本発明は、医療、動物実験、微生物試験等に用いた生物学的危険性のある廃棄物のオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)において、該廃棄物を収納してオートクレーブ内に配置させる収納袋に関する。
医療、動物実験、微生物試験等に用いた廃棄物は、様々な病原菌及びウィルスによる汚染の恐れがあるため、殺菌した上で廃棄することが義務付けられている。例えば日本薬局方によるオートクレーブ滅菌では、飽和水蒸気雰囲気中、115〜118℃−30分間、121〜124℃−15分間、126〜129℃−10分間の何れかの条件で熱処理することが規定されている。また、一般的な医療機関では、真空脱気プレバキューム式のオートクレーブ滅菌として、飽和水蒸気雰囲気中、134〜135℃−8〜10分間の熱処理が行われている(非特許文献1)。
そして、このオートクレーブ滅菌においては、廃棄物をポリプロピレンフィルム等よりなる袋内に収容し、その袋口を少し開いた状態でオートクレーブ中に収容し、オートクレーブの内圧を大気圧より高く設定することにより、その圧力差で飽和水蒸気を袋内に導入して導入して殺菌する方法が採られている。
一方、本出願人は先に、上記オートクレーブ滅菌の際に猛烈な悪臭が発生し、この臭気が外部へ漏れて不快感を与えることが多々あったことから、悪臭発生物質を含む廃棄物の熱処理用袋として、熱処理温度で溶融しないポリプロピレンの外袋と、脱臭剤が混入されて熱処理温度で溶融するポリエチレンの内袋とで二重に構成されたものを提案している(特許文献1)。この熱処理用袋は、オートクレーブ滅菌時に内袋が熱で溶けるのに伴い、該内袋のフィルム中に混入していた脱臭剤が廃棄物より発生する悪臭成分に作用して高い消臭効果を発揮するものであり、既に実用化して広く普及するに至っている。
インターネットURL:http://www.yoshida-pharm.com/2012/text02_02/(2013/11/20)。
しかるに、前記二重構成の熱処理用袋を含めてオートクレーブ滅菌に使用される従来の廃棄物袋では、袋内に高温水蒸気を導入するために袋口を少し開いた(通常、手指3本程度が入る)状態にする必要があるため、その開口部分より袋内の空気が漏れ出ることを確実には防止できず、その漏れた空気に付随して病原菌やウィルスが外部に拡散する懸念があった。
本発明は、上述の事情に鑑みて、オートクレーブ滅菌用収納袋として、生物学的危険性のある廃棄物を収納した袋口を結束バンド等により完全に封じた状態でオートクレーブ内に入れ、そのまま滅菌処理を施すだけで、袋内を確実に滅菌できるものを提供することを目的としている。
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋は、滅菌処理温度で溶融しないポリプロピレンフィルムからなる袋体(外袋)1であって、その袋体1に水溶性樹脂フィルム4によって封鎖された通気穴3を有することを特徴としている。
請求項2の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋は、滅菌処理温度で溶融しないポリプロピレンフィルムからなる外袋1と、滅菌処理温度で溶融するポリエチレンフィルムからなる内袋2とで二重に構成され、外袋1に水溶性樹脂フィルム4によって封鎖された通気穴3を有してなるものとしている。
請求項3の発明は、上記請求項2のオートクレーブ滅菌用収納袋において、内袋2のポリエチレンフィルムに消臭剤が混入されてなる構成としている。
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのオートクレーブ滅菌用収納袋において、水溶性フィルム4がポリビニルアルコール系合成樹脂からなるものとしている。
