JP2015134883A - 蓄熱材 - Google Patents

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嶺 太田
愛 山崎
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愛 山崎
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泰三 金山
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理夫 森田
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Abstract

【課題】強度と蓄熱量とのバランスに優れ、しかも人体及び環境に対して安全な粒状蓄熱材を提供すること。【解決手段】コア及び該コアを被覆する被覆層を有する粒状蓄熱材であって、前記コアが蓄熱物質を含有し、前記被覆層が、アニオン性重合体が多価カチオンで架橋されたイオン架橋物を含有し、そして前記コア及び前記被覆層のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、前記蓄熱材。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄熱材に関する。詳しくは、粒径が大きく、耐熱性及び外力への耐久性に優れるとともに、大きな蓄熱量を示す粒状の蓄熱材に関する。
蓄熱材は、物質に蓄えたエネルギーを必要に応じて熱として取り出すことができる材料である。前記エネルギーとしては、例えば物質の同一相内の温度変化に要する熱量(顕熱)、融解、蒸発、ある種の結晶間相転移等の物質の相変化又は相転移に要するエネルギー(潜熱)、物質の化学変化に伴って発生するエネルギー等を挙げることができる。
蓄熱材は、水等の熱交換媒体の存在下又は不存在下に、例えばヒートポンプ;ビルディング、家屋、地下街等の空調用途;車両の空調、キャニスター用途;ICチップ等の電子部品の昇温防止用途;衣類の恒温用途;生鮮食品又は臓器輸送容器の保冷用途;道路、橋梁等における構造材料の恒温用途;カーブミラー等の鏡面の防曇用途;路面の凍結防止用途;冷蔵庫等の家電用品の冷却・恒温用途;生活用品としての保冷材、カイロ用途等、幅広い温度領域で、産業上種々の分野において利用されている。このような蓄熱材は、蓄熱物質を単独で又は他の物質とともに、例えば粒状、ゲル状、エマルジョン状等の種々の形態に加工して用いられる。
上記のうち、粒状の蓄熱材は、建材等にそのまま練り込んで使用することが可能となるメリットがある。ここで、粒状の蓄熱材は、蓄熱物質の揮発又は滲み出しを防止するため、バリア性を有する物質で被覆するか、又はバリア性を有する包袋に封入し、カプセル形状に加工されて使用されることが好ましい。このような蓄熱材のカプセルとしては、種々のものが提案されている。
例えば特許文献1には、特定の分子量の乳化剤を用いて製造された粒子径10μm以下の熱搬送用マイクロカプセルが;
特許文献2には、疎水性液と親水性液との混合物に遠心力を印加する工程を経て製造された、平均粒径1〜15μmの2層構造のマイクロカプセル型蓄熱材が;
特許文献3には、インサイチュ法によって製造された、潜熱蓄熱材を内包する平均粒径0.5〜50μmのマイクロカプセルが、それぞれ開示されている。
特開平07−204491号公報 特開平10−137577号公報 特開2001−288458号公報
上記背景技術欄に述べたとおり、蓄熱材のカプセルは、上記のとおり蓄熱物質をバリア性物質で被覆した構造を有する。従って、カプセルの機械的強度と蓄熱量とはトレードオフの関係にあるのが通常である。すなわち、カプセルの機械的強度を高くするためにはバリア性被覆層を厚くする方が有利である一方で、大きな蓄熱量を得るためには蓄熱物質の割合を大きくする(すなわちバリア性被覆層を薄くする)方が有利だからである。この点、機械的強度と蓄熱量とのバランスに優れる蓄熱材カプセルは、従来知られていない。
また、従来技術の蓄熱材カプセルは、高々50μm程度の大きさであり、工業的に有用な蓄熱量を得るために十分な大きさを有するものではない。
さらに、従来知られている蓄熱材カプセルの多くは、ホルムアルデヒドを用いるインサイチュ法によって製造されているため、人体及び環境に対する悪影響が懸念される。
本発明は、従来技術の有する上記のような問題点を解決するものである。
従って本発明の目的は、強度と蓄熱量とのバランスに優れ、しかも人体及び環境に対して安全な粒状蓄熱材を提供することであり、そして好ましくは上記粒状蓄熱材は工業的に使い易い大きさを有する。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、下記の構成によって上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、
コア及び該コアを被覆する被覆層を有する粒状蓄熱材であって、
前記コアが蓄熱物質を含有し、
前記被覆層が、アニオン性重合体が多価カチオンで架橋されたイオン架橋物を含有し、そして
前記コア及び前記被覆層のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、前記蓄熱材によって達成される。
本発明によれば、強度と蓄熱量とのバランスに優れ、しかも人体及び環境に対して安全な粒状蓄熱材が提供される。本発明の好ましい態様によれば、上記粒状蓄熱材は、工業的に使い易い大きさを有するものであることができる。
従って本発明の粒状蓄熱材は、例えばヒートポンプ;ビルディング、家屋、地下街等の空調用途;自動車等の空調、キャニスター用途;ICチップ等の電子部品の昇温防止用途;衣類の繊維、生鮮食品又は臓器輸送容器の保冷用途;道路、橋梁等における構造材料の恒温用途;カーブミラー等の鏡面の防曇用途;路面の凍結防止用途;冷蔵庫等の家電用品の冷却・恒温用途;生活用品としての保冷材、カイロ用途等、産業上種々の分野において好適に利用することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
<蓄熱物質>
本発明の粒状蓄熱材のコアに含有される蓄熱物質としては、飽和炭化水素、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、脂肪族ケトン及び脂肪族アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記飽和炭化水素としては、鎖状のものが好ましい。
この飽和炭化水素としては、炭素数が7〜60程度のものが、相変化温度が有用であることから好ましく用いられる。飽和炭化水素は、その炭素数によって概ね2つの類型に分類することができる。炭素数が好ましくは7〜24程度の、比較的低分子の飽和炭化水素及び炭素数が好ましくは20以上の石油ワックスである。これらの類型によって好ましい態様が異なるので、以下、順に説明する。
炭素数が7〜24程度の飽和炭化水素は、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。しかしながら、蓄熱材の潜熱量をより大きくするとの観点から、直鎖状の飽和炭化水素であることが好ましい。この類型の飽和炭化水素の炭素数は、より好ましくは11〜20である。この類型の飽和炭化水素の炭素数は、所望の相変化温度に応じて、この飽和炭化水素としては、上記の範囲から適宜に選択することができる。使用可能な温度領域をより広げるとの観点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定した場合に−20〜50℃程度の温度範囲に融解ピーク温度(融点)を有するものを選択して使用することが好ましい。ここで、融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際の結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)を指す。
炭素数が7〜24程度の飽和炭化水素として好ましいものを、その融点とともに例示すると以下のとおりである。
n−ウンデカン(−21℃)、n−ドデカン(−12℃)、n−トリデカン(−5℃)、n−テトラデカン(6℃)、n−ペンタデカン(9℃)、n−ヘキサデカン(18℃)、n−ヘプタデカン(21℃)、n−オクタデカン(28℃)、n−ノナデカン(32℃)、n−イコサン(37℃)、n−ヘンイコサン(41℃)及びn−ドコサン(46℃)。
上記石油ワックスとしては、例えばパラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。
