JP2015120949A - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

銅合金板材およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015120949A
JP2015120949A JP2013264422A JP2013264422A JP2015120949A JP 2015120949 A JP2015120949 A JP 2015120949A JP 2013264422 A JP2013264422 A JP 2013264422A JP 2013264422 A JP2013264422 A JP 2013264422A JP 2015120949 A JP2015120949 A JP 2015120949A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
copper alloy
alloy sheet
less
mass
rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013264422A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015120949A5 (ja
JP6339361B2 (ja
Inventor
岳己 磯松
Takemi Isomatsu
岳己 磯松
洋 金子
Hiroshi Kaneko
洋 金子
清慈 廣瀬
Kiyoshige Hirose
清慈 廣瀬
立彦 江口
Tatehiko Eguchi
立彦 江口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Furukawa Electric Co Ltd filed Critical Furukawa Electric Co Ltd
Priority to JP2013264422A priority Critical patent/JP6339361B2/ja
Publication of JP2015120949A publication Critical patent/JP2015120949A/ja
Publication of JP2015120949A5 publication Critical patent/JP2015120949A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6339361B2 publication Critical patent/JP6339361B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

【課題】TD方向のヤング率が低く、かつ、TD方向に高い耐力を有し、耐疲労特性に優れた、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや、その他の端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適した銅合金板材を提供すること。
【解決手段】Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.1〜2.0質量%、並びにB、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0〜3.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金の板材であって、圧延面における解析で、結晶粒の短径/長径の比で表わされるアスペクト比が0.3以下の結晶粒であり、かつ、TD方向から±30°以内を向いた結晶粒について、前記結晶粒の密度が0.030個/μm以下であり、かつ、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μm/μm以下である銅合金板材と、その製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや、その他の端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適用される銅合金板材およびその製造方法に関する。
電気・電子機器用途に使用される銅合金板材に要求される特性項目は、導電率、耐力(降伏応力)、引張強度、曲げ加工性、耐疲労特性、耐応力緩和特性、ヤング率などがある。近年、電気・電子機器の小型化、軽量化、高機能化、高密度実装化や、使用環境の高温化に伴って、これらの要求特性が高まっている。
特に、近年の超小型端子では、これまで以上の小さなスペースで大きな、もしくは一定の変位をとることが求められるため、これまで以上に低いヤング率を有する材料が求められている。
従来、電気・電子機器用材料としては、鉄系材料の他、リン青銅、丹銅、黄銅等の銅系材料が広く用いられている。これらの銅合金は、SnやZnの固溶強化と、圧延や線引きなどの冷間加工による加工硬化の組み合わせによって強度を向上させている。しかし、この方法で強化した銅合金材料では、導電率が不十分となりがちである。また、高い加工率で冷間圧延などの加工を施すことによって高強度を得ているために、曲げ加工性が不十分な場合があった。
そこで、固溶強化や加工硬化に替わる強化法として、銅合金中に微細な第二相を析出させる析出強化がある。この強化方法は強度が高くなることに加えて、導電率を同時に向上させるメリットがあるため、多くの合金系で行われている。
このような中で、電気・電子機器用途としては、Cu−Ni−Si系合金(コルソン系合金)が用いられている。Cu−Ni−Si系合金は、主に析出強化や加工硬化によって強化される合金である。よって、Cu−Ni−Si系合金において、ヤング率の制御や、耐応力緩和特性と耐疲労特性の向上が求められている。
しかし、昨今の電気・電子機器や自動車に使用される部品の小型化に伴って、使用される銅合金板材は、より高強度な材料により小さい半径で曲げ加工が施されるようになっており、耐力に優れた銅合金板材が強く要求されている。さらに、小さいスペースにて一定のバネ性及びへたりにくさが求められるため、一定変位で信頼性の高い接圧を発揮するためには、材料に対して低いヤング率が強く要求されている。この点、従来のCu−Ni−Si系合金においては、圧延加工率を高めて大きな加工硬化を得ることで高い強度を得ていた。しかし、この方法では、ヤング率の制御が困難であり、所望のヤング率特性が得られなかった。
また、コネクタなどの電子部品の小型化の進行に伴い、端子の寸法精度やプレス加工の公差が厳しく要求されるようになっている。銅合金板材のヤング率を低減することで、コンタクト接圧に及ぼす寸法変動の影響を低減出来るため、部品の設計が容易となる。このため、銅合金部品には、ヤング率(縦弾性係数)が低いことが求められ、ヤング率が125GPa以下、たわみ係数が115GPa以下の銅合金板材が求められている。
さらに、大電流コネクタなどでは、部材に電流が流れることにより発生するジュール熱によって、材料自体が自己発熱し、応力緩和する問題がある。この使用中の『へたり』によって、初期の接圧を維持できない問題も挙げられる。よって、材料が耐応力緩和特性に優れることが求められている。
また、電子機器や自動車に使用される部品として用いられる場合、使用状況により振動が加わり、材料に繰り返しの応力が付与される。材料に一定の負荷応力を負荷し続けていると、板材にき裂が発生し、破断に至ってしまう。従って、材料が耐疲労特性に優れていることが求められる。
この、圧延板の幅方向(TD;Transversal Direction)の低ヤング率、耐応力緩和特性、耐疲労特性の向上の要求に対して、合金材料の結晶方位の制御によって解決する提案がいくつかなされている。例えば、特許文献1、2では、合金中の集合組織のCube方位のX線回折強度やCube方位結晶粒の面積率を制御することによって、0.2%耐力、耐応力緩和特性や曲げ加工性を改善している。特許文献3では、板材縦断面の全結晶粒の扁平率を制御することで、強度異方性を改善している。特許文献4では、Cube方位を高め、NDRDW方位を低減することで、圧延垂直方向のたわみ係数を低下させている。
特許文献1に記載された技術においては、Ni−Si系の析出物の平均粒子径と、I{200}結晶面のX線回折ピーク強度とを一定以上に高めている。また、結晶粒内の双晶密度を高めることによって、0.2%耐力、曲げ加工性、耐応力緩和特性を改善しているが、ヤング率特性についての改善はなされていない。また、特許文献1に記載の製造方法では、TDに向く(100)面を集積させる為、ヤング率が低くなることが推測されるが、実際にどのようなヤング率となるかについての記載はない。
特許文献2に記載された技術においては、集合組織制御によって結晶内のCube方位面積率及び双晶境界密度を高めることで、導電率、0.2%耐力、曲げ加工性と耐応力緩和特性を改善しているが、ヤング率の制御はされておらず、特性改善の効果が限定されている。
特許文献3に記載された技術においては、板材縦断面の組織観察から、全結晶粒の扁平率の制御によって強度異方性を改善しているものの、その強度は700MPa以上であって上限でも820MPaと依然低く、ヤング率の制御もされていない。
特許文献4に記載された技術においては、集合組織の制御により、圧延垂直方向のたわみ係数を制御しているが、特定の結晶面を配向させる集合組織制の制御であり、本発明で得られる金属組織とは大きく異なっている。
