JP2015108406A - 管継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】施工不完全状態である場合に施工が正常に完了したと誤判定されることを防止する。【解決手段】管継手1は、継手本体21と第1のシール部材5と弾性機構部4とリテーナ6とを備える。弾性機構部4は、圧縮状態に保持された圧縮コイルばね41と、フレキシブル管の挿入を受けて内孔21の軸方向に移動可能な移動部材43とを備え、フレキシブル管が所定位置まで挿入されたときに、移動部材43が圧縮コイルばね41を圧縮状態から解放することによって第1のシール部材5を挿入方向とは逆方向へスライドさせる。リテーナ6は、第1のシール部材5のスライドによる押圧力を受け、フレキシブル管と係合してフレキシブル管を抜け止めする。移動部材43は、フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へ突出する羽片432bを備え、圧縮コイルばね41が圧縮状態にあるときに限り、羽片432bは第1のシール部材5の内径側のシール面の内側に位置する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えばガス配管等に使用されるフレキシブル管を接続するための管継手に関する。
従来の管継手は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキシブル管が挿入されると圧縮スプリングが解放され、パッキンが管挿入方向と逆方向に押されリテーナを縮径させることにより、リテーナがフレキシブル管をロックする構造を有している。この管継手によれば、作業者は、挿入後にフレキシブル管を引っ張り、フレキシブル管が抜けてこないことを確認することで、施工が正常に完了したと判断することができる。ここで、「施工が正常に完了している」とは、フレキシブル管が管継手に完全に挿入され、フレキシブル管がリテーナによって管継手に正しく接続されていることを示している。
国際公開WO/2010/131609号公報
しかしながら、従来の管継手では、パッキンとフレキシブル管の外表面とが接する位置までフレキシブル管を挿入して、フレキシブル管とパッキンとの間をシールする構造であるので、フレキシブル管の挿入途中の段階であってもフレキシブル管とパッキンとがシールする場合が考えられる。そのほか、従来の管継手においては、さらなる信頼性の向上、省資源化、製造の容易化等が望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態は、管継手である。この管継手は、一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と;前記内孔において、前記フレキシブル管と前記継手本体とをシールするシール部材と;前記内孔に設けられるとともに圧縮状態に保持された弾性部材と、前記フレキシブル管の挿入を受けて前記内孔の軸方向に移動可能な移動部材と;を備える弾性機構部であって、前記フレキシブル管が所定位置まで挿入されたときに、前記移動部材が前記弾性部材を圧縮状態から解放することによって、前記弾性部材の伸張力によって前記シール部材を前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドさせる弾性機構部と;前記シール部材に隣接し、前記シール部材のスライドによる押圧力を受けることによって、前記フレキシブル管と係合して前記フレキシブル管を抜け止めする抜け止め部材と;を備え、前記移動部材は、前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へ突出する羽片を備え;前記弾性部材が圧縮状態にあるときに限り、前記羽片は前記シール部材の内径側のシール面の内側に位置することを特徴としている。
この形態の管継手によれば、弾性機構部が圧縮状態にあるときには、羽片はシール部材の内径側のシール面の内側に必ず位置することから、フレキシブル管がシール部材の内径側のシール面の内側に達した状態では、弾性機構部が圧縮状態にある限り、羽片はシール部材とフレキシブル管との間に介在することになる。このため、シール部材とフレキシブル管との間において羽片周りにガスの逃げ道が形成されることから、フレキシブル管が所定位置まで挿入されずに弾性機構部が圧縮状態にある場合に、シール部材とフレキシブル管との間から確実にガス漏れを生じさせることができる。したがって、この形態の管継手によれば、弾性機構部が圧縮状態にある場合には、確実にガス漏れがあり、弾性機構部が非圧縮状態(伸張状態)にある場合には、確実にガス漏れがない。この結果、この形態の管継手によれば、シール部材とフレキシブル管の外表面とが接する位置までフレキシブル管を挿入した状態で施工が中断されてしまうような施工不完全状態であっても、ガス漏れ検査を行なうことで、施工が正常に完了していないことを確実に発見できるという効果を奏する。
(2)前記形態の管継手において、前記弾性部材は、圧縮ばねと、一端に前記圧縮ばねを支持するための支持部を備えるガイド部材と、を備え;前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、前記圧縮ばねが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成してもよい。この構成によれば、施工後はシール部材を圧縮ばねが押し続けることから、長期シール性を向上することができる。
(3)前記形態の管継手において、前記シール部材の前記フレキシブル管側のシール面における、前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向側の端部に、スリットを備える構成としてもよい。この構成によれば、施工が正常に完了していない状態で、施工が正常に完了されたと判断されることを、より防止することができる。
(4)前記形態の管継手において、前記シール部材の前記フレキシブル管側のシール面における、前記フレキシブル管の挿入方向側の端部に、環状溝を備え;前記圧縮ばねが圧縮状態から解放されたときには、前記移動部材の羽片は、前記環状溝に収納され、前記シール部材と前記フレキシブル管との間に介在することがない、構成としてもよい。この構成によれば、圧縮ばねが圧縮状態から解放されたときに、羽片をシール面から確実に逃すことができる。したがって、圧縮ばねが伸張状態にあるときに、羽片が気密パッキンとフレキシブル管との間のシール面に入り込んで、ガス漏れを発生させることがない。
(5)前記形態の管継手において、前記移動部材は、前記フレキシブル管の挿入方向へ突出するとともに、先端に係止め部を有する係止め用突出片を備え;前記フレキシブル管が前記所定位置まで挿入されたときに、前記継手本体に設けられた所定の位置に前記係止め部が係合される構成としてもよい。この構成によれば、フレキシブル管が所定位置まで挿入された以後において、移動部材がフレキシブル管の挿入方向と逆の方向にスライドすることがない。したがって、フレキシブル管が所定位置まで挿入された以後において、羽片が気密パッキンとフレキシブル管との間のシール面に入り込んで、ガス漏れを発生させることがない。
(6)前記形態の管継手において、前記移動部材は、当該移動部材のスライドの方向において第1の部分と前記羽片を有する第2の部分とに分割可能であり;当該管継手の組み立て時において、前記第1の部分と前記第2の部分とが連結される構成としてもよい。この構成によれば、管継手の組み立て時において移動部材の組み立てが可能となる。
