JP2015122448A - フッ素樹脂基材、プリント配線板、生体情報測定デバイス及び人工臓器 - Google Patents

フッ素樹脂基材、プリント配線板、生体情報測定デバイス及び人工臓器 Download PDF

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澤田 真一
Shinichi Sawada
真一 澤田
誠 中林
Makoto Nakabayashi
誠 中林
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Abstract

【課題】生体組織との親和性が高く、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できるフッ素樹脂基材及びプリント配線板を提供する。【解決手段】本発明のフッ素樹脂基材は、生体に関する情報を出力する生体情報測定デバイス又は生体を構成する人工臓器に用いられるフッ素樹脂基材であって、フッ素樹脂を主成分とし、外面の少なくとも一部の領域に改質層を有し、上記改質層が、シロキサン結合及び親水性有機官能基を含む。上記改質層の外面の純水との接触角としては、90?以下が好ましい。また本発明のプリント配線板は、当該フッ素樹脂基材と、上記改質層の外面に積層される導電パターンとを備える。上記プリント配線板が、上記導電パターンに実装される1又は複数の電子部品を有するとよい。上記プリント配線板が、上記導電パターン又は上記電子部品の少なくとも一部の外面に積層され、フッ素樹脂を主成分とするフィルムをさらに備えるとよい。【選択図】図3

Description

本発明は、フッ素樹脂基材、プリント配線板、生体情報測定デバイス及び人工臓器に関する。
医療分野において、体温、血圧、血糖値、血中酸素飽和度、脈拍数、心拍数、呼吸数、心電図等を常時測定し、経過観察する目的のために、装着型の生体情報測定デバイスが提案されている(例えば特開2009−160274号公報参照)。
この装着型の生体情報測定デバイスは、被験者の皮膚に接触するセンサ等の電子部品を備え、被験者の皮膚に光を照射して得られる反射光、計測される振動、熱等の物理情報や皮膚に刺した針を通して採取した体液等から計測される情報を得る。この医療用途のセンサや電子部品は、一般にシリコン、ガリウムヒ素等を基材とし、その表面に積層される。
また、心臓、肺、肝臓、腎臓等の臓器の代行を目的として人工臓器が開発されている。例えば人工心臓は、血液ポンプ、コントロールユニット、センサ等の部品を備え、これらの部品はチタンやチタン合金等の外壁で覆われ、生体内に埋め込まれる。
特開2009−160274号公報
しかしながら、このような装着型の生体情報測定デバイスにおいては、シリコンやガリウムヒ素等の可撓性の低い硬い基材が使用される。細胞等の生体組織はこのような硬い素材に触れると炎症反応を起こしやすい。また、生体情報測定デバイスは体液に浸されることがあり、生体組織に触れる部分の基材に親水性がない場合、生体情報測定デバイスに触れる生体組織部分が体液の不足により免疫機能の低下等の悪影響を受けることがある。このように生体組織との親和性が低い基材が使われていると、生体情報測定デバイスは、皮膚等に接触してあるいは体内に埋め込んで、長期に渡って連続して計測をすることが難しい。
また、人工臓器においては、体内に埋め込んで生体機能の一部を構成するため、特に生体組織との高い親和性が必要となる。上記のような可撓性の低い基材や親水性のない基材を使用すると、生体拒否反応を起こすことがある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、生体組織との親和性が高く、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できるフッ素樹脂基材及びプリント配線板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、生体に関する情報を出力する生体情報測定デバイス又は生体を構成する人工臓器に用いられるフッ素樹脂基材であって、フッ素樹脂を主成分とし、外面の少なくとも一部の領域に改質層を有し、上記改質層が、シロキサン結合及び親水性有機官能基を含むフッ素樹脂基材である。
本発明のフッ素樹脂基材は、生体組織との親和性が高く、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
図1は、本発明の第一実施形態に係るフッ素樹脂基材を示す模式的断面図である。 図2は、本発明の第一実施形態に係る人工臓器を示す模式的斜視図である。 図3は、本発明の第一実施形態に係るプリント配線板を示す模式的断面図である。 図4は、本発明の第一実施形態に係る生体情報測定デバイスを示す模式的断面図である。 図5Aは、本発明の第二実施形態に係るプリント配線板を示す模式的平面図である。 図5Bは、図5AのA−A線での模式的断面図である。
[発明の実施形態の説明]
本発明は、生体に関する情報を出力する生体情報測定デバイス又は生体を構成する人工臓器に用いられるフッ素樹脂基材であって、フッ素樹脂を主成分とし、外面の少なくとも一部の領域に改質層を有し、上記改質層が、シロキサン結合及び親水性有機官能基を含むフッ素樹脂基材である。
当該フッ素樹脂基材は、主成分がフッ素樹脂であるので、可撓性が高く、生体組織との親和性が高い。また、フッ素樹脂は劣化が小さく安定しているため、当該フッ素樹脂基材は、長期に渡って生体内で安定して機能することができる。さらに、当該フッ素樹脂基材は、外面の少なくとも一部の領域にシロキサン結合及び親水性有機官能基を含む改質層を備える。この改質層は親水性有機官能基を含み、人の細胞との密着性がよい。加えて、この改質層は、化学物質との反応性が高いため、他の樹脂基材等を積層した際に剥がれにくい。このため、当該フッ素樹脂基材は、生体組織との親和性が高く、長期に渡って生体内で安定して機能できるため、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
上記改質層の外面の純水との接触角としては、90°以下が好ましい。このように上記改質層の純水との接触角が90°以下であることで、上記改質層の密着性等をさらに向上できる。
エポキシ樹脂接着剤を介して上記改質層外面に接着されるポリイミドシートの剥離強度としては、1.0N/cm以上が好ましい。このように改質層上におけるポリイミドシートの剥離強度を上記下限以上とすることで、ポリイミドシート等の表面被覆材がさらに剥がれにくくできる。
塩化鉄を含み、密度が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下、温度が45℃以下のエッチング液に1分以上2分以下で浸漬するエッチング処理に対し、上記改質層がエッチング耐性を有するとよい。このように改質層がエッチング耐性を有することで、上記改質層上に導電パターン等を形成するためにエッチング処理を行ったとしても、上記改質層が維持され、処理後の状態が良好に保たれる。
上記改質層の平均厚さとしては、400nm以下が好ましい。改質層は化学物質との反応性が高いため不純物が取り込まれることがある。そこで、このように改質層の平均厚さを上記上限以下とすることで、改質層の体積が減り、改質層に含まれる総不純物量を低減できる。従って不純物による生体組織への影響を抑制することができる。
本発明は、当該フッ素樹脂基材と、上記改質層の外面に積層される導電パターンとを備えるプリント配線板を含む。当該プリント配線板は、上記フッ素樹脂基材を備えるので、生体組織との親和性が高い。従って、当該プリント配線板は生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
