JP2015102053A - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

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智 渡邊
宏太 佐多
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Abstract

【課題】車両の駆動源として搭載した内燃機関の点火時期を制御する制御装置に関し、加速開始後短時間で車両振動を減衰させることを目的とする。
【解決手段】時刻tにおけるエンジン回転数Ne_SAac_ONと、同時刻tにおけるエンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAac_ONとに基づいて点火時期の遅角量SAacを推定する。遅角量SAacの推定は、回転数Ne_SAacの4つの予測値と変化率ΔKL_SAacの4つの予測値を組み合わせた16通りのパターンを、制御装置100内の16個のコアに割り当てて計算する。時刻tにおいて回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacが確定するので、上記パターンの内から確定した回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacと条件が最も近いものを選出する。選出した予測値に対応する遅角量SAacを基本点火時期の補正値として採用する。
【選択図】図2

Description

本発明は内燃機関の点火時期制御装置に関する。
従来、例えば特許文献1には、車両の加速度が増加から減少に転ずる際の値(極大値)と同加速度が減少から増加に転ずる際の値(極小値)とを求め、これらの偏差を小さくするように点火時期を遅角制御する装置が開示されている。加速の初期においては、加速度の増加および減少からなるサイクルが繰り返され、このサイクルの振幅は時間の経過とともに減衰し一定の幅に収束する。但し、このサイクルが収束するまでは車両が前後に振動して乗員に違和感を与える場合がある。特許文献1の装置では、加速度の極大値と極小値の偏差、つまり、上記サイクルの振幅を小さくするように点火時期を遅角制御するので、加速初期に発生する車両振動を確実に減衰させることができる。
特開2003−113767号公報
しかし、特許文献1の装置では、加速度センサの値の傾向から上記極大値と極小値を把握するため、点火時期の遅角制御を開始するまでに一定の時間を要する。そのため、より短い時間で車両振動を減衰させるためには更なる改良が必要である。
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものである。すなわち、加速開始後短時間で車両振動を減衰させることを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両の駆動源として搭載した内燃機関の点火時期を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、少なくともn個(n≧2)のコアを有し前記点火時期の補正に関する複数の演算タスクを処理するマルチコアタイプのプロセッサを備え、
前記演算タスクは、前記車両の加速を検出したタイミングにおける機関回転数および機関負荷を基準に予測した当該機関回転数および機関負荷の将来値の組み合わせパターンをn個算出するタスクと、当該算出した組み合わせパターンから前記点火時期の遅角量の候補値を算出するタスクと、当該算出した組み合わせパターンの内から実際の機関回転数および機関負荷の組み合わせパターンに最も近いものを選出するタスクと、当該選出した組み合わせパターンに対応する前記候補値を前記点火時期の遅角量として採用するタスクとを備え、
前記プロセッサにおいて、前記候補値の算出タスクを前記n個のコアによって並列処理するように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、実際の機関回転数および機関負荷の組み合わせパターンの確定前に点火時期の遅角量の候補値をn個のコアによって並列計算できるので、この組み合わせパターンの確定直後から点火時期の遅角制御を実行可能となる。従って、加速開始後短時間で車両振動を減衰させることが可能となる。
実施の形態の制御装置の構成の概略を示す図である。 実施の形態における加速時点火時期遅角制御を説明するためのタイミングチャートである。 実施の形態において制御装置100が実行する加速時点火時期遅角制御ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態の内燃機関の制御装置について図を用いながら説明する。
本実施の形態の制御装置は、マルチコアタイプのプロセッサを用いて自動車用エンジンの制御に係るアクチュエータ(スロットル、点火装置、可変バルブタイミング装置、インジェクタ、ウエストゲートバルブ等)の制御目標値を並列計算する機能を備えている。図1は、本実施の形態の制御装置の構成の概略を示す図である。制御装置100には、エンジンに備えられる複数のセンサから当該エンジンの運転状態や運転環境に関する各種の情報が入力される。制御装置100はそれらの情報に基づいて各アクチュエータに指示する制御目標値を計算する。
図1に示すように、制御装置100は複数のコア102を備えている。コア102の数は少なくとも16個である。各コア102は、CPU104とキャッシュ106とを備えている。ローカルメモリ108には、CPU104で実行される各種のプログラムとそのプログラムの実行時に使用される各種のデータが記憶されている。コア102同士はバス110で接続されている。バス110を経由してコア102間での通信が行われる。図示は省略するが、バス110にはコア間で共有されるキャッシュも接続されている。