(7)前記形態の管継手において、前記移動部材は、当該移動部材のスライドの方向において第1の部分と前記羽片を有する第2の部分とに分割可能であり;当該管継手の施工途中において、前記スライドに伴って前記第1の部分と前記第2の部分とが連結される構成としてもよい。この構成によれば、管継手の組み立て時において第1の部分と第2の部分との連結が不要となることから、組み立てが容易である。
(8)前記形態の管継手において、前記継手本体に部分的に挿入されるとともに、前記フレキシブル管が挿入される押ナットと;前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持する係止機構と;を備え;前記係止機構は、ストップリングと、前記ストップリングを受承するように前記押ナットの外面に形成された環状溝と、前記ストップリングを受承するとともに相互に連通するように前記継手本体の内面に形成された複数の係止溝とからなり;前記ストップリングは、前記フレキシブル管の接続完了まで前記環状溝と第1の係止溝に跨がって係合しており;前記フレキシブル管の接続完了後に前記フレキシブル管に抜け方向の力を加えると、前記ストップリングは前記第一の係止溝からそれより入口側の第二の係止溝に移動し、もって前記フレキシブル管の正常な接続を確認できる程度に前記押ナットが前記継手本体から引き出される構成としてもよい。この構成によれば、作業者はフレキシブル管を引っ張ることによって接続確認を行うことができる。
(9)前記形態の管継手において、前記押ナットに前記インジケータが設けられており、前記インジケータは前記フレキシブル管の接続完了まで前記継手本体に隠蔽されており、接続完了後に前記フレキシブル管を引っ張ると前記押ナットが前記継手本体から引き出されるとともに前記インジケータが前記継手本体から露出する構成としてもよい。この構成によれば、目視による接続確認をより確実に行うことができる。
第1実施形態としての管継手を示す部分断面側面図である。 管継手を示す分解斜視図である。 管継手をフレキシブル管とともに示す分解部分断面側面図である。 押ナットを示す部分断面側面図である。 ガイド部材の折曲部付近の拡大断面図である。 移動部材を示す説明図である。 気密パッキンを示す説明図である。 第3のシール部材を示す説明図である。 管継手の組立時における係止機構の変化を示す説明図である。 管継手の施工途中1を示す部分断面側面図である。 管継手の施工途中2を示す部分断面側面図である。 管継手の施工途中3を示す部分断面側面図である。 管継手の施工後を示す部分断面側面図である。 ストップリングと係止溝との位置関係を示す断面図である。 第2実施形態としての管継手を示す部分断面側面図である。 弾性機構部に備えられる移動部材の一部破断図である。 移動部材を分割したときの斜視図である。 気密パッキンを示す説明図である。 第2実施形態としての管継手の施工途中1を示す部分断面側面図である。 第3実施形態としての管継手を示す部分断面側面図である。 第3実施形態としての管継手の施工途中1を示す部分断面側面図である。
A.第1実施形態:
本発明の第1実施形態としての管継手は、フレキシブル管の接続工程とフレキシブル管の接続が正常であることの確認工程とを二回のアクションで行う構造を有する。接続工程と接続確認工程とを分けることにより、施工現場が狭くて暗い場合でも、作業者がフレキシブル管の接続とその確認を簡単かつ確実に行うことができるだけでなく、施工後に施工管理者は管継手の外観から正常な施工が行われたか否かを確実に確認できる。特に接続工程と接続確認工程とを二回のアクションで行うので、接続確認を忘れることがない。
A−1.構造:
図1は第1実施形態としての管継手を示す部分断面側面図であり、図2は管継手を示す分解斜視図であり、図3は管継手をフレキシブル管とともに示す分解部分断面側面図である。これら図に示すように、第1実施形態としての管継手1は、一端側からフレキシブル管が挿入される内孔21を有し、他端側におねじ部22が形成された継手本体2と、継手本体2に部分的に挿入される押ナット3と、継手本体2の内部に装着される弾性機構部4と、第1のシール部材5と、リテーナ6と、ストップリング7と、第2のシール部材8と、第3のシール部材9と、インジケータリング10とを有する。フレキシブル管は、例えば樹脂被覆した金属コルゲート管である。
(a)継手本体:
図3に示すように、継手本体2の内孔21は、おねじ部22側から順に、おねじ部22の内径より大きな内径を有し、弾性機構部4および第1のシール部材5をスライドして受承する第1の内径部21aと、第1の内径部21aの内径より大きな内径を有し、リテーナ6および押ナット3をスライドして受承する第2の内径部21bとからなり、第1の内径部21aの奥側端部には内方環状突起部23が設けられており、第2の内径部21bの入口側端部には環状溝24が設けられている。第2の内径部21bには、ストップリング7が軸線方向に移動可能に装着される係止溝集合体17が設けられている。係止溝集合体17は、第1〜第3の係止溝171、172、173からなっている。また、おねじ部22の内径部22aにおける入口側端部には、円環状の係止用溝25が設けられている。
(b)押ナット:
図4は、管継手1が有する押ナット3を示す部分断面側面図である。押ナット3は、リテーナ6に当接するテーパ面31aを有する先端部31と、ストップリング7が進入する第1の外周環状溝32と、円環状の第2のシール部材8を受承する第2の外周環状溝33と、継手本体2の入口端に近接する位置でインジケータリング10を受承する第3の外周環状溝34と、円環状の第3のシール部材9を受承する内周環状溝35と、継手本体2の入口端付近に設けられた外気との連通孔(例えば円孔)36と、内周環状溝35を覆う入口端の内方フランジ部37とを有する。内方フランジ部37の内端部は、内側(内周環状溝35側)に屈曲したカエリ部37aになっている。また連通孔36に選択透過性部材12が装着される。
(c)弾性機構部:
図1に示すように、継手本体2と押ナット3との間に装着される弾性機構部4は、フレキシブル管100の装着前には圧縮コイルばね41が圧縮状態に保持されているが、フレキシブル管100を継手本体2の所定位置まで挿入したときに、圧縮コイルばね41の圧縮状態が解放されて伸張することによって、第1のシール部材5をフレキシブル管100の挿入方向(図中のX方向の正の向き)と逆の方向(図中のX方向の負の向き)に押圧し、もってリテーナ6を押ナット3の先端テーパ面31aに当接させる。フレキシブル管100の挿入される前記所定位置は、本実施形態では、フレキシブル管100を挿入したときに奥に突き当たる位置であり、圧縮状態から伸張状態に切り替わる位置である。弾性機構部4の詳細は、次の通りである。
図1〜図3に示すように、弾性機構部4は、圧縮コイルばね41(図1は圧縮された状態を示す)と、ほぼL字形断面を有するほぼ円筒状のガイド部材42と、ガイド部材42の内側に軸線方向(X方向と一致)に移動可能に設けられる筒状の移動部材43とからなる。
図3に示すように、ガイド部材42は、弾性金属板により形成され、中空円板状支持部421と、中空円板状支持部421の円周方向に沿った位置から軸線方向にかつ僅かに内方に傾斜して延出する複数の円弧板部422とを有する。図5の拡大断面図に示すように、円弧板部422は、先端に斜め外方に折曲げられた部分(折曲部)422aを有し、折曲部422aの外面には微少な突起423が設けられている。
