以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の説明では、シートSに着座した人を基準にして左右を定める。また、各部位等について方向を説明する際には、シートSが着席状態にあるときを基準とする。左右一対設けられる構成については、共通の番号を付し、左右を特定するときは構成の名称に左又は右の文字を付す。
(全体構成)
図1に示すように、車両用シートSは、自動車の後部座席(2列目及び3列目を含む)として使用され、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3と、オットマン(レッグレスト)S4とを有する。
図2に併せて示すように、シートクッションS1、シートバックS2、ヘッドレストS3、オットマンS4には、シートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1のフレームを構成するクッションフレームF1と、シートバックS2のフレームを構成するバックフレームF2と、ヘッドレストS3のフレームを構成するヘッドレストフレームF3と、オットマンS4のフレームを構成するオットマンフレームF4とを有している。
クッションフレームF1の座面側、バックフレームF2の背もたれ面側、ヘッドレストフレームF3、及びオットマンフレームF4の支持面側には、それぞれシートクッションパッドP1、シートバックパッドP2、ヘッドレストパッドP3、及びオットマンパッドP4が取り付けられ、表皮SKによって覆われている。各パッドPは、ポリウレタンフォーム等の弾力性を有するクッション材から形成されている。各表皮SKは、合成皮革や布地等から形成されている。クッションフレームF1の底面側、バックフレームF2の背面側及びオットマンフレームF4の裏面側には、樹脂材で形成されたカバーが取り付けられ、それぞれの底面、背面及び裏面はこれらのカバー部材によって画成されていてもよい。
バックフレームF2は、スライド機構2及びリクライニング機構3を介して自動車のフロア4に取り付けられている。これにより、バックフレームF2は、フロア4に対してスライド可能、かつスライド機構2に対して回動(傾倒)可能になっている。クッションフレームF1は、チップアップ機構5を介してバックフレームF2に回動可能に取り付けられている。ヘッドレストフレームF3は、バックフレームF2にスライド移動可能に取り付けられている。オットマンフレームF4は、クッションフレームF1にスライド移動可能に取り付けられている。また、オットマンフレームF4は、角度調節機構6を有し、角度調節可能になっている。
図3に示すように、フロア4は、スライド機構2が設置される高位部11と、高位部11の前側かつ下方に形成された低位部12とを有する。低位部12と高位部11との間には低位部12から立ち上がり高位部11に至る壁部13が形成され、高位部11を基準にすると、低位部12はフロア4に凹部を形成するといえる。フロア4は、ニードルパンチ製法で製造された不織布などからなる内装材により表面が覆われている。フロア4の低位部12は、或いは内装材の上に設置されたフロアマットにより表面が覆われている。
図4〜図7に示すように、スライド機構2は、1つのシートSに対して左右一対に設けられている。各スライド機構2は、ロアレール15と、ロアレール15に変位可能に取り付けられたアッパレール16と、ロアレール15に対してアッパレール16を固定するレールロック部材17とを有する。スライド機構2は、公知の様々な機構を適用することができる。各ロアレール15は、フロア4の高位部11(図3)に、左右方向に互いに距離をおいて、それぞれ前後に延びるように配置されている。各ロアレール15は、ボルト締結等によってフロア4に接合されている。アッパレール16は、ロアレール15の長手方向にスライド移動可能に係合している。
各ロアレール15には、長手方向に沿って複数のロック孔(不図示)が形成されている。レールロック部材17は、アッパレール16に回動可能に取り付けられ、複数のロック孔の少なくとも1つに係合可能となっている。レールロック部材17は、任意のロック孔と係合することによって、ロアレール15に対するアッパレール16及びスライド部材21の移動を規制する。レールロック部材17は、付勢手段としてのばね(不図示)によって、ロック孔と係合する側に付勢されている。そのため、通常時には、ばねに付勢されたレールロック部材17がロック孔との係合を維持してスライド部材21の移動が規制されている。乗員の操作に起因してレールロック部材17がばねの付勢力に抗して回動すると、レールロック部材17とロック孔との係合が解除され、アッパレール16の移動が可能になる。
左右のアッパレール16には、それぞれスライド部材21が接合されている。左右のスライド部材21は、プレス加工された複数の金属板を溶接等によって接合したものである。左右のスライド部材21は、アッパレール16上を前後に延びている。左右のスライド部材21は、前端同士がスライダ前メンバ23によって結合され、後端同士がスライダ後メンバ24によって結合され、前後方向における中間部同士がスライダ中間メンバ25によって結合されている。各メンバ23、24、25は、金属のパイプから形成され、各スライド部材21と溶接やボルト締結等によって接合され、互いに平行に左右に延びている。これにより、左右のスライド部材21及び各メンバは枠形をなすシートベース26を構成している。シートベース26及び左右のアッパレール16は、一体となってロアレール15に対して前後に移動する。
左右のレールロック部材17は、リンク機構28(図5、図6)によって互いに連結されている。リンク機構28は、ロック状態と解除状態の間で変化することができ、通常時にはレールロック部材17を付勢するばねの付勢力を受け、ロック状態となっている。リンク部材は、ロック状態において、ばねに付勢された左右のレールロック部材17とロック孔との係合を許容する。乗員の操作に起因してリンク機構28がロック状態から解除状態になると、リンク機構28はばねの付勢力に抗して左右のレールロック部材17をロック孔から離脱した状態に維持する。後に詳述するが、リンク機構28には、力伝達手段としての第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の一端が係止されている。リンク機構28は、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の少なくとも一方に引っ張られることによって、解除状態になる。
図4、図6及び図8に示すように、スライダ前メンバ23及びスライダ中間メンバ25には、スタンドベース34が掛け渡されている。スタンドベース34は、金属板をプレス成形等することによって形成され、前端部においてスライダ前メンバ23の左右方向における中央部に溶接され、後端部においてスライダ中間メンバ25の左右方向における中央部に溶接されている。スタンドベース34の上部には、左右方向に延在し、スタンドベース34の左右両端に到達する支持溝35が形成されている。支持溝35は、上方かつ前側に向けて開口している。支持溝35は、後述するスタンド脚37を支持する。
スタンドベース34には、係止爪41が回動可能に取り付けられている。係止爪41は、支持溝35の軸線(左右方向に延びる軸線)と平行な回転軸を中心として、図8に実線で示す、支持溝35の側部から支持溝35内に突入する突入位置と、図8に想像線で示す、支持溝35の外部に退いた後退位置との間で回動する。スタンドベース34と係止爪41との間には、付勢手段としての捩じりばね42が介装され、係止爪41は突入位置に付勢されている。係止爪41は、突入位置において、後述するスタンド脚37の横部材94を係止し、横部材94の支持溝35からの離脱を阻止する。なお、係止爪41の外側部分、すなわち係止爪41が突入位置にあるときに支持溝35の開口端側を向く部分は、傾斜面に形成されている。
後に詳述するが、係止爪41には、力伝達手段としての係止爪用ケーブル43の一端が係止されている。係止爪41は、係止爪用ケーブル43が引っ張られることによって、突入位置から後退位置に回動する。
図2、図5及び図6に示すように、バックフレームF2は、縦長の長方形の枠状に形成されたパイプフレーム45と、パイプフレーム45の上下に延びる左右の側辺部の下部に溶接等によって接合された左右のバックサイドフレーム46とを有している。左右のバックサイドフレーム46は、金属板をプレス加工等することによって形成したものである。左右のバックサイドフレーム46は、パイプフレーム45の左右側辺部の下部における外側面を抱持するように湾曲する凹面を有し、パイプフレーム45の左右の側辺部に溶接等によって接合されている。左右のバックサイドフレーム46の下部は、左右側辺部の下端よりも下方に延出している。また、左右のバックサイドフレーム46は、一部がパイプフレーム45の下辺部に延び、溶接等によって接合されている。また、左右のバックサイドフレーム46とパイプフレーム45の下辺部との間には溶接等によって接合された補強板47が掛け渡され、バックフレームF2の補強がなされている。補強板47は、上部がバックサイドフレーム46及びパイプフレーム45と協働して中空状の立体構造を形成すると共に、下部がバックサイドフレーム46に沿って下方に延びている。
左右のバックサイドフレーム46の下部は、左右方向を向く側面を有している。左バックサイドフレーム46の下部の左側面は、左スライド部材21の右側面と対向し、回動可能に連結されている。図5及び図7に示すように、右バックサイドフレーム46の下部の左側面は、右スライド部材21に取り付けられたリクライニング機構3の右側面と対向し、リクライニング機構3を介して右スライド部材21に回動可能に連結されている。左右のバックサイドフレーム46の回動軸は、互いに同軸に配置されている。
