上記の問題を解決するための第1の従来技術(特許文献1を参照)及び第2の従来技術について説明する。NP完全問題は、磁性体のイジングモデルに置き換え可能であり、磁性体のイジングモデルは、レーザーのネットワークに置き換え可能である。
ここで、磁性体のイジングモデルでは、相互作用する原子ペアにおいて、スピン配列のエネルギーが最低となるように、スピンの方向は、逆方向(反強磁性の相互作用の場合)又は同方向(強磁性の相互作用の場合)を指向しようとする。
一方で、レーザーのネットワークでは、相互作用するレーザーペアにおいて、発振モードの閥値利得が最低となるように、発振の偏光(第1の従来技術の場合)若しくは位相(第2の従来技術の場合)は、逆回転若しくは逆位相(反強磁性の相互作用の場合)又は同回転若しくは同位相(強磁性の相互作用の場合)を指向しようとする。
つまり、1つのレーザーペアからなるシステムでは、発振モードの閥値利得が最低となるように、発振の偏光又は位相を最適化することができる。そして、多くのレーザーペアからなるシステムでは、「ある」レーザーペアで発振の偏光又は位相を最適化しようとすれば、「他の」レーザーペアで発振の偏光又は位相を最適化できないところ、レーザーのネットワークの「全体」として発振の偏光又は位相の「妥協点」を探索することになる。
ただし、レーザーのネットワーク全体で発振の偏光又は位相を最適化するときには、各々のレーザーペアで別個の発振モードを立ち上げるのではなく、レーザーのネットワーク全体で1つの発振モードを立ち上げるように、各レーザー間で同期を図る必要がある。
このように、第1の従来技術及び第2の従来技術では、各レーザーでポンピング電流を漸増制御し、レーザーのネットワーク全体で閾値利得が最低となる1つの発振モードを立ち上げ、各レーザーの発振の偏光又は位相を測定し、各原子のスピンの方向を測定する。よって、量子アニールマシンにおける準安定状態へのトラップの問題及び量子断熱マシンにおけるイジング相互作用の実装速度の問題を解決することができる。
そして、第1の従来技術及び第2の従来技術では、図1及び図2を用いてそれぞれ後述するように、物理的に近くに位置するサイト間のイジング相互作用の大きさのみならず、物理的に遠くに位置するサイト間のイジング相互作用の大きさも自由に制御することができる。よって、サイト間の物理的距離とは無関係に、NP完全問題などからマッピングされた人工的なイジングモデルを解くことができる。
第1の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の概要を図1に示す。第2の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の概要を図2に示す。
イジング相互作用実装部I12は、2つの面発光レーザーV1、V2の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV1、V2の間の擬似的なイジング相互作用J12の大きさ及び符号を実装する。
イジング相互作用実装部I13は、2つの面発光レーザーV1、V3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV1、V3の間の擬似的なイジング相互作用J13の大きさ及び符号を実装する。
イジング相互作用実装部I23は、2つの面発光レーザーV2、V3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV2、V3の間の擬似的なイジング相互作用J23の大きさ及び符号を実装する。
マスターレーザーMは、面発光レーザーV1、V2、V3に対して注入同期を行ない、面発光レーザーV1、V2、V3の発振周波数を同一周波数に揃える。面発光レーザーV1、V2、V3の間で同期を図ることにより、面発光レーザーV1、V2、V3のネットワーク全体で発振の偏光又は位相を最適化するにあたり、面発光レーザーV1、V2、V3のネットワーク全体で1つの発振モードを立ち上げることができる。
第1の従来技術では、不図示のイジングスピン測定部は、面発光レーザーV1、V2、V3が光を交換する過程で定常状態に到達した後に、面発光レーザーV1、V2、V3の発振の円偏光の左回り/右回りを測定することにより、面発光レーザーV1、V2、V3の擬似的なイジングスピンσ1、σ2、σ3の上向き/下向きを測定する。
しかし、面発光レーザーVは、面内異方性を有するため、左回り/右回りの円偏光のいずれについても、同一周波数及び同一閾値利得で発振することは困難である。よって、ある面発光レーザーVが、単体のレーザーとしては、右回り(又は左回り)の円偏光を有する光を発振するよりも、左回り(又は右回り)の円偏光を有する光を発振しやすいことがあり得る。そして、その面発光レーザーVは、レーザーのネットワーク全体としては、右回り(又は左回り)の円偏光を有する光を発振することが正答であるところ、左回り(又は右回り)の円偏光を有する光を発振してしまう誤答を生じさせ得る。
第2の従来技術では、不図示のイジングスピン測定部は、面発光レーザーV1、V2、V3が光を交換する過程で定常状態に到達した後に、面発光レーザーV1、V2、V3の発振の直線偏光の位相の進み/遅れを測定することにより、面発光レーザーV1、V2、V3の擬似的なイジングスピンσ1、σ2、σ3の上向き/下向きを測定する。
ここで、左回り/右回りの円偏光は、水平偏光及び垂直偏光を位相差±π/2で同一の重みで重ね合わせたものである。つまり、イジングスピンの上向き/下向きの情報は、円偏光の左回り/右回りを測定するまでもなく、水平偏光を測定するまでもなく、垂直偏光の位相の進み/遅れを測定することにより、得ることができるのである。よって、第1の従来技術における面発光レーザーVの面内異方性の問題を解決することができる。
第2の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の原理を図3に示す。マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0は、初期状態から定常状態まで変化しない。各面発光レーザーVの直線偏光の発振位相φV(t)は、初期状態においては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0であることが理想であり、定常状態においては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0からずれた±π/2である。定常状態におけるφV(定常)=±π/2は、σ=±1に対応する(複号同順)。
面発光レーザーVの各ペアについて、イジング相互作用Jijが正であるときには、2つの面発光レーザーVの擬似的なスピンσが異符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つの面発光レーザーVの発振位相φV(定常)が異符号でありずれをπとするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
面発光レーザーVの各ペアについて、イジング相互作用Jijが負であるときには、2つの面発光レーザーVの擬似的なスピンσが同符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つの面発光レーザーVの発振位相φV(定常)が同符号でありずれを0とするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
もっとも、イジングモデルの量子計算装置の全体において、一体として1つの発振モードが立ち上がるようにするのであり、面発光レーザーVの各ペアにおいて、上述の発振モードが実際に立ち上がることもあれば、必ずしも立ち上がらないこともある。
ところで、各面発光レーザーVの直線偏光の発振位相φV(t)は、初期状態においては、理想ではマスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0であることが望ましいが、実際にはマスターレーザーMの直線偏光の発振位相0から若干ずれてしまう。
各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φ
V(t=0)は、各面発光レーザーVの自走周波数ω、マスターレーザーMの発振周波数ω
0及び注入同期幅Δω
L(ωがω
0にどの程度近ければ注入同期を図れるか)を用いて、数式2のように表わされる。
