JP2015103386A - 電極材料、電極及び蓄電デバイス - Google Patents

電極材料、電極及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】高容量且つサイクル特性が良好な蓄電デバイスを得ることができる、電極材料を提供すること。【解決手段】リチウムを吸蔵可能な金属、半金属及びそれらの酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の成分並びに炭素材料を含有する粒子からなる電極材料であって、水銀圧入法により測定される細孔分布において細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の表面積が10m2/g以下である電極材料。【選択図】なし

Description

本発明は、電極材料、電極及び蓄電デバイスに関し、より詳しくは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイス等に好適に用いられる電極材料、当該電極材料を含有する電極、及び当該電極を負極として備える蓄電デバイスに関する。
近年、電子機器の小型化・軽量化の進歩は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が蓄電デバイスとして開発されている。また、高出力密度、良好なサイクル性能などの特性を有する蓄電デバイスとして、電気二重層キャパシタが知られている。さらに、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池及び電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせたリチウムイオンキャパシタが注目されている。
このような蓄電デバイスに用いられる負極材料としては、一般的に黒鉛系材料が使用されている。しかしながら、黒鉛系材料の容量には上限(372mAh/g)があるため、更なる高容量化が可能な負極材料が求められている。これに対し、高い充放電容量を示す負極材料として、Si、Sn等のリチウムと合金化が可能な金属や半金属又はこれらの酸化物を含む負極材料について検討が進められている。しかしながら、これら金属等を含む負極材料は、充放電に伴う体積変化が大きく、充放電を繰り返すことにより電極からの脱離等が起こるため、蓄電デバイスのサイクル特性を悪化させるという問題がある。
かかる問題に対して、特許文献1では、水銀圧入式ポロシメータを用いて測定される空孔分布曲線において、空孔分布ピークが、0.001μm以上0.2μm以下の範囲に少なくとも1つ存在することを特徴とする電極材料を使用することが提案されている。
特開2005−158721号公報
しかしながら、金属や半金属を含む従来の電極材料を用いた蓄電デバイスでは、未だ実用可能なサイクル特性を実現するに至っていない。
したがって、本発明の課題は、高容量且つサイクル特性が良好な蓄電デバイスを得ることができる、電極材料を提供することにある。
かかる実情に鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、特定の細孔特性を有する、リチウム吸蔵可能な金属等を含有する電極材料により、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、リチウム吸蔵可能な金属、半金属及びそれらの酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(以下「金属成分」とも称する。)並びに炭素材料を含有する粒子からなる電極材料であって、水銀圧入法により測定される細孔分布において細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の表面積が10m2/g以下である電極材料(以下「本電極材料」とも称する。)を提供するものである。
また、本発明は、前記本電極材料を含有する電極を提供するものであり、更に、前記電極を負極として備える蓄電デバイスを提供するものである。
本発明の電極材料を用いれば、高容量で、しかもサイクル特性に優れた蓄電デバイスを得ることができる。したがって、本発明の電極材料は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの電極材料として極めて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
電極材料
本電極材料を構成する金属、半金属としては、リチウム吸蔵能があれば特に制限されないが、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、Sb、Bi、これらの金属元素や半金属元素を含む合金が挙げられる。
前記合金としては、例えば、TiSi2、NiSi2、CuSi、FeSi、Ti2Sn、Ti6Sn5、NiSn、Cu6Sn5、FeSn2、Fe3Sn2が挙げられる。
本電極材料を構成する金属、半金属としては、高いリチウム吸蔵放出容量を発揮できる電極材料が得られる点から、Si、Sn又はSi若しくはSnを含む合金が好適であり、Si又はSnが特に好適である。
本電極材料を構成する金属の酸化物、半金属の酸化物としては、リチウム吸蔵能のある酸化物であれば特に制限されないが、前記と同様の理由から、Si又はSnの酸化物が好適である。
本電極材料を構成する金属成分は、1種であっても2種以上であってもよい。
一方、本電極材料を構成する炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル炭等の易黒鉛化性炭素;カーボンブラック、ポリ塩化ビニリデン炭、砂糖炭、セルロース炭、フェノール樹脂炭、木炭類、石炭の溶剤抽出物等の難黒鉛化性炭素;前記易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素を更に加熱処理して黒鉛質化したもの;ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等の炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛が挙げられる。
