JP2015135856A - 希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石を簡便に製造できる希土類ボンド磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】希土類−鉄系合金からなり、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粒子11を複数有する異方性磁石粉末と、前記異方性磁石粉末を結合する結合用粒子12を複数有する結合用粉末とを含む混合粉末を準備する準備工程と、前記混合粉末を磁場印加中で加圧成形して成形体を作製する成形工程とを備え、前記結合用粉末は、その含有量が0.7質量%以上3.0質量%未満であり、加圧成形前には前記異方性磁石粒子同士の間隔を保持する中空形状で、加圧成形後には前記異方性磁石粒子に押圧されて前記異方性磁石粒子間に沿って展延する。
【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石などに利用される希土類ボンド磁石を製造する希土類ボンド磁石の製造方法に関する。特に、高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石を簡便に製造できる製造方法に関する。
モータや発電機などに利用される永久磁石には、希土類磁石(代表的には、Nd−Fe−B系磁石、Sm−Fe−N系磁石)が広く利用されている。希土類磁石として、例えば、特許文献1には、結晶磁気異方性を有する希土類磁石粉末(異方性磁石粉末)と、この希土類磁石粉末を結合する樹脂からなる結合剤とを備える希土類ボンド磁石が開示されている。この希土類ボンド磁石は、Nd−Fe−B系合金にCoを添加してなる異方性磁石粉末とエポキシ樹脂とを混合し、磁場印加中に加圧成形した後、樹脂を硬化する熱処理を施して製造されている。
特開平09−246028号公報
配向度が高いほど磁気異方性に優れ、密度が高いほど磁石領域が多く残留磁化といった磁気特性を高められるため、高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石の開発が望まれている。しかし、従来の製造方法では、結合材の量を少なくして配向性のばらつきを抑制することが難しく高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石を得ることが難しい。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、高配向度でかつ高密度の希土類ボンド磁石を簡便に製造できる希土類ボンド磁石の製造方法を提供することにある。
本発明の希土類ボンド磁石の製造方法は、準備工程と、成形工程とを備える。準備工程は、希土類−鉄系合金からなり、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粒子を複数有する異方性磁石粉末と、異方性磁石粉末を結合する結合用粒子を複数有する結合用粉末とを含む混合粉末を準備する。成形工程は、混合粉末を磁場印加中で加圧成形して成形体を作製する。結合用粉末は、その含有量が0.7質量%以上3.0質量%未満である。そして、結合用粉末は、加圧成形前には異方性磁石粒子同士の間隔を保持する中空形状で、加圧成形後には異方性磁石粒子に押圧されて異方性磁石粒子間に沿って展延する。
本発明の希土類ボンド磁石の製造方法は、高配向度と高密度とを兼ね備える希土類ボンド磁石を効果的に製造できる。
実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造方法を説明する工程説明図である。
《本発明の実施形態の説明》
従来の希土類ボンド磁石は非磁性材料である樹脂からなる結合用粉末を含むことで密度が低下するため、結合用粉末の含有量を極力少なくすることが高密度化を達成するのに効果的である。しかし、結合用粉末の含有量を極力少なくした混合材料を用意して、従来と同様の製造方法で希土類ボンド磁石を製造したところ、密度を高められるものの、配向度が低下することが分かった。本発明者らは、この原因を鋭意検討したところ、混合材料における結合用粉末の割合が少ないことで、異方性磁石粒子同士が近接して異方性磁石粒子に磁気反発力が作用し易くなることが分かった。その磁気反発力により配向性がばらつき易くなったと考えられる。そして、この配向性のばらつきは、高さの高い希土類ボンド磁石を製造する場合に顕著になることも分かった。混合粉末を加圧成形する際、異方性磁石粉末は自重により下方側で密集され易いことにより、異方性磁石粒子間が狭くなり易くなるため、磁気反発力がより作用し易くなったからだと考えられる。そこで、本発明者らは、磁気反発力の作用を生じ難くした上で高密度化を達成できる製造方法を鋭意検討したところ、少ない含有量でも加圧成形前には大きな体積を有して磁石粒子同士の間隔を保つことができ、かつ加圧成形後にはその体積を縮小できる特定の結合用粉末を用いることで、高配向度と高密度の両方を兼ね備える希土類ボンド磁石が得られるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する
(1)実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造方法は、準備工程と、成形工程とを備える。準備工程は、希土類−鉄系合金からなり、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粒子を複数有する異方性磁石粉末と、異方性磁石粉末を結合する結合用粒子を複数有する結合用粉末とを含む混合粉末を準備する。成形工程は、混合粉末を磁場印加中で加圧成形して成形体を作製する。結合用粉末は、その含有量が0.7質量%以上3.0質量%未満である。そして、結合用粉末は、加圧成形前には異方性磁石粒子同士の間隔を保持する中空形状で、加圧成形後には異方性磁石粒子に押圧されて異方性磁石粒子間に沿って展延する。
