JP2015129442A - 鞍乗型車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの燃焼が不安定になったことを精度良く検出することができる鞍乗型車両を提供する。【解決手段】自動二輪車1が搭載しているエンジン13において燃焼が不安定になると、吸気管29内の負圧の吸気圧力が大気圧に近づくように高くなる現象が生じる。判定部77は、吸気管29内の圧力を検出するための吸気圧力センサ65により検出された吸気管圧力の変動に基づいて、燃焼が不安定となったことを精度良く判定することができる。【選択図】図5
Description
本発明は、ライダーが車両にまたがった状態で走行する鞍乗型車両に係り、特に、エンジンにおける燃焼が不安定となったことを検出する技術に関する。
エンジンを動力源とした自動二輪車等の鞍乗型車両において、環境対策が求められている。具体的には、排気ガスの浄化性能を向上させたり、燃費を向上させたりすること等による対策が挙げられる。このような対策においては、燃焼の安定性を判定することが重要である。すなわち、燃焼が不安定になった場合には、未燃ガスが排出ガス(tail pipe emission)として排出されることになり、排出ガスの浄化性能、燃費のいずれにも影響を与える。このため、燃焼が不安定になったことを精度良く検出することで、燃焼を安定化させる制御を精度良く行うことができ、排出ガスの浄化性能向上、燃費向上などにつながる。
排出ガスの浄化性能を悪化させる要因としては、例えば、失火がある。この失火を防止することにより環境対策を行う自動二輪車(第1の装置)として、例えば、クランクパルスセンサと、失火検出部とを備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。クランクパルスセンサは、エンジンの回転速度を検出する。失火検出部は、クランクパルスセンサから出力されるクランクパルスの時間間隔に基づいてエンジンの回転速度を算出するとともに、所定の二つのクランク角における回転速度の差分に基づいて失火を検出する。
このように構成されている第1の装置は、エンジンの回転数の差分が所定閾値を超える場合には、失火検出部が失火発生と判断し、エンジンの動作制限を行わせるようになっている。
ところで、触媒を搭載した自動二輪車では、触媒を早期活性化させるために、吸入空気量を増加させ、かつ、点火時期を遅角させる制御を行っている。このような制御においては、製品のバラツキや失火などの要因で燃焼が不安定になると、吸入空気量の増加を減じ、かつ、点火時期を進角させることで燃焼を安定させるための制御が必要となる。
このような制御例として、鞍乗型車両ではないが、例えば、回転速度センサと、クランク角センサと、運転状態判別手段とを備えている自動車が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。回転速度センサは、エンジンの回転速度を検出する。クランク角センサは、出力軸の角度を検出する。運転状態判別手段は、回転速度センサやクランク角センサからの出力信号に基づいて、エンジンの運転状態を判別する。
このように構成されている第2の装置は、出力軸の回転速度変化が所定値よりも大きい場合には、運転状態判別手段が燃焼性の悪化であると判断し、吸入空気量のフィードバック制御を停止させるなどの制御を行って燃焼性の悪化を防止するようになっている。
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、自動二輪車などの鞍乗型車両は、通常時においても自動車に比較してエンジンの回転速度の変動が大きいという特性を有する。したがって、失火や燃焼性の悪化による回転速度変動と、通常運転時による回転速度変動との切り分けが難しいので、エンジンの燃焼が不安定になったことを精度良く検出することが困難であるという問題がある。
すなわち、自動二輪車などの鞍乗型車両は、通常時においても自動車に比較してエンジンの回転速度の変動が大きいという特性を有する。したがって、失火や燃焼性の悪化による回転速度変動と、通常運転時による回転速度変動との切り分けが難しいので、エンジンの燃焼が不安定になったことを精度良く検出することが困難であるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃焼不安定の検出手法を工夫することにより、エンジンの燃焼が不安定になったことを従来よりも精度良く検出することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、燃焼室を備えたエンジンと、前記燃焼室に混合気を導入するための吸気管と、前記吸気管に取り付けられ、前記燃焼室に供給する混合気の量を調整するための