JP2015110746A - 繊維強化樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
熱可塑性樹脂と強化繊維を用いた繊維強化樹脂組成物において、生産性や成形加工性を損なうことなく、引張強度や伸度といった力学特性を飛躍的に向上させた繊維強化樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ポリアリーレンスルフィド(A)とカルボジイミド化合物(B)と炭素繊維(C)を特定の配合量で含有し、かつ、炭素繊維(C)がサイジング剤(D)で表面処理されており、カルボジイミド化合物(B)が脂肪族カルボジイミド化合物であって、サイジング剤(D)が特定の官能基を1分子中に3個以上有する化合物である繊維強化樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、力学特性と生産性および成形加工性を兼ね備えた繊維強化樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂と強化繊維からなる繊維強化樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の特性を生かして成形加工が容易であったり、熱硬化性樹脂のような貯蔵の負荷を必要とせず、リサイクル性に優れるといった特徴がある。このような繊維強化樹脂組成物としては、強化繊維をシート状に配列させた熱可塑性プリプレグや、強化繊維をランダム分散させたペレットなど多種多様な形態が公知である。繊維強化樹脂組成物は、軽量性と力学特性のバランスに優れることから、航空機や自動車、船舶などの構造用部材、電子機器筐体や、スポーツ用途、建材などの工業材料として幅広く用いられている。
熱可塑性樹脂の中でもポリアリーレンスルフィドは、特に耐熱性や耐薬品性に優れており、得られる繊維強化樹脂組成物を金属材料の代替として適用することが期待できる樹脂である。しかしながら、金属材料の代替として、ポリアリーレンスルフィドを用いた繊維強化樹脂組成物を展開していく上では、繊維強化樹脂組成物の力学特性、特に引張強度と伸度の更なる向上が課題であった。これは、一般的なポリアリーレンスルフィドの引張伸度が強化繊維の引張伸度(例えば炭素繊維であれば2%程度)よりも低いため、繊維強化樹脂組成物中で、強化繊維の補強効果を十分に生かしきれていない為であった。
繊維強化樹脂組成物の引張強度と伸度を向上させる一般的な方法としては、用いるポリアリーレンスルフィドの高伸度化が挙げられる。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドの引張伸度は、その分子量、ひいては溶融粘度と相関関係にあり、ポリアリーレンスルフィドの引張伸度を向上させると、溶融粘度も増加してしまい、繊維強化樹脂組成物の成形加工性を大きく損なうリスクがある。また、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度が高いほど強化繊維との複合化が困難とされることはよく知られている。このような場合、プロセス温度もより高温を必要とするため、繊維強化樹脂組成物を容易に、生産性よく製造することには不向きであった。これらの理由により、ポリアリーレンスルフィドを用いた繊維強化樹脂組成物において引張強度や伸度の向上と生産性および成形加工性の両立は重要な技術課題とされてきた。
特許文献1には、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーと連続した強化繊維からなる複合体に、高分子量の熱可塑性樹脂が接するように配置されてなる成形材料が開示されている。この成形材料では、連続した強化繊維束への含浸には低分子量体、マトリックス樹脂には高分子量体を使い分けることで、力学特性と生産性の両立を図っている。ポリアリーレンスルフィドプレポリマーは、強化繊維束に容易に含浸するため成形材料の生産性を高め、さらに成形工程においてマトリックス樹脂に容易に分散あるいは相溶することで強化繊維の成形品への分散を高める優れた材料である。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーは低分子量である為に、その添加量と、得られる成形品の力学特性がトレードオフの関係となってしまう問題があった。
一方で、ポリアリーレンスルフィドへの添加剤も様々な物が検討されている。特許文献2には、ポリアリーレンスルフィドと環状ポリオレフィン樹脂とポリカルボジイミドを組み合わせることで、金属材料や有機材料との密着性を向上させた組成物が開示されている。しかしながら、この組成物では、強化繊維は明細中に記載されているものの、組成物への剛性付与が目的であり、繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上を目的としたものではなく、さらにこれらの力学特性と生産性および成形加工性の両立を目的とはしていなかった。
特許文献3には、ポリアリーレンスルフィドと芳香族ポリカルボジイミド系樹脂と無機充填剤からなる組成物が開示されている。しかしながら、この組成物は力学特性の大きな低下なく耐湿性と耐薬品性を向上させることを目的としたものであり、組成物の力学特性が開示されているものの、その引張強度や伸度が飛躍的に向上する現象に着想するには至らなかった。さらにこれらの力学特性と生産性および成形加工性の両立を目的とはしていなかった。
特開2008−231291号公報 特開平10−168290号公報 特開2004−91504号公報
本発明は、かかる従来技術の問題点を改善し、引張強度や伸度といった力学特性と生産性および成形加工性を兼ね備えた繊維強化樹脂組成物を提供することを課題とする。
発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成とすることで、低分子量のポリアリーレンスルフィドをマトリックス樹脂に用いるほど、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
かかる問題点を解決するための本発明の繊維強化樹脂組成物は、次の構成からなる。すなわち、
ポリアリーレンスルフィド(A)とカルボジイミド化合物(B)と炭素繊維(C)を含有し、かつ、前記炭素繊維(C)がサイジング剤(D)で表面処理されている繊維強化樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が脂肪族カルボジイミド化合物であって、前記サイジング剤(D)がカルボキシル基、アミノ基、水酸基およびエポキシ基からからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に3個以上有する化合物であり、成分(A)100質量部に対して、成分(B)を0.1〜10質量部、成分(C)を10〜300質量部含有し、成分(C)100質量部に対して、成分(D)を0.01〜5質量部含有する、繊維強化樹脂組成物である。
また、前記した問題点を解決するための本発明の成形品は、次の構成からなる。すなわち、前記した繊維強化樹脂組成物が成形されてなる成形品である。
さらに、前記した問題点を解決するための本発明の繊維強化複合材料は、次の構成からなる。すなわち、前記した繊維強化樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料であって、式(1)で示されるカルボジイミド化合物(B)の存在比Rbが1.2以上である、繊維強化複合材料。
Rb=R(≦500nm)/R(>500nm)・・・式(1)
R(≦500nm):炭素繊維(C)周辺500nm以内のカルボジイミド化合物(B)の存在量
R(>500nm):炭素繊維(C)周辺500nmより外側のカルボジイミド化合物(B)の存在量
本発明の繊維強化樹脂組成物は、引張強度や伸度といった力学特性を飛躍的に向上させることが可能である。
さらに本発明では、低分子量のポリアリーレンスルフィドをマトリックス樹脂とするほど力学特性が向上するため力学特性と生産性および成形加工性を兼ね備えた繊維強化樹脂組成物とすることができる。
さらに本発明の成形品は、引張強度や伸度といった力学特性が飛躍的に向上しているため、各種製品に好適に利用することができる。
炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面で見た、本発明の繊維強化樹脂組成物のモルフォロジーの一例を示す概略図である。 炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面で見た、本発明の繊維強化樹脂組成物における領域(T1)と領域(T2)の一例を示す概略図である。 炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面で見た、本発明の繊維強化樹脂組成物における領域(T1)と領域(T2)の一例を示す概略図である。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)と、カルボジイミド化合物(B)、と炭素繊維(C)、およびサイジング剤(D)を成分として含む。まず各成分について説明する。
<ポリアリーレンスルフィド(A)>
本発明の繊維強化樹脂組成物におけるポリアリーレンスルフィド(A)(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略することもある)は、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては次の式(a)〜式(k)などで表される単位などがあるが、なかでも式(a)で表される単位が特に好ましい。
(R1,R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、次の式(l)〜式(n)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィド(A)は上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド(前記式(a)、式(b)、式(f)〜式(k))、ポリフェニレンスルフィドスルホン(前記式(d))、ポリフェニレンスルフィドケトン(前記式(c))、ポリフェニレンスルフィドエーテル(前記式(e))、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィド(A)としては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、ポリフェニレンスルフィドをPPSと略すこともある)が挙げられる。
PAS(A)は、その質量平均分子量が、好ましくは10,000〜80,000であり、より好ましくは10,000〜60,000であり、さらに好ましくは10,000〜40,000である。質量平均分子量の小さいPAS(A)ほど溶融粘度が低く、得られる繊維強化樹脂組成物が成形加工性に優れる為好ましい。
また、本発明の繊維強化樹脂組成物は、質量平均分子量の小さいPAS(A)ほど、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性が向上する傾向がある。この原因は、PAS(A)が有する官能基がカルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基と化学反応しており、質量平均分子量の小さいPAS(A)ほど末端に存在する官能基が増加し、カルボジイミド化合物(B)との反応点が増加するためであると推測される。これらの理由から、本発明の繊維強化樹脂組成物において、PAS(A)の質量平均分子量を10,000〜40,000の範囲とすることが、得られる繊維強化樹脂組成物の力学特性と生産性および成形加工性の両立を高レベルで達成できる為とりわけ好ましい。
