しかしながら、特許文献1の分岐サドル継手では、不断水分岐を行う場合、図18に示すように、本管の穿孔後には止水部材1の外周面と分岐部本体2の内周面との間から浸入してくる水によってキャップ3の天壁下面全体に内水圧がかかり、この内水圧によってキャップ3が持ち上げられる。たとえば、キャップ3の天壁下面の径が46mmの場合、内水圧が作用する面積S1は約1660mm2となり、内水圧が1MPaとすると、約1660Nのキャップ3を持ち上げる力(スラスト力)が作用する。このため、キャップ3を分岐部本体2の上端開口に取り付ける際には、大きな締め付け力が必要であり、キャップ3を適切に装着することが困難となる。特に、たとえば、キャップ3の操作を工具等を用いず、手の力のみで操作したときは、水圧の力を締め付けが完了したと勘違いして操作を終えることで、適切に止水できない恐れがある。つまり、変動する水圧に対して、キャップを操作したときの水圧よりも内水圧が高くなったときに、キャップから漏水する恐れがある。また、キャップ3を持ち上げる大きな力が作用していると、ねじ部5,6同士が圧接してしまうので、キャップ3を取り外すことも困難となる。
一方、特許文献2の分岐継手では、分岐筒部の上端部内周面の周溝に装着されたOリングによって、分岐筒部の内周面とシールプラグの外周面との間が止水されるので、不断水分岐を行う場合にも、内水圧を受けることなく分岐筒部の上端開口にシールキャップを装着することができる。しかしながら、分岐筒部の上端部内周面の周溝にOリングを予め装着しておくと、Oリングがシールプラグと接触するときに生じる抵抗力によって、シールプラグの移動時には大きな操作力が必要となる。つまり、分岐筒部内におけるシールプラグの移動が困難となる。また、プラグ部品の移動時には、Oリングに対して周方向に大きな負荷がかかるので、Oリングが捩れたり撓んだりして不適切に変形してしまい、Oリングの止水性が損なわれてしまう恐れもある。
また、シールキャップに対して保持体を取り付けるタイプの特許文献2の分岐継手では、シールプラグの外周面と分岐筒部の内周面との間から浸入してくる水によって保持体の下面全体に内水圧がかかり、この内水圧によってシールキャップを持ち上げる大きな力が作用する。このため、特許文献1の分岐サドル継手と同様に、シールキャップの着脱が困難となる。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管の分岐方法およびそれに用いる分岐サドル継手を提供することである。
この発明の他の目的は、キャップの着脱が容易であってかつプラグ部品の移動が容易である、管の分岐方法およびそれに用いる分岐サドル継手を提供することである。
第1の発明は、分岐サドル継手を用いて合成樹脂製の本管から分岐を取り出す管の分岐方法であって、(a)分岐サドル継手のサドル部を本管の外周面に電気融着接合するステップ、(b)ステップ(a)の後、分岐サドル継手の分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置するステップ、(c)ステップ(b)の後、分岐部本体の上端開口をキャップで封止するときに、キャップ内に配置される止水部品に対してキャップから押下力を与えて、止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水するステップを含む、管の分岐方法である。
第1の発明では、分岐サドル継手を用いて合成樹脂製の本管から分岐を不断水分岐によって取り出す。先ず、ステップ(a)では、分岐サドル継手のサドル部を本管の外周面に電気融着接合することによって、本管に対して分岐サドル継手を取り付ける。続くステップ(b)では、分岐サドル継手の分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置する。その後、ステップ(c)において、分岐部本体の上端開口をキャップで封止する。そしてこのとき、キャップ内に配置される止水部品に対してキャップから押下力を与えて、止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水する。
このように、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水する、すなわち、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置する際には、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間にはOリング等の止水部品が介在しないようにすることによって、分岐部本体内におけるプラグ部品の移動が容易となる。また、止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水することによって、キャップに作用する内水圧の面積が小さくなるので(図11および図18参照)、キャップの着脱が容易となる。
第1の発明によれば、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、キャップから止水部品に押下力を与え、この止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップの着脱が容易となってキャップを確実かつ適切に操作できるようになり、かつプラグ部品の移動も容易となる。
第2の発明は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、分岐孔を有するサドル部、分岐孔の周縁部から立ち上がる分岐部本体、分岐部本体から側方に突き出す分岐管接続部、分岐部本体の上端開口を封止する有頂円筒状のキャップ、分岐部本体の内周面に形成される雌ねじ部、雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を有し、雌ねじ部との螺合によって分岐部本体内に上下動可能に設けられるプラグ部品、およびキャップ内に設けられ、プラグ部品を分岐部本体の上端部内に配置した後に、キャップから押下力を受けてプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水する止水部品を備える、分岐サドル継手である。
