JP2015141137A - 小腸由来hdlの取得方法、小腸由来hdlの評価方法、小腸由来hdl増加作用を有する化合物のスクリーニング方法並びに前記化合物を含む小腸由来hdl増加薬及び家族性高コレステロール血症治療薬 - Google Patents

小腸由来hdlの取得方法、小腸由来hdlの評価方法、小腸由来hdl増加作用を有する化合物のスクリーニング方法並びに前記化合物を含む小腸由来hdl増加薬及び家族性高コレステロール血症治療薬 Download PDF

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賢一 平野
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毅 朝長
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Satoshi Yamaguchi
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Abstract

【課題】SI−HDLの取得方法、SI−HDLの評価方法、SI−HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法並びに前記化合物を含むSI−HDL増加薬及び家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)治療薬の提供。【解決手段】大動脈の腸間膜動脈に接続する箇所の上側と下側を結紮したヒト以外の哺乳動物において、潅流液を、前記哺乳動物の大動脈から腸間膜動脈を経て小腸に潅流し、リンパ管から小腸潅流液を得る工程を有することを特徴とする小腸由来HDLの取得方法;取得した小腸由来HDLを定量または定性分析することを特徴とする小腸由来HDLの評価方法;(a)ヒト以外の哺乳動物に対して被験化合物投与を行う工程、(b)被験化合物投与動物および対照動物から、それぞれ請求項1または2に記載の方法により小腸由来HDLを得る工程、(c)得られた小腸由来HDLを定量する工程、及び(d)被験化合物投与動物の小腸由来HDL量と対照動物の小腸由来HDL量を比較し、小腸由来HDL量を増加させる被験化合物を選択する工程を有するSI−HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法;当該スクリーニング方法で得られたSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むSI−HDL増加薬又は家族性高コレステロール血症治療薬。【選択図】なし

Description

本発明は、小腸由来HDLの取得方法、小腸由来HDLの評価方法、小腸由来HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法並びに前記化合物を含む小腸由来HDL増加薬及び前記化合物を有効成分とする家族性高コレステロール血症の用治療薬に関する。
従来、脂質異常症の治療のために、抗動脈硬化作用に着目した治療方法として、LDL(low-density lipoprotein)コレステロールを減らす治療方法と、HDL(high-density lipoprotein)コレステロールを向上(増大又は増加)させる方法が挙げられる。
脂質の代謝或いは脂質の生化学は非常に複雑であり、脂質異常症の抜本的な治療方法は確立されていないが、HDLコレステロールを向上させる方法として、抗動脈硬化作用の中でも、コレステロールの逆転送作用に着目して、HDLコレステロールの増大を目的としたコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬が開発されていた。このようなCETP阻害薬としては、アナセトラピブ(anacetrapib)、ダルセトラピブ(dalcetrapib)、トルセトラピブ(torcetrapib)、エヴァセトラピブ(Evacetrapib)等が知られている(特許文献1、2)。
しかしながら、これらの薬剤では、HDL−コレステロールを上げ、LDL−コレステロールを下げることはできたが、期待に反して心血管疾患の発生率及び死亡率が増加したことが報告されている(非特許文献1)。そのため、新しい薬剤の開発が望まれていた。
また、HDLは、肝臓及び小腸で合成されることが知られており、従来HDL研究において、小腸由来HDLの採取方法は麻酔下の動物の腸リンパ管にカニューレを挿管してリンパ液を採取し、液中に存在するHDLを解析する方法が採用されていた。
しかしながら、この方法を用いて、小腸由来HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法は開発されていなかった。
特表2007−506646号公報 特開2010−111696号公報
Barter PJ, et al., The New England Journal of Medicine 2007; Vol.357, No.21:pp.2109-2122
本発明は、小腸由来HDL(以下、「SI−HDL」ともいう。)の取得方法及び評価方法を提供することを目的とする。また、本発明は、SI−HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、SI−HDL増加作用を有する化合物を含むSI−HDL増加薬を提供することを目的とする。また、本発明は、SI−HDL増加作用を有する化合物を含む家族性高コレステロール血症治療薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、マウスを用いた実験系によって小腸特異的なHDLを取得できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]大動脈の腸間膜動脈に接続する箇所の上側と下側を結紮したヒト以外の哺乳動物において、潅流液を、前記哺乳動物の大動脈から腸間膜動脈を経て小腸に潅流し、リンパ管から小腸潅流液を得る工程を有することを特徴とする小腸由来HDLの取得方法。
[2]ヒト以外の哺乳動物が、大動脈、腎動脈、及び腹腔動脈を結紮されていることを特徴とする前記[1]に記載の方法。
[3]前記[1]または[2]に記載の方法で取得した小腸由来HDLを定量または定性分析することを特徴とする小腸由来HDLの評価方法。
[4]小腸由来HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)ヒト以外の哺乳動物に対して被験化合物投与を行う工程、
(b)被験化合物投与動物および対照動物から、それぞれ請求項1または2に記載の方法により小腸由来HDLを得る工程、
(c)得られた小腸由来HDLを定量する工程、及び
(d)被験化合物投与動物の小腸由来HDL量と対照動物の小腸由来HDL量を比較し、小腸由来HDL量を増加させる被験化合物を選択する工程
を有することを特徴とするスクリーニング方法。
[5]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むことを特徴とする小腸由来HDL増加薬。
[6]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)で表される化合物であることを特徴とする前記[5]に記載の増加薬。
[7]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[6]に記載の増加薬。