また、非特許文献1は、母相と第二相から構成される材料の平均的なヤング率を示している。
なお、ヤング率の測定には、引張試験による応力−ひずみ線図の弾性領域の傾きから算出する方法、梁(片持ち梁)をたわませた際の応力−ひずみ線図の弾性領域の傾きから算出する方法の2つの方法がある。
さらに、銅合金板材のヤング率については、特許文献5及び特許文献6にも記載がある。
特許文献5には、例えば、圧延方向(RD)に向くCube方位(100)面の面積率を30%以上と制御することによって、ヤング率が110GPa以下と小さい銅合金板材が記載されている。しかし、この特許文献5は、ヤング率を低下することを課題とするものではあるが、TD方向のヤング率に着目してこれを低く制御することについては記載がない。
また、特許文献6には、時効処理時に銅合金中の結晶粒界近傍に所定の幅で無析出帯(PFZ)を形成し、圧延平行方向の引張強度(TS(LD))、Ni含有量、母材の平均結晶粒径、無析出帯(PFZ)の幅、及び結晶粒界上の化合物の粒子径が所定の関係を満たすように制御することによって、その実施例にはヤング率が130GPaである銅合金板材が記載されている。しかし、この特許文献6は、TD方向のヤング率については言及がなく、TD方向のヤング率に着目してこれを低く制御することについては記載がない。
特開2011−84764号公報 特開2011−231393号公報 特開2011−17070号公報 特許第5117602号公報 国際公開WO2011/068134A1号公報 国際公開WO2009/104615A1号公報
尾中ら:日本金属学会誌 Vol.63,No.10(1999),pp 1283−1289
このように、従来、TD方向のヤング率を低く制御した銅合金板材は知られておらず、その提供が要求されていた。
上記のような課題に鑑み、本発明の目的は、TD方向のヤング率が低く、かつ、TD方向に高い耐力を有し、耐疲労特性に優れた、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや、その他の端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適した銅合金板材を提供することにある。
本発明者らは、種々の検討を重ね、電気・電子部品用途に適した銅合金板材について研究を行った。その結果、本発明者らは、Cu−Ni−Si系の銅合金板材において、所定の方向を向いたアスペクト比0.3以下の扁平な結晶粒の密度と、さらに、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さとを適正に制御した金属組織とすることによって、圧延垂直方向(TD)のヤング率を低く制御することができることを見出した。また、本発明者らは、上記所定の金属組織を実現するための特定の工程を有してなる銅合金板材の製造方法を見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
(1)Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.1〜2.0質量%、並びにB、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0〜3.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、
圧延面における解析で、結晶粒の短径/長径の比で表わされるアスペクト比が0.3以下の結晶粒であり、かつ、TD方向から±30°以内を向いた結晶粒について、前記結晶粒の密度が0.030個/μm以下であり、かつ、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μm/μm以下であることを特徴とする銅合金板材。
(2)B、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.1〜3.0質量%含有する(1)項に記載の銅合金板材。
(3)板材に一定の応力を加えた際の変位量を示す、引張試験で測定した、TD方向のヤング率が125GPa以下であり、たわみ試験で測定したTD方向のたわみ係数が115GPa以下、TD方向の耐力が600MPa以上である(1)又は(2)に記載の銅合金板材。
(4)板バネ疲労試験による耐疲労特性が、負荷応力500MPa以上で、繰り返し回数が10回以上である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金板材。
(5)Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.1〜2.0質量%、並びにB、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0〜3.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材を製造する方法であって、前記銅合金板材を与える合金成分組成から成る銅合金素材に、
鋳造[工程1]、
加工率10%以下の冷間圧延1[工程2]、
保持温度300〜700℃で保持時間1分〜5時間の予備焼鈍[工程3]、
保持温度700℃以上で5分〜20時間の均質化熱処理[工程4]、
熱間圧延[工程5]、
水焼入れ[工程6]、
面削[工程7]、
50%以上の加工率の冷間圧延2[工程8]、
昇温速度5〜15℃/秒、保持温度300〜700℃、保持時間1秒〜10時間の中間溶体化熱処理[工程9]、
10〜99%の加工率の冷間圧延3[工程10]、
到達温度700〜1020℃、保持時間1秒〜60秒の溶体化熱処理[工程11]、
保持温度300〜600℃、保持時間10分〜20時間の時効析出熱処理[工程12]、
酸洗[工程13]、及び
圧延加工率8〜80%の仕上げ冷間圧延[工程14]
の各工程をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
(6)B、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.1〜3.0質量%含有する(5)項に記載の銅合金板材の製造方法。
(7)前記冷間圧延[工程14]の後で、保持温度300〜600℃、保持時間1秒〜60秒の歪取り焼鈍[工程15]を施す(5)又は(6)項に記載の銅合金板材の製造方法。
本発明の銅合金板材は、所定の合金組成を有し、アスペクト比が0.3以下の結晶粒であり、その長軸がTD方向から±30°以内を向いた結晶粒の密度が0.3個/μm以下であり、かつ、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μm/μm以下である金属組織を有することによって、TD方向のヤング率が低く、TD方向の耐力が高く、耐疲労特性に優れ、電気・電子機器や自動車車載用部品などの用途に好適なものである。この本発明の銅合金板材は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや、その他の端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに特に適した性質を有する。また、本発明の製造方法によれば、上記銅合金板材を好適に製造することができる。
図1は、母相Mに対してそれぞれ第二相Ωを有する複相材料を模式的に示す説明図である。図1(A)にType Aとして示した複相材料は、母相Mに対して、第二相Ωの形状が、図中に上下方向の矢印で示した応力軸に垂直な板状である場合を示す。一方、図1(B)にType Bとして示した複相材料は、母相Mに対して、第二相Ωの形状が、図中に上下方向の矢印で示した応力軸に平行な連続繊維状である場合を示す。 図2は、圧延方向(RD)と垂直な方向(TD)に結晶粒の向きが揃うように結晶粒を制御した様子を模式的に示す説明図である。図2(A)は、結晶粒の配向制御前のランダムな状態であり、図2(B)は、結晶粒の向きが揃った状態である。 図3は、実施例で用いた板バネ疲労試験装置を模式的に示す説明図である。 図4は、実施例で用いた耐応力緩和特性試験装置を模式的に示す説明図である。
本発明の銅合金板材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。なお、本発明における「板材」には、「条材」も含むものとする。
[アスペクト比0.3以下の扁平粒の配向を制御した金属組織]
銅合金板材のTD方向(Transverse Direction。本書において、圧延垂直方向、又は単にTDともいう。)のヤング率を低下させるために、本発明者らはヤング率制御と組織の相関について詳細に調査した。その結果、板材ND方向から組織観察した際に、つまり圧延面を観察・解析した場合に、前記アスペクト比が0.3以下の比較的扁平な結晶粒の配向を制御するとともにその結晶粒の密度を低く制御することによって、TD方向のヤング率を低く制御することができることがわかった。詳細には、母相の結晶粒の長径がTD方向に向いて配列した扁平粒の密度を低く制御するとともに、粒界のずれ角が30°以上と大きい結晶粒界の単位面積あたりの長さを小さく制御することによって、TD方向のヤング率を低く制御することができることがわかった。ここで、結晶粒の長径がTD方向に向いて配列するとは、本発明で規定するところのアスペクト比が0.3以下の結晶粒がTD方向から±30°以内を向いた状態であることをいう(例えば図2(B))。