パラフィンワックスは、石油又は天然ガスを原料として減圧蒸留の留出物から分離精製して製造される、常温において固体の飽和炭化水素である。パラフィンワックスとしては、その炭素数が20〜40程度のものが、潜熱量及び入手性の面から好ましい。パラフィンワックスの市販品としては、例えばHNP−9、HNP−51、FNP−0090、FT115(以上、いずれも商品名、日本精蝋(株)製)等を挙げることができる。
マイクロクリスタリンワックスは、石油を原料として、減圧蒸留残渣油又は重質留出油から分離精製して製造される、常温において固体の飽和炭化水素である。マイクロクリスタリンワックスとしては、その炭素数が30〜60程度のものが、潜熱量及び入手性の面から好ましい。
上記脂肪酸としては炭素数が8〜30の脂肪酸を好ましく用いることができる。この脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸及び分岐不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、直鎖飽和脂肪酸が、潜熱量が大きい点から好ましく用いられる。直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、例えばオクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(カプリン酸)(C10)、ドデカン酸(ラウリン酸)(C12)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)(C14)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)(C16)、オクタデカン酸(ステアリン酸)(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等を挙げることができる。
上記脂肪酸金属塩としては、例えば12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸アルミニウム等を挙げることができる。
上記脂肪酸エステルとしては、例えば乳酸ブチル、乳酸エチル、オレイン酸メチル、コハク酸ジエチル、デカン酸エチル、デカン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル、ドデカン酸ブチル、パルミチン酸n−ヘキサデシル、ステアリン酸ステアリル等を挙げることができる。
上記脂肪族エーテルとしては炭素数14〜60の脂肪酸エーテルを用いることができる。脂肪族エーテルの具体例としては、例えばヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等を挙げることができ、潜熱量の高さ及び合成の容易性から、酸素原子数が1つであり、対称構造を持つエーテルを好ましく用いることができる。
上記脂肪族ケトンとしては、例えば2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、シクロヘプタノン等を挙げることができる。
上記脂肪族アルコールとしては炭素数8〜60の脂肪族アルコールを用いることができる。脂肪族アルコールの具体例としては、例えば2−ドデカノール、1−テトラデカノール、7−テトラデカノール、1−オクタデカノール、1−エイコサノール、1,10−デカンジオール等を挙げることができる。これらのうち、1級アルコールが、高い潜熱量を示すことから好ましく用いられる。
上記のうち、飽和炭化水素から選択される化合物を使用するか;或いは
脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種と、
脂肪酸金属塩と
の混合物を使用することが、好ましい。
本発明において、蓄熱物質は、1種単独で使用してもよく、或いは2種類以上を混合して用いてもよい。しかしながら、所望の温度における潜熱量を高くするとの観点から、1種単独又は2種の混合物として使用することが好ましい。
<イオン架橋物>
本発明の粒状蓄熱材の被覆層に含有されるイオン架橋物は、アニオン性重合体が多価カチオンで架橋されたイオン架橋物である。
上記アニオン性重合体としては、多糖類、不飽和カルボン酸の(共)重合体、不飽和スルホン酸の(共)重合体等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
上記多糖類としては、ヒドロキシ基を有する多糖類及びその誘導体、カルボキシ基を有する多糖類及びその誘導体を挙げることができる。ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有するベース多糖類としては、例えばホモグリカン、ヘテログリカン等を挙げることができる。より具体的には、ホモグリカンとして、例えばセルロース、デンプン、グリコーゲン、カロニン、ラミナラン、デキストラン等のグルカン:
イヌリン、レバン等のフルクタン:
ゾウゲヤシマンナン等のマンナン:
イネワラのキシラン等のキシラン:
ペクチン酸等のガラクツロナン:
アルギン酸等のマンヌロナン:
キチン等のN−アセチルグルコサミン重合体等を;
ヘテログリカンとして、例えばグアラン、コンニャクのマンナン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のジヘテログリカン:
植物粘質物(例えばジェランガム、メスキットガム、ガッチガム、ローカストビーンガム、グアーガム、トランガントガム等)、ゴム質、細菌多糖類等のトリヘテログリカン:
粘質物(例えばアラビアガム等)、ゴム質、細菌多糖類等を、それぞれ挙げることができる。
上記の誘導体としては、上に例示したホモグリカン及びヘテログリカンにおいて、ヒドロキシ基又はカルボキシ基のほかにさらに−SOH、−OSOH、−HPO、−NH、−CN、−OH、−NHCONH、−(OCHCH)−、−NRX(ここで、Rはアルキル基、Xはハロゲン原子である。)、SONHCO−及び−N(SOH)−よりなる群から選択される1種以上の基が導入された化学種を挙げることができる。
本発明における多糖類としては、水溶性多糖類であることが好ましく、その例としては例えばジェランガム、ヒドロキシ基含有セルロース、カルボキシ基含有セルロース、カルボキシ基含有デンプン、ペクチン酸、ペクチン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸誘導体等を挙げることができる。上記ヒドロキシ基含有セルロースとしては、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を;
上記カルボキシ基含有セルロースとしては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース等のカルボキシメチル基含有セルロース等を;
上記カルボキシ基含有デンプンとしては、例えばカルボキシメチルデンプン(CMS)等を;
上記ペクチン酸誘導体としては、例えばペクチン酸ナトリウム等を;
上記アルギン酸誘導体としては、例えばアルギン酸ナトリウム等を、それぞれ挙げることができる。
上記したような多糖類のうち、アルギン酸、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トランガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましく;
凝固速度及びゲル強度の観点からはアルギン酸又はアルギン酸誘導体を使用することが特に好ましく;
本発明の粒状蓄熱材に耐熱性を付与する観点からはジェランガムを使用することが特に好ましい。ジェランガムは、優れたゲル化剤であるとともに、食品添加物としても使用されていることから安全性が高い点でも好ましい。
本発明における多糖類のカルボキシ基の含有量は特に制限されないが、無水グルコース単位の1個あたり、好ましくは0.05〜3個であり、より好ましくは0.1〜2個である。
本発明における多糖類の平均重合度nは、好ましくは10〜20,000であり、より好ましくは50〜15,000であり、更に好ましくは100〜10,000である。
上記不飽和カルボン酸の(共)重合体は、不飽和カルボン酸の重合体及び不飽和カルボン酸とその他の不飽和化合物との共重重合体から選択される。
上記不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、アコニット酸、4−ビニル安息香酸、4−ビニルサリチル酸、シトラコン酸等を;
上記その他の不飽和化合物としては、例えばブタジエン、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレート等を、それぞれ挙げることができ、それぞれ、上記のうちから選択される1種以上を使用することができる。
不飽和カルボン酸(共)重合体における不飽和カルボン酸の共重合割合は、使用する不飽和化合物の全量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10〜80質量%であり、更に好ましくは30〜70質量%である。