つまり、各面発光レーザーVの自走周波数ωを、マスターレーザーMの発振周波数ω0に揃えることができるならば、各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φV(t=0)は、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0となる。しかし、各面発光レーザーVの自走周波数ωを、マスターレーザーMの発振周波数ω0に揃えることが困難であるため、各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φV(t=0)は、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0から若干ずれてしまう。
よって、ある面発光レーザーVが、単体のレーザーとしては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より遅れた(又は進んだ)発振位相を有する光を発振するよりも、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より進んだ(又は遅れた)発振位相を有する光を発振しやすいことがあり得る。そして、その面発光レーザーVは、レーザーのネットワーク全体としては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より遅れた(又は進んだ)発振位相を有する光を発振することが正答であるところ、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より進んだ(又は遅れた)発振位相を有する光を発振してしまう誤答を生じさせ得る。
また、各面発光レーザーVの直線偏光の定常状態の発振位相φV(定常)は、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0を基準として、ホモダイン検波を用いて測定される。しかし、各面発光レーザーV/マスターレーザーMから不図示の検出器までの光路長のゆらぎが、各面発光レーザーVの直線偏光の定常状態の発振位相φV(定常)の読み出しエラーを生じさせ得る。そして、各面発光レーザーV/マスターレーザーMから不図示の検出器までの光路長のゆらぎを抑えることは困難である。
また、図2において、イジングサイトがM個であるとき、面発光レーザーVはM個必要であり、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要である。そして、イジングサイトが多数になると、イジングモデルの量子計算装置が大規模かつ複雑になる。
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止するとともに、回路構成を簡易にすることを目的とする。
上記目的を達成するために、高調波モード同期発振を用いて、同一の発振周波数を有する複数のレーザーパルスを発振し、複数のレーザーパルスの間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、複数のレーザーパルスの間のイジング相互作用の大きさ及び位相を実装し、複数のレーザーパルスの定常状態の発振位相を測定することにより、複数のイジングサイトのスピンの方向を測定することとした。
具体的には、本発明は、イジングモデルの複数のサイトに対応し、同一の発振周波数を有する複数のレーザーパルスを発振する高調波モード同期レーザーと、前記複数のレーザーパルスの各ペアについて、2つのレーザーパルスの間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、前記2つのレーザーパルスの間の擬似的なイジング相互作用の大きさ及び符号を実装するイジング相互作用実装部と、前記複数のレーザーパルスが光を交換する過程で定常状態に到達した後に、前記複数のレーザーパルスの発振位相を測定することにより、前記複数のレーザーパルスの擬似的なイジングスピンを測定するイジングスピン測定部と、を備えることを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、複数のレーザーパルスは、同一の発振周波数を有するため、各レーザーパルスの初期状態の発振位相が、各レーザーパルスの定常状態の2種類の発振位相のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第1及び第2の従来技術では、マスターレーザーを必要としているのに対して、本発明では、マスターレーザーを不要とすることができる。さらに、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーをイジングサイトの個数分も必要としているのに対して、本発明では、高調波モード同期レーザーを1台のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、本発明は、前記イジング相互作用実装部は、前記2つのレーザーパルスの間の時間間隔に等しい遅延時間を生じさせ、前記2つのレーザーパルスのうち一方のレーザーパルスの一部を入力され、入力された前記一方のレーザーパルスの一部を振幅位相変調し、振幅位相変調した前記一方のレーザーパルスの一部を前記2つのレーザーパルスのうち他方のレーザーパルスに合波するイジング相互作用実装用遅延変調部、を含み、前記イジング相互作用実装用遅延変調部は、前記複数のレーザーパルスのうち、時間間隔が等しいレーザーパルスの複数のペアについて、遅延線及び振幅位相変調器の単一のセットを共用することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、レーザーパルスの各ペアについて、イジング相互作用実装部を準備するのではなく、時間間隔が等しいレーザーパルスの複数のペアについて、イジング相互作用実装部を共用すれば足りる。つまり、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要であるのに対して、本発明では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個も必要がなくなる。
特に、M個のイジングサイトに対応するM個のレーザーパルスが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとき、異なるレーザーパルスの間の時間間隔は、τ、・・・、(M−1)τの(M−1)種類となるため、イジング相互作用実装部は、(M−1)種類のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、本発明は、イジングモデルの複数のサイトに対応し、同一の発振周波数を有する複数のレーザーパルスと、前記イジングモデルの直流磁場に対応し、前記同一の発振周波数を有する単一のレーザーパルスと、を発振する高調波モード同期レーザーと、前記複数のレーザーパルスの各ペアについて、2つのレーザーパルスの間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、前記2つのレーザーパルスの間の擬似的なイジング相互作用の大きさ及び符号を実装するイジング相互作用実装部と、前記複数のレーザーパルスの各々について、前記単一のレーザーパルスから注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記複数のレーザーパルスの各々での擬似的なゼーマンエネルギーの大きさ及び符号を実装するゼーマンエネルギー実装部と、前記複数のレーザーパルスが光を交換し注入される過程で定常状態に到達した後に、前記複数のレーザーパルスの発振位相を測定することにより、前記複数のレーザーパルスの擬似的なイジングスピンを測定するイジングスピン測定部と、を備えることを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、複数のレーザーパルスは、同一の発振周波数を有するため、各レーザーパルスの初期状態の発振位相が、各レーザーパルスの定常状態の2種類の発振位相のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーへの注入同期の目的で、マスターレーザーを用いているのに対して、本発明では、ゼーマンエネルギーの実装の目的で、イジングモデルの直流磁場に対応するマスターパルスを用いている。