JP2015101551A - フコキサンチンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、熱、光や酸素に対しての安定性が向上した高純度のフコキサンチンを高い回収率で得る製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】藻類にエタノールまたはエタノール溶液を加えてフコキサンチンを抽出する抽出工程と、フコキサンチン抽出液を、液体クロマトグラフィにより分離精製し、得られるフコキサンチン溶液中の複合脂質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下にする分離精製工程を含むことを特徴とするフコキサンチンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、安定性の高いフコキサンチンおよびその製造方法に関する。より詳しくは健康食品、化粧品、医薬品としての利用可能な、フコキサンチンを高純度、高回収率で得る製造方法に関する。
フコキサンチンは抗腫瘍作用、抗酸化作用などが知られており、健康食品、化粧品、医薬品としての利用が注目されている。フコキサンチンは乾燥又は生のコンブ類、ワカメ類、モズク類、ホンダワラ類等の褐藻類や珪藻、ハプト藻、黄金色藻、ラフィド藻等の微細藻類を有機溶媒や熱水を用いて抽出することにより得られる。抽出液はフコキサンチン以外のカロテノイド類や脂質、多糖類等の不純物を多く含む為、溶剤による液−液分配や超臨界流体抽出等の抽出、再結晶、沈殿、クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせによって精製する方法が知られている(特許文献1、2)。フコキサンチンは、精製を繰り返すことで、純度を高くすることができるが、その回収率は低くなるため、高純度のフコキサンチンを高回収率で得る方法が望まれている。
また、フコキサンチンは、熱、光、酸素等に対して不安定であることが知られており、安定なフコキサンチンが望まれている。
特開2010−120939号公報 特開2009−120494号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、熱安定性、光安定性及び/または酸素安定性が向上した高純度のフコキサンチンを高い回収率で得る製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、
(1)藻類にエタノールまたはエタノール溶液を加えてフコキサンチンを抽出する抽出工程と、フコキサンチン抽出液を、液体クロマトグラフィにより分離精製し、得られるフコキサンチン溶液中の複合脂質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下にする分離精製工程を含むことを特徴とするフコキサンチンの製造方法。
(2)フコキサンチン溶液からフコキサンチンの沈殿を得る沈殿工程を含む(1)記載のフコキサンチンの製造方法。
(3)(1)または(2)記載の製造方法で得られた、フコキサンチン純分の質量に対して複合脂質を2質量%以上含むフコキサンチン組成物。
に関する。
本発明のフコキサンチンは安定性が高い。本発明の製造方法によれば、熱安定性、光安定性及び/または酸素安定性が向上した高純度のフコキサンチンを高回収率で製造することができる。得られたフコキサンチンは、食品、医薬品、化粧品等に利用可能である
L−α−ホスファチジルコリンジミリストイルの添加量と上清中のフコキサンチン濃度に関する図である。 L−α−ホスファチジルコリンジパルミトイルの添加量と上清中のフコキサンチン濃度に関する図である。 L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウムの添加量と上清中のフコキサンチン濃度に関する図である。
本発明は、藻類にエタノールまたはエタノール溶液を加えてフコキサンチンを抽出する抽出工程と、フコキサンチン抽出液を、液体クロマトグラフィにより分離精製し、得られるフコキサンチン溶液中の複合脂質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下にする分離精製工程を含むことを特徴とするフコキサンチンの製造方法である。また、フコキサンチン溶液からフコキサンチンの沈殿を得る沈殿工程を含むフコキサンチンの製造方法である。さらに、上記の製造方法で得られた、フコキサンチン純分の質量に対して複合脂質を2質量%以上含むフコキサンチン組成物に関する。