上記プリント配線板が、上記導電パターンに実装される1又は複数の電子部品を有するとよい。このように上記導電パターンが電子部品を有することで、上記フッ素樹脂基材に様々な電子的機能を付与できる。
複数の上記電子部品が、平面的に配置されるとよい。このように上記電子部品を平面的に配置することで、センサ等の電子部品を1枚のプリント基板の面内に配置することができ、面における情報を得ることができる。
少なくとも1つの上記電子部品が、生体情報を測定する電子部品又は生体に作用する電子部品であるとよい。このように上記電子部品が生体情報を測定する電子部品又は生体に作用する電子部品であることで、上記プリント配線板が生体情報測定デバイス及び人工臓器にさらに好適に使用できる。
上記プリント配線板が、上記導電パターン又は上記電子部品の少なくとも一部の外面に積層され、フッ素樹脂を主成分とするフィルムをさらに備えるとよい。このように上記プリント配線板が上記フィルムをさらに備えることで、上記導電パターンが好適に保護される。また、上記フィルムは、主成分がフッ素樹脂であるので、可撓性が高く、生体組織との親和性が高く、劣化が小さい。
上記導電パターンが存在する領域における上記改質層外面の平均表面粗さ(Ra)としては、4μm以下が好ましい。改質層は化学物質との反応性が高いため上記改質層上に導電パターンを形成する際に不純物が取り込まれるおそれがある。そこで、このように上記導電パターンが存在する領域における上記改質層の平均表面粗さ(Ra)を上記上限以下とすることで、上記改質層の表面積が小さくなり、表面反応による不純物の取り込みを少なくできる。従って、不純物による生体組織への影響を抑制することができる。
本発明は、当該プリント配線板を備える生体情報測定デバイスを含む。当該生体情報測定デバイスは、上記プリント配線板を備えるため、生体組織との親和性を高くできる。
本発明は、当該フッ素樹脂基材を備える人工臓器を含む。当該人工臓器は、上記フッ素樹脂基材を備えるため、生体組織との親和性を高くできる。
上記フッ素樹脂基材の外面の少なくとも一部の純水との接触角としては、90°超が好ましい。このように上記接触角が90°を超えることで、上記フッ素樹脂基材が親水性部分と疎水性部分とを備えることができる。そのため、例えば内壁が疎水性を必要とし外壁が親水性を必要とする血管等の人工臓器に好適に用いることができる。
ここで「人工臓器」とは、生体の臓器組織の代用として人工的につくられた製品を意味し、「臓器」には、胃腸、口腔等に加え、血管、皮膚、食道等の組織も含む。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。「親水性有機官能基」とは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の非金属元素のみからなる官能基であって、親水性を有する官能基をいう。「純水との接触角」とは、JIS−R−3257(1999)の静滴法により測定される接触角の値である。「剥離強度」は、JIS−K−6854−2(1999)「接着剤−はく離接着強さ試験方法−2部:180度はく離」に準じた方法により測定される値である。「改質層がエッチング耐性を有する」とは、エッチング処理後においても改質層が除去されないことを意味し、改質層が除去されないとは、フッ素樹脂基材外面の親水性が失われないことを示し、例えばフッ素樹脂基材の外面の純水に対する接触角が90°を超えないことを示す。エッチング処理により、改質層が形成されている領域において疎水性を示す微小部分が斑状に生じる場合もあるが、この領域全体としては親水性を有する場合は、このような状態は親水性が維持されているものとする。「平均表面粗さ(Ra)」とは、JIS−B−0601(2013)に準拠して測定される算術平均粗さである。さらに、本願明細書で用いられる「化学結合」は、水素結合を含む概念である。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係るフッ素樹脂基材の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[第一実施形態]
図1の当該フッ素樹脂基材1は、生体に関する情報を出力する生体情報測定デバイス又は生体を構成する人工臓器に用いられるフッ素樹脂基材であり、その表面の少なくとも一部の領域にシロキサン結合及び親水性有機官能基を含む改質層1aを備える。ここで、フッ素樹脂基材の「表」及び「裏」は、当該フッ素樹脂基材の厚さ方向のうち、改質層が形成される側を表、その反対側を裏とする方向を意味し、表側の外面を「表面」、裏側の外面を「裏面」とする。ただし、これらは当該フッ素樹脂基材の使用状態における表裏を意味するものではない。
<フッ素樹脂基材>
フッ素樹脂基材1は、フッ素樹脂を主成分とする。
フッ素樹脂基材1は可撓性を有すると良く、フッ素樹脂基材1の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、100μmがより好ましい。一方、フッ素樹脂基材1の平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。フッ素樹脂基材1の平均厚さが上記上限を超えると、フッ素樹脂基材1の可撓性が低下し、人の皮膚等の曲面に密着できないおそれがある。また、フッ素樹脂基材1の平均厚さが上記下限未満であると強度が不十分となるおそれがある。
フッ素樹脂基材1は300℃での耐熱性と、UL94規格の難燃レベルV−0を満たす難燃性とを有するとよい。このようにフッ素樹脂基材1が耐熱性と難燃性とを有することでフッ素樹脂基材1に電子部品等を実装する際に半田リフローを行うことができる。ここで、「300℃での耐熱性を有する」とは、フッ素樹脂基材に導電パターンだけを形成した状態の基板単体を300℃の半田槽に10秒間浸漬した後、この基板に目視で異常が見られないことを意味する。
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」を含む。具体的には、「フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」を含む。具体的には、「フルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位としてオキシアルキレン単位を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖又は末端のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された1価の基を意味する。「フルオロポリエーテル基」は、繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」を含む。
フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロ(四フッ化)エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂(THV)、及びフロオロエラストマーが挙げられる。また、これらの化合物を含む混合物やコポリマーも、フッ素樹脂基材1を構成する材料として使用可能である。
中でも、フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。これらのフッ素樹脂を使用することによって、フッ素樹脂基材1が、可撓性、耐熱性、及び難燃性を有するものとなる。