本発明の銅合金板材においては、その金属組織について、圧延面における解析で、アスペクト比が0.3以下の結晶粒であり、TDから±30°以内を向いた結晶粒の密度を0.030個/μm以下とし、かつ、隣接する結晶粒間での結晶粒界のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さを0.8μm/μm以下とする。以下、本書において、前記アスペクト比が0.3以下の結晶粒を、扁平な結晶粒又は扁平粒ともいう。また、前記「隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界」を「粒界のずれ角が大きい結晶粒界」ともいう。本発明によれば、このような扁平粒の密度を適正に小さく、かつ、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の単位面積あたりの長さを適正に短く、それぞれ制御することによって、得られる銅合金板材の特性として、圧延垂直方向(TD方向)のヤング率が低い値、例えば125GPa以下、を示すものである。
本発明の銅合金板材の金属組織については、前記扁平粒の密度が0.030個/μm以下であることが好ましく、0.025個/μm以下であることがより好ましい。また、本発明の銅合金板材の金属組織については、前記粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さが単位面積(1μm)あたりの長さとして0.8μm/μm以下であることが好ましく、0.7μm/μm以下であることがより好ましい。さらに、本発明の銅合金板材の金属組織において、前記扁平粒の平均面積が3.0μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。このような扁平な結晶粒は、例えば、鋳造[工程1]後の、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]の各工程を適正に行うことによって形成し、かつ、その配向を制御することができる。
本発明においては、結晶粒の平均面積と粒径(長径及び短径)、さらには結晶粒界の長さをEBSD法で観察及び解析することによって求める。所定の観察領域内において、母材の個々の結晶粒についてその最長の粒径を長径a(μm)とし、その最短の粒径を短径b(μm)とし、これらの長径aと短径bの各平均値を求める。本発明においてアスペクト比とは、それぞれ直線であるこれらの長径aと短径bについて各平均値を求め、前記の各平均値から得られる短径/長径の比、つまり比b/aの値をいう。
[平均結晶粒径(長径と短径の平均値)]
本発明において、母材の平均結晶粒径は、特に制限されるものではないが、通常10〜60μmである。ここで、平均結晶粒径とは、前記長径a(μm)の平均値である。また、短径b(μm)の平均値は、特に制限されるものではないが、通常5〜40μmである。本発明においては、長径aは短径bよりも長い。
[扁平粒の配向とヤング率の関係](非特許文献1より)
図1に、連続繊維を含む複相材料を模式的に示す。図1(A)にType Aとして示した複相材料は、母相Mに対して、第二相Ωの形状が、図中に上下方向の矢印で示した応力軸に垂直な板状である場合を示す。一方、図1(B)にType Bとして示した複相材料は、母相Mに対して、第二相Ωの形状が、図中に上下方向の矢印で示した応力軸に平行な連続繊維状である場合を示す。
等ひずみ条件の仮定の下での初等的な解析では、母相Mのヤング率をE、第二相Ωのヤング率をEΩとすると、母相Mと強化相Ωにおける応力がともに外部応力σに等しいと考えてそれぞれの相内の弾性ひずみεとεΩ(応力軸方向の伸びひずみ)をそれぞれ
ε=σ/EとεΩ=σ/EΩ・・・(1)
と見積もる。これは、Reuss近似とも言われる。このReuss近似の下での板状積層材(複相材料)(Type A、図1(A))のヤング率EA(R)は、第二相Ωの体積分率をVとすると、
A(R)=σ/{VεΩ+(1−V)ε}=1/[(V/EΩ)+{(1−V)/E}]・・・(2)
となる。
一方、等ひずみ条件の仮定の下での初等的な解析では、繊維強化材については母相Mと強化相Ωにおける応力軸方向の弾性伸びひずみがともに等しい値εになると考える。この弾性ひずみεが各相内の応力σとσΩ
σ=EεとσΩ=EΩε・・・(3)
として与える。ここで、応力の分配条件
σ=VσΩ+(1−V)σ・・・(4)
を使うと、等ひずみ条件での繊維強化材(複相材料)(Type B、図1(B))のヤング率EB(v)は、
B(v)=σ/ε=VΩ+(1−V)E・・・(5)
というヤング率の混合則の形式で与えられる。この等ひずみ条件はVoight(フォークト)近似とも呼ばれる。
以上の見積もりから、前記(2)と(5)のEA(R)、EB(v)の関係は
B(v)>EA(R)・・・(6)
となる。これより、EB(v)(Type B、図1(B))の方が、EA(R)(Type A、図1(A))よりも、ヤング率が高いことがわかった。
そこで、本発明ではこのような知見に基づき、前記Type B、つまり図1(B)に示した結晶粒の状態を低減させるように配向制御しようとするものである。すなわち、本発明は、Type B、つまり図1(B)に示した組織が少なくなることで、ヤング率の低下を図るものである。このような配向制御をしながら、かつ、所定の低いアスペクト比を有する粒子の密度を低減させるとともにずれ角が大きい結晶粒界の単位面積あたりの長さを低減させるように制御することで、得られる銅合金板材のヤング率を低下させるものである。
[EBSD法]
本発明における上記扁平粒、結晶粒界の観察と解析には、EBSD法を用いる。EBSDとは、Electron BackScatter Diffractionの略で、走査電子顕微鏡(SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折を利用した結晶方位解析技術のことである。本発明ではEBSD法を、結晶方位ではなく、結晶粒の平均面積と形状(アスペクト比)とを解析するために用いる。本発明におけるEBSD測定では、結晶粒を200個以上含む、100μm×200μmの試料面積に対し、0.1μmステップでスキャンし、結晶粒の平均面積と形状、結晶粒界の長さを解析する。前記測定面積及びスキャンステップは、試料の結晶粒の大きさに応じて決定すればよく、本発明では100×200μm、0.1μmとする。測定後の結晶粒の解析には、TSL社製の解析ソフトOIM Analysis(商品名)を用いる。
EBSD法による結晶粒の解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの情報を含んでいるが、測定している広さに対して充分に小さい為、本明細書中では結晶粒の平均面積として記載した。また、結晶粒の平均面積は板厚方向で異なる為、板厚方向で何点かを任意にとって平均を取ることが好ましい。
本発明においては、圧延面におけるEBSD法を用いた解析によって、前記アスペクト比や面積など各結晶粒の性状を求める。ここで、圧延面における解析とは、板厚方向(Normal Direction;ND)から板材の圧延面を観察し解析することをいう。本発明によれば、圧延方向(RD)と垂直な圧延垂直方向(TD)に結晶粒の向きが揃うように結晶粒の配向を制御する。この様子を図2に示す。図では、紙面と平行に圧延面を示した。図2(A)は、結晶粒の配向制御前のランダムな状態である。これを、所定の熱処理と加工に付すことによって、図2(B)に示すように結晶粒の向きが揃った状態とする。
図2(B)は、圧延方向(RD)に対して垂直な圧延垂直方向(TD)から±30°以内に全ての結晶粒の向きが揃っている状態の代表例として、全ての結晶粒がTDと平行に配向した状態を模式的に示した。TDと平行とは、TDに対して結晶粒の向きのずれが0°であることをいう。
ここで、結晶粒の向きのTDに対するずれとは、個々の結晶粒の長径を通る直線を結晶の向きとする場合、その向きがTDから何度ずれているかをいう。
本発明においては、結晶粒の向きのTDに対するずれを、±30°以内とする。
[必須添加元素]
本発明の銅合金への必須添加元素の含有量とその作用について示す。
(Ni)
Niは、後述するSiとともに含有されて、時効析出熱処理で析出したNiSi相を形成して、銅合金板材の強度の向上に寄与する元素である。Niの含有量は1.0〜5.0質量%であり、好ましくは1.5〜4.7質量%であり、さらに好ましくは2.0〜4.5質量%である。
Niの含有量を前記範囲とすることによって、前記NiSi相を適正に形成させ、銅合金板材の引張強さを高めることができる。また、導電率も高い。また、熱間圧延加工性も良好である。
(Si)
Siは、前記Niとともに含有されて、時効析出熱処理で析出したNiSi相を形成して、銅合金板材の強度の向上に寄与する。Siの含有量は0.1〜2.0質量%であり、好ましくは0.2〜1.8質量%であり、さらに好ましくは0.6〜1.5質量%である。Siの含有量は化学量論比でNi/Si=4.2とするのが最も導電率と強度のバランスがよい。そのためSiの含有量は、Ni/Siが2.5〜7.5の範囲となるようにするのが好ましく、より好ましくは3.0〜6.5である。
Siの含有量を前記範囲とすることによって、銅合金板材の引張強さを高くすることができる。この場合、過剰なSiが銅のマトリックス中に固溶して、銅合金板材の導電率を低下させることがない。また、鋳造時の鋳造性や、熱間及び冷間での圧延加工性も良好であり、鋳造割れや圧延割れが生じることもない。
[副添加元素]
