JP2015122528A - 強誘電体膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することを課題とする。
【解決手段】 本発明の一態様による強誘電体膜は、ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜と、前記(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜の上及び下の少なくとも一方に形成された(001)に優先配向した結晶性酸化物と、を具備し、Xが下記式を満たす。
0.3≦X≦0.7
【選択図】 図1

Description

本発明は、強誘電体膜およびその製造方法に関する。
従来のPb(Zr,Ti)O3(以下、「PZT」という。)膜の製造方法について説明する。
4インチウエハ上に例えば(111)に配向したPt膜を形成し、このPt膜上にスピンコータによってPZTゾルゲル溶液を回転塗布する。次に、この塗布されたPZTゾルゲル溶液をホットプレート上で加熱保持して乾燥させ、水分を除去した後、さらに高温に保持したホットプレート上で加熱保持して仮焼成を行う。これを複数回繰り返しPZTアモルファスを生成する。
次いで、仮焼成を行った後のPZTアモルファスに加圧式ランプアニール装置(RTA: rapidly thermal anneal)を用いてアニール処理を行ってPZT結晶化を行う。この結晶化されたPZT膜はペロブスカイト構造からなる。(例えば特許文献1参照)
一方、PZTはTcが300℃以上に存在し、良好な強誘電性と圧電性を有するが、産業界全体が鉛フリーを目指す中において、鉛フリー化の達成が課題である。
WO2006/087777
上述したように産業界において非鉛の材料からなる強誘電体膜の作製が求められている。
本発明の一態様は、非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することを課題とする。
下記の(1)〜(17)は、本発明の複数の態様について説明するものである。
(1)ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜と、
前記(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜の上及び下の少なくとも一方に形成された(001)に優先配向した結晶性酸化物と、
を具備し、
Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
0.3≦X≦0.7
(2)上記(1)において、
前記結晶性酸化物は、疑ペロブスカイト構造を有するビスマス層状構造強誘電体またはタングステン・ブロンズ型強誘電体であることを特徴とする強誘電体膜。
(3)上記(1)または(2)において、
前記ビスマス層状構造強誘電体は、(Bi2+(Am−13m+12−(m=1〜5)またはBim−13m+3(m=1〜5)であることを特徴とする強誘電体膜。
(4)上記(2)または(3)において、
前記ビスマス層状構造強誘電体は、BiTi12または(Bi4−xLa)Ti12であり、xは下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜。
0<x<1
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか一項において、
前記結晶性酸化物は、島状又は膜状に形成されていることを特徴とする強誘電体膜。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれか一項において、
前記結晶性酸化物の厚さは2〜30nmであることを特徴とする強誘電体膜。
ここでいう結晶性酸化物の厚さは、結晶性酸化物が(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜の上及び下の一方のみに形成されている場合はその厚さを意味し、結晶性酸化物が(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜の上及び下の両方に形成されている場合はその両方の合計厚さを意味する。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか一項において、
前記(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜は、ゾルゲル法により形成されていることを特徴とする強誘電体膜。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか一項において、
前記(K1−XNa)NbO膜またはBiFeO膜と、その上及び下の少なくとも一方に形成された前記結晶性酸化物とを具備する強誘電体膜が積層されていることを特徴とする強誘電体膜。
(9)基板上にK、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜上に島状又は膜状の第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成し、
前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第1の結晶性酸化物は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(10)上記(9)において、
