JP2015140322A - 関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤 - Google Patents

関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤 Download PDF

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Abstract

【課題】関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防または治療剤を提供する。
【解決手段】本発明は、HLA-G[α1-3]ダイマーを有効成分とする、関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防または治療剤に関する。ここでHLA-G[α1-3]としては下記(a)または(b)に記載するタンパク質を好適に用いることができる:
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
【選択図】なし

Description

本発明は、関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防または治療剤に関する。
ヒト非古典的主要組織適合性抗原(Major Histocompatibility Complex, MHC)の一つであるHLA-Gは、古典的MHCクラスI分子とは異なり、組織特異的に発現する。HLA-Gは、特に、妊娠の際に重要となる胎盤上の胎児側の栄養膜に発現し、母体の免疫系が胎児を異物と認識して攻撃しないよう免疫を抑制することに関わることが知られている。このような知見に基づいて、HLA-Gは様々な応用がなされており、例えば、HLA-Gまたは遺伝子工学的に改良を加えたHLA-G分子を、不妊治療、臓器移植時の拒絶反応の抑制、自己免疫疾患の治療等に用いることが試みられている。
今日までに報告されているHLA-Gの受容体としては、主にT細胞に発現するCD8分子、幅広い免疫系細胞において発現する白血球Ig様受容体B1/B2(LILRB1/ LILRB2)(Ig-like transcript(ILT2/ ILT4)、LIR1/ LIR2、およびCD85j/ CD85dとしても知られている。)、およびKIR2DL4を挙げることができる。HLA-Gによる免疫抑制効果は、おそらくLILRB1及びLILRB2を介して行われていると考えられる。このような、HLA-Gとその受容体との結合を詳細に解析した例としては、LILR群(LILRB1及びLILRB2)とHLA-Gとの相互作用に関する、本発明者らによる報告がある(非特許文献1)。
HLA-G遺伝子は既に公知で、4396塩基対を含むことが知られている(非特許文献2及び3)。この遺伝子は、8つのエキソン、7つのイントロン及び3’非翻訳領域からなり、8つのエキソンとHLA-Gを構成する各ドメインとの関係は以下の通りである:
エキソン1:シグナル配列、エキソン2:α1細胞外ドメイン、エキソン3:α2細胞外ドメイン、エキソン4:α3細胞外ドメイン、エキソン5:膜貫通領域、エキソン6:細胞質ドメインI、エキソン7:細胞質ドメインII(非翻訳)、及びエキソン8:細胞質ドメインIII(非翻訳)。
HLA-Gには7つのアイソフォームが同定されており、そのうち4つは膜結合しており(HLA-G1、HLA-G2、HLA-G3及びHLA-G4)、残り3つは可溶性である(HLA-G5、HLA-G6及びHLA-G7)(例えば、非特許文献4参照)。具体的には、HLA-G1は、3つの細胞外ドメイン(α1〜α3)、膜貫通領域及び細胞質ドメインを有する。HLA-G2は、α2ドメインを欠き、α1ドメインとα3ドメインとが直接連結し、このα3ドメインに膜貫通ドメイン、次いで細胞質ドメインが結合している。またHLA-G3は、α2及びα3ドメインの両方を欠き、α1ドメインが膜貫通ドメインに直接連結し、これに細胞質ドメインが結合している。さらにHLA-G4は、α3ドメインを欠き、α1ドメイン、α2ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。
可溶性HLA-Gアイソフォームは、すべて膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを欠いている。より詳しくはHLA-G5は、α1ドメイン、α2ドイン及びα3ドメイン、ならびにC末端側にイントロン4によりコードされる21アミノ酸残基からなるペプチド配列を含有する。HLA-G6は、α2ドメインを欠く点を除いて、上記HLA-G5と同じ構造を有する(α1ドメイン、α3ドメイン、及びイントロン4によりコードされている21アミノ酸残基のC末端ペプチド配列を含有する)。HLA-G7は、α2及びα3ドメインの両方を欠き、α1ドメインとC末端側にイントロン2によりコードされるアミノ酸残基を含有するペプチド配列を含有する。これらのアイソフォームのすべては、例えば、非特許文献5〜7や特許文献1に記載されている。
これまでの研究により、HLA-Gは、増殖性Tリンパ球応答、細胞傷害性Tリンパ球媒介細胞溶解及びNK細胞媒介細胞溶解などの同種異系応答(allogeneic responses)を阻害することがわかり(非特許文献8及び9)、同種異系又は異種の(xenogenic)器官/組織移植における移植片拒絶反応の改善に使用することが提案されている。また、癌(特許文献2)、及び炎症性障害(inflammatory disorders) (特許文献3)の処置への利用が提案されている。
ところで、HLA-Gアイソフォームは、自然酸化により二量体として存在することが知られている。(非特許文献10、特許文献4)。本発明者らの研究により、かかる二量体は、HLA-G単量体(以下、単に「HLA-G」または「単量体」という)よりも前述する免疫抑制性受容体群と強く結合することにより極めて強いシグナル伝達能力を有すること、具体的には、そのシグナル伝達能力は、単量体のシグナル伝達能力と比較して100倍程度高いことが判明している(非特許文献11、特許文献4)。さらに、HLA-G二量体は、HLA-G単量体よりも低濃度で且つ持続的に抗関節リウマチ作用を発揮することも判明している(特許文献5)。
こうしたHLA-Gアイソフォームの二量体は、HLA-Gと同様に、生体内に存在する分子である。従って、これらは副作用の少ない安全な抗炎症剤として期待できるものの(特許文献4)、抗炎症剤の適用疾患は広く、その真なる有効性は実際にin vivo実験をしてみなければ分からないというのが、当業界の共通した認識である。
欧州特許出願公開公報 EP 0 677 582 A1 欧州特許出願公開公報 EP1 054 688 A1 欧州特許出願公開公報 EP1 189 627 A1 WO 2007/011044