本電極材料を構成する炭素材料は、1種であっても2種以上であってもよい。
本電極材料は、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の表面積が10m2/g以下であるが、好ましくは8m2/g以下である。
また、本電極材料において、水銀圧入法により測定される細孔直径0.3〜2.0μmの細孔の表面積は、好ましくは1〜10m2/gであり、さらに好ましくは1〜8m2/gであり、特に好ましくは1〜5m2/gである。
本電極材料において、水銀圧入法により測定される、本電極材料のかさ容積に対する細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の容積の割合は、好ましくは20%以下であり、特に好ましくは16%以下である。
また、本電極材料において、水銀圧入法により測定される、本電極材料のかさ容積に対する細孔直径0.3〜2.0μmの細孔の容積の割合は、好ましくは10〜50%であり、さらに好ましくは15〜45%であり、特に好ましくは20〜40%である。
電極材料の細孔特性を前記の如き態様にすることにより、高容量で且つサイクル特性に優れた蓄電デバイスを得ることができる。
本発明者らが鋭意検討したところ、電極材料の細孔特性につき、以下のことを見出した。
細孔直径0.01〜0.3μmの細孔は、電極材料の導電性を低下させ、リチウムを吸蔵する能力を低下させるだけであると考えられるため、できるだけ存在しないことが好ましく、一方、細孔直径0.3〜2.0μmの細孔は、充放電に伴う金属成分の体積変化を緩衝する役割を果たし、結果として、サイクル特性に優れた蓄電デバイスが得られるものと考えられる。
本発明において、各種細孔特性は、マイクロメリティックス社製細孔分布測定装置AutoPore IV 9500を用いて測定された結果を意味する。細孔特性の測定において、測定試料は、0.100±0.001gの範囲で精秤し、圧力範囲は、1.5kPa〜420MPaとする。
本電極材料において、金属成分と炭素材料との含有比率(質量比)は、所望の効果を高める点から、好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜85:15、特に好ましくは30:70〜70:30である。
また、本電極材料を構成する炭素材料は、難黒鉛化性炭素及び黒鉛を含有していることが好ましく、この場合、本電極材料に対して金属成分の含有割合は、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは30〜70質量%であり、難黒鉛化性炭素の含有割合は、好ましくは45〜5質量%、さらに好ましくは40〜10質量%、特に好ましくは35〜15質量%であり、黒鉛の含有割合は、好ましくは45〜5質量%、さらに好ましくは40〜10質量%、特に好ましくは35〜15質量%である。
本電極材料は、ラマンスペクトルにおいて、1360cm-1付近に認められるピーク(以下「Dバンド」とも称する。)と1580cm-1付近に認められるピーク(以下「Gバンド」とも称する。)を有し、Dバンドのピーク高さIDとGバンドのピーク高さIGの比ID/IGが、好ましくは0.20以上であり、さらに好ましくは0.20〜0.50、特に好ましくは0.20〜0.40である。
本電極材料は、Dバンドの半値幅が70cm-1以上であることが好ましく、さらに好ましくは70〜250cm-1、特に好ましくは80〜220cm-1である。
本電極材料は、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率が1Ω・cm以下であることが好ましく、特に好ましくは1×10-4〜1Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
本電極材料は、ラマンスペクトルおよび体積抵抗率において、前記のような特性を示すことにより、更に高容量でサイクル特性に優れたものとなる。
本電極材料は、適宜の方法で製造することができるが、例えば、多孔質SiO2を還元して得られる多孔質Siを、前記炭素材料となる有機化合物と混合した後、不活性ガス存在下で加熱することにより製造する方法が挙げられる。
この方法によれば、多孔質Siが有し得る細孔直径0.01〜0.3μmの細孔を炭素材料が埋めることにより、所望の電極材料を得ることができる。
前記多孔質SiO2としては、BET法により測定された比表面積が0.5〜10m2/gであるものが好ましく、例えば、珪藻土(セライト)を用いることができる。多孔質SiO2を還元する際には、還元剤を用いることができ、該還元剤としては、公知の還元剤を用いることができ、例えば、Mgを用いることができる。還元剤の使用量は、多孔質SiO2に対して好ましくは2〜5モル当量、特に好ましくは2〜3モル当量である。
前記炭素材料となる有機化合物としては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
本発明において、炭素材料となる有機化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
炭素材料となる有機化合物を多孔質Siと混合する際には、更にポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等の炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、界面活性剤等を用いてもよい。
前記不活性ガスとしては、例えば、N2、アルゴンが用いられる。アルゴンを用いることは、窒化金属の生成を抑制できる点で好ましい。加熱温度は、用いる金属成分の種類などによっても異なるが、好ましくは500〜2000℃、特に好ましくは700〜1500℃である。加熱時間は、好ましくは30分〜5時間、特に好ましくは30分〜3時間である。
