JP2015115530A - 導電体、電波吸収体、塗膜被覆電波吸収体および電波障害の防止方法 - Google Patents

導電体、電波吸収体、塗膜被覆電波吸収体および電波障害の防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、GHz帯における電波吸収性能に優れる電波吸収体およびそのような電波吸収体を提供できるような導電体を提供する。【解決手段】線径が0.1〜1.0mmの単繊維または複合繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成されたメッシュ基材に、固着剤を用いて、炭素繊維を該炭素繊維の量がメッシュ基材の単位面積当たり10〜20g/m2となるように固着してなり、JIS K 7194に従って測定した表面抵抗率が100〜1,000Ω/□である導電体。および、導電体の両面をそれぞれ200〜2000μm厚の電波透過層で挟んでなるサンドイッチ単位構造1層又は2層以上からなり、周波数5〜30GHzの範囲で、10dB以上の電波の反射減衰量のピークを有する電波吸収体。【選択図】なし

Description

本発明は、導電体、電波吸収体、塗膜被覆電波吸収体および電波障害の防止方法に関する。
近年、様々な分野で電波が利用されている。
例えば、放送分野ではラジオ電波やテレビ電波などが利用され、通信分野では、無線LAN(Local Area Network)、ETC(Electronic Toll Collection System)、携帯電話などの無線を用いたデジタルデータ通信などに電波が利用されている。
店舗などの販売分野や物流倉庫などの物流分野では、RFID(Radio Frequency Identification)と称される非接触型ICタグに電波が利用されている。
車、電車、船舶、航空機などの運送分野では、無線の通信機器などに各種波長の電波が利用されている。特に、船舶などでは、海上の船舶などを捕捉するレーダー、海中の魚影などを捕捉するレーダーなどで電波が利用されている。
このように、各種分野で電波が多用されるようになった一方で、各種の無線機器、電子機器などから副次的に発生する不要な電波による電波障害(電波の干渉)や情報漏洩などの問題も発生しており、このような問題に対する解決策を講じる必要性も生じている。
例えば、テレビにおいては、従来から、テレビの画像が二重、三重に映る「テレビゴースト現象」などの電波障害が問題となっている。この現象は、家庭などの受信用アンテナが、テレビ電波の送信所(又は中継所)から直接送信されて来る電波(直接波)だけでなく、一旦高層ビルや鉄塔などに当たって反射した電波(反射波)を時間的に遅れて受信してしまうため発生する現象である。
携帯電話、無線LAN及びITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)などの無線通信システムでは、これら無線通信システムが発達し、これら無線通信システムに利用される周波数帯域での需要が増大していることに伴って、システム間の電波の混線、電磁波の相互干渉、遅延分散に伴う混信、誤作動、通信不能といった問題が生じるおそれがある。
非接触型ICタグでは、例えば、出入庫時、非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて、商品情報の読取りを行う際、近くに置いてある、既に読取りの済んだ別の商品を意図せず読んでしまう、あるいは過って情報を書換えてしまうといった問題が生じるおそれがある。また、システムが立ち上がるにつれ、不慮または故意による第三者の電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざんが行われる場合も想定される。
海上で使用される船舶レーダーでは、該レーダーから発射されて、橋梁などの構造物や当該船舶の船体マストなどで不所望に反射した電波が、レーダーで検知することを目的とする洋上の他の船舶などからの反射電波に混ざることによって偽像(実際には存在しないエコーがレーダー画像上に現れること)が起こることがある。かかる偽像が起こると船舶運航上の安全性に関わる。
上記問題を解決するために、建物内外での良好な電磁環境(EMC:Electromagnetic Compatibility)を保持するために必要な性能の良い電波吸収体が要望されている。
電波吸収体とは、入射した電波のエネルギーのほとんどを電波吸収体の内部で熱エネルギーに変換する材料の事をいう。電波吸収体の種類には、用いられる吸収材料により、磁性電波吸収体、抵抗皮膜を用いた電波吸収体および誘電性電波吸収体に大別される。
磁性電波吸収体に用いられる代表的な吸収材料には、フェライトがある。フェライトのように磁性を有する材料は、内部の電子がスピンしており、またこの電子は電荷を有しているため、小さなコイルに電流が流れている状態と同じである。コイルに電流が流れると、電磁石が存在する事に相当するため、吸収材料の中に多くの微小磁石が存在することになる。
このような状態の材料に、外部より交流磁界が加わると、外部に大きな別の電磁石を置いた状態と同じ状態になる。そのため、磁性材料の内部の微小磁石は、加えられた外部磁石の方向に向きを変える。この場合、低い周波数の外部磁界では、磁性材料内部の微小磁石の磁気モーメントも、加えられた磁界の方向に向きを変えるため、外部磁界の変化に抵抗することがないため、電気的な抵抗は実質上生じない。しかし、次第に周波数を上げていくと、微小磁石の変化には時間的な遅れが生じ、外部磁石の方向と同じ方向に微小磁石の磁気モーメントの方向が変わらなくなる。これらが、等価的に電気抵抗として現れることになり、磁性電波吸収体は電波を吸収する。これが磁性電波吸収体の電波吸収原理である。
このような磁性電波吸収体は、吸収材料として比重が大きい材料を使用しているため、例えば、磁性体シートや磁性タイルなどは現場での施工に難があるが、軽量な電波吸収体を作製することも困難であり、電波吸収体の軽量化に関して改善の余地がある。
抵抗皮膜を用いた電波吸収体とは、金属板からλ/4(λはスペーサー内の波長)離れた位置に平面波の波動インピーダンスである376.7Ω(真空中、空気中では367.6Ω)の抵抗皮膜を配置した電波吸収体であり、λ/4型電波吸収体と呼ばれている。
λ/4型電波吸収体に用いられる抵抗皮膜の表面抵抗率は376.7Ω(真空中、空気中では367.6Ω)であり、スペーサーの厚みがλ/4に限定される。
抵抗皮膜の電気的な特性は、誘導性または容量性サセプタンスを有しない抵抗皮膜である。そのため、抵抗皮膜の空気中の表面抵抗率367.6Ω/□に合わせて、スペーサーの厚みがλ/4に制限されるため、λ/4型電波吸収体は設計自由度が低い。
誘電性電波吸収体とは、無損失な誘電体に抵抗性材料が分散した誘電材料である。誘電性電波吸収体は、誘電材料を電気的な等価回路で表す事で、伝送線理論を用いて設計する事ができる。伝送線理論では、抵抗性材料が無損失な誘電体に分散した誘電材料を、抵抗性材料自体が有する抵抗と抵抗性材料間の静電容量とが複雑に結合した回路として考える。この材料に電界を加えると、低い周波数では電流が流れないため、抵抗による熱の発生はほとんどない。しかし、周波数が高くなると、周波数に反比例してコンデンサのインピーダンスが低くなるため、誘電材料にも電流が流れるようになり、誘電材料内部において熱の発生が生じる。この現象が誘電性電波吸収体における電波吸収の原理であり、結果として電波エネルギーが熱エネルギーに変換されるため、電波吸収が可能となる。
しかしながら、抵抗性材料としてグラファイト粉末、カーボンブラック、カーボンファイバー、コイル状炭素繊維(カーボンナノコイル)等のカーボン材料を用いた場合、吸収材料のアスペクト比が小さく、導電性が低いため、要求される誘電性を発現させるためには、多量の吸収材料と、ある程度の厚みが必要となる。また、多量の吸収材料を含有し、ある程度の厚みを有する吸収体の中でも、GHz帯領域における電波吸収性能が十分であるとは評価されたものは知られていない。
以上を鑑みると、電波吸収体の軽量化および膜厚などの設計自由度の点からは、誘電性電波吸収体を選択することが望ましく、その場合GHz帯領域における電波吸収性能を向上させることが課題となる。
特開2009−33129号公報(特許文献1)には、基布の少なくとも片面に導電性樹脂層を有し、1GHzにおける透過減衰量が3〜20dBの範囲内である非接触電波認識用電波吸収布帛が記載されており、上記導電性樹脂層が、炭素繊維ミドルファイバーを含むものである態様や、上記基材の組織織がメッシュ織である態様も記載されている。
しかし、上記非接触電波認識用電波吸収布帛は、電波の吸収波長領域として1GHzを想定して設計されたものであり、その他周波数帯、特に1GHzよりも大きな周波数帯における電波吸収については記載されていない。
また、上記非接触電波認識用電波吸収布帛は、空間を間仕切るカーテンや物品を覆うカバーなどとして用いることを想定されたものであり、屋外のような状況によって使用環境が変わる場所や、船舶や高層ビルの外壁などのように、安全性や堅牢性などの点から堅牢・強固に設置する必要があり、カーテンなどを設置することが難しい場所に用いることはできない。
特開平3−151699号公報(特許文献2)には、木材チップにカーボン粉末および/または炭素繊維をバインダーと共に混合した成分組成の炭素系成形体と金属系の網体とを複合して構成された電波吸収材が記載され、10〜50MHzの周波数範囲において20dB以上の電波吸収性能を示した態様も記載されている。
しかし、特許文献2には、上記電波吸収材の10〜50MHz以外の周波数帯、特にGHz帯における電波吸収については記載されていない。
また、上記電波吸収材は、木材チップにカーボン粉末および/または炭素繊維を混入して成形した炭素系成形体による誘電損失特性と、これに複合化した金属系網体による遮蔽減衰特性とが相乗的に作用して高度のシールド効果を発揮する。さらには、保持材として軽量で成形性の良好な木材チップを使用して強固に形成した炭素系成形体の組織をさらに金属系網体が強化する。そのため、上記電波吸収材は、全体としての材料は優れた機械的強度と合成を有する組織を呈するが、金属系の網体を用いたり、強化剤としてのチップを用いたりする必要があるため、重量やコストが嵩む。
このような状況を鑑みて、軽量で、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、GHz帯における電波吸収性能に優れる電波吸収体が求められている。