[8]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むことを特徴とする家族性高コレステロール血症治療薬。
[9]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[8]に記載の治療薬。
[10]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[9]に記載の治療薬。
[11]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの家族性高コレステロール血症を治療するための使用。
[12]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[11]に記載の使用。
[13]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[12]に記載の使用。
[14]家族性高コレステロール血症を治療するための医薬を製造するための、前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの使用。
[15]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[14]に記載の使用。
[16]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[15]に記載の使用。
[17]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを患者に投与する工程を含むことを特徴とする家族性高コレステロール血症を治療する方法。
[18]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[17]に記載の方法。
[19]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[18]に記載の方法。
[20]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの小腸由来HDL及び/又は血漿中のHDLを増加させるための使用。
[21]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[20]に記載の使用。
[22]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[21]に記載の使用。
[23]小腸由来HDL及び/又は血漿中のHDLを増加させるための医薬を製造するための、前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの使用。
[24]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
で表される化合物であることを特徴とする前記[23]に記載の使用。
[25]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[24]に記載の使用。
[26]前記[4]に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを患者に投与する工程を含むことを特徴とする小腸由来HDL及び/又は血漿中のHDLを増加させる方法。
[27]小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
表される化合物であることを特徴とする前記[26]に記載の方法。
[28]前記化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする前記[27]に記載の方法。
本発明のSI−HDL取得方法は、SI−HDLを高収率で取得することができる。取得したSI−HDLを用いて、SI−HDLを種々の方法で評価することができる。また、本発明によって、SI−HDL増加作用を有する化合物をスクリーニングすることができる。本発明のSI−HDL増加薬は、小腸でのHDL合成を促進させることができる。さらに、本発明によって、血漿中のHDL濃度を向上させることができ、家族性高コレステロール血症を治療することができる。
図1は、従来のSI−HDLの測定方法を表す。 図2は、本発明のSI−HDLの測定方法の一態様を表す。 図3A,B,Cは、本発明のSI−HDLの測定方法の一態様を表す。Dは、潅流時間ごとのSI潅流液のフラクションを表す。 図4は、SI潅流液のFPLC及びウエスタンブロッティングの結果を示す。A及びBがFPLCの結果を示す。Cがウエスタンブロッティングの結果を表す。 図5は、実施例2のHDLの測定結果を表す。 図6は、実施例3のプロテオーム解析の結果を表す。 図7は、実施例4の血漿HDLとSI−HDLの電子顕微鏡での観察結果を表す。 図8は、肝臓潅流液を得る方法の概略図を示す。 図9は、実施例4の電子顕微鏡の観察結果に基づいて、各HDLの粒子径(長径)のヒストグラムを表す。左がSI−HDLを表し、中央が肝臓由来HDLを表し、右が血漿HDLを表す。 図10は、実施例4のFPLCの結果に基づいて算出した各HDLの脂質組成分析の結果を表す。 図11は、実施例4のウエスタンブロッティングの結果を示す。上段がSI潅流液と肝臓潅流液を表し、下段がFPLCのHDL部分のみのフラクションを表す。 図12は、実施例5のSI−HDLの測定結果を表す。各レーンの下の数値は、スカイライトバイオテック社に委託し、HPLC解析して、定量したHDL−Cの値を表す。 図13は、実施例6のSI−HDLの測定結果を表す。 図14は、実施例7及び8のin vivoでのSI−HDLの測定結果を表す。 図15は、実施例9のin vitroでのSI−HDL増加作用を有する化合物のHDLに対する影響を測定した結果を表す。図中、YT32はエルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを表す。 図16は、実施例10の、潅流液のABCA1の発現量、血漿中の中性脂肪(TG)の測定結果、及び肝臓の写真を表す。 図17は、実施例11の血漿中のコレステロールの測定結果を表す。
本発明のSI−HDLの取得方法は、大動脈の腸間膜動脈に接続する箇所の上側と下側を結紮したヒト以外の哺乳動物において、潅流液を、前記哺乳動物の大動脈から腸間膜動脈を経て小腸に潅流し、リンパ管から小腸潅流液を得る工程を有することを特徴とする。
従来のSI−HDLの取得方法(大動脈を結紮しない方法)を図1に示す。図1の従来法では、大動脈中の血液は、門脈6と腸リンパ管7へ流入する。大動脈中の血液には、肝臓由来のHDLが多く含まれることから、従来法で、腸リンパ管7から採取した液には、肝臓由来HDLが多く含まれる。一方、図2に示す本発明の方法では、腸間膜動脈の分枝部の大動脈の上下を結紮することによって大動脈からの血液の流入を完全に遮断している。従って、腸リンパ管7から採取した潅流液には、小腸由来の成分(HDLを含む)のみが含まれる。
