JP2015135421A - 定着装置、摺動部材および画像形成装置 - Google Patents

定着装置、摺動部材および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ニップ部の面内熱分布の均一性が向上する定着装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの駆動部材に従動する回転体の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層682が基材681、裏層683等の他の層よりも熱伝導性が高い摺動部材を備える定着装置である。
【選択図】図3

Description

本発明は、定着装置、摺動部材および画像形成装置に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、このトナー像を感光体ドラム上から用紙等の記録媒体に転写した後、定着装置によってこのトナー像を用紙に定着している。
このような画像形成装置に用いられる定着装置としては、定着部材としての加熱ロールおよび加圧部材としての加圧ロールを備えるロール・ロール方式がある。また、画像形成装置の高速化等に対応させるために、表面が弾性変形する回転可能な回転ロールと、この回転ロールに接触して走行可能なベルト部材と、このベルト部材の内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを備え、圧力パッドによって回転ロールとの接触面が形成されるようにベルト部材を回転ロールに圧接させて構成し、ベルト部材と回転ロールとの間に記録媒体を通過させるようにニップ部を設けるとともに、回転ロールの表面のうち、記録媒体の出口側を局部的に弾性変形させるようにしたベルトニップ方式と呼ばれる定着装置に関する技術がある。ベルトニップ方式の定着装置としては、例えば、加熱源を備えたベルト部材(定着ベルト)と回転ロール(加圧ロール)と備えた定着装置がある。
このようなベルトニップ方式の定着装置に関して、例えば、特許文献1には、加熱体(加熱パッド)のフィルム(ベルト)との摺動面に高熱伝導性樹脂を被覆する技術が開示されている。また、特許文献2には、高熱伝導部材を、加熱体(加熱パッド)の裏面側すなわち加圧ローラに対向する側とは反対側の加熱体面と、ニップ部の記録材搬送方向の上流側および下流側のいずれかのベルトの内周面側に配置する技術が開示されている。
特開平3−263073号公報 特開2003−257592号公報
本発明の目的は、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上する定着装置、その定着装置に備えられる摺動部材、および、その定着装置を備える画像形成装置を提供することにある。
請求項1に係る発明は、少なくとも一つの駆動部材に従動する回転体の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層が他の層よりも熱伝導性が高い摺動部材を備える定着装置である。
請求項2に係る発明は、前記摺動部材の表層が、樹脂と、前記樹脂100質量部に対して50重量部以上100重量部以下の熱伝導性粉末とを含む、請求項1に記載の定着装置である。
請求項3に係る発明は、前記熱伝導粉末が、窒化硼素およびグラファイトのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の定着装置である。
請求項4に係る発明は、前記樹脂がポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1つであり、前記樹脂は架橋されている、請求項2または3に記載の定着装置である。
請求項5に係る発明は、前記摺動部材の表層の熱伝導率が、0.2W/m・K以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置である。
請求項6に係る発明は、少なくとも一つの駆動部材に従動する回転体の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層が他の層よりも熱伝導性が高い摺動部材である。
請求項7に係る発明は、像保持体と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、を備え、前記定着手段が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置である画像形成装置である。
請求項1に係る発明によると、摺動部材の表層が他の層よりも熱伝導性が高くない場合に比較して、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上する定着装置が提供される。
請求項2に係る発明によると、摺動部材の表層中の熱伝導性粉末の含有量が樹脂100質量部に対して50重量部以上100重量部以下の範囲外の場合に比較して、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上し、かつ摺動部材の耐久性が高い定着装置が提供される。
請求項3に係る発明によると、摺動部材の表層に含まれる熱伝導粉末が窒化硼素およびグラファイトのうちの少なくとも1つではない場合に比較して、摺動部材の摺動性に優れる定着装置が提供される。
請求項4に係る発明によると、樹脂が架橋されたポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1つではない場合に比較して、摺動部材の耐久性が高い定着装置が提供される。
請求項5に係る発明によると、摺動部材の表層の熱伝導率が0.2W/m・K以上ではない場合に比較して、ニップ部の面内熱分布の均一性がより向上する定着装置が提供される。
請求項6に係る発明によると、表層が他の層よりも熱伝導性が高くない場合に比較して、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上する摺動部材が提供される。
請求項7に係る発明によると、摺動部材の表層が他の層よりも熱伝導性が高くない場合に比較して、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上する定着装置を備える画像形成装置が提供される。
