JP2015135858A - パッシベーション膜付半導体基板及びその製造方法、並びにそれを用いた太陽電池素子及びその製造方法 - Google Patents

パッシベーション膜付半導体基板及びその製造方法、並びにそれを用いた太陽電池素子及びその製造方法 Download PDF

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彩 桃崎
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真年 森下
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Abstract

【課題】 優れたパッシベーション効果を有する半導体基板パッシベーション膜を、簡便な手法で所望の形状に形成することができるパッシベーション膜付半導体基板の製造方法及びそれにより得られるパッシベーション膜付半導体基板、並びにそれを用いた太陽電池素子とその製造方法を提供する。【解決手段】 半導体基板上に、一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、パッシベーション膜付半導体基板及びその製造方法、並びにそれを用いた太陽電池素子及びその製造方法に関する。
従来のシリコン太陽電池素子の製造工程について説明する。
まず、光閉じ込め効果を促して高効率化を図るよう、受光面側にテクスチャー構造を形成したp型シリコン基板を準備し、続いてオキシ塩化リン(POCl)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800〜900℃で数十分の処理を行って一様にn型拡散層を形成する。この従来の方法では、混合ガスを用いてリンの拡散を行うため、受光面である表面のみならず、側面、裏面にもn型拡散層が形成される。そのため、側面のn型拡散層を除去するためのサイドエッチングを行う。また、裏面のn型拡散層はp型拡散層へ変換する必要がある。そのため裏面全体にアルミニウムペーストを塗布し、これを焼結してアルミニウム電極を形成することで、n型拡散層をp型拡散層にするのと同時に、オーミックコンタクトを得ている。
しかしながら、アルミニウムペーストから形成されるアルミニウム電極は導電率が低い。そのためシート抵抗を下げるために、通常裏面全面に形成したアルミニウム電極は焼結後において10〜20μmほどの厚みを有していなければならない。さらに、シリコンとアルミニウムとでは熱膨張率が大きく異なることから、焼結および冷却の過程で、シリコン基板中に大きな内部応力が発生し、結晶粒界のダメージ、結晶欠陥増長及び反りの原因となる。
この問題を解決するために、アルミニウムペーストの塗布量を減らし、裏面電極層を薄くする方法がある。しかしながら、アルミニウムペーストの塗布量を減らすと、p型シリコン半導体基板の表面から内部に拡散するアルミニウムの量が不十分となる。その結果、所望のBSF(Back Surface Field)効果(p型拡散層の存在により生成キャリアの収集効率が向上する効果)を達成することができないため、太陽電池の特性が低下するという問題が生じる。
上記に関連して、アルミニウムペーストをシリコン基板表面の一部に付与して部分的にp層とアルミニウム電極とを形成するポイントコンタンクトの手法が提案されている(例えば、(特許文献1)参照)。
このような受光面とは反対側(以下、「裏面側」ともいう)にポイントコンタクト構造を有する太陽電池の場合、アルミニウム電極以外の部分の表面において、少数キャリアの再結合速度を抑制する必要がある。そのための裏面側用の半導体基板パッシベーション膜(以下、単に「パッシベーション膜」ともいう)として、SiO膜などが提案されている(例えば、(特許文献2)参照)。このような酸化膜を形成することによるパッシベーション効果としては、シリコン基板の裏面表層部シリコン原子の未結合手を終端させ、再結合の原因となる表面準位密度を低減させる効果がある。
また、少数キャリアの再結合を抑制する別の方法として、パッシベーション膜内の固定電荷が発生する電界によって少数キャリア密度を低減する方法がある。このようなパッシベーション効果は一般に電界効果と呼ばれ、負の固定電荷をもつ材料として酸化アルミニウム(Al)膜などが提案されている(例えば、(特許文献3)参照)。
このようなパッシベーション膜は、一般的にはALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD(Chemical Vapor Depositon)法等の方法で形成される(例えば、(非特許文献1)参照)。また半導体基板上に酸化アルミニウム膜を形成する簡便な手法として、ゾルゲル法による手法が提案されている(例えば、(非特許文献2)、(非特許文献3)参照)。
特許第3107287号公報 特開2004−6565号公報 特許第4767110号公報
Journal of Applied Physics, 104(2008), 113703-1〜113703-7 Thin Solid Films, 517(2009), 6327-6330 Chinese Physics Letters, 26(2009), 088102-1〜088102-4
効率良くポイントコンタンクト構造を有する太陽電池を製造するためには、パッシベーション膜を形成する前に、アルミニウム電極を所定のパターンとなるように半導体基板上に形成した後、そのアルミニウム電極が形成されていない半導体基板上の領域にだけパッシベーション膜を形成することが望ましい。しかしながら、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)に記載されたALD法やCVD法、粘度の低い溶液を使ったゾルゲル法では、アルミニウム電極が形成されていない領域だけにパッシベーション膜を直接形成することは困難である。そのため、これらの手法を用いる場合にはパッシベーション膜を半導体基板上に形成した後、半導体基板上に所定のパターンをもつ電極が形成される領域のパッシベーション膜を、穴あけやエッチングにより除去し、その後、除去部分に電極を形成するという煩雑な工程を経る必要があった。このような煩雑な製造工程は産業に利用する上で大きな障害となっていた。
高温での処理工程は、加熱及び冷却時に基板中にて内部応力が発生し、結晶粒界のダメージ、結晶欠陥増長及び反りの原因となり、発電効率の低下をもたらす。そのため、どの工程においても可能な限り低温で基板を処理することが望ましいと考えられている。
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、優れたパッシベーション効果を有する半導体基板パッシベーション膜を、簡便な手法で所望の形状に形成することができるパッシベーション膜付半導体基板の製造方法及びそれにより得られるパッシベーション膜付半導体基板、並びにそれを用いた太陽電池素子とその製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 半導体基板上に、下記一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、前記パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理して、パッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
Figure 2015135858
一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
本明細書において、酸素濃度とは加熱されるパッシベーション膜形成用組成物の環境下の容量%を意味する。
酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理することにより、酸素濃度40体積%以上の雰囲気下で加熱処理した場合よりも高い性能を持つパッシベーション膜を形成することができる。なおここでの膜性能とはライフタイム値を指す。
低酸素濃度でパッシベーション膜形成用組成物を加熱処理することで、組成物の発熱反応を抑制することが出来、半導体基板への過剰な熱負荷を抑制することが容易になる。酸素が高濃度の場合、加熱処理による熱負荷に加え、組成物の発熱反応による熱負荷がかかるため、加熱処理時の半導体基板の温度管理が困難となる。
<2> さらに、前記半導体基板上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有する、<1>に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
<3> 前記<2>において、半導体基板上の電極形成領域を除きパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
電極形成領域に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成し、前記電極形成用組成物層を加熱処理して電極を形成する工程と、を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
<4> 前記半導体基板にパッシベーション膜形成用組成物を付与して形成されるパッシベーション膜形成用組成物層が、前記半導体基板上の電極が形成されない領域に形成される、前記<1>〜<3>のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
<5> 前記パッシベーション膜形成用組成物は、更に下記一般式(II)で表される化合物を含む、前記<1>〜<4>のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
Figure 2015135858
[一般式(II)中、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、mは1〜5の整数を表す。]
<6> 前記一般式(I)においてRがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である、前記<1>〜<5>のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付き半導体基板の製造方法。
<7> 前記一般式(I)においてnが1〜3の整数であり、Rがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である、前記<1>〜<6>のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付き半導体基板の製造方法。
<8> 前記<1>〜<7>のいずれか一項に記載の製造方法で製造されるパッシベーション膜付き半導体基板。
<9> p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上に、下記一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
前記パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、を有する太陽電池素子の製造方法。
Figure 2015135858
[一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す]
<10> さらに、前記半導体基板の前記p型層及びn型層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有する、<9>に記載の太陽電池素子の製造方法。
<11> 前記<10>において、p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上の前記p型層及びn型層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層上に電極形成領域を除きパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
電極形成領域に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成し、前記電極形成用組成物層を加熱処理して電極を形成する工程と、を有する太陽電池素子の製造方法。
<12> 前記パッシベーション膜形成用組成物は、更に下記一般式(II)で表される化合物を含む、前記<9>〜<11>のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
Figure 2015135858
[一般式(II)中、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、mは1〜5の整数を表す。]
<13> 前記一般式(I)においてRがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である、前記<9>〜<12>のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
