以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。なお、以下の説明に用いる各図面は、模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識可能な程度に示すために、各部材の寸法関係や縮尺等は、各構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係等、図示の形態のみに限定されるものではない。
[第1の実施形態]
図1〜図11は、本発明の第1の実施形態を示す図である。このうち、図1は、本発明の第1の実施形態の挿入機器(内視鏡)を含む内視鏡装置の概略構成を示す外観斜視図である。まず、本実施形態の挿入機器である内視鏡を含む内視鏡装置の全体的な概略構成を、図1を用いて以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の挿入機器である内視鏡2(以下、単に内視鏡という)を含む内視鏡装置1は、内視鏡2と、周辺装置100等によって主に構成されている。
周辺装置100は、光源装置21と、ビデオプロセッサ22と、接続ケーブル23と、キーボード24と、モニタ25と、送気送水装置27と、これらの構成ユニットを載置するための架台26等によって主に構成されている。
内視鏡2は、操作部3と、被検体内に挿入される細長形状の挿入部4と、ユニバーサルコード5と、コネクタ19等によって主に構成されている。
操作部3は、上記挿入部4の長手軸方向の基端側に接続され、各種の操作を行うための複数の操作部材、例えば湾曲操作ノブ9,送気送水操作釦16,吸引操作釦17,ガイドコイル固定レバー80等を有して構成される構成ユニットである。また、操作部3には、挿入部4を挿通する処置具挿通チャンネル(不図示)に連接される処置具挿入口18等が設けられている。
挿入部4は、先端側から順に、先端部6,湾曲部7,可撓管部8が連設されて、全体として細長形状に形成された管状部材によって構成されている。より詳しくいうと、挿入部4は、先端側から先端部6,操作部3の操作部材の操作で湾曲する第1の湾曲部である第1湾曲部7a及び同様に操作部3の操作部材の操作で湾曲する第2の湾曲部である第2湾曲部7bからなる湾曲部7(詳細は後述する),可撓管部8の順に接続される管状部材を含んで構成されている。
先端部6は、図示しない撮像ユニット,撮像光学系,照明光学系等の各種の構成部材を内部に有して構成され、外殻を硬質の部材を用いて形成されている。先端部6の先端面には、例えば上記撮像光学系の一部を構成する対物レンズ11aと、図示しない送気送水路の開口となる先端開口12と、上記照明光学系の一部を構成する照明光射出窓13と、上記処置具挿通チャンネルの先端開口14等が設けられている。
湾曲部7は、挿入部4において先端部6と可撓管部8との間に設けられ、複数の湾曲駒7k(詳細構成は後述。図2参照)を連接して形成され、例えば上下左右方向に湾曲自在に構成される部位である。上記複数の湾曲駒7kのうち最先端の湾曲駒7kには、操作部3の湾曲操作ノブ9から挿入部4を挿通する複数(本実施形態では4本)のワイヤ30(図2参照)の先端部が固定されている。この複数のワイヤ30は、挿入部4の内部、より詳しく言うと湾曲部7に対する先端固定部位から可撓管部8を挿通配置され、さらに操作部3の湾曲操作ノブ9に連結されたフランジに巻回されている(図4参照)。つまり、ワイヤ30は、第1湾曲部7a(後述する)の先端と操作部3とを接続している。
さらに詳述すると、後述の図4等を用いて詳述するように、4本のワイヤ30のうち上下湾曲用の2本のワイヤ30は、湾曲操作ノブ9に連結されているフランジ70に巻回され、左右湾曲用の2本のワイヤ30は、上記フランジ70とは別のフランジ(不図示)に巻回されている。この構成により、使用者(ユーザ)が上記湾曲操作ノブ9の回転操作を行うと、これに応じて上記4本のワイヤ30のうちの所定のワイヤが牽引若しくは弛緩されるのに伴って、湾曲部7は、操作に応じた上下左右の4方向のいずれかの方向に湾曲するように構成されている。なお、本実施形態を示す図面においては、挿入部4の挿入方向、及びこの挿入方向に沿う方向を符号Sで示している。
ユニバーサルコード5は、上記操作部3の側面から延出するように配設されるケーブル状部材であって、内部には例えばビデオプロセッサ22から延出される電力供給路や電気信号等の伝送路等、電気ケーブル等のほか、送気送水装置27からの送気送水管路、光源装置21からの照明光伝送ケーブル等が挿通している。
ユニバーサルコード5の先端にはコネクタ19が設けられている。このコネクタ19は、上記周辺装置100の構成ユニットの一つ、例えば光源装置21に接続されている(本実施形態では光源装置21としているが、周辺装置100の構成ユニットであれば、これに限られることはない)。
コネクタ19には、不図示の各種口金や、各種電気接点等が設けられていると共に、接続ケーブル23を介してビデオプロセッサ22が電気的に接続されている。この構成により、上記内視鏡2と上記周辺装置100とは、コネクタ19を介して接続されている。
次に、本実施形態の内視鏡2における挿入部4の内部構成のうち主に湾曲部7の詳細構成と、操作部3の内部構成のうち主に線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60の詳細構成を、図2〜図8を用いて以下に説明する。
図2は図1の挿入機器(内視鏡)における挿入部先端側(主に湾曲部)の内部構成の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。図3は図2に示す挿入部先端側の軸方向に直交する面、即ち図2に示す[3]−[3]線に沿う面の断面図である。図4は図1の挿入機器(内視鏡)の挿入部基端側と操作部との連結部位及び操作部内部に配設されるガイドコイル固定機構の概略構成を示す要部構成図である。なお、図4においては、ガイドコイル固定機構の構成を示すために、一部の部品(蓋部材の平面部)を省略しており、他の一部の部品(蓋部材の壁面部,操作部の外装部材等)を断面として示している。
図5〜図8は図4に示す操作部内部に配設されるガイドコイル固定機構を取り出してその構成を示す図である。このうち図5は図4の[5]−[5]線に沿う断面図である。図6は図5の矢印[6]方向から見た側面図である。図7,図8は図6のガイドコイル固定機構から蓋部材の平面部を省いた状態を示す図である。このうち図7は内側ガイドコイルを非固定状態としている様子を、図8は内側ガイドコイルを固定状態としている様子を、それぞれ示している。
まず、本実施形態の内視鏡2における挿入部4の構成要素のうち湾曲部7の詳細構成を説明する。本実施形態の内視鏡2における湾曲部7は、図2,図3に示すように、複数の湾曲駒7kを当該挿入部4の挿入方向Sに沿う方向に連結した形態で構成されている。複数の湾曲駒7kの外周側にはブレード7hが被覆されている。このブレード7hの外周側には湾曲ゴム7gが被覆されている。なお、以下の説明において、湾曲部7のうち挿入方向Sの略前半部に位置する部位を第1湾曲部7aと、同挿入方向Sの略後半部に位置する部位を第2湾曲部7bというものとする。ここで、第1湾曲部7aは操作部3と第2湾曲部7bの後端とを接続し、第2湾曲部7bは操作部3と第1湾曲部7aの後端とを接続している。
第1湾曲部7aに位置する複数の湾曲駒7kには、複数のワイヤガイド7uが設けられている。この複数のワイヤガイド7uは、操作部3から延出され挿入部4内を湾曲部7の先端まで挿通され湾曲部7を湾曲させるために設けられる牽引用のワイヤ30を保持するワイヤガイド部材である。本実施形態においては、後述するように上記ワイヤ30は、湾曲部7の上下左右の湾曲に対応させて4本設けている。これに対応させて上記ワイヤガイド7uも4つ設けている。この場合において、複数のワイヤガイド7uは、湾曲駒7kの内周面に固設されている。そして、各ワイヤガイド7uは、湾曲部7の周方向に所定の間隔をおいて配設されている。本実施形態においては、4つのワイヤガイド7uのそれぞれは、湾曲部7の周方向に角度略90度の間隔をおいて配設されている(図2,図3参照)。なお、図3においてはワイヤガイド7uは示されないが、その配置位置は、ワイヤ30の配置に準じている。ここで、各ワイヤ30の先端部は、図2に示すように、上記複数の湾曲駒7kのうち例えば最先端側に位置する湾曲駒7kaの4つのワイヤガイド7uに対して固設されている。また、各ワイヤ30の基端部は、後述するように、操作部3に設けられる湾曲操作ノブ9に連結されているフランジ70に巻回されている(図4参照)。
一方、湾曲部7における第2湾曲部7bに位置する複数の湾曲駒7kのうち最も基端側に位置する湾曲駒7kbには連結部材33の先端側が固定されている。この連結部材33は、湾曲部7の基端と可撓管部8の先端とを連結するための部材である。連結部材33の基端側内周には可撓管部8の一部を構成するブレード8hの先端部位が固定されている。そして、連結部材33の外周側は湾曲ゴム7gが、ブレード8hの外周側は外皮チューブ8gが被覆されている。そして、湾曲ゴム7gの最も基端部の外周側と、外皮チューブ8gの最も先端側との間にかけての外周側は、糸巻き接着等を施すことによって上記湾曲ゴム7gと外皮チューブ8gとを連結している。
なお、可撓管部8において、ブレード8h及び外皮チューブ8gは可撓管部8の基端部まで延出している。可撓管部8の基端部においては、図4に示すように、ブレード8hの基端側の外周には連結部材34の先端側が固定されている。この連結部材34の基端側の外周には操作部3の外装部材3gが固定されている。
また、図2〜図4に示すように、上記4本のワイヤ30は、例えば所謂コイルシースのような柔軟な密巻きコイル等の線状部材からなる複数条の内側ガイドコイル40のそれぞれに挿通配置されている。この場合において、ワイヤ30は内側ガイドコイル40内において挿入部4の軸方向(挿入方向S)に沿う方向に進退自在となるように配設されている。そのために、上記複数条の内側ガイドコイル40は、複数本のワイヤ30と同数、例えば本実施形態においては4条若しくは2条設けられている。また、これら複数条の内側ガイドコイル40の配置は、上記4本のワイヤ30に合わせて、挿入部4の周方向に所定の間隔、即ち角度略90度の間隔をおいて配設されている。