このようにして得られた本電極材料は、前記加熱後に50%体積累積径(D50)が50μm以下になるよう粉砕することが好ましい。粉砕する方法としては、例えばボールミル、カッターミル、ジェットミル等を用いる方法が挙げられる。
本電極材料は、これを用いた蓄電デバイスに高い容量と優れたサイクル特性を与える。本電極材料は、二次電池の負極材料として用いることが好ましく、特にリチウムイオン二次電池の負極材料として用いることが好ましい。
電極
本発明の電極は、本電極材料を含有するものであり、通常、集電体上に本電極材料及びバインダー等を含有する活物質層が形成されてなるものである。前記活物質層は、通常、本電極材料及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、これを集電体上に塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
本発明の電極は、本電極材料を負極材料として用い、負極とすることが好ましく、二次電池の負極とすることが好ましく、特にリチウムイオン二次電池の負極とすることが好ましい。
前記活物質層全体に対する、本電極材料の含有量は、好ましくは50〜90質量%である。
本電極材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記活物質層には、本電極材料以外のリチウムを吸蔵可能な電極材料が含有されていてもよい。本電極材料と併用するリチウムを吸蔵可能な電極材料としては、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率が1Ω・cm以下である炭素材料が好ましく、特に黒鉛が好ましい。
前記集電体の材質としては、本発明の電極が正極である場合、アルミニウム、ステンレス等が好ましく、一方、本発明の電極が負極である場合、銅、ニッケル、ステンレス等が好ましい。
集電体の厚みは、正負極どちらであっても、通常10〜50μmである。
前記バインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸の他、特開2009−246137号公報に開示されているフッ素変性(メタ)アクリル系バインダーを挙げることができる。これらのバインダーは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
バインダーの使用量は、特に限定されるものではないが、本電極材料に対して、好ましくは1〜20質量%である。
前記活物質層には、更に、カーボンブラック、黒鉛、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤等が含有されていてもよい。
前記活物質層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは10〜100μmである。
また、前記活物質層の密度は、リチウムイオン二次電池に用いる電極である場合、好ましくは1.50〜2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60〜1.90g/ccである。活物質層の密度がかかる範囲にあると、電解液の保液性と本電極材料の接触抵抗とのバランスが良いため、高容量で且つ低抵抗な蓄電デバイスを提供することができる。
蓄電デバイス
本発明の蓄電デバイスは、本発明の電極を負極として備えてなるものである。蓄電デバイスとしては、例えば、二次電池、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。本発明においては、本発明の電極を負極として備えてなるリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
本発明の蓄電デバイスは、負極として用いられる本発明の電極の他、少なくとも正極及び電解質を備えることが好ましい。負極として用いられる本発明の電極の構成及び製造方法は、前記「電極」において説明した通りである。
本発明の蓄電デバイスにおいて、前記正極の好ましい構成及び製造方法は、前記本電極材料の代わりに、以下の正極活物質を用いる以外は、前記「電極」において説明したものと同様である。
本発明の蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである場合、用いられる正極活物質としては、例えば、活性炭、ポリアセン系物質を挙げることができる。一方、本発明の蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、用いられる正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、フッ化黒鉛等の炭素質材料を挙げることができる。これらの正極活物質は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、前記電解質は、通常、溶媒中に溶解された電解液の状態で用いられる。本発明において電解質としては、リチウムイオンを生成することのできるものが好ましく、具体的には、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO22、LiN(FSO22等を挙げることができる。これらの電解質は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