次に本発明の銅合金への副添加元素の含有量とその作用について示す。好ましい副添加元素としては、B、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag、Snが挙げられる。これらの元素は総量で3.0質量%以下の含有量であれば、導電率を低下させる弊害を生じることなく、以下に各元素について述べる種々の特性を改善することができるために、本発明の銅合金板材に添加・含有させてもよい。添加効果を充分に活用し、かつ導電率を低下させないための含有量としては、これらの副添加元素の少なくとも1種を総量で、0.1〜3.0質量%含有することが好ましく、0.3〜1.5質量%がさらに好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。以下に、各元素の添加の作用効果を示す。
(Mg、Sn、Zn)
Mg、Sn、Znは、添加・含有させることで耐応力緩和特性を向上する。それぞれを単独で添加した場合よりも併せて添加した場合に相乗効果によって更に耐応力緩和特性が向上する。また、半田脆化が著しく改善する効果がある。
(Mn、Ag、B、P)
Mn、Ag、B、Pは添加・含有させると熱間加工性を向上させるとともに、強度を向上する。
(Cr、Zr、Fe)
Cr、Zr、Feは、化合物や単体として微細に析出し、析出硬化に寄与する。また、化合物として50〜500nmの大きさで析出し、粒成長を抑制することによって結晶粒径を微細にする効果があり、曲げ加工性を良好にする。
(Co)
Coは、合金中でSiとともに、CoSiの金属間化合物の析出物を形成して析出強化による強度向上に寄与する。
[銅合金板材の製造方法]
次に、本発明の銅合金板材の好ましい製造条件について説明する。
まず、従来の析出型銅合金の製造方法について述べる。
従来の製造方法では、銅合金素材を溶解・鋳造[工程1−1]して鋳塊を得て、これを均質化熱処理[工程1−2]し、熱間圧延[工程1−3]、水冷[工程1−4]、酸化スケール除去のために面削[工程1−5]、冷間圧延[工程1−6]をこの順に行い薄板化し、700〜1000℃の温度範囲で中間溶体化熱処理[工程1−7]を行って溶質原子を再固溶させた後に、時効析出熱処理[工程1−8]と仕上げ冷間圧延[工程1−9]によって必要な強度(但し、低いヤング率ではない)を満足させるものである。
これに対して、本発明の銅合金板材の製造方法の一つの実施形態においては、所定の合金組成を与える銅合金素材を溶解、鋳造[工程1]後に、加工率10%以下で冷間圧延1[工程2]し、300〜700℃で1分〜5時間の予備焼鈍[工程3]を行った後、700℃以上で5分〜20時間の均質化熱処理[工程4]を施すことで、組織内において微細な扁平粒が形成される。その後、熱間圧延[工程5]を施して所定の板厚とした後、水焼入れ[工程6]することで、組織内において扁平粒が粒成長して所望の粒径となる。その後、酸化スケール除去の為に面削[工程7]する。その後、50%以上の加工率で冷間圧延2[工程8]を行う。その後、昇温速度5〜15℃/秒、保持温度300〜700℃、保持時間1秒〜10時間の中間溶体化熱処理(中間焼鈍ともいう)[工程9]を施した後に、10〜99%の加工率で冷間圧延3[工程10]を施すことによって、既に形成された扁平粒内で新たに結晶粒の核が生成し、部分的に再結晶し、一定の密度で分散する。また、同時に扁平粒がTD方向に配向するとともに、隣り合う結晶粒同士の粒界のずれ角度が30°以上である高角粒界の密度を維持する。その後、溶体化熱処理[工程11]、時効析出熱処理[工程12]、表面の酸化膜を落とす酸洗[工程13]、仕上げ冷間圧延[工程14]をこの順で施し、さらに必要によって、その後に歪取り焼鈍(低温焼鈍ともいう)[工程15]を施してもよい。
また、前記扁平粒の形成と配向の制御の点では、鋳造[工程1]後の、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]の2つの工程によって、銅合金内の等軸晶、柱状晶それぞれの結晶内に扁平粒の核を形成させていると考えられる。
本発明においては、前記[工程1]から[工程15]の全ての工程をこの順に施すことが好ましい。
但し、必要に応じて、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]を適宜(好ましくは1〜5回)各々前記条件で繰り返し行ってもよい。
また、必要に応じて、中間焼鈍[工程9]と冷間圧延3[工程10]を適宜(好ましくは1回〜5回)各々前記条件で繰り返して行ってもよい。
また、低温焼鈍[工程15]を省略してもよい。
さらに、溶体化熱処理[工程11]の後で冷間圧延4[工程11’]を行ってもよい。この冷間圧延4[工程11’]は、例えば、前記冷間圧延3[工程10]と同様の条件で行うことができる。
以下に、各工程の条件をより詳細に設定した好ましい実施態様について説明する。
少なくともNiを1.0〜5.0質量%及びSiを0.1〜2.0質量%含有し、他の副添加元素については必要により適宜含有するように各元素を配合し、残部がCuと不可避不純物から成る合金素材を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造[工程1]して鋳塊を得る。鋳造[工程1]での鋳造条件は、0.1〜100℃/秒の冷却速度とすることが好ましい。この鋳塊を、例えば大型冷間圧延機を用いて、合計加工率10%以下となるよう冷間圧延1[工程2]を行う。この冷間圧延1[工程2]は複数回の圧延パス(好ましくは1回〜10回)で行ってもよいが、(合計)圧延率が0%を超えるように必ず1回は冷間圧延を施す。
次に、保持温度300〜700℃で保持時間1分〜5時間の予備焼鈍[工程3]し、再熱して保持温度700℃以上1100℃以下で5分〜20時間保持する均質化熱処理[工程4]した後、熱間圧延[工程5]にて、所定の板厚まで加工する。なお、熱間圧延[工程5]の最終温度は400℃であり、その後は水冷[工程6]し、圧延表面の酸化スケール除去のために面削[工程7]を行う。
次に、50%以上99%以下の加工率で冷間圧延2[工程8]を行い、昇温速度5〜15℃/秒、保持温度300〜700℃、保持時間1秒〜10時間の中間焼鈍[工程9]を行う。その後、圧延率10〜99%の加工率で加工する冷間圧延3[工程10]を行い、到達温度700〜1020℃、保持時間1秒〜60秒の溶体化熱処理[工程11]を施し、添加元素を再固溶させる。この溶体化熱処理[工程11]は、到達温度までの昇温速度、冷却速度ともに100℃/秒以上とする。
次に、析出強化のため、保持温度300〜600℃、保持時間10分〜20時間の時効析出熱処理[工程12]を施す。この時効析出熱処理後の板材の表面を酸洗[工程13]する。この後、圧延加工率8〜80%にて仕上圧延[工程14]に付して、所望の板厚と強度に調整する。次に、保持温度300〜600℃、保持時間1秒〜60秒で低温焼鈍[工程15]して、目的の銅合金板材を得る。低温焼鈍[工程15]後には、最終製品の板幅(条幅)に調整するために、スリット[工程16]を行ってもよい。
本実施形態において、冷間圧延1[工程2]は、合計加工率10%以下の圧延加工で、粗大な鋳造組織や偏析を破壊し、均一な組織にするための加工である。ここで、圧延加工率が低すぎると、鋳塊に対して十分な加工ひずみが入らず、粗大な鋳造組織が残存してしまう。
次に、300〜700℃で1分〜5時間の予備焼鈍[工程3]では、冷間圧延1[工程2]で導入した加工ひずみを開放し、扁平な結晶粒の核を抑制する。
熱間圧延[工程5]では、均質化熱処理温度(700℃以上1100℃以下)から800℃までの温度域で、動的再結晶による結晶粒の微細化のための加工を行う。
冷間圧延2[工程8]では、所定の板厚となるまで加工を施す。
その後の中間焼鈍[工程9]では、熱間圧延[工程5]にて微細化した結晶粒と、不均一な歪を加えた組織を、部分的に再結晶させる。また、中間焼鈍[工程9]は、冷間圧延2[工程8]で導入した加工ひずみの部分的な開放により、扁平粒の核を低減しつつ、隣り合う結晶粒との角度が30°以上の高角粒界の密度を維持する、精密な熱処理である。
溶体化熱処理[工程11]では、添加元素を固溶させる。このとき、到達温度が高すぎると、扁平な結晶粒が成長してしまい、目的の組織が得られなくなるため、到達温度を精密に制御する。
上記の、溶解・鋳造[工程1]後の各工程について、さらに好ましい条件を例示すると以下のとおりである。
冷間圧延1[工程2]は好ましくは圧延加工率8%以下、より好ましくは6%以下である。
予備焼鈍[工程3]では、保持温度は好ましくは350〜650℃、より好ましくは400〜600℃である。また、その保持時間は好ましくは5分間〜4時間、より好ましくは10分〜3時間である。
熱間圧延[工程5]では、好ましくは1010℃以下、より好ましくは1000℃以下で、数〜数十パスの圧延を施す。
冷間圧延2[工程8]では、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上の圧延加工を施す。
中間焼鈍[工程9]では、保持温度は好ましくは350〜650℃、より好ましくは400〜600℃である。また、その保持時間は好ましくは1分〜8時間、より好ましくは10分〜5時間である。
溶体化熱処理[工程11]では、到達温度は好ましくは750℃〜1000℃、より好ましくは800〜980℃である。また、その保持時間は好ましくは3秒〜50秒、より好ましくは6秒〜40秒である。
時効析出熱処理[工程12]では、保持温度は好ましくは350〜600℃、より好ましくは400〜600℃である。また、その保持時間は好ましくは30分〜15時間、より好ましくは1時間〜10時間である。