なお、PAS(A)の質量平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定することができる。溶離液には1−クロロナフタレンを使用し、カラム温度を210℃とし、ポリスチレン換算の質量平均分子量を算出することで求めることができる。
PAS(A)は、主鎖および/または側鎖の末端に官能基を有することが好ましい。ここで言う主鎖とは、高分子構造中で最も長い鎖状構造部分を指し、主鎖から分岐して構成される部分は側鎖という。高分子構造とは、単一の構造単位が繰り返し連結している部分、または複数の構造単位が規則的ないしはランダムに連結している部分を指し、末端とは連結が停止する最後の構造単位を指す。PAS(A)が有する官能基は、高分子構造の主鎖および/または側鎖の末端のいずれかに1箇所以上あることが好ましく、かかる官能基を有するPASがPAS(A)に占める割合は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。かかる条件を満たすことで、力学特性により優れた繊維強化樹脂組成物が得られる。
PAS(A)が有する官能基としては、重合の際に用いられたモノマーの官能基が残留したもの、重合時の触媒や助剤や溶媒が末端に取り込まれて形成した官能基、高分子構造が熱分解や加水分解などによって切断されて形成した官能基、およびこれらの官能基を酸化、還元、および変性剤で変性したものを用いることが出来る。前記変性剤としては、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ樹脂、酸無水物などが例示できる。中でも、高分子構造へのダメージが少なく、分子量を制御しやすいことから、重合の際に用いられたモノマーの官能基が残留したものと、重合時の触媒や助剤や溶媒が末端に取り込まれて形成した官能基が好ましく用いられる。
PAS(A)が有する官能基としては、チオール基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、オキサゾリン基、スルホン酸基などが例示できる。この中でも、カルボジイミド基との反応性の面でチオール基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、アミノ基、水酸基が好ましく、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基が特に好ましい。
PAS(A)は、クロロホルムによるオリゴマー抽出量が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。ここでのクロロホルムによるオリゴマー抽出量とは、有機低重合成分(オリゴマー)量の指標となるものであり、測定するPAS(A)10gをクロロホルム200mLを用いて、ソックスレー抽出5時間処理時の残差量から算出できる。PAS(A)中のオリゴマー成分が減少することで、PAS(A)のポリマー成分の官能基とカルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基がより選択的に反応可能となるため力学特性に優れた繊維強化樹脂組成物が得られる。
PAS(A)は、ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られる重合反応物からPAS(A)を回収、後処理することにより高収率で製造することができる。
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。これらの中で、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した質量平均分子量のPAS(A)を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
PAS(A)の製造において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物としては、具体例に、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物のなかでも、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
以下に、PAS(A)の製造方法の一例について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
先ず前工程について説明する。スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。アルカリ金属硫化物を調製する望ましい条件は、不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、より好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、150℃以上、より好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは、重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。水分量のより好ましい範囲は、スルフィド化剤1モル当たり0.75〜2.5モルであり、1.0〜1.25モルの範囲がより好ましい。かかる範囲に水分を調整するために、重合前あるいは重合途中で水分を添加することも可能である。
重合反応工程では、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃以下の温度範囲内で反応させることによりPAS(A)を生成させる。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜220℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で酢酸ナトリウムなどの重合助剤を加えてもよい。ここで、重合助剤とは、得られるPAS(A)の粘度を調整する作用を有する物質を意味する。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜245℃で一定時間反応させた後、250〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る場合に有効である。この際、200℃〜245℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲内で選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲内で選択される。
重合終了後に、回収工程において、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法としては、例えばフラッシュ法、すなわち重合反応物を高温高圧(通常245℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法や、クエンチ法、すなわち重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を顆粒状にして回収する方法などが挙げられる。
本発明におけるPAS(A)の回収方法は、クエンチ法、フラッシュ法いずれかに限定されるものではないが、クロロホルム抽出成分に代表されるようなオリゴマー成分が少なく、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度に特に優れるために、クエンチ法で得られるPAS(A)であることが好ましい。クエンチ法で得られるPASのクロロホルムによるオリゴマー抽出量としては、2質量%以下が例示でき、より好ましくは1質量%以下が例示できる。
PAS(A)は、上記重合、回収工程を経て得られた固形物に、その後、後処理工程として、熱水処理や有機溶媒による洗浄を施して用いられる。前記回収工程を経て得られた固形物は、PAS(A)以外に、重合副生物であるアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ金属有機物などのイオン性不純物を含んでいるため、洗浄を行うことが通例である。洗浄液としては例えば水や有機溶媒を用いて洗浄する方法が挙げられ、簡便かつ安価にPAS(A)を得る点で、水を用いた洗浄が好ましい方法として例示できる。使用する水の種類としてはイオン交換水、蒸留水が好ましく用いられる。
回収工程を経て得られた固形物を洗浄する際の洗浄温度は50℃以上200℃以下が好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましく、180℃以上200℃以下がさらに好ましい。100℃以上の液体での処理の操作は、通常、所定量の液体に、回収工程を経て得られた固形物を所定量投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、攪拌することにより行われる。洗浄は複数回行ってもよく、各洗浄での洗浄温度が異なっていても良いが、イオン性不純物の少ないPAS(A)を得るには、150℃以上の温度で少なくとも1回、好ましくは2回以上洗浄を行うのが良く、各洗浄の間にはポリマーと洗浄液を分離する濾過工程を経ることがより好ましい方法である。
PAS(A)を得るに際し、洗浄を行う場合には洗浄添加剤を用いてもよく、かかる洗浄添加剤として酸、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が例示できる。酸を用いる場合、洗浄に用いる水に有機酸または無機酸などを添加して酸性にした水溶液中に、洗浄されるPASを浸漬させ、加熱洗浄後の水溶液のpHが2〜8となるようにすることが好ましい。有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸などが例示でき、これらに限定されるものではないが、酢酸、塩酸が好ましい。本発明において、洗浄添加剤として酸を用いて得られたPAS(A)は、酸末端品と称する。洗浄添加剤としてアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を用いる場合、洗浄に用いる水にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を添加した水溶液に、洗浄されるべきPASを浸漬させる方法が例示でき、かかるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPAS(A)に対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%が更に好ましい。アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸または無機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