不飽和カルボン酸(共)重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは5,000〜500,000であり、より好ましくは7,000〜300,000であり、更に好ましくは10,000〜200,000である。
上記不飽和スルホン酸の(共)重合体は、不飽和スルホン酸の重合体及び不飽和スルホン酸とその他の不飽和化合物との共重重合体から選択される。
上記不飽和スルホン酸としては、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を;
上記その他の不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸(共)重合体におけるその他の不飽和化合物として上に例示した不飽和化合物を、それぞれ挙げることができる。
不飽和スルホン酸(共)重合体における不飽和スルホン酸の共重合割合は、使用する不飽和化合物の全量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10〜80質量%であり、更に好ましくは30〜70質量%である。
不飽和スルホン酸(共)重合体についてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは5,000〜500,000であり、より好ましくは7,000〜300,000であり、更に好ましくは10,000〜200,000である。
上記のような不飽和カルボン酸(共)重合体及び不飽和スルホン酸(共)重合体は、それぞれ、公知の重合方法、例えば乳化重合、懸濁重合等によって合成することができる。
上記多価カチオンは、上記のようなアニオン性重合体を架橋することが可能である限り特に制限されるものではないが、その例として例えば多価金属イオン、1分子中に2個以上のオニウムカチオン構造を有するオニウムカチオン等を挙げることができる。
上記多価金属イオンとしては、例えばアルカリ土類金属の多価イオン、周期表第8族金属の多価イオン、周期表第11〜13族金属の多価イオン等を挙げることができる。上記アルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等を;
周期表第8族金属としては、例えば鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)等を;
周期表第11族金属としては、例えば銅(Cu)等を;
周期表第12族金属としては、例えば亜鉛(Zn)等を;
周期表第13族金属としては、例えばアルミニウム(Al)等をそれぞれ挙げることができる。
本発明における多価金属イオンとしては、2〜4価の金属イオンであることが好ましく、2又は3価の金属イオンであることがより好ましい。2価の金属イオンとしては、例えばMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Zn2+等を;
3価の金属イオンとしては、例えばAl3+、Fe3+等を、それぞれ挙げることができ、これらの中から選択される1種以上を好ましく使用することができる。
上記の、1分子中に2個以上のオニウムカチオン構造を有するオニウムカチオンは、例えばアンモニウム、スルホニウム及びホスホニウムからなる群より選択されるカチオン構造を2つ以上含むカチオンと、カウンターアニオンとを有する化合物を配合することにより、発生させることができる。これらの化合物は、例えば特開2005−162769号公報に記載の方法によって容易に合成することができる。
本発明における多価カチオンとしては、金属イオンであることが好ましく、2価の金属イオンであることがより好ましく、特に好ましくはアルカリ土類金属の2価のイオンである。このような多価金属イオンを多価カチオンとして使用すると、得られる蓄熱材の人体及び環境に対する安全性が高いことから好ましい。
本発明における多価カチオンの使用量は、凝固速度及び得られるゲル強度の観点から、上記アニオン性重合体の有するアニオン性基(カルボキシ基、スルホン酸基及び)の合計1モルに対する当量比として、0.005〜500当量とすることが好ましく、0.01〜200当量とすることがより好ましい。本発明の粒状蓄熱材は、後述するように好ましくは滴下造粒によって製造される。そのため、多価カチオン/アニオン性重合体の使用比が上記のような広範な範囲にわたって所期する効果を発現することができる。このことは、本発明が奏する効果の1つであり、プロセス設計の自由度が極めて高くなる点で、その意義は大きい。
本発明においては、必要に応じて多価カチオンとともに1価のカチオンを併用してもよい。この1価のカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(例えばリチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、セシウムイオン(Cs)等)を挙げることができる。1価のカチオンの使用量は、多価カチオン及び1価のカチオンの合計のモル数に対して、3モル%以下とすることが好ましく、0.5モル%以下とすることがより好ましく、1価のカチオンを使用しないことが最も好ましい。
本発明における多価カチオンは、後述のように、好ましくは該多価カチオンを生ずる水解離性の化合物として本発明の蓄熱材の製造に供される。該水解離性化合物としては、上記のような多価カチオンの塩であることができる。この塩としては、例えば該多価カチオンのハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩等を挙げることができる。上記ハロゲン化物としては、例えば塩化物等を;
上記無機酸塩としては、例えば過ハロゲン酸塩(例えば過塩素酸塩等)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等を;
上記有機酸塩としては、例えばカルボン酸塩(例えば酢酸塩等)等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、塩化物、硫酸塩、硝酸塩又は酢酸塩を、好ましい例として指摘することができる。
<樹脂及びゴム>
本発明の粒状蓄熱材は、コア及び被覆層のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を更に含有する。
上記樹脂としては、得られる蓄熱材に適当な物性を付与できるものであれば、特に制限されるものではない。ここで、上記適当な物性としては、該樹脂が本発明の粒状蓄熱材のコアに含有される場合には、例えば、耐せん断性、耐熱性等の物性を;
該樹脂が本発明の粒状蓄熱材の被覆層に含有される場合には、例えば耐擦過性、耐せん断性、耐熱性等の物性を、それぞれ例示することができる。
本発明の粒状蓄熱材における樹脂としては、例えばビニルアルコール(共)重合体、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン等を使用することができるほか、光硬化性組成物の硬化物であってもよい。上記のうちのポリオレフィンとは、蓄熱物質として上に例示した飽和炭化水素に該当するものを除いた概念である。
上記光硬化性組成物は、光照射により引き起こされる反応によって硬化する成分を含有する組成物である。この光硬化性組成物としては、例えば国際公開第2009/128476号に光硬化性樹脂として記載されたものを用いることができる。
光硬化性組成物における硬化性成分としては、例えば光重合性モノマー、光重合性オリゴマー等を挙げることができるが、これらのうち、光重合性オリゴマーを使用することが好ましい。この光重合性オリゴマーについてGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、300〜30,000であることが好ましく、500〜20,000であることがより好ましい。
光重合性オリゴマーは、ラジカル反応によって硬化する光重合性オリゴマーと、カチオン反応によって硬化する光重合性オリゴマーとに分類することができる。
上記ラジカル反応によって硬化する光重合性オリゴマーは、重合性基としてC=C二重結合(例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等に含まれるC=C二重結合等)を有するオリゴマーである。その例としては、例えば(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、エステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、不飽和ポリエステル系オリゴマー、高酸価不飽和ポリエポキシド類、ポリエン・チオール系オリゴマー、ケイ皮酸系オリゴマー、不飽和ポリアミド類等を挙げることができる。これらの具体例としては、(メタ)アクリレート系オリゴマーとして、例えばポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能なエチレン性不飽和基を有する樹脂(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキル鎖の炭素数が4〜10であるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等)、アニオン性不飽和アクリル樹脂類、カチオン性不飽和アクリル樹脂類等を;