リクライニング機構3は、右スライド部材21に対する右バックサイドフレーム46の回動(傾倒)角度を任意の位置に維持することができる。また、リクライニング機構3は、解除レバー51を有し、解除レバー51が操作されたときに右スライド部材21に対する右バックサイドフレーム46の回動角度を変更可能にする。このようなリクライニング機構3は、公知の様々な機構を適用することができる。
本実施形態に係る一例としてのリクライニング機構3は、図9に示すように、右スライド部材21に接合されたロアプレート52と、右サイドフレームの下部に接合され、ロアプレート52に対向配置され、ロアプレート52に対して回転可能なアッパプレート53と、ロアプレート52及びアッパプレート53の回転中心を貫通する連結軸54と、アッパプレート53とロアプレート52との間に形成される内部空間に配置され、連結軸54と一体に回転するカムプレート55と、内部空間に配置された複数のロック部材56と、カムプレート55を一方の回転方向に付勢する付勢手段としての捩じりばね57とを有している。ロック部材56は、ロアプレート52に形成されたガイド溝58に係合し、ロアプレート52の径方向に移動可能に配置されている。ロック部材56は、径方向内方部分にカム部を有し、径方向外方部分に外歯59を有し、径方向外方に移動したときにアッパプレート53の内部空間を形成する内周面に周方向にわたって形成された内歯61と係合する。カムプレート55は、ロック部材56と係合し、一方の回転方向に回転するときにロック部材56を径方向外方に移動させ、他方の回転方向に回転するときにロック部材56を径方向内方に移動させる。連結軸54の一端は、アッパプレート53及び右バックサイドフレーム46を貫通し、その端部に径方向に延びる解除レバー51(図3、図7)が接合されている。
リクライニング機構3は、通常時には捩じりばね57によってカムプレート55が一方の回転方向に付勢され、ロック部材56が径方向外方に移動し、ロック部材56の外歯59がアッパプレート53の内歯61に係合する。これにより、ロック部材56を介してロアプレート52及びアッパプレート53の相対回転が禁止される。すなわち、リクライニング機構3は、捩じりばね57の付勢力によってロアプレート52に対するアッパプレート53の回動が禁止されるロック状態となっている。乗員の操作に起因して解除レバー51が解除方向に回動し、連結軸54及びカムプレート55が捩じりばね57の付勢力に抗して他方の回転方向に回転すると、ロック部材56が径方向内方に移動し、ロック部材56の外歯59とアッパプレート53の内歯61との係合が解除される。これにより、ロアプレート52及びアッパプレート53の相対回転が可能になる。解除レバー51には、力伝達手段としてのリクライニング用ケーブル63(図3、図7)の一端が係止されている。解除レバー51は、リクライニング用ケーブル63が引っ張られることによって、解除方向に回動する。
図2、図3及び図5に示すように、パイプフレーム45の右側辺部の上端部には、ハンドルユニット65を支持するブラケット66が溶接等によって接合されている。ハンドルユニット65は、上方かつ後方に開口したケース67と、ケース67内に回動可能に取り付けられたハンドル68とを有する。図1、図2に示すように、シートバックパッドP2及びその外面の表皮SKは、ハンドルユニット65に対応した部分が切り欠かれている。これにより、ハンドル68は、シートバックS2の上端右部に露出し、乗員が操作可能になっている。
ハンドル68には、一端が係止爪41(図8)に係止された係止爪用ケーブル43の他端と、一端が解除レバー51(図3)に係止されたリクライニング用ケーブル63の他端とが連結されている。係止爪用ケーブル43及びリクライニング用ケーブル63は、筒状のアウタチューブによって摺動可能に抱持されている。係止爪用ケーブル43を抱持する係止爪用アウタチューブ71は、詳細な配置図は省略するが主に図5を参照して説明すると、一端がスタンドベース34に固定され、右スライド部材21側に延び、右バックサイドフレーム46及びパイプフレーム45の右側辺部に沿って上方に延び、他端がブラケット66に固定されている。リクライニング用ケーブル63を抱持するリクライニング用アウタチューブ72は、図3に示すように、一端が右バックサイドフレーム46の右側面に固定され、右バックサイドフレーム46及びパイプフレーム45の右側辺部に沿って上方に延び、他端がブラケット66に固定されている。係止爪用アウタチューブ71及びリクライニング用アウタチューブ72はバンド等によってパイプフレーム45の右側辺部に結束されている。
乗員がハンドル68を引き、ハンドル68を一方の回動方向に回動させると、係止爪用ケーブル43がハンドル68側に引かれ、係止爪41(図8)が突入位置から後退位置に回動し、係止爪41によるスタンド脚37のロックが解除される。同時に、リクライニング用ケーブル63がハンドル68側に引かれ、解除レバー51(図3)が解除方向に回動し、リクライニング機構3のロックが解除される。
図2及び図3に示すように、パイプフレーム45の左側辺部には、アームレスト75を支持するアームレストブラケット76が溶接等によって接合されている。アームレストブラケット76は、パイプフレーム45の左側辺部から前方に突出している。アームレストブラケット76には、アームレスト75が所定の範囲で回動可能に取り付けられている。
図2及び図5に示すように、パイプフレーム45の上辺部には、ヘッドレストS3を支持するための一対のヘッドレスト保持部78が接合されている。ヘッドレスト保持部78は、筒状をなし、内部に樹脂製の筒形部材であるサポート79が挿入されている。ヘッドレストS3は、ヘッドレストフレームF3の一部である一対のヘッドレストピラー80がサポート79を介してヘッドレスト保持部78に挿入されることによって、パイプフレーム45の上辺部に取り付けられる。
パイプフレーム45の適所には、金属棒によって形成された複数の補助フレーム82が溶接されている。補助フレーム82は、左右の側辺部間に掛け渡されたもの、左側辺部から左方に張り出すように配設されたもの、右側辺部から右方に張り出すように配設されたもの等を含む。補助フレーム82は、パイプフレーム45の隙間を補い、シートバックパッドP2を支持する。
図2及び図5に示すように、クッションフレームF1は、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレーム85と、左右のクッションサイドフレーム85の前端間を連結するクッション前メンバ86と、左右のクッションサイドフレーム85の後部間を連結するクッション後メンバ87とを有している。左右のクッションサイドフレーム85は、金属板をプレス加工等することによって形成されたものであり、主面が左右を向き、縁部が左右外方に突出するように曲げ起こされている。左右のクッションサイドフレーム85の後端部は、前後に延びる前部に対して屈曲し、後方かつ上方に傾斜して延びている。クッション後メンバ87は、左右のクッションサイドフレーム85の屈曲部に設けられている。
左クッションサイドフレーム85の後端部は、その右側面が左バックサイドフレーム46の左側面の上部に対向するように配置され、左バックサイドフレーム46に回動可能に取り付けられている。
図6に示すように、右バックサイドフレーム46の上部には、右方に突出し、突出端が平面状をなす締結座88が形成されている。締結座88には、支持プレート89がボルト締結等によって接合されている。右バックサイドフレーム46における締結座88の下方には、支持プレート89との間に隙間を形成する凹部90が形成されている。支持プレート89は、主面が左右を向き、上下に延びる金属のプレートであり、上端部が締結座88に接合されている。支持プレート89の下部は、右バックサイドフレーム46の右側面との間に距離をおいて配置されている。右クッションサイドフレーム85の後端部は、右バックサイドフレーム46と支持プレート89との間に配置され、支持プレート89に回動可能に取り付けられている。左右のクッションフレームの回動軸は、それぞれ左右に延び、互いに同軸に配置されている。
図2及び図5に戻り、クッション前メンバ86及びクッション後メンバ87には、前後に延びるセンター支持部材91が掛け渡されている。センターメンバは、クッションフレームF1の中央部において、シートクッションパッドP1及び乗員の臀部を下方から支持する部材であり、弾性を有することが好ましい。本実施形態では、センター支持部材91は、金属板をプレス成形等にすることによって形成されたプレート(センタープレート)であり、主面が上下を向き、前端部においてクッション前メンバ86の左右方向における中央部に溶接され、後端部においてクッション後メンバ87の左右方向における中央部に溶接されている。センター支持部材91の左右方向における幅は、クッション前メンバ86の1/3程度である。センター支持部材91には、補強ビードや軽量化のための肉抜きが適所に設けられている。他の実施形態では、センター支持部材91は、例えばワイヤースプリング等の弾性部材から構成されてもよい。また、センター支持部材91は、幅方向に複数設けられてもよい。
図7に併せて示すように、左右のクッションサイドフレーム85には、スタンド脚37が回動可能に取り付けられている。スタンド脚37は、一端部において左右のクッションサイドフレーム85に回動可能に取り付けられ、他端部に延びる左右一対のアーム93と、左右のアーム93の他端部同士を連結する横部材94とを有し、外形が略U字形に形成されている。左右のアーム93の大部分及び横部材94は、金属のパイプを略U字状に折り曲げることによって形成されている。左右のアーム93の一端部は、パイプに溶接されたブラケットによって形成され、ブラケットが左右のクッションサイドフレーム85に回動可能に取り付けられている。スタンド脚37は、左右側から見て(図3)、横部材94がセンター支持部材91の下面に近接し、アーム93がクッションサイドフレーム85に沿う、想像線で示す収納位置と、アーム93がクッションサイドフレーム85から下方に突出した、実線で示す使用位置との間で回動可能になっている。スタンド脚37は、使用位置及び収納位置のいずれの状態においても、シートクッションS1の底面を形成するカバーの外側に配置されている。