洗浄添加剤は洗浄工程のいずれの段階で使用してもよいが、少量の添加剤で効率的に洗浄を行うには、前記回収工程にて回収した固形物を水にて洗浄を数回行い、その後洗浄添加剤を添加した水溶液に、洗浄されるべきPASを含浸させ、150℃以上で処理する方法が好ましい。洗浄でのPASと洗浄液の割合は、洗浄液が多いほうが好ましいが、通常、洗浄液1リットルに対し、PAS(A)10〜500gの浴比が好ましく選択され、50〜200gが更に好ましい。
かくして得られたPAS(A)は常圧下および/または減圧下に乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましく、140〜250℃の範囲がより好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気でも、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良いが、溶融粘度の関係から不活性雰囲気が好ましい。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜30時間がより好ましく、1〜20時間がさらに好ましい。
<カルボジイミド化合物(B)>
本発明におけるカルボジイミド化合物(B)は、脂肪族カルボジイミド化合物である。カルボジイミド化合物(B)に脂肪族カルボジイミド化合物でないもの、例えば芳香族カルボジイミド化合物を用いた場合、本発明の繊維強化樹脂組成物を得ることはできない。これは脂肪族カルボジイミド化合物が有するカルボジイミド基よりも、芳香族カルボジイミド化合物が有するカルボジイミド基の方が、PAS(A)が有する官能基との反応性が低いためであると推測される。
脂肪族カルボジイミド化合物とは、一般式 −N=C=N−R − (式中、R はシクロヘキシレンなどの脂環式化合物の2価の有機基、またはメチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレンなどの脂肪族化合物の2価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。
脂肪族カルボジイミド化合物の合成法は特に限定されるものではないが、例えば有機ポリイソシアナートを、イソシアナート基のカルボジイミド化反応を促進する触媒(以下「カルボジイミド化触媒」ともいう)の存在下で反応させることにより、脂肪族カルボジイミド化合物を合成することができる。
この脂肪族カルボジイミド化合物の合成に用いられる有機ポリイソシアナートとしては、有機ジイソシアナートが好ましい。このような有機ジイソシアナートとしては、例えば、シクロブチレン−1,3−ジイソシアナート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアナート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアナート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアナート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアナート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステルなどや、これらの有機ジイソシアナートの化学量論的過剰量と2官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアナートプレポリマーなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアナートは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
また、場合により有機ジイソシアナートとともに使用される他の有機ポリイソシアナートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアナート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアナート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアナート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアナート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2′−トリイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4′−トリイソシアナートなどの3官能以上の有機ポリイソシアナートや、これらの3官能以上の有機ポリイソシアナートの化学量論的過剰量と2官能以上の多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる末端イソシアナートプレポリマーなどを挙げることができる。
前記他の有機ポリイソシアナートは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもでき、その使用量は、有機ジイソシアナート100質量部あたり、好ましくは0〜40質量部であり、より好ましくは0〜20質量部である。
さらに、脂肪族カルボジイミド化合物の合成に際しては、必要に応じて有機モノイソシアナートを添加することにより、得られる脂肪族カルボジイミド化合物の分子量を適切に制御することができる。
このような有機モノイソシアナートとしては、例えばメチルイソシアナート、エチルイソシアナート、n−プロピルイソシアナート、n−ブチルイソシアナート、ラウリルイソシアナート、ステアリルイソシアナートなどのアルキルモノイソシアナート類、シクロヘキシルイソシアナート、4−メチルシクロヘキシルイソシアナート、2,5−ジメチルシクロヘキシルイソシアナートなどのシクロアルキルモノイソシアナート類を挙げることができる。
これらの有機モノイソシアナートは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもでき、その使用量は、脂肪族カルボジイミド化合物の所望の分子量などにより変わるが、有機ポリイソシアナート成分100質量部あたり、好ましくは0〜40質量部であり、より好ましくは0〜20質量部である。
また、カルボジイミド化触媒としては、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1−フェニル−3−メチル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1−メチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−スルフィドや、これらの3−ホスホレン異性体などのホスホレン化合物、ペンタカルボニル鉄、ノナカルボニル二鉄、テトラカルボニルニッケル、ヘキサカルボニルタングステン、ヘキサカルボニルクロムなどの金属カルボニル錯体、ベリリウム、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、鉄などの金属のアセチルアセトン錯体、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、トリ−t−ブチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
前記カルボジイミド化触媒は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。この触媒の使用量は、有機ポリイソシアナート成分100質量部あたり、好ましくは、0.001〜30質量部であり、より好ましくは0.01〜10質量部である。
脂肪族カルボジイミド化合物の合成反応の温度は、有機ポリイソシアナートや有機モノイソシアナート、カルボジイミド化触媒の種類に応じて適宜選定されるが、通常、20〜200℃である。脂肪族カルボジイミド化合物の合成反応に際して、有機ポリイソシアナートおよび有機モノイソシアナート成分は、反応前に全量添加しても、あるいはその一部または全部を反応中に、連続的あるいは段階的に添加してもよい。
また、イソシアナート基と反応し得る化合物を、脂肪族カルボジイミド化合物の合成反応の初期から後期に至る適宜の反応段階で添加して、脂肪族カルボジイミド化合物の末端イソシアナート基を封止し、得られる脂肪族カルボジイミド化合物の分子量を調節することもでき、また脂肪族カルボジイミド化合物の合成反応の後期に添加して、得られる脂肪族カルボジイミド化合物の分子量を所定値に規制することもできる。このようなイソシアナート基と反応し得る化合物としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ベンジルアミンなどのアミン類を挙げることができる。
本発明で用いる脂肪族カルボジイミド化合物は、その質量平均分子量が、好ましくは500〜10,000であり、より好ましくは1,000〜5,000である。脂肪族カルボジイミド化合物の質量平均分子量がこの範囲にあると、本発明の効果である引張強度や伸度といった力学特性の向上と生産性および成形加工性の両立が高レベルで達成できる。なお、脂肪族カルボジイミド化合物の質量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)などの分析方法によって求めることができる。
<炭素繊維(C)>
本発明における炭素繊維(C)としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが使用でき、これらの繊維を2種以上混在させることもできる。
炭素繊維(C)は、その引張強度が、好ましくは2,000MPa以上であり、より好ましくは3,000MPa以上であり、さらに好ましくは4,000MPa以上である。また、炭素繊維(C)は、その引張弾性率が、好ましくは200GPa以上700GPa以下である。さらに、炭素繊維(C)は、その引張伸度が、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.8%以上であり、とりわけ好ましくは2.0%以上である。高伸度な炭素繊維(C)を使用することで、本発明の繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上を高レベルで達成できるためとりわけ好ましい。このような引張強度、引張弾性率、引張伸度のバランスの観点から炭素繊維(C)としてはPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
炭素繊維(C)は、X線光電子分光法(XPS)により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比(O/C)が、0.05〜0.50であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.40であり、さらに好ましくは0.10〜0.30である。表面酸素濃度比(O/C)が高いほど、炭素繊維表面の官能基量が多く、炭素繊維(C)とサイジング剤(D)との接着性を高めることができる一方で、表面酸素濃度比(O/C)が高すぎると、炭素繊維表面の結晶構造の破壊が懸念されるため、表面酸素濃度比(O/C)が好ましい範囲内で、力学特性にとりわけ優れた繊維強化樹脂組成物を得ることが出来る。