M. Shiroishi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., National Academy of Sciences,2003, Vol.100, No.15, p.8856-8861 Geraghty et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1987, 84, p.9145-9149 Ellis; et al., J. Immunol., 1990, 144, p.731-735 Carosella et al., Blood 2008, vol. 111, p 4862 Kirszenbaum M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, p.4209-4213 Kirszenbaum M. et al., Human Immunol., 1995, 43, p.237-241 Moreau P. et al., Human Immunol., 1995, 43, p.231-236 Rouas-Freiss N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1997, 94, p.5249-5254 Semin Cancer Biol 1999, vol 9, p.3 Apps et al., Eur. J. Immunol. 2007, vol. 37 p.1924 M. Shiroishi et al., Journal of Biological Chemistry, The American Society for Biochemistry and Molecular Biology, Inc., 2006, Vol.281, No.15, p.10439-10447
本発明は、HLA-Gのα1ドメインとα3ドメインとが連結したアミノ酸配列を有するタンパク質の二量体(以下、便宜上「HLA-G[α1-3]ダイマー]と称する)について新規な医薬用途を提供すること目的とする。より具体的には、本発明は、HLA-G[α1-3]ダイマーについて、関節リウマチおよび関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防または治療剤としての医薬用途を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、新たな知見を見出すに至った。
具体的には、HLA-G[α1-3]ダイマーをII型コラーゲン誘導型関節リウマチモデルマウスに投与したところ、優れた抗関節リウマチ作用が認められ、また単回投与で少なくとも3週間にわたり持続的に炎症が抑制できることが判明した。加えて、局所投与(左足局所への皮内投与)でも四肢全体にわたって抗関節リウマチ効果が得られることが判明した。これらのことから、本発明者らは、HLA-G[α1-3]ダイマーは優れた薬効と持続性を発揮する抗関節リウマチ剤の有効成分として有用であることを確認した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を包含するものである。
(I)関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤
(I-1)HLA-Gのα1ドメインとHLA-Gのα3ドメインとが連結したアミノ酸配列を有するタンパク質の二量体(以下、「HLA-G[α1-3]ダイマー」ともいう。)を有効成分とする、関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患(以下、「関節リウマチ関連疾患」ともいう)の予防または治療剤。
当該予防または治療剤には、HLA-G[α1-3]ダイマーが「抗関節リウマチ作用」を発揮する有効量含まれている。
(I-2)HLA-G[α1-3]ダイマーを構成するHLA-G[α1-3]、言い換えると、HLA-Gのα1ドメインとHLA-Gのα3ドメインとが連結したアミノ酸配列を有するタンパク質が下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
上記二量体が、上記(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体であり、白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合活性を有するものである、(I-1)に記載する予防または治療剤。
(I-3)(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体が、各単量体のジスルフィド結合、またはジスルフィド結合によらない非共有的結合により形成されてなるものである、(I-1)または(I-2)に記載する予防または治療剤。
(I-4)関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、少なくとも3週間に1回の割合で局所投与される製剤形態を有するものである、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する予防または治療剤。
(II)関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療方法
(II-1)(I-1)に記載するHLA-G[α1-3]ダイマーを有効成分とする組成物を、関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、有効量投与する工程を有する、関節リウマチ若しくはその関連疾患の予防または治療方法。
なお、ここで「組成物」とは、好ましくは医薬製剤の形態を有するものである。また「有効量」とは、関節リウマチ若しくはその関連疾患の治療のために有効な量、または当該疾患の発症を予防するために有効な量を意味する。
(II-2)HLA-G[α1-3]ダイマーを構成するHLA-G[α1-3]が、下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
上記ダイマーが、上記(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体であり、且つ白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合活性を有するものである、(II-1)に記載する予防または治療方法。
(II-3)(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体が、各単量体のジスルフィド結合、またはジスルフィド結合によらない非共有的結合により形成されてなるものである、(II-1)または(II-2)に記載する方法。
(II-4)上記組成物がHLA-G[α1-3]ダイマーを有効成分とする医薬製剤であって、関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、少なくとも3週間に1回の割合で局所投与する工程を有する、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する方法。
(III)関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療のための使用
(III-1)関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療の為に使用される、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するHLA-G[α1-3]ダイマー、または当該HLA-G[α1-3]ダイマーを関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療に有効な割合で含有する医薬組成物。
(III-2)HLA-G[α1-3]ダイマーを構成するHLA-G[α1-3]が、下記(a)または(b)に記載するタンパク質であって
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
上記ダイマーが上記(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体であり、且つ白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合活性を有するものである、(III-1)に記載するHLA-G[α1-3]ダイマーまたは医薬組成物。