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのオートクレーブ滅菌用収納袋において、通気穴3は、2〜20mm径であって、ポリプロピレンフィルムからなる袋体(外袋)1の中間高さよりも上位側の複数箇所に設けられてなるものとしている。
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋では、医療、動物実験、微生物試験等に用いた生物学的危険性のある廃棄物を袋体(外袋)1内に収納後、結束バンド5等によって袋口1aを完全に封じた状態でオートクレーブ内に入れ、そのまま滅菌処理を施せば、通気穴3を封鎖していた水溶性樹脂フィルム4が飽和水蒸気から凝縮した高温水分によって溶解し、これによって開放した通気穴3から高温高圧の飽和水蒸気が袋内に流入し、もって袋内の廃棄物が確実に滅菌される。従って、従来のような袋口を開くことによる病原菌やウィルスの外部拡散の危険性を完全に排除できる。一方、ポリプロピレンフィルムからなる袋体1自体は溶融せずに原形を保つから、廃棄用袋としての機能を維持する。
請求項2の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋では、前記同様に、外袋1と内袋2とで二重になった袋内に生物学的危険性のある廃棄物を収納後、結束バンド5等によって袋口1a,2aを完全に封じた状態でオートクレーブ内に入れ、そのまま滅菌処理を施せば、通気穴3を封鎖していた水溶性樹脂フィルム4が飽和水蒸気から凝縮した高温水分によって溶解し、開放した通気穴3から高温高圧の飽和水蒸気が外袋1内に流入する。そして、ポリエチレンフィルムからなる内袋2が熱で溶け、該内袋2内の廃棄物が流入した飽和水蒸気によって確実に滅菌される。従って、従来のような袋口を開くことによる病原菌やウィルスの外部拡散の危険性を完全に排除できる。また、ポリプロピレンフィルムからなる袋体1自体は溶融せずに原形を保つて廃棄用袋としての機能を維持する一方、滅菌された廃棄物は溶けた内袋2の樹脂で覆われて全体が固まった状態になるから、滅菌処理後の取り扱いにおいて収納袋が破れにくくなる。
請求項3の発明によれば、前記二重構成の収納袋をオートクレーブ滅菌に供した際、ポリエチレンフィルムからなる内袋2が熱で溶けることにより、そのフィルム中に混入されていた消臭剤が収納廃棄物より発生した悪臭成分と化学的あるいは物理的に作用して消臭機能を発揮する一方、ポリプロピレンフィルムからなる外袋は溶融せず原形を保つため、該消臭剤の作用が袋内の空間全体に行き渡って高い消臭効果が得られる。
請求項4の発明によれば、通気穴3を封鎖する水溶性フィルム4は、ポリビニルアルコール系合成樹脂からなるため、オートクレーブ滅菌の際に確実に溶解する。
請求項5の発明によれば、袋体(外袋)1の中間高さよりも上位側に、特定サイズの通気穴3が複数箇所に設けられているから、収納袋としての必要強度を損なうことなくオートクレーブ滅菌の際に該袋体1内への高温高圧の飽和水蒸気の流入量を充分に確保して完全な滅菌を行える。また、収納廃棄物に付随する水分が多い場合でも、該水分は袋内下部に溜まるから、上位にある通気穴3を封鎖する水溶性樹脂フィルム4が該水分に触れて溶解するのを回避できる。
本発明に係る二重構成のオートクレーブ滅菌用収納袋を示す正面図である。
廃棄物を収納して袋口を塞いだ状態の同収納袋を示す斜視図である。
本発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋は、図1で示すように外袋1と内袋2とからなる二重袋形態と、図1の外袋1に相当する袋体のみからなる単一袋形態とがある。そして、二重袋形態における外袋1ならびに単一袋形態における袋体は、オートクレーブでの滅菌処理温度で溶融しないポリプロピレンフィルムからなり、その中間高さよりも上位側の複数箇所(図示例では表裏各3か所で計6か所)に、各々水溶性樹脂フィルム4によって封鎖された通気穴3を有している。