スタンド脚37が使用位置にあるとき、図8に示すように、スタンド脚37はスタンドベース34の支持溝35に突入可能になる。スタンド脚37が支持溝35に係止されることによって、シートクッションS1はスタンド脚37に下方から支持され、座面(上面)が略水平に延在した着座位置に配置される。また、スタンド脚37は、支持溝35に係止されることによって、使用位置から収納位置への回動が規制される。すなわち、スタンド脚37が支持溝35に係止されることによって、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置が定まる。
スタンド脚37の横部材94を支持溝35に挿入するときには、横部材94で係止爪41の傾斜面を押し、捩じりばね42の付勢力に抗して係止爪41を突入位置から後退位置に回動させる。横部材94が支持溝35に挿入されると、係止爪41は捩じりばね42の付勢力によって突入位置に回動する。係止爪41は、突入位置において横部材94を係止し、横部材94の支持溝35からの離脱を阻止する。パイプ部を支持溝35から離脱させたいときは、乗員はハンドル68(図1)を操作し、係止爪用ケーブル43を介して係止爪41を後退位置に位置させる。
図3、図5及び図6に示すように、右クッションサイドフレーム85と支持プレート89との間には、チップアップ機構5が介装されている。チップアップ機構5は、シートクッションS1が着座位置よりも上方側に回動した所定の位置で、右クッションサイドフレーム85を支持プレート89に対して固定し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置を固定する装置である。このようなチップアップ機構5は、公知の様々な機構を適用することができる。
本実施形態に係る一例としてのチップアップ機構5は、図10に示すように、支持プレート89の下端部の縁部に形成された切欠からなる係合凹部101と、右クッションサイドフレーム85の右側面に回動可能に取り付けられ、係合凹部101に係合する想像線で示す係合位置と係合凹部101から離脱した実線で示す解除位置との間で変位可能なロック部材102と、ロック部材102と右クッションサイドフレーム85との間に設けられ、ロック部材102を係合位置に付勢する付勢手段としてのラバー(不図示)と、右クッションサイドフレーム85の右側面に回動可能に取り付けられ、ロック部材102に係合してロック部材102を解除位置に位置させる実線で示す第1位置と、ロック部材102との係合を解除する想像線で示す第2位置との間で回動するカム部材103と、カム部材103と右クッションサイドフレーム85の右側面との間に設けられ、カム部材103を第2位置に付勢する付勢手段としての引張りコイルばね104とを有している。
係合凹部101は、少なくとも1つ以上設けられている。係合凹部101の1つは、シートクッションS1が回動可能範囲において上方に回動した限界位置(チップアップ位置という)に位置するとき、すなわちシートクッションS1の座面(上面)がシートバックS2の支持面(前面)と最も接近したときに、ロック部材102が係合可能になる位置に形成されている。シートクッションS1がチップアップ位置に位置するとき、右クッションサイドフレーム85の前部が、パイプフレーム45の右側辺部と略平行になる。他の係合凹部101は、シートクッションS1の着座位置とチップアップ位置との間の任意の角度において、ロック部材102が係合可能になる位置に形成されていてよい。これにより、チップアップ機構5は、右クッションサイドフレーム85を支持プレート89に対して上方に回動させると、所定の回転位置で引張りコイルばね104に付勢されたロック部材102が係合凹部101に係合し、右クッションサイドフレーム85を所定の角度に維持する。
なお、係合凹部101は、支持プレート89に対して右クッションサイドフレーム85が下方に回動するときにロック部材102との係合を維持し、支持プレート89に対する右クッションサイドフレーム85の回動を阻止するが、支持プレート89に対して右クッションサイドフレーム85が上方に回動するときにはロック部材102の離脱を許容し、支持プレート89に対する右クッションサイドフレーム85の回動を許容するように構成してもよい。この構成によれば、ロック部材102がある係合凹部101に係合した後も、右クッションサイドフレーム85の上方への回動が可能となり、右クッションサイドフレーム85をさらに上方に回動させると、ロック部材102は次の係合凹部101に係合し、カム部材103が想像線で示す第2位置にあっても右クッションサイドフレーム85を所望の角度まで跳ね上げることができる。
乗員の操作に起因してカム部材103が引張りコイルばね104の付勢力に抗して実線で示す第1位置に回動すると、ロック部材102は解除位置に移動し、係合凹部101と係合できなくなる。カム部材103には、力伝達手段としての第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の一端が接続されている。第1チップアップ用ケーブル106は筒状の第1チップアップ用アウタチューブ108によって摺動可能に抱持され、第2チップアップ用ケーブル107は筒状の第2チップアップ用アウタチューブ109によって摺動可能に抱持されている。
第1チップアップ用アウタチューブ108は、その一端が右クッションサイドフレーム85の右側面に、開口がカム部材103側を向くように取り付けられている。第1チップアップ用アウタチューブ108は、図3及び図5に示すように、一端から右クッションサイドフレーム85の右側面に沿って前方に延び、右クッションサイドフレーム85の前端下部をくぐって右クッションサイドフレーム85の左側に延びている。右クッションサイドフレーム85の前端の下部にはブラケット111が接合されており、第1チップアップ用アウタチューブ108の他端は、開口が後方を向くようにブラケット111に固定されている。第1チップアップ用ケーブル106の他端は、スタンド脚37の右アーム93の端部に固定されている。図10に示すように、スタンド脚37が想像線で示す収納位置に位置するときに、第1チップアップ用ケーブル106の他端(右アーム93の端部)が第1チップアップ用アウタチューブ108の他端に接近して第1チップアップ用ケーブル106が弛み、実線で示す使用位置に位置するときに第1チップアップ用ケーブル106の他端(右アーム93の端部)が第1チップアップ用アウタチューブ108の他端から離れて第1チップアップ用ケーブル106が引っ張られる。すなわち、スタンド脚37が使用位置に位置するとき、カム部材103は第1チップアップ用ケーブル106によって引っ張られて図10に実線で示す第1位置に位置し、ロック部材102は同じく実線で示す解除位置に位置する。
第2チップアップ用アウタチューブ109は、その一端が右クッションサイドフレーム85の右側面に、開口がカム部材103側を向くように取り付けられている。第2チップアップ用アウタチューブ109は、図3及び図5に示すように、一端から右クッションサイドフレーム85の前後方向における中間部下部をくぐって右クッションサイドフレーム85の左側に延び、その後、右クッションサイドフレーム85の左側面に沿い、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍に延びる。その後、第2チップアップ用アウタチューブ109は、図3及び図6に示すように、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍から右バックサイドフレーム46の後を回りこんで、右バックサイドフレーム46の左側に配置された補強板47に沿って右バックサイドフレーム46の回動軸近傍に延びている。第2チップアップ用アウタチューブ109の他端は、補強板47の左側面から内方に向けて突出するように補強板47と一体形成された突出部112(図6)に下方を向くように固定されている。第2チップアップ用ケーブル107は、右スライド部材21に取り付けられたロアプレート52(図9)の左側面に係止されている。なお、突出部112は、第2チップアップ用アウタチューブ109の他端を固定する固定部として機能するとともに、左右方向について右スライド部材21とオーバーラップする位置まで突出形成されており、右バックサイドフレーム46が後方に回動するときに右スライド部材21に当接することで、右バックサイドフレーム46の後方へのさらなる回動を規制するストッパとして機能する。
第2チップアップ用ケーブル107の他端と第2チップアップ用アウタチューブ109の他端との位置は、シートバックS2がフロア4に対して起立した状態から前傾するにつれて、第2チップアップ用ケーブル107の他端が第2チップアップ用アウタチューブ109の他端から離れるように設定されている。これにより、シートバックS2が前傾するほど第2チップアップ用ケーブル107は他端側に引っ張られ、シートバックS2の前傾が所定の角度以上になると、カム部材103(図10)は第2チップアップ用ケーブル107によって引っ張られて図10に実線で示す第1位置に位置し、ロック部材102は同じく実線で示す解除位置に位置する。すなわち、第1チップアップ用ケーブル106及び第1チップアップ用アウタチューブ108、並びに、第2チップアップ用ケーブル107及び第2チップアップ用アウタチューブ109は、それぞれチップアップ機構5のロックを解除するチップアップロックキャンセル機構113を構成する。
第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の2つがカム部材103に接続しているため、カム部材103は第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107の少なくとも一方が他端側に引っ張られた状態で第1位置に位置し、ロック部材102は解除位置に位置する。換言すると、第1チップアップ用ケーブル106及び第2チップアップ用ケーブル107が共に弛んだ状態、すなわちシートバックS2の前傾角度が所定値以下(すなわち、起立した状態)であり、かつスタンド脚37が収納位置に位置するときに、カム部材103は図10に想像線で示す第2位置にあり、ロック部材102は係合凹部101に係合可能になる。