(III-3)上記ダイマーが、(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体が、各単量体のジスルフィド結合、またはジスルフィド結合によらない非共有的結合により形成されてなるものである、(III-1)または(III-2)に記載するHLA-G[α1-3]ダイマーまたは医薬組成物。
(III-4)関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、少なくとも3週間に1回の割合で局所投与される製剤形態を有するものである、(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載するHLA-G[α1-3]ダイマーまたは医薬組成物。
(IV)関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤の製造のための使用
(IV-1)関節リウマチまたはその関連疾患の予防若しくは治療剤を製造する為のHLA-G[α1-3]ダイマーの使用。なお、当該予防または治療剤には、当該予防または治療剤が「抗関節リウマチ作用」を発揮する有効量配合される。
(IV-2)HLA-G[α1-3]ダイマーを構成するHLA-G[α1-3]が下記(a)または(b)に記載するタンパク質であって
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質
上記ダイマーが上記(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体であり、且つ白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合活性を有するタンパク質である、(IV-1)に記載する使用。
(IV-3)HLA-G[α1-3]ダイマーが、(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体が、各単量体のジスルフィド結合、またはジスルフィド結合によらない非共有的結合により形成されてなるものである、(IV-1)または(IV-2)に記載する使用。
(IV-4)関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、少なくとも3週間に1回の割合で局所投与される製剤形態を有するものである、(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する使用。
本発明によれば、HLA-G[α1-3]ダイマーについて、新規な医薬用途、具体的には関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防または治療剤としての医薬用途を提供することができる。本発明の関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤は、本来ヒトの生体内に存在する成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーを有効成分とするものであるため、副作用が少なく安全性が高い。しかも、本発明の予防または治療剤は、関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に対して、単回局所投与することで少なくとも3週間もの間、抗関節リウマチ効果を持続させることができるので、この意味でも安全性が高く、患者への負担の少ない医薬製剤である。
(A)調製例1で調製したHLA-G[α1-3]ダイマーをゲルろ過クロマトグラフィーに供した結果(クロマトグラム)を示す。(B)上記ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて、ピーク(1)−(3)から分取した各画分をSDS-PAGEに供した電気泳動像を示す。 (A)HLA-G[α1-3]ダイマー又はネガティブコントロールであるBSAに対するLILRB2の反応を示す図である。実線はHLA-Gをセンサーチップに固定化した場合を示し、点線はBSAをセンサーチップに固定化した場合を示す。(B)は、HLA-G[α1-3]ダイマーとLILRB2のKd値を示す図である。 各種濃度HLA-G[α1-3]ダイマー(0.095μM、0.19μM、0.76μM、1.52μM)に対するPIRBの反応(結合及び解離)を、表面プラズモン共鳴実験により評価した結果を示す。 実験例1においてRAスコアの基準とする、前肢と後肢の大関節における関節炎の所見とそれに対する点数(左)と、指の小関節における関節炎の所見とそれに対する点数(右)を示す。 実験例1において、HLA-G[α1-3]ダイマーを投与したII型コラーゲン誘導型関節リウマチモデルマウス(CIAマウス)のRAスコアの推移を、HLA-G[α1-3]ダイマー投与から経時的に観察評価した結果を示す。
本発明は、HLA-G[α1-3]ダイマーを有効成分とすることを特徴とする、関節リウマチまたはその関連疾患の予防または治療剤、並びにその用法に関する。
(1)有効成分(HLA-G[α1-3]ダイマー)
(1-1)HLA-G[α1-3]
HLA-Gは、非古典的MHCI分子の1つであり、以下に示すように古典的MHCIとは異なる幾つかの独特な特性を有している:
(i)少数の組織:絨毛外栄養膜、胸腺上皮細胞、及び一部の腫瘍に非常に限定された発現(J. LeMaoult, et al.,(2003) Tissue Antigens, 62, 273-84.)
(ii)限定的な多型性
(iii)遅い輸送
(iv)比較的限定的なペプチド提示。
HLA-G分子は、白血球Ig様受容体(LILR)などの阻害性受容体への結合により、骨髄系単球細胞、T細胞及びNK細胞をはじめとする広範な免疫細胞の免疫応答を阻害し、免疫寛容を誘導する。
本発明が対象とするHLA-G[α1-3]ダイマーを構成するHLA-G[α1-3](単量体)は、HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとがこの順で連結してなるアミノ酸配列を有するタンパク質である。なお、ここでHLA-G分子は、好ましくはヒト由来のHLA-Gである。
かかるHLA-G[α1-3]には、好ましくはHLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとがこの順で連結してなるアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれる。HLA-G分子には種々のアイソフォームが存在しており、アイソフォームによってそれらのアミノ酸配列は若干相違する。HLA-G[α1-3]のアミノ酸配列の一例を配列表の配列番号1に、またそれをコードする遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。当該配列番号1において「1〜90番目のアミノ酸領域」がα1ドメインのアミノ酸配列に相当し、「91〜180番目のアミノ酸領域」がα3ドメインのアミノ酸配列に相当する。また、配列番号2において「1〜270番目の塩基配列」領域がα1ドメインをコードする遺伝子領域に相当し、「271〜540番目の塩基配列」領域がα3ドメインをコードする遺伝子領域に相当する。
なお、ヒトのHLA-G分子の配列情報は、例えばNCBI等により既に公知である。具体的には、アイソフォームの一つとして、NCBIには、NM_002127.5にヒト由来のHLA-G全長(=HLA-G1)の遺伝子配列が記載されており、このうちHLA-Gのα1ドメイン及びα3ドメインの遺伝子領域に相当する塩基配列が、それぞれ上記配列番号2の「1〜270番目の塩基配列」及び「271〜540番目の塩基配列」である。
