JP2015120647A - 創傷治癒促進剤 - Google Patents

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然太 安川
Zenta Yasukawa
然太 安川
誠 徳永
Makoto Tokunaga
誠 徳永
内山 和彦
Kazuhiko Uchiyama
和彦 内山
裕二 内藤
Yuji Naito
裕二 内藤
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Abstract

【課題】近年、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群の罹患者が増加の傾向にあり、社会的に問題となっている。本発明において、創傷治癒促進剤を提供する。本発明は、潰瘍性大腸炎の問題を解決し、潰瘍性大腸炎に起因する様々な病態の予防・治療剤を提供することを目的とする。【解決手段】平均分子量が3.0?103〜1.0?105であるグァーガム分解物とグァー豆タンパク質を1/1000〜1/40の比率で含有させることで上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、平均分子量が3.0×10〜1.0×10であるグァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を1/1000〜1/40の比率で含有することを特徴とする腸管の創傷治癒促進剤に関するものである。
腸管の創傷によって引き起こされる腸管炎症は様々な疾患の原因となる。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患で、日本には10万人ほどの患者がおり、「特定疾患」いわゆる”難病”に指定されている。腹痛、下痢、下血が主な症状で、再燃・再発を繰り返し慢性の経過をとる。完全な治癒は困難であり、寛解期をいかに長く維持するかが重要となる。一方、過敏性腸症候群は器質的変化がないが、腹痛を伴う便通異常が持続的・断続に起こる症候群で、日本人の10〜20%と推定される。最近、これらの病態にも腸管粘膜の炎症が関与することが明らかとなっている。
炎症を制御する成分として、例えばグァーガム分解物が知られている。例えば、特許文献1参照。)
特許第4956002号公報(第1−20頁)
炎症を制御することが潰瘍性大腸炎を初めとする炎症性腸疾患、過敏性腸症候群などに有効であるが、それだけでは十分でなく、その際に起こる創傷を治癒することも必要であり、この創傷を治癒する成分が求められていた。
本発明は、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群の際に起こる腸管の創傷の問題を解決し、人類の健康維持向上を目的とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、特定の平均分子量を持つガラクトマンナン多糖を主成分とするグァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を特定の比率で含有することを特徴とする剤により腸管の創傷治癒促進されることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は平均分子量が3.0×10〜1.0×10であるグァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を1/1000〜1/40の比率で含有することを特徴とする腸管の創傷治癒促進剤である。
グァーガム分解物の平均分子量分布は、好ましくは、3.0×10〜1.0×10である。平均分子量分布が3.0×10以下では本願発明の腸管の創傷治癒促進剤を供することが不可能となり、平均分子量が1.0×10を超えると、粘度が高く液体に溶解する場合に不都合を生じる。
剤中のグァーガム分解物とグァー豆タンパク質との比率は、グァーガム分解物1に対して、グァー豆タンパク質が1/1000〜1/40が好ましい。それ以下のタンパク質含量では効果が無く、それ以上のタンパク質量になると沈殿の問題が生じ、不都合が生じる。
本発明の腸管の創傷治癒促進剤は、創傷治癒を促進できるという利点がある。本発明の腸管の創傷治癒促進剤を用いることにより腸管創傷の早期治癒が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明におけるグァーガム分解物は、水溶性の食物繊維で、インド・パキスタン等で食用にされている一年生豆科植物グァー(学名シアモプシス・テトラゴノロバ(Cyamopsis tetragonoloba))由来の豆を原料とし、その胚乳に含まれるガラクトマンナン多糖を加水分解し低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては、酵素分解法、酸分解法など、特に限定するものではないが、分解物の分子量が揃い易い点から酵素分解法が好ましい。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾップス属菌などに由来するβ−マンナナーゼが好ましい。
本願発明のタンパク質は、グァー豆のタンパク質であり、それ自体に創傷治癒促進効果は確認されないが、グァーガム分解物との併用により始めて創傷治癒促進を示すものである。
本願発明の腸管とは胃の先の十二指腸から肛門手前の直腸までを指す。十二指腸、空腸、回腸を小腸と言い、その先が大腸である。大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる。
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
実施例1(グァーガム分解物25,000)
