JP2015121186A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関に付随する補機の振動をノッキングに起因した振動であると誤認し、点火タイミングを不当に遅角させる問題を抑制ないし回避する。【解決手段】何れの気筒の膨張行程の前半期にも該当していない時期において、ノックセンサの出力信号がノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機が作動している期間とノックセンサの出力信号がノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している場合には、点火タイミングを遅角させず、及び/または、点火タイミングの学習値の更新を行わないようにした。【選択図】図4

Description

本発明は、車両等に搭載される内燃機関を制御する制御装置に関する。
内燃機関のシリンダブロックに設置した振動式のノックセンサを介して気筒におけるノッキングの発生を感知し、ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを遅角させるとともに、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを進角させるノックコントロールシステムが公知である(例えば、下記特許文献を参照)。
特開2000−073847号公報
車両等に搭載される内燃機関には、その出力軸であるクランクシャフトから回転トルクの供給を受けて稼働する各種の補機、例えば発電機や冷却水ポンプ、潤滑油ポンプ、エアコンディショナの冷媒圧縮用のコンプレッサ等が付随することが通例である。
特に、冷媒圧縮用コンプレッサは、いわゆるベーン式のコンプレッサであることが少なくない。ベーン式コンプレッサは、外周部に複数枚のベーンが突設されたロータをシリンダ内に収容し、各ベーンの先端部をシリンダの内周面に押し付けながらロータをシリンダ内で回転させることで、シリンダ内に吸引した冷媒を圧縮して吐出するものである。
ベーンの先端部のシリンダ内周面への押し付け力(遠心力とベーン背圧との和である)が弱くなると、ベーンの先端部が一瞬シリンダ内周面から離反し、その後再びシリンダ内周面に叩き付けられるようにして接触する。このとき、コンプレッサがチャタリング(微細な高周波振動)を引き起こす。
そして、コンプレッサのチャタリングがノックセンサによって検出されると、内燃機関の運転制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)がこれをノッキングに起因した振動であると誤認し、実際にはノッキングが起こっていないにもかかわらず点火タイミングを不必要に遅角化してしまう。結果、内燃機関の出力及び燃費性能の低下を招くことがあった。
本発明は、内燃機関に付随する補機の振動をノッキングに起因した振動であると誤認して、点火タイミングを不当に遅角させる問題を抑制ないし回避することを所期の目的とする。
本発明では、内燃機関の振動を検出するノックセンサの出力信号をノック判定値と比較し、前者が後者を上回る場合に何れかの気筒でノッキングが発生したと判断し、ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを遅角させるとともに、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを進角させるものであって、何れの気筒の膨張行程の前半期にも該当していない時期において、ノックセンサの出力信号がノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機が作動している期間とノックセンサの出力信号がノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している場合には、点火タイミングを遅角させず、及び/または、点火タイミングの学習値の更新を行わない内燃機関の制御装置を構成した。
また、補機のチャタリングは、当該補機で使用されている潤滑油の残存量が少なくなることで発生頻度が増す。それ故、何れの気筒の膨張行程の前半期にも該当していない時期において、ノックセンサの出力信号がノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機が作動している期間とノックセンサの出力信号がノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している事象が発生した回数を計数することで、その回数に基づいて補機に使用される潤滑油の残存量を推測することが可能である。
本発明によれば、内燃機関に付随する補機の振動をノッキングに起因した振動であると誤認して、点火タイミングを不当に遅角させる問題を抑制ないし回避できる。
