以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、電子写真プロセスを実施するプロセスユニットとして、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(以下、Y,M,C,Kと記す)用の4つのプロセスユニット1Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外はほぼ同様の構成になっている。Yトナー像を作像するためのプロセスユニット1Yを例にすると、これは図2に示されるように、感光体2Y、帯電装置3Y、ドラムクリーニング装置5Y、現像装置10Yなどを有している。これらの各装置や感光体2Yは、図示しない共通の保持体に保持されて、1つのユニットとしてプリンタ本体に対して一体的に着脱されるようになっている。
帯電装置3Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。この帯電装置3Yは、図示しない電源によってマイナス極性の帯電バイアスが印加されながら、図中反時計回りに回転駆動される帯電ローラ4Yを感光体2Yに近接させながら、帯電ローラ4Yと感光体2Yとの間に放電を生じせしめる。これにより、感光体2Yの表面をマイナス極性に一様に帯電させる。帯電ローラ4Yの代わりに、帯電ブラシを当接させるものを用いてもよい。また、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体2Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。
帯電装置3Yによって一様帯電せしめられた感光体2Yの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザ光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像手段たる現像装置10Yは、ケーシング21Yの内部に、第1剤収容部11Yと、第2剤収容部13Yと、現像部16Yとを有している。互いに水平方向に並ぶように配設された第1剤収容部11Y及び第2剤収容部13Yは、それぞれ、マイナス帯電性のYトナーと、磁性キャリアとを含有する図示しない現像剤を収容している。
第1剤収容部11Y内には、第1搬送スクリュウ12Yが配設されている。この第1搬送スクリュウ12Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、第1剤収容部11Y内の現像剤を図紙面に直交する方向における奥側から手前側へと搬送する。そして、第1剤収容部11Yと第2剤収容部13Yとの間の仕切壁29Yに設けられた図示しない連通口を経て、第2剤収容部13Y内に進入する。
第2剤収容部13Yは、透磁率センサーからなるトナー濃度センサー14Yや第2搬送スクリュウ15Yなどを有している。この第2搬送スクリュウ15Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられることで、現像剤を図中奥側から手前側へと搬送する。この際、トナー濃度センサー14Yによってトナー濃度が検知される。
現像部16Yは、第2剤収容部13Yの斜め上方において第2剤収容部13Yと連通するように配設されており、ドクターブレード17Yや、第2搬送スクリュウ15Yに対して平行な姿勢をとるように配設された現像ロール18Yなどを有している。この現像ロール18Yは、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される非磁性パイプからなる現像スリーブ19Yと、これに連れ回らないように内包されるマグネットロール20Yとを具備している。そして、第2剤収容部13Y内において第2搬送スクリュウ15Yによって搬送される現像剤の一部を、マグネットロール20Yの発する磁力によって現像スリーブ19Y表面に引き付けて汲み上げる。
ケーシング21Yにおける現像部16Yの箇所には、現像スリーブ19Yの周面の一部を外部に露出させるための現像開口が形成されている。現像スリーブ19Yは、自らの周面の一部をこの現像開口に通してケーシング21Y外に露出させるように配設されている。
現像スリーブ19Yによって汲み上げられた現像剤は、現像スリーブ19Yと連れ回って移動する。そして、現像スリーブ19Yと所定の間隙を介して対向しているドクターブレード17Yとの対向位置を通過する際に、層厚が規制される。この後、現像スリーブ19Yの回転に伴って、上記現像開口を通じてケーシング21Y内からケーシング21外へ出て、感光体2Yに対向する現像領域まで搬送される。この現像領域においては、図示しない電源によって現像バイアスが印加される現像スリーブ19Yと、感光体2Yの静電潜像との間の電位差(現像ポテンシャル)により、現像剤中のYトナーが磁性キャリアから離脱して感光体2Yの静電潜像に付着する。これにより、感光体2Yの静電潜像がYトナー像として現像される。
現像によってYトナーを消費した現像剤は、現像スリーブ19Yの回転に伴って、上記現像開口を通じてケーシング21外からケーシング21Y内に進入する。その後、第2搬送スクリュウ13Yとの対向領域で、現像スリーブ19Yの表面上から離脱して第2搬送スクリュウ13Y上に戻される。そして、第2搬送スクリュウ13Yによって図紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送される。また、この搬送の間に攪拌されると共に、現像スリーブ19Yに再度汲み上げられ、現像に利用されるという動きを繰り返す。その後、図紙面に直交する方向における手前端まで至ると、仕切壁29Yに設けられた図示しない連通口を経て第1剤収容部11Y内に戻される。
トナー濃度センサー14Yによる現像剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。現像剤の透磁率は、現像剤のYトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサー14YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。本プリンタの図示しない制御部はRAM等のデータ記憶手段を具備しており、この中にトナー濃度センサー14Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefのデータを格納している。また、他の現像装置に搭載されたM,C,K用のトナー濃度センサーからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納している。Y用の現像装置10Yについては、トナー濃度センサー14Yからの出力電圧の値とY用Vtrefを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナーの消費によってYトナー濃度を低下させた現像剤に対し、第1剤収容部11Yで適量のYトナーが供給される。このため、第2剤収容部13Y内の現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用のプロセスユニット(1M,C,K)の現像装置内における現像剤についても、同様のトナー供給制御が実施される。