電解質を溶解させるための溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましく、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1−フルオロエチレンカーボネート、1−(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため、0.1モル/L以上にすることが好ましく、0.5〜1.5モル/Lの範囲内にすることがより好ましい。また、電解液には、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤が含有されていてもよい。
電解質は、前記のように通常は液状に調製されて使用されるが、漏液を防止する目的でゲル状又は固体状のものを使用してもよい。
電解質が電解液の状態で用いられる場合、正極と負極の間には、通常、正極と負極とが物理的に接触しないようにするためにセパレータが設けられる。該セパレータとしては、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムを挙げることができる。
蓄電デバイスの構造としては、例えば、板状の正極と負極とがセパレータを介して各々3層以上積層された積層体が外装フィルム内に封入された積層型セル、帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回された積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<電極材料の製造>
東京珪藻土(株)製の珪藻土(商品名Celpure 1000、SiO2純度=99.6%、BET法による比表面積=3.23m2/g、クリストラバイト構造のSiO2)1.209g、金属マグネシウム1.209g、及びフェノール樹脂0.210gを、蓋付き炭素製ボードに仕込んだ(仕込み組成:珪藻土/金属マグネシウム/フェノール樹脂=46.0/46.0/8.0wt%、SiO2/Mg=2.5モル等量)。これを、高純度アルゴンボンベを備えた石英製管状炉に仕込み、次いで、真空置換及びアルゴン置換を3度繰り返した。その後、管状炉内を500mL/minの流量のアルゴンでフローした。フロー開始から30分後の管状炉出口に取り付けた溶存酸素計の値は180ppmであった。
その後、管状炉を、昇温速度12℃/minの条件で25℃から1000℃まで81分かけて昇温し、1000℃にて60分間保持した後、自然冷却をすることで珪藻土のMgによる還元反応を行った。
還元反応後の生成物の収量は2.349gであった。(株)リガク製SmartLabを用いて、還元反応後の生成物のX線回折分析を行った結果、Si、MgO及びSi−Cのシグナルが、2θ=28.44°、42.86°、及び35.63°にそれぞれ観察された。SiO2由来のピークは検出されなかった。これより、珪藻土の還元反応が定量的に進行し、目的のSiが生成していることを確認した。この還元反応を5回行うことで合計約10gの還元品を得た。
この還元品10.02gを窒素導入管、温度計及びマグネティックスターラーを備えた3つ口フラフコに加えた後、真空置換及び窒素置換を3度繰り返した。3度目の窒素置換後のフラスコを窒素フローさせながら、該フラスコに蒸留水80gを加え、マグネティックスターラーを激しく回転させた。その後、氷水でフラスコを冷却して、内温4℃にした。ここに濃塩酸20gをスポイドで10分かけてゆっくり滴下し、4時間撹拌を行った。その後、ろ過により生成物を回収し、蒸留水100gで3回洗浄した(以下、蒸留水80gを加え〜蒸留水で3回洗浄までの操作を「塩酸洗浄」ともいう。)。3回洗浄後の生成物をフラスコに加え、塩酸洗浄を2回繰り返した後、60℃の熱風乾燥器で7時間加熱することで多孔質Siを主成分とする生成物を得た。収量は3.31gであった。得られた生成物を多孔質珪素Aとする。
(株)リガク製SmartLab及び総合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、多孔質珪素AのX線回折分析を行い、MgO及びSi−Cのそれぞれのピーク高さとSiピーク高さとの比を算出した結果、MgO/Si=0、Si−C/Si=0.04であった。この結果から、塩酸洗浄によりMgO及びMgは多孔質珪素Aには含まれていないことが分かった。また、Si由来のピークの半値幅から求めたSiの結晶子サイズは1172Åであった。BET法による比表面積=97m2/gであった。また、粉体抵抗測定機を用いて、多孔質珪素Aの体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×104〜1×106Ω・cmの範囲にあった。
フェノール樹脂0.1888gを18gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた溶液に、黒鉛(D50=2.3μm、ラマンスペクトルにおけるDバンドとGバンドの半値幅はぞれぞれ46cm-1、26cm-1、ID/IG=0.15)0.1993g、多孔質珪素A 0.8976g、界面活性剤(ビックケミージャパン(株)製BYK−111)0.0283g、及び3mmφのジルコニアビーズ20gを加え、ペントシェイカーで激しく30分撹拌した。篩によりジルコニアビーズを取り除き、通過物からエバポレーターでNMPを留去した後、200℃、真空下で7時間乾燥した。その後、真空置換及びアルゴン置換し、アルゴンガスフロー下で、昇温速度12℃/minの条件で25℃から1000℃まで81分かけて昇温し、1000℃にて60分間保持することにより本電極材料を製造した。得られた本電極材料を電極材料1とする。フェノール樹脂の残炭率から、電極材料1におけるSi、フェノール樹脂炭(難黒鉛化性炭素)及び黒鉛の含有比率(質量比)は、62/22/16であると推定される。