さらに、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーをイジングサイトの個数分も必要としているのに対して、本発明では、高調波モード同期レーザーを1台のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、本発明は、前記イジング相互作用実装部は、前記2つのレーザーパルスの間の時間間隔に等しい遅延時間を生じさせ、前記2つのレーザーパルスのうち一方のレーザーパルスの一部を入力され、入力された前記一方のレーザーパルスの一部を振幅位相変調し、振幅位相変調した前記一方のレーザーパルスの一部を前記2つのレーザーパルスのうち他方のレーザーパルスに合波するイジング相互作用実装用遅延変調部、を含み、前記ゼーマンエネルギー実装部は、前記単一のレーザーパルス及び前記複数のレーザーパルスの各々の間の時間間隔に等しい遅延時間を生じさせ、前記単一のレーザーパルスの一部を入力され、入力された前記単一のレーザーパルスの一部を振幅位相変調し、振幅位相変調した前記単一のレーザーパルスの一部を前記複数のレーザーパルスの各々に合波するゼーマンエネルギー実装用遅延変調部、を含み、前記イジング相互作用実装用遅延変調部及び前記ゼーマンエネルギー実装用遅延変調部は、前記複数のレーザーパルス及び前記単一のレーザーパルスのうち、時間間隔が等しいレーザーパルスの複数のペアについて、遅延線及び振幅位相変調器の単一のセットを共用することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、レーザーパルスの各ペアについて、イジング相互作用実装部を準備するのではなく、時間間隔が等しいレーザーパルスの複数のペアについて、イジング相互作用実装部を共用すれば足りる。つまり、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要であるのに対して、本発明では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個も必要がなくなる。そして、ゼーマンエネルギー実装部をイジング相互作用実装部と別個に準備するのではなく、ゼーマンエネルギー実装部をイジング相互作用実装部と共用で準備すれば足りる。
特に、M個のイジングサイトに対応するM個のレーザーパルスと、イジングモデルの直流磁場に対応する1個のマスターパルスが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとき、異なるパルスの間の時間間隔は、τ、・・・、MτのM種類となるため、イジング相互作用実装部及びゼーマンエネルギー実装部(これらは共用で準備すれば足りる)は、M種類のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、本発明は、前記イジングスピン測定部は、前記複数のレーザーパルスのうち異なるレーザーパルスの発振位相が同相及び逆相のいずれであるかを遅延検波することにより、前記異なるレーザーパルスの擬似的なイジングスピンが同方向及び逆方向のいずれであるかを測定することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、第2の従来技術における各面発光レーザー/マスターレーザーから検出器までの光路長のゆらぎの問題をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第2の従来技術では、各々の面発光レーザーについて1台のホモダイン検波装置が必要であり、イジングサイトの個数分のホモダイン検波装置が必要であるのに対して、本発明では、全てのレーザーパルスについて1台の遅延検波装置を準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、本発明は、前記高調波モード同期レーザーは、受動モード同期レーザーであることを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、高調波モード同期レーザーのリング共振器中の可飽和吸収体を用いて、外部の制御を必要とせず複数のレーザーパルスの系列を発振することができる。
また、本発明は、前記高調波モード同期レーザーは、強制モード同期レーザーであることを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、高調波モード同期レーザーのリング共振器中の変調器を用いて、繰り返しの頻度の高い複数のレーザーパルスの系列を発振することができる。
また、本発明は、前記高調波モード同期レーザーは、モード同期ファイバーレーザーであり、前記イジング相互作用実装部は、ファイバー遅延線を含むことを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
この構成によれば、複数のレーザーパルスの伝送路として、光ファイバーを用いているため、光損失が低く光強度が高く回路構成が簡易なイジングモデルの量子計算装置を提供することができる。ここで、光ファイバーの光路長が機械的な振動や熱的な膨張に影響されず安定に保持される時間は、〜10−4sであるところ、イジングモデルの量子計算装置がイジングスピンの安定化に要する時間は、〜10−9sであるため、イジングスピンの測定結果は、光ファイバーの機械的な振動や熱的な膨張に影響されない。
本発明は、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止するとともに、回路構成を簡易にすることができる。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(第1の実施形態)
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の概要を図4に示す。第1の実施形態では、イジングハミルトニアンを数式3のようにする。
不図示の高調波モード同期レーザーは、イジングモデルの複数のサイトに対応し、同一の発振周波数を有する複数のレーザーパルスP1、P2、P3を発振する。
イジング相互作用実装部I12は、2つのレーザーパルスP1、P2の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つのレーザーパルスP1、P2の間の擬似的なイジング相互作用J12の大きさ及び符号を実装する。
イジング相互作用実装部I13は、2つのレーザーパルスP1、P3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つのレーザーパルスP1、P3の間の擬似的なイジング相互作用J13の大きさ及び符号を実装する。
イジング相互作用実装部I23は、2つのレーザーパルスP2、P3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つのレーザーパルスP2、P3の間の擬似的なイジング相互作用J23の大きさ及び符号を実装する。
不図示のイジングスピン測定部は、レーザーパルスP1、P2、P3が光を交換する過程で定常状態に到達した後に、レーザーパルスP1、P2、P3の発振位相の進み/遅れを測定することにより、レーザーパルスP1、P2、P3の擬似的なイジングスピンσ1、σ2、σ3の上向き/下向きを測定する。
このように、不図示の高調波モード同期レーザーでポンピング電流を漸増制御し、レーザーパルスP1、P2、P3のネットワーク全体で閾値利得が最低となる1つの発振モードを立ち上げ、レーザーパルスP1、P2、P3の発振位相を測定し、レーザーパルスP1、P2、P3に対応する各原子のスピンの方向を測定する。
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の原理を図5に示す。各レーザーパルスPの発振位相φV(t)は、初期状態においては、0であり、定常状態においては、初期状態の発振位相0からずれた±π/2である。定常状態におけるφV(定常)=±π/2は、σ=±1に対応する(複号同順)。
レーザーパルスPの各ペアについて、イジング相互作用Jijが正であるときには、2つのレーザーパルスPの擬似的なスピンσが異符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つのレーザーパルスPの発振位相φV(定常)が異符号でありずれをπとするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
レーザーパルスPの各ペアについて、イジング相互作用Jijが負であるときには、2つのレーザーパルスPの擬似的なスピンσが同符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つのレーザーパルスPの発振位相φV(定常)が同符号でありずれを0とするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