<14> 前記一般式(I)においてnが1〜3の整数であり、Rがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である、前記<9>〜<13>のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
<15> 前記<9>〜<14>のいずれか一項に記載の製造方法で製造される太陽電池素子。
本発明によれば、優れたパッシベーション効果を有する半導体基板パッシベーション膜を、簡便な手法で所望の形状に形成することができるパッシベーション膜付半導体基板の製造方法を提供することができ、これにより優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション膜付半導体基板を得ることができる。また、これを用いて太陽電池素子及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。 本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の他の一例を模式的に示す断面図である。 本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する裏面電極型太陽電池素子を模式的に示す断面図である。 本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の他の一例を模式的に示す断面図である。 本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の他の一例を模式的に示す断面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<パッシベーション膜付半導体基板の製造方法>
本発明のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法は、半導体基板上に、上記一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、前記パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程とを有する。前記製造方法は必要に応じてその他の工程を更に有していてもよい。
半導体基板の電極が形成される面上に、一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を所望の形状となるようにパターン状に付与し、これを酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で熱処理してパッシベーション膜を形成することで、所望の形状を有し、優れたパッシベーション効果を示すパッシベーション膜が形成された半導体基板を簡便な工程で製造することができる。さらに、低い温度で同程度の性能を持つパッシベーション膜を形成することができる。
本発明における加熱処理における酸素濃度は、基板表面で発生する反応熱抑制の観点から40体積%以下であることが好ましく、無酸素の雰囲気下であることが更により好ましい。尚、本発明における酸素濃度の調整方法は特には制限されないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。焼成炉内への各気体のガス供給量を個別に設定し、所望の濃度となるように調整する。例えば、10体積%に調整する場合は以下のような操作を行う。焼成炉の石英管の体積が10Lの場合、酸素ガスを流速0.5L/分、窒素ガスを流速4.5L/分に設定し、2分以上混合ガスを流し続けることで、焼成炉内を所望の酸素濃度の雰囲気へと置換し、さらに同混合ガスを流し続けることで所望の雰囲気を維持する。
例えば、40体積%に調整する場合は以下のような操作を行う。焼成炉の石英管の体積が10Lの場合、酸素ガスを流速2.0L/分、窒素ガスを流速3.0L/分に設定し、2分以上混合ガスを流し続けることで、焼成炉内を所望の酸素濃度の雰囲気へと置換し、さらに同混合ガスを流し続けることで所望の雰囲気を維持する。
本発明の製造方法においては、前記半導体基板上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有していてもよい。この場合、パッシベーション膜形成に先立って半導体基板上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成し電極が形成されていてもよく、また、半導体基板上にパッシベーション膜が形成された後に、少なくともパッシベーション膜が形成されていない半導体基板上の領域に電極を形成してもよい。本発明の製造方法においては、パッシベーション膜形成に先立って半導体基板上に電極が形成されていることが好ましい。
電極形成を電極形成用組成物の焼結によって行う場合、従来のパッシベーション膜付き半導体基板の製造方法のようにパッシベーション膜を形成した後に電極形成のための焼結を行うと、パッシベーション膜の形成時における熱処理温度よりも高い温度での加熱処理が行われることがある。その場合、パッシベーション膜としてアモルファス状の各金属酸化物層が形成されていても、高温での焼結によって金属酸化物がアモルファス状態から結晶状態へと変化してしまう可能性がある。しかし、本発明の製造方法では電極形成後にパッシベーション膜の形成を行うこともできることから、パッシベーション膜としての金属酸化物層を、パッシベーション効果がより優れるアモルファス状態に容易に維持することが可能になる。
なお、本明細書において、半導体基板のパッシベーション効果は、半導体基板パッシベーション膜を付与した半導体基板内の少数キャリアの実効ライフタイムの測定を、日本セミラボ株式会社製WT−2000PVN等の装置を用いて、反射マイクロ波導電減衰法によって測定することで評価することができる。
ここで、実効ライフタイムτは、半導体基板内部のバルクライフタイムτbと、半導体基板表面の表面ライフタイムτsとによって下記式(A)のように表される。半導体基板表面の表面準位密度が小さい場合にはτsが大きくなる結果、実効ライフタイムτが大きくなる。また、半導体基板内部のダングリングボンド等の欠陥が少なくなっても、バルクライフタイムτbが大きくなって実効ライフタイムτが大きくなる。すなわち、実効ライフタイムτの測定によってパッシベーション膜/半導体基板の界面特性、及び、ダングリングボンドなどの半導体基板の内部特性を評価することができる。
1/τ=1/τb+1/τs (A)
尚、実効ライフタイムが長いほど少数キャリアの再結合速度が遅いことを示す。また実効ライフタイムが長い半導体基板を用いて太陽電池素子を構成することで、変換効率が向上する。
本発明の製造方法に用いる前記半導体基板としては特に制限されず、目的に応じて通常用いられるものから適宜選択することができる。前記半導体基板としては、シリコン、ゲルマニウム等にp型不純物又はn型不純物を拡散(ドープ)したものであれば特に制限されない。中でもシリコン基板であることが好ましい。また半導体基板は、p型半導体基板であっても、n型半導体基板であってもよい。中でもパッシベーション効果の観点から、パッシベーション膜が形成される面がp型層である半導体基板であることが好ましい。前記半導体基板上のp型層は、p型半導体基板に由来するp型層であっても、p型拡散層又はp型拡散層として、n型半導体基板又はp型半導体基板上に形成されたものであってもよい。
前記半導体基板の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば50〜1000μmとすることができ、75〜750μmであることが好ましい。厚みが50〜1000μmの半導体基板にパッシベーション膜を形成することで、より効果的にパッシベーション効果を得ることができる。
前記電極を形成する工程は、電極形成用組成物を半導体基板上に付与して電極形成用組成物層を形成する工程と、前記電極形成用組成物層を焼結して電極を形成する工程とを有することが好ましい。これにより、簡便な方法で生産性良く半導体基板上に電極を形成することができる。さらにパッシベーション膜の形成に先立って電極を形成することから、電極形成条件の選択の幅が広がり、所望の特性を有する電極を効率よく形成することができる。
前記電極形成用組成物としては、必要に応じて通常用いられるものから適宜選択して用いることができる。電極形成用組成物として具体的には、各社から太陽電池電極用として市販されている銀ペースト、アルミニウムペースト、銅ペースト等を挙げることができる。
電極形成用組成物を半導体基板上に設け電極形成用組成物層を形成する方法には特に制限はなく、必要に応じて公知の塗布方法等から適宜選択して用いることができる。具体的には、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。またマスク材やエッチング法等を併用する場合には、浸漬法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法等の方法であってもよい。
半導体基板上への電極形成用組成物の付与量は特に制限されず、形成する電極の形状等に応じて適宜選択することができる。さらに形成される電極の形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
半導体基板上に形成された電極形成用組成物層は焼結されて電極が形成される。焼結の条件は、用いる電極形成用組成物に応じて適宜選択される。例えば600〜850℃で1〜60秒間とすることができる。
前記半導体基板の電極が形成された面上に、一般式(I)で表される化合物を含む半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を所望の形状に形成する。前記半導体基板パッシベーション膜形成用組成物によって形成される組成物層の形状は特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。中でも前記半導体基板上に電極が形成されない領域、すなわち、前記半導体基板と電極とが接触しない領域に付与する工程であることが好ましい。これにより電極の接触抵抗が上昇することが抑制され、より簡便な方法でパッシベーション膜を形成することができる。なお、半導体基板パッシベーション膜形成用組成物の詳細については後述する。
パッシベーション膜形成用組成物を付与して半導体基板上に組成物層を形成する方法は、組成物層を所望の形状に形成できる限り特に制限されず、必要に応じて公知の塗布方法等から適宜選択して用いることができる。具体的には、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。またマスク材やエッチング法等を併用する場合には、浸漬法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法等の方法であってもよい。
半導体基板上へのパッシベーション膜形成用組成物の付与量は特に制限されない。例えば、形成されるパッシベーション膜の膜厚が後述する膜厚となるように適宜選択することが好ましい。
前記製造方法は、前記組成物層を形成する工程の前に、半導体基板上にアルカリ水溶液を付与する工程をさらに有することが好ましい。すなわち、半導体基板上にパッシベーション膜形成用組成物を付与する前に、半導体基板の表面をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、半導体基板表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。
アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄などを例示することができる。例えばアンモニア水−過酸化水素水の混合溶液に半導体基板を浸し、60〜80℃で処理することで、有機物、パーティクル等を除去、洗浄することできる。洗浄時間は、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがさらに好ましい。
パッシベーション膜形成用組成物によって形成された組成物層を加熱処理して、半導体基板上に前記組成物層に由来する加熱処理物層を形成することで、半導体基板上にパッシベーション膜を形成することができる。
組成物層の加熱処理条件は、組成物層に含まれる各有機金属化合物をその加熱処理物である金属酸化物に変換可能であれば特に制限されない。中でも特定の結晶構造を持たないアモルファス状の金属酸化物層を形成可能な加熱処理条件であることが好ましい。半導体基板パッシベーション膜がアモルファス状の金属酸化物層で構成されることで、半導体基板パッシベーション膜に負電荷をより効果的に持たせることができ、より優れたパッシベーション効果を得ることができる。この加熱処理工程は、乾燥工程とアニーリング工程に分けることもできる。乾燥工程後ではパッシベーション効果は得られないが、アニーリング工程後にパッシベーション効果を得ることができる。具体的に、アニーリング温度はパッシベーション効果発現の観点から400〜800℃が好ましく、基板への熱負荷の観点から400〜750℃がより好ましい。またアニーリング時間はアニーリング温度等に応じて適宜選択できる。例えば、0.05〜10時間とすることができ、0.08〜2時間であることが好ましい。