(任意成分)
また、フッ素樹脂層2は、任意成分として、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、補強材等を含み得る。
上記エンジニアリングプラスチックとしては、フッ素樹脂基材1に求められる特性に応じて公知のものから選択して使用でき、典型的には芳香族ポリエーテルケトン樹脂を使用することができる。
この芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環がパラ位に結合し、剛直なケトン結合(−C(=O)−)又はフレキシブルなエーテル結合(−O−)によってベンゼン環同士が連結された構造を有する熱可塑性樹脂である。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えばエーテル結合、ベンゼン環、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合、及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するエーテルエーテルケトン(PEEK)、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合、及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)が挙げられる。中でも、芳香族ポリエーテルケトンとしては、PEEKが好ましい。このような芳香族ポリエーテルケトンは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性、加工性等に優れる。
PEEK等の芳香族ポリエーテルケトンとしては、市販品を使用することができる。芳香族ポリエーテルケトンとしては、様々なグレードのものが市販されており、市販されている単一のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを単独で使用してもよく、複数のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを併用してもよく、また変性した芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよい。
フッ素樹脂基材1におけるエンジニアリングプラスチックの合計含有量の上記フッ素樹脂に対する比の下限としては、特に限定されないが、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。エンジニアリングプラスチックの合計含有量が上記下限未満の場合、フッ素樹脂基材1の特性を充分に改善することができないおそれがある。一方、エンジニアリングプラスチックの合計含有量の上記フッ素樹脂に対する比の上限としては、特に限定されないが、50質量%が好ましく、45質量%がより好ましい。エンジニアリングプラスチックの含有量が上記上限を超える場合、フッ素樹脂の有利な特性を充分に発現させることができないおそれがある。
難燃剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が挙げられる。
難燃助剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば三酸化アンチモン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
補強材としては、例えばカーボン繊維、ガラス繊維等が挙げられ、これらから形成された撚糸や布、例えばガラスクロス等を使用してもよい。
<改質層>
改質層1aは、フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂に、親水性有機官能基を有しシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する改質剤が結合して形成される。つまり、改質層1aにおいて、親水性有機官能基がシロキサン結合を構成するSi原子に結合する。この親水性有機官能基によって、フッ素樹脂基材1の表面には濡れ性が付与される。フッ素樹脂と改質剤との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合と、共有結合及び水素結合を含む場合とがある。改質層1aは、改質層1aを除いたフッ素樹脂基材1の他の領域とはミクロ構造や分子構造、元素の存在割合が異なると考えられる領域である。
シロキサン結合を構成するSi原子(以下、この原子を「シロキサン結合のSi原子」という。)は、N原子、C原子、O原子、及びS原子のいずれか少なくとも1つの原子を介してフッ素樹脂層2のC原子と共有結合する。例えば、シロキサン結合のSi原子は、−O−、−S−、−S−S−、−(CH)n−、−NH−、−(CH)n−NH−、−(CH)n−O−(CH)m−(n,mは1以上の整数である。)等の原子団を介してフッ素樹脂のC原子と結合する。
上記親水性有機官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基、又はメルカプト基が好ましい。これらの中でもN原子又はS原子を含むものがより好ましい。これらの親水性有機官能基は、フッ素樹脂基材1の表面の密着性を向上する。なお、改質層1aは、これら親水性有機官能基の2種以上を含んでもよい。このように改質層1aに異なる性質の親水性有機官能基を付与することにより、フッ素樹脂基材1の表面の反応性等を多様なものとすることができる。これらの親水性有機官能基は、シロキサン結合の構成要素であるSi原子に直接、あるいは1個又は複数個のC原子(例えばメチレン基やフェニレン基)を介して結合する。
上記の特徴を有する改質層1aを形成するための改質剤としては、分子中に、親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤が好適であり、さらにSi原子を含む加水分解性官能基を有するシラン系カップリング剤がより好適である。このようなシラン系カップリング剤は、フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂と化学結合する。
上記Si原子を含む加水分解性官能基とは、具体的にはSi原子にアルコキシ基が結合した基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
N原子を含む親水性有機官能基としては、例えばアミノ基、ウレイド基等を挙げることができる。
N原子を含む親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤としては、例えばアミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン等、及びこれらの誘導体が挙げられる。
アミノアルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノアルコキシシランの誘導体としては、例えば3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミン、N−ビニルベンジル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン酢酸塩等のシラン系カップリング剤の塩などが挙げられる。