図6は、移動部材43を示す説明図である。図中の(a)は移動部材43の一部分の断面図であり、(b)は移動部材43をX方向の負の向き側から見た斜視図であり、(c)は移動部材43をX方向の正の向き側から見た斜視図である。これら図に示すように、移動部材43は、肉厚の円環形状であるフランジ部431と、複数(この実施形態では8つ)の羽部432と、複数(この実施形態では4つ)の係止め用突出片433とを有する。
図6(a)、(b)に示すように、各羽部432は、フランジ部431におけるX方向の負の向き側の端部431aから軸線方向(X方向に相当)に延出(突出)する円弧板状の部材であり、各羽部432は、円形状に並ぶ。なお、各羽部432は、根元側(フランジ部431側)に位置する羽基部432aと、先端側に位置する羽片432bとが連結した構成となっており、さらに、羽片432bの先端に斜め外方に折曲げられた部分(折曲部)432cを有している。羽基部432aは肉厚となっており、段部432dが形成されている。この段部432dに金属コルゲート管101の先端が当接しうる。羽片432bは、羽基部432aより厚さが薄く、かつ、わずかに外側(内孔21の壁面側)に位置している。
図6(a)、(c)に示すように、係止め用突出片433は、フランジ部431におけるX方向の正の向き側の端部431bから軸線方向に延出(突出)する円弧板状の部材であり、羽部432よりも幅狭となっている。係止め用突出片433の先端には、外側(内孔21の壁面側)に突出する係止め部433aを備える。係止め用突出片433の内側の面は、おねじ部22(図1(参照)の内径部22aとほぼ面一となっており、フレキシブル管100が奥に突き当たる位置に挿入されたときに、係止め部433aが内径部22aに備えられる係止用溝25に係入される。こうした構成によって、フレキシブル管100が奥に突き当たる位置まで挿入されたときに、係止め用突出片433が継手本体2に係合されることになり、移動部材43は継手本体2と繋がった状態となる。
フランジ部431は、ガイド部材42の円弧板部422と当接しうる。フランジ部431の外周面には、円弧板部422の折曲部422aの外面に設けられた微少な突起423が嵌まる環状凹部431cが設けられている。なお、環状凹部431cは、微小な溝であるから、図6(a)だけに記載し、その他の図面については図示の便宜から省略した。移動部材43は、スライドを円滑に行うためにエンジニアリングプラスチックのように低比重、高強度および低摩擦係数の材料からなるのが好ましい。
図1に示すように、フレキシブル管100を継手本体2に挿入する前の状態では、圧縮コイルばね41はガイド部材42の中空円板状支持部421(図3)と継手本体2の内方環状突起部23との間に圧縮された状態で挟持され、ガイド部材42の円弧板部422の先端折曲部422aは内方環状突起部23に係合している。これにより、フレキシブル管100の装着前には、ガイド部材42は継手本体内に係合している。ガイド部材42の内側に移動部材43が配置され、ガイド部材42の円弧板部422(図3)は継手本体2の内方環状突起部23と移動部材43のフランジ部431とにより挟持される。内方環状突起部23とフランジ部431とによるガイド部材42の円弧板部422の挟持力が圧縮コイルばね41の弾性力より大きくなるように、内方環状突起部23の内径、フランジ部431の外径および円弧板部422の厚さを決める。
(d)第1のシール部材:
図1〜図3に示すように、金属コルゲート管101の先端部をシールする第1のシール部材5は、気密パッキン51と、気密パッキン51に連結される耐火パッキン53とからなる。気密パッキン51は、継手本体2の第1の内径部21aに密着するように第1の内径部21aの内径よりやや大きい外径を有するとともに、金属コルゲート管101の外径(山部の外径)よりやや小さい内径を有する。気密パッキン51は、また金属コルゲート管101の山部と谷部の繰り返しの数ピッチ分(例えば2ピッチ分)をシールする長さを有し、金属コルゲート管101の外周側を気密にシールすることができる。気密パッキン51は、長期間にわたってシール性能を保持する必要があるので、耐ガス透過性に優れたニトリルブタジエンゴム(NBR)等で形成されている。
図7は、気密パッキン51を示す説明図である。図中の(a)は気密パッキン51の一部分の断面図であり、(b)は気密パッキン51をX方向の負の向き側から見た斜視図であり、(c)は気密パッキン51をX方向の正の向き側から見た斜視図である。図7(a)、(b)に示すように、気密パッキン51の内径側(金属コルゲート管101側)のシール面51sにおける、X方向の負の向き側の端部51aには、スリット(溝)51bが形成されている。スリット51bはX方向に延び、X方向の幅は金属コルゲート管101の山部の幅とほぼ同じである。このスリット51bは、施工不完全状態では必ずガス漏れが起こり、ガス漏れ検査によって施工不完全状態が見過ごされることを防止するためのものであり、詳細な働きについては後述する。
図7(a)、(c)に示すように、気密パッキン51の内径側のシール面51sにおける、X方向の正の向き側の端部51cには、円環状溝51dが形成されている。この円環状溝51dの働きについては後述する。また、図1に示す、フレキシブル管100を継手本体2に挿入する前の状態では、気密パッキン51の内径側のシール面51sの内側に、前述した移動部材43に備えられた羽片432bが位置している。移動部材こうした構成の第1のシール部材5が、[発明の概要]の欄に記載された管継手の備える「シール部材」に相当する。
図1〜図3に示すように、耐火パッキン53は、気密パッキン51の外径側(継手本体2側)のシール面における、X方向の負の向き側の端部に連結されている。管継手1が火災等で高温に曝されてゴム製の気密パッキン51が焼失しても、耐火パッキン53は熱膨張して継手本体2と金属コルゲート管101との隙間を充たすので、ガス漏れを防止する。また気密パッキン51が焼失すると、弾性機構部4の圧縮コイルばね41が伸長してガイド部材42をX方向の負の向きにスライドするので、熱膨張した耐火パッキン53は移動が制限されて、継手本体2の内面と金属コルゲート管101の外周面とをシールする。
耐火パッキン53は、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(SR)等のゴムと、無発泡状態で熱膨張する黒鉛層間化合物と、加硫剤と、必要に応じて充填材、軟化材等の混練物を加硫することにより製造される。黒鉛層間化合物は例えば黒鉛を硫酸で処理することにより得られる。黒鉛層間化合物は170℃以上に加熱されると無発泡状態で数倍〜数十倍に膨張し、800〜1000℃に加熱すると見掛けの体積は100〜250倍に増加する。なお耐火パッキン53の体積および黒鉛層間化合物の配合量は、耐火パッキン53の膨張量および膨張後のガス透過性を考慮して設定するのが好ましい。またシール性の点から、耐火パッキン53は50〜80のショアーA硬度を有するのが好ましい。
(e)リテーナ:
図1および図2に示すように、弾性変形可能な材料(例えばエンジニアリングプラスチック)からなるリテーナ6は、円筒状基部61と、円筒状基部61から円周方向に等間隔で延出する複数のセグメント62と、各セグメント62の先端に設けられた金属(例えば黄銅)製の爪部63とを有する。各セグメント62の外面は押ナット3の先端テーパ面31aに当接するテーパ面62aとなっている。リテーナ6の円筒状基部61およびセグメント62の内径は金属コルゲート管101の山部の外径より大きいので、無負荷状態ではフレキシブル管100を挿入するときには引っ掛からない。しかしセグメント62間にスリットがあるので、後述する圧縮コイルばね41の伸張力によりセグメント62のテーパ面62aが押ナット3の先端テーパ面31aに押圧されると、セグメント62は内方に曲げられる。その結果、セグメント62の先端に設けられた爪部63は金属コルゲート管101の谷部に係合する。こうした構成のリテーナ6が、[発明の概要]の欄に記載された管継手の備える「抜け止め部材」に相当する。
(f)ストップリング:
ストップリング7は弾性変形可能なC字状部材であり、施工作業段階に応じて継手本体2に設けられた第1〜第3の係止溝171、172、173のいずれかに係合し、押ナット3を継手本体2の複数の位置のいずれかに保持する(ロックする)。この機能を有効に発揮するために、ストップリング7はオーステナイト系ステンレス鋼のような弾性金属の線材からなるのが好ましい。
(g)第2のシール部材:
押ナット3の第2の外周環状溝33に受承された第2のシール部材8は継手本体2に密着し、押ナット3と継手本体2とをシールし、外部からの雨水の侵入を防止する。第2のシール部材8は、例えばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のオレフィン系ゴムからなるOリングが好ましい。
(h)第3のシール部材:
図8は、第3のシール部材を示す説明図である。図中の(a)は第3のシール部材を示す断面図であり、(b)は第3のシール部材の一部分を押ナットと共に示す部分拡大断面図である。図8(a)示すように、押ナット3の内周環状溝35に受承される第3のシール部材9は、ほぼL字状の断面を有し、内周環状溝35に嵌入する環状本体部9aと、環状本体部9aから延びる内方リップ9bとを有するリップパッキンである。リップパッキンは、例えばEPDM等のオレフィン系ゴムからなるのが好ましい。
環状本体部9aは内方リップ9bより外側(内方フランジ部37側)に延びた段部9cを有する。図8(b)に示すように、第3のシール部材9の段部9cは、内方フランジ部37のカエリ部37aに係止される。押ナット3にフレキシブル管100を挿入すると、内方リップ9bは奥側に弾性的に屈曲し、所望のシール面圧でフレキシブル管100を押圧する。その結果、押ナット3とフレキシブル管100とはシールされ、外部から雨水が侵入するのが防止される。フレキシブル管100の挿入により第3のシール部材9に奥側方向の応力がかかるが、第3のシール部材9の段部9cとカエリ部37aとの係合により第3のシール部材9が内周環状溝35から脱離することはない。
(i)インジケータリング:
図1および図2に示すように、フレキシブル管100の管継手1への接続完了を確認するとともに、フレキシブル管100が挿入された管継手1の分解作業を容易にするために、インジケータリング10が押ナット3の第3の外周環状溝34に着脱自在に装着されている。インジケータリング10は金属製のC字状リングであり、無負荷状態では第3の外周環状溝34の外径より小さい内径を有する。押ナット3を継手本体2に挿入した状態では、インジケータリング10は継手本体2の入口端の環状溝24に覆われており、外から見えない。しかし、フレキシブル管100の管継手1への接続完了を確認するためにフレキシブル間0を引っ張ると、後述するようにストップリング7が第2の係止溝172に入るとともに、インジケータリング10は継手本体2の環状溝24から露出する。フレキシブル管100の管継手1への完全な接合を目視で確認できるように、インジケータリング10を継手本体2および押ナット3と異なる色にするのが好ましい。
(j)選択透過性部材:
配管施工時に金属コルゲート管101に誤って釘が打ち込まれたとき等に起こるガス漏れを検出するために、押ナット3の連通孔36に選択透過性部材12が設けられている。漏出したガスは金属コルゲート管101と樹脂被覆102との間隙に入るので、選択透過性部材12を通って外部に導き、ガスセンサ等により検知することができる。選択透過性部材12は、ガス透過性を有するが配管施工後長期間水分、塵芥等の侵入を防止し得る多孔質部材である。このような多孔質部材は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のポリマーの多孔質体であるのが好ましい。
(k)係止機構:
図9は、管継手1の組立時における係止機構11の変化を示す説明図である。図中の(a)は押ナット3を継手本体2に挿入し始めたときのストップリング7と係止溝との位置関係を示す断面図であり、(b)は押ナット3を継手本体2に挿入する途中におけるストップリング7と係止溝との位置関係を示す断面図であり、(c)は押ナット3をリテーナ6に当接するまで継手本体に挿入したときのストップリング7と係止溝との位置関係を示す断面図である。係止機構11は、継手本体2の内面に設けられた相互に連通する第1〜第3の係止溝171、172、173からなる係止溝集合体17と、押ナット3に設けられた第1の外周環状溝32とからなる。第1の係止溝171は、環状溝部171aと、環状溝部171aの内面からX方向の負の向きに向って縮径するテーパ面を有するテーパ状溝部171bとからなる。第1の係止溝171のテーパ状溝部171bと連通する第2の係止溝172は、X方向の負の向きに向って拡径するテーパ面を有するテーパ状溝部172bと、テーパ状溝部172bに連なる内面を有する環状溝部172aとからなる。第1の係止溝171のテーパ状溝部171bと第2の係止溝172のテーパ状溝部172bとにより山形の内方環状突部174が形成される。第3の係止溝173は第1の係止溝171の環状溝部171aに連通する。
第1および第2の係止溝171、172は山形の内方環状突部174を介して連通しているので、ストップリング7を内方環状突部174の内径より小さく縮径する力を押ナット3に加えると、ストップリング7を第1の係止溝171から第2の係止溝172に移動させることができるし、第2の係止溝172から第1の係止溝171に移動させることもできる。しかし、ストップリングの縮径力未満の力であれば、内方環状突部174は、第1の係止溝171に収容されているストップリング7が第2の係止溝172に移動するのを防止する。
本実施形態では、フレキシブル管100の接続工程ではストップリング7が第1の係止溝171に保持されたままであり(図9(c)参照)、フレキシブル管100の接続確認工程で始めてストップリング7が第1の係止溝171から内方環状突部174を越えて第2の係止溝172に移動するように(図9(b)参照)、内方環状突部174の側面の傾斜角(テーパ角)α1を設定する必要がある。換言すれば、弾性機構部4の作用(圧縮コイルばね41の伸張力)ではストップリング7が内方環状突部174を越えないが、接続確認のためにフレキシブル管100を引っ張る力ではストップリング7が内方環状突部174を越えるように、テーパ角α1を比較的大きく設定する必要がある。具体的には、上記接続確認のためにフレキシブル管100を引っ張る作業を平均的な作業者が行った場合に良好な手応え感(クリック感)が得られるように、テーパ角α1を設定するのが好ましい。また、継手本体2に押ナット3を組み立てるときに、ストップリング7が第2の係止溝172から第1の係止溝171に内方環状突部174を越えて移動できるように内方環状突部174のもう一方の側面の傾斜角(テーパ各)α2を設定する必要がある。このテーパ角α1、α2は例えば40〜50°である。勿論、圧縮コイルばね41の伸張力に応じてテーパ角α1、α2は適宜変更可能である。