水900gに0.1N塩酸を加えてpH3に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ−マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、40〜45℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後(固形分量:20重量%)、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として68g得た。
得られたグァーガム分解物について、グァーガム分解物量換算で0.5(w/v)%濃度の水溶液をポリエチレングリコール(平均分子量:2×10、2×10、2×10及び1×10)を分子量マーカーとする高速液体クロマトグラフィー〔(株)ワイエムシイ製カラム:YMC−Pack Diol−120〕に供して平均分子量を求めたところ、約25,000であった。
実施例2(グァーガム分解物5,500)
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ−マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.45gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、50〜55℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後(固形分量:20重量%)、噴霧乾燥装置〔大川原化工機(株)製〕により乾燥し、グァーガム分解物を粉末として70g得た。実施例1に準じて平均分子量を求めたところ5,500であった。
実施例3(グァー豆タンパク質)
グァー豆タンパク質の調製方法は、特に限定されるものではないが、好ましくはグァー豆100gを原料とし、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液900gで60℃、1時間可溶化した。不溶成分を遠心分離して除き、抽出液に1規定塩酸を加えてpH4.5でタンパク質を沈殿させた。遠心分離して上澄み液と沈殿物を分けた。沈殿物に水を加えてこの操作を繰り返した。中性の水で溶解した後噴霧乾燥し、グァー豆タンパク質を33g回収した。
比較例1(グァーガム分解物1,600)
実施例2で分子量測定のために高速液体クロマトグラフィーを行った際に、低分子量のピークを分取した。再度、高速液体クロマトグラフィーを行い、平均分子量を求めたところ約1,600であった。
比較例2(グァーガム分解物120,000)
実施例2の酵素反応時間を4時間で行い、他は同様の操作を行ったところ、グァーガム分解物を粉末として71g得られ、平均分子量は約120,000であった。
実施例4〜9、比較例3〜16
表1〜表4のようにグァーガム分解物、グァー豆タンパク質を混合し、創傷治癒促進剤を作成した。
Figure 2015120647
Figure 2015120647
Figure 2015120647
Figure 2015120647
試験例1(溶解性試験)
実施例4〜9、比較例3〜16をイオン交換水100mlに対し、5gを加え、完全に溶けるかを試験した。
表1〜表4の記載から明らかなように、グァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を1/1000〜1/40の比率で含有する実施例4〜9、比較例3、5、7〜10、12〜15で示される創傷治癒促進剤は溶解性に問題がなかったが、グァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を1/10の比率で含有する比較例4、6、11、16で示される創傷治癒促進剤は溶解性に問題が認められた。
試験例2(創傷治癒促進効果を評価する試験)
マウス大腸上皮YAMC(Young Adult Mouse Colonic epithelial cell)細胞を用いた。YAMC細胞を牛胎児血清(5%(vol/vol))、マウスインターフェロンーガンマ(5ユニット/mL)、グルタミン(2mM)、ストレプトマイシン(50mg/mL)、ペニシリン(50ユニット/mL)を含むRPMI1640にインスリン(6.25mg/L)、リノレン酸(6.25mg/L)を加えた培地で33℃で増殖させ、4日間間隔で1:6の比で継代した。
細胞をP60カルチャーディッシュに播種し、コンフルエントに達するまで培養した。続いて、細胞を、細胞刺激物質として実施例1〜5、比較例1〜2をそれぞれ5%含む血清無しの培地で24時間培養後、10マイクロリットルのロングマイクロチップを用いて、おおよそ500マイクロリットルの傷をつけた。pH6.8のりん酸緩衝食塩水を用いて細胞くずなど2回洗浄し、同じ培地でさらに12時間培養した。培養後、細胞をデジタルカメラで撮影し、傷が回復した領域をNIH Image (v1.63)ソフトウェアで計算した。傷が回復した領域は次の計算式により、計算した。「0時間の細胞のいない領域面積―12時間の細胞のいない領域面積」。1つの検体に対し、少なくとも8箇所の領域で調査し、処理していないコントロールの細胞との割合を示した。
全ての結果は平均値±偏差値で表した。2要因の分散分析で比較し、シェッフェ型多重比較試験で、P値が0.05より低い場合、有意な差があるとした。有意差検定にはStatView 5.0−J program (Abacus Concepts, Berkeley, CA)を使用した。
Figure 2015120647
表5の創傷残存率の結果に示されるように、創傷治癒促進剤として、実施例4〜9に効果が認められた。
本発明の創傷治癒促進剤により、創傷治癒を促進することのできる剤を提供することが可能となり、産業上貢献大である。

Claims (1)

  1. 平均分子量が3.0×10〜1.0×10であるグァーガム分解物と、グァー豆タンパク質を1/1000〜1/40の比率で含有することを特徴とする腸管の創傷治癒促進剤。
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