感光体2Y上に形成されたYトナー像は、後述する第1中間転写ベルト31のおもて面に一次転写される。
プロセスユニット1Yのドラムクリーニング装置5Yは、潤滑剤塗布ブラシローラ6Y、ステアリン酸亜鉛等からなる固形潤滑剤7Y、クリーニングブレード8Y、回収スクリュウ9Y等を有している。固形潤滑剤7Yは、図示しないバネによって潤滑剤塗布ブラシローラ6Yに向けて付勢されながら、所定の圧力で潤滑剤塗布ブラシローラ6Yに当接している。また、潤滑剤塗布ブラシローラ6Yは、固形潤滑剤7Yと感光体2Yとの間で、それら両者に当接しながら回転駆動する。そして、固形潤滑剤7Yから掻き取った潤滑剤粉末を感光体2Yの表面に塗布する。これにより、感光体2YとYトナーとの付着量を弱める。
クリーニングブレード9Yは、ドラムクリーニング装置5Yのケーシングに片持ち支持されながら、自由端側のエッジを感光体2Yの表面に当接させている。そして、上述の一次転写工程で感光体2Yから中間転写ベルト31に一次転写されずに感光体2Yの表面に残留してしまった転写残トナーを、感光体2Yの表面から掻き取る。掻き取られた転写残トナーは、回収スクリュウ9Y上に落下した後、回収スクリュウ9Yの回転駆動に伴って、図紙面に直交する方向の手前側から奥側に向けて搬送される。そして、現像装置10Y内から排出されて図示しない廃トナー容器内に回収される。
図1において、他色用のプロセスユニット1M,C,Kにおいても、同様にして感光体2M,C,K上にM,C,Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト31のおもて面に重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト31のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
プロセスユニット1Y,M,C,Kの図中下方には、光書込ユニット80が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット80は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、各プロセスユニット1Y,M,C,Kの感光体2Y,M,C,Kに照射する。これにより、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー81によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体2Y,M,C,Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
光書込ユニット80の下方には、第1給紙カセット85、第2給紙カセット86が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録シートSが複数枚重ねられたシート束の状態で収容されており、一番上の記録シートSには、第1ピックアップローラローラ85a、第2ピックアップローラ86aがそれぞれ当接している。第1ピックアップローラ85aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第1給紙カセット85内の一番上の記録シートSが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給送路87に向けて排出される。また、第2ピックアップローラ86aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第2給紙カセット86内の一番上の記録シートSが、給送路87に向けて排出される。給送路87内には、複数の搬送ローラ対が配設されており、給送路87に送り込まれた記録シートSは、これら搬送ローラ対のローラ間に挟み込まれながら、給送路87内を図中下側から上側に向けて搬送される。
給送路87の末端には、送込手段(送込ローラ対)としてのレジストローラ対89が配設されている。レジストローラ対89は、最下流搬送ローラ対88から送られてくる記録シートSをレジストニップに突き当てられると、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、所定のタイミングで両ローラの回転を再開して、記録シートSを後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット1Y,M,C,Kの図中上方には、無端移動体たる中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回りに無端移動せしめる転写ユニット30が配設されている。転写手段たる転写ユニット30は、中間転写ベルト31の他、ベルトクリーニングユニット32を有している。また、無端状の中間転写ベルト31のループ内側で中間転写ベルト31を張架する4つの一次転写ローラ33Y,M,C,K、二次転写上流ローラ34、駆動ローラ35、クリーニングバックアップローラ36、及びテンションローラ37を有している。更には、中間転写ベルト31のループ外側で、ループ内側の駆動ローラ35との間に中間転写ベルト31を挟み込みながら、ベルトおもて面と当接して二次転写ニップを形成する二次転写ローラ38も有している。
中間転写ベルト31は、駆動ローラ35の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。上述した4つの一次転写ローラ33Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト31の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の一次転写バイアスを印加する。中間転写ベルト31は、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が順に重ね合わせて一次転写されて、4色重ね合わせトナー像となる。
レジストローラ対89は、自らのローラ間に挟み込んだ記録シートSを、中間転写ベルト31上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写ローラ38と駆動ローラ35との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で記録シートSに一括二次転写される。そして、記録シートSの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートSに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット32によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット32は、クリーニングブレード32aを中間転写ベルト31のおもて面に当接させており、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