ウレイドアルコキシシランとしては、例えば、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ウレイドエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
S原子を含む親水性有機官能基としては、例えばメルカプト基、スルフィド基等が挙げられる。
S原子を含む親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤としては、例えばメルカプトアルコキシシラン、スルフィドアルコキシシラン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
メルカプトアルコキシシランとしては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン等が挙げられる。
スルフィドアルコキシシランとしては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
上記シラン系カップリング剤としては、変性基を導入したものであってもよい。変性基としては、フェニル基が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、例示した中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
改質剤としては、上記シラン系カップリング剤に加えて他のカップリング剤を使用することができる。他のカップリング剤としては、フッ素樹脂層2のフッ素樹脂又はそのラジカルに対して反応性を有するものであればよく、例えばチタン系カップリング剤を使用することができる。
チタン系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス(トリエタノールアミノ)チタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリ(チタンアセチルアセトネート)、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
改質層1aの平均厚さの上限としては、400nmが好ましく、300nmがより好ましい。改質層1aの平均厚さが上記上限を超えると、改質層1aに含まれる総不純物量が多くなり、不純物による生体組織への影響が発生するおそれがある。なお、改質層1aの平均厚さは、光干渉式膜厚測定機、X線光電子分光(X−rayPhotoelectronSpectroscopy)分析装置、電子顕微鏡等を用いて測定できる。
改質層1aの表面の純水との接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましい。改質層1aの表面の純水との接触角が上記上限値を超えると、改質層1aの親水性が不足し人の細胞との密着性が悪く、生体組織との親和性が不足するおそれがある。またフッ素樹脂基材1の表面の密着性が悪くなり、フッ素樹脂基材1の表面上にフィルムや導電パターンを設ける場合、剥がれやすくなるおそれがある。純水に対する接触角は、ERMA社の接触角測定器「G−I−1000」等を用いて測定できる。
塩化鉄を含み、密度が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下、温度が45℃以下のエッチング液に1分以上2分以下で浸漬するエッチング処理に対して、改質層1aがエッチング耐性を有するとよい。このように改質層1aがエッチング耐性を有することで、改質層1a上に導電パターンを形成する場合にエッチング処理を行ったとしても、改質層1aが維持され、処理後の状態が良好に保たれる。
改質層1aの表面のぬれ張力の下限としては、50mN/mが好ましく、60mN/mがより好ましい。ぬれ張力が上記下限未満であると、密着力が不足し、フィルムや導電パターンが積層された際、剥離するおそれがある。上記ぬれ張力の下限は、純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の濡れ張力よりも大きい。すなわち、フッ素樹脂基材1の表面は、上記改質層1aを形成することによって、通常のフッ素樹脂に比べて表面の密着性が高くなる。なお、「ぬれ張力」とは、JIS−K−6768(1999)に準拠して測定される値である。
<製造方法>
当該フッ素樹脂基材1は、例えば
(1)アルコールと、水と、フッ素樹脂基材1を改質して改質層1aを形成するための改質剤とを含むプライマーを、担持体に付着する工程(以下、「改質剤付着工程」ともいう)、
(2)担持体上の上記プライマーをフッ素樹脂基材1の表面に熱圧着し、担持体を除去することで改質層1aを形成する工程(以下、「改質層形成工程」ともいう)を備える。
<改質剤付着工程>
改質剤付着工程は、担持体にアルコールと、水と、フッ素樹脂基材1を改質して改質層1aを形成するための改質剤とを含むプライマーを付着させる。
担持体の材質としては、液体状態のプライマーを斑なく均一に付着できる材質が好ましく、無機物質が用いられる。例えば銅、金、ニッケル等の金属、ガラス、シリコン、カーボンブラック、セラミック等が挙げられる。また、担持体の形状としては特に制限されないが、フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂のシート(以下「フッ素樹脂ベース基材」ともいう)の形状に合致する形状が好ましい。
担持体にプライマーを付着させる方法は、特に限定されないが、例えば浸漬法、スプレー法、塗布法等が採用できる。そして、乾燥によって、プライマーのアルコールを除去する。アルコールの除去は、自然乾燥、加熱による乾燥、または減圧による乾燥等が採用できる。この乾燥は、次の積層工程の熱圧着を行うプレス機において、連続して行ってもよい。乾燥後、加熱(例えば120℃15分)し、Si−O−Si結合を形成させる。
改質剤のプライマー全体における含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。改質剤の含有量が上記下限未満の場合、フッ素樹脂基板1の表面を十分に改質できないおそれがある。一方、改質剤の含有量の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。改質剤の含有量が上記上限を超える場合、改質剤の凝集が生じ、担持体の表面において、均一な厚さのプライマーの膜を形成できないおそれがある。
プライマー中の水は微量で足りるが、改質剤の縮合の際の必須物質である。水のプライマー全体における含有量としては、例えば0.01質量%以上0.1質量%以下とすることができる。
ここで、上記改質剤付着工程においてフッ素樹脂ベース基材ではなく担持体に改質剤の付着を行う理由について説明する。フッ素樹脂ベース基材に直接プライマーを塗工する場合、フッ素樹脂ベース基材の疎水性によりプライマーの分布が不均一となる。従って改質層1aに均一に官能基を導入することが難しい。そこで上述のように担持体を用いることで、この問題が解決できる。
<改質層形成工程>
改質層形成工程は、担持体の表面、すなわち改質剤付着工程において付着したプライマーの上にフッ素樹脂ベース基材を積層する工程である。フッ素樹脂基材1と担持体との積層体は、プレス機によって熱圧着される。フッ素樹脂基材1と担持体との間に気泡や空隙が形成されないようにするために、この熱圧着は減圧下で行うことが好ましい。この熱圧着によって、フッ素樹脂のC原子と改質剤から形成されるSi−O−Si結合との間に他の原子を介して化学結合が形成される。熱圧着した後、担持体を除去することで改質層を形成する。
