JP2015128815A - 薄壁包囲要素を固定するための固定治具 - Google Patents

Abstract

【課題】ロケットノーズ円錐体またはガスタービン航空機用エンジンケーシングのような、薄壁包囲要素を固定する。
【解決手段】円筒状またはシェル状薄壁包囲要素１０を固定するための固定治具１００が、薄壁包囲要素を当該支持部１に固定するための1つまたは複数の固定装置３、４を有する支持部を有する。固定治具は、使用時に、固定された薄壁包囲要素内に配置されて、膨張時に、当該押圧要素８と薄壁包囲要素の内部薄壁との間に挿入された可撓性ライナ６に対して外方に押圧するようになっている膨張可能押圧要素を更に備える。可撓性ライナは、膨張される押圧要素の外方への膨張に対して当該可撓性ライナを付勢する１つまたは複数の弾性部材を有している。膨張された状態の押圧要素と可撓性ライナとが、薄壁の外側の機械加工の間、薄壁包囲要素における振動を減衰する。
【選択図】図１

Description

発明の背景

本発明は、ロケットノーズ円錐体またはガスタービン航空機用エンジンケーシングのような、薄壁包囲要素を固定するための固定治具に関する。

ＷＯ２００８／１０７６７２（本明細書に参照として組込まれている）が、許容可能な工業標準規格に対する機械加工の精密さ及び表面仕上げを維持するべく、充分な支持剛性と動的安定性を有して薄壁包囲要素が機械加工されることを可能とする目的で、薄壁包囲要素に適応可能な固定治具を開示している。固定治具は、膨張可能エラストマー押圧要素、及び、前記押圧要素と前記薄壁包囲要素との間に適合するライナを有している。特に、機械加工中に安定した固定治具及び振動回避が、別の態様では達成することが困難である薄壁包囲要素に適用できる。

前記薄壁包囲要素は、当該薄壁包囲要素の特性を変更することなしで、少数の開口と、非平坦内部／外部表面とを有し得る。そのような薄壁包囲要素は、機械加工される間に保持状態を保つことが困難である。薄壁は、機械加工工程の際に生じる切削力に抵抗するための充分な静的剛性及び動的安定性を欠いている。前記薄壁は、主に不十分な支持剛性から動的に不安定で振動し易くなり、機械加工の精密さの問題を引き起こし得る。更に表面仕上げの課題が、切削工具とワーク片との間の不安定な自励振動（「びびり」として知られる）から生じ得る。

ＷＯ２００８／１０７６７２に記載の固定治具により利益が得られる薄壁包囲要素の例が、ガスタービン航空機用エンジンケーシング及びロケットノーズ円錐体である。たいてい、そのような薄壁包囲要素は、耐熱合金のような機械加工が困難な材料からなり、要素質量を減少する必要がある。しかしながら、他の要素との結合のための境界を提供するべく、機械加工作業は、通常避けられない。

薄壁包囲円筒状要素の外面を機械加工するべく、前記薄壁包囲円筒状要素は、ＷＯ２００８／１０７６７２に記載の固定治具の基盤部に、一端で狭持されている。前記ライナが最初に前記薄壁包囲要素内に配置されて、前記押圧要素が次に前記薄壁包囲要素内に配置されて、前記固定治具の押圧要素及びライナが、前記薄壁包囲要素の他端で開口を通って前記薄壁包囲要素内に配置される。しかしながら、前記薄壁包囲要素の内部空間への進入路が制限される際には、この手順を利用して前記薄壁包囲要素内に前記押圧要素及びライナを配置することは困難である、という問題が生じ得る。実際、前記薄壁包囲要素が、例えば円筒状よりもドーム状であって、前記薄壁包囲要素の内部への唯一の主要開口が、固定治具基盤部によって遮断されている場合、前記手順を利用して配置することは、不可能である。

国際公開第２００８／１０７６７２（Ａ１）号明細書

このように、第一の特徴において、本発明は、薄壁包囲要素を固定するための固定治具であって、
前記薄壁包囲要素を当該支持部に固定するための1つまたは複数の固定装置を有する支持部と、
使用時に、固定された薄壁包囲要素内に配置されて、膨張時に可撓性ライナに対して外方に押圧するようになっている膨張可能押圧要素と、
を備え、
前記可撓性ライナは、前記押圧要素と前記薄壁包囲要素の内部薄壁との間に適合するようになっており、
前記可撓性ライナは、膨張される押圧要素の外方への膨張に対して当該可撓性ライナを付勢する１つまたは複数の弾性部材を有しており、前記可撓性ライナと前記押圧要素とが、前記薄壁包囲要素の外側の機械加工の間、前記薄壁包囲要素における振動を減衰するように作用する
ことを特徴とする固定治具である。