二次転写ニップの図中上方には、定着ユニット40が配設されている。この定着ユニット40は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ41と、定着ベルトユニット42とを備えている。定着ベルトユニット42は、定着ベルト44、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ43、テンションローラ45、駆動ローラ46、図示しない定着温度センサー等を有している。そして、無端状の定着ベルト44を加熱ローラ43、テンションローラ45及び駆動ローラ46によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト44は加熱ローラ43によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト44の加熱ローラ43掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ41がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ41と定着ベルト44とが当接する定着ニップが形成されている。
定着ベルト44のループ外側には、図示しない定着温度センサーが定着ベルト44のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト44の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない制御部に送られる。制御部は、定着温度センサーによる検知結果に基づいて、加熱ローラ43に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ41に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。これにより、定着ベルト44の表面温度が所定の温度に制御される。
二次転写ニップを通過した記録シートSは、中間転写ベルト31から分離した後、定着ユニット40内に送られる。そして、定着ユニット40内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト44によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着せしめられる。
このようにして定着処理が施された記録シートSは、排紙ローラ対50のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ本体の筺体の上面には、スタック部51が形成されており、排紙ローラ対50によって機外に排出された記録シートSは、このスタック部51に順次スタックされる。
なお、記録シートSの両面に画像を形成する両面プリントモードであって、且つ、記録シートSの片面だけにしか画像が形成されていない場合、排紙ローラ対50が記録シートSを完全に排出する前に逆回転を行って記録シートSを反転再送路90に送り込む。反転再送路90内に送り込まれた記録シートSは、反転再送路90内で上下を反転されながら、給送路87に再送された後、レジストニップと二次転写ニップとを経てもう一方の面にトナー像が転写される。その後、定着ユニット40を経ることで、もう一方の面にも画像が定着せしめられた後、排紙ローラ対50を経て機外へと排出される。
転写ユニット30の上方には、Y,M,C,Kトナーを収容する4つのトナーカートリッジ52Y,M,C,Kが配設されている。トナーカートリッジ52Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーは、プロセスユニット1Y,M,C,Kの現像装置10Y,M,C,Kに適宜供給される。これらトナーカートリッジ52Y,M,C,Kは、プロセスユニット1Y,M,C,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
図3は、本プリンタの給送路87及びその周囲構成を示す模式図である。給送路87の図中左側方には、光反射性検知手段としての反射型光学センサー60が給送路87内の最下流搬送ローラ対88を通過した直後の記録シートSの光反射性を検知するように配設されている。この反射型光学センサー60は、給送路87内の記録シートSの表面平滑性を検知するために設けられている。
給送路87における最下流搬送ローラ対88の周辺には、第1供給分離ローラ対55、第2供給分離ローラ対56、手差し供給分離ローラ対57、反転ローラ対91などが配設されている。図示しない第1給紙カセット(図1の85)から送り出された記録シートSは、第1供給分離ローラ対55のニップを通過した後に給送路87における最下流搬送ローラ対88のニップ入口付近の位置(以下、この位置を「第1供給位置」という)に供給される。第1供給分離ローラ対55は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される第1供給ローラ55aと、これに当接してニップを形成しながら連れ回る第1分離ローラ55bとを具備している。第1分離ローラ55bの回転軸部材には、図示しないトルクリミッターが接続されている。このトルクリミッターは、第1分離ローラ55bの回転軸部材にかかる連れ回り方向の回転トルクが閾値を上回った場合には、第1分離ローラ55bの連れ回りを許容する。これに対し、連れ回り方向の回転トルクが閾値を上回らない場合には、図示しない駆動伝達系から伝達される逆回転駆動力を第1分離ローラ55bに繋いで第1分離ローラ55bを図中反時計回り方向に逆回転させる。
第1供給分離ローラ対55のニップに記録シートSが挟み込まれていない状態では、第1分離ローラ55bに対して閾値を上回る連れ回り方向の回転トルクがかかる。このため、トルクリミッターが連れ回りを許容して第1分離ローラ55bが図中時計回り方向に連れ回る。また、第1供給分離ローラ対55のニップに記録シートSが1枚だけ挟み込まれた場合、第1供給ローラ55aがその1枚の記録シートSを介して第1分離ローラ55bに対して閾値を上回る連れ回り方向の回転トルクを付与する。よって、この場合にも、トルクリミッターが連れ回りを許容して第1分離ローラ55bが図中時計回り方向に連れ回る。一方、第1供給分離ローラ対55のニップに複数の記録シートSが重なって挟み込まれた場合、即ち、記録シートSの重送が発生した場合には、複数の記録シートSのうち、最上位の記録シートSだけが第1供給ローラ55aに直接接触する。そして、第1供給ローラ55aの回転に伴って給送路87に供給される。その他の記録シートSも給送路87に向けて搬送されるためには、シート間の摩擦抵抗がニップ内での搬送抵抗を上回る必要がある。しかし、記録シートSの材質にもよるが、殆どの記録シートSでは摩擦抵抗が搬送抵抗を上回らずに、最上位の記録シートSと2枚目の記録シートSとの間でスリップが発生する。このスリップにより、第1分離ローラ55bの連れ回り方向の回転トルクが閾値以下になって、トルクリミッターが第1分離ローラ55bに対して逆回転駆動力を繋ぐ。これにより、第1分離ローラ55bが図中時計回り方向に逆回転駆動して2枚目以降の記録シートSを図示しない第1給紙カセットに向けて戻す。以上の動作により、第1供給分離ローラ対55のニップに進入した複数の記録シートSのうち、最上位の記録シートSだけが他のシートから分離されて給送路87に供給される。