上記の構成によれば、中空形状の結合用粉末を用いることで、高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石を効果的に製造できる。中空形状の結合用粉末を用いることで、中実形状の結合用粉末に比べて少ない含有量でも嵩(成形用金型に充填した加圧成形前の混合粉末に占める結合用粒子の合計体積の割合)を稼ぐことができる。そのため、加圧成形前には結合用粒子が中空形状を保持することで異方性磁石粒子同士を近接し難くすることができる。一方、加圧成形後には中空形状の結合用粒子が押し潰されて結合用粉末の体積が縮小されることで成形体の密度を高めることができる。異方性磁石粒子同士の近接を抑制すれば、異方性磁石粒子に磁気反発力が作用し難くできて配向性のばらつきを抑制できる。特に、結合用粉末の含有量を0.7質量%以上とすれば、異方性磁石粒子同士の間隔を保ち易いため配向度を高められる上に強度を高められ、結合用粉末の含有量を3.0質量%未満とすれば、結合用粉末の含有量が多くなり過ぎないため密度を高められる。
(2)上記希土類ボンド磁石の製造方法の一形態として、結合用粉末が、アモルファスシリカガラスで構成されていることが挙げられる。
上記の構成によれば、高密度及び高配向度に加え、高強度な希土類ボンド磁石を製造できる。アモルファスシリカガラスで構成される中空形状の結合用粉末は、加圧成形前には異方性磁石粒子間で異方性磁石粒子同士の間隔を保つことができるため、希土類ボンド磁石の配向度を高められるからである。加圧成形後には、結合用粉末は成形圧により押し潰されて体積を縮小できると共に、異方性磁石粒子間に沿って展延させることができるため、希土類ボンド磁石の密度を高められるからである。加えて、アモルファスシリカガラスは優れた圧着性(圧力下での結合性)を有するため、異方性磁石粒子同士を強固に結合できて希土類ボンド磁石の強度を高められるからである。
(3)上記希土類ボンド磁石の製造方法の一形態として、成形体の高さが、10mm以上であることが挙げられる。
上記の構成によれば、成形体の高さが高くても高密度及び高配向度を兼ね備える希土類ボンド磁石を製造できる。従来の希土類ボンド磁石の場合、成形体の高さが高くなるほど、高密度及び高配向度を兼ね備えることが難しくなる。加圧成形前において、混合粉末の異方性磁石用粉末が自重により鉛直下方に下がってその鉛直下方側は異方性磁石粒子同士の間隔が狭くなり易い。それにより、異方性磁石粒子に磁気反発力が作用し易く、配向性にばらつきが生じ易くなるからである。これに対し、本実施形態によれば、加圧成形前には中空形状の結合用粉末により異方性磁石粒子同士の間隔を保ち易いからである。成形体の高さの上限は特にないが、一般的には50mm程度以下の希土類ボンド磁石が実用的に用いられることが多い。
(4)上記希土類ボンド磁石の製造方法の一形態として、成形工程における成形圧力が、250MPa以上1000MPa以下であることが挙げられる。
成形圧力を250MPa以上とすることで、混合粉末を十分に加圧でき、かつ中空形状を圧縮させて体積を十分に低減できるため密度を高め易い。一方、成形圧力を1000MPa以下とすることで、混合粉末を加圧しすぎることがなく、異方性磁石粒子の破砕を低減できて配向性にばらつきが生じ難くできるため配向度を高められる。
(5)上記希土類ボンド磁石の製造方法の一形態として、成形工程において印加する磁場の大きさが、0.8T以上であることが挙げられる。
印加する磁場の大きさを0.8T以上とすることで、配向度を高め易い。
(6)上記希土類ボンド磁石の製造方法の一形態として、成形体に10MPa以上100MPa以下の圧力を付加した状態で以下の熱処理を施す熱処理工程を備えることが挙げられる。雰囲気が不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気、温度が200℃以上400℃以下、保持時間が0.1時間以上5時間以下である。
上記の構成によれば、強度に優れる希土類ボンド磁石を製造できる。上記条件で熱処理を施すことで、結合用粉末の塑性変形を促進して結合用粉末と異方性磁石粉末の接触率を高められるからである。成形体に付加する圧力を10MPa以上とすることで、結合用粉末の塑性変形を十分に起こすことができ、付加する圧力を100MPa以下とすることで、圧力を付加しすぎることによる成形体の損傷を防止できる。また、雰囲気を不活性ガス又は減圧雰囲気とすることで、異方性磁石粉末の酸化を抑制できる。更に、温度を200℃以上、保持時間を0.1時間以上とすることで、結合用粉末を十分に塑性変形させることができる。一方、温度を400℃以下、保持時間を5時間以下とすることで、結合用粉末の結晶化による成形体の割れなどの成形体の損傷を抑制できる。また、異方性磁石粉末や結合用粉末に含まれる酸素などによる異方性磁石粉末の劣化を抑制できる。
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔希土類ボンド磁石の製造方法〕
実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造方法は、希土類磁石粉末と、希土類磁石粉末を結合する結合用粉末とを含む混合粉末を準備する準備工程と、混合粉末を加圧成形して成形体を作製する成形工程とを備える。希土類ボンド磁石の製造方法の主たる特徴とするところは、少ない含有量で加圧成形前に磁石粒子同士の間隔を保持でき、加圧成形時には成形圧で押し潰される特定の結合用粉末を用いる点にある。この特定の結合用粉末を用いることで、詳しくは後述するが、高配向度と高密度とを兼ね備える希土類ボンド磁石を実現できる。以下、図1を適宜参照して各工程を詳細に説明する。