前記第1の結晶性酸化物は、疑ペロブスカイト構造を有するビスマス層状構造強誘電体またはタングステン・ブロンズ型強誘電体であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(11)上記(10)において、
前記ビスマス層状構造強誘電体は、BiTi12または(Bi4−xLa)Ti12であり、xは下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
0<x<1
(12)上記(9)乃至(11)のいずれか一項において、
前記基板上に塗布膜を形成する前に、前記基板上に島状又は膜状の(001)に優先配向した第2の結晶性酸化物形成用材料膜を形成しておき、
前記塗布膜は、前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜上に形成され、
前記強誘電体材料膜、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜および前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜が酸素雰囲気で熱処理され、
前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第2の結晶性酸化物は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(13)基板上に、島状又は膜状の第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に、K、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に塗布膜を形成し、
前記塗布膜を仮焼成することにより、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に強誘電体材料膜を形成し、
前記強誘電体材料膜上に遮蔽膜を形成し、
前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理しながら前記遮蔽膜によってK及びNaが前記強誘電体材料膜中から離脱するのを抑制することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成し、
前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第1の結晶性酸化物は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(14)上記(9)乃至(13)のいずれか一項において、
前記ゾルゲル溶液に含有する前記K、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol%であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(15)上記(9)乃至(14)のいずれか一項において、
前記強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(16)上記(9)乃至(15)のいずれか一項において、
前記熱処理は、0.0993〜1.986MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
(17)上記(9)乃至(16)のいずれか一項において、
前記強誘電体膜は、ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜であり、Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
0.3≦X≦0.7
本発明の一態様によれば、非鉛の材料からなる強誘電体膜を作製することができる。
本発明の一態様に係る強誘電体膜を模式的に示す断面図である。 ビスマス層状構造強誘電体であるBIT(BLT)の結晶構造を示す図である。 タングステン・ブロンズ型結晶構造を模式的に示す図である。 サンプル1の強誘電体膜の評価を行った結果を示す特性図である。 c軸配向PZTの代表的XRDチャートを示す図である。
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図1は、本発明の一態様に係る強誘電体膜を模式的に示す断面図である。
本実施形態による強誘電体膜は、ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜12であり、Xは下記式(1)を満たすことが好ましい。
(1)0.3≦X≦0.7
なお、本実施形態では、強誘電体膜として(K1−XNa)NbO膜12を用いているが、強誘電体膜としてBiFeO膜を用いても良い。このBiFeOは、例えば第3回大阪大学産業科学研究所ナノテクノセンター研究会(ナノテクノロジによる予測、形成、評価 平成18年11月1日)マルチフェロイックBiFeO薄膜の誘電特性においても発表されているように、良好な強誘電ヒステリシスを有することが知られており、大きな強誘電性は大きな圧電性に繋がることから非鉛の材料からなる強誘電体膜として用いることができる。
(K1−XNa)NbO膜12の上及び下の少なくとも一方には結晶性酸化物11,13が形成されている。
