JP2015132038A - 長繊維不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】親水性の均一性、液の透過性及び生産性に優れた長繊維不織布を提供する。【解決手段】熱可塑性繊維からなり、繊維処理剤が付着しており、前記繊維処理剤が、ポリオルガノシロキサン及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤は、好ましくは、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選択される少なくとも2種であり、例えば、1)アニオン界面活性剤を2種含有するか、又は2)アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤をそれぞれ少なくとも1種含有する長繊維不織布1。【選択図】図1

Description

本発明は、長繊維不織布及び吸収性物品に関する。
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面材に用いる不織布としては、短繊維を原料にしてカード機により形成した繊維ウエブに熱処理等を施し繊維同士を接着したカード不織布が主に用いられてきた。また、カード不織布を親水化する方法としては、カード不織布の原料である短繊維の製造時の紡糸工程あるいは延伸工程で、該短繊維に親水化処理剤を付着させる方法が採用されている。その場合、繊維1本1本に親水化処理が施されているので、得られた不織布の親水性は、均一で安定した性能を示す。
これに対して、長繊維で構成されたスパンボンド不織布は、不織布としての強度が高い等の優れた物性を有するとともに、生産性が高く、低コストであるという利点を有する一方、親水化することを考えた場合、その製法上、不織布化後に親水化処理を施すことになるため、不織布を構成する繊維1本1本に均一に親水化処理剤を付着させることは困難である。
スパンボンド不織布の親水化に関する前記の問題に関し、スパンボンド不織布に均一に安定した親水性を付与させる技術も提案されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、長繊維不織布を構成する熱可塑性繊維には親水化剤が繊維重量に対し、0.05〜5.0重量%含有され、且つ親水化油剤が長繊維不織布重量に対し、0.1〜2.0重量%付着されている親水性長繊維不織布が提案され、特許文献2には、特定の一般式で示される、水酸基の10〜85モル%をエステル化したグリセリン縮合物と、特定の一般式で示されるポリエーテル変性シリコーンと、オキシアルキレンが20〜45重量%であるポリオキシアルキレンひまし油エーテル又はポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテルの3成分を特定の割合で含む処理剤を特定量固定化してなる衛生材料用ポリオレフィン系長繊維不織布が提案されている。
特許文献3には、合成繊維の帯電防止や潤滑等に使用される合成繊維処理剤の低濃度水性液が記載されている。この水性液は、炭素数12〜22のアルキルリン酸エステルカリウム塩を必須成分として含有するもので、特許文献3には、この水性液の任意成分として、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオルガノシロキサン等が記載されている。特許文献3の技術は、合成繊維処理剤の低濃度水性液の保存安定性の向上を主たる目的とした技術であり、特許文献3には、この水性液を吸収性物品の構成部材としての不織布に適用した場合に、その構成部材に要求される諸特性を満たすための工夫は記載されていない。
特開2003−201670号公報 特開2008−38277号公報 特開2005−54333号公報
前記の特許文献1及び2の技術によれば、不織布に均一な親水性を付与する点で改善が図られている。しかし、特許文献1の技術は、繊維への親水化処理剤の練り込みと塗布とを併用しており、製造工程が複雑化するとともに、練り込みでの親水化の寄与は小さく親水性の均一性の改善は十分であるとはいえない。他方、特許文献2の技術は、親水性の均一性の観点から、改善の余地を残すものであり、処理剤を付与する前にコロナ放電処理もしくは常圧プラズマ処理を行い、不織布の濡れ張力をある範囲に処理させ、繊維への処理剤の浸透性を向上させ、固定化することが必要となるものであった。
特許文献1又は2の技術で、スパンボンド不織布を親水化する場合、エンボス加工により形成されたエンボス部にも、他の部分と同様に親水化処理剤が塗布されるため、得られたスパンボンド不織布はエンボス部に液を保持しやすいものとなる。そのため、吸収性物品の表面材として使用した場合には、着用者の肌に当接する肌当接面に液が残りやすく、表面材としては使用しづらいものであった。
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る長繊維不織布を提供することにある。
本発明は、熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、繊維処理剤が付着しており、前記繊維処理剤が、ポリオルガノシロキサン及び界面活性剤を含有する長繊維不織布を提供するものである。
前記の本発明の長繊維不織布において、前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも2種であり、且つ前記界面活性剤としてアニオン界面活性剤を2種含有し、その2種のアニオン界面活性剤が、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及び下記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤であっても良い。即ち本発明は、熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、繊維処理剤が付着しており、前記繊維処理剤が、下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する長繊維不織布を提供するものである。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
(C)下記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤
Figure 2015132038
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいても良い、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R1及びR2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいても良い、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO3M、―OSO3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
前記の本発明の長繊維不織布において、前記界面活性剤がアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤をそれぞれ少なくとも1種含有し、前記アニオン界面活性剤がリン酸エステル型のアニオン界面活性剤であり、前記ノニオン界面活性剤がポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルであっても良い。即ち本発明は、熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、繊維処理剤が付着しており、前記繊維処理剤が、下記の(A)成分、(B)成分及び(D)成分を含有する長繊維不織布を提供するものである。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
(D)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル
本発明は、前記の長繊維不織布であって、長繊維どうしが熱融着した(熱圧着により長繊維どうしが接合した)エンボス部を有し、該エンボス部の親水度が、非エンボス部の親水度よりも低いものの製造方法であって、
原料樹脂を溶融紡出し、長繊維をコンベア上に集積する工程、得られた長繊維のウエブに前記の繊維処理剤を塗布する工程、及び前記の繊維処理剤の塗布後の熱エンボス加工を施す工程を具備する長繊維不織布の製造方法を提供するものである。
本発明の長繊維不織布は、親水性の均一性に優れ、不織布全体としての液の透過性に優れ、生産性にも優れている。
エンボス部の親水度を低下させた好ましい実施形態の長繊維不織布は、液の透過性に一層優れ、透過した液の液戻りのしにくさも向上しており、例えば、吸収性物品の表面シートとして用いた場合、供給された液が、肌当接面に残りにくく、また表面シートを透過した液が肌当接面に戻りにくい。
図1は、本発明の長繊維不織布の第1実施形態を示す平面図である。 図2は、図1のII−II線断面図である。 図3は、第1実施形態の長繊維不織布の好ましい製造方法を示す模式図である。 図4は、第1実施形態の長繊維不織布の作用効果の説明図である。 図5は、本発明の長繊維不織布の第2実施形態を示す平面図である。 図6は、第3実施形態の長繊維不織布の好ましい製造方法を示す模式図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の長繊維不織布は、好ましくはスパンボンド不織布である。
スパンボンド不織布は、原料樹脂(高分子ポリマー)を、押出機(エクストルーダー)で加熱、溶融して、多数の細孔を有する紡糸口金から押し出し、ロール引取やエアサッカー引取で延伸して長繊維とし、それらの長繊維をネットコンベア上に集積して得られるウエブを、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波等の手段を用いる方法、あるいはエンボスロールを用い熱圧着により部分的に接合(ボンディング)する方法、またはエアスルーを用いることにより一部熱融着する方法等の交絡方法で交絡して得られる不織布である。
本発明の長繊維不織布には、単層構造のスパンボンド不織布の他、スパンボンド不織布(S)とメルトブロー不織布(M)とが複合化されたシート(例えばSM、SMS、SMMS等)等も含まれる。
スパンボンド不織布は、その構成繊維である長繊維が熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン等が挙げられる。ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等が挙げられる。ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることもでき、これら各種樹脂の変性物を用いることもできる。