空気絞り弁と、前記吸気管内における前記空気絞り弁より下流領域の吸気圧力を吸気管圧力として検出する吸気管圧力検出部と、前記吸気管圧力の変動に基づいて前記エンジンにおける燃焼が不安定となったことを判定する判定部と、を備えているものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、燃焼室を備えたエンジンと、前記燃焼室に混合気を導入するための吸気管と、前記吸気管に取り付けられ、前記燃焼室に供給する混合気の量を調整するための空気絞り弁と、前記吸気管内における前記空気絞り弁より下流領域の吸気圧力を吸気管圧力として検出する吸気管圧力検出部と、前記吸気管圧力の変動に基づいて前記エンジンにおける燃焼が不安定となったことを判定する判定部と、を備えているものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、エンジンの燃焼室において燃焼不安定が生じると、吸気管内の空気絞り弁より下流領域における負圧の吸気圧力が大気圧に近づくように高くなる現象が生じる。したがって、判定部は、吸気管圧力検出部により検出された吸気管圧力の変動に基づいて、燃焼が不安定となったことを精度良く判定することができる。
また、本発明において、前記吸気管圧力検出部は、前記吸気管のうち、前記空気絞り弁と前記燃焼室との間に取り付けられていることが好ましい(請求項2)。
空気絞り弁と燃焼室との間に吸気管圧力検出部が取り付けられているので、燃焼室に隣接した吸気管圧力の変動を精度良く検出することができる。
また、本発明において、前記空気絞り弁は、前記エンジンの上方に配置されていることが好ましい(請求項3)。
エンジンの上方に空気絞り弁が配置されているので、燃焼室までの距離を短くできる。これにより、吸気管圧力の測定対象となる体積が小さくなり、燃焼不安定による吸気管圧力の変動感度を高くできるので、燃焼不安定となったことを精度良く検出できる。
また、本発明において、前記空気絞り弁は、側面視にて、前記エンジンの後端よりも前方に配置されていることが好ましい(請求項4)。
側面視にてエンジンの後端よりも前方に空気絞り弁が配置されているので、エンジンの全長を抑制でき、小型化を図ることができる。
また、本発明において、前記空気絞り弁は、側面視にて、前記エンジンの前端と後端との間に配置されていることが好ましい(請求項5)。
側面視にてエンジンの前端と後端との間に空気絞り弁が配置されているので、エンジンの全長を抑制でき、小型化を図ることができる。
また、本発明において、前記吸気管は、前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの間の体積が、前記エンジンの排気量より小さいことが好ましい(請求項6)。
吸気管は、空気絞り弁と燃焼室の吸気バルブとの間の体積が、エンジンの排気量より小さいので、吸気管圧力の測定対象となる体積が小さくなる。したがって、燃焼不安定による吸気管圧力の変動感度を高くできるので、燃焼不安定となったことを精度良く検出できる。
また、本発明において、前記エンジンは、前方に傾斜した姿勢のシリンダを備え、前記空気絞り弁は、前記シリンダの後方であって、かつ、前記エンジンのクランクケースの上方に配置されていることが好ましい(請求項7)。
エンジンが前方に傾斜した姿勢のシリンダを備え、空気絞り弁がシリンダの後方であって、かつ、エンジンのクランクケースの上方に配置されているので、エンジンの小型化を図ることができる。
また、本発明において、前記エンジンは、複数個のシリンダを備え、前記吸気管は、前記シリンダごとに設けられ、各吸気管の前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの間の体積が、前記エンジンの1気筒あたりの排気量より小さいことが好ましい(請求項8)。
エンジンが複数個のシリンダを備え、吸気管がシリンダごとに設けられ、空気絞り弁が吸気管ごとに設けられているので、吸気管圧力の測定対象となる体積が小さくなる。したがって、燃焼不安定による吸気管圧力の変動感度を高くできるので、燃焼不安定となったことを精度良く検出できる。
また、本発明において、前記エンジンは、一つのシリンダを備え、前記吸気管は、前記シリンダに設けられ、吸気管の前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの体積が、前記エンジンの排気量より小さいことが好ましい(請求項9)。
エンジンが一つのシリンダを備え、吸気管がシリンダに設けられ、空気絞り弁が吸気管に設けられているので、吸気管圧力の測定対象となる体積が小さくなる。したがって、燃焼不安定による吸気管圧力の変動感度を高くできるので、燃焼不安定となったことを精度良く検出できる。