結晶性酸化物11,13は、(001)に優先配向したものである。優先配向とは、X線構造解析を行った際のΘ−2Θ解析チャートの各ピークの最も強いものが次に強いものの2倍以上である場合をいう。例えば図5を用いて具体的に説明する。ただし、図5の縦軸のXRD反射強度はアナログ強度表示(cps)であり、対数表示を用いていない。PZTの各ピークの最も強い(001)の次は(110)であるが、2倍以上の強度差があるので、(001)を優先配向と呼ぶ。
結晶性酸化物11,13を(001)に優先配向させることにより、(K1−XNa)NbO膜を(001)に配向させることができ、その結果、圧電特性を向上させることができる。
結晶性酸化物11,13は、疑ペロブスカイト構造を有するビスマス層状構造強誘電体またはタングステン・ブロンズ型強誘電体であることが好ましい。
ビスマス層状構造強誘電体は、その特異な結晶構造より、結晶成長方向に異方性を有することが知られている(論文、Takeshi Kijima et al.:Jpn.J.Appl.Phys.35(1996)1246)。ビスマス層状構造強誘電体は、素早く(001)に優先配向して結晶化される特性(例えば(111)配向したPt膜の上でも勝手にc軸配向である(001)配向して結晶化される特性)を有しており、一般式(Bi2+(Am−13m+12−(m=1〜5)またはBim−13m+3(m=1〜5)で表される結晶構造であり、(Bi2+層の間に複数の疑ペロブスカイト構造が挟まれた構造をしている。ここでmは、単位格子における疑ペロブスカイト層中の酸素八面体の数を示している。この強誘電体については、タングステン・ブロンズ型強誘電体と同様にBサイトイオンを中心とした酸素八面体がわずかに回転や傾斜することによって強誘電性を示すと考えられ、タングステン・ブロンズ構造と同様に圧電異方性が大きい。
ビスマス層状構造強誘電体は、図2に示すように、例えばBITであるBiTi12またはBLTである(Bi4−xLa)Ti12が挙げられ、具体的には(Bi3.25La0.75)Ti12である。なお、xは下記式を満たす。
0<x<1
タングステン・ブロンズ型強誘電体の結晶構造は、タングステン酸ナトリウム(NaWO),x=0.0〜1.0の研究を通じて見出された結晶構造であり、タングステン酸ナトリウムはx=1.0組成で黄金色を呈することから、一般にタングステン・ブロンズ型結晶構造と呼ばれている。タングステン・ブロンズ化合物はペロブスカイト構造ABOにおけるAサイトイオンの一部が欠損した構造ABO(x<1)を基本としており、一般に全体を整数倍した形の組成式で表現される。図3に、典型的なタングステン・ブロンズ型結晶構造を示す。本構造の強誘電体については、Bサイトイオンを中心とした6個の酸素イオンから構成される酸素八面体が電界の変化にともない、わずかに回転や傾斜することによって強誘電性を発現する。この構造の代表的な無鉛圧電セラミックス材料としては、BaNaNb15がある。
次に、本実施形態による強誘電体膜の製造方法について図1を参照しつつ詳細に説明する。この強誘電体膜は、(K1−XNa)NbOで表わされるペロブスカイト構造強誘電体からなり、Xは上記式(1)を満たす。
(基板)
例えば6インチSiウエハのような基板上に所定の結晶面に配向した下地膜を形成する。この下地膜には、例えば(111)配向させたPt膜またはIr膜が用いられる。
次に、下地膜上に(001)にあらかじめ優先配向した結晶性酸化物11を形成する。この結晶性酸化物11は、島状又は膜状の結晶性酸化物であってもよい。
または、(001)に優先配向した結晶性酸化物を形成するための公知のゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより下地膜上に塗布膜を形成し、この塗布膜を仮焼成することにより、下地膜上に塗布膜からなる結晶性酸化物形成用材料膜を成膜したものでもよい。なお、上記の塗布膜の形成及び仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる結晶性酸化物形成用材料膜を成膜してもよい。
次に、(K1−XNa)NbO膜12を形成するためのゾルゲル溶液を用意する。このゾルゲル溶液は、K、Na及びNbを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。ゾルゲル溶液に含有するK、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol%であるとよい。
前記ゾルゲル溶液は、分子構造が非中心対称化され、非線形を発現しているケギン型構造を有するヘテロポリ酸イオンを構成要素とし、前記ヘテロポリ酸イオンのポリ原子が少なくとも1つ欠損しているか、または、ヘテロポリ酸イオンの一部のポリ原子が他の原子で置換されているヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式: [ X M M ′ 1 2 − y 4 0n − ( 式中、Xはヘテロ原子、M はポリ原子、M ′ はM とは異なるポリ原子、n は価数、y = 1 〜 1 1 である。) で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、一般式: [ X M 1 13 9n − ( 式中、X はヘテロ原子、M はポリ原子、n は価数である。) で表されるケギン型構造を有するものであっても良く、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
