JP5783113B2 - ブローチ - Google Patents
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Description
すなわち、この種のブローチにあっては、刃先の摩耗が進んで切れ味が悪くなるのを避けるために、刃先を定期的に研削している。このような再研削は、通常、全ての外径上がり刃100について、刃先101から当該ブローチの軸線Oに沿って一定距離ずつ行なわれる。したがって、図6に示すように、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように設定された外径上がり刃100は、一般的に逃げ角θa1、θa2、…がそれぞれ同じ角度に設定されているため、再研削される都度、各外径上がり刃100の切れ刃高さが低くなる。つまり、図7に示すように、外径上がり刃の外径Hbは、再研削量Yにtanθ(θは逃げ角)を乗じた値Xだけ小さくなる。なお、図6、図7において2点鎖線は再研削した状態を表す。
すなわち、前部案内102に近い部分の外径上がり刃、つまり、第1刃100a、第2刃100b、第3刃100cは、もともとワークの下穴よりもほんのわずかな値だけ大きな外径に設定されているため、再研削に伴い外径が小さくなると、ワークの下穴よりも小さくなるおそれがある。
この具体例について下記表1に示す。
この表1に示すように、下穴の内径が110.465mmであるのに対し、新しいブローチでは、第1刃100aの外径が110.510mm、第2刃100bの外径が110.585mm、第3刃100cの外径が110.660mmと全ての切れ刃の外径が下穴の内径よりも大に設定されているが、再研削が進み、再研削量Yが3mmと再研削限界近くまで再研削されると、第1刃100aの外径が110.300mm、第2刃100bの外径が110.375mm、第3刃100cの外径が110.450mmと、それら再研削後の外径上がり刃の外径は、ともに下穴の内径110.465mmよりも小になる。この状態を表したものが図8である。
また、前述したようにブローチ自体がワークの径方向へ移動可能であるため、ほぼ同一円周位置にある外径上がり刃のうち、ある外径上がり刃には切削抵抗が加わり、他の外径上がり刃には切削抵抗が加わらない状況が生じる。したがって、切削抵抗が加わる外径上がり刃に切削荷重が集中することとなり、外径上がり刃の刃先に過大な荷重が加わることにともない、刃先が欠損する課題があった。
このため、再研削限界近くまで再研削されたとしても、前側切れ刃の逃げ角を適宜小さな値に設定することにより、前側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合が小さいため、該前側切れ刃の外径がワークの下穴の内径より小さくなるのを回避することができる。つまり、再研削限界近くまで再研削されたとしても、ワークを切削するときに、前側切れ刃をワークの下穴の内周面に当接させて、所要の切削量を確保することができる。この結果、前部案内の近傍にある切れ刃のそれよりも後方に続く切れ刃に対するガイド機能が損なわれることなく、加工精度を良好に保つことができる。
また、後側切れ刃は、逃げ角が前側切れ刃の逃げ角よりも大きく設定されているので、従来のブローチと同程度の切削機能を果たすことができる。
この場合、再研削したときに、前側切れ刃のうち、前部案内に近い最前方側に位置する前側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合が最も小さく、それよりも後方側に位置する前側切れ刃は、後方に位置する前側切れ刃ほど切れ刃高さの低くなる割合が高くなる。この結果、再研削限界近くまで再研削されたときであっても、前方の前側切れ刃がワークの下穴よりも小さくなるのをより一層防ぎつつ、最後端に位置する前側切れ刃の切れ刃高さと最前端に位置する後側切れ刃の切れ刃高さとの差を小さくすることができる。
この場合、2個以上が組をなすように前側切れ刃の逃げ角を設定するので、前側切れ刃全ての逃げ角を個々に変える場合に比べて、当該ブローチの設計及び制作が容易になる。
なお、当該ブローチの切れ刃はヘリカルブローチの外径上がり刃を対象としてもよい。
図2に示すように、外径上がり刃6は、前方を向くすくい面10と径方向外方を向く逃げ面11との稜線部分に刃先12が設けられ、これら外径上がり刃6は、前部案内13から後方に向かって第1刃6a、第2刃6b、第3刃6c、第4刃6d、…、第n刃6nとされている。
ここで、外径上がり刃6は、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように設定されている。つまり、第1刃6a、第2刃6b、…と、それぞれ外径が漸次大きくなるように設定されている。
また、外径上がり刃6は、前部案内13に続く4個が前側切れ刃6Aとされ、前側切れ刃6Aの後方に配置される外径上がり刃が後側切れ刃6Bとされている。後側切れ刃6Bは、逃げ角が一定とされているが、前側切れ刃6Aの逃げ角θ1〜θ6は、後側切れ刃6Bの逃げ角θ7よりも小さく設定されている。