ここで、内側ガイドコイル40が柔軟な密巻きコイルから構成されているのは、通常の金属製の硬質なパイプ状部材をワイヤ30の外周に被覆してしまうと、湾曲部7が湾曲しなくなってしまうばかりか、可撓管部8の可撓性をも低下させてしまうことを考慮したためである。そこで、内側ガイドコイル40としては、湾曲部7の湾曲性及び可撓管部8の可撓性を低下させないものであって、湾曲部7の湾曲の際に挿入方向Sに平行な内側ガイドコイル40の延在方向に沿って働く圧縮力に抗することができる材質のものが適用される、従って、内側ガイドコイル40としては、例えば上記の密巻きコイルに限定されるものではなく、樹脂製のパイプでもよい。
そして、上記4条の内側ガイドコイル40の先端40sは、図2に示すように、湾曲部7の挿入方向Sにおいて所定の中途位置、例えば第2湾曲部7bにおける最も先端側の湾曲駒7kcの近傍において上記ブレード7hに対し、例えばロウ付け等の接合手段によって固定されている。
また、図4に示すように、内側ガイドコイル40の基端40kは、操作部3内に設けられているガイドコイル固定機構60内を挿入方向Sに沿う方向に移動自在に挿通している。つまり、内側ガイドコイル40は、挿入部4及び操作部3内において、挿入部4の長手軸方向の前後に移動自在に挿通配置されている。また、内側ガイドコイル40は、例えば上下方向の湾曲、若しくは左右方向の湾曲に対応するために、少なくとも2条配設されておればよい。
ここで、上記ガイドコイル固定機構60は線状部材固定機構である。ガイドコイル固定機構60は、湾曲操作に応じて操作部3内において挿入方向Sに沿って進退移動する内側ガイドコイル40の移動を固定する固定状態と、内側ガイドコイル40の同方向への進退移動を許容する非固定状態とに切り換えるための構成ユニットである。換言すると、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60は、操作部3内に設けられ、少なくとも2条の線状部材(内側ガイドコイル40)が挿入部4及び操作部3の長手軸方向の前後に移動することを規制して固定するための機構ユニットである。さらに言えば、ガイドコイル固定機構60(線状部材固定機構)は、操作部3の操作部材の操作により第2湾曲部7bの移動を規制する状態と、その移動を規制する状態を解除する状態との切り換えを行うことによって、第2湾曲部7bの湾曲を規制する状態と、その湾曲を規制する状態を解除する状態との切り換えを行う機構ユニットである。
また、ガイドコイル固定機構60(線状部材固定機構)は、内側ガイドコイル40(線状部材)が移動する方向(挿入方向S)と略平行な方向の動きが規制された状態で、後述する操作部3内のベースプレート92上に固設されている。なお、ガイドコイル固定機構60(線状部材固定機構)の詳細構成は後述する。
上記4条の内側ガイドコイル40は、例えば所謂コイルシースのような柔軟な密巻きコイル等の線状部材からなる複数の外側ガイドコイル50のそれぞれに対して挿通配置されている。この場合において、内側ガイドコイル40は、上記外側ガイドコイル50内において挿入部4の軸方向(挿入方向S)に沿う方向に進退自在となるように配設されている。そのために、上記複数の外側ガイドコイル50は、複数のワイヤ30,上記複数の内側ガイドコイル40と同数、即ち本実施形態においては4条設けられている。そして、それら複数の外側ガイドコイル50の配置も、上記4本のワイヤ30,上記複数の内側ガイドコイル40に合わせて、挿入部4の周方向に所定の間隔、即ち角度略90度の間隔をおいて配設されている。
なお、外側ガイドコイル50は、少なくとも1条の内側ガイドコイル40、例えば湾曲部7を上方向へと湾曲させるためのワイヤ30を挿通した1条の内側ガイドコイル40のみに配設されておればよい。
ここで、外側ガイドコイル50が柔軟な密巻きコイルから構成されているのは、上記内側ガイドコイル40と同様の理由による。即ち、外側ガイドコイル50が通常の金属製の硬質なパイプ状部材で構成すると、可撓管部8の可撓性を低下させてしまう。そこで、外側ガイドコイル50としては、可撓管部8の可撓性を低下させないものであって、湾曲部7の湾曲の際に、後述する外側ガイドコイル50の延在方向に働く圧縮力に抗することができる材質のものが適用される。従って、外側ガイドコイル50としては、例えば上記の密巻きコイルに限定されるものではなく、樹脂製のパイプでもよい。
つまり、本実施形態の内視鏡2においては、第1のガイドコイルである外側ガイドコイル50と、この外側ガイドコイル50(第1のガイドコイル)に挿通される第2のガイドコイルである内側ガイドコイル40と、この内側ガイドコイル40(第2のガイドコイル)に挿通されるワイヤ30とをそれぞれ含む線状部材が、挿入部4から操作部3の内部を挿通している。
外側ガイドコイル50の先端50sは、図2に示すように、可撓管部8の先端部位、即ち、上記連結部材33の先端内側に対して、例えばロウ付け等の接合手段によって固定されている。また、外側ガイドコイル50の基端50kは、図4に示すように、可撓管部8の基端部に配設される連結部材34の基端内側に対して、例えばロウ付け等の接合手段によって固定されている。
上述したように、外側ガイドコイル50は、可撓管部8内において、先端50s及び基端50kが固定された状態で挿通されている。このような構成とすることによって、所定の湾曲操作を行なって4本のワイヤ30のうちのいずれかのワイヤを牽引する操作がなされると、外側ガイドコイル50は、自身の延在方向に沿って可撓管部8に働く圧縮力に抗する。このことから、可撓性を有する可撓管部8が湾曲部7とともに湾曲してしまうことを抑止する役目をする。
なお、内側ガイドコイル40の先端40sが第2湾曲部7bの先端に固定され、かつ外側ガイドコイル50の先端50sと基端50kとがそれぞれ可撓管部8内において固定されている状態において、内側ガイドコイル40が挿入方向Sに沿って移動するとき、基端40kが外側ガイドコイル50の基端50kよりも先端側、即ち外側ガイドコイル50内に引き込まれてしまわない程度の長さを有するように、内側ガイドコイル40の全長は設定されている。
次に、本実施形態の内視鏡2における操作部3の概略構成と、この操作部3の内部構成要素のうちのガイドコイル固定機構60の詳細構成を説明する。
本実施形態の内視鏡2における操作部3は、図4に示すように、外装部材3gによって所定の容積を有する内部空間が形成されており、その空間内には、例えばガイドコイル固定機構60等の各種の構成部材と、これら各種の構成部材を固定するフレーム部材としてのベースプレート92等が収納されている。また、操作部3の外装部材3gの外面には、上述したように、例えば湾曲操作ノブ9やガイドコイル固定レバー80等の各種の操作部材が配設されている。そして、上述したように、操作部3の先端側には上記挿入部4の基端側が連結されている。ベースプレート92は、また、操作部3と挿入部4との位置を固定するフレーム部材としての役目もしている。
挿入部4の内部に収納配置されているガイドコイル固定機構60は、図4に示すように、外装部材3gの内部に固定支持されているベースプレート92の平面上に配設されている。ベースプレート92は、その平面が本内視鏡2の挿入部4の挿入方向Sに沿って配設されている。
ガイドコイル固定機構60は、図4〜図8に示すように、ガイド部材61と、二節リンク62(リンク機構部)と、カム軸63と、一対のブレーキ部材64と、スライダ90a及びクランク90fと、スライダガイド90bと、フランジ91と、ガイドコイル固定レバー80等によって主に構成されている。
ガイドコイル固定機構60は、上述したように、上記複数の内側ガイドコイル40の基端40kを挿入方向Sに沿って移動自在に挿通配置し、これを使用者(ユーザ)による所定の操作を受けて、固定状態と非固定状態とに切り換えるための機構を構成するユニットである。なお、図5〜図8においては、ガイドコイル固定機構を簡略化して図示している。例えば、本実施形態の内視鏡2においては、4本のワイヤ30によって上下左右の湾曲操作を行い得るように構成している。そして、この4本のワイヤ30は、4条の内側ガイドコイル40に挿通されている構成となっている。従って、本実施形態の内視鏡2におけるガイドコイル固定機構60は、実際には、4条の内側ガイドコイル40が挿通している構成であるが、図面の煩雑化を避けるために図面を簡略化し、4条の内側ガイドコイル40のうち2条が挿通している構成を図示している。なお、この場合において、図示を省略した部分の構成は、図示されている構成と略同様である。
カム軸63は、上記ベースプレート92の平面に直交する方向に直立して配設され、その軸部63bの中程の部位に径方向に突出する一対の偏心カムであり2つの回転カムである一対のカム部63aを有する軸状部材である。詳述すると、カム軸63の軸部63bの一端は、図5に示すように、上記ベースプレート92に穿設された孔部に回動自在に挿通した後、その先端が平板状若しくは円板状の抜け止め板65に、例えば半田付け等のロウ付け手段により固着されている。この抜け止め板65は、ベースプレート92の外面側(即ちガイドコイル固定機構60が配設されている面とは反対側の面側)に沿うように配設されている。抜け止め板65は、カム軸63の傾きを防止すると共に、カム軸63が抜け落ちてしまうのを抑え、カム軸63の軸受部としての役目をする部品である。