もっとも、イジングモデルの量子計算装置の全体において、一体として1つの発振モードが立ち上がるようにするのであり、レーザーパルスPの各ペアにおいて、上述の発振モードが実際に立ち上がることもあれば、必ずしも立ち上がらないこともある。
図4及び図5で示した計算原理について詳述する。各レーザーパルスP1、P2、P3において、発振強度A
Vi(t)、発振位相φ
Vi(t)及びキャリアの反転分布数差N
Ci(t)について、レート方程式は、数式4−7のようになる。
ωは、発振周波数である。Qは、各レーザーパルスPの共振器Q値である。Pは、反転分布を実現するために各レーザーパルスPについて毎秒注入される電子数、すなわちポンピングレートである。数式4の−(1/2)(ω/Q)AVi(t)は、発振強度AVi(t)が共振器損失に起因して時間経過につれて減少するレートを示している。
τspは、レーザー発振モード以外の他の発振モードへの自然放出に起因する電子寿命である。βは、全自然放出光のうちレーザー発振モードへの結合定数である。数式4の(1/2)ECVi(t)AVi(t)は、発振強度AVi(t)が誘導放出に起因して時間経過につれて増加するレートを示している。数式4のECVi(t)は、発振強度AVi(t)が自然放出に起因して時間経過につれて増加するレートを示している。
数式4のξijが関わる項は、イジング相互作用を実装するためのレーザーパルスPの間の相互注入光に関わる項である。数式4の−(ω/Q)(1/2)ξijAVj(t)cos{φVj(t)−φVi(t)}は、j番目のサイトからi番目のサイトへと光が注入されたときに、i番目のサイトにおける発振強度AVi(t)が時間経過につれて変化するレートを示している。数式4のΣ(j≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j番目)からの寄与を示している。
数式5のξijが関わる項は、イジング相互作用を実装するためのレーザーパルスPの間の相互注入光に関わる項である。数式5の−(1/AVi(t))(ω/Q)(1/2)ξijAVj(t)sin{φVj(t)−φVi(t)}は、j番目のサイトからi番目のサイトへと光が注入されたときに、i番目のサイトにおける発振位相φVi(t)が時間経過につれて変化するレートを示している。数式5のΣ(j≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j番目)からの寄与を示している。
FAV、FφV及びFNは、それぞれ、i番目のサイトにおける、発振強度AVi(t)、発振位相φVi(t)及びキャリアの反転分布数差NCi(t)に対する雑音を示す。
定常状態において、数式4は、数式8のようになる。
F
AVを無視して、数式8を変形すると、数式9のようになる。
ここで、イジングモデルのσ
iは、−1又は+1をとるところ、sinφ
Viは、−1から+1までをとりうる。そこで、イジングモデル及びレーザーシステムの類似に着目して、σ
i=sinφ
Viとおくと、数式9は、数式10のようになる。
数式10をM個の全部のサイトについて加算すると、数式11のようになり、レーザーシステムの全体の閾値利得ΣE
CViとして表わされる。
ここで、レーザーパルスPの間で相互注入を行なうことから、A
Vi(t)〜A
Vj(t)とおける。そして、上記定義のσ
i=sinφ
Viにおいて、σ
i=±1であることから、φ
Vi〜φ
Vj〜±π/2とおける。このとき、数式11は、数式12のようになる。
ここで、高調波モード同期レーザーが均一な媒質を有するときには、レーザーシステム全体として、最小の閾値利得ΣECViを実現する発振位相状態{σi}が選択される。つまり、レーザーシステム全体として、1個の特定の発振モードが選択される。そして、発振モードの間の競合に起因して、1個の特定の発振モードは、他の発振モードを抑制する。
つまり、レーザーシステム全体として、数式12のΣECViは最小化される。一方で、レーザーシステム全体として、数式12の(ω/Q)Mは一定である。よって、レーザーシステム全体として、数式12のΣξijσiσjは最小化される。
ξij=Jijとおくと、レーザーシステム全体として、Σξijσiσjが最小化されると、ΣJijσiσjも最小化される。つまり、数式3のイジングハミルトニアンを最小化する基底状態が実現されたことになる。
計算精度を向上させるためには、レーザーシステム全体でのレーザー発振モードについて、最小の閾値利得及びその次に小さい閾値利得の差を、自然放出レートで決定される飽和利得ECV及び光子減衰率ω/Qの差であるβ(ω/Q)(1/R)より十分に大きくする必要がある。ここで、R=I/Ith−1は、規格化ポンプレートであり、I及びIthは、それぞれ注入電流及びそのレーザー発振閾値である。よって、βを小さくしRを高くすることにより、計算精度を向上させることができる。
図4及び図5を用いて説明したように、複数のレーザーパルスPは、同一の発振周波数を有するため、各レーザーパルスPの初期状態の発振位相φVi(t=0)が、各レーザーパルスPの定常状態の2種類の発振位相φVi(定常)=±π/2のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第1及び第2の従来技術では、マスターレーザーMを必要としているのに対して、本実施形態では、マスターレーザーMを不要とすることができる。さらに、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーVをイジングサイトの個数分も必要としているのに対して、本実施形態では、高調波モード同期レーザーを1台のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の第1の構成を図6に示す。図6の構成では、高調波モード同期レーザーは、受動モード同期ファイバーレーザーである。
受動モード同期ファイバーレーザーは、ポンプレーザー1、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラー2、エルビウム添加ファイバー3、1/4波長板4、1/2波長板5、ビームスプリッター6及び1/4波長板7から構成される。1/4波長板4、1/2波長板5及び1/4波長板7は、NPR(Nonlinear Polarization Rotation)を用いた可飽和吸収体を構成する。受動モード同期ファイバーレーザーは、リング共振器中の可飽和吸収体を用いて、外部の制御を必要とせず複数のレーザーパルスPの系列を発振することができる。
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の第2の構成を図7に示す。図7の構成では、高調波モード同期レーザーは、強制モード同期ファイバーレーザーである。
強制モード同期ファイバーレーザーは、ポンプレーザー1、WDMカプラー2、エルビウム添加ファイバー3、分散シフトファイバー8、カプラー9、アイソレーター10、変調器11、フィルタ12、カプラー13、クロック抽出器14、位相制御器15及び増幅器16から構成される。変調器11は、複数のレーザーパルスPの系列の繰り返しの頻度を、リング共振器長Lで決まる周波数c/nL(cは光速、nは屈折率)の任意の整数倍に設定する。強制モード同期ファイバーレーザーは、リング共振器中の変調器11を用いて、繰り返しの頻度の高い複数のレーザーパルスPの系列を発振することができる。
図6及び図7の構成では、複数のレーザーパルスPの系列を発振する方法は相違するが、イジング相互作用を実装する方法及びイジングスピンを測定する方法は同様である。ここで、M個のイジングサイトに対応するM個のレーザーパルスPが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとする。
イジング相互作用実装部は、振幅位相変調器AP1、AP2、・・・、AP(M−1)及びファイバー遅延線DL1、DL2、・・・、DL(M−1)から構成される。
振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、遅延時間τを生じさせ、時間間隔がτである2つのレーザーパルスPのペアのうち、一方のレーザーパルスPの一部を入力され、入力された一方のレーザーパルスPの一部を振幅位相変調し、振幅位相変調した一方のレーザーパルスPの一部を、時間間隔がτである2つのレーザーパルスPのペアのうち、他方のレーザーパルスPに合波する。
