JP2015104786A - ブローチカッタ - Google Patents

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Abstract

【課題】曲面形状又は面取り形状を有する中期切刃段を設けることにより、前期切刃段における複数の切刃による切込量を低減させて、前期切刃段の摩耗の発生を抑制することができるブローチカッタを提供すること。【解決手段】ブローチカッタ1は、複数の内歯82における歯本体部821の形成部位を切削するための複数の前期切刃段2と、歯本体部821の形成部位をさらに深く切削するための複数の中期切刃段3と、歯本体部821よりも奥に位置する逃げ部822の形成部位を切削するための複数の後期切刃段4とを、切削方向Sの上流側から順に有している。中期切刃段3における複数の切刃21の一対の先端角部311、及び後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411には、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211における曲面形状よりも大きな面取り形状が形成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、ワークの加工穴に複数の内歯を切削するためのブローチカッタに関する。
内歯を切削するためのブローチカッタは、周方向に並ぶ複数の切刃を有する切刃段が、軸方向に複数並ぶ状態で形成されている。ブローチカッタは、荒切削をする複数の切刃段と、仕上げ切削をする複数の切刃段とが、切削方向に順次並ぶ状態で形成されている。そして、荒切削において、切刃がワークの加工穴の径方向に順次切り込んで内歯の途中形状が形成され、仕上げ切削において、切刃が内歯の途中形状の周方向に順次切り込んで内歯が形成される。
例えば、特許文献1の内歯歯車加工用ブローチにおいては、ワークを切削する4種類の切刃を用いる。そして、4種類の切刃のうちの第1切刃が、ワークに歯本体部を形成するためにワークを径方向に切削し、第2切刃が、歯本体部の内周側に位置する内周部を切削し、第3切刃が、歯本体部の外周側(奥側)に位置する外周部を切削し、第4切刃が、歯本体部の周方向幅を広げるように、この歯本体部を周方向に切削する。特許文献1においては、第1切刃が歯本体部の荒切削をする。
特開2008−221418号公報
しかしながら、特許文献1等の従来のブローチにおいては、第1切刃の形状に何ら工夫をしていない。第1切刃における一対の先端角部は、鈍角又は直角の形状に形成されている。また、荒切削をする第1切刃の切込量は大きい。そのため、第1切刃において、ブローチを構成する金属粒子の脱落が生じやすく、第1切刃に摩耗が多く発生する。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、曲面形状又は面取り形状を有する中期切刃段を設けることにより、前期切刃段における複数の切刃による切込量を低減させて、前期切刃段の摩耗の発生を抑制することができるブローチカッタを提供しようとして得られたものである。
本発明の一態様は、軸方向に並んで形成された複数の切刃段によってワークの加工穴を順次切削し、上記各切刃段の周方向に並ぶ複数の切刃によって、周方向に並ぶ複数の内歯を上記加工穴に形成するためのブローチカッタであって、
上記複数の切刃段は、上記複数の切刃の切削位置を、上記ワークの加工穴の径方向に段階的に深くして切削するよう構成されているとともに、上記複数の内歯の歯本体部の形成部位を上記複数の切刃によって切削するための複数の前期切刃段と、上記歯本体部の形成部位を上記複数の切刃によってさらに深く切削するための複数の中期切刃段と、上記歯本体部から上記径方向の外周側に延びる逃げ部の形成部位を上記複数の切刃によって切削するための複数の後期切刃段とが、切削方向の上流側から順次並んで構成されており、
上記中期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部、及び上記後期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部には、上記前期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部における曲面形状又は面取り形状よりも大きな曲面形状又は面取り形状が形成されており、
上記前期切刃段の切込量は、上記中期切刃段の切込量及び後期切刃段の切込量よりも小さいことを特徴とするブローチカッタにある。