特開2009−33129号公報 特開平3−151699号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであって、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、安全性や堅牢性などに優れ、GHz帯における電波吸収性能に優れ、好ましくは軽量である電波吸収体およびそのような電波吸収体を提供できるような導電体を提供することを目的とする。
本発明は、さらに、電波障害の防止方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のメッシュ基材に固着剤を用いて炭素繊維を特定量固着してなり、特定の表面抵抗率を有する導電体が、該導電体の両面を特定の電波透過層で挟んでなるサンドイッチ単位構造を構成した時に、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、フェライトなどの様な電磁性材料を含まなくても(目的に応じて含んでいてもよいが)、GHz帯における電波吸収性能に優れる電波吸収体となることを見出した。
また、本発明者らは、基材上に、下塗り塗膜層と、上記電波吸収体からなる電波吸収体層と、中塗り塗膜層および上塗り塗膜層から選択される少なくとも1層とがこの順で積層された塗膜被覆電波吸収体も、軽量で、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、GHz帯における電波吸収性能に優れることを見出した。
さらに、本発明者らは、偽像および誤作動から選択される少なくとも1つの電波障害を生じる原因となる電波反射体に、上記電波吸収体または塗膜被覆電波吸収体を設置するか、前記電波反射体と電波受信装置との間に、上記電波吸収体または上記塗膜被覆電波吸収体を設置することで、電波障害を防止できることも見出した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
本発明に係る導電体は、線径が0.1〜1.0mmの単繊維または複合繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成されたメッシュ基材に、固着剤を用いて、炭素繊維を該炭素繊維の量がメッシュ基材の単位面積当たり10〜20g/m2となるように固着してなり、JIS K 7194に従って測定した表面抵抗率が100〜1,000Ω/□である。
上記炭素繊維は、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均直径が1〜10μmであり、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均長さが10〜100μmであることが本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から好ましい。ここで、上記25本の炭素繊維は、走査型電子顕微鏡で観察した画面内で、無作為に選択する。また、各炭素繊維の直径および長さは走査型電子顕微鏡で観察した画面内で行い、それらの平均値を求めて、平均直径および平均長さを算出する。
本発明に係る導電体において、前記メッシュ基材を構成する繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、プラスチック繊維、植物繊維および動物繊維から選択される少なくとも1種の材料からなることが、コストや本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能などの観点から好ましい。
本発明に係る導電体において、前記固着剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤から選択される少なくとも1種のカップリング剤であることが、メッシュ基材と繊維との密着性の観点より好ましい。
前記固着剤の量が、炭素繊維100重量部に対して、30〜70重量部であることが、メッシュ基材と繊維との密着性の観点より好ましい。
本発明に係る導電体は、前記炭素繊維、前記固着剤および有機溶剤を混合し、得られた混合液に前記メッシュ基材を浸漬し、必要により、該混合液中で該メッシュ基材を繰り返し浸漬させることにより、該メッシュ基材中に固着材を含浸させると共に、該メッシュ基材に炭素繊維を均一に付着させ、次いで浸漬後のメッシュ基材を10〜60℃で乾燥させて得られる導電体であることが、コストや本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能などの観点から好ましい。
本発明に係る導電体は、電波吸収体製造用部材として好適に用いることができる。
本発明に係る電波吸収体は、上記導電体の両面をそれぞれ200〜2000μmの電波透過層で挟んでなるサンドイッチ単位構造1層又は2層以上からなり、周波数5〜30GHzの範囲で、10dB以上の電波の反射減衰量のピークを有する。
本発明に係る電波吸収体において、前記電波透過層は、樹脂を含む樹脂層であることが、電波吸収性能の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体において、前記樹脂層の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種であることが、電波吸収特性の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体において、前記樹脂層は、顔料(中空顔料を除く)および中空材から選択される少なくとも1種の充填材を含むことが、電波吸収性能の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体において、前記顔料は、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、シリカおよび水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種であり、前記中空材は、セラミックバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーンから選択される少なくとも1種であることが、電波吸収特性の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体において、前記中空材のJIS Z 8819に従って測定したメジアン径(D50)は、3〜100μmであることが、電波吸収特性の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体は、前記顔料および前記中空材から選択される少なくとも1種の充填材および前記樹脂を混合してなる塗料を基材の表面または基材に設けられた塗膜の表面に塗布し、前記導電体を載置した後、さらに前記塗料を前記導電体全体が該塗料で被覆されるように塗布する操作を少なくとも1回行って少なくとも1つのサンドイッチ単位構造を含む積層体を形成し、該積層体を10〜60℃で乾燥してする工程を少なくとも1回行って得られるものであることが、電波吸収特性の観点から好ましい。
本発明に係る電波吸収体は、船舶、航空機、自動車、鉄塔、橋梁および高層建造物から選択される一種以上に好適に用いることができる。
本発明に係る塗膜被覆電波吸収体は、
基材上に、下塗り塗膜層(i)と、上記電波吸収体からなる電波吸収体層(ii)と、
中塗り塗膜層(iii-1)および上塗り塗膜層(iii-2)から選択される少なくとも1層(iii)と、
がこの順で積層[下塗り塗膜層(i)/電波吸収体層(ii)/{中塗り塗膜層(iii-1) (iii-1)および/または上塗り塗膜層(iii-2)}]され、
前記下塗り塗膜層(i)が、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚30〜200μmの塗膜層であり、
前記中塗り塗膜層(iii-1)が、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚20〜100μmの塗膜層であり、
前記上塗り塗膜層(iii-2)が、ふっ素系塗料、ウレタン系塗料、アクリル系塗料、または、シリコン変性アクリル系塗料から形成される乾燥膜厚20〜50μmの塗膜層であることを特徴とする。
電波障害の防止方法は、偽像および誤作動から選択される少なくとも1つの電波障害を生じる原因となる電波反射体に、上記電波吸収体または上記塗膜被覆電波吸収体を設置するか、または、前記電波反射体と電波受信装置との間に、上記電波吸収体または上記塗膜被覆電波吸収体を設置することを特徴とする。
本発明に係る導電体は、電波吸収体の用途に好適であり、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、安全性や堅牢性などに優れ、GHz帯における電波吸収性能に優れる電波吸収体を提供できる。
すなわち、本発明に係る導電体は、特定の炭素繊維が固着したメッシュ基材からなり、電波透過層と組み合わせることで電波吸収性能に優れる電波吸収体を提供できるものであるので、そのような電波吸収体は、λ/4型電波吸収体のように電波吸収体の厚みに関する制限を受けず、設計自由度が高い。
また、本発明に係る導電体により提供される電波吸収体は、形態が布などの形態に限定されないので、設置場所に過度の制限がない。
さらに、本発明に係る導電体は、電波吸収性能に優れる電波吸収体を提供する上で、電波透過層と組み合わせればよく、フェライトなどのような重量の嵩む材料を使用しなくても電波吸収性能に優れる電波吸収体を提供できるので、電波吸収体の軽量化が可能である。
本発明に係る電波吸収体は、軽量で、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、GHz帯における電波吸収性能に優れる。
本発明に係る電波障害の防止方法によれば、GHz帯の電波によって生じる電波障害を、効率よく防止することができる。