本発明が対象とするHLA-G[α1-3]は、前述するHLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体そのもの(以下これを単に「α1-3連結体」ともいう)に限定されず、HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結構造を有し、且つ当該HLA-G[α1-3]の二量体が白血球Ig様受容体B2(LILRB2)に対して結合活性を有するものであればよい。例えば上記条件を有するものである限り、当該HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体(α1-3連結体)のアミノ酸配列(配列番号1)のうち、1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
ここで「1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質」には、HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体(α1-3連結体)のアミノ酸配列(配列番号1)のC端側にさらにHLA-G分子のイントロン4によってコードされるアミノ酸配列(配列番号3)を有するタンパク質、及びHLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体のアミノ酸配列(配列番号1)のC端側にさらにHLA-G2分子の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号4)を有するタンパク質を例示することができる。これらのタンパク質のうち、前者はHLA-G[α1-3]であり、後者はHLA-G2に相当する。
「1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質」のうち、好ましくは上記HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体の二量体の機能(白血球Ig様受容体B2との結合活性)を備え、且つ当該α1-3連結体のアミノ酸配列(配列番号1)と好ましくは90%以上、好ましくは95%以上同一のアミノ酸配列を有することを限度として、アミノ酸が欠失、置換若しくは付加してなるタンパク質である。より好ましくは上記連結体のアミノ酸配列(配列番号1)と96%以上同一、さらに好ましくは98%以上同一のアミノ酸配列を有するタンパク質である。
当該連結体の変異部位は、そのアミノ酸配列(配列番号1)において、白血球Ig様受容体B2との結合反応性に重要とされるアミノ酸残基以外の部位で行われる必要がある。
ここで、「白血球Ig様受容体B2との結合活性」とは、HLA-G[α1-3]ダイマーが白血球Ig様受容体B2と直接結合する活性であって、これにより白血球Ig様受容体B2を介してシグナルを伝達し、免疫制御効果を発揮することができる活性を意味する。
なお、HLA-G[α1-3]ダイマーが、白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合活性を有するか否かの確認は、例えば、T細胞ハイブリドーマを用いたレポーターアッセイなどにより行うことができる。かかるT細胞ハイブリドーマとしては、LILRB2の細胞外ドメインと活性型受容体PILRβの膜貫通・細胞内ドメインを融合させたキメラ分子を発現したNFAT-GFP導入レポーター細胞(マウスT細胞ハイブリドーマ)を例示することができる。この場合、HLA-G[α1-3]ダイマーがLILRB2受容体に結合すると、PILRβの細胞内ドメインを介したシグナルが伝達され、転写因子NFATが活性化される。レポーターアッセイは、当該NFATの活性化によりGFPの発現が誘導されることを利用したアッセイ系である。GFP発現は、LILRB2とHLA-G[α1-3]ダイマーとが結合したことを示すが、かかるGFP発現による蛍光の出現はフローサイトメトリーで確認することができる。
HLA-G[α1-3]の調製は、まず、公知の遺伝子組換え技術を用いて、HLA-G[α1-3]のアミノ酸配列をコードする遺伝子を発現ベクター等に組込んだ組換えベクターを構築し、次いで、公知の各種形質転換法により、構築した組換えベクターを宿主に導入して形質転換体を得、これを培養することにより、組換えHLA-G[α1-3]を発現させ、回収することにより行うことができる。
ここでHLA-G[α1-3]のアミノ酸配列をコードする遺伝子としては、HLA-Gのα1ドメインとα3ドメインとの連結体のアミノ酸配列(配列番号1)をコードする遺伝子(配列番号2)のほか、当該連結体のアミノ酸配列の一部を欠失、置換または付加してなる前述のHLA-G[α1-3](以下、これを便宜上「変異型HLA-G[α1-3]」という)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を用いることもできる。
変異型HLA-G[α1-3]をコードする遺伝子は、α1-3連結体の遺伝子のDNA配列に変異を導入して調製すればよく、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987-1997)等に記載の部位特異的変異導入法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異導入法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができる。当該キットとしては、例えば、QuickChangeTM Site‐Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site‐Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。
形質転換体の作成に使用される宿主は、導入された組換えベクター等からHLA-G[α1-3](α1-3連結体、変異型)を発現し得るものであれば、特に限定はされず、例えば、ヒトやマウス等の各種動物に由来する細胞、各種昆虫に由来する細胞、大腸菌などの原核細胞、酵母などの真核細胞、植物細胞等、宿主となりえる公知の細胞が使用できる。
但し、宿主として大腸菌を用いる場合、培養液1Lあたりの発現産物の収量が2-3mgと、HLA-G[α1-3](α1-3連結体、変異型)の発現効率が極めて低いという問題がある。かかる問題は、HLA-G[α1-3]のアミノ酸配列をコードする遺伝子として、例えば配列番号2に示す塩基配列の第1〜18番目(HLA-G[α1-3]のアミノ酸配列において1〜6番目のアミノ酸をコードする塩基配列に相当する)の塩基配列を、配列番号5に示す塩基配列で置換して得られる遺伝子(以下、「改変遺伝子」という)を用いることによって解消することができる。配列番号2に示す塩基配列において、配列番号5に示す塩基配列による改変を有する改変遺伝子の塩基配列を配列番号6に示す。
当該改変遺伝子を用いると、大腸菌を宿主とした場合でも、培養液1Lあたり約100mgもの多くのHLA-G[α1-3]を回収することが可能となる(調製例1参照)。
組換えHLA-G[α1-3]の製造は、具体的には、上述の形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から組換えHLA-G[α1-3]を採取する工程とを含む方法により行うことができる。ここで、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。上記形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。目的のタンパク質は、上記培養物中に蓄積される。