本発明において藻類は、ワカメ、モズク、アラメ、コンブ、ヒジキ、ホンダワラ、アカモク、ヒバマタ等の褐藻類、珪藻綱、ハプト藻綱、ピンギオ藻綱、黄金色藻綱に属する微細藻類等のフコキサンチンを含有する藻類であればいずれでも良い。乾燥重量当たりのフコキサンチン含量の多いため、好ましくは、微細藻類であり、より好ましくは珪藻網、ハプト藻綱に属する微細藻類である。
前記珪藻綱に属する微細藻類としては、ファエオダクチラム属(Phaeoductylum)に属する微細藻類、キートセラス属(Chaetoceros)に属する微細藻類、シクロテラ属(Cyclotella)に属する微細藻類、スケルトネマ属(Skeletonema)、オドンテラ属(Odontella)に属する微細藻類、またはニッチア属(Nitzschia)に属する微細藻などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記ハプト藻綱に属する微細藻類としては、イソクリシス属(Isochrysis)に属する微細藻類、パブロバ属(Pavlova)に属する微細藻類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記ピンギオ藻綱に属する微細藻類としては、例えばピンギオクリシス属(Pinguiochrysis)に属する微細藻類、ファエオモナス属(Phaeomonas)に属する微細藻類またはポリポドクリシス属(Polypodochrysis)に属する微細藻類等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記黄金色藻綱に属する微細藻類としては、例えばオクロモナス属(Ochromonas)に属する微細藻類、サヤツナギ属(Dinobryon)に属する微細藻類、ポテリオオクロモナス属(Poterioochromonas)に属する微細藻類またはエピピクシス属(Epipyxis)に属する微細藻類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
藻類からのフコキサンチンの抽出では、原料である藻体の状態は湿ったままでも乾燥していてもいずれでも良い。また、形状も限定されないが、抽出効率を上げるためには、細かい形状であることが好ましい。褐藻類の場合は、細かく破砕処理することが好ましい。微細藻類の場合は、細かいので、余分な水分を除き湿ったままで用いる方が抽出効率が高くなるので好ましい。
本発明における抽出溶媒は、得られるフコキサンチンを食品用途に用いることを考えて、エタノールまたはエタノール溶液を用いる。エタノール溶液の濃度は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。上限は100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下である。
ここで、エタノール溶液は、エタノールを主成分として含んでいればよく、エタノールと他の水溶性有機溶剤および/または水との混合物をいう。水溶性有機溶剤としては、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類やアセトン等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。好ましくはエタノール水溶液である。藻体に水が含まれている場合はエタノールを加えてもよい。
抽出する温度は限定されないが、好ましくは10〜60℃であり、より好ましくは20〜50℃である。このような温度範囲であれば、フコキサンチンは分解されず、比較的短時間で抽出することができる。抽出に要する時間は1分以上24時間以下が好ましく、5分以上12時間以下がより好ましい。抽出に使用する溶媒は乾燥藻体質量に対して1倍量以上が好ましく、2倍量以上がより好ましい、3倍量以上がさらに好ましい。
抽出後は、遠心分離やろ過などの従来の方法により固形物をとり除き、フコキサンチン抽出液を得る。このフコキサンチン抽出液には、フコキサンチン以外のカロテノイド類、脂肪酸、単純脂質、複合脂質、多糖類等の夾雑物が含まれている。