酸素濃度が40体積%以下の場合、加熱温度は500〜750℃が好ましい。
前記製造方法によって製造されるパッシベーション膜の膜厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば、5nm〜50μmであることが好ましく、10nm〜30μmであることが好ましく、15nm〜20μmであることが更に好ましい。
なお、形成されたパッシベーション膜の膜厚は、触針式段差・表面形状測定装置(例えば、Ambios社製)を用いて常法により測定される。
パッシベーション膜の形状は特に制限されず、必要に応じて所望の形状とすることができる。パッシベーション膜は半導体基板の面全体に形成されてもよく、また一部の領域にのみ形成されていてもよい。
前記パッシベーション膜付半導体基板の製造方法は、パッシベーション膜形成用組成物を付与した後、パッシベーション膜を形成する工程の前に、パッシベーション膜形成用組成物から形成される組成物層を乾燥処理する工程をさらに有していてもよい。組成物層を乾燥処理することで、より均一なパッシベーション効果を有するパッシベーション膜を形成することができる。
組成物層を乾燥処理する工程は、パッシベーション膜形成用組成物に含まれることがある溶媒の少なくとも一部を除去することができれば、特に制限されない。乾燥処理は例えば30〜400℃で1〜60分間の乾燥処理とすることができ、40〜300℃で3〜40分間の乾燥処理であることが好ましい。また乾燥処理は、常圧下で行なっても減圧下で行なってもよい。
また、本発明の製造方法においては、電極を形成する工程に先立って、半導体基板上にパッシベーション膜を形成してもよい。この場合、パッシベーション膜として形成された金属酸化物がアモルファス状態から結晶状態への変化を起こさない条件で電極を形成することが好ましい。具体的には以下のような製造方法であってもよい。
半導体基板上に、一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与して組成物層を所望の形状に形成する。前記パッシベーション膜形成用組成物によって形成される組成物層の形状は特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。中でも前記半導体基板上に電極形成が予定されている領域以外の領域に選択的に付与する工程であることが好ましく、半導体基板と電極とが接触する予定の領域以外の領域に選択的に付与する工程であることがより好ましい。これによりパッシベーション膜が形成された後に、所望の形状で電極を形成することができる。なお、前記パッシベーション膜形成用組成物の詳細については後述する。
前記パッシベーション膜形成用組成物を付与して半導体基板上に組成物層を形成する方法は、組成物層を所望の形状に形成できる限り特に制限されず、必要に応じて公知の塗布方法等から適宜選択して用いることができる。具体的には、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。またマスク材やエッチング法等を併用する場合には、浸漬法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法等の方法であってもよい。
半導体基板上へのパッシベーション膜形成用組成物の付与量は特に制限されない。例えば、形成されるパッシベーション膜の膜厚が後述する膜厚となるように適宜選択することが好ましい。
前記製造方法は、前記組成物層を形成する工程の前に、半導体基板上にアルカリ水溶液を付与する工程をさらに有することが好ましい。すなわち、半導体基板上に前記パッシベーション膜形成用組成物を付与する前に、半導体基板の表面をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、半導体基板表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。
アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄などを例示することができる。例えばアンモニア水−過酸化水素水の混合溶液に半導体基板を浸し、60〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去、洗浄することできる。洗浄時間は、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがさらに好ましい。
半導体基板上に、前記半導体基板パッシベーション膜形成用組成物によって形成された組成物層を熱処理して、前記組成物層に由来する熱処理物層を形成することで、半導体基板上にパッシベーション膜を形成することができる。
組成物層の熱処理条件は、組成物層に含まれる一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物をその熱処理物である金属酸化物に変換可能であれば特に制限されない。中でも特定の結晶構造を持たないアモルファス状の金属酸化物層を形成可能な熱処理条件であることが好ましい。半導体基板パッシベーション膜がアモルファス状の金属酸化物層で構成されることで、半導体基板パッシベーション膜に負電荷をより効果的に持たせることができ、より優れたパッシベーション効果を得ることができる。この熱処理工程は、乾燥工程とアニーリング工程に分けることもできる。乾燥工程後ではパッシベーション効果は得られないが、アニーリング工程後にパッシベーション効果を得ることができる。具体的に、アニーリング温度はパッシベーション効果発現の観点から400〜800℃が好ましく、基板への熱負荷の観点から400〜750℃がより好ましい。またアニーリング時間はアニーリング温度等に応じて適宜選択できる。例えば、0.05〜10時間とすることができ、0.08〜2時間であることが好ましい。
酸素濃度が40体積%以下の場合、加熱温度は500〜750℃が好ましい。
前記製造方法によって製造されるパッシベーション膜の膜厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。例えば、5nm〜50μmであることが好ましく、10nm〜30μmであることが好ましく、15nm〜20μmであることが更に好ましい。なお、形成されたパッシベーション膜の膜厚は、触針式段差・表面形状測定装置(例えば、Ambios社製)を用いて常法により測定される。
半導体基板上に電極を形成する工程は、半導体基板上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程と、電極形成用組成物層を焼結して電極を形成する工程とを含むことが好ましい。電極形成用組成物層を形成する工程は、少なくともパッシベーション膜が形成されていない半導体基板上の領域に、電極形成用組成物を付与する工程であることが好ましい。
前記電極形成用組成物としては、必要に応じて通常用いられるものから適宜選択して用いることができる。電極形成用組成物として具体的には、各社から太陽電池電極用として市販されている銀ペースト、アルミニウムペースト、銅ペースト等を挙げることができる。
また、半導体基板上に電極形成用組成物層を形成する方法には所望の形状に形成できる限り特に制限されず、必要に応じて公知の塗布方法等から適宜選択して用いることができる。具体的には、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。またマスク材やエッチング法等を併用する場合には、浸漬法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法等の方法であってもよい。
半導体基板上への電極形成用組成物の付与量は特に制限されず、形成する電極の形状等に応じて適宜選択することができる。前記製造方法は、前記組成物層を形成する工程の前に、半導体基板上にアルカリ水溶液を付与する工程をさらに有することが好ましい。
半導体基板上に形成された電極形成用組成物層は、焼結されて電極が形成される。焼結処理の条件は、パッシベーション膜として形成された金属酸化物がアモルファス状態から結晶状態への変化を起こさない条件の範囲で、用いる電極形成用組成物に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば600〜850℃で1〜60秒間で焼結すれば、結晶状態への変化はほとんど起きることはない。
また、本発明の製造方法においては、電極形成に先立って半導体基板上に前記パッシベーション膜形成用組成物に付与し、溶媒を除去する目的等の乾燥処理を行った後、組成物層をアニーリングしてパッシベーション膜を形成する前に、電極形成用組成物層を半導体基板上に付与して電極形成用組成物層を形成してもよい。この場合は、電極形成用組成物層を焼結して電極を形成する工程と、パッシベーション膜形成用の組成物層を加熱処理してパッシベーション膜を形成する工程の順序はどちらが先であってもよく、また同時であってもよい。
前記製造方法で製造されるパッシベーション膜付半導体基板は、太陽電池素子、発光ダイオード素子等に適用することができる。例えば、太陽電池素子に適用することで変換効率に優れた太陽電池素子を得ることができる。
<パッシベーション膜形成用組成物>
本発明で用いるパッシベーション膜形成用組成物は、下記一般式(I)で表される化合物(以下、式(I)化合物ともいう)を含む。前記パッシベーション膜形成用組成物は必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。パッシベーション膜形成用組成物が上記成分を含むことで、保存安定性に優れ、パッシベーション効果に優れたパッシベーション層を簡便な手法で形成することが可能である。また該パッシベーション膜形成用組成物は保存安定性に優れる。
Figure 2015135858
一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
(一般式(I)で表される化合物)
前記パッシベーション膜形成用組成物は前記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記有機アルミニウム化合物は、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレートなどと呼ばれる化合物であり、アルミニウムアルコキシド構造に加えてアルミニウムキレート構造を有していることが好ましい。また、Nippon Seramikkusu Kyokai Gakujitsu Ronbunshi、97(1989)369−399にも記載されているように、前記有機アルミニウム化合物は加熱処理により酸化アルミニウム(Al)となる。
パッシベーション膜形成用組成物が一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含有することで、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション膜を形成できる理由について、発明者らは以下のように考えている。
特定構造の有機アルミニウム化合物を含有するパッシベーション膜形成用組成物を加熱処理することにより形成される酸化アルミニウムはアモルファス状態となりやすく、アルミニウム原子の欠陥等が生じて半導体基板との界面付近に大きな負の固定電荷をもつことができると考えられる。この大きな負の固定電荷が半導体基板の界面近辺で電界を発生することで少数キャリアの濃度を低下させることができ、結果的に界面でのキャリア再結合速度が抑制されるため、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション膜を形成することができると考えられる。
また、大きな負の固定電荷をもつ原因として4配位酸化アルミニウム層が半導体基板との界面付近に生じていることも考えられる。ここで、半導体基板表面上で負の固定電荷の原因種である4配位酸化アルミニウム層の状態は半導体基板の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM、Scanning Transmission electron Microscope)による電子エネルギー損失分光法(EELS、Electron Energy Loss Spectroscopy)の分析で結合様式を調べることができる。4配位酸化アルミニウムは二酸化珪素(SiO)の中心が珪素からアルミニウムに同形置換した構造と考えられ、ゼオライトや粘土のように二酸化珪素と酸化アルミニウムの界面で負の電荷源として形成されることが知られている。
なお、形成された酸化アルミニウムの状態はX線回折スペクトル(XRD、X−ray diffraction)を測定することにより確認できる。例えば、XRDが特定の反射パターンを示さないことでアモルファス構造であることが確認できる。また、酸化アルミニウムがもつ負の固定電荷は、CV法(Capacitance Voltage measurement)で評価することが可能である。ただし、前記パッシベーション膜形成用組成物から形成された酸化アルミニウムを含む加熱処理物層について、CV法から得られるその表面準位密度は、ALDやCVD法で形成される酸化アルミニウム層の場合と比べ、大きな値となる場合がある。しかし前記パッシベーション膜形成用組成物から形成されたパッシベーション膜は、電界効果が大きく少数キャリアの濃度が低下して表面ライフタイムτsが大きくなる。そのため、表面準位密度は相対的に問題にはならない。