本発明の一実施形態における内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態における車両用エアコンディショナの構成を示す図。 車両に実装された各種の電気負荷を制御するための電気回路を示す図。 内燃機関の各気筒の行程とノッキングが起こりがたい時期との関係を示す図。 同実施形態の制御装置が実行する処理の手順例を示すフロー図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
図2に、車両の室内の空調を行うエアコンディショナ5の構成を示す。エアコンディショナ5は、冷媒を圧縮し高圧化するコンプレッサ51と、圧縮された高圧冷媒を放熱させて液化させるコンデンサ52と、コンデンサ52を強制的に空冷するためのコンデンサファン53と、液化しなかった気体の冷媒を液化した冷媒から分離するレシーバ54と、液化した冷媒を噴出させるエキスパンションバルブ55と、噴出して気化した冷媒を受け入れ室内の空気と熱交換させるエバポレータ56と、高温化した内燃機関の冷却水を受け入れ室内の空気と熱交換させるヒータコア59と、室内の空気を吸引しエバポレータ56に向けて吐出してその空気を再び室内に送り込むブロワファン57と、ブロワファン57から吐出されエバポレータ56を通り抜けた空気をどの程度ヒータコア59に吹き当てるかを調節するエアミックスダンパ50とを要素とする。コンプレッサ51、コンデンサ52、レシーバ54、エキスパンションバルブ55及びエバポレータ56は、ループする冷媒流路により接続してある。
コンプレッサ51は、内燃機関に付随する補機の一種であり、内燃機関のクランクシャフトから回転トルクの伝達を受けて回転駆動されて冷媒を圧縮する。クランクシャフトとコンプレッサ51との間には、両者の接続を断接切換可能なマグネットクラッチ61が介在する。
コンデンサ52は、車両のエンジンルームにおける走行風が当たる部位に配置しており、コンデンサファン53を回転させているか否かにかかわらず、車両の走行中にエンジンルームに吹き込む走行風により冷却される。コンデンサ52の背後には、内燃機関の冷却水を放熱させるラジエータ7が控えている。ラジエータ7もまた、走行風により冷却される。
コンデンサファン53は、内燃機関の冷却水を放熱させるラジエータ7を強制的に空冷するためのラジエータファンをも兼ねている。コンデンサファン兼ラジエータファン53は、ラジエータ7の背後に位置し、前方から空気を吸引して後方に吐出することで、コンデンサ52及びラジエータ7をともに冷却する。
ブロワファン57から吐出された空気は、エバポレータ56を通過する際に、冷媒から冷熱を得(冷媒に熱を奪われ)て低温化する。同時に、当該空気に含まれていた水蒸気が凝縮してエバポレータ56に付着し、湿度が低下する。エバポレータ56は、夏期に室内の温度を低下させる冷房のためだけでなく、冬季に室内の湿度を低下させて車両の窓ガラスの曇りを低減する役割をも担う。
エアミックスダンパ50は、エバポレータ56を通過した空気のうち、ヒータコア59を通過して室内に向かう空気の量と、ヒータコア59を迂回して室内に向かう空気の量との割合を調節する。このエアミックスダンパ50により、室内に吹き出す風の温度を調整することが可能である。
コンデンサファン兼ラジエータファン53の駆動源となるファンモータ531、ブロワファン57の駆動源となるファンモータ571、内燃機関のクランクシャフトとコンプレッサ51との間を締結するマグネットクラッチ61やその他の電気負荷を作動させるための電源は、車載のバッテリ62及び発電機(オルタネータまたはモータジェネレータ)63である。
図3に、車両に実装された各種電気負荷を制御するための電気回路を示す。エアコンディショナ5のコンプレッサ51を稼働するときには、マグネットクラッチ61に車載のバッテリ62及び/または発電機63からの電流を通電し、マグネットクラッチ61を締結する。逆に、コンプレッサ51を稼働しないときには、マグネットクラッチ61に通電せず、当該クラッチ61を切断する。マグネットクラッチ61への通電及びその遮断は、リレースイッチ64のON/OFFによって行う。
送風用ブロワファン57を回転駆動するモータ66や、デフォッガとしてリアガラスに敷設された電熱線ヒータ68は、バッテリ62及び/または発電機63から電力供給を受けて作動する。モータ66やヒータ68への通電及びその遮断は、リレースイッチ67のON/OFF、または半導体スイッチング素子(パワートランジスタ、パワーMOSFET等に代表されるパワーデバイス)69の点弧/消弧によって行う。
オーディオ機器、カーナビゲーションシステム、照明灯、ラジエータファンを回転駆動するモータその他の電気負荷についても、上記と同様である。
電気負荷への電力供給の源である発電機63は、内燃機関のクランクシャフトから回転駆動力の伝達を受けて回転駆動され、発電を行う。発電機63は、ベルト及びプーリを要素とする巻掛伝動機構等を介してクランクシャフトに接続している。発電機63は、回生発電を実施することがある。即ち、運転者がアクセルペダルを踏んでおらず、車両の加速を要求していない(減速を容認している)場合において、クランクシャフト及び車軸の回転のエネルギを電気エネルギに変換して回収しつつ、内燃機関及び車両を減速させる。
発電機63が発電し出力する電圧の大きさは、レギュレータ65を介して制御することができる。レギュレータ65は、発電機63に付随するIC式の既知のもので、発電機63のフィールドコイルへの通電をON/OFF切り替えするスイッチング動作を行う。