本発明の他の態様は、軸方向に並んで形成された複数の切刃段によってワークの加工穴を順次切削し、上記各切刃段の周方向に並ぶ複数の切刃によって、周方向に並ぶ複数の内歯を上記加工穴に形成するためのブローチカッタであって、
上記複数の切刃段は、上記複数の切刃の切削位置を、上記ワークの加工穴の径方向に段階的に深くして切削するよう構成されているとともに、上記複数の切刃の一対の先端角部に曲面形状又は面取り形状が形成された複数の第1の切刃段と、該第1の切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部における曲面形状又は面取り形状よりも大きな曲面形状又は面取り形状が形成された複数の第2の切刃段とが、切削方向に並んで構成されており、
上記第1の切刃段の切込量は、上記第2の切刃段の切込量よりも小さいことを特徴とするブローチカッタにある。
上記一態様のブローチカッタにおいては、ワークの加工穴に対して、複数の内歯における歯本体部の形成部位を切削する切刃段が、前期切刃段と中期切刃段とに分かれて形成されている。ここで、形成部位とは、ワークにおける部位のことをいう。また、中期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状は、前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状よりも大きい。ここで、前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部は、曲面形状又は面取り形状がほとんど形成されていない角形状であってもよい。ただし、製造上の理由等によって、前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部には、僅かな曲面形状又は面取り形状が形成されていてもよい。
前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部には、曲面形状又は面取り形状がほとんど形成されていない、あるいは曲面形状又は面取り形状が小さく形成されていることにより、ワークへの切刃の食付き(引っ掛かり)を良好に維持することができる。そして、ワークへの前期切刃段における複数の切刃の切込量を、ワークへの中期切刃段における複数の切刃の切込量、及びワークへの後期切刃段における複数の切刃の切込量よりも小さく設定する。これにより、前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部における摩耗の発生を抑制することができる。
また、中期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部には、曲面形状又は面取り形状が形成されている。これにより、中期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部の刃先強度を高くし、その摩耗の発生を抑制することができる。また、この一対の先端角部の刃先強度が高くなったことを受けて、ワークへの中期切刃段における複数の切刃の切込量を大きく設定することができる。これにより、前期切刃段における複数の切刃の切込量の減少分を、中期切刃段における複数の切刃の切込量によって補うことができる。
ところで、一般的に、各切刃段における切刃の形成ピッチを小さくすると、切刃の切込量が小さくなってその摩耗を抑制できる一方、切刃の軸方向のランド幅が小さくなって切刃の寿命が短くなってしまう。この点に関し、前期切刃段及び中期切刃段においては、複数の切刃の摩耗の発生を抑制できることによって、複数の切刃の寿命が短くなることを抑制できる。そのため、前期切刃段及び中期切刃段においては、複数の切刃の形成ピッチを小さくすることによって、複数の切刃の切込量を減少させることもできる。
また、後期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状も、前期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状よりも大きい。これにより、後期切刃段における複数の切刃の一対の先端角部の刃先強度が高く、その摩耗の発生を抑制することができる。
以上のように、上記一態様のブローチカッタによれば、曲面形状又は面取り形状を有する中期切刃段を設けることにより、前期切刃段における複数の切刃による切込量を低減させて、前期切刃段の摩耗の発生を抑制することができる。