本発明において複合脂質とは、脂肪酸とアルコールのみからなる単純脂質に対して、他にリン酸、糖類、硫黄、窒素化合物などが含まれる脂質であり、リン脂質、糖脂質、含硫脂質、ベタイン脂質、スフィンゴ脂質に代表される化合物である。より具体的には、リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、およびスフィンゴエリン等があげられる。糖脂質としては、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、モノグリコシルジアシルグリセロール等があげられる。含硫脂質としては、スルフォキノボシルジアシルグリセロール等があげられる。ベタイン脂質としては、ジアシルグリセリルトリメチルホモセリン、ジアシルグリセロールハイドロキシメチルアラニン等があげられる。上記脂質における脂肪酸としては、限定されるわけではないが、炭素数14〜20のものが好ましい。
糖脂質は、前記糖脂質に代表される物質があげられるが、本発明においては、後述する実施例に記載の脂質の定量方法により定量される物質を糖脂質と定義し、リン脂質は、前記リン脂質に代表される物質があげられるが、本発明においては、後述する実施例に記載の脂質の定量方法により定量される物質をリン脂質と定義する。
本発明において複合脂質は、前記した定義の糖脂質とリン脂質を合計した物質を複合脂質と定義する。
フコキサンチン抽出液中に含まれるカロテノイド類、脂肪酸、単純脂質、複合脂質、多糖類等の夾雑物を除くには、液体クロマトグラフィで行う。液体クロマトグラフィは、フコキサンチンと夾雑物の親和性や疎水性相互作用などの物性の違いを区別、利用できる分離精製法である。
本発明において液体クロマトグラフィは、前記抽出液に固定相を添加して攪拌等により混合する方法が挙げられる(バッチ法)。この方法で、固定相にフコキサンチンを吸着させるには、例えば、抽出液と固定相とを、30分〜2時間、好ましくは30分〜1時間程度で攪拌すれば良い。以上のようにしてフコキサンチンを吸着させた固定相は、常法に従い、ろ過、遠心分離等により回収することができる。また、別の方法としては、抽出液を固定相が充填されたカラムに通液する方法が挙げられる(カラム法)。このような液体クロマトグラフィの方法により抽出液中のフコキサンチンを固定相に吸着させ、夾雑物などと分離精製することができる。
本発明における液体クロマトグラフィでは、移動相は、水、メタノール、アセトニトリルのような極性溶媒を用いることができるが、食品用途を考える場合、エタノールまたはエタノール水溶液を用いることが好ましい。固定相は、オクタデシル基、トリメチル基、ブチル基、オクチル基等で化学修飾し極性を低減させたシリカゲル、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に代表されるポーラスポリマーゲル充填剤等を用いることができるが、好ましくは、オクタデシル基、オクチル基で化学修飾されたシリカゲル、さらに好ましくはオクタデシル基で化学修飾されたシリカゲルを使用する。
使用する固定相の粒径は、実施するクロマトグラフィの方法により異なるが、オープンカラムクロマトグラフィやフラッシュクロマトグラフィの場合、好ましくは40〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。中圧クロマトグラフィの場合は、10〜50μmである。高速液体クロマトグラフィの場合は、好ましくは1〜10μmである。
また固定相の使用量は、オープンカラムクロマトグラフィやフラッシュクロマトグラフィの場合、フコキサンチン1gに対して、好ましくは10〜1000質量倍、より好ましくは50〜500質量倍である。
本発明においては、藻類からのフコキサンチンの抽出をエタノールまたはエタノール溶液で行うので、そのままあるいは加水または水及びエタノール以外の溶媒の蒸留除去をして、固定相に吸着できるように、エタノール濃度を調整して液体クロマトグラフィに供すことができる。ここで、エタノール溶液は、好ましくはエタノール水溶液であり、そのエタノール濃度は、10〜70質量%である。このような濃度であるとフコキサンチンが固定相に吸着し、より極性の高い複合脂質等の吸着しない成分を分離することができる。特に固定相として化学修飾シリカゲルを用いるとフコキサンチンと複合脂質を好適に分離することができる。より好ましくは40〜60質量%である。