[準備工程]
準備工程では、希土類磁石粉末と結合用粉末とを含む混合粉末10を準備する(図1左図)。希土類磁石粉末と結合用粉末とをそれぞれ準備し、例えば、V型混合機などで混合して混合粉末10を作製することが挙げられる。
(希土類磁石粉末)
希土類磁石粉末としては、希土類元素と鉄族元素とを含む希土類−鉄系合金からなり、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粒子11を複数有する異方性磁石粉末が挙げられる(図1左図)。
希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、及びアクチノイドから選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。特に、希土類元素として、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ジスプロジウム(Dy)、及びYから選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。そうすれば、磁気特性に優れる希土類ボンド磁石が得られる。
希土類元素の含有量は、10質量%以上40質量%未満であることが好ましい。希土類元素としてNdを単独で含有する場合、Ndの含有量は、例えば、25質量%以上37質量%以下が挙げられ、特に28質量%以上35質量%以下とすることが好ましい。希土類元素としてSmを単独で含有する場合、Smの含有量は、例えば、25質量%以上26.5質量%以下が挙げられる。NdやSmの含有量がそれぞれ上記範囲内であることで、後述する理想的な化学量論組成の希土類−鉄系合金が得られる。
鉄族元素は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。代表的には、Fe単独とする形態や、FeとCoとの双方を含む形態が挙げられる。Coを含む場合、Coの含有量は6質量%以下が好ましい。そうすれば、飽和磁化Jsや残留磁化Brの低下を抑制できる。
希土類−鉄系合金は、希土類元素及び鉄族元素以外の元素として、希土類元素がNdを含む場合、代表的には、ホウ素(B)及び炭素(C)から選択される少なくとも1種の元素を含み、希土類元素がSmを含む場合、代表的には、窒素(N)を含む。BやCの含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下、更に0.5質量%以上1.5質量%以下が挙げられる。Nの含有量は、0.5質量%以上5質量%以下、更に2質量%以上4質量%以下が挙げられる。
希土類−鉄系合金におけるその他の添加元素として、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)及びニオブ(Nb)から選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。これらの添加元素の含有量(複数の場合には合計含有量)は、0.1質量%以上20質量%以下、更に0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。これらの元素を含有することで、例えば、保磁力の向上などの効果が望める。
希土類−鉄系合金の具体的な組成としては、希土類元素がNdを含む場合、Nd−Fe−B合金(例、NdFe14B)、Nd−Fe−Co−B合金(例、Nd(Fe13Co)B)、Nd−Fe−C合金(例、NdFe14C)、Nd−Fe−Co−C合金(例、Nd(Fe13Co)C)などが挙げられ、希土類元素がSmを含む場合、Sm−Fe−N合金(例、SmFe17)などが挙げられる。
結晶磁気異方性を有するとは、磁石粉末の飽和磁化Js(T)に対する磁石粉末の残留磁化Br(T)の比Br/Jsを磁石粉末の配向度とするとき、この磁石粉末の配向度Br/Jsが0.75以上であることを言う。この配向度の測定方法は、後述する。
異方性磁石粉末の混合粉末10における含有量は、97.0質量%超99.3質量%以下が好ましい。異方性磁石粉末の混合粉末における体積存在比率は、50%以上80%以下とすることが好ましい。異方性磁石粉末の上記体積存在比率とは、{A/(A+B)}×100で求めた値とする(但し、A=「異方性磁石粉末の含有量/異方性磁石粉末の比重」、B=「結合用粉末の含有量/結合用粉末の比重」)。この含有量及び体積存在比率の上記範囲に関しては、後述する結合用粉末で説明する。
異方性磁石粉末の平均粒径は、10μm〜500μm、更に100μm〜350μmが挙げられる。異方性磁石粒子11は、粒径が大きいと、表層酸化による磁気特性の劣化を抑えられる。そのため、比較的粒径の大きい粒子を備えると、磁気特性に優れる希土類ボンド磁石とすることができる。異方性磁石粉末の平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した場合において、体積基準の粒度分布の小径側から累積が50%となる値(D50:50体積%粒径)のことを言う。