本発明者らは、以下の知見により上記を確認した。すなわち、野生型C57BL6/Jマウス及びABCA1(ATP-binding cassette transporter-A1)KOマウスから、それぞれ本発明の方法で小腸リンパ潅流液を得、HDLおよびApo AIウエスタンブロットで測定したところ、ABCA1 KOマウスの小腸リンパ潅流液中には、HDLは存在しなかった(実施例2、図5A参照)。次に、ABCA1 KOマウスを用いて、図2に示すとおり各動脈を結紮した系を組んだうえで、大動脈から野生型マウスの血漿を潅流したところ、腸リンパ管から採取した液中にHDLが多く含まれていた。したがって、このHDLは野生型マウスの血漿中のHDLがリンパ管に流入したものであることがわかった(実施例2、図5B参照)。すなわち、大動脈を結紮せずに麻酔下のマウスの腸リンパ管にカニューレを挿管してリンパ液を採取する従来の方法(図1)で得られるHDLには、血液中のHDLが大量に含まれることが明らかとなり、従来のSI−HDL取得方法はSI−HDLの取得に適していなかったことが示された。
さらに、本発明者らは、マウス血清のHDL、本発明の方法で取得したマウス小腸リンパ潅流液のHDL、従来の方法で取得したマウス小腸リンパ液のHDL及びマウス肝臓リンパ潅流液のHDLを用いて、プロテオーム解析を行ったところ、本発明の方法で取得したマウス小腸リンパ潅流液のHDLには、SI−HDL特異的ピークが存在すること、従来の方法で取得したマウス小腸リンパ液のHDLの解析結果は、マウス肝臓リンパ潅流液のHDLの解析結果と類似していることを確認した。
以上の知見から、本発明の方法は小腸由来HDLの取得に適していることが明らかとなり、過去に例のない優れた発明が完成するに至った。
本発明において、ヒト以外の哺乳動物としては、特に限定されず、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ又はブタ等が挙げられる。また、ヒト以外の哺乳動物には、遺伝子改変動物や、各種疾患モデル動物が含まれる。
本発明において、動脈の結紮は、腸間膜動脈の周囲に行われていればよい。腸間膜動脈としては、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈があるが、上腸間膜動脈が好ましい。
腸間膜動脈の周囲の結紮は、例えば、大動脈の上腸間膜動脈が接続する箇所の上側(頭部側)と下側(足側)であればよい。結紮によって、小腸を単離する。また、図2に示されるように、大動脈、腎動脈、及び腹腔動脈を結紮してもよい。大動脈以外に、腹腔動脈及び腎動脈も結紮する場合、大動脈の結紮箇所は、例えば、腎動脈の下部に1箇所、腹腔動脈の上部に1箇所としてもよい。結紮方法は、公知の方法を用いることができる。本工程では、結紮した後、前記モデル動物の小腸において、腹部大動脈、門脈及び小腸リンパ管に潅流液の循環用チューブを挿管し、大動脈から潅流を開始する。腹部大動脈におけるチューブの挿管位置は、結紮した範囲内であれば、特に限定されない。挿管チューブの材質は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
本発明において、腹部大動脈に挿管された給液管に供された潅流液は、腸間膜動脈を経由して小腸を還流し、門脈に挿管された排出管及びリンパ管に挿管された排出管から、排出される。小腸潅流液は、門脈に挿管された排出管及びリンパ管に挿管された排出管の両方から採取してもよく、いずれか一方から採取してもよい。いずれか一方から採取する場合は、リンパ管に挿管された排出管から採取することが好ましい。
潅流液の流速は、特に限定されない。腸間膜動脈への潅流液の流入速度は、例えば、約0.1〜1.0mL/minが好ましく、約0.2〜0.8mL/minがより好ましい。リンパ管における潅流液の排出速度は、例えば、約100〜400μL/hrが好ましく、約200〜250μL/hrがより好ましい。門脈における潅流液の排出速度は、例えば、約5〜50mL/hrが好ましく、約20〜25mL/hrがより好ましい。
本発明における潅流液は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、イーグルMEM培地、ダルベッコの改良イーグルMEM培地(DMEM培地)、ハムF12培地、RPMI1640培地、NCTC−109培地、SFM−101培地等の細胞培養用試薬;リンガー液、ハンクス液(Hanks’ Balanced Salt Solution; HBSS)、生理的食塩緩衝液等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。また、潅流液には、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、添加剤(例えば、ウシ血清アルブミン、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム等)を加えてもよい。
本発明における潅流液は、市販品を用いることができる。DMEM培地としては、特に限定されず、例えば、ナカライテスク社製のDMEM培地(DMEM(4.5g/l Glucose) with L-Gln, without Sodium Pyruvate, liquid(製品名、製品番号:08459)、DMEM(4.5g/l Glucose) with L-Gln and Sodium Pyruvate, liquid(製品名、製品番号:08458)等が挙げられる。前記リンガー液としては、特に限定されず、例えば、乳酸リンガー液(Darrow)、酢酸リンガー液、ブドウ糖加乳酸リンガー液(Butler、Talbot、ソリタ−T1号、ソリタ−T2号、ソリタ−T3号、ソリタ−T4号)等が挙げられる。他の市販品としては、例えば、ブドウ糖の入っていない製品(ラクテック、ヴィーンF等)、酢酸が含まれる製品(フィジオ140、ヴィーンD)、炭酸が含まれる製品(ビカーボン)等が挙げられる。前記ハンクス液としては、特に限定されず、例えば、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含まないもの(HBSS(-))と含むもの(HBSS(+))等が挙げられる。前記生理的食塩緩衝液としては、特に限定されず、例えば、生理食塩水溶液(例えば、0.9%生理食塩水溶液等)、ブドウ糖液(例えば、5%ブドウ糖液)、ST1、ST3、KN1A、KN1B等が挙げられる。
本発明の方法により得られる小腸潅流液(以下、「SI潅流液」ともいう。)には、小腸特異的なHDL(SI−HDL)が多く含まれ、血清由来のHDL及び肝臓由来のHDLは、ほとんど混入しないことが確認されている。すなわち、本発明の方法により得られるSI潅流液には実質的に血清由来のHDL及び肝臓由来のHDLは含まれず、SI−HDLのみが含まれると言える。
本発明の他の態様としては、上記本発明の取得方法で取得した小腸由来HDLを定量または定性分析することを特徴とする小腸由来HDLの評価方法が挙げられる。小腸由来HDLを定量分析する方法として、例えば、HDLの脂質含量測定、アポ蛋白測定などが挙げられる。また、小腸由来HDLを定性分析する方法として、例えば、含有脂質定性、アポ蛋白の定性などが挙げられる。小腸由来HDLの評価対象としては、遺伝子改変動物(例えばマウス、ラット、ウサギ等)、自然発症病態モデル動物(例えばマウス、ラット、ウサギ等)などが挙げられる。
本発明の他の態様としては、(a)ヒト以外の哺乳動物に対して被験化合物投与を行う工程、(b)被験化合物投与動物および対照動物から、それぞれ請求項1または2に記載の方法によりSI−HDLを得る工程、(c)得られたSI−HDLを定量する工程、及び(d)被験化合部T細胞投与動物のSI−HDL量と対照動物のSI−HDL量を比較し、SI−HDL量を増加させる被験化合物を選択する工程を有することを特徴とする小腸由来HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法が挙げられる。