上記他の態様のブローチカッタにおいては、複数の切刃の一対の先端角部に曲面形状又は面取り形状が大きく形成された第2の切刃段においては、一対の先端角部の刃先強度を高くし、その摩耗の発生を抑制することができる。そして、この一対の先端角部の刃先強度が高くなったことを受けて、ワークへの第2の切刃段における複数の切刃の切込量を大きく設定することができる。これにより、第1の切刃段における複数の切刃の切込量の減少分を、第2の切刃段における複数の切刃の切込量によって補うことができる。
また、上記一態様のブローチカッタにおける前期切刃段と同様に、第1の切刃段における複数の切刃の一対の先端角部は、曲面形状又は面取り形状がほとんど形成されていない角形状であってもよい。
上記他の態様のブローチカッタによれば、曲面形状又は面取り形状を有する第2の切刃段を設けることにより、第1の切刃段における複数の切刃による切込量を低減させて、第1の切刃段の摩耗の発生を抑制することができる。
実施例にかかる、ブローチカッタを示す説明図。 実施例にかかる、ブローチカッタの各切刃段における切刃が、ワークの加工穴を段階的に深く切削して、内歯を形成する状態を示す説明図。 実施例にかかる、(a)前期切刃段における切刃、(b)中期切刃段における切刃、(c)後期切刃段における切刃を、ブローチカッタの軸方向から見た状態で示す説明図。 実施例にかかる、(a)前期切刃段における切刃、(b)中期切刃段における切刃を示す斜視図。 実施例にかかる、一般的な切刃段における切刃を示す斜視図。
上述したブローチカッタにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記一態様のブローチカッタにおいては、上記複数の前期切刃段よりも上記切削方向の上流側には、上記ワークの加工穴の中心を上記ブローチカッタの中心に案内するための案内部が形成されており、上記複数の前期切刃段は、上記案内部に隣接する切刃段を含んでいてもよい。
案内部の下流側に隣接する切刃段は、周方向に隣接する2つの切刃の間の刃底部の周方向幅が非常に狭い。そのため、砥石等の工具によって、案内部に隣接する切刃段における各切刃の一対の先端角部の曲面加工又は面取り加工を行うことは非常に困難である。そこで、案内部に隣接する切刃段における複数の切刃の一対の先端角部の曲面形状又は面取り形状が小さいことにより、その曲面加工又は面取り加工を容易にすることができる。この曲面加工又は面取り加工は、ブラシ、砥石等を用いた手作業の丸み付け加工によって行うことができ、低コストで行うことができる。
また、上記中期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状、及び上記後期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状は、上記各切刃の外周側に位置する逃げ面の全長に亘って形成されていてもよい。
この場合には、中期切刃段及び後期切刃段における複数の切刃のすくい面を繰り返し再研磨して、これらの各切刃の軸方向におけるランド幅が小さくなっても、曲面形状又は面取り形状による、摩耗の発生の低減効果を維持することができる。
上記他の態様のブローチカッタにおいては、上記複数の第1の切刃段は、上記複数の第2の切刃段よりも上記切削方向の上流側に配置されていることが好ましい。
また、上記複数の第1の切刃段よりも上記切削方向の上流側には、上記ワークの加工穴の中心を上記ブローチカッタの中心に案内するための案内部が形成されており、上記複数の第1の切刃段は、上記案内部に隣接する切刃段を含んでいてもよい。
この場合には、上記一態様のブローチカッタにおける案内部に隣接する切刃段と同様の作用効果を得ることができる。
以下に、ブローチカッタにかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例のブローチカッタ1は、図1、図2に示すように、軸方向Lに並んで形成された複数の切刃段2,3,4によってワーク8の加工穴81を順次切削する。ブローチカッタ1は、各切刃段2,3,4の周方向Cに並ぶ複数の切刃21,31,41によって、周方向Cに並ぶ複数の内歯82を加工穴81に形成するために用いられる。複数の切刃段2,3,4は、複数の切刃21,31,41の切削位置を、ワーク8の加工穴81の径方向Rに段階的に深くして切削するよう構成されている。ブローチカッタ1においては、複数の前期切刃段2と複数の中期切刃段3と複数の後期切刃段4とが、切削方向Sの上流側から順次並んでいる。なお、前期切刃段2は第1の切刃段に相当し、中期切刃段3及び後期切刃段4は第2の切刃段に相当する。
ここで、図1においては、ブローチカッタ1において、複数の前期切刃段2が軸方向Lに並んで形成された部分をL1で示し、複数の中期切刃段3が軸方向Lに並んで形成された部分をL2で示し、複数の後期切刃段4が軸方向Lに並んで形成された部分をL3で示す。また、図2においては、各切刃段2,3,4における切刃21,31,41が、ワーク8の加工穴81を段階的に深く切削して、内歯82を形成する状態を示す。