図示しない第2給紙カセット(図1の86)から送り出された記録シートSは、第2供給分離ローラ対56のニップを通過した後に給送路87における先端付近の位置に供給される。この位置(以下、この位置を「第2供給位置」という)は、第1給紙カセットによる給送路87に対するシート供給位置よりも搬送方向の上流側である。なお、第2供給分離ローラ対56は、第1供給分離ローラ対55と同様の原理により、重送が発生した場合に最上位の記録シートSだけを分離して給送路87に供給するものである。
図示しない手差しトレイ(図1の84)から送り出された記録シートSは、手差し供給分離ローラ対57のニップを通過した後に給送路87における「第1供給位置」と「第2供給位置」との間の位置(以下、「手差し供給位置」という)に供給される。なお、手差し供給分離ローラ対57も、第1供給分離ローラ対55と同様の原理により、重送が発生した場合に最上位の記録シートSだけを分離して給送路87に供給するものである。
両面プリントモードにおいて反転再送路90に送られた記録シートSは、反転再送路90の末端付近まで搬送されると、反転ローラ対91のニップを経由して給送路87に供給される。この供給位置は、給送路87における反射型光学センサー60との対向位置よりもシート搬送方向の下流側である。よって、両面プリントモードにおいて反転再送路90から給送路87に供給された記録シートSは、反射型光学センサー60によって表面平滑性が検知されることなく、レジストローラ対89に至る。これに対し、第1給紙カセットから給送路87に供給された記録シートS、第2給紙カセットから給送路87に供給された記録シートS、及び手差しトレイから給送路87に供給された記録シートSは、何れも反射型光学センサー60との対向位置を通過する。そして、その際に表面平滑性が検知される。
図4は、反射型光学センサー60を拡大して示す拡大斜視図である。また、図5は、反射型光学センサー60の構成を拡大して示す拡大構成図である。反射型光学センサー60は、発光部61、正反射光検出器62、センサー筐体63、コリメートレンズ64、レンズ65などを有している。発光部61は、記録シートSの表面に向けて所定の入射角度で光を発するものである。また、正反射光検出器62は、記録シートSの表面上で正反射した正反射光を検出するもので、フォトダイオード等からなる。また、コリメートレンズ64は、発光部61から出射された光をコリメートするレンズである。また、レンズ65は、反射光のうち、正反射光検出器62に対して所定の角度の光成分のみを入射させるためのレンズである。
センサー筐体63は、測定対象物である記録シートSの表面に対向する対向面(測定対象物対向面)が平面状に形成されており、その対向面に開口面66が形成されている。発光部61から発せられた出射光L1は、センサー筐体63の内部に形成された出射光路空間67を通ってコリメートレンズ64を通過し、開口面66から記録シートSの表面に向けて射出される。また、記録シートSの表面からで得られた正反射光L2は、開口面66からセンサー筐体63の内部に入り込む。そして、センサー筐体63の内部に形成された正反射光路空間68を通ってレンズ65を通過した後、正反射光検出器62に受光される。
発光部61は、開口面66の法線Nに対する出射光L1の光軸の角度θ1が75°以上85°以下の範囲内となるように、センサー筐体63内に位置決めされている。測定対象物である記録シートSは、センサー筐体63における開口面66が形成されている対向面を沿うようにして搬送される。このため、反射型光学センサー60は、記録シートSの面に対する出射光L1の入射角が75°以上85°以下の範囲内となるように構成されている。なお、本プリンタにおいては、記録シートSの表面に対する出射光L1の入射角が約80°となるように構成されている。
発光部61の光源としては、LED(Light Emitting Diode)を好適に用いることができる。LEDは、チップタイプのもので、外形が約3mm角程度のものを用いることができる。発光波長は、850nm程度の赤外線がよい。赤外線は正反射光検出器62の感度が高いからである。但し、可視光などの他の発光波長であってもよい。発光部61のLEDは、ABS樹脂等により形成されたセンサー筐体63に直接固定されている。
記録シートSには精度のよいコリメート光が照射されることが好ましいことから、出射光路空間67にはコリメートレンズ64が設けられている。コリメートレンズ64は、例えば、焦点距離fが9mm、直径が2mmのものを用いることができ、自らの焦点位置に発光部61の発光点を位置させるように配置されている。コリメートレンズ64は、0.5mm程度の固定しろをとって、センサー筐体63に固定されている。発光部61の発光点と、コリメートレンズ64の中心とを結ぶ線が出射光L1の光軸となる。
正反射光検出器62についても、発光部61の場合と同様に、センサー筐体63内に固定されている。本プリンタでは、正反射光検出器62としてフォトダイオード(PD:photodiode)からなるものが用いられている。PDとしては、大きさが3mm角程度あり、受光面となる光検出面が1mm角のものを用いることができる。正反射光検出器62に光を入射させるためのレンズ65としては、例えば、焦点距離fが9mm、直径が3mmのものが用いることができる。このレンズ65は、自らの焦点位置に正反射光検出器62のPD受光面を位置させるように配置されている。これにより、正反射光検出器62に入射する光の取り込み角度幅が約5°となる。レンズ65の中心と正反射光検出器62となるPDの受光面中心とを結ぶ線が正反射光の光軸となる。
センサー筐体63は、光を吸収する黒色のABS樹脂等により形成されており、センサー筐体63によって外乱光が除去される。センサー筐体63の内部には、発光部61、コリメートレンズ64、正反射光検出器62、レンズ65等を固定して設置している。センサー筐体63の大きさは、コリメートレンズ64やレンズ65の大きさ等に依存する。
なお、反射型光学センサー60は、受光部として記録シートSからの正反射光を受光するものだけを設けた構成であるが、拡散反射光を受光する受光部も設けた構成としてもよい。
反射型光学センサー60は、図6に示される記録シートSの表面に対する出射光L1の入射角θ1が75°以上85°以下の範囲内という大きな値となる構成になっている。このため、記録シートSの表面と略平行な開口面66を塞ぐように防塵フィルムを設置してしまうと、その防塵フィルムの内面に対する出射光L1の入射角も大きな値となる。その結果、多くの出射光L1が防塵フィルムを透過できなくなり、記録シートSに入射される出射光L1の光量が不足してしまう。正反射光L2についても、開口面66を塞ぐように防塵フィルムを設置してしまうと、その防塵フィルムの外面に対する正反射光L2の入射角が大きな値となる。そして、記録シートSの表面と防塵フィルムの外面との間で多重反射が生じてS/N比が悪化してしまう。