(a)工程では、ヒト以外の哺乳動物に対して被験化合物投与を行う。被験化合物投与の時期、期間等は特に限定されず、用いる被験化合物に応じて適宜設定すればよい。好ましくは、哺乳動物に対して、SI−HDLを取得する日より数日(少なくとも3日以上、好ましくは5日以上)前から、毎日連続して投与する。被験化合物の投与量は、動物の種類によっても異なり、適宜選択できる。被験化合物の投与から数日(少なくとも3日以上、好ましくは5日以上)後に、被験化合物を投与した動物からSI−HDLを取得する。
(b)工程では、上記で説明したSI−HDLの取得方法に従って、被験化合物投与動物および被験化合物投与を行っていない対照動物から、それぞれSI−HDLを取得する。
(c)工程では、前記(b)工程において得られたそれぞれのSI−HDLを定量する。SI−HDLの定量方法は、特に限定されず、公知のタンパク質の定量方法を用いることができる。このような定量方法としては、例えば、液体クロマトグラフ−質量分析法(Liquid Chromatography / Mass Spectrometry)が挙げられる。公知の装置(例えば、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS:Liquid Chromatograph Mass Spectometry)等)を用いることができる。液体クロマトグラフとしては、HPLC、FPLC等が挙げられる。
(d)工程では、被験化合物投与動物のSI−HDL量と対照動物のSI−HDL量を比較し、小腸由来HDL量を増加させる被験化合物を選択する。被験化合物投与動物のSI−HDL量が対照動物のSI−HDL量より多ければ、該被験化合物は、SI−HDLの量を増加させる化合物と判断する。
本発明におけるSI−HDLは、少なくともアポリポ蛋白AIV(Apo AIV)を含むHDLである。SI−HDLに含まれるアポリポ蛋白AIV(Apo AIV)は、例えば、上記のSI−HDL定量方法(例えば、FPLCを用いた液体クロマトグラフ-質量分析法)で得られるHDLのフラクションについてウエスタンブロッティングを行うことで確認できる。
また、本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むSI−HDL増加薬が挙げられる。SI−HDL増加作用を有する化合物としては、特に限定されないが、下記式(I)
(式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)で表される化合物が好ましい。
本発明のSI−HDL増加薬は、SI−HDL増加作用を有する化合物を有効成分として含んでいればよく、実質的にSI−HDL増加作用を有する化合物のみからなるものであってもよい。
本発明のSI−HDL増加作用を有する化合物は、小腸由来HDL値を向上させることができる化合物(前記スクリーニング方法において、SI−HDLの量を増加させる被験化合物)であれば、特に限定されないが、前記式(I)で表される化合物、前記式(I)で表される植物ステロール誘導体が好適に挙げられる。前記アルキル基としては、直鎖、分枝状もしくは環状であってよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
前記植物ステロール誘導体としては、特に限定されないが、例えば、エルゴステロール(Ergosterol)誘導体、ブラシカステロール(Brassicasterol)誘導体、カンペステロール(Campesterol)誘導体、β−シトステロール(β-Sitosterol)誘導体、スティグマステロール(Stigmasterol)誘導体、ポリフェラスタン(Poriferastane)誘導体等が好ましい。このような化合物のうち、下記式
で表されるエルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオール、下記式
で表されるエルゴスタン−1α,3β−ジオールがより好ましく、SI−HDL増加作用が特に優れる点から、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。これらのSI−HDL増加作用を有する化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの化合物は、公知の方法で製造することができ、例えば、Tachibana, Y., and Tsuji, M. (1993) in Studies in Natural Products Chemistry(Rahman, A. U., ed) Vol. 11, pp. 379-408, Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdamや特開2004−323360号公報等に記載方法で製造することができる。
本発明の式(I)の化合物のプロドラッグとしては、本発明の式(I)の化合物のヒドロキシがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、本発明の式(I)の化合物のヒドロキシがアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は、自体公知の方法によって本発明の式(I)の化合物から製造することができる。
また、本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含む家族性高コレステロール血症治療薬が挙げられる。SI−HDL増加作用を有する化合物としては、特に限定されないが、前記式(I)で表される化合物が好ましい。
本発明の家族性高コレステロール血症治療薬は、SI−HDL増加作用を有する化合物を有効成分として含んでいればよく、実質的にSI−HDL増加作用を有する化合物のみからなるものであってもよい。
本発明の上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含む薬剤は、家族性高コレステロール血症等の原発性高コレステロール血症及び低HDL血症(例えば、HDL値が40(mg/dl)以下)の治療に有効である。前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物としては、上記SI−HDL増加薬と同様に、植物ステロール誘導体が好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオール及びエルゴスタン−1α,3β−ジオールがより好ましく、血中のHDL濃度上昇作用に優れ、かつ血漿中の中性脂肪の量をほとんど増加させない点から、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)には、ヘテロ接合型とホモ接合型が含まれる。本発明の家族性高コレステロール血症治療薬は、ヘテロ接合型及びホモ接合型のいずれにも有効である。本発明の家族性高コレステロール血症治療薬は、難病指定されている家族性高コレステロール血症(ホモ接合型)に対して治療効果を有する点で、極めて有用である。
本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグは、当該技術分野においてよく知られる1つ又は複数(2つ以上)の薬学的に許容される担体とともに、混合、溶解、顆粒化、錠剤化、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等一般的に用いられる製剤化方法により、SI−HDL増加薬、家族性高コレステロール血症治療薬、低HDL血症治療薬、血漿中のHDL増加薬として、製剤化することができる。