図2に示すように、各前期切刃段2は、ワーク8における複数の内歯82の歯本体部821の形成部位を複数の切刃21によって切削する。各中期切刃段3は、歯本体部821の形成部位を複数の切刃31によってさらに深く切削する。後期切刃段4は、歯本体部821よりも奥に位置する逃げ部822の形成部位を、複数の切刃41によって切削する。逃げ部822は、歯本体部821の周方向Cの幅よりも狭い周方向Cの幅に形成されている。
中期切刃段3における複数の切刃21の一対の先端角部311、及び後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411には、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211における曲面形状よりも大きな面取り形状が形成されている。前期切刃段2の切込量x1は、中期切刃段3の切込量x2及び後期切刃段4の切込量x3よりも小さくなっている。なお、各切込量x1,x2,x3は、複数の切刃21,31,41の前後段の高低差によって定まる。
以下に、本例のブローチカッタ1について、図1〜図5を参照して詳説する。
図1に示すように、本例のブローチカッタ1は、ブローチ加工機に取り付けられ、円盤状のワーク8の中心に形成された加工穴81としての丸穴に、引抜き加工を行うために使用される。ワーク8の加工穴81に引抜き加工を行うときには、ブローチカッタ1における複数の切刃段2,3,4が、ワーク8の加工穴81を通過する。
ブローチカッタ1の両端部には、ブローチカッタ1をブローチ加工機に取り付けるためのシャンク部11が形成されている。ブローチカッタ1の切削方向(引抜き方向)Sの上流側に位置するシャンク部11の下流側に隣接する位置には、ワーク8の加工穴81の中心をブローチカッタ1の中心に案内するための案内部12が形成されている。なお、以下の記載において、上流側とは切削方向Sの上流側のことを示し、下流側とは切削方向Sの下流側のことを示す。
図1、図2に示すように、ブローチカッタ1における案内部12の下流側には、複数の前期切刃段2、複数の中期切刃段3及び複数の後期切刃段4が上流側から順に切削方向Sに並んで形成されている。複数の前期切刃段2、複数の中期切刃段3及び複数の後期切刃段4は、ワーク8の加工穴81の径方向Rに順次切り込んで内歯82の途中形状を切削する荒切削用の切刃段である。前期切刃段2は、案内部12に隣接する切刃段を含んでいる。
また、ブローチカッタ1における前期切刃段2の段数は、ブローチカッタ1における中期切刃段3の段数よりも少なくなっている。
図1に示すように、複数の後期切刃段4の下流側に隣接する位置には、仕上げ切削用の切刃段として、ワーク8の加工穴81の内歯82の途中形状の周方向Cに段階的に深く切り込む複数のシェル切刃段5が形成されている。複数のシェル切刃段5は、ブローチカッタ1の軸方向Lに複数並んで形成されており、周方向Cに並ぶ複数の切刃51を有している。図2に示すように、複数のシェル切刃段5における複数の切刃51によって、内歯82における歯本体部821の一対の歯面の形状が形成される。なお、シェル切刃段5の下流側に隣接する位置には、ワーク8の加工穴81の中心をブローチカッタ1の中心に案内するための別の案内部が形成されていてもよい。
本例のブローチカッタ1は、インボリュート曲線に沿った歯本体部821を有するインボリュートスプライン形状の内歯82を、切削加工によって周方向Cに並ぶ状態で複数形成するものである。また、ブローチカッタ1によって形成する内歯82は、歯本体部821がワーク8の軸方向Lに対して捩れたヘリカル状のものである。ブローチカッタ1は、ワーク8の加工穴81に切削加工をして、ヘリカルギヤとしての内歯車を形成する。
なお、ブローチカッタ1は、互いに平行な歯本体部821を有する角形スプライン形状の内歯82を、ワーク8の加工穴81の周方向Cに複数形成するものとすることもできる。また、ブローチカッタ1における各切刃段2,3,4,5の複数の切刃21,31,41,51は、周方向Cの全周に等間隔に形成されていてもよい。また、各切刃段2,3,4,5の複数の切刃21,31,41,51は、周方向Cの全周に形成されていなくてもよく、例えば、周方向Cの2〜8箇所に形成されていてもよい。