本発明においては、抽出液中のフコキサンチンを固定相に吸着させ、その後、固定相からフコキサンチンを溶離させる。フコキサンチンを吸着させた固定相からフコキサンチンを溶離させるには、固定相に新たな溶離液を接触させればよい。具体的には、バッチ法、カラム法等が挙げられる。固定相からフコキサンチンを溶離させる溶離液は、フコキサンチンを固定相に吸着させる場合よりも高い濃度のエタノール水溶液が好ましい。好ましいエタノール水溶液濃度は80質量%未満である。このような濃度であると、フコキサンチンより極性の低い夾雑物や、固定相との親和性が高い夾雑物は、シリカゲルに吸着したままであるか、またカラム法では遅れて溶離させることができ、フコキサンチンを選択的に回収することができる。より好ましくはエタノール水溶液濃度が75質量%未満であり、更に好ましくは、72質量%未満、最も好ましくは70質量%以下が適している。
このように、フコキサンチン、複合脂質、その他成分を含む抽出液溶液を固定相に吸着させ、その後固定相からフコキサンチンを溶離液で溶離させることによって、フコキサンチン純分の質量に対する複合脂質の質量を調整したフコキサンチン溶液を得ることができる。
フコキサンチンを溶離させる温度は限定されないが、好ましくは0〜70℃であり、より好ましくは20〜50℃である。このような温度範囲であれば、フコキサンチンは分解されず、溶離させることができる。フコキサンチンを溶離させるのに使用する溶媒量は限定されないが、回収率を高めるために吸着しているフコキサンチンの70質量%以上が溶離される量の溶媒を使用するのが好ましく、80質量%以上が溶離される量の溶媒を使用するのがより好ましく、90質量%以上が溶離される量の溶媒を使用するのが更に好ましい。
本発明では、前記フコキサンチン溶液中の複合脂質の質量がフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下に調整する。ここでフコキサンチン溶液とは、フコキサンチンを沈殿させる前のフコキサンチンと複合脂質を含むエタノール水溶液をいう。複合脂質の質量がフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下にすることにより、沈殿工程で得られるフコキサンチン組成物の純度と回収率をともに高くすることができ、得られるフコキサンチン組成物にはフコキサンチン純分に対し複合脂質が2質量%以上含まれるため、フコキサンチンの熱安定性、光安定性および/または酸素に対しての安定性が向上する。複合脂質の質量がフコキサンチン純分の質量に対して、好ましくは2倍以下、より好ましくは1倍以下である。下限値は、好ましくは0.02倍以上、より好ましくは0.05倍以上、更に好ましくは0.1倍以上である。
また、本発明では、前記フコキサンチン溶液中のリン脂質の質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下に調整することが好ましい。より好ましくは2倍以下、更に好ましくは1倍以下である。下限値は、好ましくは0.02倍以上、より好ましくは0.05倍以上、更に好ましくは0.1倍以上である。このような範囲内であると、沈殿工程で得られるフコキサンチン組成物の純度と回収率をともに高くすることができ、得られるフコキサンチンの熱、光や酸素に対しての安定性が向上する。
さらに、本発明では、前記フコキサンチン溶液中の糖脂質の質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下に調整することが好ましい。より好ましくは、2倍以下、更に好ましくは、1倍以下、更に好ましくは、0.6倍以下、更に好ましくは、0.3倍以下である。下限値は、好ましくは0.02倍以上、より好ましくは0.05倍以上、更に好ましくは0.1倍以上である。このような範囲内であると、沈殿工程で得られるフコキサンチン組成物の純度と回収率をともに高くすることができ、得られるフコキサンチンの熱、光や酸素に対しての安定性が向上する。
本発明は、フコキサンチン溶液からフコキサンチンの沈殿を得る沈殿工程を含む。フコキサンチンと複合脂質を含むエタノール溶液から、フコキサンチンを沈殿させて得る方法としては、フコキサンチンと複合脂質を含むエタノール溶液にフコキサンチンに対する貧溶媒、例えば水を加える操作を行うことや、冷却を行うこと、または、エタノールを蒸発させる操作を行うこと、または、それらを組み合わせことにより系中のフコキサンチン溶解度を低下させることでフコキサンチンを析出させて沈殿を得る方法である。これにより、フコキサンチンを選択的に沈殿させ、フコキサンチンを精製、取得することができる。