本発明の実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の実施形態に係る定着装置の一例の構成を示す側断面図である。 本発明の実施形態に係る摺動部材の構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1には、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置を示す。図1に示す画像形成装置は、電子写真方式により各色成分(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(B))のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙(記録媒体)Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。なお、本実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置は、図1の構成のものに限定されるものではない。
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12と、感光体ドラム11上に静電潜像をレーザ等で書込む露光装置13(図1中、露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置14と、感光体ドラム11上に形成された各色成分のトナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17等の電子写真用デバイスが順次配置されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドまたはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は、例えば10Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚さは、例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって、図1に示すB方向に予め定めた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)等により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31と、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33と、二次転写部20に設けられるバックアップロール25と、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34と、を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16により構成されている。一次転写ロール16は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とのブレンドゴム等を含んで形成され、体積抵抗率が例えば10Ωcm以上10Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16には、トナーの帯電極性(例えばマイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、例えば、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、例えば、EPDMゴム等を含んでなる内層部とカーボン等を分散したEPDMおよびNBRのブレンドゴム等を含んでなるチューブ状の表面層とから構成されている。そして、例えば、その表面抵抗率が10Ω/□〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば70°(アスカーC)に設定されている。このバックアップロール25には、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触して配置されている。
一方、二次転写ロール22は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴム等を含んで形成され、例えば、体積抵抗率が10Ωcm〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は、中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像が二次転写される。
中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉等を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配置されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配置されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた予め定めたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
また、用紙搬送系として、例えば、用紙Pを収容する用紙トレイ50と、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを予め定めたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51と、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52と、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53と、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56とを備えている。
次に、本実施形態に係る定着装置を用いた画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
