JP2015137511A - 鉄骨構造物、及び、耐震改修工法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、施工の現場で補剛対象に応じた最適な隙間を容易に得ることができる手法を、低コストで提供することを目的とする。
本発明の鉄骨構造物によると、他のセグメントとの関係に関わることなく、セグメントが各々独立して隙間を調整できるので、現場での施工により最適な隙間を設定することができる。
鉄骨構造物が水平外力を受けると水平部材を跨ぐ柱頭部と柱脚部に大きな曲げモーメントが生ずるので、水平部材を利用してセグメントを固定すれば、位置決めを容易にできる。
この構成を採用することにより、両ねじ部材を回すことにより、現場での隙間の調整を可能としながら、拘束部材の分割数を減らすことができる。
この構成を採用すれば、既設の鉄骨構造物の水平部材に加工を施す不要がないので、拘束部材の施工を容易に行うことができる。
この耐震改修工法において、上述した好ましい態様を適用することができる。
[第1実施形態]
本実施形態に係る拘束部材10は、図1及び図2に示すように、鉄骨構造物1に適用される部材であり、複数のセグメント20から構成される。鉄骨構造物1は、鉄骨からなる複数の柱3と、隣接する柱3を繋ぐ水平部材としての鉄骨からなる梁(又は水平ブレース)5と、を備えている。
はじめに、角型鋼管からなる柱3に適用される拘束部材10について説明する
この拘束部材10は、図2(b)に示すように、柱3の四つの外側面の各々に対応して設けられる四つのセグメント20を備えている。各々のセグメント20は、柱3の曲げ変形に追従するように、溶接、ボルト締めなどにより柱3と接合される梁5に固定される。
はじめに、鉄骨構造物1に水平外力Fが作用すると柱3には図1に示すように曲げモーメントMが生ずる。この曲げモーメントMは、柱本体部3Bの軸方向の中央Cから柱頭部3BUに向けて、また、中央Cから柱脚部3BLに向けて徐々に大きくなる。本実施形態は、この曲げモーメントMが大きくなる柱頭部3BU及び柱脚部3BLに、拘束部材10を選択的に設けている。これにより、水平外力Fにより柱頭部3BU及び柱脚部3BLが面外方向へ変位したときに、柱頭部3BUの側壁が拘束部材10のいずれかのセグメント20(拘束体23)に接触して、その面外方向への変位が規制される。こうして、拘束部材10によって、柱3に局部座屈が発生するのを防止できる。しかも、補剛部分が柱頭部3BU及び柱脚部3BLに限られているために、拘束部材10を作製するコストを低減できるとともに、拘束部材10を施工する手間が少なくて済む。
つまり、隙間を空けることなく拘束部材10を柱頭部3BU及び柱脚部3BLに接触させて設けると、拘束部材10を設けた部分の剛性が高くなるので、それまでに取られていた鉄骨構造物1のバランスが崩れてしまう。そうすると、拘束部材10を設ける部位を除く部位、例えば基礎構造部分の剛性が相対的に弱くなり得る。この剛性が弱くなった部分は、地震に代表される大きな振動を受けると、損傷を受ける可能性が危惧される。
これに対して、本実施形態は、拘束部材10と柱頭部3BU及び柱脚部3BLとの間に隙間を設けているので、拘束部材10の施工以前の鉄骨構造物1の剛性バランスが維持されるので、地震等により水平外力Fが作用しても、補剛部以外における損傷の危険性を高めることはない。
本実施形態は、例えば、隙間G1にしたければ、柱頭部3BUから拘束体23までの距離がG1になるように四つのセグメント20の位置を調整してから、セグメント20を梁5に接合すればよい。同様に、隙間G2にしたければ、柱頭部3BUから拘束体23までの距離がG2になるように四つのセグメント20の位置を調整してから、セグメント20を梁5に接合すればよい。したがって本実施形態は、異なる隙間G1,G2…を得るのに、異なる寸法、形状のセグメントを用意する必要がなく、同じ形状、寸法のセグメント20を用いることができる。このように本実施形態は、一種類のセグメント20で、種々の隙間を得ることができるので、拘束部材10のコストを下げることができる。