スパンボンド不織布は、紡糸性の観点からポリオレフィン系樹脂であるポリプロピレン樹脂から形成されていることが好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、滑らかであり、肌に接した際に肌触りが向上する観点、破断のしやすさの観点から、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマーのいずれか1種以上を5重量%以上100重量%以下、より好ましくは25重量%以上80重量%以下含んだ樹脂であることが好ましい。また、これらのコポリマーやホモポリマーを混合しても良いし、他の樹脂を混合しても良いが、成形時に糸切れし難いことから、ポリプロピレンのホモポリマーとランダムコポリマーとの混合が好ましい。さらにはプロピレン成分をベースとしてランダムコポリマーとしてエチレンやα−オレフィンと共重合したものが好ましく、エチレンプロピレン共重合体樹脂が特に好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、同様な観点から、エチレンプロピレン共重合体樹脂を5重量%以上含んだ樹脂であることが好ましく、25重量%以上含んだ樹脂であることが更に好ましい。エチレンプロピレン共重合体樹脂中にはエチレン濃度が1〜20重量%含まれたものが好ましい。尚、本明細書においては特に断らない限り、「重量%」は「質量%」に置換できる。
また、本発明の長繊維不織布の構造は、単一繊維であっても、2成分以上の熱可塑性樹脂との複合繊維であっても良い。また、原料の熱可塑性樹脂が異なる単一繊維同士の混繊や、単一繊維と複合繊維との混繊から構成されていても良い。複合繊維の複合構造は、鞘芯型、並列型、海島型等のいずれも使用でき、なかでも低融点樹脂を鞘成分とし、高融点成分を芯成分とする鞘芯型複合繊維は良好な熱接着性を有し、熱接着状態が安定しているため特に好ましく利用できる。この他、異形断面構造、分割型構造、中空型構造を有する複合繊維も使用できる。
また、本発明の長繊維不織布は酸化チタンを含んでいても良い。酸化チタンは、例えば粒径が0.1μm以上2μm以下の範囲であることが好ましく、紡糸工程で樹脂に含有させて紡糸することができる。酸化チタンを含有させた長繊維不織布は白色度が高まり、隠蔽性が高くなる。特に、酸化チタンを含有させた長繊維不織布を表面材等に使用した吸収性物品では、吸収体に吸収した経血や尿等の体液の隠蔽性が高く、使用後の外観からくる視覚的ドライ感が得られる。
酸化チタンは任意の含有量で加えることができるが、隠蔽性を高める観点から、長繊維不織布に含有させる酸化チタンの量は、長繊維不織布の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、生産性、繊維強伸度物性、不織布製造工程での紡糸性、後加工工程でのカット性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。
本発明の長繊維不織布には、ポリオルガノシロキサン((A)成分)及び界面活性剤を含有する繊維処理剤が付着している。本発明の長繊維不織布において、繊維処理剤は該不織布の平面方向に均一に分布していることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン及び界面活性剤を含有する本発明に係る繊維処理剤は、前述した、スパンボンド不織布等の長繊維不織布の親水化に関する問題の解決に有効である。
即ち、長繊維で構成されたスパンボンド不織布等の長繊維不織布を親水化処理剤によって親水化する場合、その親水化処理法としては、親水化処理剤を均一に塗布する観点から、構成繊維1本1本に親水化処理剤を付着させる方法が好ましいが、この方法はスパンボンド不織布の製法上採用し難いため、繊維を不織布化して得られた不織布に親水化処理剤を付着させる方法を採用せざるを得ない。しかし、不織布に親水化処理剤を付着させる方法では、不織布全体に均一に親水化処理剤を付着させることが困難であり、この方法で得られた長繊維不織布は、透水性、耐久透水性が不十分で、透水性のばらつきが大きい傾向がある。これに対し、本発明に係る繊維処理剤を長繊維不織布の親水化処理剤として用いると、その親水化処理法が、繊維の集合体である不織布に親水化処理剤を付着させる方法であっても、長繊維不織布全体に均一に該繊維処理剤を付着させることができ、結果として、親水性の均一性に優れ、不織布全体としての液の透過性に優れ、生産性にも優れた長繊維不織布が得られる。
このように、本発明に係る繊維処理剤は、長繊維を構成繊維とする長繊維不織布に直接適用した場合でも、該不織布の構成繊維の表面に均一にムラなく親水化処理を施すことが可能であるところ、この作用効果は主として、該繊維処理剤の必須成分の1つであるポリオルガノシロキサンによるものである。このポリオルガノシロキサンを適量配合することにより、該繊維処理剤の表面張力が低下し、繊維への濡れ性が高められ、繊維の表面に均一にムラなく処理剤を付着させることができる。一方、本発明に係る繊維処理剤のもう1つの必須成分である界面活性剤は、主として、長繊維不織布に実用上十分な親水度(例えば、吸収性物品の表面シートとして用いるのに十分な親水度)を付与する機能を有する。また、これら両成分を含有する本発明に係る繊維処理剤が付着した繊維は、熱処理を施すことにより、ポリオルガノシロキサンが、界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維の表面の親水度が熱処理によって低い値へと変化する。
尚、ポリオルガノシロキサン((A)成分)及び界面活性剤の如き、繊維処理剤含有成分の含有量の基準となる「繊維処理剤」は、特に説明しない限り、「不織布に付着している繊維処理剤」であり、不織布に付着させる前の繊維処理剤ではない。繊維処理剤を長繊維不織布に付着させる場合は通常、繊維処理剤を水等の適当な溶媒で希釈したものを用いるため、繊維処理剤含有成分の含有量、例えば(A)成分の繊維処理剤中の含有量は、この希釈した繊維処理剤の全質量を基準としたものとなり得る。
また、本発明の長繊維不織布の如き、繊維処理剤が付着した不織布において、その付着した繊維処理剤を分析する場合は、次の手順に従って分析することが好ましい。先ず、分析対象の不織布を適切な溶媒で洗浄する。この洗浄用溶媒としては、例えば、エタノールとメタノールとの混合溶媒、エタノールと水との混合溶媒が挙げられる。分析対象の不織布が、生理用品又は子ども用若しくは大人用使い捨ておむつの如き、吸収性物品の表面シートである場合は、吸収性物品において表面シートと他の部材との接合に用いられている接着剤をドライヤー等の加熱手段で加熱することで溶融軟化させた後に、表面シートを剥がし、剥がした表面シートを洗浄用溶媒で洗浄する。次に、分析対象の不織布を洗浄するのに用いた溶媒(繊維処理剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させ、その残渣を定量することで、該不織布に付着していた繊維処理剤の総量が測定できる。また、この残渣を、その構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定することが出来る。また、繊維処理剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。
〔ポリオルガノシロキサン((A)成分)〕
ポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状のもの、架橋二次元又は三次元網状構造を有するものいずれも使用できる。好ましくは実質上直鎖状のものである。
ポリオルガノシロキサンのうち好適なものの具体例は、アルキルアルコキシシランやアリールアルコキシシラン、アルキルハロシロキサンの重合物あるいは環状シロキサンであり、アルコキシ基としては、典型的にはメトキシ基である。アルキル基としては炭素数1以上18以下、好ましくは1以上8以下、特に1以上4以下の側鎖を有しても良いアルキル基が適当である。アリール基としては、フェニル基やアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基等が例示される。アルキル基やアリール基に代えて、シクロヘキシル基やシクロペンチル基等の環状炭化水素基、ベンジル基のごときアラルキル基であっても良い。また、本発明で言うポリオルガノシロキサンは、界面活性剤の浸透をより促進させ、加熱により繊維表面の接触角をより高い目的にする観点から、親水性の高いPOE鎖で変性したポリオルガノシロキサンを含まない概念である。
本発明において好ましい最も典型的なポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン等が挙げられ、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
ポリオルガノシロキサンの分子量は、高分子量であることが好ましく、具体的には、重量平均分子量で好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である。また、ポリオルガノシロキサンとして、分子量の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いても良い。分子量が異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いる場合、そのうちの1種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下であり、他の1種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万未満、より好ましくは5万以下、より好ましくは3万5千以下、更に好ましくは2万以下であり、また、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上である。また、重量平均分子量が10万以上のポリオルガノシロキサンと重量平均分子量が10万未満のポリオルガノシロキサンとの好ましい配合比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:10〜4:1、より好ましくは1:5〜2:1である。
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量はGPCを用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl3
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
ポリオルガノシロキサンの繊維処理剤中の含有量は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、繊維処理剤の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、不織布表面で液を吸収させやすい観点から30質量%以下が好ましく、20質量%以下が更に好ましい。例えばポリオルガノシロキサンの繊維処理剤中の含有量は、繊維処理剤の全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