そこで、本プリンタでは、図5に示されるように、開口面66ではなく、出射光路空間67及び正反射光路空間68の内部に、それぞれ防塵フィルム71,72を設けている。より詳しくは、照射光路空間67内の防塵フィルム71は、コリメートレンズ64と開口面66との間の光路空間部分を塞ぐように設けられている。また、正反射光路空間68内の防塵フィルム72は、開口面66とレンズ65との間の光路空間部分を塞ぐように設けられている。
防塵フィルム71,72の面に対する出射光L1及び正反射光L2の入射角が、開口面66を塞ぐように防塵フィルムを設置した例よりも小さくなるように、防塵フィルム71,72が配置されている。これにより、防塵フィルムで反射してしまう光量を減らすことができるので、記録シートSに照射される出射光L1の光量不足や、記録シートSの面と防塵フィルムとの間の多重反射によるS/N比の悪化を抑制することができる。
防塵フィルム71,72を通過する出射光L1及び正反射光L2の光軸に対して防塵フィルム71,72の面が略直角となるように防塵フィルム71,72が配置されている。これにより、出射光L1及び正反射光L2が防塵フィルム71,72で反射する光量をほぼゼロに抑えることができるので記録シートSに照射される出射光L1の光量不足や多重反射によるS/N比の悪化を効果的に抑制できる。
なお、防塵フィルム71,72の面に対する出射光L1及び正反射光L2の入射角が0°以上20°以下の範囲内となるように構成すれば、実際上問題とならない。但し、フィルタ寸法が3mmで、フィルタ設置公差を±0.2mm程度として考えると、この入射角の設計公差は±4°程度となる。
防塵フィルム71,72としては、レンズ(64,65)よりも紙粉等の異物が表面に付着するときの付着力が弱まるようなものであれば、どのようなものを用いてもよく、例えば、ポリエステル等の透明な薄板部材を用いることができる。また、帯電防止剤として酸化スズ等を用いた透明導電膜を用いることもできる。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図3に示される反射型光学センサー60によって記録シートS表面の平滑性を精度良く検知するためには、記録シートSがセンサーとの対向位置でセンサー面と平行な姿勢をとっている必要がある。図7に示されるような姿勢である。記録シートSがこのような平行な姿勢で反射型光学センサー60との対向位置を図中矢印A方向に移動していると、同図のグラフで示されるように、センサーから有効な値の電圧が出力される。グラフが波打っているのは、センサーの検知誤差ではなく、記録シートSの表面の平滑性が位置によって微妙に異なるからである。このような特性があることから、出力電圧値を所定の時間間隔で取得し、それらの平均電圧を用いて平滑性を把握することが望ましい。
図8は、上述した平均電圧と、距離又は角度姿勢との関係を示すグラフである。前記距離は、センサー面に対して平行な姿勢をとっている記録シートSとセンサー面との距離である。また、角度姿勢は、センサー面に対して平行な姿勢をとっている記録シートSの角度姿勢を0°として表した場合における記録シートSの角度である。図示のように、センサー面に対して平行な姿勢をとっている記録シートSであっても、その位置がセンサー面に対して所定の距離範囲にないと、センサーから有効な値の電圧が出力されない。よって、センサーから有効な値の電圧が出力されるためには、記録シートSにおけるセンサーとの対向箇所がセンサー面から所定の距離範囲内の位置でセンサー面に対して平行な姿勢をとっているという条件を満足する必要がある。以下、この条件を、検知可能条件という。
記録シートSの表面の平滑性を精度良く検知するためには、検知可能条件を満足するタイミングを見計らい、そのタイミングでセンサーの出力電圧値を取得する必要がある。ところが、給送路87内では、記録シートSを給送路87に送り出したシート収容手段が3つ(84、85、86)のうちのどれであるのかにより、反射型光学センサー60との対向位置における記録シートSの挙動が異なってくる。このため、検知可能条件を満足するタイミングが、記録シートSを送り出したシート収容手段に応じて異なってくる。
図9は、第1給紙カセット85から送り出された記録シートSが反射型光学センサー60との対向位置を通過する際におけるセンサーの出力電圧の経時変化を示すグラフである。図示のように、時点t2から時点t3までの期間や、時点t4〜時点t5までの期間では、センサーから有効な値の電圧が出力されていない(不安定)。これは、それらの期間において、記録シートSがセンサーに対向しているものの、検知可能条件を満足していないからである。
記録シートSが第1給紙カセット85から送り出された場合、その記録シートSの給送路87内における挙動は、概ね次の通りである。第1給紙カセット85から送り出された記録シートSは、図10に示されるように、給送路87の全域のうち、最下流搬送ローラ対88のニップ入口付近に供給される。このため、最下流搬送ローラ対88よりも上流側では、図示のように、記録シートSが斜めの姿勢から鉛直方向上方に向く姿勢に大きく湾曲させられている。最下流搬送ローラ対88のニップを通過したシート先端は、給送路87における図中右側のガイド板に接触しながら、上方に向けて移動する。しして、記録シートSの先端部が反射型光学センサー60との対向位置に進入する。このとき、記録シートSの先端部は図中右側のガイド板に沿って移動することから、センサー面に対して概ね平行な姿勢をとる。このため、図9のグラフにおける時点t1からt2までの期間で、センサーの出力電圧が大きく立ち上がる。
しかし、その期間はごく僅かである。反射型光学センサーからの出力電圧値を取得する期間としては、少なくとも記録シートSの40mmの長さ分に相当する時間をとることが望ましい。よって、時点t1からt2までの期間の出力電圧値を使用することはできない。
記録シートSの先端部が反射型光学センサー60との対向位置を通過してしばらくすると、シート先端が図11に示されるように、レジストローラ対89の付近まで移動する。この状態では、センサーとの対向位置のシート箇所が図示のようにセンサー面に対して斜めの姿勢をとる。このため、図9のグラフにおける時点t2〜時点t3までの期間でセンサーの出力電圧が大きく立ち下がる。
その後、記録シートSの先端がレジストローラ対89のレジストニップに突き当たる。このとき、レジストローラ対89は回転駆動を停止していることから、記録シートSはレジストニップに進入することができずに、徐々に撓んでいく。これにより、記録シートSのスキューが補正される。そして、記録シートSがある程度まで撓んだ状態で、最下流搬送ローラ対88による搬送が停止して、記録シートSを二次転写ニップに向けて送り出すタイミングが来るまで待機される。このとき、図12に示されるように、記録シートSが撓んでいることで、反射型光学センサー60との対向位置でセンサー面と平行な姿勢をとる。但し、停止した状態では、局所部分の平滑性しか検知できないため、図12に示されるように、レジストローラ対89や最下流搬送ローラ対88の回転駆動が開始されてから、出力電圧値を取得することが望ましい。なお、図9のグラフでは、便宜上、記録シートSの搬送が一時停止されているときの出力電圧値を掲載していない。搬送の一時停止は、同グラフにおける時点t3のタイミングで行われている。