時効析出熱処理[工程12]後の材料表面の酸化スケール除去には、酸洗[工程13]を施す。
また、各圧延後の形状が良好でない場合には、例えばテンションレベラーなどによる矯正を、必要に応じて導入してもよい。但し、圧延後の板材の形状が良好であれば、この矯正工程は省略することができる。
ここで、加工率(又は圧延率、圧延加工率ともいう)は次式によって定義される値である。
加工率(%)={(t−t)/t}×100
式中、tは圧延加工前の厚さを、tは圧延加工後の厚さをそれぞれ表わす。
[銅合金板材の板厚など]
本発明の銅合金板材の板厚は、特に制限されるものではないが、通常、0.05〜0.5mmである。
本発明の銅合金板材の板幅は、特に制限されるものではないが、通常、10〜750mmである。また、条材としては、条幅は、特に制限されるものではないが、通常、1.0〜300mmである。
[銅合金板材の特性]
上記内容を満たすことで、例えばコネクタ用銅合金板材に要求される特性を満足することができる。本発明において、銅合金板材は下記の特性を有することが好ましい。各特性の詳細な測定条件は、特に断らない限り以下の実施例に記載のとおりとする。
・TD方向のヤング率が125GPa以下であることが好ましい。より好ましくは、123GPa以下である。さらに好ましくは、120GPa以下である。
・TD方向のたわみ係数が115GPa以下であることが好ましい。より好ましくは、113GPa以下である。さらに好ましくは、110GPa以下である。
・TD方向の0.2%耐力が600MPa以上であることが好ましい。より好ましくは750MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上である。
・耐疲労特性が、板材への負荷応力500MPa、繰り返し回数10回の条件にて破断しないことが好ましい。
・導電率が20%IACS以上であることが好ましい。さらに好ましくは25%以上である。
・耐応力緩和特性として、150℃で1000時間保持後の応力緩和率(SR)が20%以下であることが好ましい。さらに好ましくは15%以下である。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1〜実施例16、比較例1〜比較例21)
実施例1〜実施例16について、表1に示す組成となるように、主原料Cuと必須添加元素NiとSiに、必要により各種の副添加元素を配合し、残部がCuと不可避不純物からなる合金素材(合金原料)を得た。各合金原料を高周波溶解炉により溶解し、それぞれ0.1〜100℃/秒の冷却速度で鋳造[工程1]して鋳塊を得た。各鋳塊を、合計加工率10%以下で冷間圧延1[工程2]を施し、保持温度300〜700℃、保持時間1分〜5時間で予備焼鈍[工程3]を行った。次に、再熱して保持温度700〜1100℃で5分〜20時間保持する均質化熱処理[工程4]し、1020℃以下で熱間圧延[工程5]を行った。熱間圧延[工程5]の終了温度は400℃とした。その後、水焼入れ[工程6]と、引続いて、酸化スケールを除去するために面削[工程7]した後、加工率50%以上99%以下の冷間圧延2[工程8]を施した。この面削された加工材に、大型の焼鈍炉(例えばBEL炉)にて昇温速度5〜15℃/秒、保持温度300〜700℃、保持時間1秒〜10時間にて中間焼鈍[工程9]を行った。その後、加工率10〜99%で冷間圧延3[工程10]を行った。その後、到達温度700〜1020℃、保持時間1〜60秒で溶体化熱処理[工程11]を施した後、到達温度300〜600℃、保持時間10分〜20時間の時効析出熱処理[工程12]を行った。その後、表面の酸化膜を除去する為に、酸洗[工程13]し、加工率8〜80%の仕上冷間圧延[工程14]を行い、最後に保持温度300〜600℃で、保持時間1秒〜60秒の低温焼鈍[工程15]を施し、各供試材とした。
各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて、酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行った。なお、熱間圧延[工程5]での加工温度は、圧延機の入り側と出側に設置してある放射温度計により測定した。
これとは別に、表1に示す組成の比較例1〜比較例21について、前記実施例と同様にして、各供試材を得た。但し、比較例1〜比較例21は、以下の点で前記実施例での製造条件とは異なる。
比較例1、4〜6では、冷間加工での合計加工率が大きすぎて冷間圧延1[工程2]が規定の範囲外であり、また、保持温度が高すぎて予備焼鈍[工程3]も規定の範囲外であった。
比較例2では、冷間加工での合計加工率が大きすぎて冷間圧延1[工程2]が規定の範囲外であり、また、保持温度が低すぎて、かつ、保持時間も短すぎて予備焼鈍[工程3]も規定の範囲外であった。
比較例3、13では、冷間加工での合計加工率が大きすぎて冷間圧延1[工程2]が規定の範囲外であった。
比較例7では、冷間圧延1[工程2]は行わなかった。
比較例8〜11では、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]のいずれも行わなかった。
比較例12では、冷間加工での合計加工率が大きすぎて冷間圧延1[工程2]が規定の範囲外であり、また、保持温度が低すぎて予備焼鈍[工程3]も規定の範囲外であった。
比較例14では、予備焼鈍[工程3]は行わなかった。
比較例15では、副添加元素の合計含有量が多すぎた。
比較例16〜21では、NiとSiのそれぞれもしくはいずれも、含有量が多すぎたか又は少なすぎた。
これらの本発明に従った実施例及び比較例の供試材について下記の特性調査を行った。ここで、供試材の最終板厚は0.08mmとした。
a.アスペクト比0.3以下の扁平粒の密度、平均面積
各供試材の圧延面におけるEBSD測定にて、100μm×200μmの範囲で、スキャンステップ0.1μmの条件で測定を行った。測定結果の解析において、測定範囲中の全結晶粒から、アスペクト比が0.3以下の結晶粒(扁平粒)を抽出した。その扁平粒から長軸がTD方向に対して±30°以内に配向している結晶粒をさらに抽出した。その抽出した扁平粒について、密度、平均結晶粒面積を算出した。
b.隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さ
前記EBSD測定にて、各結晶粒界の長さを測定した。測定結果の解析において、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さを求めた。表2−1〜表2−2中には、「≧30°の結晶粒界の単位面積あたりの長さ[μm/μm]」と示した。
c.TD方向のヤング率
試験片は、各供試材の圧延垂直方向(圧延方向(RD)に垂直な方向(TD))から、幅20mm、長さ200mmの短冊状試験片を採取し、試験片の長さ方向(つまりTD)に引張試験機により応力を付与し、歪と応力の比例定数を求めた。降伏するときの歪量の80%の歪量を最大変位量とし、その変位量までを10分割した変位を与え、その10点での測定値から歪と応力の比例定数をTD方向のヤング率として求めた。
d.TD方向のたわみ係数
試験片は、各供試材の圧延方向に垂直な方向(TD)に幅0.25mm、長さ1.5mmとなるようにプレスによる打ち抜きで加工した。片持ち梁にて試験片の表裏を10回ずつ測定し、下式で計算されるたわみ係数E[GPa]を、表裏10回ずつの測定の平均値で示した。
E=4a/b×(L/t)
式中、a:変位fと応力wの傾き、b:供試材の幅、L:固定端と荷重点の距離、t:供試材の板厚である。ここで、傾きaは、変位fと応力wが比例関係にある弾性領域について傾き(接線)を求めた。
e.TD方向の耐力[YS]
たわみ係数測定において、各試験片の弾性限界までの押し込み量(変位)から耐力[MPa]を算出して、強度つまりTD方向の耐力とした。
耐力[MPa] YS={(3E/2)×t×(fmax/L)×1000}/L
式中、E:前記たわみ係数、t:前記板厚、L:前記固定端と荷重点の距離、fmax:弾性限界までの変位(押込み深さ)である。
f.耐疲労特性
耐疲労特性は、JCBA T308;2001(銅及び銅合金薄板条の疲労特性試験方法)に準拠し、前記各実施例及び比較例の試料から、圧延方向に平行な方向(つまりRD)と圧延方向に垂直な方向(つまりTD)から供試材を切り出して、それら各々について測定を行った。図3に、試験片を図の上方に振幅させた状態を平面視で示した説明図を示す(板バネ疲労試験)。1は試験片、2はナイフエッジ、3は固定具である。試験片幅は、10mm±0.2mm、試験片の固定トルクは、下部2N・m、上部3N・mである。試験片の負荷応力値(σ)は、下記の式(a)にて求めた。
500MPaの負荷応力にて両振りで片振幅2.0mmで繰り返し試験を行い、材料が破断するまでの繰り返し回数を求めた。
破断までの繰り返し回数が、圧延平行方向(RD)と圧延垂直方向(TD)で切り出した各供試材のいずれも10回以上であった場合を「良」、圧延平行方向と圧延垂直方向で切り出した各供試材のいずれかもしくはいずれも10回未満であった場合を「不良」とした。
σ=(3×E×t×δ)/(2×l)・・・(a)
式中、σ:最大曲げ応力(N/mm)、E:前記たわみ係数(N/mm)、t:前記試験片厚さ(mm)、δ:たわみ量(mm)、l:試験片セット長さ(mm)である。
g.導電率[EC]
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を計測して導電率(%IACS)を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
