JP2015097522A - 家畜用乳頭パック材、および家畜用複合乳頭パックキット - Google Patents

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友康 永沢
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Abstract

【課題】(イ)皮膜形成力が高く、(ロ)優れた弾性を有し、乳頭表面に対する密着性が大きく、(ハ)パック装着後に生じる衝撃等に十分耐えうる機械的強度を有していること、特に、水練和物が、家畜の乳頭の被覆性に優れる高含水で低粘度のものであっても、上記機械的強度に優れるゲル化物が得られること、(ニ)乾燥によって弾性が失われ難く、上記優れた機械的強度の維持性に優れる、家畜用乳頭パック材を開発すること。
【解決手段】(A)アルギン酸塩、(B)ゲル化反応剤、および(C)非還元糖、好適にはトレハロースを含むゲル化性材料であって、該(A)アルギン酸塩が、α−Lグルロン酸に対するβ−Dマンヌロン酸のモル比率であるM/G比率が0.4〜0.7の範囲のものであることを特徴とする家畜用乳頭パック材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、家畜用乳頭パック材、詳しくは、乳房炎感染を防止するために、家畜の乳頭口を閉鎖するために使用するパック材に関する。
乳牛の重大な疾病の一つに乳房炎がある。乳房炎は、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入し、定着・増殖することによって起こる感染病であるが、その発生機序が複雑であるので、いまだに根絶できず、酪農界に重大な経済的損失を与え続けている疾病である。乳房炎には種々のタイプや症状があるが、乳房の発赤、疼痛、膨張、発熱或いは乳汁中への乳魂の出現等、いわゆる臨床症状をともなった乳房炎の発見は容易であり、抗生剤治療の普及につれて世界的にも減少傾向にある。しかし、これらの臨床症状を示さないが乳汁を検査すると体細胞数の増加等の異常が発見される、いわゆる潜在性乳房炎については、産乳量や乳質の低下等多大な経済的損失を及ぼしているにも係わらず、その防除は遅々として進んでいない。
このような乳房炎を防除するために、現在世界的に推奨されているのは「5ポイント」と呼ばれる下記のような重点対策である。
(1)ミルカーの点検整備を含めた搾乳施設等の衛生対策、
(2)乳頭の消毒、
(3)臨床型乳房炎の治療、
(4)乾乳期治療(drycowtherapy,DCT)
(5)問題牛の淘汰(以上、非特許文献1,2,3)
然しながら、上述した「5ポイント」と呼ばれる対策は、酪農経営上当然採用されるべき対策であり、これらをもってしても、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを完全には防止することは極めて困難である。
上記に挙げられた対策として従来から、搾乳を行う際には乳頭の清拭作業が行われている。清拭作業としては、濡れタオル等で十分に拭った後、乾いたペーパータオルで拭き取るなどの作業が一般的である。そして、搾乳後には、抗菌剤などの薬液噴霧等によって乳頭に付着している細菌を殺菌し、搾乳後に乳房炎起因菌が乳頭内へ侵入するのを防止している。この方法では、施用後の被膜形成力が小さく、横臥休息すると直ちに牛床等の汚れや、糞尿等が乳頭に付着する傾向にある。その為、搾乳前の乳房・乳頭清拭作業を多工程で行う必要があるばかりでなく、生乳中に清拭作業で落としきれなかった汚れの移行や乳頭内への乳房炎起因菌の侵入が問題となっている。また、内用薬や注射薬としての抗生物質等により、体内の菌の増加を抑制している。しかしながら、内用薬や注射薬としての抗生物質の使用は、薬剤の使用中および使用後数日間は搾乳した乳を出荷することができないという問題点がある。
そこで、提案されたのが、乾乳期間中の乳牛の乳頭全体をマスキングすることにより、細菌その他の微生物が乳頭口から乳房内へ侵入するのを防止する技術である。
特許文献1は、「乳牛において、乳房炎に感染しやすい乾乳期、および分娩前、乳頭を乳頭シール剤に浸漬して乳頭に乳頭口を閉塞する薄膜を形成した状態に保持しておくことにより、乳房炎起因菌の感染を物理的に阻止することを特徴とする乳牛の乳房炎予防方法。」を開示している(請求項1)。さらに、特許文献1は、乳頭口を浸漬させる乳頭シール剤として、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、メチレンクロライド等のフロン代替体、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を溶媒として、ウレタンゴム、ラテックスゴム、ブタジエン樹脂、ポリビニルアルコール、液状ブチルゴム、液状ゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、酢酸ビニルゴム等から選択されたゴム素材を溶解したものを記載している(段落17,18等)。
しかし、特許文献1のゴム系素材は乳頭との密着性が不十分であるので、乳頭から剥がれ易く、乳房炎起因菌の感染を阻止する必要がある上記乾乳期や分娩前において、必ずしも乳頭口の閉塞を十分に行なうことができないという問題がある。
他方、特許文献2は、「少なくとも、水、カルシウム塩、及びアルギン酸塩を含み、かつ、ゲル化前の粘度が5000〜150万mPa・sである乳頭パック」を開示している(請求項1)。特許文献2に記載されている乳頭パックは、優れた弾性を有しているため、乳頭との密着性に富み乳頭から剥がれ難く、乳頭口の閉塞性にも優れている。なお、特許文献2の乳頭パックにおいて、上記アルギン酸塩の詳細は不明であり、後述するM/G比率に関して如何なるものが適するかは何も示されていない。
特開2000−41529号公報 特開2006−50911号公報
畜産大事典編集委員会代表者長沢弘著、1996年2月20日、畜産大事典、株式会社養賢堂 酪農大事典生理・飼育技術・環境管理、2011年3月31日、社団法人農山漁村文化協会 株式会社講談社サイエンティフィック編、新編畜産ハンドブック、2006年9月10日、株式会社講談社
しかし、こうした特許文献2に記載される、アルギン酸塩のゲル化物からなる乳頭パックは、機械的強度において今一歩十分ではなく、乳牛が横臥休息などをした際の衝撃により破断してしまう危険性があった。特に、乳房炎に感染しやすい、乾乳期および分娩前の1〜2週間程度は、乳頭口を閉塞しておくのがその予防に効果的であり、乳頭パックにはこうした長期間に渡って破断することがないだけの機械的強度を備えていることが求められていた。
さらに、これら乳頭パックは、未硬化のゲル化性材料の水練和物の状態において、家畜の乳頭に被覆する際の操作性を勘案すると、前記公知文献2のように低粘度であることが望ましく、そうすると水の含有量を多目にするのが好適になる。ところが、斯様に水の含有量が多いと、得られるゲル化物の初期の機械的強度が低下し、前記乳牛が横臥休息などをした際の破断の危険性がより顕在化し前記問題性を高めていた。
ここで、アルギン酸塩のゲル化物の機械的強度を向上させる方法としては、例えば、酸化マグネシウムなどの硬化助剤を用いて過硬化させる方法等が考えられる。しかしながら、このように過硬化により機械的強度を向上させた場合には、前記の優れた弾性が損なわれ、乳頭との密着性が低下してしまう。しかも、アルギン酸塩のゲル化物は、その大半が水分で構成されている為、パックした後、時間の経過と共に、乾燥によって水分が蒸発し、上記パック材の弾性不足は益々顕著になり、脆さも増して機械的強度も低下してしまう。
以上のように、乳頭パックには、(イ)皮膜形成力が高いこと、(ロ)優れた弾性を有し、乳頭表面に対する密着性が大きいこと、(ハ)乳牛の横臥休息時など、パック装着後に生じる衝撃等に十分耐えうる機械的強度を有していること、特に、水練和物が、家畜の乳頭の被覆性に優れる高含水で低粘度のものであっても、上記機械的強度に優れるゲル化物が得られること(ニ)乾燥によって弾性が失われず、上記優れた機械的強度の維持性(少なくとも1週間の維持)に優れること、等が望まれている。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、家畜用乳頭パック材に用いるゲル化性材料として、非還元糖を含有し、且つアルギン酸塩が、α−Lグルロン酸に対するβ−Dマンヌロン酸のモル比率であるM/G比率が特定の値に低いものを用いることで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)アルギン酸塩、(B)ゲル化反応剤、および(C)非還元糖を含むゲル化性材料であって、該(A)アルギン酸塩が、α−Lグルロン酸に対するβ−Dマンヌロン酸のモル比率であるM/G比率が0.4〜0.7の範囲のものであることを特徴とする家畜用乳頭パック材である。
また、本発明は、前記家畜用乳頭パック材、および
b)i)前記家畜用乳頭パック材のゲル化物を被覆するための乳頭パック被覆樹脂容器、又はii)該乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料とから構成された家畜用複合乳頭パックキットも提供する。
本発明の乳頭パック材によれば、家畜、特に、非搾乳期の乳牛の乳頭を乳房炎などから予防する為に使用される乳頭パックにおいて、横臥休息など、パック装着後に生じる衝撃等に十分耐えうる機械的強度を有するものが得られる。特に、その水練和物が、家畜の乳頭の被覆性に優れる高含水で低粘度のものであっても、上記機械的強度に優れるゲル化物が得られ、被覆時の操作性と機械的強度とが両立できる。しかも、適正な弾性を併せ持ち、こうした弾性と前記優れた機械的強度の維持性にも優れており、長期に渡って乳頭を保護できる。
さらに、上記乳頭パック材と、i)前記家畜用乳頭パック材のゲル化物を被覆するための乳頭パック被覆樹脂容器、又はii)該乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料とから構成された家畜用複合乳頭パックキットによれば、乳頭パックの表面を乳頭パック被覆樹脂容器により被覆した複合乳頭パックとすることができ、乳頭パックの表面に衝撃に対する防御壁を形成することができる。そして、この乳頭パック被覆樹脂容器による被覆は、アルギン酸塩のゲル化物からの水分の蒸発も防ぐ役目を果たす。この結果、乳頭パック部分の乾燥による脆性化を防止でき、乳頭パックの前記優れた機械的強度は一層に長期間維持され、乳牛に対して、乳房炎に特に感染しやすい、乾乳期および分娩前の期間(少なくとも1週間)のより確実な保護が可能になる。