不飽和ポリエステル系オリゴマーとして、例えば高酸価不飽和ポリエステル類等を、それぞれ挙げることができる。
上記のカチオン反応によって硬化する光重合性オリゴマーは、重合性基としてエポキシ基、ビニルエーテル基等を有するオリゴマーである。その例としては、例えばエポキシ系オリゴマー、ビニルエーテル系オリゴマー等を挙げることができる。
上記のような光硬化性オリゴマーの市販品としては、例えばENT−1000、ENT−2000、ENT−3400、ENT−4000、ENTG−2000、ENTG−3800(以上いずれも商品名、関西ペイント(株)製)等を例示することができる。
本発明における光重合性組成物は、上記のような硬化性成分のほかに重合開始剤を含有することが好ましい。この光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤及び光照射によってカチオンを発生する光重合開始剤に分類される。光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤の例としては、例えば過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等を;
光照射によってカチオンを発生する光重合開始剤の例としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のジアリールヨードニウム塩:及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールスルホニウム塩等を、それぞれ挙げることができる。
光重合性組成物における光重合開始剤の含有量は、上記のような硬化性成分の100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明の粒状蓄熱材において、コア及び被覆層のうちの少なくとも一方に含有される樹脂についてGPCによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、得られる蓄熱材に適度の強度を付与するとの観点から、1,000〜10,000,000であることが好ましく、5,000〜5,000,000であることがより好ましく、10,000〜1,000,000であることが特に好ましい。
樹脂の融点は、得られる蓄熱材における耐熱性の観点から、使用する蓄熱物質の融点Timを超える融点を有するものであることが好ましく、Tim+20℃以上の融点を有するものであることがより好ましい。樹脂の融点として、具体的には、例えば80〜250℃の範囲を例示することができ、好ましくは90〜240℃であり、より好ましくは100〜230℃である。
樹脂が、本発明の粒状蓄熱材の被覆層に含有されるものである場合、下記の基準を満たすものであることが、得られる蓄熱材の耐ブリード性をより向上する観点から好ましい。すなわち;
樹脂を20mm×20mm×1mmのシート状にプレス成形した試験片を、40℃のn−オクタデカン中に68時間浸漬し、浸漬前後における試験片の質量変化が1wt%以下のもの、である。この値は、0.7wt%以下であることがより好ましく、0.5wt%以下であることが更に好ましい。
上記ゴムとしては、例えば共役ジエン(共)重合体、共役ジエン(共)重合体の水素添加物、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム(UR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を、好ましく使用することができる。これらのうち、共役ジエン(共)重合体及びその水素添加物、並びにエチレン−α−オレフィン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが、得られる蓄熱材に適度の強度を付与し得る点で好ましい。
上記共役ジエン(共)重合体としては、合成ゴム及び天然ゴムのいずれをも使用することができる。この合成ゴムの具体例としては、例えばブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を好ましく使用することができる。
上記共役ジエン(共)重合体の水素添加物としては、例えばアルケニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素添加物、オレフィン系エラストマー等を挙げることができる。これらの具体例としては、アルケニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素添加物と素手例えばスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)等を;
オレフィン系エラストマーとして、例えばスチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)等のアルケニル芳香族化合物−オレフィン結晶系ブロック共重合体:オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)等のオレフィン結晶系ブロック共重合体等を、それぞれ挙げることができる。
本発明における共役ジエン(共)重合体の水素添加物としては、成形加工時の流動性が適当であるとの観点から、オレフィン結晶系ブロック共重合体を使用することが好ましい。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンとα−オレフィンとの二元共重合ゴム、エチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合ゴム等を挙げることができる。上記α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、炭素数3〜8のα−オレフィンがより好ましく、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。このようなα−オレフィンの具体例としては、例えばプロピレン、1−オクテン等を挙げることできる。上記非共役ジエンとしては、例えばエチリデン−2−ノルボルネン等を挙げることができる。
本発明の粒状蓄熱材中のコア及び被覆層のうちの少なくとも一方に含有されるゴムについてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは100,000〜1,000,000であり、より好ましくは100,000〜700,000であり、更に好ましくは200,000〜600,000であり、特に250,000〜500,000であることが好ましい。得られる蓄熱材に適度の力学的強度を付与し、合わせてコア又は被覆層における相分離及び該ゴムが被覆層に含有される場合にあっては蓄熱物質のブリードを抑制するとの観点から、ゴムのMwは100,000以上であることが好ましく、一方で蓄熱材を成形加工する際の材料の流動性を確保するとの観点からは、ゴムのMwは1,000,000以下とすることが好ましく、700,000以下とすることがより好ましい。
ゴムのメルトフローレートMFRは、特に制限されるものではないが、一応の目安として例えば0.01〜100g/分の値を例示することができる。このMFRの測定条件はゴムの種類によって適宜に設定すべきであり、当業者は自らの知識として樹脂ごとの測定条件を知っており、或いは教科書を参照することにより適切な測定条件を容易に知ることができる。例えば共役ジエン(共)重合体の水素添加物の場合、JIS K−7210に準拠して230℃において10kgの荷重で測定することができる。
本発明の粒状蓄熱材における樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合は、これがコアに含有される場合及び被覆層に含有される場合について、それぞれ以下のとおりである。
コアに含有される場合:蓄熱物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは1〜25質量部
被覆層に含有される場合:イオン架橋物100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは1〜25質量部