h.応力緩和率[SR]
旧日本電子材料工業会標準規格(EMAS−3003)に準じ、以下に示すように、150℃×1000時間の条件で測定した。片持ち梁法により耐力の80%の初期応力を負荷した。
図4は耐応力緩和特性の試験方法の説明図であり、図4(a)は熱処理前、図4(b)は熱処理後の状態である。図4(a)に示すように、試験台14に片持ちで保持した試験片11に、耐力の80%の初期応力を付与した時の試験片11の位置は、基準からδの距離である。これを150℃の恒温槽に1000時間保持し、負荷を除いた後の試験片12の位置は、図4(b)に示すように基準からHの距離である。13は応力を負荷しなかった場合の試験片であり、その位置は基準からHの距離である。この関係から、応力緩和率(%)は(H−H)/δ×100と算出した。
これらの本発明に従った実施例及び比較例の各供試材について、組成を表1に、製造条件の一部と得られた金属組織と特性を表2−1〜表2−2に、それぞれ示す。
Figure 2015120949
Figure 2015120949
Figure 2015120949
表1及び表2−1に示すように、実施例1〜実施例16では、合金組成は本発明の規定の範囲内であり、また、その製造の際の製造条件は、本発明の製造方法での規定に従って、冷間圧延1[工程2]は、合計圧延加工率が10%以下で圧延加工し、かつ、予備焼鈍[工程3]は、300〜700℃で1分〜5時間の熱処理を行った。
表2−1に示すように、実施例1〜実施例16は、各特性において良好であった。すなわち、TD方向に対して長軸が±30°以内を向いた、アスペクト比が0.3以下の扁平な結晶粒の密度が0.030個/μm以下であり、かつ、隣り合う結晶粒とのずれ角が30°以上の結晶粒界の単位面積(1μm)あたりの長さが0.8μm/μm以下を示した場合、TD方向のヤング率、耐力、たわみ係数と、耐疲労特性と、導電率及び耐応力緩和特性(応力緩和率)とがいずれも良好であった。
また、その金属組織が、前記扁平な結晶粒の平均面積が3.0μm以下であった場合には、さらに良好な特性を示した。
したがって、本発明の銅合金板材は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや、その他のスイッチ、端子材、リレー、ソケットなどに適した銅合金板材として提供することができる。
これに対し、表1及び表2−2に示す比較例1〜比較例21では、本発明で規定する合金組成、金属組織及び製造方法のいずれか1つ以上を満たさなかった。
その結果、表2−2に示すように、全ての比較例の試料について少なくともいずれか1つの特性が劣る結果となった。
すなわち、比較例1は、実施例2と同じ組成であって合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]も予備焼鈍[工程3]も本発明で規定する条件を外れていた。比較例1は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、隣接する結晶粒界のずれ角が30°以上の結晶粒界の長さ(前記粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さ)のいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数が劣った。比較例1は、耐応力緩和特性にも劣った。
比較例2は、実施例1、3と同じ組成であって合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]も予備焼鈍[工程3]も本発明で規定する条件を外れていた。比較例2は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数が劣った。比較例2は、耐応力緩和特性にも劣った。
比較例3、13は、いずれも合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]が本発明で規定する条件を外れていた。比較例3、13は、いずれも組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度が制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数が劣った。比較例13は、耐応力緩和特性にも劣った。また、比較例3では、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さも制御が不十分で大きすぎた。
比較例4〜6は、いずれも合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]も予備焼鈍[工程3]も本発明で規定する条件を外れていた。比較例4〜6は、いずれも組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数が劣った。比較例4〜5は、TD方向の耐力にも劣った。比較例5、6は、耐応力緩和特性にも劣った。
比較例7は、実施例4と同じ組成であって合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]は行わなかった。比較例7は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数、耐疲労特性が劣った。
比較例8〜10は、いずれも合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]のいずれも行わなかった。比較例8〜10は、いずれも組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数が劣った。比較例8は、耐応力緩和特性にも劣った。比較例10は、耐疲労特性にも劣った。
比較例11は、実施例5と同じ組成であって合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]のいずれも行わなかった。比較例11は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数、耐疲労特性が劣った。比較例11は、耐応力緩和特性にも劣った。
比較例12は、合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、冷間圧延1[工程2]も予備焼鈍[工程3]も本発明で規定する条件を外れていた。比較例12は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、組織中の扁平粒の密度と、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さのいずれも制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数、耐疲労特性が劣った。
比較例14は、合金組成は本発明の規定を満たす。しかし、その製造方法は、予備焼鈍[工程3]は行わなかった。比較例14は、組織中の扁平粒の制御が不十分であって、粒界のずれ角が大きい結晶粒界の長さの制御が不十分で大きすぎたため、TD方向のヤング率、たわみ係数、耐疲労特性が劣った。比較例14は、導電性にも劣った。
比較例15は、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]と組織は、本発明の規定を満たしているが、副添加元素の合計含有量が多すぎて合金組成が本発明例の規定を満たさず、導電率が劣った。
比較例16〜21は、冷間圧延1[工程2]と予備焼鈍[工程3]を含む製造方法は、本発明の規定を満たしているが、NiとSiのいずれかもしくは両方の含有量が多すぎ又は少なすぎて合金組成が本発明例の規定を満たさず、得られた組織の内、扁平粒の密度が高すぎて本発明の規定を満たさず、また、TDの耐力、耐疲労特性、導電率、耐応力緩和特性の内で1つ以上の特性が劣った。
特に、比較例13では、±TD方向30°以内を向いたアスペクト比0.3以下の扁平粒の密度が0.03個/μmを超える値であるが、一方で、隣接する結晶粒界のずれ角が30°以上の結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μm/μm以下であったが、得られたTD方向のヤング率が128GPaであった。また、比較例14では、±TD方向30°以内を向いたアスペクト比0.3以下の扁平粒の密度が0.03個/μm以下であるが、一方で、隣接する結晶粒界のずれ角が30°以上の結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μmを超える値であったが、得られたTD方向のヤング率が127GPaであった。これらの比較例13と14では、ヤング率の低下は認められるものの、扁平粒の密度とずれ角30°以上の結晶粒界の長さがいずれも本発明の規定内であった各実施例とは異なり、所望の低いTD方向のヤング率、125GPa以下は達成できなかった。
よって、組織中の扁平粒の密度、隣接する結晶粒界のずれ角が30°以上の結晶粒界の長さの2つを適正に制御した組織とすることで、TD方向のヤング率、耐疲労特性などの所望の特性を満たすことができることが分かる。
1 試験片
2 ナイフエッジ
3 固定具
11 試験片(片持ちで保持した状態)
12 試験片(除荷後の状態)
13 試験片(応力を負荷しなかった状態)
14 試験台