加水による沈殿形成は、例えば、液体クロマトグラフィから溶離して得たフコキサンチンと複合脂質を含むエタノール溶液(フコキサンチン溶液)に水を加水することで、エタノール濃度を10〜90質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜50質量%に低下させることで行う。沈殿物を十分に回収するために、例えば30分以上静置または撹拌してもよい。
冷却による沈殿形成は、例えば、前記フコキサンチン溶液をより高い温度から、50℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは10℃以下に冷却することで行う。沈殿物を十分に回収するために、その温度を保持したまま、例えば30分以上静置または撹拌してもよい。
エタノールを蒸発させることによる沈殿形成は、例えば前記フコキサンチン溶液中のエタノールを蒸留、真空乾燥等の操作で系外に除去し、エタノール濃度を低下させることで、フコキサンチンの溶解度を低下させて行う。
上記沈殿形成方法のうち、加水による沈殿形成方法が、冷却や加熱のためのエネルギーが不要であり製造コストの点で好ましい。
上記方法により得られた沈殿は、ろ別および/または乾燥によりフコキサンチン組成物を得ることができる。フコキサンチンは熱に弱く分解しやすいため噴霧乾燥または凍結乾燥することが好ましい。より好ましくは凍結乾燥であり、凍結乾燥は沈殿物を0℃以下で凍結し、圧力20Pa以下に減圧した条件下で実施する。得られた組成物は、不揮発分の質量中にフコキサンチンを80質量%以上含む組成物である。好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上である。また、複合脂質はフコキサンチン純分の質量に対して2質量%以上含む組成物である。このため得られるフコキサンチンの熱、光や酸素に対しての安定性が向上する。好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上含む組成物である。複合脂質の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。フコキサンチン組成物のその他の成分としては、カロテノイド類、脂肪酸、単純脂質、多糖類等の夾雑物等があげられる。
上記フコキサンチンは、更に、液−液分配、再結晶およびクロマトグラフィからなる群から選ばれる精製手段の1種以上に付してもよい。これらの精製手段を行うと、フコキサンチンの純度を95%以上にすることができる。
再結晶による精製は、前記のようにして得られたフコキサンチンをメタノール、エタノール、アセトンなどの極性溶媒に溶解させ、それに適量、例えば、全量の2〜5割程度の水を加え、フコキサンチンを晶析(再結晶)させることにより行われる。これらの操作を少なくとも1回、必要に応じて複数回行うことで効果的に精製することができる
クロマトグラフィによる精製は、前記のようにして得られたフコキサンチンを高速液体クロマトグラフィ、中圧分取クロマトグラフィ等の各種クロマトグラフィで処理し、フコキサンチンを分離することにより行われる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
(フコキサンチンの分析)
フコキサンチンは、標品として市販のフコキサンチン(細胞生物学用、和光純薬製)を用い以下の条件の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法により定量分析した。
<測定機器および測定条件>
機 種 :島津社製高速液体クロマトグラフ装置
測定波長:450nm
カラム :資生堂 Capsell Pak C18 UG120 4.6×250mm
カラム温度:40℃
流 速 :1.0mL/分
移動相及び分析時間:メタノール/水(ステップグラジエント)
90/10 (0〜1分)
90/10→100/0 (1〜3分)
100/0 (3〜15分)
90/10 (15〜19分)
(藻体中のフコキサンチン含有量の測定方法)
藻体中のフコキサンチンの含有量は、以下の方法で測定した。
藻体1gに対して100質量%エタノールを10g添加し、25℃で10分間撹拌する。25℃、6000xg、5分間で遠心分離し、上清中のフコキサンチンの濃度を上述のHPLCにて分析し、藻体中のフコキサンチン含有量を定量した。
(脂質の定量方法)