組換えHLA-G[α1-3]が細胞外に生産される場合は、培養液をそのまま使用するか、遠心分離やろ過等により細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により、培養物中から組換えHLA-G[α1-3]を採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することができる。
組換えHLA-G[α1-3]が細胞内に生産される場合は、細胞を破砕することにより組換えHLA-G[α1-3]を採取することができる。可溶性画分にHLA-G[α1-3]が含まれる場合は、破砕後、遠心分離や濾過などにより、必要に応じて細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除く。残渣除去後の上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製したタンパク質溶液とすることができる。一方、不溶性画分に封入体としてHLA-G[α1-3]が発現する場合は、破砕後、遠心分離により不溶性画分を単離し、界面活性剤等を含んだバッファーで洗浄、遠心を繰り返すことにより、細胞の破砕残渣を取り除く。得られた封入体はグアニジンや尿素などの変性剤を含むバッファーで可溶化した後、希釈法や透析法を利用した蛋白質の巻き戻しを行う。機能的に巻き戻ったHLA-G[α1-3]の精製は各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することができる。
また、組換えHLA-G[α1-3]の産生は、形質転換体を用いたタンパク質合成系のほか、生細胞を全く使用しない無細胞タンパク質合成系を用いて行うこともでき、産生された組換えHLA-G[α1-3]は、クロマトグラフィー等の手段を適宜選択して精製することができる。
(1-2)HLA-G[α1-3]ダイマー
HLA-G[α1-3]ダイマーは、前述するHLA-G[α1-3]同士が、ジスルフィド結合するか、またはジスルフィド結合によらないで非共有結合的に結合することにより、二量体化したものである。
HLA-G[α1-3]ダイマーは、前述するα1-3連結体同士又は変異型同士からなるホモダイマーであってもよいし、またはα1-3連結体と変異型からなるヘテロダイマーであってもよく、限定はされない。好ましくはα1-3連結体同士からなるホモダイマーである。
また、HLA-G[α1-3]ダイマーは、白血球Ig様受容体B2(LILRB2)との結合部位を表面に露出した構造を有し、これらの受容体との結合が立体障害により妨げられないものである。そのため、HLA-G[α1-3]ダイマーは、HLA-G[α1-3]と同種の機能(白血球Ig様受容体B2への結合活性)を保持しうる構造を有する。
HLA-G[α1-3]ダイマーの、白血球Ig様受容体B2との結合性及びその効率は、例えば、T細胞ハイブリドーマを用いたレポーターアッセイ、表面プラズモン共鳴解析、ネイティブゲルシフトアッセイなどにより測定することができる。後述する調製例1に示すように、HLA-G[α1-3]ダイマーは、白血球Ig様受容体B2との結合効率が非常に高いため、免疫系細胞の活性化抑制に有効に用いることができる。
HLA-G[α1-3]ダイマーは、どのような方法で得られるものであってもよく、その取得方法に特に限定はされない。
(2)製剤形態
本発明の予防または治療剤(以下、これを総称して「本発明の製剤」という。当該製剤は、本発明が対象とする組成物(医薬組成物)の一態様である。)において有効成分となるHLA-G[α1-3]ダイマーは、必要に応じて各種塩や水和物等の状態で用いられてもよい。また、保存安定性(特に活性維持)を考慮して適当な化学的修飾がなされた状態で用いられてもよい。またHLA-G[α1-3]ダイマーは、結晶化状態で用いられてもよいし、溶解状態で用いられてもよい。
本発明の製剤は、有効成分としてHLA-G[α1-3]ダイマーを含む以外、他の成分を含むことができる。他の成分としては、当該製剤の用法(使用形態)に応じて必要とされる製薬上の各種成分(薬学的に許容し得る各種担体等)が挙げられる。これらの他の成分は、本発明の有効成分により発揮される効果(関節リウマチ若しくはその関連疾患の治療効果、または当該疾患の発症を予防する効果)が損なわれない範囲で適宜含有することができる。
本発明の製剤において、有効成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーの配合割合は、限定はされないが、関節リウマチ若しくはその関連疾患の治療のための有効量、または当該疾患の発症を予防するための有効量、配合されていることが好ましい。具体的には、有効成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーが、製剤全体に対して0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上である。有効成分の含有割合が上記範囲を満たすことにより、本発明の抗関節リウマチ作用を発揮することができる。
また、有効成分としてのHLA-G[α1-3]ダイマーは、より高純度となるように精製されたものであることが好ましい。具体的には、例えば50%以上の純度が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の製剤は、ヒト又は非ヒト哺乳動物に対し、種々の投与経路、具体的には、経口又は非経口(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、皮内投与、直腸投与、経皮投与)で投与することができる。好ましくは皮下投与や経皮投与などの非経口的な局所投与である。
従って、有効成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーは、単独で用いることも可能であるが、上記投与経路に応じて、慣用される方法により薬学的に許容し得る担体を用いて適当な剤形に製剤化することができる。
好ましい剤形としては、経口剤では、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、及びトローチ剤等が好ましく挙げられる。また、非経口剤では、例えば、吸入剤、坐剤、注射剤(点滴剤を含む)、軟膏剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤、及びリポソーム剤等が好ましく挙げられる。
これら製剤の製剤化に用い得る担体としては、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤のほか、必要に応じて、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、及び無痛化剤等が挙げられ、医薬品製剤の原料として用いることができる公知の成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