図1は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板上にサンドイッチ構造(厚み600μm)のみが3層設けられた態様(合計厚み1800μm)を示す。 図2は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板上にサンドイッチ構造(厚み600μm、1000μmまたは800μm)のみが3層設けられた態様(合計厚み1800μm、3000μmまたは2400μm)を示す。 図3は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板と金属板に一番近いサンドイッチ構造中の導電体との間にポリプロピレン(PP)樹脂層が介在している態様を示す。 図4は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板に一番近いサンドイッチ構造と金属板に二番目に近いサンドイッチ構造との間にPP樹脂層が介在している態様を示す。 図5は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板に二番目に近いサンドイッチ構造と金属板に三番目に近いサンドイッチ構造との間にPP樹脂層が介在している態様を示す。 図6は、本発明に係る導電体を含む電波吸収体(積層体)の層構成の一例であり、金属板に三番目に近いサンドイッチ構造上にPP樹脂層が積層されている態様を示す。 図7は、金属板上にサンドイッチ構造(厚み600μm)のみが3層設けられ、該サンドイッチ構造中の電波透過層が樹脂フィルムである電波吸収体の電波吸収性能を示す(電波吸収体の電波吸収特性(反射減衰量)がどのように変化するかを表す)。 図8は、金属板上にサンドイッチ構造(厚み600μm)のみが3層設けられ、該サンドイッチ構造中の電波透過層が塗膜である電波吸収体の電波吸収性能を示す(電波吸収体の電波吸収特性(反射減衰量)がどのように変化するかを表す)。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
1.導電体
本発明に係る導電体は、線径が0.1〜1.0mmの単繊維または複合繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成されたメッシュ基材に、固着剤を用いて、特定の炭素繊維を特定量固着してなり、JIS K 7194に従って測定した表面抵抗率が100〜1,000Ω/□である。
本発明に係る導電体のJIS K 7194で測定した表面抵抗率は、炭素繊維の平均直径、平均長さや固着量などを調整することで実現できる。詳細については、炭素繊維の項目で詳述する。
該表面抵抗率が100Ω/□未満の導電体は、通常作製することが困難であり、該表面抵抗率が1000Ω/□を超える導電体は、電波吸収体に用いても得られる電波吸収体が通常電波吸収性能を発揮できない傾向にある。
前記炭素繊維は、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均直径が1〜10μmであり、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均長さが10〜100μmであることが、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から好ましい。
1−1.メッシュ基材
上記メッシュ基材は、線径が0.1〜1.0mmの繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成される。
ここで、メッシュサイズとは、メッシュ基材の目の細かさを表す単位であり、1インチ(25.4mm)あたりの目の数を表す。
1−1−1.メッシュ基材を構成する繊維
メッシュ基材を構成する繊維(但し後述の炭素繊維は除く)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点からは、非導電性材料からなる繊維であることが好ましい。
また、メッシュ基材を構成する繊維が、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機(非導電性)繊維;アラミド繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維(プラスチック繊維);木綿、麻等の植物繊維あるいは、絹、羊毛等の動物繊維などの天然繊維;から選択される少なくとも1種の材料からなる繊維であると、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点からのみならず、製造コストの観点(例えば炭素繊維からなるメッシュ基材などに比べて非常に安価である)から、より好ましい。
さらに、同様の観点から、メッシュ基材を構成する繊維の材料は、無機(非導電性)繊維のうちのガラス繊維;合成繊維のうちのビニロン繊維、ナイロン繊維;(植物系)天然繊維のうちの木綿から選択される少なくとも1種の材料であることがさらに好ましい。
また、同観点から、メッシュ基材を構成する繊維として、上記材料の単繊維あるいは上記材料から選択される1種の繊維を複数本(例えば50〜1000本程度)撚ってなる複合繊維あるいは上記材料から選択される2種以上をそれぞれ単数本あるいは複数本用意して(例えば合計で50〜1000本程度)それらを撚ってなる複合繊維が好ましく使用できる。
メッシュ基材を構成する繊維として、導電性材料からなる繊維が本発明の目的を損なわない程度に含まれていてもよい。
上述のメッシュ基材を構成する単繊維または複合繊維の線径は、マイクロメータを用いて測定できる。単繊維または複合繊維の各1本について長さ方向に10点測定し、その平均値を線径とする。
メッシュ基材を構成する単繊維または複合繊維の線径は、メッシュ基材の強度、可撓性等の観点から0.1〜1.0mmに調整されていればよい。
1−1−2.メッシュ基材の構造
メッシュ基材は、メッシュ基材を構成する複数の繊維が、互いに異なる方向に交差してメッシュ状に織られていればよく、例えばたて糸とよこ糸の他に斜め方向の繊維を交差させて三方向の繊維によってメッシュ状にされていてもよい。また、たて糸とよこ糸とを交互に交差させる例に限らず、例えば、メッシュ基材を構成する繊維のたて糸とよこ糸とを交互にすることなく交差させた構成であってもよく、交差させて接着剤で接着する(積層体とする)などして構成してもよい。たて糸とよこ糸とが直交せず、斜めに交差する構成としてもよい。また、メッシュ基材としては、平織、綾織、平畳織、綾畳織、絡み織などで織られたものを適宜用いることができる。
要は、メッシュ基材を構成する繊維で囲まれた空間部分(開口部分)の面積が、1〜220mm2程度となるように、適宜の形で織り込めばよい(例えば、線径0.1mmの単線維を用いた導電体の場合、1.7メッシュで219mm2となる)。この面積になるように織ることにより、炭素繊維を後述の方法によりメッシュ基材に容易に固着させることが可能となる。また、導電体を構成するメッシュ基材が網状であれば、該メッシュ基材の織り方に関らず、該導電体を用いた電波吸収体は電波吸収性能を発揮する。
中でも、薄材でありながら軽量性と強度を兼ね備え、織り方が容易であるという点から、平織および絡み織が好ましい。平織は縦、横の単繊維または複合繊維が一定の間隔で一本ずつ相互に交わり、絡み織はさらに縦横一方の単線維または複合繊維が捻って織られる。
本発明に係る導電体は、線径が0.1〜1.0mmの単繊維または
複合繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成されている。メッシュサイズが上記大きさであると、炭素繊維を後述の方法によりメッシュ基材に容易に付着させることができ、電波吸収特性上も良好な性能が得られる点から好ましい。
メッシュ基材が、例えば線径が0.2mmの複合繊維を、メッシュサイズが16メッシュとなるように絡み織で形成された場合、縦、横の繊維の間隔はそれぞれ約1.6mmであり、複合繊維は厚さ方向に扁平に変形するため複合繊維で囲まれた空間部分(開口部分)の面積は約1.5mm2となる。なお、メッシュ基材の縦、横の繊維の間隔が異なる場合や開口部分の形状が円形に近い場合は開口部分の面積が上述の1〜220mm2程度となるように織りこめばよい。
なお、メッシュ基材の縦、横の繊維の間隔が異なる場合、間隔が短い方向の1インチあたりの目の数、開口部分の形状が円形に近い場合、任意の方向の1インチあたりの目の数をメッシュサイズとすればよい。
メッシュ基材の厚さはマイクロメータで測定でき、用いた繊維の線径や織り方に依存するが、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から、厚い部分で0.1〜1.0mmとするのが好ましい。
本発明に係る導電体は、単体で優れた電波吸収性能を発揮するものではないが、後述のように、電波透過層(フィルムや塗膜など)と組み合わせて電波吸収体を構成・構築することで、所望の広域の周波数帯に亘って、優れた電波吸収性能を発揮する電波吸収体を提供することができる。
1−2.炭素繊維
炭素繊維は、上記メッシュ基材を構成する繊維とは異なる繊維であり、導電性を有し、メッシュ基材に導電性を付与する機能を有するが、後述の固着剤により上記メッシュ基材に固着されている。
炭素繊維は、本発明に係る導電体に上述の範囲の表面抵抗率を付与できるものであれば特に制限されないが、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均直径が1〜10μmであり、無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均長さが10〜100μmであることが、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から好ましい。
上記平均直径については、炭素繊維の断面が真円である場合は、該円の直径を炭素繊維の直径とする。炭素繊維の断面が真円でない(真円でない円形、非円形など)場合は、該断面と同じ面積の円の直径(いわゆる円換算径)を炭素繊維の直径とする。
このような炭素繊維は、JIS K 7194に従って測定した表面抵抗率が上記範囲にある導電体を製造する上で好適である。
また、炭素繊維のアスペクト比は、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から、5〜15であることが好ましい。
炭素繊維の平均直径および平均長さが(さらに好ましくはアスペクト比も)上記範囲にあると、炭素繊維同士が接触しやすく、導電パス(導電経路)を形成するので、十分な導電性を得ることができ、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能がさらに向上するものと考えられる。
例えば、市販のバンドル状の炭素繊維は、上記の平均直径の要件を満たさないものもあるが、従来法に従ってディスパー、ビーズミルなどによる分散処理を行うことにより、繊維束をほぐして細かく分割することで、炭素繊維の繊維径を細くすることができ、所望の平均直径、平均長さ、アスペクト比などを有する炭素繊維を得ることができる。炭素繊維を分散させる分散媒は特に制限されないが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)および酢酸ブチルなどの有機溶剤や水が挙げられる。炭素繊維は、得られた分散液の状態のまま導電体の製造に供してもよいし、分散液より分離してから導電体の製造に供してもよい。