図1に示すような画像形成装置では、画像読取装置(IIT)(図示せず)やパーソナルコンピュータ(PC)(図示せず)等から出力される画像データは、画像処理装置(IPS)(図示せず)により予め定めた画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の予め定めた画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y,M,C,Kの4色の色材階調データに変換され、露光装置13に出力される。
露光装置13では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射する。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電装置12によって表面が帯電された後、この露光装置13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y,M,C,Kの各色のトナー像として現像される。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により、中間転写ベルト15の基材に対し、トナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から予め定めたサイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送される。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施形態に係る画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。図2は、本実施形態に係る定着装置60の構成の一例を示す側断面図である。図2の定着装置60は、加熱源を備えた無端ベルト(定着ベルト)と加圧ロールと備えた定着装置である。定着装置60は、回転可能な駆動部材の一例としての加圧ロール62と、加圧ロール62に接触しながら移動可能な回転体である無端ベルト部材の一例としての定着ベルト61と、定着ベルト61を介して加圧ロール62と対向するように配置され、定着ベルト61を加圧ロール62に圧接させて加圧ロール62と定着ベルト61との間に用紙Pが通過するニップ部Nを形成するニップ部形成部材の一例としての圧力パッド64と、圧力パッド64と定着ベルト61との間の摺擦抵抗を低減する、シート状の摺動部材の一例としての摺動シート68とにより主要部が構成されている。なお、摺動シート68については後述する。
定着ベルト61は、圧力パッド64とベルトガイド部材63、定着ベルト61の両側側端部に配置するエッジガイド部材(図示せず)によって回転駆動自在に支持される。そして、ニップ部N(押圧部)において加圧ロール62に圧接され、加圧ロール62に従動して矢印C方向に周回駆動する。
定着ベルト61は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥ができるだけ生じないように、原形が円筒形状等に形成された継ぎ目がない無端ベルトである。定着ベルト61は、基材層と、この基材層の加圧ロール62側の面(外周面)または両面に被覆された離型層(表面層)とを含んで構成されている。
ベルトガイド部材63は、定着ベルト61の内部に配置するホルダ65に取り付けられる。定着ベルト61の回転駆動方向に向けた複数のリブ(図示せず)で形成され、定着ベルト61内周面との接触面積を小さくする。ベルトガイド部材63は、例えば、摩擦係数が低く、かつ熱伝導率が低いポリフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)やポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱性樹脂で形成され、定着ベルト61内周面との摺動抵抗を低減し、熱の発散が低くなるように構成される。
圧力パッド64は、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧されてニップ部Nを形成する。圧力パッド64は、バネや弾性体等によって加圧ロール62を、予め定めた荷重で押圧するようにホルダ65により支持される。圧力パッド64は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体から構成され、加圧ロール62側を平面状に形成され、ニップ部Nにおいて略均一なニップ圧を形成する。定着ベルト61は、圧力パッド64の加圧ロール62側の面から離れる際に急激な曲率の変化を生じ、定着後の用紙Pは定着ベルト61から剥離される。
ニップ部Nの下流側近傍に配置する剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト61の回転方向と対向する方向(カウンタ方向)に向けられ、バッフルホルダ72により保持される。
圧力パッド64と定着ベルト61との間に摺動シート68が配置され、定着ベルト61内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を低減する。摺動シート68は、圧力パッド64と別体に構成され、両端がホルダ65に固定される。
ホルダ65に、定着装置60の長手方向にわたって潤滑剤塗布部材67が配置される。潤滑剤塗布部材67は、定着ベルト61内周面に接触し、定着ベルト61と摺動シート68との摺動部に潤滑剤を供給する。なお、潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素オイル等の液体状オイル、固形物質と液体とを混合させたグリース等、さらにこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
加圧ロール62は、例えば、中実の鉄製等のコア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面を被覆する、例えばシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性層622と、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆等による離型層623とを有する。加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、矢印D方向に回転され、定着ベルト61を矢印C方向に従動させる。また、加圧ロール62と圧力パッド64とにより定着ベルト61を挟持した状態で保持されてニップ部Nが形成され、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させ、熱および圧力を加えて未定着トナー像が用紙Pに定着される。