次に、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の配置について説明する。図5に示すように、第1レール用ケーブル31は筒状の第1レール用アウタチューブ114によって摺動可能に抱持され、第2レール用ケーブル32は筒状の第2レール用アウタチューブ115によって摺動可能に抱持されている。第1レール用アウタチューブ114及び第2レール用アウタチューブ115の一端は、リンク機構28の不動部に係止され、第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の一端はリンク機構28の可動部に係止されている。なお、他の例では、第1レール用アウタチューブ114及び第2レール用アウタチューブ115の一端は、スライダ中間メンバ25やスライダ後メンバ24に係止されていてもよい。
第1レール用アウタチューブ114は、一端から右バックサイドフレーム46の左側面に延び、その後、図6に示すように、右バックサイドフレーム46の左側面に沿って上方に、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍まで延びている。そして、第1レール用アウタチューブ114は、右バックサイドフレーム46の後を回り込んで右バックサイドフレーム46の右側面に達し、右クッションサイドフレーム85の回動軸近傍から右クッションサイドフレーム85の左側面に延びている。その後、第1レール用アウタチューブ114は、図5に示すように、右クッションサイドフレーム85の左側面に沿って前方にクッション後メンバ87まで延び、センター支持部材91の下方を通過して左斜め前に延び、左クッションサイドフレーム85の前端下部に接合されたブラケット117まで延びている。第1レール用アウタチューブ114の他端は、開口が前方を向くようにブラケット117に係止されている。第1レール用ケーブル31の他端は、第1レール用アウタチューブ114の他端から前方に突出し、第1把持部材118が取り付けられている。第1レール用ケーブル31、第1レール用アウタチューブ114、及び第1把持部材118は、スライド機構2のロック解除を行う操作部材を構成する。
第2レール用アウタチューブ115は、一端からループを形成しつつ、後方に延び、スライダ後メンバ24に接合されたブラケット121まで延びている。第2レール用アウタチューブ115の他端は、開口が後方を向くようにブラケット121に係止されている。第2レール用ケーブル32の他端は、第2レール用アウタチューブ115の他端から後方に突出し、第2把持部材122が取り付けられている。第2レール用ケーブル32、第2レール用アウタチューブ115、及び第2把持部材122は、スライド機構2のロック解除を行う操作部材を構成する。
第1把持部材118及び第2把持部材122は、織布やひも、ロープ等を含むストラップであり、可撓性を有する。本実施形態では、第1把持部材118及び第2把持部材122は、帯状のバンドを折り返してループ状に形成している。図1及び図7に示すように、シートクッションパッドP1(図2)の前部には、第1把持部材118が前後に貫通する通路(不図示)が形成され、シートクッションパッドP1の前端面125の表皮SKには第1把持部材118が貫通する孔を画定するグロメット127が取り付けられている。これにより、第1把持部材118の先端部は、グロメット127を通過してシートクッションS1の前端面から突出している。
乗員は、第1把持部材118を把持し、シートクッションS1から引き出す方法に引っ張ることによって第1レール用ケーブル31を引っ張ることができる。また、乗員は、第2把持部材122を把持し、後方に引っ張ることによって第2レール用ケーブル32を引っ張ることができる。第1レール用ケーブル31及び第2レール用ケーブル32の少なくとも一方が引っ張られることによって、リンク機構28はロック状態から解除状態となり、左右のレールロック部材17が各ロック孔から離脱し、ロアレール15に対してアッパレール16が移動可能になる。すなわち、アッパレール16に取り付けられたシートSがフロア4に対して前後に移動可能になる。
図2、図5及び図11に示すように、オットマンフレームF4は、左右に延びるベースメンバ130と、ベースメンバ130の左端及び右端に基端部がそれぞれ回動可能に取り付けられ、基端部から先端部に延びる左右一対のオットマンサイドフレーム131と、左右に延び、左右のオットマンサイドフレーム131の先端部同士を連結するオットマン前メンバ132とを有し、長方形の枠形に形成されている。ベースメンバ130とオットマン前メンバ132との間には、左右のオットマンサイドフレーム131を連結する複数のオットマン補助メンバ134が掛け渡されている。ベースメンバ130及びオットマン前メンバ132は、金属のパイプから形成されている。左右のオットマンサイドフレーム131は、金属板をプレス成形等することによって形成され、それぞれ主面が左右を向き、その縁部は、左右方向における内側に折り曲げられている。ベースメンバ130には、左右に間隔をおいて左右一対のオットマンピラー135が設けられている。左右のオットマンピラー135は、中実の金属棒から形成され、左右方向に互いに距離をおき、互いに平行に延びている。
ベースメンバ130には、筒状のベースメンバパッド138(図1)が被せられる。ベースメンバパッド138の外面は表皮SKによって覆われている。オットマンパッドP4(図2)は、外形が略長方形をなし、左右のオットマンサイドフレーム131の基端部を除く先端側、オットマン前メンバ132、オットマン補助メンバ134を覆うように取り付けられ、外形が長方形に形成されている。オットマンS4の表皮SKは、オットマンパッドP4、左右のオットマンサイドフレーム131の基端部を除く先端側、オットマン前メンバ132、オットマン補助メンバ134を覆うように設けられている。オットマンパッドP4及び表皮SKから突出した左右のオットマンサイドフレーム131の基端部には、樹脂等で形成されたカバー139(図1)によって覆われ、左右のオットマンサイドフレーム131とベースメンバ130との接続部が隠蔽されている。
図11に示すように、クッション前メンバ86には、一対のオットマンピラー135を支持する左右一対のピラー支持部141が設けられている。ピラー支持部141は、断面四角形の両端が開口した筒形に形成されている。ピラー支持部141は、クッション前メンバ86において、左クッションサイドフレーム85とセンター支持部材91の左縁との間に対応する部分と、右クッションサイドフレーム85とセンター支持部材91の右縁との間に対応する部分とに設けられている。ピラー支持部141は、クッション前メンバ86の下方を軸線が前後に延びるように配置され、クッション前メンバ86の下部に形成された前後に延びる凹部143にその上部が突入し、凹部143において溶接等によって接合されている。各ピラー支持部141には、樹脂製の筒形部材であるサポート142が挿入されている。左右のオットマンピラー135は、ピラー支持部141に取り付けられたサポート142の内孔に挿入される。これにより、オットマンフレームF4は、クッションフレームF1に取り付けられる。
2つのオットマンピラー135の少なくとも一方の側面には、長手方向に間隔をおいて複数の係止溝146が形成されている。本実施形態では、右オットマンピラー135に係止溝146が形成されている。図1に示すように、サポート142の前端部は、シートクッションS1の表皮SKの外面に配置されている。図11に戻り、サポート142の前端部には、係止部材147が変位可能に受容されている。係止部材147は、サポート142の内孔内に突入する突入位置と、内孔から離脱した後退位置との間で変位可能であり、図示しない付勢部材によって突入位置に付勢されている。係止部材147の一端部はサポート142の前端部の側部から外方に突出し、乗員が操作可能な操作部148を構成する。乗員は、操作部148をサポート142に対して押し込むことによって、係止部材147を突入位置から後退位置に変位させることができる。係止部材147は、オットマンピラー135の係止溝146を係止することによって、サポート142に対するオットマンピラー135の位置を維持する。
ベースメンバ130に対して左右のオットマンサイドフレーム131は、収納位置(図14(A1)参照)と最展開位置(図15(D3)の想像線参照)との間で回動可能になっている。収納位置と最展開位置との間には、仮収納位置(図15(D1)参照)が設定されている。収納位置ではオットマンS4の大部分がシートクッションS1の下方に配置され、オットマンS4の裏面がシートクッションS1の下面と対向する。仮収納位置ではオットマンS4がベースメンバ130から略鉛直に垂下した状態で保持される。最展開位置ではオットマンS4がシートクッションS1に対して前方に突出し、オットマンS4の支持面がシートクッションS1の上面と概ね同じ方向を向く。
ベースメンバ130の右端部と右オットマンサイドフレーム131との間には、角度調節機構6(図5)及びディテント機構165(図5)が介装されている。角度調節機構6は、オットマンS4を左方から見て、右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する時計回りの回転(最展開位置側への回転)を許容すると共に、仮収納位置と最展開位置との間の角度範囲において右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する反時計回りの回転(収納位置側への回転)を禁止する。また、角度調節機構6は、オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する回転が最展開位置に到達した後は、収納位置に到達するまで、右オットマンサイドフレーム131のベースメンバ130に対する時計回りの回転を許容する。このような角度調節機構6は、公知の様々な機構を適用することができる。