炭素繊維(C)の表面酸素濃度比(O/C)は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求められる。まず、溶剤でサイジング剤(D)などを除去した炭素繊維(C)をカットして銅製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90゜とし、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を969eVに合わせる。C1Sピーク面積は、K.E.として958〜972eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1Sピーク面積は、K.E.として714〜726eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。ここで表面酸素濃度比(O/C)とは、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から、装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。
表面酸素濃度比(O/C)を制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を取ることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、炭素繊維(C)の平均繊維径は、特に限定されないが、得られる繊維強化樹脂組成物の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
炭素繊維(C)は、取り扱い性の面から、複数本の単糸を束ねた炭素繊維束として用いても良い。炭素繊維束を構成する単糸数としては、取り扱い性の面から100本以上、350,000本以下が好ましく、1,000以上、250,000以下がより好ましく、10,000以上、100,000以下がさらに好ましい。炭素繊維束を構成する単糸数をこのような範囲とすることで、本発明の繊維強化樹脂組成物が経済性良く得られる。
<サイジング剤(D)>
本発明におけるサイジング剤(D)は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に3個以上有する化合物である。前記官能基は1分子中に2種類以上が混在しても良く、1種類の官能基を1分子中に3個以上有する化合物を2種類以上併用しても良い。前記官能基が1分子中に3個未満の化合物のみを用いた場合、炭素繊維(C)の表面官能基やカルボジイミド化合物(B)との反応点が不十分となり、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性が低下する。したがって、サイジング剤(D)を構成する化合物が有する官能基の数は、1分子中に3個以上あることが必須である。前記官能基以外の官能基、例えばアルコキシシランは炭素繊維表面との反応性が乏しいため、アルコキシシランとエポキシ基を1分子中に1個ずつ有するシランカップリング剤をサイジング剤(D)に用いた場合、本発明が目的とする、力学特性に優れる繊維強化樹脂組成物は得られない。
サイジング剤(D)は、これを構成する化合物が脂肪族化合物であることが好ましい。ここでの脂肪族化合物とは、非環式直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、非環式直鎖状不飽和炭化水素、分岐状不飽和炭化水素、または、これらの炭化水素の炭素原子(CH、CH、CH、C)を、酸素原子(O)、窒素原子(NH、N)、カルボニル原子団(CO)に置き換えた鎖状構造の化合物をいう。すなわち、脂肪族化合物は、芳香環などの環状構造を有していない。サイジング剤(D)を脂肪族化合物とすることで、カルボジイミド化合物(B)として用いる脂肪族カルボジイミド化合物との親和性が高まるため力学特性に優れた繊維強化樹脂組成物が得られるため好ましい。
サイジング剤(D)を構成する化合物の具体例としては、多官能エポキシ樹脂、アクリル酸系ポリマー、多価アルコール、ポリエチレンイミンなどが挙げられ、とりわけ炭素繊維(C)の表面官能基やカルボジイミド化合物(B)の双方との反応性が高い多官能エポキシ樹脂が好ましい。
多官能エポキシ樹脂としては、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、脂肪カルボジイミド化合物との親和性の観点から3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。なお、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基を3個以上有する脂肪族エポキシ樹脂を意味する。
3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アラビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これら脂肪族エポキシ樹脂の中でも、反応性の高いエポキシ基を1分子中に多く含み、かつ水溶性が高く、炭素繊維(C)への塗布が容易なことから、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルが本発明では好ましく用いられる。
本発明におけるアクリル酸系ポリマーとは、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸の重合体であって、1分子中にカルボキシル基を3個以上含有するポリマーの総称である。具体的には、ポリアクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、アクリル酸とマレイン酸との共重合体、あるいはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。さらに、アクリル酸系ポリマーは、前記官能基の数が1分子中に3個以上となる限り、カルボキシル基をアルカリで部分的に中和した(即ち、カルボン酸塩とした)ものであっても良い。前記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウムなどが挙げられる。アクリル酸系ポリマーとしては、カルボキシル基を1分子中により多く含むポリアクリル酸が好ましく用いられる。
本発明における多価アルコールの具体例としては、ポリビニルアルコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、アラビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、水酸基を1分子中により多く含むポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
本発明におけるポリエチレンイミンとは、エチレンイミンを開環重合して得られる、1級、2級、3級アミノ基による分岐構造を有するポリアミンである。ポリエチレンイミンとしては、アミノ基を1分子中により多く含むポリエチレンイミンが好ましく用いられる。
サイジング剤(D)を構成する化合物は、その質量平均分子量を1分子中の前記官能基の数(カルボキシル基、アミノ基、水酸基およびエポキシ基の総数)で除した値が40〜150であることが好ましい。かかる範囲とすることで、サイジング剤(D)を構成する化合物は、炭素繊維(C)の表面官能基やカルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基との反応点の密度をより均一とすることができ、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性をより高めることができる。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、サイジング剤(D)は、PAS(A)およびカルボジイミド化合物(B)を含むマトリックス樹脂と炭素繊維(C)との界面に存在することが好ましい。この為、サイジング剤(D)は、炭素繊維(C)の単糸の表面に塗布して用いられる。サイジング剤(D)を炭素繊維(C)に予め付与することで、少量の付着量であっても炭素繊維(C)の表面を効果的に改質することができる。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、サイジング剤(D)は、炭素繊維(C)100質量部に対して0.01〜5質量部含有している必要があり、0.1〜2質量部含有していることが好ましい。サイジング剤(D)の含有率が0.01質量部未満では、サイジング剤(D)が炭素繊維(C)の表面を十分に被膜できない場合があり、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上効果が現れにくくなる。また、サイジング剤(D)の含有率が5質量部を越えると、サイジング剤(D)が炭素繊維(C)の表面上に形成する被膜の厚みが増加しすぎるため、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性を低下させる場合がある。サイジング剤(D)が炭素繊維(C)の表面上に形成する被膜の厚みの好ましい範囲としては、10〜150nmが例示できる。
サイジング剤(D)を炭素繊維(C)に付与する手段としては、例えばローラーを介して炭素繊維(C)をサイジング剤(D)に浸漬させる方法、サイジング剤(D)を霧状にして炭素繊維(C)に吹き付ける方法などが挙げられる。この際、炭素繊維(C)に対するサイジング剤(D)の付着量がより均一となるように、サイジング剤(D)を溶媒で希釈したり、付与する際の温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。サイジング剤(D)を希釈する溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトンなどが挙げられるが、取扱いが容易で防災の観点から水が好ましい。かかる溶媒は、サイジング剤(D)を炭素繊維(C)に付与した後は加熱により蒸発させて除去される。また、水に不溶、もしくは難溶の化合物をサイジング剤(D)として用いる場合には、乳化剤または界面活性剤を添加し、水分散して用いることが好ましい。乳化剤または界面活性剤としては、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤などを用いることができる。これらの中でも相互作用の小さいノニオン系乳化剤を用いることがサイジング剤(D)の効果を阻害しにくく好ましい。
<その他の添加剤>
本発明の繊維強化樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマーあるいはゴム成分などの耐衝撃性向上剤、他の充填材や添加剤を含有しても良い。添加剤の例としては、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、あるいは制泡剤が挙げられる。
<繊維強化樹脂組成物>