熱圧着温度の下限としては、フッ素樹脂ベース基材の融点が好ましく、上記フッ素樹脂の分解開始温度がより好ましい。さらに、熱圧着温度とフッ素樹脂の融点との差の下限としては30℃が好ましく、50℃がより好ましい。熱圧着温度が上記下限未満の場合、フッ素樹脂が活性化しないため改質剤との反応が不十分となるおそれがある。また、熱圧着温度をフッ素樹脂の分解開始温度以上とすることにより、フッ素樹脂の一部がよりラジカルになり易く、改質剤と他の原子を介してより結合すると考えられる。一方、上記熱圧着温度の上限としては、フッ素樹脂の分解温度が好ましい。ここで、分解開始温度とは、フッ素樹脂が熱分解し始める温度をいい、分解温度とは、フッ素樹脂が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。熱圧着温度が上記上限を超える場合、フッ素樹脂が分解してフッ素樹脂基材1が破損するおそれがある。
例として、フッ素樹脂ベース基材がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)である場合、フッ素樹脂の融点が約270℃であるため、熱圧着温度の下限としては、300℃が好ましく、320℃がより好ましい。一方、この時の熱圧着温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましい。
熱圧着時の圧力としては、0.01MPa以上100MPa以下が好ましい。また、熱圧着の加圧時間は、0.01分以上1000分以下が好ましい。ただし、熱圧着圧力及び加圧時間はこれらに制限されるものではなく、改質剤の反応性等を考慮して設定すればよい。
このような熱圧着により、改質剤からSi−O−Si結合が形成され、他の原子を介してその一部がフッ素樹脂に結合する。これらの結合は、改質層1aが上述のエッチング耐性を有することから、共有結合を含むものであると推察される。また、改質層1aが膜状に広がった高分子から構成され、この高分子とフッ素樹との間において多数の水素結合が形成されることによって両者が強く結合している可能性があるため、上記結合には、水素結合も含まれると推察される。
熱圧着後、担持体は除去される。担持体の除去方法としては、剥離法や溶解法を挙げることができる。このようにしてフッ素樹脂基材1が形成される。なお、担持体は全て除去する必要は無く、フッ素樹脂基材1上に残っていてもよい。
なお、フッ素樹脂ベース基材の表面に改質剤を塗布及び必要に応じて加熱処理して改質層1aを形成することもできる。その際、改質剤塗布性向上及び加熱処理(ラジカル化)工程省略のために、樹脂製フィルムの表面に、Naエッチング処理、プラズマ処理、スパッタ処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射、エキシマレーザー照射等の下処理を行ってもよい。
例えば、Naエッチング処理は、フッ素樹脂の表面をナトリウム含む溶液を塗布し、Naの還元力を利用してフッ素樹脂表面のF原子を引き抜いて炭素ラジカルを発生させ、この炭素ラジカルが雰囲気中の酸素、水素、水等と反応してヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−C(=O)−)等の官能基を形成する。これにより、フッ素樹脂にシランカップリング剤の加水分解性官能基が容易に結合可能となる。
<利点>
当該フッ素樹脂基材1は、主成分がフッ素樹脂であるので、可撓性が高く、生体組織との親和性が高い。また、フッ素樹脂は劣化が小さく安定しているため、当該フッ素樹脂基材1は、長期に渡って生体内で安定して機能することができる。さらに、当該フッ素樹脂基材1は、表面の少なくとも一部の領域にシロキサン結合及び親水性有機官能基を含む改質層1aを備える。この改質層1aは親水性有機官能基を含み、人の細胞との密着性がよい。加えてこの改質層1aは、化学物質との反応性が高いため、他の樹脂基材等を積層した際に剥がれにくい。このため、当該フッ素樹脂基材1は、生体組織との親和性が高く、長期に渡って生体内で安定して機能できるため、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
[人工臓器]
次に、当該フッ素樹脂基材1を用いた人工臓器について図2を参照しつつ説明する。なお、図2においては、図1のフッ素樹脂基材と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
図2の人工臓器は、当該フッ素樹脂基材1を円筒状に成形した人工血管である。当該人工臓器において、フッ素樹脂基材1の裏面が内壁を構成し、表面(改質層1a)が外壁を構成する。
上記人工血管の少なくとも一部の内壁(フッ素樹脂基材1の裏面の少なくとも一部)の純水との接触角としては、90°超が好ましく、100°超がより好ましい。人工血管の少なくとも一部の内壁の純水との接触角の下限が上記以下であると、血液に接触する内壁の疎水性が不足し、血液が内壁に付着するおそれがある。
<利点>
当該人工血管は、親水性を有する改質層1aが外壁であるため、人工血管の外壁が接触する生体組織との親和性が高い。また、疎水性を有するフッ素樹脂基材1が内壁であるため、人工血管の内壁側を流れる血液が内壁に付着して血栓を発生することを防止できる。従って当該人工血管は、長期に渡って生体内で安定して機能することができる。
[プリント配線板]
図3の当該プリント配線板10は、当該フッ素樹脂基材1と、上記改質層1aの表面に積層される導電パターン2とを備える。導電パターン2には、電子部品3が実装されている。また、改質層1aの一部及び導電パターン2の表面において電子部品3が実装される部分(ランド部21)を除いた部分には、カバーレイ4が積層されている。なお、図3においては、図1のフッ素樹脂基材と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。ここで、プリント配線板の「表」及び「裏」は、当該プリント配線板の厚さ方向のうち、導電パターンが積層される側を表、その反対側を裏とする方向を意味し、表側の外面を「表面」、裏側の外面を「裏面」とする。ただし、これらは当該プリント配線板の使用状態における表裏を意味するものではない。
<導電パターン>
導電パターン2は、ランド部21とこれらを接続する配線部22とを有しており、フッ素樹脂基材1の仕様によって適宜設定される。この導電パターン2により、微細電気配線構造、グラウンド、シールドなどの構造が構成される。また、信号が光であれば、光ファイバーを配線として使うこともできる。導電パターン2は、表面に防錆処理層が形成されていることが好ましい。
導電パターン2の材質としては、特に制限されないが、導電性の銅、銀、SUS(ステンレス)、鉄、金、アルミニウム、ニッケル等の金属及びその複合体、ITO(Indium Tin Oxide)等の酸化物導電材料、銀ナノワイヤ、金属、カーボン等の導電性物質を含む導電性樹脂、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。
導電パターン2の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、導電パターン2の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。導電パターン2の平均厚さが上記上限を超えると当該プリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。また、導電パターン2の平均厚さが上記下限未満であると導電パターン2の導電性が不十分となるおそれがある。