第2の発明では、分岐サドル継手は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外面に電気融着接合される継手であり、本管と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成されるサドル部、分岐部本体および分岐管接続部を備える。分岐部本体の上端部には、その上端開口を封止するキャップが取り付けられ、分岐部本体内には、プラグ部品が設けられる。プラグ部品は、その外周面に形成される雄ねじ部と分岐部本体の内周面に形成される雌ねじ部との螺合によって、分岐部本体内を上下動可能とされる。そして、キャップ内には、止水部品が設けられる。止水部品は、プラグ部品を分岐部本体の上端部内に配置した後に、キャップから押下力を受けてプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水する。
この分岐サドル継手では、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水する、すなわち、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置する際には、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間にはOリング等の止水部品が介在しないようにするので、分岐部本体内におけるプラグ部品の移動が容易となる。また、止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップに作用する内水圧の面積が小さくなり(図11および図18参照)、キャップの着脱が容易となる。
第2の発明によれば、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、キャップから止水部品に押下力を与え、この止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップの着脱が容易となってキャップを確実かつ適切に操作できるようになり、かつプラグ部品の移動も容易となる。
第3の発明は、第2の発明に従属し、雌ねじ部および雄ねじ部よりも上の位置に形成される、分岐部本体の内周面およびプラグ部品の外周面をその内側面とする環状溝を備え、止水部品は、短円筒状の部品本体と部品本体に設けられる止水部材とを含み、止水部材が環状溝内に嵌め込まれることによって、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間が止水される。
第3の発明では、雌ねじ部および雄ねじ部よりも上の位置において、分岐部本体の内周面およびプラグ部品の外周面をその内側面とする所定深さの環状溝が形成される。また、止水部品は、短円筒状の部品本体を備え、部品本体には、合成ゴム等の弾性材によって形成される止水部材が設けられる。そして、キャップから止水部品が押下力を受けることによって、止水部材が環状溝内に嵌め込まれ、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間が止水される。
第3の発明によれば、所定の深さを有する環状溝内に止水部材を嵌め込んで止水するので、止水部品による止水機能が発揮されるポイントに幅を持たせることができる、つまりキャップの締め込みに適正範囲を持たせることができる。したがって、仮にキャップを完全に締め付けることができなくても、止水部品による止水機能を適切に発揮させることができるようになる。
第4の発明は、第3の発明に従属し、部品本体には、水抜孔が形成される。
第4の発明では、止水部品の部品本体には、止水部品の内部と外部とを連通する水抜孔が形成される。
第4の発明によれば、止水部品の内部に水が入り込んだ水を水抜孔から止水部品の外部に排出できるので、キャップに作用する内水圧の面積が大きくなることを防止できる。
第5の発明は、第2ないし第4のいずれかの発明に従属し、分岐部本体の外周面に形成される第2雄ねじ部、およびキャップの内周面に形成されて第2雄ねじ部に螺合する第2雌ねじ部を備え、第2雄ねじ部または第2雌ねじ部には、軸方向に延びる水抜溝が形成される。
第5の発明では、分岐部本体の第2雄ねじ部またはキャップの第2雌ねじ部の少なくとも一方に対して1または複数の水抜溝が形成される。水抜溝は、たとえば、雄ねじ部または雌ねじ部の周方向の一部が切り欠かれることによって形成され、分岐部本体またはキャップの軸方向に延びる。
第5の発明によれば、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からの漏水量が多い場合でも、キャップ内から外部に適切に水を排出することができ、キャップの締め付けに必要な締付トルクが上昇してしまうことを防止できる。
第6の発明は、第2ないし第5のいずれかの発明に従属し、止水部品は、キャップに対して周方向に回転可能に取り付けられる。
第6の発明では、キャップに対して止水部品が周方向に回転可能に設けられる。このため、キャップを分岐部本体に装着するときには、キャップは回転するが、止水部品は回転することなくプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することとなる。
第6の発明によれば、止水部品とプラグ部品の外周面および分岐部本体の内周面との間の摩擦力を小さくできるので、キャップの装着がより容易となる。また、止水部品の大きさに対して一回り以上大きなキャップを操作することになるので、力が掛け易く、大きなトルクを発生させることができる。
第7の発明は、第6の発明に従属し、キャップの内周面に形成される周方向に不等間隔に分散して配置される複数の突起状の係止部、および止水部品に形成されて突起状の係止部と係合する鍔状の係止部を備え、止水部品の鍔状の係止部は、突起状の係止部と対応する位置に配置される複数の挿通溝を有する。
第7の発明では、キャップの内周面には、周方向に不等間隔に分散して配置される複数の突起状の係止部が形成される。一方、止水部品には、キャップの係止部と係合する鍔状の係止部が形成され、この鍔状の係止部には、キャップの係止部のそれぞれと対応する周方向位置において、厚み方向(軸方向)に延びる挿通溝が形成される。
止水部品をキャップに取り付けるときには、キャップの係止部の位置と止水部品の挿通溝の位置と一致させ、挿通溝内にキャップの係止部を通すようにして止水部品をキャップ内に取り付ける。そして、キャップ内で止水部品を少し回転させることによって、キャップの係止部の位置と止水部品の挿通溝の位置とをずらし、キャップおよび止水部品の係止部同士を係合させる。
第7の発明によれば、キャップに対する止水部品の取付作業(一体化作業)を容易に行うことができる。また、キャップの係止部およびそれに対応する止水部品の挿通溝を不等間隔で配置するによって、キャップからの止水部品の意図しない離脱が生じる可能性を低減できる。