このカム軸63を覆うようにガイド部材61が配設されている。このガイド部材61は、図5等に示すように、一面に開口61dを有し、全体が略直方体に形成された筐体部品であり、全体として当該ガイドコイル固定機構60の外装部を構成する部品である。詳述すると、ガイド部材61は、上記開口61dに対向する部位に形成される平面蓋部61bと、この平面蓋部61bの四囲を囲うように直立する四つの壁面部61cとによって形成されている。このガイド部材61の内部には、上記カム軸63が軸支されており、また、このカム軸63が作用する2つの摺動部材である一対のブレーキ部材64が収納配置されている。そして、ガイド部材61は、内部に収納配置された一対のブレーキ部材64が脱落しないように保持すると共に、一対のブレーキ部材64がガイド部材61内において所定の方向(後述する図5等に示す矢印P方向)に往復移動をする際の案内をする役目もしている。なお、ガイド部材61は、比較的硬質の部材、例えば金属製の部材によって形成される。ガイド部材61を形成する部材としては、例えばSUS304,SUS303,SUS316等の材質の部材が適用される。
上述したように、カム軸63の軸部63bの一端は、ベースプレート92の平面を介して抜け止め板65に回動自在に軸支されている。一方、当該カム軸63の軸部63bの他端は、上記ガイド部材61の平面蓋部61bに穿設された長孔61aを回動自在に挿通した後、その先端が後述する二節リンク62に接続されている。
ここで、上記長孔61aは、ガイド部材61の平面蓋部61bの略中央部位に穿設されており、その長軸は、図5,図6に示す矢印Pに沿う方向に形成されている。この長孔61aに、カム軸63の軸部63bの他端が回動可能な状態で挿通配置されている。従って、ガイド部材61は、長孔61aの長軸方向(矢印Pに沿う方向)に沿う方向に対しては、長孔61aの長軸寸法だけ移動し得るように構成されている。
一方、長孔61aの幅寸法は、カム軸63の軸部63bの他端の直径よりも若干大となるように設定されている。従って、長孔61aは、その幅方向(矢印P方向に対して直交する方向;挿入方向Sと同方向)へ移動が規制されている。なお、カム軸63の軸部63bと長孔61aとの隙間は、非固定状態にあるときには、容易にガイド部材61が動けるように余裕を持って設定されている。
このような構成により、ガイド部材61は、カム軸63の他端が挿通された長孔61aの長軸に沿う方向(矢印Pに沿う方向)への移動が許容されていると共に、矢印P方向以外の方向への移動が規制されつつ、かつ上記カム軸63を回動自在に軸支している。
また、ガイド部材61の長孔61aは、一対のブレーキ部材64(2つの摺動部材)と2条の内側ガイドコイル40(2条の線状部材)との力が釣り合う位置に、ガイドコイル固定機構60(線状部材固定機構)の一部である蓋部61bを移動させることが可能な位置調整部として機能する部位である。
この場合において、位置調整部としての長孔61aは、2条の内側ガイドコイル40(線状部材)の間に設けられる。また、2条の内側ガイドコイル40(線状部材)の間には、カム軸63の一対のカム部63a(2つの回転カム)と、同一対のカム部63aに1つずつ当接して往復運動する一対のブレーキ部材64(2つの摺動部材)とが設けられている。
カム軸63は、その軸部63bの中程の部位に、外周に向けて突出する一対のカム部63aを有して形成されている。この一対のカム部63aは、当該カム軸63の軸部の周方向において互いに対向する部位に形成されている。
また、ガイド部材61の内部には、上述したように、一対のブレーキ部材64が配設されている。この一対のブレーキ部材64は、後述するように、ガイドコイル固定レバー80(操作部材)の操作に応じて複数(2条)の内側ガイドコイル40(線状部材)が移動する方向(挿入方向S)に対して略垂直方向(矢印P方向)に往復運動し得るように配設された一対(2つ)の摺動部材である。換言すると、ガイド部材61は、内部に収納した一対のブレーキ部材64の所定の方向(内側ガイドコイル40の移動方向(挿入方向S)に対する略垂直方向(矢印P方向))への往復方向をガイドし、かつブレーキ部品64の脱落を抑止している。なお、ブレーキ部材64は、固定対象とする内側ガイドコイル40(線状部材)の条数に応じて、その配設数が設定される。また、ブレーキ部材64の内側ガイドコイル40との当接面は、摩擦抵抗が高い材料が適用され、いわゆるブレーキパッド等のような形態に形成されている。ここで、ブレーキ部材64の内側ガイドコイル40との当接面は、強い力量で内側ガイドコイル40の外周面に向けて押圧されることになるので、その押圧力によって内側ガイドコイル40を押し潰してしまうことのような適切な押圧力を発生させる必要がある。そこで、ブレーキ部材64の上記当接面には、軟性素材を含む樹脂材や表面に凹凸を設けた形態のパッド部材を適用するのが望ましい。
上記一対のブレーキ部材64のうちの一方のブレーキ部材64は上記カム軸63の一対のカム部63aの一方のカム部63aに対向する位置に、他方のブレーキ部材64は他方のカム部63aに対向する位置に、それぞれ配設されている。この場合において、各ブレーキ部材64は、上記矢印Pに沿う方向に移動自在となるように配設されている。換言すれば、カム軸63のカム部63aは、2条の内側ガイドコイル40(2条の線状部材)の間に設けられ、一対のブレーキ部材64(摺動部材)を矢印P方向に往復運動させる回転カムである。
一方、ガイド部材61の内部には、上記4条の内側ガイドコイル40が挿通配置されている。この場合において、一対の内側ガイドコイル40、例えば上下方向の湾曲に対応する2条の内側ガイドコイル40は、ガイド部材61の内部にて、カム軸63を挟んで両側の部位を挿通し、さらに、上記各ブレーキ部材64と、ガイド部材61の壁面部61cのうちの二面(壁面部61ca)との間の空間にそれぞれ配置されている。ここで、壁面部61caは、挿入方向Sに沿って平面が形成される2つの壁面部である(図5,図7,図8参照)。換言すると、ガイド部材61の2つの壁面部61caは、往復運動する各ブレーキ部材64(摺動部材)との間で2条の内側ガイドコイル40(2条の線状部材)をそれぞれ挟み付ける2つのガイド部として機能する部位である。
そのために、上記2つの壁面部61caに直交する他の2つの壁面部61cbには、上記内側ガイドコイル40を挿入方向Sに沿って移動自在に挿通させる挿通孔61eが穿設されている(図7,図8参照)。なお、内側ガイドコイル40の基端40kは、当該ガイドコイル固定機構60を挿通した後、操作部3内に配設されている。そして、内側ガイドコイル40が挿入方向Sに沿って移動した場合にも、基端40kがガイドコイル固定機構60のガイド部材61内に入り込まないように、その長さ寸法が規定されている。また、上記2つの壁面部61cbは、カム軸63のカム部63a(回転カム)の回転によりブレーキ部材64(摺動部材)と上記2つの壁面部61ca(ガイド部)とによって上記2条の内側ガイドコイル40(2条の線状部材)を押し付ける力が釣り合う位置になるように、当該内側ガイドコイル40(線状部材)の移動方向に直交する方向(略垂直方向)にガイド部材61が移動する際に、上記ガイド部としての2つの壁面部61caと一体に移動して、該ガイド部(壁面部61ca)を支持するガイド部材支持枠となっている。
上述したように、上記カム軸63の軸部63bの他端には、リンク機構部の一部を構成する二節リンク62が接続されている。この二節リンク62は、単純な機構によって倍力効果が得られる倍力機構(リンク機構)である。二節リンク62は、スライダ90a及びクランク90f,フランジ91を介してガイドコイル固定レバー80に連結されている。
二節リンク62は、2本の腕部材62a,62bと、関節軸62dと、軸部材62cとによって構成される(図4,図6〜図8参照)。上記2本の腕部材(62a,62b)のうちの先端側の腕部材62bは、その先端部に上記カム軸63の軸部63bの他端が嵌入固定されている。同腕部材62bの基端部は、上記関節軸62dを介して基端側の腕部材62aの先端部に軸支されている。腕部材62aの基端部は、軸部材62cを介して後述するスライダ90aの先端部に回動自在に接続されている。
なお、上記ベースプレート92の平面上には、軸部材62cとカム軸63の軸部63bとを結ぶ線(図6の一点鎖線参照)よりも上記二節リンク62の関節軸62d寄りの部位に、ストッパ部92aが突設されている。このストッパ部92aは、後述する構成によって上記二節リンク62が作動されたときに、2本の腕部材62a,62bが直線状態になってしまうのを避けるために形成されている。当該二節リンク62のようなリンク機構は、通常の場合、2本の腕部材62a,62bが直線形状になってしまうと、スライダ90aの進退作用によって再度屈曲させることが困難になる。そこで、ストッパ部92aを設けることによって、2本の腕部材62a,62bが完全に直線状になることを抑止し、再度の屈曲が容易となるように構成している。
また、この形態とは別に、リンク機構が直線状になった後にも容易に再屈曲させ得るようにする構成として、例えばカム軸63の中心点とスライダ90aの先端接続部の中心点とを、矢印P方向において互いにズレた位置となるように配置した構成としてもよい。
スライダ90aは、ベースプレート92の平面上を挿入方向Sに沿う方向に、摺動自在に設けられる板状部材である。換言すると、スライダ90aは、内側ガイドコイル40(線状部材)が移動する方向と略平行方向に往復運動する部品である。そのために、スライダ90aは、ベースプレート92の平面上においてその平面上を挿入方向Sに沿う方向に固設されている一対のスライダガイド90bに挟まれる空間に往復摺動自在に配設されている。上述したようにスライダ90aの先端側には、上記二節リンク62の基端側の腕部材62aが軸部材62cによって回動自在に接続されている。スライダ90aの基端側には、図4に示すようにクランク90fが先端側が軸部材を介して回動自在に接続されている。このクランク90fの基端側は、軸部材を介して円板形状のフランジ91の外周縁部近傍の所定の部位に回動自在に接続されている。
ここで、クランク90fは、ガイドコイル固定レバー80(回転ハンドル)が回転する運動をスライダ90aの往復運動に変換する第1のリンク機構である。このクランク90fに接続される上記腕部材62aは、スライダ90aの往復運動を回転運動に変換する第2のリンク機構である。この腕部材62a(第2のリンク機構)に一端が接続され、他端が(回転カムを有する)カム軸63の軸部63bが接続される腕部材62bは、上記腕部材62a(第2のリンク機構)からの回転力を(回転カムを有する)カム軸63の軸部63bに伝達する継ぎ手である第3のリンク機構である。
