JP6772561B2 - ヘリカルブローチ - Google Patents
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Description
ヘリカルブローチによれば、例えば自動変速機用のプラネタリーインターナルギア等の高精度が要求される製品を、一回の切削加工で、荒加工から仕上げ加工まで行うことができる。
複数の外径上がり刃は、ブローチ本体の径方向外側へ向けた各切れ刃の突出高さが、ブローチ本体の後方へ向かうに従い漸次増大させられている。これらの外径上がり刃は、被削材に歯溝(ねじれ溝)を形成するとともに、該歯溝を歯丈方向(ブローチ本体の径方向外側)に追い込み切削する。
なお、複数の歯厚上がり刃のうち、前方に位置する歯厚上がり刃は、歯溝の溝幅方向の一方側の歯面(通常は鋭角側歯面)を追い込み切削する。また、後方に位置する歯厚上がり刃は、歯溝の溝幅方向の他方側の歯面(通常は鈍角側歯面)を追い込み切削する。つまり、歯厚上がり刃は、歯溝の一対の歯面を片方ずつ追い込み切削する。
歯厚上がり刃において、被削材の歯溝の歯面に摺接させられるガイド面が、該歯面から離間することがあり、安定して接触しないことがあった。特にガイド面が、歯面に対して平行に形成されている場合には、このような不具合が生じやすかった。
また、切削を目的としないガイド刃が、意図せず歯面を切削してしまうことを防止することにも改善の余地があった。
従って、ガイド面による切削刃のガイド機能を十分に発揮させることができる。また、歯面に接触するガイド面の部分が尖って形成される(歯面に対して急傾斜で形成される)ようなことを抑制して、該ガイド面により歯面が傷付けられてしまうことを防止できる。
また、前記歯厚上がり刃を前記ブローチ本体の径方向から見た側面視で、前記工具送り方向に隣り合う前記歯厚上がり刃の前記ガイド面同士が、前記第1の弦巻線とは別の1つの仮想の第2の弦巻線上に位置している。
この場合、歯厚上がり刃の作製がより簡単になる。なおこの場合、工具送り方向に隣り合う歯厚上がり刃同士のうち、前方に位置する歯厚上がり刃のガイド面は、歯溝の歯面に対して摺接しないこととなるが、その代わり、後方に位置する歯厚上がり刃のガイド面が歯面に確実に摺接させられるため、上述した本発明の作用効果は安定して奏功される。
また、第1の弦巻線に対して、ガイド面が傾斜する角度が10′以下であるので、ガイド面と歯面との接触面積を広く確保することができる。これにより、ガイド面による切削刃のガイド機能をより安定化させることができる。また、ガイド面が歯面を傷付けてしまうようなことを顕著に防止できる。
図1に示されるように、本実施形態のヘリカルブローチ10は、軸状のブローチ本体1を有しており、このブローチ本体1の外周には、複数の切れ刃が配列している。ブローチ本体1の外周において複数の切れ刃は、ブローチ本体1の軸線Oに直交する径方向の外側へ向けて突設されており、軸線Oが延在する軸線O方向へ向かうに従い漸次軸線O回りの周方向に向けてねじれて配列している。
このヘリカルブローチ10は、例えば自動変速機用のプラネタリーインターナルギア等の高精度が要求される製品の作製に用いられ、一回の切削加工で、被削材Wに対して荒加工から仕上げ加工までを行うことができる。
本実施形態では、ブローチ本体1の軸線Oが延在する方向(軸線Oに沿う方向)を、軸線O方向という。また、軸線O方向のうち、切削時に被削材Wに対してブローチ本体1が移動させられる向き(図1において上から下へ向かう向き)を工具送り方向Fといい、これとは反対側へ向かう方向(図1において下から上へ向かう向き)を、工具送り方向Fとは反対側という。また、工具送り方向Fを前方といい、工具送り方向Fとは反対側へ向かう方向を後方ということがある。
また、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
ブローチ本体1は、例えば高速度工具鋼等の硬質金属材料により形成され、軸線Oを中心とした長尺の軸状をなしている。ブローチ本体1の軸線O方向の両端部には、該ブローチ本体1をブローチ盤に取り付けるためのつかみ部2、3が形成されている。ブローチ本体1の前端部には、前つかみ部2が形成され、後端部には、後つかみ部3が形成されている。
ブローチ本体1において、軸線O方向に沿う前つかみ部2と後つかみ部3との間に位置する部位(ブローチ本体1の両端部間に位置する中間部分)には、刃部4が形成されている。