また、前記ヘテロポリ酸イオンが、次の一般式: [ X M M ′ 1 1 − z3 9n − ( 式中、Xはヘテロ原子、M はポリ原子、M ′ はM とは異なるポリ原子、n は価数、z = 1 〜 1 0 である。) で表されるケギン型構造を有するものであり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものである。
前記ヘテロポリ酸イオンの内、ヘテロ原子が、B、Si、P、S、Ge、As、Mn、Fe、Coからなる群より成り、ポリ原子が、Mo、V、W、Ti、Al、Nb、Taからなる群より成ることも可能であり、上記のヘテロポリ酸イオンを強誘電体セラミックスの前駆体構造の一部として含むものであっても良い。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン 、1,4-ジオキサン 、1,2-ジメトキシエタン アセトアミド 、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル 、ジクロロメタン 、ニトロメタン 、トリクロロメタン 、ジメチルホルムアミド 、モノメチルホルムアミド の何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸およびヘキサ不飽和脂肪酸のいずれかまたは複数の組み合わせである。
モノ不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ジ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
トリ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
テトラ不飽和脂肪酸としては、例えば、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ペンタ不飽和脂肪酸としては、例えば、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
ヘキサ不飽和脂肪酸としては、例えば、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられ、これらのいずれかまたは複数の組み合わせとして用いても良い。
次に、あらかじめ(001)に優先配向した結晶性酸化物11または結晶性酸化物形成用材料膜の上に上記のゾルゲル溶液を塗布する。このゾルゲル溶液の基板との接触を測定した結果は20°以下であった。なお、基板との接触角は1〜40°(好ましくは1〜20°)であれば良い。
ゾルゲル溶液の塗布は、スピンコート法により行う。これにより、結晶性酸化物11または結晶性酸化物形成用材料膜の上に塗布膜を形成し、この塗布膜を25〜450℃の温度(好ましくは450℃の温度)で仮焼成することにより、結晶性酸化物11または結晶性酸化物形成用材料膜の上に塗布膜からなる(K1−XNa)NbO材料膜を成膜する。なお、この塗布膜の形成及び仮焼成を複数回繰り返すことにより、結晶性酸化物11または結晶性酸化物形成用材料膜の上に複数の塗布膜からなる(K1−XNa)NbO材料膜を成膜してもよい。
次に、(K1−XNa)NbO材料膜上にあらかじめ(001)に優先配向した結晶性酸化物13または結晶性酸化物形成用材料膜を成膜する。この結晶性酸化物13または結晶性酸化物形成用材料膜は、上記の結晶性酸化物11または結晶性酸化物形成用材料膜と同様のものを用いることができる。
(結晶化方法)
結晶性酸化物形成用材料膜、(K1−XNa)NbO材料膜及び結晶性酸化物形成用材料膜を450〜900℃の温度(好ましくは900℃の温度)の酸素雰囲気で熱処理することにより、それらを結晶化することができる。この際の熱処理条件は、0.0993〜1.986MPaの圧力範囲で行うとよい。また、この際の熱処理条件は、加圧酸素雰囲気2〜20atm、50〜150℃/secの昇温速度で、1〜5min焼成するとよい。また、(K1−XNa)NbO材料膜を一括で結晶化する際の(K1−XNa)NbO材料膜の膜厚は300nm以上であることが好ましい。
このようにして結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した結晶性酸化物11,13は(001)に優先配向しており、また結晶化された(K1−XNa)NbO膜12は、Xが下記式(1)を満たすことが好ましい。
(1)0.3≦X≦0.7
この(K1−XNa)NbO膜12は、膜厚500nm以上の厚い膜であっても気泡をほとんど含まない。言い換えると、このようにして成膜することにより、良好な厚い膜を形成することができる。その理由は、殆ど膜厚方向に有機成分が消失するような構造からなっており、基板面内では殆ど収縮せず、酸化による膨張と相殺される程度である。したがって殆ど基板に反りはないのである。
なお、上記の(K1−XNa)NbO材料膜の成膜及び結晶化を繰り返すことにより、膜厚2μm以上の(K1−XNa)NbO膜12を形成することも可能である。
また上記のようにして結晶化された結晶性酸化物11,13の合計厚さは、1〜30nmであり、好ましくは15〜25nmであり、より好ましくは20nmである。
なお、図1では、強誘電体膜12の上及び下の両方に結晶性酸化物11,13を形成しているが、強誘電体膜12の上及び下の少なくとも一方に結晶性酸化物を形成してもよい。このように結晶性酸化物が強誘電体膜の上及び下の一方のみに形成されている場合は、その一方の結晶性酸化物の厚さが、1〜30nmであり、好ましくは15〜25nmであり、より好ましくは20nmである。