本発明の製剤に使用可能な無毒性の成分としては、例えば、大豆油、牛脂、及び合成グリセライド等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、及び固形パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸オクチルドデシル、及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;セトステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子;エタノール、及びイソプロパノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、及びポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);グルコース、及びショ糖等の糖;無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩;精製水等が挙げられ、いずれもその塩またはその水和物であってもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、及びメグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、及びカルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、及び硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、及び桂皮末等が、それぞれ好ましく挙げられ、いずれもその塩又はそれらの水和物であってもよい。
本発明の製剤が経口製剤の場合は、有効成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーに、賦形剤、さらに必要に応じ、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤等を加えた後、常法により、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、及びカプセル剤等とすることができる。錠剤及び顆粒剤の場合には、例えば、糖衣するほか、必要に応じ、その他の公知の手法で適宜コーティングすることもできる。シロップ剤及び注射用製剤等の場合は、例えば、pH調整剤、溶解剤、及び等張化剤等、並びに必要に応じて溶解補助剤、及び安定化剤等を加えて、常法により製剤化することができる。また、外用剤の場合は、製法は限定されず、常法により製造することができる。使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能であり、例えば、動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、及び精製水等の原料が挙げられ、必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、及び香料等を添加することができる。さらに必要に応じて、血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、及び角質溶解剤等の成分を配合することもできる。この場合、担体に対するHLA-G[α1-3]ダイマーの割合は、限定はされず、1〜90重量%の間で適宜設定することができる。
(3)対象疾患:関節リウマチまたはその関連疾患
本発明の製剤は、関節リウマチの症状緩和若しくは軽減、または関節リウマチに起因して生じる疾患(関節リウマチ関連疾患)の予防に用いられる。
ここで関節リウマチは、全身の関節における滑膜の炎症を特徴とする進行性の自己免疫疾患である。その症状は、初期は関節痛から始まるが、その後進行が進むと、関節の変形や、血管、心臓、肺、皮膚、筋肉といった全身臓器にも障害が及ぶようになる。
なお、関節リウマチかどうかの診断には、下記に示すアメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準が、一般的に使用されている:
1.朝のこわばり(1時間以上持続する)
2.多関節炎(少なくとも3領域以上の関節の腫れ)
3.手の関節の腫れ
4.対称性の関節の腫れ
5.リウマトイド結節
6.リウマトイド因子(リウマチ因子)陽性
7.レントゲン検査で典型的な関節所見。
これら7項目のうち、4項目以上を満たす場合に、関節リウマチと判断することができる。
本発明において「抗関節リウマチ作用」、または「抗関節リウマチ効果」とは、上記7項目のうち、少なくとも「3.手の関節の腫れ」、好ましくは手の大関節の腫れを減少させる作用または効果を発揮することを意味する。本発明において「抗関節リウマチ作用」、または「抗関節リウマチ効果」には、関節炎症を抑えることによって関節リウマチの症状進行を緩和する作用・効果が含まれる。
また本発明において「関節リウマチ関連疾患」とは、前述する関節リウマチに起因して生じる疾患、言い換えると関節リウマチの症状進行に伴って生じる疾患を意味する。かかる疾患は、関節リウマチの症状進行を緩和し軽減することによって、その発症を予防(当該予防には、発症遅延の意味も含まれる)することができ、またその疾患の発症程度を軽減することができる。
かかる関節リウマチ関連疾患としては、具体的には、シェーグレン症候群、乾燥性角結膜炎およびそれによるドライアイ、リウマトイド結節、穿孔性強膜軟化症、上強膜炎、および強膜炎等の眼科疾患:間質性肺炎、閉塞性細気管支炎、胸膜炎、気胸、膿胸、気道病変、胸膜病変、リウマチ結節、血管病変、および睡眠時無呼吸症候群(顎関節病変、輪状披裂関節病変)等の呼吸器系の疾患;心外膜炎、症候性心外膜炎、慢性収縮性心膜炎、弁機能障害、塞栓症、伝導障害、心筋障害、大動脈炎、大動脈弁閉鎖不全、および動脈瘤破裂等の心臓系の疾患;慢性炎症によるAAアミロイドーシスやリウマトイド血管炎による虚血性腸炎などの消化管系疾患;関節リウマチに合併するシェーグレン症候群による間質性腎炎、間質性腎病変、蛋白尿、続発性アミロイドーシス、関節リウマチに合併するAAアミロイドーシスによる糸球体病変(膜性腎症)などの腎臓系疾患;頚椎変形による脊髄障害、腱滑膜炎による圧迫性神経障害、関節リウマチに合併する血管炎による多発性単神経炎などの神経系疾患;リウマトイド結節、皮膚血管炎(白血球破砕性血管炎)、および虚血性皮膚潰瘍などの皮膚科系の疾患;貧血(小球性低色素性貧血)、脾腫、白血球(好中球のみ)減少をきたしたフェルティー症候群等の血液系の疾患を例示することができる。また合併症として多いのは、間質性肺炎、血管炎、およびシェーグレン症候群である。
(4)投与方法
本発明の製剤を非経口投与(例えば注射投与)する場合、その有効な投与量は、例えば、関節リウマチの症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態等に応じて異なり、限定はされないが、例えば、有効成分であるHLA-G[α1-3]ダイマーの割合に換算して、体重60kgの成人に対して1回あたり20mg以上、好ましくは20mg〜200mg程度を投与することができる。
非経口投与としては、前述するように注射剤を用いて皮下または皮内などに局所投与されることが好ましい。実験例で示すように、本発明の製剤は、かかる局所投与により、四肢全体の関節の腫れを低減し、抗関節リウマチ作用を発揮することができる。また本発明の製剤は、実験例に示すように、1回の非経口投与により、少なくとも3週間の長期間に亘って抗関節リウマチ作用が持続するという効果がある。このため、本発明の製剤の投与方法としては、少なくとも3週間に1回の頻度で、局所投与することが好ましい。
また本発明の製剤を経口投与する場合、その投与形態及び有効な投与量は、投与対象、投与経路、製剤の性質、患者の状態、及び医師の判断等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば、有効成分HLA-G[α1-3]ダイマーの量に換算して、体重60kgの成人に対して1回あたり20mg以上、好ましくは20mg〜200mg程度を投与することができる。投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は適宜広範に設定することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
調製例1 HLA-G[α1-3]ダイマーの調製
(1)α1-3連結体を大腸菌で封入体として発現