上記フランジ91は、湾曲操作ノブ9やフランジ70等と同軸にかつ独立して回動し得るように、操作部3のベースプレート92に対して回動自在に軸支されている。また、上記フランジ91の外周側近傍には、ガイドコイル固定レバー80がフランジ91の径方向外方に向けて突出するよう設けられている。このガイドコイル固定レバー80は、操作部3の外装部材3gの外側に配設されている。換言すると、ガイドコイル固定レバー80は、所定の点、即ちフランジ91の回転中心を回転軸として、同フランジ91を回転させることが可能な回転ハンドル状の部品である。このガイドコイル固定レバー80は、操作部3に対しては、図4に示す矢印W1,W2方向に傾倒し得るように構成されている。
このような構成からなるガイドコイル固定機構60は、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。ここで、本実施形態の内視鏡2に適用されているガイドコイル固定機構60の作用を、以下に説明する。
使用者(ユーザ)によってガイドコイル固定レバー80が、図4に示す矢印W1,W2方向へ傾倒操作されると、これを受けてフランジ91は同図矢印W1,W2方向へと回動する。例えば、ガイドコイル固定レバー80を図4に示す矢印W1方向へ傾倒させると、フランジ91は同図矢印W1方向へと回動する。すると、このフランジ91の回動に従動して、クランク90fを介してスライダ90aが図4の矢印S1方向へ摺動して、図8に示すように二節リンク62を伸長させる。これにより、カム軸63の軸部63bは、図4,図6〜図8において、ガイドコイル固定機構60の上面から見て反時計回りに回動する。すると、2つのカム部63aのそれぞれが一対のブレーキ部材64のそれぞれを矢印Pに沿う方向に押圧する。
この場合において、各ブレーキ部材64と壁面部61caとの間には、内側ガイドコイル40が存在している。従って、上記各ブレーキ部材64に作用する矢印P方向の(壁面部61caへ向く)押圧力は、内側ガイドコイル40の挿入方向Sへの移動を阻止する(ロックする)ように作用する。このとき、内側ガイドコイル40は、各ブレーキ部材64と壁面部61caとの間に挟持される状態になる。この状態になったとき、ガイド部材61は、上記壁面部61caからの反力を受けて、カム軸63を支軸として長孔61aの長軸方向である矢印P方向に沿って移動する。そして、上記押圧力とその反力とが釣り合う位置、即ち内側ガイドコイル40に対する固定力が均等になる位置にて当該内側ガイドコイル40は固定される。この状態において、内側ガイドコイル40は、押しつぶされてしまうようなことがなく、内側ガイドコイル40内に挿通されているワイヤ30は、挿入方向Sへの移動が自在となっている。したがって、このとき、使用者(ユーザ)が湾曲操作ノブ9の回動操作を行えば、湾曲部7はその操作に対応した所望の方向へと湾曲する。
ところで、上記ガイドコイル固定機構60において、カム軸63が回動して各カム部63aが各ブレーキ部材64を押圧する状態となったとき、カム軸63のカム部63aの先端と各ブレーキ部材64の当接面との距離や、各ブレーキ部材64とガイド部材61の壁面部61caとの距離は、ガイド部材61,カム軸63,ブレーキ部材64等の個々の部品工作精度によってばらつきが生じる。
したがって、ガイドコイル固定機構において、例えばカム軸63とガイド部材61とを固定した構成となっている場合には、部品の組み合わせによっては、カム軸63の各カム部63aが各ブレーキ部材64を押圧する押圧力に偏りが生じたり、常に均一で安定した固定力量を得ることができないといった可能性が発生する。この場合には、例えば内側ガイドコイルへの押圧力が過剰になって押し潰したり、押圧力が過小になって固定力が不足するといった問題が生じる。
そこで、本実施形態の内視鏡2におけるガイドコイル固定機構60においては、上述したように、カム軸63に対してガイド部材61を、所定の方向(矢印P方向)、即ちカム軸63の各カム部63aが各ブレーキ部材64を押圧する方向に移動可能に配設し、カム軸63のカム部63aが内側ガイドコイル40を介して各ブレーキ部材64を各壁面部61caに向けて押圧するとき、ガイド部材61が壁面部61caからの反力によって移動することで、ガイド部材61,カム軸63,ブレーキ部材64等の各部材間のばらつきを吸収するように構成されている。これにより、ガイドコイル固定機構60を作用させて内側ガイドコイル40を固定状態とするとき、当該内側ガイドコイル40に対して常に均一で安定した力量がかかる構成となっている。したがって、本実施形態の構成に依れば、例えば内側ガイドコイル40を過剰な押圧力によって押し潰してワイヤ30の移動を妨げたり、固定力が不足したりするようなことがない。
一方、ガイドコイル固定機構60が固定状態にあるとき、ガイドコイル固定レバー80を例えば矢印W2方向に傾倒させると、フランジ91は同矢印W2方向へと回動する。すると、これに従動してスライダ90aが図4の矢印S2方向へ向けて摺動し、伸長状態(図8の状態)にあった二節リンク62を図7に示すように屈曲させる。これにより、カム軸63の軸部63bは、図4,図6〜図8において、ガイドコイル固定機構60の上面から見て時計回りに回動する。すると一対のカム部63aが一対のブレーキ部材64を押圧する押圧力が解除される。したがって、各ブレーキ部材64と各壁面部61caとの間の各内側ガイドコイル40は挿入方向Sに摺動自在な状態となる(非固定状態になる)。この状態においても、内側ガイドコイル40内に挿通されているワイヤ30は、挿入方向Sへの摺動が自在であるので湾曲部7の湾曲操作は常に可能な状態にある。
このように構成された本実施形態の内視鏡2における湾曲操作時の湾曲部7の作用を、主に図9〜図11を用いて以下に説明する。図9〜図11は、本実施形態の挿入機器(内視鏡)の作用を示す概略構成図である。このうち図9は図1の挿入機器(内視鏡)の挿入部における湾曲部のうち第2湾曲部の基端から先端側の湾曲部全体が湾曲した状態を示している。図10は図1の挿入機器(内視鏡)の挿入部における湾曲部のうち第1湾曲部の基端から先端側の第1湾曲部のみが湾曲した状態を示している。図11は図1の挿入機器(内視鏡)の挿入部における湾曲部のうち第2湾曲部が一方向に湾曲しかつ第1湾曲部が反対の他方向に湾曲している状態を示している。
まず、図9に示す状態、即ち内視鏡2の挿入部4における湾曲部7のうち第2湾曲部7bの基端から先端側全体、つまり湾曲部7の全体を湾曲させる際の作用を説明する。
この場合においては、使用者(ユーザ)は、ガイドコイル固定用レバー80の操作を行わずに、ガイドコイル固定機構60を非固定状態とし、内側ガイドコイル40を挿入方向Sにおいて摺動自在な状態としておく。
この状態において、使用者(ユーザ)が湾曲操作ノブ9を任意に回動操作して、4本のワイヤ30のうちのいずれかのワイヤ30を牽引する。この操作を受けて、湾曲部7は、図9に示すように、第2湾曲部7bの基端から先端側全体が湾曲する。
即ち、この状態においては、内側ガイドコイル40は、非固定状態にあるので、湾曲部7の第2湾曲部7bにおいて内側ガイドコイル40の延在方向に沿って作用する圧縮力に抗することができず、ガイドコイル固定機構60の内部において挿入方向Sに移動する。これにより、例えば図9に示す方向の湾曲がなされたとき、4条の内側ガイドコイル40のうちの1条(図9において一方)の内側ガイドコイル40の基端40kがより多く矢印S2方向に移動する。
一方、可撓管部8内においては、外側ガイドコイル50は先端50sと基端50kとが固定されている。このことから、外側ガイドコイル50は、外側ガイドコイル50の延在方向に沿って作用する圧縮力に抗する。これにより、湾曲部7は、外側ガイドコイル50の先端50sを起点として、第2湾曲部7bの基端から第1湾曲部7a及び第2湾曲部7bの全体、即ち湾曲部7の全体が所定方向に湾曲する。
次に、図10に示す状態、即ち内視鏡2の挿入部4における湾曲部7のうち第1湾曲部7aの基端から先端側、つまり第1湾曲部7aのみを湾曲させる際の作用を説明する。
この場合においては、使用者(ユーザ)は、ガイドコイル固定用レバー80の操作を行って、上述の図5〜図8を用いて説明した手順にてガイドコイル固定機構60による内側ガイドコイル40を固定状態としておく。
この状態において、使用者(ユーザ)が湾曲操作ノブ9を任意に回動操作して、4本のワイヤ30のうちのいずれかのワイヤ30を牽引する。この操作を受けて、湾曲部7は、図10に示すように、第1湾曲部7aの基端から先端側、つまり第1湾曲部7aのみが湾曲する。
即ち、この状態においては、内側ガイドコイル40は、基端40kが固定状態にあるので、湾曲部7の第2湾曲部7bにおいて内側ガイドコイル40の延在方向に沿って作用する圧縮力に抗する。これにより、湾曲部7は、内側ガイドコイル40の先端40sを起点として第1湾曲部7aの基端から先端側、つまり第1湾曲部7aのみが所定方向に湾曲する。
次に、図11に示す状態、即ち内視鏡2の挿入部4における湾曲部7のうち第2湾曲部7bが一方向に湾曲し、かつ第1湾曲部7aが反対の他方向に湾曲させる際の作用を説明する。
図11に示す状態とするには、まず、図9で示した状態、即ち内側ガイドコイル40の基端40kが非固定状態のときにワイヤ30の牽引操作を行なって、第2湾曲部7bの基端から湾曲部7全体を湾曲させる操作を行う。
続いて、この状態において、ガイドコイル固定用レバー80の操作を行ってガイドコイル固定機構60による内側ガイドコイル40の基端40kの固定を行う。そして、上記湾曲操作とは反対側への湾曲操作を行う。この状態においては、内側ガイドコイル40の基端40kが固定されているので、第2湾曲部7bは、図11に示す湾曲形状を維持しつつ、図11に示すように、第1湾曲部7aのみが基端から上記第2湾曲部7bの湾曲方向とは反対側に湾曲する。