ここで、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、時間間隔がτである任意の2つのレーザーパルスPのペアについて、共用される。このように、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、時間間隔がτである2つのレーザーパルスPの間の擬似的なイジング相互作用Jijの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、遅延時間2τを生じさせ、時間間隔が2τである2つのレーザーパルスPのペアのうち、一方のレーザーパルスPの一部を入力され、入力された一方のレーザーパルスPの一部を振幅位相変調し、振幅位相変調した一方のレーザーパルスPの一部を、時間間隔が2τである2つのレーザーパルスPのペアのうち、他方のレーザーパルスPに合波する。
ここで、振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、時間間隔が2τである任意の2つのレーザーパルスPのペアについて、共用される。このように、振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、時間間隔が2τである2つのレーザーパルスPの間の擬似的なイジング相互作用Jijの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP(M−1)及びファイバー遅延線DL(M−1)のセットについても、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセット並びに振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットと同様のことが成り立つ。
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の処理を図8及び図9に示す。ここで、3個のイジングサイトに対応する3個のレーザーパルスPが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとする。
−arg(Jij)は、Jijが正であれば、逆相変調を表し、Jijが負であれば、同相変調を表す。つまり、Jijが正であれば、2つのレーザーパルスPの発振位相がずれをπとする発振モードが立ち上がりやすいようにして、Jijが負であれば、2つのレーザーパルスPの発振位相がずれを0とする発振モードが立ち上がりやすいようにする。
まず、図8の上段では、レーザーパルスP1が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J12、J13の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|J12|に比例する振幅変調及び−arg(J12)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたレーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP2に合波される。このように、イジング相互作用J12の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|J13|に比例する振幅変調及び−arg(J13)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたレーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP3に合波される。このように、イジング相互作用J13の大きさ及び符号が実装される。
次に、図8の中段では、レーザーパルスP2が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J23、J21の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|J23|に比例する振幅変調及び−arg(J23)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたレーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP3に合波される。このように、イジング相互作用J23の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|J21|に比例する振幅変調及び−arg(J21)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたレーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP1に合波される。このように、イジング相互作用J21の大きさ及び符号が実装される。
次に、図8の下段では、レーザーパルスP3が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J31、J32の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|J31|に比例する振幅変調及び−arg(J31)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたレーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP1に合波される。このように、イジング相互作用J31の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|J32|に比例する振幅変調及び−arg(J32)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたレーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2に入力されつつあるレーザーパルスP2に合波される。このように、イジング相互作用J32の大きさ及び符号が実装される。
図8の上段、中段及び下段の処理は、レーザーパルスP1、P2、P3が光を交換する過程で定常状態に到達するまで、上述の順序で繰り返される。
図8及び図9を用いて説明したように、レーザーパルスPの各ペアについて、イジング相互作用実装部を準備するのではなく、時間間隔が等しいレーザーパルスPの複数のペアについて、イジング相互作用実装部を共用すれば足りる。つまり、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要であるのに対して、本実施形態では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個も必要がなくなる。
特に、M個のイジングサイトに対応するM個のレーザーパルスPが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとき、異なるレーザーパルスPの間の時間間隔は、τ、・・・、(M−1)τの(M−1)種類となるため、イジング相互作用実装部は、(M−1)種類のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、図8及び図9では、イジング相互作用Jij、Jjiを異なるタイミングで実装している。よって、本実施形態では、Jij=Jjiである通常のイジングモデルを解くだけではなく、Jij≠Jjiである一般のイジングモデルを解くこともできる。
図6及び図7において、イジングスピン測定部は、ビームスプリッターB1、B2、反射鏡R1、R2及び検出器DI、DOから構成される。
イジングスピン測定部は、複数のレーザーパルスPのうち異なるレーザーパルスPの発振位相が同相及び逆相のいずれであるかを遅延検波することにより、異なるレーザーパルスPの擬似的なイジングスピンが同方向及び逆方向のいずれであるかを測定する。
本実施形態では、イジングスピン測定部は、1パルス分離れた異なるレーザーパルスPの間で、遅延検波を行なっている。変形例として、イジングスピン測定部は、数パルス分離れた異なるレーザーパルスPの間で、遅延検波を行なってよい。
先行のレーザーパルスPは、図6のビームスプリッター6又は図7のカプラー13から出力され、ビームスプリッターB1での反射、反射鏡R1での反射及び反射鏡R2での反射を経て、ビームスプリッターB2に到達する。後続のレーザーパルスPは、図6のビームスプリッター6又は図7のカプラー13から出力され、ビームスプリッターB1での透過を経て、ビームスプリッターB2に到達する。