β−D−マンヌロン酸(M)が連続的に結合して構成されるMMブロックの分子構造を示す図である。 α−L−グルロン酸(G)が連続的に結合して構成されるGGブロックの分子構造を示す図である。 アルギン酸分子中のGGブロック鎖同士が、カルシウムイオンを抱き込むように会合した会合部(EggBoxJunction)の一例を説明する模式図である。
本発明の家畜用乳頭パック材(以後、単に「乳頭パック材」と表記する場合がある)は、(A)アルギン酸塩および(B)ゲル化反応剤を含んでなるゲル化性材料である。そして、上記アルギン酸塩として、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のものを用いる。
ここで、アルギン酸は、β−D−マンヌロン酸およびα−L−グルロン酸の2種類のウロン酸から構成される多糖類である。そして、アルギン酸は、商業的には、海藻(褐藻類)からの抽出によって製造されている。ここで、α−L−グルロン酸(G)に対するβ−D−マンヌロン酸(M)のモル比率(M/G比率)はアルギン酸の原料となる海藻により様々である。原料となる海藻に含まれるアルギン酸塩のM/G比率は、たとえば、Lessonianigrescensでは約1.3、Lessoniaflavicansでは約0.5、Macrocystispyriferaでは約1.8、Eckloniamaximaでは約1.7、Laminariajaponicaでは約2.2、Laminariahyperborean(茎部分)では約0.6、Laminariahyperborean(葉部分)では約1.2、Laminariadigitateでは約1.2、Durvilleaantarcticaでは約2.2、Durvilleapotatorumでは約2.3、Ascophyllumnodosumでは約1.9である。なお、これらの値は海藻の種類以外に採取時期や採取部位によっても変動する
しかして、本発明の大きな特徴は、乳頭パック材用のゲル化性材料に使用するアルギン酸塩として、前記M/G比率の広い範囲のものの中から、0.4〜0.7の狭い範囲のものを選択的に用いた点にある。このようにM/G比率の低いアルギン酸塩を用いると、ゲル化物の剛直性が向上するため、得られる乳頭パックは、乳牛の横臥休息時など、パック装着後に生じる衝撃等に十分耐えうる優れた機械的強度を有するものになる。
ここで、アルギン酸のM/G比率が低い場合、β−D−マンヌロン酸(M)が連続的に結合して構成される平坦な形状のMMブロック(図1参照)の割合よりも、α−L−グルロン酸(G)が連続的に結合して構成される籠状のGGブロック(図2参照)の割合が相対的に大きくなる。このため、アルギン酸分子が、ゲル化反応剤から放出されるカルシウムイオンの存在下でゲル化した場合、図3に例示するように、アルギン酸分子中のGGブロック鎖同士が、カルシウムイオンを抱き込むように会合した会合部(EggBoxJunction)を形成し易くなる。このため、M/G比率の低いアルギン酸塩を用いたゲル化物では、上述したように剛直性が高くなるものと考えられる。なお、図3中、紐状の線として示されるアルギン酸分子において、符号GはGGブロック鎖を意味し、その他の部分はMMブロック鎖を意味する。また、黒丸印はカルシウムイオンを意味する。
しかしながら、上記の如くにただ単純に、M/G比率を低くしたアルギン酸塩を使用しただけでは、ゲル化物が剛直なものになる一方で、ゲル化物の弾性も失われてしまう。このため、本発明では、上記低いM/G比率のアルギン酸塩を用いる構成に組合せて、さらに(C)非還元糖を配合している。このように非還元糖を配合することにより、得られるゲル化物は、上記優れた剛直性(機械的強度)を有するだけでなく、ゲル化物の弾性についても優れたものになる。
ここで、非還元糖の配合により、ゲル化物において、剛直性と弾性とが両立できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように推測している。すなわち、非還元糖類は、水分子との親和性(水和)が高い。従って、アルギン酸塩を水で混練した際に、該非還元糖類は、水分子と共に分子集合体を構成すると考えられる。そして、この分子集合体が、アルギン酸塩の分子鎖間、および/または、アルギン酸塩の分子鎖内に入り込むことにより、これらアルギン酸塩の凝集が抑制され、結果的にゲル化物の弾性が維持できるようになるのではないかと考えている。
また、このように非還元糖類の水分子との分子集合体が、アルギン酸塩の分子鎖内に入り込んだ場合、水酸基やエーテル結合等を有するアルギン酸塩分子と分子集合体との間に水素結合が形成される。その結果、水分子は強固に固定されるため、ゲル化物は乾燥し難くなり、上記優れた弾性や機械的強度は長期間保持されるようになると推測している。
以下、本発明の乳頭パック材、および家畜用複合乳頭パックキットの各構成について、以下詳細に説明する。
[1]乳頭パック材
(A)アルギン酸塩
アルギン酸塩としては、前記説明したとおり、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のアルギン酸塩が用いられる。また、本実施形態の乳頭パック組成物には、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のアルギン酸塩以外に、M/G比率が0.7を超えるアルギン酸塩が若千含まれていてもよい。
アルギン酸塩のM/G比率の上限は一般に、2.5程度であり、この上限のものまで含有させることができる。但し、この場合でも、アルギン酸塩としては、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のアルギン酸塩を主成分として用いることが必要である。具体的には、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内であるアルギン酸塩と、M/G比率が0.7を超えるアルギン酸塩との合計量に対して、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内であるアルギン酸塩の含有量の割合が90質量%を超えることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。M/G比率が0.4〜0.7の範囲内であるアルギン酸塩と、M/G比率が0.7を超えるアルギン酸塩との合計量に対して、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内であるアルギン酸塩の含有量の割合を、90質量%を超えるものとすることにより、ゲル化物の機械的強度を、より適切な範囲まで向上することが可能となる。特に、家畜の乳頭に被覆し易いように、ゲル化性材料の水練和物を高含水量で低粘度のものとした場合でも、十分な機械的強度を保つことが可能となる。
なお、以下の説明において、単に「アルギン酸塩」と表記した場合は、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のアルギン酸塩のみ、あるいは、M/G比率が0.4〜0.7の範囲内のアルギン酸塩とM/G比率が0.7を超えるアルギン酸塩との混合物のいずれかを意味するものとする。
ゲル化性材料を水と混練した際のアルギン酸塩の含有量は特に限定されない。しかしながら、混練物中におけるアルギン酸塩の含有量は1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。混練物中におけるアルギン酸塩の含有量を1質量%以上とすることにより、ゲル化物の強度を確保することが容易になる。また、混練物中におけるアルギン酸塩の含有量を10質量%以下とすることにより、各成分を混練する際の分散性を確保することが容易になる。
アルギン酸塩としては、たとえば、i)アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、ii)アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン等のアルギン酸アンモニウム塩等が挙げられる。これらのアルギン酸塩の中でも、入手容易性、取扱い容易性、ゲル化物の物性等の観点から、アルギン酸アルカリ金属塩を用いることが好ましい。また、アルギン酸塩は、2種類以上を混合して用いることもできる。
また、アルギン酸塩の分子量は特に限定されないが、一般的には、アルギン酸塩を1重量%含む23℃水溶液のコーンプレート型粘度計で測定した粘度が50mPa・sec〜1000mPa・secの範囲内となる分子量が好ましく、状況によって適宜選択する事が好ましい。乳頭パックの強度を保持しつつも、家畜の乳頭に被覆し易い、低粘度のゲル化性材料の水練和物を得るためには、上記アルギン酸塩の分子量を示す粘度が80mPa・sec〜700mPa・secの範囲であるのが好ましい。
(B)ゲル化反応剤
ゲル化反応剤は、水の存在下、アルギン酸塩と反応してゲル状のパックを形成する。ゲル化反応剤として、二価以上の多価金属化合物が好ましい。多価金属化合物は、解離して二価以上の多価金属イオンを生成することにより、アルギン酸塩の分子鎖内又は分子鎖間にイオン結合を有する三次元ネットワーク構造を形成するので、少なくともアルギン酸塩、ゲル化反応剤、水および難水溶性溶媒を混合し、攪拌すると、ゲル状乳頭パックの形成に好適な練和物が得られる。多価金属化合物として、例えば(i)硫酸カルシウム2水塩、硫酸カルシウム半水塩、無水硫酸カルシウム等の硫酸カルシウム、(ii)塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の硫酸カルシウム以外のカルシウム塩およびその水和物、(iii)塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩およびその水和物、(iV)カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、スズ等の2価以上の金属を含む酸化物、(V)(iV)に示す2価以上の金属を含む水酸化物等が挙げられる。酸化物および水酸化物の好適な具体例としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄等が挙げられる。これらのゲル化反応剤は二種以上の混合物であってもよい。