導電パターン2が存在する領域における改質層1aの平均表面粗さ(Ra)の上限としては、4μmが好ましく、2μmがより好ましい。導電パターン2が存在する領域における改質層1aの平均表面粗さ(Ra)が上記上限を超えると、改質層1aの表面積が大きくなり導電パターン2を形成する際に表面反応により不純物が取り込まれ、改質層1aに含まれる不純物による生体組織への影響が発生するおそれがある。
(防錆処理層)
防錆処理層は、導電パターン2の表面が酸化することによる接合強度低下を抑制する。この防錆処理層としては、コバルト、クロム又は銅を含むことが好ましく、コバルト又はコバルト合金を主成分として含むことがさらに好ましい。防錆処理層は、1層として形成しても、複数層として形成してもよい。防錆処理層は、めっき層として形成してもよい。このめっき層は、単一金属めっき層又は合金めっき層として形成される。単一金属めっき層を構成する金属としてはコバルトが好ましい。合金めっき層を構成する合金としては、例えばコバルト−モリブデン、コバルト−ニッケル−タングステン、コバルト−ニッケル−ゲルマニウム等が挙げられる。
防錆処理層の平均厚さの上限としては、50nmが好ましく、40nmがより好ましく、35nmがさらに好ましい。一方、防錆処理層の平均厚さの下限としては、0.5nmが好ましく、1nmがより好ましく、1.5nmがさらに好ましい。防錆処理層の平均厚さが上記上限を超えると、厚さの増加分に比してそれに見合うだけの酸化防止効果を得られないおそれがある。また、防錆処理層の平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン2の酸化を充分に抑制できないおそれがある。
<電子部品>
電子部品3は、導電パターン2のランド部21に実装される。この電子部品3は生体情報を測定する電子部品又は生体に作用する電子部品であるとよい。電子部品3はカバーレイ4に被覆されていないので、生体に直接接触または近接することができる。このため、生体情報の取得等を容易かつ確実に行うことができる。また、直接生体に接触することによる電子部品3の劣化が懸念される場合は、電子部品3の機能を低下させない材質でカバーレイ4を構成し、電子部品3もカバーレイで被覆してもよい。
生体情報を測定する電子部品としては、特に制約されないが、温度、圧力、音波、微弱電流、歪み、光、pH、特定物質の濃度等を測定するセンサを挙げることができる。なお測定対象は、生体が持つ情報に限られず、生体が外部から受ける化学あるいは物理量(例えばX線等)であってもよい。
また、生体に作用する電子部品としては、特に制約されないが、切開等を行うための半導体レーザー、生体組織の光吸収スペクトルを測定する光源等としてのLED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、患部を治療するための抵抗等の加熱デバイス、電気刺激デバイス、振動デバイス等を挙げることができる。
<カバーレイ>
カバーレイ4は、導電パターン2を外力や水分等から保護するものである。このカバーレイ4は、カバーフィルム41及び接着層42を備える。
(カバーフィルム)
カバーフィルム41は、接着層42を介して導電パターン2及び電子部品3に積層される。カバーフィルム41の材質としては、例えばフッ素樹脂、エポキシ、ポリイミド、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ブタジエン、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、ウレタン等を挙げることができる。中でも、水分透過率が低く長期にわたって安定であるため、導電パターン2や電子部品3を長期にわたって保護でき、かつ生体に対して毒性の低いフッ素樹脂が好ましい。特に熱可塑性を有するフッ素樹脂を材質とするカバーフィルム41は、高温でフッ素樹脂基材1の改質層1aと融着させることによって直接接着することができる。また、フッ素樹脂製のカバーレイフィルム41の表面に密着性の良い改質層を形成し、その改質層の上に接着層42を設け、接着剤を介してフッ素樹脂基材1の改質層1aと接着させることもできる。
カバーフィルム41の平均厚さとしては、通常0.1μm以上100μm以下である。カバーフィルム41の平均厚さが上記範囲未満である場合、絶縁性が不十分となるおそれがある。一方、カバーフィルム41の平均厚さが上記範囲を超える場合、フッ素樹脂基材1の可撓性を損なうおそれがある。
(接着層)
接着層42は、カバーフィルム41を改質層1aに固定するものである。接着層42の材質としては、カバーフィルム41を改質層1aに固定できる限り特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、例えばポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ブチラール、アクリル等が挙げられる。中でも改質層1aとの接着性がよいエポキシがより好ましい。
接着層42の平均厚さとしては、特に限定されるものではないが、0.1μm以上30μm以下が好ましい。この接着層42の平均厚さが上記下限値未満であると接着性が不十分となるおそれがあり、また上記上限値を超えるとプリント配線板10が可撓性を十分に確保できないおそれがある。なお、カバーレイフィルム41の材質を熱可塑性を有するフッ素樹脂とし、高温でフッ素樹脂基材1の改質層1aと融着させることによって直接接着する場合は、接着層42は省くことができる。
エポキシ樹脂接着剤を介して上記改質層1a表面に接着されるポリイミドシートの剥離強度の下限としては、1.0N/cmが好ましく、5.0N/cmがより好ましい。上記剥離強度が上記下限未満であると、カバーレイとして接着されるポリイミドシート等が剥離するおそれがあり、導電パターン2等を十分に保護できない場合がある。
このように、プリント配線板10がカバーレイ4を備えることで、導電パターン2の酸化等による劣化を抑制できる。
<製造方法>
当該プリント配線板10は、例えば
(1)プライマーを金属箔に付着させ、その金属箔上の上記プライマーをフッ素樹脂ベース基材の表面に熱圧着することで改質層1aを形成すると共に金属箔を接着する工程(以下、「金属箔接着工程」ともいう)、
(2)上記改質層1aの表面に導電パターン2を形成する工程(以下、「パターニング工程」ともいう)、
(3)カバーレイ4を積層する工程(以下、「カバーレイ積層工程」ともいう)、及び
(4)導電パターン2に電子部品3を実装する工程(以下、「電子部品実装工程」ともいう)を備える。
<金属箔接着工程>
金属箔接着工程は、導電パターン2を形成する金属箔の表面に、その金属箔上の上記プライマーをフッ素樹脂ベース基材の表面に熱圧着することで改質層1aを形成する。
プライマーの金属箔への塗工及び乾燥、加熱は、第一実施形態のフッ素樹脂基材1の製造方法で述べた改質剤付着工程において、担持体として上記金属箔を用いることで行うことができる。また、熱圧着は第一実施形態のフッ素樹脂基材1の製造方法で述べた改質層形成工程の熱圧着と同様に行うことができる。金属箔の表面近傍には改質剤のSi−O−Si結合及び親水性有機官能基が存在するため、フッ素樹脂表面に金属箔が固定される。