本発明のSI−HDL増加薬、家族性高コレステロール血症治療薬、低HDL血症治療薬、血漿中のHDL増加薬は、通常、医薬組成物として、全身的又は局所的に、経口又は非経口の形で投与される。
これらを経口投与するためには、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグを、1つ又は複数(2つ以上)の薬学的に許容される担体とともに、錠剤、丸薬、糖衣剤、顆粒剤、散剤、軟カプセル、硬カプセル等の固形製剤;溶液、懸濁液、注射剤、シロップ等の液状製剤;ゲル、スラリー等半固形製剤等の剤形に製剤化することができる。
これらを非経口で投与するためには、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグを、1つ又は複数(2つ以上)の薬学的に許容される担体とともに、注射用溶液、懸濁液、乳化剤、クリーム剤、軟膏剤、吸入剤、座剤等の剤形に製剤化することができる。注射用の処方においては、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグを水性溶液、好ましくはハンクス液(Hanks’ Balanced Salt Solution; HBSS)、リンガー(Ringer)液、又は生理的食塩緩衝液等の生理学的に合性の緩衝液中に溶解することができる。さらに、前記医薬組成物は、油性又は水性のビヒクル中で、懸濁液、溶液、又は乳濁液等の形状をとることができる。或いは、組成物を粉体の形態で製造し、使用前に滅菌水等を用いて水溶液又は懸濁液を調製してもよい。吸入による投与用には、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグを粉末化し、ラクトース又はデンプン等の適当な基剤とともに粉末混合物とすることができる。座剤処方は、本発明の式(I)の化合物をカカオバター等の慣用の坐剤基剤と混合することにより製造することができる。さらに、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグは、ポリマーマトリクス等に封入して、持続放出用製剤として処方することができる。
本発明のSI−HDL増加薬、家族性高コレステロール血症治療薬、低HDL血症治療薬、血漿中のHDL増加薬の投与対象としては、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ等)が挙げられる。
本発明に用いる「薬学的に許容される担体」としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤又は半固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等が挙げられる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
本発明のSI−HDL増加薬、家族性高コレステロール血症治療薬、低HDL血症治療薬、血漿中のHDL増加薬において、本発明の式(I)の化合物又はそのプロドラッグの単位製剤あたりの含有量は、製剤の形態によって相違するため、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、通常製剤全体に対して約0.01〜100重量%であり、好ましくは約0.1〜50重量%であり、さらに好ましくは約0.5〜20重量%である。
本発明のSI−HDL増加薬及び家族性高コレステロール血症治療薬の投与量及び投与回数は、剤形、投与経路及び投与対象(例えば、ヒトの患者)の症状、年齢、体重によって異なり限定されない。投与量は、例えば、式(I)の化合物又はそのプロドラッグを、1日あたり体重1kgあたり、通常約0.001mg〜1000mgの範囲であり、好ましくは約0.01mg〜100mgの範囲であり、より好ましくは約0.01mg〜80mgの範囲である。投与回数は、例えば、1日に1回〜数回(2回又は3回以上)投与することができる。また、注射剤として使用する場合、例えば、静脈への単回投与(1回から数回(2回又は3回以上))であってもよく、静脈への持続投与で行ってもよい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの家族性高コレステロール血症を治療するための使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。これらの化合物を使用することにより、家族性高コレステロール血症を治療することができる。
本発明の他の態様としては、家族性高コレステロール血症を治療するための医薬を製造するための、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを患者に投与する工程を含むことを特徴とする家族性高コレステロール血症を治療する方法が挙げられる。投与工程は、上記のSI−HDL増加薬及び家族性高コレステロール血症治療薬と同様である。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグのSI−HDLを増加させるための使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの血漿中のHDLを増加させるための使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、SI−HDLを増加させるための医薬を製造するための、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、血漿中のHDLを増加させるための医薬を製造するための、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグの使用が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを患者に投与する工程を含むことを特徴とするSI−HDLを増加させる方法が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明の他の態様としては、上記スクリーニング方法で得られるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを患者に投与する工程を含むことを特徴とする血漿中のHDL−Cを増加させる方法が挙げられる。上述のように、SI−HDL増加作用を有する化合物としては、前記式(I)で表されるSI−HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグが好ましく、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが特に好ましい。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[実施例1]
<SI潅流液の取得>
野生型C57BL6/Jマウス(6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)を材料に用いた。飼育には個別金属ケージを使用し、室温22±2℃、明暗調節下(明期:7:00〜19:00)の動物飼育室で行った。飲料水には水道水を用いた。AIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を飼料として、離乳直後からアドリブ(自由摂食)とした。なお、実験動物の飼育・管理は、「大阪大学動物実験規定」と「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月28日,環境省告示第88号)」に従って実施した。