第8の発明は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、分岐孔を有するサドル部、分岐孔の周縁部から立ち上がる分岐部本体、分岐部本体から側方に突き出す分岐管接続部、分岐部本体の上端開口を封止する有頂円筒状のキャップ、分岐部本体の内周面に形成される雌ねじ部、雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を有し、雌ねじ部との螺合によって分岐部本体内に上下動可能に設けられるプラグ部品、雌ねじ部および雄ねじ部よりも上の位置に形成される、分岐部本体の内周面およびプラグ部品の外周面をその内側面とする環状溝、およびキャップ内に設けられ、キャップに対して周方向に回転可能に取り付けられる止水部品を備え、止水部品は、短円筒状の部品本体と部品本体に設けられる止水部材とを含み、プラグ部品を分岐部本体の上端部内に配置した後に、キャップから押下力を受けて止水部材が環状溝内に嵌め込まれることによってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水する、分岐サドル継手である。
第8の発明では、分岐サドル継手は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外面に電気融着接合される継手であり、本管と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成されるサドル部、分岐部本体および分岐管接続部を備える。分岐部本体の上端部には、その上端開口を封止するキャップが取り付けられ、分岐部本体内には、プラグ部品が設けられる。プラグ部品は、その外周面に形成される雄ねじ部と分岐部本体の内周面に形成される雌ねじ部との螺合によって、分岐部本体内を上下動可能とされる。また、雌ねじ部および雄ねじ部よりも上の位置において、分岐部本体の内周面およびプラグ部品の外周面をその内側面とする所定深さの環状溝が形成される。さらに、キャップ内には、キャップに対して周方向に回転可能に取り付けられる止水部品が設けられる。止水部品は、短円筒状の部品本体を備え、部品本体には、合成ゴム等の弾性材によって形成される止水部材が設けられる。この止水部品は、プラグ部品を分岐部本体の上端部内に配置した後に、キャップから押下力を受けることによって、止水部材が環状溝内に嵌め込まれてプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を押圧することにより、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間からプラグ部品上方への漏水を止水する。
この分岐サドル継手では、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水する、すなわち、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置する際には、プラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間にはOリング等の止水部品が介在しないようにするので、分岐部本体内におけるプラグ部品の移動が容易となる。また、止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップに作用する内水圧の面積が小さくなり(図11および図18参照)、キャップの着脱が容易となる。
第8の発明によれば、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、キャップから止水部品に押下力を与え、この止水部品が有する止水部材によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップの着脱が容易となってキャップを確実かつ適切に操作できるようになり、かつプラグ部品の移動も容易となる。
また、所定の深さを有する環状溝内に止水部材を嵌め込んで止水するので、止水部品による止水機能が発揮されるポイントに幅を持たせることができる、つまりキャップの締め込みに適正範囲を持たせることができる。したがって、仮にキャップを完全に締め付けることができなくても、止水部品による止水機能を適切に発揮させることができる。
さらに、キャップに対して止水部品が周方向に回転可能に設けられているので、キャップを分岐部本体に装着するときには、キャップは回転するが、止水部品は回転することなく止水部材が環状溝内に押し込まれていくこととなる。これにより、止水部材と環状溝との間の摩擦力を小さくできるので、小さい力で容易に環状溝内に止水部材を嵌め込むことができる。したがって、キャップの装着が容易となる。同様に、キャップの取り外しも容易となる。また、止水部品の大きさに対して一回り以上大きなキャップを操作することになるので、力が掛け易く、大きなトルクを発生させることができる。
この発明によれば、分岐部本体の上端部内にプラグ部品を配置した後に、キャップから止水部品に押下力を与え、この止水部品によってプラグ部品の外周面と分岐部本体の内周面との間を止水するので、キャップの着脱が容易となってキャップを確実かつ適切に操作できるようになると共に、プラグ部品の移動も容易となる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この発明の一実施例である分岐サドル継手10は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される水道配水管の本管100から分岐管102を取り出す際に、本管100の外周面に電気融着接合されるEF(エレクトロフュージョン)サドル継手である。なお、分岐サドル継手10は、基本的には水道配水管を不断水分岐するための継手であるが、不断水分岐に用いることに限定されず、たとえば、新規に敷設する水道配水管の断水状態での分岐や、下水管やガス管などの分岐に用いることも可能である。
以下、図1−図6を適宜参照して、分岐サドル継手10の全体構成について説明する。図1−図3に示すように、分岐サドル継手10は、本管100と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成される、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16などを備える。この実施例では、サドル部12、分岐部本体14および分岐管接続部16のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
