム21の連結または分離作業を簡略化できる。
図1、図4〜図10に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を変更するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ77を備え、左右のトラックフレーム21に左右の姿勢制御機構を介して走行機体1を昇降可能に搭載し、前記走行機体1の左右方向の傾斜姿勢と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更可能に構成した走行車両において、左右のトラックフレーム21に平行リンク状の左右一対の下側前部ローリングアーム33と下側後部ローリングアーム34を介して走行機体1を支持させると共に、下側後部ローリングアーム34に従動リンク体44を介してトラックフレーム21の後部を連結する構造であって、下側前部ローリングアーム33と下側後部ローリングアーム34の連結部のうち、走行機体1側の連結部(ローリング支点フレーム26側の連結部)に対して、トラックフレーム21側の連結部を機体内方にオフセットさせている。したがって、トラックフレーム21を前後に分割することなく形成でき、トラックフレーム21等にて形成する走行クローラ2構造を簡略化できるものでありながら、走行機体1とトラックフレーム21の左右幅方向の取付け間隔を縮小できる。即ち、部品点数の削減など小型簡略化により、大型機種と同様の姿勢制御機構(車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ77)を、小型機種にも、少ない構造変更にて、コンパクトに組込むことができる。
図4〜図10に示す如く、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ77を、側面視及び平面視で一列状に配置すると共に、車高調節油圧シリンダ38に連結する左右傾動アームとしての上側後部ローリングアーム32と、前後傾斜用油圧シリンダ77に連結する前後傾動アームとしてのピッチングアーム76を、同一支点軸(後部ローリング支点軸30)上に配置する構造であって、トラックフレーム21に連結させる下側前部ローリングアーム33先端部上面と走行機体1の当接と、走行機体1に連結させる下側後部ローリングアーム34基端部下面とトラックフレーム21上面当接にて、走行機体1の下降を規制するように構成している。したがって、下側前部ローリングアーム33または下側後部ローリングアーム34の中間部に走行機体1の荷重を掛ける下降規制構造に比べ、下側前部ローリングアーム33または下側後部ローリングアーム34が軸支される支点軸29,30の支持荷重を軽減でき、走行機体1を最下降位置に高剛性に支持できる。
図4〜図10に示す如く、走行機体1の一部を形成する左右一対のローリング支点フレーム26を設け、左右一対のローリング支点フレーム26の間に、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ77を配置する構造であって、下側前部ローリングアーム33の形状と下側後部ローリングアーム34の形状を相違させて、前記トラックフレーム21とローリング支点フレーム26の間に下側前部ローリングアーム33と34を配置している。したがって、下側前部ローリングアーム33の形状と下側後部ローリングアーム34の形状を機能別に形成できる。即ち、従動リンク体44連結用の特別な形状に、下側後部ローリングアーム34の形状を形成する必要があるが、下側前部ローリングアーム33はシンプルな形状に形成できるから、下側前部ローリングアーム33を軽量簡略化できる。