混練物のゲル化性や、硬化したゲル状乳頭パックの弾性等の物性を良好なものとするために、ゲル化反応剤として硫酸カルシウムを用いるのがより好ましい。ゲル状乳頭パックの硬化性や、ゲル化後の弾性等の物性を一層良好なものとするため、ゲル化反応剤としては、硫酸カルシウムを主体とし、少量の酸化マグネシウムおよび/又は酸化亜鉛を配合したものが好適である。酸化マグネシウムおよび/又は酸化亜鉛の配合割合は、硫酸カルシウム100質量部に対して、2〜40質量部が好ましい。
ゲル化反応剤の配合量は特に限定されないが、アルギン酸塩100質量部に対して10質量部〜2000質量部の範囲が好ましく、100質量部〜1000質量部の範囲がより好ましい。特にアルギン酸塩と、カルシウム含有ゲル化反応剤との組合せの場合、アルギン酸塩1モルに対してカルシウムイオンが100〜40000モルの範囲であるのが好ましく、250〜30000モルの範囲であるのがより好ましい。
(C)非還元糖
非還元糖としては、還元性を示さない公知の糖類であれば特に制限無く利用できる。ここで、「還元性」とは、アルカリ性水溶液中で、銀や銅等の重金属イオンに対して還元作用を示す性質を意味する。還元性を有する糖類は、重金属イオンに対する還元作用を利用したトレンス試薬、ベネジクト試薬又はフェーリング試薬によって検出される。これに対して、非還元糖は、これら試薬で検出できない糖類を意味する。
上述した特性を示す非還元糖としては、トレハロースやスクロース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース、スタキオース、シクロデキストリン類等のオリゴ糖類等、公知の非還元糖が利用できる。しかし、非還元糖の分子量が大き過ぎる場合には、(A)アルギン酸塩と非還元糖とが水素結合を形成して凝集してしまう可能性がある。したがって、非還元糖としては、グリコシド結合によって結合した2個〜10個の単糖分子から構成される糖が好ましく、二糖類がより好ましい。さらに、成形精度および保湿性の点から、二糖類の中でもトレハロースが特に好ましい。
非還元糖の配合量は、特に限定されないが、保湿性の観点から、(A)アルギン酸塩100質量部に対して、100質量部〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、400質量部〜1200質量部の範囲内であることが特に好ましい。
[添加剤]
本発明の乳頭パック材には、以上に説明した各成分以外にも、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、たとえば、ゲル化調整剤、充填剤、無機フッ素化合物、アミノ酸化合物、不飽和カルボン酸重合体、界面活性剤、香料、着色料、抗菌剤、防腐剤、pH調整剤等が挙げられる。
ゲル化調整剤を用いる場合には、(A)アルギン酸塩と(B)ゲル化反応剤との反応速度を調節(遅延)させることができる。このため、乳頭パック材を構成する各成分を混合・練和してから乳頭に装着するまでに要する作業時間に対応させて、硬化時間を調整することが容易となる。ゲル化調整剤としては、公知のゲル化調整剤を制限無く利用できる。ゲル化調整剤としては、一般的には、i)リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等のアルカリ金属を含むリン酸塩、ii)蓚酸ナトリウム、蓚酸カリウム等のアルカリ金属を含む蓚酸塩、iii)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属を含む炭酸塩を挙げることができる。ゲル化調整剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
ゲル化調整剤の配合量は、他の配合成分や要求される硬化時間等に応じて適宜選択できるが、アルギン酸塩100質量部に対して1質量部〜30質量部の範囲内が好ましく、3質量部〜15質量部の範囲内がより好ましい。
また、ゲル化物の物性を調整するために、充填剤を用いることが好ましい。充填剤としては、珪藻土、タルク等の粘度鉱物を用いることが好ましく、シリカ、アルミナ等の金属または半金属の酸化物も用いることができる。充填剤の配合量は特に制限されるものではないが、アルギン酸塩100質量部に対して50質量部〜2000質量部の範囲内が好ましく、100質量部〜1000質量部の範囲内がより好ましい。
また、ゲル化物の強度調節の観点からは、フッ化チタンカリウム、ケイフッ化カリウム等の無機フッ素化合物、アミノ酸/ホルムアルデヒド縮合体等のアミノ酸化合物などを配合することが好ましい。また、乳頭パック材を構成する各成分を混練した際、粘度の変化速度の制御を容易とするために、不飽和カルボン酸重合体を配合することもできる。
また、界面活性剤を添加することにより混練性を改良できる。界面活性剤としては、公知のものを特に制限なく利用でき、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤のいずれでも使用できる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の配合量は特に制限されないが、ゲル化反応剤100質量部に対して1質量部〜50質量部の範囲であるのが好ましく、3質量部〜20質量部の範囲であるのがより好ましい。
また、本発明の乳頭パックには、抗菌作用を有する物質(以下、抗菌剤と呼ぶことがある)を含めることが好ましい。抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属塩、ヨウ素、茶葉粉末、ヒノキ粉末、キトサンを好ましい例として挙げることができ、金属塩および/またはヨウ素がより好ましく、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄およびヨウ素の少なくとも1種がさらに好ましく、酸化亜鉛および/またはヨウ素が最も好ましい。特に、ヨウ素と他の抗菌作用を有する物質を併用することにより、より効果的な抗菌効果が得られる。
抗菌剤は、1種類のみを採用してもよいし、2種類以上を採用してもよい。抗菌剤の配合量は、一般的に、アルギン酸塩100質量部に対して、0.1〜1000質量部であるのが好ましい。特に金属塩の場合、乳頭パック用ゲル化性材料を基準として、多糖類高分子電解質100質量部に対して、10〜500質量部であるのが好ましく、50〜400質量%であるのがより好ましく、100〜300質量部が最も好ましい。特にヨウ素を用いる場合、乳頭パック用ゲル化性材料を基準として、多糖類高分子電解質100質量部に対して、有効ヨウ素濃度0.1〜10質量部であるのが好ましい。
また、香料、着色料、pH調整剤、防腐剤等から選択されるいずれか1種または複数種の添加剤を必要に応じて配合することができる。
[2]乳頭パック材の調整方法
イ)調整方法
本発明の乳頭パック材の調整方法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記のようにして調整することができる。すなわち、(A)アルギン酸塩、(B)ゲル化反応剤、および(C)非還元糖、必要に応じて、ゲル化調整剤などの添加剤を含むゲル化性材料に、使用直前に、(D)水を加え混練する方法である。得られた水練和物を、乳頭に塗布しゲル化させることにより使用される。
ここで、(D)水は、カルシウムイオン等の多価金属イオンを(B)ゲル化反応剤から溶出させると共に、(B)ゲル化反応剤と(A)アルギン酸塩との反応を促進する機能、およびパックをゲル状に保持する機能を有する。水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等が利用できる。混練物中における水の配合量は、(A)アルギン酸塩100質量部に対して、100質量部〜7000質量部の範囲が好ましい。家畜の乳頭に被覆し易いように、ゲル化性材料の水練和物を低粘度のものとする観点からは、500質量部〜5000質量部の範囲がより好ましい。
また、ゲル化性材料は、予め、(A)アルギン酸塩、(C)非還元糖、および(D)水を主構成成分とする基材ペーストと、(B)ゲル化反応剤、(E)難水溶性溶媒を主構成成分とする硬化剤ペーストとを調整し、特開2001−112785号公報、特開2001−200778号公報、特開2002−263119号公報などに提案されているような、2ペースト自動練和器などにセットして使用しても良い。このようなペーストタイプのゲル化性材料とすることにより、使用する直前に、粉末および液材の計量や混練操作をする必要が無くなるので、操作が極めて容易となるだけでなく、混練後のペースト中に気泡が混入するなどのトラブルも回避することが可能となり、好ましい。
ここで、(E)難水溶性溶媒とは、温度20℃の水1Lに対する溶解度が0.5mg以下の溶媒を意味する。この溶解度は、0.4mg以下が好ましい。難水溶性溶媒としては難水溶性有機溶媒が好ましい。難水溶性有機溶媒としては、上記溶解度を示す有機溶媒であれば公知の有機溶媒が利用できる。このような有機溶媒として、例えば炭化水素化合物、脂肪族アルコール、環式アルコール、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、疎水性重合体等が挙げられる。難水溶性有機溶媒は二種以上の混合物であってもよい。以下、これら各種の難水溶性有機溶媒の好適な例を示す。
炭化水素化合物としては、鎖式化合物又は環式化合物のいずれも使用できる。炭化水素化合物としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ケロシン、2,7−ジメチルオクタン、1−オクテン等の脂肪族鎖状炭化水素化合物、シクロヘプタン、シクロノナン等の脂環式炭化水素化合物、液状飽和炭化水素の混合物である流動パラフィン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、1−オクタノール、トリデカノール等の飽和脂肪族アルコール、およびシトロネロール、オレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールが挙げられる。環式アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、メタ−クレゾール等が挙げられる。