サドル部12は、本管100の外径曲率とほぼ同じ内径曲率を有する半円筒状の板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔18が形成される。サドル部12の内径は、たとえば60mmである。また、サドル部12の軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば8mmである。
サドル部12の裏面側、すなわち本管100との接合面側には、分岐孔18を中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置された電熱線20が埋設される。電熱線20の両端部は、サドル部12の表面から突出して形成される電源接続端子22に接続されており、この電源接続端子22を電源に接続して電熱線20に電流を流すことによって、サドル部12および本管100の接合面の樹脂が加熱溶融される。
また、分岐孔18の周縁部には、サドル部12の径方向外側(上方)に向かって立ち上がる短管状の分岐部本体14が形成される。分岐部本体14の内径は、たとえば30mmである。分岐部本体14の略中央部には、側方に突出する短管状の分岐管接続部16が形成され、この分岐管接続部16に継手などを介して分岐管102が接続される。分岐管接続部16の内径は、たとえば22mmである。
図4および図5からよく分かるように、分岐部本体14の内周面には、上端部および下端部を除いてその全体に雌ねじ部24が形成される。また、分岐部本体14の内周面上端部は、雌ねじ部24から段差状に少し拡径して窪んでおり、そこに非ねじ部26が形成される。非ねじ部26は、ねじが切られていない所謂ストレート部分であり、雌ねじ部24の上側に連続して形成される。非ねじ部26の径は、たとえば35mmである。また、非ねじ部26の上端縁、つまり分岐部本体14の内周面上端縁には、後述する止水部品64の下端部(止水部材68)を受容し易いようにテーパ面26aが形成される。
また、分岐部本体14の内部には、プラグ部品28が軸方向(上下方向)に移動可能に設けられる。この実施例では、プラグ部品28は、本管100に対してサドル部12の分岐孔18と連通する開口30(図1参照)を穿孔するための穿孔刃が一体化された穿孔プラグであって、金属製のカッタ部32と合成樹脂製のプラグ本体34とを含む。
カッタ部32は、ステンレス鋼(たとえばSUS304)等の金属によって円筒状に形成され、その下端部は下方に向かって鋭利となる形状に形成されている。また、プラグ本体34は、ポリアセタールおよびポリカーボネート等の合成樹脂によって円柱状に形成される。カッタ部32の上部は、プラグ本体34の壁内部に埋め込まれており、カッタ部32およびプラグ本体34は、インサート成形などによって一体化されている。
プラグ本体34の外周面には、上端部を除いてその全体に雌ネジ部24と螺合する雄ねじ部36が形成される。また、プラグ本体34の上端部には、回転工具と係合する六角穴などの回転工具係合部(図示せず)が形成される。回転工具を用いてプラグ本体34に回転力を与えると、プラグ部品28は、雌ネジ部24と雄ネジ部36との螺合によって分岐部本体14内を軸方向に移動する。つまり、分岐部本体14内において、プラグ部品28の軸方向位置は自由に調整できる。なお、プラグ部品28は、詳細は後述するように、本管100を穿孔して開口30を形成するときに、分岐部本体14内を下向きに螺進される。そして、本管100に開口30を形成した後には、プラグ部品28は、本管100から分岐管102に流れ込む水と干渉しないように、分岐部本体14内を上向きに螺進されて分岐部本体14の上端部内に配置される。この際には、プラグ部品28の上端面と分岐部本体14の上端面とが略面一となるようにされる。
また、プラグ本体34の外周面上端部は、雄ねじ部36から段差状に少し縮径して窪んでおり、そこに非ねじ部38が形成される。非ねじ部38は、ねじが切られていない所謂ストレート部分であり、雄ねじ部36の上側に連続して形成される。非ねじ部38の径は、たとえば29mmである。さらに、プラグ本体34の非ねじ部38の上端縁、つまりプラグ部品28の外周面上端縁にも、後述する止水部品64の下端部を受容し易いようにテーパ面38aが形成される。
ここで、プラグ本体34の非ねじ部38は、プラグ部品28を分岐部本体14の上端部内(上昇位置)に配置したときには、分岐部本体14の非ねじ部26と共に環状溝40の内側面を構成する。つまり、プラグ部品28を分岐部本体14の上端部内に配置したとき、雌ねじ部24および雄ねじ部36よりも上の位置には、分岐部本体14の内周面およびプラグ部品28の外周面をその内側面とする所定深さの環状溝40が形成される。環状溝40の幅、つまり非ねじ部26,38間の距離は、たとえば3mmであり、環状溝40の深さ、つまり非ねじ部26,38の軸方向長さは、たとえば15mmである。
また、分岐部本体14の外周面上端部には、雄ねじ部(第2雄ねじ部)42が形成される。この雄ねじ部42よりも上方の分岐部本体の外周面には、雄ねじ部42から段差状に少し縮径した非ねじ部44が形成される。また、非ねじ部44の中央部には周溝46が形成され、この周溝46にはOリング(止水部材)48が装着される。
さらに、図4および図6からよく分かるように、分岐部本体14の上端部には、その上端開口を封止するためのキャップ50が装着される。キャップ50は、分岐部本体14などと同種の合成樹脂(この実施例ではポリエチレン)によって、側壁52および天壁54を含む有頂円筒状に形成される。側壁52の軸方向の長さは、たとえば45mmであり、その外径は、たとえば75mmである。
側壁52の内周面下部には、分岐部本体14の雄ねじ部42と螺合する雌ねじ部(第2雌ねじ部)56が形成されており、側壁52の雌ねじ部56を分岐部本体14の雄ねじ部42に螺合させてキャップ50を下方に締め込んでいくことによって、分岐部本体14の上端部にキャップ50が装着される。また、側壁52の内周面上部には、雌ねじ部56から段差状に少し縮径した非ねじ部58が形成される。この非ねじ部58は、分岐部本体14にキャップ50が適切に装着されたときにOリング48に押し当てられ、Oリング48を圧縮する。
さらに、非ねじ部58の上部には、係止部60が形成される。係止部60は、非ねじ部58から内方に突出して周方向の全長に亘って延びる環状の突起であり、後述する止水部品64をキャップ50に対して回転可能に固定する際に利用される。