また、本発明において、前記各吸気管に一端部が連通接続され、他端部が集合部で連結された計測管を備え、前記吸気管圧力検出部は、前記計測管の集合部に取り付けられていることが好ましい(請求項10)。
各吸気管に一端部が連通接続され、他端部が集合部で連結された計測管の集合部に吸気管圧力検出部が取り付けられているので、一つの吸気管圧力検出部で吸気管圧力を測定できる。したがって、コストを抑制することができる。
また、本発明において、前記エンジンは、燃焼室から排気ガスを排出するための排気管を備え、前記排気管は、排気ガスを浄化するための触媒を備え、前記触媒を早期活性化させるための早期活性化制御を行うとともに、前記判定部が燃焼不安定と判定した場合には早期活性化制御を抑制または中止する制御部を備えていることが好ましい(請求項11)。
エンジンが排気管に触媒を備えている場合には、触媒が短時間で浄化作用を開始できるように、制御部が早期活性化制御を行う。このときに燃焼不安定が生じたと判定部が判定した場合には、制御部が早期活性化制御を抑制または中止して燃焼の安定化を開始することができる。なお、早期活性化制御を抑制とは、早期活性化のために排気ガスの昇温作用を完全に停止させるのではなく、低下させることをいう。
また、本発明において、前記制御部は、前記吸気管から導入する空気量を増やす、または、前記燃焼室における点火時期の遅角量を増やすことで前記早期活性化制御を開始させることが好ましい(請求項12)。
制御部が吸気管から導入する空気量を増やすと、これに伴い点火時期が遅角し、燃料が増量されて排気ガスの温度が昇温される。また、制御部が点火時期の遅角量を増やすと、これに伴い空気量が増え、燃料が増量されて排気ガスの温度が昇温される。いずれの手法であっても早期活性化制御を開始させることができる。
本発明に係る鞍乗型車両によれば、エンジンの燃焼室において燃焼不安定が生じると、吸気管内のスロットルより下流領域における負圧の吸気圧力が大気圧に近づくように高くなる現象が生じる。したがって、判定部は、吸気管圧力検出部により検出された吸気管圧力の変動に基づいて、燃焼が不安定となったことを精度良く判定することができる。
本発明における鞍乗型車両として自動二輪車を例にとって以下に説明する。
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係る実施例1に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図である。
図1は、実施例1に係る実施例1に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図である。
本実施例における自動二輪車1は、メインフレーム3と、前輪5と、後輪7と、燃料タンク9と、シート11と、エンジン13とを備えている。メインフレーム3は、自動二輪車1の骨格を形成し、前方にヘッドパイプ15を備え、後方に後方フレーム17を備えている。ヘッドパイプ15には、ステアリングハンドル19が設けられている。ステアリングハンドル19は、ヘッドパイプ15の軸線周りに回動自在に取り付けられたフロントフォーク21を備えている。フロントフォーク21は、下端部に前輪5が回転可能に取り付けられている。シート11は、メインフレーム3の上部、及びメインフレーム3の後方に延出された後方フレーム17の上部に取り付けられている。メインフレーム3の上部であって、ステアリングハンドル19の後方かつシート11の前方には、燃料タンク9が取り付けられている。メインフレーム3は、下部にエンジン13を搭載している。メインフレーム3及びエンジン13の後方には、リアアーム23の一端部がメインフレーム3に対して揺動可能に取り付けられている。リアアーム23の他端部には、後輪7が回転可能に取り付けられている。後輪7は、リアアーム23に沿って配置された伝達機構23aにより、エンジン13の駆動力を伝達される。メインフレーム3の上部かつ燃料タンク9の下部には、エンジン13の制御を行うためのエンジンコントロールユニット24(以下、ECUと称する)が搭載されている。
ここで図2,3を参照して、エンジン13について説明する。なお、図2は、実施例1に係る自動二輪車のエンジンの縦断面図であり、図3は、実施例1に係る自動二輪車のエンジンの平面図である。図2では、右方向(シリンダヘッド37方向)が自動二輪車1の前方に相当し、図3では、上方向(シリンダヘッド37方向)が自動二輪車1の前方に相当する。