セグメント30は、基本的な構成要素として、梁5に接合される接合体31と、接合体31の幅方向の一端側から立ち上がり、柱頭部3BU又は柱脚部3BLに対向する拘束体33と、接合体31と拘束体33の間に設けられる補剛リブ35と、を備えている点では、セグメント20と同じである。
しかし、拘束体33は、柱3の外形形状に対応して、柱3に対向する面が円弧面に形成されている。また、セグメント30の数、つまり、拘束部材10を分割する数が、図3(a)の例では六つである。なお、六つのセグメント30は、ダイアフラムを用いて梁5に接合することができる。
しかし、第1セグメント40aと第2セグメント40bとは、設けられる位置が相違することに対応して、形状及び寸法が相違する。また、第2セグメント40bは、一つの内側空間に二つ設けられている。これは、フランジ3F,3F間の間隔が相違する柱3であっても、二つの第2セグメント40b,40bの各々とフランジ3F,3Fの各々の隙間を任意に調整できるようにするためである。
次に、第2実施形態として、セグメントの分割数を少なくするのに有効な手段を説明する。
角型鋼管からなる柱3に適用される拘束部材10は、図4(a),(b)に示すように、二つのセグメント50a,50bを備えている。セグメント50aは、柱3の隣接する二つの外側面の各々に対応する、第1拘束部51aと第2拘束部52aが連なって形成されている。セグメント50aは、第1拘束部51aから突出する接合フランジ53aと、第2拘束部52aから突出する接合フランジ54aと、を備えている。セグメント50bは、同様に、柱3の隣接する二つの外側面の各々に対応する、第1拘束部51bと第2拘束部52bが連なって形成されている。セグメント50bは、第1拘束部51bから突出する接合フランジ53bと、第2拘束部52bから突出する接合フランジ54bと、を備えている。
拘束部材10は、二つのセグメント50a,50bが、第1拘束部51aと第2拘束部52a、第1拘束部51bと第2拘束部52bにより柱3の周囲を取り囲むように配置される。第1拘束部51a,第2拘束部52aと柱3の間(柱頭部3BU,柱脚部3BL)、及び、第1拘束部51b,第2拘束部52bと柱3の間には隙間Gが設けられている。
図4(b)に示すように、二本の両ねじボルト57は、右ねじ部57Rがセグメント50aの接合フランジ53a,54aに噛み合わされ、左ねじ部57Lがセグメント50bの接合フランジ53b,54bに噛み合わされる。接合フランジ53a,54aには、右ねじ部57Rと噛み合うめねじ55Rが表裏を貫通して形成されており、接合フランジ53b,54bには、左ねじ部57Lと噛み合うめねじ55Lが表裏を貫通して形成されている。
拘束部材10は、柱3の全体の曲げ変形に追従するように、柱3と接合している梁5に固定される。第3実施形態は、拘束部材10(セグメント)を梁5に固定するのに好ましい手段を提案する。
拘束部材10を梁5に固定するのにあたり、施工時間を短縮するために、既設の鉄骨構造物1(柱3,梁5)への加工を要しないことに加えて、既設の鉄骨構造物1によっては溶接のように火を用いる作業が制約される場合があるため、火を用いない固定方法であることを前提とする。
固定部材61は、間隔を空けて設けられる一対のフランジ62,63と、フランジ62,63を繋ぐウェブ64と、を備えている。一方のフランジ63には、締結部材67に噛み合うめねじ65が表裏を貫通して形成されている。固定部材61は、例えば溝型鋼を所定幅に切断して作成することができる。
締結部材67は、めねじ65に噛み合うおねじ68が外周の所定範囲に形成されている。
はじめに、図6(b)に示すように、一対のフランジ62,63の間に梁5のフランジ5Fとセグメント40aの接合体41aを挟むようにして固定部材61を装着する。このとき、締結部材67は、その先端がフランジ62,63の間に突出しないように、フランジ62の内部に後退して保持されている。