脂肪酸としては、例えばヘキサン酸、オクタン酸等の飽和脂肪酸、およびオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。脂肪酸エステルとしては、オクタン酸エチル、フタル酸ブチル、オレイン酸グリセリド、オリーブ油、ごま油等の植物油、肝油、鯨油等の動物脂等が挙げられる。疎水性重合体としては、ポリシロキサン(いわゆるシリコーンオイル)等が挙げられ、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリフェニルハイドロジェンシロキサン等を挙げることができる。
そして、製造コスト、家畜に対する安全性等を考慮した場合、以上に列挙した難水溶性有機溶媒の中でも、炭化水素化合物および疎水性重合体がより好ましく、流動パラフィンおよびシリコーンオイルが特に好ましい。
硬化材ペーストにおける、難水溶性溶媒の配合量は特に制限されないが、一般的に、(B)ゲル化反応剤100質量部に対して、10質量部〜250質量部の範囲が好ましく、20質量部〜150質量部の範囲がより好ましい。
ペーストタイプの乳頭パック材は、通常、基材ペーストおよび硬化剤ペーストの双方が、アルミパックなどの包装容器に密封保存された形態で、酪農家などの利用者に提供される。ここで、混練作業に際しては、基材ペーストの包装容器の開口部を混練装置の基材ペースト注入口に連結し、かつ、硬化剤ペーストの包装容器の開口部を混練装置の硬化剤ペースト注入口に連結する。そしてこの状態で、各々の包装容器から混練装置内へと供給された2種類のペーストが、混練装置内で自動的に混練された後、混練物が、混練装置外へと排出される。これにより、利用者は、混練物を得ることができる。
このような、自動練和器を用いた混練作業に際して、基材ペーストに対する硬化剤ペーストの混合比率Rm(基材ペーストの使用量/硬化剤ペーストの使用量〔質量部/質量部〕)は特に制限されるものではないが、通常は、1〜4の範囲内であることが好ましい。
基材ペーストの粘度(23℃)は、コーンプレート型粘度計により測定した値で、50〜1500dPa・sの範囲であるのが好ましく、家畜の乳頭に被覆し易いように、ゲル化性材料の水練和物を低粘度のものとする観点からは、80〜1200dPa・sの範囲であるのがより好ましい。さらに、塗布性と、練和物ゲル化後の強度とを両立する観点からは、80〜500Pa・sの範囲であるのが最も好ましい。他方、硬化材ペーストの粘度(23℃)は、50〜1800dPa・sの範囲であるのが好ましく、80〜1500dPa・sの範囲であるのがより好ましい。さらに、塗布性と、練和物ゲル化後の強度とを両立する観点からは、80〜500Pa・sの範囲であるのが最も好ましい。
なお、乳頭パックを後述する噴霧法で乳頭の被覆に供する場合は、基材ペーストの粘度(23℃)は、50〜400dPa・sの範囲であるのがより好ましく、硬化材ペーストの粘度(23℃)は、50〜400dPa・sの範囲であるのがより好ましい。
なお、本発明において各試料の粘度は以下のようにして求めた値を言う。練和用のカップに試料を量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように練和して得られたペーストを、コーンプレート型粘度計(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に適量載せ、23℃で保持しながら粘度の測定を開始し、せん断速度0.1/sでの練和開始から100秒後の粘度をη230.1/dPa・s(デシパスカルセック)とした。なお、粘度の測定条件は、コーン直径が2cm、コーンの傾斜角度は1°とした。
ロ)家畜用乳頭パックの形成方法
ゲル化性材料の水練和物を家畜の乳頭に被覆する方法としては、浸漬法、はけ塗り法、噴霧法等が挙げられるが、特に制限されない。好ましくは浸漬法である。
浸漬法を用いる場合の水練和物の粘度は、練和物中に乳頭が容易に浸漬するように適宜選択すれば良い。ただし、粘度が高すぎると被覆しにくくなり、逆に粘度が低過ぎるとペーストが垂れ易く、操作性が悪い。そのため、浸漬法を用いる場合の水練和物の粘度は、23℃でコーンプレート型粘度計により測定した値で、50〜1500dPa・sの範囲にあるのが好ましく、80〜1200Pa・sの範囲であるのがより好ましい。さらに、塗布性と、練和物ゲル化後の強度とを両立する観点からは、80〜500Pa・sの範囲であるのが最も好ましい。噴霧法を用いる場合の水練和物の粘度は、噴霧のし易さの観点から50〜400dPa・sの範囲にあるのが好ましい。
浸漬法を用いる場合、例えば家畜の乳頭を収容可能な筒状又はカップ状の容器に水練和物を入れ、容器を乳頭の付け根方向に移動させ(引き上げ)、容器中の練和物に乳頭を浸漬した後、容器を乳頭先端方向に移動させる(引き下げる)。浸漬は、乳頭長を100%として、長さ基準で、乳頭の90%以上、好ましくは95%以上が水練和物に浸されるように行えばよい。
容器は清潔なものである限り、その材質は制限されず、金属、セラミック、プラスチック、紙等いずれでも使用できる。また容器は、水練和物の無駄を少なくするために、水練和物を乳頭に付着させるために必要な最低限の内容積を有していればよい。円筒状又はカップ状容器の場合、内径が約4cm〜約6cmで、高さが約5cm〜約10cmのものを使用することができる。容器の内側に、適量の水練和物を収容できるようにした目印を備えていると便利である。
水練和物の流動性を確保するために、浸漬は、水練和物の調製直後に開始するのが好ましい。水練和物が十分な流動性を有する間に、水練和物を乳頭に十分に付着させるために、乳頭を水練和物に浸漬する時間は、水練和物の初期硬化時間(ゲル状乳頭パック用の水練和物において、上記ゲル化調整剤の作用により当初緩やかに増加していた粘度が、本格的な硬化の開始により急激に粘度増加し始める変曲点に達するまでの時間。好ましくは20〜130秒である。)内とするのが好ましい。また水練和物を乳頭に均一に付着させるために、浸漬後に容器を乳頭先端方向に移動させる速度(引き下げる速度)は10〜100mm/秒とするのが好ましく、20〜50mm/秒とするのがより好ましい。
均一なゲル状乳頭パックを形成するために、ゲル化に要する時間は、1〜10分が好ましく、2〜8分がより好ましい。ゲル化に要する時間は、基材ペーストと硬化材ペーストの混合比、ゲル化調整剤の添加量、および両ペーストの練和時の撹拌力の選択により調整できる。
ハ)家畜用乳頭パックの適用対象
本発明の家畜用乳頭パック材を用いて、上記(2)のようにして、家畜の乳頭にパックを形成する。家畜用乳頭パックは、家畜の乳頭の保護に用いることができる。具体的には、伝染性乳房炎からの保護、環境性乳房炎からの保護、汚れその他の外的環境因子からの保護のために用いることができる。本発明において、家畜とは、特に搾乳用家畜であり、例えば乳牛、山羊、その他搾乳が行われる家畜である。
[3]家畜用複合乳頭パックキット
上述した乳頭パックはそのまま単一の乳頭保護層として使用しても良いが、その乳頭に対する保護を長期間に渡ってより確実に行うためには、その表面を樹脂により被覆して複合乳頭パックとするのが好ましい。乳頭パック被覆樹脂容器は、衝撃に対する防御壁の他、アルギン酸塩のゲル化物からの水分の蒸発も良好に抑制し、乾燥による脆性化を防止し、乳頭パックの機械的強度の長期間に渡る維持を可能とする。該乳頭パック被覆樹脂容器は、密着状態で収容するグル状乳頭パックの保湿性を、維持すること、収容されるグル状乳頭パックに密着して、該ゲル状乳頭パックの弾性変形に追随する物性を保有していること、家畜が畜舎内で或いは放牧場で如何なる体勢をとっても、或いは如何なる運動をしても、損傷を受けないだけの強靭さを併せて保有しているのが好ましい。
斯様な性状が求められる乳頭パック被覆樹脂容器は、通常、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂による成形物が使用される。こうした樹脂により、乳頭パックの表面を被覆する方法は、通常、以下の2方法により実施することができる。即ち、
I)i)天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂により成形された乳頭パック被覆樹脂容器に、a)少なくとも多糖類高分子電解質、およびゲル化反応剤を含む乳頭パック用ゲル化性材料の水練和物を充填し、前記充填された乳頭パック用ゲル化性材料の水練和物の中に家畜の乳頭を浸漬し、ゲル化させる方法(以下のこの方法を「乳頭パック被覆樹脂容器の先成形法」と略する)、または
II)乳頭を被覆するゲル状乳頭パックの表面に、b)ii)乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料を塗布し、硬化させる方法(以下のこの方法を「乳頭パック被覆樹脂容器の後成形法」と略する)
である。
以下、これら方法により、乳頭パックの表面を乳頭パック被覆樹脂容器により被覆する方法について詳述する。最初に、II)「乳頭パック被覆樹脂容器の後成形法」について説明し、後に、I)の「乳頭パック被覆樹脂容器の先成形法」について説明する。
[3]−1:乳頭パック被覆樹脂容器の後成形法
イ)乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料
本発明において、乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料は、以下に示すような、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を分散質とし水を分散媒とする水系エマルションからなる高分子ラテックス、或いは天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を有機溶媒に溶解させた高分子の有機溶媒溶液を用いるのが好ましい。
(A)高分子ラテックス