本実施例に係るエンジン13は、並列4気筒である。エンジン13は、クランクケース25と、シリンダ27と、吸気管29と、排気管31とを備えている。クランクケース25は、クランク軸33を支持し、その上部にシリンダ27とシリンダヘッド37とを取り付けられている。シリンダ27は、直線的に往復移動可能なピストン39を内部に備え、ピストン39は、コンロッド41によってクランク軸33に連結され、ピストン39の直線往復運動がクランク軸33の回転運動に変換される。シリンダ27は、クランクケース25に対して前方(図2の右方向)に傾斜した姿勢で設けられている。シリンダヘッド37は、シリンダ27とピストン39とにより、燃焼室43を形成している。シリンダヘッド37は、燃焼室43に連通した吸気ポート45と排気ポート47とを備えている。吸気ポート45には、燃焼室43を開閉する吸気バルブ49が取り付けられ、排気ポート47には、燃焼室43を開閉する排気バルブ51が取り付けられている。排気ポート47に連通接続された排気管31は、排気ポート47から離れた部位に触媒CAを備えている。触媒CAは、燃焼室43から排気ポート47を経て排気管31に排出された排気ガスを化学反応によって浄化する。
吸気ポート45には、吸気管29の一端側が連通接続されている。吸気管29は、その他端側がエアクリーナ53に連通接続されている。吸気ポート45には、エアクリーナ53を介して空気が吸入される。吸気管29には、フューエルインジェクタ55が取り付けられている。フューエルインジェクタ55は、ECU24で演算されて送られてきた噴射信号に基づいて燃料を噴射する。吸気管29のうちフューエルインジェクタ55よりも上流方向には、スロットル57が取り付けられている。スロットル57は、吸入空気量を調整するスロットルバルブ59(空気絞り弁)を吸気管29内に備えている。
スロットル57は、エンジン13の上方に配置され、エンジン13を側面から見た場合に、シリンダ27の後方(図2の左方向)であって、かつ、クランクケース25の上方に配置されている。また、スロットル57は、エンジン13を側面から見た場合に、エンジン13の後端よりも前方に配置されている。このような位置にスロットル57が配置されているので、燃焼室43までの距離を短くできる。したがって、吸気管圧力の測定対象となる体積が小さくなり、燃焼不安定による吸気管圧力の変動感度を高くできるので、燃焼不安定を検出できるまでの応答性を高くできる。
なお、スロットル57は、スロットルバルブ59と吸気圧力センサ65とが一体的に構成されたものであってもよい。
図3に示すように、エンジン13は、計測管61を備えている。計測管61は、一端部が各吸気管29に開口62で接続されており、計測管61の他端部が一つの集合部63に接続されている。計測管61の一端部は、吸気管29におけるスロットル57と燃焼室43との間に接続されている。集合部63には、圧力を検出するために一つの吸気圧力センサ65が取り付けられている。この吸気圧力センサ65は、各吸気管29における吸気バルブ49からスロットルバルブ59の間における吸気圧力を吸気管圧力として検出する。吸気圧力センサ65で計測された吸気管圧力は、ECU24に出力される。吸気圧力センサ65は、計測管61を介して各吸気管29のうちのスロットル57と燃焼室43との間に取り付けられているので、コンパクト化を図ることができる。
なお、上述した吸気圧力センサ65が本発明における「吸気管圧力検出部」に相当する。
本実施例における自動二輪車1のエンジン13は、排気量が約1300ccである4気筒エンジンである。各気筒のスロットル57のスロットルバルブ59から吸気バルブ49までの体積の合計が約400cc〜600ccとなっている。つまり、各気筒に対応する各吸気管におけるスロットル57のスロットルバルブ59から吸気バルブ49までの体積がエンジン13の1気筒あたりの排気量よりも小さくなっている。
なお、上述したエンジン13の排気量と吸気管29の体積の求め方における考え方は次のとおりである。多気筒であって、スロットルバルブ59が気筒毎に設けられている構造のエンジン13の場合には、スロットルバルブ59から吸気バルブ49までの体積を求める。多気筒であって、スロットルバルブ59が一つだけ設けられ、吸気管29が分岐された構造のエンジン13の場合には、吸気管29の共通部分における体積を気筒数で除し、吸気管29の分岐部以降は気筒毎に体積を求める。但し、エンジン13が多気筒である場合には、総排気量と総吸気管体積で比較しても良いし、1気筒あたりの排気量と吸気管体積で比較しても良い。
次に、図4を参照する。なお、図4は、実施例1に係る自動二輪車のクランク角検出部を示す図である。