図3(a)に示すように、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211には、曲率半径が20μmの曲面形状が形成されている。前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211に形成する曲面形状が小さいことにより、ワーク8への切刃21の食付き(引っ掛かり)を良好に維持することができる。なお、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211の形状は、曲面形状又は面取り形状がほとんど形成されていない角形状としてもよい。
前期切刃段2における複数の切刃21は、軸方向Lから見た状態において、径方向Rの外周側R1に行くほど一対の側面の間隔が狭くなる台形形状に形成されている。前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211は、鈍角形状を有している。本例の前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211は、角度α1が110°の鈍角形状を有している。
図3(b)に示すように、中期切刃段3における複数の切刃31の一対の先端角部311には、径方向R及び周方向Cに100μmの長さを有する面取り形状が形成されている。中期切刃段3における複数の切刃31の一対の先端角部311に形成する面取り形状の大きさは、50〜350μmの範囲内で決定することができる。また、中期切刃段3における複数の切刃31の一対の先端角部311には、曲率半径が50〜350μmの曲面形状を形成することもできる。
中期切刃段3における複数の切刃31は、軸方向Lから見た状態において、径方向Rの外周側R1に行くほど一対の側面の間隔が狭くなる台形形状に形成されている。中期切刃段3における複数の切刃31において、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部311は、前期切刃段2における鈍角形状の角度α1よりも大きな角度α2の鈍角形状を有している。本例の中期切刃段3における複数の切刃31の、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部311は、角度α2が145°の鈍角形状を有している。
図3(c)に示すように、後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411には、径方向R及び周方向Cに100μmの長さを有する面取り形状が形成されている。後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411に形成する面取り形状の大きさは、50〜350μmの範囲内で決定することができる。また、後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411には、曲率半径が50〜350μmの曲面形状を形成することもできる。
後期切刃段4における複数の切刃41の外周先端部分は、軸方向Lから見た状態において、一対の側面が互いに平行な形状に形成されている。後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411において、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部411は、前期切刃段2における鈍角形状の角度α1よりも大きく、かつ中期切刃段3における鈍角形状の角度α2よりも小さい角度α3の鈍角形状を有している。本例の後期切刃段4における複数の切刃41の、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部411は、角度α3が135°の鈍角形状を有している。
また、図4(a)には、前期切刃段2における切刃21を示し、図4(b)には、中期切刃段3における切刃31を示す。各切刃21,31は、ワーク8の加工穴81に所定回数切削をして切れ味が悪化したときには、研削機によってすくい面213,313が研削される。
図4(b)に示すように、中期切刃段3における複数の切刃31の一対の先端角部311の面取り形状は、各切刃31の外周側に位置する逃げ面312の全長に亘って形成されている。そして、各切刃31のすくい面313が繰り返し再研削された後においても、中期切刃段3における複数の切刃31の一対の先端角部311の面取り形状が維持される。また、後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411の面取り形状も、各切刃41の外周側に位置する逃げ面の全長に亘って形成されている。