一般式(I)において、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。Rで表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。Rで表されるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基等を挙げることができる。中でもRで表されるアルキル基は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(I)において、nは0〜3の整数を表わす。nは保存安定性の観点から、1〜3の整数であることが好ましく、1又は3であることがより好ましい。またX及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。保存安定性の観点から、X及びXの少なくとも一方は酸素原子であることが好ましい。
一般式(I)におけるR、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R、R及びRで表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R、R及びRで表されるアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基等を挙げることができる。
中でも保存安定性とパッシベーション効果の観点から、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
またRは、保存安定性及びパッシベーション効果の観点から、水素原子又は炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物は、保存安定性の観点から、nが1〜3であり、Rがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である化合物であることが好ましい。
一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、nが0であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である化合物、並びにnが1〜3であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であり、X及びXの少なくとも一方が酸素原子であり、R及びRがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、nが0であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4の無置換のアルキル基である化合物、並びにnが1〜3であり、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4の無置換のアルキル基であり、X及びXの少なくとも一方が酸素原子であり、前記酸素原子に結合するR又はRが炭素数1〜4のアルキル基であり、X又はXがメチレン基の場合、前記メチレン基に結合するR又はRが水素原子であり、Rが水素原子である化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
一般式(I)で表され、nが0の有機アルミニウム化合物であるアルミニウムトリアルコキシドとして具体的には、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、モノsec−ブトキシ−ジイソプロポキシアルミニウム、トリt−ブトキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
また一般式(I)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物として具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム等を挙げることができる。
また一般式(I)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物は、調製したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては例えば、川研ファインケミカル株式会社の商品名、ALCH、ALCH−50F、ALCH−75、ALCH−TR、ALCH−TR−20等を挙げることができる。
また一般式(I)で表され、nが1〜3である有機アルミニウム化合物は、前記アルミニウムトリアルコキシドと、2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物とを混合することで調製することができる。また市販されているアルミニウムキレート化合物を用いてもよい。
前記アルミニウムトリアルコキシドと、2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物とを混合すると、アルミニウムトリアルコキシドのアルコキシド基の少なくとも一部が特定構造の化合物と置換して、アルミニウムキレート構造を形成する。このとき必要に応じて、液状媒体が存在してもよく、また、加熱処理、触媒の添加等を行ってもよい。アルミニウムアルコキシド構造の少なくとも一部がアルミニウムキレート構造に置換されることで、有機アルミニウム化合物の加水分解及び重合反応に対する安定性が向上し、これを含むパッシベーション膜形成用組成物の保存安定性がより向上する。
前記2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物としては、反応性と保存安定性の観点から、β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物及びマロン酸ジエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物として具体的には、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2,3−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−ブチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸イソペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸n−オクチル、アセト酢酸ヘプチル、アセト酢酸3−ペンチル、2−アセチルヘプタン酸エチル、2−メチルアセト酢酸エチル、2−ブチルアセト酢酸エチル、ヘキシルアセト酢酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソ吉草酸エチル、4−メチル−3−オキソ吉草酸エチル、2−エチルアセト酢酸エチル、4−メチル−3−オキソ吉草酸メチル、3−オキソヘキサン酸エチル、3−オキソ吉草酸エチル、3−オキソ吉草酸メチル、3−オキソヘキサン酸メチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソ吉草酸メチル等のβ−ケトエステル化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジヘキシル、マロン酸t−ブチルエチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、sec−ブチルマロン酸ジエチル、イソブチルマロン酸ジエチル、1−メチルブチルマロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステルなどを挙げることができる。
前記有機アルミニウム化合物がアルミニウムキレート構造を有する場合、アルミニウムキレート構造の数は1〜3であれば特に制限されない。中でも、保存安定性の観点から、1又は3であることが好ましく、溶解度の観点から、1であることがより好ましい。アルミニウムキレート構造の数は、例えば前記アルミニウムトリアルコキシドと、2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物とを混合する比率を適宜調整することで制御することができる。また市販のアルミニウムキレート化合物から所望の構造を有する化合物を適宜選択してもよい。
また、パッシベーション膜形成用組成物の安定性は、経時による粘度変化で評価することができる。具体的には、調製直後(12時間以内)のパッシベーション膜形成用組成物のせん断速度1.0s−1におけるせん断粘度(η)と、25℃において30日間保存後のパッシベーション膜形成用組成物とのせん断速度1.0s−1におけるせん断粘度(η30)とを比較することで評価することができ、例えば、経時による粘度変化率(%)によって評価することができる。経時による粘度変化率(%)は、調製直後と30日後のせん断粘度の差の絶対値を調製直後のせん断粘度で除して得られ、具体的には下式で算出される。パッシベーション膜形成用組成物の粘度変化率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
粘度変化率(%)=|η30−η|/η×100 (式)
一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物のうち、パッシベーション効果及び必要に応じて含有される溶媒(溶剤)との相溶性の観点から、具体的にはアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート及びトリイソプロポキシアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用いることがより好ましい。
前記有機アルミニウム化合物におけるアルミニウムキレート構造の存在は、通常用いられる分析方法で確認することができる。例えば、赤外分光スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、融点等を用いて確認することができる。
有機アルミニウム化合物は、液状であっても固体であってもよく、特に制限はない。パッシベーション効果と保存安定性の観点から、常温(25℃)での安定性、及び溶解性又は分散性が良好な有機アルミニウム化合物を用いることで、形成されるパッシベーション層の均質性がより向上し、所望のパッシベーション効果を安定的に得ることができる。
前記パッシベーション膜形成用組成物に含まれる式(I)化合物の含有率は、必要に応じて適宜選択することができる。式(I)化合物の含有率は、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、パッシベーション層形成用組成物中に0.1〜60質量%とすることができ、0.5〜55質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、1〜45質量%であることが更に好ましい。
ここで、半導体基板上で固定電荷を発生させるパッシベーション層の状態については、半導体基板の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM、Scanning Transmission electron Microscope)による電子エネルギー損失分光法(EELS、Electron Energy Loss Spectroscopy)の分析で結合様式を調べることができる。また、X線回折スペクトル(XRD、X-ray diffraction)を測定することにより、パッシベーション層の界面付近の結晶相を確認することができる。更に、パッシベーション層がもつ固定電荷は、CV法(Capacitance Voltage measurement)で評価することが可能である。
(一般式(II)で表される化合物)
パッシベーション膜形成用組成物は、更に上記一般式(II)で表される化合物を含むことが好ましく、一般式(II)において、Mは、Nb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種であり、パッシベーション効果、パッシベーション膜形成用組成物の保存安定性、及びパッシベーション膜形成用組成物を調製する際の作業性の観点から、MとしてはNb、Ta及びYからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(II)において、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。Rで表されるアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。Rで表されるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基等を挙げることができる。Rで表されるアリール基として具体的には、フェニル基を挙げることができる。Rで表されるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、前記置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基等が挙げられる。