定着装置60は、加熱部材の一例としての輻射ランプ発熱体86が設けられている輻射ランプ加熱方式のものである。輻射ランプ発熱体86は、定着ベルト61の内部に配置される。そして、輻射ランプ発熱体86が点灯されると、輻射ランプ発熱体86の発する赤外線が定着ベルト61に吸収されることで、定着ベルト61が加熱される。定着ベルト61は、矢印C方向に従動回転されるので、定着ベルト61の回転に従って、定着ベルト61が順次加熱されていく。輻射ランプ発熱体86としては、例えば、ハロゲンランプ等が挙げられる。なお、図2の例では、輻射ランプ発熱体86は定着ベルト61の内部に配置されているが、定着ベルト61の外部に配置されてもよい。
なお、加熱手段としては、定着ベルト61の内部あるいは外部に設けた電磁誘導コイルによる電磁誘導加熱方式を利用したものや、抵抗発熱体による抵抗加熱方式を利用したものであってもよい。
ベルトニップ方式の定着装置において、ニップ部Nにおける熱分布のバラつきによる定着ムラや、ニップ部Nの非通紙部における高温化現象によるベルト部材の耐久性の低下が発生する場合がある。
本実施形態に係る定着装置60では、少なくとも一つの駆動部材である加圧ロール62に従動する回転体としての定着ベルト61の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層が他の層よりも熱伝導性が高い摺動部材としての摺動シート68を備える。
図3は、本発明の実施形態に係る摺動部材の一例を示す概略断面図である。摺動部材としての摺動シート68は、例えば、基材681と、定着ベルト61の内周面と接する第1の層である表層682と、基材681を挟んで定着ベルト61の内周面と反対側の裏層683とを備える多層構造を有する。摺動シート68において、定着ベルト61の内周面と接する表層682は、基材681および裏層683よりも熱伝導性が高い。定着ベルト61の内周面に接触する摺動シート68の表層の熱伝導が高いので、通紙によって定着ベルト61の熱分布にムラが発生しても、定着ベルト61の内周面から熱分布を略均一にでき、ニップ部Nの面内熱分布の均一性が向上する。ニップ部Nの面内熱分布の均一性が向上することにより、ニップ部Nにおける熱分布のバラつきによる定着ムラや、ニップ部Nの非通紙部における高温化現象によるベルト部材の耐久性の低下が抑制される。また、表層682以外の熱伝導性が低いことにより、圧力パッド64にニップ部Nの熱が奪われにくくなる。さらに、定着ベルト61への熱伝導性物質を過剰に添加しなくてもよく、定着ベルト61の耐久性の低下が低減される。また、低摩擦の摺動シート68を用いることにより、駆動トルクが低下する。
基材681としては、例えば、ガラス繊維や、SUS等の金属メッシュ等の網目状の基材が挙げられる。基材681の厚みは、例えば、50μm以上200μm以下の範囲である。
表層682は、例えば、耐熱性樹脂等の樹脂と、熱伝導性粉末とを含んで構成される。熱伝導性粉末の含有量は、樹脂100質量部に対して50重量部以上100重量部以下の範囲であることが好ましく、50重量部以上60重量部以下の範囲であることがより好ましい。熱伝導性粉末の含有量が樹脂100質量部に対して50重量部未満であると、表層682の熱伝導率が不足する場合があり、100重量部を超えると、摺動シート68の耐久性や摺動性が低下する場合がある。表層682の厚みは、例えば、10μm以上30μm以下の範囲である。
表層682に含まれる樹脂としては、フッ素樹脂等が挙げられ、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体等が挙げられ、これらのうち、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1つであることが好ましい。また、フッ素樹脂等の樹脂は架橋されていることが好ましい。表層682を構成する樹脂が架橋されていることにより、摺動シート68の耐久性が高くなる。フッ素樹脂等の樹脂は例えば、電子線を用いた電子線架橋により架橋される。
表層682に含まれる熱伝導粉末としては、窒化硼素、グラファイト、酸化マグネシウム等が挙げられ、これらのうち、窒化硼素およびグラファイトのうちの少なくとも1つであることが好ましい。窒化硼素およびグラファイトは、固体潤滑剤としても機能し、表層682の表面に熱伝導粉末が露出したとしても、摺動シート68の摺動性が阻害されにくく、摺動性に優れる。また、熱伝導粉末としては、熱伝導性が高い点から、特に窒化硼素が好ましい。熱伝導性が高いため、より少ない添加量で表層682に熱伝導性が付与される。
摺動シート68の表層682の熱伝導率は、0.2W/m・K以上であることが好ましく、0.25W/m・K以上であることがより好ましい。摺動部材の表層682の熱伝導率が0.2W/m・K以上であることにより、ニップ部Nの面内熱分布の均一性がより向上する。摺動部材の表層682の熱伝導率が0.2W/m・K未満であると、ニップ部Nの面内熱分布の均一性が低下する場合がある。
裏層683に含まれる樹脂としては、表層682に含まれる樹脂と同様のものが挙げられる。裏層683の厚みは、例えば、10μm以上50μm以下の範囲である。
摺動シート68の表層682以外の層(基材681、裏層683等)の熱伝導率は、0.19W/m・K以下であることが好ましい。表層682以外の層の熱伝導率が0.19W/m・K以下であることにより、圧力パッド64にニップ部Nの熱が奪われにくくなる。表層682以外の層の熱伝導率が0.19/m・Kを超えると、圧力パッド64にニップ部Nの熱が奪われやすくなり、定着性が低下する場合がある。
摺動シート68として、具体的には、例えば、基材であるガラス繊維シートの一方の面に表層として熱伝導粉末を含むフッ素樹脂を加熱融着し、他方の面に裏層としてフッ素樹脂を加熱融着して挟んだ積層シート等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