発電機63の出力電圧、即ち発電機63のステータコイルに誘起される電圧は、フィールドコイルを流れるフィールド電流のDUTY比であるfDUTYに比例して大きくなる。レギュレータ65は、ECU0から発電機63の出力電圧を指令する信号rを受け付け、その指令された出力電圧を実現するようにfDUTYを調節するPWM制御を行う。このPWM制御により、発電機63の発電する電力を増減させることができる。発電機63による発電量、換言すればバッテリ62への充電量及び/または電気負荷への給電量は、fDUTYが高いほど増加し、fDUTYが低いほど減少する。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、外気温を検出する外気温センサから出力される外気温信号e、各気筒1を包有するシリンダブロックの振動を検出するノックセンサから出力される振動信号f、エアコンディショナ5のコンデンサ52から流下する冷媒の圧力を検出する冷媒圧センサから出力される冷媒圧信号g、エバポレータ56の近傍またはその下流の温度を検出する温度センサから出力されるエバポレータ温信号h等が入力される。
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、マグネットクラッチ61に通電する電気回路上のスイッチ64に対してクラッチ締結信号o、モータ66やヒータ68その他の電気負荷に通電する電気回路上のスイッチ67、69に対してスイッチON信号p、q、発電機63が発電する電圧を制御する電圧レギュレータ65に対して電圧指示信号r等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、エアコンディショナ5のコンプレッサ51のON/OFF、発電機63の出力電圧(発電量)等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、o、p、q、rを出力インタフェースを介して印加する。
本実施形態において、ECU0は、ノックセンサを介して取得される振動信号fを参照し、各気筒1におけるノッキングの有無を判定する。ノック判定にあたり、ECU0は予め、統計処理によりノック判定値を算定しておく。具体的には、ノックが起こっていないと思しき状況下で、気筒1の膨張行程中のシリンダブロックの振動をノックセンサを介してサンプリングし、振動信号fを得る。次いで、この振動信号fのサンプリング値のある期間内の時系列から、平均値及び標準偏差、ひいてはノック判定値を算出する。平均値をX、標準偏差をσとおくと、ノック判定値Jは、
J=X+Uσ
として求められる。
ノック判定値Jは、各気筒1毎に個別に求めてもよいし、全気筒1で共通のものとしてもよい。ノック判定値Jを各気筒1毎に個別のものとする場合、ある気筒1についてノック判定値Jを求めるときに、その気筒1の膨張行程中に検出された振動信号fのサンプリング値のみを基に平均値X及び標準偏差σを算出して、それらX及びσを上式に代入する。ECU0は、得られた係数U及びノック判定値Jを、メモリに記憶保持する。
しかして、ノックセンサが出力する振動信号fの現在のサンプリング値(現在の振動の強度)を、ノック判定値Jと比較する。即ち、気筒1の膨張行程中にノックセンサを介して検出された振動信号fのサンプリング値がノック判定値Jを上回ったならば、当該気筒1にてノッキングが起こったものと判定する。逆に、振動信号fのサンプリング値がノック判定値J以下であるならば、当該気筒1にてノッキングは起こっていないものと判定する。
何れかの気筒1にてノッキングが発生したことを感知した暁には、ノックコントロールシステムとして、ノッキングを抑制するための補正制御を実施する。この補正制御は、典型的には点火タイミングの遅角補正である。ノッキングが起こっているのであれば、次回以降の点火燃焼の機会における点火タイミングを、ノッキングが感知されなくなるまで遅角させてゆき、ノッキングの沈静化を図る。但し、点火タイミングの遅角量の最大値を超えて点火タイミングを遅角化することはしない。
翻って、ノッキングが起こっていないのであれば、次回以降の点火燃焼の機会における点火タイミングを、ノッキングが感知されるようになる直前まで進角させて、内燃機関の出力トルクの増大及び/または熱機械変換効率(燃費性能)の向上を追求する。
さらに、ECU0は、ノッキングが感知される直前まで進角させた(ノッキングを起こさない最大進角量の)点火タイミングを、そのときの内燃機関の運転領域[エンジン回転数,要求負荷(または、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される吸気量、燃料噴射量)]に関連付けて、学習値としてメモリに記憶保持する。この点火タイミングの学習値は、後に内燃機関が同じ運転領域に遷移したときにメモリから読み出され、そのときの点火タイミング(の初期値)として用いられる。