中でもRは、保存安定性とパッシベーション効果の観点から、炭素数1〜8の無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(II)において、mは1〜5の整数を表す。ここで、保存安定性の観点から、MがNbである場合にはmが5であることが好ましく、MがTaである場合にはmが5であることが好ましく、MがVである場合にはmが3であることが好ましく、MがYである場合にはmが3であることが好ましく、MがHfである場合にはmが4であることが好ましい。
一般式(II)で表される化合物としては、Mが、Nb、Ta及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Rが炭素数1〜4の無置換のアルキル基であり、mが1〜5の整数であることが好ましい。
一般式(II)で表される化合物の状態は、固体であっても液体であってもよい。パッシベーション膜形成用組成物の保存安定性、及び混合性の観点から、一般式(II)で表わされる化合物は、液体であることが好ましい。
一般式(II)で表わされる化合物は、具体的には、ニオブメトキシド、ニオブエトキシド、ニオブイソプロポキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、ニオブt−ブトキシド、ニオブイソブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルイソプロポキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、タンタルt−ブトキシド、タンタルイソブトキシド、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウムイソプロポキシド、イットリウムn−プロポキシド、イットリウムn−ブトキシド、イットリウムt−ブトキシド、イットリウムイソブトキシド、バナジウムメトキシド、バナジウムエトキシド、バナジウムイソプロポキシド、バナジウムn−プロポキシド、バナジウムn−ブトキシド、バナジウムt−ブトキシド、バナジウムイソブトキシド、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn−プロポキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、ハフニウムイソブトキシド等を挙げることができ、中でもニオブエトキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、イットリウムイソプロポキシド、及びイットリウムn−ブトキシドが好ましい。
また一般式(II)で表わされる化合物は、調製したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、高純度化学研究所株式会社のペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−sec−ブトキシニオブ、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタ−i−プロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ペンタ−i−ブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−t−ブトキシタンタル、バナジウム(V)トリメトキシドオキシド、バナジウム(V)トリエトキシオキシド、バナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−i−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−sec−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−t−ブトキシドオキシド、トリ−i−プロポキシイットリウム、トリ−n−ブトキシイットリウム、テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラ−i−プロポキシハフニウム、テトラ−t−ブトキシハフニウム、北興化学工業株式会社のペンタエトキシニオブ、ペンタエトキシタンタル、ペンタブトキシタンタル、イットリウム−n−ブトキシド、ハフニウム−tert−ブトキシド、日亜化学工業株式会社のバナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリノルマルプロポキシド、バナジウムオキシトリノルマルブトキシド、バナジウムオキシトリイソブトキシド、バナジウムオキシトリセカンダリーブトキシド等を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物の調製には、特定の金属(M)のハロゲン化物とアルコールとを不活性有機溶媒の存在下で反応させ、更にハロゲンを引き抜くためにアンモニア又はアミン類を添加する方法(特開昭63−227593号公報及び特開平3−291247号公報)等、既知の製法を用いることができる。
一般式(II)で表される化合物は、後述する2つのカルボニル基を有する特定構造の化合物と混合することでキレート構造を形成した化合物を用いてよい。キレート化するカルボニル基数には特に制限はないが、MがNbである場合にはmが1〜5であることが好ましく、MがTaである場合にはmが1〜5であることが好ましく、MがVである場合にはmが1〜3であることが好ましく、MがYである場合にはmが1〜3であることが好ましく、MがHfである場合にはmが1〜4であることが好ましい。
一般式(II)で表される化合物におけるキレート構造の存在は、通常用いられる分析方法で確認することができる。例えば、赤外分光スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、融点等を用いて確認することができる。
パッシベーション膜形成用組成物は、前記一般式(II)で表される化合物(式(II)化合物)の少なくとも1種を含むことで、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション層を形成することができる、この理由は以下のように考えることができる。
式(II)化合物を含有するパッシベーション膜形成用組成物を加熱処理(焼成)することにより形成される金属酸化物では、金属原子又は酸素原子の欠陥を有し、固定電荷を生じやすくなると考えられる。この固定電荷が半導体基板の界面付近で電荷を発生させることで少数キャリアの濃度を低下させることができ、結果的に界面でのキャリア再結合速度が抑制され、優れたパッシベーション効果が奏されると考えられる。
上記に加え、一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる化合物とを組み合わせることで、パッシベーション層内でそれぞれの効果により、パッシベーション効果がより高くなると考えられる。更に、一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる化合物が混合された状態で加熱処理(焼成)されることで、アルミニウム(Al)と一般式(II)で表わされる金属(M)との複合金属アルコキシドとしての反応性、蒸気圧等の物理特性が改善され、加熱処理物(焼成物)としてのパッシベーション層の緻密性が向上し、結果としてパッシベーション効果がより高くなると考えられる。
前記パッシベーション膜形成用組成物において、前記一般式(II)で表される式(II)化合物を含む場合、前記パッシベーション膜形成用組成物に含まれる式(II)化合物の含有率は、必要に応じて適宜選択することができる。式(II)化合物の含有率は、保存安定性及びパッシベーション効果の観点から、パッシベーション膜形成用組成物中に0.1〜80質量%とすることができ、0.5〜70質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることが更に好ましい。
前記パッシベーション膜形成用組成物において、前記一般式(II)で表される式(II)化合物を含む場合、有機アルミニウム化合物の含有率は特に制限されない。中でも、式(II)化合物と有機アルミニウム化合物の総含有率を100質量%としたときの有機アルミニウム化合物の含有率が、0.5質量%以上、80質量%以下であることが好ましく、1質量%以上、75質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上、70質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以上、70質量%以下であることが特に好ましい。
有機アルミニウム化合物の含有率を0.5質量%以上とすることで、パッシベーション膜形成用組成物の保存安定性が向上する傾向にある。また有機アルミニウム化合物を80質量%以下とすることで、パッシベーション効果が向上する傾向にある。
(液状媒体)
パッシベーション膜形成用組成物は、更に液状媒体(溶媒又は分散媒、溶剤)を含んでいてもよい。パッシベーション膜形成用組成物が液状媒体を含有することで、粘度の調整がより容易になり、付与性がより向上し、より均一なパッシベーション層を形成することができる傾向にある。液状媒体としては特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。中でも一般式(I)で表される化合物、及び必要に応じて含まれる一般式(II)で表される化合物を溶解して均一な溶液を与えることができる液状媒体が好ましく、有機溶剤の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、そのままの状態では加水分解、重合反応等を容易に起こし固化するものもあるが、一般式(I)で表される化合物を液状媒体中に溶解又は分散させることによって反応が抑制されるため保存安定性が向上しやすい傾向がある。
液状媒体としては、ケトン溶剤、エーテル溶剤、エステル溶剤、非プロトン性極性溶剤、疎水性有機溶剤、アルコール溶剤、グリコールモノエーテル溶剤、テルペン溶剤、水等が挙げられる。これらの液状媒体は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
ケトン溶剤として具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等が挙げられる。
エーテル溶剤として具体的には、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
エステル溶剤として具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、酢酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
非プロトン性極性溶剤として具体的には、アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
疎水性有機溶剤として具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、エチルベンゼン、2−エチルヘキサン酸、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
アルコール溶剤として具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール等が挙げられる。
グリコールモノエーテル溶剤として具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
テルペン溶剤として具体的には、テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等が挙げられる。
中でも液状媒体は、半導体基板への付与性及びパターン形成性の観点から、テルペン溶剤、エステル溶剤及びアルコール溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、テルペン溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
また、液状媒体として、高粘度かつ低沸点のもの(高粘度低沸点溶媒)を用いてもよい。高粘度低沸点溶媒を含むパッシベーション膜形成用組成物は、半導体基板へ付与し形成した組成物層の形状を充分に維持できる粘度となり、かつその後の焼成工程の途中段階で揮発するため残留溶媒による影響が抑えられるという利点がある。具体的な高粘度低沸点溶媒としては、イソボルニルシクロヘキサノール等が挙げられる。