図3(a)〜(c)に示すように、前期切刃段2における複数の切刃21の前後段の高低差によって定まるワーク8への前期切込量x1は、10〜25μmの範囲内で決定することができる。中期切刃段3における複数の切刃31の前後段の高低差によって定まるワーク8への中期切込量x2は、25〜80μmの範囲内で決定することができる。また、前期切込量x1の大きさは、中期切込量x2の大きさ以下とする。さらに、前期切込量x1の大きさは、中期切込量x2の大きさの半分以下とすることができる。
後期切刃段4における複数の切刃41の前後段の高低差によって定まるワーク8への後期切込量x3は、20〜65μmの範囲内で決定することができる。後期切込量x3の大きさは、前期切込量x1の大きさよりも大きく、かつ中期切込量x2の大きさよりも小さくすることができる。
次に、本例のブローチカッタ1の作用効果について説明する。
ワーク8の加工穴81の径方向Rに段階的に荒切削をする切刃段は、複数の切刃の切込量が多く、摩耗が最も発生しやすい部位である。本例のブローチカッタ1においては、ワーク8の加工穴81に対して、複数の内歯82における歯本体部821の形成部位を径方向Rに荒切削する切刃段が、前期切刃段2と中期切刃段3とに分かれて形成されている。そして、ワーク8への前期切刃段2における複数の切刃21の前期切込量x1を、ワーク8への中期切刃段3における複数の切刃31の中期切込量x2よりも小さく設定している。これにより、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211における摩耗の発生を抑制することができる。
図5には、一般的な切刃段9における切刃91を示す。切刃段9における各切刃91には、各先端角部911のすくい面913側から切削方向Sの下流側へ伸展する金属粒子の脱落によって摩耗Mが生じる。この摩耗Mは、切刃91の切込量を大きくすると生じやすく、また、切刃91の各先端角部911の軸方向Lから見たときの形成角度が直角に近くなると生じやすい。この摩耗Mの大きさは、軸方向Lにおける形成長さとして表される。
そこで、前期切刃段2においては、各切刃21の前期切込量x1を小さくすることによって摩耗Mの発生を抑制し、中期切刃段3においては、各切刃31の各先端角部311の鈍角形状の角度α2を大きくすることによって摩耗Mの発生を抑制する。
具体的には、中期切刃段3における複数の切刃31には、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211に形成された曲面形状よりも大きな面取り形状が形成されている。これにより、中期切刃段3の複数の切刃31における、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部311の鈍角形状の角度α2が大きくなり、この先端角部311の刃先強度が高くなる。その結果、中期切刃段3の複数の切刃31における、面取り形状の先端外周側に位置する先端角部311に発生する摩耗を抑制することができる。
また、中期切刃段3における刃先強度が高くなったことを受けて、ワーク8への中期切刃段3における複数の切刃31の中期切込量x2を大きく設定することができる。これにより、前期切刃段2における複数の切刃21の前期切込量x1の減少分を、中期切刃段3における複数の切刃31の中期切込量x2によって補うことができる。
ところで、一般的に、図5に示すように、各切刃段9における切刃91の形成ピッチ(切刃段9の軸方向Lの形成間隔)を小さくすると、切刃91の切込量が小さくなってその摩耗を抑制できる一方、切刃91の軸方向Lのランド幅wが小さくなって切刃91の寿命が短くなってしまう。
この点に関し、前期切刃段2及び中期切刃段3においては、上述したように複数の切刃21,31の摩耗の発生を抑制できることによって、複数の切刃21,31の寿命が短くなることを抑制できる。そのため、前期切刃段2及び中期切刃段3においては、複数の切刃21,31の形成ピッチを小さくすることによって、複数の切刃21,31の切込量x1,x2を減少させることもできる。
また、後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411に形成された面取り形状も、前期切刃段2における複数の切刃21の一対の先端角部211に形成された曲面形状よりも大きい。これにより、後期切刃段4における複数の切刃41の一対の先端角部411の刃先強度が高く、その摩耗の発生を抑制することができる。
以上のように、本例のブローチカッタ1によれば、面取り形状を有する中期切刃段3を設けることにより、前期切刃段2の複数の切刃21による切込量を低減させて、その摩耗の発生を抑制することができる。