炭素繊維としては、ピッチ系の製法で得られた炭素繊維(すなわちピッチ系炭素繊維)が、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から、好ましい。
前記炭素繊維は、メッシュ基材に固着されており、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点からは、炭素繊維のメッシュ基材の単位面積当たりの量は10〜20g/m2が好ましい。
ただし、炭素繊維は、メッシュ基材のメッシュ構造が維持されるように、固着されている。本発明の目的を損なわない程度に、導電体には、メッシュ基材を構成する繊維に囲まれた空間部分が、炭素繊維が固着されることで塞がっている部分(閉塞部分)があってもよいが、電波透過が困難になり、該導電体を用いた電波吸収体が電波性能を発揮できないほどに閉塞部分がある導電体は、本発明では採用されない。
1−3.固着剤
固着剤は、上記炭素繊維を上記メッシュ基材に固着させる役割を果たす。
固着剤は、導電体の製造時には、炭素繊維が分散している分散液中の有機溶剤に溶解させるか、または分散液より分離した炭素繊維、有機溶剤と混合して用いるため、混合液にメッシュ基材を浸漬することにより、混合液を該有機溶剤中の炭素繊維と共にメッシュ基材中に入り込ませて(含浸)、上記炭素繊維を上記メッシュ基材(を構成している繊維の表面)に固着させることができるものであれば、特に制限されない。固着剤はシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤から選択される少なくとも1種であることが、上記炭素繊維を上記メッシュ基材に適度な力で固着できる観点から好ましい。
これらの中でも、上記炭素繊維を上記メッシュ基材に適度な力で固着できる観点から、シランカップリング剤がより好ましい。
シランカップリング剤(D)は、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基およびグリシジル基からなる群から選ばれた少なくとも1種の反応性官能基を含有してなり、好ましくはアミノ基を含有するシランカップリング剤であることが好ましい。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
このようなエポキシ基含有シランカップリング剤としては、具体的には、KBM−303(信越化学工業(株)製、(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、A−186(日本ユニカー(株)製、(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン);
KBM−403(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、A−187(日本ユニカー(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン);
KBM−402(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、AZ−6137(日本ユニカー(株)製、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン);
KBE−403(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)などが挙げられる。
また、シランカップリング剤の中でも、上記炭素繊維を上記メッシュ基材に適度な力で固着できる観点から、特にアミノ系シランカップリング剤がよりさらに好ましく、アミノ系シランカップリング剤の中でも、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(市販品としては、例えば、KBM−603、信越化学工業(株)製)N2−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
本発明に係る導電体では、これらシランカップリング剤を1種または2種以上が用いられていてもよい。
固着剤の量は、炭素繊維をメッシュ基材に適度な力で固着できる観点から、炭素繊維100重量部に対して、30〜70重量部であることが好ましく、40〜60重量部であることがより好ましく、45〜55重量部であることがさらに好ましい。
1−4.その他材料
本発明に係る導電体には、本発明の目的を損なわない限り、上記メッシュ基材、炭素繊維、固着剤以外の材料、例えば、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、シリコン樹脂、アマイドワックス、ベントナイトなどから選択される少なくとも1種以上が含まれていてもよい。
但し、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から、強磁性材料(例えば、フェライトなど)は含まないことが望ましい。
1−5.用途
以下に詳述するように、本発明に係る導電体は、電波吸収体用として好適である。
2.導電体の製造方法
本発明に係る導電体の製造方法は、固着剤を介して炭素繊維をメッシュ基材に、より具体的には、メッシュ基材を構成している繊維の表面に、固着できる方法であれば特に制限されないが、前記炭素繊維および前記固着剤を有機溶剤に分散し、得られた分散液に前記メッシュ基材を浸漬し、次いで浸漬後のメッシュ基材を10〜60℃で乾燥させて、本発明に係る導電体を得る方法が、工程の簡易さ、メッシュ基材に固着する炭素繊維の量の調整の容易さなどの観点から好ましい。
メッシュ基材、炭素繊維、固着剤については前述の通りである。
有機溶剤としては、固着剤を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、N-ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(市販品としては、例えば、アルコソルブPM、KHネオケム(株)製)、ブチルセロソルブなどが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
分散液中の炭素繊維、固着剤の量は、得られる導電体において、それぞれメッシュ基材への目付、炭素繊維に対する固着剤の量が上述の量となるように調整すればよく、例えば、炭素繊維100重量部に対して、固着剤が30〜70重量部、有機溶剤が2000〜3000重量部となるように、有機溶剤中に炭素繊維及び固着剤を分散させればよい。
メッシュ基材を上記分散液に浸漬し、メッシュ基材中に分散液を含浸させる際の分散液の量は、メッシュ基材のうち、炭素繊維を固着させる対象部分が全て分散液に浸漬するような量であれば特に制限されない。
分散液の調製やメッシュ基材の分散液への浸漬(dipping)は、常温付近(通常25℃前後)で行えばよいが、目的に応じて、0〜40℃の範囲で調整してもよい。
なお、上記一連の工程において、圧力条件は常圧下(約0.101MPa)で行えばよい。
浸漬(ディッピング)は、従来法に従って行えばよい。
なお、本発明では、メッシュ基材と分散液との接触方法は上記方法に限定されず、結果として、メッシュ基材を構成している繊維(メッシュ繊維)の表面に分散液が良好に接触し、該メッシュ繊維の表面に炭素繊維が固着剤を介して満遍なく一様に付着する限りその接触順序や接触方法は特に限定されず、メッシュ基材に分散液を流下・散布してもよい。
上記分散液には、必要に応じて、炭素繊維、固着剤以外の材料、例えば、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、シリコン樹脂、アマイドワックス、ベントナイトなどから選択される少なくとも1種以上を分散させてもよい。
但し、本発明に係る導電体を用いた電波吸収体の電波吸収性能の観点から、強磁性材料(例えば、フェライトなど)は含まないことが望ましい。
3.電波吸収体
本発明に係る電波吸収体は、上記導電体の両面をそれぞれ200〜2000μm厚の電波透過層で挟んでなるサンドイッチ単位構造1層又は2層以上からなり、周波数5〜30GHzの範囲で、10dB以上の電波の反射減衰量のピークを有する。
サンドイッチ単位構造には、1層の電波透過層または2層以上の電波透過層積層体が積層されていてもよい。サンドイッチ単位構造を2層以上含む場合、複数のサンドイッチ単位構造は、連続して積層されていてもよいし、1層の電波透過層または2層以上の電波透過層を介して積層されていてもよい。
3−1.電波透過層
電波透過層は、電波を透過する層であれば特に制限されないが、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、シリコン樹脂などから選択される少なくとも1種を含む樹脂層であることが好ましい。電波吸収体の電波吸収性能や、電波を吸収する周波数帯等の観点からは、電波透過層は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含む樹脂層であることが好ましい。
電波透過層の形状は、層状であれば特に制限されず、例えば樹脂シートから形成されたものであってもよいし、塗膜から形成されたものであってもよい。
電波吸収体の外観や設置の容易さなどの観点からは、電波透過層は、塗膜から形成されたものであることが好ましい。
前記電波透過層は、顔料(中空顔料を除く。以下同じ。)および中空材から選択される少なくとも1種の充填材と、樹脂とを含む樹脂層であることが、各電波透過層の厚みの調整のしやすさ、電波吸収体の電波吸収性能、電波を吸収する周波数帯等の観点から好ましい。
なお、本明細書において、中空を有する顔料(中空顔料)は、顔料ではなく中空材に分類される。
充填材が上記顔料である場合、顔料としては、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カリ長石、ソーダ長石、クレー、珪藻土、微粉シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。難燃性の観点からは、これら顔料の中でも、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
顔料のJIS Z 8819法に従って測定した平均粒径は、電波吸収体の電波吸収性能の観点から、1〜100μmであることが好ましい。