また、二重袋形態における内袋2は、オートクレーブでの滅菌処理温度で溶融するポリエチレンフィルムからなり、外袋1内に収容した状態で、袋口2aが外袋1の袋口1aより若干突出して、全体的に該外袋1に重なるサイズに設定されている。そして、好ましくは、該内袋2のポリエチレンフィルムとして消臭剤を混入したものが使用される。
本発明のオートクレーブ滅菌用収納袋を用いて生物学的危険性のある廃棄物の滅菌処理を行うには、袋内に廃棄物を収納後、図2に示すように、プラスチック製結束バンド5で強く縛り付けて袋口1a,2aを完全に封じ,この状態で袋をオートクレーブ(図示省略)内に入れ、所定条件の高圧蒸気滅菌を施すだけでよい。すなわち、このオートクレーブ滅菌においては、通気穴3を封鎖していた水溶性樹脂フィルム4が飽和水蒸気から凝縮した高温水分によって溶解するから、これによって開放した通気穴3から高温高圧の飽和水蒸気が袋内に流入し、もって袋内の廃棄物が確実に滅菌される。従って、従来のような袋口を開くことによる病原菌やウィルスの外部拡散の危険性を完全に排除できる。一方、ポリプロピレンフィルムからなる袋体1自体は、溶融せずに原形を保つから、処理後にも廃棄用袋としての機能を維持する。
しかして、オートクレーブ滅菌用収納袋が二重袋形態である場合、ポリエチレンフィルムからなる内袋2は熱で溶けるから、滅菌された廃棄物が雑多な物品の集合体であっても、溶けた内袋2のポリエチレン樹脂で覆われて全体が固まった状態になるから、滅菌処理後の袋の取り扱いにおいて収納袋が破れにくくなるという利点がある。また、該内袋2のポリエチレンフィルムとして消臭剤を混入したものを用いた場合、内袋2が熱で溶けることにより、そのフィルム中に混入されていた消臭剤が収納廃棄物より発生した悪臭成分と化学的あるいは物理的に作用して消臭機能を発揮する一方、ポリプロピレンフィルムからなる外袋は溶融せず原形を保つため、該消臭剤の作用が袋内の空間全体に行き渡って高い消臭効果が得られる。
ここで、二重袋形態における外袋1ならびに単一袋形態における袋体の通気穴3としては、サイズが2〜20mm径程度のものを、袋の中間高さよりも上位側の複数箇所、特に3〜10箇所程度に設けることが好ましい。すなわち、上記サイズが小さ過ぎたり、形成箇所が少な過ぎる場合は、袋内への飽和水蒸気の流入量不足によって滅菌が不充分になる懸念がある。また、上記サイズが大き過ぎたり、形成箇所が多過ぎる場合は、廃棄物袋としての十分な強度を確保することが困難になる。一方、通気穴3を袋の中間高さよりも上位側に設けることで、収納廃棄物に付随する水分が多い場合でも、該水分は袋内下部に溜まるから、上位にある通気穴3を封鎖する水溶性樹脂フィルム4が該水分に触れて溶解するのを回避できるという利点がある。
通気穴を封鎖する水溶性樹脂フィルム4としては、種々の水溶性樹脂からなるものを使用できるが、オートクレーブ滅菌時に確実に溶解させる上で、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが好ましい。このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムの好適な市販品としては、日本合成化学社製の温水完全溶解型PVOHフィルムである商品名:ハイセロンS型 S−400Cが挙げられる。なお、上記市販品には粘着シート・テープ形態のものがあり、これを使用すれば、各通気穴3を塞ぐように貼り付けるだけでよいから、封鎖作業を簡単に行える。
二重袋形態における外袋1ならびに単一袋形態における袋体に用いるポリプロピレンフィルムとしては、融点がオートクレーブ滅菌における加熱温度よりも高いものであれば、特に制約はなく低分子量から高分子量まで広く使用可能である。その厚みは0.4〜1.5mm程度が好ましい。
二重袋形態における内袋2に用いるポリエチレンフィルムとしては、融点がオートクレーブ滅菌における加熱温度よりも低いものであれば、高圧法による低密度ポリエチレン、中圧及び低圧法による高密度ポリエチレンのいずれをも使用できるが、熱処理時の溶融性の面より前者の低密度ポリエチレンが好適である。内袋2の厚みは、0.3〜1.0mm程度が好ましい。