異方性磁石粉末は、希土類元素がNdを含む場合、Ndを含む上記組成の希土類−鉄系合金の粉末に対して、例えば、特定のHDDR(Hydrogenation Decomposition Desorption Recombination)処理を施すことで得られる。このような特定のHDDR処理の条件は、HD処理における水素圧と温度とを特定の条件(後述)とすることであり、例えば、公知の条件を利用できる。一方、希土類元素がSmを含む場合、Sm−Fe合金(例えば、SmFe17)の粉末に対して、上記HDDR処理と、窒化処理とを施すことで得られる。これら合金の粉末は、例えば、メルトスパン法やストリップキャスト法などの公知の粉末の製造方法を利用して製造することができる。
上記HD処理の条件は、例えば、雰囲気:水素を含む雰囲気(水素雰囲気、又は、水素と、アルゴンや窒素といった不活性ガスとの混合雰囲気)、温度:用意した合金の水素不均化温度以上(材質にもよるが、例えば、600℃以上1100℃以下)、保持時間:0.5時間以上5時間以下が挙げられる。
上記DR処理の条件は、例えば、雰囲気:非水素雰囲気(アルゴンや窒素といった不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(例えば、標準の大気圧よりも圧力が低い真空雰囲気))、温度:水素化合金の再結合温度以上(材質にもよるが、例えば600℃以上1000℃以下)、保持時間:10分以上600分以下が挙げられる。特に、減圧雰囲気(例えば、真空度は100Pa以下、最終真空度は10Pa以下、更に1Pa以下)は、希土類元素の水素化合物が残存し難くて好ましい。上記温度とすることで、再結合合金の結晶の成長を抑制して微細な結晶組織が得られる。DR処理は、磁石粉末に強磁場(例えば、4T以上)を印加した状態で行うことができる。こうすることで、再結合合金の配向性を高められ、ひいては磁石粉末の配向性を高められる。
窒化処理の条件は、公知の処理条件を適用することができ、例えば、雰囲気:窒素を含む雰囲気(窒素のみの単一雰囲気、又はアンモニア、Ar、水素の少なくとも一種を混合した混合雰囲気)、温度:200℃以上550℃以下、保持時間:10分以上600分以下とすることが挙げられる。窒化処理は、磁場を印加した状態で行うことができる。磁場印加により、結晶格子を一方向に引き伸ばし易く、引き伸ばされた鉄原子−鉄原子間に窒素原子を優先的に侵入させて、理想的な化学量論組成(例、SmFe17)の磁石粉末を得易い。印加する磁場の大きさは、3T以上が挙げられる。
(結合用粉末)
結合用粉末は、異方性磁石粒子11同士を結合する結合用粒子12を複数有する(図1左図)。結合用粉末は、加圧成形前には異方性磁石粒子11同士の間隔を保持するが(図1中図)、加圧成形後には押圧されて異方性磁石粒子11間に沿って展延する(図1右図)。そのような結合用粒子11としては、加圧成形前の形状が中空形状であることが挙げられる。中空形状の結合用粒子12を用いることで、中実形状の結合用粒子に比べて少ない含有量で嵩(成形用金型に充填した加圧成形前の混合粉末に占める結合用粒子の合計体積の割合)を稼ぐことができる。そのため、加圧成形前には異方性磁石粒子11同士が近接し難くできる。一方、成形時に中空形状が押し潰され、更に異方性磁石粒子12間に沿って展延されることで結合用粉末の体積を縮小できるからである。異方性磁石粒子11同士の近接を抑制すれば、異方性磁石粒子11に磁気反発力が作用し難くできて配向性のばらつきを抑制できる。
加圧成形後の結合用粒子12は、異方性磁石粒子11に押圧されて互いに隣接する二つの異方性磁石粒子11間や、互いに隣接する三つの異方性磁石粒子11で囲まれる三重点部、或いは、互いに隣接する四つの異方性磁石粒子11で囲まれる領域などに配されることが多い。即ち、結合用粒子12は、二つの異方性磁石粒子11や、三つの異方性磁石粒子11、或いは、四つの異方性磁石粒子11に接している。結合用粒子12の加圧成形後の形状は、三角錐形状などの角錐形状、角柱形状などが挙げられ、上記三重点部における結合用粒子11の形状は、三角錐形状が多い。
結合用粉末の混合粉末10における含有量は、0.7質量%以上3.0質量%未満とすることが挙げられる。結合用粉末の含有量を0.7質量%以上とすることで、異方性磁石粒子11同士の間隔を保ち易いため得られる希土類ボンド磁石の配向度を高められる。その上、異方性磁石粒子11を十分に結合できるため、十分な強度を有する希土類ボンド磁石とすることができる。結合用粉末の含有量を3.0質量%未満とすることで、結合用粉末の含有量が多くなり過ぎないため得られる希土類ボンド磁石の密度を高められる。なお、結合用粉末の上記含有量は、後述の成形工程後の成形体でも実質的に維持される。
結合用粉末の混合粉末10における体積存在比率は、20%以上50%以下とすることが好ましい。ここでいう結合用粉末の上記体積存在比率とは、{B/(A+B)}×100で求めた値とする(但し、A=「異方性磁石粉末の含有量/異方性磁石粉末の比重」、B=「結合用粉末の含有量/結合用粉末の比重」)。結合用粉末の上記体積存在比率を20%以上とすることで、異方性磁石粒子11同士の間隔を保持し易く配向度を高められる。結合用粉末の上記体積存在比率を50%以下とすることで、希土類ボンド磁石の密度を高められる。
結合用粉末の平均粒径は、異方性磁石粉末の平均粒径の20%以上50%以下とすることが好ましい。結合用粉末の平均粒径を異方性磁石粉末の平均粒径の20%以上とすることで、加圧成形前において、異方性磁石粒子11同士の間隔を保持し易く、磁気反発力が作用し難くできるため、配向性のばらつきを抑制し易い。結合用粉末の平均粒径を異方性磁石粉末の平均粒径の50%以下とすることで、加圧成形前に異方性磁石粒子11間に均一に分散させ易い。また、加圧成形前に異方性磁石粒子11同士の間隔が広くなりすぎることを抑制できる。加圧成形時に中空形状が押し潰されることで異方性磁石粒子11が動く。その動く距離が長くなれば、磁場印加中であってもその移動により配向性にばらつきが生じる虞があるが、その動く距離が長くなりすぎるのを抑制できて配向性のばらつきを抑制できる。結合用粉末の平均粒径は、具体的には、20μm以上250μm以下、特に、30μm以上175μm以下が挙げられる。