パッシベーション膜形成用組成物が液状媒体を含む場合、液状媒体の含有率は、付与性、パターン形成性及び保存安定性を考慮して決定される。例えば、液状媒体の含有率は、組成物の付与性とパターン形成性の観点から、パッシベーション膜形成用組成物の総質量中に5〜98質量%であることが好ましく、10〜95質量%であることがより好ましい。
(樹脂)
パッシベーション膜形成用組成物は、樹脂の少なくとも1種を含んでいてもよい。樹脂を含むことで、パッシベーション膜形成用組成物が半導体基板上に付与されて形成される組成物層の形状安定性がある程度向上し、電極形成用組成物層が形成された領域に、パッシベーション層を所望の形状で選択的に形成することができる。
樹脂の種類は特に制限されない。中でもパッシベーション膜形成用組成物を半導体基板上に付与する際に、良好なパターン形成ができる範囲に粘度調整が可能な樹脂であることが好ましい。樹脂として具体的には、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルアミド、ポリビニルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、セルロース、セルロースエーテル誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルなど)、ゼラチン、ゼラチン誘導体、澱粉、澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム誘導体、キサンタン、キサンタン誘導体、グアーガム、グアーガム誘導体、スクレログルカン、スクレログルカン誘導体、トラガカント、トラガカント誘導体、デキストリン、デキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、シロキサン樹脂、これらの共重合体などを挙げることができる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
尚、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味する。
これらの樹脂のなかでも、保存安定性とパターン形成性の観点から、酸性及び塩基性の官能基を有さない中性樹脂を用いることが好ましく、含有量が少量の場合においても容易に粘度及びチキソ性を調節できる観点から、エチルセルロース等のセルロース誘導体を用いることがより好ましい。
またこれら樹脂の分子量は特に制限されず、パッシベーション膜形成用組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが好ましい。樹脂の重量平均分子量は、保存安定性とパターン形成性の観点から、1,000〜10,000,000であることが好ましく、1,000〜5,000,000であることがより好ましい。尚、樹脂の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B[東ソー株式会社、商品名])を用いて3次式で近似する。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:(ポンプ:L−2130型[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(検出器:L−2490型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(カラムオーブン:L−2350[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
カラム:Gelpack GL−R440+Gelpack GL−R450+Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成株式会社、商品名)
カラムサイズ:10.7mm(内径)×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/2mL
注入量:200μL
流量:2.05mL/分
測定温度:25℃
パッシベーション膜形成用組成物中の樹脂の含有率は、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂の含有率は、パッシベーション膜形成用組成物の総質量中に0.1〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましい。印刷性の観点から、樹脂の含有率は0.2〜25質量%であることが更に好ましく、0.5〜20質量%であることが特に好ましく、0.5〜15質量%であることが極めて好ましい。
パッシベーション膜形成用組成物における一般式(I)で表される化合物(一般式(II)で表される化合物を更に含有する場合には、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の総量)と樹脂の含有比率(質量比)は、必要に応じて適宜選択することができる。中でも、パターン形成性と保存安定性の観点から、一般式(I)で表される化合物に対する樹脂の含有比率(樹脂/一般式(I)で表される化合物)、一般式(II)で表される化合物を更に含有する場合には、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の総量に対する樹脂の含有比率〔樹脂/(一般式(I)で表される化合物+一般式(II)で表される化合物)〕は、0.001〜1000であることが好ましく、0.01〜100であることがより好ましく、0.05〜1であることが更に好ましい。
前記パッシベーション膜形成用組成物は、保存安定性の観点から、酸性化合物及び塩基性化合物の含有率が、パッシベーション膜形成用組成物中にそれぞれ1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
前記酸性化合物としては、ブレンステッド酸及びルイス酸を挙げることができる。具体的には塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸等の有機酸などを挙げることができる。また塩基性化合物としては、ブレンステッド塩基及びルイス塩基を挙げることができる。具体的にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基、トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基などを挙げることができる。
前記パッシベーション膜形成用組成物の粘度は特に制限されず、半導体基板への付与方法等に応じて適宜選択するこができる。例えば、0.01〜10000Pa・sとすることができる。中でもパターン形成性の観点から、0.1〜1000Pa・sであることが好ましい。なお、前記粘度は回転式せん断粘度計を用いて、25℃、せん断速度1.0s−1で測定される。
また前記パッシベーション膜形成用組成物のせん断粘度は特に制限されない。中でもパターン形成性の観点から、せん断速度1s−1におけるせん断粘度ηをせん断速度10s−1におけるせん断粘度ηで除して算出されるチキソ比(η/η)が1.05〜100であることが好ましく、1.1〜50であることがより好ましい。なお、せん断粘度は、コーンプレート(直径50mm、コーン角1°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定される。
前記パッシベーション膜形成用組成物には特に制限はない。例えば、一般式(I)で表される特定の化合物と、必要に応じて含まれる一般式(II)で表される化合物と、液状媒体と、樹脂等とを、通常用いられる混合方法で混合することで製造することができる。
尚、前記パッシベーション膜形成用組成物中に含まれる成分、及び各成分の含有量はTG/DTA等の熱分析、NMR、IR等のスペクトル分析、HPLC、GPC等のクロマトグラフ分析などを用いて確認することができる。
<パッシベーション膜付半導体基板>
本発明のパッシベーション膜付半導体基板は、前記製造方法で製造されたものであり、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、前記パッシベーション膜形成用組成物の加熱処理物層(焼成物層)とを有する。また前記パッシベーション膜付半導体基板は、前記パッシベーション膜形成用組成物の加熱処理物からなる層であるパッシベーション膜を有することで優れたパッシベーション効果を示す。
前記パッシベーション膜付半導体基板は、太陽電池素子、発光ダイオード素子等に適用することができる。例えば、太陽電池素子に適用することで変換効率に優れた太陽電池素子を得ることができる。
<太陽電池素子の製造方法>
本発明の太陽電池素子の製造方法は、p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上に、一般式(I)で表される化合物を含む前記パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、前記パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程とを有する。前記太陽電池素子の製造方法は、必要に応じてその他の工程を更に有していてもよい。
前記パッシベーション膜形成用組成物を用いることで、優れたパッシベーション効果を有する半導体基板パッシベーション膜を備え、変換効率に優れる太陽電池素子を簡便な方法で製造することができる。さらに電極が形成された半導体基板上に、所望の形状となるように半導体基板パッシベーション膜を形成することができ、太陽電池素子の生産性に優れる。
本発明において、前記半導体基板の前記p型層及びn型層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有していてもよい。この場合、前記電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程は、前記組成物層を形成する工程に先だって行われても、組成物層の形成又はパッシベーション膜を形成する工程の後に行われてもよい。より優れたパッシベーション効果を得る観点から、前記電極を形成する工程は、前記パッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程に先だって行われることも好ましい。尚、加熱処理工程において、電極形成用組成物層を加熱処理して電極を形成し、かつ、パッシベーション膜形成用組成物層を加熱処理してパッシベーション膜を形成してもよい。
p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上の前記p型層及びn型層からなる群より選択される少なくとも1つの層上に電極を形成する工程は、通常用いられる電極形成方法から、適宜選択して行うことができる。例えば半導体基板上の所望の領域に、銀ペースト、アルミニウムペースト等の電極形成用ペーストを付与し、必要に応じて焼結することで電極を形成することができる。なお、電極形成の方法の詳細は既述の通りである。
前記パッシベーション膜が設けられる半導体基板の面は、p型層であっても、n型層であってもよい。中でも変換効率の観点からp型層であることが好ましい。
前記パッシベーション膜形成用組成物を用いてパッシベーション膜を形成する方法の詳細は、既述のパッシベーション膜付き半導体基板の製造方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
前記半導体基板上に形成される半導体基板パッシベーション膜の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、5nm〜50μmであることが好ましく、10nm〜30μmであることが好ましく、15nm〜20μmであることが更に好ましい。
<太陽電池素子>
本発明の太陽電池素子は、前記太陽電池素子の製造方法によって製造されたものであり、p型層及びn型層がpn接合されてなる半導体基板と、前記半導体基板上の全面又は一部に設けられた前記パッシベーション膜形成用組成物の加熱処理物層(焼成物層)であるパッシベーション膜と、前記半導体基板の前記p型層及びn型層からなる群より選択される1以上の層上に配置された電極とを有する。前記太陽電池素子は、必要に応じてその他の構成要素を更に有していてもよい。
本発明の太陽電池素子は、前記太陽電池素子の製造方法によって形成されたパッシベーション膜を有することで、変換効率に優れる。
太陽電池素子の形状や大きさに制限はない。例えば、一辺が125mm〜156mmの正方形であることが好ましい。
次に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる半導体基板パッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。但し、この工程図は本発明をなんら制限するものではない。