なお、オートクレーブ滅菌の処理条件としては、既述した日本薬局方による温度・時間の規定があるが、好ましくは一般的な医療機関で採用されている真空脱気プレバキューム式のオートクレーブ滅菌として、飽和水蒸気雰囲気中、134〜135℃−8〜10分間あるいはそれに近い条件の熱処理とするのがよい。なお、後者の熱処理におけるオートクレーブ内の圧力は、一般的に1.1気圧程度である。
内袋2に混入する消臭剤は、悪臭成分に対する化学的又は物理的な吸着作用、分解作用等により消臭効果を示すものであり、内袋2とするポリエチレン中に分解等を生じず消臭機能を維持した状態で混入できるものであれば特に制限はなく、植物からの抽出物、化学的合成物質、多孔性物質等、既存の種々の消臭性材料を使用できる。しかして、これら消臭剤の中でもトリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2 P3 O102H2 O)は、粉末形態で得られる酸性度の大きい固体酸であり、魚臭等の悪臭成分であるアンモニアやトリメチルアミンの如き塩基性ガスに対する強い吸着性を有するため、特に優れた消臭効果を発揮するものとして推奨される。なお、内袋2の内面には一部の消臭剤が露呈するから、オートクレーブ滅菌に供する前の保管中でもある程度の消臭作用が進行する。
内袋2のポリエチレンに対する消臭剤の配合量は、消臭剤の種類によって異なるが、一般にポリエチレン100重量部に対して0.1〜10重量部程度とするのがよく、少な過ぎては充分な消臭効果が得られず、逆に多過ぎては不経済である。しかして、消臭剤を内袋の全体に均一に分散させるには、内袋の製造時に消臭剤を着色剤や分散剤等の所要の添加剤と共にマスターバッチ化してポリエチレンに練り込めばよい。なお、前記のトリポリリン酸二水素アルミニウムの粉末は、乾燥処理した形態で用いることが望ましい。
本発明のオートクレーブ滅菌用収納袋の全体サイズ及び縦横比は、一回のオートクレーブ滅菌における廃棄物処理量と、オートクレーブの処理室の容積及び縦横寸法等に応じて適宜設定すればよい。また、二重袋形態における外袋1ならびに単一袋形態における袋体のポリプロピレンフィルムには、収容物が外から見えないように、着色剤等を混入して不透明化することが推奨される。一方、袋口1a,2aを封じる手段としては、例示した
プラスチック製結束バンド5に限らず、オートクレーブ滅菌の処理条件で溶融や変形を生じない種々の器具や索体等を採用できる。
1 外袋(袋体)
1a 袋口
2 内袋
2a 袋口
3 通気穴
4 水溶性樹脂フィルム
本発明は、医療、動物実験、微生物試験等に用いた生物学的危険性のある廃棄物のオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)において、該廃棄物を収納してオートクレーブ内に配置させる収納袋に関する。
医療、動物実験、微生物試験等に用いた廃棄物は、様々な病原菌及びウィルスによる汚染の恐れがあるため、殺菌した上で廃棄することが義務付けられている。例えば日本薬局方によるオートクレーブ滅菌では、飽和水蒸気雰囲気中、115〜118℃−30分間、121〜124℃−15分間、126〜129℃−10分間の何れかの条件で熱処理することが規定されている。また、一般的な医療機関では、真空脱気プレバキューム式のオートクレーブ滅菌として、飽和水蒸気雰囲気中、134〜135℃−8〜10分間の熱処理が行われている(非特許文献1)。
そして、このオートクレーブ滅菌においては、廃棄物をポリプロピレンフィルム等よりなる袋内に収容し、その袋口を少し開いた状態でオートクレーブ中に収容し、オートクレーブの内圧を大気圧より高く設定することにより、その圧力差で飽和水蒸気を袋内に導入して導入して殺菌する方法が採られている。