「薄壁包囲要素」とは、１つまたは複数の薄壁を有する要素を意味する。そのような壁が配置された場合、当該壁を横断する横剪断応力が、当該壁の平面内の伸長応力、及び／または、曲げ応力に対して一般に微小である。薄壁は、典型的には、機械加工動作の際に生じる切削力に抵抗するための充分な静的剛性を欠いており、動的に不安定で振動し易くなる。

「円筒状要素」とは、貫通開口を有する中空管状構造を意味する。そのような円筒状要素は、略真円の円筒、または、例えばより形状において円錐台状であり得る。「シェル」要素とは、単一の主要開口を有するボウルのような構造を意味する。そのようなシェル要素は、例えば円錐状またはドーム状のように成形され得る。

典型的には、使用時に、前記可撓性ライナは、収縮された押圧要素に適合され、前記薄壁包囲要素自身が前記支持部に動かされる前に前記支持部に予め配置される。上述したように、有利なことに、前記可撓性ライナは、膨張される押圧要素の外方への膨張に対して当該可撓性ライナを付勢する１つまたは複数の弾性部材を有しており、前記薄壁包囲要素の内部空間への接近が制限される場合には、当該可撓性ライナ及び圧力要素の配置と移動を容易にする。例えば、前記１つまたは複数の弾性部材は、前記押圧要素が収縮される際に、前記押圧要素の直径を減少させ得る。即ち、前記弾性部材は、前記可撓性ライナがない場合の直径よりも、収縮された押圧要素の直径を減少させ得る。

典型的には、膨張可能押圧要素は、膨張可能エラストマー押圧要素である。都合の良いことに、前記押圧要素は、空気圧で膨張される。しかしながら、前記押圧要素は、任意の適切な流体またはゲル状物によって膨張され得る。前記固定治具は、１つ以上の押圧要素を有してもよい。

好ましくは、前記支持部は、固定された薄壁包囲要素内で前記押圧要素を配置に保持する保持要素を有している。前記押圧要素は、管状押圧要素であってもよい。例えば、前記保持要素は、そのような管状押圧要素の中心穴を通って延び得る。使用時に、前記保持要素と前記薄壁包囲要素と前記押圧要素とは、前記保持要素と前記薄壁包囲要素との間に前記押圧要素が同軸に配置された状態となり得る。典型的には、前記ライナは、前記押圧要素を包囲している。例えば、前記押圧要素が、管状押圧要素である場合、前記ライナは、前記押圧要素の周部のまわりに延在する円筒であり得る。

好ましくは、前記１つの弾性部材または各弾性部材は、前記可撓性ライナの周囲に延在する長尺部材、例えば円筒状ライナの周囲に周方向に延在する長尺部材である。前記押圧要素が、管状押圧要素である場合、前記固定治具は、前記可撓性ライナの周囲に延在して、前記管状押圧要素の軸に沿って軸方向に間隔を空けて配置されている２つ以上の弾性長尺部材を有し得る。例えば、長尺部材は、円筒状ライナの軸方向端部のどちらかに配置され得る。

好ましくは、前記ライナは、前記押圧要素が収縮される際に、当該ライナが押圧要素と共につぶれることを補助するスリットを有する。例えば、前記押圧要素が、管状押圧要素である場合、前記スリットは、前記管状押圧要素の軸方向に延在し得る。

前記薄壁包囲要素は、ロケットノーズ円錐体またはガスタービン航空機用エンジンケーシングであり得る。

前記薄壁包囲要素は、前記押圧要素と可撓性ライナとが配置される空洞と、前記空洞より狭い首領域と、を有し得る。前記押圧要素と可撓性ライナとが、前記首領域を通って前記空洞内に到達するように挿入される。即ち、前記固定治具は、制限された形状で薄壁包囲要素内に前記押圧要素と可撓性ライナとを配置することに有利に利用される。