前記マウスにおいて、大動脈の腹腔動脈より上部と腎動脈より下部で結紮し、大動脈に接続する腹腔動脈及び腎動脈も図2に示されるように結紮した。その後、図3A〜Cに示されるように、腹部大動脈、門脈及び小腸リンパ管に潅流液の循環用チューブを挿管した。次いで、DMEM培地(製品名;DMEM(4.5g/l Glucose) with L-Gln and Sodium Pyruvate, liquid、製品番号:08458、ナカライテスク社製)500mlにウシ血清由来アルブミン(BSA、製品番号:A6003、シグマ−アルドリッチ社製)0.15gを添加して潅流液を調製した。得られた潅流液を、大動脈から前記マウスの小腸に潅流し、リンパ管からSI潅流液を得た。腸間膜動脈への潅流液の流入速度は、0.5mL/minであった。門脈からの潅流液の排出速度は、20〜25mL/hrであった。リンパ管からの潅流液の排出速度は、200〜250μL/hrであった。図3Dに示されるように、潅流時間に応じてフラクション1〜9を得た。
<SI−HDLの定量>
得られたSI潅流液を、FPLC及びウエスタンブロッティングで測定した。測定結果を図4に示す。図4A及びBがFPLCの結果を示し、図4Cがウエスタンブロッティングの結果を示す。図4Bに示されるように、HDLが検出された。
肝臓では、アポリポ蛋白B-100(Apo B100)及びアポリポ蛋白B-48(Apo B48)が生成されるが、小腸では、アポリポ蛋白B-48(Apo B48)のみが生成される。図6CのSI潅流液のHDLのウエスタンブロッティングの結果(右端)では、肝臓由来のApo B100が見られず、Apo B48のみが観察されたため、SI潅流液で得られたHDLは、小腸特異的なHDL(SI−HDL)であり、肝臓由来のHDLは混入してないことが確認された。すなわち、本発明によって、SI−HDLを取得できることが明らかとなった。
[実施例2]
野生型C57BL6/Jマウス及びABCA1(ATP-binding cassette ttransporter-A1)KOマウスから、それぞれ実施例1の方法で小腸リンパ潅流液を得た。各潅流液中のHDLおよびApo AIをウエスタンブロットで測定した。
また、野生型C57BL6/Jマウスから採取した血液から血漿を得、潅流液に代えて当該血漿を、実施例1と同様に動脈を結紮したABCA1 KOマウスの大動脈から注入して、小腸リンパ管および門脈からそれぞれ潅流した血漿を回収した。小腸リンパ管から回収した潅流液、門脈から回収した潅流液及び動脈から注入した血漿について、HDLおよびApo Bをウエスタンブロットで測定した。
結果を図5に示す。図5AからABCA1 KOマウスの小腸リンパ潅流液中には、Apo AIは存在するが、HDLは存在しないことがわかる。一方、図5Bから、野生型マウスの血漿を潅流した場合には、小腸リンパ管から回収した潅流液中にHDLが検出されたことから、このHDLは野生型マウスの血漿中のHDLであることがわかる。この結果から、従来のSI−HDL取得方法、すなわち、大動脈を結紮せずに麻酔下のマウスの腸リンパ管にカニューレを挿管してリンパ液を採取する方法で得られるHDLには、血液中のHDLが大量に含まれることが明らかとなった。したがって、従来のSI−HDL取得方法はSI−HDLの取得に適していなかったことが示された。
[実施例3]
マウス血清のHDL、実施例1のマウス小腸リンパ潅流液のHDL、マウス小腸リンパ液のHDL(従来の方法;麻酔下のマウスの腸リンパ管にカニューレを挿管してリンパ液を採取)及びマウス肝臓リンパ潅流液のHDLを用いて、プロテオーム解析を行った。具体的には、マウス血清、実施例1のマウス小腸リンパ潅流液、マウス小腸リンパ液及びマウス肝臓リンパ潅流液から、超遠心分離機を用いて、HDL(比重:1.063-1.210 g/mL)を分離して、マウス血清のHDL、実施例1のマウス小腸リンパ潅流液のHDL、マウス小腸リンパ液のHDL(従来の方法)及びマウス肝臓リンパ潅流液のHDLのサンプルについて、トリプシン処理した後、脱塩カラムで脱塩処理した。次いで、各サンプルについて、質量分析機器(製品名:QSTAR Elite、ABSciex社製)で測定を行った。
結果を図6に示す。図6から、SI−HDL特異的ピーク(図6右上の矢印)が血清中にも存在することが確認された。また、図6左下図及び図6右下図を比べると、従来のSI−HDLの測定方法で得られる腸リンパ液には、小腸由来以外の体循環からのHDL(特に肝臓由来HDL)が混入していることが明らかである。
[実施例4]
野生型C57BL6/Jマウス(6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)から採取した血液から得られた血漿と、上記実施例1で得られたSI潅流液のそれぞれについて、超遠心分離機(Optima MAX-XP(商品名、ベックマン・コールター社製)、TLA 120.2 rotor (商品名、ベックマン・コールター社製))を用いて、HDL(比重:1.063-1.210 g/mL)を分離して、電子顕微鏡で観察した。結果を図7に示す。また、肝臓由来HDLについては、図8に示すような公知の方法で肝臓潅流液を得て、該肝臓潅流液について、超遠心分離機を用いて、HDL(比重:1.063-1.210 g/mL)を分離して、電子顕微鏡で観察した。前記肝臓潅流液は、野生型C57BL6/Jマウス(6週齢、雄性、日本エスエルシー社)を用いて、Sugano Tら、J Biochem, 1978、83、995-1007又は昭和医学会雑誌1983年第43巻第3号第389−396頁の第390頁記載のFig.1に記載の方法で得た。
各HDLについて、電子顕微鏡を用いて観察視野中の約200個のHDL粒子の長径を測定し、ヒストグラムを作成した。結果を図9に示す。図9の結果から、SI−HDLは、肝臓由来HDL(L−HDL)及び血漿HDLに比べて小さいことが明らかとなった。
SI−HDL、肝臓由来HDL及び血漿HDLについて、FPLCを行った。FPLCの結果から脂質組成を分析した結果を図10に示す。図中、TGは中性脂肪を表し、FCは遊離型コレステロールを表し、CEはコレステロールエステルを表し、PLはリン脂質を表す。また、「SI-HDL fasting」は、実施例1の結紮前のマウスを24時間絶食状態にしたマウスを使用して得られたSI潅流液を用いたことを表し、「SI-HDL Ad lib」は、自由給餌であったマウスを使用して得られたSI潅流液を用いたことを表す。
図10から、肝臓由来HDL及び血漿HDLに比べて、SI−HDLの脂質組成は、TG含量が多い(約20%以上)ことが明らかとなった。
また、実施例1のSI潅流液と、上記のようにして得た肝臓潅流液とをウエスタンブロッティングで比較した。結果を図11上段に示す。図11上段の結果から、SI潅流液は、アポリポ蛋白AIV(Apo AIV)を含むことが確認された。さらに、FPLCでHDLを含むフラクションについて、さらにウエスタンブロッティングを行った。結果を図11下段に示す。図11下段の結果から、SI−HDLは、アポリポ蛋白AIV(Apo AIV)を含むことが確認された。
[実施例5]