フコキサンチン抽出液およびフコキサンチン組成物中の糖脂質およびリン脂質の各複合脂質は、以下の方法で定量した。フコキサンチンを含む凍結乾燥物100〜400mgをクロロホルム10gに再溶解させた後、シリカゲル(シリカゲル60N、球状、中性、63−210μm、関東化学製) 20gをクロロホルムを用いて充填したオープンクロマトカラム(内径19mm)に供給し、クロロホルム400g、アセトン250gおよびメタノール200gを展開液として脂質を順次溶出し、中性脂質画分(クロロホルム画分)、糖脂質画分(アセトン画分)、リン脂質画分(メタノール画分)を得た。得られた各画分を凍結乾燥した後、重量を測定した。さらに各画分中のフコキサンチン量をHPLCで定量した。糖脂質の質量は、凍結乾燥した糖脂質画分の質量から、糖脂質画分に含まれていたフコキサンチン質量を減じて求めた。リン脂質の質量は、凍結乾燥したリン脂質画分の質量から、リン脂質画分に含まれていたフコキサンチン質量を減じて求めた。複合脂質の質量は、上述の糖脂質の質量とリン脂質の質量を合計した量とした。
(複合脂質の質量のフコキサンチン純分の質量に対する割合の算出)
フコキサンチン溶液、フコキサンチン抽出物における、複合脂質の質量のフコキサンチン純分の質量に対する割合の算出は下記式で求めた。同様に下記の式の複合脂質をリン脂質または糖脂質に置き換えることにより、リン脂質または糖脂質の質量のフコキサンチン純分の質量に対する割合も算出できる。
Figure 2015101551
(調製例1)
Phaeodactylum tricornutumを表1に示す培地Aにて培養した。培養は1000mlのねじ口瓶に800mlの培地を入れ、前培養した藻体を初発細胞濃度が0.8となるよう接種し、空気を240ml/分(0.3vvmに相当)で導入し、光量120μmol・m−2・s−1、水温25℃にて7日間培養した。培養後、遠心分離によって藻体を沈殿させ、上清を除いて湿藻体を得た。得られた藻体の質量は培養液1000ml当たり、Phaeodactylum tricornutumが湿藻体で4.24g、乾燥藻体で1.01gであった。得られた藻体中のフコキサンチン含量を上述の方法で測定したところ、1.95mg/g−湿藻体(8.19mg/g−乾燥藻体)であった。
Figure 2015101551
(実施例1)
調整例1の方法で複数回培養することによって得られたPhaeodactylum tricornutumの湿藻体255g(乾燥藻体として60.7g、フコキサンチン497mg含有)に500gの64質量%エタノール水溶液を加え、25℃で10分間撹拌して抽出を行った。その後、抽出液を25℃、6000xg、5分間の条件で遠心分離し回収した。沈殿については500gの60質量%エタノール水溶液で再度抽出を行い、同条件で遠心分離し、抽出液を回収した。これらの抽出液を混合し、フコキサンチン抽出液とした。
上記で得られたフコキサンチン抽出液 1000gに水を200g加えエタノール濃度を50質量%に調整した後、Wakogel 50C18(和光純薬製)を188g充填したクロマト管に通液し、フコキサンチンを吸着させた。このクロマト管に450gの50質量%エタノール水溶液を通液して不純物を担体から洗浄した後、450gの70質量%エタノール水溶液を通液し、フコキサンチンをWakogel 50C18から溶離させ、フコキサンチンを含むエタノール溶液を得た。
上記で得られたフコキサンチン含有エタノール溶液(70質量%エタノール溶液)450gは加水沈殿実験用に250g使用し、残り200gは複合脂質量の定量のために用いた。
前期フコキサンチン含有エタノール溶液200gを凍結乾燥したところ、302mgとなった。上述の方法で分析した結果、凍結乾燥品中のフコキサンチンの質量は、114mg、複合脂質の質量は188mg(糖脂質の質量が27mg、リン脂質の質量が161mg)と定量された。つまり、複合脂質の質量のフコキサンチン純分の質量に対する割合は、1.65倍であった(糖脂質の割合は0.24倍、リン脂質の割合は1.42倍)。
(実施例2)
実施例1で得られたフコキサンチン含有エタノール溶液250gに水188gを加え、エタノール濃度を40質量%に調整し、4℃で16時間静置し、フコキサンチンを沈殿させた。この沈殿したフコキサンチンをろ過により回収し、凍結乾燥によって乾燥したところ、フコキサンチン組成物184mg(純度93.5質量%)を得た。藻体に含まれていたフコキサンチンの量から算出すると、抽出、精製、加水沈殿の工程でのフコキサンチンの回収率は62%と算出された。また、乾燥藻体重量からのフコキサンチン組成物の回収率は、0.55%と算出された。