クランクケース25の右方向内部には、クランク角検出部67が配置されている。クランク角検出部67は、シグナルロータ69と、センサ71とを備えている。シグナルロータ69は、クランク軸33の回転に連動して回転軸P周りで回転するようにクランクケース25内に取り付けられている。シグナルロータ69は、外観が円盤状を呈し、外周面から突出して形成された歯69aが形成されている。この例におけるシグナルロータ69は、合計11個の歯69aを備え、各歯69aがシグナルロータ69の回転中心P周りに30°の角度ごとに形成されている。但し、11個目の歯69aから30°の位置には12個目に相当する歯69aが形成されておらず、この箇所が欠歯部69bとなっている。欠歯部69bを検出することにより、ピストン39が上死点となるタイミングを正確に判断することができる。
センサ71は、例えば、ピックアップコイルで構成されている。シグナルロータ69が回転すると、各歯69aとセンサ71との距離が変化するので、欠歯部69bを除いた歯69aごとにパルス状の信号がセンサ71から出力される。この信号が、クランク角信号である。
図5を参照する。なお、図5は、実施例1に係る自動二輪車のECUを含むブロック図である。
ECU24は、データ処理部73と、判定部77と、閾値記憶部79と、エンジン制御部81とを備えている。データ処理部73は、クランク角検出部67のセンサ71から出力されるクランク角信号と、吸気圧力センサ65から出力される吸気管圧力信号とを受信して、クランク角と吸気管圧力とを関連づける。
閾値記憶部79は、エンジン13の燃焼が不安定になったことを判断するための閾値を予め記憶する。判定部77は、データ処理部73から出力された吸気管圧力の処理値と、閾値記憶部79の閾値とに基づいて、エンジン13の燃焼が不安定になったか否かを判定する。判定部77は、燃焼が不安定になったと判定した場合には、エンジン制御部81に対して燃焼の安定化を図る制御を行わせる。エンジン制御部81は、スロットル開度センサ(不図示)からスロットル開度信号を受信し、エンジン13の回転速度信号を回転速度センサ(不図示)から受信してエンジン13を制御するとともに、判定部77からの指示に応じてエンジン13における燃焼の安定化を図る制御を行う。
また、エンジン制御部81は、燃焼の安定化を図る制御の他に、通常運転時におけるエンジン13の制御や、エンジン13を始動した際における触媒CAの早期活性化制御を行う。触媒CAの早期活性化の制御は、例えば、燃焼室43における点火のタイミングを遅らせるとともに、吸気管29からの導入する空気量を増やすものである。このように、空気量を増やすことにより、点火時期の遅角量が増え、燃料が増量されて排気ガスが昇温されて触媒CAが活性化される。
なお、早期活性化制御のために、空気量を増やすのではなく、燃焼室43における点火時期の遅角量を増やすようにしてもよい。このように、点火時期の遅角量を増やすことにより、空気量が増え、燃料が増量されて排気ガスが昇温されて触媒CAが活性化される。
次に、図6〜図8を参照して、エンジン13における吸気管圧力の変動例について説明する。なお、図6は、正常時における吸気管圧力の変動例を示すグラフであり、図7は、失火時における吸気管圧力の変動例を示すグラフであり、図8は、図7のグラフにおける時間軸を変更したグラフである。
図6に示すように、エンジン13が正常運転である場合には、このエンジン13が4サイクルエンジンであって4個のシリンダ27を備えているので、クランク軸33が2回転する間に4つの燃焼室43で爆発が生じ、クランク角が720°の範囲において吸気管圧力に4つの波(負圧方向への変動)が生じる。エンジン13が正常運転状態にあることは、このグラフにおけるエンジン回転速度がほぼ一定であることからもわかる。
一方、図7に示すように、エンジン13の4個のシリンダ27のうち、1つが燃焼不安定となって失火している場合には、クランク角720°の範囲において吸気管圧力に3波しか生じない。エンジン13が失火により燃焼不安定となっていることは、このグラフにおけるエンジン回転速度が、吸気管圧力の消失した4波付近から、200rpmほど低下していることからもわかる。
なお、図8は、図7のグラフにおける時間軸を変更したグラフであるが、このグラフから、閾値を適宜に設定することにより、吸気管圧力が高くなったことを判定可能であることがわかる。
このようにエンジン13における燃焼の不安定が生じた場合には、エンジン13における回転速度の変化率が大きくなり、これに伴って吸気管29内のスロットル57より下流領域における負圧の吸気管圧力が大気圧に近づくように高くなる現象が生じることを発明者は見出した。この現象を利用することにより、エンジン13の回転速度の変化率を用いることなく、検出された吸気管圧力の変動に基づいて、燃焼が不安定となったことを精度良く判定することができることを発明者は知見した。
なお、上述した判定部77は、吸気管圧力の処理値と、予め設定されている閾値とに基づいて燃焼不安定であるか否かを判定する。処理値とは、例えば、吸気管圧力の移動平均値や加重平均などの平均化処理さえた値を用いても良いし、吸気管圧力をそのまま用いても良い。データの処理方式は、様々な方式があり、複数の処理方式を複合的に用いても良い。