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、カム軸63の一対のカム部63aが一対のブレーキ部材64を介して各内側ガイドコイル40をガイド部材61の壁面部61caへ向けて押圧することによって、内側ガイドコイル40を固定状態とする構成のガイドコイル固定機構60において、ガイド部材61に長孔61aを設け、これにカム軸63を挿通させる構成とすることによって、内側ガイドコイル40を固定状態とする押圧力が生じたときに、ガイド部材61が所定の方向(矢印P方向;押圧力と同方向)に移動し得るように構成している。この構成によって、内側ガイドコイル40を固定状態とするとき、常に均一で安定した力量で押圧することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、ガイドコイル固定機構60によって、これを挿通させた内側ガイドコイル40自体をブレーキ部材64によって押圧することで固定状態とし、押圧解除することによって非固定状態とするように構成している。この場合において、少なくとも2条の線状部材(内側ガイドコイル40)のそれぞれの後端(基端40k)に、例えば摩擦力を増大し得るような表面を有して形成される制動片をそれぞれ設け、この制動片に対してブレーキ部材64の押圧力が加わるような構成としてもよい。このような構成とすれば、円筒形状の内側ガイドコイル40を直接押圧するよりも強力で安定した固定力量を得ることができる。
上記第1の実施形態の内視鏡において適用されるガイドコイル固定機構の形態は、上述の例に限られることはない。以下、挿入機器としての内視鏡に適用されるガイドコイル固定機構についての各種の形態を例示する。
[第2の実施形態]
図12,図13は、本発明の第2の実施形態の内視鏡におけるガイドコイル固定機構の構成のうちの一部を示す図である。このうち図12は同ガイドコイル固定機構の構成の一部を示す平面図である。なお、図12は、ガイドコイル固定機構の内部構成を示すために、一部の構成部材(蓋部材)を取り外した状態を示している。図13は図12の[13]−[13]線に沿う断面図である。
本実施形態の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成の一部が若干異なるのみである。したがって、本実施形態においては、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
本実施形態の内視鏡において、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Aは、上述の第1の実施形態と同様に操作部内に配設されている。本実施形態で例示するガイドコイル固定機構60Aは、図に示すように、ガイド部材61Aと、カム軸63と、一対のブレーキ部材64等の主要構成部材と、不図示の二節リンク,リンク部材,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材によって主に構成されている。ここで、二節リンク,リンク部材,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の不図示の構成部材は、上述の第1の実施形態と全く同様のものが適用される。また、図12,図13に示すように、カム軸63及びブレーキ部材64の構成も、上述の第1の実施形態と全く同様の構成としている。
ガイド部材61Aは、基本的には上述の第1の実施形態におけるガイド部材61に相当する部材である。ガイド部材61Aは、内部にカム軸63と一対のブレーキ部材64とを収納配置し、当該ガイドコイル固定機構60Aの外装部を構成する部品である点において同様である。従って、ガイド部材61Aの基本的な形状は、上述の第1の実施形態におけるガイド部材61と略同様である。
本実施形態におけるガイド部材61Aは、ガイド部67と、蓋部61Acとによって構成される。ガイド部67は、ベースプレート92上に配置され、底面を形成する底面部67aと、この底面部67aの四囲を囲うように直立する四つの壁面部(67ca,67cb)とによって形成されている。ガイド部67の底面部67aに対向する部分には、開口部67cが形成されていて、この開口部67cを覆うように蓋部61Acが配設されている。蓋部61Acには、略中央部に長孔61aが形成されている。この長孔61aは、上述の第1の実施形態における長孔61aと略同形状であって、カム軸63を挿通し、当該ガイド部材61Aの矢印P(図12参照)方向の移動を許容する長軸を有する形状からなる。ガイド部67の底面部67aには、略中央部分にカム軸63のカム部63aが挿通可能なサイズの貫通孔67dが形成されている。なお、上記四つの壁面部のうち、図12の挿入方向S(図12の矢印Pの直交方向)に沿う方向に配置される壁面部を符号67caで示し、図12の矢印Pに沿う方向に配置される壁面部を符号67cbで示す。
カム軸63は、上述の第1の実施形態と同様に、ベースプレート92の平面に直交する方向に直立して配設されており、その軸部63bには一対のカム部63aを有する軸状部材である。そして、カム軸63の軸部63bの一端は、図13に示すように、上記ベースプレート92の孔部に回動自在に挿通した後、その先端が抜け止め板65に固着されている。
また、ガイド部67の二つの壁面部67cbには、ペースプレート92に植設された2本のガイドピン66をそれぞれ挿通配置し、当該ガイド部67の矢印P(図12参照)方向の移動を許容する長軸を有する長孔61Afが形成されている。その他の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
このように構成された本実施形態におけるガイドコイル固定機構60Aにおいても、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。その場合の作用は、次のようになる。
即ち、使用者(ユーザ)によってガイドコイル固定レバー80が、所定方向(例えば図4で示したW1方向)に傾倒操作されると、これを受けてフランジ91が所定方向(例えば図4で示したW1方向)に回動する。すると、このフランジ91は、クランク90fを介してスライダ90aを所定方向(矢印S1方向;図4参照)へ摺動して二節リンク62が伸長する。これにより、カム軸63の軸部63bが所定方向(同図において反時計回り)に回動し、2つのカム部63aのそれぞれが一対のブレーキ部材64のそれぞれを矢印Pに沿う方向に押圧する。一対のブレーキ部材64は、内側ガイドコイル40を壁面部67caに向けて押し付ける。これにより、内側ガイドコイル40の挿入方向Sへの移動が阻止される(ロックされる)。このとき、ガイド部材61Aは、上記壁面部67caからの反力を受けて、ガイドピン66を支軸として長孔61Afの長軸方向(矢印P方向)に沿って移動する。これにより、上記各ブレーキ部材64の押圧力とその反力とが釣り合う位置(内側ガイドコイル40の固定力が均等になる位置)にて内側ガイドコイル40は固定される。その他の作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第3の実施形態]
図14,図15は、本発明の第3の実施形態の内視鏡を示す図である。このうち図14は内視鏡におけるガイドコイル固定機構の非固定状態を示す図である。図15は内視鏡におけるガイドコイル固定機構の固定状態を示す図である。なお、図14,図15においては、内視鏡操作部内のガイドコイル固定機構の内部構成を示すために、操作部の外装の一部を省略して図示している。
本実施形態の基本的な構成は、上述の各実施形態と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成のうちカム軸を回転させるリンク機構の一部が若干異なるのみである。したがって、本実施形態においては、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
本実施形態の内視鏡2Bにおいて、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Bは、上述の各実施形態と同様に操作部3の内部に配設されている。本実施形態で例示するガイドコイル固定機構60Bは、図に示すように、ガイド部材61,カム軸63,一対のブレーキ部材64等の主要構成部材と、長孔リンク62B(リンク機構部)と、スライダ90a及びクランク90f,スライダガイド90b,フランジ91,ガイドコイル固定レバー80等の構成部材によって主に構成されている。ここで、ガイド部材61,カム軸63,一対のブレーキ部材64等の構成部材は、上述の各実施形態に適用されるものと同様のものが適用される。また、図14,図15に示すように、スライダ90a及びクランク90f,スライダガイド90b,フランジ91,ガイドコイル固定レバー80等の構成も、上述の各実施形態と略同様の構成とされる。
本実施形態の内視鏡2Bのガイドコイル固定機構60Bにおいては、ガイドコイル固定レバー80の傾倒操作によってカム軸63を回動させるための動力を伝達する経路中に設けられるリンク機構として、上述の第1の実施形態で示すリンク機構部としての二節リンク62に代えて略同様の役目をするリンク機構部として長孔リンク62Bが適用されている。
長孔リンク62Bは、全体として略三角形状の板状部材からなり、一辺に沿って長孔62Baが形成されており、この長孔62Baの配設されている一辺に対向する頂角近傍でカム軸63を軸支している。
当該ガイドコイル固定機構60Bに長孔リンク62Bを組み付けた状態としたとき、上記長孔62Baは、当該内視鏡2の挿入方向(矢印Sに沿う方向)に対して所定の角度を有して傾斜した状態に設定されている。この長孔62Baには、スライダ90aの先端部近傍に植設されたスライダピン90aaが係合している。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
このように構成された本実施形態におけるガイドコイル固定機構60Bにおいても、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。その場合の作用は、次のようになる。