レジストローラ対89や最下流搬送ローラ対88の回転駆動が開始すると、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るまでは、反射型光学センサー60との対向位置におけるシート箇所がセンサー面と平行な姿勢をとり続ける。そして、検知可能条件が満たされて、センサーから有効な値の電圧が出力される。その後、図13に示されるように、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出ると、記録シートSの後端部は、センサーとの対向位置でセンサー面に対して斜めの姿勢をとるようになる。このため、検知可能条件が満たされなくなって、図9のグラフにおける時点t4から時点t5までの期間で、出力電圧が不安定になって大きく低下する。従って、比較的安定した出力電圧値が得られるのは、図9のグラフにおける時点t3から時点t4までの期間であり、この期間で出力電圧値を取得する必要がある。より詳しくは、記録シートSの先端側をレジストニップに突き当てた状態でレジストローラ対89や最下流搬送ローラ対88の回転駆動を開始してから、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るまでに要する期間である。なお、図9において点線で示されているのは、センサーとの対向位置で記録シートSがセンサー面と平行な姿勢をとり続けながら移動した場合の出力電圧値を示している。
図14は、第2給紙カセット86から送り出された記録シートSが反射型光学センサー60との対向位置を通過する際におけるセンサーの出力電圧の経時変化を示すグラフである。図示のように、第2給紙カセット86から記録シートSが送り出された場合には、時点t2から時点t4までの期間で、出力電圧が非常に不安定になっている。これは、それらの期間において、検知可能条件を満足しないからである。
記録シートSが第2給紙カセット86から送り出された場合、その記録シートSの給送路87内における挙動は、概ね次の通りである。第2給紙カセット86から送り出された記録シートSは、給送路87の全域のうち、最下流搬送ローラ対88よりもかなり上流側の位置に供給される。このため、最下流搬送ローラ対88の付近まで搬送されてきた記録シートSは、図15に示されるように、ほぼ鉛直方向に沿ったまっすぐな姿勢をとっている。最下流搬送ローラ対88のニップを通過した記録シートSの先端部は、センサー面に対してほぼ平行な姿勢をとっている。しかし、その先端部の図中左右方向の位置がセンサーに近すぎることから、検知可能条件が満たされずに、図14のグラフにおける時点t1から時点t2までの期間で有効な出力電圧値が得られない。
記録シートSの先端部が反射型光学センサー60との対向位置を通過してしばらくすると、シート先端が図16に示されるように、レジストローラ対89の付近まで移動する。この状態では、センサーとの対向位置のシート箇所が図示のようにセンサー面に対して斜めの姿勢をとる。このため、検知可能条件が満たされずに、図14のグラフにおける時点t2〜時点t3までの期間でセンサーの出力電圧が大きく立ち下がる。
その後、記録シートSの先端がレジストローラ対89のレジストニップに突き当たって徐々に徐々に撓んでいき、やがて最下流搬送ローラ対88の回転駆動が停止する。そして、適切なタイミングでレジストローラ対89及び最下流搬送ローラ対88が回転駆動を開始する。このとき、図17に示されるように、反射型光学センサー60との対向位置におけるシート箇所はセンサー面に対して斜めの姿勢をとっている。この状態は、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るまで続く。このため、図14のグラフにおける時点t3から時点t4までの期間で、検知可能条件が満たされずに、出力電圧値が有効な値まで上昇しない。
記録シートの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出ると、図18に示されるように、反射型光学センサー60との対向位置におけるシート箇所がセンサー面に対して平行な姿勢をとって検知可能条件が満たされる。この状態は、記録シートSの後端がセンサーとの対向位置を抜け出るまで続く。このため、図14のグラフにおける時点t4から時点t5までの期間で、出力電圧値が有効に立ち上がって安定化する。よって、第2給紙カセット86から記録シートSが送り出された場合には、時点t4から時点t5までの期間で、出力電圧値を取得することが望ましい。より詳しくは、レジストローラ対89の回転駆動を開始した後、シート後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るタイミングを見計らい、そのタイミングから、シート後端がセンサーとの対向位置に進入するまでの期間である。
なお、本プリンタにおいて、手差しトレイ84から送り出された記録シートSが反射型光学センサー60との対向位置でとる挙動は、第2給紙カセット86から記録シートSが送り出された場合とほぼ同様である。
第1給紙カセット85から記録シートSが送り出された場合に、記録シートSが図12に示される状態になっている時間(検知可能条件を満足する時間)は、記録シートSの長さに応じて異なってくる。具体的には、記録シートSの長さが大きくなるほど、記録シートSが図12に示される状態になっている期間が長くなる。よって、記録シートSとして、図7のグラフのデータを得た実験で使用したものよりも長いものを使用した場合、センサーの出力電圧の経時変化は、例えば図19に示されるようになる。
また、第2給紙カセット86から記録シートSが送り出された場合に、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜けてから、シート後端部がセンサー面に対して平行な姿勢をとるまでに要する時間は、記録シートSの腰の強さによって異なる。記録シートSの腰の強さが大きくなるほど、前述の時間(以下、ニップ抜け後姿勢安定化時間という)が短くなる。そして、記録シートSの腰の強さは、記録シートSの坪量や環境に応じて異なってくる。具体的には、坪量が大きくなるほど、記録シートSの腰の強さが大きくなる。また、同じ坪量の記録シートSであっても、高温高湿の環境下では記録シートSが吸湿することから、低温低湿の環境下に比べて、記録シートSの腰の強さが小さくなる。よって、坪量が大きくなるほど、ニップ抜け後姿勢安定化時間が短くなる。また、環境が低温低湿化するほど、ニップ抜け後姿勢安定化時間が短くなる。
図20は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部150は、図示しないCPU、RAM、ROM、不揮発性メモリーなどを具備しており、プリンタ内の各機器の駆動を制御したり、センサーと通信したり、演算処理を実行したりするものである。この制御部150には、レジストセンサー95、反射型光学センサー60、レジストモータ96、搬送モータ97、定着電源98、定着温度センサー47、操作表示部151、環境センサー99、シート長検知手段152などが電気的に接続されている。