その上で、本実施形態のECU0は、何れの気筒1の膨張行程の前半期にも該当していない時期Bにおいて、ノックセンサの出力する振動信号fがノック判定値を上回り、なおかつ、エアコンディショナ5の冷媒圧縮用のコンプレッサ51が作動している期間と振動信号fがノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している場合には、点火タイミングを遅角させず、及び/または、点火タイミングの学習値の更新を行わないようにする。
図4に、内燃機関が具備する各気筒1の行程を示している。この図4は、三気筒エンジンの例である。基本的に、ノッキングは、何れかの気筒1の膨張行程の前半期Aに引き起こされる蓋然性が高い。これに対し、ピストンが膨張下死点に近づく膨張行程の後期には、気筒1の燃焼室内容積が既に大きく拡張しており、ノッキングが起こるおそれは殆どない。また、ある気筒1の膨張下死点と、次に膨張行程を迎える気筒1の圧縮上死点との間は、プレイグニッションと呼ばれる極めて異常な自着火爆発を除いて、ノッキングが起こることのない期間である。
それらを合わせた、ノッキングを引き起こしがたい時期Bにおいて、ノックセンサの出力する振動信号fがノック判定値を上回ったということは、ノッキングに起因した振動ではなく他の振動、即ち内燃機関に付随する補機の振動をノックセンサで感知した可能性が高まる。しかも、振動信号fがノック判定値を上回った期間と、マグネットクラッチ61を締結して冷媒圧縮用のコンプレッサ51を稼働している期間とが重なっているとすれば、その振動信号fは当該コンプレッサ51のチャタリングによるものであると推察されるのである。そうである以上、点火タイミングを遅角させる必要性はない。
また、このような状況下で点火タイミングの学習を実行すると、不当に遅角化した点火タイミングの学習値を取得することとなってしまい、内燃機関の出力トルクの低下に伴う車両の加速性の悪化や、効率の低下による燃費性能の悪化につながる。よって、ノッキングを引き起こしがたい時期Bにおいては、点火タイミングの学習を行わないものとする。
コンプレッサ51のチャタリングは、当該コンプレッサ51で使用されている潤滑油の残存量が少なくなることにより発生頻度が増す。つまり、ノッキングを引き起こしがたい時期Bにおいて振動信号fがノック判定値を上回り、かつマグネットクラッチ61を締結している期間と振動信号fがノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している事象が発生した回数を計数しておけば、その回数を基にコンプレッサ51に使用される潤滑油の残存量を推測することができるようになる。言うまでもなく、上記の事象が発生した回数が多いほど、コンプレッサ51内に残存している潤滑油の量が少ないということになる。
図5に、ノックコントロールシステムの主体となるECU0がプログラムに従い実行する処理の手順例を示す。ECU0は、ノックセンサの出力する振動信号fをノック判定値と比較し(ステップS1)、振動信号fがノック判定値を上回った場合には、次回以降の点火タイミングを遅角補正する(ステップS6)。但し、点火タイミングの遅角量が既に最大値に到達しているならば(ステップS5)、それ以上点火タイミングを遅角化することはない。
一方、振動信号fがノック判定値以下である場合には、次回以降の点火タイミングを進角補正する(ステップS10)。そして、ノッキングを起こさない最大進角量の点火タイミングを、学習値として記憶する(ステップS11)。
但し、現在の内燃機関の各気筒1の行程がノッキングを引き起こしがたい時期Bに該当しており(ステップS2、S9)、なおかつ、マグネットクラッチ61を締結してコンプレッサ51を稼働している(ステップS3)状況下にあるならば、点火タイミングの誤った遅角化を予防するため、点火タイミングの補正(ステップS6、S10)及び学習(ステップS11)を行わない。
また、振動信号fがノック判定値を上回ったときに、各気筒1の行程がノッキングを引き起こしがたい時期Bに該当し、かつマグネットクラッチ61を締結している場合には、(メモリに記憶保持している)当該事象が発生した回数のカウンタを1増加させる(ステップS4)。
そして、そのカウンタが所定値に到達した暁には(ステップS7)、コンプレッサ51内に残存する潤滑油の量が不足していると判断する(ステップS8)。ステップS8では、コンプレッサ51内の潤滑油の量が不足している旨を示す情報(ダイアグノーシスコード)をECU0のメモリに書き込み、後の点検や修理における異常要因の特定の助けとする。コンプレッサ51内の潤滑油の量が不足している旨を、運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様にて出力(エンジンチェックランプを点灯させる、ディスプレイに表示する、音声出力する等)して、運転者に報知してもよい。