これら顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
電波透過層が顔料を含む場合、各電波透過層において、電波透過層100重量部中10〜50重量部となる量で含まれることが防食の観点から好ましい。また、電波透過層中の樹脂成分100重量部に対して、10〜100重量部となる量で含まれることが防食の観点から好ましい。
中空材としては、セラミックバルーン(例えば、パーライト。市販品としては、ON2150、ON4150、ON5150(いずれもKD Ceratech社製)など。)、ガラスバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーン、フライアッシュなどが挙げられる。電波吸収性能の観点からは、これら中空材の中でも、セラミックバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーンが好ましい。中空材を用いることにより、電波透過層の密度が低減され、電波吸収体の軽量化が可能となる。
中空材は、JIS Z 8819に従って測定したメジアン径(D50)が3〜100μmであることが、電波吸収体の10dB以上の吸収ピークの現れる周波数帯の調整の観点から好ましい。
これら中空材は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
電波透過層が中空材を含む場合、各電波透過層において、電波透過層100重量部中5〜30重量部となる量で含まれることが電波吸収性能の観点から好ましい。また、電波透過層中の樹脂成分100重量部に対して、5〜40重量部となる量で含まれることが電波吸収性能の観点から好ましい。電波吸収体としては、電波透過層全層100重量%中5〜30重量部となる量で含まれることが電波吸収性能の観点から好ましい。また、電波透過層全層中の樹脂成分合計量100重量部に対して、5〜40重量部となる量で含まれることが電波吸収性能の観点から好ましい。
本発明では、充填材は、顔料、中空材などの合計として、電波透過層全層中の樹脂成分合計量100重量部に対して、30〜60重量部となる量で含まれることが電波吸収性能の観点から好ましい。
電波透過層には、顔料として難燃材が含まれているのが好ましい。
難燃材としては、炭酸カルシウム(市販品としては、例えば、タンカルスーパーSS、丸尾カルシウム社製)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの導電性を有さない材料が挙げられ、難燃性の観点から、炭酸カルシウムがより好ましい。
電波吸収体層が難燃材を含むことで、電波吸収体は難燃性を獲得することができ、従来の可燃性塗料では不向きであった、船舶、航空機、構造物へ好適に用いることができる。
電波透過層が難燃材を含む場合、各電波透過層において、電波透過層100重量部中5〜10重量部となる量で含まれることが難燃性の観点から好ましい。また、電波透過層中の樹脂成分100重量部に対して、5〜15重量部となる量で含まれることが難燃性の観点から好ましい。電波吸収体としては、電波透過層全層100重量部中5〜10重量部となる量で含まれることが難燃性の観点から好ましい。また、電波透過層全層中の樹脂成分合計量100重量部に対して、5〜10重量部となる量で含まれることが難燃性の観点から好ましい。
通常、難燃材を含むと、誘電率に変化が生じて電波吸収性能に影響が出るが、本発明に係る電波吸収体は、上記難燃材を含んでいても、電波透過層中に導電体を含まない構造であるので、本発明に係る電波吸収体では電波吸収特性は維持され、しかも塗膜物性にも影響を与えない。
3−2.電波吸収体の厚みなど
電波透過層の各層の厚みは、電波吸収体の電波吸収性能や、電波を吸収する周波数帯等の観点からは、200〜2000μmであることが好ましく、600〜1000μmであることがより好ましい。
サンドイッチ単位構造1つの厚みは、電波吸収体の電波吸収性能や、電波を吸収する周波数帯等の観点からは、500〜5000μmであることが好ましい。
サンドイッチ単位構造の合計厚みは、電波吸収体の電波吸収性能や、電波を吸収する周波数帯等の観点からは、500〜15000μmであることが好ましい。
3−3.電波吸収体の電波吸収特性
本発明に係る電波吸収体は、導電体と電波透過層との間に相互作用が生じ、優れた電波吸収特性を発揮する。
そのため、本発明に係る電波吸収体は、従来の強磁性材料を必須成分とする電波吸収体と異なり、強磁性材料を含まなくても優れた電波吸収特性を発揮することができ、特に、強磁性材料を含まない場合には、軽量化やコストの削減が可能である。
また、本発明に係る電波吸収体は、従来のλ/4型電波吸収体と異なり、厚みがλ/4であるスペーサーがなくても優れた電波吸収特性を発揮することができることから、厚みなどに関する設計自由度が高い。
さらに、本発明に係る電波吸収体は、従来の電波吸収性能が十分でない誘電性電波吸収体と異なり、十分に優れた電波吸収特性を発揮することができる。
電波吸収体の電波の反射減衰量は大きいほどよいが、経済性を考慮して10dB以上、好ましくは15dB以上、より好ましくは20dB以上とすれば、十分に実用的な効果を認める事ができる。
電波の反射減衰量の大きさは自由空間法により測定する事ができる。電波吸収体の電波の反射減衰量のピークは、電波の入射角を垂直、30°、45°または60°に調整して測定する。
電波吸収体の電波の反射減衰量のピークが10dB以上を示す周波数は、電波吸収体を構成する各層の厚みを変えることなどで調整できる。調整方法の詳細は、後述の「7.電波障害の防止方法」に示した。
3−4.用途
本発明に係る電波吸収体は、船舶、航空機、自動車、鉄塔、橋梁および高層建造物から選択される一種以上に好適に用いることができる。
例えば、本発明に係る電波吸収体を、上記船舶レーダーの偽像防止用として用いる場合、ネジやビスなどを用いて機械的に固定することで船体のマスト部などに設置すればよい。また、本発明に係る電波吸収体の電波透過層として塗膜を用いる場合は、該塗膜により本発明に係る電波吸収体を船体のマスト部に固定することができるので、ネジやビスなどを用いずとも、本発明に係る電波吸収体を船体のマスト部に直接形成できる。
4.電波吸収体の製造方法
本発明に係る電波吸収体の製造方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、電波透過層の樹脂成分となる樹脂を前述したような従来公知の溶媒(または分散媒)中に溶解(又は分散)してなる塗料を基材上または基材に既に設けられている塗膜(既存の旧塗膜でも良い)上に塗布し、その表面に前記導電体を載置(セット)した後、さらに前記塗料を前記導電体全体が該塗料で被覆されるように塗布後、常温〜加熱下(例:10〜60℃)で乾燥してサンドイッチ単位構造の積層体を形成する工程を少なくとも1回行って電波吸収体を得る方法が、施工性や耐久性の観点から好ましい。
前記塗料には、必要に応じて、前記顔料および前記中空材から選択される少なくとも1種の充填材を分散させてもよい。
電波透過層の樹脂成分となる樹脂の塗料中の含有量は、塗料100重量部中60〜100重量部となるように調整することが、所望膜厚の平滑な電波透過層を迅速かつ効率よく形成できるなど、塗装効率性などの観点から好ましい。
中空材や顔料を塗料中に分散させる場合、塗料中の顔料、中空材、電波透過層の樹脂成分となる樹脂の量は、それら各成分の量の関係が上述の関係となるように調整すればよく、例えば、電波透過層の樹脂成分となる樹脂100重量部に対して、顔料は25〜100重量部となるように分散させればよく、中空材は5〜40重量となるように、分散させればよい。
塗料中の分散媒(溶媒)の量は、塗料100重量%中0〜50重量%となるように調整することが、塗装効率性などの観点から好ましい。また、電波透過層の樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部となるように調整することが同観点から好ましい。
塗料の調製や塗料の基材への塗布は、常温付近(通常25℃前後)で行えばよいが、目的に応じて、0〜50℃の範囲で調整してもよい。
塗料の調製や塗料の基材への塗布は、従来法に従って行えばよい。後述する塗膜被覆電波吸収体の製造方法の項目で詳述する方法も、適宜適用できる。
上記塗料には、必要に応じて、顔料、中空材、電波透過層の樹脂成分となる樹脂以外の材料、例えば、添加剤などを本発明の目的に反しない限り適宜量で分散させてもよい。
但し、電波吸収体の電波吸収性能の観点から、上記塗料は、強磁性材料(例えば、フェライトなど)は含まないことが望ましい。
5.塗膜被覆電波吸収体
本発明に係る塗膜被覆電波吸収体は、基材上に、下塗り塗膜層(i)と、上記電波吸収体からなる電波吸収体層(ii)と、
中塗り塗膜層(iii-1)および上塗り塗膜層(iii-2)から選択される少なくとも1層(iii)と、
がこの順で積層[下塗り塗膜層(i)/電波吸収体層(ii)/{中塗り塗膜層(iii-1) (iii-1)および/または上塗り塗膜層(iii-2)}]されてなる。
下塗り塗膜層は、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚30〜200μmの塗膜層である。
中塗り塗膜層は、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚20〜100μmの塗膜層である。
上塗り塗膜層は、ふっ素系塗料、ウレタン系塗料、アクリル系塗料、または、シリコン変性アクリル系塗料から形成される乾燥膜厚20〜50μmの塗膜層である。
本発明に係る塗膜被覆電波吸収体は、上記電波吸収体を含むので、優れた電波吸収特性を発揮することができる。
以下、塗膜被覆電波吸収体の施工について工程に沿って順に説明する。
5−1.基材
基材は、電波塔などの電波発信源と、テレビなどの受信機との間にあって、通常、それ単独ではゴーストなどの電波障害を生じる原因となり、電波吸収体をその基材表面に設け電波障害を低減・除去すべき対象である。
電波吸収体を設ける対象としては、土木構造物、建築物、港湾設備、船舶設備(マストなど)、橋梁、電力設備、通信設備、機械設備等が挙げられる。
電波吸収体を設ける対象が鉄鋼構造物などの鋼材である場合は、塗膜被覆電波吸収体を構成する下塗り塗膜層を鉄鋼構造物の表面に形成する前に、予め下地処理を行っておくことが好ましい。