本発明の繊維強化樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(B)は、PAS(A)100質量部に対して0.1〜10質量部含有している必要があり、0.1〜5質量部含有していることが好ましい。カルボジイミド化合物(B)の含有率が、0.1質量部未満では、カルボジイミド化合物(B)の量が十分でなく、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上効果が現れない。また、カルボジイミド化合物(B)の含有率が、10質量部を越えると、反対にカルボジイミド化合物(B)が多すぎる為に、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性が低下する。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、炭素繊維(C)は、PAS(A)100質量部に対して10〜300質量部含有している必要があり、10〜200質量部含有していることが好ましく、20〜100質量部含有していることがより好ましく、20〜50質量部含有していることがさらに好ましい。炭素繊維(C)の含有率が、10質量部未満では、炭素繊維(C)の量が十分でなく、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上効果が現れない。炭素繊維(C)の含有率が、300質量部を越えると、炭素繊維(C)をPAS(A)とカルボジイミド化合物(B)を含むマトリックス樹脂に複合化させることが困難となり、結果的に得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性が低下する。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(B)はPAS(A)とでマトリックス樹脂を形成し、サイジング剤(D)は炭素繊維(C)の表面処理に用いる。ここで、カルボジイミド化合物(B)を脂肪族カルボジイミド化合物とし、サイジング剤(D)をカルボキシル基、アミノ基、水酸基およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を1分子中に3個以上有する化合物とする特定の組み合わせとすることで、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性を飛躍的に向上することが可能となる。これは、官能基が少ないために反応性が低いPAS(A)と炭素繊維(C)に対して、反応性の高い特定のカルボジイミド化合物(B)と特定のサイジング剤(D)がそれぞれ反応し、さらにカルボジイミド化合物(B)とサイジング剤(D)とが反応する設計とすることにより、PAS(A)と炭素繊維(C)の間の界面せん断強度を特異的に向上させているためであると考えられる。
さらに、PAS(A)は、低分子量化するほど末端に存在する官能基数が増加し、カルボジイミド化合物(B)との反応点が増加する。質量平均分子量が小さく低溶融粘度かつ低伸度なPAS(A)であっても、カルボジイミド化合物(B)との反応性が増加し、前記した界面せん断強度の向上効果が顕著となることで、本発明の効果である繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性と生産性および成形加工性が両立しえる結果となると考えられる。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(B)は最終的にPAS(A)中に分散、あるいは相溶していればよいが、より好ましくはカルボジイミド化合物(B)が、サイジング剤(D)で表面処理された炭素繊維(C)の表面上に一定以上凝集したモルフォロジーをとることが好ましい。かかるモルフォロジーを分析するための指標としては、PAS(A)とカルボジイミド化合物(B)の硫黄元素の含有量の差を利用し、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で測定される硫黄濃度比S/Cを用いる方法が例示できる。
図1は、本発明の繊維強化樹脂組成物を炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面で観察した例を模式的に表したものである。炭素繊維(C)の断面3の外周で硫黄元素濃度が低い領域2は、PAS(A)とカルボジイミド化合物(B)を含むマトリックス樹脂1の内カルボジイミド化合物(B)の割合が多い領域と炭素繊維(C)の表面を覆ったサイジング剤(D)から構成される。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)で測定される硫黄濃度比S/Cが下記式を満たすことが好ましい。
10(%) ≦ ΔS = (S2−S1)/S2 × 100 ≦ 70(%)
(ここで、ΔSは炭素繊維(C)の軸心方向に直交する断面で見た硫黄元素濃度の勾配であり、S1は前記成分(C)の断面円の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円の内側から前記成分(C)を除いた領域(T1)の硫黄濃度比S/Cであり、S2は前記領域(T1)の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円の内側から前記成分(C)と前記領域(T1)を除いた領域(T2)の硫黄濃度比S/Cである。)
前記ΔSは界面状態の指標である。ΔSの下限は10%であるが、20%がより好ましく、30%がさらに好ましい。ΔSが前記下限未満の場合、カルボジイミド化合物(B)の炭素繊維(C)への凝集が不十分であり、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性の向上に寄与しない場合がある。ΔSの上限は70%であるが、60%がより好ましく、50%がさらに好ましい。ΔSが前記上限より大きい場合、カルボジイミド化合物(B)の炭素繊維(C)への凝集が多すぎる為に、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性を低下させる場合がある。
図2は、本発明の繊維強化樹脂組成物について、炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面で観察した例を模式的に表したものである。領域(T1)5は、炭素繊維(C)の断面4の外側に同心円状に存在し、さらに領域(T2)6は、前記領域(T1)5の外側に同心円状に存在する。
図3は、本発明の繊維強化樹脂組成物について、炭素繊維(C)の単糸の軸心方向に直交する断面を炭素繊維(C)の外周近傍で拡大し観察した例を模式的に表したものである。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、前記領域(T2)におけるエネルギー分散型X線分光法(EDX)で測定される硫黄濃度比S/Cは0.05〜0.45が好ましく、0.1〜0.4がより好ましく、0.1〜0.2がさらに好ましい。前記領域(T2)のS/Cがこの範囲にあることでPAS(A)の高い弾性率が効率よく発揮でき、得られる繊維強化樹脂組成物が引張強度や伸度といった力学特性に、より優れるものとなる。
また、本発明の繊維強化樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、式(1)で示されるカルボジイミド化合物(B)の存在比Rbが1.2以上であることが好ましく、炭素繊維(C)とカルボジイミド化合物(B)の界面接着の観点から存在比Rbが1.5以上であることがより好ましい。
Rb=R(≦500nm)/R(>500nm)・・・式(1)
R(≦500nm):炭素繊維(C)周辺500nm以内のカルボジイミド化合物(B)の存在量
R(>500nm):炭素繊維(C)周辺500nmより外側のカルボジイミド化合物(B)の存在量
存在比Rbは、1.2未満となると、炭素繊維(C)とカルボジイミド化合物(B)の界面接着が悪くなり、繊維強化複合材料の力学特性、特に界面接着に影響する引張強度が悪くなる場合がある。
また、炭素繊維(C)の表面へのカルボジイミド化合物(B)の凝集度合いを制御する観点から、存在比Rbは、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。
存在比Rbは、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を使用することによって、所定の範囲の炭素原子数および硫黄原子数を検出し、得られた炭素原子数を硫黄原子数で除することで、その範囲の炭素濃度比C/Sとし、この値を炭素繊維(C)近傍において、R(≦500nm)(例えば前記領域(T1)におけるC/S)およびR(>500nm)(例えば前記領域(T2)におけるC/S)について測定し、式(1)に代入することで算出できる。
本発明のPAS(A)とカルボジイミド化合物(B)と炭素繊維(C)とサイジング剤(D)を含有してなる本発明の繊維強化樹脂組成物は、サイジング剤(D)で表面処理された炭素繊維(C)が、PAS(A)とカルボジイミド化合物(B)を含むマトリックス樹脂中に存在して構成される。ここで、炭素繊維(C)は得られる繊維強化樹脂組成物中で、ランダムに分散していても良く、1方向あるいは多方向に配向していても良い。炭素繊維(C)がランダムに分散している場合、得られる繊維強化樹脂組成物は、成形加工性に、より優れる利点があり、炭素繊維(C)が1方向あるいは多方向に配向している場合、得られる繊維強化樹脂組成物は、力学特性に、より優れる利点がある。
繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(C)がランダムに分散している場合は、繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(C)の繊維長は、数平均繊維長で0.01〜5mmが好ましく、0.01〜3mmがより好ましく、0.05〜1mmがさらに好ましい。かかる範囲内とすることで、流動性が向上し、成形加工性に、より優れたものとなる。また、繊維長が長くなるほど、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性が向上するため好ましい。
繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(C)が1方向あるいは多方向に配向している場合は、炭素繊維(C)の繊維長が長い方が力学特性に優れる。炭素繊維(C)の繊維長の上限としては、繊維強化樹脂組成物と実質的に同じ長さが例示できる。
ここで、「実質的に同じ長さ」とは、繊維強化樹脂組成物の全長よりも有意に短い炭素繊維(C)が実質的に含まれないことである。具体的には、繊維強化樹脂組成物の全長の50%以下の長さの炭素繊維(C)の含有量が、炭素繊維(C)全体に対して30質量%以下である場合には、繊維強化樹脂組成物の全長よりも有意に短い炭素繊維(C)が実質的に含まれていないとする。さらに、繊維強化樹脂組成物の全長の50%以下の長さの炭素繊維(C)の含有量は20質量%以下であることが好ましい。なお、繊維強化樹脂組成物の全長とは繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(C)の配向方向の長さである。