一方、本出願人は先に、上記オートクレーブ滅菌の際に猛烈な悪臭が発生し、この臭気が外部へ漏れて不快感を与えることが多々あったことから、悪臭発生物質を含む廃棄物の熱処理用袋として、熱処理温度で溶融しないポリプロピレンの外袋と、脱臭剤が混入されて熱処理温度で溶融するポリエチレンの内袋とで二重に構成されたものを提案している(特許文献1)。この熱処理用袋は、オートクレーブ滅菌時に内袋が熱で溶けるのに伴い、該内袋のフィルム中に混入していた脱臭剤が廃棄物より発生する悪臭成分に作用して高い消臭効果を発揮するものであり、既に実用化して広く普及するに至っている。
インターネットURL:http://www.yoshida-pharm.com/2012/text02_02/(2013/11/20)。
しかるに、前記二重構成の熱処理用袋を含めてオートクレーブ滅菌に使用される従来の廃棄物袋では、袋内に高温水蒸気を導入するために袋口を少し開いた(通常、手指3本程度が入る)状態にする必要があるため、その開口部分より袋内の空気が漏れ出ることを確実には防止できず、その漏れた空気に付随して病原菌やウィルスが外部に拡散する懸念があった。
本発明は、上述の事情に鑑みて、オートクレーブ滅菌用収納袋として、生物学的危険性のある廃棄物を収納した袋口を結束バンド等により完全に封じた状態でオートクレーブ内に入れ、そのまま滅菌処理を施すだけで、袋内を確実に滅菌できるものを提供することを目的としている。
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋は、滅菌処理温度で溶融しないポリプロピレンフィルムからなる外袋1と、滅菌処理温度で溶融するポリエチレンフィルムからなる内袋2とで二重に構成され、外袋1に水溶性樹脂フィルム4によって封鎖された通気穴3を有してなるものとしている。
請求項2の発明は、上記請求項1のオートクレーブ滅菌用収納袋において、内袋2のポリエチレンフィルムに消臭剤が混入されてなる構成としている。
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のオートクレーブ滅菌用収納袋において、水溶性樹脂フィルム4がポリビニルアルコール系合成樹脂からなるものとしている。
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのオートクレーブ滅菌用収納袋において、通気穴3は、2〜20mm径であって、ポリプロピレンフィルムからなる外袋1の中間高さよりも上位側の複数箇所に設けられてなるものとしている。
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋では、外袋1と内袋2とで二重になった袋内に、医療、動物実験、微生物試験等に用いた生物学的危険性のある廃棄物を収納後、結束バンド5等によって袋口1a,2aを完全に封じた状態でオートクレーブ内に入れ、そのまま滅菌処理を施せば、通気穴3を封鎖していた水溶性樹脂フィルム4が飽和水蒸気から凝縮した高温水分によって溶解し、これによって開放した通気穴3から高温高圧の飽和水蒸気が外袋1内に流入する。そして、ポリエチレンフィルムからなる内袋2が熱で溶け、該内袋2内の廃棄物が流入した飽和水蒸気によって確実に滅菌される。従って、従来のような袋口を開くことによる病原菌やウィルスの外部拡散の危険性を完全に排除できる。また、ポリプロピレンフィルムからなる外袋1自体は溶融せずに原形を保つて廃棄用袋としての機能を維持する一方、滅菌された廃棄物は溶けた内袋2の樹脂で覆われて全体が固まった状態になるから、滅菌処理後の取り扱いにおいて収納袋が破れにくくなる。
請求項2の発明によれば、前記二重構成の収納袋をオートクレーブ滅菌に供した際、ポリエチレンフィルムからなる内袋2が熱で溶けることにより、そのフィルム中に混入されていた消臭剤が収納廃棄物より発生した悪臭成分と化学的あるいは物理的に作用して消臭機能を発揮する一方、ポリプロピレンフィルムからなる外袋2は溶融せず原形を保つため、該消臭剤の作用が袋内の空間全体に行き渡って高い消臭効果が得られる。