本実施形態に係る一例としての角度調節機構6は、図12に示すように、ベースメンバ130の外周部に一体に固定されたラチェット歯151と、右オットマンサイドフレーム131の左側面に回動可能に取り付けられ、前記ラチェット歯151に係合可能な爪体152と、爪体152と右オットマンサイドフレーム131の左側面との間に設けられ、爪体152をラチェット歯151側に付勢する捩じりばね153と、ベースメンバ130に同軸に回転可能に取り付けられたカム体154と、ベースメンバ130に設けられた突起155とを有する。また、ベースメンバ130と右オットマンサイドフレーム131との間には、右オットマンサイドフレーム131を常時収納位置側に付勢する捩じりコイルばね156が設けられている。爪体152がラチェット歯151と係合することよって、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側への回転が阻止される。なお、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が最展開位置側に回転するときには、爪体152は係合したラチェット歯151から離脱することができ、隣のラチェット歯151に係合することができる。
カム体154は、ラチェット歯151の突出端よりもベースメンバ130の径方向外方に突出した大径部157と、ラチェット歯151の歯底円よりもベースメンバ130の径方向内方に窪んだ小径部158とを有する。爪体152は、カム体154の小径部158が対向するときにラチェット歯151との係合が可能になり、カム体154の大径部157が対向するときに大径部157と当接してラチェット歯151と係合できなくなる。爪体152は、カム体154の小径部158と対向するとき、小径部158と大径部157との境界部に当接し、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の最展開位置側への回転に応じてカム体154を回転させる。ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の最展開位置側への回転が進み、最展開位置近傍の所定角度になると、突起155がカム体154の第1ストッパ面161に係合することによってカム体154のベースメンバ130に対する回転が規制される。これにより、爪体152がカム体154に対して相対回転し、大径部157の外周上に乗り上げる。この状態では、爪体152はラチェット歯151に係合できなくなり、ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側の回動が可能になる。
爪体152が大径部157の外周上に乗り上げ、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が収納位置側に回動する間、カム体154は爪体152から摩擦力を受けて、爪体152及び右オットマンサイドフレーム131と共にベースメンバ130に対して回転する。ベースメンバ130に対する右オットマンサイドフレーム131の収納位置側への回転が進み、爪体152がラチェット歯151と対向する範囲を越えると、突起155がカム体154の第2ストッパ面162に係合することによってカム体154のベースメンバ130に対する回転が規制される。これにより、爪体152がカム体154に対して相対回転し、爪体152が大径部157の外周上から小径部158に対向する位置に移動する。この状態では、爪体152は再びラチェット歯151に係合できるようになり、ベースメンバ130に対して右オットマンサイドフレーム131が最展開位置側に回動すると、爪体152がラチェット歯151に係合する。
ディテント機構165は、所定の回動位置に節度感をもってオットマンS4を保持する、すなわちその前後の回動位置に比べて大きな保持力を持ってオットマンS4をハーフロックする。ディテント機構165は、仮収納位置及び収納位置の2箇所でオットマンS4を保持するように構成されている。このようなディテント機構165は、公知の様々な機構を適用することができる。本実施形態では、図13に示すように、ベースメンバ130の外周面に凹部166を形成し、オットマンサイドフレーム131に摺動可能かつ凹部166に係合可能にハーフロック部材167を設け、付勢手段168によってハーフロック部材167をベースメンバ130側に付勢する。凹部166およびハーフロック部材167の係合面は曲面または傾斜面に形成される。このディテント機構165は、オットマンS4が仮収納位置及び収納位置にあるときには、ハーフロック部材167及び凹部166が互いに係合し、ベースメンバ130及びオットマンサイドフレーム131に所定の回動荷重が加わったときにハーフロック部材167及び凹部166の係合を解除する。この回動加重は、オットマンS4の自重による回動荷重や捩じりコイルばね156の付勢力による回動荷重よりも大きな値に設定されている。
次に、以上のように構成されたシートSが取り得る動作及び姿勢を図14及び図15を参照しながら説明する。
図14(A1)は、シートバックS2が使用位置にあり、シートクッションS1が着座位置にあり、オットマンS4が収納位置にあるシートSの使用状態を示している。この状態で、乗員がハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロックを解除し、矢印で示すようにシートクッションS1を把持してシートバックS2側に跳ね上げると、(A2)に示すようにシートクッションS1の座面がシートバックS2の前面に沿う上限界位置(チップアップ位置)まで回動させることができる。この状態では、スタンド脚37がシートバックS2の底面から突出した使用位置にあり、チップアップ機構5のカム部材103(図10)が第1チップアップ用ケーブル106によって引っ張られているため、ロック部材102が解除位置に位置し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置は固定されていない。スタンド脚37を矢印の方向に倒して収納位置に移動させると、(A3)に示すようにチップアップ機構5がロック可能になり、シートクッションS1の回動位置が固定され、シートクッションS1がチップアップ位置にあるチップアップ姿勢にシートSが保持される。
次に、(B1)に示す(A1)と同じ状態で、ハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロック及びリクライニング機構3のロックを解除すると、シートバックS2を前方に倒すことが可能になる。なお、この状態ではチップアップ機構5はロック不能な状態であり、シートバックS2とシートクッションS1との相対角度は変更可能である。シートバックS2が前方に回動すると、(B2)に示すように、スタンド脚37がスタンドベースの支持溝35(図8)から外れて前方に移動する。また、シートバックS2が前方に倒れるように回動することによってスタンド脚37が倒れ、シートSは、(B3)に示すように、シートクッションS1、シートバックS2及びオットマンS4がフロア4の低位部12に格納されたダイブダウン姿勢となる。この状態では、スタンド脚37が収納位置に配置されるため、第1チップアップ用ケーブル106(図10)は緩むが、シートバックS2が所定の角度以上に前傾しているため、チップアップ機構5のカム部材103が第2チップアップ用ケーブル107によって引っ張られ、ロック部材102が解除位置に位置し、シートクッションS1のシートバックS2に対する回動位置は固定されていない。
なお、(A3)に示すようにシートSがチップアップ姿勢にあるときに、ハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、破線の矢印で示すようにシートバックS2をシートクッションS1と共に前方に倒すことによっても、シートSを(B3)のダイブダウン姿勢に変化させることができる。
ダイブダウン姿勢にあるシートSを使用状態に戻すときには、(C1)に示すように、乗員はハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2を矢印で示すように起こす向きに回動させる。このとき、チップアップ機構5によるロックはかかっていないため、(C2)に示すように、シートクッションS1はシートバックS2と共に起き上がらず、シートバックS2によって引き摺られるように後方に移動し、スタンド脚37の先端がフロア4の壁部13又はシートベース26に係合する。(C3)に示すように、乗員がそのままシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37がフロア4の壁部13又はシートベース26に引っ掛かって引き起こされ、使用位置に移動する。乗員が、さらにシートバックS2を後方に回動させると、スタンド脚37の横部材94(図8)が係止爪41を押し退けながらスタンドベース34の支持溝35に突入し、(C4)に示すように、シートバックS2が使用位置に固定されると共にシートクッションS1が着座位置に固定される。オットマンS4は、スタンド脚37が引き起こされシートクッションS1の底面がフロア4から離れるため、フロア4の壁部13には係合せず、シートSが(C4)に示す着座状態になったときには、捩じりコイルばね156の付勢力及びディテント機構165の保持力によって収納位置に保持されている。