本例のブローチカッタ1においては、前期切刃段2と中期切刃段3と後期切刃段4とが連続して形成された場合について説明した。これ以外にも、ブローチカッタ1は、前期切刃段2と中期切刃段3との間、あるいは中期切刃段3と後期切刃段4との間に、他の構成の切刃段が配置された構成とすることもできる。この他の構成の切刃段としては、例えば、各切刃の一対の先端角部の曲面形状又は面取り形状の大きさが、切刃段ごとに滑らかに連続的に変化する構成が考えられる。また、この他の構成の切刃段としては、例えば、各切刃の切込量が、切刃段ごとに滑らかに連続的に変化する構成も考えられる。
1 ブローチカッタ
2,3,4 切刃段
21,31,41 切刃
211,311,411 先端角部
8 ワーク
81 加工穴
82 内歯
821 歯本体部
822 逃げ部
S 切削方向

Claims (6)

  1. 軸方向に並んで形成された複数の切刃段によってワークの加工穴を順次切削し、上記各切刃段の周方向に並ぶ複数の切刃によって、周方向に並ぶ複数の内歯を上記加工穴に形成するためのブローチカッタであって、
    上記複数の切刃段は、上記複数の切刃の切削位置を、上記ワークの加工穴の径方向に段階的に深くして切削するよう構成されているとともに、上記複数の内歯の歯本体部の形成部位を上記複数の切刃によって切削するための複数の前期切刃段と、上記歯本体部の形成部位を上記複数の切刃によってさらに深く切削するための複数の中期切刃段と、上記歯本体部から上記径方向の外周側に延びる逃げ部の形成部位を上記複数の切刃によって切削するための複数の後期切刃段とが、切削方向の上流側から順次並んで構成されており、
    上記中期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部、及び上記後期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部には、上記前期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部における曲面形状又は面取り形状よりも大きな曲面形状又は面取り形状が形成されており、
    上記前期切刃段の切込量は、上記中期切刃段の切込量及び後期切刃段の切込量よりも小さいことを特徴とするブローチカッタ。
  2. 上記複数の前期切刃段よりも上記切削方向の上流側には、上記ワークの加工穴の中心を上記ブローチカッタの中心に案内するための案内部が形成されており、
    上記複数の前期切刃段は、上記案内部に隣接する切刃段を含むことを特徴とする請求項1に記載のブローチカッタ。
  3. 上記中期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状、及び上記後期切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部に形成された曲面形状又は面取り形状は、上記各切刃の外周側に位置する逃げ面の全長に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブローチカッタ。
  4. 軸方向に並んで形成された複数の切刃段によってワークの加工穴を順次切削し、上記各切刃段の周方向に並ぶ複数の切刃によって、周方向に並ぶ複数の内歯を上記加工穴に形成するためのブローチカッタであって、
    上記複数の切刃段は、上記複数の切刃の切削位置を、上記ワークの加工穴の径方向に段階的に深くして切削するよう構成されているとともに、上記複数の切刃の一対の先端角部に曲面形状又は面取り形状が形成された複数の第1の切刃段と、該第1の切刃段における上記複数の切刃の一対の先端角部における曲面形状又は面取り形状よりも大きな曲面形状又は面取り形状が形成された複数の第2の切刃段とが、切削方向に並んで構成されており、
    上記第1の切刃段の切込量は、上記第2の切刃段の切込量よりも小さいことを特徴とするブローチカッタ。
  5. 上記複数の第1の切刃段は、上記複数の第2の切刃段よりも上記切削方向の上流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のブローチカッタ。
  6. 上記複数の第1の切刃段よりも上記切削方向の上流側には、上記ワークの加工穴の中心を上記ブローチカッタの中心に案内するための案内部が形成されており、
    上記複数の第1の切刃段は、上記案内部に隣接する切刃段を含むことを特徴とする請求項5に記載のブローチカッタ。
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