この下地処理は、通常、鋼材基材表面の素地調整をした後に防錆塗装をすることにより行うことが望ましい。素地調整は、基材が炭素鋼材の場合には、ミルスケール、さびなどをブラスト、ディスクサンダー、パワーブラシなどにより除去した後、必要に応じて有機溶剤をしみ込ませた布で基材表面に付着している油などの汚れを除去することにより行われることが望ましい。また、アルミニウム、ステンレス鋼、銅合金などの材料の場合には、パワーブラシ、サンドペーパーなどにより基材表面に軽度の面荒らしを行なった後、必要に応じて有機溶剤をしみ込ませた布で汚れを拭き取って基材表面を清浄にすることが望ましい。このように素地調整が行われた金属基材表面は、発錆しやすいので、通常、できるだけ早く一時的防錆を目的とした防錆塗装を行う。防錆塗装には、無機ジンクリッチプライマーなどの一次防錆プライマー(ショッププライマー)が用いられる。このように鋼材表面を下地処理した後に下塗り塗膜層を形成する。
5−2.下塗り塗膜層(i)
下塗り塗膜層は、基材表面に形成され、基材と電波吸収体層を強固に接着する役割と下地処理後の一次防錆性を有している。
この下塗り塗膜層は、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂を含む下塗り塗料から形成される。下塗り塗料は、これらの樹脂をベースとし、必要により硬化剤、顔料成分、熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、さらに通常の塗料組成物中に含有されるような各種可塑剤、体質顔料、着色顔料、防錆顔料、溶剤、硬化促進剤、タレ止め剤、沈降防止剤などが配合されていてもよい。このプライマー塗料は、溶剤系、水系、無溶剤系の何れであってもよく、硬化方法は、UV硬化、熱硬化、常温硬化の何れでもよい。
このエポキシ樹脂系プライマー塗料に含有されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールAタイプ、Fタイプのエポキシ樹脂が好ましく、特にビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が好ましく用いられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いると、基材への接着力と防食性に優れた被膜を形成することができる。
このようなエポキシ樹脂系プライマー塗料としては、エバトロンプライマー(中国塗料(株)製、主剤:硬化剤=3:1(重量比))、エピコンS−100プライマー(中国塗料(株)製、主剤:硬化剤=9:1(重量比))、エピコンA−100プライマー(中国塗料(株)製、主剤:硬化剤=3:1(重量比))などを挙げることができる。
ポリウレタン樹脂系プライマー塗料に含有されるポリウレタン樹脂としては、具体的には、両末端に活性水素を有する化合物とポリイソシアネート化合物との反応から形成されるものである。活性水素を含有する化合物としては、ポリアルキレングリコール類、ポリブタジエングリコール類、ポリアルキレンアジペート類、ポリブタジエングリコール類、ポリアルキレンカーボネート類、シリコーンポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等のポリオール化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、β−ジケトン・オキシム・フェノール・カプロラクタム等でブロックされたブロック型ポリイソシアネート等が挙げられる。
このようなポリウレタン樹脂を含有するプライマー塗料としては、2液硬化型ウレタン樹脂プライマー塗料が用いられる。
下塗り塗料としては、基材との接着性が良好なエポキシ樹脂系プライマー塗料が好ましい。
下塗り塗膜層の乾燥膜厚は、基材と電波吸収体層との接着性の面から、50〜300μmであることが好ましいが、一次防錆性能を発揮できる素材では下塗り塗膜層を塗装しなくてもよい。
5−3.電波吸収体層(ii)
上記下塗り塗膜層の上には、上記電波吸収体からなる電波吸収体層が設けられ、次いで下記の中塗り塗膜層および上塗り塗膜層から選択される少なくとも1層が設けられる。
5−4.中塗り塗膜層(iii−1)
中塗り塗膜層は、基材上の電波吸収体層の隠蔽と、上塗り塗膜層(iii−2)との接着性向上を目的として電波吸収体層の表面に形成される。
中塗り塗膜層は、エポキシ樹脂系、フッ素樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系、および無機質系の耐候性中塗り塗料から形成される。本発明においては、下塗り塗膜層と上塗り塗膜層との接着性の面から、エポキシ樹脂系中塗り塗料、ポリウレタン樹脂系中塗り塗料が好ましい。
中塗り塗料は、上述の樹脂をベースとし、必要により硬化剤、顔料成分、熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、さらに通常の塗料組成物中に含有されるような各種可塑剤、体質顔料、着色顔料、防錆顔料、溶剤、硬化促進剤、タレ止め剤、沈降防止剤などが配合されていてもよい。この下塗り塗料は、溶剤系、水系、無溶剤系の何れであってもよく、硬化方法は、UV硬化、熱硬化、常温硬化の何れでもよい。
エポキシ樹脂系中塗り塗料としては、中国塗料(株)製「エピコン」シリーズ、など;フッ素樹脂系耐候性中塗り塗料としては、中国塗料(株)製「フローレックス」シリーズなど;ポリウレタン樹脂系中塗り塗料としては、中国塗料(株)製「ユニマリン」シリーズなど;アクリルシリコーン樹脂系中塗り塗料としては、中国塗料(株)製「シリカラック」シリーズなど;無機質系中塗り塗料としては、中国塗料(株)製「ケイソル」シリーズなどを挙げることができる。
中塗り塗膜層の乾燥膜厚は、特に限定されないが、30〜100μmであることが、電波吸収体層との密着性に優れ、電波吸収体層表面を隠蔽でき、耐候性に優れ、しかも電波吸収体層表面への塗料の塗布状況を容易に把握することができる点から好ましい。
5−5.上塗り塗膜層(iii−2)
上塗り塗膜層は、通常、中塗り塗膜層表面に設けられるが、電波吸収体層の表面に(中塗り塗膜層を介することなく、)直接設けてもよい。
この上塗り塗膜層としては、フッ素樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、および無機質系の耐候性上塗り塗料などから形成される。本発明においては、防食性の面から、フッ素樹脂系、ポリウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の内のアクリルシリコーン系、無機質系の耐候性上塗り塗料が好ましく、フッ素樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系の耐候性上塗り塗料がより好ましく、フッ素樹脂系の耐候性上塗り塗料が特に好ましい。
耐候性上塗り塗料は、上述の樹脂をベースとし、必要により硬化剤、顔料成分、熱可塑性樹脂が含有されていてもよく、さらに通常の塗料組成物中に含有されるような各種可塑剤、体質顔料、着色顔料、防錆顔料、溶剤、硬化促進剤、タレ止め剤、沈降防止剤などが配合されていてもよい。このプライマー塗料は、溶剤系、水系、無溶剤系の何れであってもよく、硬化方法は、UV硬化、熱硬化、常温硬化の何れでもよい。
上塗り塗膜層を形成する上塗り塗料としては、溶剤系塗料、水系塗料のいずれも使
用可能であり、中塗り塗料に応じて適宜選択される。
このような上塗り塗料には、これら樹脂と共に、着色顔料、体質顔料、充填剤、抗菌剤、防腐剤、防黴剤、耐候安定剤、シリカ等の艶消し材、骨材等が含有されていても良い。
フッ素樹脂系耐候性上塗り塗料としては、中国塗料(株)製「フローレックス」シリーズなど;ポリウレタン樹脂系耐候性上塗り塗料としては、中国塗料(株)製「ユニマリン」シリーズなど;アクリルシリコーン樹脂系耐候性上塗り塗料としては、中国塗料(株)製「シリカラック」シリーズなど;無機質系耐候性上塗り塗料としては、中国塗料(株)製「ケイソル」シリーズなどを挙げることができる。
上塗り塗膜層の乾燥膜厚は、特に限定されないが、20〜100μmであることが、電波吸収体層との密着性に優れ、耐候性に優れる重防食被膜を得ることができる。
5−6.各層共通の成分
上記電波吸収体層、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層および上塗り塗膜層の内の少なくとも1層には、難燃材が含まれていてもよい。
難燃材としては、上述のような、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの導電性を有さない材料などが挙げられ、難燃性の観点から、炭酸カルシウムがより好ましい。
塗膜被覆電波吸収体が難燃剤を含むことで、難燃性(耐火性)を獲得することができ、従来の可燃性塗料では不向きであった、船舶、航空機、構造物へ好適に用いることができる。
上記難燃剤は、電波吸収体の樹脂成分100重量部に対して、5〜15重量部となる量で含まれることが、塗膜被覆電波吸収体の難燃性の観点から好ましい。
通常、難燃材を含むと、誘電率に変化が生じて電波吸収性能に影響が出るが、本発明に係る塗膜被覆電波吸収体は、上記難燃材を含んでいても、電波透過層中に導電体を含まない構造であるので、電波吸収特性は維持され、しかも塗膜物性にも影響を与えない。
5−7.用途
本発明に係る塗膜被覆電波吸収体は、船舶、航空機、自動車、鉄塔、橋梁、高層建造物などの基材に好適に用いることができる。
例えば、船舶のマストに施工する場合、船舶のマストの電波吸収体の施工が求められる部位(マストの少なくとも一部)を上記下塗り塗膜層で被覆し、この下塗り塗膜層の表面に上記電波吸収体の完成品を巻き付けるか、現場施工により電波吸収体層を形成することで下塗り塗膜層の表面を被覆し、次いで、該電波吸収体上に、上記中塗り塗膜層及び/又は上記上塗り塗膜層をこの順で塗設して、塗膜被覆電波吸収体で被覆された船舶用マストを得ることができる。
この場合、被設置物であるマスト等の基材が現場施工により、電波吸収体層を含む複数層の塗膜で覆われているので、マット形状などの完成した電波吸収体をマスト等の基材の表面にボルトや止め具等を用いて直接施工する場合に比して、美観を損なわないよう、適宜調整できる利点がある。
6.塗膜被覆電波吸収体の製造方法
塗膜被覆電波吸収体を製造する方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、上記下塗り塗料を基材に塗布、乾燥して下塗り塗膜層を形成し、次いで、上記電波吸収体を現場施工により作成し、あるいは予め作成された電波吸収体を下塗り塗膜層表面に積層・施工し、次いで、その電波吸収体層表面に上記中塗り塗料を塗布、乾燥して中塗り塗膜層を形成し、次いで、上記上塗り塗料を塗布、乾燥して上塗り塗膜層を形成して、塗膜被覆電波吸収体を製造する方法が挙げられる。