実施例1および2の結果より、フコキサンチン溶液中のフコキサンチン質量に対する複合脂質質量の比を3倍以下にすることで、高純度のフコキサンチンを高収率で回収できることが確認できた。
(実施例3)
実施例2で得られたフコキサンチン組成物を用いて熱安定性の評価をフコキサンチン含有オイル品を作製しておこなった。
(複合脂質質量濃度の測定)
実施例2で得られたフコキサンチン組成物中の複合脂質量を求めたところ、6.0質量%であった。
(パームオレインの調製)
パーム油(和光純薬製)を20℃に1時間保温後、固形物をろ過した。このろ液をパームオレインとして用いた。
(評価サンプルの調製)
実施例2で得られたフコキサンチン精製物(純度93.5質量%)2.44mgに、理研Eオイルスーパー80(理研ビタミン製)6.8mgを加え、さらにパームオレインを加えて全量を1.3gにした。
(安定性の評価)
評価サンプルは褐色のバイアル瓶に入れて密栓した。恒温器に入れて70℃に保温し、所定時間ごとにサンプリングし、フコキサンチンの残存量を前述のHPLC法で定量した。
Figure 2015101551
上記表2より、実施例2で作製したフコキサンチン純分の質量に対して複合脂質を2質量%以上含むフコキサンチン組成物の熱安定性が高いことがわかる。
(実施例4)
それぞれ10mgのL−α−ホスファチジルコリンジミリストイルおよびL−α−ホスファチジルコリンジパルミトイル(和光純薬)を1gのエタノールに溶解した溶液ならびに10mgのコートソームMG―4040LS(L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム、和光純薬)を1gの精製水に溶解した溶液を作成し、リン脂質溶液とした。また、5mgのフコキサンチン(和光純薬)を1gのエタノールに溶解した溶液をフコキサンチン溶液とした。
前記フコキサンチン溶液に、リン脂質溶液、エタノールおよび/または精製水を添加する。その際、フコキサンチンは500μg含まれるように、リン脂質溶液は2000μgまで任意の質量含まれるように、エタノールおよび精製水はエタノール濃度60%になるようにして全量を667mgにする。その後、精製水を333mg加えてエタノールの終濃度を40質量%となるように調整しさらに十分混合した。この混合液を室温かつ暗所で1時間静置し、フコキサンチンの沈殿を形成させた。その後、15000xGで5分間遠心分離を行い、得られた上清をさらにポアサイズ0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して清澄液を得た。この清澄液中のフコキサンチン濃度をHPLCで定量した。一方、得られた沈殿は、凍結乾燥し、フコキサンチン純度をHPLCで定量した。
図1〜3は、フコキサンチン質量に対するリン脂質の質量比と上清中に残存したフコキサンチンの濃度の関係を示している。この結果より、試験溶液に含まれるフコキサンチン質量に対するリン脂質質量の比が3倍を超えると、上清中のフコキサンチンの濃度が上昇し、溶液中のリン脂質がフコキサンチンの沈殿形成を阻害していた。つまり、フコキサンチン質量に対するリン脂質の質量を3倍以下にすることで、高い純度のフコキサンチンを高収率で回収できることが示唆された。

Claims (3)

  1. 藻類にエタノールまたはエタノール溶液を加えてフコキサンチンを抽出する抽出工程と、
    フコキサンチン抽出液を、液体クロマトグラフィにより分離精製し、得られるフコキサンチン溶液中の複合脂質量をフコキサンチン純分の質量に対して3倍以下にする分離精製工程を含むことを特徴とするフコキサンチンの製造方法。
  2. フコキサンチン溶液からフコキサンチンの沈殿を得る沈殿工程を含む請求項1記載のフコキサンチンの製造方法。
  3. 請求項1または2記載の製造方法で得られた、フコキサンチン純分の質量に対して複合脂質を2質量%以上含むフコキサンチン組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105820142A (zh) * 2016-04-29 2016-08-03 宁波大学 一种提取岩藻黄素用褐藻样品的前处理方法

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