上記樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種は、上記の含有量の範囲内で、蓄熱材のコア及び被覆層の双方に含有されていてもよい。
<その他の成分>
本発明の粒状蓄熱材におけるコアは、上記の蓄熱物質、並びに樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のほかに、その他の成分を含有していてもよく;
被覆層は、イオン架橋物、並びに樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のほかに、その他の成分を含有していてもよい。
このようなその他の成分としては、例えばフィラー、機能付与剤等を挙げることができる。
上記フィラーとしては、例えば鉄、銀、銅、黒鉛、ニッケル、錫、タングステン、黄銅、燐青銅、酸化チタン、酸化亜鉛、フェライト、アラミド、窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛、ガラス、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、モンモリロナイト、軽石、エボナイト、コットンフロック、コルク、フッ素樹脂等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。フィラーの形状は特に限定されるものではなく、例えば粉末状、フレーク状、繊維状、ウィスカー状等の任意の形状であることができる。本発明の粒状蓄熱材のコア又は被覆層への分散性を向上する目的で、疎水化処理、親水化処理等の適宜の表面処理を施したうえで使用に供してもよい。
上記機能付与剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、難燃化剤、加硫剤、加硫助剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、発泡剤、防錆剤、重金属不活性化剤、融点調整剤(凝固点降下剤)等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
本発明の粒状蓄熱材におけるその他の成分の使用量としては、これらの合計の使用量として、
コアに含有される場合にあっては、蓄熱物質100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましく、特に好ましくはこれを含有しないことであり;
被覆層に含有される場合にあっては、イオン架橋物100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましく、特に好ましくはこれを含有しないことである。
<粒状蓄熱材>
本発明の粒状蓄熱材は、上記のような成分からなるコアが、上記のような成分からなる被覆層に被覆されたカプセル状であることが好ましい。
このカプセルは、上記被覆層の外側に、さらに最外層を有していてもよい。
この最外層は、本発明の粒状蓄熱材に、向上された耐熱性を与える機能を有するものであることが好ましい。このような最外層を構成する材料としては、有機重合体、無機化合物等を挙げることができる。
上記有機重合体としては、例えば、本発明の粒状蓄熱材のコア及び被覆層のうちの少なくとも一方に含有される樹脂及びゴムとして上記に例示したのと同じもの、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。上記熱硬化性樹脂としては、耐溶剤性及び耐水性の観点から、フェノール系熱硬化性樹脂、アクリル系熱硬化性樹脂、イソシアネート系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、ウレタン系熱硬化性樹脂、アミドエステル系熱硬化性樹脂、フッ素系熱硬化性樹脂等を、好ましく使用することができる。これらの有機重合体は、必要に応じて架橋処理が行われた状態で最外層に含有されていてもよい。
上記無機化合物としては、二酸化ケイ素、アルミナ、窒化チタン、ダイヤモンドライクカーボン等のセラミックス;金、銀、銅、チタン、ニッケル、コバルト等の金属単体等を例示することができる。
蓄熱材の形状としては、例えば真球状、一部が歪んだ球状、だるま形状、円柱状、錘形状、直方体状等、及びこれらの組み合わせからなる形状等を挙げることができる。
蓄熱材の個数平均粒子径Dとしては、取扱いの容易性及び工業上有用な潜熱量を確保するとの観点から、100μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、特に500μm以上であることが好ましい。一方で、蓄熱材の凹凸追随性を確保する観点からは、この平均粒子径Dは、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、特に5mm以下であることが好ましい。
個数平均粒子径Dは、無作為に採取された複数の測定対象粒子の粒子径の和を、測定対象数で除した値として定義される。個数平均粒子径Dの測定は、市販の光学測定装置、例えば(株)キーエンス製の「デジタルマイクロスコープVHX−900」等によって行うことができる。
本発明の粒状蓄熱材における被覆層の厚みは、蓄熱材の耐久性及び熱伝導性を考慮すると、1〜1,000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましい。
本発明の粒状蓄熱材が被覆層の外側にさらに最外層を有する場合、該最外層の厚みは、0.05〜3,000μmであることが好ましく、0.1〜1,000μmであることがより好ましく、0.3〜500μmであることが特に好ましい。
本発明の粒状蓄熱材における蓄熱物質の含有量は、蓄熱材の全質量に対して、30〜99.9質量%とすることが好ましく、50〜99質量%とすることがより好ましく、70〜99質量%とすることがさらに好ましい。
<粒状蓄熱材の製造方法>
本発明の粒状蓄熱材は、任意の方法、例えば同心多重重ノズルを備えたカプセル製造装置を用いる滴下法によって製造することができる。以下、粒状蓄熱材がコア及び被覆層からなる2層型の蓄熱材である場合と、コア及び被覆層のほかに最外装をさらに有する3層型の蓄熱材である場合とに分けて、順に説明する。
コア及び被覆層からなる2層型の粒状蓄熱材は、例えばコア形成材料及び被覆形成材料を、同心二重ノズルの内側ノズル及び外側ノズルからそれぞれ押出して凝固槽に滴下する工程を経由する方法である。この方法によると、被覆層に継ぎ目のない粒状蓄熱材を製造することができるため、蓄熱物質の漏出を防止することができ、好ましい。
前記コア形成材料は、蓄熱物質を含有し、
前記被覆層形成材料は、アニオン性重合体又はその塩、及び溶媒を含有し、
そして
前記コア形成材料及び前記被覆層形成材料のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する。ここで、樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種が光硬化性組成物の硬化物を含有する場合、コア形成材料又は被覆層形成材料は硬化物の前駆体である光硬化性組成物を含有することとなる。
コア形成材料としては、蓄熱物質そのものを使用することができる。コアが樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合には、これを蓄熱物質に溶解して得られる溶液を使用することができる。溶解温度は、50〜110℃とすることが好ましく、70〜100℃とすることがより好ましい。
被覆層形成材料に含有される溶媒としては、例えば水、アルコール、非プロトン性極性溶媒、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。その具体例としては、上記アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等を;
非プロトン性極性溶媒として、例えばエーテル(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等)、ケトン(例えばアセトン、2−ブタノン等)、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等を;
脂肪族炭化水素として、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等を;
脂環族炭化水素として、例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を;
芳香族炭化水素として、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等を、それぞれ挙げることができる。