ポリオルガノシロキサンとしては市販品を用いることもできる。例えば、信越シリコーン社製の「KF−96H−100万Cs」、東レ・ダウコーニング社製の「SH200 Fluid 1000000Cs」、また2種類のポリオルガノシロキサンを含有するものとしては、信越シリコーン社製の「KM−903」や、東レ・ダウコーニング社製の「BY22−060」を用いることができる。
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、界面活性能を有する剤であって、この種の親水化処理剤(繊維処理剤)に含有可能なものを適宜用いることができ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン界面活性剤の例としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩、セカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩等が挙げられる(いずれのアルキルも炭素数6以上22以下、特に8以上22以下が好ましい)。これらは、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。尚、前記アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩は、前記(B)成分(リン酸エステル型のアニオン界面活性剤)の一例であり、前記ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩は、前記(C)成分(前記一般式(1)で表わされる化合物)の一例である。
カチオン界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。前記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1〜30)ベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型等のアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。なかでもベタイン型両性界面活性剤が好ましく、アルキル(炭素数1〜30)ベタインがより好ましく、炭素数16〜22(たとえばステアリル)のアルキルベタインが特に好ましい。
ノニオン界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2〜10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8〜60)、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物(好ましくは付加モル数2〜60モル)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜60)アルキル(炭素数8〜22)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜60)アルキル(炭素数8〜22)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。尚、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物(好ましくは付加モル数2〜60モル)は、後述する(D)成分(ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル)の一例である。
本発明者らの知見によれば、繊維処理剤に前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕と共に含有される界面活性剤としては、液透過性に優れた長繊維不織布をより確実に得る観点から、少なくともアニオン界面活性剤を用いることが好ましく、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも2種を用いることがさらに好ましい。
繊維処理剤に含有される界面活性剤として、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも2種を用いる場合、その好ましい実施形態として、1)界面活性剤としてアニオン界面活性剤を少なくとも2種含有するもの(以下、特定界面活性剤Aともいう)、並びに2)界面活性剤としてアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤をそれぞれ少なくとも1種含有するもの(以下、特定界面活性剤Bともいう)が挙げられる。以下、これらの好ましい界面活性剤について説明する。
〔特定界面活性剤A〕
特定界面活性剤Aは、少なくとも2種のアニオン界面活性剤の組み合わせである。特定界面活性剤Aの具体例として、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤((B)成分)と前記一般式(1)で表わされる化合物((C)成分)との組み合わせが挙げられる。以下、この(B)成分及び(C)成分について説明する。
〔アルキルリン酸エステル((B)成分)〕
(B)成分であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤は、原綿のカード機通過性やウエブの均一性等の特性を改良し、これによって不織布の生産性の向上と品質低下を防止することを目的として、繊維処理剤に配合される。具体的には、アルキルエーテルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。その中でも、アルキルリン酸エステルが加工性機能の面から好ましい。
アルキルエーテルリン酸エステルとしては、特に制限なく種々のものを用いることができる。例えば、ステアリルエーテルリン酸エステル、ミリスチルエーテルリン酸エステル、ラウリルエーテルリン酸エステル、パルミチルエーテルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルエーテルリン酸エステル、パルミトレイルエーテルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。なお、アルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステル等の飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステル等の不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和または部分中和塩である。尚、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類等が挙げられる。アルキルリン酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(B)成分の前記繊維処理剤中の含有量は、カード機通過性やウエブの均一性等の観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、熱処理に起因するポリオルガノシロキサンによる繊維の疎水化を妨げないようにする観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
〔前記一般式(1)で表わされる化合物((C)成分)〕
(C)成分は、(B)成分であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤と同じくアニオン界面活性剤であるが、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤は含まない成分を指す。また、(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記一般式(1)中のXが―SO3M、すなわち親水基がスルホン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホン酸又はそれらの塩を挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の具体例としては、ジオクタデシルスルホコハク酸、ジデシルスルホコハク酸、ジトリデシルスルホコハク酸、ジ2‐エチルヘキシルスルホコハク酸等の、ジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホグルタル酸等のジカルボン酸をエステル化し、ジエステルのアルファ位をスルホン化した化合物や、2−スルホテトラデカン酸1−エチルエステル(又はアミド)ナトリウム塩や、2−スルホヘキサデカン酸1−エチルエステル(またはアミド)ナトリウム塩等の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸エステル(又はアミド)のα位をスルホン化したアルファスルホ脂肪酸アルキルエステル(又はアミド)や、炭化水素鎖の内部オレフィンや不飽和脂肪酸の内部オレフィンをスルホン化することで得られるジアルキルアルケンスルホン酸等を挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の2鎖のアルキル基それぞれの炭素数は、4個以上14個以下、特に、6個以上10個以下であることが好ましい。
親水基がスルホン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 2015132038
Figure 2015132038
前記一般式(1)中のXが―OSO3M、すなわち親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキル硫酸エステルを挙げることができ、その具体例としては、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム塩や、2−ヘキシルデシル硫酸ナトリウム塩等の分岐鎖を有するアルコールを硫酸化した化合物や、硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルや硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシル等の分岐鎖を有するアルコールと硫酸基の間にPOE鎖を導入したような化合物や、12−サルフェートステアリン酸1‐メチルエステル(またはアミド)3‐サルフェートへキサン酸1−メチルエステル(またはアミド)等のヒドロキシ脂肪酸エステル(またはアミド)を硫酸化した化合物等を挙げることができる。
親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 2015132038