図1において、刃部4の複数の切れ刃には、複数の外径上がり刃(荒刃)5と、これらの外径上がり刃5よりも後方に配置される複数の歯厚上がり刃(仕上げ刃)6と、が含まれている。特に図示していないが、刃部4には、被削材Wの下孔の最内周部分(小径部)を切削する丸刃が備えられていてもよい。丸刃は、例えば、刃部4の後方部分に複数配置される。
なお、図2において符号βで示されるものは、歯溝ねじれ角である。歯溝ねじれ角βは、被削材Wの歯溝Gの一対の歯面A、Bが、ブローチ本体1の軸線Oに対してねじれる(傾斜する)角度である。具体的には、歯溝Gの延在方向(歯溝中心線)と、ブローチ本体1の軸線Oと、が交差して形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度が歯溝ねじれ角βである。
また、一方側の歯面Aを追い込み切削する歯厚上がり刃6と、他方側の歯面Bを追い込み切削する歯厚上がり刃6との間には、切削に寄与しないガイド切れ刃(不図示)が設けられていてもよい。
図2に示されるように、歯厚上がり刃6は、工具送り方向Fを向くすくい面11と、周方向(図2における左右方向)の一方側又は他方側を向く逃げ面12と、すくい面11と逃げ面12との交差稜線に形成された切削刃13と、周方向のうち逃げ面12が向く方向とは反対側を向くガイド面14と、すくい面11とガイド面14との交差稜線に形成されたガイド刃15と、を備えている。
図2に示される例では、歯厚上がり刃6の逃げ面12が、周方向の一方側を向いており、歯溝Gの一方側の歯面Aに対向している。また、ガイド面14が、周方向の他方側を向いており、歯溝Gの他方側の歯面Bに対向している。
以下の歯厚上がり刃6の各構成要素の説明では、弦巻線H1を用いることがある。図2に示されるブローチ本体1の側面視で、弦巻線H1が延在する方向は歯溝Gの延在方向に沿っており、弦巻線H1に直交する方向は歯溝Gの溝幅方向に沿っている。なお、弦巻線H1に直交する方向は、歯厚上がり刃6の歯幅方向に相当する。
そして、ガイド面14は、該ガイド面14に対向配置される弦巻線H1(他方側の歯面B)に対して、ガイド面14の全長にわたって、ガイド刃15から離間するに従い(弦巻線H1の延在方向の後方へ向かうに従い)、弦巻線H1に接近するように傾斜して形成されている。
また、図2に示されるように、工具送り方向Fに隣り合う歯厚上がり刃6のガイド面14同士は、1つの仮想の弦巻線H2上に位置している。なお、この弦巻線H2は、上記弦巻線H1に対して角度αで交差する、別の弦巻線である。つまり、弦巻線H1を第1の弦巻線H1とすると、弦巻線H2は、第1の弦巻線H1とは傾斜が異なる第2の弦巻線H2である。
ガイド面14は、外径上がり刃5によって形成された歯溝Gの歯面Bに摺接することにより、歯厚上がり刃6とともにその切削刃13を、弦巻線H1(配列方向L)に沿って案内する。
本実施形態のヘリカルブローチ10を用いて被削材Wにブローチ加工を施す際には、ブローチ本体1の刃部4が被削材Wの下孔に挿入されていき、まず、外径上がり刃5により下孔の内周に歯溝Gが形成される。複数の外径上がり刃5は、ブローチ本体1の径方向外側へ向けた切れ刃の突出高さがブローチ本体1の後方に向かうに従い徐々に増大させられている。このため、これらの外径上がり刃5は、被削材Wの下孔の内周にヘリカル内歯車形状の歯溝(ねじれ溝)Gを歯丈方向に追い込み切削する。
図2において、詳しくは、前方部分に位置する複数の歯厚上がり刃6は、各切削刃13の鋭角側歯面Aへ向けた突出量が、後方へ向かうに従い徐々に大きくされている。また、各切削刃13は、鈍角側歯面Bに摺接するガイド面14により、鈍角側歯面B(弦巻線H1)に沿って案内される。そして、複数の歯厚上がり刃6は、前後に隣り合う切削刃13同士の前記突出量の差分だけ、鋭角側歯面Aを切削刃13により切削し追い込んでいく。
特に図示していないが、詳しくは、後方部分に位置する複数の歯厚上がり刃6は、各切削刃13の鈍角側歯面Bへ向けた突出量が、後方へ向かうに従い徐々に大きくされている。また、各切削刃13は、鋭角側歯面Aに摺接するガイド面14により、鋭角側歯面A(弦巻線H1)に沿って案内される。そして、複数の歯厚上がり刃6は、前後に隣り合う切削刃13同士の前記突出量の差分だけ、鈍角側歯面Bを切削刃13により切削し追い込んでいく。