ラテックスは、本来、天然ゴムの樹から採取される乳白色の水系エマルションに付けられた名称で、通常は、ラテックスといえば天然ゴムラテックスをさす。然しながら、合成ゴムや合成樹脂を分散質とし、種々の有機又は無機物の水用液を分散媒としたコロイドゾルもラテックスと呼称されている。乳化重合法を用いて製造した合成ゴムの水分散液を合成ゴムラテックスと呼称して、天然ゴムラテックスと区別することもあり、また、ゴム以外の樹脂のエマルションを樹脂ラテックスと呼称し、ゴムラテックスと区別することもある。然しながら、近年、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスおよび樹脂ラテックスの総てを包含する用語として「高分子ラテックス」という用語が使用されている。従って、本発明でも、「高分子ラテックス」を、その意味で使用する(室井宗一:高分子ラテックスの化学、高分子刊行会(1976))。ただし、以下、「高分子ラテックス」の説明においては、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスおよび合成樹脂ラテックスと分類して説明する。
a)天然ゴムラテックス
本発明で使用される天然ゴムラテックスとしては、汎用性の精製ラテックスがある。即ち、主要成分として、水と線状の立体規則性cis−1,4−ポリイソプレンゴムを含み、固形分は約62%、ゴム分が約60%で、平均分子量は5×10、ゴムは安定な球形のコロイド粒子で、粒径は50〜1300nmのものから適宜選択される。
最も普通の濃縮ラテックスは、0.7%のアンモニアを添加した高アンモニアラテックス(HAラテックス)と、アンモニア量を0.2%に低下し、少量の二次添加剤としてペンタクロロ石炭酸ナトリウムを添加した低アンモニアSPP(LA―SPP)、ホウ酸を添加したLA―BA、ジチオカルバミン酸亜鉛を添加したLA―ZDC、テトラメチルジスルフィドと酸化亜鉛を添力日したLA―TZ等がある。これらは、合成ゴムラテックスと比較して、貯蔵安定性がよい、湿潤ゲル強度が高い、またその乾燥被膜の強度が高い、伸びが高く弾性に富む等の特性があるので、本発明で好ましく使用される。
さらに、本発明では、「加流ゴムラテックス」を使用することができる。加流ゴムラテックスは、成膜するだけでよく、加流工程を必要としないので、作業性が優れている点、さらに、その膜はリーチングによるタンパク除去効果が大きく、ラテックスアレルギー対策の観点からも好ましい。加流ゴムラテックスには、硫黄架橋によって前加硫されたものと、放射線により架橋されたものがある。放射線架橋ラテックスは、アクリル酸nブチルを添加してγ線或いは電子線を照射して製造される。照射によるタンパク質の変性効果もあり、硫黄加流のものに比べて溶出タンパク質の低い膜をつくることができるほか、加硫促進剤を使用しないためニトロソアミンの副生がなく、また促進剤残澄によるVI型のアレルギーやチウラムなどによる細胞毒性のおそれがないので好ましい。特に、作業員の安全性、或いは乳牛等家畜に使用することを考慮すると好ましい。
さらに、本発明では、脱タンパク天然ゴムラテックス(DPNR)を使用することができる。脱タンパク天然ゴムラテックスは、ラテックスアレルギー対策用原料として開発されたもので、実質的にアレルギーフリー製品用原料として使用することができる。脱タンパク天然ゴムラテックスは、ゴム分子に結合したものを含めてすべてのタンパク質が分解除去され、ラテックスとしての安定性は界面活性剤によって維持されている。そのため、ラテックスとしての性質は合成ゴムラテックスと同じであり、経時変化が少なく、安定性に優れている。一方、天然ゴム本来の優れた強度特性は維持されており、より柔軟性に富み、さらに、匂いや着色が少ない面でも、好ましい。
我が国では、JISK6381により、天然ゴムラテックスの試験方法並び品質規格を記載している。JISK6381は原則としてASTMD1076を参考として作成されたものである。現在、天然ゴムラテックスは多種多様な品級のものが市場から入手することができる。従って、JISK6381の規定を満たす中から、使用目的に適合した品級の天然ゴムラテックスを選択することが可能である。
b)合成ゴムラテックス
合成ゴムの場合、乳化重合ならば、ラテックスの形で得られる。然しながら、溶液重合あるいは塊重合の場合は、溶液又は固状で得られるので、その場合は、乳化してエマルジョン状態に変換しなければならない。このような場合、ラテックスと呼ばずにエマルジョンと呼称することもあるが、本発明では、溶液重合あるいは塊重合で製造された合成ゴムの場合もラテックスの概念に包含するものとする。現在、多種多様な合成ゴムラテックスが市場から入手可能である。本発明で使用可能な代表的な合成ゴムラテックスを例示する。
[SBR(スチレン/ブタジエンゴムラテックス)]
SBRラテックスの種類は極めて多く、組成および重合方法、ゴム分の濃度、粒子の大きさ、分散媒の差異などをその使用目的の合致するように種々組み合わせたものが市販されている。我が国では、SBRラテックスの試験方法をJISK6387に規定している。従って、JISK6387の規定を満たす中から、使用目的に適合したSBRラテックスを選択することが好ましい。
[ニトリルゴムラテックス]
我が国では、JISK6392でニトリルゴムラテックスの試験方法を規定している。従って、JISK6392の規定を満たす中から、使用目的に適合したニトリルゴムラテックスを選択することが好ましい。
[クロロプレンゴムラテックス]
合成ゴムの中で最も歴史の古いゴムで、JISK6393でその試験方法を規定している。その規定を満たす中から、使用目的に適合したクロロプレンゴムラテックスを選択することが好ましい。
[その他の合成ゴムラテックス]
以上の合成ゴムラテックスの他に、本発明で使用可能な、ゴムラテックスを例示すると、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、ゴム状アクリル高分子ラテックス、立体規則性ポリブタジエンゴムラテックス、立体規則性ポリイソプレンゴムラテックス、エチレンープロピレンエラストマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン共重合ラテックス、ブチル(イソブチルーイソプレン)ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、ポリウレタンゴムラテックス、エピクロルヒドリンロゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス等多岐にわたる。また、これらの合成ラテックスには、カルボキシル基、水酸基、硫酸基、アミン、アミド或いはN―メチロールアミド基のような反応性機能性基を5mol%以下の少量付加することが可能である。
c)合成樹脂系ラテックス
本発明で使用できる代表的な合成樹脂系ラテックスは、ポリ塩化ビニルラテックス、酢酸ビニルーブチルアクリレート共重合体ラテックス、スチレンーブチルアクリレート共重合体ラテックス、アニオン酢酸ビニルーブチルアクリレート共重合体ラテックス、ポリメタクリレートラテックス、メチルメタクリレートーエチルアクリレート共重合体ラテックス、ポリブチルメタクリレートラテックス、スチレンーブタジエン共重合体ラテックス、カルボキシル化ポリスチレンラテックス、アニオン性塩化ビニリデンー塩化ビニル共重合体ラテックス、塩化ビニリデン共重合体ラテックス等である。
d)高分子ラテックスヘの添加剤
市販の天然ゴム又は合成ゴムラテックスを使用するに当たっては、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤および加硫遅延剤、劣化防止剤(酸化防止剤、オゾン防止剤等)、加工助剤(可塑剤、軟化剤、粘着付与剤等)、補強充填剤等固形ゴムに使用されるものとほとんど同じ添加剤を配合されるが、ラテックスは、水に分散したコロイド溶液として取り扱われるので、その目的によって、分散剤、増粘剤、安定剤(アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系界面活性剤)、クリーミング剤、あわ立て剤、凝固剤(酸)、ゲル化剤(硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸カルシウム等)、感熱剤(亜鉛アンモニウム錯塩、ポリビニルメチルエーテル等)等を配合すれば良い。これらの添加剤を配合したラテックスは、製品の品質の安定および向上のため熟成することが好ましい。
(B)高分子の有機溶媒溶液
乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料は、高分子化合物を分散質とし、水を分散媒とした水系エマルジョン以外に、高分子の有機溶媒溶液であっても良い。有機溶媒に溶解する高分子化合物は、前記した高分子ラテックスで説明したような、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂が制限無く使用できる。
具体的には、ポリウレタンゴムを溶質として、有機溶媒であるテトラヒドロフランに溶解させた溶液;酢酸ビニルとその他のビニルエステルによる共重合体を分散質として、有機溶媒であるキシレンに溶解させた溶液;ブチルゴムを溶質として、有機溶媒であるトリクロロエチレンに溶解させた溶液;或いはブタジエンゴムを溶質として、有機溶媒であるトルエンに溶解させた溶液;ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルーブチルアクリレート共重合体、スチレンーブチルアクリレート共重合体、アニオン酢酸ビニループチルアクリレート共重合体、ポリメタクリレート、メチルメタクリレートーエチルアクリレート共重合体、ポリブチルメタクリレート、スチレンーブタジエン共重合体、カルボキシル化ポリスチレン、アニオン性塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、又は塩化ビニリデン共重合体等を通常の有機溶媒に溶解させた溶液等が例示される。さらに詳細には、溶質としてのポリウレタンゴム12質量部をテトラヒドロフラン88質量部へ溶解させた溶液、溶質としての酢酸ビニルーブチルアクリレート共重合体12質量部をキシレン88質量部へ溶解させた溶液、溶質としてのブチルゴム9質量部をトリクロロエチレン81質量部へ溶解させた溶液、溶質としてのブタジエンゴム9質量部をトルエン81質量部へ溶解させた溶液等が挙げられる。この場合、必要に応じて、前記した高分子ラテックスへの添加剤や、その他、プラスチック用各種添加剤を所定量配合してもよい。
ロ)後成形法による、乳頭パック被覆樹脂容器の形成方法
家畜の乳頭の表面を被覆する乳頭パックの表面に、高分子ラテックス、または高分子の有機溶媒溶液を塗布し、これを固化させて形成すれば良い。以下のこの方法の詳細を、乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料が、高分子ラテックスである場合を例に説明するが、該樹脂硬化性材料が、高分子の有機溶媒溶液である場合もこれに準じて実施すれば良い。