前記一般式(1)中のXが―COOM、すなわち親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキルカルボン酸を挙げることができ、その具体例としては、11‐エトキシヘプタデカンカルボン酸ナトリウム塩や2‐エトキシペンタカルボン酸ナトリウム塩等のヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ部分をアルコキシ化し、脂肪酸部分をナトリウム化した化合物や、サルコシンやグリシン等のアミノ酸のアミノ基にアルコキシ化したヒドロキシ脂肪酸クロリドを反応させ、アミノ酸部のカルボン酸をナトリウム化させた化合物や、アルギニン酸のアミノ基に脂肪酸クロリドを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 2015132038
本発明においては、繊維処理剤として、前記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤((C)成分)とポリオルガノシロキサン((A)成分)とが配合された繊維処理剤を用いることにより、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維は、熱処理により親水度が低下しやすい繊維となる。この理由は、ポリオルガノシロキサンが、特に2鎖以上のアルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維表面の親水度が熱処理によって低下しやすいことによる。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アニオン界面活性剤の持つ、アルキル鎖が不相溶なため、より馴染みやすい繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に、アニオン界面活性剤が浸透するために起こると推定される。
(C)成分の前記繊維処理剤中の含有量は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、親水性が高くなりすぎると、液を持ちやすくなりドライ性を損なう観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。また、前記(C)成分の前記配合割合は、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上13質量%以下である。
特定界面活性剤Aを含有する繊維処理剤において、(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(C)成分のアニオン界面活性剤(前記一般式(1)で表される化合物)との含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:3〜4:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である。
また、特定界面活性剤Aを含有する繊維処理剤において、(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(B)成分のアニオン界面活性剤(リン酸エステル型のアニオン界面活性剤)との含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:5〜10:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である。
〔特定界面活性剤B〕
特定界面活性剤Bは、少なくとも1種のアニオン界面活性剤と少なくとも1種のノニオン界面活性剤との組み合わせである。特定界面活性剤Bの具体例として、アニオン界面活性剤であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤((B)成分)とノニオン界面活性剤であるポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル((D)成分)との組み合わせが挙げられる。(B)成分については前述した通りであるので、(D)成分について以下に説明する。
〔ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル((D)成分)〕
(D)成分であるポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールの水酸基を脂肪酸でエステル化した多価アルコール脂肪酸エステルの一種であり、この多価アルコール脂肪酸エステルにアルキレンオキシドを付加させた変性物である。(D)成分は、常法に従って製造することができ、例えば特開2007−91852号公報に従って製造することができる。
(D)成分(あるいは多価アルコール脂肪酸エステル)の原料の1つである多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜11000)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(分子量250〜4000)、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン(重合度2〜30)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ソルビタン、ソルバイド、ショ糖、トレハロース、エルロース、ラクトシュクロース、シクロデキストリン、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、パニトール、還元水飴等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイド、ショ糖であり、特に好ましくは、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイドである。
(D)成分(あるいは多価アルコール脂肪酸エステル)の原料の他の1つである脂肪酸としては、例えば、炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸、これらを主成分とする混合脂肪酸、あるいは炭素数8〜36の分岐鎖脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は、部分的に水酸基を含んでいても良い。具体的には、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、2−エチルヘキシル酸、イソステアリン酸等が挙げられ、天然由来の混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸を用いてもよい、好ましくは炭素数8〜18の脂肪酸、特に好ましくは、ドデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸である。
(D)成分を構成する多価アルコール脂肪酸エステルは、その主成分が、疎水鎖を大きくして疎水性を高めるときに、分子の形状を直線状に大きくするのでなく、3次元的に大きくすることで、繊維中へ取り込まれやすい形状にさせる観点から、3価以上のアルコールのエステル化物で且つアルコール成分のエステル化率が90%以上であるものが好ましい。ここで、主成分は、多価アルコール脂肪酸エステルの中で最も多い成分のことであり、多価アルコール脂肪酸エステルの全質量に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。例えば、3価のアルコールとしてはグリセリン、4価のアルコールとしてはエリスリトール、5価のアルコールとしてはキシリトール等が挙げられる。
(D)成分を構成する多価アルコール脂肪酸エステルとして特に好ましいものは、ヒマシ油(硬化ヒマシ油)である。ヒマシ油は、ドウダイグサ科の植物であるヒマの種子を給源とするグリセリン脂肪酸エステルであり、構成脂肪酸の約90%がリシノレイン酸である。つまり、(D)成分としては、グリセリンとリシノレイン酸を主体とする脂肪酸とのエステル油が好ましい。
(D)成分において、多価アルコール脂肪酸エステルに付加するアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。(D)成分として特に好ましいものは、多価アルコール脂肪酸エステルに付加するアルキレンオキシドがエチレンオキシドである、ポリオキシエチレン(POE)変性多価アルコール脂肪酸エステルであり、とりわけ好ましいものは、多価アルコール脂肪酸エステルがヒマシ油(硬化ヒマシ油)である、POE変性ヒマシ油(POE変性硬化ヒマシ油)である。
(D)成分において、多価アルコール脂肪酸エステルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、長繊維不織布の液吸収性能の向上(液残り量のや液流れ量の低減等)の観点から、20モル超えることが好ましく、40モル以上が特に好ましい。但し、アルキレンオキシドの付加モル数が多すぎると、長繊維不織布の親水度が高まり過ぎてしまい、例えば、該長繊維不織布を吸収性物品において表面シートとして用いた場合に、液残り量の増大に繋がるおそれがあることから、該付加モル数は、好ましくは80モル以下、さらに好ましくは60モル以下である。
(D)成分の繊維処理剤中の含有量は、長繊維不織布の親水度を高めて、長繊維不織布の製造時における熱処理による親水性の低下の効果を顕著に発現させる観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、強親水化による液残り量の増加を抑制する観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
特定界面活性剤Bを含有する繊維処理剤において、(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(D)成分のポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルとの含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:2〜3:1、より好ましくは1:1〜2:1である。
また、特定界面活性剤Bを含有する繊維処理剤において、(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(B)成分のリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:5〜10:1、より好ましくは1:2〜3:1である。
〔その他の成分〕
本発明に係る繊維処理剤は、前記のポリオルガノシロキサン((A)成分)及び界面活性剤((B)成分、(C)成分、(D)成分)に加えてさらに、変性シリコーン等の膠着防止剤等の処理剤を含有しても良い。