なお、本実施形態では、(i)第1の係止溝171と第2の係止溝172の合計長さとストップリング7の直径Dとの関係、(ii)第1の係止溝171の深さや長さとストップリング7の直径Dとの関係、(iii)第2の係止溝172の深さや長さとストップリング7の直径Dとの関係、(iv)第3の係止溝173の深さや長さとストップリング7の直径Dとの関係等についても適正に設定することで、ストップリング7の各係止溝171〜173間の移動をスムーズに行うことができるが、これらの適正な関係は、特許文献1(国際公開WO/2010/131609号公報)に記載された通りとすることができる。
A−2.接続作業:
(a)管継手の組立;
配管現場で直ぐに使用できるような形態に管継手1を組み立てるために、まず治具を用いて圧縮コイルばね41、ガイド部材42および移動部材43を図1に示すように継手本体2内にセットし、次いで気密パッキン51および耐火パッキン53からなる第1のシール部材5、およびリテーナ6を継手本体2内に挿入し、最後に第2のシール部材8、第3のシール部材9およびインジケータリング10を装着した押ナット3を継手本体2内に挿入する。このとき、図9(a)に示すようにストップリング7をまず押ナット3の第1の外周環状溝32に入れる。第1の外周環状溝32はストップリング7の直径Dより深いので、ストップリング7は第1の外周環状溝32に完全に収容され、押ナット3は継手本体2内を抵抗なくスライドできる。押ナット3の進入途中で第1の外周環状溝32は第2の係止溝172と整合し、ストップリング7は図9(b)に示すように第2の係止溝172内に進入するが、さらに押ナット3をスライドさせるとストップリング7は山形の内方環状突部174を越えて図9(c)に示すように第1の係止溝171に進入する。第1の係止溝171の深さはストップリング7の直径Dより小さいので、ストップリング7は第1の係止溝171と第1の外周環状溝32とに跨がる。このようにして管継手1は組み立てられる。
(b)フレキシブル管の挿入動作:
図10は管継手1の施工途中1を示す部分断面側面図であり、図11は管継手1の施工途中2を示す部分断面側面図であり、図12は管継手1の施工途中3を示す部分断面側面図である。数山分の長さの樹脂被覆102を先端部から除去したフレキシブル管100を管継手1に挿入していくことで、施工途中1、施工途中2、施工途中3の順に施工が進む。施工途中1の状態は、図10に示すように、金属コルゲート管101の先端が移動部材43の段部432dに当接したときの状態である。この施工途中1の状態から、さらにフレキシブル管100を継手本体2内にさらに押し込むと、図11に示すように、移動部材43のフランジ部431は継手本体2の内方環状突起部23からずれ(施工途中2の状態)、図12に示すように、ガイド部材42の円弧板部422は内方環状突起部23と移動部材43のフランジ部431との挟持から開放される(施工途中3の状態)。
図12の施工途中3の状態では、圧縮コイルばね41の伸張力により、ガイド部材42は第1のシール部材5の気密パッキン51を押す。第1のシール部材5に押されたリテーナ6はX方向の負の向きにスライドし、押ナット3の先端テーパ面31a(図4)に押し付けられる。リテーナ6のセグメント62のテーパ面62aが押ナット3のテーパ面31aと当接すると、セグメント62は内側に変形し、セグメント62のテーパ面62a(図9)が押ナット3のテーパ面31aに密着するとともに、セグメント62の爪部63が金属コルゲート管101の谷部に係合する。その結果、フレキシブル管100は管継手1から脱着しなくなる。フレキシブル管100のこの挿入動作の際、圧縮コイルばね41が瞬時に延びてガイド部材42を押すので、カチッというクリック音がする。このクリック音により、フレキシブル管100が管継手1に正常に接合されたことを確認できる。
圧縮コイルばね41が開放されると、その伸張力による軸線方向の圧縮により気密パッキン51は半径方向に膨張するので、継手本体2とフレキシブル管100とのシール性が向上する。したがって、金属コルゲート管101に多少の変形(例えば扁平化又は曲がり)があってもフレキシブル管100を継手本体2に気密に接合することができる。またシール部材8により継手本体2と押ナット3とのシール性が確保され、フレキシブル管100の外周面に密着するシール部材9によりフレキシブル管100と押ナット3とのシール性が確保され、外部からの雨水の侵入を防止する。
なお、施工途中2の状態および施工途中3の状態、すなわち、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入された以後においては、係止め用突出片433に形成された係止め部433aが内径部22aに備えられた係止用溝25に係入されることから、移動部材43は、継手本体2と繋がった状態となり、X方向の負の方向にスライドすることがない。
(c)フレキシブル管の接続確認:
図12の施工途中3の状態でフレキシブル管100は管継手1に正常に接合されているが、それを確認するとともに、施工管理者が後で確認できるようにするために、フレキシブル管100を管継手1から引っ張る。フレキシブル管100は気密パッキン51およびリテーナ6の爪部63により押ナット3に強固に連結しているので、押ナット3はフレキシブル管100と一体となって継手本体2から僅かに抜け、図13に示すようにインジケータリング10が継手本体2の環状溝24から現れる。
このとき、図14に示すように、ストップリング7は第1の係止溝171から内方環状突部174を越えて第2の係止溝172に移動し、第2の係止溝172と第1の外周環状溝32とに跨がる位置に保持される。この位置からさらに押ナット3を引き抜こうとしても、第1の外周環状溝32に押されるストップリング7が第2の係止溝172の入口側の垂直な内壁に当るので、押ナット3がスライドすることはない。一方、押ナット3を継手本体2内に押し込もうとしても、圧縮コイルばね41の弾発力により容易にはスライドしない。このように押ナット3と継手本体2との相対移動が阻止されるので、フレキシブル管100に引き抜き力が作用しても、フレキシブル管100が管継手1から抜けることはなく、フレキシブル管100を挿入する(管継手1と接続する)施工が正常に完了したことを確認できる。
図13に示すように、継手本体2から現れたインジケータリング10により、施工現場が狭くまた暗所であっても施工管理者は触診によりフレキシブル管の接続完了を確認できる。またインジケータリング10の少なくとも外周面を継手本体2および押ナット3と異なる色に着色しておくと、目視でもフレキシブル管の接続完了を確認できる。このようにフレキシブル管100の押し込み後にフレキシブル管100を引っ張る工程を追加することにより、フレキシブル管100の管継手1への接続完了を確実に確認できるだけでなく、接続作業が正常に行われたかどうかの不安感を完全に払拭することができる。
なお、本実施形態の管継手1では、押ナット3からインジケータリング10を取り外し、押ナット3を継手本体2内に押し込むことによって、管継手1を分解することができるが、この分解作業については、本発明の要旨とは関係ないので、説明を省略する。
(d)移動部材の羽片の動作:
前述したように、フレキシブル管100を継手本体2に挿入する前の状態では、移動部材43に備えられた羽片432bは、気密パッキン51の内径側のシール面51sの内側に位置する(図1参照)。フレキシブル管100の挿入動作を行うと、図10の施工途中1の状態では、移動部材43のスライドが起こらず、移動部材43に備えられた羽片432bの大部分が、気密パッキン51と金属コルゲート管101との間に介在する。この結果、例えば、金属コルゲート管101の先端から1山目の部分および2山目の部分は、気密パッキン51のシール面51sと直接接触することなく羽片432bを介在した状態になる。
図11の施工途中2の状態では、移動部材43はX方向の正の向きへのスライドを開始し、羽片432bの軸方向の長さのほぼ半分が、気密パッキン51と金属コルゲート管101との間に介在する。この結果、例えば、金属コルゲート管101の先端から2山目の部分は気密パッキン51のシール面51sと直接接触することなく羽片432bを介在した状態となるとともに、3山目の部分に気密パッキン51のスリット51bが向かい合うことになる。施工途中2の状態は、圧縮コイルばね41が圧縮状態から非圧縮状態に移行する直前の状態であり、この状態まで、羽片432bは気密パッキン51のシール面51sの内側に位置し、気密パッキン51と金属コルゲート管101との間に介在する。
図12の施工途中3の状態では、羽片432bの大部分が気密パッキン51と金属コルゲート管101との間から離れ、羽片432bの先端の折曲部432c辺りが気密パッキン51の円環状溝51d内に収まることになる。
A−3.作用、効果:
以上のように構成された第1実施形態の管継手1によれば、ガイド部材42が継手本体2の内方環状突起部23と移動部材43のフランジ部431とにより挟持されているとき、すなわち、圧縮コイルばね41が圧縮状態にあるときには、移動部材43に備えられた羽片432bは、気密パッキン51の内径側のシール面51s(図7(a)参照)の内側に必ず位置する。このため、金属コルゲート管101の先端がシール面51sの内側に達した状態では、圧縮コイルばね41が圧縮状態にある限り、羽片432bは気密パッキン51と金属コルゲート管101との間に介在することになる。羽片432bが気密パッキン51と金属コルゲート管101との間に介在すると、金属コルゲート管101と気密パッキン51との間および各羽片432bの間にガスの逃げ道が形成される。このため、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入されずに圧縮コイルばね41が圧縮状態にある場合には、前記ガスの逃げ道から確実にガス漏れを生じさせることができる。
例えば、図10の施工途中1の状態では、「(d)移動部材の羽片の動作」の欄で説明したように、金属コルゲート管101の先端から1山目の部分および2山目の部分は、気密パッキン51のシール面51sと直接接触せず羽片432bを間に介在した状態になることから、この1山目の部分および2山目の部分からガス漏れを確実に発生させることができる。また、図11の施工途中2の状態でも同様に、金属コルゲート管101の先端から2山目の部分は気密パッキン51のシール面51sとの間に羽片432bを介在した状態になることから、この2山目の部分からガス漏れを確実に発生させることができる。なお、図11の施工途中2の状態では、3山目の部分に気密パッキン51のスリット51bが向かい合うことから、このスリット51bによっても、ガス漏れをより確実なものとすることができる。
したがって、管継手1によれば、圧縮コイルばね41が圧縮状態にある場合には、確実にガス漏れがあり、圧縮コイルばね41が非圧縮状態にある場合には、確実にガス漏れがない。この結果、管継手1によれば、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入されずに圧縮コイルばね41が解放されていない状態で施工が中断されてしまうような施工が不完全状態であっても、ガス漏れ検査を行なうことで、施工が正常に完了していないことを確実に発見できるという効果を奏する。
また、管継手1によれば、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入された以後においては、移動部材43は継手本体2と繋がった状態となることから、移動部材43がフレキシブル管100の挿入方向と逆の方向にスライドすることがない。このために、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入された以後において、移動部材43の羽片432bが気密パッキン51と金属コルゲート管101との間のシール面に入り込んで、ガス漏れを発生させることがない。
さらに、第1実施形態の管継手1によれば、気密パッキン51のシール面51sに円環状溝51dが形成されていることから、図12の施工途中3の状態では、前述したように、羽片432bの先端の折曲部432c辺りが気密パッキン51の円環状溝51d内に収まる。このために、管継手1によれば、圧縮コイルばね41が圧縮状態から伸張状態に移行する場合に、羽片432bをシール面51sから確実に逃すことができる。
B.第2実施形態:
図15は、本発明の第2実施形態としての管継手を示す部分断面側面図である。第2実施形態としての管継手1Bは、第1実施形態としての管継手1と比べて、弾性機構部4Bに備えられる移動部材43B、および第1のシール部材に備えられる気密パッキン51Bの点で相違し、その他の構成は、第1実施形態における管継手1の構成と同一である。同一の構成要素については、図15において図1と同一の符合を付し、その説明を省略する。
図16は弾性機構部4Bに備えられる移動部材43Bの一部破断図であり、同図の(a)は移動部材43Bの組み立て時のものであり、同図の(b)は移動部材43Bの分割時のものである。図17は移動部材43Bを分割したときの斜視図であり、同図の(a)は移動部材43BをX方向の負の向き側から見たものであり、同図の(c)は移動部材43をX方向の正の向き側から見たものである。第2実施形態における移動部材43Bは、第1実施形態の移動部材43(図6)と比較して、係止め用突出片433を備えない点と、2つに分割可能な点が相違し、その他の構成は同一である。なお、同一の構成要素については、図16において図6と同一の符合を付した。
移動部材43Bは、第1実施形態における羽基部432aの軸線方向(X方向と一致)における中央あたりで、フランジ部431を有する側の第1の部分43B−1と、羽片432bを有する側の第2の部分43B−2とに分割可能となっている。第1の部分43B−1の第2の部分43B−2側の端部に、X軸方向の正の向きに延出する係止め用突出片438が設けられ、第2の部分43B−2の内径側に、円環状の係止用溝439が設けられており、係止め用突出片438を係止用溝439に係合させることで、第1の部分43B−1と第2の部分43B−2が連結される。なお、この連結は、管継手1Bの組立時において、治具を用いて行われる。
図18は、気密パッキン51Bを示す説明図である。同図の(a)には気密パッキン51Bの一部分の断面図を示し、同図の(b)には気密パッキン51BをX方向の負の向き側から見た斜視図を示し、同図の(c)には気密パッキン51をX方向の正の向き側から見た斜視図を示した。この気密パッキン51Bは、第1実施形態における気密パッキン51と比べて、複数(本実施形態では4本)の係止爪部52Bを備える点が相違し、その他の構成は同一である。なお、同一の部分については、図18において図7と同一の符合を付し、その説明を省略する。