結晶性酸化物11,13における結晶が(K1−XNa)NbO材料膜を結晶化する際の核となるため、ペロブスカイト構造に結晶化されにくい(K1−XNa)NbO材料膜の結晶化を迅速に進めることが可能となる。このように結晶性酸化物11,13が結晶化の核として作用するため、(K1−XNa)NbO材料膜の少なくとも一方に結晶性酸化物が形成されていればよい。
(K1−XNa)NbO材料膜の下にのみ結晶性酸化物11を形成する場合は、(K1−XNa)NbO材料膜の上には遮蔽膜を形成しておくとよい。この遮蔽膜は、(K1−XNa)NbO材料膜を酸素雰囲気で熱処理して結晶化する際にK及びNaが(K1−XNa)NbO材料膜中から離脱するのを抑制するために機能するものであれば、種々のものを用いることができる。
また、結晶性酸化物11,13は、強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜12に比べて誘電率が高いことが好ましい。ここでいう誘電率が高いこととは、結晶性酸化物11,13全体の誘電率が強誘電体膜12全体の誘電率より高いことを意味し、いわゆる実質誘電率を意味する。これにより、結晶性酸化物11,13及び(K1−XNa)NbO膜12に直列に電圧を印加した際に、誘電率が低い(K1−XNa)NbO膜12に電界が加えられる。
本実施形態によれば、非鉛の材料からなる強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜12を作製することができる。
また、本実施形態では、(001)に優先配向した結晶性酸化物11,13を用いることにより、(K1−XNa)NbO膜を(001)に配向して結晶化させることができ、その結果、(K1−XNa)NbO膜の圧電特性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、(K1−XNa)NbO材料膜を、結晶性酸化物11と結晶性酸化物13によって挟んだ状態で結晶化の熱処理を行うため、(K1−XNa)NbO材料膜中のKとNaが抜けることを抑制でき、結晶化された(K1−XNa)NbO膜12の膜質を向上させることができる。
また、(K1−XNa)NbO材料膜に結晶化の熱処理を行う際に加圧酸素雰囲気とすることにより、(K1−XNa)NbO材料膜中のKとNaが抜けることを抑制でき、結晶化された(K1−XNa)NbO膜12の膜質を向上させることができる。
また、結晶性酸化物11,13は、(K1−XNa)NbO材料膜を結晶化した後に除去してもよい。この際の除去方法は、例えばエッチング法を用いる。
また、本実施形態では、図1に示すように結晶性酸化物11、(K1−XNa)NbO膜12、結晶性酸化物13の順に積層した強誘電体膜を形成しているが、(K1−XNa)NbO膜13と、その上及び下の少なくとも一方に形成された結晶性酸化物11とを具備する強誘電体膜を複数積層させてもよい。
6インチSiウエハ上に酸化シリコン膜を介して10〜30nmのTi膜をスパッタ法により成膜する。詳細には、RFスパッタリング方法により、形成した。Ti膜は白金と酸化シリコンの密着層の役割をしている。Ti膜の成膜条件はアルゴンガス圧0.2Pa、0.12kWの電源出力で20分の成膜時間で形成した。基板温度は200℃で行った。
次に、RTA(Rapid Thermal Anneal)によりTi膜に650℃の温度で5分間の熱処理を施す。酸素雰囲気で9.9atm、100℃/secで行った。
次に、Ti膜上に100nmの第1のPt膜をスパッタ法により550〜650℃の温度で成膜する。アルゴンガス圧0.4Pa、DCパワー100Wの電源出力で25分の成膜時間で形成した。
次に、第1のPt膜上に100nmの第2のPt膜を蒸着法により常温で成膜する。
3.3×10-3Torr、10kVの電源出力で4分の成膜時間で形成した。
次に、RTAによりSiウエハに650〜750℃の温度で1〜5分間の熱処理を施す。このようにして表面に(111)配向させたPt膜を形成した6インチSiウエハを用意する。
次に、このSiウエハ上に(001)に優先配向した結晶性酸化物を形成するためのBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜を成膜する。この際の成膜条件は下記のとおりである。
BiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜形成用ゾルゲル溶液としては、豊島製作所製、nブタノールを溶媒とするBi10%過剰のBi:La:Ti=3.65:0.75:3の比率で金属元素を混在した8重量%濃度のゾルゲル溶液を用いた。本溶液を用いて、BiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜のスピンコート形成を行った。スピンコータはミカサ株式会社製MS-A200を用いて行った。先ず300rpmで5秒、2000rpmで30〜60秒回転させた後、徐々に3000rpmまで回転を上昇させて10秒回転させた後、200℃のホットプレート(アズワン株式会社製セラミックホットプレートAHS-300)上に0.5min、大気中で放置した後、450℃のホットプレート(同AHS-300)上で1min、同じく大気中で放置した後、室温まで冷却した。このようにして、厚さ20nmのBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜をSiウエハ上に形成した。