結合用粉末の構成材料として、優れた圧着性(圧力下での結合性)を有することが好ましく、その上優れた耐熱性を有することが好ましい。結合用粉末の構成材料は、例えば、Siを含む非磁性材料が好適に利用できる。具体的には、ケイ酸ナトリウムや、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アモルファスシリカガラスが挙げられ、特に、アモルファスシリカガラスが好ましい。アモルファスシリカガラスで構成される中空形状の結合用粒子12は、加圧成形前には異方性磁石粒子11間で異方性磁石粒子11同士の間隔を保つことができるため配向度を高められ、加圧成形後には中空形状が押し潰されて異方性磁石粒子11間に沿って展延させることができるため密度を高められるからである。加えて、アモルファスシリカガラスは優れた圧着性を有するため、異方性磁石粒子11同士を強固に結合できて希土類ボンド磁石の強度を高められるからである。その他、結合用粉末の構成材料はホウ酸ガラスなどが挙げられる。
(前処理)
異方性磁石粉末と結合用粉末とをそれぞれ準備して混合粉末10を作製する場合、異方性磁石粒子11間に結合用粒子12が程良く介在された混合粉末10が得られるように、異方性磁石粉末と結合用粉末とを混合する前に異方性磁石粉末に対して前処理を施すことが挙げられる。この前処理は、必要に応じて行うことができる。この前処理としては、例えば、シリコーン樹脂の液体を異方性磁石粒子11の表面にスプレーなどで塗布して樹脂層を形成することが挙げられる。異方性磁石粒子11に上記樹脂層を形成すれば、異方性磁石粒子11と結合用粒子12との親和性を高められる。スプレーによる塗布は、異方性磁石粒子11を転動させた状態で行うことが好ましい。そうすれば、異方性磁石粒子11の外周に略均一な厚さの上記樹脂層を形成し易い。
上記樹脂層の厚さは、0.05μm以上10μm以下程度とすることが挙げられる。上記樹脂層の厚さを0.05μm以上とすることで、結合用粒子12を付着させ易い。上記樹脂層の厚さを10μm以下とすることで、結合用粒子12の粒径に比べて薄いので、上記樹脂層への結合用粒子12の堆積を抑制し易い。また、上記樹脂層が薄いことで、相対的に重い異方性磁石粒子11同士が結合することを防止した状態で、相対的に軽い結合用粒子12を付着できる。従って、結合用粒子12を異方性磁石粒子11間に程良く介在させた混合粉末10を得ることができる。
シリコーン樹脂の混合粉末10における含有量(体積存在比率)は、例えば0.05質量%以上0.1質量%以下程度(1体積%以下)が挙げられる。シリコーン樹脂は、その種類に応じて異方性磁石粉末に塗布した後、結合用粉末を混合する前に硬化したり、結合用粉末を混合した後に硬化したりすることが挙げられる。例えば、硬化した後も接着性能を有する場合は、前者のように結合用粉末の混合前に硬化させてもよい。一方、硬化前に接着性能を有する場合には、後者のように結合用粉末の混合後に硬化させるとよい。この硬化は、シリコーン樹脂の種類が自然乾燥・硬化型の場合は熱処理を施さなくてもよく、熱硬化型の場合はその種類に応じた温度の熱処理を施すとよい。なお、結合用粉末の混合後にシリコーン樹脂を硬化する場合、その硬化は、後述の成形工程前に行ってもよいし、成形工程後の熱処理工程による熱処理で併せて行ってもよい。
[成形工程]
成形工程では、所望の形状の成形体が得られる成形用金型に充填された混合粉末10を加圧成形して成形体1を作製する。例えば、図1左図に示すように、上パンチ101と下パンチ102とダイ103とを備える成形用金型100を用いることが挙げられる。
加圧成形は、成形用金型100に充填された混合粉末10に磁場(図1中図:二点鎖線矢印で示す)を印加して行う。混合粉末10を金型100内に充填したままの状態(磁場印加前)では、図1左図の破線で囲まれる領域を拡大して示すように、異方性磁石粒子11の配向方向(黒塗り矢印で示す)がばらついた状態となっている。そこで、混合粉末10に磁場を印加すると、図1中図の破線で囲まれる領域を拡大して示すように、異方性磁石粒子11の配向方向が磁場の印加方向に沿って揃う。それと共に、異方性磁石粒子11間には結合用粒子12が介在されて、異方性磁石粒子11同士の間隔が保持される。そのため、異方性磁石粒子11に磁気反発力が作用し難くでき、配向性がばらつき難くなる。即ち、磁場を印加して加圧成形すると、図1右図の破線で囲まれる領域を拡大して示すように、異方性磁石粒子11の配向方向が一方向に揃った状態のまま異方性磁石粒子11を加圧できる。この加圧により、結合用粒子12は、異方性磁石粒子11に押圧されて中空形状が押し潰され、更に異方性磁石粒子11間に展延し、主として互いに隣接する三つの異方性磁石粒子11で囲まれる三重点に介在されることが多くなる。そうして結合用粒子12により異方性磁石粒子11が結合された成形体1が作製される。なお、この結合用粒子12は硬化していない。
印加する磁場の大きさは、具体的には、0.8T以上とすることが挙げられる。印加する磁場の大きさを0.8T以上とすることで、異方性磁石粒子11の配向方向を略一方向に揃え易くできる。印加する磁場の大きさは、あまり大きくしなくてもよい。中空形状の結合用粒子12を用いることで異方性磁石粒子11同士の間隔を保持できるため、印加する磁場の大きさを大きくしなくても異方性磁石粒子11の整列状態が乱れ難くなるからである。印加する磁場の大きさの上限は、例えば2.5T程度、更には1.5T程度とすることが挙げられる。