また、本発明に係る繊維処理剤は、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外の他の界面活性剤を含有していても良い。例えば、(B)成分及び(C)成分以外の他のアニオン界面活性剤としては、親水度が高く、更に熱処理によって繊維の親水度をより低下させる観点から、2鎖の嵩高な疎水基を有するジアルキルスルホコハク酸が好ましい。また、(D)成分以外の他のノニオン性界面活性剤としては、繊維に対して、適度な柔軟性を付与し、優れた使用感を提供する観点から、ポリオキシエチレン(POE)アルキルアミドが好ましい。また、POEアルキルアミドに加えてさらにノニオン界面活性剤として、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン(POE、POP)変性シリコーンを併用すると、繊維に対して適度な平滑性が付与され、不織布加工性がより一層確実に担保されるため、好ましい。
図1及び図2に、本発明の長繊維不織布の第1実施形態であるスパンボンド不織布1を示す。図1に示すスパンボンド不織布1は、単層構造のスパンボンド不織布であり、熱圧着により長繊維どうしが接合したエンボス部2を有している。エンボス部2は、散点状に配置されており、従来のスパンボンド不織布と同様に、長繊維の繊維ウエブを、熱エンボス加工により熱圧着して形成されている。エンボス部2の配置パターンは、図1に示すように、散点状の配置パターンが好ましく、千鳥状の配置パターンであることがより好ましい。
第1実施形態のスパンボンド不織布1には、前記の繊維処理剤、より具体的には、ポリオルガノシロキサン及び界面活性剤を含有し、該界面活性剤としてアニオン界面活性剤を少なくとも2種含有するもの(特定界面活性剤A)が付着している。前述したように、特定界面活性剤Aとしては、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤((B)成分)と前記一般式(1)で表わされる化合物((C)成分)との組み合わせが好ましい。また、スパンボンド不織布1は、エンボス部2の親水度が、エンボス部以外の部分である非エンボス部3の親水度よりも低くなっている。
前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分、即ち、ポリオルガノシロキサン、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及び前記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤を含有する繊維処理剤が付着した繊維は、熱処理を施すことにより、ポリオルガノシロキサンが、アルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維の表面の親水度が熱処理によって低い値へと変化する。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アニオン界面活性剤の持つ、アルキル鎖が不相溶なため、アニオン界面活性剤が、より馴染みやすい繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に浸透するために起こると考えられる。その中でも前記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤は、アルキル基が嵩高で、親水基を包み込むようにして繊維内部へ浸透していくことが可能なため、ポリオルガノシロキサンの存在により繊維内部への浸透が促進されやすい。
これにより、例えば後述する製造工程においては、繊維処理剤の塗布後の、熱エンボス加工を施す工程において、長繊維ウエブにおける、熱エンボスロールの凸部に加熱及び加圧された部分の親水度が低下し、それによって、他の部分(非エンボス部3)よりも親水度の低いエンボス部2が形成される。
以上、繊維処理剤が(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するものである場合を例にとって、繊維処理剤による所定の作用効果の発現メカニズムを説明したが、繊維処理剤が(A)成分、(B)成分及び(D)成分を含有するものである場合でも、その発現メカニズムは基本的に変わらず、前記説明において「(C)成分」を「(D)成分」に置き換えれば良い。
第1実施形態のスパンボンド不織布1は、前記の繊維処理剤を用いて、他の部分よりも親水度が低いエンボス部2を形成したものである。
図3は、第1実施形態のスパンボンド不織布1の好ましい製造方法(長繊維不織布の製造方法の好ましい一実施態様)を示す図である。
図3に示すスパンボンド不織布1(長繊維不織布)の製造方法は、(1)原料樹脂を溶融紡出し、長繊維をコンベア上に集積する工程、(2)得られた長繊維のウエブに前記の繊維処理剤を塗布する工程、及び(3)前記の繊維処理剤の塗布後のウエブに熱エンボス加工を施す工程を具備する。より詳細には、熱可塑性樹脂のチップ等を、図示しない押出機(エクストルーダー)で加熱、溶融して、多数の細孔を有する紡糸口金41から押し出し延伸して長繊維42とし、それらの長繊維42をベルトコンベア43上に集積して長繊維のウェブ10Aとする。次いで、塗布装置44により、その長繊維のウエブ10Aに対して前記の繊維処理剤5を塗布する。繊維処理剤5は、長繊維のウエブ10Aの全域、あるいは所望の範囲の全域に塗布する。繊維処理剤5の塗布方法としては、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロール転写による塗布、ディッピング法による塗布等が挙げられるが、製造工程性の点から、スプレーによる塗布を用いることが好ましい。
そして、繊維処理剤塗布後のウエブ10A’に対して、熱エンボス装置45を用いて熱エンボス加工を施す。熱エンボス装置45は、熱エンボスロール46とフラットロール47との間で、ウエブ10A’を部分的に加熱及び加圧して、該ウエブ10A’にエンボス部2を形成する。熱エンボスロール46の周面には、スパンボンド不織布1のエンボス部2の配置に対応する配置パターンで形成された凸部が形成されており、該凸部によって加熱及び加圧された部位がエンボス部2となる。
本発明で用いる繊維処理剤は、(A)成分として、ポリオルガノシロキサンが配合されていることによって、それが配合されていない場合に比して濡れ性が改善している。そのため、繊維の段階ではなく、長繊維のウエブの段階で繊維処理剤を塗布しても、長繊維のウエブの平面方向に、繊維処理剤をムラなく分布させることができる。
また、本発明で用いる繊維処理剤は、前述の通り、該繊維処理剤が付着した繊維の表面の親水度が、熱処理によって低下する。そのため、繊維処理剤の塗布後のウエブ10A’に熱エンボス加工を施すことによって形成された、スパンボンド不織布1のエンボス部2は、該スパンボンド不織布1の他の部分3(非エンボス部)に対して、親水度が低下したものとなる。このようにして、第1実施形態のスパンボンド不織布1が得られる。
第1実施形態のスパンボンド不織布1は、このようにして製造されたものであることによって、前述したように、エンボス部2の親水度が、エンボス部以外の部分である非エンボス部3の親水度よりも低くなっている。
本発明に言う「親水度」は、以下に述べる方法で測定された「水の接触角」に基づきその程度が判断される。具体的には、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義であり、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義である。
〔非エンボス部の「水の接触角」の測定方法〕
非エンボス部の「水の接触角」は、非エンボス部から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
尚、接触角の測定に用いる繊維は、非エンボス部3から以下のようにして取り出す。
非エンボス部3からの採取:精密はさみとピンセットを用いて、非エンボス部3の最表層部分から繊維を取り出した。
〔エンボス部の「水の接触角」の測定方法〕
エンボス部2は、繊維が完全に融着しフィルム化しているか、完全にフィルム化してはいないものの繊維が半融着し繊維1本を取り出すことが困難な状態である。エンボス部2の「水の接触角」の測定は、精密はさみとピンセットを用いてエンボス部2を取り出した後、取り出したエンボス部2に直接水滴を滴下する以外は、非エンボス部の接触角の測定と同様にして測定する。具体的には、以下のようにして測定する。
エンボス部2に繊維が繊維の形態を維持して残っている場合には、水平に維持した該繊維部分に蒸留水を滴下して、水滴と繊維部分の表面との接触角を測定する。
他方、エンボス部における繊維が完全に融着しフィルム化している場合、そのフィルム化した部分の表面を水平に維持し、該表面に対して水滴を滴下し、該表面に対する水の接触角を測定する。接触角は、小数点以下1桁まで計測し、一つのエンボス部につき1箇所の接触角を計測し、10個のエンボス部についての合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、エンボス部の「水の接触角」とする。
第1実施形態のスパンボンド不織布1においては、図4に示すように、第1面1a側に液6が供給されると、その液の一部6bは、繊維処理剤により親水度が高められている非エンボス部3を透過して、反対側の第2面1b側へと移行する。しかも、エンボス部2上に供給又は移動した液6aも、エンボス部2と非エンボス部3との間に親水度の差があることによって、不織布の表面近傍を移動して、非エンボス部3へと導かれ、非エンボス部3を透過して第2面1b側へと移行する。そのため、スパンボンド不織布1全体として、液の透過性に優れており、また、高密度化されたエンボス部内や、液が供給された面側のエンボス部2の表面上に、液が残りにくい。
第1実施形態のスパンボンド不織布1を、吸収性物品の表面シートや、表面シートと吸収体との間に配するセカンドシート等として用いる場合、製造工程において繊維処理剤を塗布した面側を、着用者の肌側に向けて使用しても良いし、吸収体側に向けて使用しても良いが、繊維処理剤を塗布した面側を、着用者の肌側に向けて使用することが好ましい。
第1実施形態のスパンボンド不織布1を、吸収性物品の表面シートとして用いる場合、図4に示すように、液6が、不織布の第1面1a側から第2面1b側に移行し易い上に、エンボス部2に液が残りにくいことは、液6が、着用者の肌に液が接触することを低減して、べたつき等の不快感が生じないようにする観点や、経血等の色つきの液体が目立つのを防ぎ、吸液後の吸収性物品の外観を良好とする観点から好ましい。
また、第1実施形態のスパンボンド不織布1を、吸収性物品の表面シートや表面シートと吸収体との間に配するセカンドシート等として用いる場合、スパンボンド不織布1を透過してセカンドシートや吸収体等に移行した液は、エンボス部2の親水度が非エンボス部3よりも低いことによって、吸収性物品が加圧されても、エンボス部2を介して、スパンボンド不織布1の第1面1a側に移行しにくい。そのため、第1実施形態のスパンボンド不織布1を用いた吸収性物品は、肌に接触する面への液戻りも生じにくいものとなっている。