このような繊維強化樹脂組成物を得る為の1例として、押出機を用いて溶融混練を行う方法が例示できる。押出機としては、単軸押出機や二軸押出機が例示でき、中でも混練性に優れる二軸押出機を好ましく用いることができる。二軸押出機としては、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比L/Dが20〜100であるものが例示できる。さらに、二軸押出機のスクリューは、フルフライトやニーディングディスクなどの長さや形状的特長が異なるスクリューセグメントが組み合わされて構成されるが、混練性と反応性の向上の点から、1個以上のニーディングディスクを含むことが好ましい。溶融混練条件として、溶融混練の際のシリンダー温度は、混練性と反応性の向上の点から250〜400℃が好ましく、280〜350℃がより好ましく、280〜310℃がさらに好ましい。かかる構成の二軸押出機を用いることで、二軸押出機のシリンダー内で各成分の官能基同士の反応が進行し、得られる繊維強化樹脂組成物の引張強度や伸度といった力学特性がさらに向上する。
前記押出機を用いて本発明の繊維強化樹脂組成物を得る為の第1の方法としては、サイジング剤(D)で表面処理した炭素繊維(C)とPAS(A)とカルボジイミド化合物(B)とを溶融混練する方法が挙げられる。この方法では、炭素繊維(C)がランダムに分散した溶融混練物が得られ、この溶融混練物をペレットとすることで射出成形などに好適に用いられる。射出成形によって成形する場合、複雑形状の成形品を生産性良く製造できる。
前記押出機を用いて本発明の繊維強化樹脂組成物を得る為の第2の方法としては、PAS(A)とカルボジイミド化合物(B)を予め溶融混練した樹脂組成物をサイジング剤(D)で表面処理した炭素繊維(C)を用いた炭素繊維基材と複合化させる方法が挙げられる。前記炭素繊維基材の形状としては、例えば連続した炭素繊維を一方向に配列させてシート状とした一方向配列基材、織物(クロス)、不織布、マット、編み物、組み紐、ヤーン、トウ、などが挙げられる。前記複合化の形態としては、含浸、被覆、積層などが挙げられるが、ボイドなどが少なく、引張強度や伸度といった力学特性に優れる繊維強化樹脂組成物が得られる為に、前記樹脂組成物を前記炭素繊維基材に含浸させたものが好ましい。このような繊維強化樹脂組成物は、プレス成形、スタンピング成形、オートクレーブ成形、フィラメントワインディング成形、トランスファー成形、射出成形によって、成形品に成形できる。中でも、成形品の生産性と力学特性のバランスからプレス成形とスタンピング成形が好ましく用いられる。
<繊維強化樹脂組成物を用いた製品>
本発明の繊維強化樹脂組成物は、電子機器筐体として好適であり、コンピューター、テレビ、カメラ、オーディオプレイヤーなどに好適に使用される。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、電気電子部品用途に好適であり、コネクター、LEDランプ、ソケット、光ピックアップ、端子板、プリント基板、スピーカー、小型モーター、磁気ヘッド、パワーモジュール、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーターなどに好適に使用される。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、自動車用部品や車両関連部品などに好適であり、安全ベルト部品、インストルメントパネル、コンソールボックス、ピラー、ルーフレール、フェンダー、バンパー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、ガーニッシュ、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、ウィンドウォッシャーノズル、ワイパー、バッテリー周辺部品、ワイヤーハーネスコネクター、ランプハウジング、ランプリフレクター、ランプソケットなどに好適に使用される。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、建材として好適であり、土木建築物の壁、屋根、天井材関連部品、窓材関連部品、断熱材関連部品、床材関連部品、免震制振部材関連部品、ライフライン関連部品などに好適に使用される。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、スポーツ用品として好適であり、ゴルフクラブのシャフト、ゴルフボールなどのゴルフ関連用品、テニスラケットやバトミントンラケットなどのスポーツラケット関連用品、アメリカンフットボールや野球、ソフトボールなどのマスク、ヘルメット、胸当て、肘当て、膝当てなどのスポーツ用身体保護用品、釣り竿、リール、ルアーなどの釣り具関連用品、スキー、スノーボードなどのウィンタースポーツ関連用品等に好適に使用される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
まず、本発明に使用した評価方法を下記する。
(1)繊維強化樹脂組成物中に含まれる炭素繊維(C)の平均繊維長
繊維強化樹脂組成物の一部を切り出し、300℃で加熱プレスし、30μm厚のフィルムを得た。得られたフィルムを光学顕微鏡にて150倍に拡大観察し、フィルム内で分散した繊維を観察した。その長さを1μm単位まで測定して、次式により数平均繊維長(Ln)および質量平均繊維長(Lw)を求めた。
数平均繊維長(Ln)=(ΣLi)/Ntotal
質量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×Wi/100)
Li:測定した繊維長さ(i=1、2、3、・・・、n)
Wi:繊維長さLiの繊維の質量分率(i=1、2、3、・・・、n)
Ntotal:繊維長さを測定した総本数
(2)繊維強化樹脂組成物の密度
JIS K7112のA法(水中置換法)に準拠し測定した。繊維強化樹脂組成物から約3g試験片を切り出し、浸漬液にはエタノールを用いて評価を行った。
(3)繊維強化樹脂組成物の引張試験
ASTM D638に準拠し、Type−I試験片を用い、試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機(インストロン社製)を用いた。本発明において、引張伸度とは、ひずみゲージを用いて測定した破断点ひずみのことを指す。
(4)繊維強化樹脂組成物のシャルピー衝撃試験
ASTM D256のB法に準拠し、厚さ1/8インチ(3.175mm)のノッチ付き試験片を用いて、シャルピー衝撃試験を行った。
(5)硫黄濃度比S/Cの測定
本発明における硫黄濃度比S/Cは、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて、次の手順に従って求めた。まず、集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、FIBマイクロサンプリング法により、繊維強化樹脂組成物から観察用試験片を作製した。次に下記の装置および測定条件によって所定の範囲の炭素原子数および硫黄原子数を検出し、得られた硫黄原子数を炭素繊維原子数で除することで、その範囲の硫黄濃度比S/Cとした。
S1は、領域(T1)内の任意の300nm×300nmの範囲を100箇所測定した値の平均値とした。
S2は、領域(T2)内の任意の300nm×300nmの範囲を100箇所測定した値の平均値とした。
装置:原子分解能分析電子顕微鏡(STEM); JEM−ARM200F(JEOL製)
エネルギー分散型X線分析装置 ; JED−2300(JEOL製)
測定条件:加速電圧; 200kV
beam spot size; 0.2nmφ
(6)繊維強化樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料におけるカルボジイミド化合物(B)の存在比Rb
エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて、R(≦500nm)とR(>500nm)の各領域についてC(炭素原子)/S(硫黄原子)の比を評価した。C/Sは、集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、FIBマイクロサンプリング法により、繊維強化複合材料から観察用試験片を作製した。次に下記装置、条件によって所定の範囲の炭素原子数および硫黄原子数を検出し、得られた炭素原子数を硫黄原子数で除することで、その範囲の炭素濃度比C/Sとした。この方法によって、測定場所でPASのC/SよりもC(炭素原子)が多いか少ないかを判断することができ、PAS以外の化合物、すなわちカルボジイミド化合物(B)が多いか少ないかを知ることができることから、カルボジイミド化合物(B)の測定場所における存在量を間接的に知ることができることになり、各C/Sを式(1)に代入し繊維強化複合材料のカルボジイミド化合物(B)の存在比Rbを求めた。
R(≦500nm)=C(≦500)/S(≦500):炭素繊維(C)周辺500nm以内のカルボジイミド化合物(B)の存在量
R(>500nm)=C(>500)/S(>500):炭素繊維(C)周辺500nmより外側のカルボジイミド化合物(B)の存在量
Rb=R(≦500nm)/R(>500nm)・・・式(1)
装置:原子分解能分析電子顕微鏡(STEM); JEM−ARM200F(JEOL製)
エネルギー分散型X線分析装置 ; JED−2300(JEOL製)
測定条件:加速電圧; 200kV
beam spot size; 0.2nmφ
次に、本発明の実施例および比較例に用いた材料について説明する。
実施例1〜10または比較例1〜19のいずれかで用いたPAS(A)は、以下の通りである。
(PPS−1)融点285℃、質量平均分子量30,000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%のポリフェニレンスルフィド
(PPS−2)融点285℃、質量平均分子量45,000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%のポリフェニレンスルフィド
(PPS−3)融点285℃、質量平均分子量55,000、酸末端品、クロロホルム抽出量0.5質量%のポリフェニレンスルフィド
(PPS−4)融点285℃、質量平均分子量45,000、酸末端品、クロロホルム抽出量3.0質量%のポリフェニレンスルフィド
実施例1〜10および比較例1〜19で用いたカルボジイミド化合物(B)は、以下の通りである。
(CDI−1)脂肪族ポリカルボジイミド「“カルボジライト(登録商標)”HMV−8CA(日清紡ケミカル社製)」(カルボジイミド基当量278、質量平均分子量3,000)
(CDI−2)芳香族ポリカルボジイミド「“スタバクゾール(登録商標)”P(ラインケミー社製)」(質量平均分子量4,000)
(CDI−3)芳香族ポリカルボジイミド「“スタバクゾール(登録商標)”P400(ラインケミー社製)」(質量平均分子量20,000)
実施例1〜10および比較例1〜19で用いた炭素繊維(C)は、以下の通りである。
(CF−1)ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理、および表面酸化処理を行うことによって、総単糸数12,000本の連続した炭素繊維ストランドを得た。この炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
引張強度:4,900MPa
引張弾性率:240GPa
引張伸度:2%
比重:1.8
単糸直径:7μm
表面酸素濃度比[O/C]:0.12
(CF−2)ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理、および表面酸化処理を行うことによって、総単糸数12,000本の連続した炭素繊維ストランドを得た。この炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