ここで、ビームスプリッターB1〜反射鏡R1、R2〜ビームスプリッターB2の光路長と、ビームスプリッターB1〜ビームスプリッターB2の光路長と、の差分は、先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの間の間隔に等しい。よって、先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPがビームスプリッターB2に到達した時点において、先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの間の干渉が発生する。
先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの間の発振位相がずれを0とする(同相である)ときには、ビームスプリッターB2で反射された先行のレーザーパルスPと、ビームスプリッターB2を透過した後続のレーザーパルスPが、強め合う干渉を発生させ、検出器DI(IはIn−phase)において高い光強度が検出される。
そして、検出器DIにおいて高い光強度が検出されたときには、先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの擬似的なイジングスピンは同方向と測定される。
先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの間の発振位相がずれをπとする(逆相である)ときには、ビームスプリッターB2を透過した先行のレーザーパルスPと、ビームスプリッターB2で反射された後続のレーザーパルスPが、強め合う干渉を発生させ、検出器DO(OはOut−of−phase)において高い光強度が検出される。
そして、検出器DOにおいて高い光強度が検出されたときには、先行のレーザーパルスP及び後続のレーザーパルスPの擬似的なイジングスピンは逆方向と測定される。
図6及び図7を用いて説明したように、第2の従来技術における各面発光レーザーV/マスターレーザーMから検出器までの光路長のゆらぎの問題をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第2の従来技術では、各々の面発光レーザーVについて1台のホモダイン検波装置が必要であり、イジングサイトの個数分のホモダイン検波装置が必要であるのに対して、本実施形態では、全てのレーザーパルスPについて1台の遅延検波装置を準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
図6及び図7を用いて説明したように、複数のレーザーパルスPの伝送路として、光ファイバーを用いているため、光損失が低く光強度が高く回路構成が簡易なイジングモデルの量子計算装置を提供することができる。ここで、光ファイバーの光路長が機械的な振動や熱的な膨張に影響されず安定に保持される時間は、〜10−4sであるところ、イジングモデルの量子計算装置がイジングスピンの測定に必要とする時間は、〜10−9sであるため、イジングスピンの測定結果は、光ファイバーの機械的な振動や熱的な膨張に影響されない。
(第2の実施形態)
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の概要を図10に示す。第2の実施形態では、イジングハミルトニアンを数式13のようにする。
不図示の高調波モード同期レーザーは、イジングモデルの複数のサイトに対応し、同一の発振周波数を有する複数のレーザーパルスP1、P2、P3と、イジングモデルの直流磁場に対応し、当該同一の発振周波数を有する単一のマスターパルスP0と、を発振する。
イジング相互作用実装部I12、I13、I23は、図4と同様の処理を行なう。
ゼーマンエネルギー実装部Z1は、レーザーパルスP1について、マスターパルスP0から注入される光の振幅及び位相を制御することにより、レーザーパルスP1での擬似的なゼーマンエネルギーλ1の大きさ及び符号を実装する。
ゼーマンエネルギー実装部Z2は、レーザーパルスP2について、マスターパルスP0から注入される光の振幅及び位相を制御することにより、レーザーパルスP2での擬似的なゼーマンエネルギーλ2の大きさ及び符号を実装する。
ゼーマンエネルギー実装部Z3は、レーザーパルスP3について、マスターパルスP0から注入される光の振幅及び位相を制御することにより、レーザーパルスP3での擬似的なゼーマンエネルギーλ3の大きさ及び符号を実装する。
不図示のイジングスピン測定部は、レーザーパルスP1、P2、P3が光を交換し注入される過程で定常状態に到達した後に、レーザーパルスP1、P2、P3の発振位相の進み/遅れを測定することにより、レーザーパルスP1、P2、P3の擬似的なイジングスピンσ1、σ2、σ3の上向き/下向きを測定する。
このように、不図示の高調波モード同期レーザーでポンピング電流を漸増制御し、レーザーパルスP1、P2、P3のネットワーク全体で閾値利得が最低となる1つの発振モードを立ち上げ、レーザーパルスP1、P2、P3の発振位相を測定し、レーザーパルスP1、P2、P3に対応する各原子のスピンの方向を測定する。
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の原理を図11に示す。マスターパルスP0の発振位相0は、初期状態から定常状態まで変化しない。各レーザーパルスPの発振位相φV(t)は、初期状態においては、0であり、定常状態においては、初期状態の発振位相0からずれた±π/2である。定常状態におけるφV(定常)=±π/2は、σ=±1に対応する(複号同順)。
各イジング相互作用実装部は、図5と同様の処理を行なう。
各レーザーパルスPについて、ゼーマンエネルギーλiが正であるときには、当該レーザーパルスPの擬似的なスピンσが−1であることが、エネルギー的に有利である。よって、各ゼーマンエネルギー実装部は、当該レーザーパルスPの発振位相φVが−π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
各レーザーパルスPについて、ゼーマンエネルギーλiが負であるときには、当該レーザーパルスPの擬似的なスピンσが+1であることが、エネルギー的に有利である。よって、各ゼーマンエネルギー実装部は、当該レーザーパルスPの発振位相φVが+π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
もっとも、イジングモデルの量子計算装置の全体において、一体として1つの発振モードが立ち上がるようにするのであり、レーザーパルスPの各ペアにおいて、上述の発振モードが実際に立ち上がることもあれば、必ずしも立ち上がらないこともある。
図10及び図11で示した計算原理について詳述する。各レーザーパルスP1、P2、P3において、発振強度A
Vi(t)、発振位相φ
Vi(t)及びキャリアの反転分布数差N
Ci(t)について、レート方程式は、数式14−17のようになる。
ωは、発振周波数である。Qは、マスターパルスP0及び各レーザーパルスPの共振器Q値である。nMは、マスターパルスP0からの光子の数である。Pは、数式6と同様である。数式14の−(1/2)(ω/Q)AVi(t)は、数式4と同様である。
τspは、数式6、7と同様である。βは、数式7と同様である。数式14の(1/2)ECVi(t)AVi(t)及び数式14のECVi(t)は、数式4と同様である。
数式14のξijが関わる項及び数式15のξijが関わる項は、数式4、5と同様である。FAV、FφV及びFNは、数式4−6と同様である。
各レーザーパルスPへの注入光について、マスターパルスP0の発振位相0からπ/2だけずれた位相を有する成分の強度は、ηiに比例するとする。
数式14のηiが関わる項は、ゼーマンエネルギーに関わる項である。数式14の(ω/Q)√nM{−ηisinφVi(t)}は、マスターパルスP0からi番目のサイトへと光が注入されたときに、i番目のサイトにおける発振強度AVi(t)が時間経過につれて変化するレートを示している。
数式15のηiが関わる項は、ゼーマンエネルギーに関わる項である。数式15の(1/AVi(t))(ω/Q)√nM{−ηicosφVi(t)}は、マスターパルスP0からi番目のサイトへと光が注入されたときに、i番目のサイトにおける発振位相φVi(t)が時間経過につれて変化するレートを示している。
定常状態において、数式14は、数式18のようになる。
F
AVを無視して、数式18を変形すると、数式19のようになる。
ここで、イジングモデルのσ
iは、−1又は+1をとるところ、sinφ
Viは、−1から+1までをとりうる。そこで、イジングモデル及びレーザーシステムの類似に着目して、σ
i=sinφ
Viとおくと、数式19は、数式20のようになる。