pGMT7ベクターを制限酵素NdeIおよびHindIIIで切断した後、HLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインとの連結体(α1-3連結体)をコードする遺伝子(配列番号2)、並びにその改変体(配列番号6)を、T4DNAリガーゼを用いて挿入し、それぞれHLA-G[α1-3]-pGMT7、改変型HLA-G[α1-3]-pGMT7を構築した。
なお、改変型HLA-G[α1-3]-pGMT7は、下記の方法で行った。
まずHLA-G[α1-3]-pGMT7プラスミドを鋳型にして、PCR用緩衝液(Promega社製)、deoxyNTP混合液(TOYOBO社製)、5’側プライマー(atgggtagtcatagtatgcgttattttagcgcggccgtgag:配列番号9)、3’側プライマー(ctcacggccgcgctaaaataacgcatactatgactacccat:配列番号10)(それぞれ最終濃度0.2μM)及びPfuTurboDNA Polymerase(Promega社製)を加え、PCRを行った。その際、反応は変性30秒(95℃)、アニール1分(60℃)、エクステンション8分(68℃)にて25サイクル行った。次に、PCR産物にDpnI(NEB社製)を加え、37℃で1時間反応させ、鋳型を除去し、アガロースゲル電気泳動を行い、PCR産物の存在を確認した。そして、DNAシークエンサーで塩基配列を確かめ、改変型HLA-G[α1-3]-pGMT7プラスミドを得た。
HLA-G[α1-3]よりも改変型HLA-G[α1-3]の収量の方が数十倍高かったため、以後の実験は、改変型HLA-G[α1-3]-pGMT7プラスミドを用いて行った。
次に、この改変型HLA-G[α1-3]-pGMT7プラスミドで、大腸菌BL21(DE3)pLysS株を形質転換し、100mg /Lのアンピシリンを含む2×YT培地(0.5%塩化ナトリウム、1.6%トリプトン、1%乾燥酵母エキス(以上、ナカライテスク社製))中で、37℃で培養した。次に、培養懸濁液がOD600=0.4〜0.6に達した時点で、1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに37℃で4〜6時間発現誘導した。
(2)大腸菌封入体の巻き戻し
IPTGを添加して発現誘導した菌体懸濁液を遠心分離機にかけ菌体を集め、Resuspension buffer(50mMトリスpH8.0,100mM塩化ナトリウム)を加え、懸濁し、超音波破砕で菌体を破砕した後、遠心分離して封入体を得た。この封入体をTriton wash buffer(0.5%TritonX-100、50mMトリスpH8.0,100mM塩化ナトリウム)及びResuspension buffer(50mMトリスpH8.0、100mM塩化ナトリウム)で十分洗浄した後に、6.0M Guanidine solution(6.0Mグアニジン、50mMメスpH6.5,10mM MEDTA)で可溶化した。この時点で、HLA-G[α1-3]溶液を紫外吸光法により測定したところ、A280値が約70であり、HLA-G[α1-3]の発現量はおよそ100mg/Lであると考えられる。Refolding buffer(0.1M トリスpH8.0, 0.4M L-アルギニン、5mM EDTA、3.7mM シスタミン、6.4mMシステアミン)を用いて一般的な希釈法で4℃、72時間撹件しながら巻き戻した。そして、これを濃縮した後、下記条件のゲルろ過クロマトグラフィーに供して精製した。
<ゲルろ過クロマトグラフィー条件>
カラム:HiLoad 26/60、Superdex 75(60cm、id 26mm)
移動相:20mM Tris-HCl、100mM NaCl buffer(pH8)
流速:2.5ml/min
ゲルろ過クロマトグラフィーで得られたクロマトグラムを図1(A)に示す。図1(A)に示すように、3つのピークが検出された。各ピーク画分(1)−(3)を分取し、各画分を非還元条件でSDS-PAGE(15%アクリルアミドゲル)に供した。その結果を図1(B)に示す。HLA-G[α1-3]ダイマーの分子量(44kDa)から、3番目のピークがHLA-G[α1-3]ダイマーの溶出画分であることを確認し、当該画分を回収濃縮してHLA-G[α1-3]ダイマー(被験試料)とした。
(3)活性測定
Reaction buffer(50mM D-biotin、l00mM ATP、15μM BirA)にLILRB2のN末側2ドメイン(D1D2)を溶解し、C末端をビオチン化した。ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 75)によりreaction bufferからビオチン化LILRB2を分離し精製した。
BIAcore(登録商標)3000(GE healthcare社のBIAcore)を使用し、HLA-G[α1-3]ダイマーとLILRB2との結合性を表面プラズモン共鳴実験により評価した。まず、研究用センサーチップ上に、ストレプトアビジンを共有結合で固定化し、そのストレプトアビジンを介して、ビオチン化LILRB2とネガティブコントロールであるBSAを固定化した。次に、ランニングバッファーであるHBS-EP(10mMへペスpH7.5, 150mM塩化ナトリウム、3.4mM EDTA、0.005% Surfactant P20)に溶解したHLA-G[α1-3]を10μL/分で流した。各濃度での結合応答は、サンプルフローセルにおける応答から対照フローセルにおいて測定された応答を減算することによって計算した。見かけ上の結合定数(Kd)は、BIAevaluationソフトにより、1:1結合モデルを用いて解析した結果、1.5nMであった。
図2は、LILRB2又はネガティブコントロールであるBSAに対するHLA-G[α1-3]ダイマーの反応を示す図である。実線はLILRB2をセンサーチップに固定化した場合を示し、点線はBSAをセンサーチップに固定化した場合を示す。図2(A)によれば、BSAと比較して、LILRB2はHLA-G[α1-3]ダイマーに結合している。図2(B)は、HLA-G[α1-3]ダイマーとLILRB2の見かけ上のKd値を示す図である。図2(B)によれば、見かけ上のKd値は1.5nMである。この結果から、HLA-G[α1-3]ダイマーはLILRB2に結合することが確認された。
実験例1 マウス免疫抑制性レセプターPIRBに対する結合性
ヒト免疫抑制性レセプター(leukocyte immunoglobulin-like receptor B)であるLILRBのマウスホモログであるPIRB(pried-immunoglobulin-like receptor B)に対するHLA-G[α1-3]ダイマーの結合性を、表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance)を用いて評価した。
(1)PIRBの調製
PIRBの細胞外ドメインをHEL293T細胞にトランスフェクションし、これを1%FCS-DMEMで72時間培養した。PIRBの細胞外ドメインのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列を、それぞれ配列番号7及び8に示す。なお、PIR-Bの全長のアミノ酸配列はNCBIのNM_011095において公表されており、PIR-B細胞外ドメインはこのうちドメイン1〜6にあたる部分である。
次いで、培養物から上清を回収し、NiアフィニティクロマトグラフィーによりPIRB細胞外ドメインを精製し、ウエスタンブロッティング(12.5%アクリルアミドゲル)に供して、推定分子量75kDaから精製取得したタンパク質がPIRB細胞外ドメインであることを確認した。