(株)リガク製SmartLab及び総合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、電極材料1のX線回折分析を行った結果、炭素に由来する新たなピークが2θ=26.50°に確認され、C及びSi−Cのそれぞれのピーク高さとSiピーク高さとの比を算出すると、C/Si=0.15、Si−C/Si=0.04であった。また、レニショー(株)製inVia Reflexにより波長532nmのレーザーを用いて電極材料1のラマン分光分析を行った結果、510cm-1付近、1360cm-1付近、及び1580cm-1付近にそれぞれ、Si、非晶性炭素及び結晶性炭素に由来するピークが観察された。それぞれの半値幅は13cm-1、144cm-1及び42cm-1であり、1360cm-1付近のピーク高さ(ID)と1580cm-1付近のピーク高さ(IG)の比(ID/IG)は0.22であった。
なお、原料として使用した黒鉛のラマン分光分析を行った結果、非晶性炭素及び結晶性炭素に由来するピークの半値幅はそれぞれ46cm-1及び26cm-1であり、ID/IGは0.15であった。
また、電極材料1の体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×10-2〜1Ω・cmの範囲にあった。なお、原料として使用した黒鉛の体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×10-3〜1×10-1Ω・cmの範囲にあった。
水銀圧入法により測定した電極材料1の細孔特性を表2に示す。水銀圧入法による細孔特性は、マイクロメリティックス社製細孔分布測定装置AutoPore IV 9500を用いて行った。
<充放電特性及びサイクル特性(容量維持率)の評価>
電極材料1を58質量部、アセチレンブラック20質量部、カルボキシメチルセルロース13質量部、蒸留水230質量部、及びSBRバインダー9質量部を混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ10μmのCu箔に塗布し、100℃で1時間予備乾燥した後、減圧下200℃で3時間乾燥し、厚さ60μmの活物質層が形成された負極板を得た。得られた負極板を12mm径にカットした。グローブボックス内にて、円形にカットした負極板、25mm径のセパレータ、及び12.5mm径にカットしたLi箔をこの順で重ね合わせ、東洋システム(株)製2極セルに配置した。得られたセル中に、電解液として、1.2MのLiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=30/70(体積比)溶液を適量添加した後、減圧脱泡し、評価用セルを完成させた。
作製した評価用セルを東洋システム(株)製充放電評価装置にセットし、表1に示す条件で15サイクルの充放電試験を行った。1サイクル目の充電容量、1サイクル目の放電容量、クーロン効率(1サイクル目の充電容量に対する1サイクル目の放電容量の割合)及び容量維持率(1サイクル目の放電容量に対する15サイクル目の放電容量の割合)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2015103386
[実施例2]
フェノール樹脂1.129gを18gのNMPに溶解させた溶液に、黒鉛(D50=2.3μm)1.197g、多孔質珪素Aを1.795g、界面活性剤(ビックケミージャパン(株)製BYK−111)0.0847g、及び3mmφのジルコニアビーズ20gを加え、ペントシェイカーで激しく30分撹拌した。篩によりジルコニアビーズを取り除き、通過物からエバポレーターでNMPを留去した後、200℃、真空下で7時間乾燥した。その後、実施例1と同様に石英製管状炉中で加熱することにより本電極材料を製造した。得られた本電極材料を電極材料2とする。フェノール樹脂の残炭率から、電極材料2におけるSi、フェノール樹脂炭(難黒鉛化性炭素)及び黒鉛の含有比率(質量比)は、41/26/33であると推定される。
実施例1と同様にして電極材料2のX線回折分析を行った結果、実施例1と同様に炭素に由来する新たなピークが2θ=26.50°に確認され、C及びSi−Cのそれぞれのピーク高さとSiピーク高さとの比を算出すると、C/Si=0.51、Si−C/Si=0.04であった。また、実施例1と同様にして電極材料2のラマン分光分析を行った結果、実施例1と同様に510cm-1付近、1360cm-1付近、及び1580cm-1付近にそれぞれ、Si、非晶性炭素及び結晶性炭素に由来するピークが観察された。1360cm-1付近のピークと1580cm-1付近のピークの半値幅はそれぞれ、194cm-1及び54cm-1であり、ID/IGは0.35であった。また、電極材料2の体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×10-2〜1×10-1Ω・cmの範囲にあった。
電極材料2を用いて実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。また、実施例1と同様にして水銀圧入法により電極材料2の細孔特性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例1における珪藻土の代わりに高純度化学製非多孔質シリカ(SiO2純度=99.8%、BET法による比表面積=0.06m2/g、Quartz構造のSiO2)を用いた以外は実施例1と同様にして、還元反応及び塩酸洗浄を行い多孔質珪素Bを合成した。
実施例1と同様にしてX線回折分析を行い、MgO及びSi−Cのそれぞれのピーク高さとSiピーク高さとの比を算出した結果、MgO/Si=0、Si−C/Si=0.11であった。この結果から、塩酸洗浄によりMgO及びMgは多孔質珪素Bには含まれていないことが分かった。また、Si由来のピークの半値幅から求めたSiの結晶子サイズは1231Åであった。BET法による比表面積=131m2/gであった。また、粉体抵抗測定機を用いて、多孔質珪素Bの体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×104〜1×106Ω・cmの範囲にあった。
次に、実施例1における多孔質珪素Aの代わりに多孔質珪素Bを用いた以外は実施例1と同様にして、本電極材料を製造した。得られた本電極材料を電極材料3とする。フェノール樹脂の残炭率から、電極材料3におけるSi、フェノール樹脂炭(難黒鉛化性炭素)及び黒鉛の含有比率(質量比)は、59/23/18であると推定される。