内視鏡2Bのガイドコイル固定機構60Bが図14に示す非固定状態にあるとき、使用者(ユーザ)がガイドコイル固定レバー80を所定方向(例えば図14に示すW1方向)に傾倒操作すると、これを受けてフランジ91が所定方向(例えば図14に示す矢印W1方向)に回動する。すると、このフランジ91は、クランク90fを介してスライダ90aを所定方向(矢印S1方向;図14参照)へ摺動する。これを受けて、長孔リンク62Bに係合しているスライダピン90aaも、スライダ90aと同方向(矢印S1方向)に移動する。このときスライダピン90aaは長孔62Baに沿って摺動移動することになる。これに伴い、長孔リンク62Bは、カム軸63を回動中心として図14において反時計方向に回動する。これによって、カム軸63の軸部63bは所定方向(同図において反時計回り)に回動し、2つのカム部63aのそれぞれが一対のブレーキ部材64のそれぞれを矢印Pに沿う方向に押圧する。以下、上述の第1の実施形態と同様の作用によって、内側ガイドコイル40が、常に均一で安定した力量で固定され、図15に示す固定状態とすることができる。
一方、図15の固定状態にあるときに、使用者(ユーザ)がガイドコイル固定レバー80を所定方向(W2方向;図15参照)へと傾倒操作すると、これを受けてフランジ91が所定方向に回動し、クランク90fを介してスライダ90aを所定方向(矢印S2方向;図15参照)へ摺動する。すると、長孔リンク62Bに係合しているスライダピン90aaも、スライダ90aと同方向(矢印S2方向)に移動して、スライダピン90aaは長孔62Baに沿って摺動移動する。これに伴って、長孔リンク62Bは、カム軸63を回動中心として図15において時計方向に回動する。これにより、カム軸63の軸部63bは所定方向(同図において時計回り)に回動して、2つのカム部63aは一対のブレーキ部材64の押圧を解除する。これにより、内側ガイドコイル40の固定状態が解除され、図14に示す非固定状態にすることができる。
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第4の実施形態]
図16〜図18は、本発明の第4の実施形態の内視鏡におけるガイドコイル固定機構の構成の一部を示す図である。このうち図16は同ガイドコイル固定機構の構成の一部を示す平面図である。なお、図16は、ガイドコイル固定機構の内部構成を示すために一部の構成部材(蓋部材)を取り外した状態を示している。図17は図16と同様にガイドコイル固定機構の構成のうちガイド部材の内部構成を示す図である。図17においては、ガイドコイル固定機構の構成の一部、即ち蓋部材及びリンク機構部を取り外した状態を示している。図18は図16の[18]−[18]線に沿う断面図である。なお、図16はガイドコイル固定機構の固定状態を、図17はガイドコイル固定機構の非固定状態を、それぞれ示している。
本実施形態の基本的な構成は、上述の各実施形態と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成の一部が若干異なるのみである。したがって、本実施形態においても、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
本実施形態の内視鏡において、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Cは、上述の各実施形態と同様に操作部3の内部に配設されている。本実施形態で例示するガイドコイル固定機構60Cは、図に示すように、ガイド部材61C(図18参照)と、一対のカム軸63Cと、一対のブレーキ部材64Cと、このブレーキ部材64Cの内側ガイドコイル40との当接面に設けられるブレーキパッド64Lと、軸受部68C等の主要構成部材と、L字リンク機構62C(リンク機構部)と、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材によって主に構成されている。ここで、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材は、上述の各実施形態に適用されるものと同様のものが適用されるものとし、一部の図示を省略し、これらの構成部材についての詳細説明は省略する。また、本実施形態においては、図18に示すように、4本のワイヤ30を各挿通させる4条の内側ガイドコイル40が、ガイドコイル固定機構60Cを挿通している構成を示している。
本実施形態の内視鏡のガイドコイル固定機構60Cにおいて、ガイド部材61Cは、ガイド部67Cと蓋部材61Ccとによって構成されている。ガイド部67Cは、内部に一対のカム軸63Cと、一対のブレーキ部材64Cと、軸受部68Cとを収納配置し、当該ガイドコイル固定機構60Cの外装部を構成する部品である。ガイド部67Cは、上記操作部3内のベースプレート92の平面上に固設されている。
上述の各実施形態においては、カム軸によってブレーキ部材を押圧したときの反力によってガイド部材を移動させることによって各部材間のばらつきを吸収するように構成したものである。
これに対し、本実施形態の構成においては、ガイド部材61Cのガイド部67Cとは別体に形成されており、かつカム軸63Cを回動自在に軸支する軸受部68Cがガイド部67Cの内部に設けられている。この軸受部68Cは、カム軸63Cがブレーキ部材64を押圧したときの反力によって上記軸受部68Cがカム軸63Cと共に、挿入方向Sに直交する矢印P方向に移動可能に配設される軸受スライドユニットである。ここで、軸受部68Cの周縁部近傍には、対向する二辺の各近傍のそれぞれに長孔68Cfが貫通している。この2つの長孔68Cfは、矢印P方向に長軸を有して形成されている。この2つの長孔68Cfには、ベースプレート92に植設された2本のガイドピン66のそれぞれが挿通配置されている。これにより、ガイド部67Cは、矢印P方向への移動が許容されている。
また、上記軸受部68Cには、一対のカム軸63Cが回転自在に軸支されている。この一対のカム軸63Cは、上記軸受部68Cの略中央部近傍の位置において、矢印Pに沿う方向に所定の間隔を持って並べて配置されている。
本実施形態におけるカム軸63Cは、その軸部の中程の部位に外周に向けて突出する一つのカム部63aを有して形成されている。そして、上記一対のカム軸63Cの各カム部63aは、それぞれが上記一対のブレーキ部材64のそれぞれに各対応するように配置されている。一対のブレーキ部材64は、ガイド部67Cの内部において、矢印矢印Pに沿う方向移動自在に配設されている。したがって、一対のカム軸63Cのそれぞれが後述するL字リンク機構62Cを介して各所定の方向(図17において一方が時計方向に、他方が反時計方向に同時)に回転させられると、各カム部63aが一対のブレーキ部材64のそれぞれを矢印Pに沿って互いに離反する方向に押圧するように構成されている。
一方、本実施形態の内視鏡のガイドコイル固定機構60Cにおけるリンク機構は、上述の各実施形態とは異なる構成のものが適用されている。即ち、図16に示すように、本実施形態におけるリンク機構部であるL字リンク機構62Cは、一対の直状腕部材62Caと、一対のL字状腕部材62Cbと、一対の関節軸62Cdと、軸部材62Ccとによって構成される。
一対のL字状腕部材62Cbは、各先端部に上記一対のカム軸63Cの軸部の一端が嵌入固定されている。同L字状腕部材62Cbの各基端部は、上記一対の関節軸62Cdを介して一つの直状腕部材62Caの先端部にそれぞれ軸支されている。同直状腕部材62Caの基端部は、重畳させた状態で共に一つの軸部材62Ccを介してスライダ90aの先端部に回動自在に接続されている。
なお、ガイド部材61Cの蓋部材61Ccには、軸受部68Cと共に移動するカム軸63Cの矢印P方向への移動を許容するために長孔61Caが各対応する部位に穿設されている。
このように構成された本実施形態におけるガイドコイル固定機構60Cにおいても、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。その場合の作用は、次のようになる。
ガイドコイル固定機構60Cが図17に示す非固定状態にあるとき、使用者(ユーザ)がガイドコイル固定レバーを所定方向に傾倒操作してスライダ90aを所定方向(例えば矢印S1方向;図16,図17参照)へ摺動させる。すると、軸部材62Ccを介して接続されるL字リンク機構62Cは伸長し、これにより、一対のカム軸63Cのそれぞれは各所定の方向に回動し、各カム部63aが各対応するブレーキ部材64を矢印Pに沿う方向に押圧する。すると、上述の各実施形態と同様に、各ブレーキ部材64に作用する矢印P方向の押圧力は、内側ガイドコイル40の挿入方向Sへの移動を阻止する(ロックする)ように作用する。
このとき、軸受部68Cは、ガイド部67Cの壁面部からの反力を受けて、カム軸63と共に、ガイドピン66を支軸として長孔66aの長軸方向である矢印P方向に沿って移動する。そして、上記押圧力とその反力とが釣り合う位置(内側ガイドコイル40に対する固定力が均等になる位置)にて当該内側ガイドコイル40が固定される。これにより、図16に示す固定状態になる。この固定状態から非固定状態に戻す際の作用は、上述の各実施形態で説明した場合と略同様であるので、その説明は省略する。
以上説明したように上記第4の実施形態によれば、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第5の実施形態]
図19,図20は、本発明の第5の実施形態の内視鏡におけるガイドコイル固定機構の構成の一部を示す図である。このうち図19は同ガイドコイル固定機構の構成のうちリンク機構部を主に示す平面図である。図20は図19のガイドコイル固定機構のリンク機構部におけるリンク腕部材のみを取り出して示す外観斜視図である。