また、キャップ50の天壁54上面には、表示部62が設けられる(図2参照)。表示部62は、天壁54上面にシールを張り付けたり直接印字したりすること等によって設けられ、たとえば分岐管接続部16の向きを基準として、キャップ50が所定の締め込み状態に達したときのキャップ50の回転向きを示す指標として使用される。具体的には、表示部62は、止水性が適切に発揮されるキャップ50の回転向き(締め込み状態)の適正範囲(止水許容範囲)や、キャップ50が最下位置に達してこれ以上の締め込みは不要となる締込完了位置などを示す。作業者は、この表示部62を参考にしてキャップ50の締め込み作業を行うことにより、キャップ50の締め込み不足や過剰の締め込みを起こすことなく、適切にキャップ50を分岐部本体14に装着することができる。
また、図4および図6からよく分かるように、キャップ50の内部には、止水部品64が周方向に回転可能に設けられる。止水部品64は、詳細は後述するように、プラグ部品28を分岐部本体14の上端部内に配置した後に、キャップ50から押下力を受けて、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間からの漏水を止水する部品である。
以下、図7−図9を参照して、止水部品64の構成について具体的に説明する。図7に示すように、止水部品64は、部品本体66および止水部材68を含み、部品本体66の下部に止水部材64を取り付けることによって、全体として短円筒状に形成される。
図8に示すように、部品本体66は、短円筒状に形成される側壁70を含み、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂、またはステンレス等の金属などの硬質材によって形成される。なお、部品本体66の材質は、硬質材であれば特に限定されないが、キャップ50の材質とは異なる材質で形成されることが好ましい。これは、異なる材質で形成することによって、同じ材質で形成することと比較してキャップ50と部品本体66との摩擦力を低減でき、キャップ50内で止水部品64が回転し易くなるからである。この実施例では、部品本体66は、ポリ塩化ビニルによって形成される。
部品本体66の側壁70外周面には、周方向に並ぶ複数(この実施例では4つ)の角丸矩形状の嵌合突起72が形成される。側壁70の大きさは、上述の環状溝40に適切に入り込むことができる大きさに設定され、その軸方向長さは、たとえば7mmである。また、側壁70の内径は、たとえば30mmであり、嵌合突起72を含む側壁70の肉厚は、たとえば2mmである。
また、側壁70上端には、外方に突出する鍔部74が形成され、鍔部74の側面には、その上部からさらに外方に突出する環状(鍔状)の係止部76が形成される。さらに、部品本体66には、水抜孔78が形成される。水抜孔78は、止水部品64によってプラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間を止水するとき、万一、止水部品64の内部に水が入り込んでしまった場合に、止水部品64の外部に水を逃がすための通路である。この実施例では、水抜孔78は、鍔部74上面を放射状に延びる放射溝およびそれらの中央部分を連結する周方向溝を含む溝78aと、鍔部74を上下方向に連通する連通孔78bとによって形成される。ただし、水抜孔78の形成位置や形状などは、適宜変更可能であり、たとえば側壁70を連通するように水抜孔78を形成することもできる。
また、図9に示すように、止水部材68は、略円形の断面を有するリング状に形成される止水リング80を含み、NBRおよびEPBM等の合成ゴムまたはエラストマ等の弾性材によって形成される。止水リング80の肉厚(断面径)は、たとえば4mmである。また、止水リング80の上端には、上方に延びる短円筒状の装着部82が形成され、この装着部82には、周方向に並ぶ複数(この実施例では4つ)の角丸矩形状の嵌合孔84が形成される。
部品本体66に止水部材68を取り付けるときには、止水部材68の装着部82内に部品本体66の側壁70を嵌め込むと共に、嵌合突起72と嵌合孔84とを嵌合させる。これによって、部品本体66に対して止水部材68が固定的に取り付けられ、下端部に止水リング80が設けられた止水部品64となる(図7参照)。一方、このような止水部品64をキャップ50内に取り付けるときには、止水部品64の係止部76がキャップ50の係止部60を乗り越えるように、止水部品64をキャップ50の下方から無理嵌めし、係止部60,76同士を係合させる。これによって、キャップ50に対して止水部品64が周方向に回転可能に一体化される(図6参照)。
なお、止水リング80とキャップ50の非ねじ部58下端との高低差(高さ位置の差)は、Oリング48とテーパ面26a,38aとの高低差よりも小さく設定され、後述するように、キャップ50を分岐部本体14に装着するとき、Oリング48と非ねじ部58下端とが当接する前に、止水リング80とテーパ面26a,38aとが当接するようにされる(図10参照)。
続いて、このような分岐サドル継手10を用いて、不断水分岐によって本管100から分岐を取り出す管の分岐方法について説明する。
先ず、本管100に対して分岐サドル継手10を電気融着接合する。具体的には、本管100の所望の位置に分岐サドル継手10を載置し、クランプ等の固定具(図示せず)を使用して、本管100外周面とサドル部12内周面とが密着するように固定する。そして、サドル部12内に埋設した電熱線20に通電して発熱させ、本管100外周面とサドル部12内周面とを融着接合する。その後、分岐サドル継手10の分岐管接続部16に対して分岐管102を接続する。
次に、本管100を穿孔して開口30を形成する。具体的には、プラグ部品28のプラグ本体34の回転工具係合部に回転工具の端部を挿し込んで、回転工具によってプラグ本体34を回転させることによりプラグ部品28を下降させ、プラグ部品28のカッタ部32によって本管100を穿孔していく。カッタ部32の先端部が本管100内面まで到達し、本管100に開口30が形成されると、分岐孔18、分岐部本体14および分岐管接続部16を介して本管100内と分岐管102内とが連通し、本管100内を流れる流体が分岐管102内に供給されるようになる。
本管100の穿孔後は、プラグ部品28が本管100から分岐管102に流れ込む水と干渉しないように、回転工具を用いてプラグ本体34を逆回転させることによってプラグ部品28を上昇させ、分岐部本体14の上端部内にプラグ部品28を回避させる。なお、分岐部本体14内においてプラグ部品28を移動させる際には、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間にはOリング等の止水部材が何ら介在しない。このため、分岐部本体14内におけるプラグ部品28の移動時には、大きな操作力が必要とならず、プラグ部品28を容易に移動させることができる。