下塗り塗料、中塗り塗料、上塗り塗料の塗装方法は、従来法に従えばよく、例えば、ハケ、スプレー、フローコーター、ロールコーター等の塗装機などにより塗布する方法が挙げられる。各塗料は、塗布した後、従来公知の方法によりUV硬化、熱硬化、常温硬化等により硬化させることで、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層、あるいは、上塗り塗膜層を形成することができる。
7. 電波障害の防止方法
本発明に係る電波障害の防止方法としては、以下の方法が挙げられる。
(i)偽像および誤作動から選択される少なくとも1つの電波障害を生じる原因となる電波反射体に、上記電波吸収体または上記塗膜被覆電波吸収体を設置する方法。
(ii)前記電波反射体と電波受信装置との間に、上記電波吸収体または上記塗膜被覆電波吸収体を設置する方法。
どの方法を選択するかは、目的に応じて決定すればよいが、いずれの方法においても、周波数5〜30GHzの範囲で、10dB以上の電磁波の吸収ピークを有する電波吸収体または塗膜被覆電波吸収体が用いられているので、周波数5〜30GHzの範囲の範囲にある電波を効率よく吸収して、上記電波障害を防止することができる。
尚、本発明に係る電波吸収体または塗膜被覆電波吸収体において、所望の吸収する電波の周波数と反射減衰量を得るには、主に下記の調整により行うことが可能である。
(i)導電体の両面を挟んでいる電波透過層の各厚みを調整すること、
(ii)サンドイッチ単位構造層の層数を調整すること、
(iii) 波透過層が顔料を含む樹脂層である場合、顔料の粒径を調整すること、
(iv)電波透過層が中空材を含む樹脂層である場合、中空材のメジアン径を調整すること。
通常は、電磁波吸収体は厚みを厚くする方向に調整すると吸収周波数は低周波数側にシフトし、逆に薄くすると吸収周波数は高周波数側に動く傾向がある。
本発明に係る電波吸収体が10dB以上の反射減衰量を実現できる周波数帯は5〜30GHzの範囲であるので、マイクロ波に対して非常に有効である。
より具体的には、これら領域の周波数が用いられている船舶などのレーダー装置、一部の無線LAN、ETCなどに有効である。
また、本発明に係る電波吸収体または塗膜被覆電波吸収体の厚みを測定する方法としては、電磁膜厚計を用いる方法(電磁式)および渦電流式膜厚計を用いる方法(渦電流式)が挙げられ、0.1μmの精度で測定することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、下記において、温度条件や圧力条件について特に記載されていない操作は、温度条件は常温(通常25℃)付近、圧力条件は常圧(通常0.1013MPa)で行ったものである。
また、下記において、各炭素繊維の平均直径及び平均長さは、それぞれ、無作為に選択した25本の炭素繊維を走査型電子顕微鏡(SEM、型番:S−3400N、日立ハイテクノロジーズ(株)製)で観察し、上述の方法に従い平均値を算出した。
また、下記において、炭素繊維のアスペクト比は、各炭素繊維の「平均長さ(μm)/平均直径(μm)」として算出した。
[実施例1]
<導電体の製造>
使用した原材料は下記表1に記載の通りである。
炭素繊維(上記炭素繊維a)を10重量部含む分散液100重量部および固着剤5重量部を有機溶剤200重量部に分散して、該炭素繊維および固着剤を含む分散液を得た。
得られた分散液を浸漬用容器に採り、分散液中にメッシュ基材を浸漬した。
分散液からメッシュ基材を引き出した後、10〜60℃で乾燥させて、メッシュ基材に炭素繊維(上記炭素繊維a)が固着してなる導電体を得た。
得られた導電体の表面抵抗率をJIS K 7194に従って測定した
結果を表2(「表2−1」、「表2−2」を総括的に「表2」という。以下同じ。)に示す。
[実施例2〜10比較例1〜6]
実施例1において、メッシュ基材に固着させる炭素繊維の種類や量、メッシュ基材の種類、固着剤の種類や量材料の種類、および導電体の種類を表2に記載したように替えた以外は、実施例1と同様に導電体を製造した。
結果を表2に示す。
Figure 2015115530
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[実施例11]
<電波吸収体の製造1(電波透過層がポリプロピレン樹脂シートである態様)>
実施例1で製造した導電体を2枚のポリプロピレン(PP)樹脂シートで挟んで、電波透過層/導電体/電波透過層からなるサンドイッチ構造を有する積層体(合計厚み600μm)を作製した。
同様に、電波透過層/導電体/電波透過層からなるサンドイッチ構造を有する積層体(合計厚み600μm)をさらに2つ作製した。
次いで、金属板(アルミ板)の表面上に、上記サンドイッチ構造を有する積層体を3つ積層して設け、電波吸収体が載置された金属板を作製した(電波吸収体=上記サンドイッチ構造を有する積層体、図1も参照)。
次いで、斜入射電波吸収特性測定システムに従い、ネットワークアナライザー(アジレント社製:HP8722D)を用いて、電波吸収体の反射減衰量を測定した。ここで、電波吸収体に対する電波の入射角は、10°とした。
周波数4〜12GHzの範囲内に、20dB以上の反射減衰量のピークを示した電波吸収体を「優)と評価し、15dB以上20dB未満の反射減衰量のピークを示した電波吸収体を「良」と評価し、10dB以上15dB未満の反射減衰量のピークを示した電波吸収体を可と評価し、10dB以上の反射減衰量のピークを示さない電波吸収体を電波吸収性能に劣る(不可)と評価することで、電波吸収体の電波吸収性能を評価した。
結果を表3(ここで「表3−1」〜「表3−8」を総括的に「表3」という。以下同じ。)、図7に示す。
なお、図中のグラフでは、縦軸が電波の反射量(refrection)で表されているため、図中のピークがマイナス値(反射量が減衰したことを表す表現)となっているが、この正の値が反射減衰量となる。例えば、反射量が−25.5dBであれば、反射減衰量は25.5dBである(以下同様)。
また、電波の反射量(refrection)のピークについては、検出限界が−30dBであるので、図中では−30よりも小さな値は表示されておらず、表中では、−30dBを下回る場合も−30dBと表記した(以下同様)。
[実施例12〜20、比較例7〜12]
実施例11において、導電体を構成する材料の種類や量または導電体を構成するメッシュ基材の線径などを表3に示した通りに変えた以外は、実施例11と同様に、電波吸収体が載置された金属板を作製し、電波吸収特性を評価した。
結果を表3に示す。
[比較例13、14]
実施例11において、表3に示すように導電体を用いずに電波吸収体を作成した以外は、実施例11と同様に、電波吸収体が載置された金属板を作製し、電波吸収特性を評価した。
結果を表3に示す。
[実施例21〜38]
実施例11において、金属板(アルミ板)の表面上に、設ける電波吸収体の層構成を表3に記載した通りに変えた以外は、実施例11と同様に、電波吸収体が載置された金属板を作製し、電波吸収特性を評価した。
結果を表3に示す。
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[実施例39]
<電波吸収体の製造2(電波透過層が塗膜である態様)>
まず、下記のとおり主剤成分および硬化剤成分を調製し、得られた主剤成分と硬化剤成分とを混合することによりエポキシ樹脂系塗料(塗料X)を得た。
(主剤成分)
5Lの金属容器に、下記表4に示した原材料を表4(ここで、表4−1および表4−2を総括的に表4という。以下同じ。)に示した配合量で配合し、ハイスピードディスパーを用いて上記配合物を2時間分散処理した。得られた分散液を40メッシュのろ過網を用いたろ過に供して、主剤成分(ろ液)を調製した。
(硬化剤成分)
5Lの金属容器に、下記表4に示した原材料を表4に示した配合量で配合し、ハイスピードディスパーで2時間分散処理した。得られた分散液を40メッシュのろ過網を用いたろ過に供し、硬化剤成分(ろ液)を調製した。
次に、上記主剤成分と硬化剤成分とを、主剤成分100重量部に対して硬化剤成分48重量部となるように混合して塗料Xを調製し、次いで金属板(アルミ板)の表面を、ヘラを用いて得られた塗料Xで塗装し、金属板に設けられた塗料Xを乾燥させた後、形成された乾燥塗膜(第一の電波透過層)の表面に、実施例1で製造した導電体を上記乾燥塗膜面からはみ出さないように設けた。
次いで、導電体の全面が被覆されるように、上記塗料Xで導電体と該導電体に覆われていない上記塗膜表面とを塗装し、さらに上記塗料Xを用いて重ね塗りした後(導電体層および第二の電波透過層の二層を第一の電波透過層上に形成した後、第二の電波透過層の表面に第三の電波透過層を形成させた)、塗料Xを乾燥させ、形成された乾燥塗膜の表面に、実施例1で製造した導電体を上記乾燥塗膜面からはみ出さないように設けた。
次いで、導電体の全面が被覆されるように、上記塗料Xで導電体と該導電体に覆われていない上記塗膜表面とを塗装し、さらに上記塗料Xを用いて重ね塗りした後(導電体層および第四の電波透過層の二層を第一の電波透過層上に形成した後、第二の電波透過層の表面に第五の電波透過層を形成させた)、塗料Xを乾燥させ、形成された乾燥塗膜の表面に、実施例1で製造した導電体を上記乾燥塗膜面からはみ出さないように設けた。
次いで、導電体の全面が被覆されるように、上記塗料Xで導電体と該導電体に覆われていない上記塗膜表面とを塗装して(第六の電波透過層を形成させた)、該塗料Xを乾燥させて、金属板上に、塗料Xから形成された塗膜層/導電体層/塗料Xから形成された塗膜層の層構造を有するサンドイッチ単位構造からなる層が3層積層されてなる電波吸収体を作製した。
得られた電波吸収体について、実施例11に記載した方法で電波吸収特性を評価した。
結果を表5(ここで、表5−1〜表5−8を総括的に図5という。以下同じ。)、図8に示す。
[実施例40〜48、比較例15〜20]
実施例39において、導電体を表5に示したものに変えた以外は、実施例39と同様に、金属板上に電波吸収体を作製し、得られた電波吸収体の電波吸収特性を評価した。
結果を表5に示す。
[比較例21、22]
実施例39において、表5に示すように、導電体を用いなかった以外は、実施例39と同様に、金属板上に電波吸収体を作製し、得られた電波吸収体の電波吸収特性を評価した。
結果を表5に示す。
[実施例49〜53]
実施例39において、塗料Xと導電体の合計厚みや塗料Xと導電体との積層体の数を変えた以外は、実施例39と同様に、金属板上に電波吸収体を作製し、得られた電波吸収体の電波吸収特性を評価した。
