JP2015098907A - 真空断熱材 - Google Patents
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図1は、本発明の真空断熱材を厚さ方向に切断した切断端面を模式的に示す端面図である。本発明の真空断熱材は、図1に示す真空断熱材1のように、芯材2と、包装袋8と、ガス吸着材6と、を構成要素とし、芯材2およびガス吸着材6が包装袋8の内部に充填され、真空包装されてなるものである。以下、構成要素ごとに説明する。
芯材は、真空断熱材の断熱性を担う部材であり、無機繊維マットからなる。
ホルムアルデヒドと、フェノールとの混合物(レゾール型フェノール樹脂の前駆体);
ポリカルボン酸と、ポリオール(糖類を含む)、アミノアルコール、イミノアルコール及びポリアミンの群から選択される少なくとも1種の物質との混合物(ポリエステル、ポリアミドの前駆体);
等を用いることが好ましい。中でも、これらを成分とする水性バインダーを用いることが更に好ましい。
ガス吸着材は、真空断熱材の包装袋の内部に充填され、有機バインダーから発生するアウトガス又は包装袋の内部に存在する水分等のガス成分を化学吸着する成分からなる部材である。
収納袋は、ガス吸着材を封入するための袋体である。収納袋は、不織布シートからなる。不織布シートは、単一のシートであっても(即ち積層体としなくても)、通気性・透湿性と防水性の双方を付与することができる。また、その目開きを調整することで、通気性・透湿性および防水性の程度を制御することも可能である。従って、微細孔を有するポリエチレンフィルムを含む積層体(引用文献3参照)に比して、通気性・透湿性が高く、しかも過剰の水分との接触を避けるのに十分な防水性を備えている。
(1)測定装置としては、フラジール形試験機を用いる。試験片は、約200mm×200mmのサイズとし、評価対象となる不織布の5箇所から、各々1枚ずつ採取する。
(2)フラジール形試験機の円筒の一端に前記試験片1枚を取り付ける。その後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンおよび空気孔を調整し、そのときの垂直形気圧計が示す圧力を測定する。
(3)測定した圧力と使用した空気孔の種類とから、試験機に附属の換算表によって試験片を通過した空気量(cm3/cm2・s)を求める。
(4)5枚の試験片について前記測定を行い、5回の試験結果の平均値を求める。
ポリアミド樹脂(ポリパラフェニレンテレフタルアミド樹脂等);
ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂等);
アクリル樹脂(ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリロニトリル系共重合体等);
その他、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
ポリエチレン繊維又はポリプロピレン繊維(低融点繊維)と、ポリアミド繊維又はポリエチレンテレフタレート繊維(高融点繊維)との混綿を加熱し、前記繊維を繊維間結合させた不織布シート;
ポリエチレン繊維(低融点繊維)と、パルプ(高融点繊維)との混綿を加熱し、前記繊維を熱融着させた和紙;等が好ましい。
繊維を構成する熱可塑性樹脂を熔融させ、連続した長繊維状に吐出し、冷却が完了する前に、繊維同士を融着させるスパンボンド法;
熱可塑性樹脂を熔融させ、連続した長繊維状に吐出した直後に高温の空気を当てて、繊維を細くさせながら繊維同士を融着させるメルトブロー法;
メルトブロー法と同様に長繊維を吐出させた後に、シート状物を成形し、更に加熱ロール間で、繊維同士を融着させ、シート状物を横方向に展ばす積層延展法;等の製法により製造された不織布シートが好ましい。これらの製法であれば、不織布シート内の目付け量の変動・ばらつきが抑制される。更に、樹脂の熔融温度、冷却条件、成形時の加熱温度又は加圧条件を調節することにより、不織布の目開きを制御することができ、通気度及び耐水圧を本発明の範囲内に調節することが可能である。
包装袋は、ガスバリア性のシート材からなる袋体である。包装袋によって、袋体内部の真空状態が維持され、袋体内部への水分やガスの流入を防止することができる。
ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる樹脂フィルム;
クラフト紙の表面が前記樹脂フィルムで被覆されたラミネートフィルム;
金属箔の表面が前記樹脂フィルムで被覆されたラミネートフィルム;