このように、第1実施形態のスパンボンド不織布1(長繊維不織布)は、液の透過性に優れ、透過した液の液戻りのしにくさも向上しており、例えば、吸収性物品の表面シート等として用いた場合、供給された液が、肌当接面に残りにくく、また表面シートを透過した液が肌当接面に戻りにくいものとなっている。また、図3に示すような、簡易な製造工程で生産可能であり、生産性にも優れている。
液の透過性を向上させる観点や、エンボス部に液が残りにくくする観点、透過した液の液戻りを生じにくくする観点等から、エンボス部2と非エンボス部3とは、エンボス部2の接触角が非エンボス部3の接触角よりも高いことを前提にして、水の接触角の差が、好ましくは1度以上、更に好ましくは2度以上であり、また、好ましくは20度以下、更に好ましくは15度以下であり、また、好ましくは1度以上20度以下、更に好ましくは2度以上15度以下である。
同様の観点から、エンボス部2は、水の接触角が、好ましくは70度以上、更に好ましくは72度以上であり、また、好ましくは90度以下、更に好ましくは85度以下であり、また、好ましくは70度以上90度以下、更に好ましくは72度以上85度以下である。
同様の観点から、非エンボス部3は、繊維に対する水の接触角が、好ましくは60度以上、更に好ましくは62度以上であり、また、好ましくは80度以下、更に好ましくは75度以下であり、また、好ましくは60度以上80度以下、更に好ましくは62度以上75度以下である。
また、強度を維持し、良好な液透過性を維持しつつ液戻り量を一層低減の観点から、エンボス部2の面積率は、好ましくは3%以上、更に好ましくは10%以上であり、更に好ましくは、20%以上であり、また、好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下であり、更に好ましくは、40%以上であり、また、好ましくは3%以上60%度以下、より好ましくは10%以上50%以下、更に好ましくは20%以上40%以下である。
エンボス部の面積率は、下記式で求められる。
エンボス部の面積率(%)=(エンボス部の総面積/不織布の面積)×100
また、エンボス部2は、その面積が、好ましくは0.05mm2以上、更に好ましくは0.1mm2以上であり、また、好ましくは10mm2以下、更に好ましくは5mm2以下である。また、エンボス部2は、平面視形状が円形又は楕円形であることが好ましいが、それに制限されず、三角形、四角形、五角形、ハート形、十字型等の任意の形状とすることができる。
また、繊維処理剤の付着量は、長繊維不織布の全質量に対する割合(%)が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1〜1.5質量%であり、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。
図5は、本発明の長繊維不織布の第2実施形態であるスパンボンド不織布1Aを示す図である。第2実施形態のスパンボンド不織布1Aは、図5に示すように、平面視における個々のエンボス部2内に、エンボス部2をそれぞれ厚み方向に貫通する貫通孔21を有している。それ以外の点は、第1実施形態のスパンボンド不織布1と同様であるため説明を省略する。
第2実施形態のスパンボンド不織布1Aは、第1実施形態と同様の効果が奏される上に、エンボス部2内に貫通孔21を有することによって、液が、繰り返し供給された場合であっても、優れた液透過性を示すという効果が奏される。
このような観点から、貫通孔21は、面積が、好ましくは0.01mm2以上、更に好ましくは0.05mm2以上であり、また、好ましくは5mm2以下、更に好ましくは1mm2以下である。また、エンボス部2の貫通孔を含む面積に対する貫通孔21の面積の割合(%)が、好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、また、好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。
また、貫通孔21は、エンボス部2の中央部に形成されていることが好ましい。また貫通孔21は、平面視形状が円形又は楕円形であることが好ましいが、それに制限されず、エンボス部2と相似あるいは非相似の任意の形状とすることができる。
第2実施形態のスパンボンド不織布1Aは、前述したスパンボンド不織布の製造方法において、熱エンボスロール46として、上面の輪郭がエンボス部に対応する形状を有し、該上面が、円錐状であったり、該上面に更に突出する突起を有するもの等を用いることによって容易に製造することができる。
次に、本発明の長繊維不織布の第3実施形態であるスパンボンド不織布1Bについて説明する。第3実施形態のスパンボンド不織布1Bは、第1実施形態のスパンボンド不織布1と同様にエンボス部2を有するが、繊維処理剤が平面方向に万遍なく塗布されているとともに、エンボス部2と非エンボス部3とで親水度が同じである。
第3実施形態のスパンボンド不織布1Bは、図6に示すように、繊維処理剤の塗布工程と、熱エンボス加工を施す工程とを逆にする以外は、前述した第1実施形態のスパンボンド不織布1の好ましい製造方法と同様にして製造することができる。図6中、符号48はエアサッカーである。
第3実施形態のスパンボンド不織布1Bにおいては、(A)成分として、ポリオルガノシロキサンが配合されている濡れ性に優れた繊維処理剤を塗布してあるため、親水性の均一性に優れ、不織布全体としての液の透過性に優れている。また、図6に示すような、簡易な製造工程で生産可能であり、生産性にも優れている。
本発明の長繊維不織布は、種々の分野に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッド等の身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、更に対物用のワイパー等として好適に用いられる。
長繊維不織布の坪量は、目的とする不織布の具体的な用途に応じて適切な範囲が選択される。最終的に得られる長繊維不織布の坪量は、8g/m2以上40g/m2以下、特に10g/m2以上30g/m2以下であることが好ましい。
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明の長繊維不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限なく用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していても良い。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していても良い。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、図3や図6に示す製造方法においては、製造したスパンボンド不織布を(長繊維不織布)巻き取り部49で、ロール状に巻き取ったが、巻き取らずに、吸収性物品の製造ラインに導入しても良い。また、本発明の長繊維不織布は、吸収性物品の表面シート及びセカンドシート以外の構成部材として用いることもできる。図3や図6に示すようにして製造された不織布に、その後、二次加工を施しても良い。二次加工としては、例えば公知の立体賦形加工が挙げられる。
前述した実施形態に関し、本発明は更に以下の不織布を開示する。
<1>
熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、
繊維処理剤が付着しており、
前記繊維処理剤が、ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕及び界面活性剤を含有する長繊維不織布。
<2>
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも2種である前記<1>に記載の長繊維不織布。
<3>
前記界面活性剤としてアニオン界面活性剤を2種含有し、その2種のアニオン界面活性剤が、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕及び前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤〔(C)成分〕である前記<2>に記載の長繊維不織布。
<4>
前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤〔(C)成分〕が、ジアルキルスルホン酸又はその塩である前記<3>に記載の長繊維不織布。
<5>
前記繊維処理剤中の前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤〔(C)成分〕の配合割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である前記<3>又は<4>に記載の長繊維不織布。
<6>
前記繊維処理剤における前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕と前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤〔(C)成分〕との含有比率は、質量比で、好ましくは前者:後者=1:3〜4:1であり、より好ましくは前者:後者=1:2〜3:1である前記<3>〜<5>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<7>
前記界面活性剤としてアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤をそれぞれ少なくとも1種含有する前記<2>に記載の長繊維不織布。
<8>
前記アニオン界面活性剤がリン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕であり、前記ノニオン界面活性剤がポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルで〔(D)成分〕ある前記<7>に記載の長繊維不織布。
<9>
前記ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル〔(D)成分〕が前記繊維処理剤の全質量に対して20質量%以下の割合で含有されている前記<8>に記載の長繊維不織布。
<10>
前記ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル〔(D)成分〕の前記繊維処理剤中の含有量は、該繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である前記<7>〜<9>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<11>