被覆層形成材料に含有される溶媒は、アニオン性重合体又はその塩の溶解性が高いことから、水、アルコール及び非プロトン性極性溶媒よりなる群から選択される1種以上からなることが好ましい。特に好ましくは、水及びアルコールからなる混合溶媒である。この混合溶媒における水及びアルコールの混合割合は、質量比として、1/9〜9/1であることが好ましく、3/7〜7/3であることがより好ましい。
被覆層が樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合には、使用する溶媒に対する溶解性の高い樹脂を使用することが好ましい。被覆層形成材料に含有される溶媒として、例えば水、アルコール及び非プロトン性極性溶媒よりなる群から選択される1種以上からなる溶媒を使用する場合、被覆層に含有される樹脂又はゴムを、ビニルアルコール(共)重合体、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、ポリアミド及びセルロースから選択することが好ましい。
被覆層形成材料における溶媒の使用量は、アニオン性重合体の100質量部に対して、好ましくは100〜1,000,000質量部であり、より好ましくは200〜100,000質量部である。
上記のようなコア形成材料及び被覆形成材料を、同心二重ノズルの内側ノズル及び外側ノズルからそれぞれ押出して滴下する。すると、コア形成材料と被覆層形成材料との極性の差によってコア及び被覆層からなる2層構造が形成される。この観点から、コア及び被覆層は、極性の異なる組み合わせを選択して使用することが好ましい。
滴下の際、コア形成材料及び被覆形成材料の押出し速度を調整することにより、得られる粒状蓄熱材におけるコア及び被覆層の割合を調整することができる。
また滴下の際、ノズルに適当な振動を与えることにより、滴下する液滴の粒径を制御することができ、これにより所望の粒径を有する粒状蓄熱材を製造することができる。ここで、ノズルの振動数を大きくするほど液滴の粒径を小さくすることができ、逆にノズルの振動数を小さくするほど液滴の粒径を大きくすることができる。所望の粒径を得るための振動数は、下記数式(1)及び(2)を参考にして、当業者による少しの予備実験によって容易に設定することができる。
Figure 2015134883


(上記数式中、dは液滴の粒径であり、
はノズル径であり、
λoptは振動数であり、
ηは液滴の動粘度であり、
ρは液滴の密度であり、そして
σは液滴の表面張力である。)
本発明においては、ノズルの振動数は10〜10,000Hzとすることが好ましく、10〜3,000Hzとすることが、より好ましい。
上記凝固槽は、多価金属イオン及び溶媒を含有する。上記のようにして吐出された液滴が凝固槽と接触することによって被覆層が凝固し、本発明の粒状蓄熱材を得ることができる。コア形成材料又は被覆層形成材料に含有される樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種が光硬化性組成物を含有する場合、得られた凝固物は好ましくはさらに光照射工程を経て本発明の粒状蓄熱材となる。
凝固漕上に材料を押し出す際、同心二重ノズルは、吐出方向を鉛直下向きとして、凝固漕上に設置することが好ましい。
滴下の際のノズル温度は、5〜150℃とすることができる。
凝固槽は多価カチオン及び溶媒を含有する。
この多価カチオンは、アニオン性重合体を架橋することが可能であるものとして上記に例示したものから選択される。凝固槽は、該多価カチオンを生ずる水解離性の化合物を適当な溶媒に溶解して調製される。この場合の化合物としては、例えば多価カチオンのハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩等を挙げることができる。これらの具体例は、上記に説明したとおりである。
凝固槽に使用される溶媒としては、水を使用するか、或いは水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、例えばアルコールを挙げることができ、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合、水溶性有機溶媒の使用量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは5〜50質量%である。
滴下の際の凝固槽の温度は、−20〜60℃程度に設定することが好ましい。
コア形成材料又は被覆層形成材料が光硬化性組成物を含有する場合、好ましくはさらに光照射処理が行われる。
この光照射処理に用いられる光としては、200〜400nmの波長範囲に輝線を有する紫外線を用いることが好ましい。光の照射量は、好ましくは20〜20,000J/mであり、より好ましくは60〜15,000J/mである。
以上のようにして、コア及び被覆層からなる2層型の粒状蓄熱材を製造することができる。凝固層中の蓄熱材は、適当な方法(例えばろ別)によって回収し、好ましくは適当な方法(例えば加熱)によって乾燥した後に、後述するような態様で使用に供することができる。
コア及び被覆層のほかに最外層として熱硬化性樹脂層をさらに有する3層型の粒状蓄熱材は、上記のようにして製造された2層型の粒状蓄熱材に対して、最外層形成用材料を例えばスプレーコーティング法、パンコーティング法等によってコーティングした後、流動層乾燥機、真空乾燥機、熱風乾燥機等の適宜の乾燥機を用いて溶媒を除去する方法によるか、或いは
上記の2層型の粒状蓄熱材の製造において、
同心二重ノズルの代わりに同心三重ノズルを使用し、そして
コア形成材料、被覆形成材料及び最外層形成材料を、該同心三重ノズルの内側ノズル、中間ノズル及び外側ノズルからそれぞれ押出して凝固槽に滴下する工程を経由する方法により、製造することができる。
上記最外層形成材料は、熱硬化性樹脂及び溶媒を含有する。この溶媒としては、例えばアルコール、非プロトン性極性溶媒、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。これらの具体例は、被覆層形成材料に含有される溶媒としては上記に例示したものと同じものを挙げることができる。最外層形成材料に含有される溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素より成る群から選択される1種以上が好ましい。
最外層形成材料における溶媒の使用割合は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは20〜100,000質量部であり、より好ましくは50〜10,000質量部である。
一方、コア及び被覆層のほかに最外層として無機化合物層をさらに有する3層型の粒状蓄熱材は、上記のようにして製造された2層型の粒状蓄熱材に対して、化学蒸着、プラズマ堆積、スプレーコーティング、めっき、イオンプレーティング、スパッタリング等の手段によって無機化合物層を形成することにより、製造することができる。
3層型の粒状蓄熱材の製造として上記に説明した以外の事項は、2層型の粒状蓄熱材について説明した事項をそのまま、或はこれに当業者による適宜の変更を加えた態様で、実施することができる。
<粒状蓄熱材の使用態様>
本発明の粒状蓄熱材は、そのまま、又は適当な分散媒中に分散した状態で使用することができ、或いは蓄熱材そのもの又は分散剤との混合物を適当な包装材料に封入した状態で使用することができる。
上記分散媒としては、例えば液体、ゲル、漆喰、珪藻土、石膏、コンクリート、アスファルト、樹脂、ゴム、活性炭等を挙げることができる。本発明の粒状蓄熱材を液体に分散されて得られる混合物は空調用途等に好適であり、例えば該混合物をパイプに通液して循環して使用することができる。本発明の粒状蓄熱材を漆喰、珪藻土等の建材に分散されて得られる混合物は建材用途に好適であり、例えば壁面等への塗布材料、構造材料等として使用することができる。
粒状蓄熱材と分散媒との混合物における粒状蓄熱材の含有量は、該混合物中に蓄熱材が占める質量割合として、0.1〜50質量%とすることが好ましく、1〜30質量%とすることがより好ましい。
本発明の粒状蓄熱材をそのまま、或いは分散媒中に分散して包装材料に封入して用いる態様は、輸送容器、建築材料等の調温手段として好適である。包装材料としては、例えば国際公開第WO2011/78340号記載のものを好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における各種物性の測定方法及び諸特性の評価方法は、それぞれ以下のとおりである。
(1)平均粒子径
得られた蓄熱材のカプセルの平均粒子径は、デジタルマイクロスコープVHX−900((株)キーエンス製)の寸法計測機能を用いて測定した。個々のカプセルの粒子径は、下記数式(3)によって示される2軸平均径によって表し;ランダムに採取した10個の測定対象カプセルについての測定値から下記数式(4)によって示される個数平均径として評価した。
2軸平均径={(長軸径)+(短軸径)}/2 (3)