実施例1と同様にして電極材料3のX線回折分析を行った結果、実施例1と同様に炭素に由来する新たなピークが2θ=26.50°に確認され、C及びSi−Cのそれぞれのピーク高さとSiピーク高さとの比を算出すると、C/Si=0.19、Si−C/Si=0.11であった。また、実施例1と同様にして電極材料3のラマン分光分析を行った結果、実施例1と同様に510cm-1付近、1360cm-1付近、及び1580cm-1付近にそれぞれ、Si、非晶性炭素及び結晶性炭素に由来するピークが観察された。1360cm-1付近のピークと1580cm-1付近のピークの半値幅はそれぞれ、205cm-1及び85cm-1であり、ID/IGは0.21であった。また、電極材料3の体積抵抗率を測定した結果、20〜60MPaで加圧された状態での体積抵抗率は、1×10-2〜1×10-1Ω・cmの範囲にあった。
電極材料3を用いて実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。また、実施例1と同様にして水銀圧入法により電極材料3の細孔特性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1の充放電特性及びサイクル特性の評価において、58質量部の電極材料1の代わりに、43.5質量部の多孔質珪素Aと14.5質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料を用いた以外は、実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、43.5質量部の多孔質珪素Aと14.5質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料の、水銀圧入法により測定した細孔特性を表2に示す。
[比較例2]
実施例1の充放電特性及びサイクル特性の評価において、58質量部の電極材料1の代わりに、29質量部の多孔質珪素Aと29質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料を用いた以外は、実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、29質量部の多孔質珪素Aと29質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料の、水銀圧入法により測定した細孔特性を表2に示す。
[比較例3]
実施例1において、58質量部の電極材料1の代わりに、58質量部の多孔質珪素Aからなる電極材料を用いた以外は、実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、58質量部の多孔質珪素Aからなる電極材料の、水銀圧入法により測定した細孔特性を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、58質量部の電極材料1の代わりに、41質量部の多孔質珪素Bと17質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料を用いた以外は、実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、41質量部の多孔質珪素Bと17質量部の黒鉛(D50=2.3μm)とを混合して得られた電極材料の、水銀圧入法により測定した細孔特性を表2に示す。
[比較例5]
実施例1において、58質量部の電極材料1の代わりに、58質量部の多孔質珪素Bからなる電極材料を用いた以外は、実施例1と同様に充放電特性及びサイクル特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、58質量部の多孔質珪素Bからなる電極材料の、水銀圧入法により測定した細孔特性を表2に示す。
Figure 2015103386

Claims (6)

  1. リチウムを吸蔵可能な金属、半金属及びそれらの酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の成分並びに炭素材料を含有する粒子からなる電極材料であって、水銀圧入法により測定される細孔分布において細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の表面積が10m2/g以下である電極材料。
  2. 水銀圧入法により測定される細孔直径0.3〜2.0μmの細孔の表面積が1〜10m2/gである、請求項1に記載の電極材料。
  3. 水銀圧入法により測定される、電極材料のかさ容積に対する細孔直径0.01〜0.3μmの細孔の容積の割合が20%以下である、請求項1又は2に記載の電極材料。
  4. 水銀圧入法により測定される、電極材料のかさ容積に対する細孔直径0.3〜2.0μmの細孔の容積の割合が10〜50%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料を含有する電極。
  6. 請求項5に記載の電極を負極として備えてなる蓄電デバイス。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017076525A (ja) * 2015-10-15 2017-04-20 株式会社クレハ 非水電解質二次電池用負極電極及びそれを含む非水電解質二次電池
JP2017168380A (ja) * 2016-03-17 2017-09-21 株式会社東芝 非水電解質電池用電極材料、非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パック

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