前記樹脂フィルムに金属が蒸着された金属蒸着フィルム;等を好適に用いることができる。前記金属箔、蒸着用の金属としては、ガスバリア性に優れるアルミニウムが好ましい。
本発明の真空断熱材は、前記芯材および前記ガス吸着材が前記包装袋の内部に充填され、真空包装されてなるものである。包装袋の内部の真空度(残存気体の圧力)は0.1Pa以上、10Pa以下であることが好ましい。真空度を下げるほど、得られる真空断熱材の断熱性能は向上するが、その分、真空包装に要する時間が長くなり、生産性が低下する。真空度を0.1Pa以上とすることによって、真空引きに要する時間が短縮され、効率的に真空断熱材を製造することができる。また、真空度を0.1Pa以下とした場合に匹敵する断熱性能を得ることができる。一方、前記真空度を10Pa以下とすることによって、真空断熱材として十分な断熱効果が発揮される。前記効果をより確実に得るためには、前記真空度を5Pa以下とすることが更に好ましい。
本発明の真空断熱材は前記構成を有する限り、いかなる製造方法により製造してもよい。以下、本発明の真空断熱材の製造方法の例を示す。但し、既に説明した事項については割愛し、製造方法に固有の事項のみを説明する。
まず、前記ガス吸着剤を前記収納袋に封入する。
図2は、本発明の真空断熱材に用いる無機繊維マットの製造方法の一例を模式的に示す概略工程図である。無機繊維マットの製造方法は特に限定されないが、例えば図2に示す製造方法により製造することができる。
最後に、前記芯材及びガス吸着剤が封入された収納袋を包装袋に充填して真空包装する。真空包装は従来公知の方法に準じて行うことができる。例えば、前記芯材及び前記収納袋を包装袋の内部に充填した後、前記包装袋の内部を真空度が0.1〜10Paとなるまで真空引きし、前記包装袋の開口部をヒートシールする方法;等を挙げることができる。厚みが12mm以上の真空断熱材を製造する際は、前記芯材を2枚以上積層して、真空包装してもよい。
(1)まず、上型と下型を備え、前記上型および前記下型のいずれか一方に真空ポンプと接続可能な排気口が形成された型を用意する。
(2)前記下型の内部に、ガスバリア性のシート材10、芯材2、ガス吸着材6が封入された収納袋4および排気チューブ14が付設されたガスバリア性のシート材12を順次積層し、排気チューブ14が排気口に接続されるように上型をセットして型を閉じる。
(3)シート材10とシート材12の周縁部16同士を融着させるとともに、シート材10とシート材12によって形成された包装袋8の内部を排気チューブ14から脱気し、袋内の真空度を0.1〜10Paとする。
(4)排気チューブ14を封止した後、脱型することにより真空断熱材1を得る。
図1に示す真空断熱材1と同様の構造を有する真空断熱材を製造した。
ガス吸着材6としては、水酸化カルシウムを600℃でか焼(かしょう)した、酸化カルシウムを用いた。前記酸化カルシウムは乾式篩法で測定した平均粒径が0.8mmの粒状酸化カルシウムであった。
不織布シートにより、幅90mm、長さ110mmの収納袋4を形成した。前記不織布シートとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点260℃)からなる芯部とポリエチレン樹脂(融点130℃)からなる鞘部とを有する芯鞘繊維を原料繊維とし、スパンボンド法により形成された不織布シートを用いた。この不織布シートの通気度は25cm3/cm2・s、耐水圧は32cmであった。この収納袋には、前記粒状酸化カルシウム10gを封入した。
無機繊維マットとしては、幅390mm、長さ670mm、密度70kg/m3、厚さ22mmのグラスウールマット2枚を積層したものを用いた。
最後に、芯材およびガス吸着材が封入された収納袋を包装袋に充填して真空包装した。ガスバリア性のシート材としては、最外層に保護フィルム、中間層にガスバリア性フィルム、最内層に融着性フィルムを備えた積層シートを用いた。具体的には、外側から、ポリアミド樹脂フィルム、シリカアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミニウム蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、高密度ポリエチレン樹脂フィルムが順次積層された、厚さ0.1mmの積層シートを用いた。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類、及びガラス繊維に付与する有機バインダーの種類を変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の真空断熱材を得た。