磁場の印加方向は、混合粉末10の加圧方向と平行としてもよいし、この加圧方向と垂直としてもよい。異方性磁石粒子11の配向方向が磁場の印加方向と同一方向に向くので、磁場の印加方向を前者とする場合、異方性磁石粒子11の配向方向が加圧方向に平行となり、後者とする場合、異方性磁石粒子11の配向方向が加圧方向と垂直となる。本例では、磁場の印加方向を混合粉末10の加圧方向と垂直方向とした。
磁場の印加開始時点は、混合粉末10が成形用金型100に充填された後、加圧成形される前、即ち、混合粉末10に圧力が付加される前とすることが挙げられる。そして、磁場を印加した状態を、少なくとも混合粉末10に圧力が付加される(加圧開始時)まで維持することが挙げられる。そうすれば、混合粉末10への加圧開始時には異方性磁石粒子11の配向方向を揃えた状態で加圧成形できる。磁場を印加した状態の維持は、混合粉末10に圧力が付加された時点まで(即ち、圧力が付加された時点で磁場をゼロとして、その後、加圧終了時まで磁場を印加しない)としてもよいし、加圧終了時点としてもよい。後者の場合、例えば、磁場の印加方向を加圧方向と平行とした際、加圧により異方性磁石粒子11の配向方向が磁場の印加方向に対して傾くことを抑制できる。
磁場の印加手段には、銅線コイルといった常電導コイルを具える常電導磁石や、超電導コイルを具える超電導磁石を用いることができる。
加圧成形時の雰囲気は、非酸化性雰囲気(不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気)とすることが好ましい。希土類元素を含む異方性磁石粒子11は特に酸化され易いため、非酸化性雰囲気とすると異方性磁石粒子11の酸化を防止できるからである。
成形圧力は、例えば、250MPa以上1000MPa以下とすることが挙げられる。成形圧力を250MPa以上とすることで、混合粉末10を十分に加圧できるため密度を高め易い。成形圧力は300MPa以上、更には400MPa以上が好ましい。一方、成形圧力を1000MPa以下とすることで、混合粉末10を加圧しすぎることがなく、配向性にばらつきが生じ難くできるため配向度の高い希土類ボンド磁石が得られる。
[熱処理工程]
成形体1に対して熱処理を施して結合用粒子12を硬化したり、密着性を高めたりするための熱処理工程を施すことができる。そうすれば、結合用粒子12による異方性磁石粒子11の結合性を高められて強度に優れる希土類ボンド磁石とすることができる。熱処理工程は、必要に応じて行うことができる。この熱処理は、成形体1を加圧した状態で行うことが挙げられる。付加する圧力は、例えば、10MPa以上100MPa以下とすることが挙げられる。成形体1に付加する圧力を10MPa以上とすることで、結合用粒子12の塑性変形を十分に起こすことができる。成形体1に付加する圧力を100MPa以下とすることで、圧力を付加しすぎることによる成形体1の損傷を防止できる。熱処理の条件は、雰囲気:不活性ガス雰囲気(例えば、ArやN)又は減圧雰囲気、温度:200℃以上400℃以下、保持時間:0.1時間以上5時間以下(更には1時間以下)が挙げられる。雰囲気を不活性ガス又は減圧雰囲気とすることで、異方性磁石粒子11の酸化を抑制できる。温度を200℃以上、保持時間を0.1時間以上とすることで、結合用粒子12を十分に塑性変形させることができ、温度を400℃以下、保持時間を5時間以下とすることで、結合用粒子12の結晶化による割れなどの成形体1の損傷を抑制できる。また、異方性磁石粒子11や結合用粒子12に含まれる酸素などによる異方性磁石粒子11の劣化を抑制できる。
結合力の低下を抑制できる。
〔作用効果〕
上述した希土類ボンド磁石の製造方法によれば、異方性磁石粉末の結合用粉末として中空形状の粒子を用いることで、少ない含有量でも嵩を稼ぐことができため、加圧成形前には異方性磁石粒子同士が近接し難くできる。一方、加圧時に中空形状が押し潰されて異方性磁石粒子間に展延されることで結合用粉末の体積が縮小されるため加圧成形後には密度を高められる。従って、高配向度と高密度とを兼ね備える希土類ボンド磁石を製造できる。
〔試験例1:No.1−1〜1−10,1−101〕
希土類ボンド磁石の試料No.1−1〜1−10,1−101を作製し、各試料の密度及び磁気特性を評価した。
[試料No.1−1〜1−10]
まず、異方性磁石粉末と結合用粉末とを含む混合粉末を準備した。異方性磁石粉末の原料として、32質量%Nd、1質量%B、5質量%Co、残部がFe及び不可避的不純物の合金溶湯を用意した。この合金溶湯を用いて、ストリップキャスト法で薄片を作製した。続いて、この薄片をAr雰囲気中で粒子状に粉砕した後、篩にかけて平均粒径が150μmの原料粉末を作製した。
次に、上記原料粉末に対し、HDDR処理(HD処理:25体積%Hと、75体積%Arとの混合雰囲気中、850℃×1hr、DR処理:真空中(最終真空度5Pa)、850℃×1hr)を施して、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粉末(比重7.5g/cm)を作製した。異方性磁石粉末の配向度Br/Jsは0.8であった。異方性磁石粉末の配向度は、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いて測定した。ここでは、BHトレーサにて磁化曲線(B−H曲線)を測定し、1592kA/m(20kOe)の磁化を飽和磁化Jsとして残留磁化Brとの比から配向度を算出した。
一方、結合用粉末として、直径が約50μmの中空形状のアモルファスシリカガラス(比重:0.2g/cm)からなる粒子を用意した。
上記異方性磁石粉末と上記結合用粉末とを混合して試料No.1−1〜1−10の混合粉末を作製した。各試料の混合粉末における上記異方性磁石粉末及び上記結合用粉末の各含有量と体積存在比率とを表1に示す。体積存在比率は、基本的に実施形態において述べた方法に準じて算出した。