個数平均径={Σ(測定粒子径)}/(測定数) (4)
(2)融点及び潜熱量
得られた蓄熱材カプセルの融点及び潜熱量は、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定した。
蓄熱材カプセル1個の重量が15mg以下であった場合、カッターでカプセルを半割し、各々の切断面を下にしてサンプルパンに設置し、DSC測定を行った。蓄熱カプセル1個の重量が15mgを超えた場合、15mg以下の部分に分割して測定した。分割して測定した場合には、平均値を採用した。
測定は、サンプルを170℃において10分間保持した後、170℃から−30℃まで10℃/分の速度で冷却し、−30℃において10分間保持した後、−30℃から100℃まで10℃/分の速度で昇温する方法によって行った。
上記によって得られたDSCチャートから、配合した蓄熱物質に相当する融解ピークの補外融解開始温度及び融解熱量をJIS K−7121に準拠して求め、これらの値をそれぞれ蓄熱材用組成物の融点及び蓄熱材カプセルの潜熱量として評価した。
複数の融解ピークを有する蓄熱材用組成物の融点は、融解熱量の最も大きな融解ピークの補外融解開始温度とし、潜熱量はその融解ピークの融解熱量とした。多峰性ピークを有し、個々の融解ピークの区別が付かない場合は、それらを一つの融解ピークと看做して処理した。
(3)ブリード性
得られた蓄熱材のカプセル約10gを1回の測定サンプルとした。
内温が以下のi)〜iv)からなるサイクルを100回繰り返すようにプログラムした恒温槽にサンプルを設置して試験を行った。
i)60℃において30分維持
ii)冷却速度2℃/分にて60℃から−20℃まで冷却
iii)−20℃において30分維持、及び
iv)昇温速度2℃/分にて−20℃から60℃まで昇温
100サイクル後のサンプルを取り出して充分冷却した後、蓄熱物質の漏れを目視確認し、蓄熱物質の漏れが認められなかった場合を耐ブリード性「A(良好)」、蓄熱物質の漏れがわずかに確認された場合を耐ブリード性「B(可)」、蓄熱物質の漏れが明らかに確認された場合を耐ブリード性「C(不良)」として評価した。
(4)カプセル強度
得られた蓄熱材のカプセルのカプセル強度は、(株)山電製のクリープメータ(型番「レオナーRE3305」)を用いて行った。このクリープメーターは、被測定物に垂直方向から一定の速度で荷重を加える機構を備えた圧縮試験装置である。
プランジャー形状は、W13mm×D30mm×H25mm三角柱、先端部角度30°及び先端1mm幅とし、圧縮速度0.5mm/秒にて最大荷重点(被測定物の破断時に印加された最大荷重)を測定した。
測定は、ランダムに選択したカプセル1個を被測定物とし、3回行った測定の平均値を調べた。この値が10(N)以上であった場合をカプセル強度「A(良好)」、4(N)未満であった場合をカプセル強度「C(不良)」として評価した。
(5)耐熱性
得られた蓄熱材のカプセル約10gを1回の測定サンプルとした。
内温を100℃に設定した恒温槽中にサンプルを設置し、2時間経過後にサンプルを取り出して充分冷却した後、蓄熱物質の漏れを目視確認した。蓄熱物質の漏れが認められなかった場合を耐熱性「A(良好)」、蓄熱物質の漏れがわずかに確認された場合を耐熱性「B(可)」、蓄熱物質の漏れが明らかに確認された場合を耐熱性「C(不良)」として評価した。
(6)耐ガソリン性
得られた蓄熱材のカプセル約10gを精秤し、SUS製の筒型密封容器中に仕込んだ。ここに、約100gのFuel−C(イソオクタン/トルエン=50/50体積%)を加えて密封した。この容器を40℃に設定した恒温槽に設置して静置し、24時間保持した後に取り出した。容器からカプセルを取り出し、付着したFuel−Cをウェスで拭き取った後、重量を測定した。
ここで、試験前後における重量の変化率が3%未満であった場合を耐ガソリン性「A(良好)」;3%以上、10%未満であった場合を耐ガソリン性「B(可)」;10%以上であった場合を耐ガソリン性「C(不良)」として評価した。
(7)耐アルコール混合ガソリン性
上記「(7)耐ガソリン性」において、Fuel−Cの代わりにアルコール混合ガソリン(Fuel−C/エタノール=80/20体積%)を使用したほかは「(7)耐ガソリン性」と同様の操作及び評価基準にて試験を行った。
実施例及び比較例で用いた各成分は、それぞれ以下のとおりである。
n−オクタデカン:Sasol Germany GmbH製、「PARAFOL18−97」
n−テトラデカン:(株)JX日鉱日石エネルギー製、「TSパラフィン TS−4」
流動パラフィン:(株)MORESCO製、「モレスコホワイトP−350」
ヘキサデカン酸メチル:ライオン(株)製、「パステルM−16」
エチレン−ビニルアルコール共重合体:(株)クラレ製、「エチレン−ビニルアルコール共重合体エバールG156B」
共役ジエンゴム:(株)クラレ製、「SEEPS セプトン4077」、重量平均分子量=約35万
アルギン酸ナトリウム:(株)キミカ製、「アルギテックスシリーズL」
ジェランガム:DSP五協フード&ケミカル(株)製、「ケルコゲル」
光硬化性組成物:ノナ(エチレングリコール)ジアクリレート60質量部、テトラデカ(エチレングリコール)ジアクリレート20質量部及びベンゾインイソブチルエーテル0.6質量部からなる組成物
ポリビニルアルコール:(株)日本合成化学工業製、「ゴーセノールNL−05」
塩化カルシウム水溶液:塩化カルシウム2水和物((株)トクヤマ製)を蒸留水に溶解し、濃度を0.1mol/Lに調整したもの
実施例1
(1)シェル形成用液
アルギン酸ナトリウム2gを水98gに溶解してアルギン酸ナトリウム水溶液を調整した。一方、ポリビニルアルコール10gを水90gに溶解してポリビニルアルコール水溶液を調整した。
上記で得たアルギン酸ナトリウム水溶液50gとポリビニルアルコール水溶液50gとを混合することにより、シェル形成用液を調製した。
(2)コア形成用液
n−オクタデカンの市販品を、コア形成用液としてそのまま使用した。
(3)蓄熱材カプセルの製造
蓄熱材カプセルの製造は、同心二重ノズルを有する振動滴下装置(ビュッヒ社製)を用いて行った。
上記振動滴下装置の外側ノズルにシェル形成用液を、内側ノズルにコア形成用液を、それぞれ通液し、9,000回/分の振動数でノズルを振動させつつ液滴を形成し、塩化カルシウム水溶液中に滴下することにより、コアシェル2層構造の蓄熱材カプセルを製造した。このとき、乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=90:10(質量比)となるように、各ノズルの流量を調整して実施した。
また、滴下の際のノズル振動数を6,000回/分とすることにより、粒径の異なる蓄熱材カプセルを製造した。
実施例2
コア形成用液として、共役ジエンゴム5gをn−オクタデカン95g中に80℃で溶解して得た溶液を用い、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=80:20(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
また、滴下の際のノズル振動数を3,000回/分とすることにより、粒径の異なる蓄熱材カプセルを製造した。
実施例3
シェル形成用液として、
実施例1におけるのと同様にして調製したアルギン酸ナトリウム水溶液50gと、
エチレンビニルアルコール共重合体10gをメタノール及び水からなる混合溶媒(メタノール:水=50:50(質量比))90g中に溶解して得たエチレン−ビニルアルコール共重合体水溶液の50gと
を混合して得られた溶液を使用し、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=70:30(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
また、滴下の際のノズル振動数を69000回/分とすることにより、粒径の異なる蓄熱材カプセルを製造した。
実施例4
コア形成用液として、
n−オクタデカン20gと
実施例3におけるのと同様にして調製したエチレン−ビニルアルコール共重合体水溶液の100gと
を混合し、ホモミキサーを用いて機械的に微分散して得た液を用い、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=99:1(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
実施例5
コア形成用液として、ヘキサデカン酸メチルの市販品をそのまま使用し、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=80:20(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