本実施形態の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成のうちの一部(リンク機構部)が異なるのみである。したがって、本実施形態においても、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
本実施形態の内視鏡において、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Dは、上述の第1の実施形態と同様に操作部内に配設されている。本実施形態で例示するガイドコイル固定機構60Dは、図に示すように、ガイド部材61と、カム軸63と、一対のブレーキ部材(不図示)等の主要構成部材と、L字リンク機構62D(リンク機構部)と、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材によって主に構成されている。ここで、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材は、上述の各実施形態に適用されるものと同様のものが適用されるものとし、一部の図示を省略し、これらの構成部材についての詳細説明は省略する。なお、本実施形態においては、上記ガイド部材61の内部構成は、上述の第1の実施形態等と全く同様の構成であるものとし、その図示を省略している。したがって、それらの詳細説明も省略する。
本実施形態に示すガイドコイル固定機構60Dにおいて、リンク機構部の一部を構成するL字リンク機構62Dは、L字状板リンク62Daと、腕部材62Dbと、カムピン62Dcとによって構成されている。
L字状板リンク62Daは、L字形状に形成された板状部材からなり、その一腕部にはスライダ90aの先端が接続固定されている。また、L字状板リンク62Daの他腕部には、全体が略円弧形状に形成されたカム孔62Dcaが穿設されている。このカム孔62Dcaには、カムピン62Dcがカム嵌合している。なお、カム孔62Dcaには、円弧状孔部の一端から挿入方向Sに沿って所定の長さを有する直線部62Dcbが形成されている。なお、カム孔62Dcaの円弧状孔部の一端と上記直線部62Dcbとの連設部位においては、その外縁側に曲線部62Dccが形成されている。この曲線部62Dccは、カム孔62Dcaに沿って移動するカムピン62Dcがスムースに移動し得るようにするための工夫であって、特に直線部62Dcbに入り込んだカムピン62Dcが円弧状孔部へと脱出する際に円滑に移動させるための措置である。
カムピン62Dcは、腕部材62Dbの一端に、当該腕部材62Dbの軸方向に対して直交する方向に向けて固設される軸状部材である。カムピン62Dcは、図20に示すように、腕部材62Dbの一端に対して例えばカシメ若しくは半田等のロウ付けにより固定されている。一方、腕部材62Dbの他端には、カム軸63の軸部の一端を嵌入固定されている。その他の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
このように構成された本実施形態におけるガイドコイル固定機構60Dにおいても、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。その場合の作用は、次のようになる。
即ち、使用者(ユーザ)によってガイドコイル固定レバーが、所定方向(例えば図4で示したW1方向)に傾倒操作されると、これを受けてフランジ91が所定方向(例えばW1方向;図4参照)に回動する。すると、このフランジ91は、クランク90fを介してスライダ90aを所定方向(図19に示す矢印S1方向)へ摺動してL字状板リンク62Daを同S1方向へと移動させる。これにより、カムピン62Dcは、L字状板リンク62Daのカム孔62Dcaに沿って移動するので、腕部材62Dbは、図19においてカム軸63を回動中心として時計方向に回動する。したがって、カム軸63の軸部63bも同方向に回動する。このカム軸63の回動を受けて、不図示の2つのカム部が各ブレーキ部材矢印Pに沿う方向に押圧し、よって内側ガイドコイル40の挿入方向Sへの移動を阻止する(ロックする)。このとき、ガイド部材61は、上記各ブレーキ部材64の押圧力の反力を受けて矢印P方向に沿って移動し、その押圧力と反力とが釣り合う位置(内側ガイドコイル40の固定力が均等になる位置)にて内側ガイドコイル40が固定される。その他の作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
なお、L字状板リンク62DaのS1方向への移動によって、カムピン62DcがL字状板リンク62Daのカム孔62Dcaに沿って移動し、同カム孔62Dcaの一端に到達したとき、さらにL字状板リンク62DaがS1方向へ移動すると、カムピン62Dcは、上記直線部62Dcbに沿って移動し、その末端に当接する。その時点で、ガイドコイル固定レバーの傾倒操作は停止される。この場合において、カムピン62Dcがカム孔62Dcaの円弧状孔部に沿って移動している期間は、腕部材62Db及びカム軸63は回動している。一方、カムピン62Dcがカム孔62Dcaの直線部62Dcbに入り込むと、腕部材62Db及びカム軸63は回動しない状態にある。つまり、カムピン62Dcが上記直線部62Dcbにある期間は、カム軸63の逆方向への回動も規制されることになるので、よって固定状態が維持されることになる。
一方、固定状態から非固定状態に切り換える際には、上述の第1の実施形態と同様に、使用者(ユーザ)がガイドコイル固定レバーを、上記とは逆方向に傾倒操作することになる。この操作によって、スライダ90aが矢印S2方向に摺動され、これに伴ってL字状板リンク62Daも同方向に移動する。このとき、カムピン62Dcは、直線部62Dcbに入り込んでいるので、同カムピン62Dcは、まず直線部62Dcbに沿って矢印S2方向に移動し、次いで円弧状孔部へと移行することになる。この場合において、直線部62Dcbに入り込んだカムピン62Dcに対しては、L字状板リンク62Daの矢印S2方向への力量が加わるだけであるので、カム孔62Dcaの直線部62Dcbと円弧状孔部との連設部位の形状によっては、カムピン62Dcの移動が固着してしまう可能性が生じる。そこで、上述したように、本実施形態においては、直線部62Dcbと円弧状孔部との連設部位に曲線部62Dccが形成されいるので、カムピン62Dcは、直線部62Dcbから円弧状孔部へとスムースに脱出しカム孔62Dcaに沿って移動するように構成されている。
以上説明したように上記第5の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第6の実施形態]
図21は、本発明の第6の実施形態の内視鏡におけるガイドコイル固定機構の構成のうちリンク機構部の異なる構成例を示す平面図である。
本実施形態の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成のうちの一部(リンク機構部)が異なるのみである。したがって、本実施形態においても、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
本実施形態の内視鏡において、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Eは、上述の第1の実施形態と同様に操作部内に配設されている。本実施形態で例示するガイドコイル固定機構60Eは、図に示すように、ガイド部材61と、カム軸63と、一対のブレーキ部材(不図示)等の主要構成部材と、長孔リンク62E(リンク機構部)と、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材によって主に構成されている。ここで、スライダ90a及びスライダガイド90bと、不図示のクランク,フランジ,ガイドコイル固定レバー等の構成部材は、上述の各実施形態に適用されるものと同様のものが適用されるものとし、一部の図示を省略し、これらの構成部材についての詳細説明は省略する。なお、本実施形態においては、上記ガイド部材61の内部構成は、上述の第1の実施形態等と全く同様の構成であるものとし、その図示を省略している。したがって、それらの詳細説明も省略する。
本実施形態に示すガイドコイル固定機構60Eにおいて、リンク機構部の一部を構成する長孔リンク62Eは、上述の第3の実施形態と略同様の形態からなり、全体として略三角形状の板状部材の一辺に沿って長孔62Eaが形成され、この長孔62Eaの配設されている一辺に対向する頂角近傍でカム軸63を軸支している。
上記長孔62Eaは、挿入方向Sに対し所定の角度を有して傾斜している。この長孔62Baには、スライダ90aのスライダピン90aaが係合している。この場合において、スライダピン90aaの中心点とカム軸63の中心点とは、矢印P方向において互いにズレた位置となるように配置されている。このことは、次のような理由による。
即ち、上述の各実施形態と同様に、本実施形態においても、当該ガイドコイル固定機構を固定状態と非固定状態との間で切り換える際には、不図示のガイドコイル固定レバーの傾倒操作によってスライダ90aを挿入方向Sに沿う方向に摺動させる。この場合において、例えばスライダ90aを矢印S1方向に目一杯移動させた状態から、同スライダ90aを矢印S2方向へと移動させる際に、力量が加わるスライダピン90aaの中心点と、その力量が作用するカム軸63の中心点とが、当該力量の方向(矢印S方向)に沿って配置されていると、スライダピン90aaは長孔62Eaに沿って移動できずに固着してしまうことになる。これを防止するために、スライダピン90aaの中心点とカム軸63の中心点とを、矢印S方向に直交する矢印P方向にずらして配置している。このような構成とすることによって、スライダピン90aaが矢印S2方向に移動すると、スライダピン90aaは長孔62Eaに沿ってスムースに移動して長孔リンク62E及びカム軸63を所定方向(この場合は図21において時計方向)に回動させる。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