乗員は、(C4)に示す状態からオットマンS4を矢印方向に回動させ、(C5)に示すようにオットマンS4が垂下する仮収納位置に移動させることができる。オットマンS4は、ディテント機構165によって仮収納位置に保持される。オットマンS4の角度調節機構6は、収納位置と仮収納位置との間では、オットマンS4の角度を保持しないため、オットマンS4をいずれの方向にも自在に回動させることができる。そのため、(C5)の状態から再度オットマンS4を矢印方向に回動させることにより、捩じりコイルばね156の付勢力を伴ってオットマンS4を(C6)に示すシートクッションS1の底面に対向する収納位置に移動させることができる。
図15の(D1)に示すように、オットマンS4が仮収納位置にある状態から矢印で示す方向にさらに回動させると、(D2)に示すようにオットマンS4は角度調節機構6によって乗員の回動操作に応じた所望の回動角度(展開位置)で固定(仮収納位置側への回転が禁止)される。また、乗員は、係止部材147(図11)を操作してオットマンピラー135のシートクッションS1に対するロックを解除し、オットマンS4を前後方向の所望の位置に移動し、その位置に固定することができる。オットマンS4の使用を終了する際には、(D2)に矢印で示す向きにオットマンS4を回動させ、(D3)に破線で示す最展開位置まで移動させることにより、角度調節機構6による固定を解除することができる。角度調節機構6による固定が解除されると、オットマンS4は自重及び捩じりコイルばね156の付勢力によって下方に回動し、仮収納位置に保持される。
オットマンS4が仮収納位置にあるときに、シートSを使用状態からダイブダウン状態に変化させる場合には、(E1)に示すように、乗員は、ハンドル68(図1)を操作してスタンド脚37のロック及びリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2を把持して矢印で示すように前方に回動させる。このとき、(E2)に示すように、オットマンS4の先端がフロア4の低位部12に当接し、シートクッションS1が前方斜め下に移動することによってフロア4から後方斜め上向きの力がオットマンS4の先端に加わり、オットマンS4が収納位置側に回動する。(E3)に示すようにシートバックS2が完全に倒れたシートSのダイブダウン状態においては、オットマンS4は捩じりコイルばね156の付勢力を受けて収納位置に位置しており、かつディテント機構165によって保持される。したがって、図14の(C)に一連の動作を示した、乗員がシートSをダイブダウン状態から使用状態に戻す操作を行ったときには、シートSが使用状態に戻ってもオットマンS4は収納位置に保持されたままとなる。
図15に戻り、シートSが取り得る姿勢をさらに説明する。(F1)に示すように、シートクッションS1がチップアップ位置にあるときには、ハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除することにより、シートバックS2をシートクッションS1と共に前方に回動させることができる。シートバックS2及びシートクッションS1は、ハンドル68を戻した位置で固定される。例えば、(F2)に示すように、シートバックS2及びシートクッションS1が直立した位置でリクライニング機構3をロックさせることができる。また(F3)に示すように、シートバックS2が直立位置よりも前方に回動した前傾位置でリクライニング機構3をロックさせることもできる。当然ながら、(F1)〜(F3)に示したいずれの状態においても、第1把持部材118を操作してスライド機構2のロックを解除し、シートバックS2及びシートクッションS1を前後動させることができる。
あるいは、(G1)に示すように、シートSがチップアップ姿勢にあるときに、乗員はスタンド脚37を使用位置に回動させてチップアップ機構5のロックを解除し、(G2)に示すようにシートクッションS1をシートバックS2に対して相対回動させることができる。乗員は、スタンド脚37を収納位置に戻すことによって、シートバックS2に対してシートクッションS1を任意の位置でロックすることができる。更に、この状態で乗員がハンドル68を操作してリクライニング機構3のロックを解除し、シートバックS2をシートクッションS1と共に前方に回動させて(G3)に示す前傾姿勢でシートSを固定することも可能である。なお、(G3)の状態にシートSの姿勢を変化させる場合には、(F3)の状態からスタンド脚37を操作してチップアップ機構5のロックを解除し、シートクッションS1を前方に回動させてもよい。
(オットマンの周囲の詳細構造)
以下、オットマンS4の取付構造について詳細に説明する。図2及び図11に示すように、クッション前メンバ86は、横断面が円形の金属パイプから形成されている。クッション前メンバ86は、左右方向において、センター支持部材91の左側縁とスタンド脚37の左アーム93の右側縁との間に対応する部分の下部と、センター支持部材91の右側縁とスタンド脚37の右アーム93の左側縁との間に対応する部分の下部とに、前後に延びる凹部143がそれぞれ形成されている。凹部143は、その前端及び後端がクッション前メンバ86の前面及び後面に到達している。左右一対の凹部143は、クッション前メンバ86の下部をプレス等により凹ませることによって形成されている。図11及び図17に示すように、クッション前メンバ86の上部は、円周面に形成されている。クッション前メンバ86の凹部143が形成された部分の横断面は、下部が平面状になった半円形となっている。すなわち、凹部143の底部は平面に形成されている。
各凹部143には、ピラー支持部141が接合されている。ピラー支持部141は、両端が開口した断面四角形の筒形に形成されている。ピラー支持部141は、長手方向における中間部の上部が凹部143に突入するように配置されている。ピラー支持部141は、その上面が凹部143の底面に面接触し、溶接によってクッション前メンバ86に接合されている。ピラー支持部141の上部及び凹部143は、互いに相補的な形状に形成されているため、ピラー支持部141の上部及び凹部143は接触面積が広く、溶接代を広く確保することができる。詳細には、ピラー支持部141の上面及び凹部143の底面は、それぞれ平面に形成されており、面接触する面積が広く確保される。また、凹部143を形成し、ピラー支持部141の上部を突入させる構成としたため、接合部の高さを抑制することができ、シートクッションS1をコンパクトに形成することができる。
左右のピラー支持部141は、各凹部143から互いに平行に前方及び後方に突出している。また、図17に示すように、左右側から見て、各ピラー支持部141は、前端が後端に対して上方に配置されるように、水平面に対して傾斜して直線状に延びている。また、左右側から見て、各ピラー支持部141は、シートクッションS1が着座位置にあるときに、前上がりに傾斜する左右のクッションサイドフレーム85の前部と略平行に延びている。また、左右側から見て、各ピラー支持部141は、シートクッションS1が着座位置にあるときに、センター支持部材91及び左右のクッションサイドフレーム85に支持されたシートクッションパッドP1の下面の上下において対応する部分に対して平行、又は後方に進むほど上下に距離が離れるように傾斜して配置されていてもよい。このように配置されると、ピラー支持部141に支持されるオットマンピラー135の先端部(後端部)がシートクッションパッドP1の下面から離れるように配置されるため、シートクッションS1に乗員が着座し、シートクッションパッドP1が下方に撓む場合にもシートクッションパッドP1とオットマンピラー135との接触が避けられる。これにより、座り心地が損なわれることがない。
図11及び図16に示すように、ピラー支持部141に挿入されるサポート142は、外面に凹凸を有し、ピラー支持部141にがた付きなく挿入される。サポート142は、前端部がピラー支持部141よりも幅が広く形成されて、ピラー支持部141の前端面に当接し、後端部がピラー支持部141を通過して後方に突出する。サポート142の後端部は、前後方向においてクッション前メンバ86とアーム93の前端との間に配置されている。サポート142は、アーム後方に延び前後長が長くなるほどオットマンピラー135の支持安定性が向上するため、アーム93と干渉しない範囲で長い方、すなわち後端が後方に配置されることが好ましい。サポート142の後端部には爪203が形成されており、爪203がピラー支持部141の後端面に係合することによって、サポート142はピラー支持部141に固定される。ピラー支持部141に挿入されるサポート142の内孔204は、断面が円形であり、軸線が直線状に延びている。内孔204の軸線は、ピラー支持部141の軸線と同軸に配置されている。内孔204の直径は、オットマンピラー135の直径よりも若干大きく形成されている。
サポート142の前端部内には、内孔204と直交する方向に延びるガイド孔205が形成されている。ガイド孔205の一端は、サポート142の外面に開口している。係止部材147は、中央に貫通孔207が形成された板状部材であり、ガイド孔205に挿入されている。係止部材147は、その一端部に、ガイド孔205から外部に突出してサポート142の外面に配置される操作部148を有している。係止部材147は、ガイド孔205に挿入方向及び抜け出し方向に変位可能に取り付けられており、図示しないストッパによって抜け出しが所定位置で規制されている。係止部材147とサポート142との間には、係止部材147を抜け出し方向に付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね209が設けられている。図7及び図17に示すように、サポート142の前端部は、シートクッションパッドP1及び表皮SKに貫通するように形成された通路210を通過して前方に延び、係止部材147の操作部148は、表皮SKの外面側、すなわちシートクッションS1の前端面125に配置されている。これにより、乗員は操作部148を容易に操作することができる。