なお、上述した燃焼不安定の判定は、始動時や、ライダーによるスロットル57の開度変化が生じている時は、判定精度が低下する恐れがあるので、実施しないことが好ましい。つまり、スロットル57の開度、エンジン13の回転速度の変動が一定の範囲内に収束するまでは、吸気管圧力を安定的に測定できない。したがって、誤判定を防止するために、判定部77は、吸気管圧力が安定する所定時間が経過するまでは、燃焼不安定の判定を行わないようにするのが好ましい。
また、始動時に触媒CAの早期活性化制御を行うことがある。この場合には、通常時よりも吸気管29からの空気量を増大させ、点火時期を遅角する制御をエンジン制御部81が行う。そして、触媒CAの早期活性化制御を行っている際に燃焼の不安定が判定された場合には、エンジン制御部81は、スロットル57のスロットルバルブ59を閉じる方向に動作させ、かつ、点火時期を進角させることで燃焼の安定化を図る制御を行う。つまり、触媒CAの早期活性化制御を抑制または停止させる。ここでいう、早期活性化制御を抑制とは、早期活性化のために排気ガスの昇温作用を完全に停止させるのではなく、排気ガスの昇温作用を低下させることである。点火時期が空気量に応じて制御される場合には、空気量を減少させることでこれに応じて点火時期が進角される。空気量が点火時期に応じて制御される場合には、点火時期を進角させることでこれに応じて空気量が減少する。このように、空気量と点火時期が連動して制御される場合には、どちらかは一方の目標値のみを制御すれば、空気量と点火時期の両者が制御される。
本実施例によると、エンジン13において燃焼が不安定になると、吸気管29内の負圧の吸気圧力が大気圧に近づくように高くなる現象が生じる。したがって、判定部77は、吸気圧力センサ65により検出された吸気管圧力の変動に基づいて、燃焼が不安定となったことを精度良く判定することができる。
また、上述した燃焼不安定の判定手法は、スロットル57のスロットルバルブ59から吸気バルブ49までの体積がエンジン13の排気量よりも小さいので、燃焼不安定に伴う吸気管圧力の変動を捕らえやすく、自動二輪車1に好適である。
次に、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。
図13は、実施例2に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図であり、図14は、実施例2に係る自動二輪車のエンジンを含む一部の左側面図である。
図13は、実施例2に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図であり、図14は、実施例2に係る自動二輪車のエンジンを含む一部の左側面図である。
本実施例に係る自動二輪車1Aは、ライダーがフロア上に両足を載せて乗車するスクータ型である。この自動二輪車1Aは、メインフレーム3と、前輪5と、後輪7と、燃料タンク9と、シート11と、エンジン13と、ヘッドパイプ15と、ステアリングハンドル19と、フロントフォーク21とを備えている。
この自動二輪車1Aのエンジン13は、シリンダ27が前方に水平近くまで深く傾斜している。エンジン13は、吸気管29のうち、スロットル57より下流に直接的に吸気圧力センサ65が取り付けられている。スロットル57は、エンジン13の上方に配置され、側面視ではエンジン14の後端よりも前方に配置され、エンジン13の前端と後端の間に配置されている。なお、吸気圧力センサ65は、実施例1と同様に計測管61を介して吸気管29に取り付けるようにしてもよい。
本実施例における自動二輪車1Aは、吸気圧力センサ65からの吸気管圧力と、クランク角とがECU24に与えられ、上述した手法によりエンジン13の燃焼の安定性を精度良く判定できる。
本実施例における自動二輪車1Aのエンジン13は、排気量が約115ccである単気筒エンジンである。スロットル57から吸気バルブ49までの体積は約50cc〜80ccとなっている。つまり、スロットル57から吸気バルブ49までの体積が排気量よりも小さくなっている。このような小排気量のエンジン13であっても、実施例1と同様の効果を奏する。
次に、図面を参照して本発明の実施例3について説明する。
図15は、実施例3に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図であり、図16は、実施例3に係る自動二輪車のエンジンの一部を示す左側面図である。
図15は、実施例3に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図であり、図16は、実施例3に係る自動二輪車のエンジンの一部を示す左側面図である。