次に、混合粉末を加圧成形して成形体を作製した。ここでは、まず、図1左図に示す成形用金型100を用意し、下パンチ102とダイ103とで形成されるキャビティに混合粉末10を充填した。続いて、図1中図に示すように、成形用金型100内の混合粉末10に磁場を印加した。ここでは、磁場の印加方向を混合粉末10の加圧方向と垂直方向とした。そして、図1右図に示すように、磁場印加中に上パンチ101と下パンチ102とで混合粉末10を加圧成形して成形体(縦:10mm×横:10mm×高さ:表1に示す)を作製した。印加した磁場の大きさ(磁場強度)、成形圧力(少数点第一位を四捨五入)、成形体の高さを表1に示す。
得られた成形体に対して49MPaの圧力を付加した状態で熱処理を施して、結合用粒子を硬化させた。熱処理の条件は、雰囲気を真空中(最終真空度5Pa)とし、温度を300℃、保持時間を1hrとした。
(試料No.1−101)
準備する結合用粉末の種類と成形体へ施す熱処理条件とを除き、試料No.1−1〜1−10と同様にして成形体の試料No.1−101を作製した。結合用粉末には、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂を用い、混合粉末における結合用粉末の含有量を0.8質量%とした。成形体に対する熱処理条件は、雰囲気をAr雰囲気とし、温度を150℃、保持時間を1hrとして上記樹脂を硬化した。この熱処理は、成形体に対して圧力を付加せずに行った。なお、試料1−101は、中空形状の結合用粉末を含有していないため、表1の中空形状の結合用粉末の欄は「0」としている。
[密度及び磁気特性の評価]
試料No.1−1〜1−10,1−101について、準備した異方性磁石粉末の質量と、作製した成形体の体積とから成形体の密度を算出した。また、3979kA/m(50kOe)の磁界を印加して成形体に着磁し、磁気特性を評価した。具体的には、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いてB−H曲線を測定し、飽和磁化Js、残留磁化Br、及び配向度Br/Jsを求めた。着磁方向(磁界の印加方向)は、加圧成形における磁界の印加方向と同じにした。これらの結果を表1に示す。
Figure 2015135856
表1に示すように、中空形状の結合用粉末を用いた試料のうち、結合用粉末の含有量を0.7質量%以上3.0質量%未満とした試料No.1−3〜1−7は、配向度が0.74以上、かつ密度が5.5g/cm以上であり、高配向度と高密度を兼ね備えることが分かる。これは、中空形状の結合用粉末の含有量を0.7質量%以上とすることで、異方性磁石粒子同士の間隔を十分に保つことができたため配向度を高められ、3.0質量%未満とすることで、結合用粉末の含有量が多くなり過ぎなかったため密度を高められたと考えられる。特に、結合用粉末の含有量を1.0質量%以上とした試料No.1−4〜1―7の配向度は、0.76以上と更に高く、より高配向度であることが分かる。そして、この高配向度と高密度とを兼ね備える試料No.1−3〜1−7は、飽和磁化Jsが1.10T以上、更には1.19以上、残留磁化Brが0.85以上、更には0.90以上であり、飽和磁化Js及び残留磁化Brが高いことが分かる。
〔試験例2:試料No.2−1〜2−4,2−101〜2−106〕
試験例2では、試験例1の試料No.1−5と同様の混合粉末と試料No.1−101と同様の混合粉末とを用い、これら混合粉末を加圧成形する際に印加する磁場の大きさを変化させたこと以外は、それぞれ試料No.1−5と試料No.1−101と同様にして試料No.2−1〜2−4と試料No.2−101〜2−106とを作製した。各試料において、混合粉末の含有量及び体積存在比率、印加した磁場の大きさ、付加した成形圧力の大きさ、成形体の高さを表2に示す。そして、試験例1と同様にして、各試料の密度と磁気特性を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 2015135856
表2に示すように、中空形状の結合用粉末を用いて磁場強度を0.8T以上とした試料No.2−1〜2−4は、配向度が0.74以上、更には0.76以上で、かつ密度が5.5g/cm以上であり、高配向度と高密度を兼ね備えることが分かる。また、試料No.2−1〜2−4は、磁場強度が低く(1.5T以下程度)ても高配向度と高密度とを達成できることが分かる。中空形状の結合用粉末を用いることで異方性磁石粒子間の間隔を保持できるため、磁場強度を高くしなくても異方性磁石粒子の配向性がばらつき難くできたからだと考えられる。即ち、製造条件に制約が少なく、高い確率で高配向度と高密度とを達成できる。そして、この試料No.2−1〜2−4は、飽和磁化Jsが1.10T以上、更には1.19以上、残留磁化Brが0.85以上、更には0.90以上であり、飽和磁化Js及び残留磁化Brが高いことが分かる。
〔試験例3:試料No.3−1〜3−4,3−101〜3−105〕
試験例3では、試験例1の試料No.1−5と同様の混合粉末と試料No.1−101と同様の混合粉末とを用い、これら混合粉末を加圧成形する際に付加する圧力の大きさを変化させたこと以外は、それぞれ試料No.1−5と試料No.1−101と同様にして試料No.3−1〜3−4と試料No.3−101〜3−105とを作製した。各試料において、混合粉末の含有量及び体積存在比率、印加した磁場の大きさ、付加した成形圧力の大きさ、成形体の高さを表3に示す。そして、試験例1と同様にして、各試料の密度と磁気特性を求めた。その結果を表3に示す。