高分子ラテックスの乳頭パックの表面への塗布方法としては、浸漬法、はけ塗り法、噴霧法等が挙げられるが、特に制限されない。好ましくは浸漬法である。浸漬法を用いる場合、先ず、乳頭パックを余裕をもつて完全に収容することができる筒状又はカップ状の乳頭パック浸漬用容器に高分子ラテックスを入れ、乳頭パック浸漬用容器を乳頭パックが装着された乳頭の付け根方向に移動させ(引き上げ)、該容器中の高分子ラテックス混合物に乳頭パックを装着した乳頭を浸漬した後、該容器を、乳頭パックを装着した乳頭先端方向に移動させる(引き下げる)。浸漬は、乳頭長を100%として、長さ基準で、乳頭の90%以上、好ましくは95%以上が高分子ラテックスに浸されるように行えばよい。
なお、上述した浸漬法を用いる場合の高分子ラテックスの粘度は、高分子ラテックス中に乳頭パックを装着した乳頭を浸漬しやすくなるように適宜選択すれば良いが、あまり低粘度でも高分子ラテックス混合が垂れ難くなり操作性が悪くなるため、23℃でスパイラル粘度計により測定した値で、600〜1500dPasの範囲にあることが好ましい。他方、噴霧法を用いる場合の高分子ラテックス混合物の粘度は、噴霧のし易さから300〜600dPasの範囲にあることが好ましい。
乳頭パック浸漬用容器は清潔なものである限り、その材質は制限されず、金属、プラスチック、紙等いずれでも使用できる。また該容器は、高分子ラテックスの無駄を少なくするために、高分子ラテックスを乳頭に付着させるために必要な最低限の内容積を有していればよい。円筒状又はカップ状容器の場合、内径が約4cm〜約6cmで、高さが約5cm〜約10cmのものを使用することができる。該容器の内側に、適量の高分子ラテックスを収容できるようにした目印を備えていると便利である。
高分子ラテックスの流動性を確保するために、浸漬は、高分子ラテックスの調製直後に開始するのが好ましい。高分子ラテックスが十分な流動性を有する間に、高分子ラテックスを、予め乳頭パックを装着した乳頭に十分に付着させるために、浸漬時間は、上記初期硬化時間(好ましくは20〜130秒)内とするのが好ましい。また、高分子ラテックスを、均一に付着させるために、浸漬後に容器を、乳頭先端方向に移動させる速度(引き下げる速度)は10〜100mm/秒とするのが好ましく、20〜50mm/秒とするのがより好ましい。
上述したように、乳頭パックの表面に高分子ラテックスを十分に塗布した後、直ちに、乳頭パック浸漬用容器を除去し、高分子ラテックス混合物を乾燥して、分散媒である水を蒸発する。水の蒸発に伴って、次の固化メカニズム、即ち、ポリマー粒子が凝集し、空隙に乳化剤や無機塩等が濃縮される→吸着保護層が破壊され、露出したポリマー同志が融着し始める→ポリマー鎖の相互拡散と水溶性物質のポリマー中への拡散が進行するメカニズムを経て被膜が形成され、複合乳頭パックが得られる。
なお、乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料として、高分子化の有機溶媒溶液を用いる場合において、その固化のメカニズムも前記高分子ラテックスが固化するメカニズムと実質的には大差がない。即ち、高分子ラテックスの場合の固化は、水を蒸発させてポリマー粒子同志を非可逆的に融着して被膜を形成し、硬化するものであり、他方、高分子化の有機溶媒溶液の場合の固化は、有機溶媒を蒸発させてポリマー粒子同志を非可逆的に融着し被膜を形成し、硬化するものになる。本発明の乳頭パックが対象とするのは、乳牛、羊、山羊等家畜である。従って、有機溶媒の蒸発工程においては、家畜および作業員に有機溶媒による悪影響が無いように作業環境を整備することが好ましい。特に、酪農畜舎等限定された狭い空間で作業する場合は、特に作業環境を整備することが好ましい。
被膜の形成には安定剤、乳化剤、増粘剤などの添加剤の存在も影響するが、最も支配的に影響するのは、ポリマーの性質と成膜形成温度である。成膜形成に要する限界温度を最低成膜温度(MFT:minimum film−forming temperature)という。MFTは、ポリマーのガラス転移温度Tgと一致し、ポリマー固有の値である。MFTと成膜温度条件との関係で被膜が得られるときと、得られないときに分かれる。即ち、成膜温度がMFTより高いときは、乾燥の進行とともにポリマー粒子充填→融着→拡散のプロセスが進行し、連続フィルムを形成する。成膜温度がMFTより低いときは、被膜は形成されない。従って、高分子ラテックス混合物の乾燥温度は、ポリマーのガラス転移温度Tgに留意して決定しなければならない。
成膜した被膜は架橋することで熱的および機械的性質、接着性等を大幅に改良することができる。反応性モノマーを共重合し、その反応基を用いて架橋するのが一般的である。
高分子ラテックスの中でも、NR,EBR、SBR,SB,NBRおよびCRラテクッスから形成された被膜は、柔軟性、ゴム弾性、耐水性、耐寒性において格段に優れているが、他方、耐油性、耐老化性、耐光変色性には劣っている。本発明の複合乳頭パックキットが、家畜、特に乳牛の乳頭を完全に密着・被覆し、乳頭を保護するためのものであり、そのために、高い皮膜形成力、家畜の乳頭に対する良好な密着性、過硬化を発生させない、乾燥による変形が少ない、弾性、保湿性等の諸物性を少なくとも2週間維持することができ、かつ使用後は容易に剥がせること等を必須の要件とすることを勘案すると、本発明では、高分子ラテックスの中でも、NR,EBR, SBR, SB,NBRおよびCRラテクッスが最も好ましい。
[3]−2:乳頭パック被覆樹脂容器の先成形法
「乳頭パック被覆樹脂容器の先成形法」で使用する乳頭パック被覆樹脂容器は、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を用いて、公知の成形方法により容器形状に成形すれば良い。成形方法としては、プレス成形、注入式成形、押出成形、射出成形、注型成形等により適宜に実施すれば良い。ゴムには、固形ゴム用加硫剤(架橋剤)を使用して加硫しても良い。また、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を分散質とし、水を分散媒とする水系エマルションからなる高分子ラテックス、或いは天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を有機溶媒に溶解させた有機溶媒溶液から、容器形状に成形しても良い。この場合、乳頭パック被覆樹脂容器の製造方法に使用する主原料である天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を分散質とし、水を分散媒とする水系エマルションからなる高分子ラテックス、或いは天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を有機溶媒に溶解させた有機溶媒溶液、および夫々への添加剤は、前記「乳頭パック被覆樹脂容器の後成形法」の項で述べたものを使用することができるので、説明を割愛する。
先成形法では、上記樹脂により先に形成した乳頭パック被覆樹脂容器に、乳頭パック用ゲル化性材料の水練和物を充填し、この中に家畜の乳頭を浸漬した後、このままの浸漬状態でゲル化性材料の水練和物をゲル化させる。これにより、家畜の乳頭は、複合乳頭パックにより被覆される。乳頭パック被覆樹脂容器に、乳頭パック用ゲル化性材料の水練和物を充填し、この中に家畜の乳頭を浸漬するまでの手法は、前記した[2]乳頭パック材の調整方法における、ロ)家畜用乳頭パックの形成方法の中の浸漬法に準じて実施すれば良い。
本発明において、乳頭パック被覆樹脂容器の好ましい材料は、約20μm乃至数mmまでの厚さに成膜可能で、且つ、かなり複雑な形状をしたシームレスの容器に製造することができる観点から高分子ラテックスが特に好ましい。
以下に本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
[原料の略称]
後述する実施例および比較例の乳頭パック組成物の作製に用いた各種原料の略称は以下の通りである。
1.アルギン酸塩
Alg−1:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.4、1質量%水溶液粘度500mPa・s
Alg−2:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.5、1質量%水溶液粘度500mPa・s
Alg−3:アルギン酸ナトリウム
M/G比率=0.5、1質量%水溶液粘度500mPa・s
Alg−4:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.7、1質量%水溶液粘度500mPa・s
Alg−5:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.9、1質量%水溶液粘度500mPa・s
Alg−6:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.9、1質量%水溶液粘度950mPa・s
Alg−7:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.5、1質量%水溶液粘度100mPa・s
Alg−8:アルギン酸カリウム
M/G比率=0.9、1質量%水溶液粘度100mPa・s
2.非還元糖
Cdexα:α−シクロデキストリン
Cdexβ:β−シクロデキストリン
3.難水溶性溶媒
流動P1:流動パラフィン(20℃粘度150mPa・sec、水への溶解度<0.001mg/L 殆ど溶解しない。)
Gly:グリセリン
PG:プロピレングリコール
4.界面活性剤
Dec−3O:デカグリセリルトリオレート
5.その他
MgO:酸化マグネシウム
FTiK:フッ化チタンカリウム
ZnO:酸化亜鉛
P3Na:リン酸三ナトリウム
MT−10:粒径0.02μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物)
〈家畜用乳頭パックの実施例〉
実施例1〜37、比較例1〜7は、乳頭パックの表面を乳頭パック被覆樹脂容器で被覆せず、アルギン酸塩のゲル化物を単一層で用いた例である。これらの実施例において、乳頭パックの評価を以下の方法により実施した。