レジストモータ96は、レジストローラ対89の駆動源となっているモータである。また、搬送モータ97は、最下流搬送ローラ対88などの複数の搬送ローラ対の駆動源となっているモータである。また、レジストセンサー95は、図3に示されるように、給送路87内の記録シートSをレジストニップの入口近傍で検知するものである。制御部150は、レジストセンサー95が記録シートSの先端を検知したタイミングから所定時間経過後に搬送モータ97の駆動を一時停止させて、レジストニップに先端を突き当てた状態の記録シートSの搬送を一時停止させる。
定着電源98は、定着ユニット40(図1参照)の発熱源に電力を供給する電源である。また、定着温度センサー47は、定着ベルト44の表面温度を検知するセンサーである。制御部150は、定着温度センサー47による温度の検知結果を所定範囲内にするように、定着電源98からの電力の出力をオンオフ制御する。これにより、定着温度が所定の範囲内に維持される。
環境センサー99は、機内の温湿度を検知するセンサーである。また、操作表示部151は、テンキーやタッチパネルなどから構成され、操作者によるデータの入力操作を行ったり、画面に画像を表示させたりするものである。操作者は、操作表示部151を操作することにより、給紙カセット(85、86)内や手差しトレイ84上の記録シートSの坪量を入力することができる。入力された坪量は、第1給紙カセット85などといったシート収容手段の情報に関連付けて、制御部150の不揮発性メモリーに記憶される。
シート長検知手段152は、記録シートSの長さを検知するものである。シート長検知手段152の一例として、各給紙カセットや手差しトレイ84にセットされた記録シートSの長さを、シート押さえ板などの位置に基づいて検知するものを例示することができる。また、給送路87内の所定位置で記録シートSを検知するシート検知手段によってシート先端を検知したタイミングと、シート後端の通過を検知したタイミングと、シート搬送速度に基づいて、記録シートSの搬送方向の長さを把握するものでもよい。
制御部150の不揮発性メモリーには、第1時間アルゴリズム及び第2時間アルゴリズムが記憶されている。第1時間アルゴリズムは、シート長検知手段152による長さの検知結果に基づいて、図7のグラフにおける時点t4が到来するタイミングである第1トリガー値を求めるためのものである。記録シートSの長さが大きくなるほど、第1トリガー値が大きくなる。なお、記録シートSが第1給紙カセット85から送り出された場合、第1時間アルゴリズムによって求められる第1トリガー値は図7のグラフの時点t4が到来するタイミングである。これに対し、記録シートSが第2給紙カセット85や手差しトレイ84から送り出された場合、第1時間アルゴリズムによって求められる第1トリガー値は記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るタイミングである。
第2時間アルゴリズムは、環境センサー99による温湿度の検知結果と、不揮発性メモリーに記憶されている記録シートSの坪量の情報とに基づいて、ニップ抜け後姿勢安定化時間を求めるためのものである。環境が低温低湿化したり、坪量が大きくなったりするほど、ニップ抜け後姿勢安定化時間が短くなる。
図21は、制御部150によって実施される定着温度決定処理の処理フローを示すフローチャートである。同図において、制御部150は、何れかのシート収容手段から記録シートSを送り出す給紙処理を開始すると(S1でY)、その後に一時停止処理を実施する(S2)。この一時停止処理は、レジストセンサー95によってシート先端を検知してから所定時間後に搬送ローラ対などを一時停止させる処理である。
制御部150は、一時停止処理を実施すると、次に、記録シートSを送り出したシート収容手段について、第1給紙カセット85であるか否かを判断する(S3)。そして、第1給紙カセット85である場合(S3でY)には、後述するS4〜S12のステップを実行する。これに対し、第1給紙カセット85でない場合(S3でN)、即ち、第2給紙カセット86又は手差しトレイ84である場合には、後述するS13〜S18、及びS9〜S12のステップを実行する。
記録シートSを送り出したシート収容手段が第1給紙カセット85である場合、制御部150は、シート長検知手段152による検知結果と、第1時間アルゴリズムとを用いて、第1トリガー値を特定する(S4)。そして、レジストローラ対89の回転駆動を開始した後(S5でY)、計時とサンプリングとを開始する(S6、S7)。サンプリングは、反射型光学センサー60からの出力電圧値を所定の時間間隔で記憶してRAMに一時的に記憶していく処理である。
S7のステップでサンプリングを開始した制御部150は、次に、計時値が第1トリガー値以上になるまでサンプリングを続け、計時値が第1トリガー値以上になった時点で(S8でY)、サンプリングと計時とを終了する(S9、S10)。これにより、図9のグラフにおける時点4でサンプリングを終了することができる。なお、図9のグラフにおける時点t3は、レジストローラ対89の回転駆動を開始した時点である。このため、レジストローラ対89の回転を開始した直後から、サンプリングを開始しているのである。
計時処理を終了した制御部150は、RAMに記憶している複数のサンプリングデータで平均をとって平均電圧を算出した後(S11)、平均電圧に基づいて定着温度を決定して(S12)一連のフローを終了する。基本的には、シート表面の平滑度が高くなるほど、定着温度を下げてホットオフセットの発生を抑えたり、省エネルギー化を図ったりする。
一方、記録シートSを送り出したシート収容手段が第1給紙カセット85ではない場合(S3でN)、制御部150は、第2トリガー値や第3トリガー値を算出する。具体的には、まず、シート長検知手段152による検知結果と、第1時間アルゴリズムとを用いて、第1トリガー値を算出する。この第1トリガー値は、レジストローラ対89の回転駆動を開始してから、記録シートSの後端が最下流搬送ローラ対88のニップを抜け出るまでの時間に相当している。この第1トリガー値にニップ抜け後姿勢安定化時間を加算した値が、レジストローラ対89の回転駆動を開始してから記録シートSがセンサーとの対向位置で姿勢を安定化させるまでに要する時間としての第2トリガー値になる。そこで、制御部150は、環境センサー99による検知結果、不揮発性メモリーに記憶している坪量の情報、及び第2時間アルゴリズムを用いて、ニップ抜け後姿勢安定化時間を求める。そしてその結果を第1トリガー値に加算して第2トリガー値を求める。更に、この第2トリガー値に所定値を加算した値を第3トリガー値として求める。
このようにして第2トリガー値及び第3トリガー値を算出した制御部150は、その後、レジストローラ対89の回転駆動を開始した直後に(S14でY)、計時処理を開始する(S15)。そして、計時値が第2トリガー値以上になった直後に(S16でY)、サンプリングを開始する(S17)。これにより、図14のグラフの時点t4でサンプリングを開始することができる。サンプリングを開始した制御部150は、計時値が第3トリガー値以上になった直後に(S18でY)、サンプリングを終了する。これにより、同グラフの時点t5でサンプリングを終了することができる。その後、制御部150は、S9〜S12のステップを実行した後に、一連のフローを終了する。