前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕と前記ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル〔(D)成分〕との含有比率は、質量比で、好ましくは前者:後者=1:2〜3:1、より好ましくは前者:後者=1:1〜2:1である前記<7>〜<10>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<12>
前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕が前記繊維処理剤の全質量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含有されている前記<1>〜<11>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<13>
前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕がポリジメチルシロキサンである前記<1>〜<12>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<14>
前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕の分子量は、重量平均分子量で好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上、そして、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である前記<1>〜<13>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<15>
前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕として、分子量の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンが用いられている前記<1>〜<14>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<16>
分子量が異なる2種類以上の前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕を用いる場合、そのうちの1種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上、そして、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下であり、他の1種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万未満、より好ましくは5万以下、より好ましくは3万5千以下、更に好ましくは2万以下、そして、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上である前記<15>に記載の長繊維不織布。
<17>
重量平均分子量が10万以上の前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕と重量平均分子量が10万未満の前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕との配合比率は、質量比で、好ましくは前者:後者=1:10〜4:1、より好ましくは前者:後者=1:5〜2:1である前記<16>に記載の長繊維不織布。
<18>
熱圧着により長繊維どうしが接合したエンボス部を有し、該エンボス部の親水度が、非エンボス部の親水度よりも低い前記<1>〜<17>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<19>
前記エンボス部の面積率は、好ましくは3%以上、更に好ましくは25%以上、そして、好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下、より具体的には、好ましくは3%以上60%以下、より好ましくは25%以上60%以下、更に好ましくは25%以上50%以下である前記<1>〜<18>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<20>
平面視における前記エンボス部内に貫通孔を有する前記<18>又は<19>に記載の長繊維不織布。
<21>
前記繊維処理剤の付着量は、前記長繊維不織布の全質量に対する割合が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以上1.0質量%以下である前記<1>〜<20>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<22>
前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕が、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である前記<3>〜<6>及び<8>〜<21>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<23>
前記繊維処理剤中の前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕の配合割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である前記<3>〜<6>及び<8>〜<22>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<24>
前記繊維処理剤における前記ポリオルガノシロキサン〔(A)成分〕と前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕との含有比率は、質量比で、好ましくは前者:後者=1:5〜10:1であり、より好ましくは前者:後者=1:2〜3:1である前記<3>〜<6>及び<8>〜<23>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<25>
前記繊維処理剤は、前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤〔(B)成分〕及び前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤〔(C)成分〕以外の他の界面活性剤として、2鎖の嵩高な疎水基を有するジアルキルスルホコハク酸を含有する前記<3>〜<6>及び<12>〜<24>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<26>
前記繊維処理剤は、前記ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル〔(D)成分〕以外の他の界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミドを含有する前記<8>〜<24>の何れか1項に記載の長繊維不織布。
<27>
前記繊維処理剤は、前記ポリオキシエチレンアルキルアミドに加えてさらにノニオン界面活性剤として、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン変性シリコーンを含有する前記<26>に記載の長繊維不織布。
<28>
前記<1>〜<27>の何れか1項に記載の長繊維不織布の製造方法であって、
原料樹脂を溶融紡出し、長繊維をコンベア上に集積する工程、
得られた長繊維のウエブに前記繊維処理剤を塗布する工程、及び
前記繊維処理剤の塗布後に熱エンボス加工を施す工程
を具備する長繊維不織布の製造方法。
<29>
前記<1>〜<27>の何れか1項に記載の長繊維不織布又は前記<28>に記載の製造方法で得られた長繊維不織布を用いた吸収性物品。
<30>
前記<1>〜<27>の何れか1項に記載の長繊維不織布又は前記<28>に記載の製造方法で得られた長繊維不織布を、吸収性物品の表面シートに用いた前記<29>に記載の吸収性物品。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図6に示す方法で、前述した第3実施形態のスパンボンド不織布1Bを製造した。繊維処理剤としては、表1に示すものを用いた。エンボス部は、直径0.8mmの円形であり、中心間距離が2.3mmで、千鳥状に配置したものであった。また、熱エンボス加工は、熱エンボスロール及びフラットロールを135℃に加熱して行った。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。
表1に示す繊維処理剤は、以下の表2に示すとおりである。尚、表1中、成分(A)の配合量は、表2に示す成分(A)の「KM−903」の組成のうち、シリコーンのみの配合量のことであり、「KM−903」全体の配合量でないことに注意を要する(以下の表2についても同様である。)。
〔実施例2〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図3に示す方法で、前述した第1実施形態のスパンボンド不織布1を製造した。繊維処理剤、エンボスの加工条件、エンボスの形状、大きさや配置は、実施例1と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。
〔実施例3〕
実施例2において、エンボスロールとして、エンボス用の凸部が円錐状のものを用いる以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパンボンド不織布1Aを得た。繊維処理剤、エンボスの加工条件、エンボスの形状、大きさや配置は、実施例1及び2と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。また、貫通孔は、直径0.35mmの概円形であり、エンボス部の面積に対する貫通孔の面積率は20%であった。
〔実施例4〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図3に示す方法で、前述した第1実施形態のスパンボンド不織布1を製造した。エンボス部が、直径1.0mmの円形であり、中心間距離が2.0mmで、千鳥状に配置したものである以外は、繊維処理剤、エンボスの加工条件は、実施例2と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、39%であった。
〔実施例5〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図6に示す方法で、前述した第3実施形態のスパンボンド不織布1Bを製造した。繊維処理剤を変更し(C)成分に代えて(D)成分を用いた以外は、実施例1と同様にした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。