本実施例における自動二輪車1Bは、上述した実施例1と同タイプであるが、実施例1に比較して小排気量である。この自動二輪車1Bは、メインフレーム3と、前輪5と、後輪7と、燃料タンク9と、シート11と、エンジン13と、ヘッドパイプ15と、ステアリングハンドル19と、フロントフォーク21とを備えている。
この自動二輪車1Bのエンジン13は、吸気管29に直接的に吸気圧センサ65が取り付けられている。スロットル57は、エンジン13のクランクケース25の上方に配置され、側面視ではエンジン14の後端よりも前方に配置され、エンジン13の前端と後端の間に配置されている。なお、吸気圧力センサ65は、実施例1と同様に計測管61を介して吸気管29に取り付けるようにしてもよい。
本実施例における自動二輪車1Bも、上述した実施例1,2と同様に、吸気圧力センサ65からの吸気管圧力と、クランク角とがECU24に与えられ、上述した手法によりエンジン13の燃焼の安定性を精度良く判定できる。
本実施例における自動二輪車1Bのエンジン13は、排気量が約250ccであり、スロットル57から吸気バルブ49までの体積が約100cc〜150ccとなっている。つまり、スロットル57から吸気バルブ49までの体積が排気量よりも小さくなっている。このように、実施例1と実施例2の中間的な排気量のエンジン13であっても、実施例1,2と同様の効果を奏する。
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例1〜3では、4個のシリンダ27(4気筒)、1個のシリンダ27(単気筒)のエンジン13を備えた自動二輪車1,1A,1Bを例にとって説明したが、本発明はこのようなエンジン13を搭載した自動二輪車1,1A,1Bに限定されるものではない。例えば、2個のシリンダ27(2気筒)、3個のシリンダ(3気筒)のエンジン13を備えた自動二輪車であっても適用することができる。また、シリンダ27が並列配置されたものである必要もなく、V型配置や水平対向配置など、燃焼室43を備えたエンジン13であれば形式に関係なく本発明を適用することができる。
(2)上述した実施例1では、吸気管圧力の移動平均値を求める際に、クランク角の所定範囲を6点(クランク角360°)とした場合を例にとって説明した。しかしながら、
エンジン13のシリンダ27の個数により、1サイクル内における吸気管圧力の変動回数が変わるので、クランク角の所定範囲はシリンダ27の個数によって決定することが好ましい。このようにすることにより、燃焼不安定時における吸気管圧力と、燃焼安定時における吸気管圧力との差を安定させることができるので、燃焼不安定の判定を安定させることができる。
エンジン13のシリンダ27の個数により、1サイクル内における吸気管圧力の変動回数が変わるので、クランク角の所定範囲はシリンダ27の個数によって決定することが好ましい。このようにすることにより、燃焼不安定時における吸気管圧力と、燃焼安定時における吸気管圧力との差を安定させることができるので、燃焼不安定の判定を安定させることができる。
(3)上述した実施例1〜3では、吸気管圧力のみに基づいて燃焼不安定の判定を行うこととした。しかしながら、吸気管圧力に加えて、従来から行われている回転速度センサのパルス出力を検出することとし、吸気管圧力の変動とエンジンの回転速度の変動に基づいて燃焼不安定を判定しても良い。これにより、より高精度で燃焼不安定を検出することができる。
(4)上述した実施例1では、4気筒のエンジン13が等間隔爆発であるものとして説明したが、本発明は不等間隔爆発のエンジン13であっても適用することができる。
(5)上述した各実施例1〜3では、鞍乗型車両としてライダーがまたがって乗車する自動二輪車1,1A,1Bを例にとって説明した。しかしながら、本発明はこのような種類の鞍乗型車両に限定されるものではなく、例えば、ライダーが足をそろえた姿勢で乗車するスクータタイプ、ATV(All Terrain Vehicle(全地形型車両)四輪バギー)、スノーモービルなどにおいても適用することができる。
1,1A,1B … 自動二輪車
3 … メインフレーム
13 … エンジン
24 … ECU
25 … クランクケース
27 … シリンダ
29 … 吸気管
31 … 排気管
33 … クランク軸
37 … シリンダヘッド
43 … 燃焼室
49 … 吸気バルブ
51 … 排気バルブ
55 … フューエルインジェクタ
57 … スロットル
59 … スロットルバルブ
61 … 計測管
62 … 開口
63 … 集合部
65 … 圧力センサ
67 … クランク角検出部
69 … シグナルロータ
69a … 歯
69b … 欠歯部
71 … センサ
73 … データ処理部
77 … 判定部
79 … 閾値記憶部
81 … エンジン制御部