請求項3の発明によれば、通気穴3を封鎖する水溶性樹脂フィルム4は、ポリビニルアルコール系合成樹脂からなるため、オートクレーブ滅菌の際に確実に溶解する。
請求項4の発明によれば、外袋1の中間高さよりも上位側に、特定サイズの通気穴3が複数箇所に設けられているから、収納袋としての必要強度を損なうことなくオートクレーブ滅菌の際に該外袋1内への高温高圧の飽和水蒸気の流入量を充分に確保して完全な滅菌を行える。また、収納廃棄物に付随する水分が多い場合でも、該水分は袋内下部に溜まるから、上位にある通気穴3を封鎖する水溶性樹脂フィルム4が該水分に触れて溶解するのを回避できる。
本発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋を示す正面図である。
廃棄物を収納して袋口を塞いだ状態の同収納袋を示す斜視図である。
本発明に係るオートクレーブ滅菌用収納袋は、図1で示すように外袋1と内袋2とからなる二重袋形態である。その外袋1は、オートクレーブでの滅菌処理温度で溶融しないポリプロピレンフィルムからなり、その中間高さよりも上位側の複数箇所(図示例では表裏各3か所で計6か所)に、各々水溶性樹脂フィルム4によって封鎖された通気穴3を有している。
また、内袋2は、オートクレーブでの滅菌処理温度で溶融するポリエチレンフィルムからなり、外袋1内に収容した状態で、袋口2aが外袋1の袋口1aより若干突出して、全体的に該外袋1に重なるサイズに設定されている。そして、好ましくは、該内袋2のポリエチレンフィルムとして消臭剤を混入したものが使用される。
本発明のオートクレーブ滅菌用収納袋を用いて生物学的危険性のある廃棄物の滅菌処理を行うには、袋内に廃棄物を収納後、図2に示すように、プラスチック製結束バンド5で強く縛り付けて袋口1a,2aを完全に封じ,この状態で袋をオートクレーブ(図示省略)内に入れ、所定条件の高圧蒸気滅菌を施すだけでよい。すなわち、このオートクレーブ滅菌においては、通気穴3を封鎖していた水溶性樹脂フィルム4が飽和水蒸気から凝縮した高温水分によって溶解するから、これによって開放した通気穴3から高温高圧の飽和水蒸気が袋内に流入し、もって袋内の廃棄物が確実に滅菌される。従って、従来のような袋口を開くことによる病原菌やウィルスの外部拡散の危険性を完全に排除できる。一方、ポリプロピレンフィルムからなる外袋1自体は、溶融せずに原形を保つから、処理後にも廃棄用袋としての機能を維持する。
しかして、ポリエチレンフィルムからなる内袋2は熱で溶けるから、滅菌された廃棄物が雑多な物品の集合体であっても、溶けた内袋2のポリエチレン樹脂で覆われて全体が固まった状態になるから、滅菌処理後の袋の取り扱いにおいて収納袋が破れにくくなるという利点がある。また、該内袋2のポリエチレンフィルムとして消臭剤を混入したものを用いた場合、内袋2が熱で溶けることにより、そのフィルム中に混入されていた消臭剤が収納廃棄物より発生した悪臭成分と化学的あるいは物理的に作用して消臭機能を発揮する一方、ポリプロピレンフィルムからなる外袋は溶融せず原形を保つため、該消臭剤の作用が袋内の空間全体に行き渡って高い消臭効果が得られる。
ここで、外袋1の通気穴3としては、サイズが2〜20mm径程度のものを、袋の中間高さよりも上位側の複数箇所、特に3〜10箇所程度に設けることが好ましい。すなわち、上記サイズが小さ過ぎたり、形成箇所が少な過ぎる場合は、袋内への飽和水蒸気の流入量不足によって滅菌が不充分になる懸念がある。また、上記サイズが大き過ぎたり、形成箇所が多過ぎる場合は、廃棄物袋としての十分な強度を確保することが困難になる。一方、通気穴3を袋の中間高さよりも上位側に設けることで、収納廃棄物に付随する水分が多い場合でも、該水分は袋内下部に溜まるから、上位にある通気穴3を封鎖する水溶性樹脂フィルム4が該水分に触れて溶解するのを回避できるという利点がある。