そして、組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角よりも大きく設定されている。つまり、組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角よりも大きく設定されている。前記例で説明すると、第3刃6c、第4刃6dの逃げ角θ3、θ4は、第1刃6a、第2刃6bの逃げ角θ1、θ2より大に設定され、また、第5刃6e、第6刃6fの逃げ角θ5、θ6は、第3刃6c、第4刃6dの逃げ角θ3、θ4より大に設定されている。
ブローチ本体1を先端側から、ワークWに予め形成した下穴に挿入し、該ブローチ本体1を、先端側の掴み部2を把持しながら、前記リードLに沿ってワークに対し相対的に前進させつつ回転させる。これにより、まず外径上がり刃6によって所定の深さまで達する捩れ溝を形成する。
しかしながら、ここでは、前側切れ刃6Aの逃げ角が、後側切れ刃6Bの逃げ角よりも小さく設定されているため、各外径上がり刃6に対して再研削量が同じ長さであっても、逃げ角を異なって設定している分、前側切れ刃6Aの切れ刃高さの低くなる割合が、後側切れ刃6Bの切れ刃高さの低くなる割合に比べて小さくなる。
また、後側切れ刃6Bは、逃げ角θ7が前側切れ刃6Aの逃げ角θ1〜θ6よりも大きく設定されているので、従来のブローチと同程度の切削機能を果たすことができる。
例えば、本実施形態では、本発明を軸直タイプの組立形ヘリカルブローチに適用した例について説明したが、これに限られることなく、本発明は、オフノルマルタイプのヘリカルブローチにも適用可能である。また、ヘリカルブローチに限られることなく、他のブローチにも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態では、前側切れ刃6Aを6個としているが、これに限られることなく、6以外の複数あるいは単数であっても良い。
また、前記実施形態では、前側切れ刃6Aを2個ずつ組にしているが、これに限られることなく3個ずつを組みにしてもよく、また、組にすることなく、1個ずつの前側切れ刃の逃げ角を、後側切れ刃6Bの逃げ角を超えない範囲で、後方に向かう従い漸次増大するように設定しても良い。
その結果を下記表2に示す。
これを図に表したものが図3、図4である。
この実施例からもわかるように、再研削量を3mmとしたときであっても、何れの前側切れ刃6Aについても、外径がワークの下穴の内径よりも大に保持されていることが確認できた。また、各外径上がり刃6は、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように保持されていることも確認できた。
なお、図4に示すように、前側切れ刃が2個ずつ組をなすものにおいて、新品のときの各外径上がり刃6の段差量、すなわち、外径上がり刃6の外径とその直前の外径上がり刃6の外径との差は、第1刃が0.075mmと大きく、第2刃が0.045mmと小さく、第3刃が0.090mmと大きく、第4刃が0.045mmと小さくなるように、大小交互に設定している。この理由は、図4に示すように、再研削量が3mm程度と再研削限界近くまで再研削したときの各外径上がり刃6の段差量がほぼ一定になるように企図したためである。つまり、新品のときの外径上がり刃6は再研削する前であって歯厚(刃のヘリカルブローチの軸線に沿った厚さ)が比較的厚いため強度的に強いものの、再研削限界近くまで再研削したときの外径上がり刃は、歯厚が薄く、強度的には弱くなっている。このため、再研削限界近くまで再研削したときの各外径上がり刃の段差量をほぼ一定とし、切削時において前部案内に近い特定の外径上がり刃に負荷が過度に加わって損傷するといった事態を未然に防止している。
4 切れ刃部
5 切れ刃
6 外径上がり刃(切れ刃)
6A 前側切れ刃
6B 後側切れ刃
7 歯厚上がり刃
O ブローチ本体1の軸線
Claims (4)
- ワークに形成された下穴に、前部案内とそれに続く複数の切れ刃が順に挿入されて前記下穴を所定形状に仕上げるブローチにおいて、
前記切れ刃が、前記前部案内に続く単数または複数の前側切れ刃と、該前側切れ刃の後方に配置されて逃げ角がそれぞれ一定とされた複数の後側切れ刃とを備え、
前記前側切れ刃の逃げ角が、前記後側切れ刃の逃げ角よりも小さく設定されていることを特徴とするブローチ。 - 前記前側切れ刃は複数配置され、
該前側切れ刃は、最前の前側切れ刃から最後部の前側切れ刃に向かって、逃げ角が段階的に大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のブローチ。 - 前記前側切れ刃は2個以上が組をなすとともに、それら組をなす前側切れ刃どうしの逃げ角が同じ角度に設定され、
組をなす前側切れ刃の逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃の逃げ角よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のブローチ。 - 前記切れ刃はヘリカルブローチの外径上がり刃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のブローチ。
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Family Applications (1)
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