図1(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、最表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが挙げられる。反射防止膜3とp型半導体基板1との間に酸化ケイ素などの表面保護膜(図示せず)が更に存在していてもよい。また本発明にかかる半導体基板パッシベーション膜を表面保護膜として使用してもよい。
次いで図1(b)に示すように、裏面の一部の領域にアルミニウム電極ペーストなどの裏面電極5を形成する材料を塗布した後に焼結して、裏面電極5を形成すると共にp型半導体基板1中にアルミニウム原子を拡散させてp型拡散層4を形成する。
次いで図1(c)に示すように、受光面側に電極形成用ペーストを塗布した後に熱処理して表面電極7を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図1(c)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。
最後に図1(d)に示すように、裏面電極5が形成された領域以外の裏面のp型層上に、パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する。付与は例えばスクリーン印刷等により行うことができる。p型層上に形成された組成物層を加熱処理してパッシベーション膜6を形成する。裏面のp型層上に、前記パッシベーション膜形成用組成物から形成されたパッシベーション膜6を形成することで、発電効率に優れた太陽電池素子を製造することができる。
図1に示す製造工程を含む製造方法で製造される太陽電池素子では、アルミニウム等から形成される裏面電極をポイントコンタクト構造とすることができ、基板の反りなどを低減することができる。更に前記パッシベーション膜形成用組成物を用いることで、電極形成された領域以外のp型層上にのみ優れた生産性でパッシベーション膜を形成することができる。
また図1(d)では裏面部分にのみパッシベーション膜を形成する方法を示したが、半導体基板1の裏面側に加えて、側面にもパッシベーション膜形成用組成物を付与し、これを加熱処理することで半導体基板1の側面(エッジ)にパッシベーション膜をさらに形成してもよい(図示せず)。これにより、発電効率により優れた太陽電池素子を製造することができる。
さらにまた、裏面部分に半導体基板パッシベーション膜を形成せず、側面のみに本発明の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を塗布、加熱処理して半導体基板パッシベーション膜を形成してもよい。本発明の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物は、側面のような結晶欠陥が多い場所に使用すると、その効果が特に大きい。
図1では電極形成後にパッシベーション膜を形成する態様について説明したが、パッシベーション膜形成後に、更にアルミニウムなどの電極を蒸着などによって所望の領域に形成してもよい。
図2は、本実施形態にかかるパッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の別の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。具体的には、図2はアルミニウム電極ペースト又は熱拡散処理によりp型拡散層を形成可能なp型拡散層形成用組成物を用いてp型拡散層を形成後、アルミニウム電極ペーストの焼結物又はp型拡散層形成用組成物の熱処理物を除去する工程を含む工程図を断面図として説明するものである。ここでp型拡散層形成用組成物としては例えば、アクセプタ元素含有物質とガラス成分とを含む組成物を挙げることができる。
図2(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが挙げられる。
次いで図2(b)に示すように、裏面の一部の領域にp型拡散層形成用組成物を塗布した後に熱処理して、p型拡散層4を形成する。p型拡散層4上にはp型拡散層形成用組成物の熱処理物8が形成されている。
ここでp型拡散層形成用組成物に代えて、アルミニウム電極ペーストを用いてもよい。アルミニウム電極ペーストを用いた場合には、p型拡散層4上にはアルミニウム電極8が形成される。
次いで図2(c)に示すように、p型拡散層4上に形成されたp型拡散層形成用組成物の熱処理物8又はアルミニウム電極8をエッチングなどの手法により除去する。
次いで図2(d)に示すように、受光面(表面)及び裏面の一部の領域に選択的に電極形成用ペーストを塗布した後に焼結して、受光面(表面)に表面電極7を、裏面に裏面電極5をそれぞれ形成する。受光面側に塗布する電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図2(d)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7が形成されてオーミックコンタクトを得ることができる。
また裏面電極が形成される領域にはすでにp型拡散層4が形成されているため、裏面電極5を形成する電極形成用ペーストには、アルミニウム電極ペーストに限定されず、銀電極ペースト等のより低抵抗な電極を形成可能な電極用ペーストを用いることもできる。これにより、さらに発電効率を高めることも可能になる。
最後に図2(e)に示すように、裏面電極5が形成された領域以外の裏面のp型層上に、パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する。付与は例えばスクリーン印刷等の塗布法により行うことができる。p型層上に形成された組成物層を加熱処理してパッシベーション膜6を形成する。裏面のp型層上に、前記パッシベーション膜形成用組成物から形成されたパッシベーション膜6を形成することで、発電効率に優れた太陽電池素子を製造することができる。
また図2(e)では裏面部分にのみパッシベーション膜を形成する方法を示したが、p型半導体基板1の裏面側に加えて、側面にもパッシベーション膜形成用材料を塗布、熱処理することでp型半導体基板1の側面(エッジ)にパッシベーション膜をさらに形成してもよい(図示せず)。これにより、発電効率がさらに優れた太陽電池素子を製造することができる。
さらにまた、裏面部分にパッシベーション膜を形成せず、側面のみにパッシベーション膜形成用組成物を付与し、これを熱処理してパッシベーション膜を形成してもよい。前記パッシベーション膜形成用組成物は、側面のような結晶欠陥が多い場所に使用すると、その効果が特に大きい。
図2では電極形成後にパッシベーション膜を形成する態様について説明したが、パッシベーション膜形成後に、更にアルミニウムなどの電極を蒸着などによって所望の領域に形成してもよい。
上述した実施形態では、受光面にn型拡散層が形成されたp型半導体基板を用いた場合について説明を行ったが、受光面にp型拡散層が形成されたn型半導体基板を用いた場合にも同様にして、太陽電池素子を製造することができる。尚、その場合は裏面側にn型拡散層を形成することとなる。
さらにパッシベーション膜形成用組成物は、図3に示すような裏面側のみに電極が配置された裏面電極型太陽電池素子の受光面側又は裏面側のパッシベーション膜6を形成することにも使用できる。
図3に概略断面図を示すように、p型半導体基板1の受光面側には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、その表面にパッシベーション膜6及び反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが知られている。また半導体基板パッシベーション膜6は、パッシベーション膜形成用組成物を付与し、これを熱処理して形成される。
p型半導体基板1の裏面側には、p型拡散層4及びn型拡散層2上にそれぞれ裏面電極5が設けられ、さらに裏面の電極が形成されていない領域にはパッシベーション膜6が設けられている。
型拡散層4は、上述のようにp型拡散層形成用組成物又はアルミニウム電極ペーストを所望の領域に塗布した後に加熱処理することで形成することができる。またn型拡散層2は、例えば熱拡散処理によりn型拡散層を形成可能なn型拡散層形成用組成物を所望の領域に塗布した後に加熱処理することで形成することができる。
ここでn型拡散層形成用組成物としては例えば、ドナー元素含有物質とガラス成分とを含む組成物を挙げることができる。
型拡散層4及びn型拡散層2上にそれぞれ設けられる裏面電極5は、銀電極ペースト等の通常用いられる電極形成用ペーストを用いて形成することができる。
また、p型拡散層4上に設けられる裏面電極5は、アルミニウム電極ペーストを用いてp型拡散層4と共に形成されるアルミニウム電極であってもよい。
裏面に設けられるパッシベーション膜6は、パッシベーション膜形成用組成物を裏面電極5が設けられていない領域に付与し、これを焼成熱処理することで形成することができる。
またパッシベーション膜6は半導体基板1の裏面のみならず、さらに側面にも形成してよい(図示せず)。
図3に示すような裏面電極型太陽電池素子においては、受光面側に電極がないため発電効率に優れる。さらに裏面の電極が形成されていない領域にパッシベーション膜が形成されているため、さらに変換効率に優れる。
図4は、本実施形態にかかるパッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の別の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。図4では、反射防止膜3と、n型拡散層2とを有するp型半導体基板1に、表面電極7と裏面電極5を焼結で同時に又は順次に形成した後、電極が形成されていない領域にパッシベーション膜形成用組成物を付与して、パッシベーション膜を形成する。
図4(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、最表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが挙げられる。反射防止膜3とp型半導体基板1との間に酸化ケイ素などの表面保護膜(図示せず)が更に存在していてもよい。また本発明にかかるパッシベーション膜を表面保護膜として使用してもよい。
次いで図4(b)に示すように、裏面の一部の領域にアルミニウム電極ペーストなどの裏面電極5を形成する材料を塗布する。また、受光面側に電極形成用ペーストを塗布する。これを焼結して、裏面電極5を形成すると共にp型半導体基板1中にアルミニウム原子を拡散させてp型拡散層4を形成する。同時に表面電極7を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図4(b)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。
最後に図4(c)に示すように、裏面電極5が形成された領域以外の裏面のp型層上に、パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する。付与は例えばスクリーン印刷等により行うことができる。p型層上に形成された組成物層を加熱処理してパッシベーション膜6を形成する。裏面のp型層上に、前記パッシベーション膜形成用組成物から形成されたパッシベーション膜6を形成することで、発電効率に優れた太陽電池素子を製造することができる。
図5は、本実施形態にかかるパッシベーション膜を有する太陽電池素子の製造方法の別の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。図5では、裏面電極5の形成に先立って、パッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する。
図5(a)に示すように、p型半導体基板1には、表面近傍にn型拡散層2が形成され、最表面に反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3としては、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜などが挙げられる。反射防止膜3とp型半導体基板1との間に酸化ケイ素などの表面保護膜(図示せず)が更に存在していてもよい。また本発明にかかるパッシベーション膜を表面保護膜として使用してもよい。
次に、図5(b)に示すように、裏面電極5が形成される予定の領域以外の裏面のp型層上に、パッシベーション膜形成用組成物を付与して組成物層を形成する。付与は例えばスクリーン印刷等により行うことができる。p型層上に形成された組成物層を加熱処理してパッシベーション膜6を形成する。
さらに、図5(c)に示すように、裏面の一部の領域にアルミニウム電極ペーストなどの裏面電極5を形成する材料を塗布する。また、受光面側に電極形成用ペーストを塗布する。これを焼結して、裏面電極5を形成すると共にp型半導体基板1中にアルミニウム原子を拡散させてp型拡散層4を形成する。また、表面電極7を形成する。これらの電極形成用ペーストの塗布の順番はどちらが先でもよい。また、焼結は同時でもよいし、塗布した順番に焼結して電極形成してもよい。また、電極7の電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、図5(c)に示すように反射防止膜3を貫通して、n型拡散層2の上に、表面電極7が形成されオーミックコンタクトを得ることができる。