Figure 2015135856
表3に示すように、中空形状の結合用粉末を用いて成形圧力を250MPa以上1000MPa以下とした試料No.3−1〜3−4は、配向度が0.74以上、更には0.76以上で、かつ密度が5.5g/cm以上であり、高配向度と高密度を兼ね備えることが分かる。また、試料No.3−1〜3−4は、成形圧力を250MPa以上1000MPa以下とするように、非常に広範囲に亘る成形圧力で高配向度と高密度とを達成できることが分かる。即ち、製造条件に制約が少なく、高い確率で高配向度と高密度とを達成できる。そして、この試料No.3−1〜3−4は、飽和磁化Jsが1.10T以上、残留磁化Brが0.85以上であり、飽和磁化Js及び残留磁化Brが高いことが分かる。
〔試験例4:試料No.4−1〜4−4,4−101〜4−103〕
試験例4では、試験例1の試料No.1−5と同様の混合粉末と試料No.1−101と同様の混合粉末とを用い、これら混合粉末を加圧成形して作製する成形体の高さを変化させたこと以外は、それぞれ試料No.1−5と試料No.1−101と同様にして試料No.4−1〜4−4と試料No.4−101〜4−103とを作製した。各試料において、混合粉末の含有量及び体積存在比率、印加した磁場の大きさ、付加した成形圧力の大きさ、成形体の高さを表4に示す。そして、試験例1と同様にして、各試料の密度と磁気特性を求めた。その結果を表4に示す。
Figure 2015135856
表4に示すように、中空形状の結合用粉末を用いた試料No.4−1〜4−4はいずれも、配向度が0.74以上、かつ密度が5.5g/cm以上であり、高配向度と高密度を兼ね備えることが分かる。また、中空形状の結合用粉末を用いずに作製した試料No.4−101〜4−103は、成形体の高さが高くなるにつれて配向度及び密度が低下しているのに対して、中空形状の結合用粉末を用いた試料No.4−1〜4−4は、成形体の高さを高く(例えば、10mm以上)しても高配向度及び高密度を達成していることが分かる。試料No.4−101〜4−103は、作製する成形体の高さを高くするほど、混合粉末を加圧成形する際、異方性磁石粉末は自重により成形用金型の底側で密集して磁気反発力が作用し易くなったからだと考えられる。一方、試料No.4−1〜4−4は、成形体の高さを高くしても、中空形状の結合用粉末を用いたことで、加圧成形前に異方性磁石粒子同士の間隔を保持することができたため配向度を高められたと考えられる。特に、異方性磁石粒子同士の間隔の保持を少量の結合用粉末で行えたことに加えて、中空形状が押し潰されて異方性磁石性粒子間に展延することで体積が縮小されたため、密度をも高められたと考えられる。ここでは示していないが、成形体の高さが50mm程度まででも同様に高配向度及び高密度を達成できると考えられる。そして、この試料No.4−1〜4−4は、飽和磁化Jsが1.10T以上、更には1.18以上、残留磁化Brが0.85以上、更には0.88以上であり、飽和磁化Js及び残留磁化Brが高いことが分かる。
本発明の希土類ボンド磁石の製造方法は、高配向度及び高密度を兼ね備える希土類ボンド磁石の製造に好適に利用できる。本発明の希土類ボンド磁石の製造法により製造される希土類ボンド磁石は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特に、ハイブリッド自動車やハードディスクドライブなどに具備される高速モータに用いられる永久磁石に好適である。
1 成形体
10 混合粉末
11 異方性磁石粒子 12 結合用粒子
100 成形用金型
101 上パンチ 102 下パンチ 103 ダイ

Claims (6)

  1. 希土類−鉄系合金からなり、結晶磁気異方性を有する異方性磁石粒子を複数有する異方性磁石粉末と、前記異方性磁石粉末を結合する結合用粒子を複数有する結合用粉末とを含む混合粉末を準備する準備工程と、
    前記混合粉末を磁場印加中で加圧成形して成形体を作製する成形工程とを備え、
    前記結合用粉末は、
    その含有量が0.7質量%以上3.0質量%未満であり、
    加圧成形前には前記異方性磁石粒子同士の間隔を保持する中空形状で、加圧成形後には前記異方性磁石粒子に押圧されて前記異方性磁石粒子間に沿って展延する希土類ボンド磁石の製造方法。
  2. 前記結合用粉末が、アモルファスシリカガラスで構成されている請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  3. 前記成形体の高さが、10mm以上である請求項1又は請求項2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  4. 前記成形工程における成形圧力が、250MPa以上1000MPa以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  5. 前記成形工程において印加する磁場の大きさが、0.8T以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  6. 前記成形体に10MPa以上100MPa以下の圧力を付加した状態で以下の熱処理を施す熱処理工程を備える請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
    雰囲気が不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気
    温度が200℃以上400℃以下
    保持時間が0.1時間以上5時間以下
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