結果を表5に示す。
[実施例54〜56]
実施例39において、塗料Xに表5に示される中空材を主剤成分100重量部に対して28.6重量部添加した(金属板(アルミ板)の表面上に塗装する塗料X、導電体の全面が被覆されるように塗装する塗料Xの双方に添加)以外は、実施例39と同様に、金属板上に電波吸収体を作製し、得られた電波吸収体の電波吸収特性を評価した(塗料Xに中空材を添加して得られる塗料を塗料Yという)。
結果を表5に示す。
なお、実施例54〜56で使用した中空材は次の通りである。
ON2150:パーライト、平均粒径100μm、見かけ密度0.08g/cm3、真密度0.45g/cm3、KD Ceratech社製。
ON4150:パーライト、平均粒径65μm、見かけ密度0.09g/cm3、真密度0.6g/cm3、KD Ceratech社製。
ON5150:パーライト、平均粒径55μm、見かけ密度0.11g/cm3、真密度0.7g/cm3、KD Ceratech社製。
[実施例57]
実施例54において、塗料Xに難燃剤として炭酸カルシウム(商品名:タンカルスーパーSS、丸尾カルシウム社製)を主剤成分100重量部に対して14.3重量部、中空材を主剤成分28.6重量部添加した(金属板(アルミ板)の表面上に塗装する塗料X、導電体の全面が被覆されるように塗装する塗料Xの双方に添加)以外は、実施例54と同様に、金属板上に電波吸収体を作製し、得られた電波吸収体の電波吸収特性を評価した(塗料Y(すなわち塗料X+中空材)に難燃剤を添加して得られる塗料を塗料Zという)。
結果を表5に示す。
Figure 2015115530
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[考察]
以下に、上記実施例および比較例の結果を参照して考察を述べるが、実施例および比較例の結果から考察できることは以下に限られるものではない。
実施例11〜20と実施例39〜48との比較から、本発明に係る電波吸収体は、その電波透過層がフィルムの形態であっても塗膜の形態であっても、同様に優れた電波吸収性能を発揮することが分かる(表3、5参照)。このことは、電波透過層が塗膜である電波吸収体を用いる場合に、例えば、現場にて実際に塗装などする前に、電波透過層がフィルムである電波吸収体を電波透過層が塗膜である電波吸収体の替わりに用いて、例えば実験室などで電波透過層が塗膜である電波吸収体がどのような電波吸収性能を発揮するかを事前にかつ簡易に知ることができることを示している。
実施例11〜20と比較例7〜12との比較および実施例39〜48と比較例15〜20との結果から、導電体中のメッシュ基材に固着させる材料の種類や量およびメッシュ基材の線径などは、該導電体を用いた電波吸収体の電波吸性能に影響を与えることが分かる。そして、電波吸収性能に優れる材料は、導電体に特定の表面抵抗率を付与できる炭素繊維であることもわかる(表3、5参照)。
また、実施例11と比較例13、14との比較および実施例39と比較例21、22との比較から、電波吸収体が優れた電波吸収性能を発揮するためには、本発明に係る導電体が必要であることが分かる。
実施例11〜32の結果から、電波吸収体を構成する導電体のうち、少なくとも1つの導電体の金属板からの距離を調整することで、反射減衰量が10dB以上であるピークを示す周波数帯や反射減衰量を調整できることが分かる(表3参照)。
実施例11、33〜36の結果から、各サンドイッチ構造中の導電体の金属板からの距離を変えずに、金属板から最も遠いサンドイッチ構造上にPP樹脂体(電波透過体層)を設けることで、反射減衰量が10dB以上であるピークを示す周波数帯を実質的に変えずに、反射減衰量を調整できることが分かる(表3参照)。
実施例11、37、38の結果から、金属板上に設ける電波吸収体中のサンドイッチ構造の総数を変えることで、反射減衰量が10dB以上であるピークを示す周波数帯や反射減衰量を調整できることが分かる(表3参照)。
実施例39、49〜53の結果から、塗膜と導電体の合計厚みや積層体中の層の数を変えることで、反射減衰量が10dB以上であるピークを示す周波数帯や反射減衰量を調整できることが分かる(表5参照)
実施例54〜56の結果から、塗料Xに、中空材を添加し、中空材のメジアン径(D50)を変えることで、反射減衰量が10dB以上であるピークを示す周波数帯や反射減衰量を調整できることが分かる(表5参照)。
実施例57の結果から、塗料Yに、難燃剤を添加することで、電波吸収体にその電波吸収性能を低下させることなく難燃性を付与させることができることが分かる(表5参照)。
本発明に係る導電体は、電波吸収体の用途に好適である。
本発明に係る導電体を電波吸収体は、設計自由度が高く、設置場所に過度の制限がなく、GHz帯における電波吸収性能に優れ、電波吸収体を利用する分野で大きな役割を果たすことが見込める。

Claims (17)

  1. 線径が0.1〜1.0mmの単繊維または複合繊維を、メッシュサイズが1.7〜16メッシュとなるように織ることにより形成されたメッシュ基材に、固着剤を用いて、炭素繊維を該炭素繊維の量がメッシュ基材の単位面積当たり10〜20g/m2となるように固着してなり、
    JIS K 7194に従って測定した表面抵抗率が100〜1,000Ω/□である導電体。
  2. 前記炭素繊維は、
    無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均直径が1〜10μmであり、
    無作為に選択した25本の炭素繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した平均長さが10〜100μmである請求項1記載の導電体。
  3. 前記メッシュ基材を構成する繊維が、ガラス繊維、セラミック繊維、プラスチック繊維、植物繊維および動物繊維から選択される少なくとも1種の材料からなる請求項1または2記載の導電体。
  4. 前記固着剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤から選択される少なくとも1種のカップリング剤である請求項1〜3のいずれかに記載の導電体。
  5. 前記固着剤の量が、炭素繊維100重量部に対して、30〜70重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の導電体。
  6. 前記炭素繊維、前記固着剤および有機溶剤を混合し、得られた混合液に前記メッシュ基材を浸漬し、次いで浸漬後のメッシュ基材を10〜60℃で乾燥させて得られる請求項1〜5のいずれかに記載の導電体。
  7. 電波吸収体に用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の導電体の両面をそれぞれ200〜2000μm厚の電波透過層で挟んでなるサンドイッチ単位構造1層又は2層以上からなり、周波数5〜30GHzの範囲で、10dB以上の電波の反射減衰量のピークを有する電波吸収体。
  9. 前記電波透過層が、樹脂を含む樹脂層である請求項8記載の電波吸収体。
  10. 前記樹脂層の樹脂が、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂およびシリコン樹脂から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の電波吸収体。
  11. 前記樹脂層が、顔料(中空顔料を除く)および中空材から選択される少なくとも1種の充填材を含む請求項9または10記載の電波吸収体。
  12. 前記顔料が、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、シリカおよび水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種であり、
    前記中空材がセラミックバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーンから選択される少なくとも1種である請求項10記載の電波吸収体。
  13. 前記中空材のJIS Z 8819に従って測定したメジアン径(D50)が、3〜100μmである請求項11または12に記載の電波吸収体。
  14. 前記顔料および前記中空材から選択される少なくとも1種の充填材および前記樹脂を混合してなる塗料を基材の表面または基材に設けられた塗膜の表面に塗布し、前記導電体を載置した後、さらに前記塗料を前記導電体全体が該塗料で被覆されるように塗布する操作を少なくとも1回行って少なくとも1つのサンドイッチ単位構造を含む積層体を形成し、該積層体を10〜60℃で乾燥する工程を少なくとも1回行って得られる請求項11〜13のいずれかに記載の電波吸収体。
  15. 船舶、航空機、自動車、鉄塔、橋梁および高層建造物から選択される少なくとも1種以上に用いることを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載の電波吸収体。
  16. 基材上に、下塗り塗膜層(i)と、請求項8〜15のいずれかに記載の電波吸収体からなる電波吸収体層(ii)と、
    中塗り塗膜層(iii-1)および上塗り塗膜層(iii-2)から選択される少なくとも1層(iii)と、
    がこの順で積層[下塗り塗膜層(i)/電波吸収体層(ii)/{中塗り塗膜層(iii-1)および/または上塗り塗膜層(iii-2)}]され、
    前記下塗り塗膜層(i)が、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚30〜200μmの塗膜層であり、
    前記中塗り塗膜層(iii-1)が、エポキシ系塗料、または、ウレタン系塗料から形成される乾燥膜厚20〜100μmの塗膜層であり、
    前記上塗り塗膜層(iii-2)が、ふっ素系塗料、ウレタン系塗料、アクリル系塗料、または、シリコン変性アクリル系塗料から形成される乾燥膜厚20〜50μmの塗膜層であることを特徴とする塗膜被覆電波吸収体。
  17. 偽像および誤作動から選択される少なくとも1つの電波障害を生じる原因となる電波反射体に、請求項8〜15のいずれかに記載の電波吸収体または請求項16に記載の塗膜被覆電波吸収体を設置するか、
    または、
    前記電波反射体と電波受信装置との間に、請求項8〜15のいずれかに記載の電波吸収体または請求項16に記載の塗膜被覆電波吸収体を設置することを特徴とする電波障害の防止方法。
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