図18(a)、(b)に示すように、各係止爪部52Bは、気密パッキン51のX方向の正の向き側の端部51cから、気密パッキン51の内径側のシール面51sと面一となってX方向の正の向き側に延びる片状の部材であり、その先端部には外側(ガイド部材42B側であり、図18(a)の上側)に突出する爪52Baを備える。係止爪部52Bの材料は、気密パッキン51Bと同一の材料である。
図18(a)に示すように、係止爪部52Bの前記外側の面は、ガイド部材42Bの円弧板部422Bに接しており、爪52Baが中空円板状支持部421の所定部位に係合される。中空円板状支持部421は、図3に示すように、完全なる円盤状ではなく、円盤状のフランジ部と、軸方向に延びる円筒部を有する。この円筒部のX方向の正の向き側の端部421Eにおいて円弧板部422が延設されていない部分(前記所定部位に相当)に爪52Ba(図18(a))が係わり合う。この構成によって、図15に示すように、ガイド部材42が継手本体2の内方環状突起部23と移動部材43のフランジ部431とにより挟持されているとき、すなわち、圧縮コイルばね41が圧縮状態にあるときには、気密パッキン51Bはガイド部材42を介して継手本体2につながった状態となる。
以上のように構成された第2実施形態の管継手1Bによれば、第1実施形態の管継手1と同様に、圧縮コイルばね41が圧縮状態にある限り、移動部材43Bに備えられた羽片432bが、気密パッキン51Bの内径側のシール面の内側に必ず位置することになる。このため、フレキシブル管が奥に突き当たるまで挿入されずに圧縮コイルばね41が解放されていない状態で施工が中断されてしまった場合には、施工の完了確認のためのガス漏れ検査で金属コルゲート管101と気密パッキン51Bとの間および各羽片432bの間のガスの逃げ道から確実にガス漏れを生じさせることができる。
図19は、管継手1Bの施工途中1を示す部分断面側面図である。「施工途中1」とは、第1実施形態の説明と同様に、金属コルゲート管101の先端が移動部材43の段部432d(図16(a)参照)に当接したときの状態である。この施工途中1の状態では、第1実施形態における図10の施工途中1の状態と同様に、金属コルゲート管101の先端から1山目の部分および2山目の部分は、気密パッキン51Bのシール面51sと直接接触することなく移動部材43Bの羽片432bを介在した状態になる。このため、この1山目の部分および2山目の部分からガス漏れを確実に発生させることができる。
したがって、管継手1Bによれば、第1実施形態と同様に、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入されずに圧縮コイルばね41が解放されていない状態で施工が中断されてしまうような施工が不完全状態であっても、ガス漏れ検査を行なうことで、施工が正常に完了していないことを確実に発見できるという効果を奏する。
さらに、管継手1Bによれば、前述したように、圧縮コイルばね41が圧縮状態にあるときに、気密パッキン51Bはガイド部材42Bと係合することによって継手本体2につながった状態となることから、圧縮コイルばね41が解放されていない状態で、気密パッキン51Bはフレキシブル管100の挿入方向とは逆方向(図1におけるX方向の負の向き)へスライドすることがない。このため、従来技術では、フレキシブル管が奥に突き当たるまで挿入されていない状態で接続確認を行った場合に、その接続確認動作によって気密パッキンがフレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドして、インジケータリングが露出し、これによって、施工が正常に完了したと誤って判断される虞があったが、第2実施形態の管継手1Bによれば、この誤った判断を防止することができる。
C.第3実施形態:
図20は、本発明の第3実施形態としての管継手を示す部分断面側面図である。第3実施形態としての管継手1Cは、第2実施形態としての管継手1Bと比べて、弾性機構部4Cに備えられる移動部材43Cの構成が相違するだけであり、その他の構成は、第1実施形態における管継手1Cの構成と同一である。同一の構成要素については、図21において図15と同一の符合を付し、その説明を省略する。
本発明の第3実施形態における移動部材43Cは、第2実施形態における移動部材43Bと比較して、羽片432bCが短くなった点が相違し、その他の構成要素については、第2実施形態と同一である。第3実施形態における羽片432bCは、気密パッキン51のシール面51sのX軸方向の長さのほぼ半分となっている。その上で、第2実施形態では、組み立て時において、移動部材43Bを構成する第1の部分43B−1と第2の部分42B−2とが連結されるのに対して、第3実施形態では、組み立て時においては、図20に示すように、移動部材43Cを構成する第1の部分43C−1と第2の部分43C−2とが分離された状態で組み付けられる。
図21は、管継手1Cの施工途中1を示す部分断面側面図である。図12に示すように、施工途中1、もしくは施工途中1より前の施工途中において、金属コルゲート管101の先端が第2の部分43C−2の段部432dに当接することで、第2の部分43C−2は、金属コルゲート管101の挿入動作によって押されてスライドする。この押されてスライドする動作によって、施工途中1において、第2の部分43C−2は第1の部分43C−1に対して連結される。
以上のように構成された第3実施形態の管継手1Cによれば、第2実施形態の管継手1Bと同様に、第1実施形態と同様に、フレキシブル管100が奥に突き当たるまで挿入されない状態で施工が中断されてしまうような施工が不完全状態であっても、ガス漏れ検査を行なうことで、施工が正常に完了していないことを確実に発見できるという効果を奏する。また、第2実施形態と同様に、インジケータリングによって、施工が正常に完了したと誤って判断されることを防止することができる。さらに、第3実施形態の管継手1Cによれば、移動部材43Cを構成する第1の部分43C−1と第2の部分43C−2とを組み立て時に連結する必要がないことから、組み立てが容易であるという効果も奏する。
D.変形例:
なお、この発明は上記の第1ないし第3実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
第1ないし第3実施形態では、フレキシブル管の接続工程とフレキシブル管の接続が正常であることの接続確認工程とを二回のアクションで行う構造を有するものとしたが、これに換えて、一回のアクションで行う構造を有するものとしてもよい。具体的には、第1ないし第3実施形態では、係止機構11を構成する第1の係止溝171と第2の係止溝172との間の内方環状突部174を山形としたが、これに換えて、特許文献1における第二の実施形態に記載されているとおり、内方環状突部を高さの低い断面台形状とする。この構成によって、圧縮コイルばねの解放によりストップリングが第1の係止溝から第2の係止溝に直ちに移動させることができる。したがって、この変形例1の管継手によれば、フレキシブル管の挿入が完了すると、フレキシブル管を引っ張る動作を行うことなしに、インジケータリングが継手本体から現出する。この結果、接続工程と接続確認工程とを一回のアクションで行うことが可能となる。
・変形例2:
本発明に係る管継手の形状は一端に雄ねじ部を有する片ねじソケットに限らず、両ソケット、エルボ、ティー、または雌ねじを有するものであってもよい。またガス栓やガスメータなどの機器の端部に本発明の継手構造を一体的に設けることもできる。
なお、前述した実施形態および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
1、1B、1C…管継手
2…継手本体
3…押ナット
4、4B、4C…弾性機構部
5…第1のシール部材
6…リテーナ
7…ストップリング
8…第2のシール部材
9…第3のシール部材
9a…環状本体部
9b…内方リップ
9c…段部
10…インジケータリング
11…係止機構
12…選択透過性部材
17…係止溝集合体
21…内孔
21a…第1の内径部
21b…第2の内径部
22…ねじ部
23…内方環状突起部
24…環状溝
31…先端部
31a…テーパ面
32〜34…外周環状溝
35…内周環状溝
36…連通孔
37…内方フランジ部
37a…カエリ部
41…圧縮コイルばね
42、42B…ガイド部材
43、43B、43C…移動部材
43B−1、43C−1…第1の部分
43B−2、43C−2…第2の部分
51、51B…気密パッキン
51a、51c…端部
51b…スリット
51d…円環状溝
51s…シール面
52、52B…係止爪部
52a、52BA…爪
53…耐火パッキン
61…円筒状基部
62…セグメント
62a…テーパ面
63…爪部
100…フレキシブル管
101…金属コルゲート管
102…樹脂被覆
171…第1の係止溝
171a…環状溝部
171b…テーパ状溝部
172…第2の係止溝
172a…環状溝部
172b…テーパ状溝部
173…第3の係止溝
174…内方環状突部
421…中空円板状支持部
422、422B…円弧板部
422a…折曲部
423…突起
431…フランジ部
431a、431b…端部
431c…環状凹部
432…羽部
432a…羽基部
432b…羽片
432c…折曲部
432d…段部
433…係止め用突出片
433a…係止め部
438…係止め用突出片
439…係止め用溝

Claims (9)

  1. 管継手であって、
    一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と、
    前記内孔において、前記フレキシブル管と前記継手本体とをシールするシール部材と、
    前記内孔に設けられるとともに圧縮状態に保持された弾性部材と、前記フレキシブル管の挿入を受けて前記内孔の軸方向に移動可能な移動部材と、を備える弾性機構部であって、前記フレキシブル管が所定位置まで挿入されたときに、前記移動部材が前記弾性部材を圧縮状態から解放することによって、前記弾性部材の伸張力によって前記シール部材を前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドさせる弾性機構部と、
    前記シール部材に隣接し、前記シール部材のスライドによる押圧力を受けることによって、前記フレキシブル管と係合して前記フレキシブル管を抜け止めする抜け止め部材と、
    を備え、
    前記移動部材は、前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へ突出する羽片を備え、
    前記弾性部材が圧縮状態にあるときに限り、前記羽片は前記シール部材の内径側のシール面の内側に位置する、管継手。
  2. 請求項1に記載の管継手であって、
    前記弾性部材は、圧縮ばねと、一端に前記圧縮ばねを支持するための支持部を備えるガイド部材と、を備え、
    前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、前記圧縮ばねが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成した、管継手。
  3. 請求項1または請求項2に記載の管継手であって、
    前記シール部材の前記フレキシブル管側のシール面における、前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向側の端部に、スリットを備える、管継手。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の管継手であって、
    前記シール部材の前記フレキシブル管側のシール面における、前記フレキシブル管の挿入方向側の端部に、環状溝を備え、
    前記圧縮ばねが圧縮状態から解放されたときには、前記移動部材の羽片は、前記環状溝に収納され、前記シール部材と前記フレキシブル管との間に介在することがない、管継手。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の管継手であって、
    前記移動部材は、前記フレキシブル管の挿入方向へ突出するとともに、先端に係止め部を有する係止め用突出片を備え、
    前記フレキシブル管が前記所定位置まで挿入されたときに、前記継手本体に設けられた所定の位置に前記係止め部が係合される、管継手。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の管継手であって、
    前記移動部材は、当該移動部材のスライドの方向において第1の部分と前記羽片を有する第2の部分とに分割可能であり、
    当該管継手の組み立て時において、前記第1の部分と前記第2の部分とが連結される、管継手。
  7. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の管継手であって、
    前記移動部材は、当該移動部材のスライドの方向において第1の部分と前記羽片を有する第2の部分とに分割可能であり、
    当該管継手の施工途中において、前記スライドに伴って前記第1の部分と前記第2の部分とが連結される、管継手。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の管継手であって、
    前記継手本体に部分的に挿入されるとともに、前記フレキシブル管が挿入される押ナットと、
    前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持する係止機構と、
    を備え、
    前記係止機構は、
    ストップリングと、前記ストップリングを受承するように前記押ナットの外面に形成された環状溝と、前記ストップリングを受承するとともに相互に連通するように前記継手本体の内面に形成された複数の係止溝とからなり、
    前記ストップリングは、前記フレキシブル管の接続完了まで前記環状溝と第一の係止溝に跨がって係合しており、
    前記フレキシブル管の接続完了後に前記フレキシブル管に抜け方向の力を加えると、前記ストップリングは前記第一の係止溝からそれより入口側の第二の係止溝に移動し、もって前記フレキシブル管の正常な接続を確認できる程度に前記押ナットが前記継手本体から引き出される、管継手。
  9. 請求項8に記載の管継手であって、
    前記押ナットに前記インジケータが設けられており、前記インジケータは前記フレキシブル管の接続完了まで前記継手本体に隠蔽されており、接続完了後に前記フレキシブル管を引っ張ると前記押ナットが前記継手本体から引き出されるとともに前記インジケータが前記継手本体から露出する、管継手。
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