C57BL6/Jマウス(6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)及びApoE KOマウス(C57BL6/J、6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)を用いて、SI−HDLを測定した。前記C57BL6/Jマウスは、高脂肪食群(n=3)とコントロール群(n=3)に分けた。前記高脂肪食群には、離乳直後からAIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を自由摂食させたのち、HFD−60(商品名、カロリー比で脂肪分60%、オリエンタル酵母工業社製)を10週目から4週間、自由摂食させた。前記コントロール群は、離乳直後からAIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を自由摂食させた。前記コントロール群は、24時間絶食させた群と自由給餌群に分けた。ApoE KOマウスには、AIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を離乳直後から自由摂食させた。
実施例1のマウスを、前記マウスに変更した以外は、実施例1と同様にして、SI潅流液を得た。得られたSI潅流液中のHDLをウエスタンブロットで測定した。結果を図12に示す。24時間絶食させたマウス及びApoE KOマウスでは、SI−HDLが検出されなかった(図12左端図及び右端図)。
[実施例6]
実施例1において、マウスを、野生型C57BL6/Jマウス(6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)に加えて、LDL受容体(以下、「LDLR」ともいう。)KOマウス(米国ジャクソン研究所)を用いた以外は、実施例1と同様にして、SI潅流液を得た。得られたSI潅流液中のHDLおよびApo AIをウエスタンブロットで測定した。結果を図13右に示す。図中、LDLR KOマウスはLDL受容体KOマウスを表す。本発明の測定方法を用いた図13右から、LDLR KOマウスでは、小腸において、ほとんどHDLが産生されないことが明らかとなった。
上記と同様の2種のマウスから得た血漿及び従来法(腸リンパに針を刺して液を採取する方法)で得たリンパ液では、図13左に示すように、LDLR KOマウスでもHDLが産生されているように観察された。
よって、本発明の測定方法で、小腸由来HDLを正確に測定できることが確認された。
[実施例7]
<SI潅流液の取得>
野生型C57BL6/Jマウス(6〜12週齢、雄性、日本エスエルシー社)を実施例1と同様に飼育した後、被験化合物投与群には、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを、250mg/kgで5日連続強制経口投与した。5日目の投与をした次の日、実施例1と同様にして、マウスを結紮した。被験化合物非投与群は、被験化合物投与群の化合物投与前と同様に、飼育を続け、被験化合物投与群と同日に実施例1と同様にして、マウスを結紮した。次に、DMEM培地(製品名;DMEM(4.5g/l Glucose) with L-Gln, without Sodium Pyruvate, liquid、製品番号:08459、ナカライテスク社製)500mlにL−グルタミン(製品番号:16919-84、ナカライテスク社製)292mg、ピルビン酸ナトリウム(製品番号:29806-54、ナカライテスク社製)55mg及びウシ血清由来アルブミン(BSA、製品番号:A6003、シグマ−アルドリッチ社製)0.15gを添加して潅流液を調製した。得られた潅流液を、被験化合物投与群及び被験化合物非投与群のマウスに対して、大動脈から前記マウスの小腸に潅流し、リンパ管からSI潅流液を得た。腸間膜動脈への潅流液の流入速度は、0.5mL/minであった。門脈からの流液の排出速度は、20〜25mL/hrであった。リンパ管からの潅流液の排出速度は、200〜250μL/hrであった。
<SI−HDLの定量>
得られたSI潅流液を、FPLCで測定した。測定結果を図14に示す。
<SI−HDLの比較工程>
図14の左図のコントロール(被験化合物非投与群)及び中央のエルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオール投与群(被験化合物投与群)を比較すると、中央の矢印の部分に示されるように、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールの投与によって、SI−HDLの量を増加させたことが明らかとなった。
[実施例8]
エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールの代わりに、T0901317(N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−ベンゼンスルホンアミド、CAS#[293754−55−9];WO00/54759)を10mg/kgで5日連続強制経口投与した以外は、実施例4と同様にして、T0901317もSI−HDLの量を増加させたことが明らかとなった(図14左端図及び右端図参照)。
上記結果から、本発明のスクリーニング方法は、SI−HDL増加作用を有する化合物を取得できることが確認できた。また、図14から、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオール及びT0901317は、SI−HDL増加作用を有する化合物であることが確認できた。
[実施例9]
LDL受容体欠損型のヒト結腸癌由来細胞株Caco−2(RIKEN CELL BANK、理研バイオリソースセンター)を用いて、in vitroでのエルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールの影響を評価した。Caco−2細胞の培養方法は、Ohama T, Hirano K, et al. Biochem Biophys Res Commun 2002: 296; 625-630.に記載の方法を用いた。具体的には、前記Caco−2細胞を、MEM(20%FCS)培地に播種し、標準プロトコールで培養したのち、0.4μmの孔を有する直径24mmのポリカーボネートTranswellフィルター(Corning Costar, Cambride, MA)に、細胞密度 250,000 cells/cm2で播種し、培養した。前記フィルターに播種した際に、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを10μM添加し、48時間培養したのち、FPLCでHDLを測定した。コントロールとして、前記化合物を加えない以外は、同様に培養した培養液についても、FPLCでHDLを測定した。結果を図15Bに示す。また、ABCA1の発現についても評価した。結果を図15Aに示す。図中、LPDSはリポ蛋白質除去血清を表す。さらに、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールの代わりに、T0901317を100nM添加して、T0901317の、ABCA1の発現についても評価した。結果を図15Aに示す。
図15右に示されるように、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを用いると、HDLが増加することが確認された。
[実施例10]
AIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を自由摂食させたLDL受容体KOマウス(米国ジャクソン研究所製)に、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを250mg/kg又はT0901317を10mg/kgをPolyethylene glycol/Tween 80 (4: 1)に溶解して、5日間連続経口投与した。Polyethylene glycol/Tween 80 (4: 1)のみを投与したものをコントロール(図16中、Vehicle)とした。前記連続投与後、実施例1と同様にマウスを結紮し、SI潅流液を得た。また、前記連続投与後、実施例4と同様に、肝臓潅流液を得た。肝臓及び小腸におけるABCA1の発現量を、肝臓潅流液及びSI潅流液を用いて測定した。結果を図16Aに示す。また、前記連続投与後、マウスから血液を採取し、各化合物を投与した場合の血漿中の中性脂肪量を測定した。結果を図16Bに示す。さらに、潅流液を得たのち、マウスの肝臓を摘出した。図16Cに摘出した肝臓の写真を示す。T0901317を投与した肝臓は脂肪肝となっていた。
この結果から、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールは、血漿中の中性脂肪量を増加させるという副作用がほとんどないことが明らかになった。
[実施例11]
LDL受容体KOマウスに対する、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオール(YT32)とT0901317の血漿中のHDLに対する効果を測定した。AIN−93M(標準食餌、オリエンタル酵母工業社製)を自由摂食させたLDL受容体KOマウス(米国ジャクソン研究所製)に、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールを250mg/kg又はT0901317を10mg/kgを Polyethylene glycol/Tween 80 (4: 1)に溶解して、5日間連続経口投与した。Polyethylene glycol/Tween 80 (4: 1)のみを投与したものをコントロール(図17中、Vehicle)とした。前記化合物の投与後、マウスから血液を採取し、HPLCで分画して、酵素法(遊離型コレステロールが、コレステロールオキシダーゼ(COD)によって酸化分解されてHを生成し、生成したHにペルオキシダーゼ(POD)が作用すると、4−アミノアンチピリン(4-AA)とN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)を酸化縮合するため、生じるキノン色素を比色測定(505nm)する。)でコレステロールを定量した。コレステロールの測定は、スカイライトバイオテックに委託した。結果を図17A及びBに示す。
図17A中、TCは総コレステロール量を表し、Non HDL−Cは、HDL−C以外のコレステロール(例えば、カイロミクロン、LDL、VLDL等)を表す。図17Aから、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールは、HDLを増加させるが、HDL−C以外は上昇させないことが明らかになった。図17Bは、図17AのHDL−Cの拡大図である。
図17Bから、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールが血漿HDL量を十分に上昇させることが明らかとなった。上記のように、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)では、LDL受容体活性が正常の20%以下であり、LDL受容体KOマウスは、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)モデルマウスである。エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールは、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)で起こるHDL量の減少に対して、血漿HDL量を向上させることができ、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)に対する治療効果を有する。
本発明は、SI−HDLの取得方法及び評価方法として有用である。また、本発明のスクリーニング方法は、SI−HDL増加作用を有する化合物を取得するのに有用である。さらに、本発明は、SI−HDL増加薬及び家族性高コレステロール血症治療薬として有用である。
1 大動脈
2 腹腔動脈
3 腸間膜動脈
4 腎動脈
5 小腸
6 門脈
7 リンパ管
8 結紮
9 門脈からの排出管
10 大動脈への流入管
11 リンパ管からの排出管

Claims (10)

  1. 大動脈の腸間膜動脈に接続する箇所の上側と下側を結紮したヒト以外の哺乳動物において、潅流液を、前記哺乳動物の大動脈から腸間膜動脈を経て小腸に潅流し、リンパ管から小腸潅流液を得る工程を有することを特徴とする小腸由来HDLの取得方法。
  2. ヒト以外の哺乳動物が、大動脈、腎動脈、及び腹腔動脈を結紮されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法で取得した小腸由来HDLを定量または定性分析することを特徴とする小腸由来HDLの評価方法。
  4. 小腸由来HDL増加作用を有する化合物のスクリーニング方法であって、
    (a)ヒト以外の哺乳動物に対して被験化合物投与を行う工程、
    (b)被験化合物投与動物および対照動物から、それぞれ請求項1または2に記載の方法により小腸由来HDLを得る工程、
    (c)得られた小腸由来HDLを定量する工程、及び
    (d)被験化合物投与動物の小腸由来HDL量と対照動物の小腸由来HDL量を比較し、小腸由来HDL量を増加させる被験化合物を選択する工程
    を有することを特徴とするスクリーニング方法。
  5. 請求項4に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むことを特徴とする小腸由来HDL増加薬。
  6. 小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
    (式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の増加薬。
  7. 小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする請求項6に記載の増加薬。
  8. 請求項4に記載のスクリーニング方法で得られた小腸由来HDL増加作用を有する化合物又はそのプロドラッグを含むことを特徴とする家族性高コレステロール血症治療薬。
  9. 小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、下記式(I)
    (式中、R及びRは、独立して、水素原子、C1−C6アルキル基又はヒドロキシメチル基であり、Rは水素原子又は水酸基であり、----は二重結合又は単結合であることを表す)
    で表される化合物であることを特徴とする請求項8に記載の治療薬。
  10. 小腸由来HDL増加作用を有する化合物が、エルゴスタ−22−エン−1α,3β−ジオールであることを特徴とする請求項9に記載の治療薬。
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