以上説明した本実施形態のヘリカルブローチ10では、図2に示されるように、歯厚上がり刃6をブローチ本体1の径方向から見た側面視において、外径上がり刃5の配列方向(リード)Lに平行で歯厚上がり刃6のガイド面14に対向配置される仮想の弦巻線H1に対して、該ガイド面14がその全長(全面)にわたって傾斜して形成されている。具体的には、ガイド面14がその全長にわたって、ガイド刃15から離間するに従い(工具送り方向Fとは反対側へ向かうに従い)、弦巻線H1に接近するように傾斜して延びている。
従って、ガイド面14による切削刃13のガイド機能を十分に発揮させることができる。また、歯面Bに接触するガイド面14の部分が尖って形成される(歯面Bに対して急傾斜で形成される)ようなことを抑制して、該ガイド面14により歯面Bが傷付けられてしまうことを防止できる。
また、弦巻線H1に対して、ガイド面14が傾斜する角度αが10′以下であるので、ガイド面14と歯面Bとの接触面積を広く確保することができる。これにより、ガイド面14による切削刃13のガイド機能をより安定化させることができる。また、ガイド面14が歯面Bを傷付けてしまうようなことを顕著に防止できる。なお、上記作用効果をより格別顕著なものとするには、好ましくは、角度αは5′以下である。
すなわちこの場合、歯厚上がり刃6の作製がより簡単になる。なおこの場合、工具送り方向Fに隣り合う歯厚上がり刃6同士のうち、前方に位置する歯厚上がり刃6のガイド面14は、歯溝Gの歯面Bに対して摺接しないこととなるが、その代わり、後方に位置する歯厚上がり刃6のガイド面14が歯面Bに確実に摺接させられるため、上述した本発明の作用効果は安定して奏功される。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
5 外径上がり刃(荒刃)
6 歯厚上がり刃(仕上げ刃)
10 ヘリカルブローチ
11 すくい面
12 逃げ面
13 切削刃
14 ガイド面
15 ガイド刃
F 工具送り方向
H1 仮想の弦巻線(第1の弦巻線)
H2 仮想の弦巻線(第2の弦巻線)
L 切れ刃(外径上がり刃)の配列方向
O 軸線
α 角度(傾斜角)
Claims (3)
- 軸状のブローチ本体と、
前記ブローチ本体の外周に、前記ブローチ本体の軸線に直交する径方向の外側へ向けて突設された複数の切れ刃と、を備え、
前記ブローチ本体の外周において複数の前記切れ刃が、前記軸線が延在する軸線方向へ向かうに従い漸次軸線回りの周方向に向けてねじれて配列するヘリカルブローチであって、
複数の前記切れ刃には、
複数の外径上がり刃と、
前記外径上がり刃よりも前記軸線方向に沿う工具送り方向とは反対側に配置される複数の歯厚上がり刃と、が含まれ、
前記歯厚上がり刃は、
前記工具送り方向を向くすくい面と、
前記周方向の一方側又は他方側を向く逃げ面と、
前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線に形成された切削刃と、
前記周方向のうち前記逃げ面が向く方向とは反対側を向くガイド面と、
前記すくい面と前記ガイド面との交差稜線に形成されたガイド刃と、を備え、
前記歯厚上がり刃を前記ブローチ本体の径方向から見た側面視で、
前記外径上がり刃の配列方向に沿って延びるとともに、前記ガイド面に対向して配置される仮想の第1の弦巻線に対して、前記ガイド面はその全長にわたって、前記ガイド刃から離間するに従い前記第1の弦巻線に接近するように傾斜し、
前記工具送り方向に隣り合う前記歯厚上がり刃の前記ガイド面同士が、前記第1の弦巻線とは別の1つの仮想の第2の弦巻線上に位置していることを特徴とするヘリカルブローチ。 - 請求項1に記載のヘリカルブローチであって、
前記歯厚上がり刃を前記ブローチ本体の径方向から見た側面視で、
前記第1の弦巻線に対して前記ガイド面が傾斜する角度が、0.1′以上10′以下であることを特徴とするヘリカルブローチ。 - 請求項1又は2に記載のヘリカルブローチであって、
前記歯厚上がり刃を前記ブローチ本体の径方向から見た側面視で、
前記第1の弦巻線に対して前記ガイド面が傾斜する角度が、前記ガイド面の全長にわたって一定であることを特徴とするヘリカルブローチ。
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