また、滴下の際のノズル振動数を18,000回/分とすることにより、粒径の異なる蓄熱材カプセルを製造した。
実施例6
コア形成用液として、ヘキサデカン酸メチルの市販品をそのまま使用し、
シェル形成用液として、実施例1におけるのと同様にして調製したアルギン酸ナトリウム水溶液50gと、
共役ジエンゴム10gを、ヘキサン90g中に溶解して得た共役ジエンゴム溶液の50gと
を混合して得られた溶液を使用し、そして
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=80:20(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
実施例7
シェル形成用液として、
ジェランガム0.5gを蒸留水99.5gに溶解して得られたジェランガム水溶液50gと
実施例1におけるのと同様にして調製したポリビニルアルコール水溶液50gと
を混合して得られた溶液を使用し、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=70:30(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
実施例8
コア形成用液として、n−テトラデカンの市販品をそのまま使用し、
滴下の際のノズル振動数を9000回/分とほかは上記実施例7と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
比較例1
シェル形成用液として、実施例1におけるのと同様にして調製したアルギン酸ナトリウム水溶液のみを使用し、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=99:1(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
比較例2
シェル形成用液として、実施例7におけるのと同様にして調製したジェランガム水溶液のみを使用し、
乾燥後のコアシェル比がコア:シェル=99:1(質量比)となるようにしたほかは上記実施例1と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
比較例3
コア形成用液としてn−テトラデカンの市販品をそのまま使用したほかは上記比較例2と同様にして、蓄熱材カプセルを製造した。
比較例4
(1)シェル形成用液
ノナ(エチレングリコール)ジアクリレート60質量部、テトラデカ(エチレングリコール)ジアクリレート20質量部及びベンゾインイソブチルエーテル0.6質量部を混合して光硬化性組成物を調製し、これをシェル形成用液として使用した。
(2)コア形成用液
流動パラフィンの市販品をそのままコア形成用液として使用した。
(3)蓄熱材カプセルの製造
実施例1と同じ振動滴下装置を用い、その外側ノズルにシェル形成用液を、内側ノズルにコア形成用液を、それぞれ通液し、2400回/分の振動数でノズルを振動させつつ、温度を13℃に調整したナタネ油中に滴下して、コアシェル2層構造の液滴を形成した。
得られた液滴に、高圧水銀灯((株)ジーエス・ユアサコーポレーション製、型番「モレスコホワイトP−350」)を用いて波長320〜400nmの紫外線を露光量6000J/mにて照射することにより、蓄熱材カプセルを製造した。この蓄熱材カプセルのコア:シェル比は、コア:シェル=70:30(質量比)であった。
実施例9
(1)最外層形成用液
エチレン−ビニルアルコール共重合体100gをメタノール及び水からなる混合溶媒(メタノール:水=50:50(質量比))900g中に溶解することにより、最外層形成用液を調製した。
(2)最外層の形成
実施例1において得られた粒径1.4mmの蓄熱材カプセルに、転動流動コーティング装置(バウレックス(株)製、品名「MP−01CT」)を用いて上記で調製した最外層形成用液を下記の条件でコーティングした後、同装置内で下記の条件で加熱して溶媒を除去することにより、3層型の蓄熱材カプセルを製造した。
[コーティング条件]
カプセル仕込み量:0.5kg
コーティング液量:0.5kg
噴霧速度:0.5kg/h
[溶媒除去条件]
熱風温度:70℃
排風速度:1m/min
上記で得られた蓄熱剤カプセルを略2等分に切断した断面を、マイクロスコープおよびレンズ(いずれもKEYENCE Corporation製、マイクロスコープ品名「DIGITAL MICROSCOPE VHX−900」、レンズ品名「VH−Z20R」)を用いて観察し、最外層の厚みを調べた。10点測定して得た平均値は23μmであった。
実施例10
(1)最外層形成用液
ポリビニルアルコール100gを水900g中に溶解することにより、最外層形成用液を調製した。
(2)最外層の形成
最外層形成用液として上記で調製した最外層形成用液を、蓄熱材カプセルとして実施例4で得られた蓄熱材カプセルを、それぞれ用い、コーティング条件のうちのコーティング液量を1kgとしたほかは上記実施例9と同様にして3層型の蓄熱材カプセルを製造した。
上記で得られた蓄熱材カプセルについて上記実施例9におけるのと同様にして調べた最外層の厚み(10点平均値)は30μmであった。
上記各実施例及び比較例で得た蓄熱材カプセルの評価結果を下記の第1表に示した。第1表におけるコア及び被覆層の成分量は、それぞれ、有効数字3桁に丸めた数値として示した。
Figure 2015134883


Figure 2015134883


なお、第1表の「最外層の有無(有りの場合は種類)」欄における略称は、それぞれ以下の意味である。
EVC:エチレン−ビニルアルコール共重合体、(株)クラレ製、「エチレン−ビニルアルコール共重合体エバールG156B」
PVA:ポリビニルアルコール、(株)日本合成化学工業製、「ゴーセノールNL−05」

Claims (9)

  1. コア及び該コアを被覆する被覆層を有する粒状蓄熱材であって、
    前記コアが蓄熱物質を含有し、
    前記被覆層が、アニオン性重合体が多価カチオンで架橋されたイオン架橋物を含有し、そして
    前記コア及び前記被覆層のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、前記蓄熱材。
  2. 前記樹脂がビニルアルコール(共)重合体、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、ポリエステル及びポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記ゴムが共役ジエン(共)重合体及びその水素添加物、並びにエチレン−α−オレフィン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の蓄熱材。
  3. 前記アニオン性重合体が、多糖類、不飽和カルボン酸の(共)重合体及び不飽和スルホン酸の(共)重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の蓄熱材。
  4. 前記アニオン性重合体が、アルギン酸、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トランガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種の多糖類である、請求項3に記載の蓄熱材。
  5. 前記蓄熱物質が、飽和炭化水素、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコール及び脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄熱材。
  6. 前記樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種が、前記被覆層に含有される、請求項1に記載の蓄熱材。
  7. 前記被覆層の外側に、該被覆層を被覆する外層を更に有する、請求項1に記載の蓄熱材。
  8. 個数平均粒子径が100μm〜10mmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄熱材。
  9. コア形成材料及び被覆形成材料を、同心二重ノズルの内側ノズル及び外側ノズルからそれぞれ押出して凝固槽に滴下する工程を経由する、請求項1に記載の粒状蓄熱材を製造するための方法であって、
    前記コア形成材料が蓄熱物質を含有し、
    前記被覆層形材料がアニオン性重合体又はその塩、及び溶媒を含有し、
    前記凝固槽が多価カチオン及び溶媒を含有し、そして
    前記コア形成材料及び前記被覆層形成材料のうちの少なくとも一方に樹脂及びゴムよりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、前記方法。
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