このように構成された本実施形態におけるガイドコイル固定機構60Eにおいても、使用者(ユーザ)が任意に所望のタイミングで所定の操作を行うことによって、内側ガイドコイル40の固定状態と非固定状態との切り換えを行うことができる。その場合の作用は、上述の第3の実施形態と略同様である。
以上説明したように上記第6の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第7の実施形態]
上記各実施形態によって種々例示したガイドコイル固定機構においては、ブレーキ部材とこれに対向する位置に設けたガイド部材の壁面部との間に内側ガイドコイルを配置し、カム軸を回転させることによって上記ブレーキ部材を上記内側ガイドコイルに向けて押圧させることによって、上記ブレーキ部材と上記壁面部との間に上記内側ガイドコイルを挟持し、同内側ガイドコイルの軸方向(上記矢印S方向)への移動を固定するように構成している。そして、上記ガイド部材の壁面部が上記押圧力の発生方向(内側ガイドコイルの移動方向(上記矢印S方向)に対して直交する方向)に沿って移動可能に構成することで、上記ブレーキ部材の押圧力と、その反力とが釣り合うように(内側ガイドコイルの固定力が均等となるように)構成している。
このような構成のガイドコイル固定機構において、例えば上下左右方向の湾曲に各対応する四本の内側ガイドコイルを同時に固定する場合、次のような問題が生じることが考えられる。
即ち、四本の内側ガイドコイルの外径、内側ガイドコイルに当接する部位のブレーキ部材の厚さ寸法、ブレーキ部材を押圧するカム部の頂点の寸法等、各種の構成部材の組み合わせによっては、ガイド部材の壁面部の移動すべき方向が、上下湾曲用内側ガイドコイルと左右湾曲用内側ガイドコイルとで逆になる場合が考えられる。
具体的には、例えば上下湾曲用(UD)の内側ガイドコイルと、ブレーキ部材、カム部の寸法の組み合わせの積算が、上方向側(U側)が下方向側(D側)よりも小さい場合に一方向にガイド部材が移動しようとする一方、左右湾曲用(RL)の内側ガイドコイルと、ブレーキ部材、カム部の寸法の組み合わせの積算が、右方向側(R側)が左方向側(L側)よりも小さい場合に、上記上下湾曲用とは逆の他方向にガイド部材が移動しようとするといった状況が考えられる。このような場合において、四本の内側ガイドコイルを固定するためのガイドコイル固定機構の構成において、ガイド部材を一体構成としていると、内側ガイドコイルの固定力が均等となる位置にガイド部材を移動させることが困難である。
そこで、本実施形態においては、四本の内側ガイドコイルを固定し得るようにしたガイドコイル固定機構の構成において、ガイド部材の構成を工夫して、上下湾曲用の内側ガイドコイルの固定と、左右湾曲用の内側ガイドコイルの固定とを、それぞれ別に行い得るような構成を示している。
本実施形態の基本的な構成は、上述の各実施形態で示される構成と略同様であり、ガイドコイル固定機構の構成の一部が異なるのみである。したがって、本実施形態においても、主要部のみを図示し、上述の第1の実施形態と同じ構成については、図面を簡略化すると共に、同じ構成部材には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下、上述の第1の実施形態とは異なる部分のみを詳述する。
図22〜図24は、本発明の第7の実施形態の内視鏡におけるガイドコイル固定機構の構成の一部を示す図である。このうち図22は同ガイドコイル固定機構の構成の一部を示す外観斜視図である。図23は同ガイドコイル固定機構の構成の一部を示す平面図である。図24は図23の[24]−[24]線に沿う断面図である。
本実施形態の内視鏡において、線状部材固定機構であるガイドコイル固定機構60Fは、上述したように上下(UD)湾曲用の内側ガイドコイル40を固定する上下用ガイド部材61Fと、左右(RL)湾曲用の内側ガイドコイル40を固定する左右用ガイド部材67Fとを設け、これら上下用ガイド部材61Fと左右用ガイド部材67Fとは、それぞれが別体に構成されている。
本実施形態のガイドコイル固定機構60Fにおいて、上下用ガイド部材61Fの基本的な構成は、上記第1の実施形態の構成(図5参照)、即ち蓋部61bを有するガイド部材61が所定方向に移動する構成と略同様である。また、左右用ガイド部材67Fの基本的な構成は、上記第2の実施形態の構成(図13参照)、即ち底面部67aを有するガイド部材67が所定方向に移動する構成と略同様である。
そして、本実施形態においては、上下用ガイド部材61Fと左右用ガイド部材67Fとは、一対のL字ガイド部材69に挟まれて配置されている。この場合において、一対のL字ガイド部材69は、上下用ガイド部材61Fと左右用ガイド部材67Fとの移動方向(図24に示す矢印P方向)をガイドするために設けられる部材である。従って、一対のL字ガイド部材69の壁面は、図24に示す矢印P方向に沿って配置され、上下用ガイド部材61Fと左右用ガイド部材67Fは、2つのL字ガイド部材69の壁面に挟まれるように配置されている。
上記一対のL字ガイド部材69の壁面には、四つの孔69eが穿設されていて、この四つの孔69eには、四本の内側ガイドコイル40がそれぞれ挿通される。なお、図24においては、内側ガイドコイル40の図示は省略している。この四つの孔69eに対応させて、上下用ガイド部材61Fと左右用ガイド部材67Fとには、上記四つの孔69eのそれぞれに対応する部位に内側ガイドコイル40の挿通用貫通路が形成されている。この構成は上述の各実施形態と同様である。
カム軸63は、ベースプレート92にネジ止め固定されるフランジ付軸受68Fに軸支されている(図24参照)。
また、上下用ガイド部材61Fは、操作部3を動かした際に重力や慣性力でガタつかないように2つのL字ガイド部材69の上面との間に設けられた2つの付勢部材であるガタつき防止バネ73によって押さえられている。ガタつき防止バネ73としては、例えばねじりコイルバネが適用されている。上記ガタつき防止バネ73は、そのコイル部が上記上下用ガイド部材61Fの外面側上部に突設されたピン61Fbに嵌入され、バネ両端の曲げ部が上記L字ガイド部材69の上面に穿設された2つの孔部69aにそれぞれ嵌入した形態で配置されている。
同様に、左右用ガイド部材67Fは、操作部3を動かした際に重力や慣性力でガタつかないように2つのL字ガイド部材69の各側面との間に設けられた2つの付勢部材であるガタつき防止バネ72によって押さえられている。ガタつき防止バネ72としては、例えば屈曲板バネが適用されている。その他の構成は、上記対応する各実施形態(第1,第2の実施形態を参照)と略同様である。また、このように構成した本実施形態における作用も、上述の第1,第2の実施形態と略同様である。
以上説明したように上記第7の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、
上下湾曲用と左右湾曲用とにそれぞれ対応するガイド部材61F,67Fを別体構成としたので、上下湾曲用と左右湾曲用の各内側ガイドコイル40の固定をそれぞれ別に行うことができる。したがって、内側ガイドコイル40の固定力に関連する部品の寸法許容差のばらつきの組み合わせが悪くても、四本の内側ガイドコイル40を均等な力量で固定することができる。
なお、本実施形態において例示した構成のうち、付勢部材(ガタつき防止バネ)を用いてガイドコイル固定機構の非固定状態におけるガタつきを抑止する構成は、上述の各実施形態にも同様に適用し得る。
[第8の実施形態]
上記各実施形態によって種々例示したガイドコイル固定機構において適用されるブレーキ部材についての変形例を以下に示す。
図25は、ブレーキ部材についての第1の変形例を示す図である。図25に示す第1の変形例のブレーキ部材64Hは、内側ガイドコイル40との当接面に、例えば内側ガイドコイル40におけるコイルの巻き角度とは逆方向の角度を有する凹凸を設けた例を示している。
図26は、ブレーキ部材についての第2の変形例を示す図である。図26に示す第2の変形例のブレーキ部材64Jは、内側ガイドコイル40との当接面に、例えば綾目状のローレット加工を施した例を示している。
上記各変形例によれば、内側ガイドコイル40に当接するブレーキ部材の表面加工を施すことによって、より強い固定力を得ることができる。
また、図27は、ガイドコイル固定機構における内側ガイドコイルを固定する固定力を増加するための変形例を示す図である。
図27に示す変形例のガイドコイル固定機構60Kは、ブレーキ部材64Kの表面加工に加えて、当該ブレーキ部材64Kによる押圧力を受ける側のガイド部材61Kの壁面部61Kaにも同様の表面加工を施した例を示している。
この場合において、ブレーキ部材64Kの表面加工としては、上述の図25,図26に示す形態のものを適用すればよい。また、壁面部61Ka側の表面加工についても、ブレーキ部材64Kと略同様の形態のものが適用される。
このような構成とすることによって、さらに強い内側ガイドコイル40の固定力を得ることができる。
なお、上記各実施形態においては、ブレーキ部材が内側ガイドコイルを押圧することで、その押圧力が内側ガイドコイルを介してガイド部材の壁面部に作用し、その際に、壁面部からの反力によって内側ガイドコイルが移動するように構成している。
この構成に対し、ガイド部材を固定して、上記反力によってカム軸が移動するような構成も考えられる。その場合には、カム軸を軸支する軸受部に長孔を設け、この長孔においてカム軸が軸支されるように構成すればよい。ここで、上記軸受部の長孔の長軸は、内側ガイドコイル(線状部材)の移動方向(挿入方向S)に直交する方向(略垂直な方向)となるように設定する。このような構成とすることによって、カム軸のカム部(回転カム)がブレーキ部材を介して2条の内側ガイドコイル(2条の線状部材)を押し付ける際に、カム軸(回転カムが回転する軸)は、上記軸受部の上記長孔に沿って、上記2方向の押圧力が釣り合う位置になるように移動する。この構成によっても、上記各実施形態で示すガイドコイル固定機構と同様の作用及び効果を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。