熱プレスによるラミネートにより、基材としてのガラス繊維シート((株)丸勝製、ガラスクロス)の一方の面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(日東電工(株)製、ニトフロンフィルム)と、熱伝導粉末として窒化硼素(昭和電工(株)製、UHP−S1)を樹脂100質量部に対して50質量部とを含む表層と、他方の面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(日東電工(株)製、ニトフロンフィルム)を含む裏層とを有する摺動シートを作製した。
<実施例2>
窒化硼素を樹脂100質量部に対して80質量部とした以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例3>
窒化硼素を樹脂100質量部に対して100質量部とした以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例4>
表層および裏層のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の代わりに架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(日立金属(株)製、XF−1B)を用いた以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例5>
窒化硼素を樹脂100質量部に対して40質量部とした以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例6>
窒化硼素を樹脂100質量部に対して110質量部とした以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例7>
表層の窒化硼素の代わりにグラファイト(日本黒鉛工業(株)製、UTC−23)を用いた以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例8>
表層の窒化硼素の代わりに酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ(株)製、RF−10CS−SC)を用いた以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<実施例9>
窒化硼素を樹脂100質量部に対して20質量部とした以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<比較例1>
表層に窒化硼素を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして摺動シートを作製した。
<比較例2>
実施例1の摺動シートを表裏逆にして摺動シートとして用いた。
[評価]
(熱伝導性)
実施例1〜9、比較例1,2の摺動シートの表層、基材、裏層の熱伝導率を熱伝導率測定装置ai−phase(アイフェイズ(株)製)により測定した。結果を表1に示す。
(性能評価)
画像形成装置として富士ゼロックス社製Color 1000 Pressを用いて、実施例1〜9、比較例1の摺動シートを装着し、J紙(富士ゼロックス(株)製)を用い、100ppmで500K枚の画像を形成した後の画質(紙しわ、定着ムラ)を目視で評価し、駆動ロールのモータートルク電流値から最大駆動トルクを測定した。結果を表2に示す。
実施例の摺動シートを用いることにより、ニップ部の面内熱分布の均一性が向上したことによって、紙しわ、定着ムラが発生しなかった。一方、比較例の摺動シートを用いることにより、ニップ部の面内熱分布の均一性が低下したことによって、定着ムラが発生した。
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット、10 一次転写部、11 感光体ドラム、12 帯電装置、13 露光装置、14 現像装置、15 中間転写ベルト、16 一次転写ロール、17 ドラムクリーナ、20 二次転写部、22 二次転写ロール、25 バックアップロール、26 給電ロール、31 駆動ロール、32 支持ロール、33 テンションロール、34 クリーニングバックアップロール、35 中間転写ベルトクリーナ、40 制御部、42 基準センサ(ホームポジションセンサ)、43 画像濃度センサ、50 用紙トレイ、51 ピックアップロール、52 搬送ロール、53 搬送シュート、55 搬送ベルト、56 定着入口ガイド、60 定着装置、61 定着ベルト、62 加圧ロール、63 ベルトガイド部材、64 圧力パッド、65 ホルダ、67 潤滑剤塗布部材、68 摺動シート、70 剥離補助部材、71 剥離バッフル、72 バッフルホルダ、86 輻射ランプ発熱体、621 コア(円柱状芯金)、622 耐熱性弾性層、623 離型層、681 基材、682 表層、683 裏層、P 用紙(記録媒体)。

Claims (7)

  1. 少なくとも一つの駆動部材に従動する回転体の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層が他の層よりも熱伝導性が高い摺動部材を備えることを特徴とする定着装置。
  2. 前記摺動部材の表層が、樹脂と、前記樹脂100質量部に対して50重量部以上100重量部以下の熱伝導性粉末とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記熱伝導粉末が、窒化硼素およびグラファイトのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記樹脂がポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1つであり、前記樹脂は架橋されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の定着装置。
  5. 前記摺動部材の表層の熱伝導率が、0.2W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
  6. 少なくとも一つの駆動部材に従動する回転体の内周面と接する摺動面において、多層構造を有し、表層が他の層よりも熱伝導性が高いことを特徴とする摺動部材。
  7. 像保持体と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、を備え、
    前記定着手段が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
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