図2は、本実施の形態における加速時点火時期遅角制御を説明するためのタイミングチャートである。なお、点火時期の遅角制御は、エンジンの運転条件に基づいて決定した基本点火時期を遅角するための制御である。基本点火時期の決定手法は公知であるため、その説明は省略する。
図2に示すように、時刻tにおいて自動車の運転者がアクセルペダルを踏み込むと、アクセルペダル開度PAが増加し、この増加に伴いスロットル開度TAも増加する。時刻tにおいて、差分Diff_TAが閾値(設定値)を超えると、加速時点火時期遅角量算出実行フラグFlag_SAac_calがONとされる。差分Diff_TAは、時刻tにおけるスロットル開度TAと、時刻tの所定時間前(例えば0.5秒前)のスロットル開度TAとの差から算出される。
加速時点火時期遅角量算出実行フラグFlag_SAac_calがONとされると、点火時期の遅角量SAacが計算される。点火時期の遅角量SAacは、次式(1)によって表される。
SAac=f(ΔTQ_target,Ne_SAac,KL_SAac,ΔKL_SAac,THW) ・・・(1)
式(1)において、SAacは目標トルクの増加量であり、アクセルペダル開度PAの変化率ΔPAに基づいて算出される。Ne_SAacは遅角量SAac算出用のエンジン回転数である。KL_SAacおよびΔKL_SAacは、遅角量SAac算出用のエンジン負荷率およびその変化率である。THWはエンジン冷却水温度である。
本実施の形態において、点火時期の遅角量SAacは、時刻tにおけるエンジン回転数Ne_SAac_ONと、同時刻tにおけるエンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAac_ONとに基づいて推定される。点火時期の遅角量SAacの推定は、具体的に、式(2)〜(5)で表されるエンジン回転数Ne_SAacの予測値と、式(6)〜(9)で表される変化率ΔKL_SAacの予測値との組み合わせ(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)を、それぞれ式(1)に適用することにより行われる。
Ne_SAac=Ne_SAac_ON−100rpm ・・・(2)
Ne_SAac=Ne_SAac_ON ・・・(3)
Ne_SAac=Ne_SAac_ON+100rpm ・・・(4)
Ne_SAac=Ne_SAac_ON+200rpm ・・・(5)
ΔKL_SAac=ΔKL_SAac_ON−10% ・・・(6)
ΔKL_SAac=ΔKL_SAac_ON ・・・(7)
ΔKL_SAac=ΔKL_SAac_ON+10% ・・・(8)
ΔKL_SAac=ΔKL_SAac_ON+20% ・・・(9)
(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)の組み合わせは合計16通りである。本実施の形態では、これらの組み合わせを16個のコア102に割り当てて計算する。これにより、点火時期の遅角量SAacの候補値SAac_pr,・・・,SAac_pr16が並列計算される。16個のコア102で並列計算することで、1コア当りの演算負荷を低減できるので、エンジンの爆発間隔以内(例えば4気筒エンジンであれば、エンジン回転数3000rpmで10m秒以内)に候補値SAac_pr,・・・,SAac_pr16の全てを計算できる。なお、エンジン回転数Ne_SAac_ONは、クランク角度センサの出力を用いて計算される。変化率ΔKL_SAac_ONは、時刻tにおけるエンジン負荷率KLと、時刻tの所定時間前(例えば0.5秒前)におけるエンジン負荷率KLとを用いて計算される。
時刻tにおいてエンジン負荷率KLが閾値KL_SAacを超えると、加速時点火時期遅角量算出実行フラグFlag_SAac_calがOFFとされ、加速時点火時期遅角実行フラグFlag_SAac_exeがONとされる。この時刻tにおけるクランク角度センサの出力からエンジン回転数Ne_SAacが計算される。同時刻tにおけるエンジン負荷率KLと、時刻tにおけるエンジン負荷率KLとを用いて変化率ΔKL_SAacが計算される。
その後、上記予測値の組み合わせ(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)の内から今回計算したエンジン回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacと条件が最も近いものを選出する(或いは補間により選出するものを求める)。そして、選出した予測値に基づいて事前に算出した遅角量SAacを基本点火時期の補正値として採用する。
本来、加速時点火時期遅角実行フラグFlag_SAac_exeがONとされたタイミング、即ち時刻tにおいてエンジン回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacの値が確定するので、確定したこれらの値を式(1)に適用して遅角量SAacを算出する。この点、本実施の形態においては、エンジン回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacが確定する前に、上記予測値の組み合わせ(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)から遅角量SAacの候補値SAac_pr〜SAac_pr16を計算しているので、エンジン回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacの確定直後から点火時期の遅角制御を実行できる。従って、より早いタイミングから車両加速時のショックや車両前後振動の抑制を図ることが可能となる。