上記では半導体基板としてp型半導体基板を用いた例を示したが、n型半導体基板を用いた場合も、上記に準じて変換効率に優れる太陽電池素子を製造することができる。
<太陽電池>
太陽電池は、前記太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の電極上に配線材料が配置されて構成される。太陽電池はさらに必要に応じて、配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結され、さらに封止材で封止されて構成されていてもよい。
前記配線材料及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。
前記太陽電池の大きさに制限はない。0.5m〜3mであることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
<実施例1>
(半導体基板パッシベーション膜形成用組成物の調製)
ペンタエトキシニオブ(一般式(II))を14.823g、アルミニウムエチルアセトアセタトジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社、商品名:ALCH、(一般式(I)))を14.890g、テルピネオールを46.689g、イソボルニルシクロヘキサノールを122.461g混合して、パッシベーション膜形成用組成物1を調製した。
(パッシベーション膜の形成)
半導体基板として、表面がミラー形状の単結晶型p型シリコン基板(株式会社SUMCO製、50mm角、厚さ:625μm)を用いた。シリコン基板をRCA洗浄液(関東化学株式会社製Frontier Cleaner−A01)を用いて70℃にて5分間、浸漬洗浄し、前処理を行った。
その後、上記で得られた半導体基板パッシベーション膜形成用組成物1を前処理したシリコン基板上にスクリーン印刷法を用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように全面に付与し、150℃で3分間乾燥処理した。次いで、窒素ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を0体積%に調整した雰囲気下にしたで、700℃で30分アニーリングした後、室温(25℃)で放冷して評価用基板を作製した。形成されたパッシベーション膜の膜厚は0.35μmであった。
(実効ライフタイムの測定)
上記で得られた評価用基板の実効ライフタイム(μs)を、ライフタイム測定装置(日本セミラボ株式会社製WT−2000PVN)を用いて、室温で反射マイクロ波光電導減衰法により測定した。得られた評価用基板の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を付与した領域の実効ライフタイムは1754μsであった。
得られたパッシベーション膜形成用組成物1について、以下のような評価を行った。
(せん断粘度)
上記で調製した半導体基板パッシベーション膜形成用組成物1のせん断粘度を、調製直後(12時間以内)に、回転式せん断粘度計(AntonPaar社製MCR301)に、コーンプレート(直径50mm、コーン角1°)を装着し、温度25℃で、せん断速度10s−1の条件で測定した。
せん断粘度は3.4Pa・sとなった。
<実施例2>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=1:9に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を10体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1705μsであった。
<実施例3>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=1:4に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を20体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1677μsであった。
<実施例4>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=3:7に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を30体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1624μsであった。
<実施例5>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=2:3に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を40体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1601μsであった。
<比較例1>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=1:1に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を50体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1550μsであった。
<比較例2>
実施例1において、酸素ガス:窒素ガス=4:1に調整した混合ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を80体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1523μsであった。
<比較例3>
実施例1において、酸素ガスを流速5L/分を流すことで酸素濃度を100体積%に調整した雰囲気下にした以外は実施例1と同様にして、評価用基板を作製し、実効ライフタイムを測定して評価した。実効ライフタイムは、1548μsであった。
Figure 2015135858
以上から、本発明の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を用い、酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成することで優れたパッシベーション効果を有する半導体基板パッシベーション膜付半導体基板を製造できることが分かる。また本発明で用いる半導体基板パッシベーション膜形成用組成物は保存安定性に優れることが分かる。さらに本発明で用いる半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を用いることで、簡便な工程で所望の形状に半導体基板パッシベーション膜を形成できることがわかる。
1‥p型半導体基板、2‥n型拡散層、3‥反射防止膜、4‥p型拡散層、5‥裏面電極、6‥パッシベーション膜、7‥表面電極、8‥p型拡散層形成用組成物の熱処理物(アルミニウム電極)

Claims (15)

  1. 半導体基板上に、下記一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
    パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
    を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
    Figure 2015135858
    [一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す]
  2. さらに、前記半導体基板上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有する、請求項1に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
  3. 請求項2において、半導体基板上の電極形成領域を除きパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
    パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
    電極形成領域に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成し、前記電極形成用組成物層を加熱処理して電極を形成する工程と、を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
  4. 前記半導体基板にパッシベーション膜形成用組成物を付与して形成されるパッシベーション膜形成用組成物層が、前記半導体基板上の電極が形成されない領域に形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
  5. 前記パッシベーション膜形成用組成物は、更に下記一般式(II)で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付き半導体基板の製造方法。
    Figure 2015135858
    [一般式(II)中、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、mは1〜5の整数を表す。]
  6. 前記一般式(I)においてRがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
  7. 前記一般式(I)においてnが1〜3の整数であり、Rがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法で製造されるパッシベーション膜付半導体基板。
  9. p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上に、下記一般式(I)で表される化合物を含むパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
    前記パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
    を有する太陽電池素子の製造方法。
    Figure 2015135858
    [一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは0〜3の整数を表す。X及びXはそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す]
  10. さらに、前記半導体基板の前記p型層及びn型層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層上に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成する工程を有する、請求項9に記載の太陽電池素子の製造方法。
  11. 請求項10において、p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有する半導体基板上の前記p型層及びn型層からなる群より選ばれる少なくとも1つの層上に電極形成領域を除きパッシベーション膜形成用組成物を付与してパッシベーション膜形成用組成物層を形成する工程と、
    パッシベーション膜形成用組成物層を酸素濃度が40体積%以下の雰囲気下で加熱処理してパッシベーション膜を形成する加熱処理工程と、
    電極形成領域に電極形成用組成物を付与して電極形成用組成物層を形成し、前記電極形成用組成物層を加熱処理して電極を形成する工程と、を有する太陽電池素子の製造方法。
  12. 前記パッシベーション膜形成用組成物は、更に下記一般式(II)で表される化合物を含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
    Figure 2015135858
    [一般式(II)中、MはNb、Ta、V、Y及びHfからなる群より選択される少なくとも1種を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表し、mは1〜5の整数を表す。]
  13. 前記一般式(I)においてRがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
  14. 前記一般式(I)においてnが1〜3の整数であり、Rがそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の太陽電池素子の製造方法。
  15. 請求項9〜14のいずれか一項に記載の製造方法で製造される太陽電池素子。
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