3 … メインフレーム
13 … エンジン
24 … ECU
25 … クランクケース
27 … シリンダ
29 … 吸気管
31 … 排気管
33 … クランク軸
37 … シリンダヘッド
43 … 燃焼室
49 … 吸気バルブ
51 … 排気バルブ
55 … フューエルインジェクタ
57 … スロットル
59 … スロットルバルブ
61 … 計測管
62 … 開口
63 … 集合部
65 … 圧力センサ
67 … クランク角検出部
69 … シグナルロータ
69a … 歯
69b … 欠歯部
71 … センサ
73 … データ処理部
77 … 判定部
79 … 閾値記憶部
81 … エンジン制御部
Claims (12)
- 燃焼室を備えたエンジンと、
前記燃焼室に混合気を導入するための吸気管と、
前記吸気管に取り付けられ、前記燃焼室に供給する混合気の量を調整するための空気絞り弁と、
前記吸気管内における前記空気絞り弁より下流領域の吸気圧力を吸気管圧力として検出する吸気管圧力検出部と、
前記吸気管圧力の変動に基づいて前記エンジンにおける燃焼が不安定となったことを判定する判定部と、
を備えている鞍乗型車両。 - 請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記吸気管圧力検出部は、前記吸気管のうち、前記空気絞り弁と前記燃焼室との間に取り付けられている鞍乗型車両。 - 請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記空気絞り弁は、前記エンジンの上方に配置されている鞍乗型車両。 - 請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記空気絞り弁は、側面視にて、前記エンジンの後端よりも前方に配置されている鞍乗型車両。 - 請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記空気絞り弁は、側面視にて、前記エンジンの前端と後端との間に配置されている鞍乗型車両。 - 請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記吸気管は、前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの間の体積が、前記エンジンの排気量より小さい鞍乗型車両。 - 請求項1から6のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記エンジンは、前方に傾斜した姿勢のシリンダを備え、
前記空気絞り弁は、前記シリンダの後方であって、かつ、前記エンジンのクランクケースの上方に配置されている鞍乗型車両。 - 請求項6に記載の鞍乗型車両において、
前記エンジンは、複数個のシリンダを備え、
前記吸気管は、前記シリンダごとに設けられ、
各吸気管の前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの間の体積が、前記エンジンの1気筒あたりの排気量より小さい鞍乗型車両。 - 請求項6に記載の鞍乗型車両において、
前記エンジンは、一つのシリンダを備え、
前記吸気管は、前記シリンダに設けられ、
吸気管の前記空気絞り弁と前記燃焼室の吸気バルブとの体積が、前記エンジンの排気量より小さい鞍乗型車両。 - 請求項8に記載の鞍乗型車両において、
前記各吸気管に一端部が連通接続され、他端部が集合部で連結された計測管を備え、
前記吸気管圧力検出部は、前記計測管の集合部に取り付けられている鞍乗型車両。 - 請求項1から10のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記エンジンは、燃焼室から排気ガスを排出するための排気管を備え、
前記排気管は、排気ガスを浄化するための触媒を備え、
前記触媒を早期活性化させるための早期活性化制御を行うとともに、前記判定部が燃焼不安定と判定した場合には早期活性化制御を抑制または中止する制御部を備えている鞍乗型車両。 - 請求項11に記載の鞍乗型車両において、
前記制御部は、前記吸気管から導入する空気量を増やす、または、前記燃焼室における点火時期の遅角量を増やすことで前記早期活性化制御を開始させる鞍乗型車両。
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JPWO2017158838A1 (ja) * | 2016-03-18 | 2018-10-04 | 富士通株式会社 | エンジントルク推定装置、エンジン制御システム及びエンジントルク推定方法 |
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