分岐部本体14の上端部内にプラグ部品28を配置した後、続いて、キャップ50を分岐部本体14の上端部に装着して分岐部本体14の上端開口を封止する。キャップ50を分岐部本体14に装着することによって、キャップ50の内周面と分岐部本体14の外周面との間がOリング48によって止水されると共に、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間が止水部品64の止水部材68(具体的には止水リング80)によって止水され、分岐部本体14の上端開口からの漏水が確実に防止される。
ここで、図10および図11を参照して、分岐部本体14の上端部にキャップ50を締め込んでいく際の止水の様子について具体的に説明する。
図10(a)に示すように、分岐部本体14の上端部に対するキャップ50の締め込みを開始するときには、プラグ部品28の上端面と分岐部本体14の上端面とが略面一となるように、分岐部本体14の上端部内にプラグ部品28が配置されている。この時点では、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間からの漏水が生じているが、漏水はキャップ50の内周面と分岐部本体14との間を通って外部に排出される。そして、この時点ではキャップ50に内水圧はかからないので、キャップ50は小さな締付トルクで容易に回転して下方に螺進していく。このキャップ50の螺進に伴い、止水部品64もキャップ50から押下力を受けて下方に移動する。
キャップ50の締め込みが進むと、図10(b)に示すように、先ず、止水部品64の止水部材68が分岐部本体14およびプラグ部品28のテーパ面26a,38a、つまり環状溝40の内側面上端部に当接し、止水部材68によるプラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間の止水が開始される。この時点では、止水部材68に対して内水圧がかかるが、内水圧が作用する面積は小さいので、キャップ50は小さな締付力(操作力)で容易に回転する。
具体的には、図11に示すように、止水部材68に対して内水圧が作用する面積S2は、環状溝40の断面積であるので、約300mm2となる。内水圧が1MPaとすると、約300Nの止水部材68(延いてはキャップ50)を持ち上げる力が作用する。これは、図18に示したキャップ3の天壁下面全体に内水圧が作用する従来技術と比較して、非常に小さな値であるので、キャップ50を容易に締め付けることができる。
図10(b)に戻って、止水部品64の止水部材68が環状溝40の内側面上端部に当接した後は、止水部品64はキャップ50からの押下力を受けてさらに下方に移動し、環状溝40内に止水部材68が嵌め込まれていく。これによって、環状溝40内で止水部材68(具体的には止水リング80)が圧縮され、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間が止水部材68によって完全に止水されて、プラグ部品28上方への漏水が確実に防止される。なお、万一、止水部品64によるプラグ部品28および分岐部本体14間の止水が開始される際に、止水部品64の内部に水が入り込んでしまった場合には、その浸入水は水抜孔78を通って止水部品64の外部に排出される。
ここで、環状溝40内に止水部材68が嵌め込まれていくときには、キャップ50に対して止水部品64が周方向に回転可能に設けられていることから、キャップ50は回転するが、止水部品64(止水部材68)は回転することなく環状溝40内に押し込まれていく状態となる。このように、止水部材68を回転させることなく環状溝40内に押し込んでいくことによって、止水部材68を回転させながら押し込んでいくことと比較して、止水部材68と環状溝40との間の摩擦力を小さくできるので、小さい力で容易に環状溝40内に止水部材68を嵌め込むことができる。
また、所定の深さを有する環状溝40内に止水部材68を嵌め込んで止水することによって、所定範囲において止水性が確保されるようになる。すなわち、図10(b)に示す止水部材68が環状溝40の内側面上端部に押し付けられた状態から、キャップ50を完全に締め込めんだ状態(図10(d)参照)まで、止水部品64(止水部材68)による止水機能が発揮され、キャップ50の締め込みに適正範囲を持たせることができる。
キャップ50の締め込みがさらに進むと、図10(c)に示すように、Oリング48にキャップ50内周面の非ねじ部58下端が当接する。この時点においても、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間が止水部材68によって止水されているので、キャップ50に作用する内水圧の面積は小さく、キャップ50は小さな締付力で容易に回転する。その後、分岐部本体14の非ねじ部44とキャップ50の非ねじ部58との間でOリング48が圧縮されることにより、分岐部本体14の外周面とキャップ50の内周面との間がOリング48によって完全に止水される。
そして、図10(d)に示すように、キャップ50を最後まで締め付けることによって、分岐部本体14の上端部に対するキャップ50の装着が完了する。なお、このときのキャップ50の回転向きが、締込完了時のキャップ50の回転向きとして表示部62に表示される。また、この実施例では、分岐部本体14の非ねじ部44とキャップ50の非ねじ部58との間でOリング48が適切に圧縮され始めた状態(つまり、止水部品64およびOリング48による所謂ダブルシールが適切に開始された状態)からキャップ50を最後まで締め付けた状態までのキャップ50の回転向き(締め込み状態)が、止水性が適切に発揮される止水許容範囲として表示部62に表示される。ただし、止水部品64による止水機能は、止水部材68が環状溝40の内側面上端部に押し付けられた状態から発揮されるので、この状態からキャップ50を最後まで締め付けた状態までのキャップ50の回転向きを止水許容範囲として表示部62に表示することもできる。
なお、分岐部本体14の上端部にキャップ50を装着した後も、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間が止水部材68によって止水されていることから、キャップ50に対して内水圧が作用する面積は小さい。このため、分岐サドル継手10内で水の流通を遮断する必要が生じた場合などの何らかの理由で、分岐部本体14からキャップ50を取り外す際にも、キャップ50は小さな操作力で容易に回転し、キャップ50を分岐部本体14から容易に取り外すことができる。なお、キャップ50を取り外す際に、万一、止水部品64がキャップ50から外れてしまい、環状溝40内に止水部品64が嵌め込まれた状態で残ってしまった場合には、プラグ部品28のプラグ本体34の回転工具係合部に回転工具の端部を挿し込んで、回転工具を用いてプラグ部品28を上昇させることによって、止水部品64を取り外すことが可能である。