なお、金属箔にプライマーを付着する前に、必要に応じて、金属箔に防錆処理層を形成してもよい。防錆処理層形成は、導電パターン2となる金属箔の少なくとも一方の面の全部又は一部に金属イオンを含む防錆溶液を塗工した後に防錆溶液を乾燥させることで行われる。金属イオンとしては、コバルトイオン、クロムイオン及び銅イオンのイオンが好ましく、コバルトイオンがより好ましい。防錆溶液の塗工方法としては、公知の種々の方法を採用でき、例えば防錆溶液に金属箔を浸漬する方法、防錆溶液を金属箔に塗布する方法が挙げられる。防錆溶液の乾燥は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれであってもよい。このように防錆溶液を乾燥させることで、金属箔の少なくとも一方の面の全部又は一部に、防錆溶液中の金属イオンに由来する金属酸化物の防錆処理層が形成される。防錆処理層形成は、水溶性電解めっき法等のめっき法により行ってもよい。めっき法を採用する場合、防錆処理層は単一金属めっき層又は合金めっき層として形成され、コバルトを含むように形成することが好ましい。
また、この接着工程では、上記加圧加熱に加えて、他の公知のラジカル生成方法、例えば、電子線照射等を併用してもよい。電子線照射としては、例えばγ線照射処理が挙げられる。電子線照射等を併用することで、フッ素樹脂のラジカルをより効果的に生成させることができるため、フッ素樹脂基材1と金属箔(導電パターン2)との間の接着の確実性をさらに高めることができる。また、電子線照射は、必ずしも接着工程において行う必要はなく、例えばフッ素樹脂基材1を形成するときに同時に行ってもよいし、接着工程後に行ってもよい。
<パターニング工程>
パターニング工程は、改質層1aの表面に所定パターンの導電パターン2を形成する。このパターニングは、例えば金属箔の積層後に公知のエッチング手法により行うことができる。
なお、パターニングは、上記金属箔の接着よりも前に行ってもよい。パターニングは、例えば、離型フィルムの表面に形成した金属箔をパターニングした後にこの金属箔を改質層に接着する方法、打ち抜いた金属箔を積層する方法等によりパターン化することで行うこともできる。
<カバーレイ積層工程>
カバーレイ積層工程は、例えばカバーフィルム41に接着層42を予め形成したカバーレイ4を準備し、これを導電パターン2を覆うように載置した後、加圧加熱によりカバーフィルム41を接着層42を介して改質層1aに固定することで行われる。
<電子部品実装工程>
電子部品実装工程は、例えば半田リフローによって行われる。半田リフローによって、容易にかつ迅速に電子部品3を実装することができる。
<利点>
当該プリント配線板10は、上記フッ素樹脂基材1を備えるので、生体組織との親和性が高い。従って、当該プリント配線板10は生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
当該プリント配線板10は、改質層1a上におけるポリイミドシートの剥離強度が高いので、ポリイミドシートが剥がれにくくなり、信頼性の高いカバーレイを構成できる。このため、上記ポリイミドシートをカバーレイとして用いた生体情報測定デバイス及び人工臓器は、長期に渡って安定して動作することができる。
[生体情報測定デバイス]
次に当該プリント配線板10を用いた生体情報測定デバイスについて図4を用いて説明する。図4の生体情報測定デバイスは、血中酸素濃度を測定する生体情報測定デバイスである(以下、「血中酸素濃度測定装置」ともいう)。血中酸素濃度測定装置は、上部カバー101及び下部カバー102を備え、上部カバー101と下部カバー102との接続部分にバネ103を有し、被験者の指を挟持できるように構成されている。上部カバー101及び下部カバー102が、当該プリント配線板10をそれぞれ備え、上部カバー101及び下部カバー102が被験者の指と接する面に配設される。また、上部カバー101及び下部カバー102は、他にプリント配線板10の導電パターン等に電源を供給する電源回路と、測定結果を解析する演算回路と、血中酸素濃度を表示する表示部とを主に備える(いずれも図示せず)。
2枚のプリント配線板10は、それぞれフッ素樹脂基材1を備え、フッ素樹脂基材1の表面側に積層される導電パターン2に電子部品3が実装される。上部カバー101が備えるプリント配線板10の上記電子部品3(以下、「上部カバーの電子部品3」ともいう)は、波長665nm付近の赤色光と波長880nm付近の赤外光とを照射できるLEDであり、被験者の指を照射できるようにプリント配線板10に配設されている。また下部カバー102が備えるプリント配線板10の上記電子部品3(以下、「下部カバーの電子部品3」ともいう)は、上部カバーの電子部品3が照射した2波長の光を感知できるセンサ(フォトディテクタ)であり、上部カバーの電子部品3が照射する光が被験者の指を通過した透過光を検知できるようにプリント配線板10に配設されている。なお図4においては簡略化のためカバーレイを省略している。
血中酸素濃度測定装置は、血液中のOHb(酸素化ヘモグロビン)とRHb(脱酸素化ヘモグロビン)との吸光度の差を利用して血中酸素濃度を測定する。具体的には上部カバーの電子部品3から照射した2波長の光が被験者の指を透過した後の透過光を下部カバーの電子部品3で測定する。演算回路は、そのスペクトルを分析し、上記2波長の光に対する吸光度の比から血液中のOHbとRHbとの比率を計算し、血液中の酸素飽和度を求める。その結果は、表示部に表示される。
<利点>
当該生体情報測定デバイスは、被験者の指が接触する位置に当該プリント配線板10を備える。このプリント配線板10の改質層1aが親水性を有しているので、当該生体情報測定デバイスは生体組織との親和性が高く、被験者の指等に常時装着して長期に渡って連続して計測をすることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るプリント配線板11について図5A及び図5Bを参照しつつ説明する。なお、図5A及び図5Bにおいては、図1、図3のフッ素樹脂基材及びプリント配線板と同一の要素について同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
図5A及び図5Bに示すプリント配線板11は、フッ素樹脂基材1の改質層1a上に導電パターン2及び電子部品3を備え、さらにフッ素樹脂フィルム5が、その裏面が導電パターン2及び電子部品3を被覆するように、プリント配線板11の表面に接着層42を介して積層されている。また、フッ素樹脂フィルム5は、その表面及び裏面に改質層5a、5bを有する。
プリント配線板11には、導電パターン2に実装される複数の電子部品3が平面的に配置される。
上記電子部品3の配置方法としては、上述の半田リフローによる方法の他、例えばシリコン、ITO、金属配線等を直接堆積して、薄型トランジスタ等の電子部品を配置する方法も可能である。改質層1aの上に直接形成された薄膜シリコン等によりPN接合を有するトランジスタ構造を構成し電子部品3とすることで、当該プリント配線板11を薄膜化でき、さらに高い可撓性を持たせることができる。このような当該プリント配線板11を用いることで、薄膜で柔らかい生体情報測定デバイスを構成することができる。
プリント配線板11の温度25℃、相対湿度90%における水蒸気透過率の上限としては、5g・25μ/m・24hrが好ましく、2g・25μ/m・24hrがより好ましい。上記水蒸気透過率が上記上限以下であることにより、プリント配線板11を構成するフッ素樹脂基材1及びフッ素樹脂フィルム5に挟まれた導電パターン2及び電子部品3が水蒸気から保護され、これらの劣化が防止される。ここで水蒸気透過率とは、フッ素樹脂基材1又はプリント配線板の厚さを25μmとし、24℃において一方の側の空気の相対湿度を90%、他方の側の空気の相対湿度を0%に保った場合に、24時間に層を透過する水蒸気の単位面積(m)当たりの質量をいう。