本発明の実施の形態が、添付した図面を参照して例としてここに記述される。

図１は、薄壁包囲円筒状要素の外部機械加工用の固定治具を示す。 図２（ａ）は、ガスタービン航空機用エンジンケーシング１０の側面図である。図２（ｂ）は、ケーシングの幅狭端部の方向の斜視図である。 図３は、図１に示されるような固定治具用のライナの図を示す。 図４（ａ）及び（ｂ）は、それぞれつぶれた状態と膨張状態とにおける図３の前記ライナの真横概略図である。

図１は、薄壁包囲円筒状要素１０の外部機械加工用の固定治具１００を示す。固定治具は、マシニングセンタ（不図示）の工作台（不図示）に接続するための取付穴２を有する厚壁包囲平板形態の取付基盤支持部１を備える。固定装置（ピン３及びクランプ４）は、要素１０を基盤１に配置して、狭持する。

環状の保持表面を提供する厚壁包囲剛体軸５または厚壁包囲剛体円柱状部５が、ボルト（不図示）によって基盤１に同軸に固定されている。軸５は、厚壁包囲蓋１２に連結するフランジで境界を形成している。軸５の半径に適合する内部半径Ｒを有する２つの修正された車両車輪内部管体８が、軸５に嵌装されている。管体８は、エラストマー、即ち弾性のある可撓性材料、からなるので、円筒状要素１０、支持軸５、取付基盤１及び蓋１２内に閉じ込められた囲いに適合するように膨張させられ得る。各管体８は、自身の内面にそれ自身の空気吸入弁９を有している。空気吸気弁９は、軸５にこのために設けられた別個の開口を通じて適合される。各吸気弁９は、中空である軸５を通って上方に伸縮可能である。

可踏性ライナ６（図１に示されたのは一部にすぎない）は、管体８を取り囲んでおり、機械加工される薄壁包囲要素表面に垂直な動的減衰を提供するべく、均一な支持押圧を行き渡らせる。局部強化部７は、ライナ６に包含され得る。

蓋１２は、円筒状要素の上端を保持するべく外周部の周りに楔形の段（不図示）が設けられた厚壁包囲円形平板である。更に、蓋１２には、穴１１が設けられており、蓋１２は、当該穴１１によってボルト（不図示）で内部軸５の上端に取付けられ得る。

都合の良いことに、薄壁包囲要素１０を固定治具に固定するべく、前記薄壁包囲要素は、最初に、ピン３及びクランプ４を使用して、基盤支持部１に取付けられる。前記薄壁包囲要素が確実に狭持された後、可撓性ライナ６、続いて管体８が、中央
円柱状部５と前記薄壁包囲要素の内壁との間にある隙間内に入れられる。最後に、蓋１２が取付けられ、前記管体が膨張される。

しかしながら、この組付手順は、典型的には、固定された前記薄壁包囲要素が比較的妨げられない貫通開口を有する場合のみ可能である。図２（ａ）は、ガスタービン航空機用エンジンケーシング１０である薄壁包囲要素の側面図である。機械加工してそれゆえ固定治具で支持されることが所望される薄い側壁の範囲が、双頭矢印によって示されている。
前記ケーシングは、実質的に形状において円錐台状である。安定性の理由で、前記ケーシング下方の広い端部で前記ケーシングを狭持することが所望されている。しかしながら、ケーシングの幅狭端部の方向の斜視図である図２（ｂ）によって示されるように、前記ケーシングの内部形状が、前記ケーシングの先端を通って前記ライナ及び管体に負荷を与えることを妨げる首領域２０を、幅狭端部に有している。

従って、図２（ａ）及び（ｂ）に示されるケーシングを固定するべく、前記固定治具は、ライナ６及び管体８が既に組付けられ、基盤支持部１に配置された状態で、基盤支持部１上で部品に鉛直な負荷を許容する更なる特徴を有している。特に、前記ライナは、膨張される前記管体の外方への膨張に対して当該ライナを付勢する弾性帯状片を有している。
更に、前記帯状片は、前記管体が収縮される際に、前記管体の直径を減少させる。更に、前記可撓性ライナは、当該ライナがつぶれることを補助するスリットを有する。

図３は、円筒状ライナ６の図を示す。前記弾性帯状片（不図示）は、前記ライナの軸方向上端及び下端で、筋２１内に配置している。前記帯状片は、前記ライナを内方に付勢する収縮力を前記ライナに加える。前記収縮力は、軸方向に延在し、前記ライナを３つの部分に分割する、３つの周方向に間隔を空けて配置されたスリット２２（図３において２つのみ示されている）によって補助される。収縮時には、前記スリットは、３つのライナの分割部分が互いに滑り合うことを可能にする。このように、前記帯状片と前記スリットとが、前記ライナ及び前記管体を、これらが挿入される前記ケーシングの内壁の直径より小さい直径であって且つ前記ライナ不在の場合に有する場合に有する収縮された管体の直径より小さい直径に収縮させることができる。