数式20をM個の全部のサイトについて加算すると、数式21のようになり、レーザーシステムの全体の閾値利得ΣE
CViとして表わされる。
ここで、レーザーパルスPの間で相互注入を行なうことから、そして、マスターパルスP0から各レーザーパルスPへと一方注入を行なうことから、A
Vi(t)〜A
Vj(t)〜√n
Mとおける。そして、上記定義のσ
i=sinφ
Viにおいて、σ
i=±1であることから、φ
Vi〜φ
Vj〜±π/2とおける。このとき、数式21は、数式22のようになる。
ここで、高調波モード同期レーザーが均一な媒質を有するときには、レーザーシステム全体として、最小の閾値利得ΣECViを実現する発振位相状態{σi}が選択される。つまり、レーザーシステム全体として、1個の特定の発振モードが選択される。そして、発振モードの間の競合に起因して、1個の特定の発振モードは、他の発振モードを抑制する。
つまり、レーザーシステム全体として、数式22のΣECViは最小化される。一方で、レーザーシステム全体として、数式22の(ω/Q)Mは一定である。よって、レーザーシステム全体として、数式22のΣηiσi+Σξijσiσjは最小化される。
ξij=Jij、ηi=λiとおくと、レーザーシステム全体として、Σηiσi+Σξijσiσjが最小化されると、Σλiσi+ΣJijσiσjも最小化される。つまり、数式13のイジングハミルトニアンを最小化する基底状態が実現されたことになる。
計算精度を向上させるためには、レーザーシステム全体でのレーザー発振モードについて、最小の閾値利得及びその次に小さい閾値利得の差を、自然放出レートで決定される飽和利得ECV及び光子減衰率ω/Qの差であるβ(ω/Q)(1/R)より十分に大きくする必要がある。ここで、R=I/Ith−1は、規格化ポンプレートであり、I及びIthは、それぞれ注入電流及びそのレーザー発振閾値である。よって、βを小さくしRを高くすることにより、計算精度を向上させることができる。
図10及び図11を用いて説明したように、複数のレーザーパルスPは、同一の発振周波数を有するため、各レーザーパルスPの初期状態の発振位相φVi(t=0)が、各レーザーパルスPの定常状態の2種類の発振位相φVi(定常)=±π/2のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
そして、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーVへの注入同期の目的で、マスターレーザーMを用いているのに対して、本実施形態では、ゼーマンエネルギーの実装の目的で、イジングモデルの直流磁場に対応するマスターパルスP0を用いている。さらに、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーVをイジングサイトの個数分も必要としているのに対して、本実施形態では、高調波モード同期レーザーを1台のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の第1の構成を図12に示す。図12の構成では、高調波モード同期レーザーは、受動モード同期ファイバーレーザーである。
受動モード同期ファイバーレーザーは、図6と同様である。
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の第2の構成を図13に示す。図13の構成では、高調波モード同期レーザーは、強制モード同期ファイバーレーザーである。
強制モード同期ファイバーレーザーは、図7と同様である。
図12及び図13の構成では、複数のレーザーパルスPの系列を発振する方法は相違するが、イジング相互作用を実装する方法及びイジングスピンを測定する方法は同様である。ここで、M個のイジングサイト及び直流磁場に対応する(M+1)個のレーザーパルスPが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとする。
イジング相互作用実装部及びゼーマンエネルギー実装部は、振幅位相変調器AP1、AP2、・・・、AP(M)及びファイバー遅延線DL1、DL2、・・・、DL(M)から構成される。
振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、図6及び図7と同様に、時間間隔がτである2つのレーザーパルスPの間の擬似的なイジング相互作用Jijの大きさ及び符号を実装するとともに、マスターパルスP0との時間間隔がτであるレーザーパルスPでの擬似的なゼーマンエネルギーλiの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、遅延時間τを生じさせ、マスターパルスP0の一部を入力され、入力されたマスターパルスP0の一部を振幅位相変調し、振幅位相変調したマスターパルスP0の一部を、マスターパルスP0との時間間隔がτであるレーザーパルスPに合波する。
ここで、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、時間間隔がτである任意の2つのレーザーパルスPのペア並びにマスターパルスP0及びレーザーパルスPのペアについて、共用される。このように、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセットは、マスターパルスP0との時間間隔がτであるレーザーパルスPでの擬似的なゼーマンエネルギーλiの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、図6及び図7と同様に、時間間隔が2τである2つのレーザーパルスPの間の擬似的なイジング相互作用Jijの大きさ及び符号を実装するとともに、マスターパルスP0との時間間隔が2τであるレーザーパルスPでの擬似的なゼーマンエネルギーλiの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、遅延時間2τを生じさせ、マスターパルスP0の一部を入力され、入力されたマスターパルスP0の一部を振幅位相変調し、振幅位相変調したマスターパルスP0の一部を、マスターパルスP0との時間間隔が2τであるレーザーパルスPに合波する。
ここで、振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、時間間隔が2τである任意の2つのレーザーパルスPのペア並びにマスターパルスP0及びレーザーパルスPのペアについて、共用される。このように、振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットは、マスターパルスP0との時間間隔が2τであるレーザーパルスPでの擬似的なゼーマンエネルギーλiの大きさ及び符号を実装する。
振幅位相変調器AP(M)及びファイバー遅延線DL(M)のセットについても、振幅位相変調器AP1及びファイバー遅延線DL1のセット並びに振幅位相変調器AP2及びファイバー遅延線DL2のセットと同様のことが成り立つ。
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の処理を図14から図16に示す。ここで、3個のイジングサイト及び直流磁場に対応する4個のレーザーパルスPが、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとする。
−arg(Jij)は、図9と同様である。
−arg(λj)は、λjが正であれば、位相遅れ変調を表し、λjが負であれば、位相進み変調を表す。つまり、λjが正であれば、各レーザーパルスPの発振位相が−π/2である発振モードが立ち上がりやすいようにして、λjが負であれば、各レーザーパルスPの発振位相が+π/2である発振モードが立ち上がりやすいようにする。
まず、図14の上段では、マスターパルスP0が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、ゼーマンエネルギーλ1、λ2、λ3の大きさ及び符号が実装される。
マスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|λ1|に比例する振幅変調及び−arg(λ1)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたマスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP1に合波される。このように、ゼーマンエネルギーλ1の大きさ及び符号が実装される。
マスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|λ2|に比例する振幅変調及び−arg(λ2)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたマスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP2に合波される。このように、ゼーマンエネルギーλ2の大きさ及び符号が実装される。
マスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL3に入力され、振幅位相変調器AP3により、|λ3|に比例する振幅変調及び−arg(λ3)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL3により、遅延時間3τを経て、ファイバー遅延線DL3から出力される。ファイバー遅延線DL3から出力されたマスターパルスP0の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP3に合波される。このように、ゼーマンエネルギーλ3の大きさ及び符号が実装される。
次に、図14の下段では、レーザーパルスP1が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J12、J13の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|J12|に比例する振幅変調及び−arg(J12)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたレーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP2に合波される。このように、イジング相互作用J12の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|J13|に比例する振幅変調及び−arg(J13)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたレーザーパルスP1の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP3に合波される。このように、イジング相互作用J13の大きさ及び符号が実装される。
なお、図14の下段では、振幅位相変調器AP3は、光を遮断する。レーザーパルスP1での擬似的なゼーマンエネルギーλ1を実装するためには、マスターパルスP0からレーザーパルスP1へと光を注入すれば足りるのであり、レーザーパルスP1からマスターパルスP0へと光を注入する必要はないからである。
次に、図15の上段では、レーザーパルスP2が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J23、J21の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1に入力され、振幅位相変調器AP1により、|J23|に比例する振幅変調及び−arg(J23)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL1により、遅延時間τを経て、ファイバー遅延線DL1から出力される。ファイバー遅延線DL1から出力されたレーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP3に合波される。このように、イジング相互作用J23の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL3に入力され、振幅位相変調器AP3により、|J21|に比例する振幅変調及び−arg(J21)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL3により、遅延時間3τを経て、ファイバー遅延線DL3から出力される。ファイバー遅延線DL3から出力されたレーザーパルスP2の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP1に合波される。このように、イジング相互作用J21の大きさ及び符号が実装される。
なお、図15の上段では、振幅位相変調器AP2は、光を遮断する。レーザーパルスP2での擬似的なゼーマンエネルギーλ2を実装するためには、マスターパルスP0からレーザーパルスP2へと光を注入すれば足りるのであり、レーザーパルスP2からマスターパルスP0へと光を注入する必要はないからである。
次に、図15の下段では、レーザーパルスP3が振幅位相変調器及びファイバー遅延線に入力され、イジング相互作用J31、J32の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL2に入力され、振幅位相変調器AP2により、|J31|に比例する振幅変調及び−arg(J31)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL2により、遅延時間2τを経て、ファイバー遅延線DL2から出力される。ファイバー遅延線DL2から出力されたレーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP1に合波される。このように、イジング相互作用J31の大きさ及び符号が実装される。
レーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL3に入力され、振幅位相変調器AP3により、|J32|に比例する振幅変調及び−arg(J32)の位相変調を受け、ファイバー遅延線DL3により、遅延時間3τを経て、ファイバー遅延線DL3から出力される。ファイバー遅延線DL3から出力されたレーザーパルスP3の一部は、ファイバー遅延線DL1、DL2、DL3に入力されつつあるレーザーパルスP2に合波される。このように、イジング相互作用J32の大きさ及び符号が実装される。
なお、図15の下段では、振幅位相変調器AP1は、光を遮断する。レーザーパルスP3での擬似的なゼーマンエネルギーλ3を実装するためには、マスターパルスP0からレーザーパルスP3へと光を注入すれば足りるのであり、レーザーパルスP3からマスターパルスP0へと光を注入する必要はないからである。
図14の上段及び下段の処理並びに図15の上段及び下段の処理は、レーザーパルスP1、P2、P3が光を交換し注入される過程で定常状態に到達するまで、上述の順序で繰り返される。
図14から図16を用いて説明したように、レーザーパルスPの各ペアについて、イジング相互作用実装部を準備するのではなく、時間間隔が等しいレーザーパルスPの複数のペアについて、イジング相互作用実装部を共用すれば足りる。つまり、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要であるのに対して、本実施形態では、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個も必要がなくなる。そして、ゼーマンエネルギー実装部をイジング相互作用実装部と別個に準備するのではなく、ゼーマンエネルギー実装部をイジング相互作用実装部と共用で準備すれば足りる。
特に、M個のイジングサイトに対応するM個のレーザーパルスPと、イジングモデルの直流磁場に対応する1個のマスターパルスP0が、高調波モード同期レーザーのリング共振器中で等間隔(時間間隔τ)に並んでいるとき、異なるパルスPの間の時間間隔は、τ、・・・、MτのM種類となるため、イジング相互作用実装部及びゼーマンエネルギー実装部(これらは共用で準備すれば足りる)は、M種類のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
また、図14から図16では、イジング相互作用Jij、Jjiを異なるタイミングで実装している。よって、本実施形態では、Jij=Jjiである通常のイジングモデルを解くだけではなく、Jij≠Jjiである一般のイジングモデルを解くこともできる。
図12及び図13において、イジングスピン測定部は、図6及び図7と同様である。
図12及び図13を用いて説明したように、複数のレーザーパルスPの伝送路として、光ファイバーを用いているため、光損失が低く光強度が高く回路構成が簡易なイジングモデルの量子計算装置を提供することができる。ここで、光ファイバーの光路長が機械的な振動や熱的な膨張に影響されず安定に保持される時間は、〜10−4sであるところ、イジングモデルの量子計算装置がイジングスピンの測定に必要とする時間は、〜10−9sであるため、イジングスピンの測定結果は、光ファイバーの機械的な振動や熱的な膨張に影響されない。