引張強度:4,900MPa
引張弾性率:230GPa
引張伸度:2%
比重:1.8
単糸直径:7μm
表面酸素濃度比[O/C]:0.06
比較例7または12のいずれかで用いたガラス繊維は、以下の通りである。
(GF−1)E−Glass製、総単糸数1,600本の連続したガラス繊維ストランド
このガラス繊維の特性は次に示す通りであった。
引張強度:3,400MPa
引張弾性率:72GPa
引張伸度:3%
比重:2.6
単糸直径:13μm
実施例1〜10または比較例1〜19のいずれかで用いたサイジング剤(D)は、以下の通りである。
(SZ−1)グリセロールトリグリシジルエーテル(和光純薬工業社製)
質量平均分子量:260
1分子当たりのエポキシ基数:3
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:87
(SZ−2)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(SIGMA−ALDRICH社製)
質量平均分子量:340
1分子当たりのエポキシ基数:2
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:170
(SZ−3)(3−グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン(SIGMA−ALDRICH社製)
質量平均分子量:278
1分子当たりのエポキシ基数:1
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:278
(SZ−4)ポリアクリル酸(SIGMA−ALDRICH社製)
質量平均分子量:2,000
1分子当たりのカルボキシル基数:27
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:74
(SZ−5)ポリビニルアルコール(和光純薬工業社製)
質量平均分子量:22,000
1分子当たりの水酸基数:500
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:44
(SZ−6)ポリエチレンイミン(SIGMA−ALDRICH社製)
質量平均分子量:2,000
1分子当たりのアミノ基数:47
質量平均分子量を1分子当たりのカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、水酸基の総数で除した値:43
(実施例1)
表1に示すPAS(A)、カルボジイミド化合物(B)、炭素繊維(C)、サイジング剤(D)を用いて、以下の手順により繊維強化樹脂組成物からなる射出成形品を得た。
炭素繊維(C)の繊維束を連続的に引き取り、サイジング剤(D)を2質量%含む水系のサイジング母液に浸漬し、次いで230℃で加熱乾燥することで、サイジング剤(D)で表面処理をした炭素繊維(C)を得た。乾燥後のサイジング剤(D)の付着量は、炭素繊維(C)100質量部に対して1質量部であった。さらにサイジング剤(D)で表面処理をした炭素繊維(C)を6mmの長さに切断することでチョップドストランドとした。
二軸押出機(JSW社 TEX−30α、L/D=31.5)を使用し、PAS(A)およびカルボジイミド化合物(B)をメインフィード、前記チョップドストランドをサイドフィードして各成分の溶融混練を行った。溶融混練はシリンダー温度290℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量10kg/時で行い、吐出物を引き取りながら水冷バスで冷却することでガットとし、前記ガットを5mmの長さに切断することでペレットとした。
射出成形機(JSW社 J150EII−P)を使用し、前記ペレットの射出成形を行うことで各種評価用の試験片を作製した。射出成形は、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で行い、射出成形の際の最大圧力を射出成形圧とした。
得られた試験片は、150℃で2時間アニール処理した後に、空冷して各試験に供した。評価結果を表1に記載した。
(比較例1)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表1に記載した。
(比較例2)
カルボジイミド化合物(B)の成分として、脂肪族カルボジイミドであるCDI−1の代わりに芳香族カルボジイミド化合物であるCDI−2に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表1に記載した。
(比較例3)
カルボジイミド化合物(B)の成分として、脂肪族カルボジイミドであるCDI−1の代わりに芳香族カルボジイミド化合物であるCDI−3に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表1に記載した。
表1の実施例および比較例より以下のことが明らかである。
実施例1に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、カルボジイミド化合物(B)として脂肪族カルボジイミド化合物を用いている為、カルボジイミド化合物(B)を含まない、比較例1に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品や、カルボジイミド化合物(B)として芳香族カルボジイミド化合物を用いた、比較例2、3に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品に比べ、引張強度や引張伸度が大きく向上することがわかる。
(実施例2)
炭素繊維(C)をCF−1の代わりにCF−2に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例4)
サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−2に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例5)
サイジング剤(D)を含まない以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例6)
サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−3に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例7)
炭素繊維(C)であるCF−2の代わりに、ガラス繊維であるGF−1を用い、サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−3に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例8)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例9)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、比較例4と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例10)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、比較例5と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例11)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、比較例6と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(比較例12)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、比較例7と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(実施例3)
サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−4に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(実施例4)
サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−5に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
(実施例5)
サイジング剤(D)をSZ−1の代わりにSZ−6に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表2に記載した。
表2の実施例および比較例より以下のことが明らかである。
実施例2に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、サイジング剤(D)としてエポキシ基を1分子中に3個有するSZ−1を用いている為、サイジング剤(D)としてエポキシ基を1分子中に2個有するSZ−2を用いた、比較例4に記載の繊維強化繊維強化樹脂組成物からなる成形品や、サイジング剤(D)を含まない、比較例5に記載の繊維強化繊維強化樹脂組成物からなる成形品や、サイジング剤(D)としてエポキシ基を1分子中に1個有するSZ−3を用いた、比較例6に記載の繊維強化繊維強化樹脂組成物からなる成形品に比べ、引張強度や引張伸度が大きく向上することがわかる。
実施例2に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品は、炭素繊維(C)としてPAN系炭素繊維を用いている為、炭素繊維(C)の代わりにガラス繊維を用いた、比較例7に記載の繊維強化繊維強化樹脂組成物からなる成形品に比べ、引張強度や引張伸度が大きく向上することがわかる。
実施例2および比較例4〜7に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較例8〜12に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品のそれぞれの比較から、カルボジイミド化合物(B)に脂肪族カルボジイミドを用いることで、繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度や引張伸度が向上することが分かるが、とりわけ炭素繊維(C)にPAN系炭素繊維を用い、サイジング剤(D)にエポキシ基を1分子中に3個有するSZ−1を用いることで引張強度や引張伸度の向上効果が高いことがわかる。
実施例2〜5に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較例4〜6に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品の比較から、サイジング剤(D)にカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に3個以上有する化合物を用いることで、得られる繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度や引張伸度が大きく向上することがわかる。
(実施例6)
PAS(A)をPPS−1の代わりにPPS−2に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表3に記載した。