〔実施例6〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図3に示す方法で、前述した第1実施形態のスパンボンド不織布1を製造した。繊維処理剤、エンボスの加工条件、エンボスの形状、大きさや配置は、実施例5と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。
〔実施例7〕
実施例6において、エンボスロールとして、エンボス用の凸部が円錐状のものを用いる以外は、実施例6と同様にして、図5に示す形態のスパンボンド不織布1Aを得た。繊維処理剤、エンボスの加工条件、エンボスの形状、大きさや配置は、実施例6と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。また、貫通孔は、直径0.35mmの概円形であり、エンボス部の面積に対する貫通孔の面積率は20%であった。
〔実施例8〕
ポリプロピレン樹脂100%を原料として図3に示す方法で、前述した第1実施形態のスパンボンド不織布1を製造した。エンボス部が、直径1.0mmの円形であり、中心間距離が2.0mmで、千鳥状に配置したものである以外は、繊維処理剤、エンボスの加工条件は、実施例6と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、39%であった。
〔比較例1〕
表1に示す(A)成分を含まない繊維処理剤を用いる以外は、実施例1と同様にして、スパンボンド不織布を得た。繊維処理剤、エンボスの加工条件、エンボスの形状、大きさや配置は、実施例1と同様とした。得られたスパンボンド不織布のエンボス部の面積率は、19%であった。
〔評価〕
実施例及び比較例のスパンボンド不織布について、以下に示す方法で、液戻り量、液吸収時間及び液残り量を測定した。
<液戻り量及び液吸収時間>
測定は、吸収性物品の一例として乳幼児用おむつ(花王株式会社製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ)から表面シートを取り除き、その代わりに不織布の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。おむつを平面状に拡げ、表面シート上に、円筒状の注入部の付いたアクリル板をのせ、更にそのアクリル板上に錘をのせ、吸収体部分に対して2kPaの荷重を加えた。アクリル板に設けられた注入部は、内径36mmの円筒(高さ53mm)状をなし、アクリル板には、長手方向の1/3の部分、幅方向の中心軸に、該円筒状注入部の中心軸線が一致し、該円筒状注入部の内部とアクリル板の表面シート対向面との間を連通する内径36mmの貫通孔が形成されている。おむつの吸収性コアを覆っているコアラップシートの長手方向の腹側部分の先端から155mmの位置にアクリル板の円筒状注入部の中心軸が来るように配置し、人工尿40gを注入して吸収させ、10分間放置し、更に人工尿40gを注入して吸収させた。斯かる人工尿の注入操作を4回繰り返し、合計160gの人工尿をおむつに吸収させた。注入完了から10分静置した後に、前述の円筒および圧力を取り除いた。次いで、おむつにおける人工尿の注入点を中心としてアドバンテック社製のろ紙No.5C(100mm×100mm,質量測定W1)を16枚、更にその上に3.5kPaの圧力がかかるように荷重をかけた。2分経過後荷重を取り除き、人工尿を吸収したろ紙の質量(W2)を測定し、次式のようにして、液戻り量を算出した。
液戻り量(g)=加圧後のろ紙の質量(W2)−最初のろ紙の質量(W1)
また、この液戻り量の測定において、各注入回の人工尿の注入時間(注入開始から全量がおむつに吸収されるまでの時間)を液吸収時間とした。
液戻り量が少ないほど、液戻りが生じ難く高評価となり、また液吸収時間が短いほど、排泄液の透水性に優れ高評価となる。
人工尿の組成は次の通りである
尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.7954質量%、硫酸マグネシウム(七水和物)0.11058質量%、塩化カルシウム(二水和物)0.06208質量%、硫酸カリウム0.19788質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.0035質量%及びイオン交換水(残量)。
〔液残り量〕
測定は、吸収性物品の一例として乳幼児用おむつ(花王株式会社製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ)から表面シートを取り除き、その代わりに不織布の試験体(以下、不織布試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。おむつを平面状に拡げ、おむつの吸収性コアを覆っているコアラップシートの長手方向の腹側部分の先端から155mmの位置に、注入ポンプを用いて5g/秒の速度で人口尿を40g注入して吸収させ、10分間放置し、更に人工尿40gを注入して吸収させた。斯かる人工尿の注入操作を4回繰り返し、合計160gの人工尿をおむつに吸収させた。注入完了から10分静置した後に、注入点を中心に10cm×10cmの表面シートを剥がし、その重量(W4)を測定する。その後、乾燥機を用いて、その表面シートを105℃で、1時間乾燥させて、その重量(W3)を測定し、次式のようにして、液残り量を算出した。
液残り量(g)=160g注入後の表面材の質量(W4)−乾燥させた表面材の質量(W3)
Figure 2015132038
Figure 2015132038
表1に示す実施例1及び比較例1の結果の比較から、本発明の長繊維不織布を、表面シートとして用いた吸収性物品は、液の透過性に優れ、液の戻り難さも向上していることが判る。
また、実施例2及び実施例3の結果から明らかなように、エンボス部の親水度を低下させた本発明の長繊維不織布は、液の透過性に一層優れ、透過した液の液戻りのしにくさも向上していることが判り、吸収性物品の表面シートとして用いた場合、供給された液が、肌当接面に残りにくく、また表面シートを透過した液が肌当接面に戻りにくいことも判る。また、実施例2と実施例3との比較により、エンボス部に貫通孔を設けることにより、繰り返し液が供給されたときにも良好な液透過性が維持されることが判る。また、実施例2と実施例4との比較により、エンボス部の面積率は19%程度よりも39%程度とした方が、液残り量や液戻り量の低減により有効であることがわかる。
また、実施例1〜4は、繊維処理剤中の界面活性剤として2種のアニオン界面活性剤である(B)成分と(C)成分との組み合わせを用いた例、実施例5〜8は、繊維処理剤中の界面活性剤として1種のアニオン界面活性剤である(B)成分と1種のノニオン界面活性剤である(D)成分との組み合わせを用いた例であるところ、液残り量、液戻り量、液吸収時間に関して、両者は同様の傾向を示した。
1,1A,1B スパンボンド不織布
2 エンボス部
3 エンボス部以外の部分(非エンボス部)
10A 長繊維のウエブ
5 繊維処理剤

Claims (14)

  1. 熱可塑性繊維からなる長繊維不織布であって、
    繊維処理剤が付着しており、
    前記繊維処理剤が、ポリオルガノシロキサン及び界面活性剤を含有する長繊維不織布。
  2. 前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも2種である請求項1に記載の長繊維不織布。
  3. 前記界面活性剤としてアニオン界面活性剤を2種含有し、その2種のアニオン界面活性剤が、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及び下記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤である請求項2に記載の長繊維不織布。
    Figure 2015132038
    (式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいても良い、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R1及びR2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいても良い、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO3M、―OSO3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
  4. 前記一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤が、ジアルキルスルホン酸又はその塩である請求項3に記載の長繊維不織布。
  5. 前記界面活性剤としてアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤をそれぞれ少なくとも1種含有する請求項2に記載の長繊維不織布。
  6. 前記アニオン界面活性剤がリン酸エステル型のアニオン界面活性剤であり、前記ノニオン界面活性剤がポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルである請求項5に記載の長繊維不織布。
  7. 前記ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルが前記繊維処理剤の全質量に対して20質量%以下の割合で含有されている請求項6に記載の長繊維不織布。
  8. 前記ポリオルガノシロキサンが前記繊維処理剤の全質量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含有されている請求項1〜7の何れか1項に記載の長繊維不織布。
  9. 熱圧着により長繊維どうしが接合したエンボス部を有し、該エンボス部の親水度が、非エンボス部の親水度よりも低い請求項1〜8の何れか1項に記載の長繊維不織布。
  10. 前記エンボス部の面積率が25%以上60%以下である請求項9に記載の長繊維不織布。
  11. 平面視における前記エンボス部内に貫通孔を有する請求項9又は10に記載の長繊維不織布。
  12. 請求項9〜11の何れか1項に記載の長繊維不織布の製造方法であって、
    原料樹脂を溶融紡出し、長繊維をコンベア上に集積する工程、
    得られた長繊維のウエブに前記繊維処理剤を塗布する工程、及び
    前記繊維処理剤の塗布後に熱エンボス加工を施す工程
    を具備する長繊維不織布の製造方法。
  13. 請求項1〜11の何れか1項に記載の長繊維不織布又は請求項12の製造方法で得られた長繊維不織布を用いた吸収性物品。
  14. 請求項1〜11の何れか1項に記載の長繊維不織布又は請求項12の製造方法で得られた長繊維不織布を、吸収性物品の表面シートに用いた請求項13に記載の吸収性物品。
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