前記ライナは、更に、前記スリットを横断して延在する連結部のような間隔を空けて配置する要素（離間要素）を有している。前記間隔を空けて配置する要素は、膨張時には前記ライナの分割部分が略周方向に間隔を空けた配置になることを保証する。図４（ａ）及び（ｂ）は、それぞれつぶれた状態と膨張状態とにおける図３の前記ライナの真横概略図であり、間隔を空けて配置する連結部（離間連結部）２３がライナの分割部分６ａ−ｃを接続している。

ケーシング１０を固定治具に固定するべく、最初に、前記管体及びライナが、円柱状部５に取付けられる。実際は、前記管体及びライナは、恒久的に前記円柱状部に取付けられる。前記管体及びライナが前記ケーシングの内径より小さい直径に縮むように、前記管体は収縮される。前記ケーシングは、前記固定治具上に鉛直に搭載されて、即ち、前記管体、ライナ及び円柱状部上に下降する。前記ケーシングは、基盤平板に狭持することによって拘束され、その後、前記管体は、膨張され得る。膨張によって生じる力が、弾性帯状片の抵抗より大きいので、前記管体及びライナは膨張し、前記ライナは前記ケーシングの内面に対して押圧する。

機械加工後に前記固定治具から前記ケーシングを取外すためには、固定手順が単純に逆に行われる。

このように、前記固定治具は、狭い貫通開口を有する円筒要素、あるいは、全く貫通開口を有さないシェル要素とともに用いられ得る。

本発明は、航空機用エンジンケーシングのような要素に関して図１乃至４に記載されたが、多数の他の薄壁要素の機械加工に適用可能である。

Claims (8)

1. 薄壁包囲要素（１０）を固定するための固定治具（１００）であって、
   前記薄壁包囲要素（１０）を当該支持部（１）に固定するための1つまたは複数の固定装置（３、４）を有する支持部（１）と、
   使用時に、固定された薄壁包囲要素（１０）内に配置されて、膨張時に可撓性ライナ（６）に対して外方に押圧するようになっている膨張可能押圧要素（８）と、
   を備え、
   前記可撓性ライナ（６）は、前記押圧要素（８）と前記薄壁包囲要素（１０）の内部薄壁との間に適合するようになっており、
   前記可撓性ライナ（６）は、膨張される押圧要素（８）の外方への膨張に対して当該可撓性ライナ（６）を付勢する１つまたは複数の弾性部材を有しており、
   膨張された状態の押圧要素（８）と前記可撓性ライナ（６）とが、薄壁の外側の機械加工の間、前記薄壁包囲要素（１０）における振動を減衰する
   ことを特徴とする固定治具（１００）。
2. 前記１つまたは複数の弾性部材は、前記押圧要素（８）が収縮される際に、前記押圧要素（８）の直径を減少させる
   ことを特徴とする請求項１に記載の固定治具（１００）。
3. 前記１つの弾性部材または各弾性部材は、前記可撓性ライナ（６）の周囲に延在する長尺部材である
   ことを特徴とする請求項１または２に記載の固定治具（１００）。
4. 前記押圧要素（８）は、管状押圧要素である
   ことを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の固定治具（１００）。
5. ２つ以上の長尺部材が、前記可撓性ライナ（６）の周囲に延在して、前記管状押圧要素（８）の軸に沿って軸方向に間隔を空けて配置されている
   ことを特徴とする請求項３に従属する請求項４に記載の固定治具（１００）。
6. 前記ライナ（６）は、前記押圧要素（８）が収縮される際に、当該ライナ（６）が押圧要素と共につぶれることを補助するスリット（２２）を有する
   ことを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の固定治具（１００）。
7. 前記スリット（２２）は、前記管状押圧要素（８）の軸方向に延在する
   ことを特徴とする請求項４に従属する請求項６に記載の固定治具（１００）。
8. 前記薄壁包囲要素（１０）は、ロケットノーズ円錐体またはガスタービン航空機用エンジンケーシングである
   ことを特徴とする請求項１乃至７のいずれかに記載の固定治具（１００）。