この実施例によれば、分岐部本体14の上端部内にプラグ部品28を配置した後に、キャップ50から止水部品64に押下力を与え、この止水部品64によってプラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間を止水するので、キャップ50への水圧作用を低減できる。したがって、キャップ50の着脱が容易となってキャップ50を確実かつ適切に操作できるようになる。また、プラグ部品28の移動時にはOリング等の止水部品が介在しないので、プラグ部品28の移動も容易となる。
また、キャップ50に対して止水部品64が一体化されているので、通常通りにキャップ50を分岐部本体14に取り付けるだけで、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間を止水することができ、作業性に優れる。また、止水部品64を付け忘れるという心配もない。さらに、止水部品64の大きさに対して一回り以上大きなキャップ50を操作することになるので(この実施例では、キャップ50の外径が75mmに対して、止水部品64の側壁70の外径は34mm)、力が掛け易く、大きなトルクを発生させることができる。つまり、作業性がよく、確実な適正締付作業が可能となる。
さらに、キャップ50に対して止水部品64が周方向に回転可能に設けられているので、止水部品64(止水部材68)は回転することなく環状溝40内に押し込まれていくこととなる。したがって、止水部材68と環状溝40(つまりプラグ部品28の外周面および分岐部本体14の内周面)との間の摩擦力を小さくできるので、小さい力で容易に環状溝40内に止水部材68を嵌め込むことができ、キャップ50の装着が容易となる。また、同様にキャップ50の取り外しも容易となる。
さらにまた、所定の深さを有する環状溝40内に止水部品64の止水部材68を嵌め込んで止水するので、キャップ50の締め込みに適正範囲を持たせることができる。したがって、仮にキャップ50を完全に締め付けることができなくても、止水部品64(止水部材68)による止水機能を適切に発揮させることができる。
また、止水部品64に水抜孔78を設けているので、万一、止水部品64の内部に水が入り込んでしまった場合でも、その浸入水は水抜孔78を通って止水部品64の外部に排出され、キャップ50に作用する内水圧の面積が大きくなることを防止できる。
なお、この発明の他の実施例として、図12に示すように、分岐部本体14の雄ねじ部(第2雄ねじ部)42に対して1または複数の水抜溝42aを形成することもできる。水抜溝42aは、雄ねじ部42の周方向の一部が切り欠かれることによって形成され、分岐部本体14の軸方向に延びる。この実施例では、雄ねじ部42には、分岐管接続部16の突出方向およびその反対方向において、2つの水抜溝42aが形成される。ただし、水抜溝42aを形成する周方向位置、数、断面形状および大きさ等は、適宜変更可能である。また、雄ねじ部42に水抜溝42aを形成する代わりに、或いは雄ねじ部42に水抜溝42aを形成すると共に、キャップ50の雌ねじ部(第2雌ねじ部)56に対して同様の水抜溝を形成することもできる。
このような水抜溝42aを形成することによって、仮に、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間からの漏水量が多い場合でも、キャップ50内から外部に適切に水を排出することができる。したがって、キャップ50内に水が充満してキャップ50の締め付けに必要な締付トルクが上昇してしまうことを防止できる。また、雄ねじ部42と雌ねじ部56との接触面積が小さくなるので、キャップ50の締め付けに必要な締付トルクを低減させることもできる。
また、上述の各実施例では、キャップ50の側壁52内周面に形成する係止部60を周方向の全長に亘って延びる環状の突起としたが、係止部60の具体的形状は適宜変更可能である。たとえば、図13に示すように、係止部60は、周方向に不等間隔に分散して配置される複数の突起としてもよい。この実施例では、略半球状の突起である3つの係止部60がキャップ50の側壁52内周面に形成され、これら3つの係止部60の配置間隔はそれぞれ、90°,135°,135°というように不等間隔とされる。
一方、図13に示すキャップ50に取り付けられる止水部品64の係止部76には、図14に示すように、キャップ50の係止部60のそれぞれと対応する周方向位置において、厚み方向(軸方向)に延びる挿通溝92が形成される。すなわち、この実施例では、係止部76の側縁を切り欠くようにして3つの挿通溝92が形成され、これら3つの挿通溝92の配置間隔はそれぞれ、90°,135°,135°というように不等間隔とされる。挿通溝92のそれぞれは、たとえば、厚み方向に見た断面形状が略台形状であって、軸方向に一様に延びるように形成される。なお、図14に示すキャップ50においては、挿通溝92と連通孔78bとを連結するように形成しているが、挿通溝92と連通孔78bとは必ずしも連結されている必要はない。
図14に示す止水部品64を図13に示すキャップ50内に取り付けるときには、キャップ50の係止部60の位置と止水部品64の挿通溝92の位置と一致させ、挿通溝92内に係止部60を通すようにして止水部品64をキャップ50内に取り付ける。そして、キャップ50内で止水部品64を少し回転させることによって、キャップ50の係止部60の位置と止水部品64の挿通溝92の位置とをずらし、係止部60,76同士を係合させる。これによって、キャップ50に対して止水部品64が周方向に回転可能に一体化される。
このように、挿通溝92内に係止部60を通すようにして止水部品64をキャップ50に取り付けることによって、止水部品64をキャップ50に無理嵌めすることと比較して、キャップ50に対する止水部品64の取付作業(一体化作業)が容易となる。また、キャップ50から止水部品64を取り外すことも容易になり、止水部品64の交換作業を容易に行うことができるようになる。
なお、キャップ50に形成する複数の係止部60およびそれに対応する止水部品64の挿通溝92は、周方向に等間隔に配置することもできるが、不等間隔に配置することが好ましい。不等間隔に配置するによって、キャップ50に対して止水部品64を取り付けた後に、係止部60の位置と止水部品64の挿通溝92の位置とが一致する確率が低くなり、キャップ50からの止水部品64の意図しない離脱の生じる可能性が低くなるからである。