Claims (7)

  1. Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.1〜2.0質量%、並びにB、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0〜3.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、
    圧延面における解析で、結晶粒の短径/長径の比で表わされるアスペクト比が0.3以下の結晶粒であり、かつ、TD方向から±30°以内を向いた結晶粒について、前記結晶粒の密度が0.030個/μm以下であり、
    かつ、隣接する結晶粒間のずれ角が30°以上である結晶粒界の単位面積あたりの長さが0.8μm/μm以下であることを特徴とする銅合金板材。
  2. B、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.1〜3.0質量%含有する請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 板材に一定の応力を加えた際の変位量を示す、引張試験で測定した、TD方向のヤング率が125GPa以下であり、たわみ試験で測定したTD方向のたわみ係数が115GPa以下、TD方向の耐力が600MPa以上である請求項1又は2に記載の銅合金板材。
  4. 板バネ疲労試験による耐疲労特性が、負荷応力500MPa以上で、繰り返し回数が10回以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  5. Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.1〜2.0質量%、並びにB、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0〜3.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材を製造する方法であって、前記銅合金板材を与える合金成分組成から成る銅合金素材に、
    鋳造[工程1]、
    加工率10%以下の冷間圧延1[工程2]、
    保持温度300〜700℃で保持時間1分〜5時間の予備焼鈍[工程3]、
    保持温度700℃以上で5分〜20時間の均質化熱処理[工程4]、
    熱間圧延[工程5]、
    水焼入れ[工程6]、
    面削[工程7]、
    50%以上の加工率の冷間圧延2[工程8]、
    昇温速度5〜15℃/秒、保持温度300〜700℃、保持時間1秒〜10時間の中間溶体化熱処理[工程9]、
    10〜99%の加工率の冷間圧延3[工程10]、
    到達温度700〜1020℃、保持時間1秒〜60秒の溶体化熱処理[工程11]、
    保持温度300〜600℃、保持時間10分〜20時間の時効析出熱処理[工程12]、
    酸洗[工程13]、及び
    圧延加工率8〜80%の仕上げ冷間圧延[工程14]
    の各工程をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
  6. B、Mg、P、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Zr、Ag及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で0.1〜3.0質量%含有する請求項5に記載の銅合金板材の製造方法。
  7. 前記冷間圧延[工程14]の後で、保持温度300〜600℃、保持時間1秒〜60秒の歪取り焼鈍[工程15]を施す請求項5又は6に記載の銅合金板材の製造方法。
JP2013264422A 2013-12-20 2013-12-20 銅合金板材およびその製造方法 Active JP6339361B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013264422A JP6339361B2 (ja) 2013-12-20 2013-12-20 銅合金板材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013264422A JP6339361B2 (ja) 2013-12-20 2013-12-20 銅合金板材およびその製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2015120949A true JP2015120949A (ja) 2015-07-02
JP2015120949A5 JP2015120949A5 (ja) 2016-09-29
JP6339361B2 JP6339361B2 (ja) 2018-06-06