通気穴を封鎖する水溶性樹脂フィルム4としては、種々の水溶性樹脂からなるものを使用できるが、オートクレーブ滅菌時に確実に溶解させる上で、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが好ましい。このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムの好適な市販品としては、日本合成化学社製の温水完全溶解型PVOHフィルムである商品名:ハイセロンS型 S−400Cが挙げられる。なお、上記市販品には粘着シート・テープ形態のものがあり、これを使用すれば、各通気穴3を塞ぐように貼り付けるだけでよいから、封鎖作業を簡単に行える。
外袋1に用いるポリプロピレンフィルムとしては、融点がオートクレーブ滅菌における加熱温度よりも高いものであれば、特に制約はなく低分子量から高分子量まで広く使用可能である。その厚みは0.4〜1.5mm程度が好ましい。
内袋2に用いるポリエチレンフィルムとしては、融点がオートクレーブ滅菌における加熱温度よりも低いものであれば、高圧法による低密度ポリエチレン、中圧及び低圧法による高密度ポリエチレンのいずれをも使用できるが、熱処理時の溶融性の面より前者の低密度ポリエチレンが好適である。内袋2の厚みは、0.3〜1.0mm程度が好ましい。
なお、オートクレーブ滅菌の処理条件としては、既述した日本薬局方による温度・時間の規定があるが、好ましくは一般的な医療機関で採用されている真空脱気プレバキューム式のオートクレーブ滅菌として、飽和水蒸気雰囲気中、134〜135℃−8〜10分間あるいはそれに近い条件の熱処理とするのがよい。なお、後者の熱処理におけるオートクレーブ内の圧力は、一般的に1.1気圧程度である。
内袋2に混入する消臭剤は、悪臭成分に対する化学的又は物理的な吸着作用、分解作用等により消臭効果を示すものであり、内袋2とするポリエチレン中に分解等を生じず消臭機能を維持した状態で混入できるものであれば特に制限はなく、植物からの抽出物、化学的合成物質、多孔性物質等、既存の種々の消臭性材料を使用できる。しかして、これら消臭剤の中でもトリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2 P3 O102H2 O)は、粉末形態で得られる酸性度の大きい固体酸であり、魚臭等の悪臭成分であるアンモニアやトリメチルアミンの如き塩基性ガスに対する強い吸着性を有するため、特に優れた消臭効果を発揮するものとして推奨される。なお、内袋2の内面には一部の消臭剤が露呈するから、オートクレーブ滅菌に供する前の保管中でもある程度の消臭作用が進行する。
内袋2のポリエチレンに対する消臭剤の配合量は、消臭剤の種類によって異なるが、一般にポリエチレン100重量部に対して0.1〜10重量部程度とするのがよく、少な過ぎては充分な消臭効果が得られず、逆に多過ぎては不経済である。しかして、消臭剤を内袋の全体に均一に分散させるには、内袋の製造時に消臭剤を着色剤や分散剤等の所要の添加剤と共にマスターバッチ化してポリエチレンに練り込めばよい。なお、前記のトリポリリン酸二水素アルミニウムの粉末は、乾燥処理した形態で用いることが望ましい。
本発明のオートクレーブ滅菌用収納袋の全体サイズ及び縦横比は、一回のオートクレーブ滅菌における廃棄物処理量と、オートクレーブの処理室の容積及び縦横寸法等に応じて適宜設定すればよい。また、外袋1のポリプロピレンフィルムには、収容物が外から見えないように、着色剤等を混入して不透明化することが推奨される。一方、袋口1a,2aを封じる手段としては、例示した プラスチック製結束バンド5に限らず、オートクレーブ滅菌の処理条件で溶融や変形を生じない種々の器具や索体等を採用できる。
1 外袋
1a 袋口
2 内袋
2a 袋口
3 通気穴
4 水溶性樹脂フィルム