図16に示すように、係止部材147の貫通孔207の直径は、サポート142の内孔204の直径以上の大きさに形成されている。通常時においては、係止部材147は、圧縮コイルばね209によって付勢され、貫通孔207の縁部がオットマンピラー135の側面を押圧する。乗員によって係止部材147の操作部148が圧縮コイルばね209の付勢力に抗して押されると、貫通孔207と内孔204とが一致し、係止部材147はオットマンピラー135の側面から離れる。すなわち、係止部材147はオットマンピラー135との係合を解除する。
オットマンピラー135の係止溝146は、オットマンピラー135の長手方向に互いに間隔をおいて複数個形成されている。オットマンピラー135の最も先端側に配置された係止溝146よりも先端側の部分には、係止溝146と形状が異なるロック溝211が形成されている。各係止溝146は、周方向に所定の長さだけ延び、オットマンピラー135の長手方向における基端側の側壁部及び先端側の側壁部が傾斜面213となっている。これにより、係止溝146は、底部から開口端側に進むに従って、オットマンピラー135の長手方向において基端側及び先端側に幅が広くなっている。ロック溝211は、周方向に所定の長さだけ延び、オットマンピラー135の長手方向における基端側の側壁部及び先端側の側壁部がオットマンピラー135の長手方向に直交する面となる肩面214に形成されている。
係止部材147の貫通孔207の内縁は、オットマンピラー135のピラー支持部141に対する挿入長さに応じて係止溝146又はロック溝211に突入し、係止溝146又はロック溝211と係合する。係止部材147と係止溝146又はロック溝211との係合によって、オットマンピラー135のピラー支持部141に対する挿入長さが維持される。すなわち、シートクッションS1に対するオットマンS4の位置が維持される。係止溝146は、オットマンピラー135の長手方向における両端部が傾斜面213であるため、係止部材147が係止溝146に係合した状態でオットマンピラー135に挿入方向又は抜き出し方向に所定値以上の荷重を加えると、係止部材147は、係止溝146の傾斜面213を摺動して係止溝146から離脱し、オットマンピラー135の挿入方向又は抜き出し方向への移動が可能になる。すなわち、係止溝146の係止部材147との係合は、オットマンピラー135の位置を所定の荷重で保持することができる。
一方、ロック溝211は、オットマンピラー135の長手方向における両端部がオットマンピラー135の長手方向に直交する肩面214であるため、係止部材147がロック溝211に係合した状態でオットマンピラー135に挿入方向又は抜き出し方向に荷重が加わっても、係止部材147はロック溝211から離脱することはできない。各係止溝146よりもオットマンピラー135の先端側に設けられたロック溝211と係止部材147とが係合することによって、オットマンピラー135がピラー支持部141から完全に抜け出すことが防止される。係止部材147がロック溝211に係合した場合には、乗員が係止部材147の操作部148を圧縮コイルばね209に抗して押し込むことによって、係止部材147とロック溝211との係合が解除され、乗員はオットマンピラー135の挿入長さ、すなわちオットマンS4の位置を調節することができる。オットマンピラー135の先端部(後端部)は、挿入長さに関わらず、前後方向においてスタンド脚のアーム部の端部よりも常に前方に配置されるように長さが設定されていることが好ましい。
図11及び図17に示すように、オットマンピラー135の基端部は、シートクッションS1が着座位置にある状態において、下方に向けて約直角に湾曲している。オットマンピラー135の基端部は、上下に延びる部分の前側部(湾曲部の外周側部分)においてオットマンS4のベースメンバ130の側面に溶接によって接合されている。すなわち、オットマンピラー135の基端部は、ベースメンバ130の接線方向に延び、オットマンピラー135の長手方向において所定の長さをもってベースメンバ130に溶接されている。ベースメンバ130は、オットマンピラー135が溶接される部分に、オットマンピラー135の側部に対応する凹部143を有してもよい。オットマンピラー135が断面円形であるため、凹部143は例えば、半円形の凹面に形成されるとよい。凹部143は、ベースメンバ130をプレス等により凹ますことによって形成されてよい。
図17では、破線でオットマンS4の収納位置を示している。オットマンピラー135は、オットマンS4が収納位置にあるときに、オットマン前メンバ132やオットマン補助メンバ134、オットマンパッドP4等によって構成されるオットマンS4の本体部とクッション前メンバ86との間に配置される。図17に示すように、オットマンピラー135は、基端部を除く他の部分が上方に凸となるように湾曲している。なお、オットマンピラー135の湾曲は、サポート142の直線状に延びる内孔204を通過可能な程度に湾曲している。すなわち、内孔204の直径がオットマンピラー135の直径よりも大きいため、オットマンピラー135は、湾曲していても内孔204を通過することができる。オットマンピラー135は、内孔204内において、前後の両端部が内孔204の下部に接触し、前後方向における中間部が内孔204の内面上部に接触している。これにより、オットマンピラー135の先端部(後端部)は、内孔204(ピラー支持部141)の軸線Aよりも下方に配置される。オットマンピラー135は、ピラー支持部141から後方に進むほど下方に変位する。これにより、オットマンピラー135は、ピラー支持部141から後方に進むほど、クッションサイドフレーム85やセンター支持部材91に支持されるシートクッションパッドP1の下面からの距離が大きくなる。これにより、シートクッションS1に乗員が着座し、シートクッションパッドP1が下方に撓む場合にもシートクッションパッドP1とオットマンピラー135との接触が避けられ、座り心地が損なわれることがない。
図5に示すように、左オットマンピラー135は、センター支持部材91の左側縁と左アーム93の右側縁との間を前後に延び、右オットマンピラー135は、センター支持部材91の右側縁と右アーム93の右側縁との間を前後に延びる。また、オットマンピラー135は、ピラー支持部141及びサポート142に対して挿入長さが最も長くなった状態(最挿入状態という)において、その先端部がスタンド脚37の横部材94と干渉しない長さに形成されている。すなわち、スタンド脚37が収納位置にある状態において、最挿入状態におけるオットマンピラー135とスタンド脚37の横部材94とが互いに重ならないように、オットマンピラー135の長さが設定されている。これにより、オットマンピラー135は、スタンド脚37の収納位置、使用位置に関わらず、スタンド脚37に干渉しないように配置されている。また、左右のオットマンピラー135は、スタンド脚37が収納位置にあるときに、左右から見て左右のアーム93と広範囲において重なる位置に配置されるため、シートクッションS1の厚み方向においてコンパクトに配置される。
図17及び図18に示すように、オットマンS4のベースメンバ130には、ベースメンバパッド138が被せられている。ベースメンバパッド138は、オットマンピラー135に対応する部分にオットマンピラー135の基端部が通過可能な切欠部215を有し、ベースメンバ130に周方向から巻き付けるようにして装着される。ベースメンバパッド138は、その外面側に設けられた表皮216と、表皮216の周方向における両端部のそれぞれに取り付けられた係合部218とを有している。各係合部218は、互いに係合可能なフックであり、各係合部218が互いに係合することによって、ベースメンバパッド138は筒状に形成され、ベースメンバ130を覆う。互いに係合した両係合部218は、ベースメンバ130に対して下方に配置されている。他の実施形態では両係合部218は、ベースメンバ130のシートクッションS1の前端面125側を向く側(後側)に配置されていてもよい。換言すると、両係合部218は、ベースメンバ130においてオットマンピラー135の基端部が溶接された部分と対応する位置の近傍に配置される。これにより、ベースメンバパッド138の接合部である両係合部218は、乗員から見え難い位置に配置され、美観が向上する。また、乗員がオットマンS4に脚を乗せたときに、ベースメンバパッド138の接合部(両係合部218)と脚との接触が避けられ、快適性が向上する。なお、他の実施形態では、フックに代えて面ファスナやスナップボタン等の他の係合手段を係合部218に適用してもよい。
本実施形態に係るシートSが、自動車の後部右席のシートSであるとすると、シートクッションS1の前端面125において、左サポート142の前端部が配置された部分の左側には、所定の間隔をおいてグロメット127が表皮SKに結合されている。なお、自動車の後部左席のシートであるとすると、グロメット127は、シートクッションS1の前端面125において、右サポート142の前端部が配置された部分の右側に配置されるとよい。グロメット127は、表皮SKに形成された孔を補強する目的で使用され、周縁部において表皮SKに形成された孔の縁に接合され、中央部に貫通孔を有している。グロメット127は、操作部材の端部を構成する第1把持部材118がシートクッションS1から引き出される引出孔を構成する。グロメット127は、樹脂の成形品であってよい。シートクッションパッドP1は、第1レール用アウタチューブ114のブラケット117に係止された他端とグロメット127とを直線状に結ぶ線分に沿った通路220を有している。通路220は、前後に延びる貫通孔として形成されている。第1把持部材118は、シートクッションパッドP1に形成された通路220及びグロメット127の貫通孔を通過して、端部がシートクッションS1の外部に延出している。
図17に示すように、各オットマンピラー135の基端部が下方に向けて湾曲し、その基端部にベースメンバ130が接合されているため、ベースメンバ130はサポート142の前端部よりも下方に配置されている。そのため、図1及び図18に示すように、グロメット127は、上下方向においてベースメンバ130よりも上方に配置されている。そのため、シートクッションS1の外部に延出した第1把持部材118は、水平方向に延びることによって、ベースメンバパッド138が装着されたベースメンバ130の上方に延びることができる。これにより、第1把持部材118はオットマンS4の上面上に載置可能になっている。