フランジ5Fと接合体41aがフランジ62,63の間に隙間が生じなくなるまで固定部材61を押し込んだならば、締結部材67を締め付けていくと、その先端が接合体41aに押し付けられる一方、フランジ62がフランジ5Fに押し付けられるので、セグメント40aはこれらの締結力により梁5に固定される。本実施形態は、二つの固定具60により一つのセグメント40aを梁5に固定する。セグメント40bについても同様にして、梁5に固定することができる。
また、締結部材67を締め付けるだけで拘束部材10を固定可能であるため、固定具60は火を避ける必要のある既設の鉄骨構造物1にも適用できる。
3 柱
3A 仕口部
3B 柱本体部
3BL 柱脚部
3BU 柱頭部
3F,3F フランジ
3W ウェブ
5 梁
5F フランジ
5W ウェブ
10 拘束部材
20,30,40a,40b,50a,50b セグメント
21,31,41a,41b 接合体
23,33,43a,43b 拘束体
25,35,45a,45b 補剛リブ
51a,51b,52a,52b 拘束部
53a,53b,54a,54b 接合フランジ
57 両ねじボルトボルト
57L 左ねじ部
57R 右ねじ部
60 固定具
61 固定部材
62,63 フランジ
64 ウェブ
67 締結部材
C 中央
F 水平外力
G 隙間
M モーメント
Claims (8)
- 立設される複数の柱と、
隣接する前記柱を繋ぐ水平部材と、
前記水平部材が前記柱に接合される部位に近接して設けられ、前記柱の水平方向への変位を拘束する座屈拘束部材と、を備え、
前記座屈拘束部材は、
前記柱との間に所定の隙間を空けて、前記柱の周囲に配置される複数のセグメントからなり、
前記セグメントは、各々が独立して前記所定の隙間を調整可能である、
ことを特徴とする鉄骨構造物。 - 複数の前記セグメントの各々は、前記水平部材に固定される位置を調整することで、前記所定の隙間が特定される、
請求項1に記載の鉄骨構造物。 - 隣接する一方の前記セグメントと他方の前記セグメントが、右ねじと左ねじが軸方向に併設される両ねじ部材により連結され、
一方の前記セグメントは前記右ねじに噛み合わされ、
他方の前記セグメントは前記左ねじに噛み合わされる、
請求項1又は請求項2に記載の鉄骨構造物。 - 前記セグメントは、クランプ機構により前記水平部材に固定される、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の鉄骨構造物。 - 立設される複数の柱と、隣接する前記柱を繋ぐ水平部材と、を備える既設の鉄骨構造物において、
前記水平部材が前記柱に接合される部位に近接して、前記柱の水平方向への変位を拘束する座屈拘束部材を設ける耐震改修工法であって、
前記座屈拘束部材は、
前記柱との間に所定の隙間を空けて、前記柱の周囲に配置される複数のセグメントからなり、
前記所定の隙間セグメントは、各々独立して前記所定の隙間が調整可能である、
ことを特徴とする鉄骨構造物の耐震改修工法。 - 複数の前記セグメントの各々は、前記水平部材に固定される位置を調整することで、前記所定の隙間が特定される、
請求項5に記載の鉄骨構造物の耐震改修工法。 - 隣接する一方の前記セグメントと他方の前記セグメントが、右ねじと左ねじが軸方向に併設される両ねじ部材により連結され、
一方の前記セグメントは前記右ねじに噛み合わされ、
他方の前記セグメントは前記左ねじに噛み合わされる、
請求項5又は請求項6に記載の鉄骨構造物の耐震改修工法。 - 前記セグメントは、クランプ機構により前記水平部材に固定される、
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の鉄骨構造物の耐震改修工法。
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