次に、上記のBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜との接触角が40°以下、好ましくは20°以下であるゾルゲル溶液を用意する。詳細には、ゾルゲル溶液は、K、Na及びNbを含むヘテロポリ酸を含む原料溶液と、極性溶媒類と不飽和脂肪酸類を含有する。
(K1−XNa)NbO膜形成用原料溶液は、ヘテロポリ酸との混合からなり、ヘテロ原子が金属酸素酸骨格に挿入された(XlMmOn)x-型のポリ酸である。ポリ原子:M=Mo,V,W,Ti,Al,Nb,Taからなり、ヘテロ原子はHおよびC以外の元素を意味し、好ましくは、M=B,Si,P,S,Ge,As,Fe,Co,Biからなる酸化物膜形成用ゾルゲル溶液である。
極性溶媒類は、メチルエチルケトン 、1,4-ジオキサン 、1,2-ジメトキシエタン アセトアミド 、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル 、ジクロロメタン 、ニトロメタン 、トリクロロメタン 、ジメチルホルムアミド 、モノメチルホルムアミド の何れかまたは複数の組み合わせである。
不飽和脂肪酸類は、モノ不飽和脂肪酸として、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸が挙げられ、ジ不飽和脂肪酸として、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸が挙げられ、トリ不飽和脂肪酸として、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸が挙げられ、テトラ不飽和脂肪酸 として、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸が挙げられ、ペンタ不飽和脂肪酸として 、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸が挙げられ、ヘキサ不飽和脂肪酸として 、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸が挙げられる。
次に、BiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜上にゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、このBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜上に1層目の塗布膜が形成される。詳細には、500μLのゾルゲル溶液を塗布し、0〜500rpmまで3secで上昇させ、500rpmで3sec保持した後、2000rpmで60sec回転後、停止させた。
次に、ホットプレートにより1層目の塗布膜を200℃の温度で1分間加熱し、その後、450℃の温度で1分間仮焼成する。これにより、BiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜上に膜厚125nmの1層目の強誘電体材料アモルファス膜が形成される。
次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、1層目の強誘電体材料膜上に2層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、1層目の強誘電体材料膜上に膜厚125nmの2層目の強誘電体材料膜が形成される。
次いで、2層目の塗布膜と同様の方法で、2層目の強誘電体材料膜上に3層目の塗布膜を形成する。次いで、1層目の塗布膜と同様の方法で、3層目の塗布膜を加熱し、仮焼成する。これにより、2層目の強誘電体材料膜上に膜厚125nmの3層目の強誘電体材料膜が形成される。これを繰り返すことにより12層の強誘電体材料膜が形成される。このようにして12層からなる膜厚1.5μmの強誘電体材料膜を成膜することができる。
次に、この強誘電体材料膜上に(001)に優先配向した結晶性酸化物を形成するためのBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜を成膜する。この際の成膜条件は上記のBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜と同様である。
次に、加圧RTAにより強誘電体材料膜、BiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の材料膜に熱処理を施すことにより、これらの膜を結晶化して強誘電体膜である(K1−XNa)NbO膜、(001)に優先配向したBiTi12または(Bi3.25La0.75)Ti12の結晶化膜を形成する。この際の熱処理条件は、酸素分圧9.9atmで加圧された酸素雰囲気中で、昇温速度100℃/secで、温度が900℃まで瞬時に昇温し、1min保持することにより結晶化を行ったのである。
なお、本実施例では、1.5μmの強誘電体膜を形成しているが、さらに膜厚の厚い強誘電体膜を形成してもよいし、膜厚の薄い強誘電体膜を形成してもよい。
図4は、サンプル1の強誘電体膜の評価を行った結果を示す特性図である。なお、図4の横軸は印加電圧(Volts)を示し、図4の縦軸は変位(%)を示している。