精製したPIRB細胞外ドメインを、Reaction buffer(50mM D-biotin、l00mM ATP、15μM BirA)に15μMとなるように溶解し、ビオチン化した。ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 200)によりreaction bufferからビオチン化PIRB細胞外ドメインを分離し精製した。
(2)HLA-G[α1-3]ダイマーのPIRB(細胞外ドメイン)への結合性評価
BIAcore(登録商標)3000(GE healthcare社のBIAcore)を使用し、HLA-G[α1-3]ダイマーと上記で調製したPIRB細胞外ドメインとの結合性を表面プラズモン共鳴実験により評価した。まず、研究用センサーチップ上に、ストレプトアビジンを共有結合で固定化し、そのストレプトアビジンを介して、ビオチン化PIRB細胞外ドメインとネガティブコントロールであるBSAを固定化した。次に、ランニングバッファーであるHBS-EP(10mMへペスpH7.5, 150mM塩化ナトリウム、3.4mM EDTA、0.005% Surfactant P20)に溶解したHLA-G[α1-3]ダイマーを5μL/分で流した。各濃度での結合応答は、サンプルフローセルにおける応答から対照フローセルにおいて測定された応答を減算することによって計算した。結合定数(Kd)は、ORIGIN7(Microcal Software)によって、スキャッチャード分析又は標準ラングミュア結合等温線の非線形カーブフィッティングによって得た。
図3は、各濃度HLA-G[α1-3]ダイマー(0.095μM、0.19μM、0.76μM、1.52μM)に対するPIRBの反応を示す図である。図3の結果から、1:1結合モデルを用いた解析によるみかけの解離定数(Kd値)は142nMであった。この結果から、HLA-G[α1-3]ダイマーは、免疫抑制性レセプターであるヒトLILRB2に結合するのと同様に(図2参照)、ヒトLILRB2に相当するマウスのPIRBの細胞外ドメインに結合することが確認された。
実験例2 関節リウマチモデルマウスへの投与
(1)II型コラーゲン誘導型関節リウマチモデルマウス(collagen induced arthritis:CIA)の作成
(1-1) ウシII型コラーゲン含有エマルジョンの調製
ウシII型コラーゲンに0.02M Tris-HCl及び0.15M NaCl を含有するbuffer(pH8.0)を加え、4℃、遮光条件下で一晩かけて溶解した。これに初回感作(一次感作)の際には等量のComplete Freund’s Adjuvantを加えて、ホモジナイザーを用いて5分以上混合し、ウシII型コラーゲン含有エマルジョンを調製した。なお、当該エマルジョン50μl/(1匹あたりの投与量)中には100μgのウシII型コラーゲンが含まれている。他方、追加感作(二次感作)の際には等量のIncomplete Freund’s Adjuvantを加えて、ホモジナイザーを用いて5分以上混合し、ウシII型コラーゲン含有エマルジョンを調製した。なお、これらのエマルジョン50μl/(1匹あたりの投与量)中には200μgのウシII型コラーゲンが含まれている。
(1-2) II型コラーゲン誘導型関節リウマチモデルマウス(CIAマウス)の作成
(i)初回感作(一次感作)
マウス(DBA/1JNCrlj、オス6週齢、チャールスリバー社から入手)50匹を、ジエチルエーテルで麻酔した後、マウス固定器に入れ、マウスの尾先端部より約3cmの部分の裏側の皮内に、上記で調製したウシII型コラーゲン含有エマルジョン50μlを注入(皮内投与)した。
(ii)追加感作(ニ次感作)
上記初回感作から2週間後、再度上記のマウス50匹を、ジエチルエーテルで麻酔した後、マウス固定器に入れ、マウスの尾根部の皮内にウシII型コラーゲン含有エマルジョン50μlを注入した。
(2)CIAマウスに対するHLA-G[α1-3]ダイマーの抗炎症作用
追加感作から1週間後に、上記マウスを各群23匹になるように2群(HLA-G[α1-3]ダイマー投与群、コントロール群)に分け、一方の群には調製例1で調製したHLA-G[α1-3]ダイマー含有溶液(0.51mg/ml PBS)、他方の群にはコントロールとしてPBS溶液(pH7.4)を、50μlずつ、26G針をつけた1ml容量のシリンジを用いて、左の後肢ウラに皮内投与し、週6日間、合計3週間に渡り観察し、RAスコアに従って採点した。
なお、RAスコアは、(a)前肢及び後肢における関節炎の所見(図4(左)参照)と、(b)指の小関節における関節炎の所見(図4(右)参照)から、表1に示す規準に従って得点化し、その得点の総数を、対象とするCIAマウス1匹あたりのRAスコアとする。具体的には、手足の甲の腫れ(所見A=3点、所見B=4点、所見C=5点)、および指関節の腫れ一本につき1点として得点化した。すなわち、四肢一本につき、最大で10点(甲の腫れ最大で5点+指関節の腫れ合計で最大5点)、四肢合計で最大40点となる。なお、評価および得点化は盲検法により特定の1名の判定者によって行った。
Figure 2015140322
結果を、図5に示す。
図5から分かるように、コントロール(PBS)群に比べて、HLA-G[α1-3]ダイマー投与群はRAスコア数が有意に低く、その効果は3週間にわたって続くことが判明した。このことから、HLA-G[α1-3]ダイマーの投与により、関節リウマチの炎症症状である関節腫脹が抑えられること、この効果は1回投与で少なくとも3週間は持続することが確認された。また、HLA-G[α1-3]ダイマーは脚の局所に皮内投与することで(局所投与)、関節腫脹を四肢全体にわたって抑制することが確認できた。
配列番号1はHLA-G分子のα1ドメインとα3ドメインの連結体(α1-3連結体)のアミノ酸配列、配列番号2は当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、配列番号3はHLA-Gのintron 4のアミノ酸配列、配列番号4はHLA-G2の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインのアミノ酸配列、配列番号5は配列番号2の1〜18番目の塩基配列に改変を加えるために使用した塩基配列、配列番号6は配列番号2において配列番号による改変を有する改変遺伝子の塩基配列、配列番号7はPIR-Bのアミノ酸配列、配列番号8は当該アミノ酸配列をコードする塩基配列、並びに配列番号9及び10はそれぞれ5’側プライマー及び3’側プライマーの塩基配列を示す。

Claims (3)

  1. HLA-Gのα1ドメインとHLA-Gのα3ドメインとが連結したアミノ酸配列を有するタンパク質の二量体を有効成分とする、関節リウマチまたは関節リウマチに起因して生じる疾患の予防または治療剤。
  2. HLA-Gのα1ドメインとHLA-Gのα3ドメインとが連結したアミノ酸配列を有するタンパク質が、下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質であって:
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
    上記二量体が、上記(a)同士若しくは(b)同士のホモ二量体または(a)と(b)とのヘテロ二量体であり、白血球Ig樣受容体B2との結合活性を有するものである、請求項1に記載する予防または治療剤。
  3. 関節リウマチ若しくはその関連疾患に罹患しているか、または当該疾患を発症し得る患者に、少なくとも3週間に1回の割合で局所投与される製剤形態を有するものである、請求項1または2に記載する予防または治療剤。
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