また、プリント配線板11の吸水率の上限としては、0.01%が好ましい。プリント配線板11の吸水率が上記上限以下であることにより、プリント配線板11を構成する2枚のフッ素樹脂基材1に挟まれた導電パターン2及び電子部品3が吸水から保護され、これらの劣化が防止される。ここで吸水率とは対象となるフッ素樹脂基材又はプリント配線板の水分量を、カールフィシャー法にて測定し、加熱前のシート質量に対する上記水分量の質量割合をいう。
フッ素樹脂フィルム5は、フッ素樹脂を主成分とし、両面に改質層5a、5bを有する以外はフッ素樹脂基材1と同様である。上記改質層5a、5bはフッ素樹脂基材1の改質層1aと同様である。
なお、フッ素樹脂フィルム5の材質を熱可塑性を有するフッ素樹脂とし、高温でフッ素樹脂基材1の改質層1aと融着させることによって直接接着する場合は、接着層42及びフッ素樹脂フィルム5の裏面の改質層5bは省くことができる。
<利点>
上記プリント配線板11は、表面がフッ素樹脂フィルム5の改質層5aのみで構成されているので、表面のほぼ全面が親水性を有し、人の細胞との密着性がよい。このため、フッ素樹脂基材のプリント配線板11は生体組織との親和性が高く、生体情報測定デバイス及び人工臓器に好適に使用できる。
上記プリント配線板11は、導電パターン2及び電子部品3がフッ素樹脂基材1及びフッ素樹脂フィルム5に挟まれるので、導電パターン2及び電子部品3が保護される。また、上記フッ素樹脂基材1及びフッ素樹脂フィルム5は、主成分がフッ素樹脂であるので、可撓性が高く、生体組織との親和性が高く、劣化が小さい。
複数の上記電子部品3を平面的に配置するので、センサ等の電子部品を1枚のプリント基板の面内に配置することができ、面における情報を得ることができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
当該フッ素樹脂基材の被覆層として、カバーレイ及びフッ素樹脂フィルムを用いる場合を示したが、他の素材、例えばソルダーレジスト(SR)であってもよい。
また、上記実施形態では、当該フッ素樹脂基材が表面全体に改質層を有するが、表面に改質層を有しない領域があってもよい。また、上記実施形態では、当該フッ素樹脂基材が一方の外面のみに改質層を有するが、両面に有してもよい。このように改質層の形成場所によって親水性、疎水性を制御することで、必要とされるデバイス特性と生体適合性とに応じた構成を実現できる。
上記実施形態では、電子部品が1層のプリント配線板上に配置されるが、当該プリント配線板を多層とし、例えば1層目に温度センサ、2層目に歪みセンサを配置する構成としてもよい。このように多層構造とすることで、プリント配線板の表面積が小さくなり、当該フッ素樹脂基材を用いた生体情報測定デバイス等を小型化できる。
当該生体情報測定デバイスは、体内に埋め込んでもよい。当該生体情報測定デバイスは当該プリント配線板を用いるので、生体組織との親和性が高く、体内に埋め込んでも炎症反応等を起こすことなく長期に渡って生体内で安定して機能することができる。また、当該プリント配線板は、水分透過率が低く長期にわたって安定であるため、生体の体液による影響から導電パターンや電子部品を長期にわたって保護できる。さらに、当該プリント配線板は柔らかいため、どのような形状にでも変形させることができ、体内への埋め込みが容易である。また、体内に埋め込むことで、体内でなければ計測できない微弱な信号等を計測できる。
上記実施形態では人工臓器として、当該フッ素樹脂基材を人工血管に用いる場合を説明したが、当該フッ素樹脂基材は、例えば補助人工心臓等の他の人工臓器に用いることもできる。また、当該フッ素樹脂基材は、補助人工心臓のポンプの制御等に必要な導電パターン及び電子部品を有するプリント配線板とすることもできる。
上記実施形態では、プリント配線板の改質層及び導電パターンの表面側に積層されるフッ素樹脂を主成分とするフィルムとして、改質層を有するフッ素樹脂フィルムを積層する場合を説明したが、改質層を有さないフッ素樹脂フィルムを積層することもできる。また、一部を改質層としたフッ素樹脂フィルムを積層してもよい。
以上のように、本発明のフッ素樹脂基材及びプリント配線板は、生体組織への親和性が高いので、生体情報測定デバイス及び人工臓器に広く利用できる。また、本発明の生体情報測定デバイス及び人工臓器は、炎症反応等を起こすことなく長期に渡って生体内で安定して機能することができ、人の病気の診断、治療、処置等に広く利用できる。
1 フッ素樹脂基材
1a 改質層
2 導電パターン
3 電子部品
4 カバ−レイ
5 フッ素樹脂フィルム
5a、5b 改質層
10、11 プリント配線板
21 ランド部
22 配線部
41 カバーフィルム
42 接着層
101 上部カバー
102 下部カバー
103 バネ

Claims (14)

  1. 生体に関する情報を出力する生体情報測定デバイス又は生体を構成する人工臓器に用いられるフッ素樹脂基材であって、
    フッ素樹脂を主成分とし、外面の少なくとも一部の領域に改質層を有し、
    上記改質層が、シロキサン結合及び親水性有機官能基を含むフッ素樹脂基材。
  2. 上記改質層の外面の純水との接触角が90°以下である請求項1に記載のフッ素樹脂基材。
  3. エポキシ樹脂接着剤を介して上記改質層外面に接着されるポリイミドシートの剥離強度が、1.0N/cm以上である請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂基材。
  4. 塩化鉄を含み、密度が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下、温度が45℃以下のエッチング液に1分以上2分以下で浸漬するエッチング処理に対し上記改質層がエッチング耐性を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフッ素樹脂基材。
  5. 上記改質層の平均厚さが400nm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基材。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基材と、
    上記改質層の外面に積層される導電パターンと
    を備えるプリント配線板。
  7. 上記導電パターンに実装される1又は複数の電子部品を有する請求項6に記載のプリント配線板。
  8. 複数の上記電子部品が、平面的に配置される請求項7に記載のプリント配線板。
  9. 少なくとも1つの上記電子部品が、生体情報を測定する電子部品又は生体に作用する電子部品である請求項7又は請求項8に記載のプリント配線板。
  10. 上記導電パターン又は上記電子部品の少なくとも一部の外面に積層され、フッ素樹脂を主成分とするフィルムをさらに備える請求項7、請求項8又は請求項9に記載のプリント配線板。
  11. 上記導電パターンが存在する領域における上記改質層外面の平均表面粗さ(Ra)が4μm以下である請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のプリント配線板。
  12. 請求項6から請求項11のいずれか1項に記載のプリント配線板を備える生体情報測定デバイス。
  13. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基材を備える人工臓器。
  14. 上記フッ素樹脂基材の外面の少なくとも一部の純水との接触角が90°超である請求項13に記載の人工臓器。
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