ベースメンバ130は、オットマンS4の回動軸をなすため、オットマンS4が回動して展開状態となっても、位置が維持される。そのため、ベースメンバ130より上方に配置されたグロメット127から引き出される第1把持部材118は、オットマンS4の展開位置に関わらず、オットマンS4の上方に延出することができる。
本実施形態に係るシートSは、チップアップ位置において、シートクッションS1の前端面125がシートバックS2の上面よりも上方に配置されるように、シートクッションS1及びシートバックS2の寸法、シートバックS2に対するシートクッションS1の回動位置が定められている。チップアップ位置において、シートクッションS1の前端面125がシートバックS2の上面よりも上方に配置されるため、グロメット127もシートバックS2の上面よりも上方に配置される。
以上のように構成したシートSの効果について説明する。本実施形態では、第1レール用ケーブル31に接続された第1把持部材118が、シートクッションS1の前端面125に設けられたグロメット127からオットマンS4のベースメンバ130の上方に突出しているため、乗員はオットマンS4に阻害されることなく操作部材を容易に把持することができる。また、乗員による操作部材の引っ張り操作は、オットマンS4から離れた位置で行うことができるため、オットマンS4が操作の障害になることがない。
オットマンS4は、オットマンピラー135によってクッション前メンバ86に取り付けられ、ベースメンバ130を回動中心として左右のオットマンサイドフレーム131及びオットマンパッドP4が回転することができる。グロメット127は、ベースメンバ130よりも上方に配置されているため、第1把持部材118は容易にベースメンバ130を含むオットマンS4の上方に突出することができる。第1把持部材118は回動中心となるベースメンバ130の上方に延びることができるため、オットマンS4の回動(展開状態)に関わらず、オットマンS4の上方に延びることができる。
ベースメンバ130は、下方に向かって湾曲したオットマンピラー135の基端部に取り付けられているため、ベースメンバ130はシートクッションS1の前端面125に対して下方に偏倚して配置される。このため、第1把持部材118はオットマンS4の上方に容易に突出することができる。また、グロメット127を、シートクッションS1の前端面125において、より一層下方に配置することが可能になる。
本実施形態に係るシートSが自動車の後部右席として使用されると、第1把持部材118は、後部左席に着座した乗員から操作し易いと共に、運転席や助手席に着座した乗員からも操作し易くなる。また、本実施形態に係るシートSに着座した乗員は、右側の乗降口を通って乗り降りするため、乗員の左側に位置する第1把持部材118は乗員の乗り降りを妨げない。また、第1把持部材118が乗員に意図せず引っ掛かることが防止され、意図しない操作が防止される。
オットマンピラー135は、シートクッションS1の前端面125を通過してクッションメンバに支持され、グロメット127は、左右方向においてオットマンピラー135(ピラー支持部141)とクッションサイドフレーム85との間に配置されているため、第1レール用ケーブル31及び第1把持部材118は、オットマンピラー135とクッションサイドフレーム85との間を通過するように配置され、シートクッションS1をコンパクトにすることができる。
第1把持部材118が、クッション前メンバ86の下方を通過するため、シートに着座した乗員の荷重が第1把持部材118に加わることが防止され、第1把持部材118の破損が防止される。また、第1把持部材118が、乗員の荷重によって、クッション前メンバ86とシートクッションパッドP1との間で挟持されることがなく、第1把持部材118の操作が円滑になる。
シートクッションS1がチップアップ位置にあるときに、グロメット127がシートバックS2よりも上方にあるため、乗員がシートSの後方から第1把持部材118を把持し、操作し易くなる。これにより、シートクッションS1がチップアップ位置にあるシートSを、シートSの後方の荷室にいる乗員が、第1把持部材118を把持してシートSを前後にスライド移動させることができる。
第1把持部材118は、可撓性を有する帯状部材に形成されているため、オットマンS4を避けてオットマンS4の上方に向かって容易に突出することができる。また、第1把持部材118は、オットマンS4の上面に沿うことができるため、安定性良くオットマンS4に支持される。また、乗員がオットマンS4に脚を載せ、乗員の脚とオットマンとの間に第1把持部材118を挟み込んだ場合にも、第1把持部材118は扁平な帯状であるため、乗員は不快さを感じ難い。
本実施形態では、グロメット127をシートクッションS1の前端面125に設け、グロメット127に第1把持部材118を通したため、第1把持部材118はグロメット127の貫通孔の縁部において屈曲することができる。そのため、シートクッションS1内において第1把持部材118が延在する方向と異なる方向に、乗員は第1把持部材118を引っ張ることができる。これにより、第1把持部材118を引っ張ることができる角度範囲が大きくなり、第1把持部材118の操作性が向上する。
本実施形態では、左右一対のオットマンピラー135が、左右方向においてセンター支持部材91と対応するアーム93との間に配置されるため、シートクッションS1の厚み(上下方向における長さ)を小さくすることができる。これにより、オットマンピラー135及びスタンド脚37は、互いに干渉を避けつつ、コンパクトに配置される。
ピラー支持部141がクッション前メンバ86の下方を横切る部分では、ピラー支持部141がクッション前メンバ86に形成された凹部143に嵌り込む形態となるため、上下方向における寸法(厚み)が小さくなる。これにより、シートクッションS1の厚みが小さくなる。また、凹部143が形成される部分においてもクッション前メンバ86の上部が円周面に維持されるため、高い剛性を確保することができると共に、シートSに着座する乗員の脚に違和感を与え難い。
また、凹部143の底面を平面にし、ピラー支持部141の上部を平面にして、互いに相補的な形状にすることによって、凹部143とピラー支持部141の上部とが互いに密着し、面接触する面積を広くすることができるため、溶接代を広く確保することができる。これにより、ピラー支持部141とクッション前メンバ86との接合部の剛性が高められる。
オットマンピラー135の基端部は、基端側に進むほど下方に向かうように湾曲し、その上下に延びる部分の前側部においてベースメンバ130に接合されている。これにより、ベースメンバ130とオットマンピラー135との接合部における接触面積を大きくして溶接代を広く確保することができ、ベースメンバ130とオットマンピラー135との接合部の剛性が高められる。また、オットマンピラー135がベースメンバ130の上方を跨がないため、乗員が脚をオットマンS4に載せたときに、乗員の脚とオットマンピラー135との接触が避けられる。また、オットマンピラー135の前端部の湾曲形状や、オットマンピラー135の前端部に対するベースメンバ130の接合位置を変更することによって、シートクッションS1に対するベースメンバ130(オットマンS4)の上下方向位置を容易に設定することができる。
オットマンピラー135の先端部は、先端側(後方)に進むほど下方に進むため、シートクッションS1のシートクッションパッドP1の下面との接触を避けることができる。また、ピラー支持部141が、その軸線がシートクッションパッドP1の下面と平行又はシートクッションパッドP1の下面よりも後方に進むほど下方に進むように傾斜しているため、ピラー支持部141に支持されたオットマンピラー135の先端部は、先端側に進むほどシートクッションパッドP1の下面からの距離が大きくなり、乗員が着座しパッドが下方に撓むときにもオットマンピラー135とシートクッションパッドP1との接触を避けることができる。これにより、シートに着座した乗員が、違和感(例えば、シートクッションS1内に異物の存在を感じる等)を覚えることがなく、快適性が確保される。
オットマンピラー135がピラー支持部141に対して進退可能に支持されるシートSにおいて、係止部材147の操作部148がシートクッションS1の前端面125に配置されるため、着座した乗員が操作部148を容易に操作することできる。これにより、乗員は、オットマンS4の位置調節を操作性良く行うことができる。
ベースメンバ130にベースメンバパッド138が装着されるため、ベースメンバ130は快適性良く乗員の脚を支持することができる。ベースメンバパッド138の係合部218は、ベースメンバ130に対して下方又はシートクッションS1側に配置されるため、オットマンS4に載置される乗員の脚との接触が避けられ、快適性が損なれない。また、係合部218は、乗員から見え難い位置に配置されるため、オットマンS4の美観が損なわれることがない。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、操作部材としての第1把持部材118は、オットマンS4の上方だけでなく、オットマンS4の左右方向を通過して前方に延びていてもよい。左右方向においてオットマンS4がシートクッションS1より小さい場合には、前方から見てシートクッションS1の前端面125には、オットマンS4に覆われない部分が左又は右端部に形成される。このオットマンS4に覆われない部分にグロメット127を設けてもよい。また、上記の実施形態では、凹部143をクッション前メンバ86の下部に形成したが、他の実施形態では凹部143をクッション前メンバ86の上部に形成し、ピラー支持部141がクッション前メンバ86の上側を前後に跨ぐように配置してもよい。