図4は、周波数700Hzで±10Vのバイポーラパルスで強誘電体膜を駆動させて評価した結果である。
図4に示すように、サンプル1の強誘電体膜は、優れた圧電特性を有することが確認された。
11…結晶性酸化物
12…(K1−XNa)NbO膜(強誘電体膜)
13…結晶性酸化物

Claims (9)

  1. 基板上にK、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記基板上に塗布膜を形成し、
    前記塗布膜を仮焼成することにより、前記基板上に強誘電体材料膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜上に島状又は膜状の第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成し、
    前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第1の結晶性酸化物は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記第1の結晶性酸化物は、疑ペロブスカイト構造を有するビスマス層状構造強誘電体またはタングステン・ブロンズ型強誘電体であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  3. 請求項2において、
    前記ビスマス層状構造強誘電体は、BiTi12または(Bi4−xLa)Ti12であり、xは下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
    0<x<1
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、
    前記基板上に塗布膜を形成する前に、前記基板上に島状又は膜状の(001)に優先配向した第2の結晶性酸化物形成用材料膜を形成しておき、
    前記塗布膜は、前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜上に形成され、
    前記強誘電体材料膜、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜および前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜が酸素雰囲気で熱処理され、
    前記第2の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第2の結晶性酸化物は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  5. 基板上に、島状又は膜状の第1の結晶性酸化物形成用材料膜を形成し、
    前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に、K、Na及びNbを含有するゾルゲル溶液をスピンコート法により塗布することにより、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に塗布膜を形成し、
    前記塗布膜を仮焼成することにより、前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜上に強誘電体材料膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜上に遮蔽膜を形成し、
    前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を酸素雰囲気で熱処理しながら前記遮蔽膜によってK及びNaが前記強誘電体材料膜中から離脱するのを抑制することにより、前記強誘電体材料膜及び前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した強誘電体膜を形成し、
    前記第1の結晶性酸化物形成用材料膜を結晶化した第1の結晶性酸化物膜は(001)に優先配向していることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項において、
    前記ゾルゲル溶液に含有する前記K、Na及びNbの合計濃度は、10〜50mol%であることを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項において、
    前記強誘電体材料膜を形成する際、前記塗布膜の形成及び前記仮焼成を複数回繰り返すことにより、複数の塗布膜からなる強誘電体材料膜を形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項において、
    前記熱処理は、0.0993〜1.986MPaの圧力範囲で行うことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項において、
    前記強誘電体膜は、ペロブスカイト構造からなる(K1−XNa)NbO膜であり、Xが下記式を満たすことを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
    0.3≦X≦0.7
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