なお、定着温度の決定にあたっては、平均電圧を平滑度に変換した後に、平滑度に基づいて定着温度を決定する方法を採用している。但し、図22のような一次関数の関係が得られるのであれば、平均電圧をそのまま定着温度の決定のための基準値として用いても良い。
また、これまで、電子写真方式のプリンタの実施形態について説明してきたが、電子写真方式とは異なる方式で画像を形成する画像形成装置にも本発明の適用が可能である。例えば、トナープロジェクション方式やインクジェット方式で画像を形成する画像形成装置にも本発明の適用が可能である。また、反射型光学センサー60による検知結果を定着温度の決定に利用する制御だけでなく、他の制御パラメーターの決定に利用する構成にも、本発明の適用が可能である。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、記録シートに画像を記録する画像記録手段(例えばプロセスユニット1Y,M,C,Kなど)と、前記画像記録手段に向けて記録シートを送り込む送込手段(例えばレジストローラ対89)と、前記送込手段に向けて記録シートを給送するための給送路(例えば給送路87)と、自らの内部に収容している記録シートを前記給送路に供給する複数のシート供給手段(例えば第1給紙カセット85、第2給紙カセット86、手差しトレイ84)と、それらシート供給手段から前記給送路に供給された記録シートの表面の光反射性を検知する光反射性検知手段(例えば反射型光学センサー60)と、前記表面の光反射性を検知しているときの前記光反射性検知手段からの出力値を取得した結果結果に基づいて所定の制御パラメーターを調整する制御手段(例えば制御部150)とを備える画像形成装置において、複数の前記シート供給手段のうちのどれが前記給送路に記録シートを供給したのかに基づいて前記出力値を取得するタイミングを決定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、複数のシート供給手段のうち、記録シートの送り出しを行ったシート供給手段がどれであるのかに基づいて、その記録シートが光反射性検知手段との対向位置で姿勢を安定化させるタイミングを把握する。そして、そのタイミングで光反射性検知手段の出力値を取得することで、出力値を不適切なタイミングで取得したことに起因して制御パラメーターを精度良く調整できなかったことによる画質の悪化を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記給送路内の記録シートの先端を前記送込手段に突き当てた状態で記録シートの搬送を一時停止させ、その後に前記送込手段によって記録シートを前記画像記録手段に送り込み始めた時点を基準にして、前記タイミングを見計らう処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、送込手段によって記録シートを送り込み始めた時点を基準にすることで、それよりも前の時点を基準にする場合に比べて、記録シートの姿勢が安定化するタイミングをより精度良く把握することができる。送込手段の位置で記録シートを一時停止させるときの一時停止時間には誤差が存在するからである。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記送込手段として、互いに当接してニップを形成しながら回転し且つ前記ニップに挟み込んだ記録シートを前記画像記録手段に向けて送り込む送込ローラ対(例えばレジストローラ対89)を用い、互いに当接してニップを形成しながら回転し且つ前記ニップに挟み込んだ記録シートを前記送込ローラ対に向けて搬送する搬送ローラ対(例えば最下流搬送ローラ対88)を前記送込ローラ対よりもシート搬送方向の上流側に設け、前記給送路に記録シートを送り出した前記シート供給手段が、記録シートを前記給送路における前記搬送ローラ対の入口付近に供給するものである場合に、記録シートが前記対向位置で姿勢を安定化させるタイミングとして、先端側を前記送込ローラ対のニップに挟み込まれている記録シートの後端側が前記搬送ローラ対のニップを抜け出る前のタイミングであるシート後端解放前タイミング(例えば図9の時点3から時点4まで)を特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、実施形態において図9を用いて説明したように、記録シートの姿勢が安定化しているタイミングで出力値を取得することができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記給送路に供給された後又は供給される前の記録シートにおける長さの情報を取得する長さ情報取得手段(例えばシート長検知手段152)を設け、前記長さ情報取得手段によって取得される長さが大きくなるほど、前記シート後端解放前タイミングとして期間のより長いものを特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、シート長に応じて時間長が異なるシート後端解放前タイミングの期間を正確に求めて、シート表面の平滑度を精度良く検知することができる。
[態様E]
態様Eは、態様C又はDにおいて、前記給送路に記録シートを送り出した前記シート供給手段が、記録シートを前記給送路における前記搬送ローラ対の入口付近よりもシート搬送方向の上流側の位置に供給するものである場合に、前記記録シートが前記対向位置で姿勢を安定化させるタイミングとして、先端側を前記送込ローラ対のニップに挟み込まれている記録シートの後端が前記搬送ローラ対のニップを抜け出た後のタイミングであるシート後端解放後タイミングを特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、実施形態において図14を用いて説明したように、記録シートの姿勢が安定化しているタイミングで出力値を取得することができる。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかにおいて、複数の前記シート供給手段のうち、少なくとも何れか1つについて、その内部に収容されている記録シートの坪量の情報を取得する坪量情報取得手段を設け、複数の前記シート供給手段のうち、前記情報を取得可能な前記シート供給手段については、同じシート供給手段から供給された記録シートであっても、前記タイミングとして前記坪量に応じて異なったタイミングを特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、坪量に応じて時間長が異なるシート後端解放後タイミングの期間を正確に求めて、シート表面の平滑度を精度良く検知することができる。
[態様G]
態様Gは、態様A乃至Fの何れかにおいて、環境を検知する環境検知手段を設け、複数の前記シート供給手段における同じシート供給手段から供給された記録シートであっても、前記タイミングとして前記環境検知手段による検知結果に応じて異なったタイミングを特定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、環境に応じて時間長が異なるシート後端解放後タイミングの期間を正確に求めて、シート表面の平滑度を精度良く検知することができる。