また、図14に示す止水部品64においては、挿通溝92を軸方向に一様に延びる断面略台形状に形成しているが、これに限定されない。たとえば、挿通溝92の断面形状は、略半円状であってもよい。また、キャップ50に対して止水部品64を取り付け易くかつ外れ難くするために、上方に向かうに従い縮径するテーパ状に挿通溝92を形成してもよい。
さらに、キャップ50の係止部60を周方向に分散して配置する場合であっても、必ずしも止水部品64に挿通溝92を形成する必要はない。キャップ50の係止部60を周方向に分散して配置することによって、止水部品64をキャップ50に無理嵌めする(止水部品64の係止部76がキャップ50の係止部60を乗り越える)際の挿入抵抗を低減できるので、キャップ50に対する止水部品64の取付作業が容易となる。
また、上述の各実施例では、キャップ50に対して止水部品64を周方向に回転可能に一体化するに際して、止水部品64をキャップ50の側壁52に係止させるようにしたが、キャップ50に対して止水部品64一体化する態様は、これに限定されない。たとえば、図15に示すように、止水部品64をキャップ50の天壁54に係止させるようにしてもとい。以下、図15および図16を参照して、この実施例の分岐サドル継手10が備える止水部品64について説明するが、図7に示す止水部品64と同様の部分については、同じ参照番号を付し、説明を省略または簡略化する。
この実施例の止水部品64の部品本体66は、図16に示すように、短円筒状の側壁70を備える。側壁70の上端には、内方に突出する天壁86が形成され、天壁86の中央部には、留め具90(図15参照)を挿入するための貫通孔88が形成される。また、水抜孔78として、側壁70の嵌合突起72部分を貫通する貫通孔と、側壁70上端部および天壁86周縁部の一部を切り欠いた貫通孔とが形成される。さらに、側壁70には、止水リング80を有する止水部材68が装着される。
図16に示す止水部品64をキャップ50内に取り付けるときには、図15に示すように、留め具90を用いて天壁86の下面に止水部品64をカシメ留めするとよい。これによっても、キャップ50に対して止水部品64を周方向に回転可能に一体化することができる。
なお、上述の各実施例では、断面略円形の止水リング80と短円筒状の装着部82とを有する形状に止水部材68を形成したが、止水部材68の具体的形状は、適宜変更可能である。たとえば、止水リング80(止水部材68)の断面形状は、図17に示すように、様々な断面形状を適宜採用できる。また、たとえば、略U字状の断面を有する環状に止水部材68を形成することもできる。この場合には、止水部材68の溝内部に部品本体66の側壁70を嵌め込むようにして、部品本体66と止水部材68とを一体化するとよい。
また、上述の各実施例では、止水部品64を部品本体66および止水部材68の2つの部材によって形成したが、これに限定されず、たとえば、止水部品64全体が合成ゴム等の弾性材で形成される1つの部品として形成されてもよい。ただし、この場合には、キャップ50と止水部品64とが相対的に回転する際の摩擦力を低減するため、キャップ50と止水部品64との間に硬質材で形成された円盤状の薄板(図示せず)を挟み込むことが好ましい。
さらに、上述の各実施例では、キャップ50に対して止水部品64を周方向に回転可能に一体化するようにしたが、回転不可に一体化してもよい。この場合でも、小径の止水部品64をそれより大径のキャップ50に取り付けることによって、力が掛け易くなり、また、小さな操作力で大きな回転トルクが得られるので、単独で止水部品64(止水部材68)を環状溝40に嵌め込んでいくことと比較して、容易に止水部品64を環状溝40に嵌め込むことができる。
さらにまた、上述の各実施例では、キャップ50と止水部品64とを一体化しているが、別体のまま分岐部本体14の上端部に装着することもできる。この場合には、たとえば、止水部品64の止水部材68を環状溝40に少し嵌め込むようにして止水部品64を分岐部本体14の上端部に仮置きした後、その上からキャップ50を装着して、止水部品64に対してキャップ50から押下力を与えて、止水部品64の止水部材68を環状溝40に完全に嵌め込むようにするとよい。
また、上述の各実施例では、止水部品64を短円筒状に形成し、その下端部に設けた止水リング80を環状溝40に嵌め込むようにしたが、環状溝40(非ねじ部26,38)は、必ずしも設ける必要はない。たとえば、環状溝40を形成せずに、分岐部本体14の内周面上端縁とプラグ部品28の外周面上端縁とにテーパ面26a,38aのみを形成しておいて、そのテーパ面26a,38aにリング状の止水部品64を押し当てることによって、プラグ部品28の外周面と分岐部本体14の内周面との間からの漏水を止水するようにしてもよい。ただし、この場合には、キャップ50の締め込みに適正範囲を持たせることができない、つまりキャップ50を完全に締め込んだ状態にしないと止水部品64による止水機能が発揮されないので、短円筒状の止水部品64の下端部(止水部材68)を環状溝40に嵌め込む構成を採用する方が好ましい。
さらに、上述の各実施例では、分岐部本体14の上端部にプラグ部品26を配置する際に、プラグ部品26の上端面と分岐部本体14の上端面とが略面一となるようにしたが、特にその高さ位置に限定される必要はなく、プラグ部品26の上端面と分岐部本体14の上端面とに段差がつくようにプラグ部品26を配置することもできる。
さらにまた、上述の各実施例では、プラグ部品26としてカッタ部32が一体化されたもの(穿孔プラグ)を用いたが、プラグ部品26は、必ずしもカッタ部32を備える必要はない。つまり、プラグ部品26は、穿孔機能を持たない止水プラグであってもよい。この場合には、他の穿孔工具(図示せず)によって本管100に開口104を穿孔した後、その穿孔工具を分岐部本体18内から取り出して、代わりにプラグ部品26を分岐部本体18の上端部内に配置するとよい。また、プラグ部品26の材質は、特に限定されず、その全体が金属製であってもよい。
また、上述の実施例では、止水部品64の他にOリング48を用いた所謂ダブルシールによって、より確実に分岐部本体14の上端開口からの漏水を防止するようにしたが、止水部品64のみでも十分に止水機能を発揮できる。このため、Oリング48は、必ずしも設けられる必要はない。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。