Family

ID=53532823

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013264422A Active JP6339361B2 (ja) 2013-12-20 2013-12-20 銅合金板材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6339361B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015182776A1 (ja) * 2014-05-30 2015-12-03 古河電気工業株式会社 銅合金板材、銅合金板材からなるコネクタ、および銅合金板材の製造方法
CN107046769A (zh) * 2016-02-09 2017-08-15 Jx金属株式会社 印刷配线板用积层体、印刷配线板的制造方法及电子机器的制造方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013040389A (ja) * 2011-08-18 2013-02-28 Furukawa Electric Co Ltd:The たわみ係数が低く、曲げ加工性に優れる銅合金板材
JP2013163853A (ja) * 2012-02-13 2013-08-22 Furukawa Electric Co Ltd:The 銅合金板材およびその製造方法
JP2015034328A (ja) * 2013-08-09 2015-02-19 古河電気工業株式会社 銅合金板材およびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013040389A (ja) * 2011-08-18 2013-02-28 Furukawa Electric Co Ltd:The たわみ係数が低く、曲げ加工性に優れる銅合金板材
JP2013163853A (ja) * 2012-02-13 2013-08-22 Furukawa Electric Co Ltd:The 銅合金板材およびその製造方法
JP2015034328A (ja) * 2013-08-09 2015-02-19 古河電気工業株式会社 銅合金板材およびその製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
古河電気工業: "高性能コネクタ用銅合金 EFCUBE-STの開発", 古河電工時報, JPN6017019817, July 2012 (2012-07-01), pages 15 - 16, ISSN: 0003568989 *

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015182776A1 (ja) * 2014-05-30 2015-12-03 古河電気工業株式会社 銅合金板材、銅合金板材からなるコネクタ、および銅合金板材の製造方法
JP5972484B2 (ja) * 2014-05-30 2016-08-17 古河電気工業株式会社 銅合金板材、銅合金板材からなるコネクタ、および銅合金板材の製造方法
CN107046769A (zh) * 2016-02-09 2017-08-15 Jx金属株式会社 印刷配线板用积层体、印刷配线板的制造方法及电子机器的制造方法
CN107046769B (zh) * 2016-02-09 2019-09-13 Jx金属株式会社 印刷配线板用积层体及印刷配线板与电子机器的制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6339361B2 (ja) 2018-06-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5170916B2 (ja) 銅合金板材及びその製造方法
KR101914322B1 (ko) 구리합금 재료 및 그 제조방법
JP4885332B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
TWI447239B (zh) Copper alloy sheet and method of manufacturing the same
JP5972484B2 (ja) 銅合金板材、銅合金板材からなるコネクタ、および銅合金板材の製造方法
JP5503791B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
KR20120104553A (ko) 저영율을 갖는 구리합금판재 및 그 제조법
JP5916418B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
KR101603393B1 (ko) 구리합금 판재 및 그의 제조방법
KR20160029033A (ko) 전자·전기 기기용 구리 합금, 전자·전기 기기용 구리 합금 박판, 전자·전기 기기용 도전 부품 및 단자
WO2015001683A1 (ja) 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品及び端子
JP6581755B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
JP6339361B2 (ja) 銅合金板材およびその製造方法
WO2018174081A1 (ja) プレス加工後の寸法精度を改善した銅合金条
JP6370692B2 (ja) Cu−Zr系銅合金板及びその製造方法
KR102499442B1 (ko) 구리 합금 판재 및 그 제조 방법

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160810

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160913

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170606

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170727

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170727

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20170727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170912

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171102

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171102

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180417

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180510

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6339361

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350