図2の下方に、特許文献1に開示された従来の点火時期の遅角制御を示す。特許文献1では、加速度の極大値と極小値を把握する必要があるため、時刻tまでは点火時期の遅角量SAacの計算を開始することができない。また、遅角量SAacの計算に時間を要するため実際に点火時期が遅角されるのは時刻t以降となる。この点、本実施の形態によれば、時刻t直後から点火時期を遅角できる。即ち、時刻t−時刻tの時間差だけ早く遅角制御を開始できる。
図3は、本実施の形態において制御装置100が実行する加速時点火時期遅角制御ルーチンを示すフローチャートである。
図3に示すように、制御装置100は先ず、車両が走行中であるか否かを判定する(ステップ100)。具体的には、車速が5km/h以上であるか否かが判定される。車速は例えば車両搭載のセンサから取得される。車速が5km/h未満であると判定された場合、制御装置100はルーチンを終了する。
ステップ100において、車速が5km/h以上であると判定された場合、制御装置100は車両加速中であるか否かを判定する(ステップ110)。具体的には、差分Diff_TAが閾値以上であるか否かが判定される。なお、差分Diff_TAの算出手法は既述のとおりである。差分Diff_TAが閾値未満であると判定された場合、制御装置100はルーチンを終了する。
ステップ110において、差分Diff_TAが閾値以上であると判定された場合、制御装置100は加速時点火時期遅角量算出実行フラグFlag_SAac_calをONとする(ステップ120)。これにより、エンジン回転数Ne_SAac_ONとエンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAac_ONが計算され、その後、エンジン回転数Ne_SAacの予測値と、エンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAacの予測値との組み合わせ(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)に対応する点火時期の遅角量SAacの候補値SAac_pr,・・・,SAac_pr16が計算される。なお、エンジン回転数Ne_SAac_ON、エンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAac_ONおよび候補値SAac_pr,・・・,SAac_pr16の計算手法は、既述のとおりである。
続いて、制御装置100は、エンジン負荷率KLが閾値KL_SAac以上であるか否かを判定する(ステップ130)。エンジン負荷率KLが閾値KL_SAac未満であると判定された場合、制御装置100はルーチンを終了する。
ステップ130において、エンジン負荷率KLが閾値KL_SAac以上であると判定された場合、制御装置100は加速時点火時期遅角量フラグFlag_SAac_calをOFFとし、加速時点火時期遅角実行フラグFlag_SAac_exeをONとする(ステップ140)。これにより、ステップ120で計算した組み合わせ(Ne_SAac1〜4,ΔKL_SAac1〜4)のうちから、本ステップの処理時に計算されたエンジン回転数Ne_SAac、変化率ΔKL_SAacと条件が最も近いものを選出する。そして、選出した予測値に基づいて事前に算出した遅角量SAacを基本点火時期の補正値として採用する。その後、SAacを減衰して遅角制御を終了する。
以上、図3に示したルーチンによれば、車両加速の検出後の早期のタイミングから点火時期の遅角制御を実行することができるので、車両加速時のショックや車両前後振動の抑制を図ることができる。
ところで、上記実施の形態においては、コア102の数を少なくとも16個としたが、コア102の数の下限値は16個に限られない。即ち、エンジン回転数Ne_SAac,エンジン負荷率KLの変化率ΔKL_SAacの予測値の組み合わせの数と、コア102の数の下限値を同数(但し、コア102の数は2以上)とする限りにおいて、上記実施の形態は各種の変形が可能である。
100 制御装置
102 コア
104 CPU
106 キャッシュ
108 ローカルメモリ
110 バス

Claims (1)

  1. 車両の駆動源として搭載した内燃機関の点火時期を制御する制御装置であって、
    前記制御装置は、少なくともn個(n≧2)のコアを有し前記点火時期の補正に関する複数の演算タスクを処理するマルチコアタイプのプロセッサを備え、
    前記演算タスクは、前記車両の加速を検出したタイミングにおける機関回転数および機関負荷を基準に予測した当該機関回転数および機関負荷の将来値の組み合わせパターンをn個算出するタスクと、当該算出した組み合わせパターンから前記点火時期の遅角量の候補値を算出するタスクと、当該算出した組み合わせパターンの内から実際の機関回転数および機関負荷の組み合わせパターンに最も近いものを選出するタスクと、当該選出した組み合わせパターンに対応する前記候補値を前記点火時期の遅角量として採用するタスクとを備え、
    前記プロセッサにおいて、前記候補値の算出タスクを前記n個のコアによって並列処理するように構成したことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6996451B2 (ja) 2018-08-24 2022-01-17 株式会社島津製作所 分析支援装置および分析支援方法

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