[評価方法]
後述する実施例および比較例のサンプルについての「アルギン酸塩のM/G比率の測定方法」、「ゲル化物の弾性歪測定方法」、「ゲル化物の圧縮強度の測定方法」、「疑似乳頭繰り返し応力耐久試験方法および評価基準」、は以下の通りである。
(a)アルギン酸塩のM/G比率の測定方法
試料となるアルギン酸塩5gを量りとり、500mlの0.3M・HCl水溶液を加え、100℃、2時間攪拌を行った。その後、溶液に存在する不溶分を遠心処理(3000rpm・30分)によって分離し、上澄み液(以下、「第一上澄液」と称す)と沈殿物(以下、「第一沈殿物」と称す)を夫々回収した。第一上澄み液は、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが7.0となるように中和し、液分を揮発させ、固形分を回収した。そして、この固形分に対して、フェノール硫酸法を用いて、糖量X1(mg)を定量した。
また、第一沈殿物は、300mlの水に再度分散させ、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて、一度pHを7.0に中和した後、0.025M・HCl水溶液を加えて、液のpHを2.8〜3.0になるように調整し、1時間攪拌を行った。その後、遠心処理(3000rpm・30分)により、沈殿物(以下、「第二沈殿物」と称す)と上澄み液(以下、「第二上澄み液」と称す)を分離して、夫々回収した。
第二上澄み液は、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが7.0となるように中和し、液分を揮発させ、固形分を回収した。そして、この固形分に対して、フェノール硫酸法を用いて、糖量X2(mg)を定量した。
第二沈殿物は、水100mlに再分散させ、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが7.0となるように中和した後、液分を揮発させ、固形分を回収した。そして、この固形分に対して、フェノール硫酸法を用いて、糖量X3(mg)を定量した。
ここで、糖量X1、X2、X3の値および下式(1)〜(3)に基づいて、M1(MGランダムブロックの存在割合)、M2(MMブロックの存在割合)およびM3(GGブロックの存在割合)を求めた。
・式(1)M1(%)=100×X1/(X1+X2+X3)
・式(2)M2(%)=100×X2/(X1+X2+X3)
・式(3)M3(%)=100×X3/(X1+X2+X3)
そして、M1〜M3の値および下式(4)に基づいて、アルギン酸塩のM/G比率を算出した。
・式(4)M/G比率=(M2+M1×0.5)/(M3+M1×0.5)
(b)ゲル化物の弾性歪測定方法
各乳頭パック材を混練用カップに量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように混練した。次いで、アクリル板(縦45mm×横45mm)の上面にプラスチックリングA(内径31mm、外径38mm、高さ16mm)を配置した後、プラスチックリングA内に、上記混練により得られた各乳頭パック材のペースト(乳頭パック用練和物)を充填した。この際、第一のストップウォッチにより時間の計測を開始した。そして、直ちに、混練物が充填されたプラスチックリングAの中へプラスチックリングB(内径13mm、外径25mm、高さ20mm)をさらに挿入することにより、プラスチックリングB内部に混練物を充填した。次に、プラスチックリングBの上面を別のアクリル板で圧接した後、プラスチックリングBとその両端に配置された2枚のアクリル板とを小型の万力で挟んで固定した。そして時間の計測を開始してから30秒後に、万力によって両端がアクリル板により圧接固定され、かつ、内部に混練物が充填されたプラスチックリングBを25℃にインキュベーター内に入れ、インキュベーターに入れてから15分後(時間の計測開始から15分30秒後)のサンプル、および7日経過後、および14日経過後のサンプルの三種類を作製した。これによりプラスチックリングB内においてゲル化した円柱状のゲル化物サンプルを得た。
次に、この円柱状のゲル化物サンプルをその中心軸方向から荷重が加わるように圧縮試験機(株式会社日本メック社製、印象材弾性比較試験機A−002)にセットし、インキュベーターから取り出してから30秒経過後に以下の手順で初期、7日経過後、および14日経過後の各ゲル化物の弾性歪測定試験を実施した。まず、ゲル化物サンプルに対して100gf/cmの荷重を加えると同時に、第二のストップウォッチにより時間の計測を開始し、第二のストップウォッチの計測時間が30秒を経過した後のダイヤルゲージの値A(mm)を読み取った。第二のストップウォッチの計測時間が60秒〜70秒までの間に、ゲル化サンプルに対して印加する荷重を100gf/cmから1000gf/cmへと増大させ、第二のストップウォッチの計測時間が70秒〜100秒の間では、ゲル化物サンプルに対して印加する荷重を1000gf/cmに保持し続けた。そして、2つ目のストップウォッチの計測時間が100秒時点でのダイヤルゲージの値B(mm)を読み取った。次に、測定された値A、Bおよび下式(5)に基づいて、弾性歪(εe)を求めた。
そして、同一の乳頭パックについて同様の評価を3回実施して得られた各々の弾性歪の平均値をゲル化物の弾性歪(初期、7日経過後、および14日経過後)とした。
式(5)弾性歪(εe)=(A−B)/20×100(%)
(c)ゲル化物の圧縮強度の測定方法
各乳頭パック材を混練用カップに量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように混練して得られるペーストを、アクリル板(縦45mm×横45mm)の上面にプラスチックリングA(内径31mm、外径38mm、高さ16mm)を配置した後、プラスチックリングA内に充填した。この際、第一のストップウォッチにより時間の計測を開始した。そして、直ちに、混練物が充填されたプラスチックリングAの中へプラスチックリングB(内径13mm、外径25mm、高さ20mm)をさらに挿入することにより、プラスチックリングB内部に混練物を充填した。次に、プラスチックリングBの上面を別のアクリル板で圧接した後、プラスチックリングBとその両端に配置された2枚のアクリル板とを小型の万力で挟んで固定した。そして時間の計測を開始してから30秒後に、万力によって両端がアクリル板により圧接固定され、かつ、内部に混練物が充填されたプラスチックリングBを35℃水中に浸漬させる。練和開始から3分30秒後(初期)、7日経過後、および14日経過後にゲル化物試料をモールドから取り出した。これによりプラスチックリングB内においてゲル化した円柱状の混練物(ゲル化サンプル)を得た。
次に、この円柱状のゲル化物サンプルを、その中心軸方向から荷重が加わるように島津社製オートグラフ(AG−I)にセットし、ゲル化物試料をモールドから取り出した後1分経過後にクロスヘッドスピード:5mm/minでオートグラフをスタートし、初期、7日経過後、および14日経過後の各ゲル化物の圧縮強度を測定した。
(d)疑似乳頭繰り返し応力耐久試験方法および評価基準
各乳頭パック材を混練用のカップに量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように混練して得られたペーストを、内径6cmφ、長さ8cmの筒状容器の中に満たした。次に、乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした軟質ゴム製の疑似乳頭の上端を持ち、筒状容器に満たされたペーストに軽く接触させた状態から、ゆっくり力を加えていき、乳頭すべてが隠れるまで差し込み、直ちに引き抜いた。引き抜いた疑似乳頭を垂直にした状態で吊るし、乳頭パック材が硬化するまで放置(15分)した後、繰り返し衝突荷重試験器(東京技研社製K655)のジグにセットし、牛床を模擬したアクリル板上に、1.5Kgfの応力で毎分60回の速度で衝突させ、乳頭パックが破損、或いは脱落した時点での衝突回数を耐久回数とし評価を行った。
(e)練和物の粘度測定方法
練和用のカップに試料を量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように練和して得られたペーストを、コーンプレート型粘度計(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に適量載せ、23℃で保持しながら粘度の測定を開始し、せん断速度0.1/sでの練和開始から100秒後の粘度をη230.1/dPa・s(デシパスカルセック)とした。なお、粘度の測定条件は、コーン直径が2cm、コーンの傾斜角度は1°とした。
(f)浸漬法での塗布性評価試験方法および評価基準
各乳頭パック材を混練用のカップに量りとり、ヘラを用いて、気泡が混入しないように混練して得られたペーストを、内径6cmφ、長さ8cmの筒状容器の中に満たした。次に、乳牛の乳頭の形状(内径3cmφ、長さ4cm)をした軟質ゴム製の疑似乳頭の上端を持ち、筒状容器に満たされたペーストに軽く接触させた状態から、ゆっくり力を加えていき、乳頭すべてが隠れるまで差し込み、直ちに引き抜いた。疑似乳頭の筒状容器への差し込時に、力が必要なく、挿入・塗布が容易であるものを「A」、少々の力が必要ではあるが、容易に挿入・塗布できたものを「B」、塗布・挿入に力は必要であるが、塗布性が許容のものを「C」、挿入・塗布に相当な力が必要で、作業に手間取るため許容できないものを「D」とし評価を行った。
実施例1
(A)アルギン酸塩として10gのAlg−1、(B)非還元糖として60gのトレハロース、(E)ゲル化反応剤として40gの無水石膏を量りとり、均一な粉末となるまで予め混合して、粉材を得た。次に、(D)難水溶性溶媒として20gの流動P1、(C)水として150gの蒸留水を量りとり、均一な液体となるまで予め攪拌し、液材を得た。得られた粉材および液材全量を混練用カップに入れ、ヘラを用いて均一なペースト状になるまで、気泡が混入しないように混練し、乳頭パック用練和物を調整した。得られた乳頭パック用練和物を用いて、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験を行った。
実施例2〜23