ガス吸着材を収納する収納袋を構成する不織布シートの種類を変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の真空断熱材を得た。
実施例、及び比較例の真空断熱材について、収納袋の耐水性、初期断熱性、及び断熱性の経時変化を評価した。以下、これらの評価方法を示す。
実施例1〜5及び比較例1〜3の真空断熱材において、ガス吸着材を封入する収納袋を構成するために使用したのと同種の不織布を用い、収納袋の耐水性を評価した。まず、前記不織布により構成された70mm×75mmの収納袋の内部に、酸化カルシウム5gを充填した後、前記収納袋の開口部を熱融着により封着し、酸化カルシウムが封入された収納袋を得た。次いで、容量500mlのビーカーに注入された300mlのイオン交換水の中に前記収納袋を10分間浸漬させた。この際、前記収納袋が破損したか否かを目視により確認し、収納袋が破損しなかった場合は「良好(〇)」、収納袋が破損した場合は「不良(×)」として評価した。この収納袋の破損は、収納袋の耐水性が低いために収納袋の内部に水が浸透し、収納袋の内部の酸化カルシウムと水が反応し、反応時の急激な発熱によって収納袋が溶融することに起因するものである。
実施例1〜5及び比較例1〜3の真空断熱材の初期断熱性、及び断熱性の経時変化を熱伝導率により評価した。まず、実施例1〜5及び比較例1〜3の真空断熱材の製造直後の熱伝導率を測定した(表中、「熱伝導率A」と記す)。測定条件については、熱伝導率計の下面温度30℃、上面温度10℃、平均温度20℃とした。なお、熱伝導率は、JIS−A1412−2に準拠し、熱流計法により測定した。測定機器としては、熱伝導率測定装置(商品名「HC−074−600」、英弘精機社製)を用いた。熱伝導率Aが0.0018W/mK以下の場合は「良好(○)」、熱伝導率Aが0.0018W/mKを超える場合を「不良(×)」として評価した。
初期断熱性の評価の後、更に、温度35℃、相対湿度80%の条件で4週間経時させ、再度、熱伝導率を測定した(表中、「熱伝導率B」と記す)。また、熱伝導率Bと熱伝導率Aの差が0.0005W/mK以下の場合を「良好(○)」、0.0005W/mKを超える場合を「不良(×)」と評価した。
表1及び表2に真空断熱材の構成を示し、表3に評価結果を示した。表3に示すように、実施例1〜5の真空断熱材は、収納袋が耐水性に優れ、収納袋の内部の酸化カルシウムと水との反応が抑制された。また、初期断熱性に優れ、断熱性の経時変化も殆どなく、使用開始直後から一定期間が経過するまでガス吸着材が有効に機能しているものと認められた。
Claims (6)
- 無機繊維マットからなる芯材と、ガスバリア性のシート材からなる包装袋と、アルカリ土類金属化合物を含むガス吸着材と、を構成要素とし、前記芯材および前記ガス吸着材が前記包装袋の内部に充填され、真空包装されてなる真空断熱材であって、
前記芯材は、無機繊維が集積され、前記無機繊維に熱硬化性の有機バインダーが付与されたマット状物を加熱してなる無機繊維マットからなり、
前記ガス吸着材が、不織布シートからなる収納袋に封入された状態で、前記包装袋の内部に充填され、真空包装されており、
前記不織布シートは、通気度が15cm3/cm2・s以上、100cm3/cm2・s以下であり、かつ、耐水圧が10cm以上の不織布シートであることを特徴とする真空断熱材。 - 前記不織布シートが、高融点樹脂からなる芯部と低融点樹脂からなる鞘部とを有する芯鞘繊維を原料繊維とし、前記芯鞘繊維同士が熱融着により繊維間結合されて形成された不織布シートである請求項1に記載の真空断熱材。
- 前記不織布シートが、低融点樹脂からなる低融点繊維および高融点樹脂からなる高融点繊維を原料繊維とし、前記高融点繊維が前記低融点繊維を介して繊維間結合されて形成された不織布シートである請求項1に記載の真空断熱材。
- 前記ガス吸着材が、アルカリ土類金属酸化物を含む材料からなるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の真空断熱材。
- 前記ガス吸着材が、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属珪酸塩を含む材料からなるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の真空断熱材。
- 前記アルカリ土類金属酸化物が、アルカリ土類金属水酸化物を300℃以上、600℃以下の温度で加熱処理してなるものである請求項4又は5に記載の真空断熱材。
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