本実施形態では、内燃機関の振動を検出するノックセンサの出力信号fをノック判定値と比較し、前者が後者を上回る場合に何れかの気筒1でノッキングが発生したと判断し、ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを遅角させるとともに、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを進角させるものであって、何れの気筒1の膨張行程の前半期Aにも該当していない時期Bにおいて、ノックセンサの出力信号fがノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機51が作動している期間とノックセンサの出力信号fがノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している場合には、点火タイミングを遅角させず、及び/または、点火タイミングの学習値の更新を行わない内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、内燃機関に付随する補機51の振動をノッキングに起因した振動であると誤認して、点火タイミングを不当に遅角させる問題を抑制ないし回避でき、車両のドライバビリティや燃費性能を高く保つことができる。
加えて、何れの気筒1の膨張行程の前半期Aにも該当していない時期Bにおいて、ノックセンサの出力信号fがノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機51が作動している期間とノックセンサの出力信号fがノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している事象が発生した回数を計数し、その回数に基づいて補機51に使用される潤滑油の残存量を推測するようにしているため、補機51内の潤滑油の欠乏を早期に発見することが可能となる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、振動信号fがノック判定値を上回ったときに、各気筒1の行程がノッキングを引き起こしがたい時期Bに該当し、かつマグネットクラッチ61を締結している場合において、点火タイミングの遅角補正を行わないものとしていたが、これに代えて、点火タイミングの遅角量の最大値を引き下げるようにしても、同様の効果を奏し得る。
振動信号fがノック判定値を上回り、各気筒1の行程がノッキングを引き起こしがたい時期Bに該当し、かつマグネットクラッチ61を締結しているときのエンジン回転数、外気温、冷媒圧及びエバポレータ温等は、コンプレッサ51がチャタリングを引き起こす条件を示唆している。よって、このときのエンジン回転数、外気温、冷媒圧及びエバポレータ温等をメモリに記憶保持しておき、後に同様の環境条件が再現された場合に、点火タイミングの遅角補正や点火タイミングの学習値の更新を禁止するようにしてもよい。
また、特に、本発明の対象となる、内燃機関に付随する補機は、エアコンディショナ5の冷媒圧縮用コンプレッサ51には限定されない。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
12…点火プラグ
51…補機(冷媒圧縮用コンプレッサ)
f…振動信号

Claims (2)

  1. 内燃機関の振動を検出するノックセンサの出力信号をノック判定値と比較し、前者が後者を上回る場合に何れかの気筒でノッキングが発生したと判断し、ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを遅角させるとともに、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを進角させるものであって、
    何れの気筒の膨張行程の前半期にも該当していない時期において、ノックセンサの出力信号がノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機が作動している期間とノックセンサの出力信号がノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している場合には、点火タイミングを遅角させず、または点火タイミングの学習値の更新を行わない、内燃機関の制御装置。
  2. 何れの気筒の膨張行程の前半期にも該当していない時期において、ノックセンサの出力信号がノック判定値を上回り、なおかつ内燃機関に付随する補機が作動している期間とノックセンサの出力信号がノック判定値を上回る期間とがほぼ同期している事象が発生した回数を計数し、その回数に基づいて補機に使用される潤滑油の残存量を推測する請求項1記載の内燃機関の制御装置。
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JP2017150409A (ja) * 2016-02-25 2017-08-31 株式会社デンソー 電子制御装置
CN113250837A (zh) * 2020-02-12 2021-08-13 联合汽车电子有限公司 一种超级爆震监控系统和方法、预控系统和方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017150409A (ja) * 2016-02-25 2017-08-31 株式会社デンソー 電子制御装置
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