乳頭パック用練和物の組成を、表1に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして乳頭パック材ペーストを調整し、得られた各乳頭パック用練和物を用いて、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験を夫々行った。
実施例24
(A)アルギン酸塩として100gのAlg−1、(B)非還元糖として600gのトレハロース、(C)水として1500gの蒸留水を量りとり、小型混練器(アイコー産業社製アイコーミキサー)を用いて1時間混練し、基材ペーストを調整した。(E)ゲル化反応剤として400gの無水石膏、(D)難水溶性溶媒として200gの流動P1を量りとり、同小型混練器を用いて1時間混練し、硬化剤ペーストを調整した。得られた基材ペーストおよび硬化剤ペーストを、自動練和器(トクヤマデンタル社製「APミキサーIII」吐出レンジ3を使用)によって混練(混練比:基材ペースト/硬化剤ペースト=2.86)し、乳頭パック用練和物を調整した。得られた乳頭パック用練和物を用いて、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験を行った。
実施例25〜38
乳頭パック用練和物の組成を、表2に示す内容に変更した以外実施例24と同様にして乳頭パック用練和物を調整し、得られた各乳頭パック用練和物を用いて、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験を夫々行った。
比較例1〜7
乳頭パック用練和物の組成を表3に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして乳頭パック用練和物を調整し、得られた各乳頭パック用練和物を用いて、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験を行った。
実施例1〜38および比較例1〜7の乳頭パック用練和物の組成を、表1、表2、および表3に示した。また、実施例1〜38および比較例1〜7における、ゲル化物の初期、7日経過後および14日経過後の弾性評価および圧縮強度、7日経過後のゲル化物の疑似乳頭繰り返し応力耐久評価の各測定、練和物の粘度測定、浸漬法での塗布性評価試験結果を表4、および表5に示した。
Figure 2015097522
Figure 2015097522
Figure 2015097522
Figure 2015097522
Figure 2015097522
〈家畜用複合乳頭パックの実施例〉
実施例39〜49は、乳頭パックの表面を乳頭パック被覆樹脂容器で被覆した、複合乳頭パックを使用した例である。これらの実施例において、乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料は以下の組成のものを使用した。
[樹脂硬化性材料]
[組成A]:溶質ポリウレタンゴム12質量部を、88質量部の溶媒テトラヒドロフランに溶解したもの。
[組成B]:[天然ゴムN−60R]―天然ゴムラテックス((株)レジテックス製天然ゴムラテックス、登録商標[N−60R]
[組成C]および[組成D];詳細を表6に示した。尚、表6において、質量部は、乾燥質量部である。
Figure 2015097522
さらに、本実施例で使用する乳頭パック被覆樹脂容器は、それ自体が最終製品ではなく、あくまでも、グル状乳頭パックを被覆するための容器である。従って、製品加工後の加熱による加硫工程を必要としないことから自動化に寄与し、コストダウンに資する前加硫法を採用した。そのために、表6に示した高分子ラテックスの配合物は、前加硫に必要な成分をあらかじめ配合してある。
[評価方法]
(g−1)複合乳頭パックにおける弾性歪の測定方法(後成形法により、乳頭パック被覆樹脂容器を形成)
前述の「(b)ゲル化物の弾性歪測定方法」と同様の方法により、各乳頭パック材を用いて、円柱状のゲル化物サンプルを得た。次いで、50mlガラス製容器中に、樹脂硬化性材料40mlを充填し、該樹脂硬化性材料中に、上記ゲル化物サンプルを、全面が隠れるまで差し込んだ後、引き抜いた。10秒間放置して、過剰の樹脂硬化性材料が垂れ落ちた後、圧縮空気を30秒間、軽く吹き付けて揮発成分を揮発させ該樹脂硬化性材料を硬化させて、ゲル化物サンプルの全面を乳頭パック被覆樹脂容器で被覆し、複合乳頭パックサンプルを得た。
作製した複合乳頭パックサンプルを25℃インキュベーター内に7日および14日間保管した後、表面を覆う乳頭パック被覆樹脂容器を除去し、中からゲル化物サンプルを取り出した。得られた7日経過後および14日経過後の各ゲル化物サンプルを用いて、前記した「(b)ゲル化物の弾性歪測定方法」と同様の方法により、弾性歪(εe)を夫々求めた。
(g−2)複合乳頭パックにおける弾性歪の測定方法(先成形法により、乳頭パック被覆樹脂容器を形成)
表6に示した各樹脂硬化性材料を、貯蔵・熟成タンクに入れ、75℃までに45分間、75℃で90分間、20℃までに40分間の前加硫条件で加硫した。次いで、貯蔵・熟成タンク内で24時間熟成し、さらに21日間熟成した。次いで、前加硫および21日間の熟成が完了したラテクッス配合液を、移送用ポンプで浸漬用タンクへ移送した。この浸漬用タンクに充填されたラテクッス配合液に、前記「(b)ゲル化物の弾性歪測定方法」において乳頭パック材で製造するゲル化物サンプルと同じ円柱形状の硬質ガラス製浸漬型を、中心軸を垂直に立てた状態で回転させながら、円柱の上端面のみを残す深さまで浸漬した。次いで、引き上げ、硬質ガラス製浸漬型の表面を被覆するラテクッス配合液を乾燥させた。さらに、この浸漬―乾燥サイクルを2回繰り返した後、硬質ガラス製浸漬型の表面に形成された、ラテックスの硬化層を脱型し、厚さ0.5mmの乳頭パック被覆樹脂容器を製造した。得られた乳頭パック被覆樹脂容器について、電気導通検査、水漏れ試験、空気充填破裂試験により検査し、合格を確認した。
上記により製造した乳頭パック被覆樹脂容器中に、乳頭パック用練和物を充填し、5分間グル化して、ゲル化物サンプルの表面が乳頭パック被覆樹脂容器で被覆された複合乳頭パックサンプルを得た。この複合乳頭パックサンプルを用いて、上記「(g−1)複合乳頭パックにおける弾性歪の測定方法(後成形法により、乳頭パック被覆樹脂容器を形成)」と同様の方法により、25℃インキュベーター内に7日および14日間保管した後の内部のゲル化物サンプルの弾性歪(εe)を夫々求めた。
(h)圧縮強度の測定方法
上述の「(g−1)複合乳頭パックにおける弾性歪の測定方法(後成形法により、乳頭パック被覆樹脂容器を形成)」と同様の方法により、25℃インキュベーター内に7日および14日間保管した複合乳頭パックサンプルを得た。また、「(g−2)複合乳頭パックにおける弾性歪の測定方法(先成形法により、乳頭パック被覆樹脂容器を形成)」と同様の方法により、25℃インキュベーター内に7日および14日間保管した複合乳頭パックサンプルを得た。
次いで、これらの各複合乳頭パックサンプルについて、表面を覆う乳頭パック被覆樹脂容器を除去し、得られた7日経過後および14日経過後の各ゲル化物サンプルを用いて、前記した「(c)ゲル化物の圧縮強度の測定方法」と同様の方法により、圧縮強度を夫々測定した。
実施例39
実施例1における[組成1]の乳頭パック用練和物と、樹脂硬化性材料[組成A]を組み合わせて、後成形方法により複合乳頭パックを製造する態様で、7日および14日経過後の内部の乳頭バックについて弾性歪および圧縮強度の評価試験を行った。
実施例40〜47
実施例39において、乳頭パック用練和物の組成および樹脂硬化性材料の組成を、夫々表1に示す内容に各変更して、後成形方法により複合乳頭パックを製造する以外は実施例39と同様に実施して、複合乳頭パックにおける、7日および14日経過後の内部のゲル化物の弾性歪および圧縮強度の評価試験を行った。
実施例48,49
実施例1における[組成1]の乳頭パック用練和物と、表6に示した樹脂硬化性材料の各組成を組み合わせて、先成形方法により複合乳頭パックを製造する態様で、7日および14日経過後の内部のゲル化物について弾性歪および圧縮強度の評価試験を行った。
実施例39〜49において、複合乳頭パックを製造するのに使用した乳頭パック用練和物と樹脂硬化性材料の各組成を表7に示した。さらに、実施例39〜49における、複合乳頭パックを7日および14日経過後における、内部のゲル化物の弾性歪および圧縮強度の評価試験結果を表7に併せて示した。
Figure 2015097522

Claims (7)

  1. (A)アルギン酸塩、(B)ゲル化反応剤、および(C)非還元糖を含むゲル化性材料であって、該(A)アルギン酸塩が、α−Lグルロン酸に対するβ−Dマンヌロン酸のモル比率であるM/G比率が0.4〜0.7の範囲のものであることを特徴とする家畜用乳頭パック材。
  2. (C)非還元糖が、二糖類である請求項1に記載の家畜用乳頭パック材。
  3. (C)非還元糖が、トレハロースである請求項1または請求項2に記載の家畜用乳頭パック材。
  4. 練和物の粘度(23℃)が、80〜500dPa・sである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の家畜用乳頭パック材。
  5. a)請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の家畜用乳頭パック材、および
    b)i)前記家畜用乳頭パック材のゲル化物を被覆するための乳頭パック被覆樹脂容器、又はii)該乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料とから構成された家畜用複合乳頭パックキット。
  6. b)i)乳頭パック被覆樹脂容器が、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂により成形されたものであることを特徴とする請求項5に記載の家畜用複合乳頭パックキット。
  7. b)ii)乳頭パック被覆樹脂容器を形成するための樹脂硬化性材料が、天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を分散質とし、水を分散媒とする水系エマルションからなる高分子ラテックス、或いは天然ゴム、合成ゴム又は合成樹脂を有機溶媒に溶解させた高分子の有機溶媒溶液であることを特徴とする請求項5〜請求項6のいずれか1項に記載した家畜用乳頭パックキット。
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