(実施例7)
PAS(A)をPPS−1の代わりにPPS−3に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表3に記載した。
(比較例13)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例6と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表3に記載した。
(比較例14)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例7と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表3に記載した。
(実施例8)
PAS(A)をPPS−1の代わりにPPS−4に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表3に記載した。
表1と表3の実施例および比較例より以下のことが明らかである。
実施例1および6〜7に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較例1および13〜14に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品の比較から、カルボジイミド化合物(B)に脂肪族カルボジイミドを用いることで、繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度や引張伸度が向上することが分かるが、とりわけPAS(A)の質量平均分子量が小さい方が引張強度や引張伸度の向上効果が高く、射出成形圧が低く成形加工性に優れることがわかる。
実施例6に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と実施例8に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品の比較から、PAS(A)のクロロホルム抽出量を2質量%以下とすることで引張強度や引張伸度が向上することがわかる。
(実施例9)
サイジング剤(D)の付着量を炭素繊維(C)100質量部に対して1質量部としたまま、炭素繊維(C)の割合がPAS(A)100質量部に対して15質量部になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表4に記載した。
(実施例10)
サイジング剤(D)の付着量を炭素繊維(C)100質量部に対して1質量部としたまま、炭素繊維(C)の割合がPAS(A)100質量部に対して45質量部になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表4に記載した。
(比較例15)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例9と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表4に記載した。
(比較例16)
カルボジイミド化合物(B)を含まない以外は、実施例10と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表4に記載した。
(比較例17)
サイジング剤(D)の付着量を炭素繊維(C)100質量部に対して1質量部としたまま、炭素繊維(C)の割合がPAS(A)100質量部に対して400質量部になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製しようとしたところ、二軸押出機のシリンダー内での詰まりが生じ、繊維強化樹脂組成物を得ることができなかった。組成比を表4に記載した。
(比較例18)
カルボジイミド化合物(B)の割合がPAS(A)100質量部に対して20質量部になるように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、試験片を作製しようとしたところ、射出成形機の計量不良により成形することができなかった。組成比を表4に記載した。
(比較例19)
サイジング剤(D)で表面処理をした炭素繊維(C)を得る工程において、サイジング剤(D)を含む水系のサイジング母液の濃度を40質量%とし、乾燥後のサイジング剤(D)の付着量を、炭素繊維(C)100質量部に対して20質量部とした以外は、実施例4と同様の方法で、試験片を作製し、各評価に供した。評価結果を表4に記載した。
表1、表2および表4の実施例および比較例より以下のことが明らかである。
実施例1および9〜10に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較例1および15〜16に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品の比較から、炭素繊維(C)の繊維強化樹脂組成物中の含有率が変化しても、繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度や引張伸度が向上することがわかる。
比較例17から、炭素繊維(C)の含有率が本発明で指定した範囲を超えると繊維強化樹脂組成物の生産性が著しく低下することがわかる。
比較例18から、カルボジイミド化合物(B)の含有率が本発明で指定した範囲を超えると繊維強化樹脂組成物の成形加工性が著しく低下することがわかる。
実施例4に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品と比較例19に記載の繊維強化樹脂組成物からなる成形品の比較から、サイジング剤(D)の含有率が本発明で指定した範囲を超えると繊維強化樹脂組成物からなる成形品の引張強度や引張伸度が低下することがわかる。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、従来品に比べ、引張強度や伸度といった力学特性を飛躍的に向上させることが可能である。さらに本発明の繊維強化樹脂組成物は、低分子量のPASをマトリックス樹脂とするほど力学特性が向上するため力学特性と生産性および成形加工性を兼ね備えた繊維強化樹脂組成物となる。このため、本発明の繊維強化樹脂組成物は、電子機器筐体、電気電子部品用途、自動車用部品や車両関連部品、建材、スポーツ用品などに好適に使用することができる。
1 ポリアリーレンスルフィド(A)とカルボジイミド化合物(B)を含むマトリックス樹脂
2 炭素繊維(C)表面の硫黄元素濃度が低い領域
3 炭素繊維(C)の断面
4 炭素繊維(C)の断面
5 領域(T1)
6 領域(T2)
7 炭素繊維(C)の断面円;炭素繊維(C)と領域(T1)との境界線
8 炭素繊維(C)の断面円から外側に向かう法線の一例
9 炭素繊維(C)の断面円の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円;領域(T1)と領域(T2)の境界線
10 領域(T1)から外側に向かう法線の一例
11 領域(T1)の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円;領域(T2)の境界線

Claims (12)

  1. ポリアリーレンスルフィド(A)とカルボジイミド化合物(B)と炭素繊維(C)を含有し、かつ、前記炭素繊維(C)がサイジング剤(D)で表面処理されている繊維強化樹脂組成物であって、前記カルボジイミド化合物(B)が脂肪族カルボジイミド化合物であって、前記サイジング剤(D)がカルボキシル基、アミノ基、水酸基およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を1分子中に3個以上有する化合物であり、成分(A)100質量部に対して、成分(B)を0.1〜10質量部、成分(C)を10〜300質量部含有し、成分(C)100質量部に対して、成分(D)を0.01〜5質量部含有する、繊維強化樹脂組成物。
  2. 前記サイジング剤(D)を構成する化合物は、その質量平均分子量を1分子中の前記官能基の数で除した値が40〜150である、請求項1に記載の繊維強化樹脂組成物。
  3. 前記サイジング剤(D)を構成する化合物が脂肪族化合物である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂組成物。
  4. 前記サイジング剤(D)を構成する化合物が3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂組成物。
  5. 前記炭素繊維(C)は、X線光電子分光法(XPS)で測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.50である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
  6. 前記脂肪族カルボジイミド化合物は、その質量平均分子量が500〜10,000である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
  7. 前記ポリアリーレンスルフィド(A)は、その質量平均分子量が10,000〜40,000である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
  8. 前記ポリアリーレンスルフィド(A)は、クロロホルムによるオリゴマー抽出量が2質量%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
  9. エネルギー分散型X線分光法(EDX)で測定される硫黄濃度比S/Cが下記式を満たす、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。
    10(%) ≦ ΔS = (S2−S1)/S2 × 100 ≦ 70(%)
    (ここで、ΔSは前記成分(C)の軸心方向に直交する断面で見た硫黄元素濃度の勾配であり、S1は前記成分(C)の断面円の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円の内側から前記成分(C)を除いた領域(T1)の硫黄濃度比S/Cであり、S2は前記領域(T1)の外側に法線方向に500nmの距離で引いた円の内側から前記成分(C)と前記領域(T1)を除いた領域(T2)の硫黄濃度比S/Cである。)
  10. 前記領域(T2)におけるエネルギー分散型X線分光法(EDX)で測定される硫黄濃度比S/Cが0.1〜0.2である、請求項9に記載の繊維強化樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物が成形されてなる、成形品。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料であって、式(1)で示されるカルボジイミド化合物(B)の存在比Rbが1.2以上である、繊維強化複合材料。
    Rb=R(≦500nm)/R(>500nm)・・・式(1)
    R(≦500nm):炭素繊維(C)周辺500nm以内のカルボジイミド化合物(B)の存在量
    R(>500nm):炭素繊維(C)周辺500nmより外側のカルボジイミド化合物(B)の存在量
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